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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】多層容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 21/02 20060101AFI20240312BHJP
【FI】
B65D21/02 200
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020213495
(22)【出願日】2020-12-23
(65)【公開番号】P2022099629
(43)【公開日】2022-07-05
【審査請求日】2023-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003649
【氏名又は名称】弁理士法人真田特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100092978
【弁理士】
【氏名又は名称】真田 有
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 壮
(72)【発明者】
【氏名】塩田 隼介
(72)【発明者】
【氏名】高橋 悟志
(72)【発明者】
【氏名】川浪 悠生
(72)【発明者】
【氏名】盤指 豪
【審査官】加藤 信秀
(56)【参考文献】
【文献】実開昭63-120826(JP,U)
【文献】実開昭57-095349(JP,U)
【文献】特開2012-192965(JP,A)
【文献】実開昭57-140384(JP,U)
【文献】特開2019-172310(JP,A)
【文献】特開2015-131667(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0210126(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが有底筒状で内側に収容空間を有する二個以上の紙製の容器を上下方向に積み重ねた多層容器であって、
第一底面部の上側に第一開口の周囲に設けられた第一フランジ部を有し、前記容器の一つである下側容器と、
前記下側容器に積み重ねられた状態で前記第一フランジ部の上側を向いた面に向かい合って配置されて前記第一開口を覆う第二底面部と、前記第二底面部の周縁から上方へ立設された側壁部と、前記第二底面部の上側に配置された第二開口の周囲に設けられた第二フランジ部と、を有しており、前記側壁部が前記第二底面部よりも下方へ延出された面状の部位であって前記下側容器に積み重ねられた状態で前記第一フランジ部の外周部よりも容器の外側に配置された延出部を有し、前記延出部が容器の内側を向いた面に設けられており前記下側容器に積み重ねられた状態で前記第一フランジ部の前記外周部に係合する凸部を有し、前記容器のうち前記下側容器とは別の一つである上側容器と、
前記第二フランジ部で上側を向いた面に貼付されて前記第二開口を閉塞するシール部材と、を備え
前記下側容器および前記上側容器のそれぞれは角筒状の容器で形成されており、
前記下側容器の前記第一フランジ部で容器の外側へ延びる方向の厚み寸法と前記上側容器の前記凸部で容器の内側へ延びる方向の厚み寸法との少なくとも一方は、前記角筒状の容器の角をなす角部と前記角部に連設された直線部とで不均一であり、
前記下側容器の前記第一フランジ部と前記上側容器の前記凸部とのそれぞれで、前記直線部の前記厚み寸法よりも前記角部の前記厚み寸法が大きい
ことを特徴とする多層容器。
【請求項2】
それぞれが有底筒状で内側に収容空間を有する二個以上の紙製の容器を上下方向に積み重ねた多層容器であって、
第一底面部の上側に第一開口の周囲に設けられた第一フランジ部を有し、前記容器の一つである下側容器と、
前記下側容器に積み重ねられた状態で前記第一フランジ部の上側を向いた面に向かい合って配置されて前記第一開口を覆う第二底面部と、前記第二底面部の周縁から上方へ立設された側壁部と、前記第二底面部の上側に配置された第二開口の周囲に設けられた第二フランジ部と、を有しており、前記側壁部が前記第二底面部よりも下方へ延出された面状の部位であって前記下側容器に積み重ねられた状態で前記第一フランジ部の外周部よりも容器の外側に配置された延出部を有し、前記延出部が容器の内側を向いた面に設けられており前記下側容器に積み重ねられた状態で前記第一フランジ部の前記外周部に係合する凸部を有し、前記容器のうち前記下側容器とは別の一つである上側容器と、
