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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】情報処理システム、プログラム及び方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/26 20240101AFI20240312BHJP
   G08B 31/00 20060101ALI20240312BHJP
   G08B 21/10 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
G06Q50/26
G08B31/00 B
G08B21/10
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022177725
(22)【出願日】2022-11-04
【審査請求日】2022-11-07
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和4年度、国立研究開発法人防災科学技術研究所、戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)「国家レジリエンス(防災・減災)の強化/衛星データ等即時共有システムと被災状況解析・予測技術の開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】501138231
【氏名又は名称】国立研究開発法人防災科学技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110002789
【氏名又は名称】弁理士法人IPX
(72)【発明者】
【氏名】田口 仁
(72)【発明者】
【氏名】平 春
【審査官】田上 隆一
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-312533(JP,A)
【文献】特開2022-058785(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
G08B 31/00
G08B 21/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報処理システムであって、
次の各ステップがなされるようにプログラムを実行可能な少なくとも1つのプロセッサを備え、
取得ステップでは、災害の発生と相関がある現象の予測情報を含む相関情報を取得し、前記予測情報は、未来の所定の時点に予測される前記現象の情報であり、前記相関情報には、第1の災害についての前記相関情報である第1相関情報と、第2の災害についての前記相関情報である第2相関情報とが含まれ、
決定ステップでは、取得された前記相関情報に基づいて、当該相関情報により前記相関が示される災害の影響度を決定し、前記影響度は、所定の範囲で変化する指標により示され、前記影響度には、前記第1の災害についての第1影響度と、前記第2の災害についての第2影響度とが含まれ、
出力ステップでは、決定された前記影響度を示す影響度情報を出力し、前記影響度情報には、前記第1影響度を示す情報と、前記第2影響度を示す情報とが含まれ、
前記影響度情報は、所定条件を満たすメッシュ領域のグループを囲むグループ領域を示す情報であり、
前記所定条件には、
前記影響度が所定の範囲であるという第1条件と、
前記第1条件を満たすメッシュ領域及び前記第1条件を満たす他のメッシュ領域のうち最も近いメッシュ領域の間隔が閾値未満であるという第2条件とが含まれ、
前記閾値は、前記範囲に応じた値である、もの。
【請求項2】
情報処理システムであって、
次の各ステップがなされるようにプログラムを実行可能な少なくとも1つのプロセッサを備え、
取得ステップでは、災害の発生と相関がある現象の予測情報を含む相関情報を取得し、前記予測情報は、未来の所定の時点に予測される前記現象の情報であり、前記相関情報には、第1の災害についての前記相関情報である第1相関情報と、第2の災害についての前記相関情報である第2相関情報とが含まれ、
決定ステップでは、取得された前記相関情報に基づいて、当該相関情報により前記相関が示される災害の影響度を決定し、前記影響度は、所定の範囲で変化する指標により示され、前記影響度には、前記第1の災害についての第1影響度と、前記第2の災害についての第2影響度とが含まれ、
出力ステップでは、決定された前記影響度を示す影響度情報を出力し、前記影響度情報には、前記第1影響度を示す情報と、前記第2影響度を示す情報とが含まれ、
前記影響度情報は、所定条件を満たすメッシュ領域のグループを囲むグループ領域を示す情報であり、
前記所定条件には、
前記影響度が所定の範囲であるという第1条件と、
前記第1条件を満たすメッシュ領域及び前記第1条件を満たす他のメッシュ領域のうち最も近いメッシュ領域の間隔が閾値未満であるという第2条件とが含まれ、
前記閾値は、前記影響度の決定に用いられた前記相関情報により相関が示される災害の種類に応じた値である、もの。
【請求項3】
情報処理システムであって、
次の各ステップがなされるようにプログラムを実行可能な少なくとも1つのプロセッサを備え、
取得ステップでは、災害の発生と相関がある現象の予測情報を含む相関情報を取得し、前記予測情報は、未来の所定の時点に予測される前記現象の情報であり、前記相関情報には、第1の災害についての前記相関情報である第1相関情報と、第2の災害についての前記相関情報である第2相関情報とが含まれ、
決定ステップでは、取得された前記相関情報に基づいて、当該相関情報により前記相関が示される災害の影響度を決定し、前記影響度は、所定の範囲で変化する指標により示され、前記影響度には、前記第1の災害についての第1影響度と、前記第2の災害についての第2影響度とが含まれ、
出力ステップでは、決定された前記影響度を示す影響度情報を出力し、前記影響度情報には、前記第1影響度を示す情報と、前記第2影響度を示す情報とが含まれ、
前記影響度情報は、所定条件を満たすメッシュ領域のグループを囲むグループ領域を示す情報であり、
前記所定条件には、
前記影響度が所定の範囲であるという第1条件と、
前記第1条件を満たすメッシュ領域及び前記第1条件を満たす他のメッシュ領域のうち最も近いメッシュ領域の間隔が閾値未満であるという第2条件とが含まれ、
前記相関情報には、複数の時期における前記災害の発生と相関がある情報が含まれ、
前記閾値は、前記影響度の決定に用いられた前記相関情報により相関が示される災害の発生時期に応じた値である、もの。
【請求項4】
情報処理システムであって、
次の各ステップがなされるようにプログラムを実行可能な少なくとも1つのプロセッサを備え、
取得ステップでは、災害の発生と相関がある現象の観測情報及び観測地域における静的情報を含む相関情報を取得し、前記観測情報は、前記現象について観測された情報であり、前記静的情報は、前記観測地域の特性を示し短期的には変化しない情報であり、前記相関情報には、第1の災害についての前記相関情報である第1相関情報と、第2の災害についての前記相関情報である第2相関情報とが含まれ、
決定ステップでは、取得された前記相関情報に基づいて、当該相関情報により前記相関が示される災害の影響度を決定し、前記影響度は、所定の範囲で変化する指標により示され、前記影響度には、前記第1の災害についての第1影響度と、前記第2の災害についての第2影響度とが含まれ、
出力ステップでは、決定された前記影響度を示す影響度情報を出力し、前記影響度情報には、前記第1影響度を示す情報と、前記第2影響度を示す情報とが含まれ、
前記影響度情報は、所定条件を満たすメッシュ領域のグループを囲むグループ領域を示す情報であり、
前記所定条件には、
前記影響度が所定の範囲であるという第1条件と、
前記第1条件を満たすメッシュ領域及び前記第1条件を満たす他のメッシュ領域のうち最も近いメッシュ領域の間隔が閾値未満であるという第2条件とが含まれ、
前記閾値は、前記範囲に応じた値である、もの。
【請求項5】
情報処理システムであって、
次の各ステップがなされるようにプログラムを実行可能な少なくとも1つのプロセッサを備え、
取得ステップでは、災害の発生と相関がある現象の観測情報及び観測地域における静的情報を含む相関情報を取得し、前記観測情報は、前記現象について観測された情報であり、前記静的情報は、前記観測地域の特性を示し短期的には変化しない情報であり、前記相関情報には、第1の災害についての前記相関情報である第1相関情報と、第2の災害についての前記相関情報である第2相関情報とが含まれ、
