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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】情報処理装置、制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01M 17/007 20060101AFI20240312BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20240312BHJP
   G01S 5/00 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
G01M17/007 H
B60R16/02 650J
G01S5/00
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022533289
(86)(22)【出願日】2020-06-29
(86)【国際出願番号】 JP2020025563
(87)【国際公開番号】W WO2022003790
(87)【国際公開日】2022-01-06
【審査請求日】2023-05-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107331
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 聡延
(74)【代理人】
【識別番号】100104765
【弁理士】
【氏名又は名称】江上 達夫
(74)【代理人】
【識別番号】100131015
【弁理士】
【氏名又は名称】三輪 浩誉
(72)【発明者】
【氏名】榮 純明
(72)【発明者】
【氏名】磯山 和彦
(72)【発明者】
【氏名】西岡 淳
(72)【発明者】
【氏名】小林 佑嗣
【審査官】福田 裕司
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-123351(JP,A)
【文献】特開2005-202762(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0052328(US,A1)
【文献】特開2014-089605(JP,A)
【文献】特開2018-097397(JP,A)
【文献】特開2021-022079(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 17/007
B60R 16/02
G01S 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
推論対象機器の移動履歴の地理的な中心地に基づき、前記推論対象機器の状態に関する推論を行うエリア毎の推論モデルから、使用すべき適合推論モデルを選択する選択手段と、
前記推論対象機器において取得されたデータを用いた前記適合推論モデルの推論結果に基づき、前記推論対象機器の状態に関する推論を行う推論手段と、
を有する情報処理装置。
【請求項2】
前記選択手段は、対象とする期間が異なる前記移動履歴に基づく複数の前記中心地の各々に対し、前記適合推論モデルを選択し、
前記推論手段は、前記中心地の各々に対する前記適合推論モデルの推論結果を統合することで、前記推論対象機器の状態に関する推論を行う、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記推論手段は、前記中心地の各々に対する前記適合推論モデルの推論結果を、前記期間の長さに応じた重み付けにより統合する、請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記選択手段は、前記中心地毎に複数の前記適合推論モデルを選択し、
前記推論手段は、前記中心地毎に前記複数の適合推論モデルの推論結果を統合し、前記中心地毎の当該推論結果をさらに統合することで、前記推論対象機器の状態に関する推論を行う、請求項2または3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記期間は、前記推論対象機器に対する前回のメンテナンスが行われた日時以後の期間内において定められる、請求項2~4のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記エリア毎の推論モデルは、エリア毎に取得された学習用データに基づきエリア毎に学習された学習モデルである、請求項1~5のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記推論手段は、前記状態に関する推論として、前記状態の異常検知、前記状態の分類、又は当該状態を表すスコアの算出の少なくともいずれかを行う、請求項1~6のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記状態の異常を検知した場合、前記異常が生じた原因となる前記推論対象機器の移動に関する情報を出力する、又は、前記推論対象機器に関する制御を行う出力制御手段をさらに有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項9】
コンピュータにより、
推論対象機器の移動履歴の地理的な中心地に基づき、前記推論対象機器の状態に関する推論を行うエリア毎の推論モデルから、使用すべき適合推論モデルを選択し、
前記推論対象機器において取得されたデータを用いた前記適合推論モデルの推論結果に基づき、前記推論対象機器の状態に関する推論を行う、
制御方法。
【請求項10】
推論対象機器の移動履歴の地理的な中心地に基づき、前記推論対象機器の状態に関する推論を行うエリア毎の推論モデルから、使用すべき適合推論モデルを選択し、
前記推論対象機器において取得されたデータを用いた前記適合推論モデルの推論結果に基づき、前記推論対象機器の状態に関する推論を行う処理をコンピュータに実行させるプログラ
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、地理的特性に影響を受ける機器の状態に関する推論を行う情報処理装置、制御方法及び記憶媒体の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
車両などの移動体の故障に関する推論を行う技術が存在する。例えば、特許文献1には、車両検出データ及び修理情報から不具合の原因を推定する規則情報を生成する車両用故障解析サーバであって、過去に同一地域にて生成された規則情報に基づいて、対象の車両に対する不具合の原因を推定する車両用故障解析サーバが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-14498号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
深層学習などの機械学習に基づくモデルを用い、車両などの地理的特性に影響を受ける機器の状態に関する推論を行う場合、学習時の環境と推論時の環境が異なると精度が低下することがある。
【0005】
本開示では、上述した課題を鑑み、地理的特性に影響を受ける機器の状態に関する推論を好適に行うことが可能な情報処理装置、制御方法及び記憶媒体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
情報処理装置の一の態様は、推論対象機器の移動履歴の地理的な中心地に基づき、前記推論対象機器の状態に関する推論を行うエリア毎の推論モデルから、使用すべき適合推論モデルを選択する選択手段と、前記推論対象機器において取得されたデータを用いた前記適合推論モデルの推論結果に基づき、前記推論対象機器の状態に関する推論を行う推論手段と、を有する情報処理装置である。
【0007】
制御方法の一の態様は、コンピュータにより、推論対象機器の移動履歴の地理的な中心地に基づき、前記推論対象機器の状態に関する推論を行うエリア毎の推論モデルから、使用すべき適合推論モデルを選択し、前記推論対象機器において取得されたデータを用いた前記適合推論モデルの推論結果に基づき、前記推論対象機器の状態に関する推論を行う、制御方法である。
【0008】
プログラムの一の態様は、推論対象機器の移動履歴の地理的な中心地に基づき、前記推論対象機器の状態に関する推論を行うエリア毎の推論モデルから、使用すべき適合推論モデルを選択し、前記推論対象機器において取得されたデータを用いた前記適合推論モデルの推論結果に基づき、前記推論対象機器の状態に関する推論を行う処理をコンピュータに実行させるプログラムである。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、地理的特性に影響を受ける推論対象機器の状態に関する推論を好適に実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態に係る推論システムの構成を示す。
