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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】進行波の特性変化のための電圧制御
(51)【国際特許分類】
   H01J 49/06 20060101AFI20240312BHJP
   H01J 49/02 20060101ALI20240312BHJP
   G01N 27/622 20210101ALI20240312BHJP
【FI】
H01J49/06 200
H01J49/02 200
G01N27/622
【請求項の数】 28
(21)【出願番号】P 2022516630
(86)(22)【出願日】2020-09-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-16
(86)【国際出願番号】 US2020050920
(87)【国際公開番号】W WO2021055374
(87)【国際公開日】2021-03-25
【審査請求日】2022-06-29
(31)【優先権主張番号】62/901,177
(32)【優先日】2019-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520445886
【氏名又は名称】モビリオン・システムズ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ダニエル・デボード
(72)【発明者】
【氏名】アーミド・エム・ハミド
(72)【発明者】
【氏名】リュウリン・デン
【審査官】鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-509772(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0103261(US,A1)
【文献】特表2016-526271(JP,A)
【文献】Sarah E. Haynes,et al.,"Variable-Velocity Traveling-Wave Ion Mobility Separation Enhancing Peak Capacity for Data-Independent Acquisition Proteomics",Analytical Chemistry,米国,American Chemical Society,2017年05月04日,Volume 89,Page 5669-5672
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 49/00
G01N 27/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
方法であって:
第1の端部から第2の端部まで第1の方向に沿って延びているイオンチャネルを提供することと;
該イオンチャネルの第1の端部でイオン群を提供することと;
コントローラによって、第1の電圧信号をイオンチャネルに隣接する第1の複数の電極に印加することと、
コントローラによって、RF電圧信号を、第1の電極と、第1の方向に対して横向きの第2の方向に沿って第1の電極から離間された第2の電極とを含む第2の複数の電極に印加すること、ここで、第1の複数の電極は、第1の電極と第2の電極との間に位置し、第1の方向に沿って配置されている、と、
第1の電圧信号を受信したことに基づいて、該第1の複数の電極によって、分離時間中に第1の方向に沿って移動する第1の移動駆動電位を生成することと、
該イオン群を、分離時間中に該イオンチャネルの第1の端部から該イオンチャネルの第2の端部まで駆動することと、
該イオン群を、分離時間中にイオンパケットに分離することと、
ここで、コントローラは、第1の複数の電極に電気的に連結された複数の進行波制御回路を含み、該複数の進行波制御回路は、複数の進行波電圧信号を生成するように構成され、第1の電圧信号は、複数の進行波電圧信号を含み、
コントローラは、複数の進行波制御回路に通信可能に連結されたマスタ制御回路を含み、そして、
マスタ制御回路によって、複数の進行波電圧信号の振幅および/または周波数と、複数の進行波電圧信号のうちの1つまたはそれ以上の進行波電圧信号間の位相差とのうちの1つまたはそれ以上を決定することと、
マスタ制御回路によって、1つまたはそれ以上の進行波制御信号を複数の進行波制御回路に提供することと、ここで、1つまたはそれ以上の進行波制御信号は、複数の進行波電圧信号の振幅および/または周波数、ならびに複数の進行波電圧信号のうちの1つまたはそれ以上の進行波電圧信号間の位相差のうちの1つまたはそれ以上を示す
を含み、
該第1の移動駆動電位の移動速度および振幅のうちの1つまたはそれ以上は、分離時間
中に変化する、前記方法。
【請求項2】
第1の移動駆動電位の移動速度は、分離時間の第1の時間セグメント中に減少する、請求項に記載の方法。
【請求項3】
第1の移動駆動電位は、第1の時間セグメントの第1の時間サブセグメント中に第1の速度を有し、第1の時間セグメントの第2の時間サブセグメント中に第1の速度より小さい第2の速度を有し、第2の時間サブセグメントは、第1の時間サブセグメントの後に続く、請求項に記載の方法。
【請求項4】
移動速度は、分離時間の関数として単調に減少する、請求項に記載の方法。
【請求項5】
移動速度の減少は、線形的、二次関数的および指数関数的のうちの1つである、請求項に記載の方法。
【請求項6】
第1の移動駆動電位の移動速度は、第1の時間セグメント中に増加する、請求項に記載の方法。
【請求項7】
第1の移動駆動電位は、第1の時間セグメントの第1の時間サブセグメント中に第1の速度を有し、第1の時間セグメントの第2の時間サブセグメント中に第1の速度よりも大きい第2の速度を有し、第2の時間サブセグメントは、第1の時間サブセグメントの後に続く、請求項に記載の方法。
【請求項8】
移動速度は、分離時間の関数として単調に増加する、請求項に記載の方法。
【請求項9】
移動速度の増加は、線形的、二次関数的および指数関数的のうちの1つである、請求項に記載の方法。
【請求項10】
分離時間は、第1の時間セグメントに先行する第2の時間セグメントを含み、第1の駆動電位の移動速度は、第2の時間セグメント中、一定のままである、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
マスタ制御回路によって、分離時間の第1の時間セグメント中に、第1の移動駆動電位の移動速度の変化を判定することをさらに含む、請求項に記載の方法。
【請求項12】
第2の端部でイオンチャネルを退出する、提供されたイオン群のイオンパケットを検出することと;
該イオンパケットを検出したことに基づいて第1の時間セグメントの開始時刻を設定することと
をさらに含む、請求項に記載の方法。
【請求項13】
第1の複数の電極の一部の長さは、第1の方向に沿って減少する、請求項に記載の方法。
【請求項14】
第1の複数の電極の一部の長さは、第1の方向に沿って増加する、請求項に記載の方法。
【請求項15】
システムであって:
第1の端部から第2の端部まで第1の方向に沿って延びており、イオンチャネルの第1の端部でイオン群を受け取るように構成されているイオンチャネルと;
第1の電圧信号を該イオンチャネルに隣接する第1の複数の電極に、そして、RF電圧信号を、第1の電極と、第1の方向に対して横向きの第2の方向に沿って第1の電極から離間された第2の電極とを含む第2の複数の電極に印加するように構成されたコントローラ、ここで、第1の複数の電極は、第1の電極と第2の電極との間に位置し、第1の方向に沿って配置されている、とを含み、
