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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】車両用内装部品の取付構造
(51)【国際特許分類】
   B60R 13/02 20060101AFI20240312BHJP
   F16B 19/00 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
B60R13/02 Z
F16B19/00 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021023888
(22)【出願日】2021-02-18
(65)【公開番号】P2022126046
(43)【公開日】2022-08-30
【審査請求日】2023-05-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】戸谷 正寛
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 翔一
【審査官】池田 晃一
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-053614(JP,A)
【文献】特開2010-121769(JP,A)
【文献】特表2017-520724(JP,A)
【文献】実開昭56-102811(JP,U)
【文献】特開2000-055020(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 13/02
B60J 5/00
F16B 5/00 - 5/12
F16B 17/00 - 19/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
挿通軸部を有する内装部品と、貫通孔を有する内装材と、取付孔を有し上記内装材に対向空間を隔てて配置される車体パネルと、を備える、車両用内装部品の取付構造であって、
上記内装部品は、上記挿通軸部が上記内装材の上記貫通孔に挿通されるときに上記車体パネルの上記取付孔に嵌合可能な嵌合部と、上記貫通孔における上記挿通軸部の挿通状態で上記内装材と上記車体パネルの少なくとも一方に係合して上記挿通軸部の軸まわり方向の回転を規制する回転規制部と、を有し、
上記内装材の上記貫通孔は、円形状の第1孔部と矩形状の第2孔部とが互いに結合されてなる鍵孔形状を有し、
上記内装部品の上記回転規制部は、上記挿通軸部が上記貫通孔の上記第1孔部に挿入された状態で上記貫通孔の上記第2孔部に挿入されることによって上記内装材に係合するように構成されている、車両用内装部品の取付構造。
【請求項2】
上記内装部品と上記内装材との少なくとも一方には、上記対向空間を埋める空間埋め部が設けられている、請求項1に記載の、車両用内装部品の取付構造。
【請求項3】
上記内装材には、上記内装部品のための取付座面を有するベース部と、上記内装部品が外部荷重を受ける荷重作用方向について上記回転規制部を支持する支持部と、が設けられている、請求項1または2に記載の、車両用内装部品の取付構造。
【請求項4】
挿通軸部を有する内装部品と、貫通孔を有する内装材と、取付孔を有し上記内装材に対向空間を隔てて配置される車体パネルと、を備える、車両用内装部品の取付構造であって、
上記内装部品は、上記挿通軸部が上記内装材の上記貫通孔に挿通されるときに上記車体パネルの上記取付孔に嵌合可能な嵌合部と、上記貫通孔における上記挿通軸部の挿通状態で上記内装材と上記車体パネルの少なくとも一方に係合して上記挿通軸部の軸まわり方向の回転を規制する回転規制部と、を有し、
上記内装材には、上記内装部品のための取付座面を有するベース部と、上記対向空間を埋める空間埋め部と、が設けられており、上記空間埋め部は上記ベース部の裏面から上記車体パネルに向けて延出している、車両用内装部品の取付構造
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用内装部品の取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
