(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】光モジュール
(51)【国際特許分類】
G02B 6/42 20060101AFI20240312BHJP
G02B 13/14 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
G02B6/42
G02B13/14
(21)【出願番号】P 2021529168
(86)(22)【出願日】2020-07-01
(86)【国際出願番号】 JP2020025890
(87)【国際公開番号】W WO2021002402
(87)【国際公開日】2021-01-07
【審査請求日】2023-01-23
(31)【優先権主張番号】P 2019123800
(32)【優先日】2019-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000154325
【氏名又は名称】住友電工デバイス・イノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100136722
【氏名又は名称】▲高▼木 邦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100174399
【氏名又は名称】寺澤 正太郎
(72)【発明者】
【氏名】金丸 聖
【審査官】山本 元彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/143725(WO,A1)
【文献】特開2017-107131(JP,A)
【文献】特開平06-082723(JP,A)
【文献】特表2018-533033(JP,A)
【文献】特開2001-036505(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0095311(US,A1)
【文献】米国特許第05220403(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/26-6/27
G02B 6/30-6/34
G02B 6/42-6/43
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれの偏光方向が互いに直交する第1偏光成分及び第2偏光成分を含む信号光を、前記第1偏光成分と前記第2偏光成分とに分岐する第1光分岐素子と、
第1導入口を有し、前記第1導入口から前記第1偏光成分を入力する第1素子と、
第2導入口を有し、前記第2導入口から前記第2偏光成分を入力する第2素子と、
前記第1光分岐素子と前記第1導入口との間に配置され、前記第1導入口に向けて前記第1偏光成分を集光する第1集光部と、
前記第1光分岐素子と前記第2導入口との間に配置され、前記第2導入口に向けて前記第2偏光成分を集光する第2集光部と、を備え、
前記第1光分岐素子から前記第1集光部までの前記第1偏光成分の光路長は、前記第1光分岐素子から前記第2集光部までの前記第2偏光成分の光路長よりも大きく、
前記第2集光部の光軸方向
の屈折率は、前記第1集光部の光軸方向
の屈折率よりも大きい、光モジュール。
【請求項2】
前記第1素子及び前記第2素子は、光90度ハイブリッド集積型の受光素子であって、
前記第1素子は、第3導入口を有し、前記第3導入口から第1局発光を入力し、
前記第2素子は、第4導入口を有し、前記第4導入口から第2局発光を入力し、
前記光モジュールは、
前記信号光を入力する信号光入力ポートと、
局発光を入力する局発光入力ポートと、
前記局発光を前記第1局発光と前記第2局発光とに分岐する第2光分岐素子と、
前記第2光分岐素子と前記第3導入口との間に配置され、前記第3導入口に向けて前記第1局発光を集光する第3集光部と、
前記第2光分岐素子と前記第4導入口との間に配置され、前記第4導入口に向けて前記第2局発光を集光する第4集光部と、をさらに備え、
前記第2光分岐素子から前記第4集光部までの前記第2局発光の光路長は、前記第2光分岐素子から前記第3集光部までの前記第1局発光の光路長よりも大きく、
前記第3集光部の光軸方向
の屈折率は、前記第4集光部の光軸方向
の屈折率よりも大きい、請求項1に記載の光モジュール。
【請求項3】
前記第2集光部の光軸方向
の屈折率は、前記第1集光部の光軸方向
の屈折率の1.2倍以上2.6倍以下である、請求項1または請求項2に記載の光モジュール。
【請求項4】
前記第1集光部は、ガラス、水晶、フッ化カルシウム及びフッ化マグネシウムのいずれかからなる一又は複数の第1レンズからなり、
前記第2集光部は、シリコン、セレン化亜鉛及びサファイアのいずれかからなる少なくとも一つの第2レンズを含む、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の光モジュール。
【請求項5】
前記第1集光部及び前記第2集光部が設置された設置部をさらに備え、
前記第1集光部は、第1線膨張係数を有する材料からなる一又は複数の第1レンズからなり、
前記第2集光部は、前記第1線膨張係数とは異なる第2線膨張係数を有する材料からなる少なくとも一つの第2レンズを含み、
前記設置部は、
前記第1レンズが設置され、第3線膨張係数を有する材料からなる第1設置部と、
前記第2レンズが設置され、前記第3線膨張係数とは異なる第4線膨張係数を有する材料からなる第2設置部と、を含み、
前記第3線膨張係数と前記第1線膨張係数との差の絶対値は、前記第4線膨張係数と前記第1線膨張係数との差の絶対値よりも小さく、
前記第4線膨張係数と前記第2線膨張係数との差の絶対値は、前記第3線膨張係数と前記第2線膨張係数との差の絶対値よりも小さい、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の光モジュール。
【請求項6】
前記第1レンズが設置された設置部の材料はアルミナであり、
前記第2レンズが設置された設置部の材料は窒化アルミニウムあるいはムライトである、請求項4に記載の光モジュール。
【請求項7】
前記第2集光部の前記光軸方向の厚みは、前記第1集光部の前記光軸方向の厚みよりも大きい、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の光モジュール。
【請求項8】
前記第1光分岐素子によって分岐された前記第1偏光成分を反射する第1反射素子をさらに備え、
前記第1光分岐素子によって分岐された前記第1偏光成分は、前記第1反射素子を介して前記第1集光部に集光され、
前記第2偏光成分は、直接、前記第1光分岐素子の出力側から前記第2集光部に集光される、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の光モジュール。
【請求項9】
前記第1光分岐素子から前記第1導入口までの光学長は、前記第1光分岐素子から前記第2導入口までの光学長と実質的に同じである、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の光モジュール。
【請求項10】
前記第4集光部の前記光軸方向の厚みは、前記第3集光部の前記光軸方向の厚みよりも大きい、請求項2に記載の光モジュール。
【請求項11】
前記第2光分岐素子によって分岐された前記第2局発光を反射する第2反射素子をさらに備え、
前記第2光分岐素子によって分岐された前記第2局発光は、前記第2反射素子を介して前記第4集光部に集光され、
前記第1局発光は、直接、前記第2光分岐素子の出力側から前記第3集光部に集光される、請求項2または請求項10に記載の光モジュール。
【請求項12】
前記第2光分岐素子から前記第3導入口までの光学長は、前記第2光分岐素子から前記第4導入口までの光学長と実質的に同じである、請求項2、請求項10または請求項11に記載の光モジュール。
【請求項13】
信号光を、第1光成分と第2光成分とに分岐する光分岐素子と、
前記第1光成分を第1導入口へ集光する第1集光部と、
前記第2光成分を第2導入口へ集光する第2集光部と、を備え、
前記光分岐素子から前記第1集光部までの前記第1光成分の光路長は、前記光分岐素子から前記第2集光部までの前記第2光成分の光路長よりも大きく、
