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特許7452495吸着式ヒートポンプシステム及び冷熱生成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】吸着式ヒートポンプシステム及び冷熱生成方法
(51)【国際特許分類】
   F25B 17/08 20060101AFI20240312BHJP
【FI】
F25B17/08 E
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021090478
(22)【出願日】2021-05-28
(65)【公開番号】P2022182754
(43)【公開日】2022-12-08
【審査請求日】2022-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】廣田 靖樹
(72)【発明者】
【氏名】釘本 恒
【審査官】庭月野 恭
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-011820(JP,A)
【文献】特開2003-014330(JP,A)
【文献】特開2016-217640(JP,A)
【文献】特開2015-183930(JP,A)
【文献】特開2018-021707(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 17/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸着質を蒸発させる蒸発器と、
前記蒸発器から前記吸着質を吸着する第一吸着器と、
前記第一吸着器から吸着された前記吸着質を吸着する2以上の第二吸着器と、
前記2以上の第二吸着器同士を連結するとともに途中に回収弁が設けられる回収路と、
前記吸着質を吸着した第二吸着器から前記吸着質を吸着する凝縮器と、
前記第一吸着器と前記凝縮器との間に介在する前記2以上の第二吸着器と、
を有する吸着式ヒートポンプシステム。
【請求項2】
前記2以上の第二吸着器の一方における前記第一吸着器からの前記吸着質の吸着と、前記凝縮器における前記2以上の第二吸着器の他方からの前記吸着質の吸着とが同時に行われ、
前記一方の第二吸着器における前記吸着質の吸着が完了する直前に、前記一方の第二吸着器は、前記他方の第二吸着器から、前記回収弁を開放させた前記回収路を介して前記吸着質を吸着する、請求項1に記載の吸着式ヒートポンプシステム。
【請求項3】
吸着質を蒸発させる蒸発器と、
前記蒸発器から前記吸着質を吸着する第一吸着器と、
前記第一吸着器から吸着された前記吸着質を吸着する2以上の第二吸着器と、
前記2以上の第二吸着器同士を連結するとともに途中に回収弁が設けられる回収路と、
前記吸着質を吸着した第二吸着器から前記吸着質を吸着する凝縮器と、
前記第一吸着器と前記凝縮器との間に介在する前記2以上の第二吸着器と、
を用いて、
前記第一吸着器による前記吸着質の吸着によって前記蒸発器で冷熱を生成させ、
前記第二吸着器による前記吸着質の吸着によって前記第一吸着器で冷熱を生成させる、
冷熱生成方法。
【請求項4】
前記2以上の第二吸着器の一方における前記第一吸着器からの前記吸着質の吸着と、前記凝縮器における前記2以上の第二吸着器の他方からの前記吸着質の吸着とが同時に行われ、
前記一方の第二吸着器における前記吸着質の吸着が完了する直前に、前記一方の第二吸着器は、前記他方の第二吸着器から、前記回収弁を開放させた前記回収路を介して前記吸着質を吸着する、請求項3に記載の冷熱生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸着式ヒートポンプシステム及び冷熱生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
吸着式ヒートポンプとして、特許文献1には、蒸発器、吸着器および蓄熱反応器を備え、蓄熱反応器は熱を蓄熱するとともに、熱媒の蒸発潜熱以上の熱を吸着器に対し放熱し、再生温度以上の熱を作用させることで吸着器を再生する構成が記載されている。
【0003】
また、特許文献2には、吸着質を蒸発させる蒸発器と、前記蒸発器の前記吸着質を吸着し前記蒸発器で冷熱を生成させる第一吸着器と、前記第一吸着器に吸着された前記吸着質を吸着し前記第一吸着器で冷熱を生成させる第二吸着器と、を有する、二重効用型の吸着式ヒートポンプシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-40959号公報
【文献】特開2016-011822号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2に開示されているような二重効用型の吸着式ヒートポンプシステムでは、蓄熱器に用いられる吸着剤の動作点において、二重効用で働く蓄熱量と、単段効用でしか働かない蓄熱量とが存在する。
【0006】
