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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】筒状構造物の解体方法及び解体システム
(51)【国際特許分類】
   E04G 23/08 20060101AFI20240312BHJP
【FI】
E04G23/08 D
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020035794
(22)【出願日】2020-03-03
(65)【公開番号】P2021139128
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2023-02-17
(73)【特許権者】
【識別番号】509328928
【氏名又は名称】株式会社日立プラントコンストラクション
(73)【特許権者】
【識別番号】594154978
【氏名又は名称】ベステラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】木尾 賢治
(72)【発明者】
【氏名】平山 淳
(72)【発明者】
【氏名】吉野 佳秀
(72)【発明者】
【氏名】関谷 竜一
【審査官】櫻井 茂樹
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-290566(JP,A)
【文献】特開2007-177419(JP,A)
【文献】特開2006-090068(JP,A)
【文献】特開2009-001983(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 23/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状構造物を上部から部分的に切断して行くことで該筒状構造物を解体する筒状構造物の解体方法において、
前記筒状構造物を支持する支持部を備えるアーム手段と、前記筒状構造物を切断可能な切断手段と、を備える重機をクレーンにて吊り下げ、
前記切断作業は、前記吊下げ状態で、且つ前記アーム手段の支持部で前記筒状構造物を支持しつつ行われ、
前記アーム手段の支持部は、電磁力を発生する電磁力発生手段であり、前記筒状構造物の支持は、前記電磁力により支持部が筒状構造物を吸着することで行われることを特徴とする筒状構造物の解体方法。
【請求項2】
前記筒状構造物の切断は、
前記筒状構造物の上部の所定高さに所定間隔で複数の穴を形成し、該形成された複数の穴の間を切断することで行われることを特徴とする請求項に記載の筒状構造物の解体方法。
【請求項3】
前記アーム手段の支持部には、前記穴形成作業及び切断作業時に生じる切り屑を受けて収容する収納部が設けられたことを特徴とする請求項1又は2に記載の筒状構造物の解体方法。
【請求項4】
前記切断手段には、前記切断作業時に生じる切り屑を吸着する電磁石が、切断刃の近傍に設けられたことを特徴とする請求項1~の何れか1項に記載の筒状構造物の解体方法。
【請求項5】
前記請求項1~の何れか1項に記載の筒状構造物の解体方法を実施するための筒状構造物の解体システムにおいて、
前記筒状構造物を支持する支持部を備えるアーム手段と、前記筒状構造物を切断可能な切断手段と、を備えた重機と、
該重機を吊り下げ可能なクレーンと、
を備えたことを特徴とする筒状構造物の解体システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、煙突などの筒状構造物の解体方法及び解体システムに関する。
【背景技術】
【0002】
老朽化した筒状構造物、例えば煙突を解体する方法として、煙突の外側周囲に仮設足場を設置し、この仮設足場を利用して煙突筒身を上端から順次輪切り状に切断し、各輪切り状に切断した部分を大型のクレーンを用いて地上に吊り降ろす方法が知られている(例えば、特許文献1、2等)。
【0003】
すなわち、解体される煙突は、煙突の外側周囲に設置された仮設足場上で作業員により予め設定された水平切断線に沿って輪切り状に切断され、この切断された部分が作業員よって吊り上げクレーンに、例えばワイヤによって玉掛けされ、切断された部分が地上に降ろされる。このような工程を繰り返すことによって煙突が解体される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第2948433号公報
