(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】細線の指標算出方法、光ケーブルの品質評価方法、および光ケーブル
(51)【国際特許分類】
G01B 15/04 20060101AFI20240312BHJP
G02B 6/44 20060101ALI20240312BHJP
G01N 23/046 20180101ALI20240312BHJP
【FI】
G01B15/04 H
G02B6/44 351
G01N23/046
(21)【出願番号】P 2023576091
(86)(22)【出願日】2023-05-15
(86)【国際出願番号】 JP2023018057
【審査請求日】2023-12-21
(31)【優先権主張番号】P 2022089834
(32)【優先日】2022-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】星名 豊
(72)【発明者】
【氏名】塩崎 学
【審査官】信田 昌男
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-205802(JP,A)
【文献】特公平7-78570(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B15/04
G02B6/44
G01N23/046
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の細線を有するケーブルの長手方向に垂直な複数の断面のX線画像を得るステップと、
前記複数の断面のX線画像の各々から、前記複数の細線の各々の中心位置を求めるステップと、
各細線の中心位置に基づいて、前記各細線の曲がりを表わす指標を求めるステップと、を備えた細線の指標算出方法。
【請求項2】
前記各細線の曲がりを表わす指標に基づいて、前記複数の細線の全体としての曲がりを表わす指標を求めるステップをさらに備えた、請求項1に記載の細線の指標算出方法。
【請求項3】
前記各細線の曲がりを表わす指標を求めるステップは、
前複数の断面における各細線の中心位置を連結することによって、前記各細線の軌跡を求め、前記軌跡に基づいて、前記各細線の局所的な曲率半径を算出するステップを含む、請求項2に記載の細線の指標算出方法。
【請求項4】
前記複数の細線の全体としての曲がりを表わす指標を求めるステップは、
前記各細線の複数個の局所的な曲率半径を前記複数の細線について算出し、算出された複数個の前記局所的な曲率半径の平均値、標準偏差、最小値および最大値のうちのいずれか1つ、あるいはいずれか2つ以上の値の重み付き加減算値、または算出された複数個の前記局所的な曲率半径の逆数である局所的な曲率の平均値、標準偏差、最小値および最大値のうちのいずれか1つ、あるいはいずれか2つ以上の値の重み付き加減算値を前記複数の細線の全体としての曲がりを表わす指標として算出するステップを含む、請求項3に記載の細線の指標算出方法。
【請求項5】
前記各細線の曲がりを表わす指標を求めるステップは、
前記複数の断面における各細線の中心位置を連結することによって、前記各細線の軌跡を求め、前記軌跡に基づいて、前記各細線の余長率を算出するステップを含む、請求項2に記載のケーブルの指標算出方法。
【請求項6】
前記複数の細線の全体としての曲がりを表わす指標を求めるステップは、
前記各細線の余長率を前記複数の細線について算出し、算出された複数の前記余長率の平均値、標準偏差、最小値および最大値のうちのいずれか1つ、あるいはいずれか2つ以上の値の重み付き加減算値を前記複数の細線の全体としての曲がりを表わす指標として算出するステップを含む、請求項5に記載の細線の指標算出方法。
【請求項7】
複数の細線を有するケーブルの長手方向に垂直な複数の断面のX線画像を得るステップと、
前記複数の断面のX線画像の各々から、前記複数の細線の各々の中心位置を求めるステップと、
各細線の中心位置に基づいて、前記複数の細線の全体としての曲がりを表わす指標を求めるステップとを備えた、細線の指標算出方法。
【請求項8】
各細線の中心位置に基づいて、前記複数の細線の全体としての曲がりを表わす指標を求めるステップは、
各X線画像を分割した複数のブロックの各々に含まれる前記細線の数あるいは線密度を算出し、前記複数のブロックにおける前記細線の数あるいは線密度の分散値を算出し、複数のX線画像における前記細線の数あるいは線密度の分散値の平均値、標準偏差、最小値および最大値のうちのいずれか1つ、あるいはいずれか2つ以上の値の重み付き加減算値を前記複数の細線の全体としての曲がりを表わす指標として算出するステップを含む、請求項7に記載の細線の指標算出方法。
【請求項9】
前記複数の細線の各々の中心位置を求めるステップは、
前記X線画像を2値化して、第1の画素値または第2の画素値の複数の画素からなる第1の2値化画像を生成するステップと、
前記第1の2値化画像の第1の画素値の画素が連続している各領域を検出するステップと、
前記各領域の各画素について、第2の画素値を有する画素までの最短距離を算出するステップと、
前記各領域について、前記最短距離を画素値とする距離変換画像を生成するステップと、
前記各領域について、前記距離変換画像を閾値に基づいて2値化して、第1の画素値または第2の画素値の複数の画素からなる2値化距離変換画像を生成するステップと、
前記各領域について、前記2値化距離変換画像に含まれる第1の画素値を有する画素が連続している部分領域の数をカウント値として求めるステップと、
前記各領域について、前記閾値を初期値から前記カウント値が減少に変化するまで順次増加させることによって、複数のカウント値を取得し、前記複数のカウント値のうち最大のカウント値となるときの前記閾値の割合が基準値以上の場合に、前記カウント値が最大のカウント値となるときの複数の前記閾値のいずれかによって生成された前記2値化距離変換画像に含まれる前記部分領域におけるいずれかの画素の位置を前記細線の中心位置として検出するステップと、を含む、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の細線の指標算出方法。
【請求項10】
複数の光ファイバを有する光ケーブルの長手方向に垂直な複数の断面のX線画像を得るステップと、
前記複数の断面のX線画像の各々から、前記複数の光ファイバの各々の中心位置を求めるステップと、
各細線の中心位置に基づいて、前記複数の光ファイバの全体としての曲がりを表わす指標を求めるステップと、
前記指標と、基準値との比較に基づいて、前記光ケーブルが品質基準に適合するか否かを判定するステップと、を備えた、光ケーブルの品質評価方法。
【請求項11】
複数の光ファイバを有する光ケーブルの長手方向に垂直な複数の断面のX線画像を得るステップは、
-40℃の環境下に置かれた前記光ケーブルの前記複数の断面の前記X線画像を得るステップを含み、
各光ファイバの中心位置に基づいて、前記複数の光ファイバの全体としての曲がりを表わす指標を求めるステップは、
前記複数の断面における各光ファイバの中心位置を連結することによって、前記各光ファイバの軌跡を求め、前記軌跡に基づいて前記各光ファイバの複数個の局所的な曲率半径を前記複数の光ファイバについて算出し、算出された複数の前記局所的な曲率半径の逆数である局所的な曲率の平均値と、標準偏差の3倍との和の逆数を前記複数の光ファイバの全体としての曲がりを表わす指標として算出するステップを含み、
前記判定するステップは、
前記指標が、20mm以上の場合に、前記光ケーブルが前記品質基準に適合すると判定するステップを含む、請求項10に記載の光ケーブルの品質評価方法。
【請求項12】
前記複数の光ファイバの各々の中心位置を求めるステップは、
前記X線画像を2値化して、第1の画素値または第2の画素値の複数の画素からなる第1の2値化画像を生成するステップと、
前記第1の2値化画像の第1の画素値の画素が連続している各領域を検出するステップと、
前記各領域の各画素について、第2の画素値を有する画素までの最短距離を算出するステップと、
前記各領域について、前記最短距離を画素値とする距離変換画像を生成するステップと、
前記各領域について、前記距離変換画像を閾値に基づいて2値化して、第1の画素値または第2の画素値の複数の画素からなる2値化距離変換画像を生成するステップと、
前記各領域について、前記2値化距離変換画像に含まれる第1の画素値を有する画素が連続している部分領域の数をカウント値として求めるステップと、
前記各領域について、前記閾値を初期値から前記カウント値が減少に変化するまで順次増加させることによって、複数のカウント値を取得し、前記複数のカウント値のうち最大のカウント値となるときの前記閾値の割合が基準値以上の場合に、前記カウント値が最大のカウント値となるときの複数の前記閾値のいずれかによって生成された前記2値化距離変換画像に含まれる前記部分領域におけるいずれかの画素の位置を前記光ファイバの中心位置として検出するステップと、を含む、請求項10または請求項11に記載の光ケーブルの品質評価方法。
【請求項13】
複数の光ファイバを含む光ケーブルであって、
-40℃における、前記複数の光ファイバの局所的な曲率の平均値と、前記局所的な曲率の標準偏差の3倍との和の逆数が20mm以上である、光ケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、細線の指標算出方法、光ケーブルの品質評価方法、および光ケーブルに関する。本出願は、2022年6月1日に出願した日本特許出願である特願2022-089834号に基づく優先権を主張する。当該日本特許出願に記載された全ての記載内容は、参照によって本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
光ケーブルは多数(典型的には数百本~数千本)の光ファイバが束ねられた構成である。-20℃などの低温時において、光ケーブルの伝送ロスが大きくなることが知られている(たとえば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
本開示の細線の指標算出方法は、光ケーブルに代表される、複数の細線を有するケーブルの長手方向に垂直な複数の断面のX線画像を得るステップと、複数の断面のX線画像の各々から、複数の細線の各々の中心位置を求めるステップと、各細線の中心位置に基づいて、各細線の曲がりを表わす指標を求めるステップとを備える。
【0005】
本開示の細線の指標算出方法は、光ケーブルに代表される、複数の細線を有するケーブルの長手方向に垂直な複数の断面のX線画像を得るステップと、複数の断面のX線画像の各々から、複数の細線の各々の中心位置を求めるステップと、各細線の中心位置に基づいて、複数の細線の全体としての曲がりを表わす指標を求めるステップとを備える。
【0006】
本開示の光ケーブルの品質評価方法は、複数の光ファイバを有する光ケーブルの長手方向に垂直な複数の断面のX線画像を得るステップと、複数の断面のX線画像の各々から、複数の光ファイバの各々の中心位置を求めるステップと、各細線の中心位置に基づいて、複数の光ファイバの全体としての曲がりを表わす指標を求めるステップと、指標と、基準値との比較に基づいて、光ケーブルが品質基準に適合するか否かを判定するステップとを備える。
【0007】
本開示の光ケーブルは、複数の光ファイバを含む光ケーブルであって、-40℃における、複数の光ファイバの局所的な曲率の平均値と、局所的な曲率の標準偏差の3倍との和の逆数が20mm以上である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1の実施形態の光ケーブル品質評価システム300の構成を表わす図である。
【
図2】
図2は、評価装置302の構成を表わす図である。
【
図3】
図3は、多数の細線が束になった試料の断面のX線画像60(i)の例を表わす図である。
【
図4】
図4は、光ファイバの断面の領域、および光ファイバの断面の領域の中心位置が検出された例を表わす図である。
【
図5】
図5は、光ファイバの断面の中心位置の連結の例を表わす図である。
【
図6】
図6は、各光ファイバの軌跡を表わすデータの例を示す図である。
【
図7】
図7は、1つの光ファイバの曲率半径の算出の例を説明するための図である。
【
図8】
図8は、第1の実施形態における光ファイバの指標を算出する手順を表わすフローチャートである。
【
図9】
図9は、1つの光ファイバの余長率の算出の例を説明するための図である。
【
図11】
図11は、第3の実施形態における光ファイバの指標を算出する手順を表わすフローチャートである。
【
図12】
図12は、第4の実施形態の評価装置302Aの構成を表わす図である。
【
図13】
図13は、光ケーブル400の品質評価方法の手順を表わすフローチャートである。
【
図14】
図14は、X線画像を2値化した例を表わす図である。
【
図15】
図15は、2値化画像を距離変換して得られる距離変換画像を低い閾値αで2値化した例を表わす図である。
【
図16】
図16は、2値化画像を距離変換して得られる距離変換画像を高い閾値βで2値化した例を表わす図である。
【
図17A】
図17Aは、閾値と、その閾値によって生成される部分領域の数との関係の一例を表わす図である。
【
図17B】
図17Bは、閾値が0.07のときに生成される部分領域を表わす図である。
【
図17C】
図17Cは、閾値が0.08のときに生成される部分領域を表わす図である。
【
図17D】
図17Dは、閾値が0.15のときに生成される部分領域を表わす図である。
【
図17E】
図17Eは、閾値が0.16のときに生成される部分領域を表わす図である。
【
図17F】
図17Fは、閾値が0.25のときに生成される部分領域を表わす図である。
【
図17G】
図17Gは、閾値が0.26のときに生成される部分領域を表わす図である。
【
図17H】
図17Hは、閾値が0.81のときに生成される部分領域を表わす図である。
【
図17I】
図17Iは、閾値が0.82のときに生成される部分領域を表わす図である。
【
図18A】
図18Aは、閾値と、その閾値によって生成される部分領域の数との関係の一例を表わす図である。
【
図18B】
図18Bは、閾値が0.39のときに生成される部分領域を表わす図である。
【
図18C】
図18Cは、閾値が0.40のときに生成される部分領域を表わす図である。
【
図18D】
図18Dは、閾値が0.65のときに生成される部分領域を表わす図である。
【
図18E】
図18Eは、閾値が0.66のときに生成される部分領域を表わす図である。
【
図18F】
図18Fは、閾値が0.88のときに生成される部分領域を表わす図である。
【
図18G】
図18Gは、閾値が0.89のときに生成される部分領域を表わす図である。
【
図19】
図19は、第5の実施形態の画像処理部304の構成を表わす図である。
【
図20】
図20は、画像処理部304の処理手順を表わすフローチャートである。
【
図23】
図23は、評価装置302の機能をソフトウェアを用いて実現する場合の評価装置302の構成を示す図である。
【
図25】
図25は、付記における試料を収容する付記の冷却容器の概略拡大断面図であるとともに、試料のX線画像の取得方法の一工程を示す概略拡大断面図である。
【
図26】
図26は、付記の冷却容器の、
図2に示される断面線III-IIIにおける概略拡大断面図である。
【
図27】
図27は、付記の室温より低い低温に冷却された試料のX線画像の取得方法のフローチャートを示す図である。
【
図28】
図28は、付記における試料のX線画像の一例を示す図である。
【
図29】
図29は、付記における参照試料の第1参照X線画像及び第2参照X線画像の取得方法の一工程を示す概略拡大断面図である。
【
図30】
図30は、付記における第1参照X線画像の一例を示す図である。
【
図31】
図31は、付記における第2参照X線画像の一例を示す図である。
【
図33】
図33は、付記のサーバ装置のハードウェア構成の一例を示す概略図である。
【
図34】