前記第2集光部の光軸方向
の屈折率は、前記第1集光部の光軸方向
の屈折率よりも大きい、光モジュール。
【請求項14】
前記第2集光部の前記光軸方向の厚みは、前記第1集光部の前記光軸方向の厚みよりも大きい、請求項13に記載の光モジュール。
【請求項15】
前記光分岐素子によって分岐された前記第1光成分を反射する反射素子をさらに備え、
前記光分岐素子によって分岐された前記第1光成分は、前記反射素子を介して前記第1集光部に集光され、
前記第2光成分は、直接、前記光分岐素子の出力側から前記第2集光部に集光される、請求項13または請求項14に記載の光モジュール。
【請求項16】
前記光分岐素子から前記第1導入口までの光学長は、前記光分岐素子から前記第2導入口までの光学長と実質的に同じである、請求項13から請求項15のいずれか一項に記載の光モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光モジュールに関する。
【0002】
本出願は、2019年7月2日出願の日本出願第2019-123800号に基づく優先権を主張し、前記日本出願に記載された全ての記載内容を援用するものである。
【背景技術】
【0003】
特許文献1は、コヒーレント光波通信用の光受信機を開示する。この光受信機は、信号光を偏光分離する偏光ビームスプリッタと、局発光を分岐する分岐手段と、同一の導波路基板上に形成された第1の光方向性結合器及び第2の光方向性結合器と、第1の光方向性結合器の各出力端からの光をそれぞれ受光する第1の受光素子及び第2の受光素子と、第2の光方向性結合器の各出力端からの光をそれぞれ受光する第3の受光素子及び第4の受光素子とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
本開示の一実施形態に係る光モジュールは、それぞれの偏光方向が互いに直交する第1偏光成分及び第2偏光成分を含む信号光を、第1偏光成分と第2偏光成分とに分岐する第1光分岐素子と、第1導入口を有し、第1導入口から第1偏光成分を入力する第1素子と、第2導入口を有し、第2導入口から第2偏光成分を入力する第2素子と、第1光分岐素子と第1導入口との間に配置され、第1導入口に向けて第1偏光成分を集光する第1集光部と、第1光分岐素子と第2導入口との間に配置され、第2導入口に向けて第2偏光成分を集光する第2集光部と、を備え、第1光分岐素子から第1集光部までの第1偏光成分の光路長は、第1光分岐素子から第2集光部までの第2偏光成分の光路長よりも大きく、第2集光部の光軸方向の平均屈折率は、第1集光部の光軸方向の平均屈折率よりも大きい。
【0006】
本開示の別の実施形態に係る光モジュールは、信号光を、第1光成分と第2光成分とに分岐する光分岐素子と、第1光成分を第1導入口へ集光する第1集光部と、第2光成分を第2導入口へ集光する第2集光部と、を備え、光分岐素子から第1集光部までの第1光成分の光路長は、光分岐素子から第2集光部までの第2光成分の光路長よりも大きく、第2集光部の光軸方向の平均屈折率は、第1集光部の光軸方向の平均屈折率よりも大きい。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態に係る光モジュールとしてのコヒーレントレシーバの内部構成を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示されたコヒーレントレシーバの平面図である。
【
図3】
図3は、コヒーレントレシーバの内部の各光学部品の接続関係を概略的に示す平面図である。
【
図5】
図5は、
図2に示された各レンズ及びベースの断面図である。
【
図6】
図6は、
図4Aに示されたレンズに集光された光の位置と照度との関係を実測したグラフである。
【
図7】
図7は、
図4Bに示されたレンズに集光された光の位置と照度との関係を実測したグラフである。
【
図11】
図11は、変形例に係るコヒーレントレシーバを概略的に示す平面図である。
【
図13A】
図13Aは、比較例に係るコヒーレントレシーバを概略的に示す平面図である。
【
図13B】
図13Bは、別の比較例に係るコヒーレントレシーバを概略的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[本開示が解決しようとする課題]
上記の特許文献1に記載された光受信機のように、コヒーレント光波通信においては、信号光が異なる偏光成分に分岐され、複数の偏光成分が各受光素子によってそれぞれ受光される。分岐された複数の偏光成分は、それぞれの位相が互いに合うように調整される。各受光素子によって正しく電気信号に変換されるためである。そのために、たとえば光モジュールといったデバイスには、信号光の分岐後から各受光素子までの間で、各光学長を補償(補正)するための調整部品が用いられることがある。一方で、このような光モジュールにおいては、搭載される光学部品の点数の削減が望まれている。
【0009】
[本開示の効果]
本開示の一実施形態に係る光モジュールによれば、分岐された各偏光成分の光学長差を補償しつつ部品点数を削減することができる。
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
最初に、本開示の実施形態の内容を列記して説明する。一実施形態に係る光モジュールは、それぞれの偏光方向が互いに直交する第1偏光成分及び第2偏光成分を含む信号光を、第1偏光成分と第2偏光成分とに分岐する第1光分岐素子と、第1導入口を有し、第1導入口から第1偏光成分を入力する第1素子と、第2導入口を有し、第2導入口から第2偏光成分を入力する第2素子と、第1光分岐素子と第1導入口との間に配置され、第1導入口に向けて第1偏光成分を集光する第1集光部と、第1光分岐素子と第2導入口との間に配置され、第2導入口に向けて第2偏光成分を集光する第2集光部と、を備え、第1光分岐素子から第1集光部までの第1偏光成分の光路長は、第1光分岐素子から第2集光部までの第2偏光成分の光路長よりも大きく、第2集光部の光軸方向の平均屈折率は、第1集光部の光軸方向の平均屈折率よりも大きい。
【0011】
上記の光モジュールにおいては、第1光分岐素子によって分岐されてから第1集光部に到達するまでの第1偏光成分の光路長は、第1光分岐素子によって分岐されてから第2集光部に到達するまでの第2偏光成分の光路長よりも大きい。すなわち、第1偏光成分と第2偏光成分との間に光路長差が生じている。一方で、第2集光部の光軸方向の平均屈折率は、第1集光部の光軸方向の平均屈折率よりも大きい。これにより、第1偏光成分が第1集光部を通過し、第2偏光成分が第2集光部を通過することによって、第1偏光成分と第2偏光成分との間の光学長が実質的に同じになる。このため、第1素子に入力される第1偏光成分と第2素子に入力される第2偏光成分との間の光学長差を、第1集光部及び第2集光部によって補償することができる。したがって、当該光学長差を補償するための調整部品を省略でき、部品点数を削減することができる。
【0012】
上記の光モジュールにおいて、第1素子及び第2素子は、光90度ハイブリッド集積型の受光素子であって、第1素子は、第3導入口を有し、第3導入口から第1局発光を入力し、第2素子は、第4導入口を有し、第4導入口から第2局発光を入力し、光モジュールは、信号光を入力する信号光入力ポートと、局発光を入力する局発光入力ポートと、局発光を第1局発光と第2局発光とに分岐する第2光分岐素子と、第2光分岐素子と第3導入口との間に配置され、第3導入口に向けて第1局発光を集光する第3集光部と、第2光分岐素子と第4導入口との間に配置され、第4導入口に向けて第2局発光を集光する第4集光部と、をさらに備え、第2光分岐素子から第4集光部までの第2局発光の光路長は、第2光分岐素子から第3集光部までの第1局発光の光路長よりも大きく、第3集光部の光軸方向の平均屈折率は、第4集光部の光軸方向の平均屈折率よりも大きくてもよい。この場合、第3集光部及び第4集光部によって第1局発光及び第2局発光の間の光学長差を補償することができる。したがって、当該光学長差を補償するための調整部品も省略でき、部品点数をさらに削減することができる。
【0013】