下記の特許文献1には、この種の車両用内装部品の1つであるホルダの取付構造が開示されている。この取付構造において、ホルダは、サンバイザーの軸部を着脱可能に保持するためのものであり、ホルダ本体の裏面側にボックスアンカー及び第2アンカー部を備えている。ホルダは、車両側パネルである天井パネルに設けられた2つの取付穴のそれぞれにボックスアンカー及び第2アンカー部のそれぞれを圧入することによって、天井パネルに固定されるように構成されている。天井パネルの表面に内装材が隙間無く接合されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平9-217721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の取付構造の場合、ホルダの取付部分では内装材と天井パネルとの間に隙間が形成されていない。このため、内装材の意匠性や内装部品の使い易さなどの要請を考慮して、例えば意匠面を車室側に突出させたいときには、ホルダのための取付座面を深く凹ませた凹み形状を採用する必要がある。この場合、上記の取付構造は、内装材の取付座面を深く凹ませることによって、その内装材の意匠性が低下する要因を抱えており、内装材の意匠面の設計の自由度が低下するという問題が生じ得る。また、このような問題は、サンバイザ用のホルダの取付構造のみならず、別の種類の内装部品の取付構造においても同様に生じ得る。
【0005】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、車両用内装部品を取り付ける内装材の意匠面の設計の自由度を高めるのに有効な取付構造を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、
挿通軸部を有する内装部品と、貫通孔を有する内装材と、取付孔を有し上記内装材に対向空間を隔てて配置される車体パネルと、を備える、車両用内装部品の取付構造であって、
上記内装部品は、上記挿通軸部が上記内装材の上記貫通孔に挿通されるときに上記車体パネルの上記取付孔に嵌合可能な嵌合部と、上記貫通孔における上記挿通軸部の挿通状態で上記内装材と上記車体パネルの少なくとも一方に係合して上記挿通軸部の軸まわり方向の回転を規制する回転規制部と、を有し、
上記内装材の上記貫通孔は、円形状の第1孔部と矩形状の第2孔部とが互いに結合されてなる鍵孔形状を有し、
上記内装部品の上記回転規制部は、上記挿通軸部が上記貫通孔の上記第1孔部に挿入された状態で上記貫通孔の上記第2孔部に挿入されることによって上記内装材に係合するように構成されている、車両用内装部品の取付構造、
にある。
また、本発明の他の態様は、
挿通軸部を有する内装部品と、貫通孔を有する内装材と、取付孔を有し上記内装材に対向空間を隔てて配置される車体パネルと、を備える、車両用内装部品の取付構造であって、
上記内装部品は、上記挿通軸部が上記内装材の上記貫通孔に挿通されるときに上記車体パネルの上記取付孔に嵌合可能な嵌合部と、上記貫通孔における上記挿通軸部の挿通状態で上記内装材と上記車体パネルの少なくとも一方に係合して上記挿通軸部の軸まわり方向の回転を規制する回転規制部と、を有し、
上記内装材には、上記内装部品のための取付座面を有するベース部と、上記対向空間を埋める空間埋め部と、が設けられており、上記空間埋め部は上記ベース部の裏面から上記車体パネルに向けて延出している、車両用内装部品の取付構造、
にある。
【発明の効果】
【0007】
上記態様の取付構造において、内装部品の取り付けの際にその挿通軸部が内装材の貫通孔に挿通される。このとき、内装部品は、内装材に対向空間を隔てて配置された車体パネルの取付孔に嵌合部を嵌合させることによって取り付けられる。また、この内装部品は、貫通孔における挿通軸部の挿通状態で内装材と車体パネルの少なくとも一方に回転規制部が係合することによって挿通軸部の軸まわり方向の回転が規制される。
【0008】
この取付構造によれば、内装材と車体パネルとの間に対向空間を設けることで、内装材において内装部品の取り付けのための取付座面を深く凹ませなくても内装部品の取り付けが可能になる。したがって、内装材の意匠面の形状をその見栄えを低下させることなく自由に設計することが可能になる。
【0009】
以上のごとく、上記態様によれば、車両用内装部品を取り付ける内装材の意匠面の設計の自由度を高めるのに有効な取付構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態の、車両用内装部品の取付構造の斜視図。
