(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】遠心圧縮機および過給機
(51)【国際特許分類】
F04D 29/44 20060101AFI20240312BHJP
【FI】
F04D29/44 U
(21)【出願番号】P 2022568051
(86)(22)【出願日】2021-09-03
(86)【国際出願番号】 JP2021032537
(87)【国際公開番号】W WO2022123839
(87)【国際公開日】2022-06-16
【審査請求日】2023-01-20
(31)【優先権主張番号】P 2020204236
(32)【優先日】2020-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】時枝 克典
【審査官】岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/168650(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/179112(WO,A1)
【文献】特開2005-002951(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/44
F02B 39/00
F04D 29/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インペラを収容するハウジングと、
前記ハウジングのうち、前記インペラよりも径方向外側に形成されたディフューザ流路と、
前記ハウジングに形成され、前記ディフューザ流路に径方向外側から連通するスクロール流路であって、当該スクロール流路は、前記ディフューザ流路に対して前記インペラの回転軸方向および回転方向に延在し、当該スクロール流路は、径方向の最も内側に位置する内径端を含み、前記内径端は、前記回転軸方向における当該スクロール流路の最大流路幅の中間点に対して、前記ディフューザ流路から離隔する、スクロール流路と、
を備え
、
前記中間点と前記内径端との前記回転軸方向の離隔距離は、前記スクロール流路の舌部および巻終わり部に対し、前記スクロール流路の延在方向における前記舌部から前記巻終わり部までの間の中間部において大きい、
遠心圧縮機。
【請求項2】
前記スクロール流路は、径方向内側に位置する内径面を含み、前記内径面は、前記内径端より前記ディフューザ流路に近接する第1曲率面と、前記内径端より前記ディフューザ流路から離隔する第2曲率面と、を含み、前記第1曲率面の曲率半径は、前記第2曲率面の曲率半径と等しい、請求項1に記載の遠心圧縮機。
【請求項3】
前記スクロール流路は、径方向内側に位置する内径面を含み、前記内径面は、前記内径端より前記ディフューザ流路に近接する第1曲率面と、前記内径端より前記ディフューザ流路から離隔する第2曲率面と、を含み、前記中間部では、前記第1曲率面の曲率半径は、前記第2曲率面の曲率半径より大きい、請求項
1または2に記載の遠心圧縮機。
【請求項4】
前記請求項1~
3のうちいずれか1項に記載の遠心圧縮機を備える過給機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、遠心圧縮機および過給機に関する。本出願は2020年12月9日に提出された日本特許出願第2020-204236号に基づく優先権の利益を主張するものであり、その内容は本出願に援用される。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、コンプレッサハウジングと、コンプレッサインペラとを備えた遠心圧縮機について開示がある。特許文献1のコンプレッサハウジングには、ディフューザ流路と、スクロール流路とが形成される。スクロール流路には、径方向の最も内側に位置する内径端が形成される。スクロール流路の内径端は、コンプレッサインペラの回転軸方向における最大流路幅の中間点に対し、ディフューザ流路側に位置する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
スクロール流路の内径端がディフューザ流路側に位置すると、スクロール流路の内径側の断面形状が曲率の大きなものとなる。このため、スクロール流路壁に沿った流れの方向の変化が大きくなり、スクロール流路の内径側、かつ、ディフューザ流路側の内面において空気が剥離し易くなる。
【0005】