図2】(A)データセンタのブロック構成の一例を示す。(B)推論対象機器のブロック構成の一例を示す。
図3】推論システムの機能ブロックの一例である。
図4】(A)推論モデルが生成されるエリアを明示した地図を示す。(B)推論対象機器の移動軌跡と中心地とを地図上に明示した図である。
図5】最終推論結果の生成処理の概要を示す図である。
図6】エリア毎の推論モデルの学習用データの生成の概要を示す図である。
図7】エリアに対応する推論モデルの学習の概要を示す図である。
図8】推論結果画面の表示例である。
図9】第1実施形態における推論処理の手順を示すフローチャートの一例である。
図10】変形例3における推論対象機器の機能ブロックの構成図を示す。
図11】変形例4に係るデータセンタ及び推論対象機器の機能的なブロック構成を示す。
図12】第2実施形態における情報処理装置の概略構成図である。
図13】第2実施形態において情報処理装置が実行するフローチャートの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、情報処理装置、制御方法及び記憶媒体の実施形態について説明する。
【0012】
<第1実施形態>
(1)システム構成
図1は、第1実施形態に係る推論システム100の構成を示す。推論システム100は、推論対象機器4(図1では車両)の状態に関する推論を、エリア毎に適した推論モデルを組み合わせて使用することで実行する。推論システム100は、複数のデータセンタ1(1A~1C、…)と、基地局3と、推論対象機器4とを有する。データセンタ1と基地局3、又は、データセンタ1同士は、ネットワーク2を介してデータ通信を行う。
【0013】
データセンタ1は、複数台により構成され、各データセンタ1は、担当するエリアとして予め割り当てられたエリアに存在する推論対象機器とデータ通信を行い、当該推論対象機器の状態に関する推論を行う。以後の説明では、便宜上、データセンタ1Aが担当するエリアに推論対象機器4が存在するものとし、データセンタ1Aを「エリア担当データセンタ1A」とも呼ぶ。また、「エリア」とは、特に言及がない限り、推論モデルを生成するために論理上区切ったエリアを指すものとする。
【0014】
エリア担当データセンタ1Aは、推論対象機器4から供給される推論の実行を要求する要求情報「S1」に基づき、推論対象機器4の状態に関する推論を行い、上記要求に対する応答を示す応答情報「S2」を、推論対象機器4に供給する。また、各データセンタ1は、夫々が割り当てられたエリアにおいて適した推論モデルに関する情報を有しており、エリア担当データセンタ1Aは、推論対象機器4の状態に関する推論に必要な推論モデルに関する追加モデル情報「S3」を、ネットワーク2を介して他のデータセンタ1(1B、1C)から受信する。なお、各データセンタ1は、複数の装置から構成されてもよい。エリア担当データセンタ1Aは、本開示における「情報処理装置」の一例である。
【0015】
基地局3は、各データセンタ1が担当するエリア毎に1又は複数設けられており、データセンタ1と推論対象機器4とのデータ通信の中継を行う。
【0016】
推論対象機器4は、移動体又は携帯型の機器であり、異常検知などの推論の対象となる機器である。図1の例では、推論対象機器4は、車両であり、車両全体又は車両を構成する個々の部品(例えば、エンジン、バッテリ、サスペンション等)に対する状態の推論が行われる。ここで、状態の推論として、例えば、推論対象機器4の異常の有無の判定、推論対象機器4の状態の分類(例えば生じた故障の分類)、又は推論対象機器4の状態を表すスコアの算出などが行われる。推論対象機器4には、位置及び状態を測定するためのセンサが設けられており、推論対象機器4は、センサが生成する出力データなどを含む要求情報S1を、基地局3を介し、エリア担当データセンタ1Aに送信する。また、推論対象機器4は、エリア担当データセンタ1Aから受信する応答情報S2に基づき、推論結果に関する出力(表示、音出力、又は/及び制御)を行う。なお、推論対象機器4は、車両に限らず、スマートフォン(携帯型端末)などの地理的特性に影響を受ける任意の機器であってもよい。
【0017】
ここで、推論結果に関する出力として制御を行う場合について補足説明する。例えば、推論対象機器4は、推論の結果、車両で駆動系の故障の予兆が検知された場合、安全に最寄りの整備工場に到達できるように、時速の上限を通常時よりも低く設定する。他の例では、推論対象機器4は、推論の結果、車両で駆動系の故障の予兆が検知された場合、最寄りの整備工場に車両が到達するための運転支援(ナビゲーション又は自動運転)を行う。このように、推論対象機器4は、推論結果に応じて推論対象機器4に関する制御を行うことで、推論対象機器4の故障の発生時でも安全性を好適に確保することができる。
【0018】
(2)ブロック構成
図2(A)は、データセンタ1のブロック構成の一例を示す。データセンタ1は、機能的には、制御部11と、記憶部12と、通信部13とを含む。制御部11、記憶部12及び通信部13は、データバス19を介して接続されている。
【0019】
制御部11は、記憶部12に記憶されているプログラムを実行することにより、所定の処理を実行する。制御部11は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、量子プロセッサなどである。制御部11が実行する処理については、図3の機能ブロック図を参照して具体的に説明する。
【0020】
記憶部12は、RAM(Random Access Memory)などの揮発性メモリと、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリなどの不揮発性メモリとを含む各種のメモリにより構成される。また、記憶部12には、データセンタ1が所定の処理を実行するためのプログラムが記憶される。なお、データセンタ1が実行するプログラムは、記憶部12以外の記憶媒体に記憶されてもよい。
【0021】
また、記憶部12は、モデル情報20と、学習用データ21とを有する。また、記憶部12は、学習により生成された各推論モデルに対応するエリアに関する情報、各エリアに対応する推論モデルの情報を保有する他のデータセンタ1に関する情報など、後述するデータセンタ1の処理に必要な種々の情報を記憶する。
【0022】
モデル情報20は、推論対象機器4の状態を推定する推論モデルに関する情報である。ここで、各データセンタ1は、当該データセンタ1が担当するエリアに適した推論モデルに関するモデル情報20を有している。エリアに適した推論モデルは、対象のエリアにおいて取得された学習用データ21に基づきエリア毎に学習された学習モデルであり、記憶部12は、この学習済の学習モデルのパラメータを、モデル情報20として記憶している。この場合、推論モデルは、推論対象機器において検出されたデータが入力された場合に、推論対象機器の状態に関する推論結果を出力するように学習された学習モデルとなる。上述のデータは、例えば、推論対象機器に設けられたセンサの出力データ(「センサデータ」とも呼ぶ。)又は/及び推論対象機器における制御データである。上記の制御データは、例えば推論対象機器が車両の場合には、ブレーキペダルの踏み込み量に関する情報、アクセルペダルの踏み込み量(スロットル開度)に関する情報、モータ又はエンジンの出力に関する情報などが含まれる。また、推論モデルは、推論結果として、例えば、異常の有無、異常の種類、異常の度合いを示すスコアの少なくともいずれかを示す情報を出力する。
【0023】
学習用データ21は、推論モデルの学習に用いるデータ(訓練用データ)である。モデル情報20の生成及び学習用データ21の収集については、図6及び図7を参照して後述する。
【0024】
通信部13は、制御部11の制御に基づき、推論対象機器4などの外部装置とデータの送受信を有線又は無線により行うための通信インターフェースであり、ネットワークアダプタなどが該当する。
【0025】
なお、データセンタ1の構成は、図2(A)に示す構成に限定されない。例えば、データセンタ1は、管理者などのユーザによる入力を受け付ける入力部、ディスプレイなどの表示部、又はスピーカなどの音出力装置の少なくともいずれかと接続又はこれらの少なくともいずれかを内蔵してもよい。
【0026】
図2(B)は、推論対象機器4のブロック構成の一例を示す。推論対象機器4は、機能的には、制御部41と、記憶部42と、通信部43と、インターフェース44と、入力部45と、出力部46と、制御部47と、センサ群50と、を含む。これらの推論対象機器4の各要素は、データバス49を介して接続されている。なお、推論対象機器4が車両の場合、図2(B)に示す推論対象機器4の各要素は、車両自体により実現されてよく、車両に搭載された車載器により実現されてもよい。
