(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】ジャケット、ジャケット構造物およびジャケット構造物の構築方法
(51)【国際特許分類】
E01D 15/12 20060101AFI20240312BHJP
E01D 21/00 20060101ALI20240312BHJP
E02D 27/52 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
E01D15/12
E01D21/00 A
E02D27/52 A
(21)【出願番号】P 2023117779
(22)【出願日】2023-07-19
(62)【分割の表示】P 2020051140の分割
【原出願日】2020-03-23
【審査請求日】2023-07-28
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 提供先 :株式会社 エコー 本社(東京都台東区北上野2丁目6-4) 提供日:2019年9月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004123
【氏名又は名称】JFEエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002963
【氏名又は名称】弁理士法人MTS国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100080458
【氏名又は名称】高矢 諭
(74)【代理人】
【識別番号】100144299
【氏名又は名称】藤田 崇
(72)【発明者】
【氏名】小川 慧
(72)【発明者】
【氏名】内田 賢一
(72)【発明者】
【氏名】吉川 貴志
(72)【発明者】
【氏名】中村 信秀
(72)【発明者】
【氏名】田中 裕明
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-325578(JP,A)
【文献】特開2005-076399(JP,A)
【文献】特開2004-183324(JP,A)
【文献】特開2006-336231(JP,A)
【文献】特開2008-223291(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 1/00-24/00
E02D 27/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の杭の上方に設置されるジャケットであって、
前記複数の杭それぞれを挿入可能な内空部を備える複数の鋼管レグと、
前記複数の鋼管レグの上端部同士を接続する複数の上部桁と、
前記複数の上部桁に溶接又は機械的な接合で取り付けられ、前記複数の上部桁の間の空間を上方から覆う一方、前記鋼管レグの内空部は上方から覆わないように構成した上部鋼板と、
を備え、
前記上部鋼板は、前記複数の鋼管レグに前記複数の杭のうちの一部の杭の杭打ちをする杭打ち工程で使用される杭打ち機もしくは前記杭打ち工程後のコンクリート打設工程で使用される車両のいずれか少なくとも一方を当該上部鋼板の上で使用することが可能な厚みを有することを特徴とするジャケット。
【請求項2】
複数の杭の上方に設置されるジャケットであって、
前記複数の杭それぞれを挿入可能な内空部を備える複数の鋼管レグと、
前記複数の鋼管レグの上端部同士を接続する複数の上部桁と、
前記複数の上部桁に溶接又は機械的な接合で取り付けられ、前記複数の上部桁の間の空間を上方から覆う一方、前記鋼管レグの内空部は上方から覆わないように構成した上部鋼板と、
を備え、
前記上部鋼板の上面に
は該上部鋼板を補強する補強部が設けられて
おり、前記上部鋼板は、前記補強部により、前記複数の鋼管レグに前記複数の杭のうちの一部の杭の杭打ちをする杭打ち工程で使用される杭打ち機もしくは前記杭打ち工程後のコンクリート打設工程で使用される車両のいずれか少なくとも一方を当該上部鋼板の上で使用することが可能なように補強されていることを特徴とするジャケット。
【請求項3】
前記上部鋼板は、前記杭打ち工程で使用される前記杭打ち機および前記コンクリート打設工程で使用される前記車両のそれぞれを当該上部鋼板の上で使用することが可能な厚みを有することを特徴とする請求項1に記載のジャケット。
【請求項4】
前記上部鋼板は、前記補強部により、前記杭打ち工程で使用される前記杭打ち機および前記コンクリート打設工程で使用される前記車両のそれぞれを当該上部鋼板の上で使用することが可能なように補強されていることを特徴とする請求項2に記載のジャケット。
【請求項5】
前記補強部は前記上部鋼板に一体成形されていることを特徴とする請求項2
または4に記載のジャケット。
【請求項6】
前記補強部は、フランジ部が上方となるように配置された断面T形の鋼材を含むことを特徴とする請求項2
、4または5に記載のジャケット。
【請求項7】
前記断面T形の鋼材の前記フランジ部の上面には、該フランジ部の幅方向に直線状の突起が設けられていることを特徴とする請求項
6に記載のジャケット。
【請求項8】
前記補強部は、スタッドジベルを含むことを特徴とする請求項2
、4~7のいずれかに記載のジャケット。
【請求項9】
