IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本電気株式会社の特許一覧

特許7452645画像処理装置、画像処理方法、及びプログラム
<>
  • 特許-画像処理装置、画像処理方法、及びプログラム 図1
  • 特許-画像処理装置、画像処理方法、及びプログラム 図2
  • 特許-画像処理装置、画像処理方法、及びプログラム 図3
  • 特許-画像処理装置、画像処理方法、及びプログラム 図4
  • 特許-画像処理装置、画像処理方法、及びプログラム 図5
  • 特許-画像処理装置、画像処理方法、及びプログラム 図6
  • 特許-画像処理装置、画像処理方法、及びプログラム 図7
  • 特許-画像処理装置、画像処理方法、及びプログラム 図8
  • 特許-画像処理装置、画像処理方法、及びプログラム 図9
  • 特許-画像処理装置、画像処理方法、及びプログラム 図10
  • 特許-画像処理装置、画像処理方法、及びプログラム 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】画像処理装置、画像処理方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/00 20170101AFI20240312BHJP
   G08B 25/00 20060101ALI20240312BHJP
   G08B 25/04 20060101ALI20240312BHJP
   G16H 50/80 20180101ALI20240312BHJP
【FI】
G06T7/00 660B
G08B25/00 510M
G08B25/04 K
G16H50/80
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022528441
(86)(22)【出願日】2021-03-08
(86)【国際出願番号】 JP2021008884
(87)【国際公開番号】W WO2021246011
(87)【国際公開日】2021-12-09
【審査請求日】2022-12-01
(31)【優先権主張番号】P 2020098404
(32)【優先日】2020-06-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】中野 学
(72)【発明者】
【氏名】西村 祥治
(72)【発明者】
【氏名】日下田 美孝
(72)【発明者】
【氏名】野田 陽太郎
(72)【発明者】
【氏名】篠田 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】仙田 裕三
(72)【発明者】
【氏名】冨永 慎
(72)【発明者】
【氏名】石川 真澄
(72)【発明者】
【氏名】生藤 大典
(72)【発明者】
【氏名】瀧澤 香菜
(72)【発明者】
【氏名】石井 健一
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 義之
(72)【発明者】
【氏名】有田 英司
(72)【発明者】
【氏名】山本 翔大
(72)【発明者】
【氏名】山崎 晋哉
(72)【発明者】
【氏名】納富 功充
(72)【発明者】
【氏名】中村 有紀
【審査官】岡本 俊威
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/239813(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 7/00
G08B 25/00-25/10
G16H 50/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の人を含む画像を処理することにより、前記人各々の外観の特徴量を抽出する特徴量抽出手段と、
前記画像を処理することにより、前記人各々との間で感染条件を満たす他の前記人を特定し、前記人各々の前記外観の特徴量に紐付けて、特定した他の前記人に関する関連情報を登録する特定手段と、
を有し、
前記感染条件は、前記人が触れた物と同じ物に触れることである画像処理装置。
【請求項2】
