(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】駆動装置、および車両駆動システム
(51)【国際特許分類】
B60L 3/00 20190101AFI20240312BHJP
B60K 1/00 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
B60L3/00 H
B60K1/00
(21)【出願番号】P 2021514911
(86)(22)【出願日】2020-04-09
(86)【国際出願番号】 JP2020015932
(87)【国際公開番号】W WO2020213508
(87)【国際公開日】2020-10-22
【審査請求日】2023-03-24
(31)【優先権主張番号】P 2019080343
(32)【優先日】2019-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】ニデック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【氏名又は名称】成田 友紀
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【氏名又は名称】古都 智
(72)【発明者】
【氏名】福永 慶介
【審査官】井古田 裕昭
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/030344(WO,A1)
【文献】特開平08-116605(JP,A)
【文献】特開2015-159679(JP,A)
【文献】特開2013-154695(JP,A)
【文献】特開2014-003752(JP,A)
【文献】特開2012-116456(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 3/00
B60K 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車軸を回転させる駆動装置であって、
モータと、
前記モータに接続される減速装置と、
前記減速装置を介して前記モータに接続される差動装置と、
前記モータ、前記減速装置、および前記差動装置を内部に収容するハウジングと、
前記ハウジングの内部に収容されたオイルを前記モータに送るオイルポンプと、
前記モータを制御する制御部と、
前記モータの温度を検出可能な温度センサと、
を備え、
前記制御部は、
前記車両のイグニッションスイッチがOFFにされた後において、
前記温度センサの検出結果によらず前記オイルポンプを駆動
し、
前記イグニッションスイッチがOFFにされた後であり、かつ、前記イグニッションスイッチがOFFにされてから所定の時間が経過する前において、前記温度センサに基づいて得られた前記モータの温度が、所定の温度以下であり、かつ、単位時間当たりの前記モータの温度変化が所定の閾値以下である場合に、前記オイルポンプの駆動を停止し、
前記イグニッションスイッチがOFFにされてから前記所定の時間が経過した場合に、前記温度センサの検出結果によらず前記オイルポンプの駆動を停止する、駆動装置。
【請求項2】
前記車両には、
冷媒を冷却するラジエータと、
前記ラジエータから前記冷媒を前記駆動装置に送る冷媒ポンプと、
前記ラジエータに送風可能な送風装置と、
が設けられ、
前記冷媒ポンプから送られる前記冷媒は、前記オイルポンプによって送られる前記オイルを冷却し、
前記制御部は、前
記イグニッションスイッチがOFFにされた後において
、前記冷媒ポン
プおよび前記送風装置を駆動する、請求項1に記載の駆動装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記イグニッションスイッチがOFFにされた後において、前記温度センサの検出結果に基づいて
、前記冷媒ポンプの駆動および前記送風装置の駆動を停止する、請求項2に記載の駆動装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記イグニッションスイッチがOFFにされた後において、前記温度センサに基づいて得られた前記モータの温度が、
前記所定の温度以下であり、かつ、単位時間当たりの前記モータの温度変化が
前記所定の閾値以下である場合に
、前記冷媒ポンプの駆動および前記送風装置の駆動を停止する、請求項3に記載の駆動装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記イグニッションスイッチがOFFにされてから
前記所定の時間が経過した場合に
、前記冷媒ポンプの駆
動および前記送風装置の駆動を停止する、請求項2から4のいずれか一項に記載の駆動装置。
【請求項6】
車両を駆動する車両駆動システムであって、
請求項2から5のいずれか一項に記載の駆動装置と、
前記ラジエータと、
前記冷媒ポンプと、
前記送風装置と、
を備える、車両駆動システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動装置、および車両駆動システムに関する。本願は、2019年4月19日に日本に出願された特願2019-080343に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載され、ケースの内部にオイルが収容される駆動装置が知られる。例えば、特許文献1には、ハイブリッド車両の駆動装置が記載される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような駆動装置が搭載される車両においては、イグニッションスイッチがOFFにされた後に、比較的短い間隔で再びイグニッションスイッチがONにされる場合がある。この場合、駆動装置に搭載されたモータの温度が比較的高いままの状態となっている場合があり、再びイグニッションスイッチがONにされた後において、駆動装置による出力を好適に得られない場合があった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みて、イグニッションスイッチがOFFにされた後に、比較的短い間隔でイグニッションスイッチがONにされた場合であっても、駆動装置による出力を好適に得やすい構造を有する駆動装置、および車両駆動システムを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の駆動装置の一つの態様は、車両の車軸を回転させる駆動装置であって、モータと、前記モータに接続される減速装置と、前記減速装置を介して前記モータに接続される差動装置と、前記モータ、前記減速装置、および前記差動装置を内部に収容するハウジングと、前記ハウジングの内部に収容されたオイルを前記モータに送るオイルポンプと、前記モータを制御する制御部と、を備える。前記制御部は、前記車両のイグニッションスイッチがOFFにされた後において、前記オイルポンプを駆動する。
【0007】
本発明の車両駆動システムの一つの態様は、車両を駆動する車両駆動システムであって、上記の駆動装置と、前記ラジエータと、前記冷媒ポンプと、前記送風装置と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一つの態様によれば、イグニッションスイッチがOFFにされた後に、比較的短い間隔でイグニッションスイッチがONにされた場合であっても、駆動装置による出力を好適に得やすい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本実施形態の車両駆動システムの機能構成を示す図である。
【
図2】
図2は、本実施形態の駆動装置を模式的に示す概略構成図である。
【
図3】
