(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】電子鍵盤楽器及び電子鍵盤楽器の製造方法
(51)【国際特許分類】
G10H 1/32 20060101AFI20240312BHJP
【FI】
G10H1/32 Z
(21)【出願番号】P 2023059901
(22)【出願日】2023-04-03
(62)【分割の表示】P 2018196281の分割
【原出願日】2018-10-18
【審査請求日】2023-05-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今村 尚人
(72)【発明者】
【氏名】大嶋 弘志
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 聡
(72)【発明者】
【氏名】石橋 直也
【審査官】大野 弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-211618(JP,A)
【文献】特開2004-171038(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10H 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の鍵を備える鍵盤ユニットと
、
前記鍵盤ユニットの前側に位置する前面板と、前記鍵盤ユニットの後側に位置する背面板
と、を有する第1ケースと、
前記前面板の上下方向の幅よりも長い第1間隔で複数の貫通孔が設けられた第1電子部品と、
を備え、
前記背面
板側には、前記貫通孔を通して前記第1電子部品
を固定す
る部品固定部が、前記第1間隔で上下方向に離間して複数設けられ、
前記部品固定部と前記貫通孔が並ぶ方向の延長線上に前記前面板が位置しな
い、
電子鍵盤楽器。
【請求項2】
前記第1ケースは上部ケースであり、
前記上部ケースの下側に嵌合される下部ケースである第2ケースをさらに備え、
前記第1ケースは、前記複数の鍵を露出させる第1開口部と、前記第2ケースを嵌合させる嵌合部に設けられた第2開口部と、を有し、
前記前面板は、前記第1開口部における前記鍵盤ユニットの前端側から垂設されており、
前記前面板の下部は、前記嵌合部の一部を構成し、
複数の前記部品固定部のうちの下側に位置する前記部品固定部
と前記貫通孔が並ぶ方向の延長線上よりも、前記前面板の下部が上に位置し、
複数の前記部品固定部のうちの上側に位置する前記部品固定部
と前記貫通孔が並ぶ方向の延長線上よりも、前記前面板の上部が下に位置するように、前記第1ケースが構成されている、
請求項1に記載の電子鍵盤楽器。
【請求項3】
前記嵌合部で形成される嵌合面に対して垂線を設定した場合に当該垂線に対して前記背面板が傾斜して設けられている、
請求項2に記載の電子鍵盤楽器。
【請求項4】
前記第2ケースにおける前記第1ケースとの嵌合部は、前側の嵌合部が後側の嵌合部よりも高い位置となるように、前記第2ケースが構成されている、
請求項2又は請求項3に記載の電子鍵盤楽器。
【請求項5】
複数の前記部品固定部
のうち下側に位置する前記部品固定部と前記貫通孔が並ぶ方向と、上側に位置する前記部品固定部と前記貫通孔が並ぶ方向は、同一方向である、
請求項1から4のいずれか一項に記載の電子鍵盤楽器。
【請求項6】
複数の前記部品固定部
と前記貫通孔が並ぶ方向は、前記背面板に対して直交する方向である、
請求項5に記載の電子鍵盤楽器。
【請求項7】
前記第1電子部品は、スピーカである、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の電子鍵盤楽器。
【請求項8】
前記第1電子部品は、回路基板である、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の電子鍵盤楽器。
【請求項9】
複数の鍵を備える鍵盤ユニットと、前面板と背面板とを有する枠状の第1ケースと、前記前面板の上下方向の幅よりも広い第1間隔で複数の貫通孔が設けられた第1電子部品と、を備える電子鍵盤楽器の製造方法であって、
前記背面
板側には、前記貫通孔を通して前記第1電子部品
を固定するため
の部品固定部が、前記第1間隔で上下方向に分散して複数設けられ、
前記部品固定部と前記貫通孔が並ぶ方向の延長線上に前記前面板が位置しないように、前記第1ケースが構成されており、
前記電子鍵盤楽器の組み立て時において、
複数の前記部品固定
部に対して、前記第1ケースの外部から直線的
にアクセスして
前記第1電子部品を締結する、
電子鍵盤楽器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子鍵盤楽器及び電子鍵盤楽器の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子鍵盤楽器は、樹脂等で形成された楽器ケース内に鍵盤ユニットを収納することで形成されている。
例えば特許文献1には、鍵盤ユニット(特許文献1において鍵盤部)を収納する楽器ケース(特許文献1において筐体)が筐体本体部と筐体後部とで構成され、筐体本体部に対して筐体後部が着脱式に取り付けられる構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の構成では、筐体本体部は、鍵盤部が載置される底板部と、鍵盤部の前で底板部から立ち上がる口棒部と、鍵盤部の左右側で底板部から立ち上がる左右の側板部とを含み、これら底板部、側板部及び口棒部はねじ等適宜の接合手段を介して相互に接合固定される。また、筐体後部は、筐体の後方上面を構成する屋根板部と、屋根板部の後縁から立ち下がる背面板部とを含み、屋根板部と背面板部はねじ等適宜の接合手段を介して相互に接合固定される。
【0005】
このため、楽器ケース(筐体)全体を構成する部品点数が多く、ねじ等によって接合する箇所が多くなる。
そして、側方から側板部を接合し、上側から屋根板部を接合するというように、ねじ締め方向もまちまちであるため、一方向から一括してねじ締めを行う等は難しく、組み立てに時間と手間を要する。
また、接合箇所が表に現れると、電子鍵盤楽器の外観を損なうおそれもある。
【0006】
また、このような複数の部品で構成された筐体本体部と筐体後部とを着脱可能に一体化させて楽器ケース(筐体)を構成した場合、十分な強度を確保できないおそれもある。
特に、アコースティックのピアノの打鍵感を再現するため、鍵盤ユニットにハンマー部材が組み込まれている場合には、鍵盤ユニットの重量も重くなり、これを収納する楽器ケース(筐体)には、より一層の強度が要求される。
【0007】
さらに、どこにでも置くことができて取り扱いの容易な楽器とするためには、電子鍵盤楽器全体をできるだけ小型化することが求められる。
