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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】核シェルター
(51)【国際特許分類】
   G21F 7/00 20060101AFI20240312BHJP
   E04H 9/08 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
G21F7/00 S
E04H9/08
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2023218702
(22)【出願日】2023-12-25
【審査請求日】2023-12-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517320680
【氏名又は名称】アンカーハウジング株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】523487092
【氏名又は名称】株式会社司工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100147393
【弁理士】
【氏名又は名称】堀江 一基
(72)【発明者】
【氏名】吉山 和實
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 修
【審査官】小林 幹
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-040784(JP,A)
【文献】特開2008-232845(JP,A)
【文献】特開平9-239437(JP,A)
【文献】特開平11-227079(JP,A)
【文献】特開2017-138266(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21F 1/00 - 7/06
E04H 9/00 - 9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基礎部、側壁部および天井壁部に囲まれる防護空間を形成する核シェルターであって、
前記側壁部は、
長手方向が高さ方向であり、長手方向に直交する断面においてコの字型またはC字型の断面形状を有し、前記防護空間が形成される内側又は前記内側の反対側である外側のいずれか一方に開口する溝が形成してある溝金属材と、前記溝の開口を塞ぐように設けられる蓋金属材と、で構成される金属側壁単位と、
前記金属側壁単位における前記溝に充填してあり硬化したコンクリートで構成されるコンクリート側壁単位と、をそれぞれ複数有し、
複数の前記金属側壁単位および前記コンクリート側壁単位は、前記防護空間の前記側壁部の少なくとも一部を構成するように水平方向に連続して配列してある核シェルター。
【請求項2】
前記溝金属材において同じ前記金属側壁単位の前記蓋金属材に垂直な溝材横壁には、隣接する複数の前記金属側壁単位における前記溝金属材の前記溝同士を連通させる横連通部が形成されており、
隣接する複数の前記コンクリート側壁単位は、前記横連通部を介して互いに繋がっている請求項1に記載の核シェルター。
【請求項3】
前記側壁部は、水平方向に延びており、前記横連通部を介して隣接する複数の前記金属側壁単位における前記溝金属材の前記溝同士および隣接する複数の前記コンクリート側壁単位同士を繋ぐ金属の横棒を有する請求項2に記載の核シェルター。
【請求項4】
前記側壁部は、前記溝に配置され前記コンクリート側壁単位に埋め込まれるワイヤーメッシュを有し、前記ワイヤーメッシュは前記横棒に固定してある請求項3に記載の核シェルター。
【請求項5】
前記横連通部の連通部底部には底部切り欠きが形成されており、前記底部切り欠きに前記横棒が配置してある請求項3に記載の核シェルター。
【請求項6】
前記金属側壁単位における前記溝金属材の前記溝は前記外側に開口しており、
前記溝金属材において同じ前記金属側壁単位の前記蓋金属材に平行な溝材主壁における前記内側を向く面には、前記溝材主壁より面積の狭い板材が溶接されている請求項1に記載の核シェルター。
【請求項7】
前記金属側壁単位は、前記溝金属材において同じ前記金属側壁単位の前記蓋金属材に平行な溝材主壁と前記蓋金属材とを、前記溝金属材において同じ前記金属側壁単位の前記蓋金属材に垂直な一対の溝材横壁の間で接続する接続部を有する請求項1に記載の核シェルター。
【請求項8】
前記防護空間を囲む前記側壁部は、少なくとも8つの前記金属側壁単位および前記コンクリート側壁単位を有し、2以上の前記金属側壁単位および前記コンクリート側壁単位をそれぞれ有する4以上の辺により、前記防護空間を囲む請求項1に記載の核シェルター。
【請求項9】
前記天井壁部は、
長手方向が水平方向であり、長手方向に直交する断面においてコの字型またはC字型の断面形状を有し、上方に開く上溝が形成してある天井溝金属材と、
前記天井溝金属材における前記上溝に充填してあり硬化したコンクリートで構成されるコンクリート天井壁単位と、をそれぞれ複数有し、
複数の前記天井溝金属材および前記コンクリート天井壁単位は、前記防護空間の前記天井壁部の少なくとも一部を構成するように水平方向に連続して配列してある請求項1に記載の核シェルター。
【請求項10】
前記天井溝金属材において高さ方向が法線方向となる天井材主壁には、前記金属側壁単位の前記溝金属材の前記溝に通じる縦連通部が形成されている請求項9に記載の核シェルター。