図3は、本実施形態の制御部による制御手順の一例を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、本実施形態の制御部によるオイルポンプの動作チェックの手順を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、本実施形態の制御部によるオイルポンプの流量制御の手順を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、本実施形態の制御部によるアフターラン制御の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1に示す車両駆動システム100は、車両に搭載され、車両を駆動する。本実施形態の車両駆動システム100が搭載される車両は、ハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHV)、電気自動車(EV)等、モータを動力源とする車両である。車両駆動システム100は、駆動装置1と、ラジエータ110と、冷媒ポンプ120と、送風装置130と、車両制御装置140と、を備える。すなわち、駆動装置1とラジエータ110と冷媒ポンプ120と送風装置130と車両制御装置140とは、車両に設けられる。ラジエータ110は、冷媒Wを冷却する。本実施形態において冷媒Wは、例えば、水である。
【0011】
冷媒ポンプ120は、電気により駆動する電動ポンプである。冷媒ポンプ120は、冷媒流路150を介して、ラジエータ110から冷媒Wを駆動装置1に送る。冷媒流路150は、ラジエータ110から駆動装置1に延びて、再びラジエータ110に戻る流路である。冷媒流路150は、後述するインバータユニット8の内部およびオイルクーラ97の内部を通る。冷媒流路150を流れる冷媒Wによって、インバータユニット8に設けられた後述する制御部70およびオイルクーラ97内を流れるオイルOが冷却される。
【0012】
送風装置130は、ラジエータ110に送風可能である。これにより、送風装置130は、ラジエータ110を冷却できる。送風装置130の種類は、ラジエータ110に送風可能であれば、特に限定されない。送風装置130は、軸流ファンであってもよいし、遠心ファンであってもよいし、ブロワであってもよい。
【0013】
送風装置130は、例えば、ラジエータ110の内部に収容された冷媒Wの温度に応じて、駆動状態と停止状態とが切り替えられる。例えば、車両が走行している場合、ラジエータ110には車両が走行することで生じる空気の流れが吹き付けられ、ラジエータ110の内部の冷媒Wは冷却されやすい。この場合、送風装置130は、例えば、停止状態とされる。一方、車両が停止している場合、上述したような空気の流れが生じにくいため、送風装置130を駆動状態としてラジエータ110に送風することで、ラジエータ110の内部の冷媒Wを好適に冷却できる。なお、送風装置130は、車両の走行状態によらず、常に駆動状態とされてもよい。
【0014】
車両制御装置140は、車両に搭載される各装置を制御する。本実施形態において車両制御装置140は、駆動装置1、冷媒ポンプ120、および送風装置130を制御する。車両制御装置140には、車両に設けられたイグニッションスイッチIGSからの信号が入力される。イグニッションスイッチIGSは、駆動装置1の駆動および停止を切り替えるスイッチであり、車両を運転する運転手によって直接的にまたは間接的に操作される。
【0015】
車両制御装置140は、イグニッションスイッチIGSがOFFからONになった場合に、駆動装置1の後述する制御部70に信号を送り、駆動装置1を駆動させて車両を走行可能な状態にする。一方、車両制御装置140は、イグニッションスイッチIGSがONからOFFになった場合に、制御部70に信号を送り、駆動装置1を停止させる。
【0016】
駆動装置1は、上述したハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHV)、電気自動車(EV)等、モータを動力源とする車両の動力源として使用される。
図2に示すように、駆動装置1は、モータ2と、減速装置4及び差動装置5を有する伝達装置3と、ハウジング6と、インバータユニット8と、オイルポンプ96と、オイルクーラ97と、を備える。ハウジング6は、モータ2、減速装置4、及び差動装置5を内部に収容する。ハウジング6は、モータ2を内部に収容するモータ収容部81と、減速装置4及び差動装置5を内部に収容するギヤ収容部82と、を有する。
【0017】
本実施形態においてモータ2は、インナーロータ型のモータである。モータ2は、ロータ20と、ステータ30と、ベアリング26,27と、を有する。ロータ20は、水平方向に延びるモータ軸J1を中心として回転可能である。ロータ20は、シャフト21と、ロータ本体24と、を有する。図示は省略するが、ロータ本体24は、ロータコアと、ロータコアに固定されるロータマグネットと、を有する。ロータ20のトルクは、減速装置4に伝達される。
【0018】
なお、以下の説明においては、モータ軸J1が延びる水平方向を「軸方向」と呼び、モータ軸J1を中心とする径方向を単に「径方向」と呼び、モータ軸J1を中心とする周方向、すなわちモータ軸J1の軸回りを単に「周方向」と呼ぶ。本実施形態において軸方向は、例えば
図2の左右方向であり、車両の左右方向、すなわち車幅方向である。また、以下の説明においては、軸方向のうち
図2における右側を単に「右側」と呼び、軸方向のうち
図2における左側を単に「左側」と呼ぶ。また、
図2における上下方向を、鉛直方向とし、
図2における上側を鉛直方向上側として単に「上側」と呼び、
図2における下側を鉛直方向下側として単に「下側」と呼ぶ。
【0019】
シャフト21は、モータ軸J1を中心として軸方向に沿って延びる。シャフト21は、モータ軸J1を中心として回転する。シャフト21は、内部に中空部22が設けられた中空シャフトである。シャフト21には、連通孔23が設けられる。連通孔23は、径方向に延びて中空部22とシャフト21の外部とを繋ぐ。
【0020】
シャフト21は、ハウジング6のモータ収容部81とギヤ収容部82とに跨って延びる。シャフト21の左側の端部は、ギヤ収容部82の内部に突出する。シャフト21の左側の端部には、減速装置4の後述する第1のギヤ41が固定される。シャフト21は、ベアリング26,27により回転可能に支持される。
【0021】
ステータ30は、ロータ20と径方向に隙間を介して対向する。より詳細には、ステータ30は、ロータ20の径方向外側に位置する。ステータ30は、ステータコア32と、コイルアセンブリ33と、を有する。ステータコア32は、モータ収容部81の内周面に固定される。図示は省略するが、ステータコア32は、軸方向に延びる円筒状のコアバックと、コアバックから径方向内側に延びる複数のティースと、を有する。
【0022】
コイルアセンブリ33は、周方向に沿ってステータコア32に取り付けられる複数のコイル31を有する。複数のコイル31は、図示しないインシュレータを介してステータコア32の各ティースにそれぞれ装着される。複数のコイル31は、周方向に沿って配置される。より詳細には、複数のコイル31は、周方向に沿って一周に亘って等間隔に配置される。図示は省略するが、コイルアセンブリ33は、各コイル31を結束する結束部材等を有してもよいし、各コイル31同士を繋ぐ渡り線を有してもよい。
【0023】
コイルアセンブリ33は、ステータコア32から軸方向に突出するコイルエンド33a,33bを有する。コイルエンド33aは、ステータコア32から右側に突出する部分である。コイルエンド33bは、ステータコア32から左側に突出する部分である。コイルエンド33aは、コイルアセンブリ33に含まれる各コイル31のうちステータコア32よりも右側に突出する部分を含む。コイルエンド33bは、コイルアセンブリ33に含まれる各コイル31のうちステータコア32よりも左側に突出する部分を含む。本実施形態においてコイルエンド33a,33bは、モータ軸J1を中心とする円環状である。図示は省略するが、コイルエンド33a,33bは、各コイル31を結束する結束部材等を含んでもよいし、各コイル31同士を繋ぐ渡り線を含んでもよい。
【0024】
