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特許7452637障害検出装置、光伝送システム及び障害検出方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】障害検出装置、光伝送システム及び障害検出方法
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/079 20130101AFI20240312BHJP
   H04J 14/02 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
H04B10/079
H04J14/02
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022522430
(86)(22)【出願日】2020-05-14
(86)【国際出願番号】 JP2020019242
(87)【国際公開番号】W WO2021229744
(87)【国際公開日】2021-11-18
【審査請求日】2022-10-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【弁理士】
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100149618
【弁理士】
【氏名又は名称】北嶋 啓至
(72)【発明者】
【氏名】田中 宏明
【審査官】前田 典之
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-028106(JP,A)
【文献】特開2005-269007(JP,A)
【文献】特開平09-064819(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0154216(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 10/079
H04J 14/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の端局から、割当情報に基づいて前記複数の端局のそれぞれに割り当てられた波長を持つ第1の光信号を受信し、受信された前記第1の光信号を結合する入力手段と、
結合された前記第1の光信号のそれぞれの波長に対応する強度に応じた信号であるモニタ信号を出力するモニタ手段と、
前記割当情報及び前記モニタ信号に基づいて、前記複数の端局から第1の端局を特定する特定手段と、
第2の光信号を前記複数の端局のそれぞれへ出力可能な出力手段と、
前記特定手段によって特定された前記第1の端局への、前記第2の光信号の出力の停止を前記出力手段に指示する出力制御手段と、
を備える障害検出装置。
【請求項2】
前記入力手段が受信する前記第1の光信号は複数の光キャリアを含む波長多重光信号であり、
前記モニタ信号は、前記入力手段において結合された前記第1の光信号に含まれる複数の光キャリアのそれぞれの強度に応じた信号である、請求項1に記載された障害検出装置。
【請求項3】
前記出力手段は、入力された第2の波長多重光信号を分波し、分波された光信号のそれぞれを前記第2の光信号として前記複数の端局へ前記割当情報に基づいて出力する分波手段を備える、請求項1又は2に記載された障害検出装置。
【請求項4】
前記特定手段は、前記第1の光信号の強度が所定の閾値未満であることを前記モニタ信号が示すことに応じて前記第1の端局を特定する、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載された障害検出装置
【請求項5】
前記出力制御手段は、前記第1の端局から受信した前記第1の光信号の強度が前記所定の閾値未満から前記所定の閾値以上に変化した場合には前記第2の光信号の出力の開始を前記出力手段に指示する、請求項4に記載された障害検出装置。
【請求項6】
前記出力制御手段は、外部からの制御により、前記第2の光信号の出力の開始を前記出力手段に指示する、請求項1乃至5のいずれか1項に記載された障害検出装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載された障害検出装置と、
前記複数の端局と、を備える光伝送システム。
【請求項8】
複数の端局から、割当情報に基づいて前記複数の端局のそれぞれに割り当てられた波長を持つ第1の光信号を受信し、
受信された前記第1の光信号を結合し、
結合された前記第1の光信号のそれぞれの波長に対応する強度に応じた信号であるモニタ信号を出力し、
前記割当情報及び前記モニタ信号に基づいて、前記複数の端局から第1の端局を特定し、
第2の光信号を前記複数の端局のそれぞれへ出力し、
前記特定された前記第1の端局への、前記第2の光信号の出力を停止する、障害検出方法。
【請求項9】