図34は、付記の端末装置のハードウェア構成の一例を示す概略図である。
【
図35】
図35は、付記のサーバ装置の機能的構成を説明する機能ブロック図である。
【
図36】
図36は、付記の学習用データセットのデータ構造を示す図である。
【
図37】
図37は、付記の学習部の処理の学習機能の詳細を説明するためのブロック図である。
【
図38】
図38は、付記における暫定補正X線画像の一例を示す図である。
【
図39】
図39は、付記の学習処理のフローチャートを示す図である。
【
図40】
図40は、付記の端末装置の機能的構成を説明する機能ブロック図である。
【
図41】
図41は、付記における試料の補正X線画像の一例を示す図である。
【
図42】
図42は、付記のX線画像処理方法のフローチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示が解決しようとする課題]
ケーブルを構成する光ファイバなどの細線個々の形状を検出して評価する手法が知られていない。よって、低温時において、光ファイバがどのような形状を有するかを知ることができない。
【0010】
それゆえに、本開示の目的は、光ファイバなどの細線個々の曲がり具合を評価するための指標を算出することができる細線の指標算出方法、そのような指標を用いた光ケーブルの品質評価方法、およびそのような指標が品質基準を満たす光ケーブルを提供することである。
【0011】
[本開示の効果]
本開示の細線の指標算出方法によれば、長手方向に垂直な複数の断面のX線画像を用いて多数の光ファイバなどの細線個々の曲がりを評価するための指標を算出することができる。
【0012】
本開示の光ケーブルの品質評価方法によれば、光ケーブル400が品質基準に適合するか否かを判定することができる。
【0013】
本開示の光ケーブルによれば、送信ロスが2dB/km以下となる品質基準に適合する。
【0014】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0015】
(1)本開示の細線の指標算出方法は、複数の細線を有するケーブルの長手方向に垂直な複数の断面のX線画像460(i)を得るステップと、複数の断面のX線画像460(1)~460(N)の各々から、複数の細線の各々の中心位置を求めるステップと、各細線の中心位置に基づいて、各細線の曲がりを表わす指標を求めるステップとを備える。これによって、長手方向に垂直な複数の断面のX線画像460(i)を用いて多数の光ファイバなどの細線個々の曲がりを評価するための指標を算出することができる。
【0016】
(2)上記(1)の細線の指標算出方法は、各細線の曲がりを表わす指標に基づいて、複数の細線の全体としての曲がりを表わす指標を求めるステップをさらに備える。これによって、複数の光ファイバなどの細線の全体としての曲がりを表わす指標を算出することができる。その結果、光ケーブルの品質を知ることができる。
【0017】
(3)上記(2)の指標算出方法において、各細線の曲がりを表わす指標を求めるステップは、複数の断面における各細線の中心位置を連結することによって、各細線の軌跡を求め、軌跡に基づいて、各細線の局所的な曲率半径を算出するステップを含む。これによって、局所的な曲率半径によって、光ファイバなどの細線の曲がりを評価するための指標を算出することができる。
【0018】
(4)上記(3)の指標算出方法において、複数の細線の全体としての曲がりを表わす指標を求めるステップは、各細線の複数個の局所的な曲率半径を複数の細線について算出し、算出された複数個の局所的な曲率半径の平均値、標準偏差、最小値および最大値のうちのいずれか1つ、あるいはいずれか2つ以上の値の重み付き加減算値、または算出された複数個の局所的な曲率半径の逆数である局所的な曲率の平均値、標準偏差、最小値および最大値のうちのいずれか1つ、あるいはいずれか2つ以上の値の重み付き加減算値を複数の細線の全体としての曲がりを表わす指標として算出するステップを含む。これによって、複数の光ファイバの局所的な曲率半径または曲率の統計量を用いて、複数の光ファイバの全体としての曲がりを表わす指標を算出することができる。
【0019】
(5)上記(2)の指標算出方法において、各細線の曲がりを表わす指標を求めるステップは、複数の断面における各細線の中心位置を連結することによって、各細線の軌跡を求め、軌跡に基づいて、各細線の余長率を算出するステップを含む。これによって、余長率によって、光ファイバなどの細線の曲がりを評価するための指標を算出することができる。
【0020】
(6)上記(5)の指標算出方法において、複数の細線の全体としての曲がりを表わす指標を求めるステップは、各細線の余長率を複数の細線について算出し、算出された複数の余長率の平均値、標準偏差、最小値および最大値のうちのいずれか1つ、あるいはいずれか2つ以上の値の重み付き加減算値を複数の細線の全体としての曲がりを表わす指標として算出するステップを含む。これによって、複数の光ファイバの余長率の統計量を用いて、複数の光ファイバの全体としての曲がりを表わす指標を算出することができる。
【0021】
(7)本開示の細線の指標算出方法は、複数の細線を有するケーブルの長手方向に垂直な複数の断面のX線画像460(1)~460(N)を得るステップと、複数の断面のX線画像460(1)~460(N)の各々から、複数の細線の各々の中心位置を求めるステップと、各細線の中心位置に基づいて、複数の細線の全体としての曲がりを表わす指標を求めるステップとを備える。これによって、長手方向に垂直な複数の断面のX線画像60(i)を用いて、複数の光ファイバなどの細線の全体としての曲がりを評価するための指標を算出することができる。
【0022】
(8)上記(7)の指標算出方法において、各細線の中心位置に基づいて、複数の細線の全体としての曲がりを表わす指標を求めるステップは、各X線画像460(i)を分割した複数のブロックの各々に含まれる細線の数あるいは線密度を算出し、複数のブロックにおける細線の数あるいは線密度の分散値を算出し、複数のX線画像460(1)~460(N)における細線の数あるいは線密度の分散値の平均値、標準偏差、最小値および最大値のうちのいずれか1つ、あるいはいずれか2つ以上の値の重み付き加減算値を複数の細線の全体としての曲がりを表わす指標として算出するステップを含む。これによって、X線画像の各ブロック内の光ファイバの数あるいは線密度の分散値の統計量を用いて、複数の光ファイバの全体としての曲がりを表わす指標を算出することができる。
【0023】
(9)上記(1)から(8)のいずれかの細線の指標算出方法において、複数の細線の各々の中心位置を求めるステップは、X線画像460(i)を2値化して、第1の画素値または第2の画素値の複数の画素からなる第1の2値化画像を生成するステップと、第1の2値化画像の第1の画素値の画素が連続している各領域を検出するステップと、各領域の各画素について、第2の画素値を有する画素までの最短距離を算出するステップと、各領域について、最短距離を画素値とする距離変換画像を生成するステップと、各領域について、距離変換画像を閾値THに基づいて2値化して、第1の画素値または第2の画素値の複数の画素からなる2値化距離変換画像を生成するステップと、各領域について、2値化距離変換画像に含まれる第1の画素値を有する画素が連続している部分領域の数をカウント値として求めるステップと、各領域について、閾値THを初期値からカウント値が減少に変化するまで順次増加させることによって、複数のカウント値を取得し、複数のカウント値のうち最大のカウント値となるときの閾値THの割合Rが基準値以上の場合に、カウント値が最大のカウント値となるときの複数の閾値THのいずれかによって生成された2値化距離変換画像に含まれる部分領域におけるいずれかの画素の位置を細線の中心位置として検出するステップとを含む。これによって、X線画像内の局所的な領域ごとに距離変換画像の2値化のための閾値を適切に設定することができる。
【0024】
(10)本開示の光ケーブル400の品質評価方法は、複数の光ファイバを有する光ケーブル400の長手方向に垂直な複数の断面のX線画像460(1)~460(N)を得るステップと、複数の断面のX線画像460(1)~460(N)の各々から、複数の光ファイバの各々の中心位置を求めるステップと、各細線の中心位置に基づいて、複数の光ファイバの全体としての曲がりを表わす指標を求めるステップと、指標と、基準値との比較に基づいて、光ケーブル400が品質基準に適合するか否かを判定するステップとを備える。これによって、光ケーブル400が品質基準に適合するか否かを判定することができる。
【0025】
(11)上記(10)の光ケーブル400の品質評価方法において、複数の光ファイバを有する光ケーブル400の長手方向に垂直な複数の断面のX線画像460(1)~460(N)を得るステップは、-40℃の環境下に置かれた光ケーブル400の複数断面のX線画像460(1)~460(N)を得るステップを含み、各光ファイバの中心位置に基づいて、複数の光ファイバの全体としての曲がりを表わす指標を求めるステップは、複数の断面における各光ファイバの中心位置を連結することによって、各光ファイバの軌跡を求め、軌跡に基づいて各光ファイバの複数個の局所的な曲率半径を複数の光ファイバについて算出し、算出された複数の曲率半径の逆数である局所的な曲率の平均値と、標準偏差の3倍との和の逆数を複数の光ファイバの全体としての曲がりを表わす指標として算出するステップを含み、判定するステップは、指標が、20mm以上の場合に、光ケーブル400が品質基準に適合すると判定するステップを含む。これによって、光ケーブル400の送信ロスが2dB/km以下となる品質基準を満たすか否かを判断することができる。
【0026】
(12)上記(10)または(11)の光ケーブル400の品質評価方法において、複数の光ファイバの各々の中心位置を求めるステップは、X線画像460(i)を2値化して、第1の画素値または第2の画素値の複数の画素からなる第1の2値化画像を生成するステップと、第1の2値化画像の第1の画素値の画素が連続している各領域を検出するステップと、各領域の各画素について、第2の画素値を有する画素までの最短距離を算出するステップと、各領域について、最短距離を画素値とする距離変換画像を生成するステップと、各領域について、距離変換画像を閾値THに基づいて2値化して、第1の画素値または第2の画素値の複数の画素からなる2値化距離変換画像を生成するステップと、各領域について、2値化距離変換画像に含まれる第1の画素値を有する画素が連続している部分領域の数をカウント値として求めるステップと、各領域について、閾値THを初期値からカウント値が減少に変化するまで順次増加させることによって、複数のカウント値を取得し、複数のカウント値のうち最大のカウント値となるときの閾値THの割合Rが基準値以上の場合に、カウント値が最大のカウント値となるときの複数の閾値THのいずれかによって生成された2値化距離変換画像に含まれる部分領域におけるいずれかの画素の位置を光ファイバの中心位置として検出するステップとを含む。これによって、X線画像内の局所的な領域ごとに距離変換画像の2値化のための閾値を適切に設定することができる。
【0027】
(13)本開示の複数の光ファイバを含む光ケーブル400では、-40℃における、複数の光ファイバの局所的な曲率の平均値と、局所的な曲率の標準偏差の3倍との和の逆数が20mm以上である。これによって、送信ロスが2dB/km以下となる光ケーブルを得ることができる。
【0028】
[本開示の実施形態の詳細]
次に、図面に基づいて本開示の実施形態の詳細について説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰返さない。以下に記載する実施形態の少なくとも一部の構成を任意に組み合わせてもよい。
【0029】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態の光ケーブル品質評価システム300の構成を表わす図である。光ケーブル品質評価システム300は、常温用X線装置301と、低温用X線装置1と、サーバ装置100と、端末装置200と、評価装置302、表示装置600とを備える。
【0030】
常温用X線装置301は、常温の環境下に置かれた光ケーブル400をX線CT撮影することによって得られる光ケーブル400の長手方向に垂直な複数の断面の常温時X線画像360(i)(i=1~N)を出力する。光ケーブル400の長手方向に長さαごとの断面の常温時X線画像360(i)が得られる。この断面X線画像群は試料全体のうち10~20cm程度の部分について取得されたものである。Nは数千程度である。
【0031】
低温用X線装置1は、低温の環境下において光ケーブル400をX線CT撮影することによって得られる光ケーブル400の長手方向に垂直な複数の断面の低温時X線画像60(i)(i=1~N)を出力する。光ケーブル400の長手方向に長さαごとの断面の低温時X線画像60(i)が得られる。
【0032】
低温用X線装置1は、X線撮像装置と、冷却容器とを備える。X線撮像装置は、X線を放射するX線源と、冷却容器を支持するステージと、冷却容器を通過したX線を検出するX線検出器とを含む。冷却容器は、中空容器と、中空容器を収容する断熱容器とを備える。中空容器は、管と、底板とを含む。管は、第1端と、第1端とは反対側の第2端とを含む。底板は、管の第1端を閉塞する。管と底板とによって規定される収容空間に、試料(光ケーブル400)と、試料を冷却する冷却液とが収容される。試料は、冷却液に浸漬され、かつ、管または底板の少なくとも一つによって支持される。管及び断熱容器は、低密度材料で形成されている。管の第2端に、収容空間に連通する第1開口が設けられている。断熱容器には、第1開口に連通する貫通孔が設けられている。冷却容器の詳細は、付記に記載する。
【0033】
サーバ装置100は、低温時X線画像から低温時補正X線画像を推論するための学習済みモデルを生成する。サーバ装置100は、参照画像IDと、複数の第1参照X線画像と、複数の第2参照X線画像とを取得する。サーバ装置100は、第1参照X線画像と第2参照X線画像とを用いた学習処理により、光ケーブル400の低温時X線画像を鮮明にする画像処理を行うための学習済モデルを生成する。生成された学習済モデルは、端末装置200に送信(配布)される。サーバ装置100の詳細は、付記に記載する。
【0034】
端末装置200は、学習済みモデルに基づいて、低温時X線画像60(i)から低温時補正X線画像66(i)を生成する。端末装置200は、室温より低い低温で第1の時間にわたって光ケーブル400を撮像することによって取得された光ケーブル400のX線画像を受け付けるX線画像受付部と、画像処理部とを備える。画像処理部は、光ケーブル400の低温時X線画像をニューラルネットワークに入力して、光ケーブル400の低温時X線画像より鮮明な光ケーブル400の低温時補正X線画像を生成する。ニューラルネットワークは、学習用データセットを用いた学習により生成される。学習用データセットは、参照光ケーブルを冷却することなく参照光ケーブルを第2の時間にわたって撮像することによって取得された第1参照X線画像と、参照光ケーブルを冷却することなく参照光ケーブルを第3の時間にわたって撮像することによって取得された第2参照X線画像とを含む。第2の時間は、第1の時間の0.5倍以上2.0倍以下である。第3の時間は、第1の時間より長く、かつ、第2の時間より長い。端末装置200の詳細は、付記に記載する。
【0035】
評価装置302は、低温時補正X線画像66(i)に基づいて、光ケーブル400の低温時の品質を評価する。評価装置302は、常温時X線画像360(i)に基づいて、光ケーブル400の常温時の品質を評価する。
【0036】
表示装置600は、評価装置302による評価結果を表示する。
図2は、評価装置302の構成を表わす図である。評価装置302は、入力部303と、画像処理部304と、指標算出部305とを備える。
【0037】
入力部303は、常温時X線画像360(i)、および低温時補正X線画像66(i)のいずれかを受けて、X線画像460(i)として画像処理部304に送る。
