(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】車両用充電インレットの冷却装置
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20240312BHJP
B60K 1/04 20190101ALI20240312BHJP
B60K 11/02 20060101ALI20240312BHJP
B60L 50/64 20190101ALI20240312BHJP
B60L 53/16 20190101ALI20240312BHJP
B60L 58/26 20190101ALI20240312BHJP
H01R 13/46 20060101ALI20240312BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
H02J7/00 301B
B60K1/04 Z
B60K11/02
B60L50/64
B60L53/16
B60L58/26
H01R13/46 Z
H02J7/00 P
H05K7/20 P
(21)【出願番号】P 2020128909
(22)【出願日】2020-07-30
【審査請求日】2022-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】598051819
【氏名又は名称】メルセデス・ベンツ グループ アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Mercedes-Benz Group AG
【住所又は居所原語表記】Mercedesstrasse 120,70372 Stuttgart,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100187322
【氏名又は名称】前川 直輝
(74)【代理人】
【識別番号】100111143
【氏名又は名称】安達 枝里
(72)【発明者】
【氏名】寺田 一朗
(72)【発明者】
【氏名】太田 貴志
(72)【発明者】
【氏名】對馬 卓也
(72)【発明者】
【氏名】梶原 崇正
【審査官】下林 義明
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-036442(JP,A)
【文献】特表2017-507640(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00 - 7/12
H02J 7/34 - 7/36
H05K 7/20
H01R 13/40 - 13/533
B60L 1/00 - 3/12
B60L 7/00 - 13/00
B60L 15/00 - 58/40
B60K 11/00 - 15/10
B60K 1/00 - 6/12
B60K 7/00 - 8/00
B60K 16/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部給電装置から供給される電力によって充電されるバッテリの電力により駆動する車両の車両用充電インレットの冷却装置であって、
充電時に前記外部給電装置の給電端子と接続する受電端子と、
前記受電端子を保持し、前記車両用充電インレットに配設されるハウジングと、
冷媒が供給される充電インレット冷却回路と、
を含み、
前記ハウジングには、前記充電インレット冷却回路の流路が形成され
、
前記充電インレット冷却回路は、前記バッテリの冷却回路に接続されていることを特徴とする、
車両用充電インレットの冷却装置。
【請求項2】
前記受電端子の温度情報を検出する温度センサと、
前記温度センサから前記受電端子の温度情報を取得する制御部と、
を更に備え、
前記制御部は、前記受電端子の温度情報に基づいて、前記充電インレット冷却回路を制御することを特徴とする、
請求項
1に記載の車両用充電インレットの冷却装置。
【請求項3】
前記流路は、前記ハウジングに設けられた入力孔と出力孔とを結ぶ中空の内部流路であることを特徴とする、
請求項1又は2に記載の車両用充電インレットの冷却装置。
【請求項4】
外部給電装置から供給される電力によって充電されるバッテリの電力により駆動する車両の車両用充電インレットの冷却装置であって、
充電時に前記外部給電装置の給電端子と接続する受電端子と、
前記受電端子を保持し、前記車両用充電インレットに配設されるハウジングと、
冷媒が供給される充電インレット冷却回路と、
前記受電端子の温度情報を検出する温度センサと、
前記温度センサから前記受電端子の温度情報を取得する制御部と、
を含み、
前記ハウジングには、前記充電インレット冷却回路の流路が形成され、