この点、基板やスピーカ等の電子部品をねじ止め等のしやすい位置に配置すると、広い空間が必要となり、楽器の小型化が難しいという問題もある。
特に、鍵盤ユニットがハンマー部材を備える場合には、ハンマー部材が回動するための空間を確保する必要があり、ハンマー部材に干渉しないように電子部品を配置しなければならないため、より効率的な実装の工夫が必要となる。
【0008】
本発明は以上のような事情に鑑みてなされたものであり、組立て性に優れるとともに楽器全体の小型化を図ることのできる電子鍵盤楽器及び電子鍵盤楽器の製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本願発明に係る電子鍵盤楽器は、
複数の鍵を備える鍵盤ユニットと、
前記鍵盤ユニットの前側に位置する前面板と、前記鍵盤ユニットの後側に位置する背面板と、を有する第1ケースと、
前記前面板の上下方向の幅よりも長い第1間隔で複数の貫通孔が設けられた第1電子部品と、
を備え、
前記背面板側には、前記貫通孔を通して前記第1電子部品を固定する部品固定部が、前記第1間隔で上下方向に離間して複数設けられ、
前記部品固定部と前記貫通孔が並ぶ方向の延長線上に前記前面板が位置しない、
ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、組立て性に優れるとともに楽器全体の小型化を図ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態における電子鍵盤楽器の斜視図である。
【
図2】
図1に示す電子鍵盤楽器の分解斜視図である。
【
図3】(a)は、
図2における上部ケースから電子部品を取り外した状態を示す斜視図であり、(b)は、上部ケースから取り外された電子部品を示す斜視図である。
【
図4】本実施形態における上部ケースの正面図である。
【
図5】(a)は、
図4において一点鎖線で囲んだa部分の拡大図であり、(b)は、
図4において一点鎖線で囲んだb部分の拡大図であり、(c)は、
図4において一点鎖線で囲んだc部分の拡大図である。
【
図6】(a)は、主回路基板及びこれを取り付ける背面板を示す要部分解斜視図であり、(b)は、スピーカ及びこれを取り付ける背面板を示す要部分解斜視図である。
【
図7】(a)は、
図5(c)の矢視VII方向から見た本実施形態における上部ケースの模式的な側面図であり、(b)は、(a)に示す上部ケースに下部ケースを接合させた状態を示す模式的な側面図である。
【
図8】本実施形態における電子鍵盤楽器の背面図であり、左右方向の一部を切り欠いて内部構成を示したものである。
【
図9】
図8において切り欠いて示した電子鍵盤楽器の背面側の構成を拡大した要部斜視図である。
【
図10】本実施形態における第2基板と第3基板との重なり合いを示す要部平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1から
図10を参照しつつ、本発明に係る電子鍵盤楽器の一実施形態について説明する。本実施形態では、電子鍵盤楽器が電子ピアノやキーボード等である場合を例として説明する。
なお、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0013】
図1は、本実施形態における電子鍵盤楽器の斜視図であり、
図2は、
図1に示す電子鍵盤楽器の分解斜視図である。なお、本実施形態において、上下、左右及び前後は
図1及び
図2に示した向きをいうものとする。
図1及び
図2に示すように、本実施形態の電子鍵盤楽器1は、複数の鍵21を備える鍵盤ユニット2と、鍵盤ユニット2が配置される下部ケース3と、鍵盤ユニット2を収容する空間を有し、下部ケース3の上に配置される上部ケース5と、を備えている。
【0014】
鍵盤ユニット2は、白鍵及び黒鍵からなる複数の鍵21を備えている。
鍵21は、鍵シャーシ22に組み付けられており、電子鍵盤楽器1の長手方向(
図1及び
図2に示す左右方向)に並行に配列されている。各鍵21の後端部は図示しない支持部に支持されており、打鍵時に上下方向に回動又は揺動可能となっている。
本実施形態において、この複数の鍵21にはそれぞれ図示しないハンマー部材が設けられている。打鍵時にハンマー部材が回動することにより鍵21にアクション荷重が付与され、アコースティックのピアノのような鍵タッチ感を再現できるように構成されている。なお、鍵盤ユニット2はハンマー部材を備えるものに限定されない。
【0015】
下部ケース3及び上部ケース5は、後述するように、互いの嵌合部Su,Sb(
図2及び
図7(b)参照)において嵌め合わされ、ねじ止め固定等により一体化されることによって、電子鍵盤楽器1の外装部分となる楽器ケース30を構成する。
本実施形態において、下部ケース3及び上部ケース5は、例えばポリスチレン (polystyrene)(PS)やABS樹脂(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合合成樹脂)等の各種樹脂によってそれぞれ一体的に形成されている。下部ケース3及び上部ケース5を形成する手法は特に限定されないが、例えば金型を用いた一体成型等により形成される。
このように、下部ケース3及び上部ケース5をそれぞれ一体的に形成することにより、楽器ケース30を簡易に製造できるとともに、部材間の継ぎ目が下部ケース3と上部ケース5との接合部分(後述する嵌合部Su,Sb、
図6(b)参照)以外には表に現れず、美しい外観に仕上げることができる。
【0016】
下部ケース3は、ほぼ平板状に構成されており、上面に鍵盤ユニット2が配置される。
下部ケース3は、上部ケース5の下側に嵌合される第2ケースである。
図2に示すように、下部ケース3の外周縁は上部ケース5と嵌合する嵌合部Sbとなっている。本実施形態では、下部ケース3の外周に外向きのフランジが形成されており、このフランジ部分が嵌合部Sbとなっている。なお、嵌合部Sbの形状や配置は図示例に限定されない。
嵌合部Sbには、上方向に突出し内部に下部ケース3の表裏に貫通する孔が形成されたボス部31が、下部ケース3の外周縁に沿って複数設けられている。また、嵌合部Sbにおける下部ケース3の前側の端縁部分には、下部ケース3の表裏に貫通するねじ孔32が複数形成されている。なお、ボス部31やねじ孔32の設けられる位置や数は特に限定されず、図示例に限られない。
本実施形態において、上部ケース5の下面側(裏面側、下部ケース3との接合側)は、後述するように、下部ケース3と嵌合する嵌合部Suとなっている。上部ケース5の嵌合部Suには、下部ケース5の嵌合部Sbに設けられているボス部31及びねじ孔32に対応する位置に図示しないねじ孔が形成されている。そして、ボス部31にはねじ71が、ねじ孔32にはねじ72が、それぞれ下部ケース3の下面側(電子鍵盤楽器1の底面側)から挿通され、上部ケース5側の嵌合部Suのねじ孔に螺着されることにより、これらねじ71及びねじ72によって、下部ケース3と上部ケース5とがねじ止め固定されるようになっている。