本開示は、スクロール流路内での空気の剥離を抑制可能な遠心圧縮機および過給機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示の遠心圧縮機は、インペラを収容するハウジングと、ハウジングのうち、インペラよりも径方向外側に形成されたディフューザ流路と、ハウジングに形成され、ディフューザ流路に径方向外側から連通するスクロール流路であって、当該スクロール流路は、ディフューザ流路に対してインペラの回転軸方向および回転方向に延在し、当該スクロール流路は、径方向の最も内側に位置する内径端を含み、内径端は、回転軸方向における当該スクロール流路の最大流路幅の中間点に対して、ディフューザ流路から離隔する、スクロール流路と、を備え、中間点と内径端との回転軸方向の離隔距離は、スクロール流路の舌部および巻終わり部に対し、スクロール流路の延在方向における舌部から巻終わり部までの間の中間部において大きい。
【0007】
スクロール流路は、径方向内側に位置する内径面を含み、内径面は、内径端よりディフューザ流路に近接する第1曲率面と、内径端よりディフューザ流路から離隔する第2曲率面と、を含み、第1曲率面の曲率半径は、第2曲率面の曲率半径と等しくてもよい。
【0009】
スクロール流路は、径方向内側に位置する内径面を含み、内径面は、内径端よりディフューザ流路に近接する第1曲率面と、内径端よりディフューザ流路から離隔する第2曲率面と、を含み、中間部では、第1曲率面の曲率半径は、第2曲率面の曲率半径より大きくてもよい。
【0010】
上記課題を解決するために、本開示の過給機は、上記遠心圧縮機を備える。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、スクロール流路壁に沿った流れの剥離を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】
図2は、本実施形態のコンプレッサスクロール流路の概略断面図である。
【
図3】
図3は、コンプレッサスクロール流路内を流通する空気の流速を可視化した図である。
【
図4】
図4は、コンプレッサスクロール流路の巻始め部から巻終わり部までの方位角と、回転軸方向における内径端と中間点の間の距離との関係を表すグラフである。
【
図5】
図5は、中間部におけるコンプレッサスクロール流路の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の一実施形態について説明する。実施形態に示す具体的な寸法、材料および数値等は、理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本開示を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本開示に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0014】
図1は、過給機TCの概略断面図である。以下では、
図1に示す矢印L方向を過給機TCの左側として説明する。
図1に示す矢印R方向を過給機TCの右側として説明する。
図1に示すように、過給機TCは、過給機本体1を備える。過給機本体1は、ベアリングハウジング3と、タービンハウジング5と、コンプレッサハウジング(ハウジング)7と、を含む。タービンハウジング5は、ベアリングハウジング3の左側に締結ボルト9によって連結される。コンプレッサハウジング7は、ベアリングハウジング3の右側に締結ボルト11によって連結される。
【0015】
ベアリングハウジング3には、軸受孔3aが形成される。軸受孔3aは、ベアリングハウジング3を過給機TCの左右方向に貫通する。軸受孔3aは、シャフト13の一部を収容する。軸受孔3aには、軸受15が収容される。本実施形態では、軸受15は、フルフローティング軸受である。しかし、これに限定されず、軸受15は、セミフローティング軸受や、転がり軸受など他の軸受であってもよい。シャフト13は、軸受15によって、回転可能に支持される。シャフト13の左端部には、タービン翼車17が設けられる。タービン翼車17は、タービンハウジング5に回転可能に収容される。シャフト13の右端部には、コンプレッサインペラ(インペラ)19が設けられる。コンプレッサインペラ19は、コンプレッサハウジング7に回転可能に収容される。本開示において、シャフト13、タービン翼車17およびコンプレッサインペラ19の回転軸方向、径方向および回転方向は、それぞれ単に回転軸方向、径方向および回転方向と称され得る。
【0016】
コンプレッサハウジング7には、吸気口21が形成される。吸気口21は、過給機TCの右側に開口する。吸気口21は、不図示のエアクリーナに接続される。ベアリングハウジング3とコンプレッサハウジング7の対向面によって、ディフューザ流路23が形成される。ディフューザ流路23は、環状に形成される。ディフューザ流路23は、コンプレッサハウジング7のうち、コンプレッサインペラ19よりも径方向外側に形成される。ディフューザ流路23は、径方向内側において、コンプレッサインペラ19を介して吸気口21に連通している。吸気口21からコンプレッサインペラ19を介して流入した空気は、ディフューザ流路23を流通する。ディフューザ流路23は、空気を加圧する。
【0017】
