(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】積層フィルム
(51)【国際特許分類】
B32B 5/16 20060101AFI20240312BHJP
C09D 183/04 20060101ALI20240312BHJP
C09D 7/62 20180101ALI20240312BHJP
【FI】
B32B5/16
C09D183/04
C09D7/62
(21)【出願番号】P 2020516492
(86)(22)【出願日】2020-02-14
(86)【国際出願番号】 JP2020005779
(87)【国際公開番号】W WO2020179412
(87)【国際公開日】2020-09-10
【審査請求日】2023-01-20
(31)【優先権主張番号】P 2019041705
(32)【優先日】2019-03-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(72)【発明者】
【氏名】龍田 真佐子
(72)【発明者】
【氏名】寺本 喜彦
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 勝也
(72)【発明者】
【氏名】林 美唯妃
【審査官】松岡 美和
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-013303(JP,A)
【文献】特開2017-194528(JP,A)
【文献】国際公開第2017/159654(WO,A1)
【文献】特開2004-204131(JP,A)
【文献】特開2000-290535(JP,A)
【文献】特開2009-161579(JP,A)
【文献】国際公開第2017/159854(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00-43/00
C09D7/61-7/62
B05D7/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルム上に直接又は他の層を介してコーティング層が積層された積層フィルムであって、前記コーティング層が積層フィルムの少なくとも一方の面の最外層であり、
前記コーティング層中にシロキサン系無機高分子を含有し、前記コーティング層が、一次粒子平均径10nm以上300nm以下の疎水性酸化物粒子を固形分の含有量として30質量%以上100質量%以下含有
し、前記疎水性酸化物粒子が、表面にトリメチルシリル基を導入した疎水性シリカであり、前記疎水性酸化物粒子のX線光電子分光装置(ESCA)による10nm深さ領域の炭素原子の比率が12at%以上である積層フィルム。
【請求項2】
コーティング層中の疎水性酸化物粒子の固形分の含有量が、50~100質量%である請求項
1に記載の積層フィルム。
【請求項3】
コーティング層の表面において測定したジヨードメタンに対する接触角が、60度以上である請求項1
または2に記載の積層フィルム。
【請求項4】
ヘイズが20%以下である請求項1~
3のいずれかに記載の積層フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層フィルムに関する。更に詳しくは、撥水・撥油性を持つコーティング積層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
表面において撥水・撥油性を示す材料は、防汚性が必要とされる分野において工業的に重要である。防汚性を達成するためには、汚染物質と材料表面の相互作用を低下させる必要があり、通常、材料表面の撥水化や撥油化により達成されることが一般的である。
【0003】
従来、撥水性を発現するための撥水処理方法としては、水よりも表面エネルギーが低いフッ素系樹脂やシリコン系樹脂などをフィルム表面に付与する方法や、これらに加えて微細な凹凸をフィルム表面に形成する方法などが知られている。
【0004】
特許文献1には、フィルムの最表面にフッ素系化合物層をウェットコーティングして、撥水性や防汚性を持たせる方法が記載されている。しかしながら、このようなコーティング方法は基材との密着性が乏しく、耐久性が低いという問題があった。こうした問題を解決するために、優れた撥水性および防汚性を示し、表面エネルギーが小さいシリカ層を用いることが検討されている。しかしながら、撥水性と防汚性があるシリカ層を支持体にコーティングしても、シリカ層の表面エネルギーが小さいことによって、支持体との間の密着力が乏しいという問題があった。そこで、特許文献2には、支持体と表面シリカ層の密着性を改善するため、表面エネルギーの大きなシリカ層を、表面シリカ層と支持体との間に設けることにより、支持体と表面シリカ層との密着性を改良する方法が記載されている。しかしながら、この密着性は十分ではなく、表面の撥水性も安定しないという問題点があった。また、特許文献3には、撥水性を発現するため、表面に微細凹凸を形成したフィルムが記載されているが、製造方法が複雑であるという問題があった。さらに、撥水性かつ撥油性表面を形成することは、防汚性などの応用から注目されてきたが、そのような性質を両立する表面の形成は容易ではなかった。特許文献4には、撥水かつ撥油性を示す表面を持つフィルムが記載されている。しかしながら、平滑性や透明性などのフィルム材料としての特性が不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2000-284102号公報