本開示は、二重効用型の吸着式ヒートポンプシステムにおいて、二重効用で働く蓄熱量を増やすことで、より効率のよい冷熱生成を実現することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の第一の実施態様の吸着式ヒートポンプシステムは、吸着質を蒸発させる蒸発器と、前記蒸発器から前記吸着質を吸着する第一吸着器と、前記第一吸着器から吸着された前記吸着質を吸着する2以上の第二吸着器と、前記2以上の第二吸着器同士を連結するとともに途中に回収弁が設けられる回収路と、前記蓄熱した第二吸着器から前記吸着質を吸着する凝縮器と、を有する。
【0008】
この吸着式ヒートポンプシステムでは、第一吸着器で、蒸発器の吸着質を吸着する。このとき、蒸発器では吸着質が蒸発することで、冷熱が生成される。
【0009】
第二吸着器は、第一吸着器に吸着された吸着質を吸着する。すなわち、第一吸着器が減圧される。第一吸着器では吸着質が蒸発し、第一吸着器の吸着剤の一部が再生される。そして、第一吸着器では冷熱が生成されるとともに、蒸発した吸着質が第二吸着器で吸着される。
【0010】
すなわち、この吸着式ヒートポンプシステムでは、第一吸着器の再生時に吸着質が脱着する際の脱着エネルギーを用いて、冷熱を生成できる。したがって、この脱着エネルギーを冷熱生成に使用しない構成と比較して、効率的な冷熱生成が可能である。
【0011】
凝縮器は、第二吸着器に吸着された吸着質を吸着することで、第二吸着器の吸着剤を再生させる。
【0012】
そして、2以上の第二吸着器同士は回収路により連結されているため、第二吸着器相互間の吸着質の移動が可能となる。たとえば、一方の第二吸着器の再生の際に、第一吸着器からの吸着質を吸着している他方の第二吸着器へ、回収弁を開放させた回収路を介して、吸着質を吸着させることも可能となる。これにより、より完全な第二吸着器の再生を可能として、第二吸着器の吸着剤の動作点において、二重効用で働く蓄熱量を増加させて、より効率的な冷熱生成が可能となる。
【0013】
本開示の第二の実施態様の吸着式ヒートポンプシステムは、第一の実施態様の構成に加え、前記2以上の第二吸着器の一方における前記第一吸着器からの前記吸着質の吸着と、前記凝縮器における前記2以上の第二吸着器の他方からの前記吸着質の吸着とが同時に行われ、前記一方の第二吸着器における前記吸着質の吸着が完了する直前に、前記一方の第二吸着器は、前記他方の第二吸着器から、前記回収弁を開放させた前記回収路を介して前記吸着質を吸着することが望ましい。
【0014】
第二吸着器の一方における第一吸着器からの吸着質の吸着と、凝縮器における2以上の第二吸着器の他方からの吸着質の吸着とが同時に行われることで、常にいずれかの第二吸着器が吸着質の吸着を実行していることになる。これにより、一方の第二吸着器の再生の間も、他方の第二吸着器では第一吸着器からの吸着質の吸着が行われているため、間断のない冷熱生成が可能となる。
【0015】
さらに、一方の第二吸着器における吸着質の吸着が完了する直前に、一方の第二吸着器は、他方の第二吸着器から、回収弁を開放させた回収路を介して前記吸着質を吸着することで、他方の第二吸着器からの吸着質の脱着をより完全に行うことが可能となる。
【0016】
本開示の第三の実施態様の冷熱生成方法は、吸着質を蒸発させる蒸発器と、前記蒸発器から前記吸着質を吸着する第一吸着器と、前記第一吸着器から吸着された前記吸着質を吸着する2以上の第二吸着器と、前記2以上の第二吸着器同士を連結するとともに途中に回収弁が設けられる回収路と、前記吸着質を吸着した第二吸着器から前記吸着質を吸着する凝縮器と、を用いて、前記第一吸着器による前記吸着質の吸着によって前記蒸発器で冷熱を生成させ、前記第二吸着器による前記吸着質の吸着によって前記第一吸着器で冷熱を生成させる。
【0017】
この冷熱生成方法における蒸発器、第一吸着器、第二吸着器、凝縮器、回収路及び回収弁の意義については前記第1の実施態様と同様である。
【0018】
そして、2以上の第二吸着器同士は回収路により連結されているため、第二吸着器相互間の吸着質の移動が可能となる。たとえば、一方の第二吸着器の再生の際に、第一吸着器からの吸着質を吸着している他方の第二吸着器へ、回収弁を開放させた回収路を介して、吸着質を吸着させることも可能となる。これにより、より完全な第二吸着器の再生を可能として、第二吸着器の吸着剤の動作点において、二重効用で働く蓄熱量を増加させて、より効率的な冷熱生成が可能となる。
【0019】
本開示の第四の実施態様の冷熱生成方法は、第三の実施態様の構成に加え、前記2以上の第二吸着器の一方における前記第一吸着器からの前記吸着質の吸着と、前記凝縮器における前記2以上の第二吸着器の他方からの前記吸着質の吸着とが同時に行われ、前記一方の第二吸着器における前記吸着質の吸着が完了する直前に、前記一方の第二吸着器は、前記他方の第二吸着器から、前記回収弁を開放させた前記回収路を介して前記吸着質を吸着する。
【0020】
第二吸着器の一方における第一吸着器からの吸着質の吸着と、凝縮器における2以上の第二吸着器の他方からの吸着質の吸着とが同時に行われることで、常にいずれかの第二吸着器が吸着質の吸着を実行していることになる。これにより、一方の第二吸着器の再生の間も、他方の第二吸着器では第一吸着器からの吸着質の吸着が行われているため、間断のない冷熱生成が可能となる。