指定された前記外観の特徴量に紐付けられている前記関連情報を検索し、出力する検索手段をさらに有する請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記関連情報は、他の前記人の画像、他の前記人の前記外観の特徴量、他の前記人の属性の推定結果、及び前記人各々との間で満たす前記感染条件の内容の中の少なくとも1つを含む請求項1又は2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記関連情報は、前記人各々との間で満たす前記感染条件の内容に基づき算出された感染危険度を含む請求項1から3のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記関連情報は、前記感染条件を満たしたタイミング及び場所の少なくとも一方を示す情報を含む請求項1から4のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項6】
他の前記感染条件は、互いの距離、前記人の顔の向き、前記人の装着物、前記人の口の動き及び身体の接触の中の少なくとも1つに基づき定義される請求項1から5のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項7】
コンピュータが、
複数の人を含む画像を処理することにより、前記人各々の外観の特徴量を抽出し、
前記画像を処理することにより、前記人各々との間で感染条件を満たす他の前記人を特定し、前記人各々の前記外観の特徴量に紐付けて、特定した他の前記人に関する関連情報を登録し、
前記感染条件は、前記人が触れた物と同じ物に触れることである画像処理方法。
【請求項8】
コンピュータを、
複数の人を含む画像を処理することにより、前記人各々の外観の特徴量を抽出する特徴量抽出手段、
前記画像を処理することにより、前記人各々との間で感染条件を満たす他の前記人を特定し、前記人各々の前記外観の特徴量に紐付けて、特定した他の前記人に関する関連情報を登録する特定手段、
として機能させ
前記感染条件は、前記人が触れた物と同じ物に触れることであるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置、画像処理方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年は様々な目的で画像処理が用いられている。例えば特許文献1には、空間内の環境を調整して第1対象者からの飛沫の到達範囲が第2対象者の呼吸域から外れるようにするシステムにおいて、第1対象者及び第2対象者の顔の位置及び向きを画像処理によって決定することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2020/044826号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
感染症の拡大を抑制するためには、感染症にかかった人との間で感染条件を満たした人を特定し、特定した人を検査したり、隔離したりすることが有効である。感染条件は、感染する可能性がある条件であり、必ずしも、当該条件を満たした人が必ず感染するというものではない。
【0005】
本発明の目的の一つは、所定の人との間で感染条件を満たした人を特定できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、
複数の人を含む画像を処理することにより、前記人各々の外観の特徴量を抽出する特徴量抽出手段と、
前記画像を処理することにより、前記人各々との間で感染条件を満たす他の前記人を特定し、前記人各々の前記外観の特徴量に紐付けて、特定した他の前記人に関する関連情報を登録する特定手段と、
を有する画像処理装置が提供される。
【0007】
また、本発明によれば、
コンピュータが、
複数の人を含む画像を処理することにより、前記人各々の外観の特徴量を抽出し、
前記画像を処理することにより、前記人各々との間で感染条件を満たす他の前記人を特定し、前記人各々の前記外観の特徴量に紐付けて、特定した他の前記人に関する関連情報を登録する画像処理方法が提供される。
【0008】
また、本発明によれば、
コンピュータを、
複数の人を含む画像を処理することにより、前記人各々の外観の特徴量を抽出する特徴量抽出手段、
前記画像を処理することにより、前記人各々との間で感染条件を満たす他の前記人を特定し、前記人各々の前記外観の特徴量に紐付けて、特定した他の前記人に関する関連情報を登録する特定手段、
として機能させるプログラムが提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、所定の人との間で感染条件を満たした人を特定できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態の画像処理装置の機能ブロック図の一例である。
