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特許7452678レーダ装置、イメージング方法およびイメージングプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】レーダ装置、イメージング方法およびイメージングプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01S 13/46 20060101AFI20240312BHJP
【FI】
G01S13/46
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022550090
(86)(22)【出願日】2020-09-16
(86)【国際出願番号】 JP2020035065
(87)【国際公開番号】W WO2022059090
(87)【国際公開日】2022-03-24
【審査請求日】2023-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】住谷 達哉
(72)【発明者】
【氏名】小倉 一峰
(72)【発明者】
【氏名】野村 俊之
(72)【発明者】
【氏名】有吉 正行
(72)【発明者】
【氏名】山之内 慎吾
【審査官】安井 英己
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-242243(JP,A)
【文献】特開平09-297179(JP,A)
【文献】特表2004-526165(JP,A)
【文献】特開2004-191091(JP,A)
【文献】特開平06-043235(JP,A)
【文献】特開平02-236480(JP,A)
【文献】米国特許第04338602(US,A)
【文献】中国特許出願公開第104656065(CN,A)
【文献】特開2020-109389(JP,A)
【文献】特開2016-138787(JP,A)
【文献】国際公開第2014/092052(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00- 7/42,
G01S 13/00-13/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる位置に配置された複数の送信アンテナと複数の受信アンテナを用いた測定によるレーダ信号であって、前記送信アンテナから出射された後に物体で反射し、反射後に前記受信アンテナに届いた反射波の成分を含み、前記送信アンテナから出射された後に前記受信アンテナに直接届いた直接波の成分を含む場合と含まない場合とがあるレーダ信号を取得するレーダ信号送受信手段と、
前記送信アンテナと前記受信アンテナの複数のペア各々に関し、直接波が遮断されているかどうかを判定する直接波遮断ペア判定手段と、
直接波が遮断されていないと判定された前記ペアの前記測定されたレーダ信号から直接波による寄与を消去する直接波消去手段と、
を備え
前記直接波遮断ペア判定手段は、
前記測定されたレーダ信号と、あらかじめ得られた直接波によるレーダ信号との強度比較、
前記測定されたレーダ信号のレンジプロフィールと、あらかじめ得られた直接波によるレーダ信号のレンジプロフィールとの比較、
直接波を遮断しうる対象物を検出可能なセンサ手段の検出信号、又は、
直接波の寄与が消去される前の前記測定されたレーダ信号に基づき生成されたレーダ画像、
に基づいて、直接波が遮断されているかどうかを判定し、
前記直接波消去手段は、直接波による寄与を消去する処理として、
前記測定されたレーダ信号からあらかじめ得られた直接波によるレーダ信号に相当する分を減算する処理、
前記測定されたレーダ信号のレンジプロフィールからあらかじめ得られた直接波によるレーダ信号のレンジプロフィールに相当する分を減算する処理、又は、
前記測定されたレーダ信号のレンジプロフィールと、あらかじめ得られた直接波によるレーダ信号のレンジプロフィールとの比較から算出される関数を乗算する処理、
を行うレーダ装置。
【請求項2】
前記直接波消去手段により直接波の寄与が消去された前記測定されたレーダ信号に基づいてレーダ画像を生成するイメージング処理手段をさらに備えた請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項3】
前記直接波遮断ペア判定手段は、
前記測定されたレーダ信号の強度が、あらかじめ得られた直接波によるレーダ信号の強度の所定割合より小さい場合、直接波が遮断されていると判定する請求項1又は2に記載のレーダ装置。
【請求項4】
前記直接波遮断ペア判定手段は、
あらかじめ得られた直接波によるレーダ信号のレンジプロフィールの振幅の絶対値が、第1の送信アンテナと第1の受信アンテナの距離である第1の距離において最大となる場合、
前記測定されたレーダ信号のレンジプロフィールの前記第1の距離における振幅の絶対値が、あらかじめ得られた直接波によるレーダ信号のレンジプロフィールの前記第1の距離における振幅の絶対値の所定割合より小さい場合、直接波が遮断されていると判定する請求項1又は2に記載のレーダ装置。
【請求項5】
前記直接波遮断ペア判定手段は、
前記センサ手段の前記検出信号に基づき、前記送信アンテナと前記受信アンテナを結ぶ線分上で前記対象物が検出された場合、直接波が遮断されていると判定する請求項1又は2に記載のレーダ装置。
【請求項6】
前記直接波遮断ペア判定手段は、
前記レーダ画像に基づき、前記送信アンテナと前記受信アンテナを結ぶ線分上で閾値以上の画像強度を持つ点が検出された場合、直接波が遮断されていると判定する請求項1又は2に記載のレーダ装置。
【請求項7】
コンピュータが、
異なる位置に配置された複数の送信アンテナと複数の受信アンテナを用いた測定によるレーダ信号であって、前記送信アンテナから出射された後に物体で反射し、反射後に前記受信アンテナに届いた反射波の成分を含み、前記送信アンテナから出射された後に前記受信アンテナに直接届いた直接波の成分を含む場合と含まない場合とがあるレーダ信号を取得するレーダ信号送受信工程と、
前記送信アンテナと前記受信アンテナの複数のペア各々に関し、直接波が遮断されているかどうかを判定する直接波遮断ペア判定工程と、
