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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】自己細胞治療製造用の細胞維持機
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/071 20100101AFI20240312BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20240312BHJP
   C12M 3/00 20060101ALI20240312BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240312BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
C12N5/071
C12M1/00 A
C12M3/00 B
C12N5/10
C12N15/63 Z
【請求項の数】 27
(21)【出願番号】P 2018502618
(86)(22)【出願日】2016-03-31
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-04-19
(86)【国際出願番号】 US2016025362
(87)【国際公開番号】W WO2016161174
(87)【国際公開日】2016-10-06
【審査請求日】2019-04-01
【審判番号】
【審判請求日】2022-01-11
(31)【優先権主張番号】62/141,196
(32)【優先日】2015-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517343966
【氏名又は名称】スライブ バイオサイエンス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107489
【弁理士】
【氏名又は名称】大塩 竹志
(72)【発明者】
【氏名】ブランチャード, アラン
【合議体】
【審判長】長井 啓子
【審判官】鶴 剛史
【審判官】福井 悟
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/098931(WO,A1)
【文献】特開2012-130297(JP,A)
【文献】特開2006-174828(JP,A)
【文献】特表2012-524268(JP,A)
【文献】特開2003-052365(JP,A)
【文献】特開2003-174870(JP,A)
【文献】特開2006-101781(JP,A)
【文献】登録実用新案第3157029(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00-7/08
C12N15/00-15/90
C12M1/00-3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物細胞培養物を製造するための方法であって、
細胞培養容器を用意するステップであって、前記細胞培養容器は、前記容器内に又は前記容器外に材料を無菌的に移動させることを可能にするように構成された通路を含み、前記通路は前記容器と流体連通する滅菌使い捨て管であり、前記管はガス透過性膜によって密封/被覆されており、前記ガス透過性膜を介して、前記培養容器内の気体環境が制御される、ステップと、
前記通路を通じて前記細胞培養容器内に哺乳動物細胞サンプルを導入するステップと、
前記細胞培養容器をインキュベータの滅菌内部チャンバ内に入れるステップと、
前記滅菌内部チャンバ内の前記細胞サンプルを増殖させ、それにより哺乳動物細胞培養物を製造するステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記容器内の前記通路を通じて増殖培地を無菌的に導入することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記容器内の前記通路を通じて生物学的材料を無菌的に導入することを更に含み、前記生物学的材料は細胞増殖因子であるか、又は前記生物学的材料は核酸分子である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記核酸分子は核酸ベクターである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記核酸ベクターはトランスフェクションベクターもしくは形質導入ベクターであるか、又はトランスジェニック材料を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記細胞培養容器における増殖培地の状態を無菌的に監視することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記インキュベータ内で一定の温度範囲を維持することを更に含むか、又は前記インキュベータは摂氏37度に維持される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