【0021】
さらに、一方の第二吸着器における吸着質の吸着が完了する直前に、一方の第二吸着器は、他方の第二吸着器から、回収弁を開放させた回収路を介して前記吸着質を吸着することで、他方の第二吸着器からの吸着質の脱着をより完全に行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0022】
本開示の実施態様は上記のように構成されているので、二重効用型の吸着式ヒートポンプシステムにおいて、二重効用で働く蓄熱量を増やすことで、より効率のよい冷熱生成を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本開示の実施形態の吸着式ヒートポンプシステムの構成を示す概略図である。
図2図1の構成において、蒸発器での冷熱生成状態及び他方の第二吸着器の再生状態を示す概略図である。
図3図1の構成において、第一吸着器での冷熱生成状態及び他方の第二吸着器の再生状態を示す概略図である。
図4図1の構成において、一方の第二吸着器による他方の第二吸着器からの吸着質の吸着状態を示す概略図である。
図5図1の構成において、蒸発器での冷熱生成状態及び一方の第二吸着器の再生状態を示す概略図である。
図6図1の構成において、第一吸着器での冷熱生成状態及び一方の第二吸着器の再生状態を示す概略図である。
図7図1の構成において、他方の第二吸着器による一方の第二吸着器からの吸着質の吸着状態を示す概略図である。
図8】本開示の実施形態に係る吸着式ヒートポンプシステムにおける動作を示すp-T線図である。
図9】本開示の実施形態の吸着式ヒートポンプシステムと、従来型の吸着式ヒートポンプシステムとの冷熱生成出力を比較したグラフである。
図10】従来型の吸着式ヒートポンプシステムに対する、本開示の実施形態の吸着式ヒートポンプシステムの冷熱生成出力の向上率を示すグラフである。
図11】従来型の吸着式ヒートポンプシステムの構成を示す概略図である。
図12図11の構成において、蒸発器/凝縮器での冷熱生成状態を示す概略図である。
図13図11の構成において、第一吸着器での冷熱生成状態を示す概略図である。
図14図11の構成において、第二吸着器による蒸発器/凝縮器からの吸着質の吸着状態を示す概略図である。
図15図11の構成において、第二吸着器の再生状態を示す概略図である。
図16】従来型の実施形態に係る吸着式ヒートポンプシステムにおける動作を示すp-T線図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について図面を適宜参照して説明する。なお、個々の図面において共通する符号は、個々の図面の説明において言及されていない場合であっても同一の対象を指し示すものである。また、図面の見やすさを考慮して、説明で言及されない対象の符号は省略している場合がある。
【0025】
(1)実施形態の概略構成
図1には、実施形態の吸着式ヒートポンプシステム(以下では「ヒートポンプ」と略記する)10の概略構成が示されている。
【0026】
ヒートポンプ10は、蒸発器14Aと、第一吸着器20と、2つの第二吸着器22A、22Bと、回収路40と、凝縮器14Bと、を有する。
【0027】
蒸発器14Aは、吸着質を蒸発させる。すなわち、蒸発器14Aの内部に吸着されている液体の吸着質にエネルギー(温熱)が作用すると、この吸着質が蒸発され、その際に冷熱が生成される。
【0028】
第一吸着器20は、蒸発器14Aから吸着質を吸着する。また、2つの第二吸着器22A、22Bはそれぞれ第一吸着器20が吸着した吸着質を吸着する。第一吸着器20及び第二吸着器22A、22Bには、それぞれ、異なる種類の吸着剤が収容されている。第二吸着器22A、22Bの吸着剤は、第一吸着器20の吸着剤よりも高い再生温度の熱で吸着質を脱着させる材料が選択される。第二吸着器22A、22Bが第一吸着器20から吸着質を吸着する際、第一吸着器20の内部に吸着されている吸着質にエネルギー(温熱)が作用すると、この吸着質が蒸発され、その際に冷熱が生成される。
【0029】
本実施形態では、第一吸着器20の吸着剤は、たとえばAL-MOF(CAU-10)であり、第二吸着器22A、22Bの吸着剤は、たとえば、ゼオライト13Xである。また、吸着質としては、たとえば、水あるいはアンモニアを用いることができる。水及びアンモニアは、ヒートポンプ10において求められる条件(温度及び圧力)で吸着剤に対し吸着及び脱着し、しかも安価に調達できる。
【0030】
回収路40は、2つの第二吸着器22A、22B同士を連結する。
【0031】
凝縮器14Bは、第二吸着器22A、22Bが吸着した吸着質を吸着し、それにより第二吸着器22A、22Bを再生させる。凝縮器14Bの内部では、外部から流入した気体の吸着質からエネルギーを奪い、吸着質が凝縮される。
【0032】
