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特許7452494走行位置決定装置、走行位置決定方法、および走行位置決定プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】走行位置決定装置、走行位置決定方法、および走行位置決定プログラム
(51)【国際特許分類】
   B60W 40/10 20120101AFI20240312BHJP
   G08G 1/00 20060101ALI20240312BHJP
   G08G 1/09 20060101ALI20240312BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20240312BHJP
   B60W 60/00 20200101ALI20240312BHJP
   B60W 40/06 20120101ALI20240312BHJP
【FI】
B60W40/10
G08G1/00 J
G08G1/09 F
G08G1/16 A
B60W60/00
B60W40/06
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021090408
(22)【出願日】2021-05-28
(65)【公開番号】P2022182706
(43)【公開日】2022-12-08
【審査請求日】2023-04-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100106149
【弁理士】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】清水 駿
(72)【発明者】
【氏名】岡田 稔
(72)【発明者】
【氏名】伊能 寛
【審査官】鶴江 陽介
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-283176(JP,A)
【文献】特開2016-016812(JP,A)
【文献】特開2020-163935(JP,A)
【文献】国際公開第2018/163901(WO,A1)
【文献】特開2021-056556(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/00-60/00
G08G 1/00-1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動運転を実行可能な車両(A)の走行位置を決定する走行位置決定装置であって、
走行予定の車線を前記車両が走行した場合における、路面および前記車両のタイヤについて、劣化状況を予測する予測部(52;120)と、
前記車線を走行する場合の前記走行位置について、基準位置に対する前記車線の横方向におけるオフセットを、前記劣化状況に基づいて、前記タイヤの劣化の進行度合が前記タイヤの交換スケジュールに適合するように決定する走行位置決定部(53;130)と、
を備える走行位置決定装置。
【請求項2】
前記走行位置を含む前記車両の走行経路を複数の前記車両に配信する配信部(140)を備える請求項1に記載の走行位置決定装置。
【請求項3】
前記走行位置決定部は、特定の前記車両の前記走行位置について、特定の前記車両の先行車両に対するオフセットを決定し、
前記走行位置を特定の前記車両の後方車両に配信する配信部(54)をさらに備える請求項1に記載の走行位置決定装置。
【請求項4】
自動運転を実行可能な車両(A)の走行位置を決定するために、プロセッサ(102)によって実行される走行位置決定方法であって、
走行予定の車線を前記車両が走行した場合における、路面および前記車両のタイヤについて、劣化状況を予測する予測工程(S120;S220)と、
前記車線を走行する場合の前記走行位置について、基準位置に対する前記車線の横方向におけるオフセットを、前記劣化状況に基づいて、前記タイヤの劣化の進行度合が前記タイヤの交換スケジュールに適合するように決定する走行位置決定工程(S110,S140;S210,S240)と、
を含む走行位置決定方法。
【請求項5】
前記走行位置を含む前記車両の走行経路を複数の前記車両に配信する配信工程(S150)を備える請求項に記載の走行位置決定方法。
【請求項6】
前記走行位置決定工程では、特定の前記車両の前記走行位置について、特定の前記車両の先行車両に対するオフセットを決定し、
前記走行位置を特定の前記車両の後方車両に配信する配信工程(S250)をさらに含む請求項に記載の走行位置決定方法。
【請求項7】
自動運転を実行可能な車両(A)の走行位置を決定するために、プロセッサ(102)に実行させる複数の命令を含む走行位置決定プログラムであって、
前記命令は、
走行予定の車線を前記車両が走行した場合における、路面および前記車両のタイヤについて、劣化状況を予測させる予測工程(S120;S220)と、
前記車線を走行する場合の前記走行位置について、基準位置に対する前記車線の横方向におけるオフセットを、前記劣化状況に基づいて、前記タイヤの劣化の進行度合が前記タイヤの交換スケジュールに適合するように決定させる走行位置決定工程(S110,S140;S210,S240)と、