細胞の状態を無菌的に監視することを更に含むか、又は
前記細胞培養物を無菌的に撮像することを更に含むか、又は
前記細胞培養物をろ過することを更に含むか、又は
前記細胞培養物の一定分量を無菌的に除去することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記インキュベータは、
移動チャンバと、
1つ以上の内部チャンバと、
外部環境から前記移動チャンバへと開く外部扉と、
前記移動チャンバから第1の内部チャンバへと開く第1の内部扉と、
前記移動チャンバから第2の内部チャンバへと開く第2の内部扉と、
前記移動チャンバと前記第1の内部チャンバとの間で、及び/又は前記移動チャンバと前記第2の内部チャンバとの間で、及び/又は前記第2の内部チャンバと前記第1の内部チャンバとの間で1つ以上の物品を移動させるための移動デバイスと
を含む、細胞培養インキュベータである、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
ポンプに結合されたオゾン発生器を更に含み、前記オゾン発生器は、前記移動チャンバにオゾンガスを供給するように構成されており、
前記オゾン発生器は、前記第1および第2の内部チャンバの少なくとも1つにオゾンガスを供給するように構成されている、
請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記外部扉は、閉じられると気密のシールを形成し、及び/又は前記第1の内部扉及び前記第2の内部扉は、それぞれ閉じられると気密のシールを形成する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ポンプは、前記移動チャンバ及び/又は前記1つ以上の内部チャンバからオゾンガスを除去するように構成されている、請求項10~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の内部チャンバは貯蔵場所を含み、
前記貯蔵場所は、複数の細胞培養容器を保持するように構成されており、
前記複数の細胞培養容器の各容器は、固有のバーコードが付されている、
請求項9~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記第2の内部チャンバはイメージャ及び撮像場所を含む、請求項9~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記イメージャはホログラフィックイメージャ又は顕微鏡である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記イメージャのためのコントローラを更に含む、請求項14又は15に記載の方法。
【請求項17】
前記第2の内部チャンバはマニピュレータ及び操作場所を含む、請求項9~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記マニピュレータは細胞ピッカーであるか、又は前記マニピュレータは流体ハンドリングシステムを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記マニピュレータのためのコントローラを更に含む、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項20】