直接波が遮断されていないと判定された前記ペアの前記測定されたレーダ信号から直接波による寄与を消去する直接波消去工程と、
を実行し、
前記直接波遮断ペア判定工程では、
前記測定されたレーダ信号と、あらかじめ得られた直接波によるレーダ信号との強度比較、
前記測定されたレーダ信号のレンジプロフィールと、あらかじめ得られた直接波によるレーダ信号のレンジプロフィールとの比較、
直接波を遮断しうる対象物を検出可能なセンサ手段の検出信号、又は、
直接波の寄与が消去される前の前記測定されたレーダ信号に基づき生成されたレーダ画像、
に基づいて、直接波が遮断されているかどうかを判定し、
前記直接波消去工程では、直接波による寄与を消去する処理として、
前記測定されたレーダ信号からあらかじめ得られた直接波によるレーダ信号に相当する分を減算する処理、
前記測定されたレーダ信号のレンジプロフィールからあらかじめ得られた直接波によるレーダ信号のレンジプロフィールに相当する分を減算する処理、又は、
前記測定されたレーダ信号のレンジプロフィールと、あらかじめ得られた直接波によるレーダ信号のレンジプロフィールとの比較から算出される関数を乗算する処理、
を行うイメージング方法。
【請求項8】
コンピュータを、
異なる位置に配置された複数の送信アンテナと複数の受信アンテナを用いた測定によるレーダ信号であって、前記送信アンテナから出射された後に物体で反射し、反射後に前記受信アンテナに届いた反射波の成分を含み、前記送信アンテナから出射された後に前記受信アンテナに直接届いた直接波の成分を含む場合と含まない場合とがあるレーダ信号を取得するレーダ信号送受信手段、
前記送信アンテナと前記受信アンテナの複数のペア各々に関し、直接波が遮断されているかどうかを判定する直接波遮断ペア判定手段、
直接波が遮断されていないと判定された前記ペアの前記測定されたレーダ信号から直接波による寄与を消去する直接波消去手段、
として機能させ、
前記直接波遮断ペア判定手段は、
前記測定されたレーダ信号と、あらかじめ得られた直接波によるレーダ信号との強度比較、
前記測定されたレーダ信号のレンジプロフィールと、あらかじめ得られた直接波によるレーダ信号のレンジプロフィールとの比較、
直接波を遮断しうる対象物を検出可能なセンサ手段の検出信号、又は、
直接波の寄与が消去される前の前記測定されたレーダ信号に基づき生成されたレーダ画像、
に基づいて、直接波が遮断されているかどうかを判定し、
前記直接波消去手段は、直接波による寄与を消去する処理として、
前記測定されたレーダ信号からあらかじめ得られた直接波によるレーダ信号に相当する分を減算する処理、
前記測定されたレーダ信号のレンジプロフィールからあらかじめ得られた直接波によるレーダ信号のレンジプロフィールに相当する分を減算する処理、又は、
前記測定されたレーダ信号のレンジプロフィールと、あらかじめ得られた直接波によるレーダ信号のレンジプロフィールとの比較から算出される関数を乗算する処理、
を行うイメージングプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体で反射された電磁波を受信してイメージングを行うレーダ装置、イメージング方法およびイメージングプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ボディスキャナを実現するレーダ装置が、空港等に導入されている。レーダ装置は送信アンテナ及び受信アンテナを含む。送信アンテナがミリ波等の電磁波を所定のエリア内の対象物(人体など)に照射し、対象物で反射された電磁波を受信アンテナがレーダ信号として受信する。ボディスキャナシステムでは、レーダ信号に基づいてレーダ画像の生成(イメージング)を行い、例えば、対象物に不審物が含まれているか否かの検査を実行する。受信アンテナが受信するレーダ信号には、対象物で反射した反射波だけでなく、対象物で反射することなく直接送信アンテナから受信アンテナに届いた直接波も含まれる。直接波は対象物の形状に関する情報を含んでいないため、対象物に関する高品質なレーダ画像を生成するためには、イメージング処理前に直接波をレーダ信号から取り除くことが望ましい。
【0003】
本発明に関連する技術が、特許文献1乃至4、及び非特許文献1乃至3に開示されている。
【0004】
特許文献1には、複数の平面パネル上にアンテナが配置されたボディスキャナシステムが記載されている。
【0005】
非特許文献1には、キャリブレーションとして直接波によるレーダ信号を計測しておき、その分の減算処理を行うという直接波消去法が記載されている。
【0006】
非特許文献2及び特許文献2には、対象物で反射された電磁波をアンテナで受信し、受信した信号に基づき画像を生成することで、対象物を画像化する技術が記載されている。
【0007】
非特許文献3には、音声のノイズ除去に用いられるスペクトルサブトラクション法が記載されている。
【0008】
特許文献3には、パルス方式のレーダ装置において、直接波の受信が完了してから反射波を受信することで直接波の影響を低減することや、受信アンテナのアレイ方向の中心軸に対して送信アンテナを非対称な位置に配置することで、不要で振幅の大きな直接波をレーダ装置の近傍の物標の検出の対象から外すことが記載されている。
【0009】
特許文献4には、測定対象物で反射した電磁波の信号をS/N比を低下させることなく算出する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】米国特許出願公開第2016/0216371号明細書
【文献】国際公開第2019/234852号
【文献】特開2019-174130号
【文献】特開2017-106859号
【非特許文献】
【0011】
【文献】S. S. Ahmed, A. Genghammer, A. Schiessl and L. Schmidt, "Fully Electronic E-Band Personnel Imager of 2 m^2 Aperture Based on a Multistatic Architecture," in IEEE Transactions on Microwave Theory and Techniques, vol. 61, no. 1, pp. 651-657, Jan. 2013, doi: 10.1109/TMTT.2012.2228221.