を含む走行位置決定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書における開示は、自動運転を実行可能な車両の走行位置を決定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、轍の発生を抑制するために道路の車線の中央位置に対する走行中の車両ごとにオフセット量を設定する技術が開示されている。この技術では、検出された区画線に基づいて、車線の中央位置が推定され、推定された車線の中央位置と車幅とに応じて、車線の中央位置に対する車幅方向のオフセット量が算出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-163935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、オフセット量の決定方法について具体的に開示されていない。故に、特許文献1の技術は、車両の走行位置を適切に決定できない虞がある。
【0005】
開示される目的は、車両の走行位置を適切に決定可能な走行位置決定装置、走行位置決定方法、および走行位置決定プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この明細書に開示された複数の態様は、それぞれの目的を達成するために、互いに異なる技術的手段を採用する。また、特許請求の範囲およびこの項に記載した括弧内の符号は、ひとつの態様として後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例であって、技術的範囲を限定するものではない。
【0007】
開示された走行位置決定装置のひとつは、自動運転を実行可能な車両(A)の走行位置を決定する走行位置決定装置であって、
走行予定の車線を車両が走行した場合における、路面および車両のタイヤについて、劣化状況を予測する予測部(52;120)と、
車線を走行する場合の走行位置について、基準位置に対する車線の横方向におけるオフセットを、劣化状況に基づいて、タイヤの劣化の進行度合がタイヤの交換スケジュールに適合するように決定する走行位置決定部(53;130)と、
を備える。
【0008】
開示された走行位置決定方法のひとつは、自動運転を実行可能な車両(A)の走行位置を決定するために、プロセッサ(102)によって実行される走行位置決定方法であって、
走行予定の車線を車両が走行した場合における、路面および車両のタイヤについて、劣化状況を予測する予測工程(S120;S220)と、
車線を走行する場合の走行位置について、基準位置に対する車線の横方向におけるオフセットを、劣化状況に基づいて、タイヤの劣化の進行度合がタイヤの交換スケジュールに適合するように決定する走行位置決定工程(S110,S140;S210,S240)と、
を含む。
【0009】
開示された走行位置決定プログラムのひとつは、自動運転を実行可能な車両(A)の走行位置を決定するために、プロセッサ(102)に実行させる複数の命令を含む走行位置決定プログラムであって、
命令は、
走行予定の車線を車両が走行した場合における、路面および車両のタイヤについて、劣化状況を予測させる予測工程(S120;S220)と、
車線を走行する場合の走行位置について、基準位置に対する車線の横方向におけるオフセットを、劣化状況に基づいて、タイヤの劣化の進行度合がタイヤの交換スケジュールに適合するように決定させる走行位置決定工程(S110,S140;S210,S240)と、
を含む。
【0011】
これらの開示によれば、走行位置は、車線を車両が走行した場合における路面および車両のタイヤの少なくとも一方について予測された劣化状況に基づいて、基準位置に対する車線の横方向におけるオフセットを、決定される。故に、当該走行位置を走行する車両は、路面およびタイヤの少なくとも一方の劣化がより抑制され易くなり得る。したがって、車両の走行位置が適切に決定可能となり得る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】自動運転制御システムを示す図である。
図2】車両が有する機能の一例を示すブロック図である。
図3】サーバ装置が有する機能の一例を示すブロック図である。
図4】サーバ装置が実行する走行位置決定方法の一例を示すフローチャートである。
図5】第2実施形態における自動運転ECUが有する機能の一例を示すブロック図である。
図6】第2実施形態において自動運転ECUが実行する走行位置決定方法の一例を示すフローチャートである。
図7】第3実施形態における自動運転ECUが有する機能の一例を示すブロック図である。
図8】第3実施形態において自動運転ECUが実行する走行位置決定方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1実施形態)
図1に示すように、本開示の一実施形態による走行制御装置は、サーバ装置100により提供される。サーバ装置100は、センタDCに設置されており、車両Aに搭載された自動運転ECU50とともに、車両Aの自動運転制御システム1を構成している。センタDCと車両Aは、ネットワークNWを介して相互に無線通信可能に構成されている。
