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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】打込機
(51)【国際特許分類】
   B25C 1/06 20060101AFI20240312BHJP
   B25C 1/04 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
B25C1/06
B25C1/04
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022505040
(86)(22)【出願日】2021-01-29
(86)【国際出願番号】 JP2021003269
(87)【国際公開番号】W WO2021176909
(87)【国際公開日】2021-09-10
【審査請求日】2022-08-17
(31)【優先権主張番号】P 2020037674
(32)【優先日】2020-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005094
【氏名又は名称】工機ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安富 俊徳
【審査官】山村 和人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/198670(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0126527(US,A1)
【文献】特開2016-209942(JP,A)
【文献】国際公開第2016/199670(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/180082(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25C 1/00 - 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
止具が供給される射出部と、
前記射出部へ供給された前記止具を打撃する第1方向、及び前記第1方向とは逆の第2方向へ作動される打撃部と、
前記打撃部に設けられたラックと、
回転可能に設けられた回転部材と、
前記回転部材に前記回転部材の回転方向で間隔をおいて設けられ、かつ、前記回転部材の回転によって前記ラックにそれぞれ係合及び解放される複数の係合部材と、
を備えた打込機であって、
前記複数の係合部材は、前記ラックに係合可能な第1位置と、前記ラックに係合不可能な第2位置と、の間で前記回転部材に対する位置をそれぞれ変更可能であり、
前記複数の係合部材は、
前記第1位置に位置し、前記ラックに係合されて前記回転部材の回転力を前記打撃部に伝達することにより、前記打撃部を前記第2方向へ作動させ、かつ、前記ラックから解放されることにより、前記打撃部を前記第1方向に作動させる第1係合部材と、
前記回転部材の回転方向で前記第1係合部材の後方に位置する第2係合部材と、を含み、
前記第1係合部材が前記ラックから解放されて前記打撃部が前記第1方向に作動する場合に、前記第2係合部材が前記第2位置に位置する、打込機。
【請求項2】
前記第1位置に位置する前記複数の係合部材同士は、互いに等間隔である、請求項1記載の打込機。
【請求項3】
前記複数の係合部材の全部が、前記第1位置と前記第2位置との間で、それぞれ移動可能である、請求項1または2記載の打込機。
【請求項4】
前記打撃部は、下死点から前記第2方向に作動されて上死点へ至り、かつ、前記上死点から前記第1方向に作動され、
前記回転部材は、前記第1係合部材が前記ラックに係合されて前記打撃部が前記下死点から前記第2方向に作動された時点から、前記打撃部が前記上死点に至り、かつ、前記第1係合部材が前記ラックから解放されて前記打撃部が前記第1方向に作動される時点までの回転量が1回転より多い、請求項1乃至3の何れか1項記載の打込機。
【請求項5】
前記ラックは、前記打撃部の作動方向に間隔をおいて設けられた複数の突起を有し、
前記複数の係合部材の数は、前記複数の突起の数より少ない請求項1乃至4の何れか1項記載の打込機。
【請求項6】
前記打撃部を前記第1方向へ作動させる駆動部が、更に設けられている、請求項1乃至5の何れか1項記載の打込機。
【請求項7】
前記第2係合部材を、前記第1位置から前記第2位置へ移動させる移動部材が、更に設けられている、請求項1乃至6の何れか1項記載の打込機。
【請求項8】
前記複数の係合部材の全部を、前記第2位置から前記第1位置へそれぞれ移動させる位置変更部材が、更に設けられている、請求項3記載の打込機。
【請求項9】
前記移動部材は、前記複数の係合部材のそれぞれに接触及び離間するように作動可能な第1接触部材を有し、
前記第1接触部材は、前記第2係合部材に接触することにより、前記第2係合部材を前記第1位置から前記第2位置へ移動させる、請求項7記載の打込機。
【請求項10】
前記移動部材は、前記打撃部に接触して作動されることにより、前記第1接触部材を作動させる第2接触部材を、更に有する、請求項9記載の打込機。
【請求項11】
前記複数の係合部材は、前記回転部材の回転中心線に沿って配置されたピンを含む、請求項1乃至10の何れか1項記載の打込機。
【請求項12】
前記回転部材は、前記複数の係合部材が前記第1位置と前記第2位置とで移動することをガイドする複数のガイド部を有し、
前記複数のガイド部は、前記複数の係合部材をそれぞれ前記第1位置または前記第2位置に保持するストッパを、それぞれ有する、請求項1乃至11の何れか1項記載の打込機。
【請求項13】
前記ストッパによって前記第1位置または前記第2位置に保持されている前記複数の係合部材を、それぞれ前記第2位置から前記第1位置へ移動させるリリース部が、更に設けられている、請求項12記載の打込機。
【請求項14】
止具が供給される射出部と、
前記射出部へ供給された前記止具を打撃する第1方向、及び前記第1方向とは逆の第2方向へ作動される打撃部と、
前記打撃部に設けられたラックと、
回転可能に設けられた回転部材と、
前記回転部材に前記回転部材の回転方向で間隔をおいて設けられ、かつ、前記ラックに対してそれぞれ係合及び解放される複数の係合部材と、
を備えた打込機であって、
前記複数の係合部材の全部が、前記ラックに係合されて前記回転部材の回転力を前記打撃部に伝達することにより、前記打撃部を前記第2方向へ作動させる第1位置と、前記回転部材における位置が前記第1位置と異なり、前記ラックから解放されて前記回転部材の回転力を前記打撃部に伝達しない第2位置との間で、それぞれ移動可能である、打込機。
【請求項15】
記打撃部は、前記複数の係合部材が前記ラックと係合することで、下死点から前記第2方向へ作動されて上死点へ至り、かつ、前記複数の係合部材が前記ラックから解放されることで、前記上死点から前記第1方向へ作動され、
第1の打撃動作において、前記打撃部が前記上死点から前記第1方向へ作動される前に最後に前記ラックと係合及び解放される第1の最後の係合部材が、前記第1の打撃動作に続く第2の打撃動作において、前記打撃部が前記上死点から前記第1方向へ作動される前に最後に前記ラックと係合及び解放される第2の最後の係合部材と異なる、請求項1または14記載の打込機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、止具を打撃する打撃部を備えた打込機に関する。
【背景技術】
【0002】