前記第二フランジ部で上側を向いた面に貼付されて前記第二開口を閉塞するシール部材と、を備え
前記下側容器および前記上側容器のそれぞれは角筒状の容器で形成されており、
前記下側容器の前記第一フランジ部で容器の外側へ延びる方向の厚み寸法と前記上側容器の前記凸部で容器の内側へ延びる方向の厚み寸法との少なくとも一方は、前記角筒状の容器の角をなす角部と前記角部に連設された直線部とで不均一であり、
前記下側容器の前記第一フランジ部および前記上側容器の前記凸部の一方では、前記角部の前記厚み寸法よりも前記直線部の前記厚み寸法が大きく、
前記下側容器の前記第一フランジ部および前記上側容器の前記凸部の他方では、前記直線部の前記厚み寸法よりも前記角部の前記厚み寸法が大きい
ことを特徴とする多層容器
【請求項3】
前記下側容器の前記第一フランジ部で前記角部および前記直線部の一方が、前記上側容器の前記凸部と係合される係合領域をなし、前記角部および前記直線部の他方は前記上側容器の前記凸部と係合されない非係合領域をなす
ことを特徴とする請求項1または2に記載の多層容器。
【請求項4】
前記角部は、上側から視て湾曲した部位であり、
前記直線部は、前記角部に連設されており前記角部よりも曲率の小さい部位である
ことを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の多層容器。
【請求項5】
前記第二フランジ部は前記上側を向いた面が平坦な面状の部位をなす
ことを特徴とする請求項1~の何れか1項に記載の多層容器。
【請求項6】
前記第一フランジ部と前記第二フランジ部とのそれぞれは、上端側を容器の外側へカール曲げ加工で巻かれたカール形状に形成されている
ことを特徴とする請求項1~の何れか1項に記載の多層容器。
【請求項7】
前記下側容器および前記上側容器のそれぞれは四角筒状の容器で形成されており、
前記第一開口に沿う面に延在する第一方向の寸法が110[mm]以上であって前記第一開口に沿う面に延在し前記第一方向に対して直角をなす第二方向の寸法が90[mm]以上である
ことを特徴とする請求項1~の何れか1項に記載の多層容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、それぞれが有底筒状で内側に収容空間を有する二個以上の容器を上下方向に積み重ねた多層容器に関する。
【背景技術】
【0002】
コンビニエンスストア等で販売されている弁当や総菜などの食品を収容するためのプラスチック製の容器には、複数の容器を上下方向に積み重ねた多層容器がある。具体的には、容器本体の開口を覆う中皿を容器本体に積み重ねた中皿付き容器が例示される。
この種の中皿付き容器では、容器本体の開口の周囲に形成された本体側フランジ部の上面部に、中皿の開口の周囲に形成された中皿側フランジ部の下面部を重ね合わせて容器本体に中皿を載置して、中皿の開口を蓋体で閉塞する構造が知られる(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-145043号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
中皿付き容器では、容器本体と中皿と蓋体の分離を確実に防止する観点から、中皿付き容器全体をシュリンクフィルムで被覆して容器本体と中皿と蓋体とを結合させることが一般的である。
近年では、脱プラスチックの観点から、プラスチック製の容器に替えて紙製の容器を利用したり、シュリンクフィルムなどのプラスチック部品の使用を抑制したりすることで、プラスチック材料の使用量を削減することが望まれている。
【0005】
本件は、上記の課題に鑑みて創案されたものであり、複数の容器を安定して結合することができ、かつ、プラスチック材料の使用量を削減することのできる多層容器を提供することを目的の一つとする。なお、この目的に限らず、後述する「発明を実施するための形態」に示す各構成から導き出される作用および効果であって、従来の技術では得られない作用および効果を奏することも、本件の他の目的として位置付けることができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここで開示する多層容器は、それぞれが有底筒状で内側に収容空間を有する二個以上の紙製の容器を上下方向に積み重ねた多層容器である。