前記第2の内部チャンバは流体貯蔵場所を含み、及び/又は前記第2の内部チャンバは細胞ソーティングもしくは細胞単離装置を含む、請求項9~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記細胞ソーティングもしくは細胞単離装置は遠心分離機であるか、又は蛍光活性化セルソーティング(FACS)マシンである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記移動デバイスは1つ以上のロボット要素を含む、請求項9~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記移動デバイスのためのコントローラを更に含む、請求項9~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記イメージャのための前記コントローラ、前記マニピュレータのための前記コントローラ、及び/又は前記移動デバイスのための前記コントローラはインキュベータキャビネットの外部にあり、前記イメージャのための前記コントローラ、前記マニピュレータのための前記コントローラ、及び/又は前記移動デバイスのための前記コントローラはコンピュータを含む、請求項1および請求項1に従属する場合の請求項23に記載の方法。
【請求項25】
単一のコンピュータが前記イメージャ、前記マニピュレータ及び/又は前記移動デバイスを制御する、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
インキュベータキャビネットおよびバーコード走査器を更に含み、前記バーコード走査器はコンピュータに接続されており、前記コンピュータは前記インキュベータキャビネットの外部にある、請求項9~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記インキュベータが、2つ以上の細胞培養容器を含む細胞培養システムであって、各容器は異なる患者からの細胞を含み、各容器は、材料を前記容器へ又は前記容器から無菌的に送ることを可能にするように構成された通路を含む、細胞培養システムである、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、米国特許法第119条(e)の下で、2015年3月31日に出願された「Cell Maintener For Analogous Cell Therapy Production」という名称の米国仮特許出願第62/141,196号明細書の利益を主張し、この特許出願は、その内容全体が参照により本明細書中に組み込まれる。
【0002】
態様は、自動細胞培養インキュベータ及びこのようなインキュベータを使用するための方法に関する。いくつかの態様は、自己哺乳動物細胞培養物を製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
自己細胞治療は、細胞又は組織を本来採取した個体にヒト細胞を再び植込むか、移植するか、注入するか、又は移す個別化医療技術である。例えば、軟骨損傷に伴う関節痛を軽減する目的で軟骨損傷を有する患者から軟骨細胞を単離し、培養システム内で増殖させ、その後、この患者に再び植込んでもよい。自己細胞治療の他の例としては、自己樹状細胞、間葉間質細胞、及びTリンパ球が挙げられる。自己細胞治療は、即時にドナーが得られること、細胞又は組織の拒絶反応の減少、及び移植片対宿主病の減少を含む多くの利点を有する。加えて、細胞が自己のものであるという性質は、HLA適合及び細胞移植患者の免疫抑制の必要がないことを意味する。自己細胞治療の多くの治療的利点があるものの、自己細胞培養物の製造及び生産におけるいくつかの課題が商業的な成功に障壁を課している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自己細胞治療における製造の課題の1つは「スケールアウト」、すなわち、複数バッチの自己細胞培養物を異なるドナーから同時に製造する能力である。異なる患者の自己培養物間の交差汚染を防止するために厳密な無菌条件を維持しなければならない。現在使用されている自己細胞培養のための方法及びデバイスのいくつかは手動培養技術に依存している。手動培養技術は、培養物に汚染物質を導入するとともに、培養物を非無菌状態及び/又は物理的環境の変動(例えば、温度、湿度等又はこれらの任意の組み合わせの変化)に曝すおそれがある。他の細胞培養装置は、交差汚染のリスクが最小限である複数のドナーの細胞を培養するための機能を提供しない。したがって、厳重な無菌条件を維持しつつ、複数の細胞培養物の遠隔維持及び顕著なスケールアウト性能を可能にする新たな細胞培養システム及び方法が本明細書中に記載される。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一部の態様では、本明細書は、(a)細胞培養容器内に増殖培地の存在下で哺乳動物細胞サンプルを導入するステップであって、容器は、材料を容器内に又は容器外に無菌的に移動させることを可能にするように構成された通路を含む、ステップと、(b)インキュベータ内の細胞サンプルを哺乳動物細胞培養物へと増殖させるステップであって、インキュベータは、滅菌内部増殖チャンバを含む、ステップとを含む、哺乳動物細胞培養物を製造するための方法を提供する。
