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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】バックアップ電源
(51)【国際特許分類】
   H02J 9/06 20060101AFI20240312BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240312BHJP
   H02J 7/34 20060101ALI20240312BHJP
   B60R 16/033 20060101ALI20240312BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20240312BHJP
   B60L 58/18 20190101ALI20240312BHJP
【FI】
H02J9/06 110
H02J7/00 302B
H02J7/34 G
B60R16/033 C
B60L50/60
B60L58/18
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020217727
(22)【出願日】2020-12-25
(65)【公開番号】P2022102780
(43)【公開日】2022-07-07
【審査請求日】2023-03-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】横山 亘
【審査官】高野 誠治
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-033859(JP,A)
【文献】特開2017-127112(JP,A)
【文献】特開2019-030055(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 9/00 -11/00
H02J 7/00 - 7/12
H02J 7/34 - 7/36
B60R 16/00 -17/02
B60L 1/00 - 3/12
B60L 7/00 -13/00
B60L 15/00 -58/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されるバックアップ電源であって、
電力を貯蔵可能なメイン蓄電装置から入力される入力電圧を第1負荷に印加する第1ラインと、
前記第1ラインに接続され、前記第1負荷とは異なる第2負荷に前記入力電圧を印加する第2ラインと、
前記第1ラインにおいて、前記第1ラインと前記第2ラインとの接続点と前記第1負荷との間に設けられる第1スイッチと、
前記第2ラインにおいて、前記接続点と前記第2負荷との間に設けられる第2スイッチと、
電力を貯蔵可能なバックアップ蓄電装置を備えるバックアップ蓄電部と、
制御部と、を備え、
前記バックアップ蓄電部は、前記第2スイッチと前記第2負荷との間に接続され、
前記制御部は、
取得部と、第1開放部と、第2開放部と、を備え、
前記取得部は、前記入力電圧を取得可能に構成され、
前記第1開放部は、前記取得部の取得した前記入力電圧が第1判定値以下になった場合に前記第1スイッチを開放し、
前記第2開放部は、前記取得部の取得した前記入力電圧が第2判定値以下になった場合に前記第2スイッチを開放し、
前記第2判定値は、前記第1判定値未満でかつ前記第2負荷の最小動作電圧より大きい、バックアップ電源。
【請求項2】
前記入力電圧を測定する測定部を備え、
前記取得部は、前記入力電圧を前記測定部から直接取得可能に構成された、請求項1に記載のバックアップ電源。
【請求項3】
前記バックアップ蓄電装置の蓄電容量は、前記メイン蓄電装置の蓄電容量より小さい、請求項1又は請求項2に記載のバックアップ電源。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バックアップ電源に関する。
【背景技術】
【0002】
システムの冗長度を確保するために、メイン蓄電装置とは異なるバックアップ蓄電装置が車両に設けられる場合がある。このようなバックアップ電源は、例えば、特許文献1に記載されている。特許文献1に記載のバックアップ電源は、例えば、メイン蓄電装置の電力供給に異常が生じた場合に、バックアップ蓄電装置の電力を負荷に供給することで、負荷のバックアップを可能とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-063007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、バックアップ蓄電装置の蓄電容量には限りがある。