【請求項11】
前記コンクリート天井壁単位は、前記縦連通部を介して、前記コンクリート側壁単位に繋がっている請求項10に記載の核シェルター。
【請求項12】
前記天井溝金属材において前記水平方向が法線方向となる天井材横壁には、隣接する複数の前記天井溝金属材の前記上溝同士を連通させる天井横連通部が形成されており、
隣接する複数の前記コンクリート天井壁単位同士は、前記天井横連通部を介して互いに繋がっている請求項9に記載の核シェルター。
【請求項13】
前記金属側壁単位および前記コンクリート側壁単位は、高さ方向の長さが第1の長さである第1金属側壁単位および第1コンクリート側壁単位と、高さ方向の長さが第1の長さとは異なる第2の長さである第2金属側壁単位および第2コンクリート側壁単位とを、高さ方向に連結して構成してあり、
水平方向に隣接する2つの前記金属側壁単位および前記コンクリート側壁単位の一方では、前記第1金属側壁単位および前記第1コンクリート側壁単位が前記第2金属側壁単位および前記第2コンクリート側壁単位より上に位置し、水平方向に隣接する2つの前記金属側壁単位および前記コンクリート側壁単位の他方では、前記第1金属側壁単位および前記第1コンクリート側壁単位が前記第2金属側壁単位および前記第2コンクリート側壁単位より下に位置する請求項1に記載の核シェルター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部で放射能レベルが上昇するような事態が生じた際においても一定期間生存可能な防護空間を形成する核シェルターに関する。
【背景技術】
【0002】
万が一自然災害や戦争などが生じた場合、原子力発電所の事故、核兵器の使用、宇宙空間からの放射性物質の飛来などにより、環境の放射能レベルが上昇する事態が想定される。このような危機的状況において生物が生存するためには、環境の放射能レベルが一定以下に低下するまでの期間、放射線から防護された防護空間に留まることが有効であり、そのような防護空間を形成する核シェルターが注目されている。
【0003】
放射線からの防護空間を形成する核シェルターでは、放射線を遮蔽する壁を形成する必要があり、金属の壁により放射線の遮蔽壁を形成するものと、コンクリートの壁により放射線の遮蔽壁を形成するものとが提案されている。遮蔽壁の材料として考えた場合、金属はガンマ線やエックス線などの遮蔽能力が高く、鋼材などの形態で加工が容易であるなどの利点があるが、厚みを増すと重量が急激に重くなり、単位体積あたりの材料コストが高いという問題がある。一方、コンクリートは、中性子線の遮蔽能力が高く単位体積あたりの材料コストが低いという利点がある一方で、施工に手間がかかり、クラックが生じやすいという問題がある。
【0004】
そこで、金属とコンクリートの利点を両方とも生かしつつ、お互いの欠点を補う技術として、金属とコンクリートのハイブリッドの壁を有する核シェルターが考えられる(特許文献1、特許文献2等参照)。しかし、金属壁とコンクリート壁とを組み合わせた従来の技術では、施工のしやすさや、構造材としての壁の強度などの点で課題を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5136130号明細書
【文献】特許第3836111号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、金属壁とコンクリート壁とを組み合わせて良好な防護能力を奏するとともに、施工のしやすい核シェルターを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る核シェルターは、基礎部、側壁部および天井壁部に囲まれる防護空間を形成する核シェルターであって、
前記側壁部は、
長手方向が高さ方向であり、長手方向に直交する断面においてコの字型またはC字型の断面形状を有し、前記防護空間が形成される内側又は前記内側の反対側である外側のいずれか一方に開口する溝が形成してある溝金属材と、前記溝の開口を塞ぐように設けられる蓋金属材と、で構成される金属側壁単位と、
前記金属側壁単位における前記溝に充填してあり硬化したコンクリートで構成されるコンクリート側壁単位と、をそれぞれ複数有し、
複数の前記金属側壁単位および前記コンクリート側壁単位は、前記防護空間の前記側壁部の少なくとも一部を構成するように水平方向に連続して配列してある。
【0008】
このような核シェルターでは、金属側壁単位とコンクリート側壁単位とによるハイブリッドの壁により良好な防護能力を奏する。また、金属側壁単位は、コンクリートを施工する際の型枠の役目も果たすため、本発明に係る核シェルターは施工がしやすい。また、金属側壁単位がコの字型またはC字型の断面形状を有するため壁の構造強度が高い。さらに、金属側壁単位およびコンクリート側壁単位の配列数を調整することにより、核シェルターの大きさを、シェルターを設置する土地の広さなどに合わせて容易にアレンジできる。
【0009】
また、たとえば、前記溝金属材において同じ前記金属側壁単位の前記蓋金属材に垂直な溝材横壁には、隣接する複数の前記金属側壁単位における前記溝金属材の前記溝同士を連通させる横連通部が形成されていてもよく、
隣接する複数の前記コンクリート側壁単位は、前記横連通部を介して互いに繋がっていてもよい。
【0010】
このような核シェルターでは、隣接するコンクリート側壁単位同士が接続しており、隣接する金属側壁単位同士およびコンクリート側壁単位同士が強固に連結されており、側壁部の構造的な強度が高い。