第1の複数の電極は、第1の電圧信号を受信したことに基づいて、分離時間中に第1の方向に沿って移動する第1の移動駆動電位を生成するように構成され、
該第1の移動駆動電位は、イオン群を該イオンチャネルの第1の端部から第2の端部まで駆動し、該イオンを分離時間中にイオンパケットに分離し、
コントローラは、第1の複数の電極に電気的に連結された複数の進行波制御回路を含み、該複数の進行波制御回路は、複数の進行波電圧信号を生成するように構成され、第1の電圧信号は、複数の進行波電圧信号を含み、
コントローラは、複数の進行波制御回路に通信可能に連結されたマスタ制御回路を含み、該マスタ制御回路は:
複数の進行波電圧信号の振幅および/または周波数、ならびに複数の進行波電圧信号のうちの1つまたはそれ以上の進行波電圧信号間の位相差のうちの1つまたはそれ以上を決定し;そして、
1つまたはそれ以上の進行波制御信号を複数の進行波制御回路に提供するように構成され、1つまたはそれ以上の進行波制御信号は、複数の進行波電圧信号の振幅および/または周波数、ならびに複数の進行波電圧信号のうちの1つまたはそれ以上の進行波電圧信号間の位相差のうちの1つまたはそれ以上を示し、
該第1の移動駆動電位の移動速度および振幅のうちの1つまたはそれ以上は、分離時間中に変化する、前記システム。
【請求項16】
第1の移動駆動電位の移動速度は、分離時間の第1の時間セグメント中に減少する、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
第1の移動駆動電位は、第1の時間セグメントの第1の時間サブセグメント中に第1の速度を有し、第1の時間セグメントの第2の時間サブセグメント中に第1の速度より小さい第2の速度を有し、第2の時間サブセグメントは、第1の時間サブセグメントの後に続く、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
移動速度は、分離時間の関数として単調に減少する、請求項16に記載のシステム。
【請求項19】
移動速度の減少は、線形的、二次関数的および指数関数的のうちの1つである、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
第1の移動駆動電位の移動速度は、第1の時間セグメント中に増加する、請求項15に記載のシステム。
【請求項21】
第1の移動駆動電位は、第1の時間セグメントの第1の時間サブセグメント中に第1の速度を有し、第1の時間セグメントの第2の時間サブセグメント中に第1の速度よりも大きい第2の速度を有し、第2の時間サブセグメントは、第1の時間サブセグメントの後に続く、請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
移動速度は、分離時間の関数として単調に増加する、請求項20に記載のシステム。
【請求項23】
移動速度の増加は、線形的、二次関数的および指数関数的のうちの1つである、請求項22に記載のシステム。
【請求項24】
分離時間は、第1の時間セグメントに先行する第2の時間セグメントを含み、第1の駆動電位の移動速度は、第2の時間セグメント中、一定のままである、請求項15に記載のシステム。
【請求項25】
マスタ制御回路は、分離時間の第1の時間セグメント中に、第1の移動駆動電位の移動速度の変化を判定するようにさらに構成されている、請求項15に記載のシステム。
【請求項26】
第2の端部でイオンチャネルを退出する受け取られたイオン群のイオンパケットを検出するように構成された検出器をさらに含み、コントローラは、イオンパケットを検出したことに基づいて第1の時間セグメントの開始時刻を設定するように構成されている、請求項25に記載のシステム。
【請求項27】
第1の複数の電極の一部の長さは、第1の方向に沿って減少する、請求項16に記載のシステム。
【請求項28】
第1の複数の電極の一部の長さは、第1の方向に沿って増加する、請求項22に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年9月16日に出願された「Voltage Control for Traveling Wave Characteristic Variation」と題する米国仮特許出願第62/901,177号の優先権の利益を主張し、その開示全文が参照によって本明細書に組み入れられる。
【0002】
本開示は、イオンモビリティスペクトロメトリで使用するためのシステムおよび方法、より詳細には、分離時間中に第1の方向に沿って移動する移動駆動電位(例えば、波形)を使用して、その移動度に基づいてイオンを分離するシステムおよび方法に関し、第1の移動駆動電位の移動速度および振幅のうちの1つまたはそれ以上が分離時間の第1の時間セグメント中に変化する。
【背景技術】
【0003】
イオンモビリティスペクトロメトリ(IMS)は、気相中のイオンをその移動度に基づいて分離し同定する技術である。例えば、IMSは、異なる移動度を有する構造異性体および高分子を分離するために利用される。IMSは、静的または動的な背景ガス中のイオンの混合物に、一定の、または経時変化する電界を印加することに頼る。移動度が大きい(または衝突断面積[CCS]が小さい)イオンは、移動度が小さい(またはCCSが大きい)イオンと比べて電界の影響下でより高速で移動する。IMSデバイスの分離距離(例えば、ドリフトチューブ内)にわたって電界を印加することによって、イオン混合物のイオンは移動度に基づいて空間的に分離される。異なる移動度を有するイオンは、ドリフトチューブの端部にそれぞれ異なる時間に到達するため(時間的分離)、イオンは、ドリフトチューブの端部にある検出器による検出時間に基づいて同定される。移動度分離の分解能は、分離距離を変えることによって変更される。
【0004】
質量分析法(MS)は、化学種の混合物をその質量電荷比に基づいて分離できる分析技術である。MSは、化学種の混合物を電離させ、次いで、電界および/または磁界の存在下でイオン混合物を加速させることを伴う。質量分析計によっては、同じ質量電荷比を有するイオンは同じ偏向を受ける。異なる質量電荷比を有するイオンは、異なる偏向を受けることができ、検出器(例えば、電子増倍管)による検出の空間的位置に基づいて同定される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
先行技術のIMSシステムでは、イオン移動度範囲が大きくなると、一定の速度を有する移動電位波形を用いたイオン移動度分離は、イオン移動度範囲全体にわたって最も効率的な分離をもたらさない可能性がある。例えば、分離後、移動度の高い(先に到着する)イオンパケットは、移動度の低い(後に到着する)イオンパケットに比べて狭くなり得る。したがって、広い移動度範囲を持つイオン群に対して、時間をかけて改善されたより効率的な分離を提供するIMSシステムおよび方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一般的に、本開示の実施形態は、イオン移動度分離の電圧制御のためのシステムおよび対応する方法を提供する。
【0007】
方法は、第1の端部から第2の端部まで第1の方向に沿って延びるイオンチャネルを提供することを含む。本方法は、イオンチャネルの第1の端部でイオンを提供することをさらに含む。本方法は、コントローラによって、第1の電圧信号をイオンチャネルに隣接する第1の複数の電極に印加することをさらに含む。本方法は、第1の複数の電極によって、分離時間中に第1の方向に沿って移動する第1の移動駆動電位を生成することをさらに含む。生成することは、第1の電圧信号を受信したことに基づく。第1の移動駆動電位の移動速度および振幅のうちの1つまたはそれ以上が分離時間の第1の時間セグメント中に変化する。