そのため、バックアップの重要性の低い負荷にまでバックアップ蓄電装置の電力を供給してしまうと、バックアップの際にバックアップ蓄電装置に必要な電力量が増加する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するバックアップ電源は、車両に搭載されるバックアップ電源であって、電力を貯蔵可能なメイン蓄電装置から入力される入力電圧を第1負荷に印加する第1ラインと、前記第1ラインに接続され、前記第1負荷とは異なる第2負荷に前記入力電圧を印加する第2ラインと、前記第1ラインにおいて、前記第1ラインと前記第2ラインとの接続点と前記第1負荷との間に設けられる第1スイッチと、前記第2ラインにおいて、前記接続点と前記第2負荷との間に設けられる第2スイッチと、電力を貯蔵可能なバックアップ蓄電装置を備えるバックアップ蓄電部と、制御部と、を備え、前記バックアップ蓄電部は、前記第2スイッチと前記第2負荷との間に接続され、前記制御部は、取得部と、第1開放部と、第2開放部と、を備え、前記取得部は、前記入力電圧を取得可能に構成され、前記第1開放部は、前記取得部の取得した前記入力電圧が第1判定値以下になった場合に前記第1スイッチを開放し、前記第2開放部は、前記取得部の取得した前記入力電圧が第2判定値以下になった場合に前記第2スイッチを開放し、前記第2判定値は、前記第1判定値未満でかつ前記第2負荷の最小動作電圧より大きい。
【0006】
これにより、入力電圧が低下すると、取得部の取得した入力電圧が第1判定値以下となった後に第2判定値以下となる。そのため、取得電圧が第2判定値以下となる前、すなわち、第2スイッチが開放される前に、第1スイッチが開放される。このとき、バックアップ蓄電装置の電力は、第1負荷に供給されず、かつ、第2負荷に供給される。したがって、バックアップ蓄電装置が電力供給可能な対象が制限され、バックアップの際に必要なバックアップ蓄電装置の電力量が小さくなる。
【0007】
上記バックアップ電源では、前記入力電圧を測定する測定部を備え、前記取得部は、前記入力電圧を前記測定部から直接取得可能に構成されていてもよい。
例えば、取得部が他の機器を介して測定部から入力電圧を取得する場合、他の機器が取得部及び測定部と信号の授受をする必要がある。そのため、測定部が測定を行ってから取得部が測定部の測定結果を取得するまでに必要な時間が長くなる。取得部は、実際の時刻から当該時間経過前の入力電圧を取得しているため、取得部が取得した入力電圧と実際の時刻における入力電圧との誤差が大きくなる。
【0008】
ここで、取得部が測定部から入力電圧を直接取得可能に構成されているため、他の機器との信号の授受に要する時間が短縮される。これに伴い、測定部が入力電圧の測定を行ってから取得部が測定部の測定結果を取得するまでに必要な時間が短縮される。したがって、取得部が取得した入力電圧と実際の時刻における入力電圧との誤差を小さくすることができる。
【0009】
上記バックアップ電源では、前記バックアップ蓄電装置の蓄電容量は、前記メイン蓄電装置の蓄電容量より小さくてもよい。
蓄電装置の体格は、蓄電容量の増大に伴い、蓄電装置の体積エネルギー密度に応じて、増大する。そのため、バックアップ蓄電装置の蓄電容量がメイン電源の蓄電容量より小さいことにより、バックアップのために必要な蓄電容量を確保しつつ、バックアップ蓄電装置が必要以上に大型化することが抑制される。したがって、バックアップ電源の小型化を図ることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、バックアップの際にバックアップ蓄電装置に必要な電力量を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】バックアップ電源が適用される車両全体の概略回路図。
図2】制御部としての制御装置の処理の一例を示すフローチャート。
図3】第1判定値付近での第1スイッチの動作の一例を示すための図。
図4】第2判定値付近での第2スイッチの動作の一例を示すための図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<構成>
以下、車両に搭載されるバックアップ電源の一実施形態について説明する。
図1に示すように、車両10は、スタートスイッチSWと、メイン電源20と、メイン負荷30と、第1負荷40と、第2負荷50と、バックアップ電源60と、を備える。車両10は、自動運転車両である。自動運転車両には、自動運転レベル3~自動運転レベル5の車両に限られず、自動運転レベル1及び自動運転レベル2の車両も含まれる。即ち、自動運転車両には、搭乗者による運転操作を必要とせずに運転が行われる車両に限られず、搭乗者による運転操作を主体とし、搭乗者に対する運転支援が行われる車両も含む。自動運転車両は、搭乗者の運転操作による手動運転が行われる手動運転モードと、自動運転が行われる自動運転モードとを切替可能である。自動運転モードでは、自動運転支援機能が発揮され、ハンドル操作やブレーキ動作が自動で行われる。