【0011】
また、たとえば、前記側壁部は、水平方向に延びており、前記横連通部を介して隣接する複数の前記金属側壁単位における前記溝金属材の前記溝同士および隣接する複数の前記コンクリート側壁単位同士を繋ぐ金属の横棒を有してもよい。
【0012】
このような核シェルターは、隣接する金属側壁単位同士およびコンクリート側壁単位同士が、金属の横棒が入ったコンクリートでより強固に連結される。
【0013】
また、たとえば、前記側壁部は、前記溝に配置され前記コンクリート側壁単位に埋め込まれるワイヤーメッシュを有してもよく、前記ワイヤーメッシュは前記横棒に固定してあってもよい。
【0014】
このような核シェルターは、ワイヤーメッシュによりコンクリート側壁単位の強度が向上し、また、横棒に固定することにより、施工時においてワイヤーメッシュを、適切な位置に容易に配置できる。
【0015】
また、たとえば、前記横連通部の連通部底部には底部切り欠きが形成されており、前記底部切り欠きに前記横棒が配置してあってもよい。
【0016】
このような核シェルターは、底部切り欠きに横棒を配置することにより、施工時において横棒を、適切な位置に容易に配置できる。
【0017】
また、たとえば、前記金属側壁単位における前記溝金属材の前記溝は前記外側に開口していてもよく、
前記溝金属材において同じ前記金属側壁単位の前記蓋金属材に平行な溝材主壁における前記内側を向く面には、前記溝材主壁より面積の狭い板材が溶接されていてもよい。
【0018】
このような板材が溝材主壁に溶接されていることにより、溝材主壁自体に穴を形成することなく、パネルや配線などを、溝材主壁の内側に容易に設置することが可能である。
【0019】
また、たとえば、前記金属側壁単位は、前記溝金属材において同じ前記金属側壁単位の前記蓋金属材に平行な溝材主壁と前記蓋金属材とを、前記溝金属材において同じ前記金属側壁単位の前記蓋金属材に垂直な一対の溝材横壁の間で接続する接続部を有してもよい。
【0020】
このような接続部を有することで、流動性のあるコンクリート材料(生コン)を金属側壁単位に流し込んだ際に、蓋金属材が溝材主壁に対して離間する方向に変形する問題を防止できる。
【0021】
また、たとえば、前記防護空間を囲む前記側壁部は、少なくとも8つの前記金属側壁単位および前記コンクリート側壁単位を有してもよく、2以上の前記金属側壁単位および前記コンクリート側壁単位をそれぞれ有する4以上の辺により、前記防護空間を囲んでいてもよい。
【0022】
このように所定数以上の金属側壁単位およびコンクリート側壁単位により側壁部を形成することにより、施工し易く、形状のアレンジも容易であり、良好な防護能力を有する核シェルターを実現できる。
【0023】
また、本発明に係る核シェルターにおいて、前記天井壁部は、
長手方向が水平方向であり、長手方向に直交する断面においてコの字型またはC字型の断面形状を有し、上方に開く上溝が形成してある天井溝金属材と、
前記天井溝金属材における前記上溝に充填してあり硬化したコンクリートで構成されるコンクリート天井壁単位と、をそれぞれ複数有してもよく、
複数の前記天井溝金属材および前記コンクリート天井壁単位は、前記防護空間の前記天井壁部の少なくとも一部を構成するように水平方向に連続して配列してあってもよい。
【0024】
このような核シェルターは、天井壁部についても、天井溝金属材とコンクリート天井壁単位とによるハイブリッドの壁により良好な防護能力を奏する。また、天井溝金属材は、コンクリートを施工する際の型枠の役目も果たすため、本発明に係る核シェルターは施工がしやすい。また、天井溝金属材がコの字型またはC字型の断面形状を有するため天井壁の構造強度が高い。さらに、天井溝金属材およびコンクリート天井壁単位の配列数を調整することにより、核シェルターの大きさに合わせた天井壁部を形成できる。また、天井壁部に用いる天井溝金属材は、側壁部に用いる溝金属材と略共通の形状とすることも可能であり、パーツの製造を合理化することができる。
【0025】
また、たとえば、前記天井溝金属材において高さ方向が法線方向となる天井材主壁には、前記金属側壁単位の前記溝金属材の前記溝に通じる縦連通部が形成されていてもよい。
【0026】
このような核シェルターは、天井溝金属材を取り付けた後に、容易に金属側壁単位における溝金属材の内部に硬化前のコンクリートを流し込んでコンクリート側壁単位を形成することができるため、施工が容易である。
【0027】
また、たとえば、前記コンクリート天井壁単位は、前記縦連通部を介して、前記コンクリート側壁単位に繋がっていてもよい。
【0028】
このような核シェルターは、コンクリート天井壁単位とコンクリート側壁単位とが繋がっていることにより、壁の構造的強度を高めることができる。
【0029】
また、たとえば、前記天井溝金属材において前記水平方向が法線方向となる天井材横壁には、隣接する複数の前記天井溝金属材の前記溝同士を連通させる天井横連通部が形成されていてもよく、
隣接する複数の前記コンクリート天井壁単位同士は、前記天井横連通部を介して互いに繋がっていてもよい。
【0030】
このような核シェルターでは、隣接するコンクリート天井壁単位同士が接続しており、隣接する天井溝金属材同士およびコンクリート天井壁単位同士が強固に連結されており、側壁部の構造的な強度が高い。
【0031】
また、たとえば、前記金属側壁単位および前記コンクリート側壁単位は、高さ方向の長さが第1の長さである第1金属側壁単位および第1コンクリート側壁単位と、高さ方向の長さが第1の長さとは異なる第2の長さである第2金属側壁単位および第2コンクリート側壁単位とを、高さ方向に連結して構成してあってもよく、