コンプレッサハウジング7には、コンプレッサスクロール流路(スクロール流路)25が形成される。コンプレッサスクロール流路25は、環状に形成される。コンプレッサスクロール流路25は、例えば、ディフューザ流路23よりも径方向外側に位置する。コンプレッサスクロール流路25は、ディフューザ流路23に対して径方向外側に連通する。コンプレッサスクロール流路25は、ディフューザ流路23に対して回転軸方向および回転方向に延在する。コンプレッサスクロール流路25は、不図示のエンジンの吸気口と、ディフューザ流路23とに連通している。コンプレッサインペラ19が回転すると、吸気口21からコンプレッサハウジング7内に空気が吸気される。吸気された空気は、コンプレッサインペラ19の翼間を流通する過程において加圧加速される。加圧加速された空気は、ディフューザ流路23およびコンプレッサスクロール流路25で加圧される。加圧された空気は、エンジンの吸気口に導かれる。
【0018】
このようなコンプレッサハウジング7およびベアリングハウジング3により、遠心圧縮機CCが構成される。本実施形態では、遠心圧縮機CCが過給機TCに搭載される例ついて説明する。ただし、これに限定されず、遠心圧縮機CCは、過給機TC以外の装置に組み込まれてもよいし、単体であってもよい。
【0019】
タービンハウジング5には、吐出口27が形成される。吐出口27は、過給機TCの左側に開口する。吐出口27は、不図示の排気ガス浄化装置に接続される。タービンハウジング5には、連通流路29およびタービンスクロール流路31が形成される。連通流路29は、タービン翼車17の径方向外側に位置する。連通流路29は、環状に形成される。連通流路29は、タービン翼車17を介して吐出口27とタービンスクロール流路31とを連通する。
【0020】
タービンスクロール流路31は、例えば、連通流路29よりも径方向外側に位置する。タービンスクロール流路31は、環状に形成される。タービンスクロール流路31は、不図示のガス流入口と連通する。ガス流入口には、不図示のエンジンの排気マニホールドから排出される排気ガスが導かれる。排気ガスは、タービンスクロール流路31および連通流路29を通過し、タービン翼車17を介して吐出口27に導かれる。排気ガスは、タービン翼車17を流通する過程においてタービン翼車17を回転させる。
【0021】
タービン翼車17の回転力は、シャフト13を介してコンプレッサインペラ19に伝達される。コンプレッサインペラ19が回転すると、上記のとおりに空気が加圧される。こうして、空気がエンジンの吸気口に導かれる。
【0022】
図2は、本実施形態のコンプレッサスクロール流路25の概略断面図である。
図2に示すように、コンプレッサスクロール流路25は、回転軸方向に最大流路幅Thとなる側端部25a、25aを有する。コンプレッサスクロール流路25の内面は、側端部25a、25aを境に、外径面25bと、内径面25cとを有する。
【0023】
外径面25bは、コンプレッサスクロール流路25の内面のうち、側端部25a、25aよりも外径側に形成される。外径面25bは、径方向外側に突出した曲面形状を有する。内径面25cは、コンプレッサスクロール流路25の内面のうち、側端部25a、25aよりも内径側に形成される。内径面25cは、径方向内側に突出した曲面形状を有する。
【0024】
ディフューザ流路23からコンプレッサスクロール流路25に流入した空気の大部分は、外径面25bに沿ってディフューザ流路23に近接する部分から離隔する部分に導かれる。外径面25bに沿って移動した空気は、外径面25bから内径面25cに導かれ、内径面25cに沿ってディフューザ流路23から離隔する部分から近接する部分に導かれる。このように、ディフューザ流路23からコンプレッサスクロール流路25に流入した空気の大部分は、コンプレッサスクロール流路25内で
図2中、時計回り(図中、矢印Ra方向)の旋回流を形成する。
【0025】
また、ディフューザ流路23からコンプレッサスクロール流路25に流入した空気の一部は、ディフューザ流路23の出口端面23aから
図2中、右側に移動し、内径面25cに沿ってディフューザ流路23に近接する部分から離隔する部分に導かれる。このように、ディフューザ流路23からコンプレッサスクロール流路25に流入した空気の一部は、コンプレッサスクロール流路25内で
図2中、反時計回り(図中、矢印Rb方向)の旋回流を形成する。
【0026】
コンプレッサスクロール流路25内の
図2中、時計回りの旋回流および反時計回りの旋回流は、内径面25cの後述する第1曲率面25gにおいて互いに衝突し、淀み領域(剥離領域)が形成される。
【0027】
外径面25bは、コンプレッサスクロール流路25のうち最も径方向外側に位置する外径端25dを有する。内径面25cは、コンプレッサスクロール流路25のうち最も径方向内側に位置する内径端25eを有する。
【0028】