【0008】
一実施態様では、イオンチャネルは、第1の表面と、第1の表面に隣接する第2の表面との間で画成される。第2の表面は、第1の電極と、第1の方向に対して横向きの第2の方向に沿って第1の電極から離間された第2の電極とを含む第2の複数の電極を含む。第1の複数の電極は、第1の電極と第2の電極との間に位置し、第1の方向に沿って配置されている。別の実施態様では、第1の移動駆動電位の移動速度は、第1の時間セグメント中に減少する。さらに別の実施態様では、第1の移動駆動電位は、第1の時間セグメントの第1の時間サブセグメント中に第1の速度を有し、第1の時間セグメントの第2の時間サブセグメント中に第1の速度より小さい第2の速度を有する。第2の時間サブセグメントは、第1の時間サブセグメントの後に続く。
【0009】
一実施態様では、移動速度は、分離時間の関数として単調に減少する。別の実施態様では、移動速度の増加は、線形的、二次関数的および指数関数的のうちの1つである。さらに別の実施態様では、第1の移動駆動電位の移動速度は、第1の時間セグメント中に増加する。一実施態様では、第1の移動駆動電位は、第1の時間セグメントの第1の時間サブセグメント中に第1の速度を有し、第1の時間セグメントの第2の時間サブセグメント中に第1の速度より大きい第2の速度を有する。第2の時間サブセグメントは、第1の時間サブセグメントの後に続く。別の実施態様では、移動速度は、分離時間の関数として単調に増加する。さらに別の実施態様では、移動速度の増加は、線形的、二次関数的および指数関数的のうちの1つである。
【0010】
一実施態様では、分離時間は、第1の時間セグメントに先行する第2の時間セグメントを含む。第1の駆動電位の移動速度は、第2の時間セグメント中、一定のままである。別の実施態様では、コントローラは、第1の複数の電極に電気的に連結された複数の進行波制御回路を含む。複数の進行波制御回路は、複数の進行波電圧信号を生成するように構成されている。第1の電圧信号は、複数の進行波電圧信号を含む。
【0011】
一実施態様では、コントローラは、複数の進行波制御回路に通信可能に連結されたマスタ制御回路を含む。本方法は、マスタ制御回路によって、複数の進行波電圧信号の振幅および/または周波数と、複数の進行波電圧信号のうちの1つまたはそれ以上の進行波電圧信号間の位相差とのうちの1つまたはそれ以上を決定することをさらに含む。本方法は、マスタ制御回路によって、1つまたはそれ以上の進行波制御信号を複数の進行波制御回路に提供することをさらに含む。1つまたはそれ以上の進行波制御信号は、複数の進行波電圧信号の振幅および/または周波数と、複数の進行波電圧信号のうちの1つまたはそれ以上の進行波電圧信号間の位相差とのうちの1つまたはそれ以上を示す。
【0012】
一実施態様では、本方法は、マスタ制御回路によって、分離時間の第1の時間セグメント中に、第1の移動駆動電位の移動速度の変化を判定することをさらに含む。別の実施態様では、本方法は、第2の端部でイオンチャネルを退出する、提供されたイオンのイオンパケットを検出することと、イオンパケットを検出したことに基づいて第1の時間セグメントの開始時刻を設定することとをさらに含む。別の実施態様では、第1の複数の電極の一部の長さは、第1の方向に沿って減少する。さらに別の実施態様では、第1の複数の電極の一部の長さは、第1の方向に沿って増加する。
【0013】
システムは、第1の端部から第2の端部まで第1の方向に沿って延びるイオンチャネルを含む。イオンチャネルは、イオンチャネルの第1の端部でイオンを受け取るように構成されている。システムは、第1の電圧信号をイオンチャネルに隣接する第1の複数の電極に印加するように構成されたコントローラをさらに含む。第1の複数の電極は、第1の電圧信号を受信したことに基づいて、分離時間中に第1の方向に沿って移動する第1の移動駆動電位を生成するように構成されている。第1の移動駆動電位の移動速度および振幅のうちの1つまたはそれ以上は、分離時間の第1の時間セグメント中に変化する。
【0014】
一実施態様では、イオンチャネルは、第1の表面と、第1の表面に隣接する第2の表面との間で画成される。第2の表面は、第1の電極と、第1の方向に対して横向きの第2の方向に沿って第1の電極から離間された第2の電極とを含む第2の複数の電極を含む。第1の複数の電極は、第1の電極と第2の電極との間に位置し、第1の方向に沿って配置されている。別の実施態様では、第1の移動駆動電位の移動速度は、第1の時間セグメント中に減少する。一実施態様では、第1の移動駆動電位は、第1の時間セグメントの第1の時間サブセグメント中に第1の速度を有し、第1の時間セグメントの第2の時間サブセグメント中に第1の速度より小さい第2の速度を有する。第2の時間サブセグメントは、第1の時間サブセグメントの後に続く。
【0015】
一実施態様では、移動速度は、分離時間の関数として単調に減少する。別の実施態様では、移動速度の増加は、線形的、二次関数的および指数関数的のうちの1つである。一実施態様では、第1の移動駆動電位の移動速度は、第1の時間セグメント中に増加する。
【0016】
一実施態様では、第1の移動駆動電位は、第1の時間セグメントの第1の時間サブセグメント中に第1の速度を有し、第1の時間セグメントの第2の時間サブセグメント中に第1の速度より大きい第2の速度を有する。第2の時間サブセグメントは、第1の時間サブセグメントの後に続く。別の実施態様では、移動速度は、分離時間の関数として単調に増加する。一実施態様では、移動速度の増加は、線形的、二次関数的および指数関数的のうちの1つである。
【0017】
一実施態様では、分離時間は、第1の時間セグメントに先行する第2の時間セグメントを含む。第1の駆動電位の移動速度は、第2の時間セグメント中、一定のままである。別の実施態様では、コントローラは、第1の複数の電極に電気的に連結された複数の進行波制御回路を含む。複数の進行波制御回路は、複数の進行波電圧信号を生成するように構成され、第1の電圧信号は、複数の進行波電圧信号を含む。
【0018】
一実施態様では、コントローラは、複数の進行波制御回路に通信可能に連結され、複数の進行波電圧信号の振幅および/または周波数と、複数の進行波電圧信号のうちの1つまたはそれ以上の進行波電圧信号間の位相差とのうちの1つまたはそれ以上を決定するように構成されたマスタ制御回路を含む。マスタ制御回路は、1つまたはそれ以上の進行波制御信号を複数の進行波制御回路に提供するようにさらに構成されている。1つまたはそれ以上の進行波制御信号は、複数の進行波電圧信号の振幅および/または周波数と、複数の進行波電圧信号のうちの1つまたはそれ以上の進行波電圧信号間の位相差とのうちの1つまたはそれ以上を示す。
【0019】
一実施態様では、マスタ制御回路は、分離時間の第1の時間セグメント中に、第1の移動駆動電位の移動速度の変化を判定するようにさらに構成されている。別の実施態様では、システムは、第2の端部でイオンチャネルを退出する受け取られたイオンのイオンパケットを検出するように構成された検出器をさらに含む。コントローラは、イオンパケットを検出したことに基づいて第1の時間セグメントの開始時刻を設定するように構成されている。一実施態様では、第1の複数の電極の一部の長さは、第1の方向に沿って減少する。別の実施態様では、第1の複数の電極の一部の長さは、第1の方向に沿って増加する。
【0020】
本発明は、現在公知の、および後に開発される用途のためのプロセス、装置、システム、デバイス、および方法を含むが、これらに限定されない多数の方法で実施および利用されることを理解すべきである。
【0021】
これらおよび他の構成は、添付の図面と併せて以下の詳細な記述からより容易に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】例示的なイオン移動度分離(IMS)システムの概略図である。