【0013】
スタートスイッチSWは、車両10の起動状態と停止状態とを切り替えるためのスイッチである。スタートスイッチSWは、例えば、車両10の搭乗者により操作される。起動状態とは、車両10の走行が可能な状態である。停止状態とは、車両10の走行を行えない状態である。
【0014】
メイン電源20は、電力源21と、メイン電力変換器22と、メイン蓄電装置23と、メイン出力端子24と、を備える。
電力源21は、例えば、公称電圧が200[V]のバッテリである。電力源21は、例えば、車両10を走行させるモータの電力源となる。電力源21としては、例えば、充放電可能な蓄電装置を複数接続したものが挙げられる。本実施形態の車両10は、電力源21の電力によって駆動するモータによって走行可能な電気自動車又はハイブリッド自動車である。
【0015】
メイン電力変換器22は、電力源21の出力電圧を降圧させて出力するDC/DCコンバータである。
メイン蓄電装置23は、例えば、充放電可能な二次電池であり、リチウムイオン蓄電池、鉛蓄電池、電気二重層キャパシタなど、任意の形態を取ることができる。メイン蓄電装置23の公称電圧は、例えば、12[V]である。
【0016】
メイン出力端子24は、メイン電源20の電圧を出力する端子である。メイン出力端子24は、メイン電力変換器22の出力端子と、メイン蓄電装置23の正極に電気的に接続されている。したがって、メイン蓄電装置23は、メイン電力変換器22と並列に接続されている。なお、ここでいう「電気的に接続」とは、別部材を介して間接的に接続されるものも別部材を介さず直接接続されるものも含むものとする。
【0017】
メイン負荷30は、電力が供給されることによって動作する装置である。メイン負荷30は、車両10に係る種々の電装品を含み、自動運転の際に用いられる電装品を含む。自動運転の際に用いられる電装品とは、自動運転の際に使用されればよく、手動運転の際に使用されるものであっても、手動運転の際には使用されないものであってもよい。自動運転の際に用いられる電装品は、少なくとも、電動パワーステアリングシステムを含む。なお、当該電装品は、カメラやミリ波レーダー等を含んでもよい。メイン負荷30は、メイン出力端子24と接続されている。したがって、メイン負荷30の動作に必要な電力は、メイン電源20から供給可能に構成されている。メイン負荷30の動作電圧範囲は、例えば、9[V]~16[V]である。
【0018】
第1負荷40は、電力が供給されることによって動作する装置である。第1負荷40は、車両10に係る種々の電装品、特に、ヒーターやオーディオ等の搭乗者の快適性に係る電装品を含み、自動運転を行うために必要となる電装品を含まない。
【0019】
第2負荷50は、所定の動作電圧範囲の電圧を入力することにより、動作する装置である。第2負荷50は、メイン負荷30と同様に、自動運転を行うために必要となる電装品を含む。所定の動作電圧範囲とは、負荷の正常な動作を保証する入力電圧の範囲であり、例えば、9[V]~16[V]である。以下の説明では、第2負荷50の動作電圧範囲の最小値を、第2負荷50の最小動作電圧Vbと称することがある。本実施形態では、メイン負荷30と第2負荷50とで自動運転に関する機能冗長を図っている。詳細にいえば、同一機能を発揮する異なる装置をメイン負荷30と第2負荷50に分けて設けることで、自動運転の異種冗長化を図っている。
【0020】
バックアップ電源60は、メイン電源20と、第1負荷40及び第2負荷50と、の間に設けられている。そのため、メイン電源20は、バックアップ電源60を介して、第1負荷40及び第2負荷50に接続されている。バックアップ電源60は、フェールオペレーショナル電源である。バックアップ電源60は、第1ライン61と、第2ライン62と、接続点63と、第1スイッチ64と、第2スイッチ65と、測定部66と、バックアップ蓄電部70と、制御部としての制御装置80と、を備える。
【0021】
第1ライン61は、メイン出力端子24と第1負荷40とを接続している。これにより、第1ライン61は、メイン電源20からの入力電圧Vinを第1負荷40に印加する。以下の説明では、メイン電源20からの入力電圧Vinを単に「入力電圧Vin」と称することがある。本実施形態では、入力電圧Vinは、メイン出力端子24から出力される電圧と等しい。
【0022】
第2ライン62は、第1ライン61と第2負荷50とを接続している。したがって、第2ライン62は、第1ライン61に接続されており、入力電圧を第1負荷40とは異なる第2負荷50に印加するといえる。
【0023】