蒸発器14Aと第一吸着器20とは、接続配管16Aにより接続される。第一吸着器20と第二吸着器22Aとは、接続配管16B1により接続される。また、第一吸着器20と第二吸着器22Bとは、接続配管16B2により接続される。第二吸着器22Aと凝縮器14Bとは、接続配管16C1により接続される。また、第二吸着器22Bと凝縮器14Bとは、接続配管16C2により接続される。換言すると、第一吸着器20と凝縮器の間には、第二吸着器22Aと第二吸着器22Bとが並列に接続されている。第二吸着器22Aと第二吸着器22Bとの間は、回収路40により接続される。さらに、凝縮器14Bと蒸発器14Aとは、接続配管16Dにより接続される。
【0033】
接続配管16Aには、開閉弁18Aが設けられる。開閉弁18Aが開放されると、蒸発器14Aから第一吸着器20への吸着質の移動が可能となる。接続配管16B1には、開閉弁18B1が設けられる。開閉弁18B1が開放されると、第一吸着器20から第二吸着器22Aへの吸着質の移動が可能となる。接続配管16B2には、開閉弁18B2が設けられる。開閉弁18B2が開放されると、第一吸着器20から第二吸着器22Bへの吸着質の移動が可能となる。接続配管16C1には、開閉弁18C1が設けられる。開閉弁18C1が開放されると、第二吸着器22Aから凝縮器14Bへの吸着質の移動が可能となる。接続配管16C2には、開閉弁18C2が設けられる。開閉弁18C2が開放されると、第二吸着器22Bから凝縮器14Bへの吸着質の移動が可能となる。接続配管16Dには、開閉弁18Dが設けられる。開閉弁18Dが開放されると、凝縮器14Bから蒸発器14Aへの吸着質の移動が可能となる。
【0034】
回収路40の途中には、回収弁42が設けられる。回収弁42が開放されると、第二吸着器22Aから第二吸着器22Bへの吸着質の移動、また、第二吸着器22Bから第二吸着器22Aへの吸着質の移動が可能となる。
【0035】
蒸発器14Aには、熱源として低温熱源28Lを接続する接続管30Aが設けられる。接続管30Aには、開閉弁32Lが設けられる。開閉弁32Lが開放されると、低温熱源28Lから熱交換媒体が蒸発器14Aに流れ、熱交換されて低温熱源28Lに戻る。なお、以後の説明でも言及される各熱源から発する接続管は熱交換媒体の往路と復路とで構成されるが、図面中では一本の破線で表現される。また、各段階において実際に熱交換媒体が流れている接続管は太い実線で表現される。
【0036】
第一吸着器20には、2つの熱源(低温熱源28L及び中温熱源28M)を接続する接続管30Bが設けられる。接続管30Bは熱源側において、それぞれの熱源に対応して三方弁20Aを介して分岐しており、分岐した先には、低温熱源28L側に開閉弁34Lが、中温熱源28M側に開閉弁34Mがそれぞれ設けられる。開閉弁34Lが開放されると、低温熱源28Lから熱交換媒体が第一吸着器20に流れ、第一吸着器20で熱交換されて低温熱源28Lに戻る。開閉弁34Mが開放されると、中温熱源28Mから熱交換媒体が第一吸着器20に流れ、第一吸着器20で熱交換されて中温熱源28Mに戻る。
【0037】
第二吸着器22Aには、2つの熱源(中温熱源28M及び高温熱源28H)を接続する接続管30C1が設けられる。接続管30C1は熱源側において、それぞれの熱源に対応して三方弁22A1を介して分岐しており、分岐した先には、中温熱源28M側に開閉弁36M1が、高温熱源28H側に開閉弁36H1がそれぞれ設けられる。開閉弁36M1が開放されると、中温熱源28Mから熱交換媒体が第二吸着器22Aに流れ、第二吸着器22Aで熱交換されて中温熱源28Mに戻る。開閉弁36H1が開放されると、高温熱源28Hから熱交換媒体が第二吸着器22Aに流れ、第二吸着器22Aで熱交換されて高温熱源28Hに戻る。
【0038】
第二吸着器22Bには、2つの熱源(中温熱源28M及び高温熱源28H)を接続する接続管30C2が設けられる。接続管30C2は熱源側において、それぞれの熱源に対応して三方弁22B1を介して分岐しており、分岐した先には、中温熱源28M側に開閉弁36M2が、高温熱源28H側に開閉弁36H2がそれぞれ設けられる。開閉弁36M2が開放されると、中温熱源28Mから熱交換媒体が第二吸着器22Bに流れ、第二吸着器22Bで熱交換されて中温熱源28Mに戻る。開閉弁36H2が開放されると、高温熱源28Hから熱交換媒体が第二吸着器22Bに流れ、第二吸着器22Bで熱交換されて高温熱源28Hに戻る。
【0039】
凝縮器14Bには、熱源として中温熱源28Mを接続する接続管30Dが設けられる。接続管30Dには、開閉弁32Mが設けられる。開閉弁32Mが開放されると、中温熱源28Mから熱交換媒体が凝縮器14Bに流れ、熱交換されて中温熱源28Mに戻る。
【0040】
低温熱源28L、中温熱源28M及び高温熱源28Hの具体例は特に限定されないが、中温熱源28Mは低温熱源28Lよりも高温であり、高温熱源28Hは中温熱源28Mよりも高温である。
【0041】
(2)対比例の概略構成及び冷熱生成方法
本実施形態のヒートポンプ10を用いて冷熱を生成する方法を説明する前に、対比例のヒートポンプの概略構成及びそれによる冷熱生成方法を説明する。なお、対比例の構成に付されている符号は、対応する実施形態の構成の符号に「’」を付して表している。
【0042】