径方向において、側端部25a、25aから外径端25dまでの距離は、側端部25a、25aから内径端25eまでの距離よりも短い。コンプレッサスクロール流路25のうち、側端部25a、25aよりも外径側の流路断面積は、側端部25a、25aより内径側の流路断面積より小さい。
【0029】
外径端25dは、回転軸方向において内径端25eと同じ位置にある。ただし、これに限定されず、外径端25dは、回転軸方向において内径端25eと異なる位置にあってもよい。外径端25dは、回転軸方向における最大流路幅Thの中間点25fに対し、ディフューザ流路23から離隔する。
【0030】
内径端25eは、回転軸方向における最大流路幅Thの中間点25fに対し、ディフューザ流路23から離隔する。ディフューザ流路23近くの側端部25aと内径端25eとの間の幅Eiは、ディフューザ流路23近くの側端部25aと中間点25fの間の幅Mhよりも大きい。つまり、ディフューザ流路23近くの側端部25aと内径端25eとの回転軸方向の離隔距離は、ディフューザ流路23近くの側端部25aと中間点25fとの回転軸方向の離隔距離よりも大きい。内径端25eは、回転軸方向において、ディフューザ流路23から離隔する側端部25aと、中間点25fとの間に位置する。内径端25eは、ディフューザ流路23から離隔する側端部25aよりも、中間点25fに近接する。
【0031】
内径面25cは、第1曲率面25gと、第2曲率面25hとを含む。第1曲率面25gは、内径面25cのうち、内径端25eよりディフューザ流路23に近接する。第2曲率面25hは、内径面25cのうち、内径端25eよりディフューザ流路23から離隔する。第1曲率面25gの曲率半径は、第2曲率面25hの曲率半径と等しい。ここで、等しいとは、完全に等しい場合と、製造上の公差、誤差を有する実質的に等しい場合とを含む意味である。ただし、これに限定されず、第1曲率面25gの曲率半径は、第2曲率面25hの曲率半径と異なっていてもよい。
【0032】
上述したように、本実施形態のコンプレッサスクロール流路25では、最大流路幅Thとなる側端部25a、25aに対し、外径側の高さ(径方向における外径端25dまでの距離)が、内径側の高さ(径方向における内径端25eまでの距離)より小さい。そのため、側端部25a、25aに対し外径側の高さと内径側の高さが等しい場合に比べ、コンプレッサスクロール流路25の最大外径を小さくすることができる。その結果、コンプレッサハウジング7の最大外径を小さくすることができる。
【0033】
一方、本実施形態のコンプレッサスクロール流路25では、側端部25a、25aに対し外径側の高さと内径側の高さが等しい場合に比べ、内径側の高さが大きく、内径側に突出した形状を有する。コンプレッサスクロール流路25の内径側の高さが大きくなるほど、流路の断面形状の内径側の曲率が大きくなり、ディフューザ流路23からコンプレッサスクロール流路25に流入した空気が、特に第1曲率面25gにおいて剥離し易くなり、剥離領域が拡大され易くなる。剥離領域が拡大されるほど、遠心圧縮機CCの性能が低下する。
【0034】
コンプレッサスクロール流路25の内径端25eが、中間点25fに対しディフューザ流路23に近接するほど、ディフューザ流路23の出口端面23aと第1曲率面25gとの間の角度αが大きくなる。角度αが大きくなるほど、ディフューザ流路23からコンプレッサスクロール流路25に流入した空気が、第1曲率面25gから剥離し易くなる。
【0035】
そこで、本実施形態では、コンプレッサスクロール流路25の内径端25eを、中間点25fに対しディフューザ流路23から離隔するように配している。これにより、内径端25eが中間点25fに対しディフューザ流路23近くに位置する場合よりも、ディフューザ流路23の出口端面23aと第1曲率面25gとの間の角度αを小さくすることができる。その結果、ディフューザ流路23からコンプレッサスクロール流路25に流入した空気が第1曲率面25gで剥離し難くなり、剥離領域の拡大を抑制することができる。
【0036】
また、第1曲率面25gと第2曲率面25hの曲率半径が等しい場合、ディフューザ流路23からコンプレッサスクロール流路25に流入した空気が、第1曲率面25gおよび第2曲率面25h上で滑らかに移動することができる。その結果、第1曲率面25gおよび第2曲率面25h上で空気が剥離し難くなり、剥離領域の拡大を抑制することができる。
【0037】
図3は、コンプレッサスクロール流路25内を流通する空気の流速を可視化した図である。
図4は、コンプレッサスクロール流路25の巻始め部から巻終わり部までの方位角と、回転軸方向における内径端25eと中間点25fの間の距離との関係を表すグラフである。
図3中、コンプレッサスクロール流路25内に示される複数の曲線は、空気の流速の大きさを示し、曲線が長いほど流速が速いことを示す。
図4中、縦軸は、ディフューザ流路23近くの側端部25aを基準とした回転軸方向の距離を示し、横軸は、コンプレッサスクロール流路25の巻始め部から巻終わり部までの方位角を示す。
【0038】
