(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】内燃機関用点火コイル
(51)【国際特許分類】
H01F 38/12 20060101AFI20240312BHJP
F02P 15/00 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
H01F38/12 E
H01F38/12 B
H01F38/12 C
F02P15/00 303B
(21)【出願番号】P 2022211255
(22)【出願日】2022-12-28
(62)【分割の表示】P 2019058801の分割
【原出願日】2019-03-26
【審査請求日】2022-12-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安達 雅泰
(72)【発明者】
【氏名】寺田 金千代
(72)【発明者】
【氏名】三輪 哲也
【審査官】木下 直哉
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-34912(JP,A)
【文献】特開2012-156427(JP,A)
【文献】特開平11-260656(JP,A)
【文献】特開平11-26267(JP,A)
【文献】特開平9-246075(JP,A)
【文献】国際公開第2015/59954(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/6487(WO,A1)
【文献】特開2012-174828(JP,A)
【文献】特開2018-152446(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 38/12
F02P 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁材からなる、巻線筒部(21)、及び前記巻線筒部に繋がるとともに前記巻線筒部とコネクタ部(24)との間に配置された接続部(22)を有する一次ボビン(2)と、
前記巻線筒部に別々に巻かれた一次メインコイル(3A)及び一次サブコイル(3B)を有する一次コイル(3A,3B)と、
前記一次コイルと同心状に重なって配置された二次コイル(4)と、を備え、
前記一次メインコイル及び前記一次サブコイルのうちの、前記巻線筒部における最も内周側に位置するコイル部分を含む一方のコイルを先巻きコイルとし、他方のコイルを後巻きコイルとしたとき、
前記先巻きコイルにおける一対の端部である各先巻き端部(311,312)と、前記後巻きコイルにおける一対の端部である各後巻き端部(321,322)とは、前記接続部に取り付けられており、
前記一次コイル及び前記二次コイルの内周側には、軟磁性材料からなる中心コア(52)が配置されており、
前記一次コイル及び前記二次コイルの外周側には、軟磁性材料からなって前記中心コアとともに閉磁路を形成する外周コア(53)が配置されており、
前記中心コアにおける、前記巻線筒部の中心軸に平行な軸方向の前記接続部に近い側の端面と、前記外周コアの内側面との間には、永久磁石(521)が配置されており、
前記一次サブコイルは、前記巻線筒部の外周であって、前記軸方向の前記接続部に近い側に片寄って巻かれている、内燃機関用点火コイル(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関用点火コイルに関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関用点火コイルは、エンジン等の内燃機関において、スパークプラグから火花放電を発生させるために使用される。内燃機関用点火コイルにおいては、イグナイタから断続的に通電される一次コイルと、一次コイルへの通電が遮断されたときに生じる誘電磁界によって高電圧を発生させる二次コイルとが、同心状に配置されている。一次コイルは、樹脂製の一次ボビンに巻線され、二次コイルは、樹脂製の二次ボビンに巻線されることが多い。
【0003】
また、火花放電を発生させた後の放電電流の継続時間、放電電流値等を調整するために、一次コイルを複数のコイルに分割し、複数のコイルへの通電及び通電の遮断を行う制御が行われている。このような一次コイルを用いた内燃機関用点火コイルとしては、例えば、特許文献1に開示されたものがある。特許文献1においては、一次ボビンの軸方向に異なる位置に、分割された2つの一次コイルが巻かれ、一次ボビンの接続部に、一次コイルを構成するコイル巻線の始端及び終端を固定することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、2つの一次コイルが一次ボビンに巻かれる際には、一次ボビンに先に巻かれる先巻き一次コイルと、一次ボビンに後に巻かれる後巻き一次コイルとができる。そして、先巻き一次コイルの巻線が行われて先巻き一次コイルの巻線端部が一次ボビンの接続部に固定された後、後巻き一次コイルの巻線が行われて後巻き一次コイルの巻線端部が一次ボビンの接続部に固定される。
【0006】
このとき、先巻き一次コイルの巻線端部を一次ボビンの接続部に固定する位置によっては、後巻き一次コイルの巻線が困難になることがあり、また、巻線端部を一次ボビンの接続部に固定することが困難になることがあった。そして、2つの一次コイルの巻線端部の固定を適切に行うためには、一次ボビンの接続部に巻線端部を固定する位置に工夫が必要であることが分かった。
【0007】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたもので、一次ボビンの接続部への先巻き一次コイルの両端部及び後巻き一次コイルの両端部の取り付けの作業性を改善することができる内燃機関用点火コイルを提供しようとして得られたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、絶縁材からなる、巻線筒部(21)、及び前記巻線筒部に繋がるとともに前記巻線筒部とコネクタ部(24)との間に配置された接続部(22)を有する一次ボビン(2)と、
前記巻線筒部に別々に巻かれた一次メインコイル(3A)及び一次サブコイル(3B)を有する一次コイル(3A,3B)と、
前記一次コイルと同心状に重なって配置された二次コイル(4)と、を備え、
前記一次メインコイル及び前記一次サブコイルのうちの、前記巻線筒部における最も内周側に位置するコイル部分を含む一方のコイルを先巻きコイルとし、他方のコイルを後巻きコイルとしたとき、
前記先巻きコイルにおける一対の端部である各先巻き端部(311,312)と、前記後巻きコイルにおける一対の端部である各後巻き端部(321,322)とは、前記接続部に取り付けられており、
前記一次コイル及び前記二次コイルの内周側には、軟磁性材料からなる中心コア(52)が配置されており、
前記一次コイル及び前記二次コイルの外周側には、軟磁性材料からなって前記中心コアとともに閉磁路を形成する外周コア(53)が配置されており、
前記中心コアにおける、前記巻線筒部の中心軸に平行な軸方向の前記接続部に近い側の端面と、前記外周コアの内側面との間には、永久磁石(521)が配置されており、
前記一次サブコイルは、前記巻線筒部の外周であって、前記軸方向の前記接続部に近い側に片寄って巻かれている、内燃機関用点火コイル(1)にある。
【発明の効果】
【0009】
前記一態様の内燃機関用点火コイルにおいては、一次コイルを構成する一次メインコイル及び一次サブコイルの各両端部を、一次ボビンの接続部に取り付ける位置について工夫をしている。具体的には、一次メインコイル及び一次サブコイルのうちの、一次ボビンの巻線筒部における最も内周側に位置するコイル部分を含む一方のコイルを先巻きコイルとし、他方のコイルを後巻きコイルとする。先巻きコイルは、一次コイルの全体のうちの最も内周側に位置するコイル部分を含むことより、一次ボビンに先に巻かれたコイルであると知ることができる。
【0010】
そして、内燃機関用点火コイルにおいて、一次コイル及び二次コイルの内周側には、軟磁性材料からなる中心コアが配置されており、一次コイル及び二次コイルの外周側には、軟磁性材料からなって中心コアとともに閉磁路を形成する外周コアが配置されており、
中心コアにおける、巻線筒部の中心軸に平行な軸方向の接続部に近い側の端面と、外周コアの内側面との間には、永久磁石が配置されており、一次サブコイルは、巻線筒部の外周であって、軸方向の接続部に近い側に片寄って巻かれている。
【0011】
これにより、一次ボビンの接続部に先巻きコイルの各先巻き端部が取り付けられた後に、この一次ボビンの接続部に後巻きコイルの各後巻き端部を取り付ける際に、各先巻き端部と各後巻き端部とが交差しないようにすることができる。また、各先巻き端部が各後巻き端部の取り付けの障害にならないようにすることができる。
【0012】
それ故、前記一態様の内燃機関用点火コイルによれば、一次ボビンの接続部への一次メインコイル及び一次サブコイルの両端部の取り付けの作業性を改善することができる。
【0013】
「コネクタ部」とは、一次コイル等を内燃機関用点火コイルの外部に接続するための部分のことをいう。なお、巻線筒部は、四角筒状、円筒状等の形状を有する。
【0014】
「巻線筒部に別々に巻かれた」とは、一次メインコイル及び一次サブコイルが巻かれた後の状態において、これらを構成する線材(マグネットワイヤ等)が途中で分離されている状態のことをいう。一次メインコイルの巻線の直径と一次サブコイルの巻線の直径とが同じである場合には、巻線筒部に対して一次メインコイル及び一次サブコイルが連続して巻かれた後に、両者が切断されることもある。
【0015】
なお、本発明の一態様において示す各構成要素のカッコ書きの符号は、実施形態における図中の符号との対応関係を示すが、各構成要素を実施形態の内容のみに限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施形態1にかかる、点火コイルの断面を示す説明図。
【
図2】実施形態1にかかる、点火コイルの構成部品を示す平面図。
【