水平方向に隣接する2つの前記金属側壁単位および前記コンクリート側壁単位の一方では、前記第1金属側壁単位および前記第1コンクリート側壁単位が前記第2金属側壁単位および前記第2コンクリート側壁単位より上に位置し、水平方向に隣接する2つの前記金属側壁単位および前記コンクリート側壁単位の他方では、前記第1金属側壁単位および前記第1コンクリート側壁単位が前記第2金属側壁単位および前記第2コンクリート側壁単位より下に位置してもよい。
【0032】
このような核シェルターでは、第1金属側壁単位および第1コンクリート側壁単位と、第2金属側壁単位および第2コンクリート側壁単位とを、上下の位置を変えて互い違いに配置することにより、第1単位と第2単位との継ぎ目が水平方向に連続することを防止し、側壁部の強度を適切に保ちつつ、防護空間の高さを確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1図1は、本発明の第1実施形態に係る核シェルターの主要部を示す外観図である。
図2図2は、図1に示す核シェルターの天井壁部を除く部分を示す斜視図である。
図3図3は、図2に示す核シェルターの側壁部等を上方から見た平面図である。
図4図4は、図2に示す核シェルターの側壁部等を第1の側面方向から見た図である。
図5図5は、図2に示す核シェルターの側壁部等を第2の側面方向から見た図である。
図6図6は、図2に示す核シェルターに用いる金属側壁単位を示す第1の概念図である。
図7図7は、側壁部を構成する複数の金属側壁単位およびコンクリート側壁単位の構造を示す概念図である。
図8図8は、図2に示す核シェルターに用いる設置枠部を示す外観図である。
図9図9は、図1に示す核シェルターの天井壁部などを示す平面図である。
図10図10は、図2に示す核シェルターに用いる金属側壁単位およびコンクリート側壁単位の断面図である。
図11図11は、本発明の第2実施形態に係る核シェルターの主要部を示す外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
第1実施形態
図1は、本発明の第1実施形態に係る核シェルター10の主要部を示す外観図である。核シェルター10は、基礎部14、側壁部20および天井壁部50等を有しており、基礎部14、側壁部20および天井壁部50に囲まれる防護空間12(図2参照)を内部に形成する。
【0035】
図1に示すように、核シェルター10は、コンクリートで形成された基礎部14の上に、後述するコンクリートの壁と金属の壁とを組み合わせた側壁部20および天井壁部50を設けることにより形成する。核シェルター10の基礎部14は、たとえば、核シェルター10の天井壁部50の頂点が地表面より下になるように、地面を掘削して適切な深さの穴を形成したのち、穴の底面にコンクリートの床面を形成することにより設けられる。核シェルター10としては、地上に設置することも考えられるが、地下に設けられる地下核シェルターであることが、環境の放射能レベルが上昇するような危機的な事態で発生する熱や爆風を避ける観点で好ましい。
【0036】
図2は、図1に示す核シェルター10の主要部分について、天井壁部50を非表示とした状態を表す斜視図である。なお、図1および図2では、側壁部20および天井壁部50におけるコンクリート部分(コンクリート側壁単位40およびコンクリート天井壁単位70等を含む)については、図示していない。
【0037】
図2に示すように、核シェルター10の側壁部20は、金属で構成される金属側壁単位30、30-1、30-2と、金属側壁単位30、30-1、30-2の内部に形成してある溝32aに充填してあり硬化したコンクリートで構成されるコンクリート側壁単位40(図2では不図示、図7および図10等参照)と、をそれぞれ複数有する。また、図3は、図2に示す核シェルター10の側壁部20等を上方から見た平面図である。図3でも、図2と同様に、天井壁部50を非表示とした状態を表してあり、また、側壁部20についてはコンクリート側壁単位40を図示していない。図6および図10を用いて後述するように、それぞれの金属側壁単位30、30-1、30-2は、長手方向が高さ方向である四角筒状の形状を有する。
【0038】
図2および図3に示すように、核シェルター10の側壁部20は、上方から見て略矩形(長方形)であり、防護空間12の周りを取り囲むように形成されている。図3に示すように、本実施形態に係る核シェルター10の側壁部20では、長い方の一辺で12の金属側壁単位30、30-1、30-2が配列してあり(図4参照)、短い方の一辺で7つの金属側壁単位30、30-1、30-2(図5参照)が配列してある。
【0039】
図6は、図1図2に示す側壁部20が有する金属側壁単位30の一つを示す概念図である。図6に示すように、金属側壁単位30は、溝金属材32と、蓋金属材38とで構成される。溝金属材32および蓋金属材38は、たとえば、所定の厚みの金属板材に対して、切削および折り曲げ等の機械加工を行うことにより形成する。溝金属材32や蓋金属材38の材質としては、特に限定されないが、鉄、アルミニウム、鉛、ステンレスなどの金属または合金を例示するこことができ、鉄又は鉄系合金が、放射線の遮蔽性能や耐久性の観点から好ましい。
【0040】
