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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】細胞培養容器および細胞培養方法
(51)【国際特許分類】
   C12M 3/00 20060101AFI20240312BHJP
   C12N 5/071 20100101ALI20240312BHJP
【FI】
C12M3/00 A
C12N5/071
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021050919
(22)【出願日】2021-03-25
(65)【公開番号】P2022149006
(43)【公開日】2022-10-06
【審査請求日】2023-03-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼城 誠太郎
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 真輝
(72)【発明者】
【氏名】日野 清香
【審査官】菅原 洋平
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第5583037(US,A)
【文献】特開2015-208283(JP,A)
【文献】特開2018-064519(JP,A)
【文献】特開2019-146548(JP,A)
【文献】特開2020-028237(JP,A)
【文献】特開2017-195845(JP,A)
【文献】国際公開第2019/026284(WO,A1)
【文献】特開平5-219934(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00-3/10
C12N 1/00-7/08
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞培養容器であって、
第1容器と、
第2容器と、
前記第1容器と、前記第2容器との間に保持される培養膜と、を備え、
前記第1容器と、前記第2容器とは、それぞれ、
前記培養膜を保持する保持部を有する第1面と、
前記第1面と対向する第2面と、
前記第1面から前記第2面に向かう第1方向と直交する第2方向に隣り合う第1セルおよび第2セルと、
前記第1セルと前記第2セルとを区画する隔壁であって、前記第1面から前記第2面へ向かって延びる隔壁と、
前記隔壁と前記第2面との間に形成された前記第1セルと前記第2セルとを連通させる連通部と、
前記隔壁と前記第2方向において対向し、前記第2面と共に前記第2セルを区画する第3面であって、挿入口が形成された第3面と、を備える、細胞培養容器。
【請求項2】
請求項1に記載の細胞培養容器であって、
前記第2方向に前記細胞培養容器を投影した場合に、前記挿入口の少なくとも一部は、前記連通部と重なる位置に形成されている、細胞培養容器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の細胞培養容器であって、
前記隔壁は、さらに、
前記第1セルを区画する第1セル面であって、前記第2面に近づくにつれ、前記第3面に近づくように傾斜する第1セル面を有する、細胞培養容器。
【請求項4】
請求項1から3の何れか一項に記載の細胞培養容器であって、
前記第1セルは、さらに、
前記隔壁と対向し、前記第1面から前記第2面に向かって延びる第2セル面であって、前記第2面に近づくにつれ、前記第3面から遠ざかるように傾斜する第2セル面を有する、細胞培養容器。
【請求項5】
請求項4に記載の細胞培養容器であって、
前記第1容器および前記第2容器の少なくとも何れか一方は、さらに、
前記第2セル面と対向する第4面であって、前記第4面が水平面に設置された前記細胞培養容器の姿勢において、前記第2セル面が水平方向に対して傾斜するように支持する第4面を備える、細胞培養容器。
【請求項6】
請求項1から5の何れか一項に記載の細胞培養容器を用いた細胞培養方法であって、
前記細胞培養容器を前記第2セルに対して前記第1セルが下方に位置する第1姿勢に配置し、前記第1容器の前記挿入口を介して前記第1容器に第1細胞懸濁液を注入する第1工程と、
前記第1工程の後に、前記細胞培養容器を前記第1容器が前記第2容器の上方に位置する第2姿勢に配置し、前記第1細胞懸濁液に含まれる第1細胞が前記培養膜に定着するまで前記細胞培養容器を前記第2姿勢に維持する第2工程と、
前記第2工程の後に、前記細胞培養容器を前記第1姿勢となるように配置し、前記細胞培養容器を前記第1姿勢に維持して前記第1細胞の培養を継続するための第3工程と、
前記第3工程の後に、前記第1姿勢に配置された前記細胞培養容器の前記第2容器に第2細胞懸濁液を前記第2容器の前記挿入口を介して注入する第4工程と、
前記第4工程の後に、前記細胞培養容器を前記第2容器が前記第1容器の上方に位置する第3姿勢に配置し、前記第2細胞懸濁液に含まれる第2細胞が前記培養膜に定着するまで前記細胞培養容器を前記第3姿勢に維持する第5工程と、