前記制御部は、前記受電端子の温度情報に基づいて、前記冷媒の流量を調整することを特徴とする、
車両用充電インレットの冷却装置。
【請求項5】
外部給電装置から供給される電力によって充電されるバッテリの電力により駆動する車両の車両用充電インレットの冷却装置であって、
充電時に前記外部給電装置の給電端子と接続する受電端子と、
前記受電端子を保持し、前記車両用充電インレットに配設されるハウジングと、
冷媒が供給される充電インレット冷却回路と、
前記受電端子の温度情報を検出する温度センサと、
前記温度センサから前記受電端子の温度情報を取得する制御部と、
を含み、
前記ハウジングには、前記充電インレット冷却回路の流路が形成され、
前記制御部は、前記受電端子の温度情報に基づいて、前記冷媒の温度を下げる制御を行うことを特徴とする、
車両用充電インレットの冷却装置。
【請求項6】
外部給電装置から供給される電力によって充電されるバッテリの電力により駆動する車両の車両用充電インレットの冷却装置であって、
充電時に前記外部給電装置の給電端子と接続する受電端子と、
前記受電端子を保持し、前記車両用充電インレットに配設されるハウジングと、
冷媒が供給される充電インレット冷却回路と、
を含み、
前記ハウジングには、前記充電インレット冷却回路の流路が形成され、
前記流路は、前記ハウジングに設けられた入力孔と出力孔とを結ぶ中空の内部流路であり、
前記流路の断面形状は略円形であり、
前記流路は前記ハウジング内を複数回往復することを特徴とする、
車両用充電インレットの冷却装置。
【請求項7】
外部給電装置から供給される電力によって充電されるバッテリの電力により駆動する車両の車両用充電インレットの冷却装置であって、
充電時に前記外部給電装置の給電端子と接続する受電端子と、
前記受電端子を保持し、前記車両用充電インレットに配設されるハウジングと、
冷媒が供給される充電インレット冷却回路と、
を含み、
前記ハウジングには、前記充電インレット冷却回路の流路が形成され、
前記流路は、前記ハウジングに設けられた入力孔と出力孔とを結ぶ中空の内部流路であり、
前記ハウジングは円筒状であり、
前記流路の断面形状は前記ハウジングの筒壁形状に沿った部分円弧形状であることを特徴とする、
車両用充電インレットの冷却装置。
【請求項8】
外部給電装置から供給される電力によって充電されるバッテリの電力により駆動する車両の車両用充電インレットの冷却装置であって、
充電時に前記外部給電装置の給電端子と接続する受電端子と、
前記受電端子を保持し、前記車両用充電インレットに配設されるハウジングと、
冷媒が供給される充電インレット冷却回路と、
前記受電端子を保持するハウジングに跨って設置される冷却プレートと、
を含み、
前記冷却プレートの内部に、前記充電インレット冷却回路の流路が形成されることを特徴とする、
車両用充電インレットの冷却装置。
【請求項9】
前記充電インレット冷却回路は、前記バッテリの冷却回路に接続されていることを特徴とする、
請求項
8に記載の車両用充電インレットの冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用充電インレットの冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境負荷低減の観点から、車載バッテリの電力により駆動される電動車両の開発が行われている。電動車両のユーザは、車載バッテリの充電の際に充電時間の短い急速充電スタンドを利用できる。急速充電スタンドは、近年、充電時間をより短縮するために、高出力化が進んでいる。
【0003】
このような急速充電スタンドにおいて、急速充電時に充電電流が所定値以上となり、充電電路における発熱量が許容上限となると予見される場合、安全性の観点から充電制限が実施される。その結果、所望の充電時間及び充電電流値での充電を実施できず、充電時間の短縮を実質的に図れない虞がある。
【0004】
このような課題に関連した技術として、例えば特許文献1において、充電インレットとバッテリ間の電路(ハーネス)に冷却回路を近接配置することにより当該電路を冷却する技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、充電実施時に車両側で最も発熱量が大きい箇所は充電インレットにおける端子部分であるため、特許文献1に記載される冷却システムを採用しても確実に充電インレットの発熱を抑制することができない。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、より確実に充電インレットにおける発熱を抑制し、急速充電中に発生する充電制限の頻度を抑制することができる車両用充電インレットの冷却装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は前述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様又は適用例として実現することができる。