上記の光モジュールにおいて、第2集光部の光軸方向の平均屈折率は、第1集光部の光軸方向の平均屈折率の1.2倍以上2.6倍以下であってもよい。第1集光部は、ガラス、水晶、フッ化カルシウム及びフッ化マグネシウムの何れかからなる一又は複数の第1レンズからなり、第2集光部は、シリコン、セレン化亜鉛及びサファイアの何れかからなる少なくとも一つの第2レンズを含んでいてもよい。この場合、光学長差を補償し得る第1集光部及び第2集光部を構成しやすい。
【0014】
上記の光モジュールは、第1集光部及び第2集光部が設置された設置部をさらに備え、第1集光部は、第1線膨張係数を有する材料からなる一又は複数の第1レンズからなり、第2集光部は、第1線膨張係数とは異なる第2線膨張係数を有する材料からなる少なくとも一つの第2レンズを含み、設置部は、第1レンズが設置され、第3線膨張係数を有する材料からなる第1設置部と、第2レンズが設置され、第3線膨張係数とは異なる第4線膨張係数を有する材料からなる第2設置部と、を含み、第3線膨張係数と第1線膨張係数との差の絶対値は、第4線膨張係数と第1線膨張係数との差の絶対値よりも小さく、第4線膨張係数と第2線膨張係数との差の絶対値は、第3線膨張係数と第2線膨張係数との差の絶対値よりも小さくてもよい。この場合、熱の影響等によって各部材が膨張しても、信頼性の低下を抑制することができる。
【0015】
上記の光モジュールにおいて、第1レンズが設置された設置部の材料はアルミナであり、第2レンズが設置された設置部の材料は窒化アルミニウムあるいはムライトであってもよい。たとえば、第1レンズの材料はガラスであり、第2レンズの材料はシリコンであり、第1設置部の材料はアルミナであり、第2設置部の材料は窒化アルミニウムあるいはムライトであってもよい。アルミナは、ガラスの線膨張係数に近い線膨張係数を有しており、窒化アルミニウム及びムライトは、シリコンの線膨張係数に近い線膨張係数と有している。したがって、この構成によれば、熱の影響等によって各部材が膨張した際、十分に信頼性の低下を抑制することができる。
【0016】
上記の光モジュールにおいて、第2集光部の光軸方向の厚みは、第1集光部の光軸方向の厚みよりも大きくてもよい。上記の光モジュールにおいて、第1光分岐素子によって分岐された第1偏光成分を反射する第1反射素子をさらに備え、第1光分岐素子によって分岐された第1偏光成分は、第1反射素子を介して第1集光部に集光され、第2偏光成分は、直接、第1光分岐素子の出力側から第2集光部に集光されてもよい。上記の光モジュールにおいて、第1光分岐素子から第1導入口までの光学長は、第1光分岐素子から第2導入口までの光学長と実質的に同じであってもよい。上記の光モジュールにおいて、第4集光部の光軸方向の厚みは、第3集光部の光軸方向の厚みよりも大きくてもよい。上記の光モジュールは、第2光分岐素子によって分岐された第2局発光を反射する第2反射素子をさらに備え、第2光分岐素子によって分岐された第2局発光は、第2反射素子を介して第4集光部に集光され、第1局発光は、直接、第2光分岐素子の出力側から第3集光部に集光されてもよい。上記の光モジュールにおいて、第2光分岐素子から第3導入口までの光学長は、第2光分岐素子から第4導入口までの光学長と実質的に同じであってもよい。
【0017】
別の実施形態に係る光モジュールは、信号光を、第1光成分と第2光成分とに分岐する光分岐素子と、第1光成分を第1導入口へ集光する第1集光部と、第2光成分を第2導入口へ集光する第2集光部と、を備え、光分岐素子から第1集光部までの第1光成分の光路長は、光分岐素子から第2集光部までの第2光成分の光路長よりも大きく、第2集光部の光軸方向の平均屈折率は、第1集光部の光軸方向の平均屈折率よりも大きい。
【0018】
上記の光モジュールにおいては、光分岐素子によって分岐されてから第1集光部に到達するまでの第1光成分の光路長は、光分岐素子によって分岐されてから第2集光部に到達するまでの第2光成分の光路長よりも大きい。すなわち、第1光成分と第2光成分との間に光路長差が生じている。一方で、第2集光部の光軸方向の平均屈折率は、第1集光部の光軸方向の平均屈折率よりも大きい。これにより、第1光成分が第1集光部を通過し、第2光成分が第2集光部を通過することによって、第1光成分と第2光成分との間の光学長が実質的に同じになる。このため、第1素子に入力される第1光成分と第2素子に入力される第2光成分との間の光学長差を、第1集光部及び第2集光部によって補償することができる。したがって、当該光学長差を補償するための調整部品を省略でき、部品点数を削減することができる。
【0019】
上記の光モジュールにおいて、第2集光部の光軸方向の厚みは、第1集光部の光軸方向の厚みよりも大きくてもよい。上記の光モジュールは、光分岐素子によって分岐された第1光成分を反射する反射素子をさらに備え、光分岐素子によって分岐された第1光成分は、反射素子を介して第1集光部に集光され、第2光成分は、直接、光分岐素子の出力側から第2集光部に集光されてもよい、上記の光モジュールにおいて、光分岐素子から第1導入口までの光学長は、光分岐素子から第2導入口までの光学長と実質的に同じであってもよい。
【0020】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の実施形態に係る光モジュールの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。以下の説明においては、同一要素又は同一機能を有する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する場合がある。
【0021】
図1は、本開示の一実施形態に係る光モジュールとしてのコヒーレントレシーバ1の内部構成を示す斜視図である。
図2は、
図1に示されたコヒーレントレシーバの平面図である。コヒーレントレシーバ1は、局発光(Local Beam:局発光)と信号光(Signal Beam:信号光)とを干渉させ、位相変調された信号光に含まれる情報を復調する装置である。復調された情報は電気信号に変換されてコヒーレントレシーバ1の外部に出力される。コヒーレントレシーバ1は、局発光、信号光それぞれに対する光学系と、光90度ハイブリット集積型の受光素子を含む二つの多モード干渉器(Multi-Mode Interference:MMI)40,50と、これらの光学系とMMI40,50とを収容する筐体2と、を備える。
【0022】
MMI40は、本実施形態における第1素子の一例である。MMI50は、本実施形態における第2素子の一例である。二つのMMI40,50は半導体MMIであり、たとえばInP製である。MMI40は、第1多モード干渉部を有し、局発光導入口41(第3導入口)及び信号光導入口42(第1導入口)を有する。MMI40は、局発光導入口41に入力された局発光と、信号光導入口42に入力された信号光とを干渉させることにより、信号光の位相情報を復調する。同様に、MMI50は、第2多モード干渉部を有し、局発光導入口51(第4導入口)及び信号光導入口52(第2導入口)を有する。MMI50は、局発光導入口51に入力された局発光と、信号光導入口52に入力された信号光とを干渉させることにより、信号光の位相情報を復調する。本実施形態では二つのMMI40,50が互いに独立して設けられているが、これらは一体に集積化されていてもよい。
【0023】
筐体2は、前壁2aを有する。以下の説明において、前壁2a側を前方、反対側を後方と呼ぶ。但し、これら前方/後方はあくまでも説明のためだけであり、本発明の範囲を制限するものではない。前壁2aには、局発光入力ポート5及び信号光入力ポート6が、たとえばレーザ溶接により固定されている。局発光入力ポート5には偏波保持ファイバ35を介して局発光L0が提供され、信号光入力ポート6には単一モードファイバ36を介して信号光N0が提供される。
【0024】
局発光入力ポート5及び信号光入力ポート6は、それぞれコリメートレンズを有している。局発光入力ポート5は、偏波保持ファイバ35から出射された局発光L0(偏波保持ファイバ35から出射された状態では発散光)をコリメート光に変更して筐体2内に導く。局発光入力ポート6は、単一モードファイバ36から出射された信号光N0(単一モードファイバ36から出射された状態では発散光)をコリメート光に変更して筐体2内に導く。