図3】実施形態1にかかる、巻線筒部の中心軸に対する一次メインコイル及び一次サブコイルの各端部の位置を、点火コイルの断面において模式的に示す説明図。
【
図4】実施形態1にかかる、点火コイルの制御回路の一例を模式的に示す説明図。
【
図5】実施形態1にかかる、一次コイルが配置された一次ボビンと、二次コイルが配置された二次ボビンとが組み付けられた組付体の断面を示す説明図。
【
図6】実施形態1にかかる、一次コイルが配置された一次ボビンと、二次コイルが配置された二次ボビンとが組み付けられた組付体の他の断面を示す説明図。
【
図7】実施形態1にかかる、一次コイルが配置された一次ボビンの断面を示す説明図。
【
図8】実施形態1にかかる、一次コイルが配置された一次ボビンの他の断面を示す説明図。
【
図9】実施形態1にかかる、一次コイルが配置された一次ボビンを示す斜視図。
【
図10】実施形態1にかかる、一次コイルが配置された他の一次ボビンと、二次コイルが配置された二次ボビンとが組み付けられた他の組付体の断面を示す説明図。
【
図11】実施形態1にかかる、一次メインコイル及び一次サブコイルの各端部が取り付けられた、結線端子の結線端部を示す斜視図。
【
図12】実施形態1にかかる、巻線筒部の中心軸に対する一次メインコイル及び一次サブコイルの各端部の位置を模式的に示す説明図。
【
図13】実施形態1にかかる、一次メインコイル及び一次サブコイルの各端部にヒュージングを行った場合を示す説明図。
【
図14】実施形態1にかかる、一次メインコイル及び一次サブコイルの各端部に半田付けを行った場合を示す説明図。
【
図15】実施形態1にかかる、取付冶具によって、一次メインコイル及び一次サブコイルの各端部を結線端子の結線端部に取り付ける状態を示す説明図。
【
図16】実施形態1にかかる、一次メインコイルが配置された状態の一次ボビンの断面を示す説明図。
【
図17】実施形態1にかかる、コイル組付体がコイルケース内に配置される状態を示す説明図。
【
図18】実施形態2にかかる、巻線筒部の中心軸に対する一次メインコイル及び一次サブコイルの各端部の位置を模式的に示す説明図。
【
図19】実施形態3にかかる、一次コイルが配置された一次ボビンの断面を示す説明図。
【
図20】実施形態3にかかる、巻線筒部の中心軸に対する一次メインコイル及び一次サブコイルの各端部の位置を、点火コイルの断面において模式的に示す説明図。
【
図21】実施形態4にかかる、一次コイルが配置された一次ボビンの断面を示す説明図。
【
図22】実施形態4にかかる、巻線筒部の中心軸に対する一次メインコイル及び一次サブコイルの各端部の位置を、点火コイルの断面において模式的に示す説明図。
【
図23】実施形態4にかかる、一次コイルが配置された他の一次ボビンの断面を示す説明図。
【
図24】実施形態4にかかる、一次コイルが配置された他の一次ボビンの他の断面を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
前述した内燃機関用点火コイルにかかる好ましい実施形態について、図面を参照して説明する。
<実施形態1>
本形態の内燃機関用点火コイル1(以下、単に点火コイル1という。)は、
図1~
図3に示すように、一次ボビン2、一次コイル3A,3B、二次ボビン42、二次コイル4等を備える。一次ボビン2は、絶縁材からなり、巻線筒部21と、巻線筒部21に繋がるとともに巻線筒部21とコネクタ部24との間に配置された接続部22とを有する。一次コイル3A,3Bは、巻線筒部21の外周に別々に巻かれた一次メインコイル3Aと一次サブコイル3Bとによって構成されている。二次コイル4は、二次ボビン42の外周のスロット内に巻かれて、一次コイル3A,3Bと同心状に重なって配置されている。
【0018】
点火コイル1において、一次メインコイル3A及び一次サブコイル3Bのうちの、巻線筒部21における最も内周側に位置するコイル部分を含む一方のコイルを先巻きコイルとし、他方のコイルを後巻きコイルとする。「コイル部分」とは、一次メインコイル3A又は一次サブコイル3Bを形成するマグネットワイヤ等の線材の部分のことをいう。
【0019】
本形態の先巻きコイルは一次メインコイル3Aによって構成されており、本形態の後巻きコイルは一次サブコイル3Bによって構成されている。先巻きコイルとしての一次メインコイル3Aにおける一対の端部である各先巻き端部311,312と、後巻きコイルとしての一次サブコイル3Bにおける一対の端部である各後巻き端部321,322とは、一次ボビン2の接続部22に取り付けられている。巻線筒部21の中心軸Oから各先巻き端部311,312の線材中心までの最短距離r1は、巻線筒部21の中心軸Oから各後巻き端部321,322の線材中心までの最短距離r2よりも短い。
【0020】
ここで、「巻線筒部21の中心軸O」とは、巻線筒部21の軸方向Lにおける各部の断面の図心を通る仮想線のことをいう。また、「最短距離r1,r2」とは、巻線筒部21の軸方向Lに直交する断面において、中心軸Oから巻線筒部21の径方向Rに向けられた距離のことをいう。
【0021】
以下に、本形態の点火コイル1について詳説する。
(点火コイル1)
図1、
図2及び
図4に示すように、点火コイル1は、車両の内燃機関としてのエンジンにおいて、シリンダヘッドカバーに配置され、シリンダヘッドに配置されたスパークプラグ61から、シリンダヘッドの燃焼室内に火花放電を発生させるために用いられる。本形態の点火コイル1は、車載用のものである。点火コイル1は、一次ボビン2、一次コイル3A,3B、二次ボビン42、二次コイル4、制御回路等によって構成されたコイル本体部11と、コイル本体部11から突出され、スパークプラグ61と接続部材を介して電気的に連結されるタワー部12とを有する。コイル本体部11は、シリンダヘッドカバーに配置され、タワー部12は、シリンダヘッドカバーのプラグホールに向けて配置される。また、タワー部12は、プラグホール内において、図示しない接続部材に接続される。この接続部材は、プラグホール内に配置されたスパークプラグ61に取り付けられる。
【0022】
(軸方向L、横方向W、高さ方向H、径方向R等)
図1~
図3に示すように、本形態の点火コイル1においては、巻線筒部21の中心軸Oに平行な方向、換言すれば同心状に配置された一次コイル3A,3B及び二次コイル4の中心軸Oが延びる方向を軸方向Lという。また、軸方向Lに直交するとともにコイル本体部11とタワー部12とが並ぶ方向を高さ方向Hという。また、軸方向L及び高さ方向Hの両方に直交する方向、換言すれば一次メインコイル3Aの各先巻き端部311,312及び一次サブコイル3Bの各後巻き端部321,322が両側に分かれて配置される方向を横方向Wという。また、巻線筒部21の中心軸Oから放射状に広がる方向を径方向Rという。
【0023】
本形態のタワー部12の仮想線としての中心軸は、高さ方向Hに沿って配置されており、コイル本体部11の中心軸Oに対して直角に配置されている。また、点火コイル1の軸方向Lにおいて、二次コイル4の高電圧側巻線端部412が配置される側を高電圧側L1といい、二次コイル4の低電圧側巻線端部411が配置される側を低電圧側L2という。点火コイル1の高さ方向Hにおいて、コイル本体部11に対してタワー部12が形成された側、換言すればタワー部12が挿入されるシリンダヘッドカバーのプラグホールの奥側を奥側H1といい、奥側H1とは反対側を開口側H2という。
【0024】
(一次メインコイル3A及び一次サブコイル3Bの通電時期)
本形態の点火コイル1は、一次コイル3A,3Bが一次メインコイル3A及び一次サブコイル3Bの2つに分割して形成されていることにより、点火コイル1によって発生させる火花放電(スパーク)の形成状態に種々の態様を持たせたものである。点火コイル1の制御装置において、一次メインコイル3Aに通電を行うタイミングと、一次サブコイル3Bに通電を行うタイミングとは、適宜設定することができる。
【0025】
一次メインコイル3Aは、二次コイル4に高電圧を発生させるための主となるエネルギーを形成するために用いられる。一次サブコイル3Bは、一次メインコイル3Aによる火花放電のエネルギーを補足するために用いられる。
【0026】
本形態において、一次サブコイル3Bに通電を開始するタイミング(時期)は、一次メインコイル3Aへの通電を遮断した時、又は一次メインコイル3Aへの通電を遮断した後とすることができる。なお、一次サブコイル3Bに通電を開始するタイミング及び通電を遮断するタイミングは、種々のタイミングとすることができる。
【0027】
点火コイル1において、一次メインコイル3Aの巻線部30の巻線の向きと一次サブコイル3Bの巻線部30の巻線の向きとは、同じ向きにすることができ、逆向きにすることもできる。そして、一次メインコイル3Aへの通電の遮断によって中心コア52に発生させる磁束の向きと、一次サブコイル3Bへの通電の遮断によって中心コア52に発生させる磁束の向きとは、同じ向きにすることができ、逆向きにすることもできる。
【0028】
一次メインコイル3Aへの通電を開始する時期及び通電を遮断する時期、並びに一次サブコイル3Bへの通電を開始する時期及び通電を遮断する時期、回数等を適宜調整することにより、二次コイル4によってスパークプラグ61から放電される電流の状態を適宜変更することができる。
【0029】
一次メインコイル3Aへの通電量を調整して、二次コイル4によってスパークプラグ61から放電される電流のピーク値を調整することができる。また、一次サブコイル3Bへの通電の仕方を調整することにより、二次コイル4によってスパークプラグ61から放電される電流の放電時間を調整することができる。一次サブコイル3Bへの通電の仕方には、一次サブコイル3Bへ通電を開始するタイミングを調整して、スパークプラグ61からの放電電流を増加させること、一次サブコイル3Bへの通電を停止させるタイミングを調整して、スパークプラグ61からの放電電流を低下させる又は放電電流を設定値になるようにすること、一次サブコイル3Bへの通電を開始するタイミング及び通電を停止するタイミングを調整すること等がある。
【0030】
(制御回路)
