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特許7452822一段階共集合によるナノコンポジット塗装系
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】一段階共集合によるナノコンポジット塗装系
(51)【国際特許分類】
   C09D 129/04 20060101AFI20240312BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20240312BHJP
   B32B 9/00 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
C09D129/04
C09D7/61
B32B9/00 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022517187
(86)(22)【出願日】2020-10-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-16
(86)【国際出願番号】 US2020056105
(87)【国際公開番号】W WO2021080876
(87)【国際公開日】2021-04-29
【審査請求日】2022-03-15
(31)【優先権主張番号】62/923,890
(32)【優先日】2019-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520057173
【氏名又は名称】ザ ユニバーシティ オブ コネチカット
(73)【特許権者】
【識別番号】518156602
【氏名又は名称】カネカ アメリカズ ホールディング,インコーポレイティド
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】サン,ルイ
(72)【発明者】
【氏名】ラチャンス,アナ,マリー
(72)【発明者】
【氏名】ジョウ,ティアンレイ
(72)【発明者】
【氏名】リム,ヤング
【審査官】井上 明子
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-033909(JP,A)
【文献】特開2017-210515(JP,A)
【文献】特開2018-172149(JP,A)
【文献】国際公開第2015/156396(WO,A1)
【文献】特開2012-149114(JP,A)
【文献】特開2011-132501(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1622508(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 129/04
C09D 7/61
B32B 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノコンポジットコーティング組成物であって、
結合剤と、
酸化グラフェンと、
少なくとも1つのモンモリロナイトフィラーとを有するものであり、
前記結合剤はポリビニルアルコールであり、
前記酸化グラフェンは、前記モンモリロナイトフィラーよりもアスペクト比が高い、ナノコンポジットコーティング組成物。
【請求項2】
請求項1に記載のコーティングにおいて、前記組成物は架橋性であるコーティング。
【請求項3】
請求項1に記載のコーティングにおいて、前記結合剤は1~99重量%の量で存在し、前記酸化グラフェンは0.001~30重量%の量で存在し、モンモリロナイトは1~80重量%の量で存在するものであるコーティング。
【請求項4】
請求項1に記載のコーティングにおいて、前記組成物は60~99.99重量%の量で存在する溶媒を更に有するものであるコーティング。
【請求項5】
請求項1に記載の前記コーティング組成物によりコーティングされた物品。
【請求項6】
