(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】積層体、包装袋及び包装体
(51)【国際特許分類】
B32B 27/34 20060101AFI20240312BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20240312BHJP
B32B 27/36 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
B32B27/34
B65D65/40 D
B32B27/36
(21)【出願番号】P 2023115330
(22)【出願日】2023-07-13
(62)【分割の表示】P 2023100042の分割
【原出願日】2023-06-19
【審査請求日】2023-07-13
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(72)【発明者】
【氏名】矢島 佐保
(72)【発明者】
【氏名】山脇 健太郎
【審査官】松岡 美和
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/200489(WO,A1)
【文献】特開2010-082873(JP,A)
【文献】特開2003-146383(JP,A)
【文献】特開2002-019003(JP,A)
【文献】国際公開第2019/189490(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第02386411(EP,A1)
【文献】特開2022-007961(JP,A)
【文献】特開2006-116731(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103358634(CN,A)
【文献】特開2013-103493(JP,A)
【文献】特開2019-150965(JP,A)
【文献】特開2004-106350(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 27/34-27/36
B65D 30/00
B65D 65/00
B65D 65/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレンテレフタレートフィルム、ナイロン6フィルム、及びシーラント層をこの順に備える積層体であって、
前記積層体における前記ポリエチレンテレフタレートフィルム側の表面をX線回折で測定し、2θが19.5°のときに検知されるピーク強度値をI
0
、ナイロン6の(002)面のピーク強度値をI
1
としたとき、I
1
/I
0
が11.5以上であり、
前記ナイロン6フィルムの単体の表面をX線回折で測定し、2θが19.5°のときに検知されるピーク強度値をI
0
、ナイロン6の(002)面のピーク強度値をI
1
としたとき、I
1
/I
0
が25.42より大きく、
前記ナイロン6フィルムはチューブラー法によって得られる延伸フィルムである
、積層体。
【請求項2】
ポリエチレンテレフタレートフィルム、ナイロン6フィルム、及びシーラント層をこの順に備える積層体であって、
前記積層体における前記ポリエチレンテレフタレートフィルム側の表面をX線回折で測定し、2θが19.5°のときに検知されるピーク強度値をI
0
、ナイロン6の(002)面のピーク強度値をI
1
としたとき、I
1
/I
0
が11.5以上であり、
前記ナイロン6フィルムの単体の表面をX線回折で測定し、2θが19.5°のときに検知されるピーク強度値をI
0
、ナイロン6の(002)面のピーク強度値をI
1
としたとき、I
1
/I
0
が25.42より大きく、
前記ポリエチレンテレフタレートフィルムの単体の表面をX線回折で測定し、2θが19.5°のときに検知されるピーク強度値をI
0、ポリエチレンテレフタレートの(100)面のピーク強度値をI
2としたとき、I
2/I
0が41以上である前記ポリエチレンテレフタレートフィルムを備える
、積層体。
【請求項3】
前記表面をX線回折で測定したときのポリエチレンテレフタレートの(100)面のピーク強度値をI
2としたとき、I
2/I
0が10.6以上である、請求項1
又は2に記載の積層体。
【請求項4】
突刺し強度が17N以上である、請求項1又は2に記載の積層体。
【請求項5】
前記ナイロン6フィルムの突刺し強度は11.65Nより大きい、請求項1又は2に記載の積層体。
【請求項6】
前記ナイロン6フィルムの厚さは10~25μmである、請求項1又は2に記載の積層体。
【請求項7】
前記ポリエチレンテレフタレートフィルムの厚さは9~25μmである、請求項1又は2に記載の積層体。
【請求項8】
請求項1又は2に記載の積層体を備える包装袋。
【請求項9】
請求項
8に記載の包装袋と、当該包装袋の収容部に収容物と、を備える、包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、積層体、包装袋及び包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、詰め替え用パウチや食品用パウチ等を構成する包装材として、基材層と、中間層と、シーラント層とを備える積層体が使用されている。特許文献1には、基材層に二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、中間層に二軸延伸ナイロンフィルムを備えた、見栄えと突刺し強度を両立したパウチ用包装材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
パウチの輸送時の擦れ等により、パウチを構成する積層体にピンホールが生じると、パウチ内に外気や基材層の成分が侵入し、内容物の衛生性に影響を及ぼすことが懸念される。そこで、本開示は、十分に大きい突刺し強度を有する積層体、並びに、そのような積層体を備える包装袋及び包装体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一側面は、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ナイロン6フィルム、及びシーラント層をこの順に備える積層体であって、上記積層体における上記ポリエチレンテレフタレートフィルム側の表面をX線回折で測定し、2θが19.5°のときに検知されるピーク強度値をI0、ナイロン6の(002)面のピーク強度値をI1としたとき、I1/I0が11.5以上である、積層体を提供する。
【0006】