前記第1の光信号の強度が所定の閾値未満であることを前記モニタ信号が示すことに応じて前記第1の端局を特定する、請求項8に記載された障害検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は障害検出装置、障害検出方法及び障害検出プログラムの記録媒体に関し、特に、波長多重光伝送システムにおける障害検出装置、障害検出方法及び障害検出プログラムの記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今の海底ケーブルシステムでは、複数の波長帯域を複数のユーザで使い分ける「スペクトラムシェアリング」が広まっている。スペクトラムシェアリングが適用されたシステムでは、陸上のMUX/DEMUXは、複数のユーザのそれぞれの端局から、それぞれのユーザに割り当てられた帯域の波長多重光信号を受信する。MUX/DEMUXは、これらをMUXにおいて合波してWDM信号を生成し、海底ケーブルへ送出する。MUX/DEMUXは、Multiplexer/Demultiplexer(波長多重分離装置)の略である。MUXはMultiplexer(合波器)の略である。WDMはWavelength Division Multiplexing(波長分割多重)の略である。
【0003】
MUX/DEMUXは、海底ケーブルを伝送されてきたWDM信号を受信し、これをDEMUX(Demultiplexer、分波器)を用いてユーザ毎の波長帯域を持つWDM信号に分波する。分波されたWDM信号は、各ユーザの端局へ送出される。
【0004】
本発明に関連して、特許文献1及び特許文献2には、WDM信号の電力測定のための技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2018/051935号
【文献】特開2015-220553号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
複数のユーザの光信号を波長多重して伝送する光伝送システムにおいては、障害の早期の復旧のために、ユーザの端局とMUX/DEMUXとの間の回線の障害を端局ごと(すなわちユーザ毎)に検出できることが望まれる。しかし、端局から送信されたユーザの光信号はMUXで合波されるため、一般的なWDM光伝送システムでは、合波されたWDM信号から、どのユーザの回線で障害が発生したかを知ることが困難であるという課題があった。
(発明の目的)
本発明は、複数の端局が送信した光信号を波長多重して伝送するWDM光伝送システムにおいて、障害が発生した回線の端局を検出する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の障害検出装置は、複数の端局から、割当情報に基づいて前記複数の端局のそれぞれに割り当てられた波長を持つ第1の光信号を受信し、受信された前記第1の光信号を結合する入力手段と、結合された前記第1の光信号のそれぞれの波長に対応する強度に応じた信号であるモニタ信号を出力するモニタ手段と、前記割当情報及び前記モニタ信号に基づいて、前記複数の端局から第1の端局を特定する特定手段と、を備える。
【0008】
本発明の障害検出方法は、複数の端局から、割当情報に基づいて前記複数の端局のそれぞれに割り当てられた波長を持つ第1の光信号を受信し、受信された前記第1の光信号を結合し、結合された前記第1の光信号のそれぞれの波長に対応する強度に応じた信号であるモニタ信号を出力し、前記割当情報及び前記モニタ信号に基づいて、前記複数の端局から第1の端局を特定する、手順を含む。
【0009】
本発明の障害検出プログラムの記録媒体は、
障害検出装置のコンピュータに、複数の端局から、割当情報に基づいて前記複数の端局のそれぞれに割り当てられた波長を持つ第1の光信号を受信する手順、受信された前記第1の光信号を結合する手順、結合された前記第1の光信号のそれぞれの波長に対応する強度に応じた信号であるモニタ信号を出力する手順、前記割当情報及び前記モニタ信号に基づいて、前記複数の端局から第1の端局を特定する手順、を実行させるプログラムを記録する。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、WDM光伝送システムにおいて、障害が発生した端局の検出を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1の実施形態の障害検出装置10の構成例を示す図である。
図2】障害検出装置10の動作手順の例を示すフローチャートである。
図3】第2の実施形態の障害検出装置10の動作手順の例を示すフローチャートである。
図4】第3の実施形態の障害検出装置10の構成例を示すブロック図である。
図5】第4の実施形態の障害検出装置11の構成例を示すブロック図である。
図6】障害検出装置11の動作手順の例を示すフローチャートである。
図7】障害検出装置11の他の動作手順の例を示すフローチャートである。