【文献】特開2002-113805号公報
【文献】特開2018-103534号公報
【文献】特開2007-138027号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、かかる従来技術の課題を背景になされたものである。すなわち、本発明の目的は、優れた撥水・撥油性を示すコーティング層表面をもつ積層フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意検討した結果、以下に示す手段により、上記課題を解決できることを見出し、本発明に到達した。すなわち、本発明は、以下の構成からなる。
1. 基材フィルム上に直接又は他の層を介してコーティング層が積層された積層フィルムであって、前記コーティング層が積層フィルムの少なくとも一方の面の最外層であり、前記コーティング層が、一次粒子平均径10nm以上300nm以下の疎水性酸化物粒子を固形分の含有量として30質量%以上100質量%以下含有する積層フィルム。
2. 疎水性酸化物粒子が、疎水性シリカである上記第1に記載の積層フィルム。
3. コーティング層中の疎水性酸化物粒子の固形分の含有量が、50~100質量%である上記第1または第2に記載の積層フィルム。
4. コーティング層中にシロキサン系無機高分子を含有する上記第1~第3のいずれかに記載の積層フィルム。
5. コーティング層の表面において測定したジヨードメタンに対する接触角が、60度以上である上記第1~第4のいずれかに記載の積層フィルム。
6. ヘイズが20%以下である請求項1~5のいずれかに記載の積層フィルム。
【発明の効果】
【0008】
本発明の積層フィルムは、少なくとも基材層とコーティング層を備え、前記コーティング層中に疎水性酸化物粒子を含有することにより、積層フィルムのコーティング層表面における撥水・撥油性が良好なものである。さらに前記疎水性酸化物粒子の大きさが微小であることにより、優れた透明性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】(A),(B),(C) 本発明の積層フィルムの構成例を示した断面模式図である。
【
図2】従来の積層フィルムの構成例を示した断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳述する。本発明は、優れた防汚性を示す有用な撥水・撥油性を持つ積層フィルムを提供するものである。すなわち、基材フィルム上に直接または他の層を介してコーティング層が積層された積層フィルムであって、前記コーティング層が積層フィルムの少なくとも一方の面の最外層であり、前記コーティング層が、一次粒子平均径10nm以上300nm以下の疎水性酸化物粒子を固形分の含有量として30質量%以上100質量%以下含有することによって、フィルム最表面において優れた撥水性および撥油性を示し、さらに高い透明性を有する積層フィルムを提供することができる。本発明における疎水性酸化物粒子は、そのもの自体にコーティング造膜性があるため、塗布液にバインダー成分を実質的含有させずに、固形分として疎水性酸化物粒子だけを含ませて、コーティングすることもでき、コーティング層が疎水性酸化物粒子のみで形成されている態様を含んでいる。
【0011】
図1(A)~(C)は、本発明の積層フィルムの構造を示した断面模式図である。符号1は、基材フィルム、符号2は、疎水性酸化物粒子とバインダー成分からなるコーティング層、符号3は、疎水性酸化物粒子、符号4は、疎水性酸化物粒子を含まない任意の樹脂層を各々示している。符号4の任意の樹脂層を構成するバインダー成分は、符号2の疎水性酸化物粒子とバインダー成分からなるコーティング層中のバインダー成分と同一であってもよいし、異なっていてもよい。
図1の(A)~(C)は、その最表面が、実質的に疎水性酸化物粒子で覆われている。実際には、コーティング層最表面の面積の100%すべてを必ず覆うとまでは言えないが、コーティング層最表面の相当な割合が疎水性酸化物粒子で覆われている。一方、
図2は典型的な従来品の断面模式図を示したものであり、コーティング層中に疎水性酸化物粒子が含有されているが、最表面は疎水性酸化物粒子で覆われていない部分が存在する。
【0012】
(基材フィルム)