決定ステップでは、取得された前記相関情報に基づいて、当該相関情報により前記相関が示される災害の影響度を決定し、前記影響度は、所定の範囲で変化する指標により示され、前記影響度には、前記第1の災害についての第1影響度と、前記第2の災害についての第2影響度とが含まれ、
出力ステップでは、決定された前記影響度を示す影響度情報を出力し、前記影響度情報には、前記第1影響度を示す情報と、前記第2影響度を示す情報とが含まれ、
前記影響度情報は、所定条件を満たすメッシュ領域のグループを囲むグループ領域を示す情報であり、
前記所定条件には、
前記影響度が所定の範囲であるという第1条件と、
前記第1条件を満たすメッシュ領域及び前記第1条件を満たす他のメッシュ領域のうち最も近いメッシュ領域の間隔が閾値未満であるという第2条件とが含まれ、
前記閾値は、前記影響度の決定に用いられた前記相関情報により相関が示される災害の種類に応じた値である、もの。
【請求項6】
情報処理システムであって、
次の各ステップがなされるようにプログラムを実行可能な少なくとも1つのプロセッサを備え、
取得ステップでは、災害の発生と相関がある現象の観測情報及び観測地域における静的情報を含む相関情報を取得し、前記観測情報は、前記現象について観測された情報であり、前記静的情報は、前記観測地域の特性を示し短期的には変化しない情報であり、前記相関情報には、第1の災害についての前記相関情報である第1相関情報と、第2の災害についての前記相関情報である第2相関情報とが含まれ、
決定ステップでは、取得された前記相関情報に基づいて、当該相関情報により前記相関が示される災害の影響度を決定し、前記影響度は、所定の範囲で変化する指標により示され、前記影響度には、前記第1の災害についての第1影響度と、前記第2の災害についての第2影響度とが含まれ、
出力ステップでは、決定された前記影響度を示す影響度情報を出力し、前記影響度情報には、前記第1影響度を示す情報と、前記第2影響度を示す情報とが含まれ、
前記影響度情報は、所定条件を満たすメッシュ領域のグループを囲むグループ領域を示す情報であり、
前記所定条件には、
前記影響度が所定の範囲であるという第1条件と、
前記第1条件を満たすメッシュ領域及び前記第1条件を満たす他のメッシュ領域のうち最も近いメッシュ領域の間隔が閾値未満であるという第2条件とが含まれ、
前記相関情報には、複数の時期における前記災害の発生と相関がある情報が含まれ、
前記閾値は、前記影響度の決定に用いられた前記相関情報により相関が示される災害の発生時期に応じた値である、もの。
【請求項7】
コンピュータに、請求項1~請求項の何れか1つに記載の各ステップを実行させるためのプログラム。
【請求項8】
コンピュータが、請求項1~請求項の何れか1つに記載の各ステップを実行する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理システム、プログラム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、どこが、どのくらい危険なのか(状態)、危険になるのか(動向)を瞬時に解析・計算し、危険度を地図上に色別表して分かり易く提供することなどができる有用な河川情報の危険度評価・判断支援システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-141670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
災害等の事象に対する備えを促進させるため、特許文献1の技術のように事象の影響度を提供することが行われている。備えを適切に行わせるためには、影響度の大きさを適切に把握させる必要がある。
【0005】
本発明では上記事情を鑑み、事象の種類を問わずその影響を把握しやすくすることとした。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、情報処理システムが提供される。この情報処理システムでは、次の各ステップがなされるようにプログラムを実行可能な少なくとも1つのプロセッサを備える。取得ステップでは、事象の発生と相関がある相関情報を取得し、相関情報には、第1の事象の発生と相関がある第1相関情報と、第2の事象の発生と相関がある第2相関情報とが含まれる。決定ステップでは、取得された相関情報により相関が示される事象の影響の大きさを示す影響度を決定し、影響度は、所定の範囲で変化する指標により示され、影響度には、第1の事象についての第1影響度と、第2の事象についての第2影響度とが含まれる。出力ステップでは、決定された影響度を示す影響度情報を出力し、影響度情報には、第1影響度を示す情報と、第2影響度を示す情報とが含まれる。
【0007】
このような態様によれば、事象の種類を問わずその影響を把握しやすくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】事象観測システム1の全体構成を示す図である。
図2】影響度情報生成サーバ10のハードウェア構成を示す図である。
図3】ユーザ端末20のハードウェア構成を示す図である。
図4】各装置の制御部の機能構成を示す図である。
図5】影響度情報処理の一例を示すフロー図である。
図6】条件テーブルの一例を示す図である。
図7】条件テーブルの別の一例を示す図である。
図8】補正テーブルの一例を示す図である。
図9】メッシュ領域毎に決定された影響度の一例を示す図である。
図10】グループ化テーブルの一例を示す図である。
図11】結合条件を説明するための図である。
図12】グループ領域を説明するための図である。
図13】生成された別のグループ領域の一例を示す図である。
図14】表示された影響度情報の一例を示す図である。
図15】グループ化テーブルの別の一例を示す図である。
図16】グループ化テーブルの別の一例を示す図である。
図17】グループ化テーブルの別の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。
【0010】
ところで、本実施形態に登場するソフトウェアを実現するためのプログラムは、コンピュータが読み取り可能な非一時的な記録媒体(Non-Transitory Computer-Readable Medium)として提供されてもよいし、外部のサーバからダウンロード可能に提供されてもよいし、外部のコンピュータで当該プログラムを起動させてクライアント端末でその機能を実現(いわゆるクラウドコンピューティング)するように提供されてもよい。
【0011】
また、本実施形態において「部」とは、例えば、広義の回路によって実施されるハードウェア資源と、これらのハードウェア資源によって具体的に実現されうるソフトウェアの情報処理とを合わせたものも含みうる。また、本実施形態においては様々な情報を取り扱うが、これら情報は、例えば電圧・電流を表す信号値の物理的な値、0または1で構成される2進数のビット集合体としての信号値の高低、または量子的な重ね合わせ(いわゆる量子ビット)によって表され、広義の回路上で通信・演算が実行されうる。
【0012】
また、広義の回路とは、回路(Circuit)、回路類(Circuitry)、プロセッサ(Processor)、およびメモリ(Memory)等を少なくとも適当に組み合わせることによって実現される回路である。すなわち、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、およびフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等を含むものである。
【0013】
1.ハードウェア構成
本節では、本実施形態に係る事象観測システムのハードウェア構成について説明する。
【0014】
図1は、事象観測システム1の全体構成を示す図である。事象観測システム1は、所定の観測地域における所定の事象を観測する機能を提供するシステムであり、「情報処理システム」の一例である。事象観測システム1においては、洪水、土砂崩れ、地震、津波、暴風、高潮及び火山噴火等の災害が所定の事象として観測される。災害とは、自然現象や人為的な原因によって、人命や社会生活に被害が生じる事態のことである。以下では、単に「事象」と言った場合、これらの災害のうちのいずれか又は全部を言うものとする。事象観測システム1は、本実施形態では、日本全域(周辺海域を含む)を観測地域として機能を提供する。
【0015】
事象観測システム1は、通信回線2と、複数の観測衛星3(観測衛星3-1及び3-2のみ図示されている)と、複数の衛星コントロールシステム4(衛星コントロールシステム4-1及び4-2のみ図示されている)と、セレクタマネジメントシステム5と、影響度情報生成サーバ10と、ユーザ端末20とを備える。