図2】本実施形態の画像処理装置の使用環境を説明するための図である。
図3】本実施形態の画像処理装置が処理する情報の一例を模式的に示す図である。
図4】本実施形態の画像処理装置が処理する情報の一例を模式的に示す図である。
図5】本実施形態の画像処理装置の処理内容の一例を説明するための図である。
図6】本実施形態の画像処理装置の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図7】本実施形態の画像処理装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
図8】本実施形態の画像処理装置の機能ブロック図の一例である。
図9】本実施形態の画像処理装置の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図10】本実施形態の画像処理装置が出力する画像の一例である。
図11】本実施形態の画像処理装置が出力する画像の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0012】
<第1の実施形態>
「概要」
本実施形態の画像処理装置は、複数の人を含む画像を処理することにより、画像に含まれる人の中から互いに感染条件を満たした人の組み合わせを特定し、特定結果を示すデータベースを生成する機能を有する。当該データベースを利用することで、所定の人(例えば、感染症にかかった人)との間で感染条件を満たした人を特定できるようになる。以下、詳細に説明する。
【0013】
「構成」
次に、画像処理装置の機能構成を説明する。図1は、画像処理装置10の機能ブロック図の一例を示す。図示するように、画像処理装置10は、特徴量抽出部11と、特定部12と、記憶部13と、画像取得部15とを有する。なお、画像処理装置10は記憶部13を有さなくてもよい。この場合、画像処理装置10と通信可能に構成された外部装置が記憶部13を備える。
【0014】
画像取得部15は、撮像装置が生成した複数の人を含む画像を取得する。画像取得部15は、取得した画像を記憶部13に記憶することができる。画像処理装置10と撮像装置とが通信可能に接続されている場合、画像取得部15は、撮像装置から画像を受信することができる。その他、撮像装置が生成した画像が任意の記憶装置に格納されてもよい。そして、任意のタイミングで画像取得部15は、その記憶装置に記憶されている画像を取得してもよい。画像取得部15は、撮像装置が生成した画像をバッチ処理で取得してもよいし、リアルタイム処理で取得してもよい。
【0015】
ここで、撮像装置について説明する。図2は、実施形態に係る画像処理装置10の使用環境を説明するための図である。画像処理装置10は撮像装置20とともに使用される。
【0016】
撮像装置20は例えば固定カメラであり、複数の人、例えば不特定多数の人が往来する領域(以下、対象領域と記載)を繰り返し撮影する。このため、撮像装置20が生成する画像は複数の人を含んでいる。撮像装置20は、例えば店舗、施設、設備等に設置された監視カメラであってもよい。撮像装置20が生成する画像のフレームレートは任意であるが、例えば動画を構成するようなフレームレートであってもよい。一例として、撮像装置20は、画像処理装置10と通信可能に接続し、生成した画像を画像処理装置10に送信することができる。
【0017】
図2に示す例において、画像処理装置10は一つの撮像装置20に接続している。ただし画像処理装置10は複数の撮像装置20に接続していてもよい。この場合、複数の撮像装置20は互いに異なる対象領域を撮像している。また、複数の撮像装置20のそれぞれは、当該撮像装置20を識別する情報(以下、撮像装置識別情報と記載)に紐づけて画像を外部に送信する。このようにすると、複数、例えば100か所以上の多数の対象領域のそれぞれについて所望の解析を行うことができる。
【0018】
図1に戻り、特徴量抽出部11は、画像取得部15が取得した複数の人を含む画像を処理することにより、画像から人を検出する。そして、画像取得部15は、検出した人各々の外観の特徴量(顔情報等)を抽出する。なお、特徴量抽出部11は、画像に基づき、検出した人各々の属性を推定してもよい。属性は、画像から推定可能なものであり、例えば「大人、子供、老人の種別」、「年齢」、「性別」等である。人の検出、特徴量の抽出及び属性推定は広く知られた技術であるので、ここでの説明は省略する。
【0019】
特徴量抽出部11は、例えば、検出した人の外観の特徴量や位置情報を用いて、異なる画像に重複して存在する同一人物を特定することができる。そして、特徴量抽出部11は、例えば外観の特徴量を用いて、検出された複数の人を互いに識別することができる。