本発明における積層フィルムは、基材フィルムを有する。この基材フィルムの材質は特に限定されないが、可撓性など取り扱い性の観点から樹脂フィルムであることが好ましい。樹脂フィルムを構成する樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンやジエン系ポリマーなどのポリオレフィン類、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル類、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン6、10、ナイロン12などのポリアミド類、ポリメチルメタクリレート、ポリメタクリル酸エステル類、ポリメチルアクリレート、ポリアクリル酸エステル類などのアクリレート系樹脂、ポリアクリル酸系樹脂、ポリメタクリル酸系樹脂、ポリウレタン系樹脂、酢酸セルロース、エチルセルロースなどのセルロース系樹脂、ポリアリレート、アラミド、ポリカーボネート、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンオキシド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリベンズイミダゾール、ポリベンズオキサゾール、ポリベンズチアゾールなどの芳香族系炭化水素系ポリマー、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオリドなどのフッ素系樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ノボラック樹脂、ベンゾオキサジン樹脂などが挙げられる。また、前記のような樹脂の構成ユニットの一部を他の構成ユニットに置き換えた共重合物であってもよい。これらのうち、透明性と寸法安定性の観点から、ポリエステル樹脂やアクリレート樹脂からなるフィルムであることが好ましい。ポリエステル樹脂としては、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどが挙げられる。これらのうち、物性とコストのバランスという観点から、ポリエチレンテレフタレートを用いることが好ましい。
【0013】
基材フィルムは、単層であっても良く、二種以上の層が積層されていても良い。二種以上の層が積層される場合には、同種または異種のフィルムを積層することができる。また、基材フィルムに樹脂組成物を積層させてもよい。さらに、本発明の効果を奏する範囲内であれば、必要に応じて基材フィルム中に各種の添加剤を含有させることができる。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、耐光剤、ゲル化防止剤、有機湿潤剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、界面活性剤などが挙げられる。基材フィルムが二種以上の層から構成される場合には、各層の機能に応じて添加物を含有させることもできる。基材フィルムの滑り性や巻き性などのハンドリング性を向上させるために、基材フィルム中に不活性粒子を含有させても良い。
【0014】
本発明において、基材フィルムの厚さは特に限定されないが、5μm以上300μm以下であることが好ましい。10μm以上280μm以下であることがより好ましく、12μm以上260μm以下であることがさらに好ましい。12μm以上であるとコーティング層の積層時に塗工しやすく、260μm以下であるとコスト的に有利である。
【0015】
基材フィルムの表面は未処理の状態で用いても良いが、コーティング層との密着性を向上させるため、表面処理を施したものであっても良い。具体的には、アンカーコーティング層(易接着層)を設けたり、プラズマ処理、コロナ処理、火炎処理などの表面処理を行ったものを用いることができる。
【0016】
(疎水性酸化物粒子)
本発明における積層フィルムのコーティング層は、疎水性酸化物粒子を含有する。この疎水性酸化物粒子は、疎水性を有するものであれば特に限定されず、例えば、親水性酸化物粒子を表面処理によって疎水化したものであっても良い。すなわち、親水性酸化物粒子に対してシランカップリング剤などの任意の試薬で表面処理を行い、その表面を疎水化したものを用いることができる。
【0017】
酸化物の種類は特に限定されない。例えば、シリカ(二酸化ケイ素)、アルミナ、チタニアなどの少なくとも1種類の酸化物を用いることができる。これらは、任意の化合物を経由して合成したものであっても良く、公知または市販のものを使用しても良い。これらの酸化物のうち、とくにシリカの粒子を好適に用いることができる。
【0018】
シリカ粒子の疎水化方法は、シリコンオイル、シランカップリング剤およびシラザンなど公知の各種試薬による表面処理が好適に用いられる。特に、優れた撥水・撥油性を示すという観点から、表面に1H,1H,2H,2H-パーフルオロオクチル基、1H,1H,2H,2H-パーフルオロデシル基、1H,1H,2H,2H-パーフルオロヘキシル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基などに代表されるフッ素系官能基、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、オクチル基などに代表されるアルキル基や、アルケニル基、アルキニル基、ビニル基、シクロヘキシル基、スチリル基、フェニル基、トリメチルシリル基などを導入することがより好ましい。この中でも、より優れた撥水・撥油性を示すことから、トリメチルシリル基を導入した疎水性シリカがさらに好ましい。