【0016】
通信回線2は、インターネット等を含み、自回線に接続する装置同士のデータのやり取りを仲介する。通信回線2には、影響度情報生成サーバ10、セレクタマネジメントシステム5、ユーザ端末20及び衛星コントロールシステム4が接続されている。観測衛星3は、事象を観測するためのセンサを搭載した人工衛星である。衛星コントロールシステム4は、観測衛星3の動作を制御するとともに、観測衛星3から観測データを受け取るシステムである。
【0017】
影響度情報生成サーバ10は、観測情報B1及び予測情報C1を取得して、観測地域における影響度情報を生成する。影響度情報とは、人々の生活に対する事象の影響の大きさを示す情報であり、詳しくは後述する。観測情報B1及び予測情報C1は、事象を観測する機能を有する機関から提供される。そのような観測機関としては、例えば、気象庁、国土交通省及び防災科学技術研究所等がある。なお、観測機関は、公共の機関に限らず、民間の機関であってもよい。影響度情報生成サーバ10は、生成した影響度情報をセレクタマネジメントシステム5に供給する。
【0018】
セレクタマネジメントシステム5は、影響度情報生成サーバ10から供給された影響度情報と、制約情報D1とに基づいて、観測に用いる観測衛星3を選択するための処理を実行する。制約情報D1は、所定の事象を観測可能な観測手段の観測上の制約を示す情報である。観測上の制約とは、例えば、地理的及び時間的な制約である。ユーザ端末20は、事象観測システム1を利用するユーザが操作する端末である。
【0019】
図2は、影響度情報生成サーバ10のハードウェア構成を示す図である。影響度情報生成サーバ10は、制御部11と、記憶部12と、通信部13と、バス14とを備える。バス14は、影響度情報生成サーバ10が備える各部を電気的に接続する。
【0020】
(制御部11)
制御部11は、例えば不図示の中央処理装置(Central Processing Unit:CPU)である。制御部11は、記憶部12に記憶された所定のプログラムを読み出すことによって、事象観測システム1に係る種々の機能を実現する。すなわち、記憶部12に記憶されているソフトウェアによる情報処理が、ハードウェアの一例である制御部11によって具体的に実現されることで、制御部11に含まれる各機能部として実行されうる。これらについては、次節においてさらに詳述する。なお、制御部11は単一であることに限定されず、機能ごとに複数の制御部11を有するように実施してもよい。またそれらの組合せであってもよい。
【0021】
(記憶部12)
記憶部12は、前述の記載により定義される様々な情報を記憶する。これは、例えば、制御部11によって実行される事象観測システム1に係る種々のプログラム等を記憶するソリッドステートドライブ(Solid State Drive:SSD)等のストレージデバイスとして、あるいは、プログラムの演算に係る一時的に必要な情報(引数、配列等)を記憶するランダムアクセスメモリ(Random Access Memory:RAM)等のメモリとして実施されうる。記憶部12は、制御部11によって実行される事象観測システム1に係る種々のプログラムや変数等を記憶している。
【0022】
(通信部13)
通信部13は、影響度情報生成サーバ10から種々の電気信号を外部の構成要素に送信可能に構成される。また、通信部13は、外部の構成要素から影響度情報生成サーバ10への種々の電気信号を受信可能に構成される。さらに好ましくは、通信部13がネットワーク通信機能を有し、これにより通信回線2を介して、影響度情報生成サーバ10と外部機器との間で種々の情報を通信可能に実施してもよい。
【0023】
図3は、ユーザ端末20のハードウェア構成を示す図である。ユーザ端末20は、制御部21と、記憶部22と、通信部23と、入力部24と、出力部25と、バス26とを備える。バス26は、ユーザ端末20が備える各部を電気的に接続する。
【0024】
(入力部24)
入力部24は、キー、ボタン、タッチスクリーン及びマウス等を有し、ユーザによる入力を受け付ける。
(出力部25)
出力部25は、ディスプレイ及びスピーカ等を有し、表示面に画像を表示し、音声を含む音を出力する。
【0025】
2.機能構成
本節では、本実施形態の機能構成について説明する。前述の通り、各装置の記憶部に記憶されているソフトウェアによる情報処理がハードウェアの一例である制御部によって具体的に実現されることで、制御部に含まれる各機能部が実行されうる。
【0026】
図4は、各装置の制御部の機能構成を示す図である。影響度情報生成サーバ10の制御部11は、観測情報取得部111と、予測情報取得部112と、静的情報取得部113と、影響度決定部114と、影響度情報生成部115と、影響度情報出力部116とを備える。ユーザ端末20の制御部21は、表示制御部211と、操作受付部212とを備える。
【0027】
観測情報取得部111及び予測情報取得部112は、いずれも、事象の発生と相関がある相関情報を取得する取得部の一例として機能する。観測情報取得部111は、既に観測された情報である観測情報B1を相関情報として取得する。観測情報B1は、例えば、降水量(単位時間、積算)、風速(最大、平均)、河川水位及び震度等である。降水量は、洪水及び土砂崩れ等の事象と相関を有する。風速は、暴風及び火山噴火等の事象と相関を有する。河川水位は、洪水等の事象と相関を有する。震度は、地震及び津波等の事象と相関を有する。
【0028】
近年では、河川の水位や氾濫面積等を予測する手法が開発されている。予測情報取得部112は、そのような予測を行う事業者、外部の機関又はシステム等によって予測された情報である予測情報C1を相関情報として取得する。予測情報C1は、例えば、降水量の予報、風速の予報、台風の進路予報、台風の暴風域に入る確率、河川流量予測、洪水予報及び津波予報等である。台風の進路予報及び台風の暴風域に入る確率は、台風及び暴風等の事象と相関を有する。河川流量予測は、洪水等の事象と相関を有する。また、洪水予報及び津波予報は、洪水及び津波とそれぞれ直接的な相関を有する。
【0029】
上述した相関情報は、いずれも、数秒から数時間といった短期間に変動する動的情報である。これに対し、地域の範囲や標高、地形、土壌の特性(透水性及び保水性等)、流域などの短期的には変化しない情報のことを静的情報というものとする。静的情報取得部113は、そのような静的情報を相関情報として取得する。静的情報取得部113は、観測地域における静的情報を取得する。観測情報取得部111、予測情報取得部112及び静的情報取得部113は、以下では、「相関情報取得部」とも言うものとする。
【0030】
影響度決定部114は、相関情報取得部により取得された相関情報に基づいて影響度を決定する決定部の一例として機能する。影響度情報生成部115は、影響度決定部114により決定された影響度を示す影響度情報を生成する。影響度の決定方法及び影響度情報の生成方法は後ほど詳しく説明する。影響度情報出力部116は、影響度決定部114により生成された影響度情報を、例えば、セレクタマネジメントシステム5又はユーザ端末20に対して出力する。このように、影響度情報出力部116は、影響度決定部114により決定された影響度を示す影響度情報を出力する出力部の一例として機能する。
【0031】
ユーザ端末20の表示制御部211は、影響度情報出力部116から出力されてきた影響度情報等を自端末の表示手段に表示させる。操作受付部212は、ユーザによる操作を受け付け、受け付けた操作を示す操作データを影響度情報生成サーバ10に送信する。影響度情報生成サーバ10は、送信されてきた操作データが示す操作に基づいて処理を実行する。
【0032】
3.情報処理
本節では、本実施形態の情報処理について説明する。事象観測システム1は、上述した影響度情報の生成及び出力を行う影響度情報処理を実行する。
【0033】
図5は、影響度情報処理の一例を示すフロー図である。影響度情報処理は、例えば、所定の時間間隔で繰り返し実行される。所定の時間間隔としては、短いほど望ましいが、観測情報B1及び予測情報C1が取得されるタイミングと、事象の状況に変化が生じた場合にその変化に対処するためのリードタイムとの兼ね合いで、例えば、1日毎や半日毎、数時間毎などの間隔が定められる。
【0034】
まず、影響度情報生成サーバ10は、S11において、相関情報取得部(観測情報取得部111、予測情報取得部112又は静的情報取得部113)により、相関情報を取得する。観測情報取得部111は、観測情報B1を相関情報として取得し、予測情報取得部112は、予測情報C1を相関情報として取得する。また、静的情報取得部113は、観測地域における静的情報を相関情報として取得する。なお、各相関情報の取得タイミングは異なっていてもよい。