図2図1の取付構造の平面図。
図3図1中のIII-III線矢視断面図。
図4図1中のデッキトリムを車内側からみた斜視図。
図5図1中のデッキトリムを車体パネル側からみた斜視図。
図6図1の取付構造の分解斜視図。
図7図1中のフックがデッキトリムに対して正常位置にあるときの貫通孔との相対的な位置関係を模式的に示す図。
図8図1中のフックがデッキトリムに対して不完全位置にあるときの貫通孔との相対的な位置関係を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
上記態様の好ましい実施形態について以下に説明する。
【0012】
上記態様の、車両用内装部品の取付構造において、上記内装部品と上記内装材との少なくとも一方には、上記対向空間を埋める空間埋め部が設けられているのが好ましい。
【0013】
この取付構造によれば、内装部品と内装材との少なくとも一方を利用して、内装材と車体パネルとの間の対向空間を埋める空間埋め部が構成される。このため、対向空間を維持する空間埋め部のための新たな部品を追加する必要がなく、部品点数を削減するのに有効である。
【0014】
上記態様の、車両用内装部品の取付構造において、上記内装材には、上記内装部品のための取付座面を有するベース部と、上記内装部品が外部荷重を受ける荷重作用方向について上記回転規制部を支持する支持部と、が設けられているのが好ましい。
【0015】
この取付構造によれば、内装部品を、車体パネルの取付孔の部位と、内装材のベース部と、内装材の支持部と、による少なくとも三箇所で支持することができる。このため、内装部品に作用する荷重を内装材と車体パネルにバランス良く分散させることができ、内装部品の取り付け状態を安定させるのに有効である。
【0016】
上記態様の、車両用内装部品の取付構造において、上記内装材の上記貫通孔は、円形状の第1孔部と矩形状の第2孔部とが互いに結合されてなる鍵孔形状を有し、
上記内装部品の上記回転規制部は、上記挿通軸部が上記貫通孔の上記第1孔部に挿入された状態で上記貫通孔の上記第2孔部に挿入されることによって上記内装材に係合するように構成されているのが好ましい。
【0017】
この取付構造によれば、内装材の貫通孔を第1孔部及び第2孔部を有する鍵孔形状とすることで、内装部品の挿通軸部の挿入のための狙い孔の数が1つで済む。このため、作業者は内装部品の挿通軸部を貫通孔に挿入するときに、この貫通孔を狙い易くなり、内装部品の組付け性が向上する。
【0018】
以下、車両用内装部品の一例であるフックの取付構造の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0019】
この実施形態の説明のための図面において、特に断わらない限り、フックの挿通軸部の軸方向である第1方向を矢印Xで示し、いずれも第1方向Xに垂直で且つ互いに直交する第2方向及び第3方向を矢印Y及び矢印Zで示している。
【0020】
図1及び図2に示されるように、本実施形態の取付構造1は、フック10の取り付け(或いは、「組み付け」ともいう。)に関する構造であり、概して、内装部品としてのフック10と、車両の荷室を構成する内装材としてのデッキトリム20と、車体パネル30と、を備えている。
【0021】
フック10は、第1方向Xに延びる挿通軸部11と、挿通軸部11に接合された円形状の頭部13と、円盤状の台座部14と、を有する。頭部13と台座部14との間の空間は、典型的には、荷物や物品などを引っ掛け可能な引っ掛け領域として使用される。必要に応じて、フック10にこの引っ掛け領域に別の引っ掛け領域を追加するようにしてもよい。
【0022】
台座部14は、デッキトリム20に対向するフランジ部として構成されている。この台座部14には、その周面の一部から径方向外方へ突出したマーキング16が設けられている。このマーキング16は、フック10の取り付け時に、後述のボス15の回転位置を間接的に確認可能な目印として構成されている。なお、フック10の材料については特に限定されないが、成形性や軽量化等を考慮した場合、フック10の材料として樹脂材料を使用するのが好ましい。
【0023】
デッキトリム20には、フック10の台座部14に対する取付座面21aを有するベース部21が設けられている。以下の説明では、デッキトリム20のベース部21の第1方向Xの両面のうち車室に対向する面(取付座面21a)を表面とし車体パネル30に対向する面を裏面とする。