【0027】
制御部41は、記憶部42に記憶されているプログラムを実行することにより、所定の処理を実行する。制御部41は、CPU、GPU、量子プロセッサなどである。記憶部42は、揮発性メモリ及び不揮発性メモリを含む各種のメモリにより構成される。なお、推論対象機器4が車両の場合、制御部41は、車両のECU(Electronicc Control Unit)であってもよく、車両の運転を支援する車載器であってもよい。後者の場合、車載器は、CAN(Controller Area Network)などの通信プロトコルを用いて、車両のECUから種々の情報を受信してもよい。
【0028】
記憶部42は、揮発性メモリと不揮発性メモリとを含む各種のメモリにより構成され、推論対象機器4が所定の処理を実行するためのプログラムが記憶される。また、記憶部42は、作業メモリとして使用される。また、記憶部42は、移動履歴情報23を記憶する。移動履歴情報23は、例えば、推論対象機器4が生成した位置情報が時刻情報と共に関連付けられたデータであり、推論対象機器4の移動時に一定又は不定の間隔により更新される。移動履歴情報23は、所定期間において推論対象機器4が移動した地理的な中心地の算出に用いられる。
【0029】
通信部43は、制御部41の制御に基づき、データセンタ1などの外部装置とデータの送受信を有線又は無線により行うための通信インターフェースであり、ネットワークアダプタなどが該当する。インターフェース44は、入力部45、出力部46、制御部47及びセンサ群50のインターフェース動作を行う。
【0030】
入力部45は、例えば、ボタン、スイッチ、タッチパネル、又は音声入力装置である。出力部46は、例えば、ディスプレイ、プロジェクタなどの表示装置、又は、スピーカなどの音出力装置である。センサ群50は、推論対象機器4に設けられた各種センサであり、絶対的な位置情報を生成するGPS受信機58と、推論対象機器4の状態を検知するために推論対象機器4に設けられた状態検知センサ59とを含んでいる。状態検知センサ59は、推論対象機器4の1又は複数の物理量(例えば、電圧、電流、速度、力、トルク、振動量等)を測定する。なお、入力部45及び出力部46は、推論対象機器4とインターフェース44を介して電気的に接続する外部装置であってもよい。また、インターフェース44は、入力部45、出力部46及びセンサ群50以外の任意の装置のインターフェース動作を行ってもよい。制御部47は、推論対象機器4が車両などの移動体である場合の移動体の運転支援に関する制御を行う。例えば、制御部47は、推論の結果、車両で駆動系の故障の予兆が検知された場合、制御部41の指令に基づき、時速の上限を通常時よりも低く設定したり、最寄りの整備工場に車両が到達するための運転支援(ナビゲーション及び自動運転を含む)を行ったりする。このように、制御部47は、制御部41の指令に基づき、推論対象機器4の移動に関する制限又は運転支援を行う。例えば、制御部41がECUである場合には、制御部47は車載器であってもよく、その逆であってもよい。
【0031】
(3)機能ブロック
次に、エリア担当データセンタ1A及び推論対象機器4が実行する処理の詳細について説明する。概略的には、エリア担当データセンタ1Aは、推論対象機器4の移動履歴の地理的な中心地に基づき、各データセンタ1が保有するエリア毎の推論モデルから、使用する推論モデルを選択し、選択した推論モデルによる推論結果に基づき、推論対象機器4の状態に関する推論を行う。以後では、推論対象機器4の移動履歴の地理的な中心地を「中心地Pc」と呼び、中心地Pcに基づき選択した推論モデルを「適合推論モデルMa」と呼ぶ。
【0032】
図3は、推論システム100の機能ブロックの一例である。エリア担当データセンタ1Aの制御部11は、機能的には、要求受信部31と、推論計画部32と、モデル情報送受信部33と、推論実行部34と、推論統合部35と、出力制御部36とを有する。また、推論対象機器4の制御部41は、機能的には、移動履歴生成部51と、中心地算出部52と、推論要求部53と、出力制御部54とを有する。なお、図3では、データの授受が行われるブロック同士を実線により結んでいるが、データの授受が行われるブロックの組合せは図3に限定されない。後述する他の機能ブロックの図においても同様である。
【0033】
まず、推論対象機器4が有する各機能について説明する。
【0034】
移動履歴生成部51は、GPS受信機58の出力信号などに基づいて推論対象機器4の現在位置を特定し、特定した現在位置を示す位置情報を移動履歴情報23に記憶する。なお、移動履歴生成部51は、生成した位置情報を全て移動履歴情報23に記憶する代わりに、生成した位置情報に基づく統計情報であってもよい。この場合、例えば、移動履歴生成部51は、中心地Pcの算出において対象とする期間内における位置座標の平均値及びサンプル数などの情報を、移動履歴情報23として記憶してもよい。
【0035】
中心地算出部52は、移動履歴情報23を参照して中心地Pcの算出を行う。この場合、中心地算出部52は、移動履歴を参照する期間を複数設定し、設定した複数の期間ごとに中心地Pcの算出を行う。以後では、中心地Pcの算出において移動履歴を参照する期間を、「中心地算出期間Tpc」とも呼ぶ。
【0036】
例えば、中心地算出部52は、現在(即ち処理時点)から第1時間長前までの期間を短期の中心地算出期間Tpcとし、現在から第2時間長前までの期間を中期の中心地算出期間Tpcとし、現在から第3時間長前までの期間を長期の中心地算出期間Tpcとする。ここでは、第2時間長は、第1時間長よりも長く、かつ、第3時間長よりも短いものとする。そして、短期、中期、及び長期のそれぞれの中心地算出期間Tpcにおける移動履歴を移動履歴情報23から抽出し、短期、中期、及び長期のそれぞれの中心地算出期間Tpcに対応する中心地Pcの算出を行う。例えば、中心地算出部52は、短期の中心地算出期間Tpcに対応する中心地Pcを算出する場合、短期の中心地算出期間Tpcにおいて生成された位置情報を移動履歴情報23から抽出する。そして、中心地算出部52は、抽出した位置情報が示す位置座標(例えば緯度及び経度などの絶対座標)の平均を、短期の中心地算出期間Tpcに対応する中心地Pcとして算出する。
【0037】
ここで、中心地算出期間Tpcの設定について補足説明する。中心地算出期間Tpcは、互いに重複が生じない期間に設定されてもよい。例えば、中心地算出部52は、短期の中心地算出期間Tpcを現在から第1日時までの期間、中期の中心地算出期間Tpcを第1日時から第1日時より前の第2日時までの期間、長期の中心地算出期間Tpcを第2日時から第2日時より前の第3日時までの期間に設定してもよい。また、中心地Pcの算出において対象とする期間は、推論対象機器4の前回のメンテナンスが行われた日時を基準として定められてもよい。この場合、中心地算出部52は、前回のメンテナンス日時から現在までの期間内において、中心地算出期間Tpcを設定する。この場合、例えば、中心地算出部52は、推論対象機器4のメンテナンスに関する情報を、記憶部42又はデータセンタ1などの外部装置から取得することで、上述のメンテナンス日時を認識する。また、中心地算出期間Tpcは、例えば、初期値が記憶部42に記憶されており、入力部45によるユーザ入力に基づき適宜更新されてもよい。また、設定する中心地算出期間Tpcの個数(即ち中心地Pcの個数)は、2個以下であってもよく、4個以上であってもよい。
【0038】
推論要求部53は、推論対象機器4の状態に関する推論を要求する要求情報S1を生成し、通信部43を介してエリア担当データセンタ1Aに要求情報S1を送信する。この場合、推論要求部53は、中心地算出部52が算出した中心地Pc、及び、状態検知センサ59が現時点(即ち要求情報S1を生成するタイミング)において出力するセンサデータを要求情報S1に含める。センサデータは、推論モデルの入力データとして用いられる。なお、推論要求部53は、上述のセンサデータに加えて、又はこれに代えて、推論対象機器4において生成される制御データを要求情報S1に含めてもよい。上記の制御データは、例えば推論対象機器4が車両の場合には、ブレーキペダルの踏み込み量に関する情報、アクセルペダルの踏み込み量(スロットル開度)に関する情報、モータ又はエンジンの出力に関する情報などが含まれる。制御データは、推論モデルの入力データとして用いられる。
【0039】
なお、推論要求部53は、予め定められた時間間隔により要求情報S1を生成してもよく、ユーザ入力よる実行指示を検知した場合に要求情報S1を生成してもよい。前者において、推論対象機器4の部品毎に推論が行われる場合には、例えば、部品毎に推論を実行すべき時間間隔を示す情報が記憶部42に記憶されている。