多層容器は、第一底面部の上側に第一開口の周囲に設けられた第一フランジ部を有し、前容器の一つである下側容器と、前記下側容器に積み重ねられた状態で前記第一フランジ部の上側を向いた面に向かい合って配置されて前記第一開口を覆う第二底面部と、前記第二底面部の周縁から上方へ立設された側壁部と、前記第二底面部の上側に配置された第二開口の周囲に設けられた第二フランジ部とを有しており、前記側壁部が前記第二底面部よりも下方へ延出された面状の部位であって前記下側容器に積み重ねられた状態で前記第一フランジ部の外周部よりも容器の外側に配置された延出部を有し、前記延出部が容器の内側を向いた面に設けられており前記下側容器に積み重ねられた状態で前記第一フランジ部の前記外周部に係合する凸部を有し、前記容器のうち前記下側容器とは別の一つである上側容器と、前記第二フランジ部で上側を向いた面に貼付されて前記第二開口を閉塞するシール部材と、を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本件によれば、複数の紙製容器が安定して結合された多層容器を提供できる。また、多層容器でプラスチックの使用量を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本件の多層容器の断面図である。
図2図1の多層容器の一部を破断して示す分解斜視図である。
図3図1の多層容器における上側容器の要部断面図であって、(a)は凸部の一例を示し、(b)は凸部の別の例を示し、(c)は凸部の更に別の例を示し、(d)は凸部の更に別の例を示す。
図4】(a)は上側容器の下面図であり、(b)は下側容器の上面図である。
図5図4の変形例であって、(a)は上側容器の下面図であり、(b)は下側容器の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本件を実施するための形態を説明する。下記の実施形態はあくまでも例示に過ぎず、この実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態の各構成は、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、必要に応じて取捨選択することができ、適宜組み合わせることもできる。
【0010】
以下、項目「1」で実施形態の多層容器の構成について説明する。それから、項目「2」で項目「1」の構成による作用効果を説明する。
多層容器1は、それぞれが有底筒状で内側に収容空間を有する二個以上の容器を上下方向に積み重ねた多層構造の包装容器である。
【0011】
本実施形態では、二個以上の容器の一つである下側容器と、二個以上の容器の別の一つである上側容器との二個の容器が積み重ねられた多層容器を例説する。具体的には、食品を収容する食品用の包装容器を多層容器の例に挙げる。このように弁当容器型の多層容器は、米飯の上に具材を載せるタイプの食品(かつ丼や親子丼など「丼物」)を収容する用途が想定される。この場合、下側容器に米飯が収容され、上側容器に具材が収容される。
以下の説明では、多層容器を水平面に載置した状態を基準にして上下方向を定める。また、各容器の収容空間に向かう側を内側(容器内側)とし、内側の反対側を外側(容器外側)とする。
【0012】
[1.構成]
<全体構造>
多層容器1は、図1図2に示すように、下側容器10と、下側容器10に積み重ねられた上側容器20と、上側容器20の開口20B(第二開口)を閉塞するシール部材30とを備えている。
【0013】
下側容器10と上側容器20とのそれぞれは、有底四角筒状で内部に収容空間10A,20Aを有する紙製の容器であり、底面部12,22の上側に開口10B,20Bが配置されている。開口10B,20B(第一開口,第二開口)は収容空間10A,20Aを外部に連通する孔である。
下側容器10は、開口10Bに沿う面に延在する第一方向の寸法(図2参照)が110[mm]以上であって開口10Bに沿う面に延在し第一方向に対して直角をなす第二方向(図2参照)の寸法が90[mm]以上であることが好ましい。
【0014】
<下側容器>
下側容器10は、多層容器1で上側容器20の下方に配置されており、収容空間10Aに食品(収容物)を収容する容器である。
下側容器10は、第一底面部12と第一側壁部11とを有している。第一底面部12は、収容空間10Aの底面をなす。第一側壁部11は第一底面部12の周縁から上方へ立設されており、収容空間10Aの側壁をなす。下側容器10を上方から視た形状は、四角筒の角をなす角部〔後述する図4(b)で符号10C〕が湾曲した略四角形に形成されている。
下側容器10の上下方向の寸法は上側容器20の上下方向の寸法よりも大きく設定されている。
【0015】
第一側壁部11は帯状の紙製シート材を四角筒状に成形してヒートシールで貼合してなる。第一側壁部11は、上端側が容器の外側へカール曲げ加工で巻かれたカール形状(カール構造)をなし、このカール形状の部位が開口10Bの周囲に設けられた第一フランジ部13をなす。
