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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】永久電流スイッチ及び超電導装置
(51)【国際特許分類】
   H10N 60/30 20230101AFI20240312BHJP
   H01B 12/06 20060101ALI20240312BHJP
   H01F 6/00 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
H10N60/30
H01B12/06
H01F6/00 160
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021546512
(86)(22)【出願日】2020-06-25
(86)【国際出願番号】 JP2020025063
(87)【国際公開番号】W WO2021053921
(87)【国際公開日】2021-03-25
【審査請求日】2022-12-21
(31)【優先権主張番号】P 2019171570
(32)【優先日】2019-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成29年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、未来社会創造事業「高温超電導線材接合技術の超高磁場NMRと鉄道き電線への社会実装」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 高史
(72)【発明者】
【氏名】大木 康太郎
(72)【発明者】
【氏名】永石 竜起
【審査官】岩本 勉
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-117042(JP,A)
【文献】特開2003-069093(JP,A)
【文献】特開2019-096849(JP,A)
【文献】特開2014-216412(JP,A)
【文献】特開2019-160817(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10N 60/30
H01F 6/00
H01B 12/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超電導線材と、
ヒータと、
絶縁部材とを備え、
前記超電導線材は、基材と、前記基材上に設けられている超電導層とを含み、
前記超電導層は、前記基材に対向する第1主面と、前記第1主面とは反対側の第2主面とを含み、
前記ヒータは、前記超電導層に対して前記第2主面の側のみに配置されており、
前記絶縁部材は、前記第2主面と前記ヒータとの間に設けられている、永久電流スイッチ。
【請求項2】
前記超電導線材は、導電性を有する保護層をさらに含み、
前記保護層は、前記超電導層の前記第2主面上に設けられており、かつ、前記超電導層に接触しており、
前記絶縁部材は、前記保護層と前記ヒータとの間に設けられている、請求項1に記載の永久電流スイッチ。
【請求項3】
前記保護層及び前記超電導層は、前記基材から離間されている、請求項2に記載の永久電流スイッチ。
【請求項4】
前記超電導線材は、導電性を有する保護層をさらに含み、
前記保護層は、前記超電導層の前記第2主面上に設けられており、かつ、前記超電導層に接触しており、
前記超電導層は、前記超電導線材の長手方向に沿って、第1部分と、第2部分と、前記第1部分と前記第2部分との間にある第3部分とを含み、
前記保護層は、前記第1部分及び前記第2部分上にのみ設けられており、
前記ヒータは、前記第3部分上にのみ設けられており、かつ、前記保護層から離間されており、
前記絶縁部材は、前記ヒータと前記第3部分との間に設けられている、請求項1に記載の永久電流スイッチ。
【請求項5】
前記超電導線材は、導電性を有する安定化層をさらに含み、
前記安定化層は、前記保護層に接触しており、
前記保護層は、前記超電導層と前記安定化層との間に設けられており、
前記ヒータは、前記安定化層から離間されている、請求項2から請求項4のいずれか一項に記載の永久電流スイッチ。
【請求項6】
前記超電導線材は、絶縁性を有する中間層をさらに含み、
前記中間層は、前記基材と前記第1主面との間に設けられている、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の永久電流スイッチ。
【請求項7】
前記超電導線材は、絶縁性を有する中間層をさらに含み、
前記中間層は、前記基材と前記第1主面との間に設けられており、
前記第2主面の平面視において、前記保護層の第1側縁は、前記中間層の第2側縁よりも内側に位置している、請求項2から請求項5のいずれか一項に記載の永久電流スイッチ。
【請求項8】
前記第2主面の前記平面視において、前記超電導層の第3側縁は、前記中間層の前記第2側縁よりも内側に位置している、請求項7に記載の永久電流スイッチ。
【請求項9】
前記超電導線材は、非コイル形状を有している、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の永久電流スイッチ。
【請求項10】
保持部材をさらに備え、