また、金属側壁単位30を構成する溝金属材32や蓋金属材38に用いる金属板材の厚さは、特に限定されず、たとえば厚さ1.0~10mm程度とすることが好ましく、厚さ1.2~4.5mmとすることがより好ましい。このような板厚とすることで、金属側壁単位30が好適な放射線の遮蔽性能を奏するとともに、施工中における生コンや、施工後におけるコンクリートや天井壁部50を支えるために適切な構造的強度を奏し、かつ、過度に重量やコストが上昇する問題を防止できる。
【0041】
図6に示すように、溝金属材32は、長手方向32nが核シェルター10の高さ方向であり、長手方向32nに直交する水平方向の断面においてコの字型またはC字型の断面形状を有する。なお、ここでコの字型の断面形状は溝形鋼の断面のように溝の開口側に返しが無い断面形状であり、C字型の断面形状はリップ溝形鋼の断面のように溝の開口側に返しがある断面形状である。溝金属材32には、核シェルター10の防護空間12が形成される内側または内側の反対側である外側のいずれか一方に開口する溝32aが形成してある。
【0042】
図3および図6に示す溝金属材32に形成される溝32aは外側に開口しており、このような溝金属材32を用いる核シェルター10は、溝金属材32と蓋金属材38の接合部分が外側を向き、側壁部20における内側を向く面をより美しく仕上げられるため好ましい。ただし、核シェルター10を設置する土地の境界が、側壁部20の外縁に対してあまり余裕がない場合などは、溝金属材に形成される溝が内側に開口する構成は、溝金属材に対する蓋金属材38の接合作業などを内側から行うことができるため好ましい。
【0043】
図6では、説明の便宜上、蓋金属材38が溝金属材32に対して離間した分解図の形で金属側壁単位30を表しているが、核シェルター10の蓋金属材38は、溝金属材32に形成されており内側へ開く溝32aの開口32bを塞ぐように、溝金属材32の内側に設けられる。蓋金属材38の概略形状は、溝32aの内側への開口形状とほぼ同じか、開口形状よりやや大きい平板板状であるが、蓋金属材38は、他部材に対する接合しろなどを形成するために、端部に折り曲げ部分を有してもよい。図6では図示していないが、蓋金属材38は、溝金属材32に対してねじ止めや溶接などによって固定・接合されている。蓋金属材38の溝金属材32に対する固定には、たとえばワンタッチビスなどを用いることができる。
【0044】
図6に示す金属側壁単位30において、蓋金属材38が塞ぐ溝32aの開口は、溝32aにおける内側を向く開口32bであり、金属側壁単位30および溝32aの端部上開口32cについては、蓋金属材38によって塞がれておらず上側へ開口している。一方、金属側壁単位30および溝32aの下側の開口については、溝32aにコンクリート側壁単位40(図10参照)を形成する際に、生コンが溝32aから流出するのを防ぐために、蓋金属材38や溝金属材32の延長部材または他部材によって塞がれていてもよい。ただし、設置フレーム16(図8参照)により金属側壁単位30の下側の開口からの生コンの流出がせき止められるような場合には、金属側壁単位30および溝32aの下側の開口も、端部上開口32cと同様に開口していてもよい。
【0045】
図10は、図2に示す核シェルター10の側壁部20が有する金属側壁単位30およびコンクリート側壁単位40の1つを示す断面図である。図10に示すように、コンクリート側壁単位40は、金属側壁単位30における溝32aに充填してあり硬化したコンクリートで構成される。コンクリート側壁単位40は、図1および図2に示すように側壁部20の金属側壁単位30を形成したのち、各金属側壁単位30の溝32a内に生コンを流し込むことにより、金属側壁単位30を型枠として形成される。
【0046】
図2および図3に示すように、側壁部20における複数の金属側壁単位30、30-1、30-2およびその内部に形成されるコンクリート側壁単位40(図10参照)は、防護空間12の側壁部20の少なくとも一部を構成するように、水平方向に連続して配列してある。金属側壁単位30、30-1、30-2は、溝32aが外側向く姿勢で配列してあり、金属側壁単位30、30-1、30-2の下端部は、図8に示す設置フレーム16にボルト等により固定される。図6に示す設置フレーム16は、金属側壁単位30、30-1、30-2の基礎部14に対する固定を仲介するフレームであり、たとえばH型鋼などを用いて構成される。
【0047】
図1図5に示す核シェルター10では、上方から見て防護空間12を囲む側壁部20の全体が、金属側壁単位30、30-1、30-2およびその内部に形成されるコンクリート側壁単位40により形成されている。この場合、天井壁部50または基礎部14には開閉式の扉部(不図示)が形成され、核シェルター10の防護空間12への人の出入りは、天井壁部50または基礎部14の扉を介して行われる。
【0048】
ただし、これとは異なり、側壁部20の一部を、図2等に示す金属側壁単位30、30-1、30-2やコンクリート側壁単位40に換えて金属等の扉部で構成し、核シェルター10における防護空間12への出入り口を、側壁部20に形成してもよい。ただし、防護空間12を取り囲む側壁部20は、少なくとも8つの金属側壁単位30、30-1、30-2およびコンクリート側壁単位40を有することが好ましく、2以上の金属側壁単位30、30-1、30-2およびコンクリート側壁単位40をそれぞれ有する4以上の辺により、防護空間12を囲むことが好ましい。このように、側壁部20の多くの部分、たとえば70%以上を金属側壁単位30、30-1、30-2およびコンクリート側壁単位40のハイブリッド構造とすることにより、核シェルター10は良好な防護能力と施工しやすさとを、高いレベルで両立できる。