【0025】
図3は、コヒーレントレシーバ1の内部の各光学部品の接続関係を概略的に示す平面図である。信号光用光学系は、偏光ビームスプリッタ(Polarization Beam Splitter:PBS)21(第1光分岐素子;光分岐素子)と、反射器22(第1反射素子)と、レンズ群23(第2集光部)と、レンズ群24(第1集光部)と、半波長(λ/2)板25と、を含む。本実施形態において、信号光用光学系は、光学長の差を補償するためのスキュー調整素子を備えていない。
【0026】
PBS21は、信号光入力ポート6に光結合し、単一モードファイバ36から信号光入力ポート6を介して提供された信号光N0を分岐する。分岐比はたとえば50:50である。単一モードファイバ36が提供する信号光N0は、偏光方向が互いに直交する二つの偏光成分としての第1偏光成分及び第2偏光成分を含む。第1偏光成分は、第1光成分の一例であり、第2偏光成分は、第2光成分の一例である。PBS21は、信号光N0の二つの偏光成分を相互に分離する。第1偏光成分は、たとえば、信号光N0のうち底面2cに垂直な偏光成分である。第2偏光成分は、たとえば、信号光N0のうち筐体2の底面2cに平行な偏光成分である。PBS21は、第2偏光成分を透過して信号光N1とし、第1偏光成分を反射して信号光N2とする。
【0027】
PBS21を透過した信号光N1は、直進してMMI50に向かう。そして、信号光N1は、MMI50の信号光導入口52にレンズ群23を介して光結合される。PBS21により反射された信号光N2は、λ/2板25を通過する間にその偏光方向が90°回転される。分岐直後の信号光N1,N2の偏光は互いに直交している。信号光N2についてλ/2板25を通過させることで、信号光N2の偏光方向は90°回転され、信号光N1と同様となる。そして、信号光N2は、反射器22によりその光軸が90°変換され、MMI40の信号光導入口42にレンズ群24を介して光結合される。
【0028】
レンズ群23は、PBS21とMMI50との間において信号光N1の光路上に配置されている。レンズ群23は、PBS21によって分岐された信号光N1を、MMI50の信号光導入口52に向けて集光する。レンズ群24は、PBS21と信号光導入口42との間に配置されている。具体的には、レンズ群24は、反射器22とMMI40との間において信号光N2の光路上に配置されている。レンズ群24は、PBS21によって分岐され反射器22において反射した信号光N2を、MMI40の信号光導入口42に向けて集光する。PBS21によって分岐された信号光N2は、反射器22を介してレンズ群24に集光され、信号光N1は、直接、PBS21の出力側からレンズ群23に集光される。PBS21によって分岐されてからレンズ群24に到達するまでの信号光N2の光路長は、PBS21によって分岐されてからレンズ群23に到達するまでの信号光N1の光路長よりも大きい。つまり、PBS21から反射器22までの信号光N2の光路長と反射器22からレンズ群23までの信号光N2の光路長との総和は、PBS21からレンズ群23までの信号光N1の光路長よりも大きい。信号光N1,N2の光路長差は、PBS21から反射器22に至る光路長の分に相当し、たとえば2mmである。ここで、光路長とは、距離を示すものである。例えば、PBS21によって分岐されてからレンズ群24に到達するまでの信号光N2の光路長とは、PBS21によって分岐されてからレンズ群24に到達するまでの距離(長さ)を示す。
【0029】
レンズ群23は、相対的にMMI50に近接して配置されたレンズ23aと、相対的にMMI40から離間して配置されたレンズ23bと、を有する。レンズ群24は、相対的にMMI40に近接して配置されたレンズ24aと、相対的にMMI40から離間して配置されたレンズ24bと、を有する。このように、レンズ23a,24aとレンズ23b,24bとを組み合わせて集光レンズとすることによって、MMI50,40の小さな信号光導入口52,42に対する信号光N1,N2の光結合効率を高めることができる。
【0030】
レンズ群23,24は、二つの信号光N1,N2の、PBS21から各信号光導入口52,42に至る光学長の差を補償する。具体的には、レンズ群23,24は、分岐されてからレンズ群23,24に到達するまでに生じた信号光N1,N2の光学長差、換言すると各信号光導入口52,42に至るまでの信号光N1,N2の時間差を補償する。そのために、レンズ群23の光軸方向の屈折率は、レンズ群24の光軸方向の平均屈折率よりも大きい。例えば、レンズ群23の光軸方向の平均屈折率は、レンズ群24の光軸方向の平均屈折率の1.2倍以上2.6倍以下であってもよい。レンズ群23の光軸方向の厚さは、レンズ群24の光軸方向の厚さよりも大きい。
【0031】
レンズ24aは、本実施形態における第1レンズの一例である。レンズ23aは、本実施形態における第2レンズの一例である。レンズ23aの屈折率はレンズ24aの屈折率よりも大きい。レンズ24aの材料はガラス(SiO2)であり、レンズ24aの屈折率は1.5以上1.8以下である。レンズ23aの材料はシリコン(Si)であり、レンズ23aの屈折率は3.5である。ただし、レンズ23aの材料は、レンズ24aの材料よりも大きい屈折率を有するものであればよく、セレン化亜鉛、サファイア等であってもよい。レンズ24aの材料は、水晶、フッ化カルシウム、フッ化マグネシウム等であってもよい。本実施形態において、レンズ23b,24bの材料はレンズ24aの材料と同じ(たとえばガラス)であり、レンズ23b,24bはレンズ24aの屈折率と同じ屈折率を有している。レンズ群23において、レンズ23aの材料がガラスであり、レンズ23bの材料がシリコンであってもよい。
【0032】
図4A及び
図4Bに示されるように、レンズ24aの光軸方向の厚さD1は、レンズ23aの光軸方向の厚さD2よりも小さい。これにより、PBS21から信号光導入口42,52それぞれまでの光学長(光が進む距離)は実質的に同じになる。一例として、厚さD1は0.78mmであり、厚さD2は0.96mmである。光学長とは、光が進む距離であり、「屈折率×(物理的な)長さ」で示される。本実施形態では、PBS21からレンズ23a,24aそれぞれまでの光路長は異なることから、PBS21からレンズ23a,24aそれぞれまでの光学長が異なる。そこで、レンズ24a、23aを用い、PBS21から信号光導入口42,52それぞれまでの光学長を補償(光学長を同じにする)するものである。
【0033】
レンズ23a,24aの光軸を通る断面の形状は互いに異なっている。本実施形態において、レンズ24aの入射側の面は、半径R11の球面であり、レンズ23aの入射側の面は、半径R11よりも大きい半径R21の球面である。レンズ24aの出射側の面は、半径R12の球面であり、レンズ23aの出射側の面は、半径R12よりも小さい半径R22の球面である。本実施形態においては、信号光導入口52,42に対する信号光N1,N2の光結合効率が同程度となるように、半径R11,R12,R21,R22がそれぞれ設定されている。一例として、半径R11は0.565mmであり、半径R21は0.596mmである。半径R12は0.404mmであり、半径R22は0.401mmである。ただし、レンズ23a,24aの光軸方向に直交する面の形状は同じであってもよい。
【0034】
局発光用光学系は、局発光入力ポート5から提供された局発光をMMI40,50の局発光導入口41,51に導く。局発光用光学系は、偏光子(polarizer)11と、光分波器(Beam Splitter:BS)12(第2光分岐素子)と、反射器13(第2反射素子)と、レンズ群14(第3集光部)と、レンズ群15(第4集光部)と、を含む。本実施形態において、局発光用光学系は、光学長の差を補償するためのスキュー調整素子を備えていない。
【0035】
偏光子11は局発光入力ポート5に光結合し、局発光入力ポート5から提供された局発光L0の偏波方向を整える。局発光L0の光源は、極めて扁平な楕円偏光を出力する。局発光L0の光源が直線偏光を出力したとしても、光源からこのコヒーレントレシーバ1に至る光経路に挿入された光部品の実装精度などにより、局発光入力ポート5から入力される局発光L0が所望の方向に沿った直線偏光を有しているわけではない。偏光子11は、局発光入力ポート5から入力された局発光L0を、所望の偏光方向(たとえば筐体2の底面2cに平行な方向)を有する直線偏光に変換する。