第一底面部12は紙製シート材を所定の形状に切り出して形成されており、第一側壁部11の下端側にヒートシールで貼着されている。
【0016】
<上側容器>
上側容器20は、多層容器1で下側容器10の上方に配置されており、収容空間20Aに食品(収容物)を収容する中皿であり、下側容器10の開口10Bを閉塞するリッド部材としても機能している。
上側容器20は第二底面部22(底面部)と第二側壁部21(側壁部)とを有している。第二底面部22は、上側容器20の収容空間20Aの底面をなす。第二側壁部21は第二底面部22の周縁から上方へ立設されており、収容空間20Aの側壁をなす。本実施形態で上側容器20を上方から視た形状は、下側容器10と同様な、四角筒の角をなす角部〔後述する図4(a)で符号20C〕が湾曲した略四角形である。
【0017】
第二側壁部21は帯状の紙製シート材を四角筒状に成形してヒートシールで貼合してなる。第二側壁部21は、上端側が容器の外側へカール曲げ加工で巻かれたカール形状(カール構造)をなし、このカール形状の部位が開口20Bの周囲に設けられた第二フランジ部23をなす。
第二底面部22は所定の形状の紙製シート材で形成されており、第二側壁部21の下端側にヒートシールで貼着されている。
【0018】
第二底面部22は、上側容器20が下側容器10に積み重ねられた状態では、下側容器10の第一フランジ部13の上側を向いた面に向かい合って配置されて第一開口10Bを覆うシール部をなす。
そのため、第二底面部22は、上方から視て、その外周部が下側容器10の第一フランジ部13の外周部に重なり合うか、または、第一フランジ部13の外周部よりも容器の外側へ延出する寸法に設定されている。
【0019】
<嵌合構造>
第二側壁部21には、下端側に延出部24が設けられている。延出部24は、第二側壁部21をなすシート材が下端側で第二底面部22よりも下方へ延出された面状の部位であって、第二底面部22の下面側を囲む壁面部をなす。延出部24は、上側容器20が下側容器10に積み重ねられた状態で下側容器10の第一フランジ部13の外周部よりも容器の外側に配置される。
第二底面部22の下面側で延出部24により囲まれた空間は、上側容器20が下側容器10に積み重ねられた状態で、第一フランジ部13を含む下側容器10の上端部が嵌装される嵌入部をなす。
【0020】
この延出部24には、嵌合構造40が設けられている。
嵌合構造40は、上側容器20の下側と下側容器10の上側とを嵌合させるための構造である。
具体的には、嵌合構造40は、延出部24で容器の内側を向いた内周面24Aに設けられた凸部42で構成されている。凸部42は、上側容器20が下側容器10に積み重ねられた状態で第一フランジ部13の外周部に係合する係合部である。
【0021】
延出部24の内周面24A面に設けられた凸部42の具体的な構造が図3(a)~(d)のそれぞれに例示されている。
図3(a)~(d)は、上側容器20の要部断面図であり、図3(a)~(d)に例示された凸部42のそれぞれは、符号42a,42b,42c,42dで区別されている。
【0022】
図1図2および図3(a)~(d)に示すように、延出部24の下端部では、延出部24(第二側壁部21)をなすシート材が容器の内側へ向かって折り返されている。この折り返し部で容器の内側の配置されたシート材が、延出部24の内周面24Aをなす。
図3(a)~(d)に例示された凸部42a,42b,42c,42dの構造は、延出部24で折り返されたシート材(内周面24Aをなす部位)を利用した構造である点で共通している。
【0023】
図3(a)の凸部42aは、延出部24で折り返されたシート材(内周面24Aをなす部位)の一部を径方向内側へ向かって突出させた突出部が第一フランジ部13の外周部に係合する構造である。詳しくは、第一フランジ部13の外周部は凸部42aを上側へ乗り越えて凸部42aの上面側に当接して、係合するようになっている。
【0024】
図3(b)の凸部42bは、延出部24で折り返されたシート材(内周面24Aをなす部位)自体が第一フランジ部13の外周部に係合する突出部として機能する構造である。詳しくは、延出部24で折り返された部分(凸部42b)は、底面部22までは届かない寸法で折り返されている。第一フランジ部13の外周部は、凸部42bを上側へ乗り越えて、凸部42bの上端と底面部22との間の凹みへ係合するようになっている。
【0025】
図3(c)の凸部42cは、延出部24で内周面24Aをなす部位(折り返されたシート材)が巻回されて、第一フランジ部13の外周部に係合する突出部をなす構造である。詳しくは、延出部24の下端部で内側に突出する部分が巻回されている。第一フランジ部13の外周部は、凸部42cを上側へ乗り越えて凸部42cの上面側に当接して、係合するようになっている。