【0040】
出力制御部54は、エリア担当データセンタ1Aから通信部43を介して応答情報S2を受信し、受信した応答情報S2に基づき出力部46を制御する。この場合、例えば、応答情報S2は、推論対象機器4の状態に関する推論結果を示す表示情報であり、出力制御部54は、表示情報に基づき上記の推論結果に関する画面(「推論結果画面」とも呼ぶ。)を出力部46に表示させる。この推論結果画面については、図9を参照して後述する。なお、出力制御部54は、データセンタ1による推論結果を表示する代わりに、音声又は警告音等により、推論対象機器4の利用者に推論結果を通知してもよい。
【0041】
次に、エリア担当データセンタ1Aが有する各機能について説明する。
【0042】
要求受信部31は、推論対象機器4から通信部13を介して要求情報S1を受信し、受信した要求情報S1を推論計画部32に供給する。
【0043】
推論計画部32は、要求情報S1に含まれる中心地Pcに基づき、中心地Pc毎に適合推論モデルMaを決定する。この場合、推論計画部32は、中心地Pcの各々について、各データセンタ1が担当するエリアと中心地Pcとの距離(「中心地・エリア距離L」とも呼ぶ。)を算出し、算出した中心地・エリア距離Lに基づき、適合推論モデルMaとする推論モデルを決定する。この場合、例えば、推論計画部32は、対象となる中心地Pcと、予め定められたエリアの代表地点との距離を中心地・エリア距離Lとして算出し、中心地・エリア距離Lが最も近い所定個数分のエリアに対応する推論モデルを、適合推論モデルMaとして定める。なお、推論計画部32は、所定個数分のエリアに対応する推論モデルを適合推論モデルMaとして定める代わりに、中心地・エリア距離Lが閾値未満となるエリアに対応する推論モデルを、適合推論モデルMaとして定めてもよい。上述の代表地点の位置、所定個数、及び閾値等の情報は、例えば、記憶部12に予め記憶されている。
【0044】
モデル情報送受信部33は、モデル情報20に登録されていない適合推論モデルMaが存在する場合、当該適合推論モデルMaに関する情報を記憶する他のデータセンタ1に対し、通信部13を介して当該情報の送信要求を行う。そして、モデル情報送受信部33は、上記の送信要求の応答として、モデル情報20に登録されていない適合推論モデルMaを示す追加モデル情報S3を、通信部13を介して受信し、追加モデル情報S3に基づきモデル情報20を更新する。また、モデル情報送受信部33は、他のデータセンタ1からモデル情報20に記憶されている推論モデルの要求を受信した場合には、要求された推論モデルに対応する追加モデル情報S3を、要求元のデータセンタ1に送信する。なお、モデル情報送受信部33は、推論計画部32の処理に関わらず、他のデータセンタ1が有する最新の推論モデルを示す追加モデル情報S3の送信要求を、定期的に他のデータセンタ1に対して行ってもよい。この場合、モデル情報送受信部33は、上記の送信要求に応じて他のデータセンタ1から受信する追加モデル情報S3に基づき、定期的にモデル情報20の更新を行う。
【0045】
推論実行部34は、モデル情報20を参照することで、推論計画部32が決定した適合推論モデルMaを構成し、構成した各適合推論モデルMaに要求情報S1に含まれる推論対象機器4のセンサデータ又は/及び制御データを入力することで、適合推論モデルMa毎の推論結果を取得する。そして、推論実行部34は、取得した適合推論モデルMa毎の推論結果を、推論統合部35に供給する。
【0046】
推論統合部35は、推論実行部34から供給される各適合推論モデルMaの推論結果を中心地Pc毎に統合し、さらに中心地Pc毎に統合された推論結果を統合することで、推論対象機器4の状態に関する最終的な推論結果(「最終推論結果」とも呼ぶ。)を生成する。
【0047】
まず、推論統合部35は、中心地Pc毎に適合推論モデルMaの推論結果を統合する場合、各適合推論モデルMaの推論結果の平均化又は多数決等により統合を行う。上記の統合は、アンサンブル学習において用いられる種々の方法に基づくものであってもよい。なお、推論統合部35は、中心地・エリア距離Lに基づき各適合推論モデルMaの推論結果の重み付けを行ってもよい。この場合、推論統合部35は、各適合推論モデルMaに対して推論計画部32が算出した中心地・エリア距離Lが短いほど高い重みとなるように、各適合推論モデルMaの推論結果の重みを決定する。
【0048】
また、推論統合部35は、中心地Pc毎に統合された推論結果を、中心地Pc毎に対応する中心地算出期間Tpcの長さ(即ち算出に用いた移動履歴の長さ)に基づいて重み付けすることで、最終推論結果を算出する。この場合、推論統合部35は、対応する中心地算出期間Tpcが長いほど高い重みとなるように、中心地Pc毎の推論結果に対する重みを決定する。この重み付け処理は、アンサンブル学習において用いられる種々の方法に基づくものであってもよい。推論統合部35の処理の具体例については、図5を参照して具体的に説明する。
【0049】
出力制御部36は、推論統合部35が生成した最終推論結果に基づき応答情報S2を生成し、生成した応答情報S2を、通信部13を介して推論対象機器4に送信する。なお、出力制御部36は、推論対象機器4に応答情報S2を送信するのに代えて、又はこれに加えて、推論対象機器4の管理を行う管理センタへ応答情報S2を送信してもよい。例えば、推論対象機器4がシャアカーである場合、最終推論結果の内容によって、ドライバーに通知すべきもの、ドライバーと管理センタ(オペレーションセンタ)の双方に通知すべきもの、管理センタに通知すべきもの、の少なくとも3パターンが存在する。以上を勘案し、出力制御部36は、最終推論結果の内容に応じて、応答情報S2の送信先を決定してもよい。この場合、例えば、出力制御部36は、最終推論結果の内容と、応答情報S2の送信先との関係を予め規定したテーブルなどを参照することで、最終推論結果から、応答情報S2の送信先を決定する。
【0050】
なお、図3において説明した制御部11及び制御部41の各構成要素は、記憶部12及び記憶部42に格納されたプログラムを、それぞれ制御部11及び制御部41が実行することによって実現される。また、必要なプログラムを任意の不揮発性記憶媒体に記録しておき、必要に応じてインストールすることで、各構成要素を実現してもよい。これらの各構成要素は、プログラムによるソフトウェアで実現することに限ることなく、ハードウェア、ファームウェア、及びソフトウェアのうちのいずれかの組み合わせ等により実現してもよい。また、これらの各構成要素は、例えばFPGA(Field-Programmable Gate Array)又はマイコン等の、ユーザがプログラミング可能な集積回路を用いて実現してもよい。この場合、この集積回路を用いて、上記の各構成要素から構成されるプログラムを実現してもよい。以上のことは、後述する他の実施の形態においても同様である。
【0051】
(4)具体例
次に、図3において説明した処理の具体例について、図4(A)、図4(B)及び図5を参照して説明する。
【0052】
図4(A)は、推論モデルが生成されるエリアを明示した地図を示す。図4(A)では、一例として、推論対象機器4が移動を行った大陸を格子状に分けた16個のエリアA1~A16が存在し、各エリアに対応するデータセンタ1が夫々存在している。なお、エリアの区切り方は、このような格子状の区切りに限られず、推論対象機器4の状態に影響を与える環境条件(例えば、気温、湿度、その他の気象条件、砂漠の有無等)が類似する近隣地点が同一のエリアとなるように非直線状に区切られてもよい。そして、エリアA1~A16の夫々において収集されたデータに基づき、エリアA1~A16の夫々に適した推論モデルが学習される。各エリアでの推論モデルの学習については、図6及び図7を参照して後述する。
【0053】
図4(B)は、推論対象機器4が保有する移動履歴情報23に基づく推論対象機器4の移動軌跡と、中心地Pc(Pc1~Pc3)とを地図上に明示した図である。この例では、推論対象機器4は推論時点においてエリアA5に存在し、エリアA5を担当するエリア担当データセンタ1Aは、推論対象機器4から受信する要求情報S1に基づき推論対象機器4の状態に関する推論を行う。
【0054】
ここでは、一例として、エリア担当データセンタ1Aの中心地算出部52は、短期の中心地算出期間Tpcに対応する中心地Pcである短期中心地Pc1、中期の中心地算出期間Tpcに対応する中心地Pcである中期中心地Pc2、及び長期の中心地算出期間Tpcに対応する中心地Pcである長期中心地Pc3を夫々算出する。ここでは、現在から1週間前までの期間を短期の中心地算出期間Tpcとし、現在から2週間前までの期間を中期の中心地算出期間Tpcとし、現在から4週間前までの期間を長期の中心地算出期間Tpcとしている。図4(B)に示すように、直近での活動場所の変化により、短期中心地Pc1と中期中心地Pc2と長期中心地Pc3が属するエリアが夫々異なっている。