【0020】
特徴量抽出部11による上記処理により、例えば図3に示すような情報が生成される。当該情報は、記憶部13に記憶される。図3に示す情報は、画像から検出された人の情報であり、「通番」、「画像ファイル」、「登場シーン」、「外観の特徴量」、「属性推定結果」を含む。なお、これらの項目の一部を含まなくてもよいし、その他の項目を含んでもよい。
【0021】
「通番」は、検出された人各々に付与される識別情報である。1人の人物に対して1つの通番が付与される。
「画像ファイル」は、各人を含む複数の画像の中の代表画像のファイルを示す。例えば、各人が最も大きく写っている画像や、各人の顔が検出されている画像等が代表画像となる。
「登場シーン」は、各人が登場するシーンを示す情報である。例えば、動画ファイル名と、冒頭からの経過時間等で、登場シーン(検出されたシーン)が明示されてもよい。その他、各人が検出された画像のファイル名により、検出された人各々が登場するシーンが明示されてもよい。
「外観の特徴量」は、特徴量抽出部11が抽出した各人の外観の特徴量を示す。
「属性推定結果」は、特徴量抽出部11が推定した各人の属性の推定結果である。例えば、「大人、子供、老人の種別」、「年齢」、「性別」等を含む。
【0022】
図1に戻り、特定部12は、画像取得部15が取得した複数の人を含む画像を処理することにより、検出された人各々との間で感染条件を満たす他の人を特定する。そして、特定部12は、検出された人各々の外観の特徴量(各人を識別する情報)に紐付けて、特定した他の人に関する関連情報を登録する。
【0023】
ここで、感染条件について説明する。感染条件は、感染する可能性がある条件であり、必ずしも、当該条件を満たした人が必ず感染するというものではない。感染条件は、例えば、互いの距離、人の顔の向き、人の装着物、人の口の動き及び身体の接触の中の少なくとも1つに基づき定義される。
【0024】
例えば、以下の条件の中の1つ又は複数を満たすことが、感染条件であってもよい。その他、以下の条件の中の1つ又は複数を満たす状態の継続時間が基準値以上を満たすことが、感染条件であってもよい。その他、以下の条件の中の1つ又は複数を満たす状態が起きる頻度(回数、所定時間に対する当該状態を満たしている時間の割合等)が基準値以上であってもよい。
【0025】
(条件1)互いの間隔が基準値以下。
(条件2)少なくとも一方の顔の向きが相手の方を向いている。
(条件3)少なくとも一方が顔に所定の装着物をしていない。
(条件4)少なくとも一方の口が動いている。
(条件5)互いの間で身体の接触があった。
(条件6)互いの間で所定パターンの身体の接触があった。所定パターンは、「手をつなぐ」、「握手」、「ハグ」、「キス」等。
【0026】
条件1の基準値は、いわゆる社会的距離に基づいて定められる。社会的距離は、感染症の感染を防ぐために、隣り合う人の間で保たれるべき物理的距離である。そして基準値の大きさは、対象としている感染症の主な感染経路に基づいて設定される。例えば飛沫感染が主となる感染症に対し、基準値には1.5m以上6m以下の値が用いられる。また、接触感染が主となる感染症については、基準値には50cm以上1.5m以下の値が用いられる。なお、以下で、画像に基づく2者間の距離の算出方法の一例を説明する。
【0027】
条件3の装着物は、口及び鼻の少なくとも一方(好ましくは双方)を覆うものであり、例えばマスクやマフラーである。
【0028】
条件4の口の動きの検出により、話したり、笑ったり、くしゃみしたりする動作があったことを検出することができる。
【0029】
その他、感染条件は、「同じ物に触れること」であってもよい。物は、撮像装置20の撮影領域内に位置し、その場に固定されている物(すなわち、常に撮像装置20の撮像領域内に存在する物)であり、例えば、つり革、自動販売機、券売機、セルフ会計装置等が例示されるが、これらに限定されない。この例の場合、同じタイミングで同じ場所に存在しなかった複数の人が、互いに感染条件を満たすこととなり得る。
【0030】
次に、関連情報について説明する。関連情報は、特定した他の人の画像、特定した他の人の外観の特徴量、特定した他の人の属性の推定結果、及び各人と特定した他の人との間で満たす感染条件の内容の中の少なくとも1つを含む。
【0031】