前記超電導線材の被保持部は、前記保持部材によって保持されており、
前記ヒータは、前記被保持部の一部のみに設けられている、請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の永久電流スイッチ。
【請求項11】
前記ヒータは、前記超電導線材の長手方向において、前記被保持部の長さの50%以下の長さにわたって設けられている、請求項10に記載の永久電流スイッチ。
【請求項12】
前記超電導層は、RE1Ba2Cu3yで形成されており、yは6.0以上8.0以下であり、REは希土類元素を表す、請求項1から請求項11のいずれか一項に記載の永久電流スイッチ。
【請求項13】
請求項1から請求項12のいずれか一項に記載の前記永久電流スイッチと、
前記永久電流スイッチに接続されている超電導コイルと、
前記永久電流スイッチと前記超電導コイルとを収容する容器とを備える、超電導装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、永久電流スイッチ及び超電導装置に関する。本出願は、2019年9月20日に出願した日本特許出願である特願2019-171570号に基づく優先権を主張する。当該日本特許出願に記載された全ての記載内容は、参照によって本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
特開2018-117042号公報(特許文献1)は、永久電流スイッチを開示している。当該永久電流スイッチは、超電導線材と、ヒータ線材とを備えている。超電導線材とヒータ線材とは共巻きコイルを形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-117042号公報
【発明の概要】
【0004】
本開示の永久電流スイッチは、超電導線材と、ヒータと、絶縁部材とを備える。超電導線材は、基材と、基材上に設けられている超電導層とを含む。超電導層は、基材に対向する第1主面と、第1主面とは反対側の第2主面とを含む。ヒータは、超電導層に対して第2主面の側のみに配置されている。絶縁部材は、超電導層の第2主面とヒータとの間に設けられている。
【0005】
本開示の超電導装置は、本開示の永久電流スイッチと、永久電流スイッチに接続されている超電導コイルと、永久電流スイッチと超電導コイルとを収容する容器とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、実施形態1から実施形態4に係る超電導装置の概略図である。
図2図2は、実施形態1に係る永久電流スイッチの概略部分拡大図である。
図3図3は、実施形態1に係る永久電流スイッチの、図2に示される断面線III-IIIにおける概略断面図である。
図4図4は、実施形態1の第1変形例に係る永久電流スイッチの概略部分拡大図である。
図5図5は、実施形態1の第2変形例に係る永久電流スイッチの概略部分拡大図である。
図6図6は、実施形態1の第3変形例に係る永久電流スイッチの概略部分拡大図である。
図7図7は、超電導部材の準備工程を示す概略断面図である。
図8図8は、超電導部材の分割工程を示す概略断面図である。
図9図9は、実施形態1に係る永久電流スイッチの動作を示す超電導装置の回路図である。
図10図10は、実施形態1に係る永久電流スイッチの動作を示す超電導装置の回路図である。
図11図11は、実施形態1に係る永久電流スイッチの動作を示す超電導装置の回路図である。
図12図12は、実施形態1に係る永久電流スイッチの動作を示す超電導装置の回路図である。
図13図13は、実施形態1に係る永久電流スイッチの動作を示す超電導装置の回路図である。
図14図14は、実施形態1に係る永久電流スイッチの動作を示す超電導装置の回路図である。
図15図15は、実施形態1に係る永久電流スイッチ及び比較例の永久電流スイッチの、ヒータの消費電力と永久電流スイッチのオフ抵抗との関係を表すグラフを示す図である。
図16図16は、実施形態2に係る永久電流スイッチの概略断面図である。
図17図17は、実施形態3に係る永久電流スイッチの概略平面図である。
図18図18は、実施形態3に係る永久電流スイッチの、図17に示される断面線XVIII-XVIIIにおける概略断面図である。
図19図19は、実施形態3に係る永久電流スイッチの、図17に示される断面線XIX-XIXにおける概略断面図である。
図20図20は、実施形態3に係る永久電流スイッチの、図17に示される断面線XX-XXにおける概略断面図である。
図21図21は、実施形態4に係る永久電流スイッチの概略断面図である。
図22図22は、実施形態4の第1変形例に係る永久電流スイッチの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[本開示が解決しようとする課題]
永久電流スイッチにおいては、より低い消費電力で動作することが求められている。本開示の目的は、より低い消費電力で動作する永久電流スイッチ及び超電導装置を提供することである。
[本開示の効果]
本開示によれば、より低い消費電力で動作する永久電流スイッチ及び超電導装置を提供することができる。
【0008】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0009】