図11には、対比例の吸着式ヒートポンプシステム(以下では「ヒートポンプ」と略記する)10’が示されている。
【0043】
ヒートポンプ10’は、蒸発器/凝縮器14’、第一吸着器20’、第二吸着器22’を有する。本実施形態の蒸発器/凝縮器14’は、蒸発器としての機能と、凝縮器としての機能とを併せ持っている。すなわち、内部の液体の吸着質にエネルギー(温熱)が作用すると、この吸着質が蒸発され、その際に冷熱が生成される。また、外部から流入した気体の吸着質からエネルギーを奪うと、吸着質が凝縮される。
【0044】
第一吸着器20’及び第二吸着器22’で用いられている吸着剤については前記実施形態と同様である。
【0045】
蒸発器/凝縮器14’、第一吸着器20’及び第二吸着器22’は、この順で、接続配管16A’、16B’により直列状に接続される。
【0046】
接続配管16A’には、開閉弁18A’が設けられる。開閉弁18A’が開放されると、蒸発器/凝縮器14’から第一吸着器20’への吸着質の移動が可能となる。接続配管16B’には、開閉弁18B’が設けられる。開閉弁18B’が開放されると、第一吸着器20’から第二吸着器22’への吸着器の移動が可能となる。
【0047】
蒸発器/凝縮器14’と第二吸着器22’とは、第一吸着器20’をバイパスするバイパス配管24’により接続される。バイパス配管24’には、バイパス弁26’が設けられる。バイパス弁26’が開放されると、第二吸着器22’から第一吸着器20’を経由することなく、蒸発器/凝縮器14’への直接的な吸着質の移動、及び、蒸発器/凝縮器14’から第一吸着器20’を経由することなく、第二吸着器22’への直接的な吸着質の移動が可能となる。
【0048】
蒸発器/凝縮器14’には、2つの熱源(低温熱源28L’及び中温熱源28M’)を接続する接続管30A’が設けられる。接続管30A’は熱源側において、それぞれの熱源に対応して三方弁14Cを介して分岐しており、分岐した先には、低温熱源28L’側に開閉弁32L’が、中温熱源28M’側に開閉弁32M’が設けられる。開閉弁32L’、32M’が開放されると、それぞれ低温熱源28L’及び中温熱源28M’から熱交換媒体が蒸発器/凝縮器14に流れ、蒸発器/凝縮器14で熱交換されてそれぞれ元の熱源に戻る。
【0049】
第一吸着器20’には、2つの熱源(低温熱源28L’及び中温熱源28M’)を接続する接続管30B’が設けられる。接続管30B’は熱源側において、それぞれの熱源に対応して三方弁20A’を介して分岐しており、分岐した先には、低温熱源28L’側に開閉弁34L’が、中温熱源28M’側に開閉弁34M’がそれぞれ設けられる。開閉弁34L’、34M’が開放されると、それぞれ低温熱源28L’及び中温熱源28M’から熱交換媒体が第一吸着器20’に流れ、第一吸着器20’で熱交換されてそれぞれ元の熱源に戻る。
【0050】
第二吸着器22’には、2つの熱源(中温熱源28M’及び高温熱源28H’)を接続する接続管30C’が設けられる。接続管30C’は熱源側において、それぞれの熱源に対応して三方弁22A’を介して分岐しており、分岐した先には、中温熱源28M’側に開閉弁36M’が、高温熱源28H’側に開閉弁36H’がそれぞれ設けられる。開閉弁36M’、開閉弁36H’が開放されると、それぞれ中温熱源28M’及び高温熱源28H’から熱交換媒体が第二吸着器22’に流れ、第二吸着器22’で熱交換されてそれぞれ元の熱源に戻る。
【0051】
次に、対比例のヒートポンプ10’による冷熱生成方法について、図12図15の概略図及び図16のp-T線図を用いて説明する。ここで、図16の縦軸は圧力(kPa)を示し、その自然対数をプロットしている。横軸は温度(K)を示し、その逆数の負数をプロットしている。また、図中の太い実線は第一吸着器20’における圧力及び温度の挙動を示し、細い実線は第二吸着器22’における圧力及び温度の挙動を示す。さらに、図12図15において黒塗りで表す開閉弁は閉鎖されている状態を、また、白抜きで表す開閉弁は開放されている状態を示す。また、矢印は吸着質の移動方向を示し、両頭矢印は熱交換媒体が流通している状態を示す。なお、以下の例では低温熱源28L’の温度は288K(15℃)、中温熱源28M’の温度は303K(30℃)、及び高温熱源28H’の温度は453K(180℃)としているが、中温熱源28M’の温度が低温熱源28L’の温度より高く、また、高温熱源28H’の温度が中温熱源28M’の温度より高ければそれぞれの具体的な温度は限定されない。また、圧力の数値もあくまで例示であり、具体的な数値には限定されない。
【0052】
まず、図12の状態の直前には、前サイクルで第一吸着器20’から冷熱が生成されており(図13参照)、圧力及び温度ともに最低の状態となっている。図16のa点がこの状態を示す。
【0053】
ここで、図12に示すように、接続管30Aの三方弁14C’を低温熱源28L’側に切り替えつつ、開閉弁32L’を開放して、蒸発器/凝縮器14’に低温熱源28L’から熱交換媒体を流通させる。また、接続管30Bの三方弁20A’を中温熱源28M’側に切り替えつつ、開閉弁34M’を開放して、第一吸着器20’に中温熱源28M’から熱交換媒体を流通させる。そして、接続配管16Aの開閉弁18A’を開放する。