前記上部桁の上面に、スタッドジベルが設けられていることを特徴とする請求項1~
8のいずれかに記載のジャケット。
【請求項10】
前記上部桁同士の間の間隔は、4m以上12m以下であることを特徴とする請求項1~
9のいずれかに記載のジャケット。
【請求項11】
前記上部桁の部位のうち上面以外の部位の外面および前記上部鋼板の下面に、重防食塗装が施されていることを特徴とする請求項1~
10のいずれかに記載のジャケット。
【請求項12】
前記上部桁の上面および前記上部鋼板の上面に、有機ジンクリッチプライマーが塗布されていることを特徴とする請求項1~
11のいずれかに記載のジャケット。
【請求項13】
請求項1~
12のいずれかに記載のジャケットと、
水域の地盤に打設されていて、前記ジャケットの前記複数の鋼管レグの各々の内空部にそれぞれが挿入可能な複数の杭と、
を備え、
前記複数の鋼管レグの各々の内空部に前記複数の杭のうちの対応するものがそれぞれ挿入されて連結されていることを特徴とするジャケット構造物。
【請求項14】
前記ジャケットの前記複数の鋼管レグの内径は、前記複数の杭のうちの対応するものの外径よりも大きく、
前記ジャケットの前記複数の鋼管レグは、前記複数の杭のうちの対応するものの上端部に被さるように配置されており、前記鋼管レグの内周面と前記杭の外周面との間にはグラウトが充填されて一体化されていることを特徴とする請求項
13に記載のジャケット構造物。
【請求項15】
前記杭は鋼管杭であることを特徴とする請求項
13または14に記載のジャケット構造物。
【請求項16】
前記ジャケットの前記上部桁の上方および前記上部鋼板の上方にコンクリートが打設されてなる合成床版が形成されていることを特徴とする請求項
13~15のいずれかに記載のジャケット構造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はジャケット、ジャケット構造物およびジャケット構造物の構築方法に関し、詳細には、上部構造として合成床版を設けるのに適するジャケット、該ジャケットを用いたジャケット構造物、および該ジャケット構造物を構築するのに適する構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼材を組み立てて構成されたジャケットを鋼管杭に取り付けて固定し、そのジャケットの上部にコンクリート床版を設置したジャケット構造物が、桟橋構造物等として多く用いられており、その標準的な施工方法は、例えば、非特許文献1、2に記載されている。
【0003】
ジャケットの上部に設置するコンクリート床版は、施工性等の観点から、プレキャスト床版が用いられることも多く、プレキャスト床版を用いた場合の施工方法は、例えば、特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献】
【0005】
【文献】沿岸開発技術ライブラリーNo.7、「ジャケット工法技術マニュアル」、財団法人 沿岸開発技術研究センター、2000年1月発行
【文献】「港湾新技術・新工法積算基準ライブラリー」、財団法人 港湾空港建設技術サービスセンター、平成19年4月1日発行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような従来技術に見られるジャケット構造物には次のような問題点があることがわかった。
【0007】
1)ジャケットの上部桁同士の間の間隔は、プレキャスト床版を支持するため最大でも5m程度と狭い。そのため、桁の部材数が多く組み立て工数が多い。また、桁の部材数が多いため、桁のコバ面等まで十分に防食被覆を施すことは困難である。
【0008】
2)プレキャスト床版を用いたジャケット構造物を構築する場合、ジャケット据え付けの際など海上からの作業が多く、そのため必要な作業船を確保しなければならない機会が多く、作業船を使用する期間も結果として長くなる。このため、次のような問題点が生じる。
【0009】
2-1)港湾荷役等の隣接する岸壁の供用や船舶の航行への影響が大きくなる。
【0010】
2-2)漁業、環境への影響が大きくなる。
【0011】
2-3)作業船を使用する期間が長いため、海象条件の影響を受けやすく、また、隻数の少ない作業船(起重機船等)などでは、そのような作業船の空き状況の影響を受けやすく、それによって現地での工事期間が長期化しやすい。
【0012】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、水域構造物として十分な防食性を確保でき、また、作業船の使用期間を短くでき、ひいては現場での工事期間を短縮することができるジャケット、ジャケット構造物およびジャケット構造物の構築方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、以下のジャケット、ジャケット構造物およびジャケット構造物の構築方法により、前記課題を解決したものである。
【0014】
即ち、本発明に係るジャケットは、複数の杭の上方に設置されるジャケットであって、前記複数の杭それぞれを挿入可能な内空部を備える複数の鋼管レグと、前記複数の鋼管レグの上端部同士を接続する複数の上部桁と、前記複数の上部桁に溶接又は機械的な接合で取り付けられ、前記複数の上部桁の間の空間を上方から覆う一方、前記鋼管レグの内空部は上方から覆わないように構成した上部鋼板と、を備えることを特徴とするジャケットである。