前記第5工程の後に、前記細胞培養容器を前記第1姿勢となるように配置し、前記細胞培養容器を前記第1姿勢に維持して前記第2細胞の培養を継続するための第6工程と、を備える、細胞培養方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、細胞培養容器および細胞培養方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、両面において細胞を培養する培養膜を備える細胞培養器具が知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1の細胞培養器具は、内筒の一方の端部に培養膜が配置されており、内筒の他方の端部が開放されている。そして、例えばピペットなどの器具が内筒の内部に挿入される際には、他方の端部から、培養膜に向かって、器具が挿入される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-208283号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の細胞培養器具では、器具が培養膜に向かって内筒に挿入されるため、器具の先端が細胞膜と接触する可能性が高くなる。器具の先端が細胞膜に接触した場合、細胞膜が傷つくおそれが生じる。よって、従来の技術では、器具の先端が細胞膜に接触しないように慎重な操作が要求されるため、作業性が低下するおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【0006】
(1)本開示の一形態によれば、細胞培養容器が提供される。この細胞培養容器は、第1容器と、第2容器と、前記第1容器と、前記第2容器との間に保持される培養膜と、を備え、前記第1容器と、前記第2容器とは、それぞれ、前記培養膜を保持する保持部を有する第1面と、前記第1面と対向する第2面と、前記第1面から前記第2面に向かう第1方向と直交する第2方向に隣り合う第1セルおよび第2セルと、前記第1セルと前記第2セルとを区画する隔壁であって、前記第1面から前記第2面へ向かって延びる隔壁と、前記隔壁と前記第2面との間に形成された前記第1セルと前記第2セルとを連通させる連通部と、前記隔壁と前記第2方向において対向し、前記第2面と共に前記第2セルを区画する第3面であって、挿入口が形成された第3面と、を備える。この形態によれば、ピペットなどの器具が挿入口から挿入される際、ピペットの培養膜への接触の可能性は、隔壁によって低減される。これにより、ピペットが培養膜に接触しないようにピペットの操作を慎重に行う程度を低減できるため、作業性を向上させることができる。
(2)上記形態の細胞培養容器において、前記第2方向に前記細胞培養容器を投影した場合に、前記挿入口の少なくとも一部は、前記連通部と重なる位置に形成されていてもよい。この形態によれば、器具を挿入口から連通部を通るように、第2方向に沿って挿入することができるため、作業性を向上させることができる。
(3)上記形態の細胞培養容器において、前記隔壁は、さらに、第1セルを区画する第1セル面であって、前記第2面に近づくにつれ、前記第3面に近づくように傾斜する第1セル面を有していてもよい。この形態によれば、細胞培養容器が、第2セルに対して第1セルが下方に位置する第1姿勢に配置された場合、細胞培養容器に入れられた液体に混入した空気は、浮力により、傾斜している第1セル面に沿って、上方に移動する。よって、培養膜の下における空気の残留は抑制されるため、培養膜での培養を良好に行うことができる。
(4)上記形態の細胞培養容器において、前記第1セルは、さらに、前記隔壁と対向し、前記第1面から前記第2面に向かって延びる第2セル面であって、前記第2面に近づくにつれ、前記第3面から遠ざかるように傾斜する第2セル面を有していてもよい。この形態によれば、細胞培養容器が、第2セルに対して第1セルが下方に位置する第1姿勢に配置された場合、細胞培養容器に入れられた液体は、重力により傾斜している第2セル面に沿って、下方に移動する。細胞培養容器に入れられた液体は、第1セルの第2セル面の下方に溜まるため、液体を吸い出し易くすることができる。
(5)上記形態の細胞培養容器において、前記第1容器および前記第2容器の少なくとも何れか一方は、さらに、前記第2セル面と対向する第4面であって、前記第4面が水平面に設置された前記細胞培養容器の姿勢において、前記第2セル面が水平方向に対して傾斜するように支持する第4面を備えていてもよい。この形態によれば、細胞培養容器の第4面が水平面に設置されることにより、第2セル面は水平面に対して傾斜した状態となるため、液体の吸い出しなどの作業の作業性を向上させることができる。