ベアリング26,27は、ロータ20を回転可能に支持する。ベアリング26,27は、例えば、ボールベアリングである。ベアリング26は、ロータ20のうちステータコア32よりも右側に位置する部分を回転可能に支持するベアリングである。本実施形態においてベアリング26は、シャフト21のうちロータ本体24が固定される部分よりも右側に位置する部分を支持する。ベアリング26は、モータ収容部81のうちロータ20およびステータ30の右側を覆う壁部に保持される。
【0025】
ベアリング27は、ロータ20のうちステータコア32よりも左側に位置する部分を回転可能に支持するベアリングである。本実施形態においてベアリング27は、シャフト21のうちロータ本体24が固定される部分よりも左側に位置する部分を支持する。ベアリング27は、後述する隔壁61cに保持される。
【0026】
図1に示すように、モータ2は、モータ2の温度を検出可能な温度センサ71を有する。すなわち、駆動装置1は、温度センサ71を備える。本実施形態においてモータ2の温度とは、例えば、モータ2のうちコイル31の温度である。図示は省略するが、温度センサ71は、例えば、コイルエンド33aまたはコイルエンド33bに埋め込まれて配置される。温度センサ71の種類は、特に限定されない。温度センサ71の検出結果は、後述する制御部70に送られる。
【0027】
減速装置4は、モータ2に接続される。より詳細には、
図2に示すように、減速装置4は、シャフト21の左側の端部に接続される。減速装置4は、モータ2の回転速度を減じて、モータ2から出力されるトルクを減速比に応じて増大させる。減速装置4は、モータ2から出力されるトルクを差動装置5へ伝達する。減速装置4は、第1のギヤ41と、第2のギヤ42と、第3のギヤ43と、中間シャフト45と、を有する。
【0028】
第1のギヤ41は、シャフト21の左側の端部における外周面に固定される。第1のギヤ41は、シャフト21とともに、モータ軸J1を中心に回転する。中間シャフト45は、中間軸J2に沿って延びる。本実施形態において中間軸J2は、モータ軸J1と平行である。中間シャフト45は、中間軸J2を中心として回転する。
【0029】
第2のギヤ42及び第3のギヤ43は、中間シャフト45の外周面に固定される。第2のギヤ42と第3のギヤ43は、中間シャフト45を介して接続される。第2のギヤ42及び第3のギヤ43は、中間軸J2を中心として回転する。第2のギヤ42は、第1のギヤ41に噛み合う。第3のギヤ43は、差動装置5の後述するリングギヤ51と噛み合う。第2のギヤ42の外径は、第3のギヤ43の外径よりも大きい。本実施形態において第2のギヤ42の下側の端部は、減速装置4のうちで最も下側に位置する部分である。
【0030】
モータ2から出力されるトルクは、減速装置4を介して差動装置5に伝達される。より詳細には、モータ2から出力されるトルクは、シャフト21、第1のギヤ41、第2のギヤ42、中間シャフト45および第3のギヤ43をこの順に介して差動装置5のリングギヤ51へ伝達される。各ギヤのギヤ比およびギヤの個数等は、必要とされる減速比に応じて種々変更可能である。本実施形態において減速装置4は、各ギヤの軸芯が平行に配置される平行軸歯車タイプの減速機である。
【0031】
差動装置5は、減速装置4に接続される。これにより、差動装置5は、減速装置4を介してモータ2に接続される。差動装置5は、モータ2から出力されるトルクを車両の車輪に伝達するための装置である。差動装置5は、車両の旋回時に、左右の車輪の速度差を吸収しつつ、左右両輪の車軸55に同トルクを伝える。差動装置5は、車軸55を差動軸J3回りに回転させる。これにより、駆動装置1は、車両の車軸55を回転させる。差動軸J3は、車両の左右方向、すなわち車両の車幅方向に延びる。本実施形態において差動軸J3は、モータ軸J1と平行である。
【0032】
差動装置5は、リングギヤ51と、図示しないギヤハウジングと、図示しない一対のピニオンギヤと、図示しないピニオンシャフトと、図示しない一対のサイドギヤと、を有する。リングギヤ51は、差動軸J3回りに回転するギヤである。リングギヤ51は、第3のギヤ43と噛み合う。これにより、リングギヤ51には、モータ2から出力されるトルクが減速装置4を介して伝えられる。リングギヤ51の下側の端部は、減速装置4よりも下側に位置する。本実施形態においてリングギヤ51の下側の端部は、差動装置5のうちで最も下側に位置する部分である。
【0033】
ハウジング6は、駆動装置1の外装筐体である。ハウジング6は、モータ収容部81の内部とギヤ収容部82の内部とを軸方向に区画する隔壁61cを有する。隔壁61cには、隔壁開口68が設けられる。モータ収容部81の内部とギヤ収容部82の内部とは、隔壁開口68を介して互いに繋がる。
【0034】
ハウジング6の内部には、オイルOが収容される。より詳細には、モータ収容部81の内部およびギヤ収容部82の内部には、オイルOが収容される。ギヤ収容部82の内部における下部領域には、オイルOが溜るオイル溜りPが設けられる。オイル溜りPの油面Sは、リングギヤ51の下側の端部よりも上側に位置する。これにより、リングギヤ51の下側の端部は、ギヤ収容部82内のオイルOに浸漬される。オイル溜りPの油面Sは、差動軸J3および車軸55よりも下側に位置する。
【0035】
オイル溜りPのオイルOは、後述する油路90によってモータ収容部81の内部に送られる。モータ収容部81の内部に送られたオイルOは、モータ収容部81の内部における下部領域に溜まる。モータ収容部81の内部に溜まったオイルOの少なくとも一部は、隔壁開口68を介してギヤ収容部82に移動し、オイル溜りPに戻る。
【0036】
なお、本明細書において「ある部分の内部にオイルが収容される」とは、モータが駆動している最中の少なくとも一部において、ある部分の内部にオイルが位置していればよく、モータが停止している際には、ある部分の内部にオイルが位置していなくてもよい。例えば、本実施形態においてモータ収容部81の内部にオイルOが収容されるとは、モータ2が駆動している最中の少なくとも一部において、モータ収容部81の内部にオイルOが位置していればよく、モータ2が停止している際においては、モータ収容部81の内部のオイルOがすべて隔壁開口68を通ってギヤ収容部82に移動してしまっていてもよい。なお、後述する油路90によってモータ収容部81の内部へと送られたオイルOの一部は、モータ2が停止した状態において、モータ収容部81の内部に残っていてもよい。
【0037】
また、本明細書において「リングギヤの下側の端部がギヤ収容部内のオイルに浸漬される」とは、モータが駆動している最中の少なくとも一部においてリングギヤの下側の端部がギヤ収容部内のオイルに浸漬されればよく、モータが駆動している最中またはモータが停止している間の一部において、リングギヤの下側の端部がギヤ収容部内のオイルに浸漬されなくてもよい。例えば、オイル溜りPのオイルOが後述する油路90によってモータ収容部81の内部に送られた結果として、オイル溜りPの油面Sが下がり、一時的にリングギヤ51の下側の端部がオイルOに浸漬しない状態となってもよい。
【0038】
オイルOは、後述する油路90内を循環する。オイルOは、減速装置4および差動装置5の潤滑用として使用される。また、オイルOは、モータ2の冷却用として使用される。オイルOとしては、潤滑油および冷却油の機能を奏するために、比較的粘度の低いオートマチックトランスミッション用潤滑油(ATF:Automatic Transmission Fluid)と同等のオイルを用いることが好ましい。
【0039】
ギヤ収容部82の底部82aは、モータ収容部81の底部81aよりも下側に位置する。そのため、ギヤ収容部82内からモータ収容部81内に送られたオイルOが隔壁開口68を介してギヤ収容部82内に流れやすい。
【0040】
駆動装置1には、ハウジング6の内部においてオイルOが循環する油路90が設けられる。油路90は、オイル溜りPからオイルOをモータ2に供給し、再びオイル溜りPに導くオイルOの経路である。油路90は、モータ収容部81の内部とギヤ収容部82の内部とに跨って設けられる。