止具を打撃する打撃部を備えた打込機の一例が、特許文献1に記載されている。特許文献1に記載された打込機は、電動モータ、打撃部、蓄圧室、回転部材、射出部、マガジン及びトリガを有する。打撃部は、蓄圧室の圧力を受けるピストンと、ピストンに固定されたドライバブレードと、を有する。打撃部は、第1方向及び第2方向に作動可能である。ドライバブレードは、ラックを有する。
【0003】
回転部材は、回転方向に沿って設けた複数の係合部材を有する。回転部材はガイド孔を有し、複数の係合部材の1個は、ガイド孔に設けられている。ガイド孔に設けられた係合部材は、回転部材の回転方向で最後部に設けられている。ガイド孔に設けられた係合部材は、ガイド孔内で回転部材の径方向に移動可能である。また、金属製のスプリングが設けられ、スプリングは、ガイド孔に設けられている係合部材を、回転部材の径方向で外側に向けて付勢する。回転部材は、電動モータによって回転される。マガジンから射出部に釘が供給される。
【0004】
特許文献1に記載された打込機は、打撃部が停止している状態でトリガに操作力が付加されると、電動モータが回転される。すると、回転部材に設けられた複数の係合部材が、ドライバブレードに設けられたラックにそれぞれ単独で係合及び離間され、打撃部が第2方向に作動される。複数の係合部材の全てがラックから離間されると、打撃部は、蓄圧室の圧力で第1方向に向けて作動される。射出部に供給された釘は、ドライバブレードによって打撃される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2016-199670号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
複数の係合部材がそれぞれ単独でラックに係合されて付加が増加すると、ガイド孔に設けられている係合部材は、回転部材の径方向に移動して負荷が軽減される。本願発明者は、ガイド孔に設けられていない他の係合部材は負荷を軽減することができない、という課題を認識した。
【0007】
本発明の目的は、複数の係合部材の何れにおいても負荷を軽減可能な打込機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態の打込機は、止具が供給される射出部と、前記射出部へ供給された前記止具を打撃する第1方向、及び前記第1方向とは逆の第2方向へ作動される打撃部と、前記打撃部に設けられたラックと、回転可能に設けられた回転部材と、前記回転部材に前記回転部材の回転方向で間隔をおいて設けられ、かつ、前記回転部材の回転によって前記ラックにそれぞれ係合及び解放される複数の係合部材と、を備えた打込機であって、前記複数の係合部材は、前記回転部材に対する位置をそれぞれ変更可能であり、前記複数の係合部材は、前記ラックに係合されて前記回転部材の回転力を前記打撃部に伝達することにより、前記打撃部を前記第2方向へ作動させること可能な第1位置に位置する第1係合部材と、前記第1係合部材が前記ラックから解放されて前記打撃部が前記第1方向に作動する場合に、前記回転部材の回転方向で前記第1係合部材の後方に位置し、かつ、前記ラックに係合不可能な第2位置に位置する第2係合部材と、を含む。
【発明の効果】
【0009】
一実施形態の打込機は、複数の係合部材は、それぞれ負荷に応じて第1位置から第2位置へ移動可能である。したがって、複数の係合部材の何れにおいても負荷を軽減可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態である釘打機を示す側面断面図である。
図2】釘打機に設けられた打撃部の全体構成を示す正面図である。
図3図2の打撃部が待機位置で停止されている状態を示す断面図である。
図4】釘打機が有するホイールの平面図である。
図5】打撃部が下降する例を示す断面図である。
図6】(A)は、図4のII-II線における断面図、(B)は、図4のIII -III 線における断面図である。
図7】釘打機の制御系統を示すブロック図である。
図8】(A)打撃部が下死点にある例を示す断面図、(B)は、打撃部が下死点から上昇される例を示す断面図である。
図9】調整機構の他の例を示し、(A)は、打撃部が上死点に到達した状態の断面図、(B)打撃部が下降する例を示す断面図である。
図10】釘打機に設けられたホイールの他の例を示す底面図である。
図11】(A)は、図10のホイールを有する釘打機の打撃部が待機位置で停止している例を示す正面図、(B)は、図5の打撃部が上死点に到達した例を示す正面図である。
図12】(A)は、図10のIV-IV線における断面図、(B)は、図10のV-V線における断面図である。
図13】(A)は、打撃部が下降する過程を示す正面図、(B)は、打撃部が下死点にある例を示す正面図である。
図14】打撃部の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の打込機に含まれるいくつかの実施形態のうち、代表的な実施形態について図面を参照して説明する。
【0012】
図1には、打込機の一例である釘打機10が示されている。釘打機10は、ハウジング11、打撃部12、ノーズ部13、電源部14、電動モータ15、減速機構16、ホイール39及び蓄圧容器18を有する。ハウジング11は、シリンダケース19と、シリンダケース19に接続されたハンドル20と、シリンダケース19に接続されたモータケース21と、ハンドル20及びモータケース21に接続された装着部22と、を有する。電源部14は、装着部22に取り付け及び取り外しが可能である。電動モータ15はモータケース21内に配置されている。蓄圧容器18は、キャップ23と、キャップ23が取り付けられるホルダ24と、を有する。ヘッドカバー25がシリンダケース19に取り付けられており、蓄圧容器18は、シリンダケース19内及びヘッドカバー25内に亘って配置されている。
【0013】
シリンダ27がシリンダケース19内に収容されている。シリンダ27は金属製、例えば、アルミニウム製または鉄製である。圧力室26が、蓄圧容器18内及びシリンダ27内に亘って形成される。圧力室26に圧縮性流体が充填されている。圧縮性流体は、空気の他、不活性ガスを用いることができる。不活性ガスは、一例として、窒素ガス、希ガスを含む。本実施形態では、圧力室26に空気が充填されている例を説明する。ノーズ部13は、シリンダケース19の内外に亘って配置されている。ノーズ部13は、バンパ支持部50、射出部51及び筒部52を有する。バンパ支持部50は筒形状であり、バンパ支持部50は、バンパ34を支持している。バンパ34は環状であり、かつ、合成ゴム製である。
【0014】
打撃部12は、ハウジング11の内部から外部に亘って配置されている。打撃部12は、ピストン28及びドライバブレード29を有する。ピストン28はシリンダ27内に設けられている。打撃部12は、仮想線A1に沿った方向に作動可能である。仮想線A1は、シリンダ27の中心線を示す直線である。仮想線A1は、工学上の仮想線であり、仮想線A1は、物理的に存在はしていない。ピストン28の外周面に、環状のシール部材30が取り付けられている。シール部材30は、合成ゴム製である。シール部材30は、シリンダ27の内周面に接触してシール面を形成する。さらに、ホイール39が、筒部52内に設けられている。ホイール39は、回転軸40に取り付けられており、回転軸40は、軸受57,58によって回転可能に支持されている。回転軸40及びホイール39は、回転中心線B1を中心として回転可能である。
【0015】