接続点63は、第1ライン61と第2ライン62とが接続される点である。
第1スイッチ64は、第1ライン61において、接続点63と第1負荷40との間に設けられている。
【0024】
第2スイッチ65は、第2ライン62において、接続点63と第2負荷50との間に設けられている。したがって、メイン負荷30、第1負荷40、及び第2負荷50は、メイン電源20に対して並列接続されている。なお、第1スイッチ64及び第2スイッチ65は、電磁的に操作可能であれば任意であるが、例えば、リレー回路、バイポーラトランジスタ、MOSFET:Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor、IGBT:Insulated Gate Bipolar Transistorなどが挙げられる。
【0025】
測定部66は、入力電圧Vinを測定可能に構成されている。
バックアップ蓄電部70は、第2負荷50に電圧を印加可能に構成されている。具体的には、バックアップ蓄電部70は、第2ライン62において、第2スイッチ65と第2負荷50との間に接続される。バックアップ蓄電部70は、バックアップ蓄電装置71と、バックアップ電力変換器72と、ダイオード73と、を備える。
【0026】
バックアップ蓄電装置71は、例えば、充放電可能な二次電池であり、電力を貯蔵可能に構成されている。バックアップ蓄電装置71は、リチウムイオン蓄電池、鉛蓄電池、電気二重層キャパシタなど、任意の形態を取ることができる。なお、本実施形態では、バックアップ蓄電装置71の蓄電容量は、メイン蓄電装置23の蓄電容量より小さい。バックアップ蓄電装置71は、自己放電や車両10のバックアップの際に電力を放出する。そのため、バックアップ蓄電装置71の貯蔵する電力が枯渇しないように、バックアップ蓄電装置71は充電可能に構成されている。バックアップ蓄電装置71の充電には任意の方法が適用可能であるが、例えば、外部電源と図示しない充電端子とを接続することによる有線方式の充電や、ワイヤレス電力伝送による充電などが適用可能である。
【0027】
バックアップ電力変換器72は、バックアップ蓄電装置71の電圧を変換して、第2ライン62に出力するDC/DCコンバータである。バックアップ電力変換器72は、車両10が起動状態の場合に動作するように構成されている。メイン電源20に地絡故障等の異常が生じていない場合、バックアップ電力変換器72の出力電圧は、メイン蓄電装置23の出力電圧より低い。そのため、車両10が起動状態の場合でも、メイン電源20の地絡故障等の異常によりメイン電源20の出力電圧が低下しない限り、バックアップ蓄電部70の電力は、第2負荷50に供給されない。バックアップ電力変換器72の出力電圧は、バックアップのための十分な電力を貯蔵している場合に第2負荷50の最小動作電圧Vb以上であればよい。
【0028】
ダイオード73は、バックアップ電力変換器72の出力側と、第2ライン62との間に設けられている。ダイオード73は、バックアップ電力変換器72の出力電圧を第2ライン62に印加可能にするとともに、入力電圧Vinが第2ライン62を介してバックアップ蓄電装置71及びバックアップ電力変換器72に印加されることを抑制する。
【0029】
制御装置80は、プロセッサ81と、記憶部82と、を備える。プロセッサ81としては、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、又はDSP(Digital Signal Processor)が用いられる。記憶部82は、RAM(Random access memory)及びROM(Read Only Memory)を含む。記憶部82は、処理をプロセッサ81に実行させるように構成されたプログラムコードまたは指令を格納している。記憶部82、即ち、コンピュータ可読媒体は、汎用または専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。制御装置80は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェア回路によって構成されていてもよい。処理回路である制御装置80は、コンピュータプログラムに従って動作する1つ以上のプロセッサ81、ASICやFPGA等の1つ以上のハードウェア回路、或いは、それらの組み合わせを含み得る。
【0030】
制御装置80は、記憶部82に、過電圧判定値V0と、第1判定値V11と、第2判定値V21と、を記憶している。
制御装置80は、入力電圧Vinを測定部66から直接取得可能に構成されている。なお、「直接取得可能に構成されている」とは、制御装置80とは異なる機器、例えば、CAN:Controller Area NetworkやLIN:Local Interconnect Networkなどの車両用通信プロトコルに従った通信を行うための機器などを介さずに、制御装置80が測定部66から入力電圧Vinを取得可能に構成されていることをいう。