【0049】
図6に示すように、金属側壁単位30の溝金属材32は、1つの溝材主壁35と、溝材主壁35の両端部から同じ金属側壁単位30の蓋金属材38へ延びて溝材主壁35と蓋金属材38とを接続する一対の溝材横壁33、34を有する。溝材主壁35は、溝金属材32において、同じ金属側壁単位30の蓋金属材38に平行である。また、溝材横壁33、34は、溝金属材32において、同じ金属側壁単位30の蓋金属材38および溝材主壁35に対して垂直である。
【0050】
図6に示すように、溝材横壁33には、横連通部33aが形成されている。図6では示されていないが、溝材横壁34にも、溝材横壁33と同じ高さに、同じ形状の横連通部34a(図7参照)が形成されている。溝材横壁33、34には、それぞれ3つの横連通部33a、34aが形成されているが、横連通部33a、34aの数は特に限定されない。また、図6に示す横連通部33aは、溝材横壁33に形成される略円形の貫通孔であるが、横連通部33a、34aの形状は図6に示すもののみには限定されない。
【0051】
図7は、側壁部20を構成する複数の金属側壁単位30およびコンクリート側壁単位40の構造を示す概念図である。図7に示すように、側壁部20に含まれる所定の金属側壁単位30に着目すると、溝金属材32の溝材横壁33が、右隣の金属側壁単位30における溝金属材32の溝材横壁34に対向する。また、その溝金属材32の溝材横壁34が、左隣の金属側壁単位30における溝金属材32の溝材横壁33に対向する。
【0052】
したがって、図7に示すように、溝材横壁33、34に形成される横連通部33a、34aは、隣接する複数の金属側壁単位30、30-1、30-2における溝金属材32の溝32a同士を連通させる。さらに、隣接する複数のコンクリート側壁単位40は、横連通部33a、34aを介して互いに繋がっている。なお、側壁部20が有する金属側壁単位30、30-1、30-2のうち、各辺の端部に位置する金属側壁単位30-1、30-2(図2参照)は、溝材横壁33、34のいずれか一方のみに横連通部33a、34aが形成されており、他方には横連通部33a、34aが形成されていない点のみ、これらの間に位置する金属側壁単位30とは異なるが、それ以外の形状は、図6で説明した金属側壁単位30と同様である。
【0053】
図6に示すように、側壁部20は、金属側壁単位30およびコンクリート側壁単位40を水平方向に連結する金属の横棒46を有する。横棒46としては、たとえば直径6~20mm程度の異形丸棒など用いることができる。ただし、横棒46は鉄などの金属の棒であればよく、横棒46の詳細形状については限定されない。
【0054】
図6に示すように、横棒46は水平方向に延びており、金属側壁単位30の溝材横壁33、34に形成される横連通部33a、34aを挿通する。図7に示すように、横棒46は、横連通部33a、34aを介して隣接する複数の金属側壁単位における溝金属材32の溝32a同士および隣接する複数のコンクリート側壁単位40同士を繋いでいる。図7に示すように隣接する金属側壁単位30およびコンクリート側壁単位40が連結されていることにより、核シェルター10の側壁部20は、非常に良好な構造的強度を発揮する。
【0055】
また、図6および図10に示すように、横連通部33a、34aの連通部底部には底部切り欠き33aaが形成されており、底部切り欠き33aaに横棒46が配置してある。横連通部33a、34aに底部切り欠き33aaが形成されていることにより、横棒46を容易に定位置に配置することができる。
【0056】
また、図7および図10に示すように、側壁部20は、溝金属材32の溝32aに配置されコンクリート側壁単位40に埋め込まれるワイヤーメッシュ47を有する。ワイヤーメッシュ47は、横棒46に対して、針金等で連結・固定してある。ワイヤーメッシュ57の材質としては、たとえば横棒46と同様に、鉄等の金属が挙げられる。このような側壁部20は、横棒46に固定されて適切な位置に配置されるワイヤーメッシュ47がコンクリート側壁単位40の強度を高め、非常に良好な構造的強度を発揮する。
【0057】
また、図10に示すように、金属側壁単位30は、同じ金属側壁単位30における溝材主壁35と蓋金属材38とを、同じ金属側壁単位30における一対の溝材横壁33、34の間で接続する接続部37を有する。接続部37は、ネジ溝付棒37aと、ネジ溝付棒37aが螺合する複数のナット37b等を有する。ネジ溝付棒37aの一端は、溝材主壁35における外側(蓋金属材38側)を向く面である主壁第2面35bに固定されるナット37bに螺合しており、ネジ溝付棒37aの他端近傍に螺合する一対のナット37bは、蓋金属材38を挟むことで蓋金属材38をネジ溝付棒37aに接続および固定する。このようなネジ溝付棒37aとナット37bとを有する接続部37は、溝材主壁35と蓋金属材38とを接続し、溝32aに充填される硬化前または硬化中のコンクリートから受ける力により、蓋金属材38と溝材主壁35とが離間する方向に変形する問題を防止できる。
【0058】
また、図10に示すように、溝材主壁35における内側を向く面である主壁第1面35aには、溝材主壁35より面積の狭い板材36が溶接されている。このような板材36が溝材主壁35に溶接されていることにより、溝材主壁35自体に穴を形成することなく、パネルや配線などを、溝材主壁35の内側に容易に設置することが可能である。
【0059】