【0055】
図5は、短期中心地Pc1、中期中心地Pc2及び長期中心地Pc3の算出後の最終推論結果の生成処理の概要を示す図である。
【0056】
まず、エリア担当データセンタ1Aの推論計画部32は、短期中心地Pc1、中期中心地Pc2及び長期中心地Pc3に夫々に対応する適合推論モデルMaを決定する。ここでは、推論計画部32は、一例として、中心地・エリア距離Lが短くなる上位4個のエリアに対応する推論モデルを、適合推論モデルMaとして選定するものとする。この場合、推論計画部32は、短期中心地Pc1との中心地・エリア距離Lが短くなる上位4個のエリアA5、A6、A9、A10に対応する推論モデルを、短期中心地Pc1に対する適合推論モデルMaとして選定する。また、推論計画部32は、中期中心地Pc2との中心地・エリア距離Lが短くなる上位4個のエリアA10、A11、A14、A15に対応する推論モデルを、中期中心地Pc2に対する適合推論モデルMaとして選定する。さらに、推論計画部32は、長期中心地Pc3との中心地・エリア距離Lが短くなる上位4個のエリアA8、A11、A12、A16に対応する推論モデルを、長期中心地Pc3に対する適合推論モデルMaとして選定する。
【0057】
次に、推論実行部34は、選定された各適合推論モデルMaによる推論を実行し、推論統合部35は、その推論結果を中心地Pc毎に統合することで、短期中心地Pc1に対応する推論結果と、中期中心地Pc2に対応する推論結果と、長期中心地Pc3に対応する推論結果とを夫々生成する。
【0058】
さらに、推論統合部35は、中心地Pc毎の推論結果を、算出に用いた移動履歴の期間長(即ち中心地算出期間Tpcの長さ)に基づく重み付けにより統合することで、最終推論結果を生成する。この場合、短期の中心地算出期間Tpcと、中期の中心地算出期間Tpcと、長期の中心地算出期間Tpcとの長さの比は、「1:2:4」であることから、推論統合部35は、上記の比に応じた重み付けにより、中心地Pc毎の推論結果の統合を行う。これにより、エリア担当データセンタ1Aは、推論対象機器4の移動履歴に即した推論対象機器4の状態に関する推論を好適に実行することができる。
【0059】
(5)学習
次に、推論モデルの学習について詳しく説明する。図6は、エリア毎の推論モデルの学習用データ21(21a、21b、…)の生成の概要を示す図である。
【0060】
図6に示すように、各エリアに存在する推論対象機器4(4a、4b、…)は、生成したセンサデータ又は/及び制御データを、学習時に推論モデルへ入力するサンプルデータとして、基地局3(3a、3b、…)を介してアップロードする。推論対象機器4がアップロードするアップロードデータ「S4」には、例えば、上記のサンプルデータに加えて、サンプルデータの生成時の位置情報と、ユーザ入力等により指定された正解ラベル(即ち、正解となる推論対象機器4の状態を示す情報)とが含まれている。なお、アップロードデータS4の生成及び送信は、推論対象機器4のメンテナンス時に行われてもよい。
【0061】
アップロードデータS4は、送信元の推論対象機器4が存在するエリアを担当するデータセンタ1(1a、1b、…)に供給され、学習用データ21(21a、21b、…)として記憶される。なお、基地局3は、自身が設置されたエリアと異なるエリアに存在する推論対象機器4から供給されたアップロードデータS4を、推論対象機器4が存在するエリアを担当するデータセンタ1に供給する。例えば、推論対象機器4aがエリアA2に存在し、かつ、最寄りの基地局3が基地局3aである場合には、推論対象機器4aが生成したアップロードデータS4は、推論対象機器4aの位置情報に基づき、基地局3aを介してデータセンタ1bに供給される。このように、サンプルデータは、供給元の推論対象機器4が存在するエリア毎に収集され、学習用データ21として記憶される。
【0062】
図7は、エリア毎の推論モデルの学習の概要を示す図である。図7に示すように、エリアA1に対応する推論モデルの学習を行う場合、エリアA1に存在する推論対象機器4から収集した学習用データ21aに基づき機械学習を実行する。この機械学習は、エリアA1を担当するデータセンタ1aにより実行されてもよく、機械学習用の他の装置により実行されてもよい。ここで、機械学習に用いられる学習モデルは、例えば、アンサンブル学習において弱学習器として用いられる決定木などの学習モデルであってもよく、ニューラルネットワーク又はサポートベクターマシンなどの機械学習に用いられる任意の学習モデルであってもよい。また、これらの学習モデルは、全てのエリアで同一であってもよく、エリア毎に異なっていてもよい。そして、上記の機械学習により、エリアA1に対応する推論モデルの学習が行われ、学習済みの推論モデルのパラメータがモデル情報20aとして生成される。他のエリアについても同様の機械学習が行われる。
【0063】
なお、推論モデルは、推論対象機器4の種類(車両の場合には車種)毎に学習が行われてもよい。この場合、アップロードデータS4には、推論対象機器4の種類の情報がさらに含まれており、データセンタ1は、推論対象機器4の種類毎に収集した学習用データ21に基づき、推論対象機器4の各種類に対応する推論モデルの学習を行う。また、推論対象機器4において推論対象となる部品(例えば車両の場合にはエンジン、バッテリ等)が複数存在する場合には、推論モデルは、部品毎に学習及び使用されてもよい。
【0064】
(6)出力例
図8は、図4(B)及び図5に示される移動を推論対象機器4が行った場合に、応答情報S2に基づき出力部46が表示する推論結果画面の表示例である。推論対象機器4の出力制御部54は、通信部43を介してエリア担当データセンタ1Aから受信する応答情報S2に基づき、推論結果画面を出力部46に表示させている。
【0065】
この場合、エリア担当データセンタ1Aの出力制御部36は、最終推論結果に基づき、車両である推論対象機器4のエンジンの異常があると判定し、エンジンのメンテナンスを促す推論結果画面の表示情報を、応答情報S2として生成する。この場合、例えば、最終推論結果は、エンジンの異常の度合いを示すスコアであり、出力制御部36は、最終推論結果が示すスコアが所定の閾値以上であることから、エンジンに異常があると判定する。そして、出力制御部36は、エンジンのメンテナンスが必要である旨のテキスト情報と、地図表示領域61とを含む推論結果画面の表示情報を生成する。ここで、地図表示領域61には、全ての中心地算出期間Tpcに対応する推論対象機器4の移動履歴に基づく移動軌跡及び推論対象機器4の現在位置が明示されている。
【0066】
また、出力制御部36は、地図表示領域61の移動軌跡上において、異常の主な原因となった(即ち、特に影響があった)移動区間を、実線かつ太線により強調表示している。ここで、上述の移動区間の特定方法の具体例について説明する。出力制御部36は、例えば、各適合推論モデルMaの推論結果が異常の度合いを示すスコアを含む場合、当該スコアが最も高い適合推論モデルMaを特定する。そして、出力制御部36は、特定した適合推論モデルMaに対応するエリア(ここでは、図4(B)のエリアA15)内の移動区間を、異常の主な原因となった移動区間として強調表示する。
【0067】
このように、出力制御部36は、異常の原因となった推論対象機器4の移動に関する情報を、推論対象機器4に出力させる。これにより、出力制御部36は、異常判定の根拠となる情報を好適に可視化することができる。
【0068】
(7)処理フロー
図9は、第1実施形態において推論対象機器4とエリア担当データセンタ1Aとが行う推論処理の手順を示すフローチャートの一例である。
【0069】
まず、推論対象機器4は、GPS受信機58等の出力に基づき現在位置を測定し、その測定結果に基づいて移動履歴情報23の更新を行う(ステップS11)。そして、推論対象機器4は、推論対象機器4の状態に関する推論を行うタイミングであるか否か判定する(ステップS12)。この場合、推論対象機器4内の複数の部品の状態が推論対象であって、部品毎に推論タイミングが異なる場合には、推論対象機器4は、少なくともいずれかの部品に対する状態の推論タイミングであるか否かについて判定する。そして、推論対象機器4は、推論対象機器4の状態に関する推論を行うタイミングではないと判定した場合(ステップS12;No)、ステップS11へ処理を戻す。
【0070】
一方、推論対象機器4は、推論対象機器4の状態に関する推論を行うタイミングであると判定した場合(ステップS12;Yes)、移動履歴情報23に基づき、中心地算出期間Tpcごとに中心地Pcを算出する(ステップS13)。この場合、例えば、推論対象機器4は、前回のメンテナンス日時以後の期間において複数の異なる期間となる中心地算出期間Tpcを設定し、設定した中心地算出期間Tpcごとに中心地Pcを算出する。