【0031】
制御装置80が入力電圧Vinを取得するまでの間には、所定の遅延時間Δtが存在する。遅延時間Δtは、測定部66と制御装置80との信号の授受に必要な時間が含まれる。したがって、制御装置80の取得した入力電圧Vinは、制御装置80が入力電圧Vinを取得した時刻から遅延時間Δtだけ前の時刻に測定部66が測定した入力電圧Vinとなる。
【0032】
制御装置80は、制御装置80の取得した入力電圧Vinと、過電圧判定値V0、第1判定値V11、及び第2判定値V21との大小を判定可能に構成されている。制御装置80は、第1スイッチ64及び第2スイッチ65を制御可能に構成されている。
【0033】
<作用>
以下、本実施形態における作用について、制御装置80の処理とあわせて説明する。制御装置80は、以下の処理を所定の制御周期で繰り返し行う。なお、処理の開始時点において、車両10は、起動状態であり、通常走行を行っているものとする。なお、通常走行とは、車両10の走行の継続に支障のある異常、例えば、メイン電源20の出力電圧の異常など、が生じていない場合における走行である。
【0034】
図2に示すように、まず、ステップS10において、制御装置80は、測定部66から定期的に入力電圧Vinを取得する。したがって、制御装置80は、入力電圧Vinを取得可能に構成された取得部を備えているといえる。このとき、制御装置80の取得した入力電圧Vinは、上述したように、制御装置80が入力電圧Vinを取得した時刻から遅延時間Δtだけ前の時刻に測定部66が測定した入力電圧Vinとなる。
【0035】
次に、ステップS11において、制御装置80は、制御装置80の取得した入力電圧Vinが過電圧判定値V0より低いか否かを判定する。電力源21の過電圧やメイン電力変換器22の動作不良等の異常により、バックアップ電源60に入力された入力電圧Vinが、メイン負荷30及び第2負荷50の動作電圧範囲を上回る可能性がある。過電圧判定値V0は、このような異常の有無を判定するために用いられる値である。
【0036】
ステップS11の判定結果が否定の場合、制御装置80は、ステップS12に進み、第1スイッチ64及び第2スイッチ65を開放する。次に、ステップS13において、車両10は、退避走行を開始する。なお、退避走行とは、車両10の走行中に異常が生じた場合に車両10を安全な場所、例えば、非常駐車帯や道路脇などに移動させるための走行である。
【0037】
一方、ステップS11の判定結果が肯定の場合、制御装置80は、ステップS20に進み、制御装置80の取得した入力電圧Vinが第2判定値V21以下か否かを判定する。メイン電源20の失陥や地絡故障等の異常により、バックアップ電源60に入力された入力電圧Vinが、メイン負荷30及び第2負荷50の動作電圧範囲を下回る可能性がある。第2判定値V21は、このような異常の有無を判定するために用いられる値である。
【0038】
ステップS20の判定結果が肯定の場合、制御装置80は、ステップS12に進み、後述する手法により、バックアップ電源60に入力された入力電圧Vinが第2目標値V22以下となる前に第2スイッチ65を開放する。第2目標値V22は、第2判定値V21より低い値であり、第2負荷50の最小動作電圧Vbより大きければよい。したがって、制御装置80は、取得部の取得した入力電圧Vinが第2判定値V21以下になった場合に第2スイッチ65を開放する第2開放部を備えるといえる。第2判定値V21は、第2目標値V22より大きい。そのため、第2判定値V21は、第2負荷50の最小動作電圧Vbより大きいといえる。次に、ステップS13において、車両10は、退避走行を開始する。
【0039】
一方、ステップS20の判定結果が否定の場合、制御装置80は、ステップS30に進み、制御装置80の取得した入力電圧Vinが第1判定値V11以下か否かを判定する。所定の操作、例えば、ブレーキ操作やステアリング操作、の開始時には、一時的に開始前に比べて大きな電流、例えば、突入電流、がメイン電源20からメイン負荷30に流れることがある。以下の説明では、所定の操作の開始前に比べて大きな電流を、「開始電流」と称することがある。メイン蓄電装置23の劣化によってメイン蓄電装置23の内部抵抗が大きくなると、メイン蓄電装置23の出力電圧が低下する。このとき、上述した異常が発生していない場合であっても、第2負荷50を安定して動作させるための入力電圧Vinが不足する可能性がある。第1判定値V11は、このような入力電圧Vinの不足を判定するために用いられる値である。第1判定値V11は、第2判定値V21よりも大きく、過電圧判定値V0より小さい。したがって、第2判定値V21は、第1判定値V11未満である。