図2図1のIMSシステムのSLIMデバイスの例示的実施形態を示す図である。
図3図2のSLIMデバイスの表面上の電極の例示的配置を示す図である。
図4】SLIMデバイス内のイオンを駆動することができるSLIMデバイスの電極に印加される例示的な電圧波形を示す図である。
図5A】移動度に基づくイオンの例示的な分離を示す図である。
図5B】3つの別々の移動度ピークの出現に対する減少する進行波速度の例示的な影響を示す図である。
図5C】3つの別々の移動度ピークの出現に対する減少する進行波速度の例示的な影響を示す図である。
図6図6A図6Dは、電位波形の単調に減少する速度の例示的なプロットを示す図である。
図7図7A図7Cは、電位波形の単調に増加する速度の例示的なプロットを示す図である。
図8】電位波形の区分的な一定速度の例示的なプロットを示す図である。
図9図2のSLIMデバイスの表面上の電極の例示的配置を示す図である。
図10図2のSLIMデバイスの表面上の電極の別の例示的配置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
添付の図面は、必ずしも縮尺通りではなく、本発明の基本原理を示す様々な好ましい構成を幾分簡略化した表現を提示していることを理解すべきである。例えば、特定の寸法、配向、位置および形状を含む、本明細書に開示される本発明の特定の設計構成は、特定の意図された用途および使用環境によって部分的に決定される。
【0024】
開示された実施形態は、本発明の特定の態様を実施できる方法の単なる例であり、本発明が具現化される方法のすべての網羅的なリストを表すものではないことが理解されるであろう。実際、本明細書に記載のシステム、デバイスおよび方法は、そのいくつかが本明細書に記載されている様々な代替形態で具現化できることが理解されるであろう。さらに、上述したように、図面は必ずしも縮尺通りではなく、いくつかの構成は、特定の構成要素の詳細を示すために誇張または最小化される。
【0025】
周知の構成要素、材料または方法は、本開示を不明瞭にすることを避けるために、必ずしも詳細に説明されない。本明細書に開示されたいかなる特定の構造的および機能的な詳細も、限定的に解釈されるべきではなく、単に特許請求の範囲の根拠として、また当業者が本発明を様々に採用するように教示するための代表的な基礎として解釈されるものである。
【0026】
別途明白であるか、または記載がない限り、「右」、「左」、「上」、「下」、「外」、「内」などの方向参照は、その実施形態の最初に番号付けられた図に示される本発明の特定の実施形態の配向に対するものであることを意図している。さらに、所定の参照数字は、それが異なる図に現れるとき、同一または類似の構造を示し、同様の参照数字は、主題発明の類似の構造要素および/または構成を特定する。
【0027】
本明細書で開示するシステム、デバイスおよび方法の構造、機能、製造および使用の原理を総括的に理解するために、特定の例示的実施形態について、ここで説明する。
【0028】
前述のように、イオンモビリティスペクトロメトリ(IMS)は、その移動度に基づいてイオンを検出し分析する一般的に使用される技術である。例えば、IMSは、疾患の兆候を検出することができる生体指標 (タンパク質など)を検出するために使用される。ある種のIMS用途では、移動電位波形は、様々な移動度のイオンの集合(例えば、イオン源によって生成されたイオン)に印加され、異なる移動度を有するイオンを異なる速度で駆動し、結果として移動度に基づく分離をもたらすことが可能である。例えば、進行波電位の速度よりも大きな移動度を有するイオンは、進行波電位とともに(例えば、進行波の速度以上のイオン速度で)移動することができるが、進行波電位の速度よりも小さな移動度を有するイオンは、進行波に対して後れをとる(または外れる(slip))可能性がある。その結果、このことにより、空間的および/または時間的に分離した異なる移動度を有するイオンパケット(またはイオンピーク)を生成することができる。
【0029】
移動電位波形の速度は、望ましいイオン移動度分離が実行される(例えば、分離されたイオンが望ましい分解能を有する)イオン移動度範囲に関連し得る。狭いイオン移動度範囲では、効率的なイオン移動度分離をもたらす移動電位波形の望ましい速度が決定される。イオン移動度範囲が大きくなるにつれて、一定の速度を有する移動電位波形によるイオン移動度分離では、イオン移動度範囲全体にわたって効率的な分離が行われないことがある。例えば、分離後、移動度の高い(先に到着する)イオンパケットは、移動度の低い(後に到着する)イオンパケットに比べて狭くなり得る。本願は、移動電位波形の速度を変化させることによって、広い移動度範囲にわたる改善されたイオン移動度分離のためのシステムおよび方法について説明するものである。速度の変化は、分離されるべきイオンのイオン移動度範囲に基づくことができ、予め決定される。いくつかの実施態様では、移動電位波形の速度の変化は、(例えば、比較的高い移動度を有する)イオンパケットの到着と同期される。これは、移動度の低いイオンに対してより狭いイオンパケットを生み出すことによって、イオン移動度分離の分解能および感度を向上させることができる。
【0030】
図1は、例示的なイオン移動度分離(IMS)システム100の概略図である。IMSシステム100は、イオン(例えば、様々な移動度および質量対電荷比を有するイオン)を生成し、イオンをSLIM(無損失イオン操作用構造)デバイス104に注入することができるイオン源102を含む。これは、複数のタイムインスタンス(例えば、周期的)で行うことができる。SLIMデバイス104は、表面に配置された電極を含むことができる1つまたはそれ以上の表面(例えば、プリント基板材料で作られる)を含むことができる。電極は、電圧(または電流)信号または波形(例えば、DC/RF/AC電圧[または電流]信号、またはそれらの重ね合わせ)を受信することができ、またはSLIMデバイス内にイオンを閉じ込め、かつ/またはSLIMデバイス104を通ってイオンを案内するための電位波形(例えば、電位勾配)を生成できる。電位波形は、SLIMデバイス104に沿って移動し、その移動度に基づいてイオンを分離することができる。質量分析計106(またはイオン検出器)は、SLIMデバイス104からイオンを受け取り、受け取ったイオンに対して質量分析または直接検出を行うことができる。
【0031】
コントローラ108は、イオン源102、SLIMデバイス104、および質量分析計106のうちの1つまたはそれ以上の作動方法を制御することができる。コントローラ108は、電源150(例えば、DC電圧をコントローラ108に供給するDC電源)から電力を受け取ることができる。コントローラ108は、SLIMデバイス104内の電極を駆動する様々な電圧(または電流)信号を生成する複数の電源モジュール(例えば、電流/電圧制御回路)を含むことができる。例えば、コントローラ108は、RF電圧(または電流)信号を生成するRF制御回路、進行波電圧(または電流)信号を生成する進行波制御回路、DC電圧(または電流)信号を生成するDC制御回路などを含むことができる。コントローラ108は、RF/進行波/DC制御回路の作動方法を制御できるマスタ制御回路も含むことができる。例えば、マスタ制御回路は、SLIMデバイス104の望ましい作動方法を実現するために、RF/進行波/DC制御回路によって生成される電圧(または電流)信号の振幅および/または位相を制御することができる。
【0032】