【0026】
図3(d)の凸部42dは、(a)の凸部42aと同様な、延出部24で内周面24Aをなす部位(折り返されたシート材)の一部を径方向内側へ向かって突出させた突出部である。(d)の凸部42dでは、第一フランジ部13の外周部が、凸部42dで径方向内側へ向かって突出した頂部に当接して、係合するようになっている。係合した状態で、第一フランジ部13の上端側が底面部22に当接するようになっている。
【0027】
図3(a)~(c)に例示された凸部42a,42b,42cのそれぞれは、上側容器20が下側容器10に積み重ねられた状態で、その頂部が第一フランジ部13の外周部よりも容器の内側に配置されている。
上側容器20で延出部24には、上側容器20が下側容器10に積み重ねられた状態で、第一フランジ部13の外周部よりも容器の外側に配置された部位から内側に凸部42a,42b,42c,42dが突設されている。そのため、第一フランジ部13を含む下側容器10の上端部が延出部24により囲まれた空間に嵌装され得る。
【0028】
上側容器20と下側容器10とを篏合するときは、まず、延出部24により囲まれた空間に下側容器10の上端部が嵌装される。
具体的には、図3(a)~(c)では、第一フランジ部13の外周部が凸部42(凸部42a,42bまたは42c)を乗り越えて、凸部42(凸部42a,42bまたは42c)の上面側に当接する。これにより、上側容器20に下側容器10が嵌合される。
図3(d)では第一フランジ部13の外周部が凸部42dの頂部に当接して、上側容器20に下側容器10が嵌合される。
【0029】
この嵌合構造40では凸部42と第一フランジ部13の外周部との係合により、上側容器20と下側容器10とが篏合した状態が維持され、また、使用者が意図しない上側容器20と下側容器10との分離が抑制される。
多層容器1の使用者が上側容器20と下側容器10とを分離させるときは、上側容器20と下側容器10とを互いに離間させる方向に引っ張れば、嵌合が解除される。
【0030】
そのほか、第二側壁部21の下端側で、延出部24で折り返されたシート材(内周面24Aをなす部位)と、延出部24で容器の外側に配置された部位との間に、第二底面部22の外周部で下方へ折り返された部位が挟み込まれている。これにより、収容空間20Aの密閉性が強化されている。
【0031】
図4(a)は上側容器20を下側から視た図であり、図4(b)は下側容器10を上側から視た図である。
図4(a),(b)に示すように、下側容器10,上側容器20のそれぞれで、角部10C,20Cは四角筒の角をなす部位であり、直線部10D,20Dは、角部10C,20Cに連設された部位である。
【0032】
下側容器10,上側容器20のそれぞれを上側(または下側)から視た輪郭は、四[個]の角部10C,20Cと、四[個]の直線部10D,20Dとからなる略四角形をなす。
具体的には、本実施形態で角部10C,20Cは上側から視て湾曲した部位をなす。直線部10D,20Dは、角部10C,20Cよりも曲率の小さい部位である。下側容器10,上側容器20のそれぞれを上側(または下側)から視た輪郭は、丸みを帯びた四角形をなす。
【0033】
下側容器10で第一フランジ部13の容器の外側へ延びる方向の寸法や、上側容器20の凸部42で容器の内側へ延びる方向の寸法を、「厚み寸法」と称する。
厚み寸法T1C,T1D,T2C,T2Dのそれぞれは、例えば、当該部位(角部10C,20C,直線部10D,20Dの何れか)で測定された最大寸法である。なお、厚み寸法T1C,T1D,T2C,T2Dは、最大寸法に限らず、最小値や平均値などであってもよい。
【0034】
下側容器10で第一フランジ部13の厚み寸法T1C,T1Dと、上側容器20で凸部42の厚み寸法T2C,T2Dとのそれぞれは、角部10C,20Cと直線部10D,20Dとで不均一である。
具体的には、下側容器10の第一フランジ部13と上側容器20の凸部42とでは、直線部10D,20Dの厚み寸法T1D,T2Dよりも角部10C,20Cの厚み寸法T1C,T2Cが大きい。
【0035】
下側容器10の第一フランジ部13で相対的に厚み寸法の大きい角部10Cは、上側容器20の凸部42で相対的に厚み寸法の大きい角部20Cと当接されやすくなっており、上側容器20の凸部42と係合される係合領域をなす。下側容器10の第一フランジ部13で相対的に厚みの小さい直線部10Dは、上側容器20の凸部42で相対的に厚みの大きい直線部20Dと当接されにくくなっており、上側容器20と係合されない非係合領域をなす。