【0071】
そして、推論対象機器4は、当該推論対象機器4が属するエリアを担当するエリア担当データセンタ1Aに対して要求情報S1を送信する(ステップS14)。この場合、推論対象機器4は、ステップS13で算出した中心地Pcと、状態検知センサ59の出力データであるセンサデータ又は/及び推論対象機器4内の制御データと、を含む要求情報S1を、エリア担当データセンタ1Aに送信する。
【0072】
エリア担当データセンタ1Aは、ステップS14において推論対象機器4が送信した要求情報S1を受信する(ステップS21)。そして、エリア担当データセンタ1Aは、要求情報S1に含まれる中心地Pcに基づき、適合推論モデルMaを中心地Pc毎に決定する(ステップS22)。そして、エリア担当データセンタ1Aは、決定した適合推論モデルMaを構成するために必要なモデル情報20を取得する(ステップS23)。ここで、エリア担当データセンタ1Aは、適合推論モデルMaを構成するために必要なモデル情報20が不足している場合、他のデータセンタ1から追加モデル情報S3を受信することで、モデル情報20を更新する。
【0073】
そして、エリア担当データセンタ1Aは、中心地Pc毎の推論結果を算出する(ステップS24)。この場合、エリア担当データセンタ1Aは、要求情報S1に含まれる推論対象機器4のセンサデータ又は/及び制御データを入力データとし、中心地Pc毎に決定した複数の適合推論モデルMaを用いることで、中心地Pc毎の推論結果を算出する。この場合、エリア担当データセンタ1Aは、任意のアンサンブル学習に従い適合推論モデルMaを組み合わせることで、中心地Pc毎の推論結果を取得してもよい。
【0074】
そして、エリア担当データセンタ1Aは、中心地Pc毎の推論結果を、各中心地Pcが対応する中心地算出期間Tpcの長さに応じた重み付けにより統合する(ステップS25)。これにより、エリア担当データセンタ1Aは、推論対象機器4の状態に関する最終推論結果を生成する。その後、エリア担当データセンタ1Aは、最終推論結果に基づき、応答情報S2を生成し、生成した応答情報S2を推論対象機器4に送信する(ステップS26)。
【0075】
そして、推論対象機器4は、ステップS26においてエリア担当データセンタ1Aが送信した応答情報S2を受信する(ステップS15)。そして、推論対象機器4は、受信した応答情報S2に基づき、推論結果に関する出力を行う(ステップS16)。なお、推論対象機器4は、応答情報S2に基づき異常(即ちメンテナンスの必要)があると判定した場合に限り、ステップS16での出力を行ってもよい。
【0076】
(8)効果
第1実施形態における効果について補足説明する。
【0077】
深層学習などの機械学習において、自動車のように地理的特性に影響を受ける対象物が物理環境の影響を強く受け、学習時の環境と推論時の環境が異なると精度が低下することがある。例えば、自動車の異常検知は、平均気温、砂漠、高地、空気汚染度などの環境要因に基づいて、地域特性の影響を受ける可能性がある。一方、予めあらゆる環境でデータを取得し学習モデルを作っておくことができれば、この問題は発生しないが、条件の組み合わせ爆発やラベリングコストのため、現実的でない。
【0078】
以上を勘案し、第1実施形態における推論システム100は、推論対象機器4の移動履歴から地理的な中心地Pcを求め、中心地Pc毎に地理的に近いエリアの推論モデルを用いて推論を行う。そして、推論システム100は、中心地Pc毎の推論結果を、移動履歴の長さに基づき重み付けすることで最終推論結果を算出する。このように、各推論モデルの推論結果の重み付けを、車両の移動履歴を考慮に入れたものとすることで、複雑な構成を有するアンサンブル学習に比べて計算コストを好適に削減し、かつ、環境からの影響の蓄積を反映した推論を行うことができる。また、同じような移動履歴を持つ車両の学習データを多量に集める必要が無い。
【0079】
(9)変形例
次に、第1実施形態において好適な変形例について説明する。以下の変形例は、任意に組み合わせて上述の実施形態に適用してもよい。
【0080】
(変形例1)
適合推論モデルMaの推論を、推論対象機器4が存在するエリアを担当するエリア担当データセンタ1Aが行う代わりに、適合推論モデルMaに対応するエリアを担当するデータセンタ1が行い、その推論結果をエリア担当データセンタ1Aが収集してもよい。この場合、例えば、図5に示す例では、短期中心地Pc1に基づき選定されたエリアA5、A6、A9、A10に対応する推論モデルを、エリアA5、A6、A9、A10の夫々を担当するデータセンタ1が実行する。この場合、各データセンタ1は、エリア担当データセンタ1Aから推論に必要な入力データ等を適宜受信する。
【0081】
本変形例によれば、計算負荷をデータセンタ1間において好適に分散することができる。例えば、推論対象機器4が特定のエリアに集中した場合であっても、推論実行のための計算負荷が特定エリアのデータセンタ1に集中することを好適に抑制することができる。
【0082】
(変形例2)
エリア毎にデータセンタ1を設ける代わりに、1台のデータセンタ1が複数のエリアを担当してもよい。この場合、各データセンタ1は、1又は複数のエリアを担当し、担当するエリアに対応する推論モデルのモデル情報20を記憶する。本変形例では、データセンタ1は、少なくとも1台存在すればよい。
【0083】
(変形例3)
推論対象機器4は、エリア担当データセンタ1Aが実行する推論処理を代わりに実行してもよい。
【0084】
図10は、変形例3における推論対象機器4の機能ブロックの構成図を示す。推論対象機器4の制御部41は、機能的には、移動履歴生成部51と、中心地算出部52と、出力制御部54と、推論計画部55と、推論実行部56と、推論統合部57とを有する。また、推論対象機器4は、予めデータセンタ1と通信を行うことで、使用する可能性がある推論モデルに関する情報をデータセンタ1から受信し、受信した情報をモデル情報20として記憶部42に記憶している。
【0085】
推論計画部55は、中心地算出部52が算出する中心地Pcに基づき、図3に示す推論計画部32と同一処理(即ち適合推論モデルMaの選定)を行う。また、推論実行部56は、図3に示す推論実行部34と同一処理を行うことで、状態検知センサ59から供給されるセンサデータ又は/及び推論対象機器4内の制御データから、各適合推論モデルMaの推論結果を算出する。また、推論統合部57は、図1の推論統合部35と同一処理を行うことで、最終推論結果を算出する。出力制御部54は、最終推論結果に基づき、推論対象機器4の状態に関する情報(例えば、推論結果画面の表示情報)を生成し、生成した情報に基づき出力部46の出力を制御する。
【0086】
本変形例の構成によれば、推論時でのエリア担当データセンタ1Aと推論対象機器4とのデータの授受を抑制し、推論のレスポンスの向上及び高頻度の推論実施を好適に実現することができる。本変形例では、推論対象機器4の制御部41は、本開示における「情報処理装置」の一例である。
【0087】
(変形例4)
エリア担当データセンタ1Aは、物理的な距離である中心地・エリア距離Lを基準として適合推論モデルMaを選定する代わりに、環境条件の類似度に基づき適合推論モデルMaを選定してもよい。
【0088】
この場合、例えば、エリア担当データセンタ1Aは、算出した中心地Pcの各々について、中心地Pcでの環境条件と各エリアの環境条件との類似度(「環境類似度」とも呼ぶ。)を算出し、環境類似度に基づき適合推論モデルMaを選定する。この場合、エリア担当データセンタ1Aは、環境類似度が高い上位所定個数分のエリアに対応する推論モデルを適合推論モデルMaとして選定してもよく、予め定めた閾値以上の環境類似度となるエリアに対応する推論モデルを適合推論モデルMaとして選定してもよい。なお、環境類似度の算出では、例えば、エリア担当データセンタ1Aは、エリア毎の典型的な環境条件(平均気温、砂漠の有無、大気汚染度、標高等)を示す指標値を予め記憶しておく。そして、エリア担当データセンタ1Aは、中心地Pc又は中心地Pcを含むエリアの環境条件を示す指標値と、エリア毎の環境条件を示す指標値とに基づき、所定の式又はルックアップテーブルを用いて、各エリアに対する環境類似度を算出する。なお、エリア担当データセンタ1Aは、環境条件が類似するエリア同士をグルーピングした情報を予め記憶しておき、対象の中心地Pcが属するエリアと同一グループのエリアに対応する推論モデルを、適合推論モデルMaとして選定してもよい。
【0089】
この態様によっても、エリア担当データセンタ1Aは、適合推論モデルMaを好適に選定することができる。
【0090】
(変形例5)
データセンタ1は、中心地Pcの算出を推論対象機器4の代わりに実行してもよい。
【0091】