【0019】
本発明における疎水性酸化物粒子の大きさは、一次粒子平均径が10nm以上300nm以下であり、好ましくは10nm以上200nm以下であり、より好ましくは10nm以上100nm以下である。一次粒子平均径を上記の範囲とすることにより、基材フィルムにコーティング層を積層した場合であっても、積層フィルムとしての透明性を損なうことがない。なお、本発明において、一次粒子平均径の大きさは、走査型電子顕微鏡や透過型電子顕微鏡などを用いた顕微鏡による形態観察の結果、決定することができる。具体的には、これらの顕微鏡観察において任意に選んだ20個分の粒子の直径の平均を一次粒子平均径とする。不定形の粒子の一次粒子平均径は円相当径として計算することができる。円相当径は、観察された粒子の面積をπで除し、平方根を算出し2倍した値である。
【0020】
(酸化物粒子の合成方法)
本発明において、「疎水性酸化物粒子」と記載しているのは、通常は「疎水性金属酸化物粒子」と記載することもできると思われる。しかし、例えば、下記のシリカについては、「金属酸化物」に含まれるかどうかについて解釈が種々あるため、単に「酸化物」とだけ記載している。本発明における酸化物粒子は、湿式法、乾式法など公知の方法で合成されたものを用いることができる。これらのうち、ゾル‐ゲル法は、シリカ、チタニア、ジルコニア、アルミナなどの酸化物粒子の製造方法の一つとして知られる。この製造方法では、酸性触媒または塩基性触媒の存在下、水を含有する有機溶媒中で、金属アルコキシドの加水分解反応および重縮合によって酸化物粒子が得られる。ゾル‐ゲル法は、球状かつ粒径が比較的揃った微細な酸化物粒子が得られることから好ましい。例えば、ゾル‐ゲル法によるシリカ粒子の合成は、非特許文献1や非特許文献2に記載されている精密に制御された方法で合成することができる。これら文献の方法では金属アルコキシドを水を含有する有機溶剤に滴下する長時間を要するプロセスが必要なく、金属アルコキシドと水を一度に混合するため、より簡易なプロセス、実験装置で酸化物粒子を合成することができる。
【0021】
(非特許文献1)
Controlled Growth of Monodisperse Silica
Spheres in the Micron Size Range.(1968)Journal of Colloid and Interface Science,26,62-69.
【0022】
(非特許文献2)
Influence of the initial chemical conditions on the rational design of silica particles.(2018) Journal of Sol-Gel Science and Technology,88,430-441.
【0023】
酸化物粒子の合成に使用する金属アルコキシドは、ゾル‐ゲル法の反応による酸化物粒子の製造に用いられる化合物であれば、特に制限されず、製造する酸化物粒子の種類に応じて、適宜選択して用いることができる。具体的には、ケイ素のアルコキシドとして、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシランなどを挙げることができる。上記のうち、テトラメトキシシランおよびテトラエトキシシランは、工業的に容易に入手でき、かつ取り扱い性が容易であることから好ましい。
【0024】
(触媒)
酸化物粒子の合成に使用する触媒は、ゾル‐ゲル法に使用される公知の触媒を使用することができ、酸性触媒、塩基性触媒のいずれを用いても良い。これらのうち、粒子径の揃った球状の粒子を得ることが容易であるという観点から、塩基性触媒を用いることが好ましい。ただし、ゾル‐ゲル法においては、まず酸性触媒存在下で予備的に加水分解を行った後に粒子成長を実施することもあるが、本発明においては、この予備的な加水分解時に酸性触媒を用いる可能性を排除するものではなく、粒子成長時に塩基性触媒を用いる方法であれば良い。本発明において用いられる塩基性触媒としては、例えば、アミン化合物、水酸化アルカリ金属などを挙げることができる。特に、目的とする酸化物粒子を構成する金属元素以外の金属を含有する不純物量が少なく、高純度の酸化物粒子が得られるという観点から、アミン化合物を用いることが好ましい。このようなアミン化合物としては、例えば、アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミンなどを挙げることができる。これらのうち、揮発性が高く、合成後に除去しやすいという観点から、アンモニアを使用することがより好ましい。なお、上記の塩基性触媒は、単独で使用しても良く、二種類以上を使用しても良い。上記の塩基性触媒は、工業的に入手可能なものを市販されている形態のまま使用しても良く、例えばアンモニア水などのように、水や有機溶媒で希釈されているものを用いても良い。特に、反応の進行速度を制御しやすいことから、塩基性触媒を水に希釈して、必要に応じて濃度調整した水溶液を用いることがより好ましい。塩基性触媒として水溶液を使用する場合の濃度は、工業的に入手が容易であること、濃度調整が容易であるなどの観点から、1~30質量%の範囲とすることが好ましい。塩基性触媒の使用割合は、金属アルコキシドの加水分解および重縮合反応の反応速度などを考慮して適宜選択することができる。