【0006】
いくつかの実施形態では、細胞サンプルは通路を通じて細胞培養容器内に導入される。いくつかの実施形態では、容器の通路はガス透過性膜によって被覆されている。いくつかの実施形態では、培養容器上の膜は、一方向弁、すなわち「環境」インターフェースを提供し、これを介して、閉鎖された自己培養容器内の気体環境が制御されてもよい。いくつかの実施形態では、(例えば、単一の温度制御環境内における)複数の自己培養容器の形態の複数の閉鎖システムが提供されてもよい。いくつかの実施形態では、全体的なインキュベータ環境によって集合的なシステムの環境温度が維持される。いくつかの実施形態では、各閉鎖容器の内部気体環境は、ガス交換のための膜「弁」のセットを含むインターフェース(例えば、配管インターフェース)を介して維持される。このような実施形態では、この構成が独立した自己培養物の制御、監視及びドキュメンテーションを容易にする。
【0007】
いくつかの実施形態では、方法は、容器内の通路を通じて増殖培地を細胞培養物に無菌的に導入することを更に含む。
【0008】
いくつかの実施形態では、方法は、容器の開口部を通じて生物学的材料を細胞培養物に無菌的に導入することを更に含む。いくつかの実施形態では、生物学的材料は細胞増殖因子である。いくつかの実施形態では、生物学的材料は核酸分子である。いくつかの実施形態では、核酸分子は核酸ベクターである。いくつかの実施形態では、核酸ベクターはトランスフェクションベクターである。いくつかの実施形態では、核酸ベクターは形質導入ベクターである。いくつかの実施形態では、核酸ベクターはトランスジェニック材料を含む。いくつかの実施形態では、生物学的材料は酵素(例えば、ヌクレアーゼ、リガーゼ、ポリメラーゼ、又は核酸を修飾する他の酵素)である。いくつかの実施形態では、生物学的材料は、核酸修飾酵素と1つ以上の核酸との混合物を含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、方法は、増殖培地の条件を無菌的に監視することを更に含む。いくつかの実施形態では、インキュベータは一定の温度範囲に維持される。いくつかの実施形態では、インキュベータは摂氏約37度に維持される。
【0010】
いくつかの実施形態では、方法は、細胞の条件を無菌的に監視することを更に含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、方法は、増殖培地の化学組成(例えば、pH、グルコースの濃度、乳酸の濃度、他の小分子の濃度、又は増殖培地の総重量オスモル濃度)を制御するために試薬を無菌的に添加することを更に含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、方法は、細胞培養物を無菌的に撮像することを更に含む。いくつかの実施形態では、方法は、細胞培養物をろ過することを更に含む。いくつかの実施形態では、方法は、細胞培養物の一定分量を無菌的に除去することを更に含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、インキュベータは、本明細書中に記載されるような細胞培養システムである。
【0014】
一部の態様では、本明細書は、移動チャンバと、1つ以上の内部チャンバと、外部環境から移動チャンバへと開く外部扉と、移動チャンバから第1の内部チャンバへと開く第1の内部扉と、移動チャンバから第2の内部チャンバへと開く第2の内部扉と、移動チャンバと第1の内部チャンバとの間で、及び/又は移動チャンバと第2の内部チャンバとの間で、及び/又は第2の内部チャンバと第1の内部チャンバとの間で1つ以上の物品を移動させるための移動デバイスとを含むインキュベータキャビネットを含む、細胞培養システムを提供する。
【0015】
いくつかの実施形態では、細胞培養システムは、ポンプに接続された滅菌媒体供給部(例えば、オゾン発生器)を更に含み、滅菌媒体供給部(例えば、オゾン発生器)は、滅菌媒体(例えば、オゾンガス)を移動チャンバに供給するように構成されている。いくつかの実施形態では、滅菌媒体供給部(例えば、オゾン発生器)は、滅菌媒体(例えば、オゾンガス)を1つ以上の内部チャンバに供給するように構成されている。
【0016】