(6)上記形態の細胞培養容器を用いた細胞培養方法であって、前記細胞培養容器を前記第2セルに対して前記第1セルが下方に位置する第1姿勢に配置し、前記第1容器の前記挿入口を介して前記第1容器に第1細胞懸濁液を注入する第1工程と、前記第1工程の後に、前記細胞培養容器を前記第1容器が前記第2容器の上方に位置する第2姿勢に配置し、前記第1細胞懸濁液に含まれる第1細胞が前記培養膜に定着するまで前記培養容器を前記第2姿勢に維持する第2工程と、前記第2工程の後に、前記細胞培養容器を前記第1姿勢となるように配置し、前記細胞培養容器を前記第1姿勢に維持して前記第1細胞の培養を継続するための第3工程と、前記第3工程の後に、前記第1姿勢に配置された前記細胞培養容器の前記第2容器に第2細胞懸濁液を前記第2容器の前記挿入口を介して注入する第4工程と、前記第4工程の後に、前記細胞培養容器を前記第2容器が前記第1容器の上方に位置する第3姿勢に配置し、前記第2細胞懸濁液に含まれる第2細胞が前記培養膜に定着するまで前記細胞培養容器を前記第3姿勢に維持する第5工程と、前記第5工程の後に、前記細胞培養容器を前記第1姿勢となるように配置し、前記細胞培養容器を前記第1姿勢に維持して前記第2細胞の培養を継続するための第6工程と、を備えていてもよい。この形態によれば、上記形態の細胞培養容器において、良好に共培養を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】細胞培養容器の分解斜視図である。
図2】一部断面にて示す細胞培養容器の側面図である。
図3】液-気細胞培養方法の工程を示すフローチャートである。
図4】第1工程に対応する細胞培養容器の模式図である。
図5】第2工程に対応する細胞培養容器の模式図である。
図6】第3工程に対応する細胞培養容器の模式図である。
図7】第4工程に対応する細胞培養容器の模式図である。
図8】第3姿勢への回転途中の細胞培養容器を示す図である。
図9】第5工程に対応する細胞培養容器の模式図である。
図10】第6工程に対応する細胞培養容器の模式図である。
図11】液-液細胞培養方法の工程を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
A.実施形態:
A1.細胞培養容器の構成:
図1は、細胞培養容器100の分解斜視図である。図2は、一部断面にて示す細胞培養容器100の側面図である。図2に示す断面は、図1のII-II線を切断線とする断面図である。図1および図2では、互いに直交する、X軸と、Y軸と、Z軸とを示している。細胞培養容器100は、典型的には、Z方向が鉛直方向と沿うように配置されて使用される。以下では、+Z方向を上方向、-Z方向を下方向として説明する場合がある。細胞培養容器100は、培養膜10と、第1容器20と、第2容器40とを備える。細胞培養容器100が細胞培養に用いられる際には、第1容器20と第2容器40との間に培養膜10が挟まれた状態で、一体化されて用いられる。細胞培養容器100は、培養膜10の両面に細胞を培養する共培養のために用いられる容器である。第1容器20と第2容器40とは、概ね面対称となる形状を有している。第1容器20および第2容器40は、例えば、硬質樹脂材料で形成されている。硬質樹脂材料としては、ポリスチレンや、ポリカーボネート、アクリル樹脂等が挙げられ、特に透明な樹脂が好ましい。
【0009】
図1に示すように、培養膜10は、膜支持部11と、細胞培養膜12とを有する。膜支持部11は、円環形状の枠である。そして、膜支持部11に円形の細胞培養膜12が接合されている。細胞培養膜12は、細胞培養を行う際に、細胞培養の足場となる膜である。細胞培養膜12として、膜の厚み方向に貫通する多数の細孔を有する、合成高分子製の多孔質膜や天然高分子製の多孔質膜を用いることができる。具体的には、多孔質膜として、トラックエッチング膜や、ナノファイバー膜や、コラーゲンビトリゲル膜や、多孔質ポリウレタン膜などが挙げられる。多孔質ポリウレタン膜としては、次に記載する、第1工程および第2工程を備える製造方法を用いて製造された多孔質ポリウレタン膜などが挙げられる。第1工程は、基板上に未硬化であるポリウレタン原料の層を形成する工程である。第2工程は、基板上に形成されたポリウレタン原料の層における基板から離間した露出面に対して水蒸気の供給を行なって、ポリウレタン原料の層において、ポリウレタン原料の硬化を進行させると共に複数の凹凸を露出面に有する多孔質形状を形成させる工程である。
【0010】
第1容器20は、概ね直方体の外形形状を有し、内部空間を有する容器である。第1容器20は、第1面21と、第2面22と、第3面23と、第4面24と、第5面25と、第6面26と、保持部28と、挿入口29と、を有する。第1面21は、第2容器40と一体化される際に、第2容器40と対向する面であり、培養膜10を保持するための保持部28を有する。保持部28は、円環形状であり、第1面21を基端として、第1面21と直交する-Y方向に突設されている。そして、第1面21には、保持部28の内周面に沿って、保持部28の内周面の直径よりも直径の小さい孔21aが形成されている。したがって、保持部28を介して、第1容器20の内部空間と外部とが連通している。図2に示すように、第1容器20と第2容器40とが一体化された場合には、保持部28の内側、かつ、第1面21の外側に、培養膜10が配置される。孔21aの直径は、保持部28の内周面の直径よりも小さい。よって、保持部28の内周面に対して、第1面21は径方向において保持部28の中心軸CXに向かって突出している。これにより、培養膜10の第1容器20の内部空間側への移動が規制される。
【0011】