仮想線A1を含む平面内で釘打機10を側面視すると、回転中心線B1と仮想線A1とが交差、例えば、90度の角度で交差されている。また、回転中心線B1に対して垂直な平面内である図2において、回転中心線B1と仮想線A1とが離間して配置されている。ドライバブレード29は、例えば金属製であり、ドライバブレード29は、図2に示されたラック31及び接触部33を有する。ラック31は、複数、一例として9個の突起32によって構成されている。9個の突起32は、仮想線A1に沿った方向に間隔をおいて、一例として均等な間隔をおいて配置されている。接触部33は、ドライバブレード29の側面から、回転中心線B1に沿って方向に突出されている。接触部33は、ドライバブレード29のうち、ラック31が設けられている縁とは反対に位置する縁の近くに設けられている。接触部33は、打撃部12の作動方向で、ピストン28から最も離間された位置の突起32部に対応する位置から、ドライバブレード29の先端に亘って設けられている。
【0016】
打撃部12の作動方向における位置は、上死点及び下死点を含む。打撃部12の上死点は、図1に破線で示すように、仮想線A1に沿った方向で、ピストン28の端部と、シリンダ27の端部とが略同じ位置にある状態である。打撃部12の下死点は、図1に実線で示されるように、ピストン28がバンパ34に接触した状態である。なお、本実施形態では、打撃部12が上死点と下死点との間に位置する状態を、待機位置として取り扱う。打撃部12の待機位置は、ピストン28がバンパ34から離間され、かつ、図1でピストン28の端部は、シリンダ27の端部よりも下方にある状態である。
【0017】
図3は、図2の要部を拡大したものであり、図4は、ホイール39の平面図である。ブレードラッチ35及びホイールラッチ36,37が、ハウジング11内に設けられている。ブレードラッチ35、ホイールラッチ36,37は、調整機構77を構成している。ブレードラッチ35は、例えば、金属製または合成樹脂製である。ブレードラッチ35は、可動軸38に回動不能に固定されている。ブレードラッチ35及び可動軸38は、共に回転中心線B3を中心として所定の角度範囲内で作動可能である。回転中心線B3は、可動軸38の中心を通る仮想線である。回転中心線B1に対して垂直な平面である図3において、可動軸38と、ホイール39の回転軸40との間に、ドライバブレード29が配置されている。仮想線A1に沿った方向で、ホイール39の配置位置内に、可動軸38が配置されている。
【0018】
図4に示すように回転中心線B1に沿った方向で、ブレードラッチ35の配置範囲の少なくとも一部は、ドライバブレード29の接触部33の配置範囲の少なくとも一部と重なっている。ハウジング11にストッパ41が設けられている。ストッパ41は、金属製または合成樹脂製である。ブレードラッチ35は、スプリング81によって図3で反時計回方向で付勢される。ブレードラッチ35は、図5のようにストッパ41に接触すると、ブレードラッチ35は停止する。ホイールラッチ36は、回転中心線B1に沿った方向でドライバブレード29を挟んで2個設けられており、2個のホイールラッチ36は、共に金属製または合成樹脂製である。2個のホイールラッチ36は、可動軸38にそれぞれ回動不能に固定されており、2個のホイールラッチ36は、可動軸38と共に回転中心線Q1を中心として、所定角度の班内で回転可能である。ストッパ80が、2個のホイールラッチ36にそれぞれ設けられている。
【0019】
ホイールラッチ37は2個設けられている。2個のホイールラッチ37は、共に金属製または合成樹脂製である。ホイールラッチ37は、ホイールラッチ36に対して単独で支持軸43を中心として作動可能に取り付けられている。回転中心線B1に沿った方向で、ホイールラッチ37及び支持軸43の配置位置は、ドライバブレード29の配置位置とは異なる。ホイールラッチ37は、スプリング44によって図3で時計方向D4で付勢され、ホイールラッチ37は、図5のようにストッパ80に接触して停止される。
【0020】
図5のように、ブレードラッチ35が接触部33から離間されていると、ブレードラッチ35はストッパ41に接触して停止される。ブレードラッチ35がストッパ41に接触して停止されていると、図5のように、回転中心線B1に対して垂直な平面内で、ホイールラッチ37の全部が、ホイール39の配置範囲外で停止される。ホイールラッチ37の全部がホイール39の配置範囲外にある状態は、ホイールラッチ37の待機位置である。ドライバブレード29が第2方向D2へ作動して、接触部33がブレードラッチ35に接触すると、ブレードラッチ35はスプリング81の力に抗して図5で時計方向D5で作動する。ブレードラッチ35が、図5で時計方向D5で作動すると、回転中心線B1に対して垂直な平面内で、ホイールラッチ37の一部は、ホイール39の配置範囲内へ進入する。ホイールラッチ37の一部がホイール39の配置範囲内にある状態は、ホイールラッチ37の第2位置である。
【0021】
ドライバブレード29が第1方向D1へ作動して、ブレードラッチ35が接触部33から離間すると、ブレードラッチ35はスプリング81の力により反時計方向で作動する。すると、回転中心線B1に対して垂直な平面内で、ホイールラッチ37の先端は、ホイール39の配置範囲外へ移動する。そして、ブレードラッチ35がストッパ41に接触すると、ブレードラッチ35及びホイールラッチ36,37が停止される。
【0022】
図1のように、モータケース21内に電動モータ15が配置されている。電動モータ15は、ロータ45及びステータ46を有する。ステータ46は、モータケース21に取り付けられている。ロータ45はロータ軸47に取り付けられ、ロータ軸47は、軸受48を介してモータケース21により回転可能に支持されている。電動モータ15は、ブラシレスモータであり、電動モータ15に電圧が印加されると、ロータ軸47が回転中心線B1を中心として正回転または逆回転可能である。
【0023】
モータケース21内にギヤケース49が設けられている。減速機構16はギヤケース49内に設けられている。減速機構16は、複数組のプラネタリギヤ機構を備えている。減速機構16の入力要素は、動力伝達軸53を介してロータ軸47に連結されている。減速機構16の出力要素と回転軸40とが連結されている。減速機構16は、電動モータ15から回転軸40に至る動力伝達経路に配置されている。図1のように、回転規制機構59がギヤケース49内に設けられている。回転規制機構59は、電動モータ15が正回転した際の回転力で、回転軸40が図3において反時計回方向D3で回転することを可能にする。回転規制機構59は、打撃部12の第1方向D1の作動力がホイール39に伝達された場合に、回転軸40が図3で時計方向に回転することを阻止する。
【0024】
図3に示す回転中心線B1に沿った方向で、軸受57と軸受58とが間隔をおいて配置され、軸受58と減速機構16との間に、軸受57が配置されている。ホイール39は、回転中心線B1に沿った方向で、軸受57と軸受58との間に設けられている。ホイール39は、回転中心線B1に沿った方向で、ドライバブレード29を挟んで2個のボス部60、2個のピン保持部材61及び複数個のピン42を有する。回転中心線B1に沿った方向で、ピン保持部材61とピン保持部材61の間に、2個のボス部60が設けられている。2個のボス部60及び2個のピン保持部材61は、それぞれ金属製である。2個のボス部60は、環状であり、2個のボス部60は回転軸40に固定されている。2個のピン保持部材61は、環状であり、かつ、プレート形状である。ピン保持部材61は、ボス部60に固定されている。回転中心線B1に沿った方向で、ラック31の一部は、2個のボス部60の間に配置されている。つまり、回転中心線B1に対して垂直な平面内である図3のように、ドライバブレード29のラック31の作動範囲C1の一部は、ホイール39の配置範囲と重なる。
【0025】