図11は、変形例4に係るデータセンタ1及び推論対象機器4の機能的なブロック構成を示す。本変形例では、データセンタ1は、全てのエリアに対する推論モデルに関するモデル情報20を記憶しているものとする。また、データセンタ1は、推論対象機器4に関する機器情報22を記憶している。
【0092】
機器情報22は、推論対象機器4の移動履歴を示す移動履歴情報28と、推論対象機器4のメンテナンスに関するメンテナンス情報29とを含んでいる。移動履歴情報28及びメンテナンス情報29は、推論対象機器4から送信されるアップロードデータ「S5」に基づき更新される。
【0093】
推論対象機器4の制御部41は、機能的には、アップロード部60と、推論要求部53と、出力制御部54とを有する。アップロード部60は、GPS受信機58の出力等に基づき測定した推論対象機器4の位置情報を、アップロードデータS5として通信部43を介してデータセンタ1に送信する。また、アップロード部60は、推論対象機器4のメンテンナンスが行われた場合には、メンテンナンスの日時等を示す情報をアップロードデータS5としてデータセンタ1に送信してもよい。
【0094】
データセンタ1の制御部11は、機能的には、要求受信部31と、推論計画部32と、推論実行部34と、推論統合部35と、出力制御部36と、機器情報更新部37と、中心地算出部38とを有する。機器情報更新部37は、推論対象機器4からアップロードデータS5を受信した場合に、アップロードデータS5に基づき機器情報22を更新する。
【0095】
中心地算出部38は、要求受信部31が要求情報S1を推論対象機器4から受信した場合に、機器情報22に基づき、中心地Pcを算出する。この場合、中心地算出部38は、例えば、メンテナンス情報29を参照し、前回のメンテナンス日時以後の期間において複数の中心地算出期間Tpcを設定する。そして、中心地算出部38は、設定した各中心地算出期間Tpc内の移動履歴を移動履歴情報28から抽出し、平均化処理を行うことで、中心地算出期間Tpcごとに中心地Pcを算出する。中心地算出部38は、算出した中心地Pcと、要求情報S1に含まれる推論対象機器4のセンサデータ又は/及び制御データとを、推論計画部32に供給する。その後、推論計画部32、推論実行部34、推論統合部35及び出力制御部36は、上述した実施形態において説明した処理を行う。
【0096】
このように、データセンタ1は、中心地Pcの算出を含めた推論処理を包括的に実行してもよい。
【0097】
(変形例6)
推論統合部35は、中心地算出期間Tpcの長さ以外の要素を勘案し、中心地Pc毎の推論結果の重みを決定してもよい。
【0098】
例えば、推論統合部35は、推論対象機器4が車両の場合には、中心地算出期間Tpcの長さに代えて、又はこれに加えて、車両に付属する部品(タイヤ、サスペンション等)の摩耗の度合いに基づき、中心地Pc毎の推論結果の重みを決定してもよい。この場合、例えば、推論対象機器4は、上記の部品の摩耗が生じるイベント(車両への衝撃、急ブレーキ、急カーブの通過等)を移動履歴情報23と共に記憶する。そして、推論対象機器4は、要求情報S1の生成時には、中心地算出期間Tpc毎の上述のイベントの検出結果に関する情報を、要求情報S1に含める。そして、推論統合部35は、要求情報S1に含まれる中心地算出期間Tpc毎の上述のイベントの検出結果に基づき、中心地Pc毎の推論結果の重みを決定する。この場合、例えば、推論統合部35は、上記のイベントの回数が多い程、対応する推論結果の重みを大きくする。これによっても、推論統合部35は、中心地Pc毎の推論結果を好適に統合し、実際の推論対象機器4使用状態に即した最終推論結果を生成することができる。
【0099】
<第2実施形態>
図12は、第2実施形態における情報処理装置1Xの概略構成図である。図12に示すように、情報処理装置1Xは、主に、選択手段32Xと、推論手段35Xとを有する。情報処理装置1Xは、第1実施形態(変形例3を除く)におけるデータセンタ1又は変形例3における推論対象機器4とすることができる。また、情報処理装置1Xは、複数の装置から構成されてもよい。
【0100】
選択手段32Xは、推論対象機器の移動履歴の地理的な中心地に基づき、推論対象機器の状態に関する推論を行うエリア毎の推論モデルから、使用すべき適合推論モデルを選択する。選択手段32Xは、第1実施形態における推論計画部32又は推論計画部55とすることができる。ここで、中心地は、1つであってもよく、複数であってもよい。同様に、適合推論モデルは、1つであってもよく、複数であってもよい。なお、情報処理装置1Xは、上述の中心地を自ら算出してもよく、他の装置が算出した中心地の情報を取得してもよい。
【0101】
推論手段35Xは、推論対象機器において取得されたデータを用いた適合推論モデルの推論結果に基づき、推論対象機器の状態に関する推論を行う。推論手段35Xは、第1実施形態における推論統合部35又は推論統合部57とすることができる。なお、情報処理装置1Xは、推論対象機器において取得されたデータを用いた適合推論モデルの推論結果を自ら生成してもよく、他の装置から上述の推論結果を取得してもよい。
【0102】
図13は、第2実施形態において情報処理装置1Xが実行するフローチャートの一例である。まず、情報処理装置1Xの選択手段32Xは、推論対象機器の移動履歴の地理的な中心地に基づき、推論対象機器の状態に関する推論を行うエリア毎の推論モデルから、使用すべき適合推論モデルを選択する(ステップS31)。そして、推論手段35Xは、推論対象機器において取得されたデータを用いた適合推論モデルの推論結果に基づき、推論対象機器の状態に関する推論を行う(ステップS32)。
【0103】
このように、第2実施形態によれば、情報処理装置1Xは、推論対象機器の移動履歴に基づき使用すべき推論モデルを好適に選択し、環境からの影響の蓄積を反映した推論を好適に行うことができる。
【0104】
なお、上述した各実施形態において、プログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータである制御部11等に供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記憶媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記憶媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記憶媒体(例えば光磁気ディスク)、CD-ROM(Read Only Memory)、CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(Random Access Memory))を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0105】
その他、上記の各実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載され得るが以下には限られない。
【0106】
[付記1]
推論対象機器の移動履歴の地理的な中心地に基づき、前記推論対象機器の状態に関する推論を行うエリア毎の推論モデルから、使用すべき適合推論モデルを選択する選択手段と、
前記推論対象機器において取得されたデータを用いた前記適合推論モデルの推論結果に基づき、前記推論対象機器の状態に関する推論を行う推論手段と、
を有する情報処理装置。
【0107】
[付記2]
前記選択手段は、対象とする期間が異なる前記移動履歴に基づく複数の前記中心地の各々に対し、前記適合推論モデルを選択し、
前記推論手段は、前記中心地の各々に対する前記適合推論モデルの推論結果を統合することで、前記推論対象機器の状態に関する推論を行う、付記1に記載の情報処理装置。
【0108】
[付記3]
前記推論手段は、前記中心地の各々に対する前記適合推論モデルの推論結果を、前記期間の長さに応じた重み付けにより統合する、付記2に記載の情報処理装置。
【0109】
[付記4]
前記選択手段は、前記中心地毎に複数の前記適合推論モデルを選択し、
前記推論手段は、前記中心地毎に前記複数の適合推論モデルの推論結果を統合し、前記中心地毎の当該推論結果をさらに統合することで、前記推論対象機器の状態に関する推論を行う、付記2または3に記載の情報処理装置。
【0110】
[付記5]
前記期間は、前記推論対象機器に対する前回のメンテナンスが行われた日時以後の期間内において定められる、付記2~4のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【0111】
[付記6]
前記エリア毎の推論モデルは、エリア毎に取得された学習用データに基づきエリア毎に学習された学習モデルである、付記1~5のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【0112】