【0024】
フック10の取り付け時にベース部21の表面である取付座面21aに台座部14が押し当てられる。このベース部21には、第1方向Xが貫通方向となる1つの貫通孔22が設けられている。この貫通孔22は、フック10を組み付けるときの狙い孔となる。
【0025】
車体パネル30には、第1方向Xを貫通方向となる1つの取付孔31が設けられている。この車体パネル30は、第1方向Xについてデッキトリム20に対向空間S(図3を参照)を隔てて配置されている。このとき、デッキトリム20と車体パネル30は、第1方向Xについて貫通孔22の位置と取付孔31の位置が概ね一致するように配置されるのが好ましい。
【0026】
図3に示されるように、フック10の挿通軸部11の軸線L上の先端には、嵌合部としてのクリップ12が設けられている。このクリップ12は、挿通軸部11がデッキトリム20の貫通孔22に挿通されるときに車体パネル30の取付孔31に嵌合可能に構成されている。このクリップ12は、弾性変形可能な材料(典型的には、樹脂材料)からなり、且つ取付孔31の孔縁よりも径方向外方まで延出するように構成されている。クリップ12は、圧入によって径方向内方へ押し潰されるように弾性変形した状態で取付孔31に嵌合する。これにより、貫通孔22に挿通された挿通軸部11には、車体パネル30に係止される係止力が生じる。一方で、この係止力を上回る荷重でフック10が引っ張られると、クリップ12と取付孔31との嵌合が解除され、挿通軸部11を貫通孔22から抜き出すことができる。
【0027】
フック10の台座部14には、回転規制部としてのボス15が設けられている。このボス15は、デッキトリム20の貫通孔22における挿通軸部11の挿通状態でデッキトリム20の貫通孔22に係合して挿通軸部11の軸まわりの回転を規制する機能を果たす。
【0028】
作業者は、このボス15を頭部13側からみたときに台座部14で遮蔽されるためこのボス15を直接的には視認できない。そこで、本実施形態では、台座部14における周方向位置をボス15とマーキング16(図1図3を参照)とで一致させるようにしている。これにより、作業者は、マーキング16を介してボス15の位置を間接的に視認することが可能になる。
【0029】
本実施形態の取付構造では、フック10の組み付けが完了したとき、フック10が、車体パネル30の取付孔31に嵌合したクリップ12の部位と、デッキトリム20のうち台座部14が押し当てられるベース部21と、デッキトリム20のうちボス15が支持される支持部24と、による少なくとも三箇所で支持されるようになっている。
【0030】
デッキトリム20は、車体パネル30との間の対向空間Sを埋める空間埋め部23と、フック10が外部荷重Fを受ける荷重作用方向Y1についてフック10のボス15を支持する支持部24と、を有する。
【0031】
図3図5に示されるように、空間埋め部23は、ベース部21の裏面から車体パネル30に向けて延出している。この空間埋め部23は、ベース部21の裏面に貫通孔22を囲うように円筒状に設けられた囲いリブであり、その延出先端面が車体パネル30の当接するように構成されている。
【0032】
デッキトリム20に空間埋め部23を設けることにより、ベース部21の取付座面21aが車体パネル30側に深く凹むのを防いで取付座面21aを浅くすることが可能になる。このため、デッキトリム20の意匠面の見栄えを向上させるとともに、ユーザがフック10を使用し易くなるように使用性を向上させることができる。一方で、空間埋め部23の延出先端面を車体パネル30に当接させることにより、デッキトリム20がフック10から受ける荷重に対する剛性を高めることができる。
【0033】
なお、デッキトリム20のベース部21の裏面に空間埋め部23を設けるときの位置について、この空間埋め部23がフック10の組み付け状態で台座部14の外形よりも内側に配置されるように位置設定するのが好ましい。これにより、デッキトリム20の成形時の収縮によってベース部21の表面にヒケが生じた場合でも、このヒケをフック10の台座部14で覆うことができる。したがって、デッキトリム20の意匠面の見栄えがヒケの影響によって悪くなるのを防ぐことができる。
【0034】