【0041】
なお、本明細書において「油路」とは、オイルの経路を意味する。したがって、「油路」とは、定常的に一方向に向かうオイルの流動を作る「流路」のみならず、オイルを一時的に滞留させる経路およびオイルが滴り落ちる経路をも含む概念である。オイルを一時的に滞留させる経路とは、例えば、オイルを貯留するリザーバ等を含む。
【0042】
油路90は、第1の油路91と、第2の油路92と、を有する。第1の油路91および第2の油路92は、それぞれハウジング6の内部でオイルOを循環させる。第1の油路91は、かき上げ経路91aと、シャフト供給経路91bと、シャフト内経路91cと、ロータ内経路91dと、を有する。また、第1の油路91の経路中には、第1のリザーバ93が設けられる。第1のリザーバ93は、ギヤ収容部82内に設けられる。
【0043】
かき上げ経路91aは、差動装置5のリングギヤ51の回転によってオイル溜りPからオイルOをかき上げて、第1のリザーバ93でオイルOを受ける経路である。第1のリザーバ93は、上側に開口する。第1のリザーバ93は、リングギヤ51がかき上げたオイルOを受ける。また、モータ2の駆動直後などオイル溜りPの液面が高い場合等には、第1のリザーバ93は、リングギヤ51に加えて第2のギヤ42および第3のギヤ43によってかき上げられたオイルOも受ける。
【0044】
リングギヤ51によってかき上げられたオイルOは、減速装置4および差動装置5にも供給される。これにより、ハウジング6の内部に収容されたオイルOが伝達装置3に供給される。伝達装置3に供給されたオイルOは、減速装置4のギヤおよび差動装置5のギヤに潤滑油として供給される。なお、リングギヤ51によってかき上げられたオイルOは、減速装置4と差動装置5とのいずれか一方に供給されてもよい。
【0045】
シャフト供給経路91bは、第1のリザーバ93からシャフト21の中空部22にオイルOを誘導する。シャフト内経路91cは、シャフト21の中空部22内をオイルOが通過する経路である。ロータ内経路91dは、シャフト21の連通孔23からロータ本体24の内部を通過して、ステータ30に飛散する経路である。
【0046】
シャフト内経路91cにおいて、ロータ20内部のオイルOには、ロータ20の回転に伴い遠心力が付与される。これにより、オイルOは、ロータ20から径方向外側に連続的に飛散する。また、オイルOの飛散に伴い、ロータ20内部の経路が負圧となり、第1のリザーバ93に溜るオイルOが、ロータ20の内部に吸引され、ロータ20内部の経路にオイルOが満たされる。
【0047】
ステータ30に到達したオイルOは、ステータ30から熱を奪う。ステータ30を冷却したオイルOは、下側に滴下され、モータ収容部81内の下部領域に溜る。モータ収容部81内の下部領域に溜ったオイルOは、隔壁61cに設けられた隔壁開口68を介してギヤ収容部82に移動する。以上のようにして、第1の油路91は、オイルOをロータ20およびステータ30に供給する。
【0048】
第2の油路92においてオイルOは、オイル溜りPからステータ30の上側まで引き上げられてステータ30に供給される。すなわち、第2の油路92は、オイルOをステータ30の上側からステータ30に供給する。第2の油路92には、オイルポンプ96と、オイルクーラ97と、第2のリザーバ10と、が設けられる。第2の油路92は、第1の流路92aと、第2の流路92bと、第3の流路92cと、を有する。
【0049】
第1の流路92a、第2の流路92bおよび第3の流路92cは、ハウジング6の壁部に設けられる。第1の流路92aは、オイル溜りPとオイルポンプ96とを繋ぐ。第2の流路92bは、オイルポンプ96とオイルクーラ97とを繋ぐ。第3の流路92cは、オイルクーラ97から上側に延びる。第3の流路92cは、モータ収容部81の壁部に設けられる。図示は省略するが、第3の流路92cは、ステータ30の上側においてモータ収容部81の内部に開口する供給口を有する。当該供給口は、モータ収容部81の内部にオイルOを供給する。
【0050】
オイルポンプ96は、電気により駆動する電動ポンプである。オイルポンプ96は、ハウジング6の内部に収容されたオイルOをモータ2に送る。本実施形態においてオイルポンプ96は、第1の流路92aを介してオイル溜りPからオイルOを吸い上げて、第2の流路92b、オイルクーラ97、第3の流路92cおよび第2のリザーバ10を介して、オイルOをモータ2に供給する。
図1に示すように、オイルポンプ96は、モータ部96aと、ポンプ部96bと、回転センサ72と、を有する。ポンプ部96bは、モータ部96aによって回転させられる。図示は省略するが、ポンプ部96bは、モータ部96aに接続されるインナーロータと、インナーロータを囲むアウターロータと、を有する。オイルポンプ96は、モータ部96aによってポンプ部96bを回転させることで、オイルOをモータ2に送る。
【0051】
回転センサ72は、ポンプ部96bの回転を検出可能である。本実施形態において回転センサ72は、モータ部96aの回転を検出することで、モータ部96aによって回転させられるポンプ部96bの回転を検出可能である。回転センサ72の種類は、ポンプ部96bの回転を検出可能ならば、特に限定されない。回転センサ72は、磁気センサであってもよいし、レゾルバであってもよいし、光学センサであってもよい。回転センサ72が磁気センサである場合、回転センサ72は、ホールIC等のホール素子であってもよいし、磁気抵抗素子であってもよい。なお、回転センサ72は、ポンプ部96bの回転を直接的に検出してもよい。回転センサ72の検出結果は、後述する制御部70に送られる。
【0052】
図2に示すように、オイルクーラ97は、第2の油路92を通過するオイルOを冷却する。オイルクーラ97には、第2の流路92bおよび第3の流路92cが接続される。第2の流路92bおよび第3の流路92cは、オイルクーラ97の内部流路を介して繋がる。
図1に示すように、オイルクーラ97には、冷媒ポンプ120によって、ラジエータ110で冷却された冷媒Wが冷媒流路150を介して供給される。オイルクーラ97の内部を通過するオイルOは、冷媒流路150を通過する冷媒Wとの間で熱交換されて冷却される。オイルクーラ97によって冷却されるオイルOは、オイルポンプ96によって送られるオイルOである。すなわち、冷媒ポンプ120から送られる冷媒Wは、オイルクーラ97において、オイルポンプ96によって送られるオイルOを冷却する。
【0053】
図2に示すように、第2のリザーバ10は、第2の油路92の一部を構成する。第2のリザーバ10は、モータ収容部81の内部に位置する。第2のリザーバ10は、ステータ30の上側に位置する。第2のリザーバ10は、ステータ30によって下側から支持され、モータ2に設けられる。第2のリザーバ10は、例えば、樹脂材料から構成される。
【0054】
本実施形態において第2のリザーバ10は、上側に開口する樋状である。第2のリザーバ10は、オイルOを貯留する。本実施形態において第2のリザーバ10は、第3の流路92cを介してモータ収容部81内に供給されたオイルOを貯留する。第2のリザーバ10は、コイルエンド33a,33bにオイルOを供給する供給口10aを有する。これにより、第2のリザーバ10に貯留されたオイルOをステータ30に供給できる。
【0055】
第2のリザーバ10からステータ30に供給されたオイルOは、下側に滴下され、モータ収容部81内の下部領域に溜る。モータ収容部81内の下部領域に溜ったオイルOは、隔壁61cに設けられた隔壁開口68を介してギヤ収容部82に移動する。以上のようにして、第2の油路92は、オイルOをステータ30に供給する。
【0056】
図1に示すように、インバータユニット8は、制御部70を有する。すなわち、駆動装置1は、制御部70を備える。制御部70は、インバータケース8a内に収容される。制御部70は、インバータケース8aに設けられた冷媒流路150の一部を流れる冷媒Wによって冷却される。制御部70は、モータ2およびオイルポンプ96のモータ部96aを制御する。図示は省略するが、制御部70は、モータ2に供給される電力を調整するインバータ回路を有する。本実施形態において制御部70は、