図1に示すように、天井壁部50は、金属で構成されており上方に開く上溝62aが形成してある天井溝金属材62、62-1、62-2と、天井溝金属材62における上溝62aに充填してあり硬化したコンクリートで構成されるコンクリート天井壁単位70(図1では不図示、図9参照)とを、それぞれ複数有する。天井溝金属材62、62-1、62-2は、長手方向62nが水平方向であり、長手方向に直交する断面においてコの字型またはC字型の断面形状を有する。
【0060】
図9は、図1に示す核シェルター10を上方から見た平面図による天井壁部50の概念図である。図9では、中央の4つの天井溝金属材62の上溝62aについてのみ、上溝62内にコンクリート天井壁単位70が充填されている様子を示しているが、実際の核シェルター10の天井壁部50では、すべての天井溝金属材62、62-1、62-2にコンクリート天井壁単位70が配置されている。
【0061】
すなわち、図1および図9に示すように、核シェルター10では、複数の天井溝金属材62、62-1、62-2およびコンクリート天井壁単位70は、防護空間12(図2参照)の天井壁部50の少なくとも一部を構成するように水平方向に連続して配列してある。
【0062】
天井溝金属材62、62-1、62-2の概略形状は、図6に示す溝金属材32と同様である。すなわち、図1および図9に示す天井溝金属材62は、高さ方向が法線方向となる天井材主壁65と、水平方向が法線方向となる一対の天井材横壁63、64とを有する。図1に示すように、天井材主壁65には、金属側壁単位30の溝金属材32の溝32a(図2参照)に通じる縦連通部65a、65bが形成されている。
【0063】
縦連通部65a、65bは、天井溝金属材62、62-1、62-2の天井材主壁65の内、下方の金属側壁単位30の溝32aに対向する位置に形成されている。天井壁部50の両端部に配置される天井溝金属材62-1、62-2には、複数の縦連通部65a、65bが形成されており、天井壁部50の両端部以外に配置される天井溝金属材62には、一つの縦連通部65aが形成されている。
【0064】
このような縦連通部65a、65bが天井溝金属材62、62-1、62-2に形成されていることにより、コンクリート側壁単位40(図7参照)を、天井溝金属材62、62-1、62-2を設けた後に形成することができる。すなわち、各シェルター10における金属板部分である金属側壁単位30および天井溝金属材62を組み立てた後に、コンクリート側壁単位40とコンクリート天井壁単位70をまとめて形成することにより、核シェルター10の施工を簡略化できる。
【0065】
また、天井溝金属材62、62-1、62-2から金属側壁単位30、30-1、30-2に生コンを流し込んで形成することなどにより、図9に示すコンクリート天井壁単位70は、縦連通部65a、65bを介して、コンクリート側壁単位40(図7図10参照)に繋がっている。このように、天井壁部50のコンクリート天井壁単位70とコンクリート側壁単位40とが繋がっていることにより、核シェルター10は、側壁部20と天井壁部50の金属部分とコンクリート部分とが一体に連結し、非常に高い構造的強度を奏する。
【0066】
図1に示すように、天井溝金属材62の天井材横壁63、64には、隣接する複数の天井溝金属材62、62-1、62-2の上溝62a同士を連通させる天井横連通部63a、64aが形成されている。天井溝金属材62、62-1、62-2に形成される天井横連通部63a、64aは、図6等に示す溝材横壁33、34に形成される横連通部33a、34aと同様の形状である。図9に示す隣接する複数のコンクリート天井壁単位70同士は、図1に示す天井横連通部63a、64aを介して繋がっている。また、図9では図示していないが、天井壁部50は、図7に示す側壁部20が有する横棒46と同様に、天井横連通部63a、64aを介して隣接する複数の天井溝金属材62の上溝62a同士および隣接するコンクリート天井壁単位70同士を繋ぐ天井横棒を有してもよい。
【0067】
なお、図1では図示していないが、天井溝金属材62における上溝62aの端部横開口62cは、天井溝金属材62の天井材横壁63、64若しくは天井材主壁65が折り返されることにより、または、端部横開口62cに他の板材等が取り付けられることにより塞がれている。これにより、生コンを上溝62aに流し込んで硬化させ、コンクリート天井壁単位70を容易に形成できる。一方、天井溝金属材62における上溝62aの上方向の開口は、図6に示す溝32aの開口32bとは異なり、蓋金属材38のような板材で塞がれてはいない。ただし、これとは異なり、放射線の防護力向上等などの目的で、天井溝金属材62における上溝62aを塞ぐ蓋部材が設けられていてもよい。
【0068】
図1図10を用いて説明した核シェルター10は、金属側壁単位30とコンクリート側壁単位40とによるハイブリッドの壁により放射線等に対して良好な防護能力を奏する。また、金属側壁単位30は、コンクリートを施工する際の型枠の役目も果たすため、核シェルター10は施工がしやすい。また、金属側壁単位30がコの字型またはC字型の断面形状を有するため壁の構造強度が高い。さらに、金属側壁単位30およびコンクリート側壁単位40の配列数を調整することにより、核シェルター10の大きさを、シェルターを設置する土地の広さなどに合わせて容易にアレンジできる。
【0069】