図4には、点火コイル1の制御装置に構成される、点火コイル1のイグナイタ51に構築された制御回路の一例を簡略的に示す。点火コイル1のコイル本体部11内には、制御回路が構築されたイグナイタ51が配置されている。イグナイタ51においては、一次メインコイル3Aの通電及び通電の遮断を行う第1スイッチング素子512、一次サブコイル3Bの通電及び通電の遮断を行う第2スイッチング素子513等が配置されている。
【0031】
イグナイタ51には、車両の電子制御装置(ECU)60が電気接続されている。電子制御装置60からイグナイタ51には、一次メインコイル3Aによってスパークを発生させることを示す第1イグニッション信号(点火信号)S1と、一次サブコイル3Bによってスパークを継続させることを示す第2イグニッション信号(点火信号)S2とが送信されるよう構成されている。イグナイタ51には、図示しない制御回路に繋がる直流電源B及びグラウンドGも接続されている。
【0032】
図4に示すように、一次メインコイル3A及び一次サブコイル3Bは、電子制御装置60及びイグナイタ51からの信号を受けて、二次コイル4に誘導起電力を発生させるために通電される。一次メインコイル3Aの第1先巻き端部311と一次サブコイル3Bの第1後巻き端部321とが繋がる中継ポイントTには、直流電源Bが接続されている。一次メインコイル3Aの第2先巻き端部312には、第1スイッチング素子512が接続されており、一次サブコイル3Bの第2後巻き端部322には、第2スイッチング素子513が接続されている。
【0033】
二次コイル4の低電圧側巻線端部411は、逆流防止用のダイオード25及び抵抗器26を介してグラウンドGに接続されている。二次コイル4の高電圧側巻線端部412は、高電圧導体27,28を介してスパークプラグ61が装着されるタワー部12に接続されている。なお、二次コイル4の低電圧側巻線端部411に流れる電流をフィードバックして、第2スイッチング素子513のスイッチングを行う制御に利用することができる。
【0034】
図4~
図6に示すように、イグナイタ51は、各端子511及び各スイッチング素子512,513、抵抗器26、図示しない制御回路、各端子511の一部及び各スイッチング素子512,513等を被覆するモールド樹脂514などによって構成されている。イグナイタ51における各端子511の残部は、モールド樹脂514から突出しており、コネクタ部24の各端子241,242,243,244に接触して接続されている。
【0035】
(一次メインコイル3A)
図7及び
図8に示すように、一次メインコイル3Aは、一次ボビン2の巻線筒部21の外周に巻かれている。一次メインコイル3Aは、一次ボビン2の巻線筒部21に形成された環状凹部211の軸方向Lの全長にわたって配置されている。一次メインコイル3Aの巻線数は、一次サブコイル3Bの巻線数よりも多く、一次メインコイル3Aのインダクタンスは、一次サブコイル3Bのインダクタンスよりも大きい。一次メインコイル3A及び一次サブコイル3Bを組み合わせて用いることにより、スパークプラグにおいて発生させる火花放電のエネルギーを高めることができる。
【0036】
本形態の一次メインコイル3Aは、先巻きコイルを構成する。一次メインコイル3Aは、一次ボビン2の巻線筒部21に先に巻かれたコイルであり、巻線筒部21における最も内周側に位置するコイル部分を含む。この場合の「巻線筒部21における最も内周側に位置するコイル部分」には、一次メインコイル3Aの巻線部30が該当する。一次メインコイル3Aは、巻線部30と一対のリード部310とを有する。各先巻き端部311,312は、リード部310の先端部として形成されている。
【0037】
(一次サブコイル3B)
図7及び
図8に示すように、一次サブコイル3Bは、一次ボビン2の巻線筒部21に巻かれた一次メインコイル3Aの外周に巻かれている。また、一次サブコイル3Bは、軸方向Lの接続部22に近い側に片寄って配置されている。換言すれば、一次サブコイル3Bは、巻線筒部21の環状凹部211の軸方向Lの低電圧側L2の部位に片寄って配置されている。本形態の一次サブコイル3Bは、後巻きコイルを構成する。一次サブコイル3Bは、一次ボビン2の巻線筒部21に後に巻かれたコイルであり、巻線筒部21における最も外周側に位置するコイル部分を含む。一次サブコイル3Bは、巻線部30と一対のリード部310とを有する。各後巻き端部321,322は、リード部310の先端部として形成されている。
【0038】
一次サブコイル3Bが環状凹部211の軸方向Lの低電圧側L2の部位に片寄って配置されていることにより、二次コイル4の軸方向Lの高電圧側L1の部位と一次サブコイル3Bとの間の距離をできるだけ長くすることができる。これにより、二次コイル4の高電圧側L1の部位と一次サブコイル3Bとの間の絶縁距離をできるだけ大きく確保し、点火コイル1の耐久性を向上させることができる。
【0039】
(中心コア52及び外周コア53)
図1~
図3に示すように、一次コイル3A,3B及び二次コイル4の内周側であって、一次ボビン2及び一次コイル3A,3Bの内周側には、軟磁性材料によって構成された中心コア52が挿通されている。中心コア52は、積層された複数の電磁鋼板によって構成することができる。また、中心コア52は、粉末の成形体によって構成することもできる。本形態の中心コア52は、インサート成形によって一次ボビン2の巻線筒部21の内周側に配置されている。一次コイル3A,3B及び二次コイル4の外周側であって、二次ボビン42及び二次コイル4の外周側には、軟磁性材料によって構成された外周コア53が配置されている。外周コア53は、積層された複数の電磁鋼板によって構成することができる。また、外周コア53は、粉末の成形体によって構成することもできる。
【0040】
外周コア53は、高さ方向Hから見て四角環形状に形成されており、二次ボビン42及び二次コイル4の周りに配置されている。中心コア52の両端面は、外周コア53の内側面と対面している。中心コア52と外周コア53とによって、磁束が中心コア52を軸方向Lに通過するとともに外周コア53を両側に通過する閉磁路が形成される。中心コア52における軸方向Lの低電圧側L2の端面、換言すれば中心コア52における軸方向Lの接続部22に近い側の端面と、外周コア53の内側面との間には、中心コア52及び外周コア53における閉磁路が磁気飽和の状態になることを防ぐための永久磁石521が配置されている。
【0041】
永久磁石521による磁気バイアスが発生することにより、中心コア52及び外周コア53の磁化特性が高められ、二次コイル4によって発生する電圧が高められる。また、永久磁石521を用いることにより、中心コア52の軸方向Lに直交する断面の断面積を小さくしても、中心コア52及び外周コア53における磁気飽和を避けることができる。
【0042】
図6に示すように、中心コア52における、永久磁石521と対面する端部の軸方向Lに直交する断面の断面積は、中心コア52における残部(一般部)の軸方向Lに直交する断面の断面積よりも大きくすることができる。特に、同図の二点鎖線Nによって示すように、中心コア52における、永久磁石521と対面する端部の軸方向Lに直交する断面の断面積は、横方向Wに向けて大きくすることができる。この場合には、永久磁石521の軸方向Lに直交する断面の断面積も大きくすることができる。そして、二次コイル4において発生させる高電圧の電圧性能を向上させることができる。
【0043】
(コイルケース54及びタワー部12)
図1及び
図2に示すように、一次コイル3A,3B、一次ボビン2、二次コイル4、二次ボビン42、中心コア52、外周コア53、イグナイタ51等は、熱可塑性樹脂の成形品として形成されたコイルケース54の内部に配置されている。コイルケース54は、コイル本体部11及びタワー部12の外形を形成し、タワー部12は、コイルケース54から延長して形成されている。コイルケース54には、コネクタ部24が装着される切欠き部541が形成されており、コイルケース54の壁部の一部は、コネクタ部24によって形成される。
【0044】
コイルケース54内には、一次コイル3A,3B、コネクタ部24が一体化された一次ボビン2、二次コイル4、二次ボビン42、中心コア52、外周コア53、イグナイタ51等のコイル組付体10が配置されている。また、コイルケース54及びコネクタ部24によって囲まれた凹部内であって、コイル組付体10の配置によって形成された隙間Kには、絶縁性の熱硬化樹脂による充填材55が充填されている。充填材55は、注型を行うことによって形成されている。
【0045】
タワー部12の根元部には、充填材55が充填される環状の溝部542が形成されている。充填材55の耐電圧は、コイルケース54の耐電圧よりも高い。そのため、タワー部12の根元部に充填材55が配置されていることにより、点火コイル1の耐電圧を確保することができる。
【0046】
図示は省略するが、コイルケースの外側面には、点火コイルをシリンダヘッドカバーに取り付けるためのフランジ部が形成されている。フランジ部には、ボルトを挿通するための挿通穴が形成されている。
【0047】
(一次ボビン2)
図7~
図9に示すように、一次コイル3A,3Bを構成する一次メインコイル3A及び一次サブコイル3Bは、熱可塑性樹脂の成形品として形成された一次ボビン2の巻線筒部21の外周に巻かれている。本形態の一次ボビン2には、巻線筒部21及び接続部22の他に、接続部22に繋がるコネクタ部24が一体化されている。コネクタ部24には、外部の電子制御装置60、直流電源B及びグラウンドGに繋がるハーネス部品の雌コネクタが装着される。コネクタ部24は、一次ボビン2とは別体の熱可塑性樹脂の成形品として形成されていてもよい。
【0048】
接続部22は、一次コイル3A,3Bが巻かれた巻線筒部21及び二次コイル4が巻かれた二次ボビン42と、コネクタ部24との間に配置されている。また、一次コイル3A,3B及び二次コイル4とコネクタ部24との間には、イグナイタ51、ダイオード25等の電子部品が配置される。さらには、二次コイル4の低電圧側L2は、一次ボビン2の接続部22側に配置される。これらの配置位置の関係により、一次コイル3A,3B及び二次コイル4と電子部品との接続を、二次コイル4の高電圧側巻線端部412から遠い位置において、一箇所においてまとめて行うことができる。これにより、一次コイル3A,3Bが複数に分けて設けられた点火コイル1においても、電子部品への高電圧の影響を最小限にするとともに、配線が容易となる。
