(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】MITOL産生を促進する成分を有効成分として含有する種々因子の産生調節用組成物、MITOL産生促進剤及びMITOL産生促進作用を指標とする種々因子の産生調節剤のスクリーニング方法
(51)【国際特許分類】
A61K 36/736 20060101AFI20240312BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20240312BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240312BHJP
A61K 8/9789 20170101ALI20240312BHJP
A61Q 5/00 20060101ALI20240312BHJP
A61K 127/00 20060101ALN20240312BHJP
【FI】
A61K36/736
A61P17/00
A61P43/00 111
A61K8/9789
A61Q5/00
A61K127:00
(21)【出願番号】P 2022124223
(22)【出願日】2022-08-03
(62)【分割の表示】P 2018165218の分割
【原出願日】2018-09-04
【審査請求日】2022-08-03
(31)【優先権主張番号】P 2017175660
(32)【優先日】2017-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002819
【氏名又は名称】大正製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】南雲潤一郎
(72)【発明者】
【氏名】新井良平
(72)【発明者】
【氏名】池田真代
(72)【発明者】
【氏名】小田原美樹子
(72)【発明者】
【氏名】吉村知久
(72)【発明者】
【氏名】加藤敬太
(72)【発明者】
【氏名】山田啓史
【審査官】春田 由香
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-335235(JP,A)
【文献】特開2015-151390(JP,A)
【文献】特開2009-256244(JP,A)
【文献】国際公開第2017/122668(WO,A1)
【文献】特開平06-172134(JP,A)
【文献】Kim SJ et al.,Tyrosinase Inhibitory Activity of 80 Plant Extracts (II),The Journal of Applied Pharmacology,2003年,Vol.11, No.1,p.5-7
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 36/00-36/9068
A61K 31/00-31/80
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モモの葉の抽出物を有効成分として含有する、白髪の予防又は改善剤。
【請求項2】
モモの葉の抽出物を有効成分として含有する、MITOL産生促進作用に基づく白髪の予防又は改善剤。
【請求項3】
モモの葉の抽出物を有効成分として含有する、COL17A1産生促進剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MITOL産生を促進する成分を有効成分として含有する表1記載因子の産生促進剤用組成物、表2記載因子の産生抑制用組成物、MITOL産生促進剤及びMITOL産生促進作用を指標とする種々因子の産生調節剤のスクリーニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ミトコンドリアは細胞内に存在する細胞内小器官の一つであり、主な機能としてエネルギーであるATPを産生することが挙げられる。従って、ミトコンドリア機能を維持することは、細胞ひいては体の機能を維持することに繋がる。ミトコンドリアの機能は、ミトコンドリアダイナミクスとも呼ばれるミトコンドリアの融合および分裂や、他の細胞内小器官との相互作用などにより制御されていることがわかってきている。ミトコンドリア外膜に局在するユビキチンリガーゼであるMITOLは、ミトコンドリアダイナミクスやミトコンドリアと小胞体との接着制御に関与していることが報告されている(非特許文献1)。心臓特異的にMITOLを欠損させたマウスは、心機能の低下が認められ、さらに、心臓老化を示す所見であるリポフスチンの沈着とSA-β-galの発現亢進が観察されている(非特許文献2)。また、皮膚表皮特異的にMITOLを欠損させたマウスは、白髪・脱毛といった老化様所見が観察されている(非特許文献3)。これらのことから、MITOL低下が老化症状の促進に繋がったと考えられる。従って、MITOL発現を上昇させるまたは活性化させるようなアプローチは抗老化に有用であると考えられる。しかしながら、MITOL発現を上昇させる植物エキス等は見出されていない。
加齢に伴って、肌の乾燥、シワの出現、ハリ・弾力の低下、シミやクスミの増加、白髪の出現、筋肉の減少といった皮膚の老化症状が現れる。さらに、加齢に伴い骨格筋の筋力および筋持久力が低下することで、動作の鈍化、腰痛、シワやたるみ、太りやすくなるといった様々な不調や老化症状が現れる。これらの変化は見た目に現れることから大きな悩みとなっている。
肌の水分保持には、皮膚最外層の表皮が重要な役割を担っている(非特許文献4)。表皮の大部分は角化細胞から構成されるが、角化細胞は表皮の最下層で分裂し、角化と呼ばれる過程を経ながら成熟し、最終的に角質層を形成し垢となって剥がれ落ちる。角質層のコルニファイドエンベロープと呼ばれる構造は皮膚に物理的強度を与えているが、角化細胞の成熟過程で作られるインボルクリンやロリクリンが主な構成要素であり、これらがトランスグルタミナーゼなどの酵素によって架橋されることで完成される。完成されたコルニファイドエンベロープは、外的の侵入を防ぐだけでなく、体の内側からの水分蒸散を防いでいる。また、フィラグリンは、角化細胞の成熟過程において最終的にアミノ酸まで分解され、天然の保湿因子として働く。従って、コルニファイドエンベロープの構成要素であるインボルクリンやロリクリンの発現を促進することや、天然保湿因子の材料であるフィラグリンの産生を促進することは肌の水分保持には有用である。
シワがなくハリ・弾力がある肌には皮膚の真皮層が重要な役割を担っている。シワの出現やハリ・弾力低下の原因の一つに、真皮層に存在するコラーゲン線維とエラスチン線維の減少や変質が考えられているが、これら線維の合成・分解の中心的な役割は線維芽細胞が担っている。コラーゲン線維はプロコラーゲン線維3本が集合することで形成される(非特許文献5)。分解にはマトリックスメタロプロテアーゼと呼ばれる分解酵素が関与しており、その活性はティシューインヒビターオブメタロプロテアーゼによって抑制されている(非特許文献6)。エラスチン線維はフィブリリンとエラスチンから構成される。フィブリリンが集合するとミクロフィブリルと呼ばれる細線維が形成され、そこにエラスチンの前駆タンパク質であるトロポエラスチンが沈着する。そして、リシルオキシダーゼと呼ばれる酵素によって、トロポエラスチン同士が架橋され、エラスチン線維が完成される(非特許文献7)。分解には線維芽細胞エラスターゼや好中球エラスターゼといったエラスチン分解酵素が関与している(非特許文献8、非特許文献9)。このような分子をターゲットに、コラーゲン線維やエラスチン線維の量を増やすアプローチは、シワやハリ・弾力低下の予防、改善に有用と考えられる。