いくつかの実施態様では、SLIMデバイス104は、移動度に基づく分離を行うことができる移動電位波形(SLIMデバイス104の複数の電極によって生成される電位から生じる)を生成することができる。電位波形は、例えば、SLIMデバイス104の電極に印加される電圧信号の周波数に基づいて、所定の速度でSLIMデバイス104を通って移動することができる。
【0033】
いくつかの実施態様では、移動電位波形は、空間的に周期的であることができ、空間的な周期性は、(例えば、SLIMデバイス104内のイオンの伝播方向に沿って)隣接する電極対に印加される電圧信号間の位相差に依存することができる。いくつかの実施態様では、位相差は、電位波形の伝播方向を決定することができる。マスタ制御回路は、移動電位波形が望ましい(例えば、所定の)振幅、空間的な周期性および/または速度を有するように、進行波制御回路の電圧出力の周波数および/または位相を制御することができる。マスタ制御回路は、RF/進行波制御回路の電圧出力の周波数および/または位相を制御することによって、電位波形の速度を変化させることができる。マスタ制御回路は、RF/進行波制御回路の電圧出力の振幅を変化(例えば、増加、減少など)させることができる。
【0034】
いくつかの実施態様では、コントローラ108は、コンピューティングデバイス160に通信可能に連結される。例えば、コンピューティングデバイス160は、マスタ制御回路に制御信号を介してSLIMデバイス104の動作パラメータを提供することができる。いくつかの実施態様では、ユーザは、コンピューティングデバイス160に(例えば、ユーザインタフェースを介して)動作パラメータを提供することができる。例えば、ユーザは、移動電位波の速度の変化に関する情報をコンピューティングデバイス160に提供することができる。制御信号(例えば、移動電位速度の変化に関する情報)を介して受信した動作パラメータに基づいて、マスタ制御回路は、RF/AC/DC制御回路の作動方法を制御することができ、これにより、SLIMデバイス104の作動方法を決定することができる。いくつかの実施態様では、マスタ制御回路は、(例えば、所定のアルゴリズムの実行、データベースへのアクセス、ユーザからの受信などによって)動作パラメータを受信/決定することができる。いくつかの実施態様では、RF/AC/DC制御回路は、IMSシステム100に物理的に分散させることができる。例えば、RF/AC/DC制御回路のうちの1つまたはそれ以上は、SLIMデバイス104に配置することができる。
【0035】
図2は、SLIMデバイス104の例示的実施形態を示す。SLIMデバイス104は、第1の表面103および第2の表面105を含むことができる。第1の表面および第2の表面は、間に1つまたはそれ以上のイオンチャネルを画成するように(例えば、互いに平行に)配置される。第1の表面103および第2の表面105は、(例えば、イオンチャネルに面する表面上の電極のアレイとして配置される)電極を含むことができる。第1の表面103および第2の表面105上の電極は、コントローラ108に電気的に連結され、電圧(もしくは電流)信号または波形を受信するように構成される。いくつかの実施態様では、第1の表面103および第2の表面105は、コントローラ108と、第1の表面103および第2の表面105上の電極との間の電気的連結を可能にする複数の導電性チャネルを含むバックプレーンを含むことができる。いくつかの実施態様では、導電性チャネルの数は、電極の数よりも少なくすることができる。換言すると、複数の電極は単一の電気チャネルに連結される。その結果、所定の電圧(または電流)信号は複数の電極に同時に送信される。受信した電圧(または電流)信号に基づいて、電極は、伝播軸(例えば、z軸)に沿ってイオンを閉じ込め、駆動し、および/または分離することができる1つまたはそれ以上の電位(例えば、様々な電位の重ね合わせ)を生成することができる。
【0036】
第1の表面103および第2の表面105は、複数の電極を含むことができる。図3は、第1の表面103における電極の例示的配置を示す。第1の表面103における電極配置を以下で説明するが、第2の表面105は、同様の電極配置を有する電極を含むことができる。第1の表面103は、電圧(または電流)信号を受信することができ(または接地電位に連結され)、イオンが第1の表面103に近づくのを防止/阻止することができる擬ポテンシャルを生成することができる第1の複数の電極120および125を含む。第1の複数の電極120および125は、矩形であることができ、矩形の長辺は、移動度分離されるイオンの伝播方向(「伝播軸」)に沿って配置される。例えば、図3では、伝播軸はz軸と平行である。第1の複数の電極は、横方向に沿って(例えば、y軸に沿って)互いから分離されている。例えば、横方向は、伝播軸(例えば、z軸)に垂直(例えば、y軸)であり得る。
【0037】
第1の表面103は、第1の複数の電極の電極間(例えば、第1の複数の電極120と125との間の空間)に位置する第2の複数の電極130を含むことができる。第2の複数の電極130は、伝播軸に沿って(または平行に)セグメント化/配置された複数の電極を含むことができる。第2の複数の電極130は、第2の電圧信号を受信し、イオンを伝播軸に沿って駆動することができる駆動電位を生成することができる。駆動電位は、イオンが伝播軸に沿って移動する際の移動度に基づいて、イオンの分離をもたらすことができる。
【0038】
第1の表面は、第1/第2の複数の電極の最も外側に隣接して位置するガード電極110をさらに含むことができる。例えば、ガード電極110は、横方向に沿って第1の表面103の縁部に位置する。ガード電極110は、電圧信号(例えば、DC制御回路からのDC電圧信号)を受信し、横方向に沿ってガード電極間のイオンチャネル内にイオンを閉じ込めることができるガード電位を生成することができる。
【0039】
第1の複数の電極、第2の複数の電極、およびガード電極は、1つまたはそれ以上の電圧制御回路(例えば、コントローラ108内の電圧制御回路)に連結される。いくつかの実施態様では、第1の複数の電極120および125は、互いに位相がシフトした無線周波数(RF)信号を受信することができる。いくつかの実施態様では、マスタ制御回路は、2つのRF制御回路の作動方法を制御して、互いに位相がシフトした2つのRF電圧信号を生成することができる。
【0040】
図4は、繰り返しパターンの電極141~148を含む第2の複数の電極130に適用される(例えば、8つの電極ごとに同様の電圧信号を受信する)例示的な電圧波形を示す。例えば、電圧波形は、同時に電極141~148に印加される複数の電圧信号を含むことができる。図4の例示的な電圧波形は、正弦波形(例えば、AC電圧波形)である。電極141~148は、電圧波形(例えば、正弦波形、矩形波形、鋸歯状波形、バイアスされた正弦波形など)に基づいてその振幅が決定される電圧信号を受信することができる。例えば、AC電圧波形の単一の波長が8つの電極(141~148)にわたって分布している場合、電極141~148に印加される電圧信号の振幅は、単一の波長に関連付けられた電極の総数(例えば、8つの電極)に対応する位相シフトに対してAC波形から値を選択することによって決定される。例えば、電極141~148の隣接する電極間の位相シフトは45°(360°[単一の波長に対応する]÷8)である。これは、電極141~148を、互いに位相がシフトされた電圧信号を生成する異なる進行波制御回路(例えば、AC制御回路、パルス電流制御回路など)に電気的に連結することによって達成される。あるいは、単一の進行波制御回路は、電極141~148に同時に印加される電圧信号を生成することができる。いくつかの実施態様では、電圧/電流波形は、様々なパルス形状(例えば、方形、三角形、矩形、鋸歯状など)を取ることができ、周期的であることができ、非周期的であることができる、など。例えば、進行波制御回路は、DC電圧信号を生成する1つまたはそれ以上のDC制御回路と、正弦波信号を生成するAC制御回路とを含むことができる。