【0035】
続いて、影響度情報生成サーバ10は、影響度決定部114により、S21において、影響度を決定する事象を選択し、S22において、選択した事象についての影響度を決定する。影響度決定部114は、相関情報取得部により取得された相関情報により相関が示される事象の影響の大きさを示す影響度を決定する。より詳細には、影響度決定部114は、所定の範囲で変化する指標により示される影響度を決定する。
【0036】
影響度決定部114は、本実施形態では、どのような事象についても、ランク1からランク5までの範囲を所定の範囲として変化する指標を影響度として決定する。この影響度は、数値が大きいほど影響が大きい事象であることを示す。事象の影響が大きいとは、事象により人命や財産が脅かされる危険度が高い、事象の発生確率が高い又は事象の発生範囲が広く影響を受ける人が多い等のことを言う。
【0037】
影響度決定部114は、本実施形態では、相関情報のうちの観測情報B1及び予測情報C1に基づいて仮の影響度を決定し、相関情報のうちの静的情報に基づいて仮の影響度を補正することで影響度を決定する。影響度決定部114は、影響度と相関情報とランク条件とを対応付けた条件テーブルを用いて、メッシュ領域毎に仮の影響度を決定する。
【0038】
メッシュ領域とは、地域メッシュとも言われ、主に統計に利用するために、緯度及び経度に基づいて地域をほぼ同じ大きさの網の目(メッシュ)に分けた場合の個々の領域のことである。本実施形態では、同一緯度と同一経度の境界線で囲まれる概ね正方形の領域がメッシュ領域として用いられる。ランク条件とは、対応するランクとなる相関情報の条件を示す。例えば、或るメッシュ領域における相関情報(例えば降水量等)がランク1の条件を満たす場合、そのメッシュ領域における事象の仮の影響度はランク1であることを意味する。
【0039】
図6は、条件テーブルの一例を示す図である。図6の例では、「洪水」という事象についての条件テーブルTB1が示されている。条件テーブルTB1では、「ランク1」から「ランク5」までの5段階の影響度に、「予測氾濫浸水面積率」及び「予測河川流量」という相関情報と、それぞれのランク条件とが対応付けられている。例えば、「ランク1」の場合、「予測氾濫浸水面積率」は「Th11未満」であり、「予測河川流量」は「Th21未満」であることがランク条件となっている。「ランク2」の場合、「予測氾濫浸水面積率」は「Th11以上Th12未満」であり、「予測河川流量」は「Th21以上Th22未満」であることがランク条件となっている。
【0040】
また、「ランク3」の場合、「予測氾濫浸水面積率」は「Th12以上Th13未満」であり、「予測河川流量」は「Th22以上Th23未満」であることがランク条件となっている。また、「ランク4」の場合、「予測氾濫浸水面積率」は「Th13以上Th14未満」であり、「予測河川流量」は「Th23以上Th24未満」であることがランク条件となっている。そして、「ランク5」の場合、「予測氾濫浸水面積率」は「Th14以上Th15未満」であり、「予測河川流量」は「Th24以上Th25未満」であることがランク条件となっている。
【0041】
図7は、条件テーブルの別の一例を示す図である。図7の例では、「土砂崩れ」という事象についての条件テーブルTB2が示されている。条件テーブルTB2では、「ランク1」から「ランク5」までの5段階の影響度に、「大雨警報の危険度分布」及び「半減期72時間実効雨量」の一方又は両方という相関情報と、それぞれのランク条件とが対応付けられている。例えば、「ランク1」の場合、「半減期72時間実効雨量」が「Th31以上Th32未満」であることがランク条件となっている。「ランク2」の場合、「大雨警報の危険度分布」は「注意」であり、「半減期72時間実効雨量」は「Th32以上Th33未満」であることがランク条件となっている。
【0042】
また、「ランク3」の場合、「大雨警報の危険度分布」は「警戒」であり、「半減期72時間実効雨量」は「Th33以上Th34未満」であることがランク条件となっている。また、「ランク4」の場合、「大雨警報の危険度分布」は「非常に危険」であり、「半減期72時間実効雨量」は「Th34以上Th35未満」であることがランク条件となっている。そして、「ランク5」の場合、「大雨警報の危険度分布」は「極めて危険」であり、「半減期72時間実効雨量」は「Th35以上」であることがランク条件となっている。
【0043】
なお、図6及び図7で示した相関情報及びランク条件は一例であり、これらとは異なる相関情報及びランク条件が用いられてもよい。また、各ランクに対応付けられる相関情報の数は3以上であってもよいし、図7の例のようにランクごとに異なっていてもよい。また、例えば、「ランク1.5」及び「ランク2.5」を加えるというように、ランクがより細分化されていてもよい。ただし、事象の種類が異なっていても、ランクの範囲は同じ(本実施形態では「ランク1」から「ランク5」まで)であるものとする。
【0044】
影響度決定部114は、観測地域に含まれる各メッシュ領域について、まず、そのメッシュ領域における相関情報により満たされるランク条件を判定する。ここで、相関情報は、メッシュ領域と異なる範囲について取得される場合がある。例えば、メッシュ領域は250m(メートル)四方の正方形の領域であり、降水量は市区町村単位を観測領域として測定されるものとする。影響度決定部114は、メッシュ領域内に1つの観測領域しかなければ、その観測領域の降水量をそのメッシュ領域の降水量として算出する。影響度決定部114は、メッシュ領域内に2以上の観測領域がある場合は、例えば、それらの観測領域の降水量に、そのメッシュ領域に含まれる各観測領域の面積の割合で重み付けをした値を算出し、算出した値の平均値をそのメッシュ領域の降水量として算出する。
【0045】
影響度決定部114は、例えば、上記のとおり算出したメッシュ領域の相関情報に対応付けられたランクのうち最大のランクを、そのメッシュ領域の仮の影響度として決定する。例えば、「予測氾濫浸水面積率」がランク4のランク条件を満たす「Th13以上Th14未満」で「予測河川流量」がランク3のランク条件を満たす「Th22以上Th23未満」となっているメッシュ領域がある場合、影響度決定部114は、そのメッシュ領域については、ランク4を仮の影響度として決定する。
【0046】
なお、影響度決定部114は、メッシュ領域における相関情報により満たされるランク条件に対応付けられたランクのうち最小のランクを、そのメッシュ領域の仮の影響度として決定してもよい。また、影響度決定部114は、それらのランクの平均値に最も近いランクを、そのメッシュ領域の仮の影響度として決定してもよい。また、影響度決定部114は、それらのランクに重み付けをして(例えば重要な相関情報ほど重くする)から求めた平均値に最も近いランクを、そのメッシュ領域の仮の影響度として決定してもよい。
【0047】
影響度決定部114は、本実施形態では、上記のとおり決定したメッシュ領域毎の仮の影響度を、静的情報とランク補正値とを対応付けた補正テーブルを用いて補正する。
図8は、補正テーブルの一例を示す図である。図8の例では、「土砂崩れ」という事象について、「透水性」という静的情報を用いた補正テーブルTB3が示されている。補正テーブルTB3では、「Th41未満」、「Th41以上Th42未満」及び「Th41以上」という透水性に、「-1」、「0」及び「+1」というランク補正値が対応付けられている。
【0048】
透水性が低い土壌ほど、雨が降っても地表を流れて土壌に含まれる水分が少なくなるので、土砂崩れが発生しにくい。反対に、透水性が高い土壌ほど、雨が地面に浸透して土壌に含まれる水分が多くなるので、土砂崩れが発生しやすい。影響度決定部114は、取得された静的情報に基づいて、各メッシュ領域における透水性を算出し、算出した透水性に補正テーブルTB3において対応付けられているランク補正値により仮の影響度を補正する。影響度決定部114は、例えば、透水性が「Th41以上」となるメッシュ領域については、仮の影響度に「+1」をしたランクをそのメッシュ領域の影響度として決定する。
【0049】
また、影響度決定部114は、例えば、透水性が「Th41以上Th42未満」となるメッシュ領域については、仮の影響度として決定したランクをそのままそのメッシュ領域の影響度として決定する。なお、影響度決定部114は、仮の影響度がランク1の場合はランク補正値が「-1」であってもランク1のまま影響度を決定し、仮の影響度がランク5の場合はランク補正値が「+1」であってもランク5のまま影響度を決定する。