シミは、表皮の基底部分に存在する色素細胞により合成されたメラニンが大きな原因である。合成されたメラニンは表皮角化細胞に取り込まれるが、多量に取り込まれ蓄積することがシミや色ムラの原因の一つと考えられている。表皮角化細胞上に存在するプロテアーゼ活性化受容体2が活性化することで、メラニンの取り込みは促進される(非特許文献10)。従って、表皮角化細胞による過剰な取り込みの抑制は、シミ形成の予防には有用と考えられる。
体毛の色素は毛の組織である毛包の毛球部に存在する色素細胞により産生され、この色素を供給された毛母細胞等の毛包角化細胞が体毛を形成することにより、色素を持った体毛が発生する。体毛が生え変わる際に、古い毛球部等の毛包のバルジ領域よりも下部に存在する領域は消失し、それに伴って毛球部の色素細胞も消失する。新たな毛周期が始まり、新たな体毛が生じる際には、毛包のバルジ領域に存在する色素幹細胞より色素細胞が供給されることにより、再び色素を持った体毛が生じる。加齢や種々のストレスが原因となって、色素幹細胞が減少又は枯渇したり、色素細胞の供給過程に問題が生じることで、適切に色素細胞の供給が行なわれないと、色素を持たない白髪が発生する。
また、バルジ領域には色素幹細胞と隣接して、毛包の上皮系幹細胞(以下、毛包幹細胞と記載する)が存在している。毛包幹細胞は、体毛が生え変わる際に、毛包の上皮系細胞である毛母細胞等を供給し、これらの細胞によって新たな毛包組織が形成される。さらに毛包幹細胞は毛包の上皮系細胞の再構築機能の他に、隣接して存在する色素幹細胞を維持するための微小環境を形成する機能(以下、ニッチ機能と記載する)を有することが明らかにされている(非特許文献11、特許文献1)。毛包幹細胞は、TGFβシグナルやWNTシグナルによって、色素幹細胞の未分化性の維持や活性化をコントロールし、色素幹細胞を維持している。このことから、色素幹細胞の減少は、加齢や種々のストレスによって毛包幹細胞にダメージが蓄積した結果、毛包幹細胞のニッチ機能が失われることにより生じるとも考えられている(非特許文献12)。
さらに毛包幹細胞の維持には17型コラーゲンが重要な役割を果たすことが解明されている。17型コラーゲンは、上皮系細胞を基底膜につなぎとめるヘミデスモソーム(半接着斑)を構成する釣鐘型のコラーゲンであり、毛包幹細胞も本ヘミデスモソーム構造によって基底膜に係留されている。17型コラーゲンを欠損すると毛包幹細胞の維持不全による脱毛が見られる。その結果、色素幹細胞も失われ、体毛の白髪化も同時に発生する。さらに近年、加齢によって17型コラーゲンが分解され、毛包幹細胞が失われて、脱毛が生じることが解明された(非特許文献13)。以上のことから、17型コラーゲンの発現を高めることは、脱毛や白髪の予防及び改善に有用である。
また、毛包幹細胞を含む上皮系細胞においてSCFを強制発現したマウスは、白髪発生ストレスに対して抵抗性を示すことが見出されている。このことから、上皮系細胞におけるSCF発現を高めることは、色素幹細胞の維持につながり、白髪の予防及び改善に有用である(非特許文献14)。
さらに、WNTリガンドの一種であるWNT7Aは、毛包が毛周期の時点で強く発現する。創傷治癒後に再生される体毛は通常色素を失った白色毛であるが、上皮系細胞がWNT7Aを強く発現する成長期の時点で傷が生じた場合は有色毛が再生される。これはWNT7Aが色素幹細胞を活性化したことによる。つまりWNT7Aの発現を高めることは、白髪の予防及び改善に有用である(非特許文献15)。
骨格筋は収縮速度が遅い遅筋繊維と、収縮速度が速い速筋繊維とに大別される。持久力が求められるマラソンランナー等の筋繊維組成は遅筋繊維の割合が高く、瞬発力が求められる陸上短距離選手等では速筋繊維の割合が高いことが知られている(特許文献2)。
遅筋繊維にはミトコンドリアが多く含まれる。遅筋繊維は持続的な収縮が可能なI型筋繊維からなり、有酸素運動時に働く。トロポニンI(TNNI1)とミオグロビン(MB)はI型筋繊維に特徴的なタンパク質である(非特許文献16)。TNNI1には遅筋型と速筋型があり、筋繊維が遅筋型であるか速筋型であるかの指標となりうる(非特許文献17)。遅筋繊維の増加はミトコンドリア機能の高い細胞の増加を意味し、脂肪酸のβ酸化による持続的なエネルギーの供給・ATP産生が行われる。ATP量の増加は、生体における最大のATP消費器官である骨格筋のエネルギー効率を改善させることで、疲労の抑制や持久力の向上に有用である。このことから、骨格筋細胞においてTNNI1あるいはMBの遺伝子発現を高めることは遅筋繊維の増加を表すため、筋肉の遅筋化および筋持久力の向上に有用である(非特許文献16)。
筋持久力は、骨格筋細胞内のミトコンドリアが酸化的リン酸化により十分なATP量を産生するメカニズムに依存する。また、シトクロムCオキシダーゼ(COX)は、ミトコンドリア呼吸において還元されたシトクロムCから酸素への電子伝達を触媒するマルチ-サブユニット酵素(複合体IV)である。核内コード化サブユニットCOX4はミトコンドリア内膜上のミトコンドリアコード化サブユニットの調節および会合に関与する。ヒト骨格筋では、COX4 mRNAレベルがミトコンドリア容積、ミトコンドリア伸長およびVO2maxと関連することが示されている(非特許文献18)。すなわちCOX4I1の発現促進からは、ミトコンドリア機能の向上・ATP量の増加が示唆される。このことから、骨格筋細胞においてCOX4I1の遺伝子発現を高めることは、筋持久力の向上に有用である。
加齢に伴って細胞は老化し、細胞機能が低下することが知られている。細胞老化を促進させる要因の一つに、活性酸素が挙げられる。活性酸素は紫外線やミトコンドリア活動などにより発生するが、活性酸素に対抗するための抗酸化分子を細胞は有している(非特許文献16)。例えばグルタチオンは、それ自体が活性酸素と反応し、活性酸素を消去する能力を有している。更に、グルタチオンペルオキシダーゼと協同することで過酸化水素を分解する能力も有している。また、スーパーオキシドディスムターゼは、反応性の高い活性酸素であるスーパーオキシドアニオンラジカルを過酸化水素と酸素に変換する反応を触媒する。従って、細胞が有している抗酸化分子を増やすことは、活性酸素による細胞機能の低下を防ぐために有用である。また、細胞機能の維持のために、細胞賦活剤の使用も有用である。細胞賦活の指標として、細胞増殖マーカーである、細胞周期関連核タンパク質であるki67や、細胞周期を制御するタンパク質であるPCNAおよびCDC25Cなどが利用可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-035514号公報
【文献】特開2015-97507号公報
【非特許文献】
【0004】
【文献】長島駿 ほか(2014)生化学., 86(1):63-67
【文献】長島駿 ほか(2017)日本薬理学雑誌., 149(6):254-259
【文献】柳茂(2016)コスメトロジー研究報告., 24:149-152
【文献】清水宏 ほか(2011)新しい皮膚科学第2版., 7-10
【文献】清水宏 ほか(2011)新しい皮膚科学第2版., 13-16
【文献】Taihao Quan et al(2013)J Invest Dermatol., 133(5): 1362-1366
【文献】Xiaoqing Liu et al(2004)Nat Genet., 36(2):178-82.
【文献】Imokawa G et al(2016)Exp Dermatol., 25:2-13.
【文献】Takeuchi H et al(2010)J Dermatol Sci.、60(3):151-8
【文献】M.Seiberg et al(2000)Exp Cell Res., 254(1):25-32.
【文献】Tanimura S et al(2011)Cell Stem Cell., 6(2):130-40.