図3に示すステップS1~S6に沿った制御を行う。
【0057】
ステップS1において車両のイグニッションスイッチIGSがONにされると、制御部70は、ステップS2を行う。ステップS2において制御部70は、オイルポンプ96の動作チェックを行う。
図4に示すように、本実施形態においてステップS2におけるオイルポンプ96の動作チェックは、ステップS2a~S2dを含む。
【0058】
ステップS2aにおいて制御部70は、オイルポンプ96を第1所定時間駆動する。第1所定時間は、例えば、5秒以上、15秒以下である。ステップS2bにおいて制御部70は、オイルポンプ96が正常に動作しているか否かを判断する。具体的に制御部70は、オイルポンプ96を第1所定時間駆動した際のポンプ部96bの回転数を、回転センサ72に基づいて取得し、ポンプ部96bの回転数が所定の範囲内となっているか否かを判断する。所定の範囲とは、例えば、制御部70が指令としてオイルポンプ96に送る目標回転数に対して±10%以内程度の範囲である。すなわち、所定の範囲とは、例えば、オイルポンプ96に所定の目標回転数が入力された場合において許容されるポンプ部96bの回転数の範囲である。
【0059】
ポンプ部96bの回転数が所定の範囲内となっている場合、制御部70は、オイルポンプ96が正常に動作していると判断し、ステップS2cを行う。ステップS2cにおいて制御部70は、車両の走行モードを、通常の走行モードに決定する。走行モードを通常の走行モードに決定した場合、制御部70は、ステップS3を行う。ステップS3において制御部70は、オイルポンプ96を駆動し、車両を走行可能な状態にする。
【0060】
一方、ポンプ部96bの回転数が所定の範囲内から外れている場合、制御部70は、オイルポンプ96が正常に動作していないと判断し、ステップS2dを行う。ステップS2dにおいて制御部70は、車両の走行モードをリンプホームモードに決定する。リンプホームモードは、モータ2の出力が制限されるモードである。すなわち、本実施形態において制御部70は、回転センサ72の検出結果に基づいて、オイルポンプ96の動作が異常だと判断した場合に、モータ2の出力を制限する。
【0061】
ポンプ部96bの回転数が所定の範囲内から外れている場合とは、ポンプ部96bの回転数が所定の範囲内よりも小さい場合と、ポンプ部96bの回転数が所定の範囲内よりも大きい場合と、を含む。すなわち、本実施形態において制御部70は、オイルポンプ96を第1所定時間駆動させた際におけるポンプ部96bの回転数が、オイルポンプ96に入力される目標回転数に対して所定の回転数以上異なる場合に、オイルポンプ96の動作が異常だと判断し、モータ2の出力を制限する。
【0062】
ここで、所定の回転数とは、目標回転数に対して、許容されるポンプ部96bの回転数の誤差以上の値である。所定の回転数は、例えば、目標回転数の10%以上の値である。すなわち、制御部70は、例えば、回転センサ72に基づいて得られたポンプ部96bの回転数が目標回転数に対して10%以上ずれた値であった場合に、モータ2の出力を制限する。
【0063】
本実施形態において回転センサ72の検出結果に基づいて制限されるモータ2の出力は、モータ2の回転数およびモータ2のトルクを含む。モータ2のトルクおよびモータ2の回転数が制限されることで、車両の速度および加速度が制限される。リンプホームモードにおけるモータ2の出力の制限は、オイルポンプ96によってモータ2の冷却を行わなくても、モータ2の温度が上昇しない程度の制限である。すなわち、リンプホームモードにおいて、モータ2の回転数およびトルクは比較的低い値に制限され、車両の速度および加速度は比較的低い値に制限される。
【0064】
走行モードをリンプホームモードに決定した場合、制御部70は、モータ2の出力を制限した状態で、車両を走行可能な状態にする。このとき、制御部70は、正常に動作しないオイルポンプ96を停止した状態のままとしてもよい。リンプホームモードにおいて制御部70は、イグニッションスイッチIGSがOFFにされるまでモータ2の出力を制限し続ける。
【0065】
例えば、オイルポンプ96が正常に動作していない場合、モータ2へのオイルOの供給に不具合が生じ、モータ2の冷却が不十分になる虞がある。そのため、モータ2の温度が過剰に高くなり、モータ2に不具合が生じる虞がある。これに対して、本実施形態によれば、上述したように制御部70は、回転センサ72の検出結果に基づいて、モータ2の出力を制限する。そのため、オイルポンプ96が正常に動作していない場合に、モータ2の出力を制限することが可能である。モータ2の出力が制限される場合、モータ2における発熱量が少なくなる。これにより、オイルポンプ96が正常に動作していなくても、モータ2の温度が上昇することを抑制でき、モータ2の温度が過剰に高くなることを抑制できる。したがって、モータ2に不具合が生じることを抑制できる。また、モータ2の出力を制限しつつも、車両を走行させることができるため、モータ2の損傷を抑制しつつ、車両を所望の場所まで移動させることができる。
【0066】
本実施形態では、制御部70は、回転センサ72の検出結果に基づいてオイルポンプ96の動作が異常だと判断した場合に、モータ2の出力を制限する。そのため、オイルポンプ96の動作状態に応じて、モータ2の出力の制限を好適に行うことができる。したがって、モータ2に不具合が生じることを好適に抑制できる。
【0067】
また、本実施形態では、制御部70は、オイルポンプ96を第1所定時間駆動した際におけるポンプ部96bの回転数が、オイルポンプ96に入力される目標回転数に対して所定の回転数以上異なる場合に、オイルポンプ96の動作が異常だと判断し、モータ2の出力を制限する。そのため、制御部70は、ポンプ部96bの回転数に基づいてオイルポンプ96の動作が異常であることを容易に判断しやすく、モータ2の出力の制限をより好適に行うことができる。したがって、モータ2に不具合が生じることをより好適に抑制できる。
【0068】
また、本実施形態によれば、回転センサ72の検出結果に基づいて制限されるモータ2の出力は、モータ2の回転数を含む。そのため、モータ2の回転数を比較的低く制限することができ、モータ2の温度上昇をより好適に抑制できる。
【0069】
また、本実施形態によれば、回転センサ72の検出結果に基づいて制限されるモータ2の出力は、モータ2のトルクを含む。そのため、モータ2のトルクを比較的低く制限することができ、モータ2の温度上昇をより好適に抑制できる。
【0070】
また、モータ2の回転数が制限される場合、リングギヤ51によってオイルOがかき上げられにくくなり、伝達装置3に潤滑油としてのオイルOが供給されにくくなる。そのため、伝達装置3におけるギヤ同士が擦れて焼きつきが生じる虞がある。これに対して、モータ2のトルクを制限することで、伝達装置3のギヤ同士の間に加えられる負荷を小さくできる。これにより、潤滑油としてのオイルOが供給されなくても、ギヤ同士が擦れて焼きつくことを抑制できる。
【0071】
以上に説明したように、本実施形態において制御部70は、車両のイグニッションスイッチIGSがONにされた直後のステップS2において、オイルポンプ96の動作チェックを行い、車両の走行モードを決定する。言い換えれば、本実施形態において制御部70は、車両のイグニッションスイッチIGSがONにされた直後に、モータ2の出力を制限するか否かを判断する。そのため、車両の走行を開始する前に、オイルポンプ96の異常を検出することができ、モータ2に不具合が生じることを抑制できる走行モード、すなわち本実施形態ではリンプホームモードを選択することができる。
【0072】
なお、本明細書において「車両のイグニッションスイッチがONにされた直後」とは、イグニッションスイッチがONにされてから、車両が走行可能な状態とされるまでの間の期間を含む。