【0015】
本願において、ジャケットに関し、「上方」、「上端部」、「上面」および「下面」等の文言のように、上下の位置関係を観念する文言の解釈においては、当該ジャケットが、地盤に打設された杭に設置された状態で、上下の位置関係を判断するものとする。
【0016】
また、「鋼管レグの上端部同士を接続する」とは、必要な応力伝達が可能なように鋼管レグの上端部同士の間を連結することを意味する。本願の他の箇所においても、「接続」の意味は同様に解釈するものとする。
【0017】
ここで、「機械的な接合」とは、力学的な作用で連結する接合のことであり、例えばボルト接合等のことである。
【0018】
前記上部鋼板の上面に、該上部鋼板を補強する補強部が設けられていてもよい。
【0019】
前記補強部は前記上部鋼板に一体成形されていてもよい。
【0020】
前記補強部は、フランジ部が上方となるように前記上部鋼板の上面に配置された断面T形の鋼材であってもよい。
【0021】
前記断面T形の鋼材の前記フランジ部の上面には、該フランジ部の幅方向に直線状の突起が設けられていることが好ましい。
【0022】
前記補強部は、前記上部鋼板の上面に設けられたスタッドジベルであってもよい。
【0023】
前記上部桁の上面に、スタッドジベルが設けられていてもよい。
【0024】
前記上部桁同士の間の間隔は、4m以上12m以下であってもよい。
【0025】
前記上部桁の部位のうち上面以外の部位の外面および前記上部鋼板の下面に、重防食塗装が施されていてもよい。
【0026】
本願において、「外面」とは、外部の大気と接する面のことである。
【0027】
前記上部桁の上面および前記上部鋼板の上面に、有機ジンクリッチプライマーが塗布されていてもよい。
【0028】
前記上部鋼板は、上面に車両を直接載置可能な厚みを有していてもよい。
【0029】
本発明に係るジャケット構造物の第1の態様は、前記ジャケットと、水域の地盤に打設されていて、前記ジャケットの前記複数の鋼管レグの各々の内空部にそれぞれが挿入可能な複数の杭と、を備え、前記複数の鋼管レグの各々の内空部に前記複数の杭のうちの対応するものがそれぞれ挿入されて連結されていることを特徴とするジャケット構造物である。
【0030】
本発明に係るジャケット構造物の第2の態様は、前記ジャケットと、水域の地盤に打設されていて、前記補強部が設けられている前記ジャケットの前記複数の鋼管レグの各々の内空部にそれぞれが挿入可能な複数の杭と、を備え、前記複数の鋼管レグの各々の内空部に前記複数の杭のうちの対応するものがそれぞれ挿入されて連結されており、前記補強部の上に敷き部材を配置することにより、配置した敷き部材の上に車両を載置すること及び該敷き部材の上を車両が走行可能なことを特徴とするジャケット構造物である。
【0031】
本発明に係るジャケット構造物の第3の態様は、上面に車両を直接載置可能な厚みを有する前記上部鋼板を備えた前記ジャケットと、水域の地盤に打設されていて、前記ジャケットの前記複数の鋼管レグの各々の内空部にそれぞれが挿入可能な複数の杭と、を備え、前記複数の鋼管レグの各々の内空部に前記複数の杭のうちの対応するものがそれぞれ挿入されて連結されており、前記上部鋼板の上に車両を載置すること及び前記上部鋼板の上を車両が走行可能なことを特徴とするジャケット構造物である。
【0032】
本願において、車両には、クレーン車、杭打ち用クレーン、コンクリートミキサー車、コンクリートポンプ車等の工事用の車両も含まれる。
【0033】
前記ジャケットの前記複数の鋼管レグの内径は、前記複数の杭のうちの対応するものの外径よりも大きく、前記ジャケットの前記複数の鋼管レグは、前記複数の杭のうちの対応するものの上端部に被さるように配置されており、前記鋼管レグの内周面と前記杭の外周面との間にはグラウトが充填されて一体化されているように構成してもよい。
【0034】
前記杭は鋼管杭であってもよい。
【0035】
前記ジャケットの前記上部桁の上方および前記上部鋼板の上方にコンクリートが打設されてなる合成床版が形成されていることが好ましい。
【0036】
本発明に係るジャケット構造物の構築方法の第1の態様は、ジャケット構造物を構築する構築方法であって、前記ジャケットを構築地点の現場水域まで運搬する運搬工程と、前記運搬工程で運搬したジャケットを、構築地点の現場水域に、杭で据え付けるジャケット据え付け工程と、前記ジャケット据え付け工程で据え付けたジャケットの上部鋼板の上にコンクリートを打設して合成床版を形成する合成床版形成工程と、を備えることを特徴とするジャケット構造物の構築方法である。
【0037】
本発明に係るジャケット構造物の構築方法の第2の態様は、ジャケット構造物を構築する構築方法であって、構築地点の現場水域の地盤に前記ジャケット構造物を構成する複数の鋼管杭の一部を先行打設する先行杭打設工程と、前記ジャケットを構築地点の現場水域まで運搬する運搬工程と、前記先行杭打設工程で先行打設した鋼管杭の上端部に、前記運搬工程で運搬したジャケットの対応する位置の鋼管レグを被せるように配置して前記ジャケットを据え付けるジャケット据え付け工程と、前記ジャケット上に杭打ち機を配置する杭打ち機配置工程と、前記ジャケット構造物を構成する複数の鋼管杭のうち、前記先行杭打設工程で打設していない残りの鋼管杭を、前記ジャケット据え付け工程で据え付けたジャケットにおける対応する位置の鋼管レグの内空部を挿通するように前記杭打ち機配置工程で配置した杭打ち機で打設して、該ジャケットに連結し、該ジャケットを支持させる後打ち杭打設連結工程と、前記後打ち杭打設連結工程で打設した前記鋼管杭に連結支持されたジャケットの上部鋼板の上にコンクリートを打設して合成床版を形成する合成床版形成工程と、を備えることを特徴とするジャケット構造物の構築方法である。