各人と特定した他の人との間で満たす感染条件の内容は、どのような条件を満たしたかを示す情報であってもよい。これは、条件が複数存在する場合を想定している。その他、各人と特定した他の人との間で満たす感染条件の内容は、その詳細な情報をさらに含んでもよい。例えば、各人と特定した他の人との間で満たす感染条件の内容は、「互いの最短の間隔」、「互いの間隔が基準値以下となった継続時間」、「互いの間隔が基準値以下となった頻度」、「顔の向きが相手の方を向いているのは一方か両方か」、「顔に所定の装着物をしていないのは一方か両方か」、「口が動いているのは一方か両方か」、「互いの間の身体の接触の継続時間」、「互いの間の身体の接触の頻度」、「どのようなパターンの接触があったか」等を含んでもよい。
【0032】
また、関連情報は、各人と特定した他の人との間で満たす感染条件の内容に基づき算出された感染危険度を含んでもよい。特定部12が、感染危険度を算出する。感染危険度の算出アルゴリズムは特段制限されないが、以下の内容を満たすように設計される。
【0033】
例えば、上述した条件1を満たす場合、互いの最短の間隔が小さくなるほど、感染危険度が大きくなる。また、上述した条件2を満たす場合、一方の顔の向きが相手の方を向いている場合よりも、両方の顔の向きが相手の方を向いている場合の方が、感染危険度が大きくなる。また、上述した条件3を満たす場合、一方が顔に所定の装着物をしていない場合よりも、両方が顔に所定の装着物をしていない場合の方が、感染危険度が大きくなる。
【0034】
また、上述した条件4を満たす場合、一方の口が動いている場合よりも、両方の口が動いている場合の方が、感染危険度が大きくなる。また、上述した条件5や6を満たす場合、より感染しやすいパターンの接触があるほど、感染危険度が大きくなる。この場合、複数の接触のパターン各々の感染しやすさが処理装置10内に登録されている。
【0035】
また、上述した条件1乃至6のいずれかを満たす場合、条件を満たす状態の継続時間が長いほど、感染危険度が大きくなる。また、上述した条件1乃至6のいずれかを満たす場合、条件を満たす状態が起きる頻度(回数、所定時間に対する当該状態を満たしている時間の割合等)が大きいほど、感染危険度が大きくなる。
【0036】
その他、関連情報は、感染条件を満たしたタイミング及び場所の少なくとも一方を示す情報を含んでもよい。感染条件を満たしたタイミングは、日時情報(年月日及び時刻)で示されてもよいし、動画ファイルの冒頭からの経過時間等で示されてもよい。場所を示す情報は、そのシーンを撮影した撮像装置20の識別情報であってもよいし、その場所の住所であってもよいし、その場所の名称であってもよいし、緯度・経度情報であってもよい。なお、その場所の住所、名称、緯度・経度情報等を採用する場合、予め、各撮像装置20に紐付けて、各撮像装置20の設置場所の住所、名称、緯度・経度情報等が画像処理装置10内に登録される。
【0037】
図4に、特定部12が生成した情報の一例を模式的に示す。当該情報は、記憶部13に記憶される。図示する例では、各人の通番に紐付けて、特定した他の人に関する関連情報(図中、「感染条件を満たす人に関する情報」)が登録されている。関連情報は、通番等を含む。通番は、上述の通り、検出された人各々に付与される識別情報である。
【0038】
次に、図5を用いて、画像に基づく2者間の距離の算出方法の一例を説明する。まず、特定部12は、基準となる人、又は他の人の画像内における高さtを算出する。ここでは、例えば画素数で表される。次いで、特定部12は、基準となる人から他の人までの画像内における距離dを算出する。ここでdは、tと同じ単位(例えば画素数)で表される。次いで、特定部12は、d/tを算出し、この値に上記した基準身長を乗ずることにより、基準となる人と他の人の距離を算出する。
【0039】
なお、基準身長は予め設定されている。撮像装置20が設置されている場所(例えば国)によって、この基準身長を変えてもよい。例えば基準身長は、対象となっている撮像装置20が設置されている国の成人の平均身長が用いられる。具体的な処理の例として、画像処理装置10は、基準身長を特定する情報を撮像装置20毎に記憶している。そして、特定部12は、処理対象となっている画像を生成した撮像装置20に対応する基準身長を読み出して使用する。
【0040】
また、特定部12は、画像処理によって高さtの算出対象となった人の属性(例えば性別及び年齢層の少なくとも一方)が推定できた場合、この属性によって基準身長を変更してもよい。
【0041】