【0036】
<シール部材>
図1および図2に示すように、シール部材30は、上側容器20の開口20Bを閉塞する蓋体である。シール部材30は、上側容器20を上方から視た輪郭に沿う形状をなす一枚のシート材で形成されている。シール部材30に用いる材料としては、紙やプラスチックが例示される。
シール部材30は、上側容器20の第二フランジ部23で上側を向いた面23Aにヒートシールで貼り付けられている。
【0037】
第二フランジ部23は、シール部材30の貼り付け性を向上させるために、面23Aが平坦な面状の部位をなす。具体的には、第二フランジ部23はカール曲げ加工された後、リムプレス加工で圧力を加えられ、平坦面状に加工される。
面23Aが平坦な面状の部位をなすことで、シール部材30が第二フランジ部23の面23Aに面接触するため、密閉性が向上される。
【0038】
[2.作用および効果]
(1)多層容器1は、それぞれが紙製の下側容器10と上側容器20とを積み重ねたものである。下側容器10と上側容器20とのそれぞれが紙製の容器であることで、プラスチックの使用量を削減することができる。紙製の容器としたことでプラスチック製の容器に比べて耐熱性が向上される。そのため、例えば多層容器1を弁当容器に適用した場合に、プラスチック製の容器に比べて電子レンジで取り扱いやすい。また、紙製の容器としたことでプラスチック製の容器に比べて熱伝導率が低くなるため、多層容器1に収容された食品(収容物)に対して加熱調理した際に、プラスチック製の容器に比べて収容された食品が冷めにくい。
【0039】
この多層容器1において、上側容器20の側壁部21は底面部22よりも下方へ延出された延出部24を有している。この延出部24で内側を向いた内周面24Aに凸部42が設けられており、凸部42が第一フランジ部13の外周部に係合することで、上側容器20の下側と下側容器10の上側とが嵌合される。
これにより、上側容器20と下側容器10とが篏合した状態が維持され、また、使用者が意図しない上側容器20と下側容器10との分離が抑制される。そのため、複数の容器10および20が安定して結合された構成とすることができる。
そのうえ、多層容器1の全体をシュリンクフィルムで被覆しなくても上側容器20と下側容器10との分離抑止性が確保されるので、シュリンクフィルムで多層容器の全体が被覆される従来の技術に比べて、より一層プラスチックの使用量を削減することができる。
【0040】
従来のプラスチック製中皿付き容器で、容器本体の開口に中皿を積み重ねる構造では、容器本体の開口の周囲に形成された本体側フランジ部の上面部に、周方向に沿って溝がプレス成型されており、この溝に中皿側フランジ部を嵌め合わせて容器本体と中皿との分離を抑制するのが一般的である。
紙素材はプラスチック素材に比べて伸張性に乏しい傾向にあるためプレス成型で溝加工を施しにくいため、従来のプラスチック製中皿付き容器のような本体側フランジ部の上面部に溝をプレス成型する積み重ね構造を適用するのが難しい。
この点、本実施形態の嵌合構造40は、上側容器20の凸部42と第一フランジ部13の外周部とを当接させる積み重ね構造であるため、プレス成型による溝加工は不要であり、紙製の多層容器1に適している。
【0041】
上側容器20の延出部24は、上側容器20が下側容器10から分離された状態で脚部として機能し、載置安定性を確保できる。
また、従来のプラスチック製中皿付き容器で、容器本体の開口に中皿を積み重ねる構造では、中皿の底部が容器内部の収容空間に入り込むので、容器内の収容物が中皿の底部に付着することがある。そのため、中皿を取り出して台に載置すると、台が汚れてしまう恐れがある。それに対し、本件の上側容器20の延出部24は、下側容器10の第一フランジ部13の外周部よりも容器の外側に配置されているため、延出部24には下側容器10内の収容物が付着することはない。したがって、上側容器20を下側容器10から分離させ、上側容器20の延出部24を脚部として機能させる際に、上側容器20を載置した台を汚すことを防止できる。
そのため、例えば多層容器1を弁当容器に適用した際に、上側容器20と下側容器10とを分離する使い方での使い勝手が良い。
【0042】
また、上側容器20で開口20Bの周囲に設けた第二フランジ部23にシール部材30が貼付される。一枚のシート材からなる簡素なシール部材30で開口20Bが閉塞されるため、プラスチック成型品を蓋体として用いたりシュリンクフィルムを用いたりする場合に比べてプラスチックの使用量を削減することができる。また、第二フランジ部23にシール部材30が貼付されるので、上側容器20の密閉性を確保できる。
【0043】