【0009】
本発明の適用例に係る車両用充電インレットの冷却装置は、外部給電装置から供給される電力によって充電されるバッテリの電力により駆動する車両の車両用充電インレットの冷却装置であって、充電時に前記外部給電装置の給電端子と接続する受電端子と、前記受電端子を保持し、前記車両用充電インレットに配設されるハウジングと、冷媒が供給される充電インレット冷却回路と、を含み、前記ハウジングには、前記充電インレット冷却回路の流路が形成されることを特徴とする。
また、本発明の他の適用例に係る車両用充電インレットの冷却装置は、外部給電装置から供給される電力によって充電されるバッテリの電力により駆動する車両の車両用充電インレットの冷却装置であって、充電時に前記外部給電装置の給電端子と接続する受電端子と、前記受電端子を保持し、前記車両用充電インレットに配設されるハウジングと、冷媒が供給される充電インレット冷却回路と、前記受電端子を保持するハウジングに跨って設置される冷却プレートと、を含み、前記冷却プレートの内部に、前記充電インレット冷却回路の流路が形成されることを特徴とする。
【0010】
上記適用例に係る車両用充電インレットの冷却装置によれば、充電インレットのハウジングに充電インレット冷却回路の冷媒が供給される流路が形成されていることで、外部給電装置の給電端子が充電インレットの受電端子と接続される充電時において、受電端子を保持するハウジングの流路を冷媒が流通し、ハウジングが保持する受電端子を冷却することができる。
また上記他の適用例に係る車両用充電インレットの冷却装置によれば、冷却プレートがハウジングに跨って設置され、冷却プレートに内部流路が形成されていることで、ハウジングが保持する受電端子を冷却することができる。
このように充電時に最も発熱量が大きい充電インレットの端子部分近傍に冷却用の流路を形成することで、より確実に充電インレットにおける発熱を抑制し、急速充電中に発生する充電制限の頻度を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係る車両用充電インレットの冷却装置が適用された車両の概略構成図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る車両用充電インレットの冷却装置の冷却回路図である。
【
図3】本実施形態の充電インレットの概略構造を示す斜視図である。
【
図4】(a)
図3のプラス受電端子の軸を通る面における垂直方向断面図である。(b)
図4(a)のA-A’矢視断面図である。
【
図6】内部流路の第1変形例を示す
図4(b)に対応する矢視断面図である。
【
図7】内部流路の第2変形例を示す本実施形態の充電インレットの概略構造を示す斜視図である。
【
図8】(a)内部流路の第3変形例を示す断面図である。(b)
図8(a)のB-B’矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づき説明する。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態に係る車両用充電インレットの冷却装置1が適用された車両101の概略構成図である。車両101は、走行用動力源としてモータ11を備える電気自動車である。車両101には、モータ11を駆動するための電力が充電された数100V系電源である高電圧バッテリ21(以下、単にバッテリという)が搭載されている。バッテリ21には直流電力が蓄積されており、不図示のインバータ回路によって交流変換された後、モータ11に供給される。また減速時や降坂時にはモータ11を回生駆動させることにより交流電力を発電し、インバータ回路によって整流して直流化し、バッテリ21に蓄積可能となっている。
【0014】
車両101はまた、充電スタンド等の外部給電装置201から供給される電力によってバッテリ21を充電するための受電回路22(
図1の一点鎖線で囲まれた部分)を備える。受電回路22は、外部給電装置201の給電プラグ202と接続可能な車両用充電インレット23(以下、充電インレットという)、及び、充電インレット23とバッテリ21を車体内側で電気的に接続するハーネス24を備える。
【0015】