(1)本開示の永久電流スイッチは、超電導線材と、ヒータと、絶縁部材とを備える。超電導線材は、基材と、基材上に設けられている超電導層とを含む。超電導層は、基材に対向する第1主面と、第1主面とは反対側の第2主面とを含む。ヒータは、超電導層に対して第2主面の側のみに配置されている。絶縁部材は、超電導層の第2主面とヒータとの間に設けられている。本開示では、超電導層が基材上に形成されていることは、超電導層が、基材上に直接形成されていること、または、基材上に形成されている中間層上に形成されていることを意味している。
【0010】
上記(1)の永久電流スイッチでは、ヒータは、超電導層に対して第2主面の側のみに配置されている。ヒータで発生した熱のうち基材に散逸する熱が減少する。超電導層は、ヒータで効率的に加熱され得る。また、絶縁部材は、超電導層の第2主面とヒータとの間に設けられているため、絶縁部材は、ヒータを流れる電流が超電導層に流れ込むことを防止する。そのため、永久電流スイッチを動作させるために必要なヒータの消費電力が低減される。上記(1)の永久電流スイッチは、より低い消費電力で動作し得る。
【0011】
(2)上記(1)の永久電流スイッチでは、超電導線材は、導電性を有する保護層をさらに含む。保護層は、超電導層の第2主面上に設けられており、かつ、超電導層に接触している。絶縁部材は、保護層とヒータとの間に設けられている。
【0012】
保護層は、超電導層にクエンチ(超電導状態から常電導状態に移行する現象)が発生した際に、超電導層を流れていた電流をバイパスさせる。上記(2)の永久電流スイッチでは、超電導線材の焼損が防止され得る。また、絶縁部材は、ヒータを流れる電流が超電導層及び保護層に流れ込むことを防止する。永久電流スイッチを動作させるために必要なヒータの消費電力は低減される。上記(2)の永久電流スイッチは、より低い消費電力で動作し得る。
【0013】
(3)上記(2)の永久電流スイッチにおいて、保護層及び超電導層は、基材から離間されている。
【0014】
そのため、ヒータで発生した熱が基材に散逸することが防止される。永久電流スイッチを動作させるために必要なヒータの消費電力が低減される。上記(3)の永久電流スイッチは、より低い消費電力で動作し得る。
【0015】
(4)上記(1)の永久電流スイッチでは、超電導線材は、導電性を有する保護層をさらに含む。保護層は、超電導層の第2主面上に設けられており、かつ、超電導層に接触している。超電導層は、超電導線材の長手方向に沿って、第1部分と、第2部分と、第1部分と第2部分との間にある第3部分とを含む。保護層は、第1部分及び第2部分上にのみ設けられている。ヒータは、第3部分上にのみ設けられており、かつ、保護層から離間されている。絶縁部材は、ヒータと第3部分との間に設けられている。
【0016】
保護層が第1部分及び第2部分上にのみ設けられているため、超電導線材を流れる電流は、第3部分をバイパスすることができない。超電導層の第3部分が、ヒータによって加熱されて、常電導状態になった場合に、超電導線材を流れる全ての電流は、高い電気抵抗を有する第3部分を流れる。そのため、ヒータを用いた超電導層の加熱長さまたは加熱面積がより小さくても、永久電流スイッチの高いオフ抵抗を得ることができる。永久電流スイッチを動作させるために必要なヒータの消費電力が低減される。永久電流スイッチは、より少ない消費電力で動作し得る。
【0017】
また、ヒータは、超電導層の第3部分上にのみ設けられており、かつ、保護層から離間されている。そのため、ヒータを流れる電流が、保護層に流れ込むことが防止される。永久電流スイッチを動作させるために必要なヒータの消費電力が低減される。永久電流スイッチは、より少ない消費電力で動作し得る。
【0018】
(5)上記(2)から(4)のいずれかの永久電流スイッチにおいて、超電導線材は、導電性を有する安定化層をさらに含む。安定化層は、保護層に接触している。保護層は、超電導層と安定化層との間に設けられている。ヒータは、安定化層から離間されている。
【0019】
安定化層は、超電導層にクエンチ(超電導状態から常電導状態に移行する現象)が発生した際に、超電導層を流れていた電流をバイパスさせる。上記(5)の永久電流スイッチでは、超電導線材の焼損が防止され得る。また、ヒータは、安定化層から離間されている。そのため、ヒータを流れる電流が保護層及び安定化層に流れ込むことが防止される。永久電流スイッチを動作させるために必要なヒータの消費電力が低減される。永久電流スイッチは、より少ない消費電力で動作し得る。
【0020】
(6)上記(1)から(5)のいずれかの永久電流スイッチにおいて、超電導線材は、絶縁性を有する中間層を含む。中間層は、基材と第1主面との間に設けられている。
【0021】
中間層は、ヒータを流れる電流が基材に流れ込むことを防止する。永久電流スイッチを動作させるために必要なヒータの消費電力が低減される。上記(6)の永久電流スイッチは、より低い消費電力で動作し得る。
【0022】
(7)上記(2)から(5)のいずれかの永久電流スイッチにおいて、超電導線材は、絶縁性を有する中間層を含む。中間層は、基材と第1主面との間に設けられている。超電導層の第2主面の平面視において、保護層の第1側縁は、中間層の第2側縁よりも内側に位置している。
【0023】