【0040】
ステップS30の判定結果が肯定の場合、制御装置80は、ステップS31に進み、後述する手段により、バックアップ電源60に入力された入力電圧Vinが第1目標値V12以下となる前に第1スイッチ64を開放する。第1目標値V12は、第2判定値V21以上であって、かつ、第1判定値V11未満の値であればよく、本実施形態では、第2判定値V21と等しい。したがって、制御装置80は、取得部の取得した入力電圧Vinが第1判定値V11以下になった場合に第1スイッチ64を開放する第1開放部を備えるといえる。次に、ステップS32において、車両10は、通常走行を継続する。
【0041】
一方、ステップS30の判定結果が否定の場合、制御装置80は、ステップS40に進み、第1スイッチ64が閉じているか否かを判定する。制御装置80の判定結果が肯定の場合、制御装置80は、ステップS32に進む。ステップS32において、車両10は、通常走行を継続する。一方、制御装置80の判定結果が否定の場合、制御装置80は、ステップS41に進み、第1スイッチ64を閉じる。次に、ステップS32において、車両10は、通常走行を継続する。
【0042】
次に、制御装置80の取得した入力電圧Vinが第1判定値V11以下となった場合における第1スイッチ64の動作の詳細について説明する。所定の操作、例えば、ブレーキ操作やステアリング操作など、によってバックアップ電源60に入力される入力電圧Vinが低下する場合について、一例として説明する。なお、図3及び図4において、バックアップ電源60に入力された入力電圧Vinは、Vin1として示され、制御装置80の取得した入力電圧Vinは、Vin2として示される。
【0043】
図3に示すように、バックアップ電源60に入力される入力電圧Vinの低下が、第1時刻t1に開始する。なお、説明の簡略化のため、バックアップ電源60に入力された入力電圧Vinは第1時刻t1と同時に低下するものとするが、バックアップ電源60に入力された入力電圧Vinの低下は、第1時刻t1から所定の時間の経過後に生じる場合でも同様である。また、第1時刻t1における入力電圧Vinの低下が発生する前の入力電圧Vinを「通常電圧V1」と称することがある。なお、通常電圧V1は、第1判定値V11よりも高い。
【0044】
第2時刻t2において、バックアップ電源60に入力された入力電圧Vinは、第1判定値V11以下となる。ここで、上述したように、測定部66が入力電圧Vinを測定してから制御装置80が入力電圧Vinを取得するまでの間には、所定の遅延時間Δtが存在する。そのため、制御装置80の取得した入力電圧Vinが第1判定値V11と等しくなる第3時刻t3は、第2時刻t2から遅延時間Δt経過時点である。これにより、制御装置80の取得した入力電圧Vinとバックアップ電源60に入力された入力電圧Vinとの間には遅延時間Δtに起因する誤差ε1が生じる。誤差ε1の最大値は、入力電圧Vinの低下速度におおよそ比例する。以下の説明では、第1時刻t1から第3時刻t3までのバックアップ電源60に入力された入力電圧Vinの低下速度の最大値を、「第1低下速度dV1/dt」と称することがある。
【0045】
制御装置80の取得した入力電圧Vinが第1判定値V11以下となったとき、すなわち、第3時刻t3において、ステップS30における結果が肯定となる。したがって、制御装置80は、ステップS31に進み、第1スイッチ64を開放する。第1目標値V12は、第1判定値V11より少なくとも誤差ε1の最大値だけ低い値に設定されている。そのため、第3時刻t3において、バックアップ電源60に入力された入力電圧Vinが第1目標値V12を下回る前に、第1スイッチ64が開放される。
【0046】
第1スイッチ64が開放されることにより、メイン電源20から第1負荷40への電力の供給が止まる。上述したように、第1負荷40は搭乗者の快適性に係る電装品を含み、自動運転を行うために必要となる電装品を含まないため、第1負荷40への電力の供給の停止が車両10の通常走行への影響は小さい。
【0047】
第1スイッチ64の開放とともに、メイン蓄電装置23から第1負荷40への電流の流入が停止するため、メイン蓄電装置23からの電流の総量が減少する。そのため、内部抵抗によるメイン蓄電装置23の出力電圧の低下が抑制される。また、上述したように、開始電流は一時的なものであるため、開始電流の流入が終われば、メイン蓄電装置23の出力電圧は、通常電圧V1に向かって回復する。このとき、バックアップ電源60に入力された入力電圧Vin及び制御装置80の取得した入力電圧Vinもまた、通常電圧V1に向かって回復する。
【0048】