いくつかの実施形態では、外部扉は、閉じられると実質的に気密のシールを形成する。いくつかの実施形態では、第1の内部扉及び第2の内部扉は、それぞれ閉じられると実質的に気密のシールを形成する。
【0017】
いくつかの実施形態では、ポンプは、移動チャンバ及び/又は1つ以上の内部チャンバから滅菌媒体を除去するように構成されている。
【0018】
いくつかの実施形態では、貯蔵チャンバは貯蔵場所を含む。いくつかの実施形態では、貯蔵場所は、複数の細胞培養容器を保持するように構成されている。いくつかの実施形態では、複数の細胞培養容器の各容器は異なる患者からの細胞を含む。いくつかの実施形態では、複数の細胞培養容器の各容器は、固有のバーコードが付されている。
【0019】
いくつかの実施形態では、内部チャンバはイメージャ及び撮像場所を含む。いくつかの実施形態では、イメージャはホログラフィックイメージャである。いくつかの実施形態では、イメージャは明視野顕微鏡又は蛍光顕微鏡などの顕微鏡である。いくつかの実施形態では、細胞培養システムは、イメージャのためのコントローラを更に含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、内部チャンバはマニピュレータ及び操作場所を含む。いくつかの実施形態では、マニピュレータは細胞ピッカーである。いくつかの実施形態では、マニピュレータは流体ハンドリングシステムを含む。
【0021】
いくつかの実施形態では、細胞培養システムは、マニピュレータのためのコントローラを更に含む。
【0022】
いくつかの実施形態では、内部チャンバは流体貯蔵場所を含む。いくつかの実施形態では、内部チャンバは細胞ソーティング又は細胞単離装置を含む。いくつかの実施形態では、細胞ソーティング又は細胞単離装置は遠心分離機である。いくつかの実施形態では、細胞ソーティング又は細胞単離装置は蛍光活性化セルソーティング(FACS)マシンである。いくつかの実施形態では、内部チャンバは、個々の細胞を撮像及び/又は操作するためのマイクロ流体デバイスを含む。
【0023】
いくつかの実施形態では、移動デバイスは1つ以上のロボット要素を含む。いくつかの実施形態では、細胞培養システムは、移動デバイスのためのコントローラを更に含む。いくつかの実施形態では、イメージャのためのコントローラ、マニピュレータのためのコントローラ、及び/又は移動デバイスのためのコントローラはインキュベータキャビネットの外部にある。いくつかの実施形態では、イメージャのためのコントローラ、マニピュレータのためのコントローラ、及び/又は移動デバイスのためのコントローラは単一のプロセッサを含む。いくつかの実施形態では、イメージャのためのコントローラ、マニピュレータのためのコントローラ、及び/又は移動デバイスのためのコントローラはコンピュータを含む。いくつかの実施形態では、単一のコンピュータがイメージャ、マニピュレータ、及び/又は移動デバイスを制御する。
【0024】
いくつかの実施形態では、細胞培養システムはバーコード走査器を更に含む。いくつかの実施形態では、バーコード走査器はコンピュータに接続されており、コンピュータはインキュベータキャビネットの外部にある。
【0025】
一部の態様では、本明細書は2つ以上の細胞培養容器を含む細胞培養システムを提供し、各容器は異なる患者からの細胞を含み、各容器は、材料を容器へ又は容器から無菌的に送ることを可能にするように構成された通路を含む。
【0026】
添付の図面は一定の縮尺率で描かれるものではない。図面では、種々の図に示されるそれぞれ同一の又はほぼ同一の構成要素は同じ番号で表される場合がある。明確化のため、全ての図の全ての構成要素に符号が付されるわけではない。ここで、例として、添付の図面を参照して本発明の種々の実施形態を記載する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】複数の細胞培養容器を含む内部チャンバを含むインキュベータキャビネットを含む、細胞培養システムの例証的実施形態の概略図である。各細胞培養容器は異なる対象からの細胞培養物を含む。
図2A】細胞培養システムの例証的実施形態の概略図である。図2Aは、移動チャンバ及び内部チャンバを含むインキュベータキャビネットを含む、細胞培養システムの概略図を示す。図2Bは、移動チャンバと、複数の細胞培養容器を含む内部チャンバと、オゾン発生器と、ポンプとを含むインキュベータキャビネットを含む、細胞培養インキュベータの概略図を示す。