図8】出力部140が、分波部141を備える例を示すブロック図である。
図9】出力制御部150による分波部141の制御の例を説明するための図である。
図10】第6の実施形態を説明する図である。
図11】第7の実施形態の光伝送システム1の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態について図面を参照して以下に説明する。図中に示された矢印は信号の向きあるいは処理の順序を例示するものであり、これらの限定を意図しない。実施形態及び図面では既出の要素には同一の参照符号を付して、重複する説明は省略する。
【0013】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態の障害検出装置10の構成例を示す図である。障害検出装置10は、入力部110、モニタ部120、特定部130を備える。入力部110には、ユーザ毎に設置されたn個の端局201-20nが、それぞれ光伝送路211-21nを介して接続されている。nは2以上の自然数である。端局201-20nは、割当情報に基づいてそれぞれに割り当てられた波長を持つ光信号(第1の光信号)を、光伝送路211-21nへ送出する。端局201-20nが送信する光信号の波長は重複しない。すなわち、端局201-20nは、重複しないように各ユーザに割り当てられた波長を持つ第1の光信号を、光伝送路211-21nを介して障害検出装置10へ送信する。
【0014】
入力部110は、光伝送路211-21nからそれぞれ第1の光信号を受信し、受信した第1の光信号を結合して出力する。入力部110は、入力手段の一例である。モニタ部120は、モニタ信号を生成し、生成されたモニタ信号を出力する。モニタ信号は、入力部110において結合された第1の光信号に含まれる光信号の、波長毎の強度に応じた信号である。モニタ部120は、例えば、入力された光信号の一部を分岐し、分岐された光信号の波長毎の強度を示す振幅を持つ信号に変換して出力する。モニタ部120として、WDM光伝送システムで一般的に用いられる光チャンネルモニタ(Optical Channel Monitor, OCM)を用いてもよい。モニタ部120は、モニタ手段の一例である。
【0015】
特定部130は、上記の割当情報及びモニタ信号に基づいて、複数の端局から第1の端局を特定する機能を備える。特定の結果(特定された第1の端局の情報)は障害検出装置10の外部へ出力されてもよく、障害検出装置10の内部の制御に利用されてもよい。割当情報は、特定部130に記憶されてもよい。特定部130は、特定手段の一例である。
【0016】
図2は、障害検出装置10の動作手順の例を示すフローチャートである。入力部110は、端局201-20nから第1の光信号を受信し、受信された前記第1の光信号を結合する(図2のステップS01)。モニタ部120は、第1の光信号のそれぞれの波長に対応する強度に応じたモニタ信号を出力する(ステップS02)。そして、特定部130は、モニタ部120から出力されたモニタ信号に基づいて、複数の端局から第1の端局を特定する。
【0017】
このような構成を備える障害検出装置10は、端局への波長の割当情報及び受信した光信号の波長に対応する強度に応じたモニタ信号に基づいて、複数の端局から第1の端局を特定できる。例えば、障害検出装置10は、ある端局に割り当てられた波長に対応するモニタ信号が示す第1の光信号の強度に応じて、当該端局を障害が発生した端局として特定できる。
【0018】
(第2の実施形態)
図3は、本発明の第2の実施形態の障害検出装置10の動作手順の例を示すフローチャートである。障害検出装置10の構成は、図1と同様である。本実施形態の手順では、特定部130は、モニタ信号が示す第1の光信号の強度を、端局201-20nに割り当てられた波長毎に所定の閾値と比較する。すなわち、入力部110は、端局201-20nから第1の光信号を受信し、受信された第1の光信号を結合する(図3のステップS11)。モニタ部120は、結合された第1の光信号のそれぞれの波長に対応する強度に応じたモニタ信号を出力する(ステップS12)。特定部130は、モニタ信号から第1の光信号の強度を取得し、モニタ信号が示す波長毎の強度と所定の閾値とを比較する(ステップS13)。第1の光信号の強度が、ある波長において所定の閾値未満であれば(ステップS13:YES)、特定部130は、割当情報を参照して当該波長が割り当てられた端局を検索し、検索された端局を第1の端局として特定する(ステップS14)。第1の光信号の強度が当該波長において所定の閾値以上であれば(ステップS13:NO)、特定部130は端局を特定せず、ステップS13の比較を継続する。
【0019】
端局201-20nのいずれか又は光伝送路211-21nのいずれかに障害が発生した場合には、経路上に障害個所を含む第1の光信号の強度が低下する可能性が高い。従って、障害検出装置10は、図3に示す手順により、ある端局に割り当てられた波長の強度が所定の閾値未満となったときに、当該端局を、障害によってユーザに影響が生じる恐れがある端局として特定できる。