【文献】特許第3596615号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の解体方法は、筒状構造物を上部から輪切り状に切断するために、作業員は筒状構造物の外側周囲に設置された仮設足場上で切断作業を行う。仮設足場は、特許文献1ではクレーンで吊り上げられた円環状の足場であり、特許文献2ではクレーンにより昇降可能とされたステージ状の足場である。この様に、特許文献1、2の何れも解体作業は仮設足場の設置作業を伴い、解体作業のための準備作業に長時間を要していた。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、筒状構造物を解体するための足場を設置することなく、迅速に行うことのできる筒状構造物の解体方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の筒状構造物の解体方法は、
筒状構造物を上部から部分的に切断して行くことで該筒状構造物を解体する筒状構造物の解体方法において、
前記筒状構造物を支持する支持部を備えるアーム手段と、前記筒状構造物を切断可能な切断手段と、を備える重機をクレーンにて吊り下げ、
前記切断作業は、前記吊下げ状態で、且つ前記アーム手段の支持部で前記筒状構造物を支持しつつ行われ、
前記アーム手段の支持部は、電磁力を発生する電磁力発生手段であり、前記筒状構造物の支持は、前記電磁力により支持部が筒状構造物を吸着することで行われることを特徴とする。
【0008】
この方法により、クレーンに吊り下げられた重機に備えられたアーム手段にて、筒状構造物を支持しつつ切断手段による上部からの切断を行うことができる。すなわち、クレーンに吊り下げられた状態であっても、アーム手段による筒状構造物の支持によって、重機を支えつつ切断作業を行うことが可能となる。したがって、クレーンに吊り下げられた重機の安定化を図り、揺れなどを抑制しつつ切断作業を行うことができる。これにより、解体作業員の作業のための仮設足場を設置することなく、迅速な解体作業を行うことが可能である。
【0009】
また、重機は遠隔操作可能なものを用いることで、操作は地上から行うことができ、作業員の高所での危険な作業も回避することができる。
【0011】
更に、この方法により、筒状構造物を支持する支持部を容易に構成することができ、筒状構造物を保持する吸着力も電磁力発生手段のコイルに流す電流を変えることで容易に調整することができる。したがって、適切な吸着力により筒状構造物を支持しながら安全に切断作業を行うことが可能であり、また切断作業中に発生する筒状構造物の切り屑をこの電磁力発生手段が吸着し、切り屑が飛散することも防止することができる。
【0014】
請求項に記載の筒状構造物の解体方法は、請求項に記載の筒状構造物の解体方法において、
前記筒状構造物の切断は、前記筒状構造物の上部の所定高さに所定間隔で複数の穴を形成し、該形成された複数の穴の間を切断することで行われることを特徴とする。
【0015】
この方法によれば、予め複数の穴が周方向に形成されているので、切断領域が減少し且つ穴部分から切断を始めることができ、切断動作がより容易なものとなる。
【0016】
請求項に記載の筒状構造物の解体方法は、請求項1又は2に記載の筒状構造物の解体方法において、
前記アーム手段の支持部には、前記穴形成作業及び切断作業時に生じる切り屑を受けて収容する収納部が設けられたことを特徴とする。
【0017】
この方法により、切断作業中に発生する筒状構造物の切り屑が収納部に収容され、切り屑が飛散して人体に影響を及ぼすことが防止される。支持部として電磁力発生手段を用いている場合でも、電磁力発生手段で吸着できなかった切り屑を収納部に収容することができ、より確実に切り屑を収容することができる。この作用は、原子力発電所などに設置された筒状構造物の解体時には重要な作用となる。
【0018】
請求項に記載の筒状構造物の解体方法は、請求項1~の何れか1項に記載の筒状構造物の解体方法において、
前記切断手段には、前記切断作業時に生じる切り屑を吸着する電磁石が、切断刃の近傍に設けられたことを特徴とする。
【0019】
この方法により、切断作業中に発生する筒状構造物の切り屑を電磁石が吸着し、切り屑の飛散をより確実に防止することができる。
【0020】
上記目的を達成するため、請求項に記載の筒状構造物の解体システムは、
前記請求項1~の何れか1項に記載の筒状構造物の解体方法を実施するための筒状構造物の解体システムにおいて、
前記筒状構造物を支持する支持部を備えるアーム手段と、前記筒状構造物を切断可能な切断手段と、を備えた重機と、該重機を吊り下げ可能なクレーンと、を備えたことを特徴とする。
【0021】
この構成により、クレーンに吊り下げられた重機に備えられたアーム手段にて、筒状構造物を支持しつつ切断手段による上部からの切断を行うことができる。すなわち、クレーンに吊り下げられた状態であっても、アーム手段による筒状構造物の支持によって、重機を支えつつ切断作業を行うことが可能となる。したがって、クレーンに吊り下げられた重機の安定化を図り、揺れなどを抑制しつつ切断作業を行うことができる。これにより、解体作業員の作業のための仮設足場を設置することなく、迅速な解体作業を行うことが可能である。