【0038】
画像処理部304は、X線画像460(i)に含まれる光ケーブル400の各光ファイバの断面の中心位置を検出する。画像処理部304は、複数の物体が含まれる画像から各物体の領域の中心の画素の位置を検出する公知の方法を用いて、各光ファイバの断面の領域の中心位置を検出する。公知の方法として、たとえば、画像を2値化した上で、距離変換処理し、距離変換後の画像の中の値が高い画素を各物体の中心位置とする方法などを用いることができる。
【0039】
図3は、多数の細線が束になった試料の断面のX線画像60(i)の例を表わす図である。一般に光ケーブルなどの、多数の細線が束になった試料の断面のX線画像は、
図3のように、多数の円形または楕円形の白点が互いに非常に接近あるいは複数が接触し一体化した部分を含むような画像となる。
図4は、光ファイバの断面の領域、および光ファイバの断面の領域の中心位置が検出された例を表わす図である。
【0040】
指標算出部305は、X線画像460(i)に含まれる光ケーブル400の各光ファイバの断面の中心位置に基づいて、光ケーブル400内の各光ファイバの曲がりを表わす指標を算出する。
【0041】
より具体的には、指標算出部305は、X線画像460(i)に含まれる各光ファイバの断面の中心位置を、X線画像460(i+1)に含まれる複数の光ファイバの断面の中心位置のうち最も近い位置に連結することによって、各光ファイバの軌跡を求める。本明細書において、光ファイバの軌跡を求めることは、光ファイバの実際の軌跡そのものを求めるのではなく、光ファイバの実際の軌跡を近似する連続する複数の線分の各々の両端の座標を求めることを意味する。
【0042】
図5は、光ファイバの断面の中心位置の連結の例を表わす図である。
図6は、各光ファイバの軌跡を表わすデータの例を示す図である。ここで、Zは、光ケーブルの断面の長手方向の位置を表わし、断面の間隔αが1なるように規格化している。(X、Y)は、光ファイバの断面の中心位置を表わす。Zは光ファイバの長手方向の位置を表わす。光ファイバの軌跡は、z=iにおける中心位置(X、Y)とz=i+1における中心位置(X、Y)とを結ぶ線分で近似される。i=1~N-1である。
【0043】
第1の実施形態では、指標算出部305は、各光ファイバの曲がりを表わす指標として、各光ファイバの局所的な曲率半径を算出する。
【0044】
図7は、1つの光ファイバの曲率半径の算出の例を説明するための図である。
指標算出部305は、連続する3つの点P
i-1、P
i、P
i+1によって、1つの局所的な曲率半径を算出することができる。軌跡を表わすデータは、N個の点を有するので、(N―2)個の局所的な曲率半径が得られる。指標算出部305は、軌跡を表わすデータを移動平均、またはフィルタなどによって平滑化した後、局所的な曲率半径を算出するものとしてもよい。また、指標算出部305は、4個以上の連続する点によって、1つの局所的な曲率半径を算出するものとしてもよい。
【0045】
第1の実施形態では、指標算出部305は、さらに、各光ファイバの曲がりを表わす指標に基づいて、複数の光ファイバの全体としての曲がりを表わす指標を算出する。
【0046】
指標算出部305は、光ケーブルが、M個の光ファイバを有する場合には、最大(N-2)×M個の局所的な曲率半径を算出する。NおよびMは通常数百または数千などの大きな値であるため、目的に応じて間引いた箇所の値を算出したり、(N-2)×M個の数値の何らかの平均値、最大値、最小値を用いるなどの方法をとってもよい。
【0047】
指標算出部305は、最大(N-2)×M個の局所的な曲率半径の平均値、標準偏差、最小値または最小値のうちのいずれか1つ、あるいはいずれか2つ以上の値の重み付き加減算値を複数の光ファイバの全体としての曲がりを表わす指標として算出することができる。
【0048】
あるいは、指標算出部305は、最大(N-2)×M個の局所的な曲率半径から最大(N-2)×M個の曲率を算出し、最大(N-2)×M個の局所的な曲率の平均値、標準偏差、最小値または最大値のうちのいずれか1つ、あるいはいずれか2つ以上の値の重み付き加減算値を複数の光ファイバの全体としての曲がりを表わす指標として算出することができる。
【0049】
たとえば、指標算出部305は、最大(N-2)×M個の局所的な曲率半径または曲率の平均値をME、最大(N-2)×M個の局所的な曲率半径または曲率の標準偏差をSDとしたときに、(ME±3SD)を複数の光ファイバの全体としての曲がりを表わす指標として算出してもよい。
【0050】
図8は、第1の実施形態における光ファイバの指標を算出する手順を表わすフローチャートである。
【0051】
ステップS101において、入力部303が、常温時X線画像360(i)、および低温時補正X線画像66(i)のいずれかを受けて、X線画像460(i)として画像処理部304に送る。
【0052】
ステップS102において、画像処理部304が、X線画像460(i)に含まれる光ケーブル400内の各光ファイバの中心位置を検出する。
【0053】
ステップS103において、指標算出部305は、X線画像460(i)に含まれる光ケーブル400の各ファイバの中心位置に基づいて、光ケーブル400内の各光ファイバの曲がりを表わす指標を求める。より、具体的には、指標算出部305は、X線画像460(i)に含まれる各光ファイバの断面の中心位置を、X線画像460(i+1)に含まれる複数の光ファイバの断面の中心位置のうち最も近い位置に連結することによって、各光ファイバの軌跡を求める。第1の実施形態では、指標算出部305は、各光ファイバの曲がりを表わす指標として、各光ファイバの局所的な曲率半径を算出する。
【0054】
ステップS104において、指標算出部305は、各光ファイバの曲がりを表わす指標に基づいて、複数の光ファイバの全体としての曲がりを表わす指標を求める。第1の実施形態では、指標算出部305は、光ケーブルが、M個の光ファイバを有する場合には、最大(N-2)×M個の局所的な曲率半径を算出する。指標算出部305は、最大(N-2)×M個の局所的な曲率半径の平均値、標準偏差、または最小値のうちのいずれか1つ、あるいはいずれか2つ以上の値の重み付き加算値を複数の光ファイバの全体としての曲がりを表わす指標として算出する。あるいは、指標算出部305は、最大(N-2)×M個の局所的な曲率半径から最大(N-2)×M個の局所的な曲率を算出し、最大(N-2)×M個の局所的な曲率の平均値、標準偏差、または最大値のうちのいずれか1つ、あるいはいずれか2つ以上の値の重み付き加算値を複数の光ファイバの全体としての曲がりを表わす指標として算出する。
【0055】
(第2の実施形態)
第2の実施形態では、指標算出部305は、各光ファイバの曲がりを表わす指標として、各光ファイバ余長率を算出する。
【0056】
図9は、1つの光ファイバの余長率の算出の例を説明するための図である。連続する2つの点P
i、P
i+1によって、P
i、P
i+1間の長さL
iが得られる。軌跡を表わすデータは、N個の点を有するので、(N―1)個の長さL
iを合計することによって、光ファイバの全長が得られる。光ファイバの全長を該当する領域のZ方向(長さ方向)の長さで除算することによって、光ファイバの余長率が得られる。
【0057】
第2の実施形態では、指標算出部305は、さらに、各光ファイバの曲がりを表わす指標に基づいて、複数の光ファイバの全体としての曲がりを表わす指標を算出する。
【0058】
指標算出部305は、光ケーブルが、M個の光ファイバを有する場合には、M個の余長率を算出する。指標算出部305は、M個の余長率の平均値、標準偏差、最小値または最大値のうちのいずれか1つ、あるいはいずれか2つ以上の値の重み付き加減算値を複数の光ファイバの全体としての曲がりを表わす指標として算出することができる。たとえば、指標算出部305は、M個の余長率の平均値をME、M個の余長率の標準偏差をSDとしたときに、(ME±3SD)を複数の光ファイバの全体としての曲がりを表わす指標として算出してもよい。
【0059】
(第3の実施形態)
第3の実施形態では、指標算出部305は、X線画像460(i)に含まれる光ケーブル400の各光ファイバの断面の中心位置に基づいて、光ケーブル400内の複数の光ファイバの全体としての曲がりを表わす指標を算出する。
【0060】
指標算出部305は、X線画像460(i)の光ファイバの断面の中心位置に基づいて、X線画像460(i)を分割した複数のブロックの各々に含まれる光ファイバの数あるいは線密度を算出する。
【0061】
図10は、X線画像の分割の例を表わす図である。
この例ではX線画像が、複数個のブロックBL1~BL8に分割される。ブロックごとに存在する光ファイバの数あるいは線密度が相違する。複数の光ファイバの全体として曲がりが大きいほど、ブロックごとの光ファイバの数あるいは線密度の分散値が大きくなる。この例では周方向に分割しているが、他の例としてケーブルの径方向に分割してもよい。
【0062】
指標算出部305は、X線画像460(i)における複数のブロックにおける光ファイバの数あるいは線密度の分散値VA(i)を算出する。指標算出部305は、N個のX線画像における光ファイバの分散値VA(i)の平均値、標準偏差、最小値または最大値のうちのいずれか1つ、あるいはいずれか2つ以上の値の重み付き加減算値を複数の光ファイバの全体としての曲がりを表わす指標として算出することができる。たとえば、指標算出部305は、N個の分散値VA(i)の平均値をME、N個の分散値VA(i)の標準偏差をSDとしたときに、ME±3SDを複数の光ファイバの全体としての曲がりを表わす指標として算出してもよい。
【0063】
図11は、第3の実施形態における光ファイバの指標を算出する手順を表わすフローチャートである。
【0064】
ステップS401において、入力部303が常温時X線画像360(i)、および低温時補正X線画像66(i)のいずれかを受けて、X線画像460(i)として画像処理部304に送る。
【0065】
ステップS402において、画像処理部304が、X線画像460(i)に含まれる光ケーブル400内の各光ファイバの中心位置を検出する。
【0066】
ステップS403において、指標算出部305は、X線画像460(i)に含まれる光ケーブル400の各ファイバの中心位置に基づいて、複数の光ファイバの全体としての曲がりを表わす指標を求める。具体的には、指標算出部305は、X線画像460(i)における複数のブロックにおける光ファイバの数あるいは線密度の分散値VA(i)を算出する。指標算出部305は、N個のX線画像における光ファイバの分散値VA(i)の平均値、標準偏差、または最大値のうちのいずれか1つ、あるいはいずれか2つ以上の値の重み付き加算値を複数の光ファイバの全体としての曲がりを表わす指標として算出する。
【0067】
(第4の実施形態)
光ケーブル400は、送信ロスが小さいことが望ましい。光ケーブル400が今後様々な用途で利用されるために、送信ロスが2dB/km以下であるという高い品質基準を満たす必要がある。
【0068】
本願の発明者は、送信ロスが2dB/km以下という品質基準を満たすためには、常温および低温時において、第1の実施形態において説明した指標{(ME+3SD)の逆数}が20mm以上であることが必要であることを発見した。最大(N-2)×M個の局所的な曲率の平均値がME、最大(N-2)×M個の局所的な曲率の標準偏差がSDである。
【0069】
図12は、第4の実施形態の評価装置302Aの構成を表わす図である。
第4の実施形態の評価装置302Aが、第1の実施形態の評価装置302と相違する点は、第4の実施形態の評価装置302Aが、判定部306を備える点である。
【0070】
判定部306は、指標{(ME+3SD)の逆数}が20mm以上のときに、光ケーブル400が品質基準に適合すると判定する。判定部306は、指標{(ME+3SD)の逆数}が20mm未満のときに、光ケーブル400が品質基準に適合しないと判定する。
【0071】
図13は、光ケーブル400の品質評価方法の手順を表わすフローチャートである。実際には
図13と同様のフローを常温で取得したX線画像群に対しても実施するが、低温時のほうが個々の光ファイバの曲がりが大きくなり上記の品質基準を満たしにくくなることが知られているため、以下では特に重要となる低温時についての手順のみ述べる。
【0072】
ステップS201において、入力部303が、低温時補正X線画像66(i)を受けて、X線画像460(i)として画像処理部304に送る。
【0073】
ステップS202において、画像処理部304が、X線画像460(i)に含まれる光ケーブル400内の各光ファイバの中心位置を検出する。
【0074】
ステップS203において、指標算出部305は、X線画像460(i)に含まれる光ケーブル400の各ファイバの中心位置に基づいて、光ケーブル400内の各光ファイバの曲がりを表わす指標を求める。より、具体的には、指標算出部305は、X線画像460(i)に含まれる各光ファイバの断面の中心位置を、X線画像460(i+1)に含まれる複数の光ファイバの断面の中心位置のうち最も近い位置に連結することによって、各光ファイバの軌跡を求める。指標算出部305は、各光ファイバの曲がりを表わす指標として、各光ファイバの局所的な曲率半径を算出する。
【0075】
ステップS304において、指標算出部305は、各光ファイバの曲がりを表わす指標に基づいて、複数の光ファイバの全体としての曲がりを表わす指標を求める。指標算出部305は、光ケーブルが、M個の光ファイバを有する場合には、最大(N-2)×M個の局所的な曲率半径を算出する。指標算出部305は、最大(N-2)×M個の局所的な曲率半径から最大(N-2)×M個の局所的な曲率を算出する。指標算出部305は、最大(N-2)×M個の局所的な曲率の平均値をME、最大(N-2)×M個の局所的な曲率の標準偏差をSDとしたときに、{(ME+3SD)の逆数}を複数の光ファイバの全体としての曲がりを表わす指標として算出する。
【0076】
ステップS205において、指標{(ME+3SD)の逆数}が20mm以上の場合には、ステップS206に進み、指標{(ME+3SD)の逆数}が20mm未満の場合には、ステップS207に進む。
【0077】
ステップS206において、判定部306は、光ケーブル400が品質基準に適合すると判定する。
【0078】
ステップS207において、判定部は、光ケーブル400が品質基準に適合しないと判定する。
【0079】
(第5の実施形態)
画像処理部304は、光ケーブル400の各光ファイバの断面の中心位置を検出する。画像処理部304は、X線画像を2値化した上で、距離変換処理して、距離変換画像を生成する。画像処理部304は、距離変換画像を閾値を用いて2値化することによって、光ファイバの領域を検出する。本願の発明者は、光ファイバなど多数の細線が互いに接近して集合したケーブル試料の断面のX線画像に対して単一の閾値を用いて2値化した場合に、複数の細線の領域を切断できなかったり、逆に切断しすぎたりすることがある問題点を発見した。
【0080】
図14は、X線画像を2値化した例を表わす図である。2値化によって、領域A、B、Cが検出されている。
【0081】
図15は、2値化画像を距離変換して得られる距離変換画像を低い閾値αで2値化した例を表わす図である。領域Aについては、2つの部分領域にうまく切断できているが、領域Bについては、2つの部分領域に切断できていない。
【0082】
図16は、2値化画像を距離変換して得られる距離変換画像を高い閾値βで2値化した例を表わす図である。領域Aだけでなく、領域Bにおいても、2つの部分領域にうまく切断できている。しかしながら、閾値βが大きすぎるため、領域Cが消失している。
【0083】
本願の発明者は、画像内の局所的な領域ごとに適応的に閾値を設定する方法を発見した。その概要は、以下である。
(1)X線画像を2値化し、セグメンテーションすることによって得られる複数の領域のうちの1つの領域ごとに閾値を初期値から連続的に増加させる。
(2)閾値ごとに、領域がいくつの部分領域に分割されたかを記録する。