請求項5に記載の物品において、前記物品は25gm/m/日未満の水蒸気透過率を有するものである物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種々のサイズの構造体を含むナノコンポジット塗装系に関しており、例示的実施形態においてはシート様の構造体の組み合わせを含んでおり、その場合、ポリマー結合剤内において、1つの構造体は比較的高いアスペクト比(以後、HARシートまたは[HAR]シートと呼ぶ)を有し、少なくとももう一つは比較的低いアスペクト比(以後、LARシートまたは[LAR]シートと呼ぶ)を有するものであり、改善された熱抵抗、耐腐食性並びに改善された導電性または誘電性に加えて、望ましくないゲスト種の透過を阻止する予期せぬバリア機能を塗装系に与えるものである。
【背景技術】
【0002】
シート様構造体のアスペクト比は、シート形状近似のディスクを通して、大径を厚さで割ることにより定義されるものである。シート様構造体は高いアスペクト比を有する場合も、低いアスペクト比を有する場合もある。一般的に、高いアスペクト比の素材は、対応する素材のシート様構造体において低い座屈強度に対応する。従って、高いアスペクト比のシートを作製する場合、より多くの湾曲や屈曲が生じる傾向にある。反対に、低いアスペクト比は高い座屈強度および低い湾曲に対応する。従って、塗装系のHARシートの望ましくない湾曲および屈曲をLARシートが最小限に抑えることができるように、システム内でHARシートとLARシートの組み合わせが行われる。
【0003】
斯かるナノコンポジット塗装系の1つは、酸化グラフェン(GO)[HAR]シートおよびモンモリロナイト(MMT)[LAR]シートを含み(1つの実施形態では、水中でGOおよびMMTナトリウム粘土の剥離により形成される)、ポリビニルアルコール(PVA)内の層構造体に組み込まれ、湿気(例えば、水蒸気)や他の侵入物を阻止可能な薄いナノコンポジットコーティングを形成する。ナノコンポジットコーティングの層形成および構造に基づいて異なる特性を示す他の二元、三元、またはそれ以上の次元のシステムも、追加のポリマー結合剤設計を用いて作製可能である。
【発明の概要】
【0004】

本明細書記載の発明は、極めて優れた酸素バリア機能および水蒸気バリア機能を示すスケーラブルなナノスケールバリアを詳細に記載するものである。
【0005】
表1に示されるデータは、PLA基板(厚さ約20μm)上のコーティングに基づく、WVTR(摂氏23度、50%の相対湿度(RH)で試験された約98gm/(m・日))およびOTR(摂氏23度、0%RHで試験された約1205mL/gm/(m・日))である。表1。GO/MMTコーティングの透過率。バリア改善因子(BIF)はP/P(Pは基板の透過率であり、Pはコーティングされた基板の透過率である)として定義される。
【0006】
【表1】
【0007】
本発明の特定の実施形態が、添付の図面を参照して詳細に記載されている。本発明の更に十分な理解を得るため、数多くの特定の詳細事項が説明されている。しかし、本発明が斯かる特定の詳細事項なしに実施できることは、当業者には明白であろう。他の場合には、記載を不必要に複雑化するのを避けるため、周知の特徴は詳細には記載されていない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、PVA/GOコーティングおよび多層共集合の実施形態を示している。共集合の意図された結果は整然としたGOシートであるが、HARシートの重大な湾曲の故に、斯かる効果は達成されない。
図2図2は、GOおよびMMTの両方を取り入れることによる水分バリアの仮定的な改善を示している。水分バリアを形成するには大きいGOシートが好ましいが、斯かるシートは処理工程中に歪んでしまう傾向にある。しかし小さい強直なMMTシートは、ポリマー結合剤への共集合中に、大きいGOシートを支える目的に適している。
図3図3は、PLA上のGOおよびGO/MMTコーティングについて、厚さに関して標準化されていない水蒸気透過率(WVTR)データを示している。GOだけのコーティングは、90%PVA中の10%GOにおいてやっと低いWVTRを有することが示されており、これは、バリアを形成するには大きいシートが好ましいが、水蒸気を遮る斯かる効果の拡張機能は、MMT無しには極めて限定されるものであることを示している。WVTRは、僅か0.01%GOにおいて、50%MMT/50%PVAコーティングの値を下回ること、およびより大きいGOシートの高濃度において、WVTRが更に下回ることが示されている。