【0017】
また、下部ケース3において鍵盤ユニット2が配置される部分には、下部ケース3の表裏に貫通するねじ孔33が形成されている。鍵盤ユニット2にはこのねじ孔33に対応する位置に図示しないねじ孔が形成されており、このねじ孔33に上方向及び下方向の少なくとも一方からねじ73が挿通され、鍵盤ユニット2側のねじ孔に螺着されることにより、鍵盤ユニット2が下部ケース3上にねじ止め固定されるようになっている。なお、ねじ孔33の設けられる位置や数は特に限定されず、図示例に限られない。
さらに、下部ケース3の上面には複数の補強リブ35が形成されており、下部ケース3の剛性を高めるように構成されている。
【0018】
上部ケース5は、ほぼ枠状に一体的に形成されており、下部ケース3の上に配置される第1ケースである。
図3(a)は、上部ケース単体を示す斜視図である。また、
図3(b)は、上部ケース5に組付けられる各種電子部品を示す斜視図である。
上部ケース5は、鍵盤ユニット2を収容するとともに、
図2及び
図3(a)に示すように、鍵盤ユニット2の後側に位置する第1の板状部としての背面板51と、鍵盤ユニット2の前側に位置する第2の板状部としての前面板52とを有している。
背面板51は電子鍵盤楽器1の後ろ側の面を構成し、前面板52は電子鍵盤楽器1の前側の面を構成しており、背面板51と前面板52とは、互いに対向している。本実施形態において、背面板51と前面板52との対向方向は、楽器本体の奥行方向(
図1及び
図2における前後方向)である。
なお、前面板52は、上部ケース5が下部ケース3の上部に組み付けられた際に鍵盤ユニット2の鍵21の前側に配置され、ピアノにおける口棒として機能する。
また、上部ケース5の両側部は、側面部53となっている。
さらに、上部ケース5の上側には、背面板51の上端部から楽器前方に向かって延出する上面板54が設けられている。
上面板54は、組立て状態において下部ケース3の上に配置された鍵盤ユニット2の後部側上面を覆うようになっている。
【0019】
また、第1ケースである上部ケース5は、複数の鍵21を露出させる第1開口部56と、第2ケースである下部ケース3を嵌合させる嵌合部Suと、を有している。嵌合部Suが設けられている上部ケース5の下面側は、第2開口部57となっている。
前面板52は、第1開口部56における鍵盤ユニット2の前端側から垂設されている。また、前面板52の下部は、嵌合部Suの一部を構成し、前述のように、下部ケース3の嵌合部Sbのねじ孔32に対応する位置に図示しないねじ孔が形成されている。
【0020】
本実施形態において、背面板51の内側面の左右方向におけるほぼ中央部分には、制御用のCPUや楽音信号生成部(音源)等を搭載した電子部品6(第1電子部品、
図3(b)参照)としての第1基板63(これを主回路基板63aという。)が設けられている。
また、背面板51の内側面の左右方向における両端部には、放音部が背面側を向くような向きで電子部品6(
図3(b)参照)としてのスピーカ64が配置されている。背面板51においてスピーカ64に対応する位置には、スピーカ放音孔513(
図3(a)参照)が形成されており、演奏者が鍵盤ユニット2の各鍵21を打鍵操作すると、その打鍵操作に応じた楽音がスピーカ64から出力され、スピーカ放音孔513を通して楽器ケース30の外に放音される。
各スピーカ64は、ケーブル65を介して主回路基板63aと電気的に接続されている。
図2等に示すように、本実施形態では、主回路基板63a及びスピーカ64を立てた状態で配置している。このため、電子鍵盤楽器1における奥行き方向(
図1及び
図2における前後方向)の省スペース化を図り、電子鍵盤楽器1の小型化を実現することができる。
【0021】
図3(a)に示すように、背面板51における左右方向のほぼ中央部分であって主回路基板63aの配置されている位置に対応する部分には、部品固定部としてのボス部511が上下方向に離間して複数設けられている。
また、背面板51における左右方向の両端部であって左右一対のスピーカ64の配置されている位置に対応する部分には、部品固定部としてのボス部512が上下方向に離間して複数設けられている。
本実施形態において部品固定部としてのボス部511及びボス部512は、背面板51の面方向に直交する楽器の前方に向かって突出して形成されており、内部にねじ孔(ボス部511内のねじ孔511a及びボス部512内のねじ孔512a)が形成されたねじ止め固定部である。本実施形態では、ボス部511内のねじ孔511aに、ねじ67が挿入され、ボス部512のねじ孔512aにねじ68が挿入される。ねじ締めにおける各ねじ67,68の挿入方向は、ボス部511(及びそのねじ孔511a)及びボス部512(及びそのねじ孔512a)の突出方向に応じて、楽器の前方から後方に向かうねじ締め方向D(
図6(a)及び
図6(b)参照)となっている。
【0022】
ここで、
図4から
図7(a)及び
図7(b)を参照しつつ、本実施形態における上部ケース5、下部ケース3、及び上部ケース5に組付けられる電子部品6の構成について詳細に説明する。
図4は、本実施形態における上部ケースの正面図であり、
図5(a)から
図5(c)は、
図4において一点鎖線で囲むa部分,b部分,c部分をそれぞれ拡大した要部拡大図である。
図1等に示すように、本実施形態において、上部ケース5は、側面視において背面板51から前面板52に向かって細くなるように、背面板51よりも前面板52の方が上下方向の幅が小さく形成されている。
すなわち、背面板51の上下方向(背面板51における短幅方向)の幅は、鍵盤ユニット2の上下方向の幅と同じかこれよりも広くなるように形成され、背面板51が鍵盤ユニット2の後端部全体を覆うようになっており、前面板52の上下方向(前面板52における短幅方向)の幅(
図5(a)、
図5(b)等において幅W1)は、鍵盤ユニット2の鍵21の前側下部に被さる程度の幅に形成されている。
【0023】
このように、前面板52における上下方向(短幅方向)の幅W1が背面板51における上下方向(短幅方向)の幅よりも短く形成されていることにより、
図4及び
図5(a)から
図5(c)に示すように、楽器本体の前方から前面板52及び背面板51を見たときに、背面板51の上下に、対向方向において前面板52と重なり合わない部分が生ずる。
本実施形態におけるボス部511及びボス部512は、背面板51のうち、第1の板状部である背面板51及び第2の板状部である前面板52を対向方向から見たときに前面板52と重なり合わない位置に設けられている。
具体的には、ボス部511及びボス部512は、前面板52の上下方向の幅W1(すなわち、短幅方向の長さ)よりも長い間隔をあけて、前面板52を短幅方向に(すなわち、電子鍵盤楽器1の上下方向に)挟むような位置に配置されている。