(3)閾値の増加によって、部分領域の数が減少した場合に、細線の領域を消失させてしまったと判断して、閾値の変化を停止する。
(4)変化させた全閾値の個数に対する、部分領域の数が最大となる閾値の個数の割合(確信度)が基準値以上の場合に、その最大値となる部分領域の数を光ファイバの数と判断する。
【0084】
図17A~
図17Iは、閾値の変化によって生成される部分領域の数が変化する例を説明するための図である。ここで閾値とは、距離変換画像における距離値の最大値を1と規格化したときの値である。
図17Aは、閾値と、その閾値によって生成される部分領域の数との関係の一例を表わす図である。
図17B、
図17C、
図17D、
図17E、
図17F、
図17G、
図17H、
図17Iは、閾値が0.07、0.08、0.15、0.16、0.25、0.26、0.81、0.82のときに生成される部分領域を表わす図である。
【0085】
閾値が0.07以下のときに、部分領域の数が1個である。閾値が0.08以上かつ0.15以下のときに、部分領域の数が2個である。閾値が0.16以上かつ0.25以下のときに、部分領域の数が3個である。閾値が0.26以上かつ0.81以下のときに、部分領域の数が4個である。閾値が0.82のときに、部分領域の数が3個である。
【0086】
閾値を増加させることによって、部分領域の数が増加する。部分領域の数が最大となったときに、正しい部分領域の数が得られることがわかる。また、全閾値の個数に対する、部分領域の数が最大となる閾値の個数の割合(確信度)が「0.68」であり、高い。
図17F、
図17G、および
図17Hの図形は人間の目で見ても明らかに4個の細線が接触した状態であり、上記確信度が高いことは人間の目で見たときの細線個数の判断が容易であることと対応する。
【0087】
図18A~
図18Gは、閾値の変化によって生成される部分領域の数が変化する別の例を説明するための図である。
図18Aは、閾値と、その閾値によって生成される部分領域の数との関係の一例を表わす図である。
図18B、
図18C、
図18D、
図18E、
図18F、
図18Gは、閾値が0.39、0.40、0.65、0.66、0.88、0.89のときに生成される部分領域を表わす図である。
【0088】
閾値が0.39以下のときに、部分領域の数が1個である。閾値が0.40以上かつ0.65以下のときに、部分領域の数が2個である。閾値が0.66以上かつ0.88以下のときに、部分領域の数が3個であり、正しく検出されている。閾値が0.89以上のときに、部分領域の数が2個である。
【0089】
閾値を増加させることによって、部分領域の数が増加する。部分領域の数が最大となったときに、正しい部分領域の数が得られることがわかる。しかし、全閾値の個数に対する、部分領域の数が最大となる閾値の個数の割合(確信度)が「0.34」であり、低い。実際のところ、人の目でも、
図17F、
図17G、および
図17Hの図形が明らかに4個の細線の集合体であったのに比べて、
図18Eおよび
図18Fの図形を構成する細線の数が3個であるかどうかやや判断に迷う。上記の確信度は、人の感覚と一致していることがわかる。
【0090】
図19は、第5の実施形態の画像処理部304の構成を表わす図である。
画像処理部304は、2値化部351と、セグメンテーション部352と、距離変換部353と、光ファイバ領域検出部354と、中心検出部355とを備える。
【0091】
2値化部351は、X線画像を2値化する。
セグメンテーション部352は、2値化された画像から同じ画素値が連続する複数の領域を検出する。
【0092】
距離変換部353は、各領域について、距離変換画像を生成する。
光ファイバ領域検出部354は、各領域の距離変換画像を適応的な閾値で2値化することによって、部分領域を生成する。光ファイバ領域検出部354は、部分領域の数に基づいて、適切な閾値を選択する。具体的には、光ファイバ領域検出部354は、各領域について、2値化距離変換画像に含まれる第1の画素値を有する画素が連続している部分領域の数をカウント値として求める。光ファイバ領域検出部354は、各領域について、閾値THを初期値からカウント値が減少に変化するまで順次増加させることによって、複数のカウント値を取得する。光ファイバ領域検出部354は、複数のカウント値のうち最大のカウント値となるときの閾値THの割合Rが基準値以上の場合に、カウント値が最大のカウント値となるときの複数の閾値THのいずれかによって生成された2値化距離変換画像に含まれる部分領域の数を光ファイバの数と判断する。
【0093】
中心検出部355は、部分領域におけるいずれかの画素の位置を光ファイバの中心位置として検出する。
【0094】
図20は、画像処理部304の処理手順を表わすフローチャートである。
ステップS301において、2値化部351は、X線画像を2値化して、第1の画素値(たとえば1)または第2の画素値(たとえば0)の複数の画素からなる第1の2値化画像を生成する。
【0095】
ステップS302において、セグメンテーション部352は、第1の2値化画像の第1の画素値の画素が連続している各領域を検出する。
【0096】
ステップS303において、距離変換部353は、各領域の第1の画素値(細線が存在する候補領域に相当)の画素について、第2の画素値(細線が存在しない候補領域に相当)を有する画素までの最短距離を算出する。
【0097】
ステップS304において、距離変換部353は、各領域について、最短距離を画素値とする距離変換画像を生成する。
【0098】
ステップS305において、光ファイバ領域検出部354は、各領域について、閾値THを初期値に設定する。
【0099】
ステップS306において、光ファイバ領域検出部354は、各領域について、距離変換画像を閾値THに基づいて2値化して、第1の画素値(1)または第2の画素値(0)の複数の画素からなる2値化距離変換画像を生成する。
【0100】
ステップS307において、光ファイバ領域検出部354は、各領域について、2値化距離変換画像に含まれる第1の画素値(1)を有する画素が連続している部分領域の数をカウント値として求める。
【0101】
ステップS307において、カウント値が減少に変化した場合に、処理がステップS310に進み、カウント値が減少に変化しない場合に、処理がステップS309に進む。
【0102】
ステップS309において、光ファイバ領域検出部354は、閾値THを刻み幅ΔdTHだけ増加させる。
【0103】
ステップS310において、光ファイバ領域検出部354は、各領域について、複数のカウント値のうち最大のカウント値となるときの閾値THの個数の設定した全ての閾値THの個数に対する割合Rを算出する。
【0104】
ステップS311において、各領域について、割合Rが基準値以上のときに、処理がステップS312に進む。
【0105】
ステップS312において、光ファイバ領域検出部354は、各領域について、カウント値が最大となるときの複数の閾値のいずれか(たとえば、最大の閾値、最小の閾値、または両者の平均値など)によって生成された1個以上の部分領域の数を光ファイバの数と判断する。
【0106】
ステップS313において、中心検出部355は、1個以上の部分領域における画素のうち、いずれかの画素の位置を光ファイバの中心位置として検出する。たとえば、光ファイバ領域検出部354は、部分領域における画素のうち、距離変換画像における画素値が最大となる画素の位置、または部分領域の重心の画素の位置を光ファイバの中心位置として検出してもよい。
【0107】
(第6の実施形態)
本実施の形態は、第4の実施形態において説明した品質基準に適合する光ケーブル400の製造方法に関する。すなわち、本実施の形態は、最大(N-2)×M個の曲率半径の平均値をME、最大(N-2)×M個の曲率半径の標準偏差をSDとしたときに、指標{(ME+3SD)の逆数}が20mm以上となるように、光ケーブルを製造する方法に関する。
【0108】
図21は、光ケーブルの断面図である。
図22は、複数の光ファイバの束を表わす図である。
【0109】
本実施の形態の光ケーブルの製造方法では、光ファイバの側圧を減らすように、光ファイバの密度を下げるなどによって外被内径を調整し、光ファイバとの熱膨張差を小さくするように外被材料を調整し、スリット部と非スリット部の比率調整などによって、テープ心線を柔軟化する。最終手段として曲げに強い光ファイバを用いることとしてもよい。
【0110】
(第7の実施形態)
第1~第6の実施形態において説明した評価装置302は、相当する動作をデジタル回路のハードウェアまたはソフトウェアで構成してもよい。
【0111】
図23は、評価装置302の機能をソフトウェアを用いて実現する場合の評価装置302の構成を示す図である。評価装置302は、バス503に接続されたプロセッサ502およびメモリ501を備える。メモリ501に記憶されたプログラムをプロセッサ502が実行する。
【0112】
(その他の指標)
指標算出部305は、光ファイバの曲率半径に代えて、撚りピッチを算出するものとしてもよい。
【0113】
(付記)
竹谷敏、低温型位相コントラストX線CT技術の開発、産総研TODAY、2006年11月1日発行、Vol.6、No.11、p.22-23(非特許文献1)は、低温位相コントラストX線CT(Computed Tomography)測定法に用いられる低温試料容器を開示している。この低温試料容器は、金属製の冷却容器本体と、金属製の液体容器とを含む。冷却容器本体は、冷媒と、液体容器とを収容している。液体容器は、液体と、液体に浸漬された試料とを収容している。液体容器には、液体の温度を制御するヒータが設けられている。ヒータは、電気配線を通じて、低温試料容器の外部にある温度調整器に接続されている。温度調整器には、熱電対が接続されている。熱電対は、液体に接触している。試料は、回転シャフトに吊り下げられている。冷却容器本体及び液体容器に、X線透過窓が設けられている。回転シャフトを回転させて試料を回転させながら、冷却容器本体及び液体容器のX線透過窓を通過したX線を試料に照射する。試料を通過したX線を検出する。
【0114】
しかし、非特許文献1の低温試料容器では、試料は回転シャフトに吊り下げられている。大きなサイズを有する試料を回転シャフトに吊り下げることは困難であるため、大きなサイズを有する試料のX線画像を得ることは困難である。また、非特許文献1の低温試料容器は、液体の温度を制御するために、ヒータ及び熱電対が設けられている。そのため、低温試料容器のサイズが大きくなるとともに、低温試料容器に電気配線を施す必要がある。X線撮像装置を改造することなく、低温試料容器をX線撮像装置に組み込むことは困難である。
【0115】
付記の開示は、上記の課題を鑑みてなされたものであり、付記の開示の第一の局面の目的は、室温より低い低温においてより大きなサイズを有する試料のX線画像をより簡単に得ることができるとともに、X線撮像装置に容易に組み込むことができる冷却容器を提供することである。付記の開示の第二の局面の目的は、室温より低い低温においてより大きなサイズを有する試料のX線画像をより簡単に得ることができるとともに、X線撮像装置を利用することができるX線装置を提供することである。付記の開示の第三の局面の目的は、付記の開示の冷却容器に適したX線画像処理装置及びX線画像処理方法を提供することである。
【0116】
付記の開示の冷却容器は、中空容器と、中空容器を収容する断熱容器とを備える。中空容器は、管と、底板とを含む。管は、第1端と、第1端とは反対側の第2端とを含む。底板は、管の第1端を閉塞する。管と底板とによって規定される収容空間に、試料と、試料を冷却する冷却液とが収容される。試料は、冷却液に浸漬され、かつ、管または底板の少なくとも一つによって支持される。管及び断熱容器は、低密度材料で形成されている。管の第2端に、収容空間に連通する第1開口が設けられている。断熱容器には、第1開口に連通する貫通孔が設けられている。
【0117】
付記の開示のX線装置は、X線撮像装置と、付記の開示の冷却容器とを備える。X線撮像装置は、X線を放射するX線源と、冷却容器を支持するステージと、冷却容器を通過したX線を検出するX線検出器とを含む。
【0118】
付記の開示のX線画像処理装置は、室温より低い低温で第1の時間にわたって試料を撮像することによって取得された試料のX線画像を受け付けるX線画像受付部と、画像処理部とを備える。画像処理部は、試料のX線画像をニューラルネットワークに入力して、試料のX線画像より鮮明な試料の補正X線画像を生成する。ニューラルネットワークは、学習用データセットを用いた学習により生成される。学習用データセットは、参照試料を冷却することなく参照試料を第2の時間にわたって撮像することによって取得された第1参照X線画像と、参照試料を冷却することなく参照試料を第3の時間にわたって撮像することによって取得された第2参照X線画像とを含む。第2の時間は、第1の時間の0.5倍以上2.0倍以下である。第3の時間は、第1の時間より長く、かつ、第2の時間より長い。
【0119】
付記の開示のX線画像処理方法は、付記の開示のX線装置を用いて、室温より低い低温で第1の時間にわたって試料を撮像することによって試料のX線画像を取得するステップと、試料のX線画像をニューラルネットワークに入力して、試料のX線画像より鮮明な試料の補正X線画像を生成するステップとを備える。ニューラルネットワークは、学習用データセットを用いた学習により生成される。学習用データセットは、参照試料を冷却することなく付記の開示のX線装置を用いて参照試料を第2の時間にわたって撮像することによって取得された第1参照X線画像と、参照試料を冷却することなく付記の開示のX線装置を用いて参照試料を第3の時間にわたって撮像することによって取得された第2参照X線画像とを含む。第2の時間は、第1の時間の0.5倍以上2.0倍以下である。第3の時間は、第1の時間より長く、かつ、第2の時間より長い。
【0120】
付記の開示の冷却容器によれば、室温より低い低温においてより大きなサイズを有する試料のX線画像をより簡単に得ることができる。付記の開示の冷却容器は、X線撮像装置に容易に組み込まれ得る。
【0121】
付記の開示のX線装置によれば、室温より低い低温においてより大きなサイズを有する試料のX線画像をより簡単に得ることができるとともに、X線撮像装置を利用することができる。
【0122】
付記の開示のX線画像処理装置は、室温より低い低温におけるX線撮像時間が短くなる付記の開示の冷却容器に適したX線画像処理装置である。付記の開示のX線画像処理方法は、室温より低い低温におけるX線撮像時間が短くなる付記の開示の冷却容器に適したX線画像処理方法である。
【0123】
[付記の開示の実施形態の説明]
最初に付記の開示の実施態様を列記して説明する。
【0124】
(1)付記の開示の冷却容器5は、中空容器20と、中空容器20を収容する断熱容器35とを備える。中空容器20は、管22と、底板21とを含む。管22は、第1端22aと、第1端22aとは反対側の第2端22bとを含む。底板21は、管22の第1端22aを閉塞する。管22と底板21とによって規定される収容空間22eに、試料30と、試料30を冷却する冷却液33とが収容される。試料30は、冷却液33に浸漬され、かつ、管22または底板21の少なくとも一つによって支持される。管22及び断熱容器35は、低密度材料で形成されている。管22の第2端22bに、収容空間22eに連通する第1開口23が設けられている。断熱容器35には、第1開口23に連通する貫通孔39が設けられている。
【0125】
管22及び断熱容器35は低密度材料で形成されているため、管22及び断熱容器35はX線3aを透過し得る。試料30は、冷却液33に浸漬され、かつ、管22または底板21の少なくとも一つによって支持される。そのため、室温より低い低温においてより大きなサイズを有する試料30のX線画像60をより簡単に得ることができる。
【0126】