図2B】細胞培養システムの例証的実施形態の概略図である。図2Aは、移動チャンバ及び内部チャンバを含むインキュベータキャビネットを含む、細胞培養システムの概略図を示す。図2Bは、移動チャンバと、複数の細胞培養容器を含む内部チャンバと、オゾン発生器と、ポンプとを含むインキュベータキャビネットを含む、細胞培養インキュベータの概略図を示す。
図3】移動キャビネットと、複数の細胞培養容器を含む第1の内部チャンバと、イメージャ及びマニピュレータを含む第2の内部チャンバとを含むインキュベータキャビネットを含む、細胞培養システムの例証的実施形態の概略図である。
図4】内部チャンバと、複数の細胞培養容器と、イメージャとを含むインキュベータキャビネットを含む、細胞培養システムの例証的実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
現在使用されている細胞培養インキュベータは自己細胞培養の成功の障壁となっている。例えば、多くの細胞培養インキュベータでは、細胞培養容器の取り出し、及びその後、それらの手動ハンドリングを必要とする。インキュベータによって提供される保護環境から培養した細胞を取り出すことで他の自己細胞培養物による交差汚染を含む潜在的汚染物質及び/又は物理的環境の変動(例えば、温度、湿度等又はこれらの任意の組み合わせの変化)への培養物の曝露が増す。更に、人であるオペレータによる培養物の手動ハンドリングにより、不適当な滅菌手法などの人的エラーによって汚染が導入される可能性が生じる。本明細書における自己細胞培養物の遠隔維持(例えば、最小限の人によるハンドリングによって)のための方法及び装置により、これらの障壁及び課題を克服する。本明細書は、細胞培養容器への及び細胞培養容器からの材料の無菌通過(aseptic passage)を一部可能にし、培養物間の交差汚染並びに非無菌及び/又は非制御の物理的環境への培養物の曝露のリスクを最小限にしつつ、異なる対象からの複数の細胞培養物の同時製造を可能にする性能を有する細胞培養容器の開発に基づく。
【0029】
細胞培養方法
一態様では、本明細書は、細胞培養容器内に増殖培地の存在下で哺乳動物細胞サンプルを導入するステップであって、容器は、材料を容器へ又は容器から無菌的に送ることを可能にするように構成された通路を有する、ステップと、インキュベータ内の細胞サンプルを哺乳動物細胞培養物へと増殖させるステップであって、インキュベータは滅菌内部チャンバを含む、ステップとを含む、哺乳動物細胞培養物を製造するための方法に関する。
【0030】
本明細書で使用する場合、「細胞培養」とは、制御された条件下で(例えば、生体外で)細胞を維持及び/又は増殖するための手順を意味する。いくつかの実施形態では、細胞は、細胞増殖及び複製を促進するための条件、組換え産物の発現を促進するための条件、(例えば、1種以上の組織特有の細胞タイプへの)分化を促進するための条件、又はこれらの2つ以上の組み合わせの下で培養される。
【0031】
本明細書で使用する場合、用語「哺乳動物細胞サンプル」とは、哺乳動物対象から得た任意の細胞を意味する。哺乳動物対象の非限定的な例としては、ヒト、非ヒト霊長類、マウス、ラット、ウマ、イヌ、ネコ、及びモルモットが挙げられる。いくつかの実施形態では、哺乳動物細胞サンプルはヒトから得られる。
【0032】
いくつかの実施形態では、細胞サンプルは、固形組織及び臓器が挙げられるがこれらに限定されない組織又は臓器(例えば、ヒト組織又は臓器)から単離される。いくつかの実施形態では、細胞サンプルは、胎盤、臍帯、骨髄、肝臓、臍帯血を含む血液、又は任意の他の適切な組織から単離することができる。いくつかの実施形態では、患者個体別の細胞サンプルは、培養のために(例えば、細胞増殖及び任意選択的に分化のために)、及び後の同一患者又は異なる患者への再移植のために患者から単離される。いくつかの実施形態では、本明細書中に記載されるインキュベータ内で増殖させた細胞は同種又は自家治療のために使用してもよい。いくつかの実施形態では、本明細書中に開示されるインキュベータ内で増殖させた細胞は、免疫療法(例えば、キメラ抗原受容体治療(CAR-T)、又はCRISPR/Cas修飾細胞の送達)を提供する目的で遺伝子操作、増殖及び患者に再導入してもよい。
【0033】
いくつかの実施形態では、細胞は、本明細書中に記載されるインキュベータ内における生体外培養のために組織又は生物学的サンプルから単離される。いくつかの実施形態では、細胞(例えば、白血球細胞)は血液から単離される。いくつかの実施形態では、細胞は、物理的破壊及び/又は酵素的破壊を用いて組織又は生物学的サンプルから剥離される。いくつかの実施形態では、コラゲナーゼ、トリプシン又はプロテイナーゼなどの1種以上の酵素を使用して細胞外マトリックスを消化する。いくつかの実施形態では、組織又は生物学的サンプルを(例えば、物理的破壊又は酵素的破壊あり又はなしで)培地に入れ、剥離して培地中で増殖させた細胞を更なる培養のために単離することができる。