(2)角部10C,20Cと直線部10D,20Dとで厚み寸法T1C,T2C,T1D,T2Dが不均一であることにより、厚み寸法の大小によって上側容器20と下側容器10との篏合性を、角部10C,20Cと直線部10D,20Dとの領域ごと調節することが可能となる。
また、角筒状の上側容器20と下側容器10とを積み重ねる構造であるため、上側容器と下側容器との間が密に接しやすい円筒状の容器を積み重ねる構造に比べて、上側容器20と下側容器10との間に空隙を確保しやすい。
そのため、例えば多層容器1を弁当容器に適用した場合、加熱調理で生じた蒸気を逃がしやすくなる。蒸気を逃がす構造を付設することなく多層容器1を重ねた状態で加熱調理を施すことができるので弁当容器として使い勝手がよい。
【0044】
(3)下側容器10の第一フランジ部13と上側容器20の凸部42とのそれぞれで、直線部10D,20Dの厚み寸法T1D,T2Dよりも角部10C,20Cの厚み寸法T1C,T2Cが大きいことで、角部10C,20Cどうしが当接しやすくなり、角部10C,20Cでの篏合性が良好になる。また、直線部10D,20Dで空隙が生じやすくなるので、直線部10D,20Dで上側容器20と下側容器10とを分離しやすい。つまり、篏合性が良好でかつ分離しやすい多層容器1になる。
【0045】
(4)下側容器10の第一フランジ部13で相対的に厚みの大きい直線部10Dが上側容器20と係合される係合領域をなし、第一フランジ部13で相対的に厚みの小さい角部10Cが上側容器20と係合されない非係合領域をなすことで、係合領域での篏合性の確保と、非係合領域での分離しやすさとを両立することができる。そのため篏合性が良好でかつ分離しやすい多層容器1になる。
(5)角部10C,20Cが上側から視て湾曲した部位であり、直線部10D,20Dが角部10C,20Cよりも曲率の小さい部位である多層容器1によれば、全体として丸みを帯びた四角筒状をなすため手で持ちやすい形状になる。また、多層容器1を弁当容器に適用した際、容器内に収容された食品を角部10C,20Cから取り除きやすい。
【0046】
(6)上側容器20の第二フランジ部23で上側を向いた面23Aが平坦な面状の部位をなすことで、シール部材30が貼り付けやすくなり密閉性が向上される。また、第二フランジ部23が指でつまみやすくなるので、上側容器20を持つときに便利である。
(7)第一フランジ部13と第二フランジ部23とのそれぞれが、上端側を容器の外側へカール曲げ加工で巻いたカール形状に形成されているので、第一フランジ部13と第二フランジ部23との強度が増す。また、下側容器10や上側容器20の開口10B,20Bで容器外側の縁(エッジ)の手触りが、プラスチック製の容器に比べて、滑らかである。
(8)下側容器10が開口10Bに沿う面に延在する第一方向の寸法が110[mm]以上であって開口10Bに沿う面に延在し第一方向に対して直角をなす第二方向の寸法が90[mm]以上であることで、比較的大きな四角筒状の容器で多層容器を実現できる。さらに言えば、従来の紙製四角筒型の容器では、上端部のカール加工の困難性から、第一方向の寸法が110[mm]以上で第二方向の寸法が90[mm]以上の容器は流通していなかった。
【0047】
[3.そのほか]
上述の各実施形態はあくまでも例示に過ぎず、この実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、必要に応じて取捨選択することができ、適宜組み合わせることもできる。
【0048】
角部10C,20Cと直線部10D,20Dとに設定されている厚み寸法は、上述したものに限られない。
例えば、図4(a),(b)に示す厚み寸法とは反対に、下側容器10の第一フランジ部13と上側容器20の凸部42とのそれぞれで、角部10C,20Cの厚み寸法よりも直線部10D,20Dの厚み寸法が大きくてもよい。この場合、相対的に厚み寸法の大きい直線部10D,20Dが当接されやすくなり、係合領域をなす。相対的に厚みの小さい角部10C,20Cは当接されにくくなり、非係合領域をなす。
そのため、直線部10D,20Dで下側容器10と上側容器20との篏合性が良好になり、角部10C,20Cで分離しやすくなる。そのほか、上述した実施形態と同様の構成からは同様の効果が得られる。
【0049】
図5(a),(b)を用いて厚み寸法の変形例を説明する。図5(a)は上側容器20′を下側から視た図であり、(b)は下側容器10′を上側から視た図である。図5(a),(b)に示す上側容器20′と下側容器10′とは、図1図4に示す上側容器20,下側容器10に対して、角部10C,20Cと直線部10D,20Dとに設定されている厚み寸法T1C′,T2C′,T1D′,T2D′のみが異なり、他の構成は同一である。以下の説明では、同一の構成については同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0050】