【0054】
これにより、蒸発器/凝縮器14’で吸着質が蒸発し、この吸着質が第一吸着器20’で吸着される。このとき、蒸発器/凝縮器14’で蒸発熱が奪われることで冷熱が生成されるとともに、第一吸着器20’内の圧力及び温度は図16のa点からb点を経てc点まで上昇する。
【0055】
次いで、開閉弁32L’、34M’、18A’を閉鎖してから、図13に示すように、接続管30Bの三方弁20A’を低温熱源28L’側に切り替えつつ、開閉弁34L’を開放して、第一吸着器20’に低温熱源28L’から熱交換媒体を流通させる。また、接続管30Cの三方弁22A’を中温熱源28M’側に切り替えつつ、開閉弁36M’を開放して、第二吸着器22’に中温熱源28M’から熱交換媒体を流通させる。そして、接続配管16B’の開閉弁18B’を開放する。
【0056】
これにより、第一吸着器20’で吸着質が蒸発し、この吸着質が第二吸着器22’で吸着される。このとき、第一吸着器20’で蒸発熱が奪われることで冷熱が生成されることで、第一吸着器20’内の圧力及び温度は図16のc点からd点を経てa点まで下降する。一方、開閉弁18B’が開放した瞬間は第二吸着器22’内の圧力は図16のα点の最低点にあり、このときの第一吸着器20’内の圧力b点との圧力差により、第二吸着器22’が第一吸着器20’から吸着質を吸着し、圧力も上昇する。
【0057】
そして、図12の状態と図13との状態を何度か繰り返して、第二吸着器22’内の圧力が、第一吸着器20’の最低圧力である図16のa点と等しい圧力の図16のβ点まで達した時点で、もう第二吸着器22’は第一吸着器20’から吸着質を吸着することができなくなっている。
【0058】
この段階で、開閉弁36M’を開放させたまま、開閉弁34L’、18B’を閉鎖してから、図14に示すように、接続管30Aの三方弁14C’を低温熱源28L’側に切り替えつつ、開閉弁32L’を開放して、蒸発器/凝縮器14’に低温熱源28L’から熱交換媒体を流通させる。そして、バイパス配管24’のバイパス弁26’を開放すると、蒸発器/凝縮器14’で吸着質が蒸発し、この吸着質がバイパス配管24’を介して第二吸着器22’で吸着される。このとき、蒸発器/凝縮器14’で蒸発熱が奪われることで冷熱が生成されるとともに、第二吸着器22’内の圧力及び温度は図16のβ点からγ点まで上昇し、吸着剤が飽和状態となる。
【0059】
この状態で、開閉弁32L’、36M’及びバイパス弁26’を閉鎖し、図15に示すように、接続管30Aの三方弁14C’を中温熱源28M’側に切り替えつつ、開閉弁32M’を開放し、蒸発器/凝縮器14’に中温熱源28M’から熱交換媒体を移動可能とする。また、接続管30Cの三方弁22A’を高温熱源28H’側に切り替えつつ、開閉弁36H’を開放して、第二吸着器22’に高温熱源28H’から熱交換媒体を移動可能とする。そして、バイパス配管24’のバイパス弁26’を再び開放する。これにより、高温熱源28H’の熱を受けて第二吸着器22’の吸着質が脱着され、第二吸着器22’が再生される。すなわち、第二吸着器22’の内部では、図16のγ点からδ点を経て最高圧力に達し、ここからε点まで温度を上昇させる間に、吸着されていた吸着質は、蒸発器/凝縮器14’に移動して凝縮される。
【0060】
そして、第二吸着器22’の内部がε点の最高圧力かつ最高温度に達した時点で全てのバルブを閉じると、第二吸着器22’は温度を低下させつつ、ゼロ近くのα点まで圧力が低下する。この段階で、第二吸着器22’の吸着剤が再生し、再び第一吸着器20’からの吸着質の吸着が可能となる。
【0061】
ここで、図16のα点からβ点までは、同量の吸着質が、蒸発器/凝縮器14’と第一吸着器20’とで2回脱着することで冷熱生成が2回生ずる。これが、いわゆる二重効用モードである。一方、β点からγ点までは蒸発器/凝縮器14’のみで冷熱が生成される。これが、いわゆる単段効用モードである。たとえば、吸着質が水である場合、1gの水が蒸発器/凝縮器14’で蒸発することで2.5kJの冷熱が生成される。また、AL-MOFを吸着質として有する第一吸着器20’で1gの水が蒸発すると3kJの冷熱が発生する。すなわち、1gの水によって生ずる冷熱は、単段効用モードでは2.5kJであるのに対し、二重効用モードでは5.5kJと、単段効用モードの2.2倍の冷熱が得られる。
【0062】
(3)実施形態の冷熱生成方法
実施形態の冷熱生成方法について、図2図7の概略図及び図8のp-T線図を用いて説明する。なお、p-T線図の縦軸及び横軸については(2)と同様である。また、概略図における図示法についても(2)と同様である。なお、以下の例では低温熱源28Lの温度は288K(15℃)、中温熱源28Mの温度は303K(30℃)、及び高温熱源28Hの温度は453K(180℃)としているが、中温熱源28Mの温度が低温熱源28Lの温度より高く、また、高温熱源28Hの温度が中温熱源28Mの温度より高ければそれぞれの具体的な温度は限定されない。また、圧力の数値もあくまで例示であり、具体的な数値には限定されない。