これにより、上部ケース5は、電子部品6の組付け時において、部品固定部に対して、外部から直線的にアクセス可能となるように構成されている。
【0024】
図3(b)に示すように、主回路基板63aには、ボス部511に対応して貫通孔であるねじ孔631が形成されており、ねじ孔631からねじ67を挿通し背面板51のボス部511のねじ孔511aに螺着させることにより、ねじ67によって、背面板51に主回路基板63aがねじ止め固定されるようになっている(
図4及び
図5(b)参照)。
また、スピーカ64には、ボス部512に対応して貫通孔であるねじ孔641が形成されており、ねじ孔641からねじ68を挿通し背面板51のボス部512のねじ孔512aに螺着させることにより、ねじ68によって、背面板51にスピーカ64がねじ止め固定されるようになっている(
図4、
図5(a)及び
図5(c)参照)。
なお、ボス部511及びボス部512の設けられる位置や数は特に限定されず、図示例に限られない。
【0025】
図6(a)は、主回路基板とこれを取り付ける背面板を示す要部分解斜視図であり、
図6(b)は、スピーカとこれを取り付ける背面板を示す要部分解斜視図である。なお、
図6(a)及び
図6(b)において、ねじ締め方向Dを一点鎖線で示している。
なお、本実施形態において、複数の部品固定部(ボス部511及びボス部512)及びそれぞれのねじ孔(ねじ孔511a及びねじ孔512a)におけるねじ締め方向は、同一方向(ねじ締め方向D)となっている。
本実施形態では、複数のねじ孔511a,512aそれぞれのねじ締め方向Dの延長線上に前面板52が位置しないような位置関係で、上部ケース5における前面板52と複数の部品固定部(ボス部511及びボス部512)が設けられている。
具体的には、以下の構成となっている。
【0026】
図6(a)に示すように、主回路基板63aの貫通孔631とこれに対応するボス部511(ボス部511のねじ孔511a)のうち、背面板51の上側に配置される貫通孔631及びボス部511(ねじ孔511a)と背面板51の下側に配置される貫通孔631及びボス部511(ねじ孔511a)とは、前面板52の上下方向の幅W1よりも長い第1間隔W2で配置されている。
すなわち、ねじ締め時において、貫通孔631とこれに対応するボス部511(ねじ孔511a)とは、ねじ締め方向Dに沿って直線的に配置され、これに対してねじ締め方向Dに沿ってねじ67が挿通される。
このため、ねじ67、貫通孔631、ボス部511(ねじ孔511a)の中心は、
図6(a)に示すようにねじ締め方向Dに沿って直線的に配置され、背面板51の上側に配置される貫通孔631、ボス部511(ねじ孔511a)及びこれに挿通されるねじ67と、背面板51の下側に配置される貫通孔631、ボス部511(ねじ孔511a)及びこれに挿通されるねじ67とは、いずれもそれぞれ第1間隔W2を開けて上下方向に離間配置される。
【0027】
また、
図6(b)に示すように、スピーカ64の貫通孔641とこれに対応するボス部512(ボス部512のねじ孔512a)のうち、背面板51の上側に配置される貫通孔641及びボス部512(ねじ孔512a)と背面板51の下側に配置される貫通孔641及びボス部512(ねじ孔512a)とは、前面板52の上下方向の幅W1よりも長い第1間隔W2で配置されている。
すなわち、ねじ締め時において、貫通孔641とこれに対応するボス部512(ねじ孔512a)とは、ねじ締め方向Dに沿って直線的に配置され、これに対してねじ締め方向Dに沿ってねじ68が挿通される。
このため、ねじ68、貫通孔641、ボス部512(ねじ孔512a)の中心は、
図6(b)に示すようにねじ締め方向Dに沿って直線的に配置され、背面板51の上側に配置される貫通孔641、ボス部512(ねじ孔512a)及びこれに挿通されるねじ68と、背面板51の下側に配置される貫通孔641、ボス部512(ねじ孔512a)及びこれに挿通されるねじ68とは、いずれもそれぞれ第1間隔W2を開けて上下方向に離間配置される。
【0028】
次に、
図7(a)及び
図7(b)を参照しつつ、上部ケース5の背面板51及び前面板52の関係について詳説する。
図7(a)は、上部ケースの側面図であり、
図7(b)は、上部ケースに下部ケースを嵌合させた状態を示す側面図である。
本実施形態では、
図7(b)に示すように、上部ケース5の上面板54や側面部53の上面で構成される楽器ケースの上面30aと下部ケース3の底面で構成される楽器ケースの下面30bとが、上部ケース5と下部ケース3とを嵌合させた状態においてほぼ平行となっている。
また、
図7(a)及び
図7(b)に示すように、上部ケース5の背面板51及び前面板52は、楽器ケース30の上面30aに対してほぼ垂直(すなわち、上面30aに対して背面板51及び前面板52のなす角度はいずれもほぼ直角)となっている。
さらに、背面板51と前面板52とはほぼ平行に設けられている。
【0029】
また、
図7(b)に示すように、上部ケース5の嵌合部Suで構成される嵌合面Sf(上部ケース5において第2開口部57が設けられている下側の面)に対して垂線Plを設定した場合に、背面板51はこの垂線Plに対して角度θだけ楽器の前側に傾斜して設けられている。なお、角度θの大きさは特に限定されない。また、背面板51はこの垂線Plに対して傾斜していればよく、楽器の前側に傾いている場合には限定されない。
さらに、本実施形態では、第2ケースである下部ケース3における第1ケースである上部ケース5との嵌合部Sbにおいて、前側の嵌合部Sbが後側の嵌合部Sbよりも高い位置となるように、下部ケース3が構成されている。これにより前述のように、楽器本体の前方から前面板52及び背面板51を見たときに、背面板51の下部分に、対向方向において前面板52と重なり合わない部分が生ずる。
また、本実施形態では、複数の部品固定部(ボス部511及びボス部512)それぞれのねじ孔(ねじ孔511a及びねじ孔512a)におけるねじ締め方向Dは、
図7(a)に示すように、背面板51に対してほぼ直交する方向となっている。
【0030】
また、背面板51には、各種のジャックや外部機器との間でデータの授受を行うミディ(MIDI)端子等のコネクタ端子8が、楽器ケース30の外部に露出するように設けられている。これら各種コネクタ端子8は、楽器ケース30の内部に設けられた基板63に取り付けられ、電気的に接続されている。
本実施形態では、
図3(b)に示すように、主回路基板63aにフラットケーブル66を介して電子部品6(回路基板である第2電子部品、
図3(b)参照)としての第3基板63(これをコネクタ基板63cという。)が電気的に接続されており、コネクタ端子8は、主回路基板63aを介してコネクタ基板63cに接続されている。
【0031】
また、
図1及び