【0038】
なお、本発明に係るジャケット構造物の構築方法の第1の態様および第2の態様において、前記ジャケット据え付け工程におけるジャケットの据え付けは、前記ジャケットと前記鋼管杭とが一体化された段階で完了する。この一体化は、所定の位置に配置されたジャケットの対応する箇所の鋼管レグの内空部の一部又は全部に鋼管杭を挿通させた状態であればよい。また、この一体化は、挿通させた鋼管杭の上端部の外周面と鋼管レグの下端部の内周面との間に更にグラウトを充填し、硬化させて行ったものでもよい。
【発明の効果】
【0039】
本発明によれば水域構造物として十分な防食性を確保でき、また、作業船の使用期間を短くでき、ひいては現場での工事期間を短縮することができるジャケット、ジャケット構造物およびジャケット構造物の構築方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るジャケット構造物10を示す斜視図
【
図3】ジャケット構造物10が備える合成床版30の断面図(T形補強鋼材22の長手方向と直交する鉛直断面図)
【
図4】上部桁16の上フランジ16Aへの上部鋼板20の取り付け態様の一具体例を示す鉛直断面図
【
図5】上部桁16の上フランジ16Aへの上部鋼板20の取り付け態様の一具体例を示す鉛直断面図
【
図6】上部桁16の上フランジ16Aへの上部鋼板20の取り付け態様の一具体例を示す鉛直断面図
【
図7】上部桁16の上フランジ16Aへの上部鋼板20の取り付け態様の一具体例を示す鉛直断面図
【
図8】第1実施形態に係るジャケット構造物10を構築する際の代表的な1つの工程を模式的に示す図
【
図9】第1実施形態に係るジャケット構造物10を構築する際の代表的な1つの工程を模式的に示す図
【
図10】第1実施形態に係るジャケット構造物10を構築する際の代表的な1つの工程を模式的に示す図
【
図11】第1実施形態に係るジャケット構造物10を構築する際の代表的な1つの工程を模式的に示す図
【
図12】第1実施形態に係るジャケット構造物10を構築する際の代表的な1つの工程を模式的に示す図
【
図13】第1実施形態に係るジャケット構造物10を構築する際の代表的な1つの工程を模式的に示す図
【
図14】第1実施形態に係るジャケット構造物10を構築する際の代表的な1つの工程を模式的に示す図
【
図15】第1実施形態に係るジャケット構造物10の第1変形例に係るジャケット構造物50ならびにジャケット構造物50が備えるジャケット50Aおよび合成床版50Bを示す斜視図
【
図16】第1実施形態に係るジャケット構造物10の第2変形例に係るジャケット構造物52を示す平面図
【
図17】本発明の第2実施形態に係るジャケット構造物60の上部桁16およびその近傍の部位を模式的に示す鉛直断面図
【
図18】上部鋼板20の下面に設けた重防食塗装62の構成を模式的に示す図
【
図19】上部桁16の上フランジ16Aへの上部鋼板20の取り付け態様の一具体例を示す鉛直断面図
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。以下の説明では、本発明を桟橋構造物に適用した場合について説明を行っているが、本発明の適用対象が桟橋構造物に限定されるわけではない。
【0042】
(1) 第1実施形態
(1-1)構成および作用効果
図1は、本発明の第1実施形態に係るジャケット構造物10を示す斜視図であり、
図2は、
図1の一部を拡大して示す拡大斜視図である。ジャケット構造物10は水域100(
図8、
図10~14参照)の地盤200に設置されているが、図示の都合上、
図1、2においては水域に存在する水については記載を省略しており、水域100の表示も付していない。
図3は、ジャケット構造物10が備える合成床版30の断面図(T形補強鋼材22の長手方向と直交する鉛直断面図)である。
【0043】
第1実施形態に係るジャケット構造物10は、岸壁300に沿って設けられた桟橋構造物であり、
図1に示すように、ジャケット12と、合成床版30と、複数の鋼管杭80とを有してなり、上方から見て縦横にマトリックス状に配置された複数の鋼管杭80の上端部にジャケット12が取り付けられて設置されている。
【0044】
ジャケット12は、
図1、2に示すように、レグ14と、上部桁16と、連結鋼材18と、上部鋼板20と、T形補強鋼材22と、スタッドジベル24とを有してなる。レグ14の上端部同士を複数の上部桁16が接続しており、また、多数の連結鋼材18が、レグ14の上端部以外の部位同士を連結するとともに、レグ14の上端部以外の部位と上部桁16の端部以外の部位とを連結して、ジャケット12の骨格を構成している。上部鋼板20は上部桁16の上フランジ16A(