2個のボス部60は、複数のガイド部の一例として図6(A)に示された7つの支持孔63をそれぞれ有する。7つの支持孔63は、ボス部60の径方向で内側から外側に沿って設けられている。支持孔63はそれぞれ長孔である。7つの支持孔63は、ホイール39の回転方向に間隔をおいて配置されている。支持孔63は、ボス部60を回転中心線B1に沿った方向に貫通している。1つの支持孔63を形成する2つの内面63Aは略平行である。回転中心線B1に対して垂直な平面内で、2つの内面63Aの間を通る仮想線E1は、回転中心線B1と交差しない。支持孔63の外接円は共通であり、かつ、支持孔63の内接円は共通である。支持孔63は、仮想線E1に対して直角な方向の幅が全て同一である。支持孔63の幅は、2個のボス部60でそれぞれ同じである。ホイール39の回転方向で、7つの支持孔63が設けられている箇所は、2個のボス部60でそれぞれ同じである。
【0026】
複数個のピン42は、一例として7個設けられている。7個のピン42は金属製の軸部材であり、7個のピン42は、図4のように大径部42A及び小径部42Bをそれぞれ有する。回転中心線B1に沿った方向で小径部42Bが2箇所に設けられており、小径部42Bと小径部42Bとの間に大径部42Aが設けられている。大径部42A及び小径部42Bは同心状に設けられ、かつ、直接つながっている。大径部42Aの直径は、小径部42Bの直径よりも大きく、大径部42A及び小径部42Bは、共に円柱形状である。7個のスプリング66が、2個のボス部60にそれぞれ取り付けられている。スプリング66は、金属製のねじりコイルスプリングであり、スプリング66は、ピン42をホイール39の径方向で外側に向けてそれぞれ付勢している。ホイール39の径方向は、回転中心線B1を中心とする仮想円の径方向を意味する。
【0027】
2個のピン保持部材61は、共に円板形状である。2個のピン保持部材61は、複数のガイド部の一例として、図6(B)に示された7個のガイド孔64をそれぞれ有する。7個のガイド孔64は、ホイール39の回転方向に間隔をおいて設けられている。2個のピン保持部材61の回転方向で、ガイド孔64がそれぞれ設けられている箇所は同じである。ガイド孔64は、ピン保持部材61の径方向で内側から外側に沿って設けられている。1個のガイド孔64を形成する2つの内面64Aは略平行である。回転中心線B1に対して垂直な平面内で、2つの内面64Aの間を通る仮想線E2は、回転中心線B1と交差しておらず、ホイール39の径方向で内側から外側に向かい、かつ、ホイール39の回転方向の後方側に傾斜して延びている。
【0028】
ガイド孔64の外接円は共通であり、かつ、ガイド孔64の内接円は共通である。全てのガイド孔64は、仮想線E2に対して直角な方向の幅が全て同一である。ガイド孔64の幅は、支持孔63の幅よりも狭い。ホイール39の回転方向において、支持孔63及びガイド孔64が設けられている位置は同じである。また、回転中心線B1に対して垂直な平面内で、2つの内面64Aからそれぞれ突出されたストッパ65が設けられている。
【0029】
ピン42の大径部42Aの一部は、ボス部60同士の間に配置されている。ピン42の小径部42Bの一部は、支持孔63及びガイド孔64に配置されている。小径部42Bの直径は、支持孔63の幅及びガイド孔64の幅よりも小さく、かつ、2つのストッパ65の間隔よりも大きい。ピン42が、図6(A)のようにガイド孔64内でホイール39の径方向で最も外側に位置する状態は、第1位置である。ピン42が、ガイド孔64内でホイール39の径方向で最も内側に位置する状態は、第2位置である。回転中心線B1に沿った方向で、ピン42の小径部42Bの一部は、ピン保持部材61と軸受57との間に配置され、かつ、ピン保持部材61と軸受58との間に配置されている。回転中心線B1に沿った方向で、ピン42の小径部42Bの配置範囲の一部と、ホイールラッチ37の配置範囲の一部とが重なっている。
【0030】
支持孔63、ガイド孔64及びピン42のそれぞれの数である7個は、ラック31を構成する突起32の数である9個よりも少ない。ホイール39が図3で反時計方向D3で回転されると、7個のピン42は全て回転中心線B1を中心として公転される。また、ピン42の小径部42Bは、支持孔63内で仮想線E1に沿った方向に移動可能である。ピン42の小径部42Bは、ガイド孔64内で仮想線E2に沿った方向に移動可能である。7個のピン42は、ホイール39の径方向における位置を、それぞれ単独で変更可能である。7個のピン42が、図6(B)のように全て第1位置で停止されていると、7個のピン42は、ホイール39の回転方向に間隔をおいて位置する。具体的に説明すると、7個のピン42は、回転中心線B1を中心とする同一円周上で、ホイール39の回転方向に均等な間隔をおいて位置する。ストッパ65がピン42の小径部42Bに接触すると、ピン42がガイド孔64で移動することが規制される。しかし、ピン42に加わる力が増加するとストッパ65が弾性変形し、小径部42Bはストッパ65を乗り越えてガイド孔64内で移動可能である。
【0031】
リリース部67が、筒部52の内面に設けられている。リリース部67は、ホイール39の回転方向で、ドライバブレード29に近い略180度の範囲のうち、略45度の範囲に設けられている。リリース部67の先端は、ホイール39の径方向でガイド孔64の配置範囲内に設けられている。リリース部67は、軸受57とピン42の小径部42Bとの間から、軸受57とピン保持部材61との間に延ばされている。また、リリース部67は、軸受58とピン42の小径部42Bとの間から、軸受57とピン保持部材61との間に延ばされている。ホイール39が図3で反時計方向D3で回転されると、第2位置で停止されているピン42がリリース部67に接触する。ピン42は、リリース部67にホイール39の径方向で外側に向けて押され、ガイド孔64内で移動し、かつ、ピン42の小径部42Bがストッパ65を乗り越えることで、第1位置に移動する。
【0032】
電源部14は、収容ケースと、収容ケース内に収容した複数の電池セルとを有する。電池セルは、充電及び放電が可能な二次電池であり、電池セルは、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池、リチウムイオンポリマー電池、ニッケルカドミウム電池等、公知の電池セルを任意に用いることができる。また、図1のようにマガジン68が設けられ、マガジン68は射出部51及び装着部22により支持されている。マガジン68内に釘69が複数本収容される。マガジン68はフィーダを有し、フィーダは、マガジン68内の釘69を射出部へ送る。射出部51は、金属製または合成樹脂製である。射出部51にプッシュレバー70が取り付けられている。プッシュレバー70は、射出部51に対して仮想線A1方向の所定範囲内で作動可能である。
【0033】
図1に示すように、トリガ71及びトリガスイッチ72が、ハンドル20に設けられている。トリガスイッチ72は、トリガ71に加わる操作力の有無を検出し、かつ、検出結果に応じた信号を出力する。さらに、図7に示すプッシュレバースイッチ73が射出部51に設けられている。プッシュレバースイッチ73は、プッシュレバー70が相手材W1に押し付けられているか、または、離間されているかを検出して信号を出力する。さらに、打撃部12の仮想線A1に沿った方向における位置を検出して信号を出力する位置検出センサ74が設けられている。
【0034】