図1に示すように、第2面22は、Y方向において、第1面21と対向する面である。第1面21から第2面22へ向かう方向を第1方向とも呼ぶ。本実施形態の第1容器20においては、+Y方向が第1方向である。第3面23および第4面24は、第1面21および第2面22と交差する面である。ここで、2つの面が「交差する」とは、2つの面が相互に交差する状態に加え、一方の面の延長面が他方の面に交差する状態と、2つの面の延長面が相互に交差する状態と、のいずれかの状態であることを意味する。第3面23と、第4面24とは、Z方向において互いに対向する面である。第5面25および第6面26は、第1面21と、第2面22と、第3面23と、第4面24と交差する面である。第5面25と、第6面26とは、互いに対向する面である。
【0012】
第3面23には、挿入口29が設けられている。挿入口29は、ピペットなどの器具が、第1容器20に挿入される際に用いられる。挿入口29は、円筒形状を有し、第3面23を基端として、第3面23と直交する+Z方向に突設されている。そして、第3面23には、挿入口29の内周面に沿って孔が形成されている。よって、挿入口29を介して、第1容器20の内部空間と外部とが連通している。挿入口29の側壁の厚さは均一ではなく、先端部の外周面が、基端部の外周面に対して、径方向において、外側に突出している。これにより、後述する第1蓋201が取り付けられた場合における、第1蓋201の脱落を抑制することができる。
【0013】
第5面25には、第1係止部25aと、第2係止部25bと、蓋係止部25cとが形成されている。第1係止部25aと、第2係止部25bとは、同様の形状を有している。第1係止部25aは、Z方向において、第5面25の中央よりも上側に形成されている。また、第1係止部25aは、Y方向において、第2面22よりも第1面21に近い位置の第5面25に形成されている。第1係止部25aは、Y方向に長い板形状を有しており、基端部は第5面45に固定されている。そして、第1係止部25aの先端は、第5面45の-Y方向の端辺から突出している。第1係止部25aの先端には、第2容器40の第1係止凹部45aと係合するための爪が形成されている。具体的には、第1係止部25aの先端は、+X方向に向かって突出している。第2係止部25bは、第1係止部25aよりも下方に配置されている。蓋係止部25cは、後述する第2蓋202を係止するための凸部である。蓋係止部25cのZ方向における位置は、第1係止部25aと同程度である。また、蓋係止部25cは、Y方向において、第1面21よりも第2面22に近い位置の第5面25に形成されている。蓋係止部25cは、Y方向に長い矩形形状を有し、第5面25に突設されている。第5面25と同様に、第6面46にも、第1係止部26aと、第2係止部26bと、蓋係止部26cとが形成されている。第1係止部26a、第2係止部26b、および蓋係止部26cは、中心軸CXを通るYZ平面を対称面として、それぞれ、第1係止部25a、第2係止部25b、および蓋係止部25cと面対称となる位置に形成されている。第1係止部26a、第2係止部26b、および蓋係止部26cのそれぞれは、第1係止部25a、第2係止部25b、および蓋係止部25cのそれぞれと同様の形状を有するため、説明を省略する。
【0014】
図2に示すように、第1容器20は、上記構成の他に、第1セル31と、第2セル32と、隔壁33と、連通部36とを有する。第1セル31と第2セル32とは、第1容器20の内部空間が隔壁33により区画されて形成された空間である。第1セル31および第2セル32は、第1面21から第2面22に向かう第1方向である+Y方向と直交する第2方向であるZ方向に隣り合う。第2セル32は、隔壁33と第2方向において対向する第3面23と、第2面22とにより区画されている。隔壁33は、第1面21を基端として、第1面21から第2面22へ向かう方向に延びる。そして、隔壁33の先端は、第2面22と離れている。本実施形態において、隔壁33の先端は、第1方向について、第1面21の内面と第2面22の内面との中央部CPと、第2面22との間に位置する。
【0015】
隔壁33は、第1セル面34と第3セル面35とを有する。第1セル31は、さらに第2セル面37を有する。第2セル面37は、隔壁33と対向する面である。第1セル面34および第2セル面37は、第1セル31を区画する面である。第1セル面34は、第2面22に近づくにつれ、第3面23に近づくように傾斜する。これにより、後に詳述するように、第1セル31に液体が入れられた場合、液体に混入した空気を抜け易くすることができる。
【0016】
連通部36は、隔壁33と第2面22との間に形成されており、第1セル31と第2セル32とを連通させる。つまり、連通部36は、隔壁33の先端と第2面22との隙間であるとも言える。第1セル31と第2セル32とは、連通部36のみによって連通している。本実施形態では、連通部36は、第1方向、すなわち第1容器20については+Y方向について、中央部CPと第2面22の内面との間に位置する。
【0017】
第2セル面37は、第1面21と、第4面24とを連結する。第2セル面37は、第2面22に近づくにつれ、第3面23から遠ざかるように傾斜する。つまり、第4面24が水平面に設置され底面となり、第3面23が上面となる第1姿勢において、第2セル面37は、第2面22に近づくにつれ下方に位置するように傾斜する。これにより、後に詳述するように、第1セル31に入れられた液体を吸い出し易くすることができる。なお、第1姿勢では、第2セル32に対して第1セル31が下方に位置する。第1姿勢では、後述するように、挿入口29からピペット300が挿入されて第1細胞懸濁液401が注入される。