【文献】Aoki H et al(2013)J Invest Dermatol., 133(9):2143-51.
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【文献】Fukuda et al (2007)Cell. Apr 6;129(1):111-22.
【文献】中村成夫(2013)日本医科大学医学会雑誌.,9(3):164-169
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、MITOL産生を促進する成分を含有する表1記載因子の産生促進用組成物又は表2記載因子の産生抑制用組成物を提供すること、MITOL産生促進剤を提供すること及びMITOL産生促進作用を指標とする表1記載因子の産生促進剤若しくは表2記載因子の産生抑制剤のスクリーニング法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで発明者らは鋭意検討した結果、表皮角化細胞、毛包角化細胞又は真皮線維芽細胞を用いた実験により、MITOLノックダウンにより表1記載因子が減少すること及び表2記載因子が上昇することを見出した。細胞増殖に関わる因子(mki67、PCNA及びCDC25C)の減少が確認されたことから、毛包角化細胞、表皮角化細胞及び真皮線維芽細胞の減少抑制、増殖促進又は活性化にMITOLが関与していることを見出した。また、毛包幹細胞の維持に関わる因子(COL17A1)の減少が確認されたことから、毛包幹細胞の減少抑制、増殖促進又は活性化にMITOLが関与していることを見出した。更に、色素幹細胞の維持に関わる因子(WNT7A、TGFB2及びSCF)の減少が確認されたことから色素幹細胞の減少抑制、増殖促進又は活性化にMITOLが関与していることを見出した。毛包幹細胞及び色素幹細胞の減少は脱毛及び白髪発生に関与していることが報告されていることから、MITOL産生を促進する成分は脱毛及び白髪の予防及び改善に用いることが可能であることを見出した。
【0007】
素材スクリーニングの結果、コメヌカ発酵エキス、オウバク抽出液、オウレン抽出液、センブリ抽出液、ハマメリス抽出液、ボタンピ抽出液、モモ抽出液、ユーカリ抽出液、タモギタケ抽出液、β-エストラジオール、5-アミノレブリン酸、βニコチンアミドモノヌクレオチド、リボフラビン、チオタウリン、MA5、メトホルミン、ウロリチンA、ナイアシンアミド、及びD-パンテノールがMITOL産生促進作用を有することを見出した。更にハマメリス抽出液及びモモ抽出液がCOL17A1遺伝子発現促進作用を有すること、センブリ抽出液、ハマメリス抽出液、ボタンピ抽出液、モモ抽出液及びユーカリ抽出液がSOD2遺伝子発現促進作用を有すること、タモギタケ抽出液及びβニコチンアミドヌクレオチドがLOXL-1遺伝子発現促進作用を有すること、モモ抽出液及びリボフラビンがMME遺伝子発現抑制作用を有すること、ハマメリス抽出液及びユーカリ抽出液がCox4i1、Tnni1及びMb遺伝子発現促進を有することが確認されたことから、MITOL産生を促進する成分が表1記載因子の産生促進作用を有すること及び表2記載因子の産生抑制作用を有することを見出した。以上のことから、表1記載因子の産生促進剤又は表2記載因子の産生抑制剤をスクリーニングする際にMITOL産生を指標に用いることが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち本発明は、
(1)MITOL産生を促進する成分を有効成分として含有する、表1に記載の因子の産生促進用又は表2に記載の因子の産生抑制用組成物、
(2)MITOL産生を促進する成分がコメヌカ発酵エキス、オウバク抽出物、オウレン抽出物、センブリ抽出物、ハマメリス抽出物、ボタンピ抽出物、モモ抽出物、ユーカリ抽出物、タモギタケ抽出物、β-エストラジオール、5-アミノレブリン酸、βニコチンアミドモノヌクレオチド、リボフラビン、チオタウリン、MA5、メトホルミン、ウロリチンA、ナイアシンアミド、及びD-パンテノールからなる群から選ばれる少なくとも一種である、(1)に記載の組成物、
(3)毛包幹細胞、色素幹細胞、毛包若しくは表皮角化細胞、又は真皮線維芽細胞の減少抑制、増殖促進又は活性化用である、(1)に記載の組成物、
(4)表1に記載の因子が、COL17A1、SOD2、LOXL-1である、(1)に記載の組成物、
(5)表1に記載の因子が、COL17A1である、(1)に記載の組成物、
(6)白髪の予防又は改善用である、(5)に記載の組成物、
(7)表1に記載の因子が、COX4I1、TNNI1、MBである、(1)に記載の組成物、
(8)ハマメリス抽出物、又はユーカリ抽出物を含有することを特徴とする、遅筋化促進用、又は筋持久力の向上用の組成物、
(9)表2に記載の因子が、MMEである、(1)に記載の組成物、
(10)コメヌカ発酵エキス、オウバク抽出物、オウレン抽出物、センブリ抽出物、ハマメリス抽出物、ボタンピ抽出物、モモ抽出物、ユーカリ抽出物、タモギタケ抽出物、β-エストラジオール、5-アミノレブリン酸、βニコチンアミドモノヌクレオチド、リボフラビン、チオタウリン、MA5、メトホルミン、ウロリチンA、ナイアシンアミド、及びD-パンテノールからなる群から選ばれる少なくとも一種を含有することを特徴とするMITOL減少抑制または産生促進剤、
(11)MITOL産生促進作用を指標とする、毛包幹細胞、色素幹細胞、毛包若しくは表皮角化細胞、又は真皮線維芽細胞の減少抑制、増殖促進又は活性化剤のスクリーニング方法、
(12)MITOL産生促進作用を指標とする、COL17A1、SOD2、LOXL-1、COX4I1、TNNI1又はMBの減少抑制又は産生促進剤のスクリーニング方法、
(13)MITOL産生促進作用を指標とする、MMEの減少促進又は産生抑制剤のスクリーニング方法、
(14)MITOL産生促進作用を指標とする、表1に記載の因子の産生促進剤又は表2に記載の因子の産生抑制剤のスクリーニング方法、
である。
【発明の効果】
【0009】
本発明のMITOL産生を促進する成分は、例えば、肌の乾燥、シワの出現、ハリ・弾力の低下、シミやクスミの増加、白髪の出現又は筋肉の減少といった老化症状を予防又は改善する効果が期待できる。また、本発明のMITOL産生を促進する成分は、素材スクリーニング等に際してポジティブコントロールとして用いることができる。更に、本発明は表1記載因子の産生促進剤又は表2記載因子の産生抑制剤のスクリーニングに用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、試験例における、MITOLノックダウンが表皮角化細胞における種々の遺伝子発現に与える影響を示したグラフである。
【
図2】
図2は、試験例における、MITOLノックダウンが真皮線維芽細胞における種々の遺伝子発現に与える影響を示したグラフである。
【
図3】
図3は、試験例における、MITOLノックダウンが毛包角化細胞における種々の遺伝子発現に与える影響を示したグラフである。
【
図4】
図4は、試験例における、被験物質が表皮角化細胞のMITOL遺伝子発現を促進することを示したグラフである。
【
図5】
図5は、試験例における、被験物質が真皮線維芽細胞のMITOL遺伝子発現を促進することを示したグラフである。
【
図6】
図6は、試験例における、被験物質が骨格筋細胞のMITOL遺伝子発現を促進することを示したグラフである。