その結果、第4時刻t4において、制御装置80の取得した入力電圧Vinが第1判定値V11より大きくなる。このとき、制御装置80は、上述の処理に従って、ステップS41に進み、第1スイッチ64を閉じる。このとき、バックアップ電源60に入力された入力電圧Vinは、第1判定値V11よりも大きい値まで回復している。
【0049】
次に、制御装置80の取得した入力電圧Vinが第2判定値V21以下になった場合における第2スイッチ65の動作の詳細について説明する。以下では、ステップS31の処理の後、すなわち、バックアップ電源60に入力された入力電圧Vinが第1目標値V12以下となる前に第1スイッチ64を開放した後も、バックアップ電源60に入力された入力電圧Vinの低下が継続する場合について説明する。したがって、以下の説明では、すでに第1スイッチ64が開放されているものとし、第1スイッチ64の動作についての説明を省略する。また、以下の説明では、バックアップ蓄電装置71がバックアップに必要な電力量を貯蔵しており、バックアップ蓄電部70の出力電圧は、第2目標値V22と等しいものとする。
【0050】
図4に示すように、バックアップ電源60に入力された入力電圧Vinの低下が継続した結果、第5時刻t5において、バックアップ電源60に入力された入力電圧Vinは、第2判定値V21以下となる。上述した所定の遅延時間Δtが存在するため、制御装置80の取得した入力電圧Vinが第2判定値V21と等しくなる第6時刻t6は、第5時刻t5から遅延時間Δt経過時点である。このとき、制御装置80の取得した入力電圧Vinとバックアップ電源60に入力された入力電圧Vinとの間には誤差ε2が生じる。誤差ε2の最大値は、遅延時間Δt及び入力電圧Vinの低下速度にそれぞれ比例する。以下の説明では、第5時刻t5から第6時刻t6までのバックアップ電源60に入力された入力電圧Vinの低下速度の最大値を、「第2低下速度dV2/dt」と称することがある。
【0051】
制御装置80の取得した入力電圧Vinが第2判定値V21以下となったとき、すなわち、第6時刻t6において、ステップS20における結果が肯定となる。したがって、制御装置80は、ステップS12に進み、第2スイッチ65を開放する。なお、上述したように、第1スイッチ64はすでに開放されているため、制御装置80は、第1スイッチ64を再度開放する必要はない。ここで、第2目標値V22は、第2判定値V21より少なくとも誤差ε2の最大値だけ低い値に設定されている。そのため、第6時刻t6において、バックアップ電源60に入力された入力電圧Vinが第2目標値V22を下回る前に、第2スイッチ65が開放される。上述したように、第2目標値V22は最小動作電圧Vbより大きいため、第2ライン62は、入力電圧Vinが最小動作電圧Vbを下回る前に開放される。
【0052】
第6時刻以降では、第2スイッチ65が開放されたことにより、メイン電源20から第2負荷50への電力供給が断たれる。これに伴い、ダイオード73に対してバックアップ電力変換器72の出力側から順バイアス電圧が印加される。したがって、バックアップ蓄電部70から第2負荷50への電力の供給及び電圧の印加が開始される。上述したように、バックアップ蓄電部70は第2スイッチ65と第2負荷50との間に接続されているため、第2スイッチ65の開放によってバックアップ蓄電部70とメイン負荷30及び第1負荷40との接続が切り離される。そのため、バックアップ蓄電部70の出力電圧は、メイン負荷30及び第1負荷40には印加されない。
【0053】
<効果>
以下、本実施形態の効果について説明する。
(1)制御装置80の取得した入力電圧Vinが第1判定値V11以下となったとき、第1スイッチ64が開放され、第1判定値V11より低い第2判定値V21以下となったときに第2スイッチ65が開放される。これにより、制御装置80の取得した入力電圧Vinが第2判定値V21以下となる場合、第1スイッチ64が開放された後に、第2スイッチ65が開放される。このとき、バックアップ蓄電装置71の電力は、第1負荷40に供給されず、かつ、第2負荷50に供給される。したがって、バックアップ蓄電部70は、第2負荷50のみに電力を供給可能となるため、バックアップの際にバックアップ蓄電装置71に必要な電力量を小さくすることができる。
【0054】
(2)例えば、制御装置80が他の機器を介して測定部66から入力電圧Vinを取得する場合、他の機器が制御装置80及び測定部66と信号の授受をする必要があるため、遅延時間Δtが長くなる。そのため、制御装置80の取得した入力電圧Vinとバックアップ電源60に入力された入力電圧Vinとの誤差ε1,ε2が大きくなる。
【0055】
本実施形態では、制御装置80が測定部66から入力電圧Vinを直接取得可能に構成されている。そのため、制御装置80と他の機器との信号の授受に要する時間が短縮され、これに伴い、遅延時間Δtが短縮される。したがって、制御装置80の取得した入力電圧Vinとバックアップ電源60に入力された入力電圧Vinとの間の誤差ε1,ε2を減らすことができる。