【文献】S. S. Ahmed, A. Schiessl, F. Gumbmann, M. Tiebout, S. Methfessel and L. Schmidt, "Advanced Microwave Imaging," in IEEE Microwave Magazine, vol. 13, no. 6, pp. 26-43, Sept.-Oct. 2012, doi: 10.1109/MMM.2012.2205772.
【文献】S. F. Boll. Suppression of Acoustic Noise in Speech Using Spectral Subtraction. IEEE Trans. ASSP., Vol.27, pp.113-120. 1979.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
図1は一般的なレーダ装置の構成例を示すブロック図である。図1に示すレーダ装置800は、レーダ信号送受信部803と、直接波消去部805と、イメージング処理部806とを備えている。レーダ信号送受信部803は、電磁波を出射する送信アンテナ(Tx)801の電磁波の出射(具体的には、出射タイミングなど)を制御し、対象物からの反射波などを受信する受信アンテナ(Rx)802からレーダ信号を取得する。直接波消去部805は、レーダ信号から直接波による寄与を消去する。イメージング処理部806は、レーダ信号からレーダ画像を生成する。なお、図1には、1つの送信アンテナ801と1つの受信アンテナ802とが例示されているが、実際には、複数の送信アンテナ801と複数の受信アンテナ802とが設置されている。
【0013】
ここで、あるTxとRxのペアに関する、直接波と対象物からの反射波の例を図2に示す。図2では、直接波が点線で、対象物からの反射波が実線で表されている。
【0014】
直接波消去部805は、例えば非特許文献1のように、キャリブレーション時に直接波によるレーダ信号Sccを計測しておき、その分の減算処理を行う。対象物からの反射波によるレーダ信号をSobjとすると、計測で得られるレーダ信号Smeasは下記式(1)のようになる。
【0015】
【数1】
【0016】
図3に示すように、Sccによる減算処理を行うことにより下記式(2)となり、対象物からの反射波による寄与のみをレーダ信号に残すことができる。
【0017】
【数2】
【0018】
非特許文献1では、対象物が装置の前で静止することを前提に、TxとRxが同一の平面パネル上に配置されている図4のような装置を想定している。この配置においては、対象物の存在による直接波への影響は小さいため減算処理が機能する。一方、近年では特許文献1のように対象物が装置内を通り抜ける状況でも検査を行えるよう、複数の平面パネル上にTxとRxを配置した装置も考えられている。例えば図5のように2枚のパネルを平行に並べることにより、パネルと垂直な向きの物体からの反射も捉えることができるようになる。このような配置において、減算処理による直接波の消去は機能しない可能性がある。なぜなら、図6に示すように、TxとRxおよび対象物の位置関係によっては直接波が遮断されるからである。図中、実線矢印で紐付けられたTxとRxのペアの場合、RxはTxからの直接波を受信する。しかし、点線矢印で紐付けられたTxとRxのペアの場合、人の身体により遮断されるため、RxはTxからの直接波を受信しない。直接波が遮断されたペアに関しては、計測で得られるレーダ信号Smeasは下記式(3)のようになる。
【0019】
【数3】
【0020】
この場合に図7に示すように減算処理を行うと下記式(4)のようになり、直接波が負の寄与としてレーダ信号に残存してしまう。この結果、イメージング処理で得られるレーダ画像の品質が劣化する。
【0021】
【数4】
【0022】
本発明は、直接波が対象物等に遮断されることのあるようなアンテナ配置を持つレーダ装置において、実際に遮断されている状況下では、直接波消去処理によりレーダ信号に余分な寄与が加わりレーダ画像の品質が劣化するという課題を解決することである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明によれば、
異なる位置に配置された複数の送信アンテナと複数の受信アンテナを用いた測定によるレーダ信号を取得するレーダ信号送受信手段と、
前記送信アンテナと前記受信アンテナの複数のペア各々に関し、直接波が遮断されているかどうかを判定する直接波遮断ペア判定手段と、
直接波が遮断されていないと判定された前記ペアの前記測定されたレーダ信号から直接波による寄与を消去する直接波消去手段と、
を備えたことを特徴とするレーダ装置が提供される。
【0024】
また、本発明によれば、
コンピュータが、
異なる位置に配置された複数の送信アンテナと複数の受信アンテナを用いた測定によるレーダ信号を取得し、
前記送信アンテナと前記受信アンテナの複数のペア各々に関し、直接波が遮断されているかどうかを判定し、
直接波が遮断されていないと判定された前記ペアの前記測定されたレーダ信号から直接波による寄与を消去するイメージング方法が提供される。
【0025】
また、本発明によれば、
コンピュータを、
異なる位置に配置された複数の送信アンテナと複数の受信アンテナを用いた測定によるレーダ信号を取得するレーダ信号送受信手段、
前記送信アンテナと前記受信アンテナの複数のペア各々に関し、直接波が遮断されているかどうかを判定する直接波遮断ペア判定手段、
直接波が遮断されていないと判定された前記ペアの前記測定されたレーダ信号から直接波による寄与を消去する直接波消去手段、