【0020】
なお、端局201-20nが送信する第1の光信号のそれぞれは、複数の光キャリアを含むWDM信号であってもよい。この場合、モニタ部120は、入力部110において結合された第1の光信号に含まれるそれぞれの光キャリアの強度に応じたモニタ信号を出力する。例えば、モニタ部120は、結合された第1の光信号に含まれるそれぞれの光キャリアの強度に対応する振幅を持つモニタ信号を出力する。波長が異なる複数の光キャリアが1つの端局に割り当てられている場合には、特定部130は、割り当てられている複数の光キャリアの強度の一部または全部に基づいて第1の端局を特定してもよい。例えば、特定部130は、端局201-20nから受信されたそれぞれの第1の光信号に含まれる複数の光キャリアの強度の最大値、最小値、中央値又は平均値に基づいて第1の端局を特定する。
【0021】
(第3の実施形態)
図4は、本発明の第3の実施形態の障害検出装置10の構成例を示すブロック図である。本実施形態では、入力部110は合波部111を含む。合波部111は少なくともn個の入力ポートA1-Anを備え、端局201-20nから受信した第1の光信号を、それぞれ、入力ポートA1-Anで受信する。合波部111は受信した第1の光信号を結合してモニタ部120へ出力する。
【0022】
合波部111は割当情報に応じてn以上の波長帯域の光信号を波長多重できる合波器(MUX)であり、例えば、AWG(Arrayed Waveguide Grating)又はWSS(Wavelength Selective Switch)である。入力部110へ入力される第1の光信号の波長帯域が重複しない場合には合波部111としてn×1光カプラ(スターカプラ)が用いられてもよい。
【0023】
(第4の実施形態)
図5は、本発明の第4の実施形態の障害検出装置11の構成例を示すブロック図である。本実施形態では、複数の端局201-20nと障害検出装置11との間の光伝送路211-21nが、ファイバペアである形態について説明する。1本のファイバペアは2本の光ファイバを含む。2本の光ファイバは、それぞれ、ユーザ装置が送信する光信号(すなわち、第1の光信号)及びユーザ装置が受信する光信号(後述する第2の光信号)の伝送に用いられる。
【0024】
障害検出装置11に入力される、端局201-20nの少なくとも1つの端局からの第1の光信号の強度が低下した場合、当該端局と障害検出装置11との間の光伝送路(すなわち、ファイバペア)に切断等の障害が生じている可能性がある。そして、障害の可能性があるファイバペアの保守作業の安全を確保するためには、障害検出装置11からファイバペアを介して当該端局へ送信される光信号の出力を停止できることが好ましい。さらに、この場合、ファイバペアが正常である他の端局へ送信される光信号への影響を回避するために、障害の可能性があるファイバペアについてのみ、端局への光信号の送信を停止できることが好ましい。
【0025】
障害検出装置11は、図1に示した障害検出装置10に加えて、出力部140及び出力制御部150を備える。本実施形態において、光伝送路211-21nはファイバペアである。それぞれのファイバペアに含まれる一方の光ファイバは端局201-20nが送信した第1の光信号が入力部110において受信されるように接続される。ファイバペアに含まれる他方の光ファイバは、出力部140が出力した光信号(第2の光信号)が端局201-20nにおいて受信されるように接続される。
【0026】
出力部140は、端局201-20nのそれぞれを宛先とする、第2の光信号を出力する。第2の光信号は、障害検出装置11が外部から受信した光信号に応じて生成した光信号でもよい。第2の光信号は、端局毎に、第1の光信号と同一のファイバペアによって伝送される。第2の光信号は、宛先の端局毎に異なる信号であってもよい。出力部140は、出力手段の一例である。
【0027】
出力制御部150は、第1の端局の情報を特定部130から受信する。第1の端局の情報は、端局201-20nの識別情報及び第1の端局に対する第2の光信号の出力の指示又は停止の指示を含む。そして、出力制御部150は、第1の端局への、第2の光信号の出力又は停止を出力部140に指示する。出力制御部150は、出力制御手段の一例である。
【0028】
図6は、障害検出装置11の動作手順の例を示すフローチャートである。図6のステップS21からステップS23では、モニタ信号に基づいて、複数の端局から第1の端局が特定される。ステップS21からステップS23は、第1の実施形態の図2のステップS01からステップS03と同様の手順である。また、障害検出装置11は、ステップS21からステップS23の手順に代えて、図3のステップS11からステップS14の手順を実行してもよい。出力制御部150は、第1の端局として特定された端局への、第2の光信号の停止を出力部140に指示する(図6のステップS24)。