【0049】
接続部22には、一次メインコイル3Aの各先巻き端部311,312及び一次サブコイル3Bの各後巻き端部321,322が取り付けられた複数の結線端子23Aが配置されている。複数の結線端子23Aの形状は、結線する部位の違いにより適宜異なる。結線端子23Aには、一次メインコイル3Aの各先巻き端部311,312及び一次サブコイル3Bの各後巻き端部321,322が差し込まれる二股状の結線端部231Aが形成されている。結線端部231Aは、接続部22の横方向Wの両側に配置されている。
【0050】
図8に示すように、接続部22の横方向Wの一方側には、一次メインコイル3Aの第1先巻き端部311及び一次サブコイル3Bの第1後巻き端部321がそれぞれ差し込まれる2つの結線端部231Aが配置されている。接続部22の横方向Wの他方側には、一次メインコイル3Aの第2先巻き端部312及び一次サブコイル3Bの第2後巻き端部322がそれぞれ差し込まれる2つの結線端部231Aが配置されている。各先巻き端部311,312及び各後巻き端部321,322は、結線端部231Aの溝232内に差し込まれて、結線端子23Aに結線(接続)されている。
【0051】
図8及び
図9に示すように、一次ボビン2の巻線筒部21には、一次メインコイル3A及び一次サブコイル3Bが巻かれた環状凹部211と、環状凹部211の軸方向Lの両側に位置して環状凹部211よりも拡径した鍔部212が形成されている。巻線筒部21における、軸方向Lの低電圧側L2に位置する鍔部212には、一次メインコイル3Aのリード部310(各先巻き端部311,312に近い部分)、及び一次サブコイル3Bのリード部310(各後巻き端部321,322に近い部分)が配置される配線用溝213が形成されている。軸方向Lの低電圧側L2に位置する鍔部212における、配線用溝213の両側の部位には、他の部位に比べて凸状に突出する凸部216を形成することができる。これにより、配線用溝213にリード部310が係止されやすくすることができる。
【0052】
一次メインコイル3A及び一次サブコイル3Bの巻線筒部21の径方向Rへの巻き層数は、1層、3層等の奇数層とすることができる。巻き層数が奇数層である場合には、巻線部30の端部が軸方向Lの異なる側に位置する。一次メインコイル3A及び一次サブコイル3Bの巻線筒部21の径方向Rへの巻き層数は、2層、4層等の偶数層とすることもできる。巻き層数が偶数層である場合には、巻線部30の端部が軸方向Lの同じ側に位置する。
【0053】
一次メインコイル3Aの巻き層数が奇数層である場合には、一次メインコイル3Aのリード部310が巻線筒部21の軸方向Lに沿って高電圧側L1と低電圧側L2との間で配置されていてもよい。また、この場合には、巻線筒部21の環状凹部211及び低電圧側L2の鍔部212には、一次メインコイル3Aのリード部310が軸方向Lに沿って配置される配線用溝が形成されていてもよい。一次サブコイル3Bの巻き層数が奇数層である場合についても、一次メインコイル3Aの巻き層数が奇数層である場合と同様である。
【0054】
巻き層数は、コイル出力を確保するために必要とする巻き回数と、一次ボビン2の巻線筒部21の環状凹部211の軸方向Lの長さとの関係によって決まる。巻き回数に合わせて、環状凹部211の軸方向Lの長さを適宜調整することにより、点火コイル1の小型化を図ることができる。
【0055】
また、
図7~
図9に示すように、一次メインコイル3A又は一次サブコイル3Bの巻き層数が奇数層である場合には、軸方向Lの高電圧側L1に位置する鍔部212にも配線用溝213を形成し、この巻き層数が奇数層である一次メインコイル3A又は一次サブコイル3Bのリード部310を、軸方向Lの高電圧側L1に位置する鍔部212の配線用溝213に係止することができる。この場合にも、軸方向Lの高電圧側L1に位置する鍔部212における、配線用溝213の両側の部位には、他の部位に比べて凸状に突出する凸部216を形成することができる。これにより、配線用溝213にリード部310が係止されやすくなり、リード部310の配線が容易になる。また、点火コイル1の小型化にも繋がる。
【0056】
同各図に示すように、一次ボビン2の接続部22には、コネクタ部24の各端子241,242,243,244及びイグナイタ51の各端子511が配置される配置穴221と、配置穴221の横方向Wの両側に形成されてコネクタ部24に繋がる一対の繋ぎ部222とが形成されている。コネクタ部24の各端子241,242,243,244とイグナイタ51の各端子511とは、配置穴221から高さ方向Hの開口側H2に引き出された状態で接続されている。
【0057】
一対の繋ぎ部222は、中心コア52及び外周コア53の高さ方向Hにおける配置位置よりも、高さ方向Hの開口側H2にオフセットした位置において形成されている。接続部22における結線端子23Aの結線端部231Aは、巻線筒部21の中心軸Oよりも高さ方向Hの開口側H2に片寄った位置に配置されている。一次メインコイル3Aの各先巻き端部311,312及び一次サブコイル3Bの各後巻き端部321,322は、巻線筒部21の中心軸Oよりも高さ方向Hの開口側H2に片寄った位置に配置されている。
【0058】
コネクタ部24には、一次メインコイル3Aへの通電を許可する第1イグニッション信号S1用の端子241、一次サブコイル3Bへの通電を許可する第2イグニッション信号S2用の端子242、直流電源B用の端子243、及びグラウンドG用の端子244の4つの端子が設けられている。
図10に示すように、コネクタ部24には、これら4つの端子の他に、点火コイル1に故障が生じたことを示すフェイル信号用の端子245が設けられていてもよい。
【0059】
(結線端子23A,23B)
図5及び
図6に示すように、一次メインコイル3Aの第1先巻き端部311と一次サブコイル3Bの第1後巻き端部321との電気的な接続は、一次ボビン2の接続部22における結線端子23Aによって行われている。第1先巻き端部311が差し込まれた結線端部231Aと、第1後巻き端部321が差し込まれた結線端部231Aとは、結線端子23Aによって繋がっている。この結線端子23Aは、第1先巻き端部311が差し込まれた結線端部231Aと、第1後巻き端部321が差し込まれた結線端部231Aとが直流電源Bに接続されるための分岐形状を有する。これにより、一次メインコイル3A及び一次サブコイル3Bを接続部22に集約して接続することが容易になる。
【0060】
また、イグナイタ51は、巻線筒部21に対する軸方向Lの低電圧側L2に配置されており、イグナイタ51の各端子511の全体は、コネクタ部24の各端子241,242,243,244の全体に対して軸方向Lの高電圧側L1の方向に対面する。そして、コネクタ部24の各端子241,242,243,244のすべてとイグナイタ51の各端子511のすべては、同じ向きで接合が行われる。これにより、コネクタ部24の各端子241,242,243,244とイグナイタ51の各端子511との接合を効率的に行うことができる。そのため、例えば、コネクタ部24の各端子241,242,243,244とイグナイタ51の各端子511との接合を、ロボットによって行うこともでき、この接合の信頼性を高めることができる。
【0061】
第1先巻き端部311が差し込まれた結線端部231Aと、第1後巻き端部321が差し込まれた結線端部231Aとを直流電源Bに接続するための結線端子23Aは、
図4における中継ポイントTに相当する。第1先巻き端部311と第1後巻き端部321との接続に1つの結線端子23Aを用いることにより、一次メインコイル3Aと一次サブコイル3Bとの直流電源Bへの接続を容易に行うことができる。また、点火コイル1の製造にかかる組付工数を低減することができる。
【0062】
また、一次ボビン2の接続部22における他の結線端子23A,23Bは、軸方向Lの向きを反転させるためにUターン形状に形成されている。Uターン形状の結線端子23A,23Bを用いることにより、コネクタ部24の各端子241,242,243,244のすべてとイグナイタ51の各端子511のすべてとに同じ向きで接合を行うことができる。これにより、点火コイル1の製造にかかる組付工数を低減することができる。
【0063】
(先巻き端部311,312、各後巻き端部321,322及び結線端部231A)
図3、
図9及び
図11に示すように、一次ボビン2におけるすべての結線端子23Aにおける結線端部231Aの溝232は、点火コイル1における特定の方向に向けて配置されている。本形態のすべての結線端子23Aにおける結線端部231Aの溝232は、高さ方向Hの開口側H2に向けて開口している。換言すれば、結線端部231Aの溝232は、高さ方向Hの開口側H2から奥側H1へ切り込む状態で形成されている。そして、一次メインコイル3Aの各先巻き端部311,312及び一次サブコイル3Bの各後巻き端部321,322は、高さ方向Hの開口側H2から奥側H1に向けて結線端部231Aの溝232に差し込まれる。これにより、一次メインコイル3Aの各先巻き端部311,312及び一次サブコイル3Bの各後巻き端部321,322を、結線端子23Aに同じ方向から取り付けることができる。そして、点火コイル1の組み付け工数の低減、点火コイル1の組み付けの自動化等が可能となる。
【0064】
各先巻き端部311,312及び各後巻き端部321,322は、接続部22に設けられた結線端子23Aの結線端部231Aに取り付けられている。そして、各先巻き端部311,312が取り付けられた結線端部231Aと、各後巻き端部321,322が取り付けられた結線端部231Aとは、横方向Wに互いにずれた位置に配置されている。
【0065】