【0034】
本明細書中に記載される方法は、種々の哺乳動物細胞タイプを培養するのに適している。いくつかの実施形態では、哺乳動物細胞サンプルは自己細胞治療に有用な細胞である。本明細書で使用する場合、用語「自己細胞治療」とは、培養した細胞を、細胞を取得した個体に再び植込むか、移植するか、注入するか、又は移すことを意味する。例えば、対象の免疫応答を強化するために、癌を有する対象から免疫細胞を取得し、細胞培養物へと増殖させ、癌に対する抗原でプライミング処理し、患者に再導入してもよい。自己培養に有用な細胞の例としては、幹細胞(例えば、造血幹細胞、体性幹細胞、全能性幹細胞、多分化能幹細胞、胎児幹細胞、胚性幹細胞、間葉系幹細胞、及び人工多能性幹細胞)、前駆細胞(例えば、衛星細胞、神経前駆細胞、骨髄間質細胞、膵前駆細胞、血管芽細胞、及び内皮前駆細胞)、免疫細胞(例えば、Tリンパ球、樹状細胞)、並びに分化細胞(上皮細胞、心筋細胞、線維芽細胞、及び軟骨細胞)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0035】
本明細書中に記載されるように、通路は、異なる対象の哺乳動物細胞の同時培養中における交差汚染を最小限にするのに有用な状態で容器内及び容器外への材料の無菌移動を可能にするように構成され得る。一部の態様では、本明細書中に記載される方法は、細胞培養容器を使用することに関し、容器は、容器内に又は容器外に材料を無菌的に移動させることを可能にするように構成された通路を含む。本明細書で使用する場合、用語「通路」は、容器内への又は容器外への材料の移動を可能にする導管を意味する。例えば、容器は、突き通すことが可能な自己密封膜によってその開口部が密封された開放式の管であってもよい。いくつかの実施形態では、膜はガス透過性膜である。いくつかの実施形態では、通路は密封ガス透過性容器と流体連通する滅菌使い捨て管である。いくつかの実施形態では、通路は、滅菌することが可能である、密封培養容器に組み込まれた、入口ポート及び出口ポートを有するマイクロ流体チャネルのネットワークである。
【0036】
本明細書で使用する場合、用語「無菌的に移動させる」とは、汚染物質の導入なしでの1つの場所から別の場所への材料の移動を意味する。例えば、培地の非無菌移動によって細胞培養物に病原体又は他の汚染物質を導入する可能性があることから、培養培地は貯蔵コンテナから細胞培養容器に無菌的に移動されることが望ましい場合がある。汚染物質としては、細菌(例えば、病原菌及び非病原菌)、ウイルス(例えば、病原性ウイルス及び非病原性ウイルス)、かび、胞子、及び埃が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、汚染物質は細胞である。例えば、異なる対象から取得した細胞が同時に培養される場合、交差汚染(すなわち、1つの培養物から異なる培養物への細胞又は培地の導入)が起こらないように、材料の無菌移動が必要である。
【0037】
増殖及び操作中における細胞培養物の汚染を防止するか又は最小限にするために無菌技術が使用され得る。いくつかの実施形態では、細胞培養のために使用される機器(例えば、ピペット、流体ハンドリングデバイス、操作デバイス、他の自動化又はロボットデバイス等)は適切な技術を用いて滅菌される。非限定的な技術としては、本明細書中に記載される熱曝露(例えば、高圧蒸気殺菌)、表面消毒(例えば、アルコール、漂白剤、又は他の消毒剤を用いる)、消毒ガス(例えば、オゾン、過酸化水素等)の照射及び/又は曝露が挙げられる。いくつかの実施形態では、培地は適切な技術を用いて滅菌される。非限定的な技術としては、熱曝露(例えば、高圧蒸気殺菌)、抗菌/抗ウイルス処理、ろ過及び/又は照射が挙げられる。
【0038】
いくつかの実施形態では、細胞培養の操作は無菌条件下、例えば、消毒され、空気をろ過して潜在的汚染物質を除去した(例えば、インキュベータチャンバ内の)環境内で実施される。
【0039】
いくつかの実施形態では、細胞培養物は、GMP準拠培地又はGMP準拠液体ハンドリング機器の使用を含むものを含む、GMP準拠条件下で増殖及び維持される。いくつかの場合、細胞培養物は方法を標準作業手順(SOP)とともに実施することによって増殖及び維持される。
【0040】