として機能させるイメージングプログラムが提供される。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、直接波が対象物等に遮断されることのあるようなアンテナ配置を持つレーダ装置において、遮断されているかどうかを判定して適切にレーダ信号から直接波による寄与を消去することにより、安定したレーダ画像を生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】一般的なレーダ装置の構成例を示すブロック図である。
図2】反射波と直接波を説明するための説明図である。
図3】減算処理により直接波によるレーダ信号への寄与の消去が機能する例を示した図である。
図4】送信アンテナと受信アンテナが同一の平面パネル上に配置されたレーダ装置の図である。
図5】送信アンテナと受信アンテナが異なる平面パネル上に配置されたレーダ装置の図である。
図6図5のようなレーダ装置において、直接波が遮断される場合とされない場合を示した図である。
図7】減算処理により直接波によるレーダ信号への寄与の消去が機能しない例を示した図である。
図8】第1の実施形態のレーダ装置の構成例を示すブロック図である。
図9】Stepped Frequency Continuous Wave (SFCW)を説明する説明図である。
図10】第1の実施形態のレーダ装置の動作を示すフローチャートである。
図11】第2の実施形態のレーダ装置の構成例を示すブロック図である。
図12】直接波のみによるレーダ信号から変換された、レンジプロフィールの振幅の例を示す図である。
図13】直接波が遮断されていないレーダ信号から変換された、レンジプロフィールの振幅の例を示す図である。
図14】直接波が遮断されたレーダ信号から変換された、レンジプロフィールの振幅の例を示す図である。
図15】第2の実施形態のレーダ装置の動作を示すフローチャートである。
図16】第3の実施形態のレーダ装置の構成例を示すブロック図である。
図17】第3の実施形態のレーダ装置の動作を示すフローチャートである。
図18】第4の実施形態のレーダ装置の構成例を示すブロック図である。
図19】第4の実施形態のレーダ装置の動作を示すフローチャートである。
図20】第1乃至第4の実施形態のレーダ装置のハードウエア構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。なお、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0029】
[第1の実施の形態]
[構成の説明]
図8は、第1の実施形態のレーダ装置の構成例を示すブロック図である。第1の実施形態のレーダ装置100は、レーダ信号送受信部103と、直接波遮断ペア判定部104と、直接波消去部105と、イメージング処理部106とを備えている。レーダ信号送受信部103は、送信アンテナ(Tx)101と受信アンテナ(Rx)102を備えている。
【0030】
レーダ信号送受信部103は、ミリ波等の電磁波を出射する送信アンテナ(Tx)101の電磁波の出射(具体的には、出射タイミングなど)を制御し、対象物からの反射波などを受信する受信アンテナ(Rx)102からレーダ信号を取得する。
【0031】
送信アンテナ101が照射する電磁波として、例えば、連続波(Continuous Wave (CW))、周波数変調連続波(Frequency Modulated CW (FMCW))、Stepped Frequency Continuous Wave (SFCW)等が使用可能ある。本実施形態では、図9に示すような周波数が時間的に変化するSFCWを例に説明する。なお、図8では、1つの送信アンテナ(Tx)101と1つの受信アンテナ(Rx)102が示されているが、送信アンテナ(Tx)101及び受信アンテナ(Rx)102の少なくとも一方は複数個設置されてもよい。
【0032】
レーダ信号送受信部103は、送信アンテナ101による電磁波の送信(出射)を制御し、受信アンテナ102による受信波に基づくレーダ信号を入力する。
【0033】
受信アンテナ102は、受信波の複素振幅(振幅と送信波からの位相ずれとを表す複素数)を各周波数ごとに測定し、測定結果をレーダ信号とする。レーダ信号は、Txの番号n、Rxの番号m、周波数fを引数として、Smeas(n,m,f)のように表せる。
【0034】
あらかじめ、直接波によるレーダ信号Scc(n,m,f)を測定しておく。これは、装置の外側に電波吸収体などを設置したり対象物が存在しない状況において計測する。
【0035】
直接波遮断ペア判定部104は、測定されたレーダ信号Smeas(n,m,f)と直接波によるレーダ信号Scc(n,m,f)に基づいて、それぞれのTxとRxのペア(n,m)に関して直接波が対象物等により遮断されているか判定する。
【0036】
直接波遮断判定法の一例として、信号強度の比較に基づく方法が考えられる。一般に、直接波の信号強度は反射波の信号強度よりも強いため、直接波が遮られていると他に反射波があったとしても、直接波のみの場合と比べて信号強度が低下する。そこで、ある定数a(例えば、a=0.5)を用いて、下記式(5)の条件を満たしていれば、そのペア(n,m)は直接波が遮断されていると判定する方法が挙げられる。なお、その他の手法を採用してもよい。
【0037】
【数5】
【0038】
直接波消去部105は、直接波遮断ペア判定部104で直接波が遮断されていないと判定された全てのペア(n,m)に対して、レーダ信号Smeas(n,m,f)から直接波による寄与を消去する処理を行う。
【0039】
消去法の一例として、非特許文献1のように、あらかじめ測定された直接波によるレーダ信号に相当する分の減算処理を行う方法が挙げられる。つまり、各fに対して、Smeas(n,m,f)を{Smeas(n,m,f)-Scc(n,m,f)}で置き換える。
【0040】