なお、ほとんどの画像には、その画像を生成した撮像装置20に固有の歪が生じている。特定部12は、2者間の距離を算出する際、この歪を補正する処理を行うのが好ましい。特定部12は、画像内における人の位置に応じたひずみ補正処理を行う。一般的に、画像の歪は、例えば撮像装置20が有する光学系(例えばレンズ)、及びその撮像装置20の上下方向の向き(例えば水平面に対する角度)に起因している。そこで画像内における人の位置に応じたひずみ補正処理の内容は、撮像装置20が有する光学系(例えばレンズ)、及びその撮像装置20の上下方向の向きに応じて設定される。
【0042】
なお、本図を用いて説明した処理において、大きさがある程度規格化されている物体が画像に含まれていた場合、特定部12は、人の身長の代わりにこの物体の大きさを用いて2者間の距離を算出してもよい。
【0043】
次に、図6のフローチャートを用いて、画像処理装置10の処理の流れの一例を説明する。
【0044】
画像取得部15が1つの画像を取得すると(S10)、特徴量抽出部11は、その画像から人を検出する。そして、特徴量抽出部11は、検出した人の外観の特徴量を抽出し、記憶部13が記憶する情報(図3参照)を更新する(S11)。その後、特定部12は、その画像から検出された人毎に、感染条件を満たす人を特定し(S12)、記憶部13が記憶する情報(図4参照)を更新する(S13)。その後、画像処理装置10は、S10に戻って同様の処理を繰り返す。
【0045】
次に、画像処理装置10のハードウェア構成の一例を説明する。図7は、画像処理装置10のハードウェア構成例を示す図である。画像処理装置10は、バス1010、プロセッサ1020、メモリ1030、ストレージデバイス1040、入出力インタフェース1050、及びネットワークインタフェース1060を有する。
【0046】
バス1010は、プロセッサ1020、メモリ1030、ストレージデバイス1040、入出力インタフェース1050、及びネットワークインタフェース1060が、相互にデータを送受信するためのデータ伝送路である。ただし、プロセッサ1020などを互いに接続する方法は、バス接続に限定されない。
【0047】
プロセッサ1020は、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)などで実現されるプロセッサである。
【0048】
メモリ1030は、RAM(Random Access Memory)などで実現される主記憶装置である。
【0049】
ストレージデバイス1040は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、メモリカード、又はROM(Read Only Memory)などで実現される補助記憶装置である。ストレージデバイス1040は画像処理装置10の各機能を実現するプログラムモジュールを記憶している。プロセッサ1020がこれら各プログラムモジュールをメモリ1030上に読み込んで実行することで、そのプログラムモジュールに対応する各機能が実現される。また、ストレージデバイス1040は記憶部13としても機能する。
【0050】
入出力インタフェース1050は、画像処理装置10と各種入出力機器とを接続するためのインタフェースである。
【0051】
ネットワークインタフェース1060は、画像処理装置10をネットワークに接続するためのインタフェースである。このネットワークは、例えばLAN(Local Area Network)やWAN(Wide Area Network)である。ネットワークインタフェース1060がネットワークに接続する方法は、無線接続であってもよいし、有線接続であってもよい。画像処理装置10は、ネットワークインタフェース1060を介して撮像装置20と通信してもよい。
【0052】
「作用効果」
本実施形態の画像処理装置10は、複数の人を含む画像を処理することにより、画像に含まれる人の中から互いに感染条件を満たした人の組み合わせを特定し、特定結果を示すデータベースを生成することができる。当該データベースを利用することで、所定の人(例えば、感染症にかかった人)との間で感染条件を満たした人を特定できるようになる。
【0053】
また、画像処理装置10は、各人との間で感染条件を満たした人に関連する情報として、その人の画像、その人の外観の特徴量、その人の属性の推定結果を登録することができる。これらの情報を利用することで、所定の人(例えば、感染症にかかった人)との間で感染条件を満たした人を見つけ出すことが可能となる。
【0054】
また、画像処理装置10は、各人との間で感染条件を満たした人に関連する情報として、その人の属性の推定結果を登録することができる。この情報を利用することで、所定の人(例えば、感染症にかかった人)との間で感染条件を満たした人の中から、さらに所定の属性に該当する人を検索(絞込み)することが可能となる。