そのため、保護層を経由したヒータから基材への熱の散逸を低減させることができる。永久電流スイッチを動作させるために必要なヒータの消費電力が低減される。上記(5)の永久電流スイッチは、より低い消費電力で動作し得る。
【0024】
(8)上記(7)の永久電流スイッチでは、超電導層の第2主面の平面視において、超電導層の第3側縁は、中間層の第2側縁よりも内側に位置している。
【0025】
そのため、超電導層を経由したヒータから基材への熱の散逸を低減させることができる。永久電流スイッチを動作させるために必要なヒータの消費電力が低減される。上記(8)の永久電流スイッチは、より低い消費電力で動作し得る。
【0026】
(9)上記(1)から(8)のいずれかの永久電流スイッチにおいて、超電導線材は、非コイル形状を有している。本開示では、超電導線材が非コイル形状を有することは、超電導線材がコイル形状を有していないことを意味する。そして、コイル形状を有する超電導線材は、超電導線材の湾曲部の径方向において超電導線材の少なくとも一部が重なっていることを意味する。
【0027】
上記(9)の永久電流スイッチでは、永久電流スイッチから発生する磁場の大きさを小さくすることができる。永久電流スイッチの設置位置に対する制約を少なくすることができる。
【0028】
(10)上記(1)から(9)のいずれかの永久電流スイッチは、保持部材をさらに備える。超電導線材の被保持部は、保持部材によって保持されている。ヒータは、超電導線材の被保持部の一部のみに設けられている。
【0029】
そのため、ヒータの長さが短くなる。永久電流スイッチを動作させるために必要なヒータの消費電力が低減される。上記(10)の永久電流スイッチは、より低い消費電力で動作し得る。
【0030】
(11)上記(8)の永久電流スイッチにおいて、ヒータは、超電導線材の長手方向において、超電導線材の被保持部の長さの50%以下の長さにわたって設けられている。
【0031】
そのため、ヒータの長さが短くなる。永久電流スイッチを動作させるために必要なヒータの消費電力が低減される。上記(11)の永久電流スイッチは、より低い消費電力で動作し得る。
【0032】
(12)上記(1)から(11)のいずれかの永久電流スイッチにおいて、超電導層は、RE1Ba2Cu3yで形成されている。yは6.0以上8.0以下であり、REは希土類元素を表す。
【0033】
一般的に、RE1Ba2Cu3yのような酸化物超電導材料は、NbTiのような金属超電導材料よりも、高い超電導転移温度を有している。そのため、永久電流スイッチの冷却構造及び運転制御が簡素化され得る。また、RE1Ba2Cu3yのような酸化物超電導材料で形成されている超電導層を含む超電導線材は、高磁場中でも高い臨界電流密度を有する。そのため、永久電流スイッチは、高い磁場が印加される場所に配置され得る。永久電流スイッチの設置位置に対する制約を少なくすることができる。
【0034】
(13)本開示の超電導装置は、上記(1)から(12)のいずれかの永久電流スイッチと、永久電流スイッチに接続されている超電導コイルと、永久電流スイッチと超電導コイルとを収容する容器とを備える。
【0035】
そのため、本開示の超電導装置は、より低い消費電力で動作し得る。
[本開示の実施形態の詳細]
図面に基づいて、実施形態の詳細を以下説明する。なお、図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰返さない。以下に記載する実施形態の少なくとも一部の構成を任意に組み合わせてもよい。
【0036】
(実施形態1)
図1を参照して、実施形態1の超電導装置1を説明する。超電導装置1は、例えば、超電導マグネット、核磁気共鳴(NMR)装置または磁気共鳴イメージング(MRI)装置などである。超電導装置1は、超電導コイル3と、容器5と、永久電流スイッチ8とを備える。超電導コイル3は、超電導装置1による測定に用いられる磁場を発生させる。超電導コイル3は、永久電流スイッチ8に並列に接続されている。容器5は、永久電流スイッチ8と超電導コイル3とを収容している。容器5は、クライオスタットのような断熱容器である。容器5は、液体ヘリウムのような液体冷媒6を含んでいる。液体冷媒6は、超電導コイル3と、永久電流スイッチ8とを冷却している。
【0037】
図2及び図3を参照して、実施形態1の永久電流スイッチ8を説明する。永久電流スイッチ8は、超電導線材10と、ヒータ21と、絶縁部材22と、保持部材30とを備えている。超電導線材10は、基材11と、中間層12と、超電導層13と、保護層14とを含んでいる。
【0038】
基材11は、第1層11aと、第2層11bと、第3層11cとを含んでいる。第2層11bは、第1層11aと第3層11cとの間に設けられている。基材11は、導電性を有している。第1層11aは、例えば、ステンレス鋼またはハステロイ(登録商標)で構成されている。第2層11bは、例えば、銅(Cu)または銅合金で構成されている。第3層11cは、ニッケル(Ni)で構成されている。本実施形態では基材11は三層基材であるが、基材11は、単層基材または二層基材であってもよい。
【0039】