図4図4は、GOおよびGO/MMTコーティング層のみに関して、厚さについて標準化されたWVTRデータを示している。斯かる値は、PLA基板の効果無しに、コーティング層だけの透過率の固有特性を示している。
図5図5は、PLA上のGOおよびGO/MMTコーティングについて、厚さに関して標準化されていない酸素透過率(OTR)データを示している。GOだけのコーティングは、90%PVA中の10%GOにおいてやっと低いOTRを有することが示されており、これは、バリアを形成するには大きいシートが好ましいが、酸素を遮る斯かる効果の拡張機能は、MMT無しには極めて限定されるものであることを示している。しかし、MMTを追加すると、0.01%GOにおいてさえ、PVA/MMTコーティングの最高機能以上に改善される。
図6図6は、GOおよびGO/MMTコーティング層のみに関して、厚さについて標準化されたOTRデータを示している。斯かる値は、PLA基板の効果無しに、コーティング層だけの透過率の固有特性を示している。厚さに関して標準化された場合でさえ、PVA/GO/MMTが、PVA/GOまたはPVA/MMTコーティング層よりも固有の低い酸素透過率を有していることは明白である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、いくつかのコーティング技術を用いて達成可能であり、その中には単純なディップコーティングに関する1つの実施形態も含まれ、その場合、HARシートおよびLARシートは重力誘起の剪断力を用いて整列される。ディップコーティング法は、GO[HAR]シートおよびMMT[LAR]シートの相互作用を促進し、GO[HAR]シートをMMT[LAR]シート内およびMMT[LAR]シート間に整列させる。本発明は、ドクターブレディング、スピンコーティング、回転コーティング、スプレーコーティング、ロールツーロールコーティングなどの他の方法を用いて適用されてもよい。斯かるスケーラブルなコーティング技術は、水蒸気(湿気)などの望ましくないゲスト種が感湿性または湿気反応性の環境へ移行するのを防止するのが望ましい実装、電子機器(例えば、LCD、OLEDなど)、化学、建設など、数多くのアプリケーションに利用可能である。更なる実施形態は、例えば、耐熱性または誘電性機能、耐腐食性、あるいは電気伝導体アプリケーションなどに適用されてもよい。
【0010】
特定のナノコンポジットコーティングシステムにおいては、GO、MMT、およびPVAは、水性懸濁液内において種々の割合で組み合わされる(例えば、水98.5%、固形物1.5%)。例示的な二元ナノコンポジットコーティングシステムにおいて、GOおよびMMTは(超音波処理により)バルク材料から剥離され、それぞれHARシートおよびLARシートに変換され、それらは次にディップコーティングにより層構造体に組み立てられる。PVA(または他の適切なポリマー)が層構造体の結合剤として機能し、各コーティングサイクル後の乾燥工程(1つの実施形態では、摂氏60度で30分)中にポリマー緩和が生じ、HARシートおよびLARシートが高秩序の構造体に整列される。大型でより柔軟性のあるGOが、斯かる大型のGO[HAR]シートの湾曲/屈曲傾向を最小限にする小型でより強直性のMMT[LAR]シートによって拡張および支持されながら、素材表面の優れた被覆性を提供するので、水蒸気移行などの望ましくないゲスト種に対する優れた物理的バリアがもたらされる(図1を参照)。任意部分の座屈強度はアスペクト比の増大に伴って減少するので、いずれのHARシートも、その組成に関係なく柔軟性を有するようになることに注目されたい。アスペクト比が十分大きければ(例えば、500を超える場合)、斯かる部分は柔軟となり、十分低い座屈強度の故に湾曲する(または屈曲する)傾向を有するようになる。ニールセンモデルなどの種々のシミュレーションモデルによれば、バリアの特性としては、湾曲または屈曲のないHARシートが極めて望ましい。
【0011】