【0050】
なお、静的情報による影響度の補正は上記例に限らない。例えば、透水性が高ければ水はけもいいので、降水量の状態によっては反対に土砂崩れが起きにくいという場合もある。そこで、影響度決定部114は、静的情報と相関情報との関係(例えば透水性と降水量との関係等)に基づいて影響度を補正してもよい。また、影響度決定部114は、2以上の静的情報(例えば透水性及び保水性等)に基づいて影響度を補正してもよい。
【0051】
また、影響度決定部114は、仮の影響度を決定するのではなく、例えば、観測情報B1及び予測情報C1を静的情報により補正してから図7に示す条件テーブルTB2に基づいて影響度を決定してもよい。いずれの場合も、影響度決定部114は、相関情報取得部(観測情報取得部111、予測情報取得部112及び静的情報取得部113)により取得された相関情報に基づいて、S21において選択した事象についての影響度を決定する。
【0052】
図9は、メッシュ領域毎に決定された影響度の一例を示す図である。図9の例では、正方形のメッシュ領域が並べられたメッシュ領域群M1が示されている。メッシュ領域群M1においては、説明を分かりやすくするため、ランク4のメッシュ領域(図中のメッシュ領域G1等)とランク5のメッシュ領域(図中のメッシュ領域J1等)とだけが異なる塗りつぶしパターンで表されている。
【0053】
続いて、影響度情報生成サーバ10は、影響度情報生成部115により、所定条件を満たすメッシュ領域のグループ化処理を実行する。以下ではこの条件を「グループ化条件」と言う。本実施形態では、グループ化条件には、第1条件及び第2条件が含まれる。影響度情報生成部115は、まず、S31において、グループ化する影響度の範囲を選択する。影響度情報生成部115は、例えば、「ランク1以上」、「ランク2以上」、「ランク3以上」、「ランク4以上」及び「ランク5」等の範囲を選択する。このように、グループ化条件には、影響度が所定の範囲であるという条件が第1条件として含まれる。このような態様によれば、影響度が共通する領域を把握することができる。
【0054】
次に、影響度情報生成部115は、S32において、選択された範囲の影響度のメッシュ領域同士の結合条件を決定する。結合条件とは、2つのメッシュ領域を結合してグループ化するか否かを判断するための条件である。影響度情報生成部115は、例えば、2つのメッシュ領域の間隔が閾値未満である場合に満たされる条件を結合条件として用いる。ここで言う「間隔」の大きさは、例えば、メッシュ領域同士の最短距離によって表される。
【0055】
なお、2つのメッシュ領域の間隔は、上記以外にも、例えば、メッシュ領域の中心同士の距離によって表されてもよいし、メッシュ領域に挟まれた他のメッシュ領域の数によって表されてもよい。また、上述したように、メッシュ領域は、緯度及び経度に基づいて定められるため、高緯度になるほど一辺の長さが短くなる。そこで、メッシュ領域の間隔を示す値(距離等)を、緯度が高くなるほど大きな値となるように補正してもよい。いずれの場合も、グループ化条件には、第1条件を満たすメッシュ領域と、第1条件を満たす他のメッシュ領域との間隔が閾値未満であるという第2条件が含まれる。このような態様によれば、ある程度の広さを持った領域をグループ領域とすることができる。
【0056】
影響度情報生成部115は、影響度の範囲と閾値とを対応付けたグループ化テーブルを用いてグループ化を行う。
図10は、グループ化テーブルの一例を示す図である。図10の例では、「ランク1以上」、「ランク2以上」、「ランク3以上」、「ランク4以上」及び「ランク5」という影響度の範囲に、「Th51」、「Th51」、「Th52」、「Th52」及び「Th53」(Th51>Th52>Th53)という閾値を対応付けたグループ化テーブルTB4が示されている。影響度情報生成部115は、S31において選択された影響度の範囲にグループ化テーブルTB4において対応付けられた閾値を、結合条件の判断に用いる閾値として決定する。
【0057】
影響度情報生成部115は、例えば、「ランク2以上」が影響度の範囲として選択されている場合は「Th51」を結合条件の判断に用いる閾値として決定し、「ランク5」が影響度の範囲として選択されている場合は「Th53」を結合条件の判断に用いる閾値として決定する。次に、影響度情報生成サーバ10は、S33において、S31において選択された範囲の影響度のメッシュ領域のうちから、S32において決定された閾値を用いた結合条件を満たすメッシュ領域同士をグループ化する。
【0058】
図11は、結合条件を説明するための図である。図11では、図9に示すメッシュ領域群M1が示されている。図11の例では、ランク5の12個のメッシュ領域にJ1からJ12までの符号を付している。メッシュ領域同士の距離は、例えば、メッシュ領域J1及びJ2のように辺が接する場合と、メッシュ領域J2及びJ4のように角が接する場合は「0」になる。また、メッシュ領域J8及びJ9のように同じ列又は同じ行で間に1つのメッシュ領域を挟む場合はメッシュ領域の1辺の長さL1となる。また、メッシュ領域J5及びJ8のように対角線の延長上に1つのメッシュ領域を挟んで並ぶ場合はメッシュ領域の対角線の長さL2となる。
【0059】
影響度情報生成部115は、図11の例では、距離が0となるメッシュ領域が連続するメッシュ領域J1からJ7までをグループH1としてグループ化し、同じく距離が0となるメッシュ領域が連続するメッシュ領域J9からJ12までをグループH2としてグループ化する。また、影響度情報生成部115は、例えば、ランク5の結合条件である「Th53」の大きさがL1(1辺分の長さ)<Th53<L2(2辺分の長さ)である場合、メッシュ領域J8を、距離がL2となるグループH1には結合せず、距離がL1となるグループH2に結合する。
【0060】
次に、影響度情報生成サーバ10は、S34において、影響度情報生成部115により、S33においてグループ化したメッシュ領域を囲むグループ領域を生成する。
図12は、グループ領域を説明するための図である。図12では、図10に示すグループH1及びグループH2が示されている。影響度情報生成部115は、例えば、グループH1であれば、グループ化されたメッシュ領域J1からJ7に外接する矩形のグループ領域R1を生成し、グループH2であれば、グループ化されたメッシュ領域J8からJ12に外接する矩形のグループ領域R2を生成する。ここでいう「矩形」とは、本実施形態では、同一緯度と同一経度の境界線で囲まれる領域の形状である。
【0061】
図13は、生成された別のグループ領域の一例を示す図である。図13の例では、影響度情報生成部115は、ランク4以上(ランク4及びランク5)のメッシュ領域を、グループH11、H12及びH13という3つのグループにグループ化している。図13の例では、ランク4以上の結合条件である「Th52」の大きさが、距離L1×2(2辺分の長さ)<Th52<距離L1×3(3辺分の長さ)であるものとする。
【0062】
グループH11及びH12の最短距離は、グループH11のメッシュ領域J21とグループH12のメッシュ領域H22との距離L3である。距離L3は、連続する3つのメッシュ領域が形成する矩形の対角線であり距離L1×3(3辺分の長さ)より大きいため、メッシュ領域J21及びJ22は、結合条件を満たさず別グループにグループ化されている。グループH11に含まれるメッシュ領域J23及びJ24は、互いの距離L4=距離L1×2(2辺分の長さ)なので、結合条件が満たされ、同じグループH11にグループ化されている。
【0063】
また、グループH11及びH13の最短距離は、グループH11のメッシュ領域J25とグループH13のメッシュ領域J26との距離L5である。距離L5は、距離L1×3(3辺分の長さ)であるため、メッシュ領域J25及びJ26は、結合条件が満たされず、別グループにグループ化されている。影響度情報生成部115は、S35において、全ての影響度の範囲についてグループ化を行ったか否かを判断し、否である場合は、S31に戻ってグループ化の処理を繰り返す。その結果、例えば、「ランク1以上」、「ランク2以上」、「ランク3以上」、「ランク4以上」及び「ランク5」という影響度の範囲毎にメッシュ領域のグループが形成される。
【0064】
影響度情報生成部115は、グループH11に含まれるメッシュ領域に外接する矩形のグループ領域R11を生成し、グループH12に含まれるメッシュ領域に外接する矩形のグループ領域R12を生成している。また、影響度情報生成部115は、グループH13に含まれるメッシュ領域に外接する矩形のグループ領域R13を生成している。図13の例に示すように、同じ影響度のメッシュ領域のグループ領域同士は、グループ領域R11及びR13のように一部が重複する場合もあれば、グループ領域R11及びR12のように全体が重複する場合もある。