中間層12は、基材11(第3層11c)上に形成されている。中間層12は、基材11と超電導層13の第1主面13mとの間に設けられている。中間層12は、超電導層13及び保護層14を、基材11から離間させている。中間層12は、例えば、結晶配向層である。中間層12は、絶縁性を有している。中間層12は、保護層14及び超電導層13を、基材11から電気的に絶縁している。中間層12は、特に限定されないが、例えば、安定化ジルコニア(YSZ)、酸化イットリウム(Y23)、酸化セリウム(CeO2)などによって構成されている。
【0040】
超電導層13は、基材11上に設けられている。本明細書において、超電導層13が基材11上に設けられていることは、超電導層13が、基材11上に直接形成されていること、または、基材11上に形成されている中間層12上に形成されていることを意味している。超電導層13は、基材11に対向する第1主面13mと、第1主面13mとは反対側の第2主面13nとを含んでいる。超電導層13は、例えば、酸化物超電導体により構成されている。超電導層13は、例えば、RE1Ba2Cu3yである。yは、6.0以上8.0以下である。REは、希土類元素を表し、例えば、イットリウム(Y)、プラセオジウム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロビウム(Eu)、ガドリウム(Gd)、ホルミウム(Ho)またはイッテルビウム(Yb)からなる群から選ばれた少なくとも一つの元素である。
【0041】
保護層14は、超電導層13の第2主面13n上に設けられている。保護層14は、超電導層13に接触している。保護層14は、基材11から離間されている。保護層14は、導電性を有している。保護層14は、例えば、銀(Ag)のような金属または合金等で形成されている。保護層14は、超電導層13にクエンチ(超電導状態から常電導状態に移行する現象)が発生した際に、超電導層13を流れていた電流をバイパスさせて、超電導線材の焼損を防止する。
【0042】
図7及び図8を参照して、超電導線材10の製造方法の一例を説明する。超電導線材10の製造方法は、超電導部材17を準備する工程(図7を参照)と、超電導部材17を分割する工程(図8を参照)とを含んでいる。
【0043】
図7に示されるように、超電導部材17を準備する工程では、超電導部材17が形成される。超電導部材17は、超電導線材10と同様の積層構造を有しているが、超電導部材17の幅は、超電導線材10の幅よりも2倍以上広い。具体的には、基材11上に中間層12が形成される。中間層12は、イオンビーム支援蒸着法(IBAD法)などによって形成される。それから、金属有機化合物分解法(MOD法)などを用いて、中間層12上に、超電導層13が形成される。続いて、蒸着法などを用いて、超電導層13上に保護層14が形成される。こうして、超電導部材17が形成される。
【0044】
図8に示されるように、超電導部材17を分割する工程では、超電導部材17の幅方向において、超電導部材17が複数の超電導線材10に分割される。超電導部材17は、例えば、機械加工(機械スリット)、または、レーザ加工(レーザスリット)などによって分割される。こうして、超電導線材10が得られる。
【0045】
図3に示されるように、ヒータ21は、超電導層13に対して、超電導層13の第2主面13nの側のみに配置されている。ヒータ21は、超電導層13に対して、超電導層13の第1主面13mの側には配置されていない。ヒータ21は、例えば、電熱層、電熱シート、または、蛇行した電熱線である。電熱層、電熱シートまたは電熱線は、例えば、ニクロムで構成されている。
【0046】
絶縁部材22は、絶縁性を有している。図3に示されるように、絶縁部材22は、超電導層13の第2主面13nとヒータ21との間に設けられている。絶縁部材22は、ヒータ21を流れる電流が超電導層13に流れ込むことを防止する。特定的には、絶縁部材22は、保護層14とヒータ21との間に設けられている。絶縁部材22は、ヒータ21を流れる電流が超電導層13及び保護層14に流れ込むことを防止する。特定的には、絶縁部材22は、超電導線材10の長手方向に垂直なヒータ21の断面の全周を覆っている。絶縁部材22は、例えば、絶縁性接着剤、または、絶縁性粘着テープであり、ヒータ21を超電導線材10に貼り付けている。
【0047】
図2に示されるように、超電導線材10は、例えば、非コイル形状を有している。非コイル形状を有する超電導線材10の他の例を、図4から図6に示す。図2及び図4から図6に示される超電導線材10は、超電導線材の湾曲部の径方向において超電導線材10が重なっていない。そのため、永久電流スイッチ8から発生する磁場の大きさを小さくすることができる。永久電流スイッチ8が、超電導コイル3から発生する主磁場に悪影響を及ぼすことが防止される。永久電流スイッチ8は、超電導装置1による高精度な測定を可能にする。超電導装置1内における永久電流スイッチ8の設置位置に対する制約を少なくすることができる。
【0048】
図2及び図4から図6に示されるように、超電導線材10の被保持部は、保持部材30によって保持されている。具体的には、超電導線材10の被保持部は、例えば、保持部材30に設けられた溝(図示せず)内に配置されている。あるいは、超電導線材10の被保持部は、例えば、保持部材30の内部に埋め込まれている。保持部材30は、例えば、低い熱伝導率を有する材料で形成されている。保持部材30は、例えば、ガラス繊維強化プラスチック(GFRP)のような繊維強化プラスチック(FRP)で形成されている。
【0049】