【0029】
このような構成によって、出力部140は、第1の端局への第2の光信号の出力を停止する。その結果、障害検出装置11は、障害のないユーザの端局との通信を維持したまま、障害の可能性があるファイバペアについてのみ、端局への光信号の送信を停止できる。
【0030】
図7は、障害検出装置11の他の動作手順の例を示すフローチャートである。図7の手順は、第1の端局への第2の光信号の出力を再開する手順を含む。特定部130は、第1の光信号の強度が所定の閾値未満である第1の端局を特定する(図8のステップS31)。図3のステップS11-S14の手順は、第1の端局を特定するステップS31の手順に適用できる。出力制御部150は、特定部130の特定結果に応じて、第1の端局への第2の光信号の出力の停止を出力部に指示する(ステップS32)。
【0031】
ステップS32の後、特定部130はモニタ信号によって第1の光信号の強度を監視し、第1の光信号の強度が所定の閾値以上に上昇した第1の端局がある場合には(ステップS33:YES)、当該第1の端局の情報を出力制御部150へ通知する。この情報は、当該第1の端局へ第2の光信号を出力する指示を含む。出力制御部150は、通知された情報に応じて、第1の端局宛の第2の光信号の出力を出力部140に指示する(ステップS34)。出力部140は、出力制御部150からの指示に応じて第1の端局宛の第2の光信号を出力する(ステップS35)。特定部130は、出力が指示された第2の光信号の宛先の端局を、第1の端局から除外してもよい。特定部130は、第1の光信号の強度が所定の閾値以上に上昇した第1の端局がない場合には(ステップS33:NO)、モニタ信号による第1の光信号の強度の監視を継続する。当該第1の端局の情報を出力制御部150へ通知する。
【0032】
(第5の実施形態)
図8は、第4の実施形態で説明した障害検出装置11の出力部140が、分波部141を備える例を示すブロック図である。分波部141は、障害検出装置11の外部から入力されたWDM信号を、割当情報に基づいて波長毎に分離する分波器(DEMUX)である。そして、分波部141は、分波された光信号のそれぞれを、第2の光信号として出力する。一般的に、第2の光信号は宛先の端局毎に異なる光信号である。しかし、各端局宛の第2の光信号の一部または全部が同一の光信号であってもよい。障害検出装置11は、分波部141から出力された第2の光信号を端局201-20nへ送信する。
【0033】
分波部141はn以上の波長帯域のWDM信号を帯域毎に分波する。例えば、分波部141は、割当情報に適合するAWG又はWSSを含む。また、分波部141へ入力されたWDM信号が端局201-20nへそのまま分配される場合には、分波部141に代えて1×n光カプラが用いられてもよい。1×n光カプラは、入力されたWDM信号を、n個に分配するスターカプラである。
【0034】
図9は、出力制御部150による分波部141の制御の例を説明するための図である。図9に示す分波部141は、分波素子143及び光スイッチ142を備える。分波素子143は、入力されたWDM信号をn個に分波する。光スイッチ142は、分波素子143のn個の出力と分波部141のn個の出力ポートB1-Bnとのそれぞれの間に備えられる。出力制御部150は、n個の光スイッチ142を独立に制御する。n個の光スイッチ142は、出力制御部150からの、第2の光信号の出力又は停止の指示に応じて、分波されたそれぞれの第2の光信号を個別に透過させ、又は阻止する。図9は、端局201と入力部110との間の光伝送路211に障害が発生し、出力ポートB1のみが第2の光信号を出力しない場合を示す。特定部130は、割当情報及びモニタ部120から入力されたモニタ信号に基づいて、端局201に割り当てられた波長の光信号の強度が所定の閾値未満となっていることを検出する。その結果、特定部130は端局201を第1の端局として特定し、第1の端局の情報を出力制御部150へ出力する。図9の場合は、第1の端局の情報は、第1の端局の識別情報(例えば「端局201」)、及び、出力部140から第1の端局への第2の光信号の出力を停止する指示を含む。出力制御部150は、第1の端局の情報に応じて、端局201が接続された光伝送路211と接続された分波部141の出力ポートB1を、第2の光信号を阻止するように制御する。
【0035】
これにより、強度が低下した第1の光信号を送信する端局201が接続されたファイバペアへの、出力部140からの第2の光信号の送信が停止される。その結果、ファイバペアの補修時の安全性が向上する。なお、端局201は、第2の光信号の消失をトリガとして、第1の光信号の送信を停止してもよい。端局201が第1の光信号の送信を停止することで、端局201と障害検出装置11とを結ぶファイバペアにはいずれの装置からも光信号が入力されなくなる。その結果、ファイバペアの補修時の安全性をより高めることができる。