【0019】
自動運転ECU50は、高度運転支援機能および自動運転機能の少なくとも一方を実現する電子制御装置である。自動運転ECU50は、図2に示すように、車両に搭載された外界センサ10、内界センサ20、地図データベース(以下、「地図DB」)30、車載通信器40、および車両制御ECU60と通信バス等を介して接続されている。
【0020】
外界センサ10は、車両Aの外界データを取得するセンサである。外界センサ10は、外界に存在する物標をセンシングして外界データを取得する、物標センシングタイプである。物標センシングタイプの外界センサ10は、例えばレーダ、LiDAR、カメラ、およびソナー等のうち、少なくとも一種類である。外界センサ10は、車両5の外界に存在するGNSS(Global Navigation Satellite System)の人工衛星から測位信号を受信して外界データを取得する、GNSS受信機を含んでいてもよい。
【0021】
内界センサ20は、車両5の内界における特定の運動物理量をセンシングして内界データを取得する、物理量センシングタイプである。当該タイプの内界センサは、例えば走行速度センサ、加速度センサ、およびジャイロセンサ等のうち、少なくとも一種類である。内界センサ20は、車両Aの内界において乗員の特定状態または特定操作をセンシングして内界データを取得する、乗員センシングタイプを含んでいてもよい。当該タイプの内界センサ20は、例えば始動センサ、ドアロックセンサ、ドア開閉センサ、操舵センサ、アクセルセンサ、ブレーキセンサ、方向指示センサ、着座センサ、ドライバステータスモニタ、および車内機器センサ等のうち、少なくとも一種類である。
【0022】
図DB30は、不揮発性メモリであって、リンクデータ、ノードデータ、道路形状、構造物等の地図データを格納している。地図データは、道路形状および構造物の特徴点の点群からなる三次元地図であってもよい。なお、3次元地図は、REM(登録商標)によって撮像画像をもとに生成されたものであってもよい。また、地図データには、交通規制情報、道路工事情報、気象情報、および信号情報等が含まれていてもよい。地図DB30に格納された地図データは、車両Aの外部に設置されたサーバから配信される最新の情報に基づいて、定期的または随時に更新されてよい。
【0023】
車載通信器40は、車両Aに搭載される通信モジュールである。車載通信器40は、LTE(Long Term Evolution)および5G等の通信規格に沿ったV2N(Vehicle to cellular Network)通信の機能を少なくとも有しており、車両Aの周囲の基準局からRTK測位にて使用される補正情報を受信可能である。車載通信器40は、取得した補正情報をサーバ装置100へと逐次提供する。
【0024】
自動運転ECU50は、高度運転支援機能および自動運転機能の少なくとも一方を実現する電子制御装置である。自動運転ECU50は、メモリ50aおよびプロセッサ50bを、少なくとも1つずつ含んで構成されるコンピュータである。メモリ50aは、コンピュータにより読み取り可能なプログラムおよびデータを非一時的に格納又は記憶する、例えば半導体メモリ、磁気媒体および光学媒体等のうち少なくとも一種類の非遷移的実体的記憶媒体である。メモリ50aは、プロセッサ50bによって実行される種々のプログラムを格納している。プロセッサ50bは、プログラムに含まれる複数の命令を実行させることで、種々の機能を発揮する。例えば、自動運転ECU50は、外界センサ10、内界センサ20、地図DB30、および車載通信器40からの情報等に基づいて車両Aの走行経路を生成する。自動運転ECU50は、当該走行経路に沿った運転支援または自律走行を行うように、車両制御ECU60に指令を出力する。
【0025】
車両制御ECU60は、車両Aの加減速制御および操舵制御を行う電子制御装置である。車両制御ECU60としては、加速制御を行うアクセルECU、減速制御を行うブレーキECU、操舵制御を行う操舵ECU等がある。車両制御ECU60は、車両Aに搭載された舵角センサ、車速センサ等の各センサから出力される検出信号を取得し、電子制御スロットル、ブレーキアクチュエータ、EPS(Electric Power Steering)モータ等の各走行制御デバイスへ制御信号を出力する。車両制御ECU60は、自動運転において車両Aの走行経路を自動運転ECU50から取得することで、当該走行経路に従う運転支援または自律走行を実現するように、各走行制御デバイスを制御する。
【0026】
センタDCは、通信装置90と、サーバ装置100とを備える。通信装置90は、サーバ装置100と電気的に接続された通信デバイスであり、ネットワークNWを介したセンタDCと車両Aとの通信を可能とする。
【0027】
サーバ装置100は、メモリ101およびプロセッサ102を、少なくとも1つずつ含んで構成されるコンピュータである。メモリ101は、コンピュータにより読み取り可能なプログラムおよびデータを非一時的に格納又は記憶する、例えば半導体メモリ、磁気媒体および光学媒体等のうち少なくとも一種類の非遷移的実体的記憶媒体である。メモリ101は、後述の走行位置決定プログラム等、プロセッサ102によって実行される種々のプログラムを格納している。