【
図7】
図7は、試験例における、MITOL産生を促進する成分が表皮角化細胞のSOD2及びCOL17A1遺伝子発現を促進することを示したグラフである
【
図8】
図8は、試験例における、MITOL産生を促進する成分が真皮線維芽細胞のLOXL-1遺伝子発現を促進すること及びMME遺伝子発現を抑制することを示したグラフである。
【
図9】
図9は試験例における、MITOL産生を促進する成分が骨格筋細胞のCox4i1、Tnni及びMb遺伝子発現を促進することを示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明におけるMITOL産生を促進する成分とは、MITOL mRNAの発現促進作用又はMITOLタンパク質の発現亢進作用を有する成分のことである。MITOL産生促進作用は、リアルタイムRT-PCR法による遺伝子発現解析やウェスタンブロッティング法によるタンパク質発現解析などにより評価可能だが、評価方法は特に限定されない。
【0012】
本発明における表1記載因子は、MITOLを欠損させることで発現量が低下する因子である。また、本発明における表2記載因子は、MITOLを欠損させることで発現量が上昇する因子である。
【0013】
【0014】
【0015】
MITOLの欠損方法は特に限定されないが、例えばsiRNAを用いたRNA干渉法が挙げられる。MITOLを欠損させる細胞は特に限定されないが、例えば、表皮角化細胞、毛包角化細胞又は真皮線維芽細胞が挙げられる。
【0016】
本発明における表皮角化細胞とは、皮膚表皮層に存在し、基底層にて分裂し、上層に押し上がることで表皮層を形成する細胞である。細胞の動物種は問わないが、ヒト由来細胞が好ましい。正常細胞、株化細胞又は不死化細胞であるかは問わないが、正常細胞が好ましい。
本発明における真皮線維芽細胞とは、皮膚真皮層に存在し、コラーゲンやエラスチンなどの皮膚真皮の結合組織成分を作り出す細胞である。細胞の動物種は問わないが、ヒト由来細胞が好ましい。正常細胞、株化細胞又は不死化細胞であるかは問わないが、正常細胞が好ましい。
本発明における色素幹細胞とは、毛包バルジ~サブバルジ領域に存在し、DCT又はPAX3等のマーカーによって同定される、色素細胞系譜の再構築機能を有する幹細胞である。
本発明における毛包幹細胞とは、毛包バルジ~サブバルジ領域に存在し、CD34、CD200、K15又はα6インテグリン等のマーカーによって同定される、毛包の上皮細胞系譜の再構築機能を有する幹細胞である。なお、色素幹細胞や毛包幹細胞のマーカーは動物種により異なるため、必ずこれらマーカーが発現している必要はない。
本発明における毛包角化細胞とは、先述の毛包幹細胞によって再構築される上皮系細胞や、毛包のバルジ領域より上部の恒常部に毛周期を通じて存在する上皮系細胞等、毛包の上皮系細胞全般を指す。
本発明における筋細胞とは、動物体の筋肉組織を形成する収縮性のある細胞であり、細長い紡錘状または線維状を示すので、筋線維ともよばれる。細胞の動物種は問わないが、ヒト由来細胞が好ましい。正常細胞、株化細胞又は不死化細胞であるかは問わないが、正常細胞が好ましい。
【0017】
本発明における17型コラーゲンとは、毛包幹細胞並びに毛包及び皮膚の角化細胞を基底膜につなぎとめるヘミデスモソーム構造の構成に寄与する釣鐘型コラーゲンを指す。COL17A1とは、17型コラーゲンのα鎖を構成する因子である。
【0018】
本発明における細胞の減少抑制、増殖促進又は活性化とは、細胞増殖能力の維持又は亢進を指す。細胞増殖能力の維持又は亢進は、MTT 試薬などを用いた細胞増殖アッセイや細胞増殖マーカーのリアルタイムRT-PCR法による遺伝子発現解析又はウェスタンブロッティング法によるタンパク質発現解析などにより評価可能だが、評価方法は特に限定されない。
【0019】
本発明におけるスーパーオキシドディスムターゼとは、スーパーオキシドアニオンラジカルと水素イオンから過酸化水素と酸素を生成する反応を触媒する酵素である。SOD2とは、活性中心にマンガンを含むSODである。
【0020】
本発明におけるリシルオキシダーゼとは、トロポエラスチンのリジン残基同士を架橋する酵素である。LOXL-1はリシイルオキシダーゼファミリーの中の一つであり、エラスチン線維の構成要素の一つであるフィブリン5と結合することが知られた分子である。
【0021】
本発明におけるエラスターゼとは、エラスチンを分解する酵素である。MMEとはエラスチンを分解する酵素のうち、線維芽細胞由来の酵素である。
【0022】
本発明におけるシトクロムCオキシダーゼとは、ミトコンドリア膜における電子伝達系の酵素であり、シトクロムCの還元型を電子供与体として酸素を還元する酵素である。COX4I1はシトクロムCオキシダーゼのサブユニットの一つであり、核に遺伝子がコードされるサブユニットである。
【0023】
本発明におけるトロポニンとは、横紋筋のアクチンとミオシンを介したカルシウム依存的な筋収縮の調節を担う分子である。トロポニンIはトロポニンの抑制性のサブユニットであり、トロポニンとアクチンの相互作用を抑制する。TNNI1は遅筋型トロポニンIをコードする遺伝子であり発生時には心筋、骨格筋特異的に発現し、成人では遅筋繊維のみに発現が認められる。
【0024】
本発明におけるミオグロビンとは、心筋、骨格筋中で酸素分子を保持する分子である。ミオグロビンは酸素消費の少ない速筋繊維よりも酸素消費の多い遅筋繊維に多く発現する。MBとはミオグロビンをコードする遺伝子である。
【0025】
本発明に用いるコメヌカ発酵エキスは、コメヌカにα-アミラーゼ及びβ-アミラーゼを加えた得たコメヌカ糖化液に酵母を加えて発酵させた後、塩化ナトリウムを加え、圧搾ろ過して得られるエキスである。コメヌカはイネ(学名Rryza sativa L.)の種子から得た玄米を精米するときに得られる果皮、種皮、胚及び糊粉層の混合物である。オウバク抽出物は、キハダ(学名Phellodendron amurense Ruprecht)又はその他同属植物の周皮を除いた樹皮から得られる抽出物である。オウレン抽出物は、オウレン(学名Coptis japonica Makino)又はその他同属植物の根茎から得られる抽出物である。センブリ抽出物は、センブリ(学名Swertia japonica Makino)の全草から得られる抽出物である。ハマメリス抽出物は、ハマメリス(学名Hamamelis virginiana L.)の葉から得られる抽出物である。ボタンピ抽出物は、ボタンピ(学名Paeonia suffruticosa)の根皮から得られる抽出物である。モモ抽出物は、モモ(学名Prunus persica)の葉から得られる抽出物である。ユーカリ抽出物は、ユーカリ(学名Eucalyptus globulus Labillardiere)の葉から得られる抽出物である。タモギタケ抽出物は、タモギタケ(学名Pleurotus cornucopiae)から得られる抽出物である。上記抽出物の抽出方法は特に限定されず、常法に従って行うことができる。抽出に用いられる抽出溶媒としては、極性溶媒、非極性溶媒のいずれも使用することができる。上記抽出物は、抽出した溶液のまま用いても良く、必要に応じて、濃縮、希釈、濾過、活性炭等による脱色、脱臭、エタノール沈殿等の処理したものを用いても良い。さらには、抽出した溶液を濃縮乾固、噴霧乾燥、凍結乾燥等の処理を行い、乾燥物としたものとして用いても良い。