【0022】
また、重機は遠隔操作可能なものを用いることで、操作は地上から行うことができ、作業員の高所での危険な作業も回避することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の筒状構造物の解体方法及び解体システムによれば、クレーンに吊り下げられた重機に設けられたアーム手段と切断手段とにより、筒状構造物を支持しつつ重機を安定させた状態で切断することができ、仮設足場の設置作業を行うことなく、迅速な解体作業が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の筒状構造物の解体方法の第1の実施の形態に係り、重機を吊り下げたクレーンを排気筒の近傍に配置している様子の説明図である。
図2】本発明の筒状構造物の解体方法の第1の実施の形態に係り、切断手段により排気筒に穴を開けている様子の説明図である。
図3】本発明の筒状構造物の解体方法の第1の実施の形態に係り、切断手段により排気筒を切断している様子の説明図である。
図4】本発明の筒状構造物の解体方法の第1の実施の形態に係り、切断手段により排気筒を切断している様子の説明図である。
図5】本発明の筒状構造物の解体方法の第1の実施の形態に係り、輪切り状に切断した排気筒の一部を吊り降ろしている様子の説明図である。
図6】本発明の筒状構造物の解体方法の第2の実施の形態に係り、排気筒を把持手段により支持している様子を示す図である。
図7】本発明の筒状構造物の解体方法の第3の実施の形態に係り、切断手段であるドリルに電磁石を装着して、排気筒に穴を開けている様子を示す図である。
図8図7のドリルに装着した電磁石の部分の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の筒状構造物の解体方法の第1の実施の形態を以下、図面を用いて詳述する。
【0026】
本実施の形態では、筒状構造物は、原子力発電所のスチール製の排気筒10であり、大きさは、高さ約120m、上部の直径約3.2m、基部の直径約4m、上部の厚さ約4.5mm、基部の厚さ約16mmである。この排気筒は、原子力炉が事故により水蒸気爆発を起こしてベント(排気)が行われたものであり、放射線量が高くて作業員は近づくことができない状況にある。また、排気筒10は鉄塔12で支持された鉄塔支持型の筒状構造物であり、排気筒10を切断する作業を行う前に鉄塔12の一部は切断等により取り除かれる。
【0027】
この鉄塔12を切断する作業は、例えば、クレーンの先端にニブラー等の切断手段を搭載し、クレーンの操作室内から切断作業を操作する。切断した鉄塔12の一部はそのまま落下させるか、又はクレーンで吊り降ろす様にしても良い。また、本実施の形態では、排気筒10は上端から輪切り状に順次切断する解体方法を示しているが、輪切り状に限らず、如何なる形状でも部分的に切断することができれば足りる。同じく切断した部位はそのまま落下させても、吊下ろしても良い。
【0028】
図1は、排気筒10の近傍に、重機18が設置されている。この重機18には、排気筒10を支持するためのアーム手段19と排気筒10を切断するための切断手段26が搭載されている。重機18は、大型クレーン14のアームの先端のフックからワイヤ30により吊り下げられたゴンドラ16に載置されており、フックとゴンドラの間には旋回防止装置17が配置されている。この旋回制御装置17により、支持手段24による排気筒10の支持前の状況で、クレーン14が動いている時などの旋回を抑制し、さらに、解体作業中においても、支持部24の支持をサポートしてゴンドラ16が不必要に旋回しないようにしている。
【0029】
ゴンドラ16の高さ位置、すなわち重機18の高さ位置は、ワイヤ30の長さやクレーン14のアームの先端の高さ位置を変えることにより任意に設定することが可能である。
【0030】
ゴンドラ16に載置された重機18は、キャタピラを有する自走型のものであり、ゴンドラ16に搬送した後、動かないようにゴンドラ16に固定されている。アーム手段19は、重機18から突出するアーム22と支持部24とから構成され、切断手段24は重機18から突出するアーム20の先端部に取り付けられている。重機18に備えられたアーム手段19と切断手段26は、クレーン14の操作室から遠隔で操作することができるように構成されている。また、クレーン14の操作室は放射線を遮蔽するために、例えば鉛等で覆われており、操作室には重機18に取り付けられたカメラ(図示していない)により、排気筒10の作業状況が把握できるようにモニタ(図示していない)が設置されている。なお、筒状構造物の解体システムは、上述の筒状構造物を支持する支持部24を備えるアーム手段19と、筒状構造物を切断可能な切断手段26と、を備えた重機18と、重機18を吊り下げ可能なクレーン14と、を有して構成される。