図4~7参照)に取り付けられており、上部桁16同士の間の空間を上方から覆っており、また、上部鋼板20の上面にはT形補強鋼材22が取り付けられている。また、
図2に示すように、上部桁16の上フランジ16Aの上面には多数のスタッドジベル24が取り付けられている。ジャケット12は、このような構成に、現場搬入前に工場で予め作製されており、作製されたジャケット12は、台船等によって設置地点の水域まで運搬される。
【0045】
レグ14は、鋼管杭80に連結される鋼管部材であり、その内径は、連結される鋼管杭80の外径よりも大きくなっている。ジャケット12を現場水域で据え付ける際には、鋼管杭80の上端部に、レグ14の下端部を被せるように配置し、鋼管杭80の上端部の外周面とレグ14の下端部の内周面との間にグラウト(図示せず)を充填して一体化する。
【0046】
本第1実施形態に係るジャケット構造物10では、レグ14は、その長手方向が鉛直方向になるように配置されているが、本発明に係るジャケット構造物では、レグを、その長手方向が鉛直方向になるように配置することが必須なわけではなく、現場の状況や設計条件等に応じて、その長手方向が鉛直方向に対して傾くように配置してもよい。その場合、対応する鋼管杭の打設方向も、鉛直方向に対して傾けて配置したレグの方向に合わせることになる。
【0047】
上部桁16は、レグ14の上端部同士を接続する桁部材であり、断面H形の鋼材である。上部桁16は、両端部がレグ14の上端部に連結されており、長手方向が水平方向となるように配置されている。レグ14と上部桁16との取り合い部には、
図2に示すように、上部桁16の上フランジ16Aの高さと同一高さ位置に連結フランジ14Aが設けられていて、連結フランジ14Aは上フランジ16Aの端部およびレグ14の外周面に溶接で取り付けられており、また、上部桁16の下フランジ16Bの高さと同一高さ位置に連結フランジ14Bが設けられていて、連結フランジ14Bは下フランジ16Bの端部およびレグ14の外周面に溶接で取り付けられており、レグ14と上部桁16との間の応力伝達がスムーズになされるようになっている。上部桁16の上フランジ16Aの上面の高さ位置および連結フランジ14Aの上面の高さ位置は、レグ14の上端の高さ位置と略同一である。
【0048】
上部桁16の上フランジ16Aには、上部鋼板20が取り付けられており、上部桁16は、ジャケット12の骨格を形作る役割だけでなく、上部鋼板20を支持して、合成床版30を支持する役割も有する。
【0049】
また、上部桁16の上フランジ16Aの上面には、スタッドジベル24が取り付けられており、合成床版30のコンクリート34は、スタッドジベル24を介して上部桁16の上フランジ16Aと強力に一体化する。スタッドジベル24は、
図2に示すように、上部桁16の上フランジ16Aの上面だけでなく、連結フランジ14Aの上面およびレグ蓋14Cの上面にも取り付けられている。ただし、スタッドジベル24の配置状態や本数は設計条件等に応じて適宜に変更してもよい。
【0050】
なお、本第1実施形態に係るジャケット構造物10の外周縁部には、片持ち上部桁40に支持された外枠上部桁42が設けられていて、合成床版30がレグ14よりも外側に張り出して設けられており、船舶がジャケット構造物10に接岸しやすくなっている。
図2に示すように、片持ち上部桁40および外枠上部桁42の上面にもスタッドジベル24が設けられている。
【0051】
上部鋼板20は、合成床版30の底鋼板となる部材であり、その厚さは標準的には6~8mmであるが、使用可能な鋼板厚の範囲がこの範囲に限定されるわけではなく、例えば6~12mmの厚さの鋼板でも使用可能であり、また、それ以上の厚さの鋼板も使用可能である。
【0052】
上部鋼板20は、上部桁16同士の間の空間を上方から覆う一方、レグ14の内空部は上方から覆わないように上部桁16の上端部に取り付けられている。このため、先行打設した鋼管杭80にジャケット12を取り付けた後に、残りの鋼管杭80を、レグ14に挿通させて打設することもでき、また、レグ14の内周面と鋼管杭80の外周面との間にグラウト(図示せず)を上方から充填することも可能である。ただし、合成床版30のコンクリート34を打設する前に、レグ14の上端にレグ蓋14Cを取り付ける。レグ14の上端へのレグ蓋14Cの取り付けに際しては、通常、レグ14の上端の内周面にレグ蓋14Cの外周部を溶接で取り付ける。
【0053】
上部鋼板20の上面には、断面T形の鋼材であるT形補強鋼材22が取り付けられていて、上部鋼板20を補強しており、また、上部鋼板20の端部は上部桁16の上フランジ16Aに取り付けられているので、T形補強鋼材22の上に敷き鋼板(図示せず)を敷くことで、コンクリート34を打設して合成床版30を形成する前であっても、その敷き鋼板の上に、クレーン車、杭打ち用クレーン、コンクリートミキサー車、コンクリートポンプ車等の車両を、通行や載置させることができ、陸上作業と同等レベルの作業性を確保することができる。
【0054】
なお、実施例の上部鋼板20は、別部材であるT形補強鋼材22が取り付けられてクレーン車等の車両を通行、載置できるような強度を確保する形としているが、上部鋼板20にT形補強鋼材22のような補強部と同様な形状が一体形成されているものであってもよい。また、上部鋼板20に対する補強効果が得られるのであれば、補強部の形状は特には限定されず、補強部の形状はT形の他、例えば波形状や凹凸形状であってもよい。