図11に示すように、結線端子23Aの結線端部231Aは、軸方向Lにおいて互いに向き合う一対の板状部233と、一対の板状部233の高さ方向Hの開口側H2の端部を連結する連結部234とを有する。そして、結線端部231Aの溝232は、一対の板状部233及び連結部234を高さ方向Hの開口側H2から2つに分断する状態で形成されている。そして、各先巻き端部311,312及び各後巻き端部321,322は、溝232内に差し込まれた状態が、結線端部231Aにおける一対の板状部233によって支持される。
【0066】
各先巻き端部311,312及び各先巻き端部311,312が差し込まれた結線端部231Aは、巻線筒部21の中心軸Oを介する横方向Wの両側に並んで配置されている。各後巻き端部321,322及び各後巻き端部321,322が差し込まれた結線端部231Aも、巻線筒部21の中心軸Oを介する横方向Wの両側に並んで配置されている。本形態の各先巻き端部311,312及び各後巻き端部321,322は、巻線筒部21の中心軸Oを対称軸として、横方向Wの対称位置に配置されている。
【0067】
なお、各先巻き端部311,312及び各後巻き端部321,322は、必ずしも横方向Wの対称位置に配置されている必要はない。この場合にも、巻線筒部21の中心軸Oから各先巻き端部311,312までの最短距離r1が巻線筒部21の中心軸Oから各後巻き端部321,322までの最短距離r2よりも短いことが前提となる。
【0068】
結線端部231Aの溝232の形成方向が高さ方向Hに向けられている場合には、一次メインコイル3Aの各先巻き端部311,312及び各先巻き端部311,312が差し込まれた結線端部231Aと、一次サブコイル3Bの各後巻き端部321,322及び一次サブコイル3Bの各後巻き端部321,322が差し込まれた結線端部231Aとは、少なくとも横方向Wにずれた位置に配置される。
【0069】
具体的には、この場合には、
図12に示すように、巻線筒部21の中心軸Oから各先巻き端部311,312までの最短距離r1が、巻線筒部21の中心軸Oから各後巻き端部321,322までの最短距離r2よりも短いことを前提にして、各先巻き端部311,312の全体と各後巻き端部321,322の全体とは、横方向Wにのみずれた位置に配置することができる。そして、各後巻き端部321,322は、巻線筒部21の中心軸Oを介する横方向Wの両側において、各先巻き端部311,312の横方向Wの外側に配置される。換言すれば、巻線筒部21の中心軸Oから各先巻き端部311,312の線材中心までの横方向Wの成分における距離w1は、巻線筒部21の中心軸Oから各後巻き端部321,322の線材中心までの横方向Wの成分における距離w2よりも短い。また、各先巻き端部311,312が取り付けられた結線端部231Aは、各後巻き端部321,322が取り付けられた結線端部231Aに対して横方向Wの内側に配置されている。なお、距離w1,w2は、中心軸Oを含む高さ方向Hに平行な平面から、各先巻き端部311,312又は各後巻き端部321,322までの横方向Wの距離として示される。距離w1,w2は、横方向距離w1,w2ということもできる。
【0070】
また、結線端部231Aの溝232の形成方向が高さ方向Hに向けられている場合には、各先巻き端部311,312と各後巻き端部321,322とは、横方向Wにずれるとともに、軸方向L及び高さ方向Hの少なくとも一方にずれた位置に配置することができる。また、各先巻き端部311,312が取り付けられた結線端部231Aと、各後巻き端部321,322が取り付けられた結線端部231Aとは、横方向Wにずれるとともに、軸方向L及び高さ方向Hの少なくとも一方にずれた位置に配置することができる。
図3、
図5及び
図6に示すように、本形態の各先巻き端部311,312と各後巻き端部321,322とは、各後巻き端部321,322が各先巻き端部311,312の横方向Wの外側に位置するとともに、軸方向L及び高さ方向Hにずれた位置に配置されている。
【0071】
より具体的には、
図3に示すように、各先巻き端部311,312及び各後巻き端部321,322は、巻線筒部21の中心軸Oよりも高さ方向Hのタワー部12から離れる側に配置されている。換言すれば、各先巻き端部311,312及び各後巻き端部321,322は、巻線筒部21の中心軸Oの高さ方向Hの位置よりも、高さ方向Hの開口側H2の位置に配置されている。また、
図1及び
図2に示すように、巻線筒部21の中心軸Oを介する横方向Wの両側において、各先巻き端部311,312の軸方向Lにおける位置と、各後巻き端部321,322の軸方向Lにおける位置とは、互いに異なっている。さらに、各先巻き端部311,312の高さ方向Hにおける位置と、各後巻き端部321,322の高さ方向Hにおける位置とは、互いに異なっている。
【0072】
結線端部231Aの溝232の形成方向が高さ方向Hに向けられている場合に、各先巻き端部311,312と各後巻き端部321,322とが少なくとも横方向Wにずれた位置に配置されていることにより、取付冶具8によって、各先巻き端部311,312又は各後巻き端部321,322が結線端部231Aの溝232内に差し込まれる際に、各先巻き端部311,312、各後巻き端部321,322及び結線端部231Aのいずれも取付冶具8に干渉しないようにすることができる。各先巻き端部311,312が取り付けられた結線端部231Aと、各後巻き端部321,322が取り付けられた結線端部231Aとが、横方向Wにずれている場合についても同様の作用効果が得られる。
【0073】
また、各先巻き端部311,312と各後巻き端部321,322との軸方向L及び高さ方向Hの少なくとも一方の位置がずれていることにより、各先巻き端部311,312、各後巻き端部321,322又は結線端部231Aと取付冶具8との干渉をより適切に避けることができる。各先巻き端部311,312が取り付けられた結線端部231Aと、各後巻き端部321,322が取り付けられた結線端部231Aとが、軸方向L及び高さ方向Hの少なくとも一方にずれている場合についても同様の作用効果が得られる。
【0074】
各先巻き端部311,312及び各後巻き端部321,322は、一次メインコイル3A又は一次サブコイル3Bにおける円環状に巻かれた巻線部30を除くリード部310のうち、結線端子23Aの結線端部231Aに取り付けられるために、一次ボビン2の軸方向Lに平行に配置された部分のことをいう。
【0075】
一次ボビン2における結線端子23Aの結線端部231Aは、各先巻き端部311,312又は各後巻き端部321,322の差し込み(圧入、圧接)を行う構造とする以外にも、各先巻き端部311,312又は各後巻き端部321,322のヒュージング、半田付け、溶接等を行う構造とすることもできる。この場合には、結線端部231Aは、各先巻き端部311,312又は各後巻き端部321,322が接合される接合端部ということができる。また、この場合には、取付冶具8の代わりに、接合冶具が用いられることになる。
【0076】
図13に示すように、ヒュージングを行う際には、各先巻き端部311,312又は各後巻き端部321,322を加圧しながら各先巻き端部311,312又は各後巻き端部321,322に電流を流して、各先巻き端部311,312又は各後巻き端部321,322を接合端部に接合することができる。
【0077】
図14に示すように、半田付けを行う際には、各先巻き端部311,312又は各後巻き端部321,322と接合端部とを、溶融させた半田によって接合することができる。溶接を行う際には、各先巻き端部311,312又は各後巻き端部321,322と接合端部とを溶接することができる。これらの場合においても、各先巻き端部311,312又は各後巻き端部321,322と接合端部との間の高さ方向Hのスペースが空いていることにより、各先巻き端部311,312又は各後巻き端部321,322と接合冶具との干渉を容易に避けることができる。
【0078】
(ダイオード25)
図5及び
図6に示すように、一次ボビン2の接続部22には、二次コイル4の巻線端部411,412及びダイオード25を結線するための結線端子23Bが配置されている。結線端子23Bにおける、ダイオード25又は二次コイル4の巻線端部411,412が差し込まれる結線端部231Bは、一次ボビン2から突出して配置されている。ダイオード25の両側の導体部251及び二次コイル4の巻線端部411,412は、結線端部231Bの溝232内に差し込まれている。
【0079】
ダイオード25の両側の導体部251を接続するための、両方の結線端部231Bが一次ボビン2にインサートされていることにより、一次ボビン2に対するダイオード25の取り付け位置に誤差が生じにくくなる。そのため、結線端子23Bへのダイオード25の接続を容易にして、ロボットによるダイオード25の接続の自動化を可能にし、また、ダイオード25の接続の信頼性を高めることができる。
【0080】
本形態においては、一次ボビン2の接続部22における結線端子23A,23Bの結線端部231A,231Bの溝232内に、一次メインコイル3Aの各先巻き端部311,312、一次サブコイル3Bの各後巻き端部321,322、二次コイル4の巻線端部411,412、及びダイオード25を差し込む方向は、高さ方向Hの開口側H2から奥側H1への方向として同じである。また、そして、すべての結線端子23A,23Bの結線端部231A,231Bの溝232の形成方向が同じである。これにより、点火コイル1における組付作業性を向上させることができる。
【0081】
(各先巻き端部311,312及び各後巻き端部321,322の取付冶具8)
図15に示すように、一次メインコイル3Aの各先巻き端部311,312及び一次サブコイル3Bの各後巻き端部321,322を、一次ボビン2における結線端子23A,23Bの結線端部231A,231Bの溝232内に差し込むときには、取付冶具8を用いる。取付冶具8は、各先巻き端部311,312又は各後巻き端部321,322を保持する保持冶具部81と、保持冶具部81に対向して配置され、保持冶具部81が各先巻き端部311,312又は各後巻き端部321,322を溝232内に差し込む力を受ける受け冶具部82とによって構成されている。各先巻き端部311,312又は各後巻き端部321,322は、取付冶具8としての圧入冶具によって、溝232内に圧入される。
【0082】