【0018】
本実施形態では、第2セル面37と第4面24との間には、隙間が形成されている。図1に示すように、第4面24は、X方向の中央部分が切り欠かれており、第1容器20の+X方向の端部と、-X方向の端部とに形成されている。第4面24が形成されていることにより、細胞培養容器100の第1姿勢では、第1セル面34および第2セル面37が水平面に対して傾斜した状態を容易に維持することができる。
【0019】
図2に示すように、挿入口29の少なくとも一部は、第1面21から第2面22に向かう第1方向と直交する第2方向であるZ方向に細胞培養容器100を投影した場合に、連通部36と重なる位置に形成されている。これにより、ピペット300などの器具を挿入口29から連通部36を通るように、概ね第2方向に沿うように挿入することができるため、作業性を向上させることができる。本実施形態では、第1方向、すなわち、第1容器20については+Y方向において、挿入口29は、投影した場合に、第1面21の内面と第2面22の内面との中央部CPと、第2面22との間に位置する。
【0020】
図1に示すように、第2容器40は、第1容器20と同様に、第1面41と、第2面42と、第3面43と、第4面44と、第5面45と、第6面46と、保持部48と、挿入口49と、を有する。第2容器40の保持部48は、第1容器20の保持部28と、大きさが異なる。具体的には、円環形状である保持部48の外径は、保持部28の内径よりも小さい。そして、図2に示すように、第1容器20と第2容器40とが一体化された際、保持部48は保持部28により覆われる。また、保持部48の外径は、培養膜10の外径と略同一である。保持部48の+Y方向端面と、第1容器20の保持部28より内側の第1面21との間に培養膜10が挟まれた状態で、第1容器20と第2容器40とが一体化される。これにより、培養膜10は、第1容器20と第2容器40とにより保持される。
【0021】
図1に示すように、第5面45には、第1係止凹部45aと、第2係止凹部45bと、蓋係止部45cとが形成されている。蓋係止部45cは、第1容器20に係る蓋係止部25cと同様の構成であるため、説明を省略する。第1係止凹部45aおよび第2係止凹部45bのそれぞれは、第1容器20と第2容器40とが一体化された場合に、第1容器の第1係止部25aおよび第2係止部25bのそれぞれの先端に対応する位置に形成されている。第1係止凹部45aおよび第2係止凹部45bは、Y方向に長い矩形形状を有し、第5面25に対して凹んでいる。第1容器20と、第2容器40とが一体化される際には、第1係止部25aの先端が第1係止凹部45aに嵌り、第2係止部25bの先端が第2係止凹部45bに嵌る。第6面46にも、第5面25と同様に、第1容器20の第1係止部26aおよび第2係止部26bに対応する、第1係止凹部46aおよび第2係止凹部46bが形成されている。そして、第1容器20と、第2容器40とが一体化される際には、第1係止部26aおよび第2係止部26bのそれぞれの先端が、第1係止凹部46aおよび第2係止凹部46bのそれぞれに嵌る。このように、第1容器20の第1係止部25a,26a、第2係止部25b,26bのそれぞれと、第2容器40の第1係止凹部45a,46a、第2係止凹部45b,46bのそれぞれとが係合されることにより、第1容器20と第2容器40とが一体化される。例えば、培養膜10を交換する際は、第1容器20と第2容器40との係合を解き、培養を行う場合には、第1容器20と第2容器40とを係合させ、第1容器20と第2容器40とを一体に扱うことができる。よって、細胞培養容器100を用いた作業の作業性を向上させることができる。
【0022】
第1面41、第2面42、第3面43、第4面44、第5面45、第6面46、および挿入口49は、それぞれ、第1容器20の第1面21、第2面22、第3面23、第4面24、第5面25、第6面26、および挿入口29と同様の構成であるため、説明を省略する。図2に示すように、第2容器40は、上記構成の他に、第1セル51と、第2セル52と、隔壁53と、連通部56とを有する。隔壁53は、第1セル面54および第3セル面55を有する。第1セル51は、さらに、第2セル面57を有する。第1セル51と、第2セル52と、隔壁53と、連通部56、第2セル面57は、それぞれ、第1容器20の第1セル31と、第2セル32と、隔壁33と、連通部36、および第2セル面37と同様の構成であるため、説明を省略する。
【0023】
A2.細胞培養容器を用いた液-気細胞培養方法:
細胞培養容器100を用いた液-気細胞培養方法について説明する。図3は、細胞培養容器100を用いた細胞の液-気細胞培養方法の工程を示すフローチャートである。図4図10は、図3に示す各工程を説明するための細胞培養容器100の模式図である。図4図10には、細胞培養容器100の使用態様における、X軸と、Y軸と、Z軸とが示されている。Z方向は、鉛直方向を示し、XY平面は、水平面を示す。+Z方向を上、-Z方向を下とも呼ぶ。
【0024】