【0025】
(溶媒)
本発明において、上記金属アルコキシドの加水分解および重縮合反応に使用される溶媒としては、ゾル‐ゲル法で用いられる任意の極性溶媒を用いることができ、水または水を任意の割合で溶解することができる有機溶媒であれば良い。水以外の有機溶媒を二種類以上混合して使用しても良く、この場合には混合後の有機溶媒が上記の要件を満たせば良い。水以外の極性溶媒としては、具体的には、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノールなどのアルコール類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドンなどのアミド類などを挙げることができる。アルコールは、ゾル‐ゲル法の反応において副生するものであるので、上記の有機溶媒のうち、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノールなどのアルコール類を使用することが、反応後の分散液中への不純物が入る可能性を抑制できる観点から、より好ましい。
【0026】
ゾル‐ゲル法では水の添加が必要であるが、水は前述のように塩基性触媒を水溶液として添加する場合や、水を溶媒の一部もしくは全部として使用する場合は、これらを反応に必要な水の一部または全部として使用することも可能である。水の使用割合は、製造する酸化物粒子の粒径に応じて適宜選択すれば良い。
【0027】
(反応条件)
金属アルコキシドと塩基性触媒の混合時間は、短すぎると粒径分布幅が広くなる傾向にあり、長すぎると安定した粒子成長ができない傾向にある。反応温度は、ゾル‐ゲル法の反応が速やかに進行する温度であれば特に限定されず、目的とする酸化物粒子の粒径に応じて適宜選択することができる。一般的に、反応温度が低いほど得られる酸化物粒子の粒径が大きくなる傾向がある。また、ゾル‐ゲル法の反応を確実に進行させるために、金属アルコキシドおよび塩基性触媒の滴下が終了した後、熟成工程を経ても良い。ここでの熟成工程とは、次の表面修飾処理剤の添加まで、しばらく時間を置くことを意味する。この場合、熟成温度としては反応温度と同程度の温度とすることが好ましい。また、所望の粒径の酸化物粒子を得るために、熟成後にさらに金属アルコキシドおよび塩基性触媒を添加して酸化物粒子の粒径を成長させるなどの手法を用いることもできる。
【0028】
(表面処理工程)
本発明においては、前述の方法で得られた酸化物粒子の分散液に、シリコンオイル、シランカップリング剤およびシラザンよりなる群から選ばれる少なくとも1種類以上の表面処理剤を添加することにより、前記酸化物粒子の表面処理を行う。シリコンオイルとしては、通常、酸化物粒子の表面処理に用いられる公知のシリコンオイルを特に制限なく使用することが可能である。具体的には、ジメチルシリコンオイル、メチルフェニルシリコンオイル、メチルハイドロジェンシリコンオイル、アルキル変性シリコンオイル、アミノ変性シリコンオイル、エポキシ変性シリコンオイル、カルボキシル変性シリコンオイル、カルビノール変性シリコンオイル、メタクリル変性シリコンオイル、ポリエーテル変性シリコンオイル、フッ素系シリコンオイルなどを、適宜選択して使用すれば良い。
【0029】
シランカップリング剤の具体例としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロイルオキシトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N-ジメチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N-ジエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、4-スチリルトリメトキシシラン、トリメトキシ(3,3,3,-トリフルオロプロピル)シラン、オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシランなどを挙げることができる。
【0030】
シラザンとしては、通常、表面処理に用いられる公知のシラザンを、特に制限なく使用することができる。シラザンの具体例としては、反応性の良さや取り扱い性の良さなどの観点から、1,1,1,3,3,3-ヘキサメチルジシラザン(HMDS)の使用が好ましい。例えば、HMDSを用いた疎水性シリカの合成方法としては、非特許文献3に記載されている精密に制御された方法に従って合成することができる。
【0031】
(非特許文献3)
Surface chemistry and trimethylsilyl functionalization of Stober silica sols.(20
03) Journal of Non-Crystalline Solids,316,349-363.