【0036】
BS12は、偏光子11から出力される局発光L0を、局発光L1(第1局発光)と局発光L2(第2局発光)とに二分岐する。分岐比は50:50である。分岐された一方の局発光L1はBS12を直進してMMI40に向かう。そして、局発光L1は、MMI40の局発光導入口41にレンズ群14を介して光結合される。他方の局発光L2は、BS12によりその光軸を90°変換され、さらに、反射器13により再度その光軸を90°変換されてMMI50に向かう。そして、局発光L2は、MMI50の局発光導入口51にレンズ群15を介して光結合される。
【0037】
レンズ群14は、BS12とMMI40との間において局発光L1の光路上に配置されている。レンズ群14は、BS12によって分岐された局発光L1を、MMI40の局発光導入口41に向けて集光する。レンズ群15は、BS12と局発光導入口51との間に配置されている。具体的には、レンズ群15は、反射器13とMMI50との間において局発光L2の光路上に配置されている。レンズ群15は、BS12によって分岐され反射器13において反射した局発光L2を、MMI50の局発光導入口51に向けて集光する。BS12によって分岐された局発光L2は、反射器13を介してレンズ群15に集光され、局発光L1は、直接、BS12の出力側からレンズ群14に集光される。BS12によって分岐されてからレンズ群15に到達するまでの局発光L2の光路長は、BS12によって分岐されてからレンズ群14に到達するまでの局発光L1の光路長よりも大きい。つまり、BS12から反射器13までの局発光L2の光路長とBS12からレンズ群15までの局発光L2の光路長との総和は、BS12からレンズ群14までの局発光L1の光路長よりも大きい。局発光L1,L2の光路長差は、BS12から反射器13に至る光路長の分に相当し、たとえば2mmである。
【0038】
信号光N1,N2の上記光路長差と同じ分だけ、信号光入力ポート6によって入力されてからレンズ群24に到達するまでの信号光N2の光路長は、局発光入力ポート5によって入力されてからレンズ群14に到達するまでの局発光L1の光路長よりも大きい。一方、局発光L1,L2の上記光路長差と同じ分だけ、信号光入力ポート6によって入力されてからレンズ群23に到達するまでの信号光N1の光路長は、局発光入力ポート5によって入力されてからレンズ群15に到達するまでの局発光L2の光路長よりも小さい。
【0039】
レンズ群14は、相対的にMMI40に近接して配置されたレンズ14aと、相対的にMMI40から離間して配置されたレンズ14bと、を有する。レンズ群15は、相対的にMMI50に近接して配置されたレンズ15aと、相対的にMMI50から離間して配置されたレンズ15bと、を有する。このように、レンズ14a,15aとレンズ14b,15bとを組み合わせて集光レンズとすることによって、MMI40,50の小さな局発光導入口41,51に対する局発光L1,L2の光結合効率を高めることができる。
【0040】
レンズ群14,15は、二つの局発光L1,L2の、BS12から各局発光導入口41,51に至る光学長の差を補償する。具体的には、レンズ群14,15は、分岐されてからレンズ群14,15に到達するまでに生じた局発光L1,L2の光学長差、換言すると各局発光導入口41,51に至るまでの局発光L1,L2の時間差を補償する。そのために、レンズ群14の光軸方向の平均屈折率は、レンズ群15の光軸方向の平均屈折率よりも大きい。例えば、レンズ群14の光軸方向の平均屈折率は、レンズ群15の光軸方向の平均屈折率の1.2倍以上2.6倍以下であってもよい。レンズ群14の光軸方向の厚さは、レンズ群15の光軸方向の厚さよりも大きい。
【0041】
レンズ15aの屈折率はレンズ14aの屈折率よりも小さい。たとえば、レンズ14aの材料はレンズ23aと同じ(たとえばシリコン)であり、レンズ14aの屈折率はレンズ23aの屈折率と同じ(たとえば3.5)である。レンズ15aの材料はレンズ24aと同じ(たとえばガラス)であり、レンズ15aの屈折率はレンズ24aの屈折率と同じ(たとえば1.5以上1.8以下)である。換言すると、レンズ14aの屈折率はレンズ24aの屈折率よりも大きく、レンズ23aの屈折率はレンズ15aの屈折率よりも大きい。ただし、レンズ14aの材料は、レンズ15aの材料よりも大きい屈折率を有するものであればよく、レンズ23aの材料と同じでなくてもよい。レンズ15aの材料は、レンズ24aの材料と同じでなくてもよい。本実施形態において、レンズ14b,15bの材料はレンズ15aの材料と同じ(たとえばガラス)であり、レンズ14b,15bはレンズ15aの屈折率と同じ屈折率を有している。レンズ群14において、レンズ14aの材料がガラスであり、レンズ14bの材料がシリコンであってもよい。
【0042】
図4A及び
図4Bに示されるように、レンズ15aの光軸方向の厚さD3は、レンズ14aの光軸方向の厚さD4よりも小さい。これにより、BS12から局発光導入口41,51それぞれまでの光学長(光が進む距離)は実質的に同じになる。一例として、厚さD3は厚さD1と同じ(すなわち0.78mm)であり、厚さD4は厚さD2と同じ(すなわち0.96mm)である。換言すると、厚さD2は厚さD3よりも大きく、厚さD4は厚さD1よりも大きい。
【0043】
上記の構成により、本実施形態においては、レンズ群23の光軸方向の屈折率は、レンズ群15の光軸方向の屈折率よりも大きく、レンズ群14の光軸方向の屈折率は、レンズ群24の光軸方向の屈折率よりも大きい。レンズ群23の光軸方向の厚さは、レンズ群15の光軸方向の厚さよりも大きく、レンズ群14の光軸方向の厚さは、レンズ群24の光軸方向の厚さよりも大きい。
【0044】
これにより、レンズ群23,15は、入力されてから信号光導入口52に至る信号光N
1の光学長と、入力されてから局発光導入口51に至る局発光L
2の光学長との差を補償する。同様に、レンズ群24,14は、入力されてから信号光導入口42に至る信号光N
2の光学長と、入力されてから局発光導入口41に至る局発光L
1の光学長との差を補償する。これは、
図4Aに示すように、シリコンからなる高屈折率のレンズを用いることで、従来のガラスレンズに比べて、光学長を長くすることができるからである。光の進む距離(光学長)は、物理的な長さではなく、『屈折率×(物理的な)長さ』になる。そのため、光は、ガラスよりも高屈折率であるシリコンからなるレンズ内を通過することで、物理的な長さ以上の距離を進んだことになる。言い換えると、シリコンからなるレンズ内において、光が遅延(光が進む距離が長くなる)する。
【0045】
レンズ14a,15aの光軸を通る断面の形状は互いに異なっている。本実施形態において、レンズ15aの入射側の面は、半径R31の球面であり、レンズ14aの入射側の面は、半径R31よりも大きい半径R41の球面である。レンズ15aの出射側の面は、半径R32の球面であり、レンズ14aの出射側の面は、半径R32よりも小さい半径R42の球面である。本実施形態においては、局発光導入口41,51に対する局発光L1,L2の光結合効率が同程度となるように、半径R31,R32,R41,R42がそれぞれ設定されている。一例として、半径R31は半径R11と同じ(すなわち0.565mm)であり、半径R41は半径R21と同じ(すなわち0.596mm)である。半径R32は半径R12と同じ(すなわち0.404mm)であり、半径R42は半径R22と同じ(すなわち0.401mm)である。ただし、レンズ14a,15aの光軸方向に直交する面の形状は同じであってもよい。
【0046】
図1から
図3に戻り、MMI40は、マルチモード干渉導波路(MMI導波路)と、この導波路に光結合したフォトダイオード(PD)とを含む。MMI導波路は、たとえばInP基板上に形成された導波路であり、局発光導入口41に入力された局発光L
1と、信号光導入口42に入力された信号光N
2とを干渉させて、信号光N
2に含まれている情報を、局発光L
1の位相に一致する位相成分と、局発光L