イメージング処理部106は、直接波消去部105から出力されたレーダ信号からレーダ画像を生成する。例えば、非特許文献2に記載される方法のようにして、設定した空間領域における3次元レーダ画像を得ることができる。直接波消去部105から出力されたレーダ信号は、「直接波が遮断されておらず、直接波の消去処理を行ったペア(n,m)の当該消去処理後のSmeas(n,m,f)」と、「直接波が遮断されており、直接波の消去処理を行わなかったペア(n,m)のSmeas(n,m,f)」とを含む。
【0041】
[動作の説明]
次に、図10のフローチャートを参照して、レーダ装置100の動作を説明する。
【0042】
レーダ信号送受信部103は、送信アンテナ(Tx)101に電磁波を出射させ、受信アンテナ(Rx)102による受信波に基づくレーダ信号Smeas(n,m,f)を得て、直接波遮断ペア判定部104と直接波消去部105に出力する(ステップS101)。
【0043】
直接波遮断ペア判定部104は、レーダ信号送受信部から出力されたSmeas(n,m,f)とあらかじめ測定したScc(n,m,f)とを用いた条件判定(例えば、上記式(5)の条件を満たすか否か)の結果に基づき、TxとRxの各ペア(n,m)に関して直接波が対象物等に遮断されているか判定を行い、判定結果を直接波消去部105に出力する(ステップS102)。
【0044】
直接波消去部105は、直接波が対象物等に遮断されていないと判定された全てのペア(n,m)に対して、Scc(n,m,f)に基づく直接波の消去をSmeas(n,m,f)に適用する。その後、Smeas(n,m,f)をイメージング処理部106に出力する(ステップS103)。ここで出力されるSmeas(n,m,f)は、「直接波が遮断されておらず、直接波の消去処理を行ったペア(n,m)の当該消去処理後のSmeas(n,m,f)」と、「直接波が遮断されており、直接波の消去処理を行わなかったペア(n,m)のSmeas(n,m,f)」とを含む。
【0045】
イメージング処理部106は、直接波消去部105から出力されたSmeas(n,m,f)からレーダ画像を生成し、ディスプレイや物体検出エンジンなどに出力する(ステップS104)。
【0046】
[効果の説明]
以上に説明したように、レーダ装置100は、各アンテナペアに関して直接波が遮断されているかどうかを判定してから、遮断されていないペアに対してのみ直接波消去処理を行うので、課題で述べたような直接波が負の寄与としてレーダ信号に残存することが解消される。その結果、直接波の影響が適切に取り除かれた高品質なレーダ画像を生成できる。
【0047】
[第2の実施の形態]
[構成の説明]
図11は、第2の実施形態のレーダ装置の構成例を示すブロック図である。第2の実施形態のレーダ装置200は、レーダ信号送受信部103と、レンジプロフィール変換処理部207と、直接波遮断ペア判定部204と、直接波消去部205と、レンジプロフィール逆変換処理部208と、イメージング処理部106とを備えている。レーダ信号送受信部103は、送信アンテナ(Tx)101と受信アンテナ(Rx)102を備えている。
【0048】
第2の実施形態では、レーダ信号を光路長rごとの成分として表示したレンジプロフィールに基づき、直接波が対象物に遮断されているかの判定や直接波の消去を行う。一般に反射波と直接波は光路長が異なるため、レンジプロフィールに変換することにより、反射波と直接波のそれぞれによる寄与を分断することができる。
【0049】
あらかじめ、各TxとRxのペア(n,m)に関して、直接波によるレーダ信号Scc(n,m,f)をレンジプロフィールS´cc(n,m,r)に変換しておく。送信波としてSFCWを用いている場合は、Scc(n,m,f)に対してfに関する逆フーリエ変換を行えばよい。TxとRxの距離をr(n,m)とすると、レンジプロフィールの振幅S´cc(n,m,r)の絶対値は、図12のようにr=r(n,m)で最大となることが期待される。
【0050】
レンジプロフィール変換処理部207、直接波遮断ペア判定部204、直接波消去部205、およびレンジプロフィール逆変換処理部208以外のブロックの機能は、第1の実施形態における機能と同じである。
【0051】
レンジプロフィール変換処理部207は、レーダ信号Smeas(n,m,f)をレンジプロフィールS´meas(n,m,r)に変換する。送信波としてSFCWを用いている場合は、fに関する逆フーリエ変換を行えばよい。送信波としてFMCWを用いている場合も、ビート信号に対して同様の処理を行えばよい。
【0052】
直接波遮断ペア判定部204は、S´meas(n,m,r)とS´cc(n,m,r)に基づいて、それぞれのTxとRxのペア(n,m)に関して直接波が対象物等に遮断されているか判定する。
【0053】
判定法の一例として、r=r(n,m)における振幅の比較に基づく方法が考えられる。直接波が遮られていない場合、S´meas(n,m,r)の絶対値は、図13のようにr=r(n,m)で最大となることが期待される。そして、直接波が遮られていない場合、r=r(n,m)におけるS´meas(n,m,r)の絶対値は、r=r(n,m)におけるS´cc(n,m,r)の絶対値(図12参照)と同程度のピーク(値)を持つことが期待される。一方、直接波が遮断されている場合のS´meas(n,m,r)の絶対値は、図14のように、r=r(n,m)でピークを持たないことが期待される。そこで、ある定数b(例えば、b=0.5)を用いて、下記式(6)の条件を満たしていれば、そのペア(n,m)は直接波が遮断されていると判定する方法が挙げられる。なお、その他の手法を採用してもよい。
【0054】
【数6】
【0055】
直接波消去部205は、直接波遮断ペア判定部204で直接波が遮断されていないと判定された全てのペア(n,m)に対して、レーダ信号のレンジプロフィールS´meas(n,m,r)から直接波による寄与を消去する処理を行う。
【0056】