【0065】
影響度情報生成部115は、S35において、全ての影響度の範囲についてグループ化を行ったと判断した場合、次に、全ての時期についてグループ化を行ったか否かを判断する。ここで、影響度情報生成部115は、過去、現在及び未来における複数の時期(例えば2日前、1日前、現在、1日後、2日後等)について各メッシュ領域の影響度を示す影響度情報を生成するものとする。
【0066】
影響度情報生成部115は、まず、現在の相関情報に基づいて現在の影響度を決定してメッシュ領域をグループ化する。次に、影響度情報生成部115は、予測情報C1に基づいて未来の所定の時点(1日後、2日後等)の影響度を決定してメッシュ領域をグループ化する。続いて、影響度情報生成部115は、過去に影響度情報処理を実行したときに生成した影響度情報を、過去のメッシュ領域をグループ化した情報として読み出す。
【0067】
影響度情報生成サーバ10は、S41において、影響度情報生成部115により、こうして複数の時期についてメッシュ領域をグループ化して示す情報を影響度情報として生成する。影響度情報生成サーバ10は、S42において、影響度情報出力部116により、S41において生成された影響度情報を出力する。影響度情報出力部116は、例えば、ユーザ端末20に影響度情報を出力する。ユーザ端末20は、表示制御部211により、出力されてきた影響度情報を表示する。
【0068】
図14は、表示された影響度情報の一例を示す図である。図14では、表示制御部211が、影響度情報E10を表示している。影響度情報E10は、過去の時間帯T11の影響度を示す部分情報E11と、現在の時間帯T12の影響度を示す部分情報E12と、未来の時間帯T13の影響度を示す部分情報E13とを含む。図14の例では、時間の経過とともに、高いランクのメッシ領域を含む矩形のグループ領域が新たに発生し、同じランクのメッシュ領域を含む矩形のグループ領域が大きくなっていく様子が表されている。ユーザ端末20のユーザは、表示される部分情報を切り替えることで、事象の影響度の遷移を把握することができる。
【0069】
また、影響度情報出力部116は、セレクタマネジメントシステム5に影響度情報を出力する。セレクタマネジメントシステム5は、出力されてきた影響度情報を取得する。また、セレクタマネジメントシステム5は、制約情報を取得する。制約情報は、観測衛星3が地球の周辺を周回しながら観測を行うために生じる時間的及び地理的な制約を示す情報である。続いて、セレクタマネジメントシステム5は、観測衛星3により観測可能な範囲のうち実際の観測で用いる実測範囲の候補の評価を示す評価指標を算出する。
【0070】
評価指標は、例えば、数値で表され、数値が大きいほど、観測の目的に対して有用な観測結果が得られる可能性が高いことを示すものとする。観測の目的とは、例えば、災害対応の初動対応に必要な広域な被害状況把握である。セレクタマネジメントシステム5は、影響度情報が示す観測優先地域及び予測時間帯と、観測衛星3との組み合わせ毎に評価指標を算出する。観測優先地域とは、例えば、所定の影響度(ランク4等)以上のメッシュ領域を含む矩形の領域のことである。予測時間帯とは、事象が発生すると予測されている時間帯(図14の例であれば時間帯T13)である。
【0071】
続いて、セレクタマネジメントシステム5は、算出された評価指標に基づいて、観測に用いる観測手段を観測時間帯毎に決定する。セレクタマネジメントシステム5は、例えば、各観測衛星3のうち、各観測優先地域について算出された時間帯T13における評価指標の合計が最も大きいものを、時間帯T13において観測に用いる第1観測手段として決定する。セレクタマネジメントシステム5は、第1観測手段だけでは全ての観測優先地域の観測ができない場合には、第1観測手段が観測する観測優先地域を除いた各観測優先地域について算出された時間帯T13における評価指標の合計が最も大きいものを、観測に用いる第2観測手段として決定する。
【0072】
セレクタマネジメントシステム5は、同様に、全ての観測優先地域が観測されるようになるか、残った観測優先地域を観測可能な観測衛星3がなくなるまで、第N観測手段(Nは自然数)を決定する。セレクタマネジメントシステム5は、観測優先地域と、その観測優先地域を観測する観測手段として決定した観測手段とを予測時間帯毎に示す決定データを衛星コントロールシステム4に対して送信する。
【0073】
衛星コントロールシステム4は、決定データを受信すると、受信した決定データが示す観測衛星3に対して、受信した決定データが示す予測時間帯に観測優先地域を観測するよう指示する指示処理を実行する。衛星コントロールシステム4により観測を指示された観測衛星3は、指示された観測優先地域を、指示された予測時間帯においてその観測優先地域の観測が可能な時刻に観測する。こうして観測衛星3が観測した結果を示す観測データは衛星コントロールシステム4を介して収集され、災害対応等に活用される。
【0074】
以上のとおり、事象観測システム1においては、影響度情報生成サーバ10が、事象の発生と相関がある相関情報を取得する。この相関情報には、第1の事象の発生と相関がある第1相関情報と、第2の事象の発生と相関がある第2相関情報とが含まれる。影響度情報生成サーバ10は、例えば、図6に示す相関情報を第1相関情報(この場合は「洪水」が第1の事象)として取得し、図7に示す相関情報を第2相関情報(この場合は「土砂崩れ」が第2の事象)として取得する。
【0075】
上記の場合、影響度情報生成サーバ10が決定する影響度には、第1の事象についての第1影響度と、第2の事象についての第2影響度とが含まれることになり、影響度情報には、第1影響度を示す情報と、第2影響度を示す情報とが含まれることになる。そして、第1影響度及び第2影響度は、いずれも、所定の範囲(本実施形態ではランク1からランク5までの範囲)で変化する指標により示されている。
【0076】
例えば、洪水はランク1からランク5までの範囲で影響度が示され、土砂崩れはランク1からランク10までの範囲で影響度が示された場合、「ランク3」がどの程度の影響度なのかは事象が洪水か土砂崩れかによって異なることになる。これに対し、影響度の範囲が共通していれば、「ランク3」は洪水でも土砂崩れでも同じような影響度を示すことになる。このように、本実施形態によれば、事象の種類によって影響度の範囲が異なる場合に比べて、事象の種類を問わずその影響を把握しやすくすることができる。
【0077】
また、本実施形態では、影響度情報が、所定条件を満たすメッシュ領域のグループを囲むグループ領域を示す情報であった。このような態様によれば、影響度が共通する領域を把握することができる。図13の例であれば、グループ領域R1及びR2からはランク5のメッシュ領域が存在する領域が把握され、グループ領域R11、R12及びR13からはランク4以上のメッシュ領域が存在する領域が把握される。
【0078】
また、本実施形態では、グループ領域は、図13等に示すように、矩形の領域である。観測衛星3は、所定の方向に飛行しながら観測を行うため、観測可能な範囲が一定の幅を有する帯状の領域になりやすい。グループ領域を矩形の領域とすることで、その矩形の辺に沿った方向に飛行する観測衛星3が観測しやすい領域を示す情報を影響度情報として出力することができる。
【0079】
また、本実施形態では、グループ化条件に含まれる第2条件として、影響度が共通する範囲(以下「影響度範囲」と言う)に含まれる他のメッシュ領域との間隔が閾値未満であるという条件が用いられた。そして、その閾値は、図10のグループ化テーブルTB4に示すように、影響度範囲に応じた値であった。このような態様によれば、例えば、ランク5ではグループ領域が狭くなりやすい値とし、ランク1以上ではグループ領域が広くなりやすい値にするというように、グループ領域の広さを制御することができる。
【0080】
なお、影響度範囲に応じた値は、図10に示すものに限らない。例えば、影響度範囲に応じた値は、その影響度範囲の幅、上限、下限又は中央値等に応じた値であってもよい。いずれの場合も、例えば、グループ化されるメッシュ領域のランクが高くなりやすい影響度範囲ではグループ領域が狭くなりやすい値とし、グループ化されるメッシュ領域のランクが低くなりやすい影響度範囲ではグループ領域が広くなりやすい値にするというように、グループ領域の広さを制御することができる。
【0081】