図2に示されるように、ヒータ21は、超電導線材10の被保持部の一部のみに設けられている。例えば、ヒータは、超電導線材10の長手方向において、超電導線材10の被保持部の長さの50%以下の長さにわたって設けられている。例えば、ヒータは、超電導線材10の長手方向において、超電導線材10の被保持部の長さの40%以下の長さにわたって設けられている。例えば、ヒータは、超電導線材10の長手方向において、超電導線材10の被保持部の長さの30%以下の長さにわたって設けられている。例えば、ヒータは、超電導線材10の長手方向において、超電導線材10の被保持部の長さの20%以下の長さにわたって設けられている。
【0050】
図9から図14を参照して、永久電流スイッチ8の動作を説明する。図1及び図9から図14に示されるように、永久電流スイッチ8は、超電導コイル3に並列に接続されている。超電導コイル3及び永久電流スイッチ8は、電流源7に接続されている。
【0051】
超電導コイル3及び永久電流スイッチ8を、超電導転移温度以下の温度に冷却する。具体的には、図1に示されるように、超電導コイル3及び永久電流スイッチ8を、液体冷媒6中に浸漬する。ヒータ21に電流が流れておらず、ヒータ21はオフ状態にある。永久電流スイッチ8に含まれる超電導層13は超電導状態に転移する。図9に示されるように、永久電流スイッチ8はゼロの電気抵抗を有する。永久電流スイッチ8は、オン状態になる。超電導コイル3も、超電導状態に転移する。電流源7から流れる電流Iは、ゼロである。
【0052】
それから、ヒータ21に電流を流して、ヒータ21をオン状態(発熱状態)とする。超電導線材10(超電導層13)の一部は常電導状態に転移する。図10に示されるように、永久電流スイッチ8の電気抵抗は、ゼロより大きくなり、永久電流スイッチ8は、オフ抵抗Rを有する。永久電流スイッチ8は、オフ状態になる。電流源7から流れる電流Iは、依然として、ゼロである。
【0053】
それから、図11に示されるように、電流源7から電流Iを流し始める。電流源7から流れる電流Iを、ゼロから、電流Iの時間変化ΔI/Δtで次第に増加させる。超電導コイル3は、インダクタンスLを有している。電流源7から流れる電流Iを次第に増加させると、超電導コイル3に、電流Iの時間変化ΔI/Δtに応じたコイルインピーダンスZが発生する。電流源7から流れる電流Iのゼロからの増加電流は、永久電流スイッチ8のオフ抵抗Rと超電導コイル3のコイルインピーダンスZとに応じて、永久電流スイッチ8と超電導コイル3とに流れる。この増加電流は、電流Iの時間変化ΔI/Δtの時間積分ΣΔI/Δtで与えられる。
【0054】
図12に示されるように、電流源7から流れる電流Iが、永久電流モードにおいて超電導コイル3に流す運転電流I0に達すると、電流源7から流れる電流Iを運転電流I0に維持する。電流源7から流れる電流Iの時間変化ΔI/Δtはゼロとなり、超電導コイル3のコイルインピーダンスZもゼロになる。これに対し、永久電流スイッチ8は、ゼロより大きいオフ抵抗Rを有したままである。そのため、永久電流スイッチ8を流れる電流は次第に減少し、超電導コイル3に流れる電流が次第に増加する。電流源7から流れる運転電流I0は、もっぱら超電導コイル3に流れるようになる。こうして、超電導コイル3は、励磁される。
【0055】
ヒータ21に電流を流すことを停止して、ヒータ21をオフ状態とする。液体冷媒6は、ヒータ21の残熱を吸収する。常電導状態にあった超電導線材10(超電導層13)の一部は、超電導状態に転移する。図13に示されるように、永久電流スイッチ8の電気抵抗はゼロになる。永久電流スイッチ8は、オン状態になる。
【0056】
それから、図13に示されるように、電流源7から流れる電流Iを、電流Iの時間変化-ΔI/Δtで運転電流I0から次第に減少させる。電流源7から流れる電流Iの運転電流I0からの減少電流は、永久電流スイッチ8に流れる。この減少電流は、電流Iの時間変化-ΔI/Δtの時間積分-ΣΔI/Δtで与えられる。図14に示されるように、電流源7から流れる電流をゼロにすると、運転電流I0は、永久電流スイッチ8と超電導コイル3とを循環する。こうして、永久電流スイッチ8は、超電導装置1を永久電流モードで動作させることができる。
【0057】
図15を参照して、比較例の永久電流スイッチと比べながら、本実施形態の永久電流スイッチ8の作用を説明する。比較例の永久電流スイッチは、本実施形態の永久電流スイッチ8と同様の構成を備えているが、ヒータ21及び絶縁部材22が超電導層13の第1主面13mの側に配置されている点で異なっている。具体的には、比較例では、ヒータ21及び絶縁部材22は、超電導層13の第1主面に対向する基材11の第1表面とは反対側の基材11の第2表面上に設けられている。比較例では、絶縁部材22は、基材11の第2表面とヒータ21との間に配置されている。
【0058】
図15から、本実施形態の永久電流スイッチ8は、比較例の永久電流スイッチよりも、低い消費電力で動作していることが分かる。その理由は、以下のとおりである。本実施形態の永久電流スイッチ8では、ヒータ21は、超電導層13に対して、超電導層13の第2主面13nの側のみに配置されている。そのため、本実施形態では、比較例よりも、ヒータ21で発生した熱のうち基材11に散逸する熱が減少する。本実施形態の永久電流スイッチ8における超電導層13は、比較例の永久電流スイッチにおける超電導層13よりも、ヒータ21によって効率的に加熱され得る。より少ないヒータ21の消費電力で、永久電流スイッチ8のオフ抵抗Rが増加する。