【0073】
図3に示すように、車両の走行モードを通常の走行モードに決定し、ステップS3において車両を走行可能な状態にした制御部70は、次にステップS4を行う。ステップS4において制御部70は、モータ2の温度に応じて、オイルポンプ96の流量を制御する。本実施形態においてステップS4は、車両が走行可能な状態となってからステップS5においてイグニッションスイッチIGSがOFFにされるまでの間、常時行われる。
【0074】
図5に示すように、本実施形態のステップS4におけるオイルポンプ96の流量制御は、ステップS4a~S4gを含む。ステップS4aにおいて制御部70は、オイルポンプ96が送るオイルO流量を第1流量にする。第1流量は、例えば、車両が通常の状態において走行する場合に、モータ2に送られるオイルOの流量として予め決められた流量である。
【0075】
次に、ステップS4bにおいて制御部70は、モータ2の温度が第3温度以下か否かを判断する。具体的に、制御部70は、モータ2の温度を温度センサ71に基づいて取得し、モータ2の温度が第3温度以下か否かを判断する。第3温度は、比較的高い温度である。第3温度の値は、例えば、80℃以上、100℃以下である。
【0076】
ステップS4bにおいてモータ2の温度が第3温度よりも高いと判断した場合、制御部70は、ステップS4cを行う。ステップS4cにおいて制御部70は、モータ2の温度およびモータ2の温度変化に基づいて、オイルポンプ96が送るオイルOの流量を増加させる。これにより、モータ2の温度が比較的高い場合に、モータ2に送られるオイルOの流量を増加させることができ、モータ2を好適に冷却できる。
【0077】
具体的にステップS4cにおいて制御部70は、単位時間当たりのモータ2の温度変化が所定の値よりも大きい場合、オイルポンプ96が送るオイルOの流量を、第1流量よりも大きい第2流量にする。これにより、モータ2の急激な温度上昇を抑制でき、モータ2を好適に冷却できる。
【0078】
一方、ステップS4cにおいて制御部70は、単位時間当たりのモータ2の温度変化が所定の値以下である場合、オイルポンプ96が送るオイルOの流量を、第1流量から第2流量までの間で、モータ2の温度に応じて線形に変化させる。これにより、モータ2の温度に応じて、モータ2に送られるオイルOを増加させる量を調整できる。したがって、モータ2をエネルギ効率よく好適に冷却できる。
【0079】
ステップS4bにおいてモータ2の温度が第3温度以下と判断した場合、制御部70は、ステップS4dを行う。ステップS4dにおいて制御部70は、温度センサ71に基づいて得られたモータ2の温度が所定の第1温度よりも低いか否かを判断する。第1温度は、第3温度よりも低い温度である。第1温度の値は、例えば、-20℃以上、-5℃以下である。
【0080】
ステップS4dにおいてモータ2の温度が第1温度以上と判断した場合、制御部70は、ステップS4aにおいてオイルポンプ96からモータ2に送られるオイルOの流量を第1流量に維持、または第1流量に戻して、ステップS4bを再び行う。
【0081】
一方、ステップS4dにおいてモータ2の温度が第1温度よりも低いと判断した場合、制御部70は、ステップS4eを行う。ステップS4eにおいて制御部70は、オイルポンプ96の駆動を停止し、モータ2の出力を制限する。すなわち、本実施形態において制御部70は、温度センサ71に基づいて得られたモータ2の温度が、所定の第1温度よりも低い場合に、モータ2の出力を制限する。また、制御部70は、温度センサ71に基づいて得られたモータ2の温度が、所定の第1温度よりも低い場合に、オイルポンプ96の駆動を停止する。
【0082】
本実施形態において温度センサ71の検出結果に基づいて制限されるモータ2の出力は、モータ2のトルクおよびモータ2のトルク変化率を含む。モータ2のトルクおよびモータ2のトルク変化率が制限されることで、車両の加速度および加速度の急激な上昇が制限される。本実施形態において温度センサ71の検出結果に基づいたモータ2の出力の制限は、減速装置4および差動装置5における各ギヤの噛み合いにおいて、潤滑油としてのオイルOが供給されなくても、ギヤが焼きつくことを抑制できる程度の制限である。
【0083】
ここで、モータ2の温度が比較的低い場合には、車両が走行する環境が比較的低温となっている。そのため、ハウジング6に収容されるオイルOも比較的低温となり、オイルOの粘度が比較的高くなる。オイルOの粘度が高くなり過ぎると、伝達装置3に供給されたオイルOが噛み合うギヤ同士の間に油膜を作りにくくなる。また、リングギヤ51によってオイルOをかき上げにくいため、伝達装置3に供給されるオイルO自体の量も少なくなる。これにより、伝達装置3においてギヤ同士が擦れて焼きつきが生じる虞があった。
【0084】
これに対して、本実施形態によれば、上述したように制御部70は、温度センサ71の検出結果に基づいて、モータ2の出力を制限する。そのため、車両が走行する環境が比較的低温である場合にモータ2の出力を制限することで、伝達装置3のギヤ同士の間に加えられる負荷を小さくすることが可能となる。これにより、伝達装置3においてギヤ同士が擦れて焼きつきが生じることを抑制できる。したがって、比較的低温の環境下において駆動装置1に不具合が生じることを抑制できる。
【0085】
本実施形態では、制御部70は、温度センサ71に基づいて得られたモータ2の温度が、所定の第1温度よりも低い場合に、モータ2の出力を制限する。そのため、比較的低温の環境下においてモータ2の出力を制限することができ、駆動装置1に不具合が生じることを抑制できる。
【0086】
また、本実施形態によれば、制御部70は、温度センサ71に基づいて得られたモータ2の温度が、所定の第1温度よりも低い小さい場合に、オイルポンプ96の駆動を停止する。比較的低温の環境下においてオイルOの粘度が比較的高くなっていると、オイルポンプ96によってオイルOをモータ2に送りにくくなり、オイルポンプ96の負荷が大きくなる。そのため、オイルポンプ96の駆動を停止することで、オイルポンプ96に大きく負荷が加えられることを抑制でき、駆動装置1における消費電力を低減できる。一方、モータ2の温度が比較的低いため、オイルポンプ96によってオイルOを送らなくても、モータ2が熱によって不具合を起こすことが抑制される。したがって、モータ2の温度が比較的低い場合にオイルポンプ96の駆動を停止することで、モータ2に不具合が生じることを抑制しつつ、駆動装置1の消費電力を低減できる。
【0087】
また、本実施形態によれば、温度センサ71の検出結果に基づいて制限されるモータ2の出力は、モータ2のトルクを含む。そのため、伝達装置3のギヤ同士の間に加えられる負荷を小さくでき、ギヤ同士が擦れて焼きつくことを好適に抑制できる。
【0088】
また、本実施形態によれば、温度センサ71の検出結果に基づいて制限されるモータ2の出力は、モータ2のトルク変化率を含む。そのため、モータ2のトルクが急激に上昇することが抑制され、伝達装置3において互いに噛み合うギヤ同士が強く衝突することを抑制できる。これにより、伝達装置3のギヤが焼きつくことをより好適に抑制できる。
【0089】
本実施形態において温度センサ71の検出結果に基づいて制限されるモータ2の出力は、モータ2の回転数を含まない。そのため、比較的低温の環境下において、車両の加速が制限される一方で、車両の速度は制限されない。これにより、徐々に車両の速度を大きくすることができる。したがって、駆動装置1に不具合が生じることを抑制しつつ、車両を円滑に走行させることができる。
【0090】
図5に示すように、ステップS4eにおいてモータ2の出力を制限した後、制御部70は、ステップS4fを行う。ステップS4fにおいて制御部70は、温度センサ71に基づいて得られたモータ2の温度が第2温度以上か否かを判断する。第2温度は、第1温度よりも高く、第3温度よりも低い温度である。第2温度の値は、例えば、-10℃以上、5℃以下である。
【0091】