上記積層体は、上記I1/I0が11.5以上である。上記I1/I0は、X線回折で得られるナイロン6の配向結晶と非晶質が示すピーク強度の比であるため、ナイロン6の結晶性指標とみなすことができる。したがって、上記積層体において、ポリエチレンテレフタレートフィルム側の表面をX線回折で測定したときに、ナイロン6フィルムの結晶性指標が11.5以上であることで、非晶質の割合が低く、配向結晶の割合が高いナイロン6フィルムを備える積層体を得ることができる。このような積層体は高い突刺し強度を有する。
【0007】
本開示の一側面は、上記積層体を備えた包装袋を提供する。上記包装袋は、上記積層体を備えることで、高い突刺し強度を有する。
【0008】
本開示の一側面は、上記包装袋と、包装袋の収容部に収容される収容物と、を備える、包装体を提供する。包装体は、上記積層体を有することで包装袋にピンホールが生じることを抑制できる。したがって、収容物の品質劣化を十分に抑制することができる。
【発明の効果】
【0009】
本開示は、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ナイロン6フィルム、及びシーラント層をこの順に備えた積層体において、十分に大きい突刺し強度を有する積層体、並びに、そのような積層体を備える包装袋及び包装体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】包装体の一実施形態を示す平面図の一例である。
【
図3】包装袋の一実施形態を示す平面図の一例である。
【
図4】実施例におけるナイロン6フィルムAのX線回折測定によるピークパターンを示す図である。
【
図5】実施例におけるナイロン6フィルムCのX線回折測定によるピークパターンを示す図である。
【
図6】実施例におけるポリエチレンテレフタレートフィルムAのX線回折測定によるピークパターンを示す図である。
【
図7】実施例におけるポリエチレンテレフタレートフィルムBのX線回折測定によるピークパターンを示す図である。
【
図8】実施例1における積層体のX線回折測定によるピークパターンに、ナイロン6フィルムA及びポリエチレンテレフタレートフィルムAのピークパターンを重ね合わせた図である。
【
図9】比較例1における積層体のX線回折測定によるピークパターンに、ナイロン6フィルムC及びポリエチレンテレフタレートフィルムBのピークパターンを重ね合わせた図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施形態を説明する。ただし、以下の実施形態は、本開示を説明するための例示であり、本開示を以下の内容に限定する趣旨ではない。本開示に明示される数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されるいずれかの値に置き換えてもよい。また、個別に記載した上限値及び下限値は任意に組み合わせてもよい。本開示において例示する材料又は成分は特に断らない限り、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、説明に使用される上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。
【0012】
図1は、本開示における積層体の断面の一実施形態を示す図である。積層体100は、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム10の一方面上に、ナイロン6フィルム20、及びシーラント層30をこの順に有する。PETフィルム10と、ナイロン6フィルム20との間に第一接着層S1が介在している。ナイロン6フィルム20と、シーラント層30との間に第二接着層S2が介在している。また、PETフィルム10と第一接着層S1の間に印刷層40が介在している。
【0013】
PETフィルム10の厚さは、特に限定されず、9~25μmであってもよく、10~20μmであってもよく、10~15μmであってもよい。PETフィルム10の厚さは、用途又は求められる特性に応じて調整してもよい。
【0014】
PETフィルム10におけるPETの含有量は、PETフィルム10全量の50%質量以上であってもよく、80質量%以上であってもよく、90質量%以上であってもよく、95質量%以上であってもよい。
【0015】
PETフィルム10は、市販のものを用いることができる。PETフィルム10は、延伸フィルムであってもよく、未延伸フィルムであってもよい。高分子フィルムは、延伸を行うことでフィルム内の結晶の配向度が向上すると考えられる。したがって、フィルム内の配向結晶を多くし、突刺し強度を向上させる観点から、延伸フィルムを用いることが好ましい。延伸の方向は、MD方向であってもよく、TD方向であってもよい。また、延伸方法は、一軸延伸、二軸延伸、チューブラー法等、寸法が安定したフィルムを提供できる方法であれば、どのような方法でもよい。突刺し強度を一層向上する観点から、PETフィルム10として二軸延伸フィルムを用いてもよい。二軸延伸フィルムは、同時二軸延伸法、又は逐次二軸延伸法によって得られる二軸延伸フィルムであってもよい。
【0016】
ナイロン6フィルム20の厚さは、特に限定されず、10~25μmであってもよく、10~20μmであってもよく、12~17μmであってもよい。ナイロン6フィルム20の厚さは、用途又は求められる特性に応じて調整してもよい。
【0017】
ナイロン6フィルム20は、ポリアミドを含む合成高分子であるナイロン6を含有する高分子フィルムである。ナイロン6フィルム20におけるポリアミドの含有量は、ナイロン6フィルム20全量の50質量%以上であってもよく、80質量%以上であってもよく、90質量%以上であってもよく、95質量%以上であってもよい。ナイロン6フィルム20は、突刺し強度及び柔軟性に優れることから、ナイロン6フィルム20を備えることで、積層体100の突刺し強度及び柔軟性を一層向上させることができる。
【0018】
ナイロン6フィルム20は、市販のものを使用することができる。ナイロン6フィルム20は、延伸フィルムであってもよく、未延伸フィルムであってもよい。フィルム内の配向結晶の割合を多くし、突刺し強度を向上させる観点から、延伸フィルムを用いることが好ましい。延伸の方向は、MD方向であってもよく、TD方向であってもよい。また、延伸方法は、一軸延伸、二軸延伸、又はチューブラー法等、寸法が安定したフィルムを提供できる方法であれば、どのような方法でもよい。二軸延伸により得られる二軸延伸フィルムは、同時二軸延伸法であってもよく、内部の分子を配向させ、突刺し強度を向上させる観点から、逐次二軸延伸法で得られるものであってもよい。ナイロン6フィルム20内部の分子を十分に配向させ、突刺し強度を一層向上させる観点から、チューブラー法により得られるナイロン6フィルム20を用いてもよい。