【0031】
支持部24は、本実施の形態では電磁力発生手段である電磁石25であり、電磁石25のコイルに流す電流によりスチール製の排気筒10に吸着する力を調整することができる。電磁石25の形状は円筒形の排気筒に沿うように上面視で円弧状、平面視で四角形である。また、この電磁石25により、アーム手段19の上部に位置する切断手段26によって排気筒10を切断している間に発生する切り屑(図示していない)を吸着することができる。排気筒10は放射線を浴びているので切り屑が飛散すると人体に害を及ぼしかねないが、この電磁石25によりその飛散が防止される。
【0032】
切断手段26は、本実施の形態では、ドリル27とニブラー28であり、詳細は後述するが、先ずドリル27により排気筒10の上部の所定高さに所定間隔で複数の穴32を開ける。その後、形成した穴32と穴32との間をニブラー28により切断する。
【0033】
図2は、電磁石25により排気筒10を支持しつつ、ドリル27で排気筒10の上部の所定高さに所定間隔で穴32を開けている様子を示す。電磁石25が排気筒10に吸着することにより、吊り下げられている重機18が動かないように支持固定されるので、ドリル27で排気筒10に穴32を開ける作業が確実に行える。この穴32の直径は約60mmであり、ドリル27の先端に取り付けられたホールソー28により開口される。前述したように、アーム手段19やドリル27の操作は大型クレーン24の操作室内から無線で行う、すなわち遠隔操作ができるように構成されている。
【0034】
また、電磁石25やドリル27の位置は、ゴンドラ16を吊り下げているワイヤー30の長さや重機18から突出するアーム20、22の長さや角度等を調整することにより決められるが、これらの操作も大型クレーン14の操作室内から無線で行うことができるように構成されている。前述したように、重機18には、カメラが装備されており、操縦室のモニタに画像が写し出され、電磁石25の吸着状態やドリル27の位置を確認することが可能に構成されている。
【0035】
支持部24である電磁石25の下部領域には、切り屑を集める収納部36が取り付けられている。この収納部36は、例えばプラスチック製であり、容易に変形できるものである。この収納部36により、排気筒10をドリル27で穴を開けている最中に、飛散した切り屑が電磁石25に吸着されずに落下した場合に収納部36に収容される。また、電磁石25に吸着した切り屑は、コイルに流れる電流を切ることにより収納部36に落下して収容することができる。
【0036】
切り屑の飛散を更に防止するために、後述するようにドリルに電磁石を装着しても良い。詳細は図7図8で述べる。
【0037】
図3は、排気筒10に形成した穴32と穴32との間をニブラー28で切断している様子を示す。このニブラー28は、排気筒10にドリル27により穴32を形成した後、一旦ゴンドラ16を排気筒10から離れた地上に降ろし、アーム20の先端のドリル27をニブラー28と交換することにより作動可能となる。若しくはニブラー28を搭載した重機18に入れ替えても良い。
【0038】
上述のニブラー28による排気筒10の切断も遠隔で操作することができる。ニブラー28により発生する切り屑は、ドリル27による切り屑と同様に、支持部24である電磁石25に吸着されるか、電磁石25の下部の収納部36に収容される。なお、排気筒10の上部にある2つの穴32、32は、排気筒10を輪切り状に切断した部分をクレーンで吊り上げて地上に降ろすため、支持バーを通すための穴であり、この穴も前述したドリルで形成することができる。
【0039】
この切断方法により、排気筒10には複数の穴32が周方向に形成されているので、切断領域が減少し且つ穴32部分から切断を始めることができ、切断動作がより容易なものとなる。また、切断の作業時間も短縮できる。
【0040】
図4は、図3と同様に、ニブラー28による切断作業の様子を示す図である。図4では、輪切り状に切断した排気筒10の一部をクレーンで吊り上げるために、上部の穴32と穴32の間に支持バー38が通され、ワイヤ30によりクレーンのフック40に玉掛けされている。支持バー38は、穴32から抜け出ないようにストッパ(図示していない)が設置されている。このように輪切り状に切断した部分を吊り上げる準備が完了した後に、最後の穴32と穴32の間をニブラー28で切断する。なお、輪切り状に切断した排気筒10の一部をクレーンで吊り上げるために図4では2つの穴を形成し、そこに支持バー38を通したが、クレーンのフック40で吊り上げるために、比較的大きな穴を一箇所に形成し、この穴にフック40を通して吊り上げても良い。