まず図3の工程P10にて、図4に示す、第2容器40の挿入口49に第1蓋201が装着されている細胞培養容器100が用意される。第1蓋201は、例えば、軟質樹脂や、エラストマーなどの弾性を有する材料で作製されている。軟質樹脂としては、LDPE(Low Density Polyethylene)、PP(polypropylene)を挙げることができる。エラストマーとしては、シリコーンゴム、ポリウレタン、オレフィン系熱可塑性エラストマー等を挙げることができる。第1蓋201は、挿入口49を覆う形状を有する。挿入口49に取り付けられる際には、第1蓋201が引き延ばされて、挿入口49を覆うように装着される。これにより、挿入口49のZ方向の端面は、第1蓋201と密着し、第2容器40は、気密に保たれる。
【0025】
図3の第1工程P20では、細胞培養容器100は第2セル32に対して第1セル31が下方に位置する第1姿勢(注入姿勢)に配置される。この第1姿勢にて、第1容器20の挿入口29を介して第1容器20に第1細胞懸濁液401が注入される。第1細胞懸濁液401には、第1細胞402と、第1細胞402用の液体である第1培地とが含まれている。第1細胞懸濁液401が注入されることにより、第1細胞402が培養膜10に播種される。図4に示すように、第1工程P20では、ピペット300を用いて、第1細胞懸濁液401が注入される。この際、ピペット300は、挿入口29から連通部36を通り、先端が第4面24近傍まで挿入される。培養膜10は、第4面と交差する第1面21に配置されており、また、ピペット300の培養膜10に向かう移動は、隔壁33により制限される。よって、ピペット300と培養膜10との接触を抑制することができる。これにより、培養膜10の破損を抑制することができる。なお、本実施形態では、作業者によりピペット300を用いて作業されるが、人の手を介さず、装置などを用いて自動で注入作業が行われてもよい。本実施形態に係る細胞培養容器100によれば、器具の培養膜10に向かう移動は、隔壁33により制限される。このため、培養膜10を損傷させないための器具の操作に係る高い位置精度は要求されず、自動で行うことができる。これにより、作業時間を短縮することができる。第1細胞懸濁液401が注入された後、挿入口29に第1蓋201が装着される。
【0026】
図3の第2工程P30では、細胞培養容器100は、図5に示すように第1容器20が第2容器40の上方に位置する第2姿勢(第1定着姿勢)に配置され、第1細胞懸濁液401に含まれる第1細胞402が培養膜10に定着するまで細胞培養容器100は第2姿勢に維持される。第2姿勢は、第2容器40の第2面42が底面となり、第1容器20の第2面22が上面となる姿勢である。
【0027】
第2工程P30では、細胞培養容器100は、図4に示す第1姿勢の状態から図5に示す第2姿勢となるように回転される。挿入口29には、第1蓋201が装着されているため、挿入口29からの第1細胞懸濁液401の流出は抑制される。なお、図5では、第1細胞懸濁液401が第1セル31のみに入っている状態が描かれているが、第1細胞懸濁液401の量が多い場合などには、第2セル32にも第1細胞懸濁液401が入る場合がある。培養膜10の膜面が水平方向に配置されることにより、第1細胞402の培養膜10への定着が促される。第1細胞402が培養膜10に定着するまでの期間は、例えば、半日から1日で程度である。
【0028】
図3の第3工程P40では、細胞培養容器100は第1姿勢となるように配置され、細胞培養容器100は第1姿勢に維持され、第1細胞402の培養が継続される。第3工程P40では、細胞培養容器100は、図5に示す第2姿勢の状態から、図6に示す第1姿勢となるように回転される。その後、挿入口29,49の各々に装着されていた第1蓋201,201が取り外され、第2蓋202が装着される。
【0029】
ここで、第2蓋202について説明する。第2蓋202は、硬質樹脂材料で作製されている。硬質樹脂材料としては、ポリスチレンや、ポリカーボネート、アクリル樹脂等が挙げられ、特に透明な樹脂が好ましい。第2蓋202は、挿入口29,49を覆うように細胞培養容器100に装着される。第2蓋202は、-Z方向に向かって開放された箱形状を有する。第2蓋202の内周面には、内側に向かって突出する4つの突出部202aが形成されている。4つの突出部202aの各々は、第2蓋202が細胞培養容器100に装着された場合に、細胞培養容器100の蓋係止部25c,26c,45c,46cの各々と対応する位置に形成されている。これにより、4つの突出部202aの各々は、蓋係止部25c,26c,45c,46cの各々と当接し、第2蓋202の底面が挿入口29,49と離隔した状態で配置される。第2蓋202が装着されることにより、培養中のコンタミネーションが抑制される。第2蓋202は、挿入口29,49の端面と離隔した状態で細胞培養容器100に装着されるため、細胞培養容器100の内部空間と、外部とは連通した状態が維持される。これにより、細胞培養容器100の内部空間の気体の置換を行うことができる。培養中は、細胞培養容器100は、目標の酸素濃度や二酸化炭素濃度に調整されたインキュベータ内に配置される。適宜、第1培地の交換が行われ、第1細胞402がコンフルエントになるまで培養される。培養期間は、例えば、数日程度である。
【0030】