【0019】
シーラント層30は、積層体100においてヒートシールによる封止性を付与する層である。シーラント層30の成分としては、例えば、熱可塑性樹脂であってもよい。熱可塑性樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-αオレフィン共重合体等のポリオレフィン系樹脂、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体等のエチレン系樹脂、ポリエチレンとポリブテンのブレンド樹脂、ホモポリプロピレン樹脂(PP)、プロピレン-エチレンランダム共重合体、プロピレン-エチレンブロック共重合体、及びプロピレン-αオレフィン共重合体等のポリプロピレン系樹脂等が挙げられる。また、これらの熱可塑性樹脂の複数種を混合したものであってもよい。これらの熱可塑性樹脂は、使用用途によって適宜選択できる。
【0020】
シーラント層30を構成する樹脂には、難燃剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、光安定剤、粘着付与剤等の各種添加材が添加されてよい。
【0021】
シーラント層は、延伸フィルム(例えば、延伸ポリプロピレンフィルム)であってもよく、ヒートシールによる封止性を高める観点から、無延伸フィルム(例えば、無延伸ポリプロピレンフィルム)であってもよい。
【0022】
シーラント層30の厚さは、内容物の質量、又は包装袋の形状等に応じて調整可能であり、概ね10~100μmの厚さであってもよい。
【0023】
PETフィルム10とナイロン6フィルム20との間に第一接着層S1が介在している。また、ナイロン6フィルム20とシーラント層30との間に第二接着層S2が介在している。上記接着層の材料としては、例えば、ポリエステル-イソシアネート系樹脂、ウレタン樹脂、ポリエーテル系樹脂等が挙げられる。第一接着層S1を介することで、PETフィルム10とナイロン6フィルム20をより強固に接着することができる。第二接着層S2を介することで、ナイロン6フィルム20とシーラント層30をより強固に接着することができる。なお、第一接着層S1の材料と第二接着層S2の材料とは、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0024】
第一接着層S1及び第二接着層S2の厚さは特に限定されず、例えば0.5~5μmであってもよく、2~3μmであってもよい。第一接着層S1の厚さが0.5μm以上であると、PETフィルム10とナイロン6フィルム20との密着性を向上させることができる。第二接着層S2の厚さが0.5μm以上であると、ナイロン6フィルム20とシーラント層30との密着性を向上させることができる。第一接着層S1及び第二接着層S2の厚さが5μm以下であると、積層体100のリサイクル性を向上させることができる。なお、第一接着層S1の厚さと第二接着層S2の厚さとは、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0025】
第一接着層S1及び第二接着層S2は、積層体100を形成する際に、隣接する二つの層を互いに接着する層である。積層体100の形成方法としては、PETフィルム10上にナイロン6フィルム20を貼り合わせ、さらにナイロン6フィルム20にシーラント層30を貼り合わせることで形成することができる。積層体100を形成するための方法として、一液硬化型もしくは二液硬化型ウレタン系接着剤等の接着剤で貼り合わせるドライラミネート法、ノンソルドライラミネート法、及び上述した熱可塑性樹脂を加熱溶融させてカーテン状に押し出し、貼りあわせるエクストルージョンラミネート法等を使用することができる。PETフィルム10にナイロン6フィルム20を貼り合わせる際に用いる接着剤は、
図1に示すように第一接着層S1を形成する。ナイロン6フィルム20にシーラント層30を貼り合わせる際に用いる接着剤は、
図1に示すように第二接着層S2を形成する。
【0026】
PETフィルム10のナイロン6フィルム20側の面に、印刷層40を設けることができる。印刷層40は、内容物に関する情報の表示、内容物の識別、又は包装袋の意匠性向上を目的として、積層体の外側から見える位置に設けられる。印刷方法及び印刷インキは特に制限されず、既知の印刷方法及び印刷インキの中からフィルムへの印刷適性、色調などの意匠性、密着性、食品容器としての安全性などを考慮して適宜選択される。印刷方法としては、例えば、グラビア印刷法、オフセット印刷法、グラビアオフセット印刷法、フレキソ印刷法、インクジェット印刷法などを用いることができる。生産性や絵柄の高精細度の観点から、グラビア印刷法であってもよい。
【0027】
印刷層40の密着性を高めるため、印刷層40側のPETフィルム10の面には、コロナ処理、プラズマ処理、フレーム処理などの各種前処理を施したり、易接着層などのコート層を設けたりしてもよい。
【0028】
積層体100のPETフィルム10側の表面X(PETフィルム10の表面)に対して、X線回折測定を行うことによって、ナイロン6フィルム20及びPETフィルム10の結晶状態を示すピークパターンを得ることができる。X線回折測定で得られたピークのうち、2θが19.5°で検知されるハローピーク(非晶質由来の回析線)のピーク強度値をI0、ナイロン6の(002)面のピーク強度値をI1、及びPETの(100)面のピーク強度値をI2としたとき、ナイロン6の結晶性指標をI1/I0、PETの結晶性指標をI2/I0で表すことができる。結晶性指標が高いと、フィルム内の配向結晶の割合が多くなり、突刺し強度が高くなる傾向にある。X線回折測定は、例えば、X線回折装置(RINT ULTIMA III、リガク株式会社製)を用いて、X線源をCu-Ka線、回折角度を10°<2θ<40°とし、電圧を40kV、電流を40mAの出力で測定することができる。ピーク強度値とは、ベースラインを基準とするピークの高さ(cps)を表している。
【0029】
X線回折測定で得られたピークパターンの平滑化及びバックグラウンド処理等の前処理は、X線回折装置に標準で搭載されている公知の方法で行ってよい。ピークパターンのバックグラウンド処理の方法として、マニュアル(スプライン)法、又はSONNVELT-VISSEER法等が挙げられる。本開示では、バッグラウンド処理後のピーク強度のばらつきを少なくし、精度を向上させる観点から、マニュアル(スプライン)法を用いる。マニュアル(スプライン)法とは、2点の2θ位置を指定し、その2点を通るスプライン近似線をバックグラウンドとする方法である。2θ位置の最小値は、5~15°であってもよい。また、2θ位置の最大値は35~45°であってもよい。
【0030】