図3および
図4に示すように、コンプレッサスクロール流路25の巻始め部25iは、方位角0°で表され、巻終わり部25jは方位角330°で表される。また、コンプレッサスクロール流路25には、コンプレッサスクロール流路25の上流部と下流部とを仕切る舌部25kが形成される。コンプレッサスクロール流路25の舌部25kは、おおよそ方位角15°で表される。また、コンプレッサスクロール流路25は、コンプレッサスクロール流路25の延在方向における巻始め部25i(舌部25k)から巻終わり部25jまでの間に中間部25mを有する。中間部25mは、
図4で示されるように、例えば方位角60°~210°で表される範囲である。ただし、中間部25mの範囲(方位角)は、これに限定されない。
【0039】
図4に示されるように、中間点25fと内径端25eとの回転軸方向の離隔距離は、コンプレッサスクロール流路25の延在方向(方位角)に沿って変化する。中間点25fと内径端25eとの回転軸方向の離隔距離は、舌部25kにおいて最も小さい。
【0040】
中間点25fと内径端25eとの回転軸方向の離隔距離は、舌部25kから中間部25mに向かって徐々に大きくなり、中間部25mから巻終わり部25jに向かって徐々に小さくなる。換言すれば、中間点25fと内径端25eとの回転軸方向の離隔距離は、コンプレッサスクロール流路25の巻始め部25i(舌部25k)および巻終わり部25jに対し、中間部25mにおいてより大きい。
【0041】
図5は、中間部25mにおけるコンプレッサスクロール流路25の概略断面図である。
図5中、巻終わり部25jの流路断面形状を破線で示し、中間部25mの流路断面形状を実線で示す。なお、巻終わり部25jの流路断面形状は、
図2に示す流路断面形状と同じである。
【0042】
図5に示すように、中間部25mにおけるコンプレッサスクロール流路25の内径端125eは、巻終わり部25jにおけるコンプレッサスクロール流路25の内径端25eよりも、ディフューザ流路23から離隔する。つまり、中間部25mにおける中間点25fと内径端125eとの回転軸方向の離隔距離は、巻終わり部25jにおける中間点25fと内径端25eとの回転軸方向の離隔距離よりも大きい。
【0043】
そのため、中間部25mにおけるコンプレッサスクロール流路25の第1曲率面125gは、巻終わり部25jにおけるコンプレッサスクロール流路25の第1曲率面25gよりも曲率半径が大きくなる。
【0044】
また、中間部25mにおけるコンプレッサスクロール流路25の第2曲率面125hは、巻終わり部25jにおけるコンプレッサスクロール流路25の第2曲率面25hよりも曲率半径が小さくなる。その結果、第1曲率面125gの曲率半径は、第2曲率面125hの曲率半径より大きくなる。換言すれば、第2曲率面125hの曲率半径は、第1曲率面125gの曲率半径より小さくなる。
【0045】
図3に示すように、コンプレッサスクロール流路25内に示される複数の曲線は、中間部25m(特に、方位角60°~150°)において、コンプレッサスクロール流路25の外径端付近まで長く延在している。このように、コンプレッサスクロール流路25内を流通する空気の流速は、中間部25m(特に、方位角60°~150°)において最も速くなる。空気の流速が速くなるほど、第1曲率面25g、125gにおいて空気が剥離し易くなる。
【0046】
そのため、本実施形態では、空気の流速が最も速くなる中間部25mにおいて、第2曲率面125hの曲率半径を小さくしている。曲率半径を小さくすることで、曲率半径が大きい場合よりも、
図5中、時計回りの空気の旋回速度を、効率よく減速させることができる。その結果、第2曲率面125hから第1曲率面125gに移動した空気が、第1曲率面125g上で剥離し、剥離領域が拡大されるのを抑制することができる。
【0047】
以上、添付図面を参照しながら本開示の一実施形態について説明したが、本開示はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0048】
上記実施形態では、中間点25fと内径端25eとの回転軸方向の離隔距離がコンプレッサスクロール流路25の延在方向に沿って変化する例について説明した。しかし、これに限定されず、中間点25fと内径端25eとの回転軸方向の離隔距離は、コンプレッサスクロール流路25の延在方向に沿って一定であってもよい。
【符号の説明】
【0049】
CC 遠心圧縮機
TC 過給機
7 コンプレッサハウジング(ハウジング)
19 コンプレッサインペラ(インペラ)
23 ディフューザ流路
25 コンプレッサスクロール流路(スクロール流路)
25a 側端部
25b 外径面
25c 内径面
25d 外径端
25e 内径端
25f 中間点
25g 第1曲率面
25h 第2曲率面
25i 巻始め部
25j 巻終わり部
25k 舌部
25m 中間部
125e 内径端
125g 第1曲率面
125h 第2曲率面