湿気バリア特性を示す素材は、密封、カプセル化、実装への適用可能性の故に極めて望ましい。斯かる素材は、限定されないが、金属、ガラス/セラミック、およびポリマー(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミドフィルムなど)などであり、その中でもポリマーは、軽重量、低コスト、および優れた加工性の故に一般的に最も有望な解決策を提供する。ポリマーのバリア特性は、いくつかの化学官能基の疎水性または結果的に得られるポリマーの全体的な結晶性を利用する分子構造設計によって達成/向上できる。別の方法では、プラスチックフィルムは、水蒸気透過率(WVTR)を更に低下させるため、厚みを増大させて調製される。あるいは、フィルムは、任意に棒またはシート状のナノフィラーの存在下に、低透過率のポリマーまたはポリマーコンポジットでコーティングされる。上述の方法は、望ましくない処理加工性および/またはコスト問題を導入するか、あるいは望ましくないゲスト種の移行を十分に阻止できないものである。従って、優れたバリア特性(例えば、水蒸気阻止性能)を示し、費用効果が高く、処理加工性の問題を惹起しない素材の開発が喫緊に必要とされている。
【0012】
20μmの厚さのポリ乳酸(PLA)基板上のコーティング材の調製において、MMTがPVAと組み合わせて使用されている。(L.Sun,et al. DOI:10.1126/sciadv.1701212)。MMTの量を変化させながら、450μm~650μmの厚さのコーティング上でWVTR試験が行われた。50重量%までのMMTの量でコーティングされた20μmPLA基板上で測定されたWVTRの最小結果は17.2g/(m・日)で、これはコーティング層の0.1424[10-11g(STP)・cm/cm・s・Pa]の水蒸気透過量に相当する(表1)。従って、MMTおよびPVAのシステムのバリア特性は改善される必要がある。加えて、酸素透過率(OTR)試験において、50重量%までのMMTの量でコーティングされた20μmPLA基板上で測定されたOTRの最小結果は0.2cc/cm/日で、これはコーティング層の0.00135[10-16cm(STP)cm/cm・s・Pa]の酸素透過量に対応する(表1)。酸素透過率は全体的に見てかなり良好ではあるが、これは電子部品実装などのハイエンドのアプリケーションでは十分ではない。
【0013】
WVTRおよびOTR試験は、比較のため、本発明のコーティングにおいても実行された。本明細書記載の新規な二元方法は、GO(約1μmの横寸法を有する)とMMT(約260nmの平均横寸法を有する)との間の相乗的な観察結果を利用したものであり、同じ全体濃度のシート(10%GO+40%MMT)により類似のコーティング厚さを用いて20μmPLA基板上で試験された場合、優れたWVTR値である0.3g/(m・日)または湿気透過率0.0024[10-11g(STP)・cm/cm・s・Pa]が達成された(表1)。この結果は、従来技術に基づく場合、僅か1.7%の水蒸気侵入を許すことに等しい。同様に、当該コーティングにより0.0057cc/(m・日)または酸素透過率0.0000455[10-16cm(STP)cm/cm・s・Pa]という優れたOTR値が達成され、これは従来技術と比較して、僅か3.4%の酸素侵入を許すに等しい。他の利用可能な基板および二元または三元の層システムも同様または類似の優れたバリア効果を達成できるので、上記二元方法およびGO/MMT層化は、多くの利用可能な選択肢の僅か1つにすぎないものである。本発明に適した基板は特に限定されてはおらず、任意のプラスチックフィルム(PLA、BOPP、HDPE、LDPEなど)、フォーム、ボードシート、紙、木材、および金属がそれに含まれる。加えて、PVA以外にも、他のポリマー、例えばエポキシ、ポリビニルピロリドン(PVA)、ポリアクリル酸、ポリ2オキサゾリン、ポリエチレンイミン、PVAのコポリマー、上記ポリマーのコポリマーなどが、二元または三元層システムを統合する結合剤として利用できる。
【0014】
斯かる優れた結果は、部分的には、GOが大きいHARシート並びに強力なPVAとのインターフェースを提供すると言う事実に基づいている。それと同時に、MMTは剥離され小さくてより強直なLARナノシートを形成できる。斯かる2つの特徴が組み合わされると、大きくて柔軟なGO[HAR]シートは、強直なMMT[LAR]シートによって、湾曲/屈曲の少ないものに拡張される。その結果、斯かる湾曲/屈曲の少ないGO[HAR]シートは、望ましくないゲスト種の侵入を更に効果的に阻止でき、多くの実験結果並びに種々のシミュレーションモデル(ニールソンモデルなど)によれば、はるかに改善されたバリア特性を達成できる。GO[HAR]シートは、ポリマーネットワークと効果的な架橋を形成し、湿気吸収による膨張の影響を受けにくい強力な層構造体を構築できる。本明細書記載のGO[HAR]の例に類似のシステムを効果的に構築するため、更に大きいHARシートおよび更に小さいLARシートを組み合わせることも可能である。しかし、シート/ナノシートのサイズ分布は異なるバリア特性を提供する。一般的に、主要な阻止効果の1つは、制限された湾曲または屈曲を有するHARシートに起因する。