【0041】
本実施の形態では、以上で説明したように、形成した穴32と穴32との間をニブラー28で切断しているが、場合によっては、穴のみを連続で形成して排気筒10を輪切り状に切断しても良い。
【0042】
図5は、クレーン15によりフックに吊り上げられた、輪切り状に切断された排気筒10の一部を吊り降ろしている様子を示す。アーム手段19の支持部24と切断手段26は、続く排気筒10の切断作業のために鉄塔12の一部が取り除かれた後、大型のクレーン14により次の切断箇所に位置決めされる。
【0043】
上述した切断作業を、排気筒10の基部まで繰り返し行うことにより、排気筒10の解体作業は終了する。集められた排気筒、鉄塔の廃材は、通常の手段により集められ、必要に応じて外部に搬出される。廃材の放射線量が高い場合は、必要に応じて除染が行われる。
【0044】
本実施の形態の筒状構造物の解体方法によれば、大型のクレーン14に吊り下げられた重機18に設けられたアーム手段19と切断手段26により、作業員の解体作業のための仮設足場を設置する必要がなく、迅速な解体作業が可能となる。また、重機は遠隔操作可能なものを用いることで、操作は地上から行うことができ、作業員の高所での危険な作業も回避することができる。さらに、線量が高い排気筒であっても安全に解体作業を行うことができる。
【0045】
図6は、本発明の筒状構造物の解体方法の第2の実施の形態に係り、支持部24を電磁石25の替わりに把持手段であるプライヤー44を用いた場合について示している。このプライヤー44は、排気筒10を挟み込んで抑えることができる様に構成されている。プライヤー44の開閉動作は、大型クレーン14の操作室内から行うことができる。切断手段26(図示していない)は、このプライヤー44の上部に位置している。切り屑を収納する収納部は図示していないが、必要に応じてプライヤー44の下部に取り付けることができる。プライヤー44を用いることで、電磁石25による保持手段24に比較して、コイルに電流を流す機構が要らないため、ゴンドラ16に載置する重機18が軽量化できる。また、筒状構造物が電磁石に吸着しない非磁性体である場合でも、すなわち筒状構造物が非磁性体であるか否かに関わらず支持することが可能であることから、種々の筒状構造物の解体に使用することができる。
【0046】
図7は、本発明の筒状構造物の解体方法の第3の実施の形態に係り、切断手段26であるドリル27に電磁石46を装着した様子を示す。図8は、排気筒10に接触するドリル27の先端部分の断面図である。ドリル27の切断刃の近傍には、円環状の電磁石46が設けられ、この電磁石46を保持するために、円筒状の電磁石保持部48が設けられている。本実施の形態では、ドリル27は矢印Aで示した方向に移動可能である。また、電磁石保持部48と排気筒10の接触を和らげるためゴム製の緩衝部材50が設けられている。
【0047】
ドリル27の刃先の周りに装着された電磁石46により、ドリル27による切り屑は電磁石46に吸着され飛散することが防止される。また、必要に応じて、ドリル27の下部位置に収納部(図示していない)を設置しても良い。この収納部により電磁石46で吸着できなかった切り屑をこの収納部で収容することができる。このようにドリル27に電磁石46を装着することで、より確実に切り屑の飛散が防止され、放射線を浴びた排気筒10の解体作業を安全に行うことができる。
【0048】
なお、本件発明は、上記実施の形態で述べた構成に限定されるものではなく、本件発明の要旨の範囲内で種々変更が可能である。例えば、本実施の形態では、切断手段はドリルとニブラーを例示したが、これに拘らず例えばワイヤーソー又はワイヤーブレードを使用しても良い。また、解体方法については、排気筒の上部から輪切り状に切断して行く方法を示したが、これに限定されず、破断片をそのまま落下させても良い。
【符号の説明】
【0049】
10 排気筒
12 鉄塔
14、15 大型クレーン
16 ゴンドラ
17 旋回制御装置
18 重機
19 アーム手段
20、22 アーム
24 支持部
25 電磁石(電磁力発生手段)
26 切断手段
27 ドリル(切断手段)
28 ホールソー(切断手段)
29 ニブラー(切断手段)
30 ワイヤ
32 開口穴
36 収納部
38 支持バー
40 フック
42 輪切り状の排気筒の一部
44 プライヤー(把持手段)
46 電磁石
48 電磁石保持部材
50 ゴム部材(緩衝部材)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8