【0055】
また、画像処理装置10は、各人との間で感染条件を満たした人に関連する情報として、各人との間で満たす感染条件の内容を登録することができる。この情報を利用することで、所定の人(例えば、感染症にかかった人)との間で感染条件を満たした人の中から、さらにその所定の人との間で満たす感染条件の内容が所定条件を満たす人を検索(絞込み)することが可能となる。
【0056】
また、画像処理装置10は、各人との間で感染条件を満たした人に関連する情報として、各人との間で満たす感染条件の内容に基づき算出された感染危険度を登録することができる。この情報を利用することで、所定の人(例えば、感染症にかかった人)との間で感染条件を満たした人の中から、さらに感染危険度が所定条件を満たす人を検索(絞込み)することが可能となる。
【0057】
また、画像処理装置10は、互いの距離、人の顔の向き、人の装着物、人の口の動き及び身体の接触の中の少なくとも1つに基づき定義される感染条件を満たす人を検出することができる。また、画像処理装置10は、「同じ物に触れること」である感染条件を満たす人を検出することができる。このような画像処理装置10によれば、各人から感染する可能性がある人を精度よく検出することができる。
【0058】
<第2の実施形態>
本実施形態の画像処理装置10は、第1の実施形態で説明した機能により生成したデータベースの中から、所望の情報を検索する機能をさらに有する点で、第1の実施形態の画像処理装置10と異なる。
【0059】
図8に、本実施形態の画像処理装置10の機能ブロック図の一例を示す。検索部14を有する点で、第1の実施形態の画像処理装置10と異なる。
【0060】
検索部14は、指定された外観の特徴量に紐付けられている関連情報を検索し、出力する。例えば、人を含む画像が検索条件として入力されてもよい。この場合、検索部14は、当該画像を解析して画像に含まれる人の外観の特徴量を抽出する。そして、検索部14は、抽出した外観の特徴量を検索クエリとして、記憶部13に記憶されている関連情報を検索する。
【0061】
なお、関連情報に含まれるその他の情報を用いて、検索条件が定義できてもよい。例えば、第1の実施形態で説明した「各人と特定した他の人との間で満たす感染条件の内容」に含まれる情報を用いて、検索条件が定義できてもよい。例えば、「どの条件を満たしたか」、「互いの最短の間隔」、「互いの間隔が基準値以下となった継続時間」、「互いの間隔が基準値以下となった頻度」、「顔の向きが相手の方を向いているのは一方か両方か」、「顔に所定の装着物をしていないのは一方か両方か」、「口が動いているのは一方か両方か」、「互いの間の身体の接触の継続時間」、「互いの間の身体の接触の頻度」、「どのようなパターンの接触があったか」、「感染危険度」、「感染条件を満たした場所」、「感染条件を満たしたタイミング」等により、所望の関連情報が検索できてもよい。
【0062】
検索部14は、検索結果(検索条件に合致する関連情報)を所定の出力装置を介して出力する。出力装置は、ディスプレイ、投影装置等であるが、これらに限定されない。
【0063】
次に、図9のフローチャートを用いて、画像処理装置10の処理の流れの一例を説明する。検索部14は、検索条件を取得すると(S20)、その検索条件に合致する関連情報を検索し(S21)、検索結果を出力する(S22)。
【0064】
本実施形態の画像処理装置10のその他の構成は、第1の実施形態の画像処理装置10の構成と同様である。
【0065】
本実施形態の画像処理装置10によれば、第1の実施形態の画像処理装置10と同様の作用効果が実現される。また、本実施形態の画像処理装置10によれば、所望の人、例えば所定の人(例えば、感染症にかかった人)との間で感染条件を満たした人や、所定の態様で所定の人との間で感染条件を満たした人等を検索できる。また、所定の態様は、「どの条件を満たしたか」、「互いの最短の間隔」、「互いの間隔が基準値以下となった継続時間」、「互いの間隔が基準値以下となった頻度」、「顔の向きが相手の方を向いているのは一方か両方か」、「顔に所定の装着物をしていないのは一方か両方か」、「口が動いているのは一方か両方か」、「互いの間の身体の接触の継続時間」、「互いの間の身体の接触の頻度」、「どのようなパターンの接触があったか」、「感染危険度」、「感染条件を満たした場所」、「感染条件を満たしたタイミング」等の各種項目により指定可能である。このため、所望の関連情報を効率的に検索することができる。
【0066】