保持冶具部81に保持する各先巻き端部311,312又は各後巻き端部321,322を、高さ方向Hの開口側H2から結線端部231Aの溝232内に差し込むときには、結線端部231Aにおける、溝232と反対側の端面に、高さ方向Hの奥側H1から受け冶具部82を対向させる。そして、保持冶具部81が各先巻き端部311,312又は各後巻き端部321,322を溝232内に差し込む際に結線端部231Aに加わる力を、受け冶具部82によって受ける。そして、保持冶具部81と受け冶具部82とによって、各先巻き端部311,312又は各後巻き端部321,322と結線端部231Aとを挟み込むようにして、各先巻き端部311,312又は各後巻き端部321,322が溝232内に差し込まれる。
【0083】
(二次ボビン42)
図5及び
図6に示すように、二次コイル4は、熱可塑性樹脂の成形品として形成された二次ボビン42の外周のスロット内に巻かれている。二次ボビン42及び二次コイル4は、一次ボビン2及び一次コイル3A,3Bの外周側に配置されている。換言すれば、一次ボビン2及び一次コイル3A,3Bは、二次ボビン42及び二次コイル4の中心側に挿通されている。二次ボビン42には、軸方向Lに並ぶ複数の鍔部421によって仕切られた複数の環状凹部422が、軸方向Lに並ぶスロットとして形成されている。
【0084】
二次ボビン42における、軸方向Lの高電圧側L1に位置する環状凹部422の底部423の厚みは、軸方向Lの低電圧側L2に位置する環状凹部422の底部423の厚みよりも大きく設定されている。環状凹部422の底部423の厚みは、軸方向Lの高電圧側L1に位置する環状凹部422ほど厚くなるようにすることができる。この場合には、二次コイル4における高電圧側L1の部位と一次コイル3A,3Bとの間の絶縁距離をできるだけ大きくすることができる。これにより、点火コイル1における高電圧耐久性が向上する。
【0085】
本形態においては、軸方向Lの最も(1番目に)高電圧側L1に位置する環状凹部422の底部423の厚みが最も大きくなっている。また、軸方向Lの2番目に高電圧側L1に位置する環状凹部422の底部423の厚みが次に大きくなっている。そして、軸方向Lの1番目及び2番目に高電圧側L1に位置する環状凹部422以外の残りの環状凹部422の底部423の厚みは、最も小さくなっている。なお、環状凹部422の厚みは、軸方向Lの低電圧側L2に行くに連れて段階的に小さくなるようにしてもよい。
【0086】
(一次メインコイル3A及び一次サブコイル3Bの巻線)
一次メインコイル3A及び一次サブコイル3Bを一次ボビン2に巻線する方法について説明する。本形態においては、
図16に示すように、一次ボビン2の巻線筒部21に対して一次メインコイル3Aが一次サブコイル3Bよりも先に巻かれる。一次メインコイル3Aが巻線される際には、取付冶具8によって、マグネットワイヤの端部が、一次ボビン2における、横方向Wの一方側の結線端子23Aの結線端部231Aの溝232内に差し込まれる。マグネットワイヤは、銅材料からなる導体が、ワニス等の樹脂によって被覆されたものである。
【0087】
次いで、一次ボビン2の周りにマグネットワイヤが相対的に回転し、一次ボビン2の巻線筒部21の環状凹部211内に一次メインコイル3Aを構成するためのマグネットワイヤが巻かれる。次いで、取付冶具8によって、マグネットワイヤの端部が、一次ボビン2における、横方向Wの他方側の結線端子23Aの結線端部231Aの溝232内に差し込まれる。こうして、一次メインコイル3Aが一次ボビン2の巻線筒部21の外周に配置される。
【0088】
次いで、
図7及び
図8に示すように、一次サブコイル3Bが巻線される際には、取付冶具8によって、マグネットワイヤの端部が、一次ボビン2における、横方向Wの一方側の結線端子23Aの結線端部231Aの溝232内に差し込まれる。次いで、一次ボビン2の周りにマグネットワイヤが相対的に回転し、一次ボビン2における一次メインコイル3Aの外周に、一次サブコイル3Bを構成するためのマグネットワイヤが巻かれる。次いで、取付冶具8によって、マグネットワイヤの端部が、一次ボビン2における、横方向Wの他方側の結線端子23Aの結線端部231Aの溝232内に差し込まれる。こうして、一次サブコイル3Bが一次メインコイル3Aの外周に配置される。
【0089】
なお、マグネットワイヤの2つの端部は、2つの先巻き端部311,312又は2つの後巻き端部321,322を構成する。また、一次メインコイル3Aの線径と一次サブコイル3Bの線径とが同じ場合には、次のように一次メインコイル3A及び一次サブコイル3Bが形成されてもよい。すなわち、まず、1本のマグネットワイヤが一次ボビン2の巻線筒部21に巻線されるとともに、このマグネットワイヤの適宜箇所が結線端部231Aの溝232に差し込まれる。そして、一次ボビン2に一次メインコイル3A及び一次サブコイル3Bの連続体が形成された後、このマグネットワイヤが中継ポイントTにおいて切断され、一次メインコイル3A及び一次サブコイル3Bが形成される。この場合には、一次コイル3A,3Bの生産性が向上する。
【0090】
(点火コイル1の製造)
点火コイル1が製造される際には、まず、
図17に示すように、一次メインコイル3A、一次サブコイル3B、一次ボビン2、二次コイル4、二次ボビン42、中心コア52、外周コア53、イグナイタ51、ダイオード25等が一体化されたコイル組付体10が作製される。
【0091】
具体的には、コイル組付体10が製造される際には、
図8~
図10に示すように、一次ボビン2に、一次メインコイル3A及び一次サブコイル3Bが巻き付けられるとともにダイオード25が配置され、一次ボビン組付体13が作製される。なお、中心コア52は、インサート成形によって一次ボビン2に配置されている。また、
図5及び
図6に示すように、二次ボビン42に二次コイル4が巻き付けられるとともに、二次コイル4の高電圧側L1の巻線端部412に導通するように、二次ボビン42に高電圧導体27が配置されて、二次ボビン組付体14が作製される。
【0092】
次いで、二次ボビン組付体14が一次ボビン組付体13の外周側に配置され、二次ボビン組付体14における二次コイル4の低電圧側巻線端部411がダイオード25を介して一次ボビン2の接続部22における結線端部231Bに取り付けられる。次いで、
図8、
図9及び
図17に示すように、一次ボビン組付体13に対して、高さ方向Hの奥側H1から相対的に外周コア53及びイグナイタ51が配置される。そして、イグナイタ51における各端子511と、一次ボビン組付体13における一次ボビン2のコネクタ部24の各端子241,242,243,244とが接続される。こうして、コイル組付体10が作製される。
【0093】
次いで、コイル組付体10における一次ボビン2のコネクタ部24がコイルケース54の切欠き部541に装着されるとともに、コイル組付体10がコイルケース54内に配置される。このとき、タワー部12を構成するコイルケース54の部分には、高電圧導体28を配置しておくことができる。次いで、
図1に示すように、コイルケース54内にコイル組付体10が配置されて形成された隙間Kに、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂による充填材55が充填される。こうして、コイル組付体10とコイルケース54とが一体化され、点火コイル1が製造される。
【0094】
(作用効果)
本形態の点火コイル1においては、一次メインコイル3Aの各先巻き端部311,312及び一次サブコイル3Bの各後巻き端部321,322を、一次ボビン2の接続部22に取り付ける位置及び向きについて工夫をしている。具体的には、一次ボビン2の巻線筒部21における最も内周側に位置するコイル部分を含む一次メインコイル3Aを、一次ボビン2に先に巻かれた先巻きコイルとし、一次サブコイル3Bを、一次ボビン2に後に巻かれた後巻きコイルとする。
【0095】
そして、点火コイル1において、巻線筒部21の中心軸Oから一次メインコイル3Aの各先巻き端部311,312までの最短距離r1は、巻線筒部21の中心軸Oから一次サブコイル3Bの各後巻き端部321,322までの最短距離r2よりも短い。換言すれば、点火コイル1において、一次メインコイル3Aの各先巻き端部311,312は、一次サブコイル3Bの各後巻き端部321,322よりも、一次ボビン2の径方向Rの内周側に位置する。
【0096】
一次メインコイル3Aの各先巻き端部311,312及び一次サブコイル3Bの各後巻き端部321,322は、一次ボビン2の巻線筒部21から接続部22の横方向Wの両側に引き出されている。このとき、一次メインコイル3Aの各先巻き端部311,312及び一次サブコイル3Bの各後巻き端部321,322の取り回し及び取り付けを適切に行うためには、各先巻き端部311,312と各後巻き端部321,322との干渉を避けることが重要になる。また、一次ボビン2の接続部22の結線端部231Aに先に取り付けられた各先巻き端部311,312が、一次ボビン2の接続部22の結線端部231Aに後から取り付けられる各後巻き端部321,322の取り回し及び取り付けの障害にならないようにすることが重要である。
【0097】
このために、本形態の点火コイル1においては、一次メインコイル3Aの各先巻き端部311,312は、一次ボビン2の接続部22において、中心軸Oに近い内周側に配置された結線端部231Aに取り付けられている。また、一次サブコイル3Bの各後巻き端部321,322は、一次ボビン2の接続部22において、各先巻き端部311,312が取り付けられた結線端部231Aに比べて中心軸Oから遠い外周側に配置された結線端部231Aに取り付けられている。そして、一次メインコイル3Aの各先巻き端部311,312は、一次サブコイル3Bの各後巻き端部321,322よりも、一次ボビン2の径方向Rの内周側に位置する。
【0098】