消去法の一例として、直接波によるレーダ信号のレンジプロフィールS´cc(n,m,r)に相当する分の減算処理を行う方法が挙げられる。つまり、各fに対して、S´meas(n,m,r)を{S´meas(n,m,r)-S´cc(n,m,r)}で置き換える。
【0057】
消去法の別の例として、非特許文献3のスペクトルサブトラクション法の要領で直接波の強いレンジ領域を抑制する方法も考えられる。例えば、S´meas(n,m,r)とS´cc(n,m,r)の比較に基づいて抑制に用いる関数g(n,m,r)を算出し、算出されたg(n,m,r)をS´meas(n,m,r)に乗算するという方法が挙げられる。つまり、S´meas(n,m,r)を{S´meas(n,m,r)g(n,m,r)}で置き換える。g(n,m,r)は、例えば下記式(7)のように算出される。
【0058】
【数7】
【0059】
また、r=r(n,m)の周辺をさらに強く抑制するために、ある定数Wを用いて、g(n,m,r)X(r-r(n,m);W)のような量を乗算してもよい。ここで、X(x;W)は、xの絶対値がW以下なら0、そうでないなら1を返す関数である。
【0060】
レンジプロフィール逆変換処理部208は、レンジプロフィールS´meas(n,m,r)を元のレーダ信号の表式Smeas(n,m,f)に戻す変換をする。送信波としてSFCWを用いている場合は、rに関するフーリエ変換を行えばよい。送信波としてFMCWを用いている場合も、同様の処理によりビート信号を復元すればよい。
【0061】
なお、イメージング処理部806で用いられているイメージングアルゴリズムによっては、レンジプロフィールの方が元のレーダ信号の表式よりも有用なことがある。その場合は、レンジプロフィール逆変換処理部208の処理をスキップしてもよい。
【0062】
[動作の説明]
次に、図15のフローチャートを参照して、レーダ装置200の動作を説明する。
【0063】
ステップS101の処理は、第1の実施形態における処理と同じである。ただし出力先は異なり、レンジプロフィール変換処理部207にレーダ信号Smeas(n,m,f)を出力する。
【0064】
レンジプロフィール変換処理部207は、レーダ信号Smeas(n,m,f)をレンジプロフィールS´meas(n,m,r)に変換して、直接波遮断ペア判定部204と直接波消去部205に出力する(ステップS205)。
【0065】
直接波遮断ペア判定部204は、レンジプロフィール変換処理部207から出力されたS´meas(n,m,r)とあらかじめ算出した直接波によるレーダ信号のレンジプロフィールS´cc(n,m,r)の比較に基づき、TxとRxの各ペア(n,m)に関して直接波が対象物等に遮断されているか判定を行い、判定結果を直接波消去部205に出力する(ステップS202)。
【0066】
直接波消去部205は、直接波が対象物に遮断されていないと判定された全てのペア(n,m)に対して、S´cc(n,m,r)に基づく直接波の消去をS´meas(n,m,r)に適用する。その後、S´meas(n,m,r)をレンジプロフィール逆変換処理部208に出力する(ステップS203)。
【0067】
レンジプロフィール逆変換処理部208は、S´meas(n,m,r)を元のレーダ信号の表式Smeas(n,m,f)に戻す変換を行い、イメージング処理部806に出力する(ステップS206)。ここで出力されるSmeas(n,m,f)は、「直接波が遮断されておらず、直接波の消去処理を行ったペア(n,m)の当該消去処理後のSmeas(n,m,f)」と、「直接波が遮断されており、直接波の消去処理を行わなかったペア(n,m)のSmeas(n,m,f)」とを含む。なお、イメージング処理部806で用いられているイメージングアルゴリズムによっては当該ステップをスキップしてもよい。
【0068】
ステップS104の処理は、第1の実施形態における処理と同じである。
【0069】
[効果の説明]
一般に反射波と直接波は光路長が異なるため、レンジプロフィールに変換してから直接波遮断ペア判定を行うことで、各アンテナペアに関する直接波遮断判定の精度が上がる。直接波が遮断されているにもかかわらず反射波が強いという状況でも、反射波の光路長が直接波と離れていれば、直接波が遮断されていると判定できる。その結果、遮断判定の結果を用いて直接波の影響を適切に取り除くことができ、高品質なレーダ画像を生成できる。
【0070】
[第3の実施の形態]
[構成の説明]
図16は、第3の実施形態のレーダ装置の構成例を示すブロック図である。第3の実施形態のレーダ装置300は、レーダ信号送受信部103と、直接波遮断ペア判定部304と、直接波消去部105と、イメージング処理部106とを備えている。レーダ信号送受信部103は、送信アンテナ(Tx)101と受信アンテナ(Rx)102を備えている。直接波遮断ペア判定部304は、センサ309を備えている。
【0071】
直接波遮断ペア判定部304以外のブロックの機能は、第1の実施形態における機能と同じである。第3の実施形態において直接波遮断ペア判定部304は、後述のセンサ309の測定結果を入力とする。
【0072】
センサ309は、対象物の測定を行うカメラなどの測定器である。センサ309は、レーダ信号送受信部103が送信アンテナ101を制御し受信アンテナ102からレーダ信号を入力しているときに、測定結果を、直接波遮断ペア判定部304に出力する。レーダ信号送受信部103の処理と同期して撮影などを行うように制御される。
【0073】
直接波遮断ペア判定部304は、センサ309の測定結果に基づいて、それぞれのTxとRxのペア(n,m)に関して直接波が対象物等に遮断されているか判定する。例えば、TxとRxを結ぶ線分上に対象物等が存在すると画像などから推定されるか否かに基づいて、直接波の遮断の有無を判定する。
【0074】
[動作の説明]