X線回折測定により、2θが19.5°辺りに、通常、非晶質に由来するブロードなハローピークが検出される。このようなハローピークは、積層体100中のナイロン6フィルム20、PETフィルム10又はシーラント層30に含まれる非晶質に由来する。ハローピークが検出される2θを19.5°に指定することで、他のピークとの重なりによる影響を十分に低減し、ハローピークのピーク強度値(I0)のばらつきを抑制することができる。上記他のピークとは、例えば、シーラント層30として使用される無延伸ポリプロピレン(CPP)フィルムを用いた場合のポリプロピレンの(130)面(2θ≒18.5°)、CPPフィルムを用いた場合のポリプロピレンの(111)面(2θ≒21.4°)、及びナイロン6フィルムの(200)面(2θ≒20°)等に由来するものが挙げられる。
【0031】
X線回折により得られるピークのうち、ピーク強度値をI0とするハローピーク(2θ=19.5°)を指定する方法はX線回析装置付属の解析ソフト上、手動で行うが、ピーク強度値をI1とするナイロン6の(002)面のピーク、及びピーク強度値をI2とするPETの(100)面のピークは、X線回析装置付属の解析ソフトによるピークサーチ処理によって自動で検出したピークを採用する。
【0032】
X線回折測定により、2θが24°付近でナイロン6の(002)面に由来するピークが得られる。このようなナイロン6の(002)面に由来するピークが得られることで、ナイロン6フィルム中に特定方向に配向した結晶が高い割合で存在していることが確認できる。(002)面を選択する理由は、通常、延伸されたナイロン6フィルムでは、この結晶面に由来するピークが最も大きいためである。
【0033】
X線回折測定により、2θが26°付近でPETの(100)面に由来するピークが得られる。このようなPETの(100)面に由来するピークが得られることで、PETフィルム中に特定方向に配向した結晶が高い割合で存在していることが確認できる。(100)面を選択する理由は、通常、延伸されたPETフィルムではこの結晶面に由来するピークが最も大きいためである。
【0034】
積層体100に対して、X線回折測定を行ったとき、上記I1/I0は11.5以上である。このような積層体100は、積層体中の非晶質の割合が低く、ナイロン6フィルムの配向結晶の割合が高いことにより、高い突刺し強度を有する。
【0035】
I1/I0は、12.0以上であってもよく、13.0以上であってもよく、14.0以上であってもよい。I1/I0がこのような範囲であることで、より非晶質の割合が低く、配向結晶の割合が高いナイロン6フィルムを備える積層体が得られる。したがって、このような積層体は、一層高い突刺し強度を有する。なお、I1/I0は、20.0以下であってもよい。
【0036】
I1/I0の平均値は、12.0以上であってもよく、12.5以上であってもよく、13.0以上であってもよい。また、I1/I0の平均値は、20.0以下であってもよい。平均値は、1枚の積層体100の複数箇所を測定して算出してもよく、積層体100を分割して得られる複数の積層体サンプルを測定して算出してもよい。平均値を測定するためのn数は、5以上であってもよく、7以上であってもよく、10以上であってもよい。ばらつきを抑える観点から、n数は20以下であってもよい。
【0037】
積層体100に対して、X線回折測定を行ったとき、上記I2/I0は10.6以上であってもよい。このような積層体100は、積層体中の非晶質の割合が低いことにより、高い突刺し強度を有する。
【0038】
I2/I0は、11.0以上であってもよく、12.0以上であってもよい。I2/I0がこのような範囲であることで、より非晶質の割合が低い積層体が得られる。したがって、このような積層体は、一層高い突刺し強度を有する。なお、I2/I0は、20.0以下であってもよい。
【0039】
I2/I0の平均値は、11.0以上であってもよく、11.5以上であってもよく、12.0以上であってもよい。また、I2/I0の平均値は、20.0以下であってもよい。平均値は、1枚の積層体100の複数箇所を測定して算出してもよく、積層体100を分割して得られる複数の積層体サンプルを測定して算出してもよい。平均値を測定するためのn数は、5以上であってもよく、7以上であってもよく、10以上であってもよい。ばらつきを抑える観点から、n数は20以下であってもよい。
【0040】
積層体100の突刺し強度は、JIS Z1707:2019「食品包装用プラスチックフィルム通則」の「7.5 突刺し強さ試験」に基づき測定することができる。測定は、例えば、テンシロンAD-7303(株式会社エー・アンド・デイ製)を用いて、積層体100のPETフィルム10側の表面Xから反対側に向かう方向に突き刺して測定することができる。積層体100の突刺し強度は、17N以上であってもよく、18N以上であってもよく、19N以上であってもよい。このような突刺し強度を有する積層体100を備えることで、高い突刺し強度を有する包装袋を得ることができる。なお、積層体100の突刺し強度は、25N以下であってもよい。
【0041】
積層体100の突刺し強度の平均値は、16N以上であってもよく、17N以上であってもよく、18N以上であってもよい。このような突刺し強度を有する積層体100を備えることで、高い突刺し強度を有する包装袋を得ることができる。平均値は、積層体100の複数箇所を測定して算出してもよく、積層体100を複数に分割して得られる複数の積層体サンプルを測定して算出してもよい。平均値を測定するためのn数は、5以上であってもよく、7以上であってもよく、10以上であってもよい。ばらつきを抑える観点から、n数は20以下であってもよい。ナイロン6フィルム20の突刺し強度の平均値は、30N以下であってもよい。
【0042】
積層体100は、ナイロン6フィルムの単体の表面をX線回折で測定した時、I1/I0が25以上であるナイロン6フィルム20を備えてもよい。ナイロン6フィルムの単体にX線回折測定を行った場合のI1/I0は26以上であってもよく、27以上であってもよい。このようなナイロン6フィルム20を備える積層体100は、ナイロン6フィルム中の非晶質の割合が低く、配向結晶の割合が高いため、高い突刺し強度を有する。ナイロン6フィルムの単体にX線回折測定を行った場合のI1/I0は、35以下であってもよい。
【0043】