本発明に用いるコメヌカ発酵エキスの市販品としてはコメヌカ発酵エキスBG30(丸善製薬製)、オウバク抽出物の市販品としてはオウバク抽出液BG-J(丸善製薬製)、オウレン抽出物の市販品としてはオウレン抽出液BG30(丸善製薬製)、センブリ抽出物の市販品としてはセンブリ抽出リキッドSS(丸善製薬製)、ハマメリス抽出物の市販品としてはハマメリス抽出液BG-J(丸善製薬製)、ボタンピ抽出物の市販品としてはボタンピ抽出液(丸善製薬製)、モモ抽出物の市販品としてはモモ抽出液BG(丸善製薬製)、ユーカリ抽出物の市販品としてはユーカリ抽出液BG(丸善製薬製)、タモギタケ抽出物の市販品としてはフィトチオネイン(香栄興業製)等が挙げられる。
【0026】
本発明に用いるオウバク抽出物、ハマメリス抽出物及びモモ抽出物は、多価アルコール(1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリンなど)を含有する溶媒により抽出したものが好ましい。多価アルコールに加えて、水、低級脂肪族アルコール(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなど)、低級脂肪族ケトン(アセトンなど)などを含有していても良く、このうち多価アルコールと水からなる混液で抽出することが最も好ましい。多価アルコールとしては、好ましくは1,3-ブチレングリコール、又はプロピレングリコールが挙げられるが、1,3-ブチレングリコールが最も好ましい。水と1,3-ブチレングリコールからなる溶媒で抽出する場合、溶媒中における1,3-ブチレングリコールの含有量は、30~70体積%が好ましい。
【0027】
本発明に用いるオウレン抽出物、センブリ抽出物、ボタンピ抽出物及びユーカリ抽出物は、低級脂肪族アルコール(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなど)を含有する溶媒により抽出したものが好ましい。低級脂肪族アルコールに加えて、水、多価アルコール(1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリンなど)、低級脂肪族ケトン(アセトンなど)などを含有していても良く、このうち低級脂肪族アルコールと水からなる混液で抽出することが最も好ましい。低級脂肪族アルコールとしては、エタノールが好ましい。
【0028】
本発明におけるタモギタケ抽出物は、水により抽出したものが好ましい。水に加えて、多価アルコール(1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリンなど)、低級脂肪族アルコール(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなど)、低級脂肪族ケトン(アセトンなど)などを含有していても良いが、水により抽出したものが好ましい。
【0029】
本発明におけるβ-エストラジオールは、Cas No.50-28-2で規定される化合物である。5-アミノレブリン酸はCas No.5451-09-2で規定される化合物である。β-ニコチンアミドモノヌクレオチドはCasNo.1094-61-7で規定される化合物である。リボフラビンはCasNo.83-88-5で規定される化合物である。チオタウリンはCasNo.2937-54-4で規定される化合物である。MA-5は4-(2、4-ジフルオロフェニル)-2-(1H-インドール-3-イル)-4-オキソーブタン酸である。メトホルミンはCasNo.1115-70-4で規定される化合物である。ウロリチンAはCasNo.1143-70-0で規定される化合物である。ナイアシンアミドは、CasNo.98-92-0で規定される化合物である。D-パンテノールはCasNo.81-13-0で規定される化合物である。
【0030】
β-エストラジオール及びメトホルミンは東京化成工業株式会社等から、β-ニコチンアミドモノヌクレオチドはオリエンタル酵母工業株式会社等から、5-アミノレブリン酸はコスモ・バイオ株式会社等から、リボフラビン、チオタウリン、ナイアシンアミド及びD-パンテノールは和光純薬工業株式会社等から、ウロリチンAはSigma-Aldrich等から購入可能である。MA-5は一般的な合成法を用いて製造することができ、例えば国際公開公報WO2014/080640に記載の方法で製造することが可能である。
【0031】
投与形態としては、特に限定されるものではないが、外用や内服が挙げられ、好ましくは頭皮を含む皮膚に適用する外用である。本発明を外用で適用する場合の剤形としては、例えば、ローション剤、液剤、クリーム剤、軟膏剤、ゲル剤、スプレー剤、シャンプー、コンディショナー、石鹸等が挙げられ、内服で適用する場合の剤形としては、錠剤、粉末剤、散剤、顆粒剤、液剤、カプセル剤、ドライシロップ剤、ゼリー剤、液状食品、半固形食品、固形食品等が挙げられる。
これらは、公知の方法で製造することができる。製造に際しては、本発明の効果を損なわない範囲で、化粧品、医薬部外品、医薬品、飲食品又は試薬に含有可能な種々の添加物を配合することができる。
【0032】
本発明のMITOL産生を促進する成分を有効成分として含有する組成物又はMITOL産生促進剤は、例えば、肌の乾燥、シワの出現、ハリ・弾力の低下、シミやクスミの増加、白髪の出現といった老化症状を予防又は改善するため、あるいは、MITOL産生を促進するための試薬として用いることも可能であり、好適には素材スクリーニング等を行なうに際し陽性対照薬として利用可能である。
【0033】
本発明のMITOL産生を促進する成分の配合量は、化粧品、医薬部外品、医薬品、飲食品又は試薬で提供する場合、それぞれ組成物全体に対して0.000001~10質量%、好ましくは0.0001~5質量%、より好ましくは0.001~1質量%である。
【実施例】
【0034】
以下に実施例および試験例を挙げ、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されない。
【0035】
(試験例1)MITOLノックダウンが表皮角化細胞における遺伝子発現に与える影響評価
Opti-MEM及びLipofectamine RNAiMAX(ともにサーモフィッシャーサイエンティフィック)を体積比100:1に混合した混合液を、6穴プレートに500μL/well添加した。さらに10μMのMITOL siRNAを6μL/well 添加し、20分間静置した。その後、培地Humedia-KG2(倉敷紡績,抗菌剤以外の添付サプリメントを添加)にて9×10