次に、図17のフローチャートを参照して、レーダ装置300の動作を説明する。
【0075】
ステップS101の処理は、第1の実施形態における処理と同じである。
【0076】
直接波遮断ペア判定部304は、ステップS101の処理が行われているときに、センサ309を制御し、センサ309から対象物の測定結果を取得する(ステップS307)。
【0077】
直接波遮断ペア判定部304は、センサ309からの対象物の測定結果に基づいて、TxとRxの各ペア(n,m)に関して直接波が対象物等に遮断されているか判定を行い、判定結果を直接波消去部105に出力する(ステップS302)。
【0078】
ステップS103、ステップS104の処理は、第1の実施形態における処理と同じである。
【0079】
[効果の説明]
レーダ信号ではなく他のセンサを直接波遮断ペア判定に用いることにより、レーダ信号のノイズが大きいような状況であっても関係なく、各アンテナペアに関する直接波遮断判定を安定して行える。その結果、遮断判定の結果を用いて直接波の影響を適切に取り除くことができ、高品質なレーダ画像を生成できる。
【0080】
[第4の実施の形態]
[構成の説明]
図18は、第4の実施形態のレーダ装置の構成例を示すブロック図である。第4の実施形態のレーダ装置400は、レーダ信号送受信部103と、直接波遮断ペア判定部404と、直接波消去部105と、イメージング処理部406とを備えている。レーダ信号送受信部103は、送信アンテナ(Tx)101と受信アンテナ(Rx)102を備えている。
【0081】
第4の実施形態では、直接波が対象物に遮断されているか否かの判定にレーダ画像を用いる。直接波消去処理の前にレーダ画像を生成し、その画像を用いて各TxとRxのペアに関して直接波が対象物に遮断されているか判定を行い、直接波消去処理を実施する。その後もう一度レーダ画像を生成し、それを最終画像として出力するか、もしくは直接波遮断判定結果の更新に用いて前記手順をもう一度行う。
【0082】
イメージング処理部406、直接波遮断ペア判定部404以外のブロックの機能は、第1の実施形態における機能と同じである。
【0083】
イメージング処理部406は、レーダ信号送受信部103で測定されたレーダ信号、もしくは直接波消去部105で処理されたレーダ信号Smeas(n,m,f)からレーダ画像を生成する。このレーダ画像を最終画像とするか判定し、最終画像とするならディスプレイや物体検出エンジンなどに出力し、そうでないなら直接波遮断ペア判定部404に出力する。
【0084】
最終画像とするかどうかの判定は、例えば、イメージング処理部406と直接波遮断ペア判定部404および直接波消去部105から形成されるループを回った回数を基準に行う。ループが一回回ったら最終画像とするという設定でもよい。もしくは、直前のループにおけるレーダ画像と比較し、差分が充分小さければ最終画像とするなどの基準で判定を行う。
【0085】
直接波遮断ペア判定部404は、レーダ画像を用いてそれぞれのTxとRxのペア(n,m)に関して直接波が対象物等に遮断されているか判定する。
【0086】
判定法の一例を述べる。レーダ画像は3次元の複素画像であるとして、I(x,y,z)と表記する。それぞれのTxとRxのペア(n,m)に関して、TxとRxを結ぶ線分のある点が一定以上の画像強度を持つ、つまり事前に設定したある閾値tに対して下記式(8)を満たす、TxとRxを結ぶ線分上の点(x,y,z)が存在するならば、そのペアによる直接波は遮断されていると判定する。
【0087】
【数8】
【0088】
[動作の説明]
次に、図19のフローチャートを参照して、レーダ装置400の動作を説明する。
【0089】
ステップS101の処理は、第1の実施形態における処理と同じである。ただし出力先は異なり、直接波消去部105とイメージング処理部406にレーダ信号Smeas(n,m,f)を出力する。
【0090】
イメージング処理部406は、レーダ信号送受信部103から出力されたレーダ信号、もしくは直接波消去部105から出力されたレーダ信号Smeas(n,m,f)からレーダ画像を生成する(ステップS408)。ステップS409では、イメージング処理部406が生成したレーダ画像を最終画像とするか判定する。最終画像とするなら(S409のYes)、ディスプレイや物体検出エンジンなどにレーダ画像を出力する(ステップS410)。そうでないなら(S409のNo)、レーダ画像を直接波遮断ペア判定部404に出力し、ステップS402を行う。
【0091】
直接波遮断ペア判定部404は、イメージング処理部406から出力されたレーダ画像に基づいて、TxとRxの各ペア(n,m)に関して直接波が対象物等に遮断されているか判定を行い、判定結果を直接波消去部105に出力する(ステップS402)。
【0092】
ステップS103の処理は、第1の実施形態における処理と同じである。
【0093】
[効果の説明]
第1と第2の実施の形態においては、あるTxとRxのペアによる直接波が遮断されているか判定する際に、そのペアによるレーダ信号のみを情報として用いていた。一方、第4の実施の形態のように全レーダ信号を用いて作成されるレーダ画像を判定に用いることで、他のペアのレーダ信号の情報も取り入れることができ、遮断判定の精度が向上する。その結果、遮断判定の結果を用いて直接波の影響を適切に取り除くことができ、高品質なレーダ画像を生成できる。
【0094】
[ハードウエア構成]
次に、レーダ装置100乃至400のハードウエア構成の一例を説明する。レーダ装置100乃至400の各機能部は、任意のコンピュータのCPU(Central Processing Unit)、メモリ、メモリにロードされるプログラム、そのプログラムを格納するハードディスク等の記憶ユニット(あらかじめ装置を出荷する段階から格納されているプログラムのほか、CD(Compact Disc)等の記憶媒体やインターネット上のサーバ等からダウンロードされたプログラムをも格納できる)、ネットワーク接続用インターフェイスを中心にハードウエアとソフトウエアの任意の組合せによって実現される。そして、その実現方法、装置にはいろいろな変形例があることは、当業者には理解されるところである。