1の位相と90°異なる位相成分とに分離して復調する。すなわち、MMI40は、信号光N
2について二つの独立した情報を復調する。同様に、MMI50は、MMI導波路と、この導波路に光結合したPDとを含む。MMI導波路はInP基板上に形成された導波路であり、局発光導入口51に入力された局発光L
2と、信号光導入口52に入力された信号光N
1とを干渉させて、二つの互いに独立した情報を復調する。図示しないが、
図1の光モジュールは、MMI40とMMI50とが一つに集積され構成された光半導体素子を用いることもできる。
【0047】
図1及び
図2に示されるように、これらの光学系及びMMI40,50は、ベース4(設置部)を介して筐体2の底面2c上に搭載されている。底面2c上には、復調された情報を処理する回路を搭載する回路基板46,56が搭載されている。上述したレンズ群14,15,23,24の各レンズは、ベース4上に設置されている。
図5に示されるように、ベース4に対する各レンズの接地面4sはベース4に接着され固定されている。ベース4は、レンズに用いられている複数の材料の中間線膨張係数を有する材料によって構成されている。ここで、本実施形態におけるレンズ14b,15a,15b,23b,24a,24bの材料であるガラスの線膨張係数は、6.2×10
-6/K以上8.2×10
-6/K以下(例えば、7.2×10
-6/K)であり、レンズ14a,23aの材料であるシリコンの線膨張係数は、3.4×10
-6/K以上4.0×10
-6/K以下(例えば、3.8×10
-6/K)である。本実施形態において、ベース4は、線膨張係数が4.5×10
-6/K以上4.6×10
-6/K以下(例えば、4.5×10
-6/K)である窒化アルミニウム(AlN)等の絶縁材料によって構成される。ベース4の材料として、線膨張係数が5.1×10
-6/K以上5.3×10
-6/K(例えば、5.3×10
-6/K)であるムライト(Al
6O
13Si
2)を用いてもよい。これらの材料のうち、製造コスト(例えば材料費、加工費等)の増大を抑制する観点から、材料が窒化アルミニウムであってもよい。
【0048】
筐体2は、前壁2aとは反対側に後壁2bを有する。筐体2は、前壁2aと後壁2bとを接続する二つの側壁から後壁2bにわたって連続して設けられたフィードスルー61を有する。後壁2bのフィードスルー61には複数の信号出力端子65が設けられ、MMI40,50によって復調された4つの独立情報は、集積回路43,53において信号処理された後、これらの信号出力端子65を介してコヒーレントレシーバ1の外部に導かれる。集積回路43,53には、アンプが実装されている。二つの側壁には別の端子66,67が設けられている。端子66,67は、MMI40,50を駆動するための信号、各光部品を駆動するための信号といったDCあるいは低周波の信号を筐体2内部に提供する。集積回路43,53それぞれは、MMI40,50を取り囲む回路基板46,56それぞれの上に実装されている。さらに、これらの回路基板46,56上には、抵抗素子、容量素子、また必要に応じてDC/DC変換器が実装される。
【0049】
コヒーレントレシーバ1は、可変光減衰器(VOA)31、BS32、及びモニタ用PD33をさらに備える。VOA31及びBS32は、PBS21と信号光入力ポート6との間の信号光N0の光路上に配置されている。BS32は、信号光入力ポート6から入力された信号光N0の一部を分離する。分離された一部の信号光N0は、モニタ用PD33に入力される。モニタ用PD33は、該一部の信号光N0の強度に応じた電気信号を生成する。
【0050】
VOA31は、BS32を通過した信号光N0を必要に応じて減衰する。減衰度は、コヒーレントレシーバ1の外部からの電気信号によって制御される。たとえば、上述したモニタ用PD33からの電気信号に基づいて過入力状態が検知された場合には、VOA31の減衰度を大きくして、MMI40,50に向かう信号光N1,N2の強度を小さくする。BS32、VOA31、及びモニタ用PD33は、筐体2の底面2cに搭載されたVOAキャリア30上に固定される。VOAキャリア30は、段差を形成する上下二つの面にこれらの光部品を搭載する。具体的には、一方の面にBS32及びモニタ用PD33を搭載し、他方の面にVOA31を搭載する。
【0051】
以上説明したコヒーレントレシーバ1の作用効果について説明する。本実施形態に係るコヒーレントレシーバ1においては、PBS21によって分岐されてからレンズ群24(具体的には、レンズ24b)に到達するまでの信号光N2の光路長は、PBS21によって分岐されてからレンズ群23(具体的には、レンズ23a)に到達するまでの信号光N1の光路長よりも大きい。すなわち、信号光N1,N2に光路長差が生じている。
【0052】
ここで、
図13A及び
図13Bを参照し、比較例に係るコヒーレントレシーバ1X,1Yについて説明する。
図13Aは、コヒーレントレシーバ1Xを概略的に示す平面図である。
図13Bは、コヒーレントレシーバ1Yを概略的に示す平面図である。コヒーレントレシーバ1X,1Yの信号光光学系は、レンズ23aに代えて、レンズ23X,23Yをそれぞれ備え、レンズ24aに代えて、レンズ24X,24Yをそれぞれ備えている。レンズ23X,24Xの材料は互いに同じ(たとえばガラス)である。コヒーレントレシーバ1X,1Yにおいては、それぞれ、レンズ23X,23YによってMMI50の信号光導入口52に信号光N
1が集光され、レンズ24X,24YによってMMI40の信号光導入口42に信号光N
2が集光される。
図13A及び
図13Bでは、局発光光学系及びその他の光学部品については図示を省略する。
【0053】
コヒーレントレシーバ1Xにおいても、コヒーレントレシーバ1と同様に、分岐されてからレンズ24Xに到達するまでの信号光N2の光路長は、分岐されてからレンズ23Xに到達するまでの信号光N1の光路長よりも大きい。すなわち、信号光N1,N2に光路長差が生じている。このため、当該光路長差による光学長差を補償する必要がある。
【0054】
上記の光学長差を補償するために、コヒーレントレシーバ1Xは、スキュー調整素子26をさらに備えている。これにより、部品点数が多く、デバイスの大型化の原因となる。コヒーレントレシーバ1Yは、スキュー調整素子26を備えていない。コヒーレントレシーバ1Yにおいては、光学長差を補償するため、MMI50の信号光導入口52が、MMI40の信号光導入口42よりも後方側に配置されている。これにより、デバイスが一層大型化してしまう。
【0055】
これらに対し、コヒーレントレシーバ1において、レンズ群23の光軸方向の平均屈折率は、レンズ群24の光軸方向の平均屈折率よりも大きい。これにより、信号光N2がレンズ群24を通過し、信号光N1がレンズ群23を通過することによって、信号光N1,N2の光学長が実質的に同じになる。このため、MMI40に入力される信号光N2とMMI50に入力される信号光N1との間の光学長差を、レンズ群23,24によって補償することができる。したがって、当該光学長差を補償するための調整部品を省略でき、部品点数を削減することができる。本実施形態における信号光光学系は、上記の光学長差を補償するための調整部品(たとえばスキュー調整素子26)を備えていないので、デバイスを小型化することができる。
【0056】
コヒーレントレシーバ1において、MMI40,50は、光90度ハイブリッド集積型の受光素子である。MMI40は、局発光導入口41を有し、局発光導入口41から局発光L1を入力し、MMI50は、局発光導入口51を有し、局発光導入口51から局発光L2を入力する。コヒーレントレシーバ1は、信号光N0を入力する信号光入力ポート6と、局発光L0を入力する局発光入力ポート5と、局発光L0を局発光L1,L2に分岐するBS12と、BS12と局発光導入口41との間に配置され、局発光導入口41に向けて第1局発光を集光するレンズ群14と、BS12と局発光導入口51との間に配置され、局発光導入口51に向けて局発光L2を集光するレンズ群15と、をさらに備える。BS12からレンズ群15までの局発光L2の光路長は、BS12からレンズ群14までの局発光L1の光路長よりも大きい。レンズ群14の光軸方向の平均屈折率は、レンズ群15の光軸方向の平均屈折率よりも大きい。この構成によれば、レンズ群14,15によって局発光L1,L2の光学長差を補償することができる。したがって、当該光学長差を補償するための調整部品も省略でき、部品点数をさらに削減することができる。