これにより、一次ボビン2の接続部22の各結線端部231Aに先巻きコイルとしての一次メインコイル3Aの各先巻き端部311,312が取り付けられた後に、この一次ボビン2の接続部22の各結線端部231Aに後巻きコイルとしての一次サブコイル3Bの各後巻き端部321,322が取り付けられる際に、各先巻き端部311,312と各後巻き端部321,322とが交差しないようにすることができる。また、各後巻き端部321,322が、各先巻き端部311,312及び各先巻き端部311,312が取り付けられた結線端部231Aに干渉しないようにすることができる。そして、各先巻き端部311,312及び各先巻き端部311,312が取り付けられた結線端部231Aが、各後巻き端部321,322の取り回し及び取り付けの障害にならないようにすることができる。
【0099】
また、前述したように、本形態のすべての結線端子23Aにおける結線端部231Aの溝232は、高さ方向Hの開口側H2に向けて開口している。また、すべての結線端子23Aは、一次メインコイル3A及び一次サブコイル3Bとコネクタ部24との間に配置されている。これにより、結線端子23Aの溝232への各先巻き端部311,312及び各後巻き端部321,322の取り回し及び取り付けが容易である。
【0100】
それ故、本形態の点火コイル1によれば、一次ボビン2の接続部22への一次メインコイル3Aの各先巻き端部311,312及び一次サブコイル3Bの各後巻き端部321,322の取り回し及び取り付けの作業性を改善することができる。
【0101】
<実施形態2>
本形態は、一次メインコイル3Aの各先巻き端部311,312及び一次サブコイル3Bの各後巻き端部321,322が、一次ボビン2の接続部22に取り付けられる位置が、実施形態1の場合と異なる点火コイル1について示す。本形態においては、
図18に示すように、各先巻き端部311,312の高さ方向Hにおける位置と、各後巻き端部321,322の高さ方向Hにおける位置とが、互いに異なっている。より具体的には、各先巻き端部311,312及び各後巻き端部321,322は、巻線筒部21の中心軸Oの位置よりも高さ方向Hの開口側H2に位置するとともに、先巻きコイルとしての一次メインコイル3Aの各先巻き端部311,312は、後巻きコイルとしての一次サブコイル3Bの各先巻き端部311,312よりも高さ方向Hの奥側H1、換言すれば径方向Rの内周側に位置する。
【0102】
本形態の一次ボビン2における接続部22の結線端部231Aの溝232は、横方向Wの外側に向けて開口している。換言すれば、結線端部231Aの溝232は、横方向Wの外側から内側へ切り込む状態で形成されている。そして、一次メインコイル3Aの各先巻き端部311,312及び一次サブコイル3Bの各後巻き端部321,322は、横方向Wの外側から内側に向けて結線端部231Aの溝232に差し込まれる。各先巻き端部311,312又は各後巻き端部321,322を差し込む結線端部231Aの横方向Wの内側には、取付冶具8の受け冶具部82が配置されるスペースが形成されている。
【0103】
本形態の各先巻き端部311,312及び各後巻き端部321,322も、巻線筒部21の中心軸Oを介する横方向Wの両側に並んで配置されている。また、各先巻き端部311,312及び各後巻き端部321,322は、巻線筒部21の中心軸Oよりも高さ方向Hの開口側H2の位置に配置されている。換言すれば、各先巻き端部311,312及び各後巻き端部321,322は、巻線筒部21の中心軸Oを含む横方向Wに平行な平面よりも、高さ方向Hの開口側H2の位置に配置されている。また、各先巻き端部311,312及び各後巻き端部321,322は、接続部22に設けられた結線端子23Aの結線端部231Aに取り付けられている。
【0104】
結線端部231Aの溝232の形成方向が横方向Wに向けられている場合には、各先巻き端部311,312及び各先巻き端部311,312が取り付けられた結線端部231Aと、各後巻き端部321,322及び各後巻き端部321,322が取り付けられた結線端部231Aとは、高さ方向Hにずれて配置されている。換言すれば、巻線筒部21の中心軸Oから各先巻き端部311,312の線材中心までの高さ方向Hの成分における距離h1は、巻線筒部21の中心軸Oから各後巻き端部321,322の線材中心までの高さ方向Hの成分における距離h2よりも短い。また、各先巻き端部311,312が取り付けられた結線端部231Aと、各後巻き端部321,322が取り付けられた結線端部231Aとは、高さ方向Hに互いにずれた位置に配置されている。なお、距離h1,h2は、中心軸Oを含む横方向Wに平行な平面から、各先巻き端部311,312又は各後巻き端部321,322までの高さ方向Hの距離として示される。距離h1,h2は、高さ方向距離h1,h2ということもできる。
【0105】
結線端部231Aの溝232の形成方向が横方向Wに向けられている場合に、各先巻き端部311,312と各後巻き端部321,322とが少なくとも高さ方向Hにずれた位置に配置されていることにより、取付冶具8によって、各先巻き端部311,312又は各後巻き端部321,322が結線端部231Aの溝232内に差し込まれる際に、各先巻き端部311,312、各後巻き端部321,322及び結線端部231Aのいずれも取付冶具8に干渉しないようにすることができる。各先巻き端部311,312が取り付けられた結線端部231Aと、各後巻き端部321,322が取り付けられた結線端部231Aとが、高さ方向Hにずれている場合についても同様の作用効果が得られる。
【0106】
各先巻き端部311,312と各後巻き端部321,322とは、高さ方向Hにずれるとともに、軸方向L及び横方向Wの少なくとも一方にずれた位置に配置することができる。この場合には、各先巻き端部311,312と各後巻き端部321,322との軸方向L及び横方向Wの少なくとも一方の位置がずれていることにより、各先巻き端部311,312、各後巻き端部321,322又は結線端部231Aと取付冶具8との干渉をより適切に避けることができる。各先巻き端部311,312が取り付けられた結線端部231Aと、各後巻き端部321,322が取り付けられた結線端部231Aとが、軸方向L及び横方向Wの少なくとも一方にずれている場合についても同様の作用効果が得られる。
【0107】
本形態の点火コイル1における、その他の構成、作用効果等については、実施形態1の場合と同様である。また、本形態の点火コイル1においても、実施形態1に示した符号と同一の符号が示す構成要素は、実施形態1の場合と同様である。
【0108】
<実施形態3>
本形態は、一次ボビン2に対する一次メインコイル3Aと一次サブコイル3Bとの配置位置を、実施形態1の場合と変更した点火コイル1について示す。本形態においては、
図19及び
図20に示すように、一次メインコイル3Aの巻線部30は、一次ボビン2の巻線筒部21の外周における軸方向Lの低電圧側L2に片寄って配置されている。一次サブコイル3Bの巻線部30は、一次ボビン2の巻線筒部21の外周における、一次メインコイル3Aよりも軸方向Lの高電圧側L1の位置に配置されている。
【0109】
また、一次ボビン2の巻線筒部21の外周であって、軸方向Lの両側の鍔部212の間には、一次メインコイル3Aを巻く軸方向Lの位置と一次サブコイル3Bを巻く軸方向Lの位置とを仕切る中間鍔部214が設けられている。中間鍔部214は、環状凹部211の外径よりも拡径して形成されている。
【0110】
また、
図19及び
図20に示すように、本形態においては、一次サブコイル3Bは、一次ボビン2に対して先に巻かれた先巻きコイルを構成し、一次メインコイル3Aは、一次ボビン2に対して後に巻かれた後巻きコイルを構成する。そして、巻線筒部21の中心軸Oから一次サブコイル3Bの各先巻き端部311X,312Xの線材中心までの最短距離r1は、巻線筒部21の中心軸Oから一次メインコイル3Aの各後巻き端部321X,322Xの線材中心までの最短距離r2よりも短い。
【0111】
一次ボビン2の巻線筒部21の外周、軸方向Lの低電圧側L2の鍔部212及び中間鍔部214には、一次サブコイル3Bの各リード部310を軸方向Lに沿って収容するための溝215が形成されている。一次サブコイル3Bの各リード部310は、溝215に配置された状態で一次メインコイル3Aの内周側を通過して、接続部22の結線端部231Aまで引き出されている。
【0112】
本形態の先巻きコイルを後巻きコイルと判別するための、一次ボビン2の巻線筒部21における最も内周側に位置するコイル部分は、一次サブコイル3Bにおける、溝215に配置されたリード部310とする。
【0113】
また、本形態においては、一次サブコイル3Bの径方向Rにおける巻線高さは、一次メインコイル3Aの径方向Rにおける巻線高さよりも低い。そして、一次サブコイル3Bと二次コイル4の高電圧側L1の部位との間の径方向Rの絶縁距離をできるだけ大きくすることができる。これにより、点火コイル1における高電圧耐久性が向上する。
【0114】
また、中心コア52の軸方向Lの低電圧側L2の端面と外周コア53の内側面との間に永久磁石521が配置されており、一次メインコイル3Aは、永久磁石521が配置された軸方向Lの低電圧側L2に配置されている。中心コア52及び外周コア53による閉磁路の軸方向Lにおいて、永久磁石521が配置された部位の付近の磁束密度は、周囲の他の部位の磁束密度に比べて高くなっている。そのため、一次メインコイル3Aが永久磁石521に近い位置に配置されることにより、一次メインコイル3Aのインダクタンスをより大きくすることができる。これに伴い、二次コイル4による発生電圧性能を高くすることができる。
【0115】
また、
図21及び
図22に示すように、一次サブコイル3Bが一次メインコイル3Aの軸方向Lの高電圧側L1に配置された構成において、一次メインコイル3Aによって、一次ボビン2に対して先に巻かれた先巻きコイルを構成し、一次サブコイル3Bによって、一次ボビン2に対して後に巻かれた後巻きコイルを構成してもよい。この場合には、一次サブコイル3Bの一対のリード部310が、一次メインコイル3Aの外周側において軸方向Lに平行に配置され、各リード部310の各後巻き端部321,322が、接続部22の結線端子23Aの結線端部231Aに取り付けられる。そして、巻線筒部21の中心軸Oから一次メインコイル3Aの各先巻き端部311,312の線材中心までの最短距離r1は、巻線筒部21の中心軸Oから一次サブコイル3Bの各後巻き端部321,322の線材中心までの最短距離r2よりも短い。