【0036】
光スイッチ142は、分波部141の外部に設けられてもよい。光スイッチ142が分波部141の外部にある場合にも、光スイッチ142は出力制御部150によって制御される。また、WSSには、n個の出力ポートの有効及び無効をポート毎に設定する機能を備えるものがある。分波部141がこのような機能を備えるWSSである場合には、出力制御部150は、WSSの当該機能を制御することによって光スイッチ142の機能を実現してもよい。例えば、第2の光信号を出力する出力ポートB1を「有効」とすることで、出力ポートB1と接続された端局201へ第2の光信号が出力される。また、第2の光信号を出力していた出力ポートB1を「無効」とすることで、出力ポートB1と接続された端局201への第2の光信号の出力が停止される。
【0037】
さらに、第4の実施形態で説明したように、第1の端局の第1の光信号の強度が所定の閾値以上となった場合には、特定部130は、分波部141が当該第1の端局への第2の光信号の出力を再開するように、出力制御部150に指示してもよい。そして、出力部140は、出力制御部150からの指示に応じて、当該第1の端局へ第2の光信号が出力されるように光スイッチ142を制御する。
【0038】
(第6の実施形態)
図10は、本発明の第6の実施形態を説明する図である。本実施形態では、障害検出装置11の外部に、管理装置200が接続されている。管理装置200は例えばコンピュータであり、出力部140への制御の内容を出力制御部150に通知する。管理装置200は、障害検出装置11の管理者が操作してもよい。出力制御部150は、管理装置200からの制御により、第2の光信号の出力の開始を出力部140に指示する。本実施形態では、第1の端局への第2の光信号の送信が停止されている場合に、特定部130から出力制御部150への指示がなくとも、管理装置200からの指示によって、第1の端局への第2の光信号の送信を再開できる。
【0039】
(第7の実施形態)
図11は、本発明の第7の実施形態の光伝送システム1の構成例を示すブロック図である。光伝送システム1は、端局201-20n及び231-23n、障害検出装置11及び21、中継器50を備える。端局201-20n及び障害検出装置11は既述の実施形態で説明した。端局201-20nと障害検出装置11とはファイバペア221-22nによって、それぞれ、双方向通信が可能なように接続されている。端局231-23n及び障害検出装置21はそれぞれ端局201-20n及び障害検出装置11と同様の構成を備える。光伝送システム1では、端局201-20nはそれぞれ端局231-23nと双方向通信を行う。すなわち、障害検出装置11は、端局201-20nから送信された第1の光信号を合波して、モニタ部120から中継器50へWDM信号として送出する。中継器50は光信号の中継装置であり、例えば光増幅器によってWDM信号を増幅して障害検出装置21へ送出する。
【0040】
障害検出装置21は、図8に示す障害検出装置11と同様の構成を備える。障害検出装置21は、中継器50が送出したWDM信号を受信する。障害検出装置21が備える出力部140は、WDM信号を分波した光信号を、第2の光信号として端局231-23nへ出力する。端局231-23nから端局201-20nへも、中継器50を介して同様に光信号が伝送される。
【0041】
このような構成を備える光伝送システム1は、障害検出装置11及びこれと同様の機能を備える障害検出装置21を備える。従って、光伝送システム1は、ファイバペア221-22n及び241-24nのいずれかの障害により障害検出装置11又は21が受信する光信号の強度が低下した場合に、障害が発生した光伝送路に接続された端局を特定できる。また、光伝送システム1は、端局を特定した障害検出装置から特定された端局への光信号の送信を停止できるため、ファイバペアの障害対応の際の安全性を高めることができる。さらに、光伝送システム1は、特定された端局からの光信号の強度が回復した場合には、障害検出装置から当該端局への光信号の送信を再開できる。
【0042】
なお、本発明の実施形態は以下の付記のようにも記載されうるが、これらには限定されない。
【0043】
(付記1)
複数の端局から、割当情報に基づいて前記複数の端局のそれぞれに割り当てられた波長を持つ第1の光信号を受信し、受信された前記第1の光信号を結合する入力手段と、
結合された前記第1の光信号のそれぞれの波長に対応する強度に応じた信号であるモニタ信号を出力するモニタ手段と、
前記割当情報及び前記モニタ信号に基づいて、前記複数の端局から第1の端局を特定する特定手段と、
を備える障害検出装置。
【0044】
(付記2)
前記特定手段は、前記第1の光信号の強度が所定の閾値未満であることを前記モニタ信号が示すことに応じて前記第1の端局を特定する、
付記1に記載された障害検出装置。
【0045】
(付記3)
前記入力手段が受信する前記第1の光信号は複数の光キャリアを含む波長多重光信号であり、