3 cells/mLの密度に調製した表皮角化細胞(倉敷紡績製)の細胞懸濁液を2.5mL/well添加し、プレートを振ることにより混合した。プレートを37℃、CO2 5%にセットしたインキュベーター内に入れ、1日間培養した。培地を新しいHumedia-KG2に交換し、さらに1日間培養した。培養終了後、培地を除去し、ライセートバッファーを添加して細胞を溶解し、細胞溶解液を回収した。細胞溶解液より、RNeasy Mini Kit(キアゲン)を用いて添付のプロトコールに従いRNAを回収し、これを鋳型として、Prime Script RT Master mix(タカラバイオ)を用いた逆転写反応によりcDNAを合成した。合成したcDNAから、リアルタイムPCRシステム(Step One Plus、サーモフィッシャーサイエンティフィック)により、GAPDH、mki67、PCNA、TGM1、KRT1、KRT10、INV、FLG、LOR、SOD2、PAR2及びCOL17A1それぞれのmRNAの発現量を測定し(SYBR Green法)、mki67、PCNA、TGM1、KRT1、KRT10、INV、FLG、LOR、SOD2、PAR2及びCOL17A1の発現量をGAPDH発現量により補正した。プライマーは、次の型番のものを用いた。GAPDH:HA067812、mki67:HA177741、PCNA:HA157702、TGM1:HA171645、KRT1:HA237191、KRT10:HA230464、INV:HA226067、FLG:HA182433、LOR:HA177882、SOD2:HA169126、PAR2:HA131120及びCOL17A1:HA132006、(いずれもタカラバイオ)。測定したmRNA発現量を、コントロール群(MITOL siRNAの代わりにControl siRNAを添加した群)と比較し、MITOLノックダウンによる影響を評価した。
<試験結果>
結果を
図1に示す。MITOLノックダウンにより、mki67、PCNA、TGM1、KRT1、KRT10、INV、FLG、LOR及びSOD2の各mRNA発現量の低下が確認され、PAR2のmRNA発現量の上昇が確認された。細胞増殖マーカーであるmki67及びPCNAの低下から、MITOLは表皮角化細胞の増殖に重要であることが明らかとなった。このことから、MITOL産生を促進する成分は、表皮角化細胞の減少抑制、増殖促進及び活性化に活用することができ、また、表皮角化細胞の減少抑制、増殖促進及び活性化成分をスクリーニングする際に、MITOLの産生促進作用を指標として用いることができる。
【0036】
(試験例2)MITOLノックダウンが真皮線維芽細胞における遺伝子発現に与える影響評価
Opti-MEM及びLipofectamine RNAiMAX(ともにサーモフィッシャーサイエンティフィック)を体積比100:0.45に混合した混合液を、12穴プレートに250μL/well添加した。さらに10μMのMITOL siRNAを3μL/well 添加し、20分間静置した。その後、培地FibroLife BM(倉敷紡績製,抗菌剤以外のサプリメントを添加)にて6×10
4 cells/mLの密度に調製した真皮線維芽細胞(倉敷紡績製)の細胞懸濁液を1.25mL/well添加し、プレートを振ることにより混合した。プレートを37℃、CO
2 5%にセットしたインキュベーター内に入れた。COL1A1及びELNに関しては、siRNA添加翌日に培地FibroLife BM(倉敷紡績製,FBS、FGF及び抗菌剤以外のサプリメントを添加)にて培地交換し、その2日後に培養を終了した。COL1A1及びELN以外に関しては培地交換を実施せず、siRNA添加の2日後に培養を終了した。培養終了後、培地を除去し、ライセートバッファーを添加して細胞を溶解し、細胞溶解液を回収した。細胞溶解液より、RNeasy Mini Kit(キアゲン)を用いて添付のプロトコールに従いRNAを回収し、これを鋳型として、Prime Script RT Master mix(タカラバイオ)を用いた逆転写反応によりcDNAを合成した。合成したcDNAから、リアルタイムPCRシステム(Step One Plus、サーモフィッシャーサイエンティフィック)により、RPLP0、PCNA、CDC25C、GSS、COL1A1、ELN、MMP1、MME、FBN1、LOXL-1、TIMP-1及びSOD2それぞれのmRNAの発現量を測定し(SYBR Green法)、PCNA、CDC25C、GSS、COL1A1、ELN、MMP1、MME、FBN1、LOXL-1、TIMP-1及びSOD2の発現量をRPLP0発現量により補正した。プライマーは、タカラバイオ製の次の型番のものを用いた。RPLP0:HA234224、PCNA:HA157702、CDC25C:HA266272、GSS:HA285317,COL1A1:HA181838、MMP1:HA205024、MME:HA211733、FBN1:HA151534、LOXL-1:HA230268、TIMP-1:HA138168、SOD2:HA169126(いずれもタカラバイオ)。ELNのプライマーに関しては、Accession ID:NM_000501に特異的なプライマーをタカラバイオに依頼し作成した。mRNA発現量を、コントロール群(MITOL siRNAの代わりにControl siRNAを添加した群)と比較し、MITOLノックダウンによる影響を評価した。
<試験結果>
結果を
図2に示す。MITOLノックダウンにより、PCNA、CDC25C、GSS、COL1A1、ELN、MMP1、LOXL-1及びTIMP-1の各mRNA発現量の低下が確認され、FBN1及びMMEのmRNA発現量の上昇が確認された。細胞増殖マーカーであるCDC25C及びPCNAの低下から、MITOLは真皮線維芽細胞の増殖に重要であることが明らかとなった。このことから、MITOL産生を促進する成分は、真皮線維芽細胞の減少抑制、増殖促進及び活性化に活用することができ、また、真皮線維芽細胞の減少抑制、増殖促進及び活性化成分をスクリーニングする際に、MITOLの産生促進作用を指標として用いることができる。
【0037】
(試験例3)MITOLノックダウンが毛包ケラチノサイトにおける遺伝子発現に与える影響評価
<試験方法>
Opti-MEM及びLipofectamine RNAiMAX(ともにサーモフィッシャーサイエンティフィック)を体積比100:3に混合した混合液を、6穴プレートに500μL/well添加した。さらに10μMのMITOL siRNAを6μL/well添加し、20分間静置した。その後、培地Humedia-KG2(倉敷紡績,抗菌剤以外の添付サプリメントを添加)にて5×10
4 cells/mLの密度に調製した毛包ケラチノサイト(コスモバイオ)の細胞懸濁液を2 mL/well添加し、プレートを振ることにより混合した。プレートを37℃、CO
2 5%にセットしたインキュベーター内に入れ、1日間培養した。培養後、培地を新しいHumedia-KG2に交換した。SCFは更に2日間、SCF以外は更に3日間培養した。培養終了後、培地を除去し、ライセートバッファーを添加して細胞を溶解し、細胞溶解液を回収した。細胞溶解液より、RNeasy Mini Kit(キアゲン)を用いて添付のプロトコールに従いRNAを回収し、これを鋳型として、Prime Script RT Master mix(タカラバイオ)を用いた逆転写反応によりcDNAを合成した。合成したcDNAから、リアルタイムPCRシステム(Step One Plus、サーモフィッシャーサイエンティフィック)により、GAPDH、mki67、PCNA、COL17A1、WNT7A、TGFβ2、GSS及びSCFそれぞれのmRNAの発現量を測定し(SYBR Green法)、mki67、PCNA、COL17A1、WNT7A、TGFβ2、GSS及びSCFの発現量をGAPDH発現量により補正した。プライマーは、次の型番のものを用いた。GAPDH:HA067812、mki67:HA177741、PCNA:HA157702、COL17A1:HA132006、WNT7A:HA164443、TGFβ2:HA172380,GSS:HA285317,SCF:HA122146(いずれもタカラバイオ)。測定したmRNA発現量を、コントロール群(MITOL siRNAの代わりにControl siRNAを添加した群)と比較し、MITOLノックダウンによる影響を評価した。