【0116】
この場合には、一次ボビン2の巻線筒部21における最も内周側に位置するコイル部分は、一次メインコイル3Aの巻線部30及び一次サブコイル3Bの巻線部30の両方に含まれることになる。そのため、この場合には、一次サブコイル3Bの一対のリード部310が、一次メインコイル3Aの巻線部30の径方向Rの外周側において軸方向Lに平行に配置されていることから、一次ボビン2の軸方向Lの低電圧側L2に位置するコイルである一次メインコイル3Aが先巻きコイルであると判断する。
【0117】
本形態においては、一次ボビン2の巻線筒部21の外周における軸方向Lの高電圧側L1に配置された、先巻きコイルとしての一次サブコイル3Bの各後巻き端部321,322を、一次ボビン2の接続部22に引き出す位置に工夫をし、一次サブコイル3Bの各後巻き端部321,322と一次メインコイル3Aの各先巻き端部311,312との干渉を避けることができる。
【0118】
本形態の点火コイル1における、その他の構成、作用効果等については、実施形態1,2の場合と同様である。また、本形態の点火コイル1においても、実施形態1,2に示した符号と同一の符号が示す構成要素は、実施形態1,2の場合と同様である。
【0119】
<実施形態4>
本形態は、実施形態1~3とは異なる点火コイル1の種々の形態について示す。
実施形態1の点火コイル1の一次メインコイル3A及び一次サブコイル3Bにおいては、先巻きコイルとしての一次メインコイル3Aの各先巻き端部311,312は、後巻きコイルとしての一次サブコイル3Bの各後巻き端部321,322よりも軸方向Lの低電圧側L2に位置する。一方、
図23及び
図24に示すように、先巻きコイルとしての一次メインコイル3Aの各先巻き端部311,312は、後巻きコイルとしての一次サブコイル3Bの各後巻き端部321,322よりも軸方向Lの高電圧側L1に位置してもよい。
【0120】
また、二次コイル4による発生電圧性能が確保できれば、一次メインコイル3Aの線径と一次サブコイル3Bの線径とは、同じであっても異なっていてもよい。一次メインコイル3Aの線径と一次サブコイル3Bの線径とが同じである場合には、一次メインコイル3A及び一次サブコイル3Bの各巻線を連続して行うことができる。
【0121】
また、一次メインコイル3A及び一次サブコイル3Bは、一次ボビン2を用いずに巻線が可能な自己融着銅線によって形成し、一次ボビン2を廃止することもできる。この場合には、一次メインコイル3A及び一次サブコイル3Bは中心コア52の外周側に配置される。また、この場合には、一次メインコイル3Aの各端部及び一次サブコイル3Bの各端部が取り付けられる、結線端子23Aの結線端部231Aは、コネクタ部24と一体化して設けることができる。
【0122】
また、二次コイル4による発生電圧性能が確保できれば、中心コア52と外周コア53との間に配置される永久磁石521は使用しないこともできる。
【0123】
本形態の点火コイル1における、その他の構成、作用効果等については、実施形態1~3の場合と同様である。また、本形態の点火コイル1においても、実施形態1~3に示した符号と同一の符号が示す構成要素は、実施形態1~3の場合と同様である。
【0124】
本発明は、各実施形態のみに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲においてさらに異なる実施形態を構成することが可能である。また、本発明は、様々な変形例、均等範囲内の変形例等を含む。さらに、本発明から想定される様々な構成要素の組み合わせ、形態等も本発明の技術思想に含まれる。
【0125】
以下に、形態例を示す。
項1
絶縁材からなる、巻線筒部(21)、及び前記巻線筒部に繋がるとともに前記巻線筒部とコネクタ部(24)との間に配置された接続部(22)を有する一次ボビン(2)と、
前記巻線筒部に別々に巻かれた一次メインコイル(3A)及び一次サブコイル(3B)を有する一次コイル(3A,3B)と、
前記一次コイルと同心状に重なって配置された二次コイル(4)と、を備え、
前記一次メインコイル及び前記一次サブコイルのうちの、前記巻線筒部における最も内周側に位置するコイル部分を含む一方のコイルを先巻きコイルとし、他方のコイルを後巻きコイルとしたとき、
前記先巻きコイルにおける一対の端部である各先巻き端部(311,312)と、前記後巻きコイルにおける一対の端部である各後巻き端部(321,322)とは、前記接続部に取り付けられており、
前記巻線筒部の中心軸(O)から前記各先巻き端部までの最短距離(r1)は、前記巻線筒部の中心軸から前記各後巻き端部までの最短距離(r2)よりも短い、内燃機関用点火コイル(1)。
【0126】
項1の内燃機関用点火コイルにおいて、巻線筒部の中心軸から各先巻き端部までの最短距離は、巻線筒部の中心軸から各後巻き端部までの最短距離よりも短い。換言すれば、内燃機関用点火コイルにおいて、先巻きコイルの各先巻き端部は、後巻きコイルの各後巻き端部よりも、一次ボビンの径方向の内周側に位置する。
これにより、一次ボビンの接続部に先巻きコイルの各先巻き端部が取り付けられた後に、この一次ボビンの接続部に後巻きコイルの各後巻き端部を取り付ける際に、各先巻き端部と各後巻き端部とが交差しないようにすることができる。また、各先巻き端部が各後巻き端部の取り付けの障害にならないようにすることができる。
それ故、項1の内燃機関用点火コイルによれば、一次ボビンの接続部への一次メインコイル及び一次サブコイルの両端部の取り付けの作業性を改善することができる。
【0127】
項2
前記内燃機関用点火コイルは、前記一次ボビン、前記一次コイル及び前記二次コイルを含むコイル本体部(11)と、前記コイル本体部から突出され、スパークプラグ(61)を装着するためのタワー部(12)とを有しており、
前記巻線筒部の中心軸に平行な方向を軸方向(L)、前記軸方向に直交するとともに前記コイル本体部と前記タワー部とが並ぶ方向を高さ方向(H)、及び前記軸方向及び前記高さ方向の両方に直交する方向を横方向(W)としたとき、
前記各先巻き端部及び前記各後巻き端部は、前記巻線筒部の中心軸よりも前記高さ方向の前記タワー部から離れる側に配置されており、
前記各先巻き端部及び前記各後巻き端部は、前記中心軸を介する前記横方向の両側に並んで配置されており、
前記中心軸から前記各先巻き端部までの前記横方向の成分における距離(w1)は、前記中心軸から前記各後巻き端部までの前記横方向の成分における距離(w2)よりも短い、項1に記載の内燃機関用点火コイル。
項3
前記各先巻き端部及び前記各後巻き端部は、前記接続部に設けられた結線端子(23A)の結線端部(231A)に取り付けられており、
前記各先巻き端部が取り付けられた前記結線端部と、前記各後巻き端部が取り付けられた前記結線端部とは、前記横方向に互いにずれた位置に配置されている、項2に記載の内燃機関用点火コイル。
項4
前記各先巻き端部の前記軸方向における位置と、前記各後巻き端部の前記軸方向における位置とは、互いに異なっている、項2又は3に記載の内燃機関用点火コイル。
項5
前記各先巻き端部の前記高さ方向における位置と、前記各後巻き端部の前記高さ方向における位置とは、互いに異なっている、項2~4のいずれか1項に記載の内燃機関用点火コイル。
項6
前記内燃機関用点火コイルは、前記一次ボビン、前記一次コイル及び前記二次コイルを含むコイル本体部(11)と、前記コイル本体部から突出され、スパークプラグ(61)を装着するためのタワー部(12)とを有しており、
前記巻線筒部の中心軸に平行な方向を軸方向(L)、前記軸方向に直交するとともに前記コイル本体部に対して前記タワー部が形成された一方向を高さ方向(H)、及び前記軸方向及び前記高さ方向の両方に直交する方向を横方向(W)としたとき、
前記各先巻き端部及び前記各後巻き端部は、前記巻線筒部の中心軸よりも前記高さ方向の前記タワー部から離れる側に配置されており、
前記各先巻き端部及び前記各後巻き端部は、前記中心軸を介する前記横方向の両側に並んで配置されており、
前記中心軸から前記各先巻き端部までの前記高さ方向の成分における距離(h1)は、前記中心軸から前記各後巻き端部までの前記高さ方向の成分における距離(h2)よりも短い、項1に記載の内燃機関用点火コイル。
項7
前記各先巻き端部及び前記各後巻き端部は、前記接続部に設けられた結線端子(23A)の結線端部(231A)に取り付けられており、
前記各先巻き端部が取り付けられた前記結線端部と、前記各後巻き端部が取り付けられた前記結線端部とは、前記高さ方向に互いにずれた位置に配置されている、項6に記載の内燃機関用点火コイル。
項8
前記各先巻き端部の前記軸方向における位置と、前記各後巻き端部の前記軸方向における位置とは、互いに異なっている、項6又は7に記載の内燃機関用点火コイル。
項9
前記各先巻き端部の前記横方向における位置と、前記各後巻き端部の前記横方向における位置とは、互いに異なっている、項6~8のいずれか1項に記載の内燃機関用点火コイル。
項10
前記一次コイル及び前記二次コイルの内周側には、軟磁性材料からなる中心コア(52)が配置されており、
前記一次コイル及び前記二次コイルの外周側には、軟磁性材料からなって前記中心コアとともに閉磁路を形成する外周コア(53)が配置されており、
前記中心コアにおける、前記巻線筒部の中心軸に平行な軸方向の前記接続部に近い側の端面と、前記外周コアの内側面との間には、永久磁石(521)が配置されており、
前記一次メインコイルは、前記巻線筒部に巻かれており、
前記一次サブコイルは、前記一次メインコイルの外周であって前記軸方向の前記接続部に近い側に片寄って巻かれている、項2~9のいずれか1項に記載の内燃機関用点火コイル。
【符号の説明】
【0128】
1 内燃機関用点火コイル(点火コイル)
2 一次ボビン
21 巻線筒部
22 接続部
3A 一次メインコイル(一次コイル)
3B 一次サブコイル(一次コイル)
311,312 先巻き端部
321,322 後巻き端部
4 二次コイル
51 イグナイタ
60 電子制御装置
61 スパークプラグ