【0041】
いくつかの実施態様では、進行波制御回路は、パルス電圧(または電流)波形(例えば、方形、三角形、矩形、鋸歯状など)を生成することができる1つまたはそれ以上のパルス電圧(または電流)制御回路を含むことができる。パルス電圧(または電流)制御回路は、複数の電極(例えば、電極141~148)に電気的に連結される複数の出力を含むことができる。いくつかの実施態様では、パルス電圧(または電流)制御回路は、複数の電圧信号(例えば、パルス波形を構成する)を複数の電極に同時に印加することができる。電圧(または電流)波形の様々なパルス形状は、DC電圧信号と正弦波信号との重ね合わせによって生成される。マスタ制御回路は、様々な進行波制御回路によって生成された電圧信号間の位相シフトを決定することができる。移動電位波形の形状/周期性は、隣接する電極に印加される電圧信号間の位相シフトに基づくことができる。マスタ制御信号は、DC制御回路によって生成されるDC電圧信号の振幅を決定することができる。マスタ制御回路は、進行波制御回路によって生成されるAC信号の振幅および/または周波数を決定することができる。
【0042】
いくつかの実施態様では、電圧信号(例えば、AC信号)の周波数は、移動電位波形の速度を決定することができる。(移動電位波形を生成する)電圧(または電流)波形のために位相シフトしたAC信号を生成する代替的アプローチは、多相変圧器の使用である。このアプローチでは、変圧器の複数の2次巻線の連結スキームに基づいて、複数の電圧出力信号間の位相関係を制御することができる。このようにして、1つまたはそれ以上の入力駆動電圧信号を使用して、アナログ回路のみで複数の位相依存出力を生成することができる。このアプローチと上述したデジタル生成方法との重要な違いは、位相依存性が変圧器の物理的な配線に左右され、配線を物理的に変更しなければ変えられないことである。デジタルで生成された波形間の位相関係は、ハードウェアにおける変更なしに動的に変更することができる。
【0043】
時間が進むにつれて、電位波形(例えば、電極に印加されるAC波形、正弦波電圧波形、パルス電圧[または電流]波形によって生成される)は、伝播方向に沿って移動することができる。これにより、結果として、電極141~148に印加される電圧の振幅が変化する。例えば、最初の時間工程の間に第1の電極(例えば、電極141)に印加された電圧は、次の時間工程の間に隣接する電極(例えば、電極142)に印加される。コントローラ108は、パルス電圧/電流波形、AC波形などを生成することができる1つまたはそれ以上の進行波制御回路を含むことができる。いくつかの実施態様では、コントローラは、RF電圧波形を生成することができる1つまたはそれ以上のRF制御回路を含むことができる。
【0044】
コントローラ108は、電極(例えば、複数の電極130)に印加されるAC/RF/パルス電圧(または電流)波形の周波数および/または位相を制御することによって、移動電位波形の速度を制御することができる。電位波形が移動すると、SLIMデバイス104内に導入されたイオンは伝播方向に沿って押され、その移動度に基づいて分離される。例えば、イオンは、その移動度に基づいて、イオンパケットへと空間的に分離される。高い移動度を有するイオンパケットは、低い移動度を有するイオンパケットよりも先にSLIMデバイスを退出することができる。
【0045】
図5Aは、イオンの例示的な移動度分離を示す。第1の表面103の電極は、第1の端部504から第2の端部506まで移動することができる電位波形502を生成することができる。電位波形502が移動すると、(例えば、第1の表面103と第2の表面105との間のイオンチャネルに設けられる)SLIMデバイス104内のイオンは、イオンパケット512、514および516に分離される。イオンパケット512内のイオンの移動度は、イオンパケット514内のイオンの移動度より高く、イオンパケット514内のイオンの移動度は、イオンパケット516内のイオンの移動度より高い。さらに、イオンパケットは、異なるパケット幅を有する。イオンパケットの幅は、パケット内のイオンの移動度に反比例し得る。例えば、イオンパケット512の幅は、イオンパケット514の幅より小さくてもよく、イオンパケット514の幅は、イオンパケット516の幅より小さくてもよい。これは、移動度の低いイオンの拡散の増加に起因し得る。例えば、移動電位波形の速度に近い移動度を有するイオンは、電位波形とともに移動することができる。その結果、これらのイオンは伝播する際に束になり、イオンパケットの幅が狭くなる。他方では、移動電位波形の速度より小さい移動度のイオンは、移動電位波形についていくことができない。その結果、これらのイオンは移動電位波形から外れ得る。この外れは、イオンの移動度と波形速度との差に比例し得る(例えば、非線形の関係)。これは、イオンパケットの分散/広がりにつながり得る。図5Aに示すように、イオンパケットの広がりは、イオンパケット内のイオンの移動度に比例し、すなわち、イオンパケット512は、最も少ない量広がり、イオンパケット516は、最も広がっている。
【0046】
イオンパケットの広がりは、SLIMデバイス104によるイオンの移動度検出の分解能低下につながり得るため、望ましくない可能性がある。その結果、イオンを誤認する(「偽陽性」)確率が高くなり得る。他方では、イオンパケットの幅を小さくする(または狭める)ことにより、移動度に基づくイオン検出の精度を向上させることができる。また、幅を小さくすることによっても、イオンのより大きな束(例えば、単位時間あたりにイオン検出器によって検出されるイオン)を生成することにより、イオン検出プロセスの感度を向上させることができる。その結果、一定のノイズレベルでは、イオンパケットの幅が小さくなるにつれて、イオン検出の信号対雑音比を向上させることができる。
【0047】
移動度の低いイオンを有するイオンパケット(例えば、イオンパケット514、516)の広がりは、イオンの分離(「分離時間」または「実験時間」)中の移動電位の速度を変化させることによって低減される。速度の変化は、高移動度イオンを有するイオンパケット(例えば、イオンパケット512)がSLIMデバイス104を退出するときに生じ得る。例えば、イオンパケットがSLIMデバイス104を退出する前(例えば、分離時間の一定速度セグメント中)、移動電位は一定速度で移動できる。イオンパケット512がSLIMデバイス104を退出して、質量分析計106によって検出された後、コントローラ108は、移動電位波形の速度を変化させ始めることができる。いくつかの実施態様では、質量分析計106は、イオンパケットが受信されたという信号をコントローラ108に送信することができる。信号を受信した後、コントローラ108(例えば、コントローラ108のマスタ制御回路)は、(例えば、分離時間の速度変化セグメント中に)移動電位波形の速度を変化させることができる。
【0048】
分離時間の関数としての速度の変化は、予め設定される。いくつかの実施態様では、電位波形の速度の望ましい変化は、複数回の速度変化に対して(様々な移動度のイオンを含む)所定の試料について複数回の(例えば、反復)移動度分離を行うことによって決定される。これは、電位波形の初期速度および/もしくは最終速度を変化させること、ならびに/または初期速度と最終速度との間の電位波形の速度変化を変化させることを含むことができる。様々な移動度分離事象について、イオンパケットの移動度に基づく広がりが検出され、電位波形の望ましい速度変化を選択するために使用される。例えば、いくつかのイオンパケット(「較正イオンパケット」)の幅が決定される。いくつかの実施態様では、較正アルゴリズムは、移動度分離の様々な反復に対するイオンパケットの幅に基づいて、電位波形の望ましい速度変化を決定することができる。例えば、望ましい速度変化(例えば、初期速度に関連する初期時間と最終速度に関連する最終時間との間の様々な時間中の電位波形の速度)は、様々な反復または移動度分離事象に対する較正イオンパケットの幅を示すデータに所定のパラメータを一致させることによって生成される。