【0063】
まず、図2の状態の直前には、前サイクルで第一吸着器20から冷熱が生成されており(図3参照)、圧力及び温度ともに最低の状態となっている。図8のa点がこの状態を示す。
【0064】
ここで、図2に示すように、接続管30Aの開閉弁32Lを開放して、蒸発器14Aに低温熱源28Lから熱交換媒体を流通させる。また、接続管30Bの三方弁20Aを中温熱源28M側に切り替えつつ、開閉弁34Mを開放して、第一吸着器20に中温熱源28Mから熱交換媒体を流通させる。そして、接続配管16Aの開閉弁18Aを開放する。
【0065】
これにより、蒸発器14Aで吸着質が蒸発し、この吸着質が第一吸着器20で吸着される。このとき、蒸発器14Aで蒸発熱が奪われることで冷熱が生成されるとともに、第一吸着器20内の圧力及び温度は図8のa点からb点を経てc点まで上昇する。
【0066】
一方、第二吸着器22Bは、前回のサイクルで吸着剤が飽和状態となっている(図7参照)。この第二吸着器22Bの再生のために、図2に示すように、接続管30Dの開閉弁32Mを開放し、凝縮器14Bに中温熱源28Mから熱交換媒体を移動可能とする。また、接続管30C2の三方弁22B1を高温熱源28H側に切り替えつつ、開閉弁36H2を開放して、第二吸着器22Bに高温熱源28Hから熱交換媒体を移動可能とする。そして、接続配管16C2の開閉弁18C2を開放する。これにより、高温熱源28Hの熱を受けて第二吸着器22Bの吸着質が脱着され、第二吸着器22Bの再生が開始される。第二吸着器22Bの内部に吸着されていた吸着質は、凝縮器14Bに移動して凝縮される。
【0067】
次いで、開閉弁32L、34M、18Aを閉鎖してから、図3に示すように、接続管30Bの三方弁20Aを低温熱源28L側に切り替えつつ、開閉弁34Lを開放して、第一吸着器20に低温熱源28Lから熱交換媒体を流通させる。また、接続管30C1の三方弁22A1を中温熱源28M側に切り替えつつ、開閉弁36M1を開放して、第二吸着器22Aに中温熱源28Mから熱交換媒体を流通させる。そして、接続配管16B1の開閉弁18B1を開放する。
【0068】
これにより、第一吸着器20で吸着質が蒸発し、この吸着質が一方の第二吸着器22Aで吸着される。このとき、第一吸着器20で蒸発熱が奪われることで冷熱が生成されることで、第一吸着器20内の圧力及び温度は図8のc点からd点を経てa点まで下降する。一方、開閉弁18B1が開放した瞬間は第二吸着器22A内の圧力は図8のα’点の最低点にあり、このときの第一吸着器20内の圧力b点との圧力差により、第二吸着器22Aが第一吸着器20から吸着質を吸着し、圧力も上昇する。
【0069】
一方、他方の第二吸着器22Bの再生は、図2の状態から引き続いている。
【0070】
そして、図2の状態と図3の状態とを何度か繰り返して、第二吸着器22A内の圧力が、第一吸着器20の最低圧力である図8のa点と等しい圧力の図8のβ点まで達した時点で、もう第二吸着器22Aは第一吸着器20から吸着質を吸着することができなくなっている。
【0071】
この段階で、開閉弁36M1を開放させたまま、開閉弁34L、18B1、18C2を閉鎖してから、図4に示すように、回収路40の回収弁42を開放すると、高温熱源28Hによる再生中の第二吸着器22Bからさらに吸着質が蒸発し、この吸着質が回収路40を介して、吸着質の吸着が完了する直前の第二吸着器22Aで吸着される。このとき、第二吸着器22A内の圧力及び温度は図8のβ点からγ点まで上昇し、吸着剤が飽和状態となる。
【0072】
一方、第二吸着器22Bの吸着剤は再生し、再び第一吸着器20からの吸着質の吸着が可能となる。
【0073】
飽和状態となった第二吸着器22Aの再生のために、図5に示すように、接続管30Dの開閉弁32Mを開放し、凝縮器14Bに中温熱源28Mから熱交換媒体を移動可能とする。また、接続管30C1の三方弁22A1を高温熱源28H側に切り替えつつ、開閉弁36H1を開放して、第二吸着器22Aに高温熱源28Hから熱交換媒体を移動可能とする。そして、接続配管16C1の開閉弁18C1を開放する。これにより、高温熱源28Hの熱を受けて第二吸着器22Aの吸着質が脱着され、第二吸着器22Aの再生が開始される。第二吸着器22Aの内部では、図8のγ点からδ点を経て最高圧力に達し、ここからε点に向かって温度が上昇していく。この間に、第二吸着器22Aの内部に吸着されていた吸着質は、凝縮器14Bに移動して凝縮されていく。
【0074】
一方、図5に示すように、接続管30Aの開閉弁32Lを開放して、蒸発器14Aに低温熱源28Lから熱交換媒体を流通させる。また、接続管30Bの三方弁20Aを中温熱源28M側に切り替えつつ、開閉弁34Mを開放して、第一吸着器20に中温熱源28Mから熱交換媒体を流通させる。そして、接続配管16Aの開閉弁18Aを開放することで、蒸発器14Aで吸着質が蒸発し、この吸着質が第一吸着器20で吸着される。このとき、蒸発器14Aで蒸発熱が奪われることで冷熱が生成される。
【0075】