[付記7]
前記推論手段は、前記状態に関する推論として、前記状態の異常検知、前記状態の分類、又は当該状態を表すスコアの算出の少なくともいずれかを行う、付記1~6のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【0113】
[付記8]
前記状態の異常を検知した場合、前記異常が生じた原因となる前記推論対象機器の移動に関する情報を出力する、又は、前記推論対象機器に関する制御を行う出力制御手段をさらに有する、付記1~7のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【0114】
[付記9]
前記出力制御手段は、前記推論対象機器の移動に関する情報の出力として、前記移動履歴に基づく前記推論対象機器の移動軌跡において、前記異常が生じた原因となる移動区間を強調表示する、付記8に記載に記載の情報処理装置。
【0115】
[付記10]
前記出力制御手段は、前記推論対象機器に関する制御として、前記推論対象機器の移動に関する制限又は運転支援を行う、付記8に記載の情報処理装置。
【0116】
[付記11]
前記出力制御手段は、前記状態に関する推論の結果に応じて、前記状態に関する推論の結果の送信先を決定する、付記1~10のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【0117】
[付記12]
前記推論対象機器は、車両であり、
前記推論手段は、前記車両の全体又は前記車両を構成する部品に関する状態の推論を行う、付記1~11のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【0118】
[付記13]
前記選択手段は、前記エリア毎の前記中心地との距離又は環境条件の類似度に基づいて、前記適合推論モデルを選択する、付記1~12のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【0119】
[付記14]
前記推論手段は、前記データとして、前記推論対象機器に設けられたセンサの出力データ又は前記推論対象機器において生成される制御データの少なくとも一方を取得する、付記1~13のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【0120】
[付記15]
前記情報処理装置は、前記推論対象機器の一部である、又は、前記推論対象機器から前記データを受信することで前記推論対象機器の状態に関する推論を行う1又は複数の外部装置である、付記1~14のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【0121】
[付記16]
コンピュータにより、
推論対象機器の移動履歴の地理的な中心地に基づき、前記推論対象機器の状態に関する推論を行うエリア毎の推論モデルから、使用すべき適合推論モデルを選択し、
前記推論対象機器において取得されたデータを用いた前記適合推論モデルの推論結果に基づき、前記推論対象機器の状態に関する推論を行う、
制御方法。なお、コンピュータは、複数の装置から構成されてもよい。
【0122】
[付記17]
推論対象機器の移動履歴の地理的な中心地に基づき、前記推論対象機器の状態に関する推論を行うエリア毎の推論モデルから、使用すべき適合推論モデルを選択し、
前記推論対象機器において取得されたデータを用いた前記適合推論モデルの推論結果に基づき、前記推論対象機器の状態に関する推論を行う処理をコンピュータに実行させるプログラムを格納した記憶媒体。
【0123】
[付記18]
推論対象機器の移動履歴の地理的な中心地に基づき、前記推論対象機器の状態に関する推論を行うエリア毎の推論モデルから、使用すべき適合推論モデルを選択する選択手段と、
前記推論対象機器において取得されたデータを用いた前記適合推論モデルの推論結果に基づき、前記推論対象機器の状態に関する推論を行う推論手段と、
を有する情報処理システム。
【0124】
[付記19]
前記選択手段は、対象とする期間が異なる前記移動履歴に基づく複数の前記中心地の各々に対し、前記適合推論モデルを選択し、
前記推論手段は、前記中心地の各々に対する前記適合推論モデルの推論結果を統合することで、前記推論対象機器の状態に関する推論を行う、付記18に記載の情報処理システム。
【0125】
[付記20]
前記推論手段は、前記中心地の各々に対する前記適合推論モデルの推論結果を、前記期間の長さに応じた重み付けにより統合する、付記19に記載の情報処理システム。
【0126】
[付記21]
前記選択手段は、前記中心地毎に複数の前記適合推論モデルを選択し、
前記推論手段は、前記中心地毎に前記複数の適合推論モデルの推論結果を統合し、前記中心地毎の当該推論結果をさらに統合することで、前記推論対象機器の状態に関する推論を行う、付記17または18に記載の情報処理システム。
【0127】
[付記22]
前記期間は、前記推論対象機器に対する前回のメンテナンスが行われた日時以後の期間内において定められる、付記19~21のいずれか一項に記載の情報処理システム。
【0128】
[付記23]
前記エリア毎の推論モデルは、エリア毎に取得された学習用データに基づきエリア毎に学習された学習モデルである、付記18~22のいずれか一項に記載の情報処理システム。
【0129】
[付記24]
前記推論手段は、前記状態に関する推論として、前記状態の異常検知、前記状態の分類、又は当該状態を表すスコアの算出の少なくともいずれかを行う、付記18~23のいずれか一項に記載の情報処理システム。
【0130】
[付記25]
前記状態の異常を検知した場合、前記異常が生じた原因となる前記推論対象機器の移動に関する情報を出力する、又は、前記推論対象機器に関する制御を行う出力制御手段をさらに有する、付記18~24のいずれか一項に記載の情報処理システム。
【0131】
[付記26]
前記出力制御手段は、前記推論対象機器の移動に関する情報の出力として、前記移動履歴に基づく前記推論対象機器の移動軌跡において、前記異常が生じた原因となる移動区間を強調表示する、付記25に記載に記載の情報処理システム。
【0132】
[付記27]
前記出力制御手段は、前記推論対象機器に関する制御として、前記推論対象機器の移動に関する制限又は運転支援を行う、付記25に記載の情報処理システム。
【0133】
[付記28]
前記出力制御手段は、前記状態に関する推論の結果に応じて、前記状態に関する推論の結果の送信先を決定する、付記18~27のいずれか一項に記載の情報処理システム。
【0134】
[付記29]
前記推論対象機器は、車両であり、
前記推論手段は、前記車両の全体又は前記車両を構成する部品に関する状態の推論を行う、付記18~26のいずれか一項に記載の情報処理システム。
【0135】
[付記30]
前記選択手段は、前記エリア毎の前記中心地との距離又は環境条件の類似度に基づいて、前記適合推論モデルを選択する、付記18~27のいずれか一項に記載の情報処理システム。
【0136】
[付記31]
前記推論手段は、前記データとして、前記推論対象機器に設けられたセンサの出力データ又は前記推論対象機器において生成される制御データの少なくとも一方を取得する、付記18~28のいずれか一項に記載の情報処理システム。
【0137】
[付記32]
前記情報処理システムは、前記推論対象機器の一部である、又は、前記推論対象機器から前記データを受信することで前記推論対象機器の状態に関する推論を行う1又は複数の外部装置である、付記18~29のいずれか一項に記載の情報処理システム。
【0138】
[付記33]
情報処理システムにより、
推論対象機器の移動履歴の地理的な中心地に基づき、前記推論対象機器の状態に関する推論を行うエリア毎の推論モデルから、使用すべき適合推論モデルを選択し、
前記推論対象機器において取得されたデータを用いた前記適合推論モデルの推論結果に基づき、前記推論対象機器の状態に関する推論を行う、
制御方法。
【0139】
以上、実施形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。すなわち、本願発明は、請求の範囲を含む全開示、技術的思想にしたがって当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。また、引用した上記の特許文献等の各開示は、本書に引用をもって繰り込むものとする。
【符号の説明】
【0140】
1、1A、1B、1C データセンタ
1X 情報処理装置
2 ネットワーク
3 基地局
4 推論対象機器
20 モデル情報
21 学習用データ
22 機器情報
23 移動履歴情報
100 推論システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13