また、核シェルター10は、天井壁部50についても、天井溝金属材62とコンクリート天井壁単位70とによるハイブリッドの壁により、放射線等に対して良好な防護能力を奏する。また、天井溝金属材62の上溝62と金属側壁単位30の溝32とは互いに繋がっており、天井溝金属材62および金属側壁単位30がコンクリートを施工する際の型枠の役目を果たすため、核シェルターはコンクリートの壁を容易に形成できる。天井溝金属材62がコの字型またはC字型の断面形状を有するため天井壁部50の構造強度が高い。また、天井壁部50に用いる天井溝金属材62は、側壁部20に用いる溝金属材32と略共通の形状とすることも可能であり、パーツの製造を合理化することができる。
【0070】
上述した実施形態に係る核シェルター10は、本発明の一実施形態にすぎず、他の多くの実施形態や変形例が、本発明の技術的範囲に含まれることは言うまでもない。たとえば、側壁部20は、複数の金属側壁単位30やコンクリート側壁単位40を上下に連結して形成することも可能である。図11は、第2実施形態に係る核シェルター110を示す外観図である。
【0071】
核シェルター110の金属側壁単位130は、高さ方向の長さが第1の長さである第1金属側壁単位130.1と、高さ方向の長さが第1の長さとは異なる第2の長さである第2金属側壁単位130.2とを、高さ方向に連結して構成してある。また、水平方向に隣接する2つの金属側壁単位130の一方では、第1金属側壁単位130.1が第2金属側壁単位130.2より上に位置し、水平方向に隣接する2つの金属側壁単位130の他方では、第1金属側壁単位130.1が第2金属側壁単位130.2より下に位置する。第1金属側壁単位130.1の内部に形成される第1コンクリート側壁単位および第2金属側壁単位130.2の内部に形成される第2コンクリート側壁単位についても、第1金属側壁単位130.1と第2金属側壁単位の配置関係と同様の配置関係となっている。
【0072】
このような核シェルター110では、第1金属側壁単位130.1および第1コンクリート側壁単位と、第2金属側壁単位130.2および第2コンクリート側壁単位とを、上下の位置を変えて互い違いに配置することにより、第1単位と第2単位との継ぎ目が水平方向に連続することを防止し、側壁部120の強度を適切に保ちつつ、防護空間の高さを確保することができる。なお、核シェルター110の天井壁部150についても、長さの異なる2種類の天井溝金属材162.1および天井溝金属材162.2やコンクリート天井壁単位を互い違いに配列することができ、天井壁部150の強度向上を図ることができる。
【0073】
また、図1および図11に示す核シェルター10、110において、側壁部20、120の外面および内面、並びに天井壁部50、150の内面および外面の一部または全体を、樹脂などで被覆してもよい。側壁部20、120や天井壁部50、150を被覆するライニング材またはコーティング材としては特に限定されないが、たとえば、ポリウレア、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニルなどが挙げられ、耐久性および施工の容易さなどから、ポリウレアが特に好ましい。側壁部20、120や天井壁部50、150を樹脂で被覆することで、隣接する金属側壁単位および天井溝金属材の隙間を介した防護空間への浸水等を、好適に防止できる。
【0074】
また、核シェルター10に用いるコンクリート側壁単位40やコンクリート天井壁単位70、基礎部14等を構成するコンクリートは、無機質セメント結晶増殖材(たとえばザイペックス(登録商標))などのコンクリート改質材を含むものであることも好ましい。無機質セメント結晶増殖材を含むコンクリートは、水などの劣化因子の浸入を遮断し、側壁部20、120や天井壁部50、150の耐久性能を向上させることができる。
【符号の説明】
【0075】
10、110…核シェルター
12…防護空間
14…基礎部
16…設置フレーム
20、120…側壁部
30、30-1、30-2、130、130.1、130.2…金属側壁単位
32…溝金属材
32n…長手方向
32a…溝
32b…開口
32c…端部上開口
33…溝材横壁
33a…横連通部
33aa…底部切り欠き
34…溝材横壁
34a…横連通部
35…溝材主壁
35a…主壁第1側面
36…板材
37…接続部
37a…ネジ溝付棒
37b…ナット
38…蓋金属材
40…コンクリート側壁単位
46…横棒
47…ワイヤーメッシュ
50、150…天井壁部
62、62-1、62-1…天井溝金属材
62n…長手方向
62a…上溝
62c…端部横開口
63、64…天井材横壁
63a、64a…天井横連通部
65…天井材主壁
65a、65b…縦連通部
70…コンクリート天井壁単位
【要約】
【課題】金属壁とコンクリート壁とを組み合わせて良好な防護能力を奏するとともに、施工のしやすい核シェルター。
【解決手段】基礎部、側壁部および天井壁部に囲まれる防護空間を形成する核シェルターであって、前記側壁部は、長手方向が高さ方向であり、長手方向に直交する断面においてコの字型またはC字型の断面形状を有し、前記防護空間が形成される内側又は前記内側の反対側である外側のいずれか一方に開口する溝が形成してある溝金属材と、前記溝の開口を塞ぐように設けられる蓋金属材と、で構成される金属側壁単位と、前記金属側壁単位における前記溝に充填してあり硬化したコンクリートで構成されるコンクリート側壁単位と、をそれぞれ複数有し、複数の前記金属側壁単位および前記コンクリート側壁単位は、前記防護空間の前記側壁部の少なくとも一部を構成するように水平方向に連続して配列してある核シェルター。
【選択図】図1

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11