<試験結果>
結果を
図3に示す。MITOLノックダウンにより、mki67、PCNA、COL17A1、WNT7A、TGFβ2、GSS及びSCFの各mRNA発現量の低下が確認された。細胞増殖マーカーであるmki67及びPCNAの低下から、MITOLは毛包幹細胞や毛包角化細胞等の増殖に重要であることが明らかとなった。また、MITOLは17型コラーゲンの発現に重要な役割を果たしていることから、毛包幹細胞の維持に関わること(特許文献13)、さらにこれとあわせて色素幹細胞及び色素細胞を維持するニッチ機能に関わる因子であるWNT7A、TGFβ2及びSCFの産生にも重要であることから、色素幹細胞の維持にも関与していることが明らかになった。以上の結果から、MITOL産生を促進する成分は、毛包幹細胞、色素幹細胞及び毛包角化細胞の減少抑制、増殖促進及び活性化に活用することができ、さらには、脱毛及び白髪の予防及び改善に用いることが可能である。また、毛包幹細胞、色素幹細胞及び毛包角化細胞の減少抑制、増殖促進及び活性化成分をスクリーニングする際に、MITOLの産生促進作用を指標として用いることができる。
【0038】
(試験例4)表皮角化細胞に対するMITOL遺伝子発現促進作用の評価
表皮角化細胞(倉敷紡績製)を培地Humedia-KG2(倉敷紡績,添付サプリメントを添加)にて、2500cells/cm2になるように12穴プレートに播種し、37℃、CO2 5%にセットしたインキュベーター内で24時間培養した。培地を吸引除去し、被験物質を含有する培地に交換し,更に24時間培養した.培養終了後、培地を除去し、ライセートバッファーを添加して細胞を溶解し、細胞溶解液を回収した。細胞溶解液より、RNeasy Mini Kit(キアゲン)を用いて添付のプロトコールに従いRNAを回収し、これを鋳型として、Prime Script RT Master mix(タカラバイオ)を用いた逆転写反応によりcDNAを合成した。合成したcDNAから、リアルタイムPCRシステム(Step One Plus、サーモフィッシャーサイエンティフィック)により、GAPDH、MITOLそれぞれのmRNAの発現量を測定し(SYBR Green法)、MITOLの発現量をGAPDH発現量により補正した。プライマーは、次の型番のものを用いた。GAPDH:HA067812、MITOL:HA192576(いずれもタカラバイオ)。測定したmRNA発現量をコントロール群(被験物質を含有していない培地)と比較し、被験物質によるMITOL遺伝子発現促進作用を評価した。
<試験結果>
結果を
図4に示す。コメヌカ発酵エキス、オウバク抽出液、オウレン抽出液、センブリ抽出液、ハマメリス抽出液、ボタンピ抽出液、モモ抽出液、ユーカリ抽出液、β-エストラジオール、5-アミノレブリン酸、β-ニコチンアミドモノヌクレオチド及びリボフラビンによりMITOLのmRNA発現量が上昇することが確認された。これらの物質はMITOL産生を促進する成分をスクリーニングする際に、ポジティブコントロールとして用いることができる。
【0039】
(試験例5)真皮線維芽細胞に対するMITOL遺伝子発現促進作用の評価
真皮線維芽細胞(倉敷紡績製)を培地FibroLife BM(倉敷紡績製,添付サプリメントを添加)にて1.0×10
5 cells/mLの細胞密度に調製し、12穴プレートに0.5mLずつ播種し、37℃、CO2 5%にセットしたインキュベーター内で培養した。翌日、培地を吸引除去し、培地FibroLife BM(倉敷紡績製,FBS及びFGF以外の添付サプリメントを添加)に交換し、更に24時間培養した。培地を吸引除去し、被験物質を含有する培地に交換し,24時間培養した.培養終了後、培地を除去し、ライセートバッファーを添加して細胞を溶解し、細胞溶解液を回収した。細胞溶解液より、RNeasy Mini Kit(キアゲン)を用いて添付のプロトコールに従いRNAを回収し、これを鋳型として、Prime Script RT Master mix(タカラバイオ)を用いた逆転写反応によりcDNAを合成した。合成したcDNAから、リアルタイムPCRシステム(Step One Plus、サーモフィッシャーサイエンティフィック)により、GAPDH、MITOLそれぞれのmRNAの発現量を測定し(SYBR Green法)、MITOLの発現量をGAPDH発現量により補正した。プライマーは、次の型番のものを用いた。GAPDH:HA067812、MITOL:HA192576(いずれもタカラバイオ)。測定したmRNA発現量をコントロール群(被験物質を含有していない培地)と比較し、被験物質によるMITOL遺伝子発現促進作用を評価した。
<試験結果>
結果を
図5に示す。コメヌカ発酵エキス、オウバク抽出液、オウレン抽出液、モモ抽出液、タモギタケ抽出液、β-エストラジオール、5-アミノレブリン酸、β-ニコチンアミドモノヌクレオチド、リボフラビン、チオタウリン、MA-5、メトホルミン、ウロリチンA、ナイアシンアミド及びD-パンテノールによりMITOLのmRNA発現量が上昇することが確認された。これらの物質はMITOL産生を促進する成分をスクリーニングする際に、ポジティブコントロールとして用いることができる。
【0040】
(試験例6)マウス筋芽細胞株C2C12細胞に対するMITOL遺伝子発現促進作用の評価
マウス筋芽細胞株C2C12細胞(DSファーマバイオメディカル)を増殖培地10% Fetal Bovine Serum(FBS)を含むDMEM(サーモフィッシャーサイエンティフィック)にて、12500 cells/cm2になるように6穴プレートに播種し、37℃、CO2 5%にセットしたインキュベーター内で培養した。培地を吸引除去し、分化培地2% Horse Serum(HS)を含むDMEMを添加後、さらに培養を継続した。培地を吸引除去し、被験物質の暴露3時間前に血清飢餓培地DMEMを添加し、馴化した。培地を吸引除去し、被験物質を含有する培地に交換し,更に24時間培養した。培養終了後、培地を除去し、ライセートバッファーを添加して細胞を溶解し、細胞溶解液を回収した。細胞溶解液より、RNeasy Mini Kit(キアゲン)を用いて添付のプロトコールに従いRNAを回収し、これを鋳型として、ReverTra Ace(R) qPCR RT Master Mix(東洋紡)を用いた逆転写反応によりcDNAを合成した。合成したcDNAから、リアルタイムPCRシステム(Step One Plus、サーモフィッシャーサイエンティフィック)により、Cyclophilin、MITOLそれぞれのmRNAの発現量を測定し(SYBR Green法)、MITOLの発現量をCyclophilin発現量により補正した。プライマーは、次の型番のものを用いた。MITOL:MA138812(タカラバイオ)。Cyclophilinのプライマーに関しては、Accession ID:M60456に特異的なプライマーをinvitrogenに依頼し作成した。測定したmRNA発現量をコントロール群(被験物質を含有していない培地)と比較し、被験物質によるMITOL遺伝子発現促進作用を評価した。
<試験結果>
結果を
図6に示す。センブリ抽出液、ハマメリス抽出液、ユーカリ抽出液、ナイアシンアミドによりMITOLのmRNA発現量が上昇することが確認された。これらの物質はMITOL産生を促進する成分をスクリーニングする際に、ポジティブコントロールとして用いることができる。