【0095】
図20は、レーダ装置100乃至400のハードウエア構成を例示するブロック図である。図示するように、レーダ装置100乃至400は、プロセッサ1A、メモリ2A、入出力インターフェイス3A、周辺回路4A、バス5Aを有する。周辺回路4Aには、様々なモジュールが含まれる。レーダ装置100乃至400は周辺回路4Aを有さなくてもよい。なお、レーダ装置100乃至400は物理的及び/又は論理的に分かれた複数の装置で構成されてもよいし、物理的及び/又は論理的に一体となった1つの装置で構成されてもよい。レーダ装置100乃至400が物理的及び/又は論理的に分かれた複数の装置で構成される場合、複数の装置各々が上記ハードウエア構成を備えることができる。
【0096】
バス5Aは、プロセッサ1A、メモリ2A、周辺回路4A及び入出力インターフェイス3Aが相互にデータを送受信するためのデータ伝送路である。プロセッサ1Aは、例えばCPU、GPU(Graphics Processing Unit)などの演算処理装置である。メモリ2Aは、例えばRAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)などのメモリである。入出力インターフェイス3Aは、入力装置、外部装置、外部サーバ、外部センサー、カメラ等から情報を取得するためのインターフェイスや、出力装置、外部装置、外部サーバ等に情報を出力するためのインターフェイスなどを含む。入力装置は、例えばキーボード、マウス、マイク、物理ボタン、タッチパネル等である。出力装置は、例えばディスプレイ、スピーカ、プリンター、メーラ等である。プロセッサ1Aは、各モジュールに指令を出し、それらの演算結果をもとに演算を行うことができる。
【0097】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限定されない。
1. 異なる位置に配置された複数の送信アンテナと複数の受信アンテナを用いた測定によるレーダ信号を取得するレーダ信号送受信手段と、
前記送信アンテナと前記受信アンテナの複数のペア各々に関し、直接波が遮断されているかどうかを判定する直接波遮断ペア判定手段と、
直接波が遮断されていないと判定された前記ペアの前記測定されたレーダ信号から直接波による寄与を消去する直接波消去手段と、
を備えたことを特徴とするレーダ装置。
2. 前記直接波消去手段により直接波の寄与が消去された前記測定されたレーダ信号に基づいてレーダ画像を生成するイメージング処理手段をさらに備えた1に記載のレーダ装置。
3. 前記直接波遮断ペア判定手段は、前記測定されたレーダ信号と、あらかじめ得られた直接波によるレーダ信号との強度比較に基づいて判定を行う1または2に記載のレーダ装置。
4. 前記直接波遮断ペア判定手段は、前記測定されたレーダ信号のレンジプロフィールと、あらかじめ得られた直接波によるレーダ信号のレンジプロフィールとの比較に基づいて判定を行う1または2に記載のレーダ装置。
5. 前記直接波遮断ペア判定手段は、直接波を遮断しうる対象物を把握可能なセンサ手段の検出信号に基づいて判定を行う1または2に記載のレーダ装置。
6. 前記直接波遮断ペア判定手段は、直接波の寄与が消去される前の前記測定されたレーダ信号に基づき生成されたレーダ画像に基づいて判定を行う1または2に記載のレーダ装置。
7. 前記直接波消去手段は、前記測定されたレーダ信号からあらかじめ得られた直接波によるレーダ信号に相当する分の減算処理を行う1から6のうちのいずれかに記載のレーダ装置。
8. 前記直接波消去手段は、前記測定されたレーダ信号のレンジプロフィールからあらかじめ得られた直接波によるレーダ信号のレンジプロフィールに相当する分の減算処理を行う1から6のうちのいずれかに記載のレーダ装置。
9. 前記直接波消去手段は、前記測定されたレーダ信号のレンジプロフィールと、あらかじめ得られた直接波によるレーダ信号のレンジプロフィールとの比較から算出される関数の乗算処理を行う1から6のうちのいずれかに記載のレーダ装置。
10. コンピュータが、
異なる位置に配置された複数の送信アンテナと複数の受信アンテナを用いた測定によるレーダ信号を取得し、
前記送信アンテナと前記受信アンテナの複数のペア各々に関し、直接波が遮断されているかどうかを判定し、
直接波が遮断されていないと判定された前記ペアの前記測定されたレーダ信号から直接波による寄与を消去するイメージング方法。
11. コンピュータを、
異なる位置に配置された複数の送信アンテナと複数の受信アンテナを用いた測定によるレーダ信号を取得するレーダ信号送受信手段、
前記送信アンテナと前記受信アンテナの複数のペア各々に関し、直接波が遮断されているかどうかを判定する直接波遮断ペア判定手段、
直接波が遮断されていないと判定された前記ペアの前記測定されたレーダ信号から直接波による寄与を消去する直接波消去手段、
として機能させるイメージングプログラム。
【符号の説明】
【0098】
100,200,300,400,800 レーダ装置
101,801 送信アンテナ(Tx)
102,802 受信アンテナ(Rx
103,803 レーダ信号送受信部
104,204,304,404 直接波遮断ペア判定部
105,205,805 直接波消去部
106,406,806 イメージング処理部
207 レンジプロフィール変換処理部
208 レンジプロフィール逆変換処理部
309 センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20