制御回路75が装着部22内に設けられている。制御回路75は、入出力インタフェース、中央演算処理部及び記憶部を有するマイクロコンピュータである。また、インバータ回路76がモータケース21内に設けられている。インバータ回路76は、電動モータ15のステータ46と電源部14とを接続及び遮断する。インバータ回路76は、複数のスイッチング素子を備え、複数のスイッチング素子はそれぞれオン・オフが可能である。制御回路75は、トリガスイッチ72から出力された信号、プッシュレバースイッチ73から出力された信号、位置検出センサ74から出力された信号を処理する。制御回路75は、インバータ回路76を制御することにより、電動モータ15の回転及び停止、電動モータ15の回転速度、電動モータ15の回転方向を制御する。
【0035】
釘打機10の使用例は、次の通りである。制御回路75は、トリガ71に対する操作力が解除され、かつ、プッシュレバー70が相手材W1から離間されていると、電動モータ15を停止させている。打撃部12は、電動モータ15が停止されていると、待機位置で停止されている。打撃部12は、圧力室26から第1方向D1の付勢力を受ける。図3のように、ラック31のうち、1個の突起32が、ピン42に係合、具体的には大径部42Aに係合されている。このため、ホイール39は、図3で時計回りの回転力を受ける。ホイール39は、図3で時計回りに回転することを、回転規制機構59によって阻止されている。したがって、打撃部12は待機位置に停止されている。なお、本実施形態では、“突起32と大径部42Aとが係合”を、“突起32とピン42とが係合”と記載し、“大径部42Aが突起32から解放”を、“ピン42が突起32から解放”と記載されている。
【0036】
打撃部12が待機位置で停止されていると、図3のように、1個のピン42(42X)が1個の突起32に係合されている。また、5個のピン42は、ラック31の作動範囲C1外に位置し、かつ、5個のピン42は、それぞれ突起32から解放されている。ラック31の作動領域外に位置する5個のピン42は、スプリング66によって支持孔63の内壁に押し付けられ、それぞれ第1位置で停止されている。
【0037】
さらに、図3では、ブレードラッチ35は、仮想線A1に沿った方向で接触部33の端部が押し付けられることで、スプリング81の付勢力に抗して時計方向D5で所定角度作動した位置、つまり、作動位置で停止されている。ホイールラッチ37は、一部がホイール39の配置領域内にある位置、つまり、前進位置で停止されている。ホイールラッチ37は、ホイール39の回転方向でピン42(42X)よりも1個後方に位置する1個のピン42(42Y)に押し付けられている。ホイールラッチ37が押し付けられたピン42(42Y)は、ガイド孔64内の第2位置で停止されている。第2位置は、ラック31の作動領域C1外である。
【0038】
制御回路75は、トリガ71に操作力が付加され、かつ、プッシュレバー70が相手材W1に押し付けられると、電動モータ15を正回転させる。すると、ホイール39が図3で反時計方向D3で回転されて、突起32に係合されているピン42から、打撃部12へ第2方向D2で付勢力が付加される。打撃部12は、圧力室26の空気圧に抗して待機位置から上死点へ向けて第2方向D2で作動、つまり、上昇される。打撃部12が上昇されると、圧力室26の空気圧が上昇される。
【0039】
更にホイール39が回転されると、突起32に係合されているピン42は、突起32からホイール39の径方向で内側に向かう分力を受け、ピン42が突起32から解放される。具体的に、説明すると複数の突起32のうち、ドライバブレード29の先端に最も近い箇所に設けられている突起32から、ピン42が解放される。すると、打撃部12は、圧力室26の空気圧で第1方向D1で作動、つまり、図5のように下降される。突起32から解放されたピン42は、スプリング66の付勢力に抗してガイド孔64内を移動し、ピン42がストッパ65へ押し付けられる。そして、ストッパ65が弾性変形され、かつ、ピン42はストッパ65を乗り越え、図5に示す第2位置で停止される。
【0040】
ホイールラッチ37により押されて第2位置に保持されたピン42は、ラック31の作動範囲C1外を公転する。したがって、打撃部12が上死点から下降される行程において、ラック31がピン42に接触されることは無い。打撃部12が下降されると、ブレードラッチ35は、図5のように接触部33から離間され、かつ、ブレードラッチ35はスプリング81の付勢力で反時計方向D5で作動する。このため、ホイールラッチ37は、回転中心線B1に対して垂直な平面内で、ホイール39の配置領域外へ移動される。ブレードラッチ35は、ストッパ41に接触して停止され、かつ、ホイールラッチ37が第1位置で停止される。打撃部12が下降されると、ドライバブレード29は、射出部51に供給されている釘69を打撃する。打撃された釘69は、相手材W1へ打ち込まれる。
【0041】
釘69が相手材W1へ打ち込まれた後、図1のようにピストン28がバンパ34に衝突される。バンパ34は、打撃部12の運動エネルギの一部を吸収する。打撃部12が上死点から下死点へ作動され、かつ、打撃部12が下死点で停止されるまでの間、第2位置で停止されたピン42は、ラック31の移動領域外で公転される。したがって、打撃部12が下降される行程で、ラック31がピン42に接触されることは無い。特に、図5に示すピン42(42Y)は、ラック31に係合不可能な第2位置に保持されている。
【0042】
釘69が相手材W1へ打ち込まれると、その反動でプッシュレバー70が相手材W1から離間される。しかし、制御回路75は電動モータ15の回転を継続させる。このため、図8(A)のように、ホイール39の回転方向で第2位置よりも1つ後方に位置するピン42(42Z)が、突起32と突起32との間へ進入する。このピン42(42Z)は、ガイド孔64内で第1位置で停止されており、ホイール39の回転に伴いピン42が突起32に係合される。更に、先に係合されたピン42が突起32に係合されている間に、次のピン42が突起32に係合され、次のピン42が突起32に係合されると、先に係合されていたピン42が突起32から解放される。なお、突起32から解放されるピン42は、突起32から受ける荷重の分力により、ガイド孔64内でホイール39の径方向で内側に向けて移動され、ピン42はストッパ65を乗り越えて第2位置で停止される。
【0043】
このようにして、ピン42が突起32に係合され、かつ、ピン42が突起32から解放される動作を繰り返し、打撃部12は下死点から上昇される。第2位置で停止されているピン42は、図8(B)のように、ホイール39の回転によってリリース部67へ押し付けられる。ピン42は、リリース部67によってガイド孔64内でホイール39の径方向で外側に向けて付勢され、かつ、ピン42はストッパ65を乗り越える。ストッパ65を乗り越えたピン42は、スプリング66の付勢力でガイド孔64内で移動され、かつ、第1位置で停止される。
【0044】
打撃部12が更に上昇されると、接触部33がブレードラッチ35へ押し付けられる。ブレードラッチ35は、スプリング81の付勢力に抗して時計方向D5で作動される。また、ホイールラッチ37は、第1位置から反時計方向に作動される。このため、ホイールラッチ37の一部は、回転中心線B1に対して垂直な平面内でホイール39の配置領域内へ進入する。ホイールラッチ37の一部は、1個のピン42に押し付けられ、1個のピン42は、スプリング66の付勢力に抗して第1位置から、ガイド孔64内でホイール39の径方向で内側に移動される。
【0045】
制御回路75は、打撃部12が待機位置に到達したことを検出すると、電動モータ15を停止される。したがって、打撃部12は待機位置で停止される。打撃部12が待機位置で停止されると、ブレードラッチ35は、図3のように停止され、かつ、ホイールラッチ37が第2位置で停止される。ホイールラッチ37の一部が押し付けられたピン42は、ストッパ65を乗り越え、かつ、第2位置で停止される。調整機構77は、ホイール39の径方向におけるピン42の位置を、第1位置と退避位置とで切り替える構造及び機能を有する。