【0028】
プロセッサ102は、例えばCPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)およびRISC(Reduced Instruction Set Computer)-CPU等のうち少なくとも一種類を、コアとして含む。プロセッサ102は、メモリ101に記憶された測位プログラムに含まれる複数の命令を、実行する。これによりサーバ装置100は、車両Aの現在位置を推定するための複数の機能部を、構築する。このようにサーバ装置100では、メモリ101に格納された走行制御プログラムが複数の命令をプロセッサ102に実行させることで、複数の機能部が構築される。具体的に、サーバ装置100には、図3に示すように、走路情報収集部110、予測部120、オフセット決定部130および配信部140等の機能部が構築される。
【0029】
走路情報収集部110は、規定された走路の情報(走路情報)を収集する。走路情報収集部110は、例えば、予め設定されたエリアの走路情報を収集すればよい。走路情報収集部110は、後述の劣化モデルに入力する情報、またはその関連情報を、走路情報として収集する。例えば、走路情報は、走路の画像であってもよいし、画像等の検出情報に基づき推定された走路の劣化状態を示すパラメータであってもよい。なお、ここで走路の劣化状態とは、例えば轍の深さやアスファルトのひび割れ有無等である。なお、走路情報として、当該走路の整備からの経過時間、走路の存在地域における気温変化等を収集してもよい。走路情報収集部110は、特定の期間の走路情報を蓄積して収集してよい。特定の期間は、例えば、所定のタイミングから地図生成の前日までの期間である。または、走路情報収集部110は、前日の最終走行車等、特定の車両Aによって収集されたデータを走路情報として収集してもよい。
【0030】
予測部120は、複数の車両Aについて、走行予定の車線の横方向における目標位置を決定するための予測処理を実行する。ここでの目標位置は、車両Aの走行経路を時系列に規定するノードの位置である。また、ここでの横方向とは、車線の延伸方向に直交する方向である。目標位置は、「走行位置」の一例である。例えば、予測部120は、各車線の走路についての劣化予測と、各車線を走行する車両Aのタイヤについての劣化予測との、2つの予測処理を実行する。
【0031】
路面の劣化予測において、予測部120は、入力情報に対して走路の劣化度合の分布和(劣化分布和)を出力する走路劣化モデルに基づき、劣化状況を予測すればよい。入力情報は、例えば、走路情報、後述のオフセットを仮設定した走行分布、車両Aの重量等を含む。
【0032】
タイヤの劣化予測において、予測部120は、入力情報に対してタイヤの劣化度合を示すパラメータを出力するタイヤ劣化モデルに基づき、劣化状況を予測すればよい。入力情報は、例えば、走路情報、後述のオフセットを仮設定した走行分布、車両Aの重量、タイヤの摩擦係数等を含む。
【0033】
オフセット決定部130は、車両Aの目標位置について、基準位置(例えば車線中央)に対する横方向のオフセットを決定する。例えば、オフセット決定部130は、走路を走行する車両Aについて、1台当たりの走行位置の誤差分布(走行分布)を算出する。そして、オフセット決定部130は、当該走路を走行予定の複数の車両Aの走行分布について、オフセットを仮設定する。オフセット決定部130は、走路およびタイヤの劣化予測結果に基づき、目標位置毎に、オフセット調整を実施する。オフセット決定部130は、走路の劣化度合の分布和が規定の態様になり、且つ各車両Aにおけるタイヤの劣化の進行度合が規定の態様となるように、オフセットを調整する。
【0034】
走路の劣化度合について、オフセット決定部130は、例えば所定の理想劣化分布和との面積差分および当該理想劣化分布和外の面積が許容範囲内に収まるほど小さい場合に、劣化分布和が規定の態様となったと判断すればよい。
【0035】
タイヤの劣化の進行度合について、オフセット決定部130は、例えば各車両Aでのタイヤの交換スケジュールに適合した進行度合となった場合に、規定の態様となったと判断すればよい。一例として、オフセット決定部130は、各車両Aにおいてタイヤ交換が必要となる劣化度合に到達するタイミングが、所定の期間内において規定数以下となる場合に、交換スケジュールに適合した劣化進行度合となったと判断する。
【0036】
なお、オフセット決定部130は、車両Aに運航スケジュールが存在する場合、当該運航スケジュールに応じたオフセット調整を実行してよい。例えば、オフセット決定部130は、車両Aが運航していない期間にタイヤ交換が必要となる劣化度合に到達するように、オフセットを調整してもよい。
【0037】
オフセット決定部130は、出力された走路の劣化分布和およびタイヤの劣化進行度合に基づきオフセットを再調整し、再度各予測結果を出力させる処理を繰り返すことで、各予測結果を規定の態様とすればよい。オフセットの調整が完了すると、オフセット決定部130は、オフセットを設定された目標位置に関する情報を、配信部140へと提供する。オフセット決定部130は、「走行位置決定部」の一例である。