【0055】
また、上部鋼板20の厚さを厚くすることで、上部鋼板20の上面にT形補強鋼材22のような補強部を設けなくても、クレーン車、杭打ち用クレーン、コンクリートミキサー車、コンクリートポンプ車等の車両を下方から支持して、通行や載置させることができ、陸上作業と同等レベルの作業性を確保することも可能である。
【0056】
上部鋼板20の端部にはハンチ部20Aが形成されており、このハンチ部20Aの端部が上部桁16の上フランジ16Aへ取り付けられている。
【0057】
上部桁16の上フランジ16Aへの上部鋼板20の取り付け態様は特には限定されず、例えば
図4の鉛直断面図に示すように、上部鋼板20の端部下面を上部桁16の上フランジ16Aの上面へ溶接(例えば、隅肉溶接20B)で取り付けてもよく、また、例えば
図5の鉛直断面図に示すように、上部桁16の上フランジ16Aの上面へ溶接されたネジスタッド16Cに、上部鋼板20の端部の図示せぬ貫通孔を挿通させてナット16Dで締め込んで取り付けてもよく、また、例えば
図6の鉛直断面図に示すように、上部桁16の上フランジ16Aの図示せぬ貫通孔および上部鋼板20の端部の図示せぬ貫通孔にボルト16Eを挿通させてナット16Fで締め込んで取り付けてもよい。また、例えば
図7の鉛直断面図に示すように、上部桁16の上フランジ16Aの側端部に上部鋼板20の端部側面を溶接(例えば、突合せ溶接20C)で取り付けてもよい。ただし、
図5、6に示す連結態様のように、機械的な連結の場合には、上部鋼板20の端部の下面と上部桁16の上フランジ16Aの上面との間に防水シール16Gを設けて、合成床版30のコンクリート34の打設時に、セメント等が隙間から漏れ出ないようにする。
【0058】
上部鋼板20は、上部桁16の上フランジ16Aへ取り付けられているので、ジャケット12を設置現場水域に運搬する際に揺動等を受けても、その位置がずれることはない。
【0059】
図4~7に示すように、上部桁16の上フランジ16Aの幅方向中央部で、かつ、T形補強鋼材22のウェブ22Aの真下の位置に、ネジスタッド16A1が溶接で取り付けられている。ネジスタッド16A1の上端部には高ナット16A2が取り付けられており、高ナット16A2の上端面は、T形補強鋼材22のウェブ22Aの下端面に溶接で取り付けられた補強プレート22A1に当接している。補強プレート22A1は、T形補強鋼材22の部位のうち、上部桁16の上方に位置する部位を補強する。
【0060】
合成床版30のT形補強鋼材22およびコンクリート34の自重は、ネジスタッド16A1および高ナット16A2を介して、上部桁16の上フランジ16Aの上面に伝達される。高ナット16A2の位置を調整して、高ナット16A2の補強プレート22A1への当接状態を調節し、合成床版30のT形補強鋼材22およびコンクリート34の自重が、ネジスタッド16A1および高ナット16A2を介して、上部桁16の上フランジ16Aの上面に適切に伝達されるようにする。
【0061】
合成床版30は、ジャケット構造物10の上部構造であり、ジャケット構造物10を桟橋構造物として供用する際には、人荷や車両等の直接的な足場となる部位である。
【0062】
合成床版30は、上部鋼板20と、T形補強鋼材22と、スタッドジベル24と、鉄筋32(主鉄筋32Aおよび配力筋32B)と、コンクリート34と、を有してなる。上部鋼板20は、合成床版としての観点から見ると、合成床版30の底鋼板ということになる。
【0063】
T形補強鋼材22は、ウェブ22Aおよび上フランジ22Bを有してなる断面T形の鋼材であり、上部鋼板20を補強する。また、T形補強鋼材22の上フランジ22Bの上面には、上フランジ22Bの幅方向に直線状の突起22B1(
図3参照)が設けられており、コンクリート34が打設されて合成床版30が形成された暁には、コンクリート34との間で強力なずれ止め効果を発揮し、T形補強鋼材22は、合成床版30の鋼材として、荷重を負担する。
【0064】
鉄筋32(主鉄筋32Aおよび配力筋32B)は、ジャケット12を現場水域で鋼管杭80に据え付けてから、上部鋼板20の上方の所定の位置に設置して、コンクリート34を打設することが通常であるが、現場搬入前に工場等で予め設置可能であれば、そのようにしてもよい。
図3に示すように、主鉄筋32AはT形補強鋼材22と平行に配置された鉄筋であり、配力筋32Bは、T形補強鋼材22と直交する方向に配置された鉄筋である。
【0065】
本第1実施形態に係るジャケット構造物10では、上部構造に合成床版30を備えている。合成床版30は、下面に、コンクリート34と一体化した上部鋼板20を備えているだけでなく、上部鋼板20の上面にはT形補強鋼材22を備えており、大きな荷重負担能力を発揮する。また、前述したようにT形補強鋼材22の上フランジ22Bの上面には幅方向に直線状の突起22B1が設けられており、コンクリート34との間で強力なずれ止め効果を発揮し、合成床版30はその機能を安定的に発揮する。このため、上部構造として合成床版30を備えるジャケット構造物10においては、合成床版30を下方から支持する上部桁16同士の間の間隔を広くすることができ、上部鋼板20の厚さ、T形補強鋼材22のウェブ22Aおよび上フランジ22Bの厚さならびにコンクリート34の厚さ等を調整することにより、上部桁16同士の間の間隔を、具体的には4m以上12m以下とすることもできる。