図2に示すように、上面板54における左右方向のほぼ中央部分は、上部ケース5の上面に露出するようにスイッチ部61及び表示部62が設けられたコンソール部60となっている。
上面板54に設けられるスイッチ部61は、例えば電源スイッチ、音量スイッチ、音色スイッチ、ファンクションスイッチ等、鍵盤楽器に必要な操作を行う各種のスイッチからなる。また、表示部62は、鍵盤楽器に必要な各種の情報を表示するように構成されている。
スイッチ部61は、表示部62の周囲に配列された状態で設けられている。
【0032】
図3(a)に示すように、上面板54には貫通孔である複数の取付部541a及び表示配置部542が形成されている。
上面板54の下面(内側面)には、電子部品6(第1電子部品、
図3(b)参照)としての第2基板63(これをコンソール基板63bという。)が取り付けられている。
図3(b)に示すように、本実施形態のコンソール基板63bには、各取付部541aに対応する位置にスイッチ部材61aが実装されており、表示配置部542に対応する位置には表示ユニット62aが実装されている。表示ユニット62aは、例えば液晶表示パネルやEL(エレクトロ・ルミネッセンス)表示パネル等の平面型の表示パネルを有するものである。
そして、スイッチ部材61a及び表示ユニット62aが実装された状態のコンソール基板63bが上面板54の所定位置に取り付けられることにより、各取付部541aからスイッチ部材61aの一部が露出し、表示ユニット62aの表示パネル部分が表示配置部542から露出するようになっている。
【0033】
また、側面部53(本実施形態では、
図1等における左側の側面部53)の上面には、貫通孔である取付部541bが形成されている。取付部541bには回転操作部材61bが取り付けられるようになっており、回転式のスイッチ部61が構成される。
側面部53の上面に設けられる回転式のスイッチ部61は、例えば鍵盤ユニット2の各鍵21を打鍵操作して演奏している最中に操作することにより、演奏中の楽音にピッチベンダ効果やモジュレーション効果等を付与するためのものである。
図3(b)に示すように、回転式のスイッチ部61は、ケーブル65を介して主回路基板63aと電気的に接続されている。
【0034】
図8は、電子鍵盤楽器の背面図であり、左右方向のほぼ中央部(コンソール部60が設けられる部分及びその周辺部)を切り欠いて内部構成を示したものである。また、
図9は、
図8において切り欠いて示した電子鍵盤楽器の背面側の構成を拡大した要部斜視図である。
図8及び
図9に示すように、本実施形態では、背面板51に設けられる主回路基板63aとほぼ直交するように、電子部品6(第1電子部品)であるコンソール基板63bが配置されている。また、このコンソール基板63bと重なり合うように、電子部品6(第2電子部品)であるコネクタ基板63cが重畳配置されている。
具体的には、前述のように、上面板54の下面(内側面)には、スイッチ部材61aや表示ユニット62aを搭載したコンソール基板63bが取り付けられており、コネクタ基板63cは、このコンソール基板63bの下面側に重畳配置される。
【0035】
図10は、上面板における基板(すなわち、コンソール基板及びコネクタ基板)の設けられている部分を下面(内側面)側から見た平面図である。
図10に示すように、コネクタ基板63cはコンソール基板63bの一部と重なるようにコンソール基板63bの下面側に設けられており、重畳方向の手前側に配置される基板63(本実施形態では、コネクタ基板63c)には、重畳方向の奥側に配置される基板63(本実施形態では、コンソール基板63b)における部品固定部(本実施形態ではねじ孔69)に対応する部分に挿通部が形成されている。
本実施形態において、挿通部は、重畳方向の奥側に配置される基板63を固定するねじのねじ孔69を避けるように形成された切り欠き部632である。
なお、挿通部は切り欠き部に限定されず、孔部であってもよい。また、本実施形態では、ねじ孔69を避ける位置のみでなく、重畳方向の奥側に配置される基板63(コンソール基板63b)の下面側に設けられている配線パターン等の構成部を避ける位置にも挿通部である切り欠き部632が適宜設けられている。これにより、コンソール基板63bに設けられている配線パターン等を傷つけることなく、コンソール基板63b及びコネクタ基板63cをほぼ平行して無駄な隙間をあけることなく重ね合わせることができる。
【0036】
次に、本実施形態における電子鍵盤楽器1の作用(電子鍵盤楽器1の製造方法)について説明する。
【0037】
電子鍵盤楽器1を組み立てる際は、まず、金型を用いて下部ケース3及び上部ケース5を樹脂等により一体成型する。
このとき、下部ケース3に形成されるボス部31は同じ向きに立設される。
また、鍵シャーシ22に、複数の鍵21と、各鍵21に対応するハンマー部材を組付けて鍵盤ユニット2を構成する。
【0038】
上部ケース5の背面板51の内側面(すなわち、楽器前方に向く面)であって、ほぼ中央部に第1基板63(主回路基板63a)を取り付ける。このとき、部品固定部であるねじ固定部としてのボス部511の設けられている位置に主回路基板63aのねじ孔631が合うように位置を合わせて主回路基板63aを配置し、ねじ締め方向Dに沿ってねじ孔631からねじ67を挿通させて背面板51のボス部511のねじ孔511aに螺着させることにより、ねじ67によって、背面板51に主回路基板63aをねじ止め固定する。
また、背面板51の内側面であって、左右の両端部にそれぞれスピーカ64を取り付ける。このとき、部品固定部であるねじ固定部としてのボス部512の設けられている位置にスピーカ64のねじ孔641が合うように位置を合わせてスピーカ64を配置し、ねじ締め方向Dに沿ってねじ孔641からねじ68を挿通させて背面板51のボス部512のねじ孔512aに螺着させることにより、ねじ68によって、背面板51にスピーカ64をねじ止め固定する。
【0039】
本実施形態において、これらのねじ止め固定は、自動ねじ締め機(図示せず)を用いて一括に行われる。自動ねじ締め機は、例えばねじに係合するビット(ドライバビット)を備え、自動制御によりねじ締結を行うものであり、対象に対して直線的にアクセスする一軸構成のものが適用される。
すなわち、例えば、主回路基板63a及びスピーカ64を背面板51の所定位置に配置した上で、自動ねじ締め機を作動させ、主回路基板63aを固定するねじ67及びスピーカ64を固定するねじ68を自動ねじ締め機のドライバビットによって一括して締結する。
前述のように、本実施形態のねじ固定部であるボス部511及びボス部512は、前面板52を避けて対向方向において前面板52と重なり合わない位置に前面板52を挟むように上下に分散配置されている。