【0056】
また、制御装置80は、測定部66から取得した入力電圧Vinをもとに第1スイッチ64及び第2スイッチ65を開閉するため、遅延時間Δtを短縮することにより、第1スイッチ64及び第2スイッチ65をバックアップ電源60に入力された入力電圧Vinに対してより正確に動作可能とすることができる。
【0057】
(3)メイン蓄電装置23及びバックアップ蓄電装置71の体格は、蓄電容量の増大に伴い、メイン蓄電装置23及びバックアップ蓄電装置71のそれぞれの体積エネルギー密度に応じて増大する。しかし、本実施形態では、バックアップ蓄電装置71の蓄電容量は、メイン蓄電装置23の蓄電容量よりも小さい。これにより、車両10の退避走行に必要な電力量を確保しつつ、バックアップ蓄電装置71の体格を小さくすることができる。
【0058】
(4)第1低下速度dV1/dt及び第2低下速度dV2/dtは、予め試験等により導出されたものを用いている。これにより、例えば、制御装置80が第1低下速度dV1/dt及び第2低下速度dV2/dtを入力電圧Vinの取得結果から逐次導出する場合に比べて、制御装置80の計算処理を軽減し、遅延時間Δtを短くすることができる。
【0059】
<変形例>
実施形態は、以下のように変更して実施することができる。実施形態及び以下の変形例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0060】
○本実施形態における制御装置80の処理は、あくまで一例であり、これに限られない。例えば、ステップS11の処理とステップS12の処理を単一の処理としてもよいし、処理の順序を入れ替えてもよい。この場合、ステップS11はなくてもよい。
【0061】
○制御装置80の各処理は、単一のハードウェアによって実現される必要はない。例えば、複数のハードウェアの並列処理により実現されていてもよい。
○制御装置80は、測定部66から直接取得可能に構成されていなくてもよい。例えば、制御装置80は、CAN:Controller Area NetworkやLIN:Local Interconnect Networkなどの車両用通信プロトコルに対応する機器を介して、測定部66から入力電圧Vinを取得しても良い。また、制御装置80は、無線通信によって入力電圧Vinを測定部66から取得可能に構成されていてもよい。これらの場合、制御装置80が入力電圧Vinを測定部66から取得可能に構成されていれば、測定部66は、バックアップ電源60に設けられていなくてもよい。
【0062】
○第1低下速度dV1/dt及び第2低下速度dV2/dtは、予め試験等により導出したものに限られない。例えば、第1低下速度dV1/dt及び第2低下速度dV2/dtは、測定部66の測定結果から導出したものを用いてもよいし、ブレーキ操作やステアリング操作など、操作の種類と入力電圧Vinから推定したものを用いてもよい。
【0063】
○第1目標値V12は、実際に制御装置80等で設定されている必要はなく、遅延時間Δt及び第1低下速度dV1/dtなどから定められる仮想的な値であってもよい。第2目標値V22についても同様である。
【0064】
○バックアップ蓄電装置71の蓄電容量は、メイン蓄電装置23の蓄電容量以上であってもよい。バックアップ蓄電装置71の蓄電容量は、バックアップ蓄電部70が車両10の退避走行に必要な電力を供給可能であれば任意である。
【0065】
○バックアップ蓄電部70の構成は、本実施形態のものに限らない。例えば、バックアップ蓄電部70は、バックアップ電力変換器72を介して電圧を出力しなくてもよい。この場合、バックアップ蓄電装置71の電圧がバックアップ蓄電部70の出力電圧となる。したがって、適切な電圧を出力するバックアップ蓄電装置71を選択すればよい。
【0066】
○バックアップ蓄電部70は、1つに限らず、複数設けられていても良い。
○第1スイッチ64及び第2スイッチ65は、それぞれ、1つに限らず、複数設けられていてもよい。
【0067】
○バックアップ電源60が搭載される車両10は、自動運転車両に限らない。例えば、手動によってのみ運転が行われる車両に搭載されてもよい。
【符号の説明】
【0068】
10…車両、23…メイン蓄電装置、40…第1負荷、50…第2負荷、60…バックアップ電源、61…第1ライン、62…第2ライン、63…接続点、64…第1スイッチ、65…第2スイッチ、66…測定部、70…バックアップ蓄電部、71…バックアップ蓄電装置、80…制御装置、Vb…最小動作電圧、Vin…入力電圧、V11…第1判定値、V21…第2判定値。
図1
図2
図3
図4