充電インレット23は、バッテリ21の充電時に外部給電装置201の給電プラグ202と嵌合接続する受電端子231を備える。本実施形態において、充電インレット23は、急速充電型の充電スタンドに対応した直流充電タイプであるため、受電端子231は、プラス受電端子231a及びマイナス受電端子231b(以下、総称して受電端子231という場合がある)を含む。プラス受電端子231a及びマイナス受電端子231bは、外部給電装置201の給電プラグ202のプラス給電端子203a及びマイナス給電端子203bとそれぞれ嵌合接続する。
【0016】
また、車両101は、車両101に搭載される各種機器を制御するための各種のVCU31(Vehicle Control unit)を有する。本実施形態のVCU31は、予めインストールされた所定のプログラムに従って動作し後述する冷却回路41を制御する機能を有する。VCU31は、電子演算装置から構成される制御ユニットであり、車両用充電インレットの冷却装置1の各コンポーネントや各種センサとCAN(Controller Area Network)等の通信ネットワーク32を介して通信可能である。
【0017】
上述したバッテリ21及び受電回路22は、数100V系の高電圧コンポーネントであり、その動作時に発熱を生じる。そのため、これら高電圧コンポーネントを冷却するための冷却回路41が車両101に搭載されている。
【0018】
図2は、本発明の一実施形態に係る車両用充電インレットの冷却装置1の冷却回路41を示す冷却回路図である。冷却回路41は、高電圧コンポーネントを冷却するための冷媒が流れる循環回路である。具体的には、冷却回路41は、冷媒の流れに対して、冷媒と熱交換可能な複数の熱交換器を並列に接続した熱交換器部42と、高電圧コンポーネントを含む冷却対象部43と、を直列に接続して循環回路が構成される。本実施形態では冷媒として水を使用している。各熱交換器や高電圧コンポーネント等は、バルブ等の配管接続部材を用いて金属や樹脂の管により形成される流路441~445により接続される。
【0019】
熱交換器部42は、複数の熱交換器として、外気(走行風や不図示のラジエータファンからの風)との熱交換によって冷媒を冷却可能なラジエータ51と、不図示の冷温媒体との熱交換によって冷媒を冷却可能なチラー52とを含む。熱交換器部42は、冷却水の流れに対して、冷却対象部43で温度が上昇した冷却水が入力される流路441から始まり、バルブ53を介してラジエータ51へ向かう流路442aと、チラー52へ向かう流路442bと、に分岐する。これらの流路442a、流路442bはそれぞれラジエータ51、チラー52を通過したのちに合流し、熱交換されて温度が下がった冷却水が出力される流路443となる。流路443は、冷却水を加圧して冷却回路41内を循環させるポンプ54を含む。
【0020】
冷却対象部43は、冷却対象として、バッテリ21と充電インレット23とを含む。冷却対象部43は、冷却水の流れに対して、冷却水が入力される流路443から始まり、バルブ55を介してバッテリ21に向かう流路444aと充電インレット23に向かう流路444bに分岐する。バッテリ21へ向かう流路444aは、バッテリ21を通過して流路445aとなる。
【0021】
一方、充電インレット23に向かう流路444bは、さらにプラス受電端子231aに向かう流路444cとマイナス受電端子231bに向かう流路444dに分岐する。流路444c、流路444dはそれぞれ、プラス受電端子231a、マイナス受電端子231bを保持するハウジングを通過して流路445c、流路445dとなったのちに合流して流路445bとなる。
【0022】
さらに、バッテリ21からの流路445aは、受電端子231からの流路445bと合流し、流路441となる。
【0023】
このような構成とすることで、冷却回路41は、バッテリ21を冷却するための冷却水が循環するバッテリ冷却回路45と、バッテリ冷却回路45に並列に接続されて、分岐した冷却水が充電インレット23に供給される充電インレット冷却回路46と、の2つの循環回路が構成される。なお、バッテリ冷却回路45は、車両101の不図示のパワートレイン系の冷却回路とは独立して備えられる既存のものでよい。バッテリ冷却回路45は、発熱によるバッテリ21の劣化や動作変動を防止するため、温度上限が例えば60℃前後とパワートレイン系より低く設定されている。一方、外部給電装置201や給電プラグ202、及び充電インレット23は、ユーザが接触可能な部分の表面温度が例えば60℃以下になるよう外部給電装置201または車両101側で充電制御が行われる。このように冷却制御の温度範囲が近いため、バッテリ冷却回路45を循環する冷却水の温度帯で充電インレット23の冷却も行うことができる。
【0024】
また、