積層体100は、ナイロン6フィルムの単体の表面をX線回折で測定した時、I1/I0の平均値が25以上であるナイロン6フィルム20を備えてもよい。ナイロン6フィルムの単体にX線回折測定を行った場合のI1/I0の平均値は26以上であってもよく、28以上であってもよい。このようなナイロン6フィルム20を備える積層体100は、ナイロン6フィルム中の非晶質の割合が低く、配向結晶の割合が高いため、高い突刺し強度を有する。ナイロン6フィルムの単体にX線回折測定を行った場合のI1/I0の平均値は、35以下であってもよい。平均値は、ナイロン6フィルム20の複数箇所を測定して算出してもよく、ナイロン6フィルム20を複数に分割して得られる複数のナイロン6フィルムサンプルを測定することにより算出してもよい。平均値を測定するためのn数は、5以上であってもよく、7以上であってもよく、10以上であってもよい。ばらつきを抑える観点から、n数は20以下であってもよい。
【0044】
積層体100は、PETフィルムの単体の表面をX線回折で測定した時、I2/I0が41以上であるPETフィルム10を備えてもよい。PETフィルムの単体にX線回折測定を行った場合のI2/I0は42以上であってもよく、43以上であってもよい。このようなPETフィルム10を備える積層体100は、カット性、耐熱性及び印刷層の視認性を向上することができる。PETフィルムの単体にX線回折測定を行った場合のI2/I0は、65以下であってもよい。
【0045】
積層体100は、PETフィルムの単体にX線回折測定を行った場合のI2/I0の平均値が48以上であるPETフィルム10を備えてもよい。PETフィルムの単体にX線回折測定を行った場合のI2/I0の平均値は50以上であってもよい。このようなPETフィルム10を備える積層体100は、カット性、耐熱性及び印刷層の視認性を向上することができる。PETフィルムの単体にX線回折測定を行った場合のI2/I0の平均値は、65以下であってもよい。この平均値は、PETフィルム10の複数箇所を測定して算出してもよく、PETフィルム10を複数に分割して、それぞれを測定することにより算出してもよい。平均値を測定するためのn数は、5以上であってもよく、7以上であってもよく、10以上であってもよい。ばらつきを抑える観点から、n数は20以下であってもよい。
【0046】
フィルムの単体を測定したときに得られるI1/I0及びI2/I0の値が積層体を測定したときに得られるI1/I0及びI2/I0の値よりも大きくなるのは、積層体を測定した場合、シーラント層やPETフィルム等の他の層の影響により、2θ=19.5°で検出されるハローピーク(I0)の値が多少大きくなるためと各フィルムをラミネート加工して積層体にすることにより各フィルムの結晶性が多少小さくなることが考えられる。
【0047】
ナイロン6フィルム20の突刺し強度は、11.5N以上であってもよく、12.0N以上であってもよい。このような突刺し強度を有するナイロン6フィルム20を備えることで、積層体100の突刺し強度を一層向上させることができる。ナイロン6フィルム20の突刺し強度は、20.0N以下であってもよい。
【0048】
ナイロン6フィルム20の突刺し強度の平均値は、11.0N以上であってもよく、12.0N以上であってもよく、13.0N以上であってもよい。このような突刺し強度を有するナイロン6フィルム20を備えることで、積層体100の突刺し強度を一層向上させることができる。平均値は、ナイロン6フィルム20の複数箇所を測定して算出してもよく、ナイロン6フィルム20を複数に分割して、それぞれを測定することにより算出してもよい。平均値を測定するためのn数は、5以上であってもよく、7以上であってもよく、10以上であってもよい。ばらつきを抑える観点から、n数は20以下であってもよい。ナイロン6フィルム20の突刺し強度の平均値は、20.0N以下であってもよい。
【0049】
PETフィルム10の突刺し強度は、6.0N以上であってもよく、7.0N以上であってもよい。このような突刺し強度を有するPETフィルム10を備えることで、積層体100の突刺し強度を一層向上させることができる。また、PETフィルム10の突刺し強度は、10.0N以下であってもよい。
【0050】
図2は、積層体100を用いて形成される包装体の一実施形態を示す平面図の一例である。包装体200は、包装袋300と包装袋300の収容部22に収容された収容物21とを備える。包装袋300は、側面をなす2つの積層体100a,100bと、底面をなす積層体100c(ガゼットシート)とで構成される。包装袋300は、上端部に上端シール部31(シール部32)と、両方の側端部に側端シール部33,34(シール部32)と、下端部に下端シール部35,36(シール部32)とを有する。上端シール部31及び側端シール部33,34は、積層体100a,100bの端部のシーラント層30同士を重ね合わせてヒートシールして形成される。
【0051】
下端シール部35(ガゼットシール部)は、積層体100a,積層体100cの端部のシーラント層30を重ね合わせてヒートシールして形成される。下端シール部36(ガゼットシール部)は、積層体100b,100cの端部のシーラント層30同士を重ね合わせてヒートシールして形成される。積層体100a,100b,100cの構造は、
図1に示す積層体100の構成のとおりであってよい。
【0052】
積層体100a,100b,100cのシーラント層30同士は、上端シール部31、側端シール部33,34及び下端シール部35,36においてヒートシールされている。すなわち、
図2にドットで示している部分はヒートシールによって形成されたシール部を示している。これらのシール部以外の部分においては、積層体100a,100b,100cは、ヒートシールされていない(非シール部)。包装袋300を構成する積層体100a,100b,100cは、各シール部がシールされることによって、収容物21を収容する内部空間(収容部22)を形成する。このように収容部22は、積層体100a,100b,100cに取り囲まれている。
【0053】
包装体200は、
図3に示す包装袋301を用いて製造してもよい。包装袋301は、積層体100a(100b)の上端部31aがヒートシールされていない。上端部31aをヒートシールする前に、上端部31aで形成される開口部から収容物21を入れて、その後、積層体100a(100b)の上端部31aをヒートシールする。このようにして、上端シール部31を形成すれば、
図2に示す、包装袋300、及び収容物21が包装袋300の収容部22に密封された包装体200を得ることができる。
【0054】
包装袋300の側端シール部33,34には、一対のノッチ41,41が設けられている。一対のノッチ41,41を結ぶように図示しない切り取り予定線が設けられていてもよい。エンドユーザーは、包装体200を電子レンジで加熱した後、一方のノッチ41から切り取り予定線に沿って包装体200を開封し、温められた収容物21を取り出すことができる。
【0055】