ステップS4fにおいてモータ2の温度が第2温度よりも低いと判断した場合、制御部70は、オイルポンプ96の駆動が停止され、モータ2の出力が制限された状態を維持する。一方、ステップS4fにおいてモータ2の温度が第2温度以上であると判断した場合、制御部70は、ステップS4gを行う。ステップS4gにおいて制御部70は、オイルポンプ96の駆動を再開し、モータ2の出力の制限を解除する。すなわち、本実施形態において制御部70は、モータ2の出力を制限した後、温度センサ71に基づいて得られたモータ2の温度が第2温度以上である場合に、オイルポンプ96の駆動を再開し、かつ、モータ2の出力の制限を解除する。
【0092】
ここで、モータ2の温度が比較的高くなった場合、モータ2からの発熱により駆動装置1全体の温度も上昇する。そのため、オイルOの温度も上昇し、オイルOの粘度も比較的低くなる。これにより、伝達装置3における噛み合うギヤ同士の間に好適に油膜を設けることができる。したがって、モータ2の出力の制限を解除しても、ギヤが焼きつくことを抑制できる。また、オイルOの粘度が比較的低くなることで、オイルポンプ96によってオイルOを送ることも容易になる。そのため、オイルポンプ96の駆動を再開しても、オイルポンプ96に加えられる負荷を比較的小さくできる。また、オイルポンプ96から送られるオイルOによってモータ2を好適に冷却できる。
【0093】
なお、モータ2の温度が比較的高くなった場合とは、車両が走行する環境の温度が上昇した場合、および車両が走行する環境が比較的低温の環境のままで、モータ2の回転数の上昇等に伴って、モータ2の温度が上昇した場合等を含む。
【0094】
ステップS4gの後、制御部70は、ステップS4aに戻る。すなわち、本実施形態のステップS4gにおいて駆動が再開された際のオイルポンプ96が送るオイルOの流量は、第1流量とされる。以降、制御部70は、イグニッションスイッチIGSがOFFにされるまでの間、上述したステップS4における各ステップS4a~S4gを繰り返し実行する。
【0095】
図3に示すように、制御部70は、ステップS5において車両のイグニッションスイッチIGSがOFFにされると、ステップS6を行う。ステップS6において制御部70は、アフターラン制御を行う。
図6に示すように、本実施形態のステップS6におけるアフターラン制御は、ステップS6a~S6fを含む。ステップS6aにおいて制御部70は、モータ2の駆動を停止する。
【0096】
次に、ステップS6bにおいて制御部70は、オイルポンプ96、冷媒ポンプ120、および送風装置130を駆動する。すなわち、本実施形態において制御部70は、車両のイグニッションスイッチIGSがOFFされた後において、オイルポンプ96を駆動する。そのため、オイルポンプ96によってモータ2にオイルOが送られることで、モータ2が冷却される。したがって、イグニッションスイッチIGSがOFFされた後においてモータ2を冷却できる。
【0097】
ここで、駆動装置1が搭載される車両においては、イグニッションスイッチIGSがOFFにされた後に、比較的短い間隔で再びイグニッションスイッチがONにされる場合がある。この場合、再びイグニッションスイッチがONにされた際に駆動装置1に搭載されたモータ2の温度が比較的高いままの状態となっている場合があり、再びイグニッションスイッチIGSがONにされた後において、駆動装置1による出力を好適に得られない場合があった。具体的には、例えば、モータ2の温度がすぐに高温となり、モータ2のトルク等の出力が制限される場合がある。この場合、再びイグニッションスイッチIGSがONにされた後において、車両の加速を好適に得られない場合があった。
【0098】
これに対して、本実施形態によれば、上述したように制御部70は、車両のイグニッションスイッチIGSがOFFされた後において、オイルポンプ96を駆動することで、モータ2を冷却できる。そのため、比較的短い間隔で再びイグニッションスイッチがONにされる前に、モータ2の温度を比較的低くしておける。したがって、イグニッションスイッチIGSがOFFにされた後に、比較的短い間隔でイグニッションスイッチIGSがONにされた場合であっても、駆動装置1による出力を好適に得やすい。
【0099】
また、本実施形態によれば、制御部70は、車両のイグニッションスイッチIGSがOFFされた後において、オイルポンプ96、冷媒ポンプ120、および送風装置130を駆動する。これにより、送風装置130によってラジエータ110内の冷媒Wが冷却され、冷却された冷媒Wが冷媒ポンプ120によってオイルクーラ97に送られる。そして、冷媒Wによってオイルクーラ97で冷却されたオイルOが、オイルポンプ96によってモータ2に送られることで、モータ2がより好適に冷却される。したがって、イグニッションスイッチIGSがOFFされた後においてモータ2をより好適に冷却できる。そのため、比較的短い間隔で再びイグニッションスイッチがONにされる前に、モータ2の温度をより好適に低くしておける。これにより、イグニッションスイッチIGSがOFFにされた後に、比較的短い間隔でイグニッションスイッチIGSがONにされた場合であっても、駆動装置1による出力をより好適に得やすい。
【0100】
ステップS6bにおいて制御部70は、オイルポンプ96、冷媒ポンプ120、および送風装置130のうちイグニッションスイッチIGSがOFFにされた際に駆動していた機器については、駆動を継続する。一方、ステップS6bにおいて制御部70は、オイルポンプ96、冷媒ポンプ120、および送風装置130のうちイグニッションスイッチIGSがOFFにされた際に停止していた機器については、イグニッションスイッチIGSがOFFにされた直後に駆動を開始する。例えば、本実施形態においてイグニッションスイッチIGSがONにされた状態では、オイルポンプ96、冷媒ポンプ120、および送風装置130は、駆動された状態である。そのため、ステップS6bにおいて制御部70は、オイルポンプ96の駆動、冷媒ポンプ120の駆動、および送風装置130の駆動を継続する。
【0101】
本実施形態のステップS6bにおいて制御部70は、車両制御装置140に対して、冷媒ポンプ120および送風装置130を駆動させる信号を送信する。これにより、車両制御装置140が冷媒ポンプ120および送風装置130を駆動する。すなわち、本実施形態において制御部70は、イグニッションスイッチIGSがOFFにされた後において、車両制御装置140を介して冷媒ポンプ120および送風装置130を駆動する。
【0102】
次に、ステップS6cにおいて制御部70は、イグニッションスイッチIGSがOFFにされてから第2所定時間が経過したか否かを判断する。第2所定時間は、例えば、10秒以上、40秒以下である。第2所定時間は、モータ2の駆動が停止された状態で、オイルポンプ96、冷媒ポンプ120、および送風装置130を駆動してモータ2を冷却した場合に、モータ2の温度変化が生じなくなる程度の時間である。第2所定時間は、例えば、予め実験等により求められた値である。
【0103】
ステップS6cにおいて第2所定時間が経過したと判断した場合、制御部70は、ステップS6dを行う。ステップS6dにおいて制御部70は、オイルポンプ96の駆動、冷媒ポンプ120の駆動、および送風装置130の駆動を停止する。すなわち、制御部70は、イグニッションスイッチIGSがOFFにされてから所定の時間が経過した場合に、オイルポンプ96の駆動、冷媒ポンプ120の駆動、および送風装置130の駆動を停止する。本実施形態において制御部70は、駆動する際と同様に、車両制御装置140を介して冷媒ポンプ120の駆動および送風装置130の駆動を停止する。
【0104】
一方、ステップS6cにおいて第2所定時間が経過していないと判断した場合、制御部70は、ステップS6eを行う。ステップS6eにおいて制御部70は、温度センサ71に基づいて得られたモータ2の温度が第4温度以下か否かを判断する。第4温度は、比較的高い温度である。第4温度の値は、例えば、上述した第3温度の値と同じである。なお、第4温度の値は、第3温度の値と異なってもよい。