このため、例えば自動ねじ締め機が一軸構成であり、背面板51と前面板52との対向方向から部品固定部であるねじ固定部(すなわち、ボス部511及びボス部512)に対して直線的にアクセスするものである場合でも、前面板52等に干渉されずに直線的にアクセスすることができ、適切にねじ67及びねじ68を締結することができる。
なお、ねじ締めは、自動ねじ締め機による場合に限定されず、ドライバを用いて手動で行う場合等を排除するものではない。
【0040】
そして、ケーブル65を介して各スピーカ64を主回路基板63aと電気的に接続する。
さらに、側面部53(本実施形態では左側の側面部53)の取付部541bに回転操作部材61bを取り付け、回転式のスイッチ部61を構成する。回転操作部材61bはケーブル65を介して主回路基板63aと電気的に接続される。
【0041】
また、第2基板63(コンソール基板63b)にスイッチ部材61a及び表示ユニット62aを実装し、当該実装状態のままコンソール基板63bを上部ケース5の上面板54の内側面(すなわち、下側面)であって、ほぼ中央部に取り付ける。これにより、スイッチ部材61aの一端側が取付部541aから露出するとともに、表示ユニット62aが表示配置部542に外部から視認可能に配置される。これにより、上面板54の外装面にコンソール部60が構成される。
コンソール基板63bを取り付ける際には、部品固定部であるねじ固定部545の設けられている位置にコンソール基板63bのねじ孔が合うように位置を合わせてコンソール基板63bを配置し、ねじ孔からねじ69を挿通させて上面板54のねじ固定部545に螺着させることにより、ねじ69によって、上面板54にコンソール基板63bをねじ止め固定する。
【0042】
さらに、本実施形態では、背面板51等に設けられるコネクタ端子8等が電気的に接続されるコネクタ基板63cが第3基板63として、第2基板63としてのコンソール基板63bに重畳するように設けられる。
コネクタ基板63cは、コンソール基板63bと重ね合わされたまま、ねじ69によって共締めされる。
本実施形態において、コンソール基板63bのみを固定したいねじ固定部545に対応する部分やコネクタ基板63cを重ね合わせたくない部分(例えば配線パターンが設けられている部分等)に対応する部分には、挿通部としての切り欠き部632が設けられており、適宜ねじ固定部545等を避けるようになっている。
【0043】
本実施形態では、コンソール基板63b及びコネクタ基板63cのねじ止め固定についても、自動ねじ締め機を用いて、一括に行われる。
これにより、ねじ固定箇所が多数ある場合でも迅速にコンソール基板63b及びコネクタ基板63cの固定を行うことができる。
また、コネクタ基板63cは、フラットケーブル66によって主回路基板63aと電気的に接続される。
【0044】
上部ケース5に、電子部品6としての基板63(すなわち、本実施形態では、主回路基板63a,コンソール基板63b,コネクタ基板63c)及びスピーカ64等が取り付けられると、下部ケース3の上に鍵盤ユニット2を配置し、上方から上部ケース5を配置する。
これにより、鍵盤ユニット2の前側の下部が上部ケース5の前面板52によって覆われる。また、鍵盤ユニット2の後方が上部ケース5の背面板51によって覆われ、鍵盤ユニット2の後部側上面が上部ケース5の上面板54によって覆われた状態となる。
この状態で、背面板51が下になるように楽器全体を倒して、電子鍵盤楽器1の底面側(すなわち、下部ケース3の裏面側)から、下部ケース3と上部ケース5とを固定するねじ71,72及び下部ケース3と鍵盤ユニット2とを固定するねじ73を、自動ねじ締め機を用いて、一括にねじ止め固定する。
これによって、電子鍵盤楽器1が完成する。
【0045】
以上のように、本実施形態によれば、楽器ケース30を構成する上部ケース5が枠状に形成されている。
このため、ピアノにおける口棒に相当する電子鍵盤楽器1の前面部分に部材間の接合部分が現れず、楽器としての外観に優れる。
また、楽器ケース30が下部ケース3と上部ケース5の2つの部材で構成され、特に鍵盤ユニット2の収容空間を形成する上部ケース5が一繋がりの枠状体となっていることにより、上部ケース5を複数の部材で構成する場合と比較して剛性が高く、例えば本実施形態のように、電子鍵盤楽器1がハンマー部材を有する鍵盤ユニット2を備える場合でも、十分にその重量に耐えることができる。
さらに、電子鍵盤楽器1の上部ケース5は、電子部品としての基板63やスピーカ64等の組付け時において、部品固定部としてのねじ固定部(本実施形態ではボス部511,512等)に対して、外部から直線的にアクセス可能となるように構成されている。
具体的には、電子部品6(第1電子部品)には、前面板52の上下方向の幅W1よりも長い第1間隔W2で複数の貫通孔であるねじ孔631,641が設けられており、背面板51には、ねじ孔631,641を通して電子部品6(第1電子部品)をねじ67,68で固定するためのねじ孔511a,512aを有する部品固定部(ボス部511,512)が、第1間隔W2で上下方向に離間して複数設けられている。
このため、対象に対して直線的にアクセスすることしかできない一軸構成の自動ねじ締め機であっても、ねじ固定部(すなわち、ボス部511,512)にアクセスすることができ、一括して自動でねじ締めを行うことができる。また手動でねじ締めを行う場合にも、ドライバの軸等が前面板52等に引っ掛からず円滑にねじ締め動作を行うことができる。
これにより、簡易迅速に電子鍵盤楽器1の組み立てを行うことができる。
【0046】
また、本実施形態では、複数の部品固定部(ボス部511,512)のうちの下側に位置する部品固定部(ボス部511,512)のねじ孔511a,512aのねじ締め方向Dの延長線上よりも、前面板52の下部が上に位置し、複数の部品固定部(ボス部511,512)のうちの上側に位置する部品固定部(ボス部511,512)のねじ孔511a,512aのねじ締め方向Dの延長線上よりも、前面板52の上部が下に位置するように、第1ケースである上部ケース5が構成されている。これにより、下側に位置する部品固定部(ボス部511,512)のねじ孔511a,512aのねじ締め方向Dと、上側に位置する部品固定部(ボス部511,512)のねじ孔511a,512aのねじ締め方向Dとの上下方向における間隔(第1間隔W2)は前面板52の上下方向の幅W2よりも長く(広く)なっている。
このため、電子部品6を背面板51に取り付ける際に、前面板52を避けてボス部511,512のねじ孔511a,512aに直線的にアクセスすることが可能であり、対象に対して直線的にアクセスすることしかできない一軸構成の自動ねじ締め機であっても、一括して容易に自動でねじ締めを行うことができる。また手動でねじ締めを行う場合にも、ドライバの軸等が前面板52等に引っ掛からず円滑にねじ締め動作を行うことができる。
これにより、簡易迅速に電子鍵盤楽器1の組み立てを行うことができる。
【0047】