また、相関情報には、観測情報B1及び予測情報C1のように、複数の時期における事象の発生と相関がある情報が含まれていた。そして、影響度情報は、図14に示すように、それら複数の時期の各々におけるグループ領域を示す情報であった。このような態様によれば、事象の影響度の遷移が表されるので、影響度情報が1つの時期の影響度のみを示す場合に比べて、影響度の変化の傾向を容易に把握することができる。
【0082】
また、影響度情報生成部115は、図13に示すように、影響度範囲(影響度が共通する範囲)に応じた態様でグループ領域が示される情報を影響度情報として生成する。図13の例では、影響度範囲がランク5であるグループ領域は実線で示されており、影響度範囲がランク4以上であるグループ領域は破線で示されている。なお、影響度範囲に応じた態様は、線種だけでなく、線の色、線の太さ又はグループ領域内のパターンの種類等であってもよい。また、影響度範囲は、影響度の幅、上限、下限又は中央値等によって表されてもよい。いずれの場合も、グループ領域の表示態様が一律である場合に比べて、観測の優先度を把握しやすくすることができる。
【0083】
<その他の実施形態>
【0084】
<影響度>
影響度の表し方は上記の「ランク」を用いた方法に限らない。例えば、「レベル」及び「段」等の段階を表す他の言葉が用いられてもよいし、単に数値が用いられてもよい。また、「A」から「F」等の文字や「青」、「黄」、「赤」等の色、「ばつ」、「三角」、「丸」等の記号などが用いられてもよい。いずれの影響度も、所定の範囲で変化する指標であればよい。
【0085】
<第1条件>
実施形態では、影響度が所定の範囲であるという条件が第1条件として用いられたが、これに限らない。例えば、影響度の変化量が所定の範囲であるという条件や影響度が所定の範囲となってから一定期間が経過しているという条件などが第1条件として用いられてもよい。いずれの場合も、影響度について何らかの共通性があるメッシュ領域がグループ化されることになる。
【0086】
<第2条件(結合条件)>
実施形態では、第1条件を満たすメッシュ領域同士の間隔が閾値未満であるという条件が第2条件として用いられたが、これに限らない。例えば、所定の大きさ且つ所定の形状の領域に存在するメッシュ領域のうち第1条件を満たすメッシュ領域の数が閾値以上であるという条件が第2条件として用いられてもよい。また、他にも、周知の画像処理技術において用いられるグループ化の条件が第2条件として用いられてもよい。いずれの場合も、近くに配置されているメッシュ領域同士がグループ化されることになる。
【0087】
また、上記のように第2条件の判断に閾値(間隔の閾値、メッシュ領域の数の閾値)が用いられる場合、その閾値は、例えば、影響度の決定に用いられた相関情報により相関が示される事象の種類に応じた値であってもよい。この場合、影響度情報生成部115は、図10とは異なるグループ化テーブルを用いる。
【0088】
図15は、グループ化テーブルの別の一例を示す図である。図15の例では、「洪水」、「土砂崩れ」及び「地震」等の事象の種類に、影響度の範囲及び閾値を対応付けたグループ化テーブルTB5が示されている。グループ化テーブルTB5においては、事象の種類毎に異なる閾値が対応付けられている。例えば、「洪水」の場合、「ランク1以上」、「ランク3以上」及び「ランク5」という影響度の範囲に、「Th61」、「Th62」及び「Th63」(Th61>Th62>Th63)という閾値が対応付けられている。
【0089】
また、「土砂崩れ」の場合は同様の影響度の範囲に「Th71」、「Th72」及び「Th73」(Th71>Th72>Th73)という閾値が対応付けられ、「地震」の場合は同様の影響度の範囲に「Th81」、「Th82」及び「Th83」(Th81>Th82>Th83)という閾値が対応付けられている。影響度情報生成部115は、図5に示すS21において選択された事象の種類と、S31において選択された影響度の範囲とにグループ化テーブルTB5において対応付けられた閾値を、結合条件の判断に用いる閾値として決定する。
【0090】
「土砂崩れ」に比べて「洪水」はより広い範囲に影響が生じやすい。そこで同じ影響度の範囲でも「洪水」に対応付けられた閾値を「土砂崩れ」に対応付けられた閾値よりも大きくすることで、洪水が発生する際の観測地域を広くすることができ、事象の種類に関係なく閾値を一様にする場合に比べて、観測すべき領域を適切な大きさにすることができ、観測の漏れを減少させることができる。
【0091】
なお、第2条件の判断に用いられる閾値を、静的情報に基づいて、地域毎に異ならせてもよい。例えば、事象の種類が土砂崩れである場合に、透水性が高く事象が拡大しやすい地域ほど閾値を小さくしてグループ領域が大きくなりやすいようにする。このような態様によれば、事象が拡大しやすい地域や拡大しにくい地域を考慮することができるので、静的情報を用いない場合に比べて、観測すべき領域を適切な大きさにすることができ、観測の漏れを減少させることができる。
【0092】
また、相関情報には、観測情報B1及び予測情報C1のように、複数の時期における事象の発生と相関がある情報が含まれている。その場合に、第2条件の判断に用いられる閾値は、影響度の決定に用いられた相関情報により相関が示される事象の発生時期に応じた値であってもよい。この場合、影響度情報生成部115は、図10及び図15とは異なるグループ化テーブルを用いる。
【0093】
図16は、グループ化テーブルの別の一例を示す図である。図16の例では、「現在」、「期間T1後」及び「期間T2後」という事象の発生時期に、影響度の範囲及び閾値を対応付けたグループ化テーブルTB6が示されている。グループ化テーブルTB6においては、事象の発生時期毎に異なる閾値が対応付けられている。例えば、事象の発生時期が「現在」の場合、「ランク1以上」、「ランク3以上」及び「ランク5」という影響度の範囲に、「Th111」、「Th112」及び「Th113」(Th111>Th112>Th113)という閾値が対応付けられている。
【0094】
また、事象の発生時期が「期間T1後」の場合は同様の影響度の範囲に「Th121」、「Th122」及び「Th123」(Th121>Th122>Th123)という閾値が対応付けられ、事象の発生時期が「期間T2後」の場合は同様の影響度の範囲に「Th131」、「Th132」及び「Th133」(Th131>Th132>Th133)という閾値が対応付けられている。影響度情報生成部115は、相関情報により相関が示される事象の発生時期と、S31において選択された影響度の範囲とにグループ化テーブルTB6において対応付けられた閾値を、結合条件の判断に用いる閾値として決定する。
【0095】
例えば、発生時期が先の事象ほど、相関情報に基づき決定された影響度が不確かになるので、実際の事象の発生位置が周囲にずれてしまい、観測漏れが生じる可能性が高くなる。そこで、発生時期が先の事象のときほどグループ領域が広くなりやすい閾値にすることで、事象の発生時期を考慮しない場合に比べて、観測すべき領域を適切な大きさにすることができ、観測の漏れを減少させることができる。
【0096】
<影響度情報>
影響度情報生成部115は、上記の各例とは異なる影響度情報を生成してもよい。影響度情報生成部115は、グループ領域を矩形で表すのではなく、例えば、三角形又は六角形の網状にすることが可能な形状で表してもよいし、市区町村の境界をそのまま用いて表してもよい。また、影響度情報生成部115は、グループ領域の境界を示すのではなく、グループ領域の全体を色分け又は斜線などでパターン分けすることで、グループ領域の範囲を示してもよい。
【0097】
また、影響度情報生成部115は、複数の時間帯の部分情報を含む影響度情報を生成する場合に、影響度が大きいほど多くの時期のグループ領域を示す情報を影響度情報として生成してもよい。影響度の大きさは、例えば、高ランク(例えばランク4以上)のメッシュ領域の数(以下「高ランク領域数」と言う)の多さによって示される。この場合、影響度情報生成部115は、図10等とは異なるグループ化テーブルを用いる。
【0098】
図17は、グループ化テーブルの別の一例を示す図である。図17の例では、「Th141未満」、「Th141以上Th142未満」及び「Th142以上」という高ランク領域数に、「N1」、「N2」及び「N3」(N1<N2<N3)という時間帯の数を対応付けたグループ化テーブルTB7が示されている。影響度情報生成部115は、S22において各メッシュ領域の影響度が決定された場合に高ランク領域数を算出し、算出された高ランク領域数にグループ化テーブルTB7において対応付けられた数の時間帯の部分情報を含む影響度情報を生成する。このような態様によれば、影響度の大きい事象の観測漏れを抑制することができる。