【0057】
コヒーレントレシーバ1において、レンズ群14の屈折率は、レンズ群24の光軸方向の屈折率よりも大きい。信号光入力ポート6によって入力されてからレンズ群24に到達するまでの信号光N2の光路長は、局発光入力ポート5によって入力されてからレンズ群14に到達するまでの局発光L1の光路長よりも大きい。レンズ群14の光軸方向の屈折率は、レンズ群24の光軸方向の屈折率よりも大きい。この構成によれば、レンズ群14,24によって信号光N2及び局発光L1の間の光学長差を補償することができる。したがって、当該光学長差を補償するための調整部品を省略しつつ、MMI40に入力される信号光N2及び局発光L1を光結合に適した状態とすることができる。
【0058】
コヒーレントレシーバ1において、レンズ群24は、ガラスからなる一又は複数のレンズ24aからなり、レンズ群23は、シリコンからなる少なくとも一つのレンズ23aを含んでいる。シリコンは、ガラスに対して特に大きい屈折率を有している。したがって、この構成によれば、レンズ23aの厚さD2とレンズ24aの厚さD1との差が大きくなることを抑制しつつ、光学長差を補償し得るレンズ群23,24を構成しやすい。
【0059】
具体的に、信号光N1,N2の光学長差を補償するためのスキュー調整素子を省略して、レンズ群23,24によって光学長差を補償する場合には、厚さD2を厚さD1よりも大きくすることが必要である。たとえば、本実施形態においては、2mmの光学長差を補償するために、レンズ23a(シリコンからなるレンズ)の厚さD2を、レンズ24a(ガラスからなるレンズ)の厚さD1よりも0.18mmだけ大きくしている。
【0060】
一方で、レンズ23aは、MMI50の信号光導入口52における十分な光結合効率を確保するために、レンズ24aによって信号光導入口42に集光される信号光N
2と同程度の照度の信号光N
1を信号光導入口52に集光させる機能も求められる。しかしながら、厚さD2を大きくした場合に、レンズ23aの光軸を通る断面の形状をレンズ24aの光軸を通る断面の形状と同じままとすると、信号光N
1の焦点がレンズ23aの内部に位置する等、レンズ24aによって信号光導入口52に集光される信号光N
2と同程度の照度の信号光N
1を信号光導入口42に集光させることが困難となる(
図10参照)。これにより、レンズ23cとMMI40との光結合効率を低下させてしまうことも考えられる。
【0061】
これに対し、コヒーレントレシーバ1において、レンズ24aの入射側の面は、半径R11の球面であり、レンズ23aの入射側の面は、半径R11よりも大きい半径R21の球面である。レンズ24aの出射側の面は、半径R12の球面であり、レンズ23aの出射側の面は、半径R12よりも小さい半径R22の球面である。たとえば、2mmの光路長差による光学長差をレンズ23a,24aによって補償する場合、半径R11は0.565mmであり、半径R21は0.596mmである。半径R12は0.404mmであり、半径R22は0.401mmである。
【0062】
ここで、
図6は、レンズ24aに集光された光の位置と照度との関係を実測したグラフである。
図7は、レンズ23aに集光された光の位置と照度との関係を実測したグラフである。
図6及び
図7の各グラフにおいて、横軸は、各レンズの光軸に直角な方向における光軸との相対距離(xμm)であり、縦軸は、各信号光導入口(y=0.000μm)におけるN
1,N
2の照度である。
図6のグラフにおいて、ストレール比は、0.883であった。
図7のグラフにおいて、ストレール比は、0.998であった。
【0063】
図6及び
図7に示されるように、この構成によれば、レンズ23a,24aは、各光軸方向における互いに対応する位置において、同等の照度で光結合が可能であることがわかる。これにより、レンズ24aによって信号光導入口52に集光される信号光N
1と同程度の照度の信号光N
2を信号光導入口42に集光させる機能をレンズ23aが有していることがわかる。したがって、MMI40の信号光導入口42において十分な光結合効率が確保できる。
【0064】
コヒーレントレシーバ1において、各レンズはベース4上に配置されている。ここで、各レンズの材料の線膨張係数とベース4の材料の線膨張係数とが大きく異なると、熱の影響により各レンズ及びベース4の間に応力が生じ、各レンズにひずみが発生する場合がある。このようなひずみにより、各レンズとMMI49,50との相対的な位置関係にズレが生じると光結合状態に差が生じることも考えられる。各レンズ及びベース4の固定強度が低下する場合もある。
【0065】
図8Aから
図8Cは、
図4Aに示されたレンズ24aの応力分布状態を説明するための図である。
図8Aは、線膨張係数が7.8×10
-6/Kであるアルミナによって構成される部材上に搭載されたレンズ24aの応力分布状態を示している。
図8Bは、窒化アルミニウムによって構成される部材上に搭載されたレンズ24aの応力分布状態を示している。
図8Cは、線膨張係数が5.3×10
-6/Kであるムライト(Al
6O
13Si
2)によって構成される部材上に搭載されたレンズ24aの応力分布状態を示している。
図8Aから
図8Cにおいては、応力としてVon Mises応力が示されている。色の濃い部分ほど、応力が大きいことが示されている(
図8C参照)。
図8A、
図8B及び
図8Cから、アルミナによって構成される部材上に搭載されたレンズ24aに生じる応力が最も小さいことがわかる。したがって、ベース4がアルミナによって構成されている場合、レンズ24aとベース4との熱膨張率の差による応力が生じにくいことがわかる。
【0066】
一方、
図9Aから
図9Cは、
図4Bに示されたレンズ23aの応力分布状態を説明するための図である。
図9Aは、アルミナによって構成される部材上に搭載されたレンズ23aの応力分布状態を示している。
図9Bは、窒化アルミニウムによって構成される部材上に搭載されたレンズ23aの応力分布状態を示している。
図9Cは、ムライトによって構成される部材上に搭載されたレンズ23aの応力分布状態を示している。
図9Aから
図9Cにおいても、応力としてVon Mises応力が示されている。色の濃い部分ほど、応力が大きいことが示されている(
図9C参照)。
図9A、
図9B及び
図9Cから、アルミナによって構成される部材上に搭載されたレンズ23aに生じる応力が最も大きいことがわかる。したがって、
図8A、
図8B、
図8C、
図9A、
図9B及び
図9Cから、仮に、ベース4がアルミナによって構成されている場合には、レンズ23aとベース4との熱膨張率差による応力が生じやすいことがわかる。
【0067】
これに対し、コヒーレントレシーバ1において、各レンズは、窒化アルミニウムによって構成されるベース4上に配置されている。窒化アルミニウムは、ガラス及びシリコンの中間線膨張率を有する。したがって、各レンズ及びベース4の間の応力が低減される。これにより光結合状態に差が生じることを抑制できるとともに、各レンズ及びベース4の固定強度の低下を抑制できる。
図8Bから、ベース4が窒化アルミニウムによって構成されている場合にも、レンズ24aとベース4との熱膨張率差による応力が生じにくいことがわかる。
図9A及び
図9Bから、ベース4がアルミナによって構成されている場合と比較して、レンズ23aにかかる応力を半分程度まで低減できることがわかる。
【0068】
以上の実施形態は、本開示に係る光モジュールの一実施形態について説明したものである。本発明に係る光モジュールは、上述したコヒーレントレシーバ1を任意に変更したものとすることができる。
【0069】
たとえば、レンズ群14,23は、レンズ14a及び23aをそれぞれ有していたが、これに限定されない。