図2に示すように、プラス受電端子231a及びマイナス受電端子231bには、それぞれ温度センサ33a、33bが取り付けられている。VCU31は、充電インレット23と通信してこれら受電端子231の温度情報を取得し、後述する冷却制御で使用する。
【0025】
次に、充電インレット23の冷却構造を説明する。
図3は、充電インレット23の構造を概略的に示す斜視図である。
図4(a)は充電インレット23の設置状態においてプラス受電端子231aのX方向の中心軸を通る面における垂直方向断面図である。
図4(b)は
図4(a)のA-A’矢視断面図である。以下の説明において、
図3及び
図4に示すように、充電インレット23の設置形態において車両内部から車両外部に向かう方向をX方向、プラス受電端子231aとマイナス受電端子231bが配設される方向をY方向とする。
【0026】
充電インレット23は、外部給電装置201の給電プラグ202と接続するために、
図3に示すように、車両外部に面して配置される給電プラグ接続部232を有する。給電プラグ接続部232は、充電インレット23の本体233と一体に形成され、蓋234と係合可能な、略円筒状をしている。給電プラグ接続部232の内周側には、
図3及び
図4(a)に示すように、給電プラグ接続部232の円筒部の中心軸(X方向)と略平行な中心軸を有しX方向に延在する略円筒状のプラス端子ハウジング235a及びマイナス端子ハウジング235b(以下、総称して端子ハウジング235という場合がある)が配設されている。なお、給電プラグ接続部232には、不図示のアース端子及びアース端子ハウジング、信号端子及び信号端子ハウジングも備えられている。これらハウジングは例えば樹脂材料で形成される。
【0027】
プラス端子ハウジング235a、マイナス端子ハウジング235bは、その内部に、X方向に延在するプラス受電端子231a、マイナス受電端子231bをそれぞれ保持する。また、端子ハウジング235は、車両内部において、冷却回路41の流路444c、48dとそれぞれ接続している。ここで、充電インレット23の冷却構造は、本体233のY方向の中心から両側(プラス受電端子231a側とマイナス受電端子231b側)で冷却構造が同じであるため、以下、プラス受電端子231a側について説明し、マイナス受電端子231b側の説明は省略する。
【0028】
プラス受電端子231aは、
図4(a)に示すように、車両外部において給電プラグ202のプラス給電端子203aがプラス端子ハウジング235aの内側に挿し込まれることで嵌合するための、給電端子接触部2311と、車両内部でハーネス24aが加締め圧着される圧着接触部2312を有する。このような構成により、プラス受電端子231aは、給電プラグ202のプラス給電端子203aを介して外部給電装置201と電気的に接続可能である。また、プラス受電端子231aは、ハーネス24aを介してバッテリ21と電気的に接続される。これら各端子は金属等の導電性材料で形成される。
【0029】
ここで、
図4(a)に示すように、プラス受電端子231aの圧着接触部2312は略円柱形状で、その外周面は、プラス端子ハウジング235aの筒壁の内周面と接触しているが、この接触の面積は大きいほうが望ましい。これにより、プラス端子ハウジング235aとプラス受電端子231aとの熱伝達量が増加し、冷却効果を向上できる。
【0030】
プラス端子ハウジング235aには、充電インレット冷却回路46から供給される冷却水が流通する内部流路49が形成される。具体的には、プラス端子ハウジング235aは、その筒状形状において、X方向の車両内部の端面に不図示の1対の入力孔及び出力孔が配置され、筒壁内を蛇行往復して入力孔と出力孔を結ぶ中空の内部流路49を有する。内部流路49は、入力孔及び出力孔において、不図示のカプラ等の配管接続部品により充電インレット冷却回路46の流路444c及び流路445cとそれぞれ接続される。その結果、内部流路49は、受電インレット冷却回路に接続されて冷却水が流通する。
【0031】
VCU31は、温度センサ33の温度情報に基づいて、ポンプ54の駆動及び出力調整を行い、また、バルブ55を開閉することで適当な流量の冷却水を充電インレット冷却回路46に循環させて充電インレット23を冷却する冷却制御を行う機能を有する。外部給電装置201によるバッテリ21の充電中は、通常、車両101は停車しモータ11を停止しているため、ラジエータ51の熱交換能力は走行時に比べ低下している。そのため、VCU31は、受電端子231の温度上昇の程度に合わせて、不図示のラジエータファンを駆動したり、バルブ53を開閉してより熱交換能力の高いチラー52に切替え、又は併用することにより、冷却水の温度を下げる制御を行う。
【0032】