【0099】
上記の各例では、例えば図10に示すように、影響度の範囲に含まれる影響度の下限が小さいほどグループ領域が大きくなりやすい閾値が用いられた。影響度の範囲に含まれる影響度の下限が小さいほどメッシュ領域が多くなるので、このような閾値を用いることで、グループ領域が乱立して観測計画が立てにくくなることを抑制することができる。
【0100】
なお、上記とは反対に、影響度の範囲に含まれる影響度の下限が大きいほどグループ領域が大きくなりやすい閾値が用いられもよい。その場合、例えば図10図12の例であれば、影響度の範囲がランク5の閾値Th53を一番大きな値(例えば2辺の長さ)にすることで、グループ領域R1及びR2の両方に外接する矩形の領域がグループ領域となる。この場合、影響度が大きいメッシュ領域の周囲がグループ領域に含まれやすくなるので、影響度が大きいほど観測の漏れが生じにくくなるようにすることができる。
【0101】
<観測手段>
実施形態では、観測手段として観測衛星が用いられたが、これに限らない。例えば、観測用のセンサを備える航空機又はドローン等が観測手段として用いられてもよい。これらの観測手段は、いずれも、飛行する物体から観測するため、観測範囲に時間的な制約が生じるものになりやすい。事象観測システム1においては、そのような観測手段の有効利用も支援することができる。
【0102】
<構成のバリエーション>
図1に示す全体構成は一例であり、これに限られない。例えば、影響度情報生成サーバ10及びセレクタマネジメントシステム5は、1台のサーバ装置に統合されてもよい。また、影響度情報生成サーバ10及びセレクタマネジメントシステム5は、それぞれ2台以上の装置に分散させてもよいし、クラウドコンピューティングシステムに代替されてもよい。
【0103】
図4に示す機能構成も一例であり、これに限られない。例えば、観測情報取得部111、予測情報取得部112及び静的情報取得部113等の2以上の機能をそれぞれ1つの機能に統合してもよい。また、影響度情報生成部115が行う動作(メッシュ領域のグループ化及び影響度情報の生成等)を2以上の機能が分散して行ってもよい。要するに、事象観測システム1の全体で図4に示す各機能が行う動作が実現されていれば、それらの動作を行う機能及び装置はどのような構成であってもよい。
【0104】
<発明のカテゴリ>
上述した実施形態の態様は、情報処理方法であってもよい。その情報処理方法では、事象観測システム1のような情報処理システムを制御するコンピュータが、その情報処理システムと同様に上述した各ステップを実行する。また、上述した実施形態の態様は、プログラムであってもよい。そのプログラムは、コンピュータに、同様の情報処理システムの各ステップを実行させる。
【0105】
<付記>
さらに、次に記載の各態様で提供されてもよい。
【0106】
(1)情報処理システムであって、次の各ステップがなされるようにプログラムを実行可能な少なくとも1つのプロセッサを備え、取得ステップでは、事象の発生と相関がある相関情報を取得し、前記相関情報には、第1の事象の発生と相関がある第1相関情報と、第2の事象の発生と相関がある第2相関情報とが含まれ、決定ステップでは、取得された前記相関情報により相関が示される事象の影響の大きさを示す影響度を決定し、前記影響度は、所定の範囲で変化する指標により示され、前記影響度には、前記第1の事象についての第1影響度と、前記第2の事象についての第2影響度とが含まれ、出力ステップでは、決定された前記影響度を示す影響度情報を出力し、前記影響度情報には、前記第1影響度を示す情報と、前記第2影響度を示す情報とが含まれる、もの。
【0107】
このような態様によれば、事象の種類を問わずその影響を把握しやすくすることができる。
【0108】
(2)上記(1)に記載の情報処理システムにおいて、前記影響度情報は、所定条件を満たすメッシュ領域のグループを囲むグループ領域を示す情報であり、前記所定条件には、前記影響度が所定の範囲であるという第1条件が含まれる、もの。
【0109】
このような態様によれば、影響度が共通する領域を把握することができる。
【0110】
(3)上記(2)に記載の情報処理システムにおいて、前記グループ領域は、矩形の領域である、もの。
【0111】
このような態様によれば、観測衛星が観測しやすい領域を出力することができる。
【0112】
(4)上記(2)又は(3)に記載の情報処理システムにおいて、前記所定条件には、前記第1条件を満たすメッシュ領域と、前記第1条件を満たす他のメッシュ領域のうち最も近いメッシュ領域との間隔が閾値未満であるという第2条件が含まれる、もの。
【0113】
このような態様によれば、ある程度の広さを持った領域をグループ領域とすることができる。
【0114】
(5)上記(4)に記載の情報処理システムにおいて、前記閾値は、前記範囲に応じた値である、もの。
【0115】
このような態様によれば、グループ領域の広さを制御することができる。
【0116】
(6)上記(4)に記載の情報処理システムにおいて、前記閾値は、前記影響度の決定に用いられた前記相関情報により相関が示される事象の種類に応じた値である、もの。
【0117】
このような態様によれば、観測すべき領域を適切な大きさにすることができる。
【0118】
(7)上記(4)に記載の情報処理システムにおいて、前記相関情報には、複数の時期における前記事象の発生と相関がある情報が含まれ、前記閾値は、前記影響度の決定に用いられた前記相関情報により相関が示される事象の発生時期に応じた値である、もの。
【0119】
このような態様によれば、観測漏れが生じることを抑制することができる。
【0120】
(8)上記(2)~(7)の何れか1つに記載の情報処理システムにおいて、前記グループ領域は、前記範囲に応じた態様で示される、もの。
【0121】
このような態様によれば、観測の優先度を把握しやすくすることができる。
【0122】
(9)上記(2)~(8)の何れか1つに記載の情報処理システムにおいて、前記相関情報には、複数の時期における前記事象の発生と相関がある情報が含まれ、前記影響度情報は、前記複数の時期の各々における前記グループ領域を示す情報である、もの。
【0123】
このような態様によれば、影響度の変化の傾向を容易に把握することができる。
【0124】
(10)上記(9)に記載の情報処理システムにおいて、前記影響度情報は、前記影響度が大きいほど多くの時期の前記グループ領域を示す情報である、もの。
【0125】
このような態様によれば、影響度の大きい事象の観測漏れを抑制することができる。
【0126】
(11)コンピュータに、上記(1)~(10)の何れか1つに記載の各ステップを実行させるためのプログラム。
【0127】
(12)コンピュータが、上記(1)~(10)の何れか1つに記載の各ステップを実行する、方法。
もちろん、この限りではない。
また、上述した実施形態及び変形例を任意に組み合わせて実施するようにしてもよい。
【0128】
最後に、本発明に係る種々の実施形態を説明したが、これらは、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0129】
1 :事象観測システム
5 :セレクタマネジメントシステム
10 :影響度情報生成サーバ
11 :制御部
20 :ユーザ端末
21 :制御部
111 :観測情報取得部
112 :予測情報取得部
113 :静的情報取得部
114 :影響度決定部
115 :影響度情報生成部
116 :影響度情報出力部
211 :表示制御部
212 :操作受付部
【要約】      (修正有)
【課題】事象の種類を問わずその影響を把握しやすい情報処理システム、プログラム及び方法を提供する。
【解決手段】情報処理システムにおいて、影響度情報生成サーバのプロセッサが、取得ステップS11で、相関情報取得部により事象の発生と相関がある相関情報を取得する。相関情報には、第1の事象の発生と相関がある第1相関情報と、第2の事象の発生と相関がある第2相関情報とが含まれる。決定ステップS22で、影響度決定部により、取得した相関情報により相関が示される事象の影響の大きさを示す影響度を決定する。影響度は、所定の範囲で変化する指標により示され、第1の事象についての第1影響度と、第2の事象についての第2影響度とが含まれる。出力ステップS42で、影響度情報出力部により、決定した影響度を示す影響度情報を出力する。影響度情報には、第1影響度を示す情報と、第2影響度を示す情報とが含まれる。
【選択図】図5
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17