【0105】
ステップS6eにおいてモータ2の温度が第4温度よりも高いと判断した場合、制御部70は、オイルポンプ96の駆動、冷媒ポンプ120の駆動、および送風装置130の駆動を継続する。これにより、モータ2の温度を、第4温度以下にできる。
【0106】
一方、ステップS6eにおいてモータ2の温度が第4温度以下であると判断した場合、制
御部70は、ステップS6fを行う。ステップS6fにおいて制御部70は、単位時間当たりのモータ2の温度変化が所定の閾値以下か否かを判断する。所定の閾値は、例えば、数℃程度である。
【0107】
単位時間当たりのモータ2の温度変化は、モータ2の温度が上昇する場合と、モータ2の温度が低下する場合と、が考えられる。例えば、モータ2の出力が急激に大きくなった直後にイグニッションスイッチIGSがOFFにされた場合等においては、モータ2の駆動の停止後に、遅れてモータ2の温度が上昇する場合がある。
【0108】
ステップS6fにおいて単位時間当たりのモータ2の温度変化が所定の閾値よりも大きいと判断した場合、制御部70は、オイルポンプ96の駆動、冷媒ポンプ120の駆動、および送風装置130の駆動を継続する。これにより、単位時間当たりの温度変化が比較的大きい場合に、モータ2の冷却を継続できる。
【0109】
一方、ステップS6fにおいて単位時間当たりのモータ2の温度変化が所定の閾値以下であると判断した場合、制御部70は、ステップS6dにおいて、オイルポンプ96の駆動、冷媒ポンプ120の駆動、および送風装置130の駆動を停止する。以上により、ステップS6におけるアフターラン制御が終了する。
【0110】
本実施形態によれば、上述したステップS6c,S6e,S6fのようにして、制御部70は、イグニッションスイッチIGSがOFFにされた後において、温度センサ71の検出結果に基づいて、オイルポンプ96の駆動、冷媒ポンプ120の駆動、および送風装置130の駆動を停止する。そのため、モータ2の温度が好適に低下するまで、オイルポンプ96、冷媒ポンプ120、および送風装置130を駆動し、モータ2を好適に冷却できる。これにより、イグニッションスイッチIGSがOFFにされた後に、比較的短い間隔でイグニッションスイッチIGSがONにされた場合であっても、駆動装置1による出力をより好適に得やすい。
【0111】
また、本実施形態によれば、上述したステップS6fのようにして、制御部70は、イグニッションスイッチIGSがOFFにされた後において、温度センサ71に基づいて得られたモータ2の温度が、所定の温度、すなわち第4温度以下であり、かつ、単位時間当たりのモータ2の温度変化が所定の閾値以下である場合に、オイルポンプ96の駆動、冷媒ポンプ120の駆動、および送風装置130の駆動を停止する。そのため、モータ2の温度が比較的低くなっても、モータ2の温度が比較的大きく変動している間にはモータ2の冷却を継続しつつ、モータ2の温度が変化しなくなってきた場合にモータ2の冷却を終了できる。これにより、イグニッションスイッチIGSがOFFにされた後において、オイルポンプ96等によって冷却できる最大限までモータ2を冷却しやすく、かつ、過剰にオイルポンプ96等を駆動し続けることを抑制できる。したがって、イグニッションスイッチIGSがOFFされた後のアフターラン制御において、モータ2の温度を好適に低下させることができ、かつ、消費電力を低減できる。
【0112】
また、例えば、温度センサ71に不具合が生じた場合、実際のモータ2の温度が十分に低下していても、温度センサ71に基づいて得られたモータ2の温度が実際の温度と異なり、上述した停止条件を満たさない虞がある。この場合、必要以上にオイルポンプ96、冷媒ポンプ120、および送風装置130を駆動することになり、アフターラン制御における消費電力が増大する虞がある。
【0113】
これに対して、本実施形態によれば、制御部70は、イグニッションスイッチIGSがOFFにされてから第2所定時間が経過した場合に、オイルポンプ96の駆動、冷媒ポンプ120の駆動、及び送風装置130の駆動を停止する。そのため、温度センサ71に不具合が生じた場合であっても、第2所定時間後にはオイルポンプ96の駆動、冷媒ポンプ120の駆動、及び送風装置130の駆動を停止することができる。これにより、必要以上にオイルポンプ96、冷媒ポンプ120、及び送風装置130を駆動することを抑制でき、アフターラン制御における消費電力が増大することを抑制できる。
【0114】
本発明は上述の実施形態に限られず、他の構成及び方法を採用することもできる。駆動装置の制御部は、回転センサの検出結果に基づいてモータの出力を制限する場合、どのような手順及び条件によってモータの出力を制限してもよい。例えば、制御部は、回転センサに基づいて得られたポンプ部の回転数が不規則に変動する場合等に、オイルポンプの動作が異常だと判断して、モータの出力を制限してもよい。回転センサの検出結果に基づいて制限されるモータの出力は、特に限定されず、モータのトルク変化率を含んでもよいし、モータの回転数を含まなくてもよいし、モータのトルクを含まなくてもよい。また、制御部によるオイルポンプの動作チェックは、車両のイグニッションスイッチがONにされた直後以外に行われてもよい。制御部によるオイルポンプの動作チェックは、車両のイグニッションスイッチがONにされてからOFFにされるまでの間において、定期的に行われてもよい。制御部は、回転センサの検出結果に基づいてモータの出力を制限しなくてもよい。
【0115】
駆動装置の制御部は、温度センサの検出結果に基づいてモータの出力を制限する場合、どのような手順および条件によってモータの出力を制限してもよい。例えば、制御部は、温度センサに基づいて得られたモータの温度が、比較的高温である場合に、モータの出力を制限してもよい。温度センサの検出結果に基づいて制限されるモータの出力は、特に限定されず、モータの回転数を含んでもよいし、モータのトルクを含まなくてもよいし、モータのトルク変化率を含まなくてもよい。制御部は、温度センサの検出結果に基づいてモータの出力を制限する場合に、オイルポンプの駆動を停止しなくてもよい。制御部は、温度センサの検出結果に基づいてモータの出力を制限しなくてもよい。制御部は、温度センサに基づいて得られたモータの温度が第1温度以上で、かつ、第2温度よりも低い場合、モータの出力を制限せずに、オイルポンプの駆動を停止してもよい。この場合、制御部は、モータの温度が第2温度以上となった場合には、オイルポンプの駆動を再開し、モータの温度が第1温度よりも低くなった場合には、モータの出力を制限してもよい。
【0116】
駆動装置の制御部は、車両のイグニッションスイッチがOFFにされた後において、オイルポンプ、冷媒ポンプ、および送風装置を駆動する場合、どのような手順および条件でオイルポンプを駆動してもよい。例えば、制御部は、車両のイグニッションスイッチがOFFにされた後、一定の時間を空けた後に、オイルポンプ、冷媒ポンプ、および送風装置を駆動してもよい。また、制御部は、車両のイグニッションスイッチがOFFにされた後において、冷媒ポンプおよび送風装置を駆動しなくてもよい。制御部は、車両のイグニッションスイッチがOFFにされた後において、どのような条件でオイルポンプの駆動、冷媒ポンプの駆動、および送風装置の駆動を停止してもよい。制御部は、車両のイグニッションスイッチがOFFにされた後において、モータの温度によらず、オイルポンプの駆動、冷媒ポンプの駆動、および送風装置の駆動を停止してもよい。
【0117】
本明細書において説明した各構成および各方法は、相互に矛盾しない範囲内において、適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0118】
1…駆動装置、2…モータ、4…減速装置、5…差動装置、6…ハウジング、55…車軸、70…制御部、71…温度センサ、96…オイルポンプ、100…車両駆動システム、110…ラジエータ、120…冷媒ポンプ、130…送風装置、IGS…イグニッションスイッチ、O…オイル、W…冷媒