図5(a),(b)では、下側容器10′の第一フランジ部13および上側容器20′の凸部42の一方で、角部の厚み寸法よりも直線部の厚み寸法が大きく、下側容器10′の第一フランジ部13および上側容器20′の凸部42の他方で、直線部の厚み寸法よりも角部の厚み寸法が大きい。
具体的には、上側容器20′では直線部20Dの厚み寸法T2D′よりも角部20Cの厚み寸法T2C′が大きく、下側容器10′では角部10Cの厚み寸法T1C′よりも直線部10Dの厚み寸法T1D′が大きい場合を例に挙げている。
【0051】
この場合、上側容器20′で相対的に厚みが大きい角部20Cと下側容器10′で相対的に厚みが小さい角部10Cとが当接し、上側容器20′で相対的に厚みが小さい直線部20Dと下側容器10で相対的に厚みが大きい直線部10Dとが当接するので、角部と直線部とで厚み寸法が不均一な四角筒状の上側容器20′,下側容器10′でも全周にわたって(角部と直線部との両方で)均一に当接させやすくすることが可能となる。
そのため、下側容器10′と上側容器20′との篏合性が良好になる。また、下側容器10′と上側容器20′との間の空隙が抑制されるので、多層容器1の密閉性を高めることができる。そのほか、上述した実施形態と同様の構成からは同様の効果が得られる。
【0052】
図5(a),(b)の変形例として、下側容器10′′で直線部10Dの厚み寸法T1D′′よりも角部10Cの厚み寸法T1C′′が大きく、上側容器20′′で角部20Cの厚み寸法T2C′′よりも直線部20Dの厚み寸法T1D′′が大きくてもよい。
この場合、上側容器20′で相対的に厚みが小さい角部20Cと下側容器10′で相対的に厚みが大きい角部10Cとが当接し、上側容器20′で相対的に厚みが大きい直線部20Dと下側容器10で相対的に厚みが小さい直線部10Dとが当接する。そのため、上側容器20′,下側容器10′でも全周にわたって(角部と直線部との両方で)均一に当接させやすくなり、図5(a),(b)の構成と同様の作用効果を得ることができる。
【0053】
図5(a),(b)の別の変形例で、厚み寸法T1C′,T2C′,T1D′,T2D′の設定により直線部および角部の一方を係合領域とし、直線部および角部の他方を非係合領域にする(上側容器20′,下側容器10′で全周にわたって均一に当接させない)こともできる。この場合、上記の(4)と同様の作用効果を得ることができる。
【0054】
そのほか、下側容器10および上側容器20の両方で角部10C,20Cの厚み寸法T1C,T2Cと直線部10D,20Dの厚み寸法T1D,T2Dとが不均一である構成に限らず、下側容器10および上側容器20の少なくとも一方で角部10C,20Cの厚み寸法T1C,T2Cと直線部10D,20Dの厚み寸法T1D,T2Dが不均一である構成であってもよい。この場合も直線部および角部の一方を係合領域とし、角部および直線部の他方を非係合領域にできる。
多層容器1で上下方向に積み重ねる容器の数(段数)は二個(二段)以上であってよい。
多層容器1をなす下側容器10や、上側容器20の寸法や形状は特に限定されない。
【0055】
下側容器10や、上側容器20に用いる紙材料は、表面にラミネート加工や塗工により樹脂層を設けたものが使用される。
表面に設けられる樹脂層としては特に限定されないが、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリウレタン、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-プロピレン-ブタジエン共重合体、アクリル-スチレン共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体アイオノマー等を用いることができる。樹脂層としては、単層でも複層でもよい。
【符号の説明】
【0056】
1 :多層容器
10 :下側容器
10A :収容空間
10B :第一開口
10C :角部
10D :直線部
11 :第一側壁部
12 :第一底面部
13 :第一フランジ部
20 :上側容器
20A :収容空間
20B :開口
20C :角部
20D :直線部
21 :第二側壁部
22 :第二底面部
23 :第二フランジ部
23A :面
24 :延出部
24A :内周面
30 :シール部材
40 :嵌合構造
42,42a,42b,42c,42d :凸部
図1
図2
図3
図4
図5