付記の開示の冷却容器5では、管22の第2端22bに第1開口23が設けられているとともに、断熱容器35に貫通孔39が設けられている。試料30のX線透視画像を撮像する間に、試料30及び冷却液33の温度は次第に上昇して、冷却液33の一部が気体に変わっても、この気体は第1開口23及び貫通孔39を通って冷却容器5の外部に排出される。この気体によって冷却容器5が壊れることが防止され得る。そのため、冷却容器5から温度調節機能が省略され得る。付記の開示の冷却容器5は、X線撮像装置2を改造することなく、X線撮像装置2に容易に組み込まれ得る。冷却容器5のコストを低減させることができる。本明細書において冷却容器5が温度調節機能を有しないことは、冷却液33の温度及び試料30の温度を能動的に調整する能動的温度調整素子(例えば、ペルチェ素子またはヒータなど)が、冷却容器5に設けられていないことを意味する。
【0127】
付記の開示の冷却容器5は断熱容器35を備えている。そのため、冷却容器5が温度調節機能を有していなくても、試料30のX線画像60を撮像する間の試料30及び冷却液33の温度の上昇を緩やかにすることができる。室温より低い低温において試料30のX線画像60を撮像する時間を延ばすことができる。室温より低い低温における試料30のX線画像60の鮮明度を改善することができる。
【0128】
(2)上記(1)の冷却容器5では、管22は、円筒形状を有している。断熱容器35のうち管22を覆う部分の外側面は、円筒外側面の形状を有している。そのため、冷却容器5は、X線撮像装置2のX線源3のより近くに配置され得る。試料30のX線画像60の倍率を大きくすることができる。
【0129】
(3)上記(1)または(2)の冷却容器5では、管22は、冷却液33及び断熱容器35の両方に接触している。そのため、冷却容器5は簡易な構成を有している。冷却容器5は、X線撮像装置2を改造することなく、X線撮像装置2に容易に組み込まれ得る。冷却容器5のコストを低減させることができる。
【0130】
(4)上記(1)から(3)のいずれかの冷却容器5では、断熱容器35は、管22の全ての外側面22cを覆っている。そのため、試料30のX線画像60を撮像する間の試料30及び冷却液33の温度の上昇を緩やかにすることができる。室温より低い低温において試料30のX線画像60を撮像する時間を延ばすことができる。室温より低い低温における試料30のX線画像60の鮮明度を改善することができる。
【0131】
(5)上記(1)から(4)のいずれかの冷却容器5では、断熱容器35は、中空容器20の全ての外表面を覆っている。そのため、試料30のX線画像60を撮像する間の試料30及び冷却液33の温度の上昇を緩やかにすることができる。室温より低い低温において試料30のX線画像60を撮像する時間を延ばすことができる。室温より低い低温における試料30のX線画像60の鮮明度を改善することができる。
【0132】
(6)上記(1)から(5)のいずれかの冷却容器5では、断熱容器35は、底板21に接触している第1断熱部材36と、管22及び第1断熱部材36に接触している第2断熱部材38とを含む。そのため、中空容器20は、断熱容器35に容易に収容され得る。冷却容器5は、X線撮像装置2を改造することなく、X線撮像装置2に容易に組み込まれ得る。
【0133】
(7)上記(6)の冷却容器5では、第1断熱部材36に凹部37が形成されている。第2断熱部材38は、凹部37に嵌合されている。そのため、中空容器20は、断熱容器35に容易に収容され得る。冷却容器5は、X線撮像装置2を改造することなく、X線撮像装置2に容易に組み込まれ得る。
【0134】
(8)上記(1)から(7)のいずれかの冷却容器5では、管22は、フッ素系樹脂またはポリエチレン樹脂で形成されている。そのため、管22は、冷却液33で冷却されても脆化しない低密度材料で形成されている。室温より低い低温においてより大きなサイズを有する試料30のX線画像60をより簡単に得ることができる。
【0135】
(9)上記(8)の冷却容器5では、管22は、ポリテトラフルオロエチレンまたはパーフルオロアルコキシアルカンで形成されている。そのため、管22は、冷却液33で冷却されても脆化しない低密度材料で形成されている。室温より低い低温においてより大きなサイズを有する試料30のX線画像60をより簡単に得ることができる。
【0136】
(10)上記(1)から(9)のいずれかの冷却容器5では、断熱容器35は、発泡スチロールで形成されている。断熱容器35は、安価な材料で形成されている。冷却容器5のコストを低減させることができる。
【0137】
(11)上記(1)から(10)のいずれかの冷却容器5では、冷却液33は、ドライアイスとアルコールの混合物である。安価な冷却液33を用いて、試料30を室温より低い低温に保つことができる。室温より低い低温においてより大きなサイズを有する試料30のX線画像60をより簡単に得ることができる。
【0138】
(12)上記(1)から(11)のいずれかの冷却容器5では、中空容器20は、固定部材25をさらに含む。試料30は、固定部材25を介して、管22に対して支持されている。固定部材25には、管22の長手方向に沿って延在するとともに固定部材25を貫通する第2開口27が設けられている。そのため、固定部材25は、より大きなサイズを有する試料30をより安定的に支持することを可能にする。室温より低い低温においてより大きなサイズを有する試料30のX線画像60をより簡単に得ることができる。
【0139】
(13)付記の開示のX線装置1は、X線撮像装置2と、上記(1)から(11)のいずれかの冷却容器5とを備える。X線撮像装置2は、X線を放射するX線源3と、冷却容器5を支持するステージ4と、冷却容器5を通過したX線を検出するX線検出器7とを含む。付記の開示のX線装置1では、付記の開示の冷却容器5を用いて試料30は冷却される。そのため、室温より低い低温においてより大きなサイズを有する試料30のX線画像60をより簡単に得ることができる。X線撮像装置2を改造することなく、X線撮像装置2を利用することができる。
【0140】
(14)上記(13)のX線装置1では、ステージ4は、管22の長手方向に沿って延在する冷却容器5の中心軸5cのまわりに冷却容器5を回転可能であるとともに、管22の長手方向に沿って移動可能である。そのため、X線装置1は、より大きなサイズを有する試料30のX線CT画像をより簡単に得ることができる。
【0141】
(15)付記の開示のX線画像処理装置(端末装置200)は、X線画像受付部220と、画像処理部221とを備える。X線画像受付部220は、室温より低い低温で第1の時間にわたって試料30を撮像することによって取得された試料30のX線画像60を受け付ける。画像処理部221は、試料30のX線画像60をニューラルネットワーク(学習済モデル113)に入力して、試料30のX線画像60より鮮明な試料30の補正X線画像66を生成する。ニューラルネットワークは、学習用データセット115を用いた学習により生成される。学習用データセット115は、参照試料31を冷却することなく参照試料31を第2の時間にわたって撮像することによって取得された第1参照X線画像61と、参照試料31を冷却することなく参照試料31を第3の時間にわたって撮像することによって取得された第2参照X線画像62とを含む。第2の時間は、第1の時間の0.5倍以上2.0倍以下である。第3の時間は、第1の時間より長く、かつ、第2の時間より長い。
【0142】
試料30のX線画像60を撮像する間に、試料30及び冷却液33の温度は次第に上昇する。室温より低い低温において試料30のX線画像60を撮像するために、第1の時間を短くする必要がある。第1の時間が短くなると、室温より低い低温に冷却された試料30のX線画像60が不鮮明になる。付記の開示のX線画像処理装置は、室温より低い低温に冷却された試料30のX線画像60をより鮮明にすることができる。付記の開示のX線画像処理装置は、室温より低い低温におけるX線撮像時間(第1の時間)が短くなる付記の開示の冷却容器5に適している。
【0143】
(16)付記の開示のX線画像処理方法は、上記(13)または(14)のX線装置1を用いて、室温より低い低温で第1の時間にわたって試料30を撮像することによって試料30のX線画像60を取得するステップ(例えば、ステップS1からステップS6)と、試料30のX線画像60をニューラルネットワーク(学習済モデル113)に入力して、試料30のX線画像60より鮮明な試料30の補正X線画像66を生成するステップ(ステップS22)とを備える。ニューラルネットワークは、学習用データセット115を用いた学習により生成される。学習用データセット115は、参照試料31を冷却することなくX線装置1を用いて参照試料31を第2の時間にわたって撮像することによって取得された第1参照X線画像61と、参照試料31を冷却することなくX線装置1を用いて参照試料31を第3の時間にわたって撮像することによって取得された第2参照X線画像62とを含む。第2の時間は、第1の時間の0.5倍以上2.0倍以下である。第3の時間は、第1の時間より長く、かつ、第2の時間より長い。
【0144】
試料30のX線画像60を撮像する間に、試料30及び冷却液33の温度は次第に上昇する。室温より低い低温において試料30のX線画像60を撮像するために、第1の時間を短くする必要がある。第1の時間が短くなると、室温より低い低温に冷却された試料30のX線画像60が不鮮明になる。付記の開示のX線画像処理方法は、室温より低い低温に冷却された試料30のX線画像60をより鮮明にすることができる。付記の開示のX線画像処理方法は、室温より低い低温におけるX線撮像時間(第1の時間)が短くなる付記の開示の冷却容器5に適している。
【0145】
[付記の開示の実施形態の詳細]
次に、図面に基づいて付記の開示の実施形態の詳細について説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰返さない。以下に記載する実施形態の少なくとも一部の構成を任意に組み合わせてもよい。
【0146】
<低温用X線装置1>
以下の記載では、低温用X線装置1を簡略化のためX線装置1と記載することがある。
【0147】
X線装置1は、例えば、X線CT(Computed Tomography)装置である。
図24及び
図25を参照して、X線装置1は、X線撮像装置2と、冷却容器5とを備える。
【0148】
X線撮像装置2は、X線源3と、ステージ4と、X線検出器7とを含む。X線撮像装置2は、ステージ駆動装置6と、コンピュータ10とをさらに含んでもよい。
【0149】
X線源3は、試料30に向けてX線3aを放射する。X線源3は、例えば、X線管である。
【0150】
ステージ4は、冷却容器5を支持する。冷却容器5は、試料載置面4a上に載置される。ステージ4は、ステージ4の回転軸4rのまわりに回転可能である。ステージ4の回転軸4rは、例えば、試料載置面4aの法線に沿って延在する軸である。ステージ4は、試料載置面4aの法線(ステージ4の回転軸4r)に沿って移動可能である。冷却容器5がステージ4の試料載置面4a上に載置されているとき、ステージ4は、冷却容器5の管22の長手方向に沿って延在する冷却容器5の中心軸5cのまわりに回転可能であるとともに、冷却容器5の管22の長手方向(冷却容器5の中心軸5c)に沿って移動可能である。
【0151】
ステージ駆動装置6は、モータ(図示せず)を含む。ステージ駆動装置6は、ステージ4を、ステージ4の回転軸4rのまわりに回転させる。ステージ駆動装置6は、ステージ4を、試料載置面4aの法線(ステージ4の回転軸4r)に沿って移動させる。冷却容器5がステージ4の試料載置面4a上に載置されているとき、ステージ駆動装置6は、冷却容器5を、冷却容器5の管22の長手方向に沿って延在する冷却容器5の中心軸5cのまわりに回転させるとともに、冷却容器5を、冷却容器5の管22の長手方向(冷却容器5の中心軸5c)に沿って移動させる。
【0152】
X線検出器7は、試料30を通過したX線3aを検出する。試料30が冷却容器5内に含まれている場合には、X線検出器7は、試料30及び冷却容器5を通過したX線3aを検出する。X線検出器7は、複数のX線検出素子8を含んでもよい。複数のX線検出素子8は、各々、フォトダイオード(図示せず)と、フォトダイオード上に設けられたシンチレータ(図示せず)とを含んでもよい。シンチレータは、X線3aを光に変換する。フォトダイオードは、シンチレータによってX線から変換された光を検出する。試料30を回転させながら試料30にX線3aを照射することによって、試料30の全周囲方向からの試料30のX線透視画像がX線検出器7によって撮像される。
【0153】
コンピュータ10は、プロセッサ11と、ストレージ14とを含む。
プロセッサ11は、CPU(Central Processing Unit)である。プロセッサ11は、ストレージ14に記憶されているプログラムを実行することによって、制御部12及び画像再構成部13の機能を実現する。制御部12は、X線撮像装置2を制御する。制御部12がステージ駆動装置6を制御することによって、ステージ4は、ステージ4の回転軸4rのまわりに回転するとともに、試料載置面4aの法線(ステージ4の回転軸4r)に沿って移動する。画像再構成部13は、試料30の全周囲方向からの試料30のX線透視画像を、逆投影法または逐次近似法のようなCT再構成アルゴリズムを用いて再構成して、試料30のX線画像60として試料30のX線CT画像を生成する。
【0154】
ストレージ14は、例えば、ハードディスクまたはSSD(Solid State Drive)などの不揮発性メモリデバイスであってもよい。試料30のX線画像60は、ストレージ14に記憶される。
【0155】
<冷却容器5>
図24から
図26を参照して、冷却容器5は、試料30を冷却するための容器である。冷却容器5は、中心軸5cを有している。冷却容器5がステージ4の試料載置面4aに載置されるとき、冷却容器5の中心軸5cは、ステージ4の回転軸4rに同軸である。冷却容器5は、冷却容器5の中心軸5cが延在する方向に細長い形状を有してもよい。冷却容器5の長手方向は、冷却容器5の中心軸5cが延在する方向であってもよい。冷却容器5は、中空容器20と、断熱容器35とを備える。
【0156】
中空容器20は、管22と、底板21とを含む。中空容器20は、固定部材25をさらに含んでもよい。
【0157】
管22は、低密度材料で形成されている。本明細書において、低密度材料は、2.8g/cm3以下の密度を有する材料を意味する。低密度材料は、X線を透過させ得る。X線3aは、管22を透過する。低密度材料は、2.3g/cm3以下の密度を有してもよい。低密度材料は、0.9g/cm3以上の密度を有してもよい。低密度材料は、2.0g/cm3以上の密度を有してもよい。低密度材料は、0.9g/cm3以上2.8g/cm3以下の密度を有してもよい。低密度材料は、2.0g/cm3以上2.3g/cm3以下の密度を有してもよい。管22は、冷却液33で冷却されても脆化しない材料で形成されている。管22は、例えば、-70℃以上の温度において脆化しない材料で形成されている。管22は、-100℃以上の温度において脆化しない材料で形成されてもよい。管22は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)もしくはパーフルオロアルコキシアルカン(PFA)のようなフッ素系樹脂、または、ポリエチレン樹脂で形成されている。
【0158】
管22は、円筒形状を有している。管22は、外側面22cと、外側面22cとは反対側の内側面22dとを含む。X線3aは、外側面22c及び内側面22dを透過する。管22は、第1端22aと、第1端22aとは反対側の第2端22bとを含む。外側面22c及び内側面22dは、各々、第1端22aから第2端22bまで延在している。外側面22cは、例えば、円筒外側面の形状を有している。内側面22dは、例えば、円筒内側面の形状を有している。
【0159】