【0049】
速度/振幅の変化は、移動度分離が実行されるイオンの移動度範囲に依存し得る。いくつかの実施態様では、速度/振幅変化は、以前に較正されたデータを補間または外挿することによって得られる。例えば、以前に較正されたデータは、移動度分離が実行されるイオンの移動度範囲とは異なる移動度範囲の振幅/速度データを含むことができる。典型的には、較正パラメータは、較正が実行される所定の移動度範囲に固有のものである。分析される移動度の範囲を変更する方法パラメータが変更された場合、最適な性能を得るために較正プロセスは繰り返されるべきである。しかし、適切な較正パラメータは、補間または外挿によってより一般的な適合した較正パラメータから推定される。
【0050】
図5Bおよび図5Cは、3つの別々の移動度ピークの出現に対して減少する進行波速度の影響を示す。図5Bにおいて、これらのピークは、実験時間が増加するにつれて、より広く、より低い強度になる。しかし、図5Cに示すように、進行波速度を変化させることによって各イオンの移動度の変化を補償することにより、同様のピーク強度および幅が時間領域にわたって保持される。より遅く分離チャネルから退出するイオンは低い移動度を有するため、進行波速度がその移動度にうまく一致すると、より高速で移動でき、よりシャープなピークを作り出す傾向がある。このことによって、最終的に、これらのピークを検出できる感度および分解能が向上する。
【0051】
速度変化の結果、電位波形の速度が低下し得る(最終速度が初期速度より小さくなる)。図6A図6Dは、電位波形の単調に減少する速度の例示的なプロットを示す。図6Aは、電位波形の速度の線形減少を示すプロットである。図6Bは、電位波形の速度の二次関数的な減少を示すプロットである。図6Cは、電位波形の速度の指数関数的な減少を示すプロットである。図6Dは、電位波形の速度の区分的線形減少を示すプロットである。換言すると、減少の傾きは、分離時間の異なるセグメントに対して異なり得る。図6Dに示されるように、傾きは、分離時間とともに漸減する。
【0052】
図7A図7Cは、電位波形の単調に増加する速度の例示的なプロットを示す。図7Aは、電位波形の速度の線形増加を示すプロットである。図7Bは、電位波形の速度の二次関数的な増加を示すプロットである。図7Cは、電位波形の速度の指数関数的な増加を示すプロットである。当業者であれば、電位波形の速度の区分的線形増加(例えば、図6Dの逆)であってもよいことを容易に理解するであろう。図8は、電位波形の区分的な一定速度の例示的なプロットを示す。分離時間の第1の期間中、速度は、一定の高い速度S1であり、分離時間の第2の期間中、速度は、一定の低い速度S2である。いくつかの実施態様において、進行波の振幅/速度を変化させることは、望ましい分離が実行され移動度の範囲を変化させる(例えば、増加、減少など)ことができ、またはより短い期間にわたって特定の移動度の範囲を分析することを可能にすることができる。
【0053】
いくつかの実施態様では、進行波の速度は、移動電位波形に関連する電圧信号(例えば、AC/パルス電圧信号)の周波数を変更することなく、変化される。これは、電圧信号が印加される電極(例えば、複数の電極130)のサイズを変えることによって達成される。図9は、電極配置(例えば、図2のSLIMデバイスの第1の表面103/第2の表面105)を含むことができる例示的な表面900を示す。表面900は、電圧(または電流)信号を受信することができ(または接地電位に連結され)、イオンが表面900に接近するのを防止/阻止することができる擬ポテンシャルを生成することができる第1の複数の電極920および925を含む。第1の複数の電極120および125は、矩形であることができ、電極の長辺は、移動度分離されるイオンの伝播方向(「伝播軸」)に沿って配置される。例えば、図9では、伝播軸はz軸と平行である。第1の複数の電極は、横方向に沿って(例えば、y軸に沿って)互いから分離されている。例えば、横方向は、伝播軸(例えば、z軸)に垂直であり得る。
【0054】
表面900は、第1の複数の電極の電極間(例えば、第1の複数の電極920と925との間の空間)に位置する第2の複数の電極930を含むことができる。第2の複数の電極930は、伝播軸に沿って(または平行に)セグメント化/配置された複数の電極を含むことができる。第2の複数の電極は、移動電位波形を生成することができる。図9に示すように、第2の複数の電極930の長さは、伝播軸に沿って(+z方向に沿って左から右へ)増加する。その結果、第2の複数の電極に同一または類似の周波数を有する電圧信号を印加することにより、+z方向に沿って左から右に速度が増加する進行波形を生成することができる。
【0055】
図10は、電極配置(例えば、図2のSLIMデバイスの第1の表面103/第2の表面105)を含むことができる例示的な表面1000を示す。表面1000は、電圧(または電流)信号を受信することができ(または接地電位に連結され)、イオンが表面1000に接近するのを防止/阻止することができる擬ポテンシャルを生成することができる第1の複数の電極1020および1025を含む。第1の複数の電極1020および1025は、矩形であることができ、矩形の長辺は、移動度分離されるイオンの伝播方向(「伝播軸」)に沿って配置される。例えば、図10では、伝播軸はz軸と平行である。第1の複数の電極は、横方向に沿って(例えば、y軸に沿って)互いから分離されている。例えば、横方向は、伝播軸(例えば、z軸)に垂直であり得る。
【0056】
表面1000は、第1の複数の電極の電極間(例えば、第1の複数の電極1020と1025との間の空間)に位置する第2の複数の電極1030を含むことができる。第2の複数の電極1030は、伝播軸に沿って(または平行に)セグメント化/配置された複数の電極を含むことができる。第2の複数の電極1030は、移動電位波形を生成することができる。図10に示すように、第2の複数の電極1030の長さは、伝播軸に沿って(+z方向に沿って左から右へ)減少する。その結果、第2の複数の電極1030に同一または類似の周波数を有する電圧信号を印加することにより、+z方向に沿って左から右に速度が減少する進行波形を生成することができる。
【0057】
他の実施形態も開示される主題の範囲および趣旨の範囲内である。これらの実施形態の1つまたはそれ以上の実施例が、添付の図面に示されている。当業者であれば、本明細書に詳細に記載され、添付の図面に示されるシステム、デバイスおよび方法が、非限定的な例示的実施形態であり、本開示の範囲は、特許請求の範囲によってのみ規定されることを理解するであろう。ある例示的実施形態に関連して図示または記載された構成は、他の実施形態の構成と組み合わせることができる。そのような修正および変形は、本開示の範囲内に含まれることが意図されている。さらに、本開示では、実施形態の同名の構成要素は、概ね同様の構成を有し、したがって、特定の実施形態内では、同名の構成要素の各構成はそれぞれ、必ずしも完全に詳述されていない。
【0058】