【0066】
そのため、本第1実施形態に係るジャケット構造物10では、ジャケット12の上部桁16の数は少なくなっており、その結果、ジャケット12の組み立て工数を減らすことができ、また、防食上の弱点となるコバ面も少なくすることができる。
【0067】
(1-2)施工手順
本発明の第1実施形態に係るジャケット構造物10を構築する施工手順を、図面を参照しつつ、ステップに分けて説明する。
【0068】
図8~
図14は、第1実施形態に係るジャケット構造物10を構築する際の代表的な工程を模式的に示す図である。
【0069】
<ステップS1>
図8に示すように、打設する鋼管杭80のうち、先行して打設する先行鋼管杭80Aを地盤200に先行打設する。この打設では、鋼管杭の一般的な打設方法を用いればよい。
【0070】
<ステップS2>
工場で作製したジャケット12を台船102に載せ、
図9に示すように、タグボート104で設置現場の水域まで曳航する。
【0071】
<ステップS3>
図10に示すように、起重機船106で台船102(
図9参照)からジャケット12を吊り上げ、先行打設した先行鋼管杭80Aに、ジャケット12のレグ14を被せるように、ジャケット12を配置する。そして、先行鋼管杭80Aの外周面とレグ14の内周面との間にグラウト(図示せず)を充填して、先行鋼管杭80Aとレグ14とを一体化する。
【0072】
先行鋼管杭80Aへのジャケット12の据え付けが完了すれば、その後の工程では、起重機船106を含め、作業船の使用は不要となる。
【0073】
<ステップS4>
ステップS3で先行鋼管杭80Aに据え付けたジャケット12のT形補強鋼材22の上に敷き鋼板(図示せず)を敷き、その上に杭打ち機108を載置する。そして、
図11に示すように、後打ち鋼管杭80Bを所定のレグ14内に差し込んだ状態で、杭打ち機108で後打ち鋼管杭80Bを地盤200に打設する。そして、打設完了後に、後打ち鋼管杭80Bの外周面とレグ14の内周面との間にグラウト(図示せず)を充填して、後打ち鋼管杭80Bとレグ14とを一体化する。
【0074】
ステップS3、S4を経て、鋼管杭80とレグ14の一体化が完了すれば、ジャケット12の鋼管杭80への据え付けは完了する。
【0075】
<ステップS5>
レグ14の上方の開口を、レグ蓋14Cを設置して塞ぐとともに、
図12に示すように、クレーン110を用いて、鉄筋32(主鉄筋32Aおよび配力筋32B)を所定の位置に配置する。ステップS4と同様、ジャケット12のT形補強鋼材22の上に敷き鋼板(図示せず)を敷き、その上にクレーン110を載置して作業することも可能である。
【0076】
<ステップS6>
ステップS5でレグ蓋14Cの設置および鉄筋32(主鉄筋32Aおよび配力筋32B)の所定位置への配置を終えた後、
図13に示すように、コンクリートミキサー車112およびコンクリートポンプ車114を用いてコンクリート34を打設する。ステップS4およびS5と同様、ジャケット12のT形補強鋼材22の上に敷き鋼板(図示せず)を敷き、その上にコンクリートミキサー車112およびコンクリートポンプ車114を載置することも可能である。
【0077】
<ステップS7>
ステップS6で打設したコンクリート34を必要期間養生して、コンクリート34が必要な強度を発現すれば合成床版30の形成が完了し、
図14に示すように、本第1実施形態に係るジャケット構造物10は完成する。その後は、供用する態様に応じて、合成床版30の上面に舗装等を施してもよく、また、例えば、岸壁300との間を架け渡す連絡用床版90を設けてもよい。
【0078】
(1-3)変形例
第1実施形態に係るジャケット構造物10では、
図2に示すように、上部桁16の上フランジ16Aの上面に設けたスタッドジベル24は上フランジ16Aの幅方向に2本であったが、スタッドジベル24の上フランジ16Aの幅方向の本数は2本に限定されるわけではなく、設計条件等に応じて適宜に定めてよく、上フランジ16Aの幅方向に1本でも、あるいは3本以上であってもよい。
【0079】
また、第1実施形態に係るジャケット構造物10では、
図2に示すように、上部鋼板20の端部のハンチ部20Aにスタッドジベルを設けていなかったが、ハンチ部20Aにスタッドジベルを設けてもよく、また、ハンチ部20A以外の上部鋼板20の部位にスタッドジベルを設けてもよい。
【0080】
図15は、第1実施形態に係るジャケット構造物10の第1変形例に係るジャケット構造物50ならびにジャケット構造物50が備えるジャケット50Aおよび合成床版50Bを示す斜視図であるが、上部桁16の上フランジの幅方向にスタッドジベル24を6本設け、かつ、上部鋼板20の端部のハンチ部20Aにもスタッドジベル24Aを設けている。
【0081】
図16は、第1実施形態に係るジャケット構造物10の第2変形例に係るジャケット構造物52を示す平面図であるが、上部桁16の上フランジ上にスタッドジベル24を1列状に設け、かつ、上部鋼板20の端部のハンチ部20Aにもスタッドジベル24Bを設けている。なお、