次いで、開閉弁32L、34M、18Aを閉鎖してから、図6に示すように、接続管30Bの三方弁20Aを低温熱源28L側に切り替えつつ、開閉弁34Lを開放して、第一吸着器20に低温熱源28Lから熱交換媒体を流通させる。また、接続管30C2の三方弁22B1を中温熱源28M側に切り替えつつ、開閉弁36M2を開放して、第二吸着器22Bに中温熱源28Mから熱交換媒体を流通させる。そして、接続配管16B2の開閉弁18B2を開放することで、第一吸着器20で吸着質が蒸発し、この吸着質が第二吸着器22Bで吸着される。このとき、第一吸着器20で蒸発熱が奪われることで冷熱が生成される。
【0076】
一方、第二吸着器22Aの再生は、図5の状態から引き続いている。この間も、第二吸着器22Aの内部では図8のε点に向かう温度上昇は続行している。
【0077】
そして、図5の状態と図6の状態とを何度か繰り返して、第二吸着器22Bが第一吸着器20から吸着質を吸着することができなくなった段階と同時に、第二吸着器22Aの内部はε点の最高圧力かつ最高温度に達する。
【0078】
この段階で、開閉弁36M2を開放させたまま、開閉弁34L、18B2、18C1を閉鎖してから、図7に示すように、回収路40の回収弁42を開放すると、高温熱源28Hによる再生中の第二吸着器22Aからさらに吸着質が蒸発し、この吸着質が回収路40を介して、吸着質の吸着が完了する直前の第二吸着器22Bで吸着され、吸着剤が飽和状態となる。このとき、第二吸着器22A内では、最高温度のまま圧力が図8のε点からε’点まで下降する。
【0079】
そして、第二吸着器22Aの内部がε’点に達した時点で全てのバルブを閉じると、第二吸着器22’は温度を低下させつつ、ゼロ近くのα’点まで圧力が低下する。この段階で、第二吸着器22Aの吸着剤が再生し、再び第一吸着器20からの吸着質の吸着が可能となる。
【0080】
ここで、第二吸着器22Aにおけるε’点からα’点までの圧力及び温度の低下を表す直線は、前記(2)の対比例におけるε点からα点までの圧力及び温度の低下を表す直線(図16参照)を、ε点とε’点との圧力差を保ったまま下方へ移動させたものとなっている。
【0081】
したがって、二重効用モードで運転できる蓄熱量が、対比例では図16のα点からβ点までの間であるのに対し、実施形態では図8のα’点からβ点までの間に拡大することとなっている。すなわち、実施形態では対比例よりも図8のα’点からα点までの区間の分、二重効用モードで運転できる蓄熱量が増えることになる。
【0082】
一方、対比例ではβ点からγ点までの間は単段効用モードで冷熱が生成されるのに対し、実施形態でのβ点からγ点までの間は冷熱は生成されない。しかし、先述したように、二重効用モードでは単段効用モードの2.2倍の冷熱が得られるため、実施形態では、単段効用モードの冷熱が得られなくとも、α’点からα点までの区間で二重効用モードでの冷熱生成が得られるため、差し引きで得られる冷熱は増加する。
【0083】
なお、第二吸着器22Bの内部においても図8に示すような圧力及び温度の変化が生じている。
【0084】
図9は、実施形態のヒートポンプ10において、高温熱源28Hによる第二吸着器22A、22Bの再生温度と冷熱生成量との関係(線α)と、対比例のヒートポンプ10’において、高温熱源28H’による第二吸着器22’の再生温度と冷熱生成量との関係(線β)を示すグラフである。なお、縦軸の冷熱生成量は、吸着質(具体的には水)1gから生成される冷熱(kJ)を表す。このグラフから、再生温度にかかわらず、実施形態は対比例に対し一定の冷熱生成量が上積みできていることが分かる。
【0085】
図10は、実施形態の対比例に対する冷熱生成量の向上率と、再生温度との関係を示すグラフである。なお、縦軸の向上率は、同じ再生温度における、実施形態の冷熱生成量(線α)を、対比例の冷熱生成量(線β)で除した値を表す。このグラフから、実施形態のヒートポンプ10は、再生温度が低いほど、冷熱生成量の向上率が高いことが分かる。
【0086】
(4)その他
なお、本開示の吸着式ヒートポンプシステムにおいては、第二吸着器の数は上記実施形態のような2つには限られず、3以上の第二吸着器が設けられていてもよい。3以上の第二吸着器が設けられる場合、1の第二吸着器には他の全ての第二吸着器との間に回収路が設けられていてもよいし、他の一部の第二吸着器との間にのみ回収路が設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0087】
10 ヒートポンプシステム(ヒートポンプ)
14A 蒸発器
14B 凝縮器
16A、16B1、16B2、16C1、16C2、16D 接続配管
18A、18B1、18B2、18C1、18C2、18D 開閉弁
20 第一吸着器
20A 三方弁
22A、22B 第二吸着器
22A1、22B1 三方弁
28L 低温熱源
28M 中温熱源
28H 高温熱源
30A、30B、30C1、30C2、30D 接続管
32L、34L、34M、36M1、36M2、36H1、36H2 開閉弁
40 回収路
42 回収弁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16