図10は、変形例に係るレンズ14c、23cの平面図である。レンズ群14は、レンズ14aに代えてレンズ14cを有していてもよい。レンズ群23は、レンズ23aに代えてレンズ23cを有していてもよい。レンズ14cの厚さD5は、レンズ15aの厚さD3よりも大きく、たとえば厚さD4と同じ(すなわち0.96mm)である。レンズ23cの厚さD6は、レンズ24aの厚さD1よりも大きく、たとえば厚さD2と同じ(すなわち0.96mm)である。
【0070】
一方、レンズ14c,23cの光軸を通る断面の形状は、レンズ15a,24aの光軸を通る断面の形状と同じである。本変形例において、レンズ14cの入射側の面は、半径R51の球面であり、レンズ23cの入射側の面は、半径R61の球面である。半径R51,R61は、半径R11,R31とそれぞれ同じ(すなわち0.565mm)である。レンズ23cの出射側の面は、半径R52の球面であり、レンズ14cの出射側の面は、半径R62の球面である。半径R52,R62は、半径R12,R32とそれぞれ同じ(すなわち0.0.404mm)である。
【0071】
この場合、
図10に示されるように、局発光L
1の焦点がレンズ14cの内部に位置し、信号光N
1の焦点がレンズ23cの内部に位置する。このような場合であっても、レンズ14cによる局発光L
1のMMI50への光結合、及び、レンズ23cによる信号光N
1のMMI40への光結合は可能である。
【0072】
第3集光部としてのレンズ群14及び第4集光部としてのレンズ群15は、3個以上のレンズをそれぞれ有していてもよい。あるいは、第3集光部は、レンズ14aのみによって構成されていてもよく、第4集光部は、レンズ15aのみによって構成されていてもよい。同様に、レンズ群23,24は、レンズ23a,23b及び24a,24bをそれぞれ有していたが、これに限定されない。第2集光部としてのレンズ群23及び第1集光部としてのレンズ群24は、3個以上のレンズをそれぞれ有していてもよい。あるいは、第2集光部は、レンズ23aのみによって構成されていてもよく、第1集光部は、レンズ24aのみによって構成されていてもよい。
【0073】
図11は、変形例に係るコヒーレントレシーバ1Aを概略的に示す平面図である。
図12は、
図11の二点鎖線で囲まれた部分を拡大して示す斜視図である。コヒーレントレシーバ1Aは、ベース4に代えてベース4Aを備えている。コヒーレントレシーバ1Aの局発光光学系は、レンズ群14に代えてレンズ14aを備え、レンズ群15に代えてレンズ15aを備えている。コヒーレントレシーバ1Aの信号光光学系は、レンズ群23に代えてレンズ23aを備え、レンズ群24に代えてレンズ24aを備えている。コヒーレントレシーバ1Aは、その他の点においてはコヒーレントレシーバ1と同様に構成されていてよい。以下、コヒーレントレシーバ1とは相違する点において説明する。
【0074】
変形例において、第3集光部は、レンズ14aのみによって構成され、第4集光部は、レンズ15aのみによって構成されている。第2集光部は、レンズ23aのみによって構成され、第1集光部は、レンズ24aのみによって構成されている。ベース4Aは、設置部44(第1設置部)と、設置部45(第2設置部)とを有している。設置部44は、略矩形の板状部材であり、主面44aと、前方側の側面44bと、後方側の側面44cとを有する。側面44cには、ベース4Aの厚み方向に貫通して前方に向けて窪む二つの窪みが形成されている。設置部45は、設置部材45a,45bを含む。
図11に示されるように、設置部材45aは、設置部44の一方の窪みに嵌め込まれている。
図11においては、MMI40の図示を省略している。設置部材45bは、設置部44の他方の窪みに嵌め込まれている。
【0075】
図11及び
図12に示されるように、レンズ23aは、設置部材45a上に配置され、レンズ14aは、設置部材45b上に設置されている。レンズ15a,24aは、設置部44の主面44a上に設置されている。主面44a上には、その他の光学部品も搭載されている。設置部44は、レンズ15a,24aの材料の線膨張係数(第1線膨張係数)に近い線膨張係数(第3線膨張係数)を有する材料によって構成されている。設置部45は、レンズ14a,23aの材料の線膨張係数(第2線膨張係数)に近い線膨張係数(第4線膨張係数)を有する材料によって構成されている。
【0076】
ここで、設置部44の材料の線膨張係数とレンズ15a,24aの材料の線膨張係数との差の絶対値は、設置部45の材料の線膨張係数とレンズ15a,24aの材料の線膨張係数との差の絶対値よりも小さく、設置部45の材料の線膨張係数とレンズ14a,23aの材料の線膨張係数との差の絶対値は、設置部44の材料の線膨張係数とレンズ14a,23aの材料の線膨張係数との差の絶対値よりも小さい。この場合、熱の影響等によって各部材が膨張しても、信頼性の低下を抑制することができる。
【0077】
たとえば、設置部44の材料の線膨張係数とレンズ15a,24aの材料の線膨張係数との差は、-1.4×10-6/K以上23×10-6/K以下である。設置部45の材料の線膨張係数とレンズ14a,23aの材料の線膨張係数との差は、シリコンと窒化アルミニウムの場合は0.5×10-6/K以上1.2×10-6/K以下、シリコンとムライトの場合は1.1×10-6/K以上1.9×10-6/K以下である。一例として、レンズ15a,24aの材料はガラスであり、レンズ14a,23aの材料はシリコンであり、設置部44の材料はアルミナであり、設置部45の材料は窒化アルミニウムあるいはムライトである。アルミナは、ガラスの線膨張係数に近い線膨張係数を有しており、窒化アルミニウム及びムライトは、シリコンの線膨張係数に近い線膨張係数を有している。アルミナの線膨張係数は、6.8×10-6/K以上8.5×10-6/K以下(例えば、7.8×10-6/K)である。したがって、この構成によれば、熱の影響等によって各部材が膨張した際、十分に信頼性の低下を抑制することができる。
【0078】
コヒーレントレシーバ1Aにおいても、レンズ23aの光軸方向の屈折率は、レンズ24aの光軸方向の屈折率よりも大きいので、コヒーレントレシーバ1と同様に、MMI40に入力される信号光N2とMMI50に入力される信号光N1との間の光学長差を補償するための調整部品を省略でき、部品点数を削減することができる。レンズ14aの光軸方向の屈折率は、レンズ15aの光軸方向の屈折率よりも大きいので、コヒーレントレシーバ1と同様に、局発光L1,L2の光学長差を補償するための調整部品も省略できる。レンズ14aの光軸方向の屈折率は、レンズ24aの光軸方向の屈折率よりも大きいので、上記のような調整部品を省略しつつ、MMI40に入力される信号光N2及び局発光L1を適切に光結合させることができる。
【符号の説明】
【0079】
1,1A,1X,1Y…コヒーレントレシーバ
2…筐体
2a…前壁
2b…後壁
2c…底面
4,4A…ベース(設置部)
4s…接地面
5…局発光入力ポート
6…信号光入力ポート
11…偏光子
12…BS(第2光分岐素子)
13…反射器(第2反射素子)
14…レンズ群(第3集光部)
14a…レンズ
14b…レンズ
15…レンズ群(第4集光部)
15a…レンズ
15b…レンズ
21…PBS(第1光分岐素子;光分岐素子)
22…反射器(第1反射素子)
23…レンズ群(第2集光部)
23a…レンズ(第2レンズ)
23b…レンズ
23X…レンズ
24…レンズ群(第1集光部)
24a…レンズ(第1レンズ)
24b…レンズ
25…λ/2板
26…スキュー調整素子
30…VOAキャリア
31…可変光減衰器
32…BS
33…モニタ用PD
35…偏波保持ファイバ
36…単一モードファイバ
40…MMI(第1素子)
41…局発光導入口(第3導入口)
42…信号光導入口(第1導入口)
43…集積回路
44…設置部(第1設置部)
44a…主面
44b,44c…側面
45…設置部(第2設置部)
45a,45b…設置部材
46…回路基板
50…MMI(第2素子)
51…局発光導入口(第4導入口)
52…信号光導入口(第2導入口)
53…集積回路
56…回路基板
61…フィードスルー
65…信号出力端子
66…端子
67…端子
D1からD4…厚さ
R11,R12,R21,R22,R31,R32,R41,R42…半径
L0…局発光
L1…局発光(第1局発光)
L2…局発光(第2局発光)
N0…信号光
N1…信号光(第2偏光成分;第2光成分)
N2…信号光(第1偏光成分;第1光成分)