VCU31は、バッテリ21が外部給電装置201から充電される間、受電端子231が所定の温度以上になった場合に、上記の冷却制御を行う。具体的には、VCU31が、給電プラグ202と充電インレット23とが嵌合接続されたという検出信号を受け、かつ、温度センサ33からの温度情報が所定の閾値(例えば60℃)以上になった場合に、冷却制御を行う。また、VCU31は、より高電圧・高出力の急速充電モードを備える外部給電装置201から充電する場合、具体的には、充電インレット23で接続される通信線端子を介してVCU31が急速充電モードでの充電を検出した場合には、検出した時点で冷却制御を開始することもできる。これにより、高電圧コンポーネントの発熱量が増加する急速充電モードにおいてより早く受電端子231の冷却が行える。
【0033】
このように構成された車両用充電インレットの冷却装置1は、充電インレット23に配設される端子ハウジング235に、バッテリ21の充電時に充電インレット冷却回路46から供給される冷却水の内部流路49が形成される。このような構成により、受電端子231を保持する端子ハウジング235の内部流路49を冷却水が流通し、端子ハウジング235が保持する受電端子231を熱伝達又は熱輻射により冷却することができる。このように充電時に最も発熱量が大きい充電インレット23の受電端子231近傍に冷却用の流路を形成することで、より確実に充電インレット23における発熱を抑制し、急速充電中に発生する充電制限の頻度を抑制することができる。
【0034】
以上で本発明に係る車両用充電インレットの冷却装置の実施形態についての説明を終えるが、本発明の態様はこの実施形態に限定されるものではない。
【0035】
上記実施形態においては、冷却対象のバッテリ21と充電インレット23は並列に冷却回路41に接続されているが、
図5に示す冷却回路の変形例のように、冷却対象のバッテリ21と充電インレット23を冷却回路411内にて直列に接続し、バッテリ21を通過した冷却水によって充電インレット23を冷却してもよい。この場合、並列接続と比較して冷却対象部の入力側のバルブを省略でき、バルブの管理や制御が容易となる。
【0036】
上記実施形態において、内部流路49は、
図4(b)に示すように、略円形断面を有し、端子ハウジング235の側壁内を複数回往復しているが、
図6に示す内部流路の第1変形例のように、端子ハウジング235の筒壁形状に沿った部分円弧形状を有し、端子ハウジング235の筒壁内を1往復する内部流路491としてもよい。これにより、冷却水と端子ハウジング235の接触面積が増加し、冷却効果をより向上させることができる。
【0037】
上記実施形態においては、
図4(b)に示すように、内部流路49は、略円形断面を有し、端子ハウジング235の筒壁内を複数回往復していたが、
図7に示す内部流路の第2変形例のように、アルミ等の高伝熱材料の略直方体形状の冷却プレート56をプラス端子ハウジング235a、マイナス端子ハウジング235bに跨って設置し、冷却プレート56に内部流路492を形成してもよい。この場合、冷却プレート56の製造加工が容易であるとともに、冷却回路41の充電インレット23への配管を減らすことができる。
【0038】
上記実施形態においては、内部流路49を、受電端子231を保持する端子ハウジング235に形成しているが、
図8(a)(b)に示す内部流路の第3変形例のように、内部流路493を、略円筒形で中実な圧着接触部2312に形成してもよい。このような場合、内部流路493を流れる冷却水としては、絶縁性を有する冷却オイルが用いられる。このように直接端子自体を冷却するため、より冷却効果が向上する。
【0039】
また、上記実施形態の車両101は、走行用動力源としてモータ11を備える電気自動車であるが、本発明は走行用動力源としてモータとエンジンとを備えるプラグインハイブリッド車(PHV:Plug-in Hybrid Vehicle)にも適用可能である。
【符号の説明】
【0040】
1 車両用充電インレットの冷却装置
21 バッテリ
22 受電回路
23 充電インレット
231a プラス受電端子
231b マイナス受電端子
232 給電プラグ接続部
233 本体
234 蓋
235a、235b 端子ハウジング
24、24a、24b ハーネス
31 VCU
32 CAN(通信ネットワーク)
33a、33b 温度センサ
41 冷却回路
42 熱交換器部
43 冷却対象部
441~445 流路
45 バッテリ冷却回路
46 充電インレット冷却回路
49 内部流路
51 ラジエータ
52 チラー
53、55 バルブ
54 ポンプ
56 冷却プレート
101 車両
201 外部給電装置
202 給電プラグ
203a プラス給電端子
203b マイナス給電端子