【0015】
加えて、異なるサイズを有する斯かる2つの2D素材は、コーティング層に更に効果的な空間充填を形成することにより、望ましくないゲスト種の透過経路を更に阻止するものである。他の調製方法では、GOシートには屈曲が生じ、シートの屈曲に起因する課題が提起された。本発明の調製方法においては、コーティングの物理的構造/組成が、小さいMMT[LAR]ナノシートの補助により、大きいGO[HAR]シートの望ましくない屈曲問題を補正するものである。異なる横寸法および強直性を有する2つの構造体の当該新規な組み合わせは、意外にも、文献で報告されている最高のバリア結果(水蒸気および他の望ましくないゲスト種の阻止)のいくつかをもたらし、費用効果が高く、既存のフィルム/コーティング大量生産システムで利用可能な簡単でスケーラブルなコーティング法(例えば、ディップコーティング)を可能とする。ディップコーティングまたは他の従来のコーティング法による、斯かるHARシートおよびLARシートの整列は、バリア材開発で報告されていない新規な方法であることを示している。
【0016】
更に、分厚いプラスチック基板のフィルムインフレーション成形は困難であり、将来的にも困難であり続けることが知られている。これは、厚さ増大に伴うコスト増加およびプラスチックの更なる廃棄に伴う環境問題の増加をもたらす。対照的に、薄いGO/MMT/コーティングフィルムと組み合わされた薄いプラスチック基板の処理工程は簡便化され、全システムの特性を改善しつつコスト削減を達成すると言う結果をもたらす。
【0017】
GOはMMTよりも高価ではあるが、良く知られており、広範囲に入手可能である。加えて、本発明のコーティング組成物の調製に伴う全体的なコストは、ガスバリアの望ましいレベルおよびコーティングされた基板の機械的特性を達成しつつ、MMTに対するGOの量を最小限に抑える(例えば、MMT49%およびGO1%)ことにより大幅に削減できる。
【0018】
MMTはGOよりも強直であり、水中で容易に剥離される。GO/MMT/結合剤の組み合わせの相対量の例示的範囲(本明細書に参照されるように、質量%で測定された場合)は、結合剤50%、GO0.0001~20%(例えば、0.001~10%、0.05~10%、0.1~5%など)、およびMMT30~49.99%(例えば、MMT35~49%、MMT37~40%など)である。結合剤は特に限定されていない。適切な素材にはPVA、PVP、およびそれらの組み合わせが含まれ、結合剤の濃度は1~99%である。2つのタイプのシート(LARプラスHARシート)の全濃度は1~99%である。
【0019】
厚さに関して標準化された透過率データが、表1および図3~6に示してある。斯かるコーティングにおいて、PVAの重量%は一定(50%)に保たれており、残りのMMTおよびGOの割合は固形物の残りの50%まで様々である。比較としてGO-MMT相互作用の効果を示すため、同じ重量%のGOを有するコーティングがMMT無しに作製された。GOを含まない50%のMMTのみを含むコーティングも比較用に調製された。
【0020】
薄膜プラスチックの製造元は、自らのフィルム製造ラインにディップコーティングシステムを付け加えることにより、本発明のPVA/GO/MMT懸濁液で薄膜をコーティングし、回収および輸送前に優れたバリア特性を導入できる。
【0021】
現在、プラスチックフィルムは、そのWVTRを抑えるため厚目に製造されており、加工性およびコストの問題が生じている。あるいは、薄膜を透過率の低いポリマーで(ある場合には、棒またはシート状のナノフィラーを有するコンポジットとして)コーティングしてはいるが、斯かる方法の結果は、水蒸気移行を有意に阻止するには不十分である。
【0022】