【0041】
(試験例7)素材が表皮角化細胞における遺伝子発現に与える影響評価
表皮角化細胞(倉敷紡績製)を培地Humedia-KG2(倉敷紡績,添付サプリメントを添加)にて、2500cells/cm2になるように12穴プレートに播種し、37℃、CO2 5%にセットしたインキュベーター内で24時間培養した。培地を吸引除去し、被験物質を含有する培地に交換し, 24時間培養した.培養終了後、培地を除去し、ライセートバッファーを添加して細胞を溶解し、細胞溶解液を回収した。細胞溶解液より、RNeasy Mini Kit(キアゲン)を用いて添付のプロトコールに従いRNAを回収し、これを鋳型として、Prime Script RT Master mix(タカラバイオ)を用いた逆転写反応によりcDNAを合成した。合成したcDNAから、リアルタイムPCRシステム(Step One Plus、サーモフィッシャーサイエンティフィック)により、GAPDH、SOD2及びCOL17A1それぞれのmRNAの発現量を測定し(SYBR Green法)、SOD2及びCOL17A1の発現量をGAPDH発現量により補正した。プライマーは、次の型番のものを用いた。GAPDH:HA067812、SOD2:HA169126、COL17A1:HA132006(いずれもタカラバイオ)。測定したmRNA発現量をコントロール群(被験物質を含有していない培地)と比較し、被験物質による各種遺伝子発現促進作用を評価した。
<試験結果>
結果を
図7に示す。センブリ抽出液、ハマメリス抽出液、ボタンピ抽出液、モモ抽出液及びユーカリ抽出液により、SOD2のmRNA発現量が上昇することが確認された。また、ハマメリス抽出液及びモモ抽出液によりCOL17A1のmRNA発現量が上昇することが確認された。以上のことから、MITOL産生を促進する成分は表1記載因子の産生促進に活用可能である。また、表1に記載の因子の産生促進剤をスクリーニングする際に、MITOL産生促進作用を指標に用いることができる。
【0042】
(試験例8)素材が真皮線維芽細胞における遺伝子発現に与える影響評価
真皮線維芽細胞(倉敷紡績製)を培地FibroLife BM(倉敷紡績製,添付サプリメントを添加)にて1.0×10
5 cells/mLの細胞密度に調製し、12穴プレートに0.5mLずつ播種し、37℃、CO2 5%にセットしたインキュベーター内で24時間培養した。培地を吸引除去し、培地FibroLife BM(倉敷紡績製,FBS及びFGF以外の添付サプリメントを添加)に交換し、更に24時間培養した。培地を吸引除去し、被験物質を含有する培地に交換し, 24時間培養した.培養終了後、培地を除去し、ライセートバッファーを添加して細胞を溶解し、細胞溶解液を回収した。細胞溶解液より、RNeasy Mini Kit(キアゲン)を用いて添付のプロトコールに従いRNAを回収し、これを鋳型として、Prime Script RT Master mix(タカラバイオ)を用いた逆転写反応によりcDNAを合成した。合成したcDNAから、リアルタイムPCRシステム(Step One Plus、サーモフィッシャーサイエンティフィック)により、GAPDH、LOXL-1およびMMEそれぞれのmRNAの発現量を測定し(SYBR Green法)、LOXL-1およびMMEの発現量をGAPDH発現量により補正した。プライマーは、次の型番のものを用いた。GAPDH:HA067812、LOXL-1:HA230268及びMME:HA211733(いずれもタカラバイオ)。測定したmRNA発現量をコントロール群(被験物質を含有していない培地)と比較し、被験物質による各種遺伝子発現促進作用を評価した。
<試験結果>
結果を
図8に示す。タモギタケ抽出液及びβ-ニコチンアミドモノヌクレオチドによりLOXL-1のmRNA発現量が上昇することが確認された。また、モモ抽出液及びリボフラビンによりMMEのmRNA発現量が減少することが確認された。以上のことから、MITOL産生を促進する成分は表1記載因子の産生促進剤及び表2記載因子の産生抑制剤に活用可能である。また、表1に記載の因子の産生促進剤及び表2に記載の因子の産生抑制剤をスクリーニングする際に、MITOL産生促進作用を指標に用いることができる。
【0043】
(試験例9)素材がマウス筋芽細胞株C2C12細胞における遺伝子発現に与える影響評価
マウス筋芽細胞株C2C12細胞(DSファーマバイオメディカル)を増殖培地10% Fetal Bovine Serum(FBS)を含むDMEM(サーモフィッシャーサイエンティフィック)にて、12500 cells/cm2になるように6穴プレートに播種し、37℃、CO2 5%にセットしたインキュベーター内で培養した。培地を吸引除去し、分化培地2% Horse Serum(HS)を含むDMEMを添加後、さらに培養を継続した。培地を吸引除去し、被験物質の暴露3時間前に血清飢餓培地DMEMを添加し、馴化した。培地を吸引除去し、被験物質を含有する培地に交換し,更に24時間培養した。培養終了後、培地を除去し、ライセートバッファーを添加して細胞を溶解し、細胞溶解液を回収した。細胞溶解液より、RNeasy Mini Kit(キアゲン)を用いて添付のプロトコールに従いRNAを回収し、これを鋳型として、ReverTra Ace(R) qPCR RT Master Mix(東洋紡)を用いた逆転写反応によりcDNAを合成した。合成したcDNAから、リアルタイムPCRシステム(Step One Plus、サーモフィッシャーサイエンティフィック)により、Cyclophilin、Cox4i1、TINN1及びMbそれぞれのmRNAの発現量を測定し(SYBR Green法)、Cox4i1, TINN1及びMbの発現量をCyclophilin発現量により補正した。プライマーは、次の型番のものを用いた。Cox4i1:MA112053、TINN1:MA110779、Mb:MA117187(いずれもタカラバイオ)。Cyclophilinのプライマーに関しては、Accession ID:M60456に特異的なプライマーをinvitrogenに依頼し作成した。測定したmRNA発現量をコントロール群(被験物質を含有していない培地)と比較し、被験物質による各種遺伝子発現促進作用を評価した。
<試験結果>
結果を
図9に示す。ハマメリス抽出液、ユーカリ抽出液により、Cox4i1、TINN1及びMbのmRNA発現量が上昇することが確認された。以上のことから、MITOL産生を促進する成分は表1記載因子の産生促進に活用可能である。また、表1に記載の因子の産生促進剤をスクリーニングする際に、MITOL産生促進作用を指標に用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明のMITOL産生を促進する成分は、例えば、肌の乾燥、シワの出現、ハリ・弾力の低下、シミやクスミの増加、白髪の出現といった老化症状および筋持久力の向上を予防又は改善するための化粧品、医薬部外品、医薬品又は飲食品の分野に利用可能である。また、MITOL産生を促進する成分のスクリーニングに際し、ポジティブコントロールとして用いることができる。更に本発明は、表1記載因子の産生促進剤及び表2記載因子の産生抑制剤のスクリーニングに際して、MITOL産生促進作用を指標に用いることができる。