ここで、変形例を説明する。画像処理装置10は、図10及び図11に示すような画像をディスプレイ等の出力装置に表示させてもよい。これらの図において、画像処理装置10は、人ごとに、当該人を中心とした社会的距離の推奨値(例えば上記した基準値)の範囲を示すマークを表示させる。そしてある人に対応するマークとその近くの人に対応するマークとが重なった場合、すなわちある人とその近くの人の距離が社会的距離の推奨値以下になった場合、これら2人それぞれに対応するマーク(例えば、図10および図11の人P、P)を、他の人に対応するマーク(例えば、図10および図11の人P、P、P、P)とは異なる態様で表示させる。態様の異ならせ方は、例えば表示色を変えたり、マークを構成する線の態様(実線、点線、及び一点鎖線など)を異ならせるなどである。画像処理装置10は、表示色を変える場合、例えば通常の状態のマークを青色で表示し、2つのマークが重なっている場合はこれら2つのマークを赤色で表示させる。
【0067】
図10に示す例では、画像処理装置10は、感染リスク情報を生成するときに用いた画像(動画の場合もある)に、上記したマークを重ねている。一方、図11に示す例では、人の配置を平面図で示したうえで、当該平面図に上記したマークを重ねている。画像処理装置10は、図10に示す表示及び図11に示す表示を、同時に出力装置に表示させてもよい。
【0068】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【0069】
また、上述の説明で用いた複数のフローチャートでは、複数の工程(処理)が順番に記載されているが、各実施形態で実行される工程の実行順序は、その記載の順番に制限されない。各実施形態では、図示される工程の順番を内容的に支障のない範囲で変更することができる。また、上述の各実施形態は、内容が相反しない範囲で組み合わせることができる。
【0070】
上記の実施形態の一部または全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下に限られない。
1. 複数の人を含む画像を処理することにより、前記人各々の外観の特徴量を抽出する特徴量抽出手段と、
前記画像を処理することにより、前記人各々との間で感染条件を満たす他の前記人を特定し、前記人各々の前記外観の特徴量に紐付けて、特定した他の前記人に関する関連情報を登録する特定手段と、
を有する画像処理装置。
2. 指定された前記外観の特徴量に紐付けられている前記関連情報を検索し、出力する検索手段をさらに有する1に記載の画像処理装置。
3. 前記関連情報は、他の前記人の画像、他の前記人の前記外観の特徴量、他の前記人の属性の推定結果、及び前記人各々との間で満たす前記感染条件の内容の中の少なくとも1つを含む1又は2に記載の画像処理装置。
4. 前記関連情報は、前記人各々との間で満たす前記感染条件の内容に基づき算出された感染危険度を含む1から3のいずれかに記載の画像処理装置。
5. 前記関連情報は、前記感染条件を満たしたタイミング及び場所の少なくとも一方を示す情報を含む1から4のいずれかに記載の画像処理装置。
6. 前記感染条件は、互いの距離、前記人の顔の向き、前記人の装着物、前記人の口の動き及び身体の接触の中の少なくとも1つに基づき定義される1から5のいずれかに記載の画像処理装置。
7. 前記感染条件は、前記人が触れた物と同じ物に触れることである1から6のいずれかに記載の画像処理装置。
8. コンピュータが、
複数の人を含む画像を処理することにより、前記人各々の外観の特徴量を抽出し、
前記画像を処理することにより、前記人各々との間で感染条件を満たす他の前記人を特定し、前記人各々の前記外観の特徴量に紐付けて、特定した他の前記人に関する関連情報を登録する画像処理方法。
9. コンピュータを、
複数の人を含む画像を処理することにより、前記人各々の外観の特徴量を抽出する特徴量抽出手段、
前記画像を処理することにより、前記人各々との間で感染条件を満たす他の前記人を特定し、前記人各々の前記外観の特徴量に紐付けて、特定した他の前記人に関する関連情報を登録する特定手段、
として機能させるプログラム。
【0071】
この出願は、2020年6月5日に出願された日本出願特願2020-098404号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【符号の説明】
【0072】
10 画像処理装置
11 特徴量抽出部
12 特定部
13 記憶部
14 検索部
15 画像取得部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11