本発明の新規なコーティング法を利用することにより、1ミクロン未満の厚さのコーティングにより低い透過率を達成できる。斯かるコーティングフィルムは、最適な機械およびバリア特性を達成するのに必要な基板の厚さを最小限に抑えることが可能である。
【0023】
本発明の代替実施形態は、限定されないが、以下の通りである。
【0024】
1.異なるサイズのGOの混合体は、大きいGO[HAR]シートの屈曲防止に等しい効果を有するまたはより効果的であると仮定すると、異なるサイズのGOフレークの混合体(特に、大きいマクロメータースケールのGOフレークとナノメータースケールのフレークの混合体)は、効果的なバリア特性を達成するのに、GOおよびMMTの混合体と同程度に効果的であるかもしれない。
【0025】
2.上述と同じメカニズムに基づけば、MMT[LAR]シートと組み合わされた異なるサイズのGOフレークの混合体も優れたバリア特性を達成するかもしれない。
【0026】
3.PVA以外のコーティング結合剤の使用。MMTおよびGOまたは他の適切な二元または三元システムにおいて良好な分散および接着を可能にする他の従来のポリマー結合素材(例えば、PVP)も適切であり、水ベースおよび有機溶媒ベースがそれに含まれる。環境問題の観点から水溶液の方が問題が少ないという特長を有するが、溶媒の性質は主に結合剤の選択によって決定される。
【0027】
化学的に修飾されたGOおよびMMTも本発明の設計において利用可能であり、優れたバリア特性を有するものである。
【0028】
GOの適切な代替物には、α型リン酸ジルコニウムなどの任意の大きいシート化合物も含まれる。
【0029】
MMTの適切な代替物には、ラポナイトなどの任意の小さいシート化合物も含まれる。
【0030】
コーティング段階の組み合わせも可能であり、例えば、通常、基板(例えば、フィルム)を十分な時間(例えば、1~30秒)浸漬することにより、GO/MMT/PVAの水懸濁液で基板の初期コーティングを(ディッピング、ドクターブレーディング、スプレーなどにより)行い、次にそれを除去し、その後、湿った基板を加熱して溶媒を蒸発させ、(架橋剤が存在する場合には)架橋反応を開始させ、次に、十分数の層が形成されるまでコーティングと加熱の工程を繰り返す。例示的実施形態においては、斯かる方法で四層が形成される。
【0031】
例示的実施形態において、薄いプラスチック基板のガスバリアおよび機械的特性を改善するのに、有機粘土ナノコンポジットコーティングが使用される。
【0032】
ポリオレフィン(BOPP、LDPE、およびHDPE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、およびPLAは食品包装材として使用される場合が多いが、高OTRを有しており、広範囲な食品腐敗の原因となっている。本発明の例示的実施形態を示す簡便でスケーラブルなディップコーティング法においては、PVA結合剤および高整列のGO/MMTシート充填剤は、極めて優れたバリア特性、機械的特性、および可視光透過率を示すものである。別の例示的実施形態においては、更に低い蒸気透過率を導くのに化学的架橋反応が利用される。極めて優れた性能、適用の容易さ、および化学的修飾の多様性の故に、本明細書記載の本発明のコーティング技術は、食品包装技術の分野において特に適している。
【0033】
僅かな数の実施形態だけが詳細に上述されてはいるが、本発明から有意に逸脱することなく、例示的実施形態において多くの変更が可能であることを当業者は容易に想到するであろう。従って、斯かる変更の全てが、以下の特許請求の範囲に規定されるような本開示の範囲内に含まれるものである。特許請求の範囲において、手段プラス機能節は、詳述されている機能を実行するものとして、構造的等価物のみならず等価的構造体も含め、本明細書記載の構造体をカバーするものである。従って、釘は円筒状の表面を用いて木材部分を固定し、ネジは木材部分を固定する環境において螺旋形の表面を利用するものであるので、釘とネジは構造的等価物ではないが、それでも釘とネジは等価的構造体である。本出願者は、関連する機能と一緒に「のための手段」と言う用語を特許請求の範囲が明示的に使用していない限り、本発明の特許請求の範囲のいずれにも制限を付す意図を有するものではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6