【0046】
なお、ホイール39が図2及び図3で反時計方向D3で回転及び停止されると、複数のピン42が、順次、ホイールラッチ37によって第1位置から第2位置へ移動される動作が繰り返される。本実施形態では、ピン42の数は、突起32の数より少ない。つまり、ピン42と突起32との対応が、一対一の関係にならない。つまり、全てのピン42は、係合及び解放される対象である突起32が、ホイール39の1回転毎に変化し、交互にピン42Y,42X,42Zとしての役割りを果たす。
【0047】
本実施形態の釘打機10は、次のような効果を有する。
【0048】
[第1の効果] 7個のピン42は、ガイド孔64内でホイール39の径方向にそれぞれ単独で移動可能である。このため、ピン42は、係合されている突起32から受ける負荷が増加すると、スプリング66の付勢力に抗してホイール39の径方向で内側に向けて移動され、ピン42が突起32から解放される。したがって、7個のピン42の何れにおいても負荷を軽減可能である。特に、打撃部12が上死点に到達し、かつ、ピン42が突起から解放される場合に、そのピン42が受ける荷重の最大値が低減される。なお、ピン42が受ける負荷が増加する状況は、ピン42と突起32との係合不良を含む。
【0049】
[第2の効果] 7個のピン42は、ホイール39の回転方向に均等な間隔をおいて配置されている。また、ピン42の数である7個は、突起32の数である9個よりも少ない。このため、打撃部12が下死点から上死点へ上昇させる場合におけるホイール39の回転角度を、1回転に相当する360度よりも大きい角度にすることができる。
【0050】
つまり、ホイール39は、ピン42が突起32に係合されて打撃部12が下死点から第2方向D2で作動した時点から、打撃部12が上死点に至り、かつ、ピン42が突起32から解放されて打撃部12が第1方向D1で作動する時点までの回転量が、1回転より多い。具体的には、ホイール39の回転量は、1回転に相当する360度を超え、かつ、2回転に相当する720度未満である。
【0051】
したがって、打撃部12が上昇する距離は、ホイール39に設けた複数のピン42の外接円の全周長以上の距離になり、ホイール39の外径、つまり直径の大型化を抑制できる。また、ホイール39を360度よりも大きい角度で回転させるため、打撃部12を下死点から上死点へ作動させるストローク量が増加し、打撃部12で打撃可能な釘69のサイズをなるべく長くすることができる。
【0052】
さらに、ホイール39が複数回、回転される間に、複数のピン42のうち、打撃部12が上死点に到達した時点でラック31に係合されているピン42(42X)よりも後方に位置する1個のピン42(42Y)以外のピン42は、全てラック31に係合可能な第1位置に保持される。すなわち、打撃部12が下降される時に、複数のピン42は、ラック31の作動範囲C1外の第2位置に位置させることが可能である。このため、打撃部12を作動させる際に、ピン42を、ラック31が通過する作動範囲C1から予め退避させておかずに済む。つまり、打撃部12を上昇させる時に、“ピン42が第2位置から第1位置へ移動するまでの間、ホイール39が空転すること”を抑制できる。したがって、打撃部12が、下死点から上死点へ作動するまでの時間を短縮することができる。
【0053】
[第3の効果] ピン42の数と突起32の数とが異なるため、それぞれのピン42は、係合対象となる突起32が特定されない。このため、ホイール39の回転方向におけるピン42の位置と、打撃部12の作動方向における突起32の位置とに関わり無く、ホイール39を回転させることにより、ラック31の長さに応じて、打撃部12を下死点から上死点へ作動させることができる。
【0054】
[第4の効果] 複数のピン42のうち、打撃部12が上死点にある状態で突起32に係合されており、かつ、打撃部12の上死点で突起32から解放されるピン42は、最大負荷、つまり、最大荷重を受ける。ここで、ピン42の数と突起32の数とが異なるため、最大荷重を受けるピン42は、打撃部12が上昇される回数毎に異なる。したがって、特定のピン42の摩耗および変形を抑制でき、それぞれのピン42の寿命を長くできる。
【0055】
[調整機構の他の例] 図1の釘打機10に設けられる調整機構の他の例が、図9(A)及び図9(B)に示されている。調整機構82は、ブレードラッチ35に加え、ソレノイド83、プランジャ84及び押圧部材85を有する。ソレノイド83は、電流が流れるコイルを有する。プランジャ84は、磁性材料製である。また、プランジャ84をホイール39から離間させる向きに付勢するスプリングが設けられている。押圧部材85は、プランジャ84の先端に取り付けられている。押圧部材85は、例えば、金属製または合成樹脂製である。プランジャ84及び押圧部材85は、仮想線A3に沿った方向に作動可能である。図9(A)及び図9(B)は、仮想線A1と仮想線A3とが交差、例えば、略90度の角度で交差して配置された例である。
【0056】
図7のように、ソレノイド83と電源部14との間の電気回路にスイッチ86が設けられている。また、ブレードラッチ検出センサ87が、ハウジング11内に設けられている。ブレードラッチ検出センサ87は、ブレードラッチ35の位置を検出して信号を出力する。制御回路75は、ブレードラッチ検出センサ87の信号を処理し、かつ、スイッチ86のオンとオフとを切り替える。スイッチ86がオンされると、電源部14からソレノイド83に電流が供給される。スイッチ86がオフされると、ソレノイド83に対する電流の供給が停止される。
【0057】
ソレノイド83に対する電流の供給が停止されていると、スプリングで付勢された押圧部材85は、ホイール39から離間された第1位置で停止されている。ソレノイド83に電流が供給されると磁気吸引力が発生し、プランジャ84は、スプリングの付勢力に抗してホイール39に接近する向きに作動され、押圧部材85がホイール39の回転領域内へ移動すると、プランジャ84が第2位置で停止される。ソレノイド83は、プランジャ84の位置を第1位置と第2位置とで切り替えるアクチュエータである。調整機構82が図1の釘打機10に設けられていると、釘打機10は、ホイールラッチ36,37を備えていない。
【0058】
調整機構82を有する釘打機10の使用例は、次の通りである。打撃部12が待機位置で停止されていると、ピン42(42X)が突起32に係合されている、突起32に係合されているピン42Xは、第1位置に保持され、かつ、作動範囲C1内に位置する。また、接触部33がブレードラッチ35へ押し付けられ、ブレードラッチ35は作動位置で停止されている。ブレードラッチ検出センサ87は、ブレードラッチ35が作動位置にあることを検出して信号を出力している。制御回路75は、ブレードラッチ検出センサ87の信号を処理することにより、スイッチ86をオンさせている。
【0059】
このため、ソレノイド83に電流が供給され、プランジャ84はホイール39に接近する向きに作動されている。押圧部材85は、図9(A)のようにホイール39の回転領域内へ移動され、押圧部材85がピン42(42Y)に押し付けられる。ピン42(42Y)は、ホイール39の回転方向でピン42Xよりも1個後方に位置する。すると、ピン42Yは、スプリング66の付勢力に抗して第1位置から第2位置へ移動され、第2位置で保持される。したがって、プランジャ84が第2位置で停止されている。
【0060】
制御回路75は、トリガ71に操作力が付加され、かつ、プッシュレバー70が相手材W1に押し付けられると、電動モータ15を正回転させる。すると、打撃部12は、待機位置から上死点へ向けて上昇され、打撃部12は、図9(A)に示す上死点へ到達される。次いで、打撃部12は上死点から下降される。