底板21は、管22の第1端22aを閉塞する。管22の収容空間22eは、管22と底板21とによって規定される。底板21は、低密度材料で形成されてもよい。底板21は、冷却液33で冷却されても脆化しない材料で形成されている。底板21は、例えば、-70℃以上の温度において脆化しない材料で形成されている。底板21は、-100℃以上の温度において脆化しない材料で形成されてもよい。底板21は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)もしくはパーフルオロアルコキシアルカン(PFA)のようなフッ素系樹脂、または、ポリエチレン樹脂で形成されている。底板21は、管22と同じ材料で形成されてもよい。管22の第2端22bに、収容空間22eに連通する第1開口23が設けられている。
【0160】
収容空間22eに、試料30と、冷却液33とが収容される。試料30は、管22または底板21の少なくとも一つによって支持される。試料30は、管22と底板21の両方によって支持されてもよい。
【0161】
試料30は、固定部材25を介して、管22に対して支持されてもよい。固定部材25は、管22の内側面22dに接触している。固定部材25は、管22に嵌合されてもよい。固定部材25に、貫通孔26が設けられている。試料30は、貫通孔26に嵌合されてもよい。固定部材25に、第2開口27が設けられている。第2開口27は、管22の長手方向に沿って延在するとともに、固定部材25を貫通している。固定部材25は、低密度材料で形成されている。固定部材25は、冷却液33で冷却されても脆化しない材料で形成されている。固定部材25は、例えば、-70℃以上の温度において脆化しない材料で形成されている。固定部材25は、-100℃以上の温度において脆化しない材料で形成されてもよい。固定部材25は、例えば、発泡スチロールで形成されている。試料30は、複数の固定部材25を介して、管22に対して支持されてもよい。複数の固定部材25は、例えば、試料30の上部と試料30の下部とを支持してもよい。そのため、試料30のサイズが大きくても、試料30は複数の固定部材25によって安定的に支持される。
【0162】
試料30は、冷却液33に浸漬される。具体的には、試料30の一部が冷却液33に浸漬されてもよいし、試料30の全体が冷却液33に浸漬されてもよい。冷却液33は、試料30を、室温より低い低温に冷却する。本明細書において、室温は、15℃以上30℃以下の温度を意味する。低温は、例えば、0℃未満の温度であってもよく、-10℃以下の温度であってもよく、-20℃以下の温度であってもよく、-30℃以下の温度であってもよく、-40℃以下の温度であってもよい。冷却液33は、管22の内側面22dに接触する。冷却液33は、例えば、ドライアイスとアルコール(例えば、エタノール)の混合物である。
【0163】
断熱容器35は、中空容器20を収容する。断熱容器35cは、管22の外側面22cに接触している。断熱容器35は、管22の全ての外側面22cを覆ってもよい。断熱容器35は、中空容器20の全ての外表面を覆ってもよい。断熱容器35は、第1断熱部材36と、第2断熱部材38とを含んでもよい。第1断熱部材36は、底板21に接触している。第1断熱部材36に、凹部37が形成されてもよい。具体的には、第1断熱部材36は、基部36aと、基部36aから突出する環状突出部36bとを含んでもよい。凹部37は、環状突出部36bの内側空間である。第2断熱部材38は、管22(外側面22c)及び第1断熱部材36に接触している。第2断熱部材38は、凹部37に嵌合されている。
【0164】
断熱容器35は、低密度材料で形成されている。そのため、断熱容器35は、X線3aを透過させ得る。X線3aは、断熱容器35を透過する。断熱容器35は、冷却液33で冷却されても脆化しない材料で形成されてもよい。断熱容器35は、-70℃以上の温度において脆化しない材料で形成されてもよい。断熱容器35は、-100℃以上の温度において脆化しない材料で形成されてもよい。断熱容器35は、例えば、発泡スチロールで形成されている。断熱容器35は、外側面35sを含む。X線3aは、外側面35sのうち管22を覆う部分(例えば、第2断熱部材38の外側面)を透過する。外側面35sのうち管22を覆う部分は、円筒外側面の形状を有している。断熱容器35に、第1開口23に連通する貫通孔39が設けられている。貫通孔39は、例えば、第2断熱部材38に設けられている。
【0165】
冷却容器5は、温度調節機能を有していなくてもよい。そのため、試料30のX線透視画像を撮像する間に、試料30及び冷却液33の温度は次第に上昇する。冷却液33の一部は、気体に変わる。この気体は、固定部材25の第2開口27、管22の第1開口23及び断熱容器35の貫通孔39を通って、冷却容器5の外部に排出される。固定部材25の第2開口27、管22の第1開口23及び断熱容器35の貫通孔39は、この気体にとってガス抜き孔として機能して、この気体によって冷却容器5が壊れることを防止する。
【0166】
<試料30のX線画像60の取得方法>
図24から
図27を参照して、X線装置1を用いた、室温より低い低温に冷却された試料30のX線画像60の取得方法の一例を説明する。X線装置1がX線CT装置である場合、試料30のX線画像60は試料30のX線CT画像である。
【0167】
付記の試料30のX線画像60の取得方法は、冷却容器5内に、試料30及び冷却液33を入れること(ステップS1)を備える。試料30は、管22または底板21の少なくとも一つによって支持される。試料30は、管22と底板21の両方によって支持されてもよい。試料30は、固定部材25を介して、管22に対して支持されてもよい。冷却液33は、試料30を、室温より低い低温に冷却する。
【0168】
付記の試料30のX線画像60の取得方法は、冷却容器5を、ステージ4上に載置すること(ステップS2)を備える。具体的には、冷却容器5は、ステージ4の試料載置面4a上に載置される。冷却容器5の中心軸5cは、ステージ4の回転軸4rに同軸である。
【0169】
付記の試料30のX線画像60の取得方法は、冷却容器5を管22の長手方向に移動させること(ステップS3)を備える。具体的には、制御部12は、ステージ駆動装置6を制御する。ステージ4は、管22の長手方向に沿って移動する。こうして、試料30のうちX線透視画像を得たい部位は、X線3aの経路上に位置する。
【0170】
付記の試料30のX線画像60の取得方法は、冷却容器5を回転させながら、試料30のX線透視画像を撮像すること(ステップS4)を備える。具体的には、制御部12は、ステージ駆動装置6を制御する。ステージ4は、ステージ4の回転軸4r(冷却容器5の中心軸5c)のまわりに回転する。ステージ4の試料載置面4a上に載置されている冷却容器5は、冷却容器5の中心軸5c(ステージ4の回転軸4r)のまわりに回転する。冷却容器5に含まれる試料30は、冷却容器5の中心軸5c(ステージ4の回転軸4r)のまわりに回転する。試料30を回転させながら試料30にX線3aを照射することによって、試料30の全周囲方向からの試料30のX線透視画像がX線検出器7によって撮像される。試料30のX線透視画像は、ストレージ14に記憶される。
【0171】
付記の試料30のX線画像60の取得方法は、試料30のうちX線透視画像を得たい全ての部位のX線透視画像の撮像が終了したか否かを判断すること(ステップS5)を備える。例えば、制御部12が、ステップS5を実行する。試料30のうちX線透視画像を得たい全ての部位の一部のX線透視画像の撮像が終了していない場合(ステップS5においてNO)には、ステップS3とステップS4とを行う。こうして、試料30のうちX線透視画像を得たい全ての部位のX線透視画像が得られるまで、ステップS3とステップS4とを繰り返す。
【0172】
試料30のうちX線透視画像を得たい全ての部位のX線透視画像の撮像が終了した場合(ステップS5においてYES)には、試料30のX線透視画像を再構成して、試料30のX線画像60として試料30のX線CT画像を生成する(ステップS6)。具体的には、画像再構成部13は、試料30の全周囲方向からの試料30のX線透視画像を、逆投影法または逐次近似法のようなCT再構成アルゴリズムを用いて再構成して、試料30のX線CT画像を生成する。試料30のX線画像60は、ストレージ14に記憶される。
【0173】
試料30のX線画像60は、室温より低い低温で第1の時間にわたって試料30を撮像することによって取得される。付記では、冷却容器5は、温度調節機能を有しない。そのため、試料30のX線画像60を撮像する間に、試料30及び冷却液33の温度は次第に上昇する。室温より低い低温において試料30のX線画像60を撮像するために、第1の時間を短くする必要がある。第1の時間は、室温より低い低温における試料30のX線撮像にとって許容可能な温度変化ΔTによって規定される。許容可能な温度変化ΔTは、例えば、10℃以下であってもよく、8℃以下であってもよく、5℃以下であってもよく、3℃以下であってもよく、1℃以下であってもよい。第1の時間が短くなると、室温より低い低温に冷却された試料30のX線画像60が不鮮明になる。
【0174】
図28を参照して、試料30のX線画像60の一例を示す。
図28では、試料30は、複数の光ファイバと、複数の光ファイバを覆うシースとを含む光ファイバケーブルである。試料30のX線画像60は、-30℃から-40℃の低温において、第1の時間にわたってX線を照射することによって取得された光ファイバケーブルのX線CT画像である。
図28に示される試料30のX線画像60のうち白い領域が複数の光ファイバであり、
図28に示される試料30のX線画像60のうち黒い背景領域がシースである。
【0175】
(X線装置1及び試料30のX線画像60の取得方法の変形例)
X線装置1は、例えば、画像再構成部13が省略されたX線透視画像撮像装置であり、X線画像60は、例えば、X線透視画像であってもよい。X線透視画像撮像装置を用いてX線透視画像を取得する場合、
図27に示される試料30のX線画像60の取得方法から、ステップS4における冷却容器5を回転させることと、ステップS6とが省略される。
【0176】
(複数の第1参照X線画像61及び複数の第2参照X線画像62の取得方法)
図24、
図29及び
図30を参照して、複数の第1参照X線画像61は、参照試料31を冷却することなく、X線装置1を用いて参照試料31の複数の部位を第2の時間にわたって撮像することによって取得される。参照試料31を冷却することなく、X線装置1を用いて参照試料31を撮像することは、例えば、冷却容器5内に冷却液33を入れずに、冷却容器5内の参照試料31のX線画像を撮像すること(
図29を参照)、または、冷却容器5を用いることなく、ステージ4の試料載置面4a上に参照試料31を載置して、参照試料31のX線画像を撮像することを意味する。第2の時間は、室温より低い低温における試料30のX線画像60の撮像時間である第1の時間と同程度の時間である。第2の時間は、例えば、第1の時間の0.5倍以上2.0倍以下である。複数の第1参照X線画像61は、例えば、X線装置1を用いて、室温で第1の時間と同じ第2の時間にわたって参照試料31にX線3aを照射することによって取得されてもよい。参照試料31は、試料30と異なっていてもよいし、同一であってもよい。複数の第1参照X線画像61は、ストレージ14に記憶される。
【0177】
図30を参照して、第1参照X線画像61の一例を示す。
図30では、参照試料31は、複数の光ファイバと、複数の光ファイバを覆うシースとを含む光ファイバケーブルである。第1参照X線画像61は、室温において、第1の時間と同じ第2の時間にわたってX線を照射することによって取得された光ファイバケーブルのX線CT画像である。第2の時間は第1の時間と同程度であるため、第1参照X線画像61は不鮮明である。
【0178】
図24、
図29及び
図31を参照して、複数の第2参照X線画像62は、参照試料31を冷却することなく、X線装置1を用いて参照試料31の複数の部位を第3の時間にわたって撮像することによって取得される。複数の第2参照X線画像62は、例えば、X線装置1を用いて参照試料31を室温で第3の時間にわたって参照試料31にX線3aを照射することによって取得されてもよい。複数の第2参照X線画像62は、ストレージ14に記憶される。
【0179】
第1参照X線画像61の撮像条件と第2参照X線画像62の撮像条件とは、主に、撮像時間(参照試料31に対するX線3aの照射時間)において異なっている。すなわち、第2参照X線画像62の撮像時間である第3の時間は、第1参照X線画像61の撮像時間である第2の時間より長い。第3の時間は、例えば、第2の時間の2倍以上であってもよく、第2の時間の2.5倍以上であってもよく、第2の時間の4倍以上であってもよく、第2の時間の5倍以上であってもよく、第2の時間の8倍以上であってもよく、第2の時間の10倍以上であってもよい。第3の時間は第2の時間より長いため、第2参照X線画像62は第1参照X線画像61より鮮明である。
【0180】
また、第2参照X線画像62の撮像時間である第3の時間は、試料30のX線画像60の撮像時間である第1の時間より長い。第3の時間は、例えば、第1の時間の4倍以上であってもよく、第1の時間の5倍以上であってもよく、第1の時間の8倍以上であってもよく、第1の時間の10倍以上であってもよい。
【0181】
図31を参照して、第2参照X線画像62の一例を示す。
図31では、参照試料31は、上述した光ファイバケーブルである。第2参照X線画像62は、室温において、第3の時間にわたってX線を照射することによって取得された光ファイバケーブルのX線CT画像である。第3の時間は第2の時間より長いため、第2参照X線画像62は、第1参照X線画像61より鮮明である。
【0182】
第2参照X線画像62を撮像する際の参照試料31の温度は、第1参照X線画像61を撮像する際の参照試料31の温度に等しいことが好ましいが、第2参照X線画像62を撮像する際の参照試料31の温度は、第1参照X線画像61を撮像する際の参照試料31の温度と異なってもよい。第2参照X線画像62を撮像する際の参照試料31の温度が第1参照X線画像61を撮像する際の参照試料31の温度と異なる場合、複数の第2参照X線画像62を撮像する際の参照試料31の温度と複数の第1参照X線画像61を撮像する際の参照試料31の温度との間の差は、複数の第1参照X線画像61を撮像する際の参照試料31の温度と試料30のX線画像60を撮像する際の試料30の温度(低温)との間の差よりも、小さい。複数の第2参照X線画像62を撮像する際の参照試料31の温度と複数の第1参照X線画像61を撮像する際の参照試料31の温度との間の差は、複数の第1参照X線画像61を撮像する際の参照試料31の温度と試料30のX線画像60を撮像する際の試料30の温度(低温)との間の差の半分以下であってもよく、三分の一以下であってもよく、四分の一以下であってもよい。
【0183】
複数の第2参照X線画像62を撮像する際の参照試料31の温度と複数の第1参照X線画像61を撮像する際の参照試料31の温度との間の差は、例えば、5℃以下であってもよく、3℃以下であってもよく、1℃以下であってもよい。複数の第1参照X線画像61を撮像する際の参照試料31の温度と試料30のX線画像60を撮像する際の試料30の温度(低温)との間の差は、例えば、10℃以上であってもよく、20℃以上であってもよく、30℃以上であってもよく、40℃以上であってもよい。
【0184】
参照試料31の各部位に応じて付与される参照画像ID(図示せず)が、参照試料31の各部位に対応する第1参照X線画像61及び第2参照X線画像62とともに、ストレージ14に記憶される。
【0185】
<画像処理システム90>
既に述べたとおり、試料30のX線画像60を撮像する間に、試料30及び冷却液33の温度は次第に上昇する。室温より低い低温において試料30のX線画像60を撮像するために、試料30のX線画像60を撮像する第1の時間を短くする必要がある。そのため、室温より低い低温に冷却された試料30のX線画像60が不鮮明になる。そこで、室温より低い低温に冷却された試料30のX線画像60を鮮明にする画像処理が必要になる。試料30のX線画像60を鮮明にする画像処理は、例えば、試料30のX線画像60の解像度を向上させる超解像処理である。
図32を参照して、室温より低い低温に冷却された試料30のX線画像60を鮮明にするための画像処理システム90を説明する。
【0186】