本明細書に記載されている主題は、デジタル電子回路、または本明細書に開示されている構造的手段およびその構造的等価物を含むコンピュータソフトウェア、ファームウェア、もしくはハードウェア、またはそれらの組み合わせにおいて実装される。本明細書に記載されている主題は、例えば、データ処理装置(例えば、プログラマブルプロセッサ、コンピュータ、または複数のコンピュータ)によって実行するために、またはデータ処理装置の作動方法を制御するために、情報担体(例えば、機械可読記憶デバイス)にタンジブルに具現化された、または伝播される信号に具現化された1つまたはそれ以上のコンピュータプログラムなどの1つまたはそれ以上のコンピュータプログラム製品として実装することができる。コンピュータプログラム(プログラム、ソフトウェア、ソフトウェアアプリケーション、またはコードとしても知られている)は、コンパイル済みまたは解釈済み言語を含む、任意の形のプログラミング言語で書かれ、スタンドアロンプログラムとして、またはモジュール、コンポーネント、サブルーチン、もしくはコンピューティング環境での使用に適したその他のユニットとしてを含め、任意の形で配置される。コンピュータプログラムは、必ずしもファイルに対応していない。プログラムは、他のプログラムまたはデータを保持するファイルの一部分内に記憶されるか、当該プログラムに専用の単一ファイル内に記憶されるか、または複数の協調ファイル(例えば、1つもしくは複数のモジュール、サブプログラム、またはコードの一部を記憶するファイル)内に記憶される。コンピュータプログラムは、1つのコンピュータ上で実行するか、または1つのサイトにあるか、もしくは複数のサイトに分散されて通信ネットワークによって相互接続された複数のコンピュータ上で実行するように配置される。
【0059】
本明細書に記載されている主題の方法工程を含む本明細書に記載されているプロセスおよび論理フローは、入力データを操作して出力を生成することによって本明細書に記載されている主題の機能を実行するために、1つまたはそれ以上のコンピュータプログラムを実行する1つまたはそれ以上のプログラム可能なプロセッサによって実行される。プロセスおよび論理フローは、例えば、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)またはASIC(特定用途向け集積回路)などの専用論理回路によっても実行され、本明細書に記載されている主題の装置は、専用論理回路として実装される。
【0060】
コンピュータプログラムの実行に適したプロセッサとしては、例として、汎用および専用のマイクロプロセッサの両方、ならびに任意の種類のデジタルコンピュータのいずれか1つまたはそれ以上のプロセッサが挙げられる。一般的に、プロセッサは、読み出し専用メモリまたはランダムアクセスメモリ、またはその両方から命令およびデータを受信することができる。コンピュータの本質的な要素は、命令を実行するためのプロセッサ、ならびに命令およびデータを記憶するための1つまたはそれ以上のメモリデバイスである。一般的に、コンピュータはさらに、データを格納するための1つまたはそれ以上の大容量記憶装置、例えば、磁気ディスク、光磁気ディスク、または光ディスクを含むか、またはそれらからデータを受信し、もしくはそれらにデータを転送し、またはその両方を行うように動作可能に連結される。コンピュータプログラムの命令およびデータを具現化するのに適した情報担体には、あらゆる形態の不揮発性メモリが含まれ、例として、半導体メモリデバイス(例えば、EPROM、EEPROM、およびフラッシュメモリデバイス)、磁気ディスク(例えば、内蔵ハードディスクまたはリムーバブルディスク)、光磁気ディスク、および光ディスク(CDおよびDVDディスクなど)が挙げられる。プロセッサおよびメモリは専用論理回路によって補完されるか、または組み込まれる。
【0061】
ユーザとのインタラクションを提供するために、本明細書に記載されている主題は、ユーザに情報を表示するための表示デバイス、例えば、CRT(ブラウン管)またはLCD(液晶ディスプレイ)モニタと、ユーザがコンピュータに入力を提供できるキーボードおよびポインティングデバイス(例えば、マウスまたはトラックボール)とを有するコンピュータに実装することができる。他の種類のデバイスも、ユーザとのインタラクションを提供するために使用することができる。例えば、ユーザに提供されるフィードバックは、任意の形態の感覚フィードバック(例えば、視覚フィードバック、聴覚フィードバック、または触覚フィードバック)であってもよく、ユーザからの入力は、聴覚、音声、または触覚入力を含む任意の形態で受信される。
【0062】
本明細書に記載されている技術は、1つまたはそれ以上のモジュールを使用して実装される。本明細書で使用する場合、「モジュール」という用語は、コンピューティングソフトウェア、ファームウェア、ハードウェア、および/またはそれらの様々な組み合わせを意味する。しかし、最低でも、モジュールは、ハードウェア、ファームウェアに実装されていない、または非一時的なプロセッサ読み取り可能で記録可能な記憶媒体に記録されていないソフトウェアとは解釈されるべきではない(すなわち、モジュールはそれ自体がソフトウェアではない)。実際、「モジュール」とは、プロセッサまたはコンピュータの一部など、少なくとも何らかの物理的で非一時的なハードウェアを常に含むものと解釈されるべきである。2つの異なるモジュールが同じ物理的ハードウェアを共有することができる(例えば、2つの異なるモジュールが同じプロセッサおよびネットワークインタフェースを使用することができる)。本明細書に記載されているモジュールは、様々なアプリケーションをサポートするために、組み合わせ、統合、分離、および/または複製することができる。また、特定のモジュールで実行されるものとして本明細書に記載されている機能は、特定のモジュールで実行される機能の代わりに、またはそれに加えて、1つまたはそれ以上の他のモジュールで、および/または1つまたはそれ以上の他のデバイスによって実行される。さらに、モジュールは、互いにローカルまたはリモートの複数のデバイスおよび/または他のコンポーネントにまたがって実装することができる。さらに、モジュールは、あるデバイスから移動して別のデバイスに追加することができ、かつ/または両方のデバイスに含めることができる。
【0063】
本明細書に記載されている主題は、バックエンドコンポーネント(例えば、データサーバ)、ミドルウェアコンポーネント(例えば、アプリケーションサーバ)、またはフロントエンドコンポーネント(例えば、ユーザが本明細書に記載されている主題の実施態様と相互作用できるグラフィカルユーザインタフェースまたはウェブブラウザを有するクライアントコンピュータ)、またはそのようなバックエンドコンポーネント、ミドルウェアコンポーネント、およびフロントエンドコンポーネントの任意の組み合わせを含むコンピューティングシステムで実施することができる。システムのコンポーネントは、デジタルデータ通信の任意の形態または媒体、例えば通信ネットワークによって相互に連結することができる。通信ネットワークの例としては、ローカルエリアネットワーク(「LAN」)およびワイドエリアネットワーク(「WAN」)、例えば、インターネットが挙げられる。
【0064】
本明細書および特許請求の範囲を通して使用されている近似表現は、関連する基本的な機能に変化をもたらすことなく許容範囲内で変化し得る任意の定量的表現を修飾するために適用される。したがって、「約」および「実質的に」などの1つまたはそれ以上の用語によって修飾された値は、指定された正確な値に限定されるものではない。少なくともいくつかの例では、近似表現は、値を測定するための器具の精度に対応することができる。ここでは、本明細書および特許請求の範囲を通して、範囲の制限を組み合わせたり、かつ/または入れ替えたりすることができ、このような範囲は、文脈または言語によって別の意味を示さない限り、特定され、そこに含まれるすべてのサブ範囲を含む。
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図10