収容物21は特に限定されず、水分のみならず油脂を含んでいてもよい。油脂を含む場合、局所的に高温になる場合がある。包装体200は、電子レンジで加熱されたときに高温になっても、通蒸口を高い精度で想定どおりに形成することができる。このため、積層体100a,100b,100cの層間はく離及び破袋による漏れの発生を十分に抑制することができる。収容物21の一例は、カレー、シチュー、スープ、煮物、焼物等の食品が挙げられる。ただし、収容物21はこれらに限定されない。
【0056】
側端シール部34は、包装袋300の収容部22の圧力が上昇したときに、収容部22と包装袋300の外部とを連通する通蒸口を形成可能に構成される蒸気抜き部50を含む。蒸気抜き部50は、包装袋300の中心Cに向かって突出している。収容部22の収容物21が電子レンジによって加熱されて蒸気が発生すると、収容部22が膨らむ。膨張に伴って、上端シール部31、側端シール部33,34及び下端シール部35,36に加わる力は、中心Cとの距離が短いほど大きくなる。このため、中心Cに向かって突出している蒸気抜き部50には、収容物21の加熱に伴って大きな引張応力がかかる。このとき、積層体100が高い突刺し強度を有することによって、ピンホールの発生を十分に抑制することができる。
【0057】
収容部22の圧力が所定値以上になると、蒸気抜き部50において側端シール部34が内縁からはく離して、収容部22と包装袋300(包装体200)の外部とが連通する。このようにして蒸気抜き部50に形成された通蒸口(蒸気抜き口)から蒸気が外部に抜ける。このように蒸気抜き部50は、収容部22の圧力が上昇したときに通蒸口を形成して、包装袋300(包装体200)が破袋することを防止する機能を有する。
【0058】
蒸気抜き部50では、側端シール部34の外側に非シール部53が設けられている。これによって、蒸気抜き部50における側端シール部34のシール幅は、蒸気抜き部50以外の側端シール部34のシール幅よりも小さくなっている。このため、収容部22内の圧力が上昇したときに、収容部22と外部とを連通する通蒸口(蒸気抜き口)が蒸気抜き部50に円滑に形成される。収容部22から外部への蒸気抜き(排気)を十分円滑にするために、非シール部53には、積層体100a,100bの積層方向に貫通する貫通孔が設けられていてもよい。
【0059】
蒸気抜き部50における側端シール部34のシール幅の最小値は1~5mmであってよく、2~4mmであってもよい。これによって、良好な密封性を維持しつつ、電子レンジによる加熱時の蒸気抜きを円滑に行うことができる。蒸気抜き部50の形状及び位置は特に限定されない。変形例では、上端シール部31又は側端シール部33に蒸気抜き部50を設けてもよい。いずれの形状及び位置であっても、蒸気抜き部50におけるシール幅の最小値は上述の数値範囲であってよい。蒸気抜き部50は複数設けられてもよい。
【0060】
包装袋300(包装体200)は、100℃を超える熱水スプレー中で10分間以上加熱するレトルト処理が施されていてもよい。
【0061】
以上、本開示の幾つかの実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に何ら限定されるものではない。積層体100の各層間には、積層体100の機能を向上させるために、所定の中間層を設けてもよい。中間層の構成は、上記のシーラント層30の構成に記載した内容を適宜参照することができる。積層体100が中間層を備えることで、包装袋の製造時における、積層体の変形をより低減することができる。中間層は、積層体100の用途に応じて複数枚使用してもよい。
【0062】
積層体100は、例えば、金属層を備えてもよい。金属層としては、銅箔、アルミニウム箔、錫箔、インジウム箔等が挙げられる。可視光及び紫外線の透過を防止する観点から、金属層はアルミニウム箔を含んでもよい。金属層の厚さは、例えば、6~9μmであってもよい。金属層の厚さを6μm以上とすることにより、積層体100の突刺し強度が向上する。したがって、積層体100を備える包装袋において、PETフィルム10に異物が付着していたとしても、当該異物がPETフィルム10よりも内面側に侵入する不具合を防止することができる。このため、収容物の品質の劣化を抑制することができる。なお、金属層は、積層体を構成するいずれかの層の上にあらかじめ蒸着を施した蒸着層でもよい。蒸着層に用いる蒸着材料は、Si、Al、Sn、In、Zn、Fe、Mn等の金属、これらの金属の1種以上を含む無機化合物等が挙げられる。該無機化合物としては、例えば、一酸化ケイ素、二酸化ケイ素等のケイ素酸化物(SiOx)、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化錫、酸化インジウム等が挙げられる。また、これらの無機化合物に加え、Si、Al、Sn、In、Zn、Fe、Mnからなる群から選ばれた少なくとも1種の金属またはそれらの酸化物を含有していてもよい。
【0063】
積層体100は、例えば、印刷層40及び金属層から選ばれる少なくとも一種に隣接するアンカーコート層を備えてもよい。アンカーコート層を備えることで、印刷層40又は金属層の密着性を高め、積層体100の突刺し強度を一層向上することができる。アンカーコート層は所定の層の上にアンカーコート剤を塗布し、乾燥させることで形成することができる。アンカーコート剤として、例えば、ポリエステル系ポリウレタン樹脂、及びポリエーテル系ポリウレタン樹脂等が挙げられる。アンカーコート層の厚さは、特に限定されず、0.1~1μmであってもよく、0.3~0.5μmであってもよい。
【0064】
PETフィルム10と、ナイロン6フィルム20とが、第一接着層S1を介さずに直接貼り合わされていてもよい。また、ナイロン6フィルム20と、シーラント層30とが、第二接着層S2を介さずに直接貼り合わされていてもよい。
【0065】
本開示は、以下の実施形態を含む。
[1]ポリエチレンテレフタレートフィルム、ナイロン6フィルム、及びシーラント層をこの順に備える積層体であって、
前記積層体における前記ポリエチレンテレフタレートフィルム側の表面をX線回折で測定し、2θが19.5°のときに検知されるピーク強度値をI0、ナイロン6の(002)面のピーク強度値をI1としたとき、I1/I0が11.5以上である、積層体。
[2]前記表面をX線回折で測定したときのポリエチレンテレフタレートの(100)面のピーク強度値をI2としたとき、I2/I0が10.6以上である、[1]に記載の積層体。
[3]前記ナイロン6フィルムはチューブラー法によって得られる延伸フィルムである、上記[1]又は[2]に記載の積層体。
[4]突刺し強度が17N以上である、上記[1]~[3]のいずれか一つに記載の積層体。
[5]前記ナイロン6フィルムの単体の表面をX線回折で測定し、2θが19.5°のときに検知されるピーク強度値をI0、ナイロン6の(002)面のピーク強度値をI1としたとき、I1/I0が25以上である前記ナイロン6フィルムを備える、上記[1]~[4]のいずれか一つに記載の積層体。