画像処理システム90は、サーバ装置100と、端末装置200とを備える。画像処理システム90は、インターネットのような通信ネットワーク50を介して、X線装置1のコンピュータ10(
図24を参照)に接続されている。
【0187】
(サーバ装置100)
サーバ装置100は、通信ネットワーク50を介して、X線装置1のコンピュータ10(
図24を参照)から、参照画像ID(図示せず)と、複数の第1参照X線画像61と、複数の第2参照X線画像62とを取得する。
【0188】
サーバ装置100は、第1参照X線画像61と第2参照X線画像62とを用いた学習処理により、試料30のX線画像60を鮮明にする画像処理を行うための学習済モデル113を生成する。生成された学習済モデル113は、ストレージ110(
図33を参照)に格納されるとともに、端末装置200に送信(配布)される。
【0189】
(端末装置200)
端末装置200は、通信ネットワーク50を介して、サーバ装置100から学習済モデル113を取得する。学習済モデル113は、ストレージ210(
図34参照)に格納される。端末装置200は、X線装置1のコンピュータ10から、試料30のX線画像60を取得する。試料30のX線画像60は、ストレージ210に格納される。端末装置200は、試料30のX線画像60を学習済モデル113に入力する。試料30のX線画像60は学習済モデル113によって画像処理される。学習済モデル113は、試料30のX線画像60より鮮明な試料30の補正X線画像66(
図34及び
図40を参照)を出力する。試料30の補正X線画像66は、ストレージ210に記憶される、または、ディスプレイ204(
図34を参照)に表示される。
【0190】
<ハードウェア構成>
(サーバ装置100)
図33を参照して、サーバ装置100は、入力装置101と、プロセッサ102と、メモリ103と、ディスプレイ104と、ネットワークコントローラ106と、記憶媒体ドライブ107と、ストレージ110とを含む。
【0191】
入力装置101は、各種の入力操作を受け付ける。入力装置101は、例えば、キーボード、マウスまたはタッチパネルである。
【0192】
ディスプレイ104は、サーバ装置100での処理に必要な情報などを表示する。ディスプレイ104は、例えば、第1参照X線画像61と第2参照X線画像62と暫定補正X線画像65とを表示してもよい。ディスプレイ104は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)または有機EL(Electroluminescence)ディスプレイである。
【0193】
プロセッサ102は、後述するプログラムを実行することによって、サーバ装置100の機能の実現に必要な処理を実行する。プロセッサ102は、例えば、1または複数のCPUまたはGPU(Graphics Processing Unit)などで構成される。複数のコアを有するCPUまたはGPUが、プロセッサ102として用いられてもよい。サーバ装置100においては、学習済モデル113を生成するための学習処理に適したGPUなどを採用することが好ましい。
【0194】
メモリ103は、プロセッサ102が、データ前処理プログラム111及び学習用プログラム112などを含むプログラムを実行するにあたって、プログラムコードまたはワークメモリなどを一時的に格納する記憶領域を提供する。メモリ103は、例えば、DRAM(Dynamic Random Access Memory)またはSRAM(Static Random Access Memory)などの揮発性メモリデバイスである。
【0195】
ネットワークコントローラ106は、通信ネットワーク50(
図32を参照)を介して、X線装置1及び端末装置200を含む任意の装置などとの間でプログラムまたはデータを送受信する。例えば、ネットワークコントローラ106は、通信ネットワーク50を介して、参照画像ID(図示せず)、複数の第1参照X線画像61及び複数の第2参照X線画像62のようなデータを、X線装置1から受信する。ネットワークコントローラ106は、通信ネットワーク50を介して、学習済モデル113を、端末装置200に送信する。ネットワークコントローラ106は、例えば、イーサネット(登録商標)、無線LAN(Local Area Network)またはBluetooth(登録商標)などの任意の通信方式に対応している。
【0196】
記憶媒体ドライブ107は、記憶媒体108に格納されているプログラムまたはデータを読み出す装置である。記憶媒体ドライブ107は、さらに、記憶媒体108にプログラムまたはデータを書き込む装置であってもよい。記憶媒体108は、非一過的(non-transitory)な記憶媒体であり、プログラムまたはデータを不揮発的に格納する。記憶媒体108は、例えば、光学ディスク(例えば、CD-ROMまたはDVD-ROM)などの光学記憶媒体、フラッシュメモリまたはUSB(Universal Serial Bus)メモリなどの半導体記憶媒体、ハードディスク、FD(Flexible Disk)もしくはストレージテープなどの磁気記憶媒体、または、MO(Magneto-Optical)ディスクなどの光磁気記憶媒体である。
【0197】
ストレージ110は、プロセッサ102において実行されるプログラム(例えば、データ前処理プログラム111及び学習用プログラム112などを含む)と、参照画像ID(図示せず)と、複数の第1参照X線画像61と、複数の第2参照X線画像62と、学習済モデル113と、学習用データセット115とを格納する。データ前処理プログラム111は、学習用データセット115を生成するためのプログラムである。学習用プログラム112は、学習用データセット115を用いて学習済モデル113を生成するためのプログラムである。ストレージ110は、例えば、ハードディスクまたはSSDなどの不揮発性メモリデバイスである。
【0198】
データ前処理プログラム111及び学習用プログラム112などを含む、サーバ装置100の機能を実現するためのプログラムは、非一過的な記憶媒体に格納されて流通し、ストレージ110にインストールされてもよい。サーバ装置100の機能を実現するためのプログラムは、インターネットまたはイントラネットを介して、サーバ装置100にダウンロードされてもよい。
【0199】
付記では、汎用コンピュータ(プロセッサ102)が、データ前処理プログラム111及び学習用プログラム112などを含むプログラムを実行することによって、サーバ装置100の機能を実現する例を示すが、これに限られることなく、サーバ装置100の機能の全部または一部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)またはFPGA(Field-Programmable Gate Array)のような集積回路を用いて実現されてもよい。
【0200】
(端末装置200)
図34を参照して、端末装置200は、入力装置201と、プロセッサ202と、メモリ203と、ディスプレイ204と、ネットワークコントローラ206と、記憶媒体ドライブ207と、ストレージ210とを含む。
【0201】
入力装置201は、各種の入力操作を受け付ける。入力装置201は、例えば、キーボード、マウスまたはタッチパネルである。
【0202】
ディスプレイ204は、端末装置200での処理に必要な情報などを表示する。ディスプレイ204は、例えば、試料30の補正X線画像66を表示する。ディスプレイ204は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)または有機EL(Electroluminescence)ディスプレイである。
【0203】
プロセッサ202は、後述するプログラムを実行することによって、端末装置200の機能の実現に必要な処理を実行する。プロセッサ202は、例えば、1または複数のCPUまたはGPUなどで構成される。複数のコアを有するCPUまたはGPUが、プロセッサ202として用いられてもよい。
【0204】
メモリ203は、プロセッサ202が、プログラムを実行するにあたって、プログラムコードまたはワークメモリなどを一時的に格納する記憶領域を提供する。メモリ203は、例えば、DRAMやSRAMなどの揮発性メモリデバイスである。
【0205】
ネットワークコントローラ206は、通信ネットワーク50(
図32を参照)を介して、X線装置1及びサーバ装置100を含む任意の装置などとの間でプログラムまたはデータを送受信する。例えば、ネットワークコントローラ206は、通信ネットワーク50を介して、試料30のX線画像60のようなデータを、X線装置1から受信する。ネットワークコントローラ206は、通信ネットワーク50を介して、学習済モデル113を、サーバ装置100から受信する。ネットワークコントローラ206は、例えば、イーサネット(登録商標)、無線LANまたはBluetooth(登録商標)などの任意の通信方式に対応している。
【0206】
記憶媒体ドライブ207は、記憶媒体208に格納されているプログラムまたはデータを読み出す装置である。記憶媒体ドライブ207は、さらに、記憶媒体208にプログラムまたはデータを書き込む装置であってもよい。記憶媒体208は、非一過的(non-transitory)な記憶媒体であり、プログラムまたはデータを不揮発的に格納する。記憶媒体208は、例えば、光学ディスク(例えば、CD-ROMまたはDVD-ROM)などの光学記憶媒体、フラッシュメモリまたはUSBメモリなどの半導体記憶媒体、ハードディスク、FDもしくはストレージテープなどの磁気記憶媒体、または、MOディスクなどの光磁気記憶媒体である。
【0207】
ストレージ210は、プロセッサ202において実行されるプログラム(例えば、画像処理プログラム211などを含む)と、学習済モデル113と、試料30のX線画像60と、試料30の補正X線画像66とを格納する。画像処理プログラム211は、試料30のX線画像60を学習済モデル113に入力して、試料30の補正X線画像66を生成するためのプログラムである。ストレージ210は、例えば、ハードディスクまたはSSDなどの不揮発性メモリデバイスである。
【0208】
画像処理プログラム211などを含む、端末装置200の機能を実現するためのプログラムは、非一過的な記憶媒体に格納されて流通し、ストレージ210にインストールされてもよい。端末装置200の機能を実現するためのプログラムは、インターネットまたはイントラネットを介して、端末装置200にダウンロードされてもよい。
【0209】
付記では、汎用コンピュータ(プロセッサ202)が、画像処理プログラム211などを含むプログラムを実行することによって、端末装置200の機能を実現する例を示すが、これに限られることなく、端末装置200の機能の全部または一部は、ASICまたはFPGAのような集積回路を用いて実現されてもよい。
【0210】
<学習済モデル113の生成>
図32及び
図35から
図39を参照して、付記の学習処理(学習済モデル113の生成方法)を説明する。付記の学習処理は、例えば、サーバ装置100によって実行される。サーバ装置100は、学習済モデル生成装置として機能する。
【0211】
図35を参照して、サーバ装置100は、参照X線画像受付部120と、データ前処理部121と、学習部122と、出力部127とを含む。学習部122は、学習用モデル123と、学習用プログラム125とを含む。学習用モデル123は、ニューラルネットワーク構造123Nとパラメータ123Pとで構成される。ニューラルネットワーク構造123Nは、ディープニューラルネットワーク(DNN)に分類されるニューラルネットワーク構造であり、例えば、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)構造を含む。ニューラルネットワーク構造123Nは、複数の畳み込み層を含んでもよい。ニューラルネットワーク構造123Nは予め構築され、サーバ装置100(ストレージ110)に格納されている。
【0212】
参照X線画像受付部120は、X線装置1から、参照画像IDと複数の第1参照X線画像61と複数の第2参照X線画像62とを受け付ける。参照X線画像受付部120は、参照画像IDと複数の第1参照X線画像61と複数の第2参照X線画像62とを、ストレージ110に格納する。
【0213】
データ前処理部121は、ストレージ110から参照画像IDと複数の第1参照X線画像61と複数の第2参照X線画像62とを読み出す。データ前処理部121は、参照画像IDと、複数の第1参照X線画像61のうち当該参照画像IDに対応する第1参照X線画像61と、複数の第2参照X線画像62のうち当該参照画像IDに対応する第2参照X線画像62とを互いに対応付けることによって、学習用データセット115を生成する。
図36に示されるように、学習用データセット115は、複数のデータの組(学習用データ116)を含む。複数のデータの組の各々(学習用データ116の各々)は、参照画像IDと、参照画像IDに対応する第1参照X線画像61と、参照画像IDに対応する第2参照X線画像62とを含む。学習用モデル123の学習の精度を向上させるために、データ前処理部121は、バイキュービック補間法などを用いて、複数の第1参照X線画像61及び複数の第2参照X線画像62を望ましいサイズまでアップスケールしてもよい。
【0214】
図35及び
図37を参照して、学習部122は、学習済モデル113を生成する。学習部122は、学習用データセット115を用いた機械学習により、学習用モデル123のパラメータ123Pの値を更新する。
【0215】
具体的には、学習部122は、学習用プログラム125を用いることにより、パラメータ123Pの値を更新する。学習用プログラム125は、学習用データセット115の第1参照X線画像61を、学習用モデル123に入力する。学習用モデル123は、暫定補正X線画像65を出力する。
図38を参照して、暫定補正X線画像65の一例を示す。
図38では、参照試料31は、上述した光ファイバケーブルである。暫定補正X線画像65と対応する第2参照X線画像62との間の誤差を最小化するように、学習用プログラム125はパラメータ123Pを繰り返し更新して最適化する。具体的には、参照画像IDが「1」の第1参照X線画像61を学習用モデル123に入力することによって得られる暫定補正X線画像65と、参照画像IDが「1」の第2参照X線画像62との間の誤差を最小化するように、学習用モデル123のパラメータ123Pを繰り返し更新して最適化する。他の参照画像IDの各々についても同様に、暫定補正X線画像65と対応する第2参照X線画像62との間の誤差を最小化するように、学習用モデル123のパラメータ123Pを繰り返し更新して最適化する。学習用モデル123の学習が終了すると、学習済モデル113が生成される。
【0216】
図40を参照して、学習済モデル113は、ニューラルネットワーク構造113Nと、学習済パラメータ113Pとを有する。ニューラルネットワーク構造113Nは、ディープニューラルネットワーク(DNN)に分類されるニューラルネットワーク構造であり、例えば、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)構造を含む。ニューラルネットワーク構造113Nは、複数の畳み込み層を含んでもよい。学習済パラメータ113Pは、更新が完了したパラメータ123Pである。
【0217】
図35を参照して、出力部127は、学習済モデル113を出力する。具体的には、出力部127は、学習済モデル113を、ストレージ110に格納する。出力部127は、ネットワークコントローラ206を通じて、ストレージ110に格納されている学習済モデル113を、端末装置200に送信する。
【0218】
図39を参照して、付記の学習処理方法を説明する。付記の学習処理方法は、例えば、サーバ装置100において実行される。
図39に示される各ステップは、例えば、サーバ装置100のプロセッサ102がデータ前処理プログラム111(
図33を参照)及び学習用プログラム112(
図33を参照)を含むプログラムを実行することによって実現される。
【0219】