前記モニタ信号は、前記入力手段において結合された前記第1の光信号に含まれる複数の光キャリアのそれぞれの強度に応じた信号である、
付記1又は2に記載された障害検出装置。
【0046】
(付記4)
第2の光信号を前記複数の端局のそれぞれへ出力可能な出力手段と、
前記特定手段によって特定された前記第1の端局への、前記第2の光信号の出力の停止を前記出力手段に指示する出力制御手段と、
を備える付記1乃至3のいずれか1項に記載された障害検出装置。
【0047】
(付記5)
前記出力手段は、入力された第2の波長多重光信号を分波し、分波された光信号のそれぞれを前記第2の光信号として前記複数の端局へ前記割当情報に基づいて出力する分波手段を備える、付記4に記載された障害検出装置。
【0048】
(付記6)
前記出力制御手段は、前記第1の端局から受信した前記第1の光信号の強度が前記所定の閾値未満から前記所定の閾値以上に変化した場合には前記第2の光信号の出力の開始を前記出力手段に指示する、付記4又は5に記載された障害検出装置。
【0049】
(付記7)
前記出力制御手段は、外部からの制御により、前記第2の光信号の出力の開始を前記出力手段に指示する、付記4乃至6のいずれか1項に記載された障害検出装置。
【0050】
(付記8)
付記1乃至7のいずれか1項に記載された障害検出装置と、
前記複数の端局と、
を備える光伝送システム。
【0051】
(付記9)
複数の端局から、割当情報に基づいて前記複数の端局のそれぞれに割り当てられた波長を持つ第1の光信号を受信し、
受信された前記第1の光信号を結合し、
結合された前記第1の光信号のそれぞれの波長に対応する強度に応じた信号であるモニタ信号を出力し、
前記割当情報及び前記モニタ信号に基づいて、前記複数の端局から第1の端局を特定する、
障害検出方法。
【0052】
(付記10)
前記第1の光信号の強度が所定の閾値未満であることを前記モニタ信号が示すことに応じて前記第1の端局を特定する、
付記9に記載された障害検出方法。
【0053】
(付記11)
前記複数の端局から受信する前記第1の光信号は複数の光キャリアを含む波長多重光信号であり、
前記モニタ信号は、結合された前記第1の光信号に含まれる複数の光キャリアのそれぞれの強度に応じた信号である、
付記9又は10に記載された障害検出方法。
【0054】
(付記12)
前記第1の端局への、第2の光信号の出力の停止を指示する、
付記9乃至11のいずれか1項に記載された障害検出方法。
【0055】
(付記13)
入力された第2の波長多重光信号を分波し、分波された光信号のそれぞれを前記第2の光信号として前記複数の端局へ前記割当情報に基づいて出力する、付記12に記載された障害検出方法。
【0056】
(付記14)
前記第1の端局から受信した前記第1の光信号の強度が前記所定の閾値未満から前記所定の閾値以上に変化した場合には前記第2の光信号の出力の開始を指示する、付記12又は13に記載された障害検出方法。
【0057】
(付記15)
障害検出装置のコンピュータに、
複数の端局から、割当情報に基づいて前記複数の端局のそれぞれに割り当てられた波長を持つ第1の光信号を受信する手順、
受信された前記第1の光信号を結合する手順、
結合された前記第1の光信号のそれぞれの波長に対応する強度に応じた信号であるモニタ信号を出力する手順、
前記割当情報及び前記モニタ信号に基づいて、前記複数の端局から第1の端局を特定する手順、
を実行させるための障害検出プログラム。
【0058】
以上、実施形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記の実施形態に限定されない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【0059】
また、それぞれの実施形態に記載された構成は、必ずしも互いに排他的なものではない。本発明の作用及び効果は、上述の実施形態の全部又は一部を組み合わせた構成によって実現されてもよい。
【0060】
以上の各実施形態に記載された機能及び手順は、障害検出装置10及び11が備える中央処理装置(central processing unit、CPU)がプログラムを実行することにより実現されてもよい。プログラムは、有形の、一時的でない記録媒体に記録される。記録媒体としては半導体メモリ又は固定磁気ディスク装置が用いられるが、これらには限定されない。
【符号の説明】
【0061】
1 光伝送システム
10、11、21 障害検出装置
50 中継器
110 入力部
111 合波部
120 モニタ部
130 特定部
140 出力部
141 分波部
142 光スイッチ
150 出力制御部
200 管理装置
201-20n、231-23n 端局
211-21n 光伝送路
221-22n、241-24n ファイバペア
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11