【0032】
前述の表面処理剤は、1種類のみ使用しても良く、2種類以上を組み合わせて使用しても良い。これらの表面処理剤のうち、得られる表面処理後の酸化物粒子の流動性が良いことから、シランカップリング剤およびシラザンよりなる群から選択される少なくとも1種類を使用することが好ましく、シラザンを使用することがより好ましい。
【0033】
表面処理剤の添加方法は特に制限されない。表面処理剤が常温、常圧で低粘度の液体である場合は、これを分散液中に滴下しても良く、分散液に噴霧しても良いが、操作が簡便であるという観点から滴下することが好ましい。表面処理剤が高粘度液体または固体である場合には、適当な有機溶媒で希釈した上で、低粘度の液体の場合と同様にして添加することができる。表面処理剤が気体である場合には、分散液中に微細な泡状となるように吹き込むことにより添加することができる。表面処理を行う際の処理温度および処理時間は、使用する表面処理剤の反応性などを考慮して適宜選択すれば良い。
【0034】
本発明においては、疎水性酸化物粒子表面における撥水・撥油性を有する官能基による修飾率の指標として、X線光電子分光装置(ESCA)による測定結果を利用することができる。具体的には、10nm程度の深さ領域について原子組成比率を求め、撥水・撥油性を有する官能基を構成する特定の原子、例えば炭素原子の比率について比較することができる。本発明において、優れた撥水・撥油性を示すという観点から、例えば、トリメチルシリル基を導入した疎水性シリカの場合には、炭素原子の比率は9at%以上であることが好ましい。更に好ましくは12at%以上である。炭素原子の比率は大きいことが好ましいが通常50at%以下であり、30at%以下でも構わない。
【0035】
(コーティング層中の成分)
本発明におけるコーティング層には、上記疎水性酸化物粒子以外の成分を含んでいても良い。具体的には、バインダー成分、酸化防止剤、耐光剤、ゲル化防止剤、有機湿潤剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、界面活性剤などが挙げられ、これらの成分を必要に応じて適宜含有させることができる。
【0036】
バインダー成分は、疎水性酸化物粒子をよく結着させることができる成分であれば特に限定されない。例えば、ポリシロキサン(オルガノポリシロキサン、ジメチルポリシロキサンなどを含む)に代表されるシロキサン系無機高分子や、ポリチタノキサン、ポリアルミノキサン、ポリジルコノキサン、ポリシラザン、パーヒドロポリシラザン、アルコキシシラン、アルキルアルコキシシランなどを用いることができ、好ましくは、ポリシロキサン、ポリシラザン、パーヒドロポリシラザン、アルコキシシラン、アルキルアルコキシシランである。これらのうち、本発明における疎水性酸化物粒子をよく結着させるという観点から、ポリシロキサンであることがより好ましい。市販品としては、シロキサン系無機高分子のコルコート社製コルコート(登録商標)PXが好適に使用できる。本発明におけるバインダー成分は、ゾル‐ゲル法を用いた熱硬化反応によって無機高分子が形成される方法を採用することが好ましい。このような無機高分子は、その前駆体である金属アルコキシドを出発原料として、その溶液を加水分解、重縮合させてゾルとした後、空気中の水分などにより重縮合させてゲル化させる。前述の金属アルコキシドは水と均一に混合する一種類の溶媒または二種類以上の混合溶媒で希釈して用いることができ、このゾル溶液を基材に塗布し、常温または加温して溶媒を揮発させることにより硬化反応が進行して被膜を形成する。本発明におけるポリシロキサンは、金属アルコキシドを出発原料とした反応物であっても良く、付加反応などにより変性させたものであっても良い。
【0037】
コーティング層中の疎水性酸化物粒子は、積層フィルムの撥水・撥油性を発現することができる任意の割合で使用することができるが、固形分としてコーティング層の30~100質量%とすることが好ましい。さらに好ましくは50~100質量%である。疎水性酸化物粒子を前記の割合で使用することにより、積層フィルムにおいて優れた撥水・撥油性を発現することができる。
【0038】
(コーティング液)
本発明においては、基材フィルム上に直接又は他の層を介してコーティング層を積層することにより、積層フィルムを得る。このコーティング層を形成するためのコーティング液は、前述の方法で作製した疎水性酸化物粒子の分散液をそのまま用いることもできるが、バインダー成分など、前記のコーティング層を形成する各種成分や、適当な溶媒を単独または複数種類含んでいても良い。
【0039】