付記の学習処理方法は、X線装置1から、参照画像IDと複数の第1参照X線画像61と複数の第2参照X線画像62とを受け付けること(ステップS11)を備える。参照X線画像受付部120(
図35を参照)が、ステップS11を実行する。参照X線画像受付部120は、参照画像IDと複数の第1参照X線画像61と複数の第2参照X線画像62とを、ストレージ110に格納する。
【0220】
付記の学習処理方法は、学習用データセット115を生成すること(ステップS12)を備える。学習用データセット115は、参照画像IDと、複数の第1参照X線画像61のうち当該参照画像IDに対応する第1参照X線画像61と、複数の第2参照X線画像62のうち当該参照画像IDに対応する第2参照X線画像62とを互いに対応付けることによって生成される。データ前処理部121(
図35を参照)は、ストレージ110に格納されている参照画像IDと複数の第1参照X線画像61と複数の第2参照X線画像62とを読み出して、ステップS12を実行する。学習用モデル123の学習の精度を向上させるために、データ前処理部121は、バイキュービック補間法などを用いて、複数の第1参照X線画像61及び複数の第2参照X線画像62を望ましいサイズまでアップスケールしてもよい。データ前処理部121は、学習用データセット115をストレージ110に格納する。
【0221】
付記の学習処理方法は、学習用データセット115を学習用モデル123に入力して、学習済モデル113を生成すること(ステップS13)を備える。学習部122(
図35を参照)が、ステップS13を実行する。具体的には、ステップS13は、ステップS14と、ステップS15とを含む。ステップS14では、学習用データセット115に含まれる第1参照X線画像61を学習用モデル123に入力して、暫定補正X線画像65を生成する。ステップS14では、暫定補正X線画像65と対応する第2参照X線画像62との間の誤差を最小化するように、学習用モデル123のパラメータ123Pを繰り返し更新して最適化する。例えば、参照画像IDが「1」の第1参照X線画像61を学習用モデル123に入力することによって得られる暫定補正X線画像65と、参照画像IDが「1」の第2参照X線画像62との間の誤差を最小化するように、学習用モデル123のパラメータ123Pを繰り返し更新して最適化する。他の参照画像IDの各々についても同様に、暫定補正X線画像65と対応する第2参照X線画像62との間の誤差を最小化するように、学習用モデル123のパラメータ123Pを繰り返し更新して最適化する。こうして、学習用モデル123から学習済モデル113が生成される。
【0222】
付記の学習処理方法は、学習済モデル113を出力すること(ステップS16)を備える。出力部127(
図35を参照)が、ステップS16を実行する。ステップS16は、例えば、ステップS17と、ステップS18とを含む。ステップS17では、出力部127は、学習済モデル113をストレージ210に格納する。ステップS18では、出力部127は、学習済モデル113を端末装置200に送信する。具体的には、出力部127は、ストレージ210から学習済モデル113を読み出して、ネットワークコントローラ206を通じて、学習済モデル113を端末装置200に送信する。学習済モデル113は、ストレージ210(
図34を参照)に格納される。こうして、付記の学習処理方法は完了する。
【0223】
<学習済モデル113を利用した画像処理>
図32及び
図40から
図42を参照して、学習済モデル113の利用した付記の画像処理を説明する。付記の画像処理は、例えば、端末装置200によって実行される。端末装置200は、X線画像処理装置として機能する。
【0224】
図40に示されるように、端末装置200は、X線画像受付部220と、画像処理部221と、出力部227とを含む。画像処理部221は、学習済モデル113を含む。
【0225】
X線画像受付部220は、X線装置1から試料30のX線画像60を受け付ける。X線画像受付部220は、試料30のX線画像60を、ストレージ210に格納する。
【0226】
画像処理部221は、試料30のX線画像60を学習済モデル113に入力して、試料30の補正X線画像66を生成する。学習済モデル113は、第1の時間と同程度の長さである第2の時間にわたって撮像された第1参照X線画像61と、第1の時間及び第2の時間より長い第3の時間にわたって撮像された第2参照X線画像62とによって学習されている。そのため、試料30の補正X線画像66の鮮明度は、試料30のX線画像60の鮮明度より向上する。例えば、試料30の補正X線画像66は、第2参照X線画像62と同程度の鮮明度を有している。試料30の補正X線画像66は、あたかも、室温より低い低温において、第2参照X線画像62の撮像時間である第3の時間にわたって試料30を撮像することによって取得される試料30のX線画像60と同程度の鮮明度を有している。
図41を参照して、補正X線画像66の一例を示す。
図41では、試料30は、上述した光ファイバケーブルである。
【0227】
出力部227は、試料30の補正X線画像66を出力する。例えば、出力部227は、試料30の補正X線画像66を、ストレージ210に格納する。出力部227は、試料30の補正X線画像66を、ディスプレイ204(
図34を参照)に表示する。
【0228】
図42を参照して、付記のX線画像処理方法を説明する。付記のX線画像処理方法は、例えば、端末装置200において実行される。
図42に示される各ステップは、例えば、端末装置200のプロセッサ202が画像処理プログラム211(
図34を参照)を含むプログラムを実行することによって実現される。
【0229】
付記のX線画像処理方法は、X線装置1から、試料30のX線画像60を受け付けること(ステップS21)を備える。X線画像受付部220が、ステップS21を実行する。X線画像受付部220は、試料30のX線画像60をストレージ210に格納する。
【0230】
付記のX線画像処理方法は、試料30のX線画像60を学習済モデル113に入力して、補正X線画像66を生成すること(ステップS22)を備える。画像処理部221が、ステップS22を実行する。学習済モデル113は、第1の時間と同程度の長さである第2の時間にわたって撮像された第1参照X線画像61と、第1の時間及び第2の時間より長い第3の時間にわたって撮像された第2参照X線画像62とによって学習されている。そのため、試料30の補正X線画像66の鮮明度は、試料30のX線画像60の鮮明度より向上する。
【0231】
付記のX線画像処理方法は、補正X線画像66を出力すること(ステップS23)を備える。ステップS23は、例えば、補正X線画像66をストレージ210に格納すること(ステップS24)と、補正X線画像66をディスプレイ204に表示すること(ステップS25)とを含む。こうして、付記のX線画像処理方法は完了する。
【0232】
(画像処理システム90及び画像処理方法の変形例)
第1変形例の画像処理システム90では、サーバ装置100及び端末装置200は、通信ネットワーク50を介して、X線装置1に通信可能に接続されていなくてもよい。第1変形例の画像処理システム90では、参照画像IDと複数の第1参照X線画像61と複数の第2参照X線画像62とが、非一過的な記憶媒体を用いて、X線装置1(ストレージ14)からサーバ装置100(ストレージ110)に受け渡されてもよい。第1変形例の画像処理システム90では、室温より低い低温で第1の時間にわたって試料30を撮像することによって取得された試料30のX線画像60を、非一過的な記憶媒体を用いて、X線装置1(ストレージ14)から端末装置200(ストレージ210)に受け渡されてもよい。
【0233】
第2変形例の画像処理システム90はサーバ装置100を備え、サーバ装置100において、学習済モデル113が生成されるとともに、学習済モデル113を生成した画像処理が行われる。第2変形例の画像処理方法は、サーバ装置100で実行される。第3変形例の画像処理システム90は端末装置200を備え、端末装置200において、学習済モデル113が生成されるとともに、学習済モデル113を生成した画像処理が行われる。第3変形例の画像処理方法は、端末装置200で実行される。
【0234】
(付記の符号の説明)
1 低温用X線装置、2 X線撮像装置、3 X線源、3a X線、4 ステージ、4a 試料載置面、4r 回転軸、5 冷却容器、5c 中心軸、6 ステージ駆動装置、7 X線検出器、8 X線検出素子、10 コンピュータ、11 プロセッサ、12 制御部、13 画像再構成部、14 ストレージ、20 中空容器、21 底板、22 管、22a 第1端、22b 第2端、22c 外側面、22d 内側面、22e 収容空間、23 第1開口、25 固定部材、26 貫通孔、27 第2開口、30 試料、31 参照試料、33 冷却液、35 断熱容器、35s 外側面、36 第1断熱部材、36a 基部、36b 環状突出部、37 凹部、38 第2断熱部材、39 貫通孔、50 通信ネットワーク、61 第1参照X線画像、62 第2参照X線画像、60 X線画像、65 暫定補正X線画像、66 補正X線画像、90 画像処理システム、100 サーバ装置、101 入力装置、102 プロセッサ、103 メモリ、104 ディスプレイ、106 ネットワークコントローラ、107 記憶媒体ドライブ、108 記憶媒体、110 ストレージ、111 前処理プログラム、112,125 学習用プログラム、113 学習済モデル、113N,123N ニューラルネットワーク構造、113P 学習済パラメータ、115 学習用データセット、116 学習用データ、120 参照X線画像受付部、121 前処理部、122 学習部、123 学習用モデル、123P パラメータ、127,227 出力部、200 端末装置、201 入力装置、202 プロセッサ、203 メモリ、204 ディスプレイ、206 ネットワークコントローラ、207 記憶媒体ドライブ、208 記憶媒体、210 ストレージ、211 画像処理プログラム、220 受付部、221 画像処理部。
【0235】
(付記の請求の範囲)
(付記1) 冷却容器であって、前記冷却容器は、第1端と前記第1端とは反対側の第2端とを含む管と、前記第1端を閉塞する底板とを含む中空容器と、前記中空容器を収容する断熱容器とを備え、前記管と前記底板とによって規定される収容空間に、試料と、前記試料を冷却する冷却液とが収容され、前記試料は、前記冷却液に浸漬され、かつ、前記管または前記底板の少なくとも一つによって支持され、前記管及び前記断熱容器は、低密度材料で形成されており、前記第2端に、前記収容空間に連通する第1開口が設けられており、前記断熱容器には、前記第1開口に連通する貫通孔が設けられている、冷却容器。
【0236】
(付記2) 前記管は、円筒形状を有しており、前記断熱容器のうち前記管を覆う部分の外側面は、円筒外側面の形状を有している、付記1に記載の冷却容器。
【0237】
(付記3) 前記管は、前記冷却液及び前記断熱容器の両方に接触している、付記1または付記2に記載の冷却容器。
【0238】
(付記4) 前記断熱容器は、前記管の全ての外側面を覆っている、付記1から付記3のいずれか一項に記載の冷却容器。
【0239】
(付記5) 前記断熱容器は、前記中空容器の全ての外表面を覆っている、付記1から付記4のいずれか一項に記載の冷却容器。
【0240】
(付記6) 前記断熱容器は、前記底板に接触している第1断熱部材と、前記管及び前記第1断熱部材に接触している第2断熱部材とを含む、付記1から付記5のいずれか一項に記載の冷却容器。
【0241】
(付記7) 前記第1断熱部材に凹部が形成されており、前記第2断熱部材は、前記凹部に嵌合されている、付記6に記載の冷却容器。
【0242】
(付記8) 前記管は、フッ素系樹脂またはポリエチレン樹脂で形成されている、付記1から付記7のいずれか一項に記載の冷却容器。
【0243】
(付記9) 前記管は、ポリテトラフルオロエチレンまたはパーフルオロアルコキシアルカンで形成されている、付記8に記載の冷却容器。
【0244】
(付記10) 前記断熱容器は、発泡スチロールで形成されている、付記1から付記9のいずれか一項に記載の冷却容器。
【0245】
(付記11) 前記冷却液は、ドライアイスとアルコールの混合物である、付記1から付記10のいずれか一項に記載の冷却容器。
【0246】
(付記12) 前記中空容器は、固定部材をさらに含み、前記試料は、前記固定部材を介して、前記管に対して支持されており、前記固定部材には、前記管の長手方向に沿って延在するとともに前記固定部材を貫通する第2開口が設けられている、付記1から付記11のいずれか一項に記載の冷却容器。
【0247】
(付記13) X線撮像装置と、付記1から付記11のいずれか一項に記載の前記冷却容器とを備え、前記X線撮像装置は、X線を放射するX線源と、前記冷却容器を支持するステージと、前記冷却容器を通過した前記X線を検出するX線検出器とを含む、X線装置。
【0248】
(付記14) 前記ステージは、前記管の長手方向に沿って延在する前記冷却容器の中心軸のまわりに前記冷却容器を回転可能であるとともに、前記管の前記長手方向に沿って移動可能である、付記13に記載のX線装置。
【0249】
(付記15) 室温より低い低温で第1の時間にわたって試料を撮像することによって取得された前記試料のX線画像を受け付けるX線画像受付部と、画像処理部とを備え、前記画像処理部は、前記試料の前記X線画像をニューラルネットワークに入力して、前記試料の前記X線画像より鮮明な前記試料の補正X線画像を生成し、前記ニューラルネットワークは、学習用データセットを用いた学習により生成され、前記学習用データセットは、参照試料を冷却することなく前記参照試料を第2の時間にわたって撮像することによって取得された第1参照X線画像と、前記参照試料を冷却することなく前記参照試料を第3の時間にわたって撮像することによって取得された第2参照X線画像とを含み、前記第2の時間は、前記第1の時間の0.5倍以上2.0倍以下であり、前記第3の時間は、前記第1の時間より長く、かつ、前記第2の時間より長い、X線画像処理装置。
【0250】
(付記16) 付記13または付記14に記載の前記X線装置を用いて、室温より低い低温で第1の時間にわたって前記試料を撮像することによって前記試料のX線画像を取得するステップと、前記試料の前記X線画像をニューラルネットワークに入力して、前記試料の前記X線画像より鮮明な前記試料の補正X線画像を生成するステップとを備え、前記ニューラルネットワークは、学習用データセットを用いた学習により生成され、前記学習用データセットは、参照試料を冷却することなく前記X線装置を用いて前記参照試料を第2の時間にわたって撮像することによって取得された第1参照X線画像と、前記参照試料を冷却することなく前記X線装置を用いて前記参照試料を第3の時間にわたって撮像することによって取得された第2参照X線画像とを含み、前記第2の時間は、前記第1の時間の0.5倍以上2.0倍以下であり、前記第3の時間は、前記第1の時間より長く、かつ、前記第2の時間より長い、X線画像処理方法。
【0251】
今回開示された付記はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。付記の開示の範囲は上記した付記ではなく請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0252】
1 低温用X線装置、100 端末装置、200 サーバ装置、300 光ケーブル品質評価システム、301 常温用X線装置、302 評価装置、303 入力部、304 画像処理部、305 指標算出部、306 判定部、351 2値化部、352 セグメンテーション部、353 距離変換部、354 光ファイバ領域検出部、355 中心検出部、400 光ケーブル、600 表示装置。
【要約】
本開示の細線の指標算出方法は、複数の細線を有するケーブルの長手方向に垂直な複数の断面のX線画像を得るステップと、複数の断面のX線画像の各々から、複数の細線の各々の中心位置を求めるステップと、各細線の中心位置に基づいて、各細線の曲がりを表わす指標を求めるステップとを備える。