【0059】
一般に、永久電流スイッチ8のオフ抵抗Rが大きいほど、超電導装置1を永久電流モードで動作させるために要する時間が短縮される。そのため、本実施形態の永久電流スイッチ8は、比較例の永久電流スイッチよりも、短時間で超電導装置1を永久電流モードで動作させることができる。
【0060】
本実施形態の永久電流スイッチ8及び超電導装置1の効果を説明する。
永久電流スイッチ8は、超電導線材10と、ヒータ21と、絶縁部材22とを備える。超電導線材10は、基材11と、基材11上に設けられている超電導層13とを含む。超電導層13は、基材11に対向する第1主面13mと、第1主面13mとは反対側の第2主面13nとを含む。ヒータ21は、超電導層13に対して超電導層13の第2主面13nの側のみに配置されている。絶縁部材22は、超電導層13の第2主面13nとヒータ21との間に設けられている。
【0061】
ヒータ21は、超電導層13に対して超電導層13の第2主面13nの側のみに配置されている。ヒータ21で発生した熱のうち基材11に散逸する熱が減少する。超電導層13は、ヒータ21で効率的に加熱され得る。また、絶縁部材22は、超電導層13の第2主面13nとヒータ21との間に設けられているため、絶縁部材22は、ヒータ21を流れる電流が超電導層13に流れ込むことを防止する。そのため、永久電流スイッチ8を動作させるために必要なヒータ21の消費電力が低減される。永久電流スイッチ8は、より低い消費電力で動作し得る。
【0062】
超電導装置1は、永久電流スイッチ8と、永久電流スイッチ8に接続されている超電導コイル3と、永久電流スイッチ8と超電導コイル3とを収容する容器5とを備える。そのため、超電導装置1は、より低い消費電力で動作し得る。超電導装置1は、より短い時間で、永久電流モードで動作し得る。
【0063】
(実施形態2)
図16を参照して、永久電流スイッチ8bを説明する。本実施形態の永久電流スイッチ8bは、実施形態1の永久電流スイッチ8と同様の構成を備えているが、以下の点で主に異なっている。
【0064】
超電導線材10は、導電性を有する安定化層15をさらに含む。安定化層15は、例えば、銅(Cu)のような金属または合金等で形成されている。安定化層15は、保護層14に接触している。安定化層15は、例えば、保護層14よりも大きな厚さを有している。保護層14は、超電導層13の第2主面13nと安定化層15との間に設けられている。安定化層15は、絶縁部材22と保護層14との間に設けられている。絶縁部材22は、安定化層15とヒータ21との間に設けられている。ヒータ21は、安定化層15から離間されている。安定化層15は、例えば、基材11と中間層12と超電導層13と保護層14とからなる積層体の外周全体を覆っている。安定化層15は、超電導層13にクエンチ(超電導状態から常電導状態に移行する現象)が発生した際に、超電導層13を流れていた電流をバイパスさせて、超電導線材10の焼損を防止する。
【0065】
図1に示されるように、実施形態2の超電導装置1は、実施形態1の永久電流スイッチ8に代えて、本実施形態の永久電流スイッチ8bを備えている。
【0066】
(実施形態3)
図17から図20を参照して、永久電流スイッチ8cを説明する。本実施形態の永久電流スイッチ8cは、実施形態1の永久電流スイッチ8と同様の構成を備えているが、以下の点で主に異なっている。
【0067】
超電導層13は、超電導線材10の長手方向に沿って、第1部分13aと、第2部分13bと、第1部分13aと第2部分13bとの間にある第3部分13cとを含んでいる。保護層14は、第1部分13a及び第2部分13b上にのみ設けられている。保護層14は、第3部分13c上に形成されておらず、超電導層13の第3部分13cは、保護層14から露出している。第1部分13a上に形成されている保護層14と第2部分13b上に形成されている保護層14とは、第3部分13cで、超電導線材10の長手方向において互いに分離されている。
【0068】
ヒータ21は、第3部分13c上にのみ設けられている。絶縁部材22は、ヒータ21と第3部分13cとの間に設けられている。ヒータ21は、第1部分13a及び第2部分13b上に設けられていない。ヒータ21は、第1部分13a及び第2部分13b上に形成されている保護層14から離間されている。
【0069】
本実施形態の変形例では、実施形態2と同様に、保護層14上に安定化層15が設けられている。
【0070】
図1に示されるように、実施形態3の超電導装置1は、実施形態1の永久電流スイッチ8に代えて、本実施形態またはその変形例の永久電流スイッチ8cを備えている。
【0071】
本実施形態は、実施形態1の効果に加えて、以下の効果を奏する。
保護層14は、第1部分13a及び第2部分13b上にのみ設けられており、第3部分13c上には設けられていない。そのため、超電導線材10を流れる電流は、第3部分13cをバイパスすることができない。第3部分13cが、ヒータ21によって加熱されて、常電導状態になった場合に、超電導線材10を流れる全ての電流は、高い電気抵抗を有する第3部分13cを流れる。ヒータ21を用いた超電導層13の加熱長さまたは加熱面積がより小さくても、永久電流スイッチ8cの高いオフ抵抗Rを得ることができる。永久電流スイッチ8cを動作させるために必要なヒータ21の消費電力が低減される。永久電流スイッチ8cは、より少ない消費電力で動作し得る。