【0038】
配信部140は、オフセット設定済みの目標位置を含む情報を、車両Aへと配信する。具体的には、配信部140は、走行予定の車線に関する車線情報と、オフセットを設定された走行位置とを含む配信データを配信する。車線情報は、例えば車線のリンクデータおよびノードデータであってもよいし、車線の路面、走行区画線等に関する点群データであってもよい。または、車線情報は、走行位置の座標を対応する車線に関連付ける紐付け情報であってもよい。以上の配信データの構成は、「地図データ構造」の一例である。
【0039】
次に、機能ブロックの共同により、サーバ装置100が実行する走行制御方法のフローを、図4に従って以下に説明する。なお、後述するフローにおいて「S」とは、プログラムに含まれた複数命令によって実行される、フローの複数ステップを意味する。
【0040】
まず、S100では、走路情報収集部110が、走路の情報を収集する。次に、S110では、オフセット決定部130が、目標位置のオフセットを設定する。次に、S120では、予測部120が、予測処理を実行する。続くS140では、オフセット決定部130が、予測結果が規定の態様となっているか否かを判定する。規定の態様となっていないと判定されると、本フローがS110へと戻り、オフセットが再設定される。一方で、劣化分布和が規定の態様となっていると判定されると、本フローがS150へと進む。S150では、配信部140が、オフセット設定済みの目標位置を含む地図データを、車両Aへと送信する。以上において、S120が「予測工程」、S110,S140が「走行位置決定工程」、S150が「配信工程」に相当する。
【0041】
以上の第1実施形態によれば、走行位置は、車両の走行が許容される許容領域の範囲内においてランダムに、基準位置に対する車線の横方向におけるオフセットを、決定される。故に、当該走行位置を走行する車両は、路面およびタイヤの少なくとも一方の劣化がより抑制され易くなり得る。したがって、車両の走行位置が適切に決定可能となり得る。
【0042】
(第2実施形態)
第2実施形態では、第1実施形態における走行制御装置の変形例について説明する。図5,6において第1実施形態の図面中と同一符号を付した構成要素は、同様の構成要素であり、同様の作用効果を奏するものである。
【0043】
第2実施形態において、走行制御装置は、車両Aに搭載された自動運転ECU50によって提供される。自動運転ECU50は、先行車情報収集部51、予測部52、オフセット決定部53、配信部54を備える。なお、以下において、機能部の説明のために注目する車両Aを「自車両」と表記し、自車両に先行する車両を「先行車」、後続する車両を「後続車」と表記する場合がある。
【0044】
先行車情報収集部51は、先行車から、目標位置の決定に必要な情報を収集する。具体的には、先行車情報収集部51は、先行車までの車両Aのオフセット情報を含む、走行分布を取得する。先行車情報収集部51は、先行車または当該先行車よりも前を走行する車両Aにて取得された走路情報を取得してもよい。
【0045】
予測部52は、第1実施形態における予測部120と同様に、予測処理を実行する。予測部52は、先行車情報収集部51にて収集された情報に基づいて、予測処理を実行すればよい。
【0046】
オフセット決定部53は、自車両の目標位置のオフセットを決定する。例えば、オフセット決定部53は、複数の車両A全体による劣化分布和が規定の態様になるように、自車両におけるオフセットを再調整すればよい。オフセット決定部53は、「走行位置決定部」の一例である。
【0047】
配信部54は、自車両の目標位置のオフセット情報を、先行車および先行車より前方の複数車両のオフセット情報とともに、後続車へと配信する。配信部54は、自車両にて収集された走路情報がある場合、当該情報を後続車へと配信してもよい。
【0048】
次に、機能ブロックの共同により、第2実施形態の自動運転ECU50が実行する走行位置決定方法のフローを、図6に従って以下に説明する。
【0049】
まず、S200では、先行車情報収集部51が、先行車の情報を収集する。次に、S210では、オフセット決定部53が、目標位置のオフセットを設定する。次に、S220では、予測部52が、路面およびタイヤの劣化状況を予測する。続くS240では、オフセット決定部53が、予測された路面の劣化分布和が規定の態様となっているか否かを判定する。規定の態様となっていないと判定されると、本フローがS210へと戻り、オフセットが再設定される。一方で、劣化分布和が規定の態様となっていると判定されると、本フローがS250へと進む。S250では、配信部54が、現在車までのオフセット設定済みの目標位置を、後続車へと配信する。以上において、S220が「予測工程」、S210,S240が「走行位置決定工程」、S250が「配信工程」に相当する。
【0050】
(第3実施形態)