図3に示されるように、フック10の頭部13には、荷物や物品などが引っ掛けられたときの荷重として荷重作用方向Y1の外部荷重Fが作用する。このとき、フック10のボス15に作用する下向きの荷重を支持部24によって下方から受けることができる。この支持部24は、空間埋め部23の一部によって構成されるのが好ましい。これにより、ボス15を支持するための構造を簡素化することができる。
【0035】
図4に示されるように、デッキトリム20の貫通孔22は、第1方向Xについてみたときの形状として、円形状の第1孔部22aと矩形状の第2孔部22bとが互いに結合されてなる鍵孔形状を有する。この鍵孔形状は、フック10の挿通軸部11及びボス15のそれぞれの断面形状に基づいて定められている。第1孔部22aは、その内径が挿通軸部11の外径を上回り且つ挿通軸部11の挿入出操作を阻害しないように寸法設定されている。第2孔部22bは、その第3方向Zの幅寸法がボス15の同方向の寸法を若干上回るように寸法設定されている。本実施形態の場合、第2孔部22bの第3方向Zの幅寸法が第1孔部22aの内径を下回る。
【0036】
なお、貫通孔22の鍵孔形状について、第1孔部22aの形状は、厳密な円形である必要はなく、円形や円形に類似する楕円形のように、実質的な円形状であれば足りる。同様に、第2孔部22bの形状は、厳密な矩形である必要はなく、矩形や矩形の角が面取りされたり丸めたりされた形状のように、実質的な矩形状であれば足りる。
【0037】
フック10のボス15は、挿通軸部11が貫通孔22の第1孔部22aに挿入された状態で貫通孔22の第2孔部22bに挿入されることによってデッキトリム20に係合して挿通軸部11の軸まわり方向の回転を規制するように構成されている。これにより、デッキトリム20の設けた鍵孔形状の貫通孔22を利用してフック10の回り止めを行うことができる。
【0038】
図3図5に示されるように、デッキトリム20には、ベース部21を裏面側に凹ませてなる凹み壁部25が設けられている。この凹み壁部25は、第2方向Yについてみたときの形状が略U字状をなすように構成されている。凹み壁部25によって区画される収容空間25aは、貫通孔22の第2孔部22bに挿入されたボス15を収容するための空間である。ボス15は、収容空間25aに収容された状態では、挿通軸部11の軸まわり方向についての動きが凹み壁部25によって規制される。
【0039】
次に、図6図8を参照しながら、フック10の組み付け手順について説明する。なお、図6では、説明の便宜上、デッキトリム20と車体パネル30を第1方向Xに離間させた分離状態で示している。
【0040】
図6に示されるように、貫通孔22において第2孔部22bが第1孔部22aから下方に延びるように配置されたデッキトリム20にフック10を組み付ける場合、作業者は、先ず、フック10のマーキング16が下向きになるようにして頭部13を手指で把持する。そして、デッキトリム20の貫通孔22に狙いを定めて、この貫通孔22にフック10の挿通軸部11を挿入する。
【0041】
図7に示されるように、フック10のボス15の位置が貫通孔22の第2孔部22bの位置に合っているときに、クリップ12が車体パネル30の取付孔31に嵌合するまでフック10の挿通軸部11の挿入を継続することが可能になる。そして、フック10の正常位置P1において、挿通軸部11はクリップ12が取付孔31に嵌合することによって車体パネル30に係止される。この正常位置P1では、フック10のボス15が貫通孔22の第2孔部22bに挿入されて、その軸まわり方向Dの回転が凹み壁部25によって規制される。このとき、作業者は、マーキング16を介してボス15の位置を間接的に視認することで、フック10の組み付け不良の判断を容易に行うことができる。
【0042】
一方で、フック10の挿通軸部11を貫通孔22に挿入するときに、ボス15の位置が貫通孔22の第2孔部22bの位置からずれてベース部21の表面に干渉するような場合が想定される。このとき、フック10は、図8に示されるような不完全位置P2にあり、フック10のボス15を貫通孔22の第2孔部22bに挿入することができず、クリップ12を取付孔31に嵌合させることができない。そこで、フック10が不完全位置P2にあるときには、このフック10をボス15が貫通孔22の第2孔部22bに挿入されるまで組み付け調整方向(図8では、軸まわり方向Dの一方向である時計まわり方向D1)に回転させる。これにより、フック10を正常位置P1(図7を参照)に設定することができる。