【0072】
ヒータ21は、保護層14から露出している第3部分13c上にのみ設けられており、かつ、保護層14から離間されている。そのため、ヒータ21を流れる電流が、保護層14に流れ込むことが防止される。永久電流スイッチ8cを動作させるために必要なヒータの消費電力が低減される。永久電流スイッチ8cは、より少ないヒータ21の消費電力で動作し得る。
【0073】
(実施形態4)
図21を参照して、永久電流スイッチ8dを説明する。本実施形態の永久電流スイッチ8dは、実施形態1の永久電流スイッチ8と同様の構成を備えているが、以下の点で主に異なっている。永久電流スイッチ8dでは、超電導層13の第2主面13nの平面視において、超電導層13の第3側縁13sと保護層14の第1側縁14sとは、中間層12の第2側縁12sよりも内側に位置している。
【0074】
超電導部材17(図7及び図8を参照)の分割の際に、基材11の側縁または保護層14の第1側縁14sが変形して、超電導層13または保護層14が基材11に接触することがある。特に、基材11が相対的に柔らかい銅で構成される層(第2層11b)を有しており、かつ、超電導部材17を機械スリットによって分割する場合に、超電導層13または保護層14が基材11に接触することが懸念される。超電導層13または保護層14が基材11に接触すると、ヒータ21で発生した熱が基材11に散逸して、永久電流スイッチの消費電力が増加する。
【0075】
これに対し、永久電流スイッチ8dでは、超電導層13の第3側縁13sと保護層14の第1側縁14sとは、中間層12の第2側縁12sよりも内側に位置している。そのため、超電導部材17の機械スリットに際して基材11または保護層14が変形しても、超電導層13及び保護層14は基材11に接触せず、基材11から離間したままである。超電導層13または保護層14を経由したヒータ21から基材11への熱の散逸を低減させることができる。永久電流スイッチ8dは、より低い消費電力で動作し得る。
【0076】
図22を参照して、本実施形態の第1変形例の永久電流スイッチ8eでは、超電導線材10は、超電導層13の第2主面13nの平面視において、保護層14の第1側縁14sは、中間層12の第2側縁12sよりも内側に位置している。
【0077】
超電導部材17(図7及び図8を参照)の分割の際に、基材11の側縁または保護層14の第1側縁14sが変形して、保護層14が基材11に接触することがある。特に、基材11が相対的に柔らかい銅で構成される層(第2層11b)を有しており、かつ、超電導部材17を機械スリットによって分割する場合に、保護層14が基材11に接触することが懸念される。保護層14が基材11に接触すると、ヒータ21で発生した熱が基材11に散逸して、永久電流スイッチの消費電力が増加する。
【0078】
これに対し、永久電流スイッチ8eでは、保護層14の第1側縁14sは、中間層12の第2側縁12sよりも内側に位置している。そのため、超電導部材17の機械スリットに際して基材11または保護層14が変形しても、保護層14は基材11に接触せず、基材11から離間したままである。保護層14を経由したヒータ21から基材11への熱の散逸を低減させることができる。永久電流スイッチ8eは、より低い消費電力で動作し得る。
【0079】
本実施形態の第2変形例では、実施形態2の超電導線材10または実施形態3の超電導線材10において、本実施形態の永久電流スイッチ8dのように、超電導層13の第3側縁13sと保護層14の第1側縁14sとは、中間層12の第2側縁12sよりも内側に位置している。本実施形態の第3変形例では、実施形態2の超電導線材10または実施形態3の超電導線材10において、本実施形態の第1変形例の永久電流スイッチ8eのように、保護層14の第1側縁14sは、中間層12の第2側縁12sよりも内側に位置している。
【0080】
図1に示されるように、実施形態4の超電導装置1は、実施形態1の永久電流スイッチ8に代えて、本実施形態及び本実施形態の第1から第3変形例の永久電流スイッチ8d,8eのいずれかを備えている。
【0081】
今回開示された実施形態1から実施形態4はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施形態1から実施形態4ではなく請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0082】
1 超電導装置、3 超電導コイル、5 容器、6 液体冷媒、7 電流源、8,8b,8c,8d,8e 永久電流スイッチ、10 超電導線材、11 基材、11a 第1層、11b 第2層、11c 第3層、12 中間層、12s 第2側縁、13 超電導層、13a 第1部分、13b 第2部分、13c 第3部分、13m 第1主面、13n 第2主面、13s 第3側縁、14 保護層、14s 第1側縁、15 安定化層、17 超電導部材、21 ヒータ、22 絶縁部材、30 保持部材。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22