図16では、上部鋼板20におけるハンチ部20Aと水平部位との境目20Xを2点鎖線で記載しており、また、コンクリート34の記載は省略している。
【0082】
(2)第2実施形態
本発明の第2実施形態に係るジャケット構造物60は、所定の部位に重防食塗装62を施すとともに、所定の部位に有機ジンクリッチプライマー64を塗布した実施形態である。これら以外の点は、第1実施形態と同様であるので、第1実施形態の説明をもって、第2実施形態に係るジャケット構造物60の説明に替えることとする。
【0083】
図17は、第2実施形態に係るジャケット構造物60の上部桁16およびその近傍の部位を模式的に示す鉛直断面図である。
【0084】
図17に示すように、第2実施形態に係るジャケット構造物60では、上部桁16の部位のうち上フランジ16Aの上面以外の部位の外面および上部鋼板20の下面に、重防食塗装62を設けている。また、上部桁16の上フランジ16Aの上面、上部鋼板20の上面、T形補強鋼材22の外面、およびスタッドジベル24の外面には、有機ジンクリッチプライマー64を塗布している。
【0085】
重防食塗装62は、ジャケット構造物60を海洋環境に置いても鋼材の腐食を防止することが可能な防食塗装である。有機ジンクリッチプライマー64は、コンクリート34に覆われる鋼材の部位(上部桁16の上フランジ16Aの上面、上部鋼板20の上面、T形補強鋼材22の外面、およびスタッドジベル24の外面)の短期間での急速な腐食を防ぐ役割を果たす。
【0086】
図18は、上部鋼板20の下面に設けた重防食塗装62の構成を模式的に示す図である。
【0087】
上部鋼板20の下面に重防食塗装62を設ける際には、まず、汚れ等を落とすとともに適度な表面粗さを設ける素地調整を行う。具体的には例えば、ブラスト処理(SIS Sa2.5以上)を行って素地調整を行う。
【0088】
そして、その後、第1層として、例えば有機ジンクリッチプライマー64を20μmの厚さで塗布し、第2層として、例えば超厚膜形エポキシ樹脂系被覆材料66を2500μmの厚さで設けて、重防食塗装62を設ける。
【0089】
なお、第2実施形態に係るジャケット構造物60で用いた重防食塗装62(有機ジンクリッチプライマー64および超厚膜形エポキシ樹脂系被覆材料66)、ならびに有機ジンクリッチプライマー64は、必要な性能を確保できるのであれば、適宜に厚さを変更してもよく、また、材料の種類を変更してもよい。
【0090】
(3)補足
以上説明した第1および第2実施形態に係るジャケット構造物10、60における合成床版30は、T形補強鋼材22を備える構成であったが、本発明に使用可能な合成床版はこの構成に限定されるわけではなく、本発明の課題を解決できる合成床版であれば、異なる構成の合成床版も使用可能である。
【0091】
また、上部桁16の上フランジ16Aへの上部鋼板20の取り付け態様の具体例として、
図4~7に示す構成を取り上げたが、上部桁16の上フランジ16Aへの上部鋼板20の取り付け態様は、これらに限定されるわけではなく、例えば
図19に示す取り付け態様でもよい。
【0092】
この取り付け態様では、上部桁16の上フランジ16Aの上面へ溶接されたネジスタッド16Hに、押さえ金具16Jの図示せぬ貫通孔を挿通させてナット16Iで締め込んで、押さえ金具16Jによって上部鋼板20の端部を上方から押さえ込んで取り付けている。このため、
図19に示す取り付け態様では、上部鋼板20の端部に貫通孔を設けることや溶接を施すことは不要である。
【0093】
上部鋼板20の端部の下面と上部桁16の上フランジ16Aの上面との間には防水シール16Kを設けており、合成床版30のコンクリート34の打設時に、セメント等が隙間から漏れ出ないようにしている。
【0094】
また、押さえ金具16Jの下面と上部桁16の上フランジ16Aの上面との間にはフィラープレート16Lを設けており、押さえ金具16Jの下面が上部桁16の上フランジ16Aの上面と平行になるように調整できるようにしているため、上部鋼板20の端部を上方から安定して押さえ込むことができる。
【符号の説明】
【0095】
10、50、52、60…ジャケット構造物
12、50A…ジャケット
14…レグ
14A、14B…連結フランジ
14C…レグ蓋
16…上部桁
16A…上フランジ
16A1…ネジスタッド
16A2…高ナット
16B…下フランジ
16C、16H…ネジスタッド
16D、16F、16I…ナット
16E…ボルト
16G、16K…防水シール
16J…押さえ金具
16L…フィラープレート
18…連結鋼材
20…上部鋼板
20A…ハンチ部
20B…隅肉溶接
20C…突合せ溶接
20X…境目
22…T形補強鋼材
22A…ウェブ
22A1…補強プレート
22B…上フランジ
22B1…直線状の突起
24、24A、24B…スタッドジベル
30、50B…合成床版
32…鉄筋
32A…主鉄筋
32B…配力筋
34…コンクリート
40…片持ち上部桁
42…外枠上部桁
62…重防食塗装
64…有機ジンクリッチプライマー
66…超厚膜形エポキシ樹脂系被覆材料
80…鋼管杭
80A…先行鋼管杭
80B…後打ち鋼管杭
90…連絡用床版
100…水域
102…台船
104…タグボート
106…起重機船
108…杭打ち機
110…クレーン
112…コンクリートミキサー車
114…コンクリートポンプ車
200…地盤
300…岸壁