【0043】
上述の実施形態によれば、以下のような作用効果が得られる。
【0044】
上記の取付構造1において、フック10の取り付けの際にその挿通軸部11がデッキトリム20の貫通孔22に挿通される。このとき、フック10は、デッキトリム20に対向空間Sを隔てて配置された車体パネル30の取付孔31にクリップ12を嵌合させることによって取り付けられる。また、このフック10は、貫通孔22における挿通軸部11の挿通状態で貫通孔22の第2孔部22bにボス15が係合することによって挿通軸部11の軸まわり方向Dの回転が規制される。
【0045】
この取付構造1によれば、デッキトリム20と車体パネル30との間に対向空間Sを設けることで、デッキトリム20においてフック10の取り付けのための取付座面21aを深く凹ませなくてもフック10の取り付けが可能になる。したがって、デッキトリム20のベース部21の取付座面21a(意匠面)の形状をその見栄えを低下させることなく自由に設計することが可能になる。
【0046】
従って、上述の実施形態によれば、フック10を取り付けるデッキトリム20の意匠面の設計の自由度を高めることが可能になる。
【0047】
上記の取付構造1によれば、デッキトリム20を利用して、デッキトリム20と車体パネル30との間の対向空間Sを埋める空間埋め部23が構成される。このため、対向空間Sを維持する空間埋め部23のための新たな部品を追加する必要がなく、部品点数を削減するのに有効である。
【0048】
上記の取付構造1によれば、フック10を、車体パネル30の取付孔31の部位と、デッキトリム20のベース部21と、デッキトリム20の支持部24と、による少なくとも三箇所で支持することができる。このため、フック10に作用する荷重をデッキトリム20と車体パネル30にバランス良く分散させることができ、フック10の取り付け状態を安定させるのに有効である。
【0049】
上記の取付構造1によれば、デッキトリム20の貫通孔22を第1孔部22a及び第2孔部22bを有する鍵孔形状とすることで、フック10の挿通軸部の挿入のための狙い孔の数が1つで済む。このため、作業者はフック10の挿通軸部11を貫通孔22に挿入するときに、この貫通孔22を狙い易くなる。例えば複数の狙い孔を採用する場合に比べると、フック10の組み付け性が向上するため、フック10の組み付け作業に要する時間を短縮できる。また、車体パネル30に設ける取付孔31の数を1つに抑えることで、車体パネル30に設ける取付孔の数が必要以上に増えるのを防ぐことが可能になる。これにより、車体パネル30の成形性が向上する。
【0050】
本発明は、上述の実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の応用や変形が考えられる。例えば、上述の実施形態を応用した次の各形態を実施することもできる。
【0051】
上述の実施形態では、デッキトリム20と車体パネル30との間の対向空間Sを埋める空間埋め部23をデッキトリム20に設ける場合について例示したが、これに代えて、空間埋め部23に相当する要素をフック10に設けたり、フック10とデッキトリム20の両方に設けたりすることもできる。
【0052】
上述の実施形態では、デッキトリム20の貫通孔22の形状を円形状の第1孔部と矩形状の第2孔部とが互いに結合されてなる鍵孔形状とする場合について例示したが、貫通孔22の形状はこれに限定されるものではなく、フック10の挿通軸部11及びボス15のそれぞれの断面形状に基づいて適宜に変更することができる。
【0053】
上述の実施形態では、内装部品の1つであるフック10の取付構造1について例示したが、この取付構造1をフック10とは異なる種類の内装部品の取付構造を適用することもできる。
【符号の説明】
【0054】
1 車両用内装部品の取付構造
10 フック(内装部品)
11 挿通軸部
12 クリップ(嵌合部)
15 ボス(回転規制部)
20 デッキトリム(内装材)
21 ベース部
21a 取付座面
22 貫通孔
22a 第1孔部
22b 第2孔部
23 空間埋め部
24 支持部
30 車体パネル
31 取付孔
D 軸まわり方向
F 外部荷重
S 対向空間
Y1 荷重作用方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8