本発明における疎水性酸化物粒子は、バインダー成分を使用せずに分散液をそのまま使用することもできる。通常、シリカゾルは単独では造膜性を有さないため、シリカゾル分散液をコーティング用途で使用する場合には、バインダー樹脂などと併用して使用する必要がある。しかしながら、微細な単分散粒子は適度な凝集力で表面を形成することができ、本発明における疎水性酸化物粒子は単独で用いても造膜性を有するため、コーティング液として疎水性酸化物粒子の分散液をそのまま使用することができる。
【0040】
(積層フィルムの製造工程)
本発明の積層フィルムの製造において、コーティングの方法は特に制限されない。例えば、ロールコーティング、グラビアコーティング、バーコート、ドクターブレードコート、スピンコート、スプレーコート、刷毛塗工などの公知の方法に従って作製することができる。これらの方法でコーティングを行う際に使用する溶媒は特に限定されず、例えば、水、アルコール類、ケトン類、ノルマルヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、酢酸ブチル、グリコール類などの有機溶媒を適宜選択して使用することができる。これらの溶媒は単独で用いても良く、複数を混合して用いても良い。溶媒に対する疎水性酸化物粒子の分散量は、均一な分散液が得られる任意の割合で選択することができる。コーティング後に乾燥する方法は、自然乾燥または加熱乾燥のいずれであっても良いが、工業的な製造という観点からは、加熱乾燥がより好ましい。乾燥温度は、基材フィルムやコーティング層の含有成分に影響を与えない範囲であれば特に限定されないが、通常は200°C以下が好ましく、50°C以上160°C以下がより好ましい。乾燥方法は特に限定されず、ホットプレートや熱風オーブン等、フィルムを乾燥させる公知の方法を用いることができる。乾燥時間については、乾燥温度等の他の条件により適宜選択されるが、基材フィルムやコーティング層の含有成分に影響を与えない範囲であれば良い。
【0041】
(撥水・撥油性)
本発明による積層フィルムの撥水・撥油性は公知の方法で評価することができる。具体的には、撥水性は水を用いた接触角測定により評価することができ、また撥油性はジヨードメタンを用いた接触角測定により評価することができる。本発明における好ましい水の接触角の範囲は90度以上、より好ましくは120度以上である。水の接触角が90度以上であると優れた撥水性を示すことから好ましく、120度以上であると、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)に代表される従来のフッ素系樹脂シートと同等以上の撥水性を示すことからより好ましい。また、本発明における好ましいジヨードメタンの接触角の範囲は60度以上、より好ましくは90度以上である。ジヨードメタンの接触角が60度以上であると、油汚れ等を抑制することができる撥油性を付与できる観点から好ましく、90度以上であると、従来のフッ素系樹脂シートと同等以上の撥油性を示すことからより好ましい。水の接触角、ジヨードメタンの接触角はともに大きいほどよいと言え、上限は特に設けない。通常、最も好ましい状態は、液滴がコーティング層上に付着せず、接触角を明瞭に示すことができないほどに接触角が大きい状態であると言える。
【0042】
(透明性)
本発明の積層フィルムは透明性が高いほうが好ましく、フィルムヘイズは20%以下であることが好ましい。より好ましくは15%以下であり、さらに好ましくは10%以下である。フィルムヘイズが20%以下であると、透明性や内容物の審美性が必要とされる用途にも展開できることから好ましい。
【実施例】
【0043】
以下に、実施例および比較例を用いて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されることはない。なお、各種測定は次のように行った。
【0044】
(接触角測定)
作製したフィルムについて、溶剤に対する接触角を測定した。接触角測定には、協和界面科学株式会社製の全自動接触角計DM-701を用いた。測定溶剤には純水とジヨードメタンを用いた。水の接触角(WCAと省略)は水滴を1.8μL滴下し、60秒後に測定した。ジヨードメタンの接触角(DCAと省略)はジヨードメタンの液滴を0.9μL滴下し、30秒後に測定した。
【0045】
(ヘイズ測定)
フィルムのヘイズは、日本電色工業株式会社製のNDH-5000を用いて測定した。
【0046】
(一次粒子平均径の測定)
疎水性酸化物粒子の一次粒子平均径は、走査型電子顕微鏡または透過型電子顕微鏡による観察して測定した。これらの顕微鏡観察において任意に選んだ20個分の粒子の直径の平均を一次粒子平均径とした。不定形の粒子の一次粒子平均径は円相当径として計算することができる。円相当径は、観察された粒子の面積をπで除し、平方根を算出し2倍した値である。
【0047】
(疎水性シリカナノ粒子のESCA測定)