図3の工程P50では、第2蓋202が取り外され、第1セル31に第1培地が加えられ、挿入口29に第1蓋201が装着される。第4工程P60では、第1姿勢に配置された細胞培養容器100の第2容器40に第2細胞懸濁液403が第2容器40の挿入口49を介して注入される。第2細胞懸濁液403には、第2細胞404と、第2細胞404用の液体である第2培地とが含まれている。第2細胞懸濁液403が注入されることにより、第2細胞懸濁液403に含まれる第2細胞404が培養膜10に播種される。図7に示すように、第4工程P60では、第1工程P20と同様にピペット300を用いて第2細胞懸濁液403が注入される。培養膜10は、第4面44と交差する第1面41に配置されており、また、ピペット300の培養膜10に向かう移動は、隔壁53により制限される。よって、ピペット300と培養膜10との接触を抑制することができる。第2細胞懸濁液403が注入された後、挿入口49に第1蓋201が装着される。
【0031】
図3の第5工程P70にて、細胞培養容器100は第2容器40が第1容器20の上方に位置する第3姿勢(第2定着姿勢)に配置され、第2細胞懸濁液403に含まれる第2細胞404が培養膜10に定着するまで、細胞培養容器100は第3姿勢に維持される。第3姿勢は、第1容器20の第2面22が底面となり、第2容器40の第2面42が上面となる姿勢である。
【0032】
図8は、細胞培養容器100が、第1姿勢から第3姿勢になるように回転される途中の状態を示す図である。第1容器20には、上部に空間を残した状態で、第1細胞懸濁液401が入れられている。空間の空気は、細胞培養容器100の回転に応じて、第1容器20の上方へ移動する。ここで、第1容器20の内部空間が、隔壁33により区画されていない場合には、空気は、培養膜10の下方へ移動してしまう。この点、本実施形態では、第1容器20の内部空間は、隔壁33により区画されているため、空気は、第2セル32内に留められる。これにより、培養膜10の下方における空気の残留が抑制され、第1細胞402は第1培地と接触された状態が確保される。さらに、回転の際に、第1細胞懸濁液401に泡が生じた場合にも、泡は第2セル32に留められる。よって、培養を良好に行うことができる。図9に示す第3姿勢では、培養膜10の膜面が水平方向に配置されることにより、第2細胞404の培養膜10への定着が促される。第2細胞404が培養膜10に定着するまでの期間は、例えば、半日から1日で程度である。
【0033】
図3の第6工程P80では、細胞培養容器100は第1姿勢となるように配置され、細胞培養容器100は、第1姿勢に維持されることで、第2細胞404の培養が継続される。第6工程P80では、細胞培養容器100は、図9に示す第3姿勢の状態から図10に示す第1姿勢となるように回転される。その後、挿入口29,49の各々に装着されていた第1蓋201,201が取り外され、第2蓋202が装着される。第3工程P40と同様に、適宜、第2培地の交換が行われ、第2細胞404がコンフルエントになるまで培養される。培養期間は、例えば、数日程度である。第2細胞404の培養が終了すると、本培養工程は、終了する。
【0034】
培養終了後、第1細胞402および第2細胞404が培養された培養膜10について、バリヤ性を評価するために、経上皮電気抵抗(TEER)が測定される場合には、挿入口29,49の各々に2本のTEER電極の各々が挿入される。細胞培養容器100は、培養膜10を挟んで対向するように、挿入口29と挿入口49とが形成されている。よって、挿入口29と挿入口49とに、2本のTEER電極の各々を挿入することで、測定を容易に行うことができる。なお、経上皮電気抵抗が測定されるのは、培養工程の終了後に限られない。例えば、培養膜10に第1細胞402が培養された後、第2容器40に第1培地が注入された状態で、測定することもできる。すなわち、培養膜10の片面のみに細胞が培養された状態でも、TEERを測定可能にすることができる。
【0035】
A3.細胞培養容器を用いた液-液細胞培養方法:
細胞培養容器100を用いた液-液細胞培養方法について説明する。図11は、細胞培養容器100を用いた細胞の液-液細胞培養方法の工程を示すフローチャートである。図3と同じ工程については、同じ符号を付し、詳細な説明は、適宜省略する。
【0036】
第1工程P20にて第1容器20に第1細胞懸濁液401が注入された後、工程P25では、第2容器40に第1培地がピペット300にて注入される。これにより、細胞培養膜12の両面が、第1培地に接触した状態で、第1細胞402の培養を行うことができる。その後、第2工程P30と、第3工程P40とが行われ、第1細胞402がコンフルエントになるまで培養される。工程P65では、第2細胞404の培養を行うため、第2容器40から第1培地が例えばピペット300を用いて吸い出され、第2細胞懸濁液403が注入される。工程P65を第4工程とも呼ぶ。その後、挿入口49に第1蓋201が装着される。ここで、第2セル面57は、傾斜しているため、第1培地は、第2セル面57の下方に溜まる。よって、第2容器40から第1培地を容易に吸い出すことができる。なお、第1培地の吸い出しは、アスピレーターにより行われてもよい。本実施形態に係る細胞培養容器100によれば、器具の培養膜10に向かう移動は、隔壁33により制限される。このため、培養膜10を損傷させないための器具の操作に係る高い位置精度は要求されず、自動で行うことができる。その後、第5工程P70と、第6工程P80とが行われることにより、第2細胞がコンフルエントになるまで培養され、本培養工程は終了する。