第3実施形態では、第1実施形態におけるサーバ装置100の変形例について説明する。図7,8において第1実施形態の図面中と同一符号を付した構成要素は、同様の構成要素であり、同様の作用効果を奏するものである。
【0051】
第3実施形態では、自動運転ECU50は、メモリ50aに走行位置決定プログラムを格納している。プロセッサ50bは、走行位置決定プログラムに含まれる複数の命令を実行することで、複数の機能部を、構築する。具体的には、プロセッサ50bは、領域特定部55、オフセット決定部56を機能部として構築する。領域特定部55は、走行予定の車線における走行可能領域を特定する。例えば、領域特定部55は、左右の走行区画線の位置情報と、メモリ50a等に格納された車幅情報とに基づいて走行可能領域を特定すればよい。領域特定部55は、「特定部」の一例である。
【0052】
オフセット決定部56は、目標位置のオフセットを決定する。オフセット決定部56は、走行可能領域内において、ランダムに目標位置を決定する。オフセット決定部56は、モンテカルロ法等に基づいて、目標位置を決定すればよい。オフセット決定部56は、「走行位置決定部」の一例である。
【0053】
次に、機能ブロックの共同により、第3実施形態の自動運転ECU50が実行する測位方法のフローを、図8に従って以下に説明する。
【0054】
まず、S300では、領域特定部55が、走行予定の車線における走行可能領域を特定する。次に、S310では、オフセット決定部56が、目標位置のオフセットをランダムに設定する。以上において、S300が「特定工程」、S310が「走行位置決定工程」に相当する。
【0055】
なお、自動運転ECU50は、サーバ装置100からの目標位置を含んだ地図データ、または先行車からのオフセット情報が取得不可能の場合に、オフセットのランダム設定を実行する構成であってもよい。この場合、自動運転ECU50は、オフセットの許容範囲を、サーバ装置100にて実施されるオフセット設定や、先行車情報に基づき実施されるオフセット設定よりも小さく設定してもよい。
【0056】
(他の実施形態)
この明細書における開示は、例示された実施形態に制限されない。開示は、例示された実施形態と、それらに基づく当業者による変形態様を包含する。例えば、開示は、実施形態において示された部品および/または要素の組み合わせに限定されない。開示は、多様な組み合わせによって実施可能である。開示は、実施形態に追加可能な追加的な部分をもつことができる。開示は、実施形態の部品および/または要素が省略されたものを包含する。開示は、ひとつの実施形態と他の実施形態との間における部品および/または要素の置き換え、または組み合わせを包含する。開示される技術的範囲は、実施形態の記載に限定されない。開示されるいくつかの技術的範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含むものと解されるべきである。
【0057】
上述の実施形態の変形例として、サーバ装置100または自動運転ECU50は、路面の劣化度合が規定値以上に進行した場合、当該路面の補修通知を、サービス事業者の端末に送信してもよい。
【0058】
上述の実施形態において、走行制御装置を構成する専用コンピュータは、サーバ装置100または自動運転ECU50であるとした。これに代えて、走行制御装置を構成する専用コンピュータは、車両Aに搭載された運転制御ECUであってもよいし、車両Aの走行アクチュエータを個別制御するアクチュエータECUであってもよい。または、測位装置を構成する専用コンピュータは、ナビゲーションECUであってもよい。または、測位装置を構成する専用コンピュータは、情報表示系の情報表示を制御する、HCU(HMI(Human Machine Interface) Control Unit)であってもよい。
【0059】
サーバ装置100は、デジタル回路およびアナログ回路のうち少なくとも一方をプロセッサとして含んで構成される、専用のコンピュータであってもよい。ここで特にデジタル回路とは、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、SOC(System on a Chip)、PGA(Programmable Gate Array)、およびCPLD(Complex Programmable Logic Device)等のうち、少なくとも一種類である。またこうしたデジタル回路は、プログラムを格納したメモリを、備えていてもよい。
【0060】
サーバ装置100は、1つのコンピュータ、またはデータ通信装置によってリンクされた一組のコンピュータ資源によって提供され得る。例えば、上述の実施形態におけるサーバ装置100の提供する機能の一部は、他のECUまたはサーバ装置によって実現されてもよい。
【符号の説明】
【0061】
50 自動運転ECU(走行位置決定装置) 100 サーバ装置(走行位置決定装置)、 102 プロセッサ、 52,120 予測部、 53,56,130 オフセット決定部(走行位置決定部)、 54,140 配信部、 55 領域特定部(特定部)、 A 車両。
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図8