疎水性シリカナノ粒子分散液を清浄なアルミホイル上に滴下、乾燥させ、アルミホイル上に疎水性シリカナノ粒子薄膜を形成させた。この時、極力表面汚染が生じないよう速やかに乾燥させ、直ちにサンプリングして表面組成分析に供した。
装置にはK-Alpha+(Thermo Fisher Scientific社製)を用いた。測定条件の詳細は以下に示した。なお、解析の際、バックグラウンドの除去はshirley法にて行った。また、表面組成比は、基材のAlが検出されない部位3箇所以上の測定結果の平均値とした。
・測定条件
励起X線 : モノクロ化AlKα線
X線出力: 12kV、6mA
光電子脱出角度 : 90度
スポットサイズ : 400μmΦ
パスエネルギー : 50eV
ステップ : 0.1eV
【0048】
(実施例1)
〔疎水性シリカ粒子分散液〕
一次平均粒子径35nmの単分散シリカ粒子を1,1,1,3,3,3-ヘキサメチルジシラザン(HMDS)を用いて表面処理することにより、トリメチルシリル基を導入し、表面を修飾して、均一に分散した疎水性シリカ粒子分散液を得た。以下、このシリカをシリカAと称する。シリカAの一次粒子平均径は50nmであった。
【0049】
〔コーティングフィルムの作製〕
このシリカA分散液をコルコート(登録商標)PX(コルコート社製)と混合してコート液を作製した。混合比は、コルコート(登録商標)PX:シリカ=1:2(固形分の質量比)となるように作製した。このコート液を、ポリエチレンテレフタレート(PETと省略)製のフィルムである東洋紡エステル(登録商標)フィルム(品番:E5100、厚み:75μm)のコロナ処理面に、バーコーター#6を用いてバーコート方式で塗布した後、130℃で1分間乾燥させることにより、コーティングフィルムを得た。
【0050】
(実施例2)
実施例1において、コーティング液のシリカとコルコート(登録商標)PXの混合比をコルコート(登録商標)PX:シリカ=1:64となるように作製した以外は、実施例1と同様にしてコーティングフィルムを得た。
【0051】
(比較例1)
比較例1として、コーティングをしていないPETフィルムE5100を用いた。接触角測定にはコロナ処理面を用いた。
【0052】
(比較例2)
PETフィルムE5100のコロナ処理面に、コルコート(登録商標)PXをバーコーター#6を用いてバーコート方式で塗布した後、130℃で1分間乾燥させることにより、コーティングフィルムを得た。
【0053】
(比較例3)
疎水性シリカとして、表面にトリメチルシリル基を有する、市販のAEROSIL(登録商標)R812S(エボニック社製、一次粒子平均径7nm)を用いた。以下、このシリカをシリカBと称する。シリカBを、固形分濃度が6質量%となるようにエタノール中に撹拌・分散させ、分散液を得た。このシリカB分散液を用いた以外は、実施例1と同様にコーティング液を作製し、コーティングフィルムを得た。
【0054】
実施例および比較例で得られたフィルムの測定結果を表1に示す。
【0055】
【0056】
表1に示すように、実施例1~2では、水の接触角、ジヨードメタンの接触角のいずれも、基材のみの場合の比較例1や、コルコート(登録商標)PXのみ塗布した場合の比較例2に比べて大きく、撥水・撥油性に優れていることが分かった。特に、シリカの比率が大きい実施例2では、接触角測定において液滴がフィルム表面に付着せず、非常に撥水・撥油性が優れていることが分かった。さらに、実施例1~2は、比較例1~2と比べてヘイズの値が極端に増大しておらず、透明性にも優れていることが分かった。
【0057】
比較例3においては、水の接触角は優れるが、ジヨードメタンの接触角が低く、撥水・撥油性を両立できるものではなかった。また、ヘイズの値が非常に大きく、コーティングにより透明性が損なわれることが分かった。
【0058】
また、シリカAおよびシリカBのみの表面をESCAで分析した結果を表2に示す。
【0059】
【0060】
シリカA、シリカBはともにトリメチルシリル基で表面を修飾した疎水性シリカ粒子である。表2に示すように、シリカAはシリカBと比較してトリメチルシリル基の指標となる炭素比率が大きい値となっている。従って、シリカAのほうがシリカBに比べて粒子表面におけるトリメチルシリル基量が多くなっており、表1に示すように、シリカAを用いた方が、より優れた撥水・撥油性を示す結果となっていることが推定される。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明により、優れた撥水・撥油性を有し、防汚性を示す透明な積層フィルムを提供することができる。本発明による積層フィルムは、包装、被覆、離型フィルムなどの用途への応用が期待できるため、有用である。
【符号の説明】
【0062】
1 : 基材フィルム
2 : 疎水性酸化物粒子とバインダー成分からなるコーティング層
3 : 疎水性酸化物粒子
4 : 疎水性酸化物粒子を含まない任意の樹脂層