【0037】
以上、説明した実施形態によれば、第1容器20は、第1セル31と第2セル32とを区画する隔壁33を備え、第2容器40は、第1セル51と第2セル52とを区画する隔壁53とを有する。これにより、ピペット300などが挿入口29,49から挿入される際、ピペット300の培養膜10への接触の可能性は、隔壁33,53によって低減される。これにより、ピペット300が培養膜10に接触しないように、ピペット300の操作を慎重に行う程度を低減できるため、作業性を向上させることができる。また、第1面21から第2面22に向かう第1方向と直交する第2方向に細胞培養容器100を投影した場合に、挿入口29の少なくとも一部は、連通部36と重なる位置に形成されている。これにより、ピペット300を挿入口29から連通部36を通るように、第2方向に沿って挿入することができるため、作業性を向上させることができる。また、隔壁33は、第2面22に近づくにつれ、第3面23に近づくように傾斜する第1セル面34を有している。これにより、細胞培養容器100が第1姿勢に配置された場合、培養膜10の下における空気の残留は抑制されるため、培養膜10での培養を良好に行うことができる。また、第1セル31は、第2面22に近づくにつれ、第3面23から遠ざかるように傾斜する第2セル面37を有する。これにより、細胞培養容器100に入れられた液体は、第1セル31の第2セル面37の下方に溜まるため、液体を吸い出し易くすることができる。また、細胞培養容器100は、第4面24が水平面に設置された細胞培養容器100の姿勢において、第2セル面37が水平方向に対して傾斜するように支持する第4面24を備える。これにより、細胞培養容器100の第4面24が水平面に設置されることにより、第2セル面37は水平面に対して傾斜されるため、液体の吸い出しなどの作業の作業性を向上させることができる。また、上記、第1工程P20から第6工程P80を備え、細胞培養容器100を用いる細胞培養方法を用いることにより、上記形態の細胞培養容器において、良好に共培養を行うことができる。
【0038】
B.他の実施形態:
(B1)上記実施形態では、第1容器20と第2容器40との両方に第4面24,44が形成されている。これに対して、第1容器20と第2容器40とのいずれか一方に第4面24および第4面44のいずれかが形成されている構成としてもよい。第1容器20と第2容器40とは、一体化されて使用されるため、第1容器20と第2容器40とのいずれか一方に第4面24を有することにより、第2セル面37,57を水平面に対して傾斜した状態に維持することができる。
【0039】
(B2)上記実施形態では、第2セル面37は、第2面22に至るまで傾斜している。これに対して、第2セル面37は、第2面22に至る途中まで傾斜している構成としてもよい。一部分が傾斜している場合にも、液体を一部分に集めることができ、液体を吸い出し易くすることができる。
【0040】
(B3)上記実施形態では、隔壁33の先端は、中央部CPと、第2面22との間に位置する。これに対して、隔壁33の先端は、第1方向について、中央部CPと第1面21との間、または、中央部CPに位置する構成としてもよい。隔壁33の先端位置に拘わらず、隔壁33があることによって、器具が挿入口29から挿入される際、器具の培養膜10への接触の可能性を低減させることができる。隔壁53についても同様である。ただし、上記実施形態において、挿入口29と隔壁33と培養膜10との位置は以下の位置関係を有することが好ましい。すなわち、挿入口29の先端開口と培養膜10(培養膜10の任意の部分)とを繋ぐ線分上に、隔壁33が位置していることが好ましい。こうすることで、ピペット300などの棒状の器具を挿入口29から細胞培養容器100内部に挿入した場合に、隔壁33が障壁となって器具が培養膜10に接触することをより確実に防止できる。
【0041】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0042】
10…培養膜、11…膜支持部、12…細胞培養膜、20…第1容器、21,41…第1面、21a…孔、22,42…第2面、23,43…第3面、24,44…第4面、25,45…第5面、25a…第1係止部、25b…第2係止部、25c,26c,45c,46c…蓋係止部、26,46…第6面、26a…第1係止部、26b…第2係止部、28,48…保持部、29,49…挿入口、31,51…第1セル、32,52…第2セル、33,53…隔壁、34,54…第1セル面、35,55…第3セル面、36,56…連通部、37,57…第2セル面、40…第2容器、45a…第1係止凹部、45b…第2係止凹部、46a…第1係止凹部、46b…第2係止凹部、100…細胞培養容器、201…第1蓋、202…第2蓋、202a…突出部、300…ピペット、401…第1細胞懸濁液、402…第1細胞、403…第2細胞懸濁液、404…第2細胞、CP…中央部、CX…中心軸、P10,P25,P50,P65…工程、P20…第1工程、P30…第2工程、P40…第3工程、P60…第4工程、P70…第5工程、P80…第6工程
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11