また、本実施形態では、嵌合部Suで形成される嵌合面Sfに対して垂線を設定した場合に当該垂線に対して背面板51が傾斜して設けられている。
これにより、背面板51に設けられたボス部511,512のねじ孔511a,512aに直線的にアクセスしやすく、容易にねじ締めを行うことができる。
【0048】
また、本実施形態では、第2ケースである下部ケース3における第1ケースである上部ケース5との嵌合部Sbにおいて、前側の嵌合部Sbが後側の嵌合部Sbよりも高い位置となるように、下部ケース3が構成されている。
これにより、前面板52が背面板51に完全には重ならないようになっており、背面板51に設けられたボス部511,512のねじ孔511a,512aに直線的にアクセスしやすく、容易にねじ締めを行うことができる。
【0049】
また、本実施形態では、複数の部品固定部(ボス部511,512)それぞれのねじ孔511a,512aにおけるねじ締め方向Dは、同一方向となっている。
このため、同じ角度から、一括してねじ締めを行うことができる。
【0050】
また、本実施形態では、複数の部品固定部(ボス部511,512)それぞれのねじ孔511a,512aにおけるねじ締め方向Dは、背面板51に対して直交する方向となっている。
このため、背面板51に設けられたボス部511,512のねじ孔511a,512aに対に対して楽器の前側からアクセスでき、容易にねじ締めを行うことができる。
【0051】
また、本実施形態の上部ケース5は、互いに対向する第1の板状部としての背面板51と第2の板状部としての前面板52とを有し、背面板51には、電子部品6を固定する部品固定部(本実施形態では、ボス部511,512等のねじ固定部)が、背面板51及び前面板52を対向方向から見たときに前面板52と重なり合わない位置に設けられている。
このため、対象に対して直線的にアクセスすることしかできない一軸構成の自動ねじ締め機であっても、ねじ固定部(すなわち、ボス部511,512)にアクセスすることができ、一括して自動でねじ締めを行うことができる。また手動でねじ締めを行う場合にも、容易に短時間でねじ締め動作を行うことができる。
【0052】
また、本実施形態において、対向方向は、楽器本体の奥行方向である。
このため、例えば、
図4及び
図5(a)から
図5(c)に示すように、上部ケース5を前面側(すなわち、正面)から見たときに、ねじ固定部(すなわち、ボス部511,512)が前面板52に隠れずに、その位置を見通すことができる。そして、上部ケース5を前面側から自動ねじ締め機のドライバビットを直線的に差し込むことで、自動ねじ締め機を用いて容易に電子部品6のねじ固定を行うことができる。
【0053】
また、本実施形態において、部品固定部であるねじ固定部(すなわち、ボス部511,512等)は、第2の板状部としての前面板52を短幅方向に挟むような位置関係、かつ、前面板52の短幅方向の幅よりも広い間隔で、第1の板状部としての背面板51に複数設けられている。
このため、本実施形態のように、上部ケース5を周方向に接合部のない一繋がりの枠状体とした場合にも、前面板52に阻害されずに背面板51に設けられたボス部511,512等のねじ固定部に直線的にアクセスすることができ、一軸構成の自動ねじ締め機であっても一括して自動でねじ締めを行うことができる。
【0054】
また、本実施形態において、電子部品6のうち少なくとも一部(本実施形態では、第2基板63であるコンソール基板63bと第3基板63であるコネクタ基板63c)は、複数重なり合って重畳配置され、電子部品6の重畳方向(本実施形態では、
図1及び
図2における上下方向)の手前側に配置される電子部品6(本実施形態では、第3基板63であるコネクタ基板63c)には、重畳方向の奥側に配置される電子部品6(本実施形態では、第2基板63であるコンソール基板63b)における部品固定部であるねじ固定部545に対応する部分に挿通部としての切り欠き部632が形成されている。
このため、電子部品6が一部重畳される場合にも、重畳方向の奥側に配置される電子部品6も含めてすべての電子部品6を適切にねじ止め固定することができる。
【0055】
また、本実施形態では、少なくとも一部の電子部品6を重畳配置することで、電子鍵盤楽器1の幅方向のほぼ中央部分に、基板63等の電子部品6を集中して配置することができる。
各種のジャックやコネクタ端子8等は楽器全体の中央部に配置されることがユーザにとって使いやすい。また、コンソール部60も楽器全体の中央部に配置されることが見やすく、操作もしやすいため、ユーザにとって使いやすい。そして、ジャックやコネクタ端子8等やコンソール部60等は、電子部品6である基板63と電気的に接続される必要があるが、基板63との距離が遠くなり接続するケーブル65の長さが長くなるほど、ノイズが乗りやすく好ましくない。
この点、本実施形態のように、基板63を楽器全体の中央部に集中して配置した場合には、ジャックやコネクタ端子8等やコンソール部60等をユーザの使いやすい位置に配置しつつ、ノイズも乗りにくい構成とすることができる。
【0056】
なお、以上本発明の実施形態について説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で、種々変形が可能であることは言うまでもない。
【0057】
例えば、本実施形態では、部品固定部としてのボス部511及びボス部512は、背面板51の面方向に直交する楽器の前方に向かって突出して形成されており、内部にねじ孔が形成されたねじ止め固定部である場合を例示したが、部品固定部としてのボス部511及びボス部512の突出する向きは背面板51の面方向に直交する楽器の前方に限定されない。
例えば、部品固定部は、斜め上向き、斜め下向き等、斜めに角度が設けられていてもよい。この場合、前面板52と重なり合わない部分が背面板51に生じるように、部品固定部の角度に応じて、第1の板状部としての背面板51と第2の板状部としての前面板52との位置を調整する。
また、本実施形態では、ねじ締め方向Dが背面板51に対して直交する方向である場合を例示したが、ねじ締め方向Dはこれに限定されない。
さらに、本実施形態では、複数のねじ孔511a,512aについてねじ締め方向Dが同一方向である場合を例示したが、部品固定部(本実施形態ではボス部511,512等)の角度を場所によって異ならせてもよく、この場合にはねじ締め方向Dも部品固定部の角度に応じた各方向となる。
なお、下部ケース3及び上部ケース5を、金型を用いた一体成型にて形成する場合、金型製造の観点からは、部品固定部の角度はすべて同じ方向に統一することが好ましく、この場合には、ねじ締め方向Dもすべて同一方向となる。
【0058】
また、本実施形態では、前面板52と背面板51とが平行である場合を例示したが、前面板52と背面板51とは必ずしも平行でなくともよい。