[6]前記ポリエチレンテレフタレートフィルムの単体の表面をX線回折で測定し、2θが19.5°のときに検知されるピーク強度値をI0、ポリエチレンテレフタレートの(100)面のピーク強度値をI2としたとき、I2/I0が41以上である前記ポリエチレンテレフタレートフィルムを備える、上記[1]~[5]のいずれか一つに記載の積層体。
[7]前記ナイロン6フィルムの突刺し強度は11.5N以上である、上記[1]~[6]のいずれか一つに記載の積層体。
[8]前記ナイロン6フィルムの厚さは10~25μmである、上記[1]~[7]のいずれか一つに記載の積層体。
[9]前記ポリエチレンテレフタレートフィルムの厚さは9~25μmである、上記[1]~[8]のいずれか一つに記載の積層体。
[10]上記[1]~[9]のいずれか一つに記載の積層体を備える包装袋。
[11]上記[10]に記載の包装袋と、当該包装袋の収容部に収容物とを備える、包装体。
【実施例】
【0066】
以下、実施例及び比較例を挙げて本開示の内容をより具体的に説明する。なお、本開示は下記実施例に限定されるものではない。
【0067】
[フィルムの準備]
市販のナイロン6フィルム、市販のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを準備した。また、シーラント層として、厚さが60μmの市販の無延伸ポリプロピレン(CPP)フィルムを準備した。
【0068】
ナイロン6フィルムとして、それぞれ製造元の異なるナイロン6フィルムA、ナイロン6フィルムB、及びナイロン6フィルムCを準備した。ナイロン6フィルムAはチューブラー法により得られた延伸フィルムであり、ナイロン6フィルムBは、逐次二軸延伸法により得られた二軸延伸フィルムであり、ナイロン6フィルムCは、同時二軸延伸法により得られた二軸延伸フィルムであった。いずれのナイロン6フィルムも厚さは15μmであった。
【0069】
PETフィルムとして、それぞれ製造元の異なるPETフィルムA及びPETフィルムBを準備した。PETフィルムA及びPETフィルムBは、いずれも同時二軸延伸法により得られた二軸延伸フィルムであった。いずれのPETフィルムも厚さは12μmであった。
【0070】
[ナイロン6フィルム、PETフィルム、及びCPPフィルムのX線回折測定]
各ナイロン6フィルム、各PETフィルム、及びCPPフィルムを切り分け、4.8cm×4.8cmのサンプル片を得た。得られたサンプル片をRINT ULTIMA III(リガク株式会社製)により以下の条件で測定した。得られた各フィルムのピークパターンに対して、平準化処理を19点で行い、2θ=10°及び2θ=40°の2点を選択し、2点間でマニュアル(スプライン)法によるバッググラウンド処理を行った。バックグラウンド処理後のナイロン6フィルムAのピークパターンを
図4、ナイロン6フィルムCのピークパターンを
図5、PETフィルムAのピークパターンを
図6、及びPETフィルムBのピークパターンを
図7に示した。なお、Cu-Kβ線による試料由来の回析線が無いことが確認できたことから、Cu-Kα線による試料由来の回析線強度の減少を防止するため、Niフィルターを使用しなかった。
【0071】
・X線源:Cu-Ka
・電圧:40kV
・電流:40mA
・スキャン方法:2θ-θ法(平行ビーム法)
・計数単位:cps
・走査速度:4°/min
・測定範囲:10°<2θ<40°
・サンプリング速度:0.020°/min
・試料台制御モード:回転
・Niフィルター:不使用
【0072】
各ナイロン6フィルム、各PETフィルム、及びCPPフィルムを上述の通り切断して4.8cm×4.8cmのサンプル片を5枚ずつ作製し、それぞれのサンプル片ごとに上述のX線回折測定を行った。
【0073】
ナイロン6フィルムのバッググラウンド処理後のピークパターンから、2θが19.5°のときのピーク強度値をI0、2θが23.7°付近に生じるナイロン6の(002)面由来のピーク強度値をI1とし、I1/I0で示されるナイロン6フィルムの各サンプル片の結晶性指標を算出した。また、フィルムごとに結晶性指標の平均値を算出した。得られた結果を表1に示す。
【0074】
PETフィルムのバッググラウンド処理後のピークパターンから、2θが19.5°のときのピーク強度値をI0、2θが26°付近に生じるPETの(100)面由来のピーク強度値をI2とし、I2/I0で示されるPETフィルムの各サンプル片の結晶性指標を算出した。また、フィルムごとに結晶性指標の平均値を算出した。得られた結果を表1に示す。
【0075】
[ナイロン6フィルム及びPETフィルムの突刺し強度測定]
上記X線測定を行った各サンプル片の突刺し強度を、JIS Z1707:2019「食品包装用プラスチックフィルム通則」の「7.5 突刺し強さ試験」に基づき、以下の条件で測定した。測定装置は、テンシロンAD-7703(株式会社エー・アンド・デイ製)を用いた。また、フィルムごとに突刺し強度の平均値を算出した。得られた結果を表1に示す。
【0076】
・試験速度:50mm/min
・ロードセル:100N
・荷重レンジ:20N(20%)
【0077】
【0078】
表1に示すように、フィルム単体での結晶性指標及び突刺し強度の比較を行ったところ、ナイロン6フィルムにおいて、結晶性指標と突刺し強度の間に正の相関がみられた。同時二軸延伸法により作製したナイロン6フィルムよりも、逐次二軸延伸法により作製したナイロン6フィルムの方が高い突刺し強度を示した。また、チューブラー法を使用して作製したナイロン6フィルムは逐次二軸延伸法により作製したナイロン6フィルムよりもさらに高い結晶性指標及び突刺し強度を有することが確認された。一方、PETフィルムにおいては、PETフィルムAの方がPETフィルムBよりも高い結晶性指標を示したものの、突刺し強度に変化はなく、結晶性指標と突刺し強度の間に相関はみられなかった。
【0079】
[積層体の作製]
(実施例1)
以下の手順で積層体を作製した。[フィルムの準備]で用意したPETフィルムAの一方面に印刷層を形成した。印刷層の厚さは1μmであった。続いて、ドライラミネート法により、印刷層の上からナイロン6フィルムA、CPPフィルムをこの順に積層した。作製した積層体を切り分け、4.8cm×4.8cmのサンプル片を得た。積層体の層構成を以下に示す。
PETフィルムA/印刷層/第一接着層/ナイロン6フィルムA/第二接着層/CPPフィルム
【0080】
(実施例2)
上記実施例1で使用したナイロン6フィルムAに替えてナイロン6フィルムBを使用したこと以外は、上記実施例1と同様の手順で積層体を作製した。作製した積層体を切り分け、4.8cm×4.8cmのサンプル片を得た。積層体の層構成を以下に示す。