【0061】
打撃部12が下降されると、ブレードラッチ35が図9(B)のように接触部33から離間され、かつ、ブレードラッチ35はストッパ41に接触して停止される。ブレードラッチ検出センサ87は、ブレードラッチ35が接触部33から離間されたことを検出して信号を出力する。すると、制御回路75は、スイッチ86をオフさせる。このため、ソレノイド83に対する電力の供給が停止され、プランジャ84がホイール39から離間する向きで作動される。プランジャ84は、図9(B)に示す第1位置で停止される。その結果、押圧部材85はホイール39の回転領域外で停止される。
【0062】
打撃部12が下降される過程で、突起32がピン42(42Y)に接触されることは無い。打撃部12が下降されると、ドライバブレード29は、射出部51に供給されている釘69を打撃する。釘69が相手材W1へ打ち込まれた後、打撃部12が下死点へ到達される。打撃部12が下死点へ到達された後、電動モータ15が回転されている。このため、打撃部12は下死点から上昇される。打撃部12が上昇され、かつ、接触部33がブレードラッチ35へ押し付けられると、ブレードラッチ35は、スプリング81の付勢力に抗して作動される。また、ブレードラッチ検出センサ87が、ブレードラッチ35の作動を検出すると、制御回路75は、スイッチ86をオンさせる。すると、ソレノイド83に電流が供給され、プランジャ84がホイール39に接近する向きで作動される。
【0063】
すると、押圧部材85が押し付けられたピン42(42Y)は、第1位置から第2位置へ移動されて停止し、かつ、プランジャ84が第2位置で停止される。制御回路75は、打撃部12が待機位置に到達したことを検出すると、電動モータ15を停止させる。なお、ホイール39が図9(A)で反時計方向D3で回転及び停止される動作が繰り返されると、複数のピン42が、順次、押圧部材85に押されて第1位置から第2位置へ移動される動作が繰り返される。つまり、全てのピン42は、交互にピン42X,42Yとしての役割りを果たす。調整機構82は、ソレノイド83に代えてサーボモータを備えていてもよい。サーボモータによりプランジャ84が作動される。つまり、プランジャ84を作動させるアクチュエータは、ソレノイド83またはサードモータの何れでもよい。調整機構82を有する釘打機10は、前述した第1の効果、第2の効果、第3の効果及び第4の効果を得ることができる。
【0064】
[ホイールの他の例] 図1に示す釘打機10に設けられるホイール39の他の例が、図10図11(A)、図11(B)、図12(A)、図12(B)、図13(A)、図13(B)、図14に示されている。ボス部60は、回転方向に沿って配置された複数の支持孔63を有する。ピン保持部材61は、回転方向に沿って配置された複数のガイド孔78を有する。複数の支持孔63と、複数のガイド孔78とが、ホイール39の回転方向でそれぞれ同じ位置に設けられている。各ガイド孔78は、ホイール39の回転方向における所定範囲に設けられ、かつ、ホイール39の回転方向における位置が変位することに伴い、ホイール39の径方向に変位されている。
【0065】
支持孔63の数とガイド孔78の数とは同じである。ピン42が、支持孔63及びガイド孔78にそれぞれ配置されている。ピン42は、支持孔63及びガイド孔78内でそれぞれ単独で移動可能である。ピン42が支持孔63及びガイド孔78内でホイール39の回転方向に移動すると、ピン42は、ホイール39の径方向における位置が変動する。図13(B)のようにピン42(42X)が、ガイド孔78内でホイール39の径方向で最も外側に位置する状態は、第1位置である。ピン42が、図12(B)のように、ガイド孔78内でホイール39の径方向で最も内側に位置する状態は、第2位置である。全てのピン42が第2位置に停止されている状態で、7個のピン42は、ホイール39の回転方向に間隔をおいて配置されている。具体的に説明すると、7個のピン42は、回転中心線B1を中心とする同一円周上で、ホイール39の回転方向に均等な間隔をおいて配置される。
【0066】
また、ホイール39の回転方向で隣り合う2個のピン42が第1位置に位置する状態を想定すると、図13(B)のように、ピン42の中心Q2同士の間に距離L1がある。一方、ドライバブレード29で隣り合う突起32同士は、仮想線A1に沿った方向でピッチL2の間隔で配置されている。そして、ピッチL2は、距離L1より大きい。さらに、複数のピン42が第1位置に位置する状態を想定すると、ホイール42の回転方向におけるピン42同士の間隔は、等間隔である。ピン42同士の間隔は、例えば、中心Q1を通る仮想円における円弧長として定義可能である。ピン42同士の間隔は、例えば、ピン42の中心Q1を通る仮想円において、ピン42の外面同士の円弧長として定義可能である。
【0067】
さらに、ボス部60にスプリング79が、複数設けられている。スプリング79は、ピン42をそれぞれ単独でホイール39の径方向で内側に向けて付勢する。緩衝材80が、回転軸40の外周面に取り付けられている。緩衝材80は、合成ゴム製のリングであり、スプリング79によって付勢されるピン42は、緩衝材80に接触して第2位置で停止される。
【0068】
ピンガイド90が、図1の筒部52内に設けられている。ピンガイド90は、筒部52内に固定して設けられている。ピンガイド90は、金属製、または合成樹脂製の何れでもよい。ピンガイド90は、回転中心線B1に沿った方向に間隔をおいて2個配置されている。ピンガイド90と、ピンガイド90との間に、ホイール39が配置されている。ピンガイド90はロッド形状であり、ピンガイド90の先端部91は、ホイール39の径方向において、ガイド孔78の配置領域内に配置されている。ピンガイド90の他端部は、図1のノーズ部13に固定されている。図13(A)及び図13(B)のように、先端部91にガイド面92が設けられている。ガイド面92は、湾曲されている。ホイール39が、図12(B)で反時計方向に回転されると、少なくとも1個のピン42が、先端部91に接触してガイド面92に乗り上げ、かつ、ピン42は先端部91を乗り越える。
【0069】
なお、図11(A)、図11(B)、図12(A)、図12(B)、図13(A)、図13(B)に示されたピン42は、図3図6(A)、図6(B)のピン42と同様に大径部42A及び小径部42Bを有する。しかし、図11(A)、図11(B)、図12(A)、図12(B)、図13(A)、図13(B)に示されたピン42は、大径部42A及び小径部42B省略されている。図10に示されたホイール39を有する釘打機10の使用例は、次の通りである。打撃部12が待機位置で停止されていると、図11(A)のように、1個のピン42、具体的には、ピン42Xが1個の突起32に係合されている。ピン42Xは、突起32から受ける外力の分力でホイール39の外側に向けて付勢され、かつ、第1位置で停止されている。第1位置で停止されているピン42Xは、作動範囲C1内に位置する。
【0070】
ホイール39の回転方向で、ピン42Xよりも1個後方に位置するピン42、つまり、ピン42Yは、ピンガイド90に接触し、かつ、第1位置よりも内側で停止されている。ピン42X,42Y以外の5個のピン42は、突起32から解放され、かつ、ピンガイド90から離間され、かつ、第2位置で停止されている。第2位置で停止されているピン42は、作動範囲C1外に位置する。そして、ホイール39が図11(A)で反時計方向D3で回転されると、打撃部12は待機位置から上死点へ向けて上昇される。ピン42Xが突起32から解放される前に、ピン42Yは、ガイド面92に沿って第1位置へ移動され、かつ、ピン42Yが先端部91を乗り越えると、ピン42Yはスプリング79の付勢力で第1位置から第2位置へ移動される。また、ホイール39の回転方向でピン42Yよりも1個後方に位置する1個のピン42が、先端部91に接触し、かつ、第2位置から第1位置へ向けて移動される。