さらに、本実施形態では、前面板52と背面板51とが楽器ケースの上面30aに対してほぼ垂直である場合を例示したが、前面板52と背面板51とが楽器ケースの上面30aに対してなす角度はこれに限定されない。
また、本実施形態では、楽器ケースの上面30aと楽器ケースの下面30bとが、上部ケース5と下部ケース3とを嵌合させた状態においてほぼ平行となっている場合を例示したが、楽器ケース30の外形形状はこれに限定されない。例えば、上面30aが下面30bに対して、後方から前方に向かって低くなるように傾斜していてもよい。
その他、楽器ケース30や電子鍵盤楽器1の外形形状は、適宜変更可能である。
【0059】
また、本実施形態では、電子部品6として、3つの基板63(すなわち、主回路基板63a,コンソール基板63b,コネクタ基板63c)と、一対のスピーカ64が設けられている場合を例示したが、電子部品6はこれ以外ものを含んでいてもよい。
例えば、一対のスピーカ64の他に、高音域に特化して出力させる高音域用スピーカであるツィータや、低音域に特化して出力させる低音域用スピーカであるウーハ等が設けられていてもよい。
また、基板63の数は2つ以下であってもよい。
【0060】
また、第1電子部品と第2電子部品とは、そのうち少なくとも一部が複数重なり合って重畳配置されていればよく、スピーカ64の一部が重なっていてもよい。また、基板63にスピーカ64が一部において重なり合っていてもよい。
さらに、電子部品6が重畳配置される構成は必須ではなく、このような構成を備えないものも本発明の範囲に含まれる。
【0061】
また、本実施形態では、部品固定部がねじ固定部であるボス部511及びボス部512等である場合を例示したが、部品固定部はボス部等に限定されず、単なる孔部や、ビス等が締結される凹部等であってもよい。
さらに、電子部品6はねじ固定されるものに限定されず、接着剤による接着固定や溶接による溶着固定等により固定されるものであってもよい。
【0062】
以上本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明の範囲は、上述の実施の形態に限定するものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲とその均等の範囲を含む。
以下に、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲に記載した発明を付記する。付記に記載した請求項の項番は、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲の通りである。
〔付記〕
<請求項1>
複数の鍵を備える鍵盤ユニットと、
前記鍵盤ユニットを収容するとともに、前記鍵盤ユニットの前側に位置する前面板と、前記鍵盤ユニットの後側に位置する背面板とを有する第1ケースと、
前記前面板の上下方向の幅よりも長い第1間隔で複数の貫通孔が設けられた第1電子部品と、
を備え、
前記背面板には、前記貫通孔を通して前記第1電子部品をねじで固定するためのねじ孔を有する部品固定部が、前記第1間隔で上下方向に離間して複数設けられ、
複数の前記ねじ孔それぞれのねじ締め方向の延長線上に前記前面板が位置しないような位置関係で、前記第1ケースにおける前記前面板と複数の前記部品固定部が設けられている、
電子鍵盤楽器。
<請求項2>
前記第1ケースは上部ケースであり、前記上部ケースの下側に嵌合される下部ケースである第2ケースをさらに備え、
前記第1ケースは、前記複数の鍵を露出させる第1開口部と、前記第2ケースを嵌合させる嵌合部に設けられた第2開口部と、を有し、
前記前面板は、前記第1開口部における前記鍵盤ユニットの前端側から垂設されており、
前記前面板の下部は、前記嵌合部の一部を構成し、
複数の前記部品固定部のうちの下側に位置する前記部品固定部の前記ねじ孔のねじ締め方向の延長線上よりも、前記前面板の下部が上に位置し、
複数の前記部品固定部のうちの上側に位置する前記部品固定部の前記ねじ孔のねじ締め方向の延長線上よりも、前記前面板の上部が下に位置するように、前記第1ケースが構成されている、
請求項1に記載の電子鍵盤楽器。
<請求項3>
前記嵌合部で形成される嵌合面に対して垂線を設定した場合に当該垂線に対して前記背面板が傾斜して設けられている、
請求項2に記載の電子鍵盤楽器。
<請求項4>
前記第2ケースにおける前記第1ケースとの嵌合部は、前側の嵌合部が後側の嵌合部よりも高い位置となるように、前記第2ケースが構成されている、
請求項2又は請求項3に記載の電子鍵盤楽器。
<請求項5>
複数の前記部品固定部それぞれのねじ孔におけるねじ締め方向は、同一方向である、
請求項1から4のいずれか一項に記載の電子鍵盤楽器。
<請求項6>
複数の前記部品固定部それぞれのねじ孔におけるねじ締め方向は、前記背面板に対して直交する方向である、
請求項5に記載の電子鍵盤楽器。
<請求項7>
前記第1電子部品は、スピーカである、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の電子鍵盤楽器。
<請求項8>
前記第1電子部品は、回路基板である、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の電子鍵盤楽器。
<請求項9>
回路基板である第2電子部品をさらに有し、
前記第1電子部品と前記第2電子部品は、少なくとも一部が重なり合って重畳配置され、
前記重畳方向の手前側に配置される前記第2電子部品には、前記重畳方向の奥側に配置される前記第1電子部品における前記部品固定部に対応する部分に挿通部が形成されている請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の電子鍵盤楽器。
<請求項10>
複数の鍵を備える鍵盤ユニットと、前面板と背面板とを有する枠状の第1ケースと、前記前面板の上下方向の幅よりも広い第1間隔で複数の貫通孔が設けられた第1電子部品と、を備える電子鍵盤楽器の製造方法であって、
前記背面板には、前記貫通孔を通して前記第1電子部品をねじで固定するためのねじ孔を有する部品固定部が、前記第1間隔で上下方向に分散して複数設けられ、
複数の前記ねじ孔それぞれのねじ締め方向の延長線上に前記前面板が位置しないように、前記第1ケースが構成されており、
前記電子鍵盤楽器の組み立て時において、
複数の前記部品固定部それぞれのねじ孔に挿入されるねじに対して、前記第1ケースの外部から直線的にねじ締め機でアクセスしてねじ締めを行う、
電子鍵盤楽器の製造方法。
【符号の説明】
【0063】
1 電子鍵盤楽器
2 鍵盤ユニット
3 下部ケース
5 上部ケース
6 電子部品
30 楽器ケース
51 背面板
52 前面板
53 側面部
54 上面板
63a 主回路基板
63b コンソール基板
63c コネクタ基板
64 スピーカ
511 ボス部
512 ボス部
545 ねじ固定部