PETフィルムA/印刷層/第一接着層/ナイロン6フィルムB/第二接着層/CPPフィルム
【0081】
(比較例1)
上記実施例1で使用したPETフィルムAをPETフィルムBに替え、且つナイロン6フィルムAをナイロン6フィルムCに替えたこと以外は、上記実施例1と同様の手順で積層体を作製した。作製した積層体を切り分け、4.8cm×4.8cmのサンプル片を得た。積層体の層構成を以下に示す。
PETフィルムB/印刷層/第一接着層/ナイロン6フィルムC/第二接着層/CPPフィルム
【0082】
[各積層体のX線回折測定及び突刺し強度測定]
作製した各積層体のサンプル片を9枚準備し、PETフィルム側の表面のX線回折測定を行い、積層体における結晶化指標I1/I0及びI2/I0を算出した。X線回折測定の条件は上述のとおりである。その後、積層体のPETフィルムの表面から反対側に向かう方向に突刺し強度測定を行った。突刺し強度の測定条件は上述のとおりである。結果を表2に示す。なお、表2では結晶性指標のうち、I1/I0を「結晶性指標α」、I2/I0を「結晶性指標β」とした。
【0083】
図8に実施例1の積層体のピークパターン、
図4のナイロン6フィルムAのピークパターン、及び
図6のPETフィルムAのピークパターンを重ね合わせて示す。また、
図9に比較例1の積層体のピークパターン、
図5のナイロン6フィルムCのピークパターン、及び
図7のPETフィルムBのピークパターンを重ね合わせて示す。
【0084】
図8に示すように、ナイロン6フィルムA、PETフィルムA、及び実施例1の積層体におけるX線回折測定のピークパターンを重ね合わせたところ、ナイロン6フィルムAの(002)面及びPETフィルムAの(100)面のピークが、実施例1の積層体における当該ピークと重なっていた。また、
図9に示すように、ナイロン6フィルムC、PETフィルムB、及び比較例1の積層体におけるX線回折測定のピークパターンを重ね合わせたところ、ナイロン6フィルムCの(002)面及びPETフィルムBの(100)面のピークが、比較例1の積層体における当該ピークと重なっていた。したがって、積層体のX線回折測定によるピークパターンは、使用したフィルムの結晶状態に由来することが確認できた。
【0085】
[包装袋の作製及びレトルト処理後の評価]
(実施例3)
実施例1の層構成を有する積層体を縦:100mm×横:200mmの大きさとなるように1枚作製した。作製した積層体を折り曲げ、シール巾が5~10mmとなるように側部及び底部をヒートシールで貼り合わせ、
図3に示すような包装袋を作製した。具体的には、蒸気抜き部以外の側端シール部と下端シール部をインパルス方式(温度:190℃)でヒートシールした後、金型を用いてヒートシールを行って蒸気抜き部を形成した。その後、収容部に水100gを収容し、上端部をインパルス方式(温度:190℃)でヒートシールして上端シール部を形成した。このようにして、
図2に示すような、収容部に水が密封されたスタンディングパウチ(包装袋及び包装体)を得た。
【0086】
120℃、30分間のスプレー処理により作製した包装体のレトルト処理を行い、シール部分をはがしてレトルト処理後の積層体を作製した。その後、レトルト処理後の積層体を4.8cm×4.8cmのサンプル片に切り分けた。このようにしてレトルト処理後の積層体のサンプル片を9枚準備した。上述のX線回折測定及び突刺し強度測定を行い、レトルト処理後の積層体の結晶性指標α、結晶性指標β、及び突刺し強度を評価した。それぞれの結果を表3に示す。
【0087】
(実施例4)
実施例1の積層体を実施例2の積層体に替えて上述のパウチを作製したこと以外は、実施例3と同様の手順でレトルト処理後の積層体を作製した。上述した手順でX線回折測定及び突刺し強度測定を行い、レトルト処理後の積層体の結晶性指標α、結晶性指標β、及び突刺し強度を評価した。それぞれの結果を表3に示す。
【0088】
(比較例2)
実施例1の積層体を比較例1の積層体に替えて上述のパウチを作製したこと以外は、実施例3と同様の手順でレトルト処理後の積層体を作製した。なお、サンプル片は5枚とした。上述のX線回折測定及び突刺し強度測定を行い、レトルト処理後の積層体の結晶性指標α、結晶性指標β、及び突刺し強度を評価した。それぞれの結果を表3に示す。
【0089】
【0090】
【0091】
表2、表3には、各サンプル片の結晶性指標α、結晶性指標β、及び突刺し強度に加えて、これらの平均値を示した。表2に示すように、結晶性指標α,βの大きい積層体は、結晶性指標α,βの小さい積層体よりも高い突刺し強度を有することが確認された。表2及び表3を比較したところ、レトルト処理の有無による結晶性指標α,βと突刺し強度の変化はみられず、レトルト処理は、結晶性指標α,β及び突刺し強度にあまり影響を及ぼさないことが確認された。表1、表2、及び表3の結果から、高い結晶性指標を有するナイロン6フィルムを使用することで高い突刺し強度を有する積層体を作製できることが確認された。また、結晶性指標の大きい積層体を用いることにより、十分に高い突刺し強度を有する包装袋を作製できることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本開示によれば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ナイロン6フィルム、及びシーラント層をこの順に備えた積層体において、十分に大きい突刺し強度を有する積層体、並びに、そのような積層体を備える包装袋及び包装体を提供することができる。
【符号の説明】
【0093】
10…ポリエチレンテレフタレートフィルム、20…ナイロン6フィルム、30…シーラント層、40…印刷層、100,100a,100b,100c…積層体、S1…第一接着層、S2…第二接着層、X…表面、200…包装体、C…中心、21…収容物、22…収容部、31…上端シール部、31a…上端部、32…シール部、33,34…側端シール部、35,36…下端シール部、41…ノッチ、50…蒸気抜き部、53…非シール部、300,301…包装袋。
【要約】
【課題】十分に大きい突刺し強度を有する積層体、並びに、そのような積層体を備える包装袋及び包装体を提供すること。
【解決手段】
ポリエチレンテレフタレートフィルム、ナイロン6フィルム、及びシーラント層をこの順に備える積層体であって、前記積層体における前記ポリエチレンテレフタレートフィルム側の表面をX線回折で測定し、2θが19.5°のときに検知されるピーク強度値をI
0、ナイロン6の(002)面のピーク強度値をI
1としたとき、I
1/I
0が11.5以上である、積層体を提供する。
【選択図】
図1