【0071】
打撃部12が、図11(B)のように上死点に到達した後、ピン42Xが突起32から解放されると、打撃部12は、図13(A)のように圧力室26の空気圧で下降される。打撃部12が下降されると、ドライバブレード29は釘69を打撃する。打撃された釘69は、相手材W1へ打ち込まれる。釘69が相手材W1へ打ち込まれた後、打撃部12は、図13(B)のように下死点で停止される。打撃部12が上死点から下死点へ下降される行程において、全てのピン42は、ラック31の作動範囲C1外に位置する。したがって、打撃部12が上死点から下降される行程において、ラック31がピン42に接触されることは無い。特に、ピン42Yは、ラック31に係合不可能な第2位置に保持されている。
【0072】
打撃部12が下死点で停止された後、ホイール39が図13(B)で反時計方向D3で回転されると、ピンガイド90によってガイド孔78内で第1位置に移動されていたピン42、つまり、ピン42Xが、先端部91を乗り越える前に突起32に係合される。すると、打撃部12が下死点から上昇され、打撃部12が図11(A)のように待機位置へ到達すると、ホイール39が停止される。このように、ピンガイド90及びスプリング79は、ピン42を第1位置から第2位置へ移動させる調整機構としての役割を果たす。なお、ホイール39が図11(A)で反時計方向D3で回転及び停止される動作が繰り返されると、複数のピン42が、順次、ピンガイド90の先端部91に接触及び離間される動作が繰り返される。つまり、全てのピン42は、交互にピン42X,42Yとしての役割りを果たす。図1に示す釘打機10が、図10に示すホイール39及びピンガイド90を備えていると、釘打機10は、前述した第1の効果、第2の効果、第3の効果及び第4の効果を得ることができる。
【0073】
また、ピッチL2は、距離L1より大きい。このため、打撃部12が、図11(B)のように上死点に到達した後、ピン42Xが突起32から解放される前に、ピン42Yが第1位置から第2位置へ移動を完了する。したがって、ラック31がピン42に接触することを確実に防止できる。なお、ピン42Yが第1位置から第2位置へ移動するタイミングは、ホイール39の回転方向におけるピンガイド90の先端部91の配置範囲を調整することによって、変更することも可能である。なお、図13(B)を用いて説明した事項のうち、複数のピン42が第1位置に位置する状態を想定すると、ホイール42の回転方向におけるピン42同士の間隔は、等間隔である、との事項は、図3及び図6(A)、図6(B)に開示されたピン42同士の間隔としてもあてはまる。
【0074】
[補足説明] 本実施形態で説明した事項の技術的意味の一例は、次の通りである。釘打機10は、打込機の一例である。釘69は、止具の一例である。射出部51は、射出部の一例である。第1方向D1は、第1方向の一例である。第2方向D2は、第2方向の一例である。打撃部12は、打撃部の一例である。ラック31は、ラックの一例である。ホイール39は、回転部材の一例である。7個のピン42は、複数の係合部材の一例である。ピン42Xは、第1係合部材の一例である。ピン42Yは、第2係合部材の一例である。本実施形態では、何れか1個のピン42だけが第1係合部材として機能し、何れか1個のピン42だけが第2係合部材として機能する訳では無い。全てのピン42は、第1係合部材として機能し、かつ、第2係合部材として機能する。9個の突起32は、複数の突起の一例である。
【0075】
圧力室26を形成する蓄圧容器18及びシリンダ27は、駆動部の一例である。スプリング66、ピンガイド90は、位置変更部材の一例である。ホイールラッチ37、ブレードラッチ35、スプリング79は、移動部材の一例である。ホイールラッチ37は、第1接触部材の一例である。ブレードラッチ35は、第2接触部材の一例である。7つのガイド孔64は、複数のガイド部の一例である。ストッパ65は、ストッパの一例である。リリース部67は、リリース部の一例である。
【0076】
本実施形態において、ホイール39の回転方向におけるピン42の位置を示す“均等な間隔”ドライバブレード29に設けられる突起32の位置を示す“均等な間隔”は、それぞれ、“略均等な間隔”または“完全に均等な間隔”の何れでもよい。さらに、“均等な間隔”は、“一定の間隔”または“均一な間隔”と定義してもよい。この場合、“一定の間隔”は、“完全に一定の間隔”または“略一定の間隔”の何れでもよい。さらに“均一な間隔”は、“完全に均一な間隔”または“略均一な間隔”の何れでもよい。つまり、“均等”、“一定”及び“均一”は、共に、部品の加工誤差、部品の組付け誤差、部品の寸法公差等を含む。
【0077】
打込機は、図面を用いて開示された実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、打撃部の作動により打撃される止具は、釘の他、アーチ形状のステープル、鋲を含む。つまり、打込機は、アーチ形状のステープルを打ち込むタッカ、鋲を打ち込む鋲打ち機を含む。回転部材は、ホイールの他、回転軸、プーリ等を含む。第1係合部材は、ピンの他、軸を含む。
【0078】
打撃部を第1方向に作動させる駆動部は、圧縮性流体が充填される蓄圧容器に代えて、金属製のスプリング、合成ゴム、磁石であってもよい。金属製のスプリングまたは合成ゴムは、弾性復元力により打撃部を第1方向に作動させる。駆動部が磁石である場合、打撃部は磁性材料、例えば、鉄製、または鋼製である。磁石は、吸引力または反発力により、打撃部を第1方向に作動させる。回転部材に設けられるガイド部は、ガイド孔、ガイド溝、ガイドレール、ガイド壁の何れでもよい。電動モータに電圧を印加する電源部は、直流電源または交流電源の何れでもよい。ピンの個数は、7個より多くてもよいし、7個未満でもよい。突起の数は、9個より多くてもよいし、9個未満でもよい。ピンの数は、突起の数より少なく設定可能である。さらに、“ラック”は、複数の係合部材がそれぞれ単独で係合及び解放される“被係合部”と定義可能である。
【0079】
本実施形態で開示された係合部材の第1位置は、初期位置または係合可能な位置と定義することも可能である。係合部材の第2位置は、後退位置または係合不可能な位置と定義することも可能である。第1位置に位置する係合部材は、回転部材が回転されるとラックに係合される。第2位置に位置する係合部材は、回転部材が回転されてもラックに係合されない。回転部材の径方向において、第1位置は、第2位置より外側である。そして、係合部材が、回転部材の径方向で第1位置に位置し、かつ、係合部材が、作動範囲C1内に位置すると、係合部材は、ラックに係合可能である。これに対して、係合部材が、回転部材の径方向で第1位置に位置し、かつ、係合部材が、作動範囲C1外に位置すると、係合部材は、ラックに係合不可能である。さらに、打撃部が第1方向へ作動される場合に、調整機構によって第1位置から第2位置へ移動される係合部材は、少なくとも1個であればよい。
【符号の説明】
【0080】
10…釘打機、12…打撃部、18…蓄圧容器、27…シリンダ、31…ラック、32…突起、35…ブレードラッチ、37…ホイールラッチ、39…ホイール、42…ピン、51…射出部、64…ガイド孔、65…ストッパ、66,79…スプリング、67…リリース部、69…釘、90…ピンガイド、D1…第1方向、D2…第2方向
図1
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