いくつかの実施形態では、細胞培養物は汚染を検出するために監視及び/又は評価され得る。いくつかの実施形態では、異なる種類の生体の細胞による汚染を検出することができる。いくつかの実施形態では、マイコプラズマ、細菌、酵母、又はウイルスによる哺乳動物細胞培養物の汚染は任意の適切な技術を用いて検出することができる。いくつかの実施形態では、細胞培養物の汚染は、汚染(例えば、細菌又は酵母による)の特徴であり、培養で増殖している細胞(例えば、哺乳動物細胞)の特徴ではないpH、濁度等などの1つ以上の培養特性の変化又は変化率についてアッセイすることによって検出することができる。いくつかの実施形態では、1種以上の分子検出アッセイ(例えば、PCR、ELISA、RNAラベリング、若しくは他の酵素学的手法)又は細胞ベースアッセイを用いて、汚染(例えば、マイコプラズマ、細菌、酵母、ウイルス、又は他の汚染)を検出することができる。
【0041】
いくつかの実施形態では、細胞培養物は、類似タイプの細胞による汚染(例えば、異なるヒト細胞又は異なる哺乳動物細胞によって汚染されたヒト細胞系)を検出するために監視及び/又は評価され得る。いくつかの実施形態では、細胞培養物及びその潜在的汚染は、DNAシーケンシング若しくはDNAフィンガープリント法(例えば、短鎖縦列反復配列-STR-フィンガープリント法)、アイソザイム分析、ヒトリンパ球抗原(HLA)判定、染色体分析、核型分析、細胞形態、又は他の手法を使用して評価することができる。
【0042】
いくつかの実施形態では、本明細書中に記載されるインキュベータ又は方法を使用して産生される細胞は、凍結され、それらを後の使用及び/又は輸送のために保存され得る。いくつかの実施形態では、細胞は増殖及び/又は分化後並びに凍結前に凍結保存組成物と混合される。凍結保存組成物を細胞培養容器に添加することができるか、又は細胞を凍結保存組成物とともに細胞培養容器から凍結保存容器に移すことができる。凍結保存組成物に含まれ得る凍結保護物質の非限定的な例としては、DMSO、グリセロール、PEG、スクロース、トレハロース、及びデキストロースが挙げられる。いくつかの実施形態では、細胞培養物から単離された細胞の凍結を容易にするためにインキュベータの構成要素としてフリーザーが提供されてもよい。例えば、1つ以上のフリーザーが内部チャンバ内に配置されてもよく、及び/又はインキュベータキャビネットに(例えば、インキュベータキャビネットの壁内に)組み込まれてもよい。
【0043】
本明細書で使用する場合、「細胞培養容器」は、ハウジングと、細胞を培養するための1つ以上のチャンバとを含むデバイスである。いくつかの実施形態では、ハウジングはフレームである。フレームは蓋に結合されていてもよい。1つ以上のチャンバは、1つ以上の膜を含む細胞培養培地を含んでもよい。いくつかの実施形態では、細胞培養容器は、細胞の増殖を促進するための栄養素を含んでもよい。ある実施形態では、細胞培養容器は1つ以上の細胞又はその群を完全に密封してもよい。細胞培養容器のハウジングは、細胞培養容器とその周囲環境との間におけるガスの移動を可能にするための1つ以上の孔又は開口部を含んでもよい。ある実施形態では、細胞培養容器は、透明な又は光学的に透明な窓を含む。例えば、細胞培養容器のハウジングに結合された蓋は、例えば、顕微鏡又は他のイメージャによって細胞を観察するための光学的に透明な部分を含んでもよい。
【0044】
種々のタイプの細胞培養容器を本明細書中に記載されるように設計することができる。細胞培養容器は、ガラス、プラスチック、又はシリコーンなどの任意の非反応性の生体適合性材料から作製することができる。概して、細胞培養容器はボトル、フラスコ、バイアル、バッグ、管、又は培養プレートへと形成される。いくつかの実施形態では、細胞培養容器はバイアルである。いくつかの実施形態では、細胞培養容器はボトル又はフラスコである。いくつかの実施形態では、細胞培養容器は培養プレートである。いくつかの実施形態では、プレートは細胞培養皿である。いくつかの実施形態では、プレートはマルチウェル培養プレートである。概して、マルチウェルプレートは、96、384、又は1536ウェルのアレイを含む。いくつかの実施形態では、細胞培養容器は、実質的に非反射性の1つ以上の部分を含む。いくつかの実施形態では、細胞培養容器にはバーコードが付されている。いくつかの実施形態では、インキュベータはバーコードリーダを含む。
【0045】
いくつかの実施形態では、細胞培養容器は、特定の目的、例えば、細胞増殖、細胞分化、細胞を特定の検定条件に曝す等のために所望される1種以上の試薬を予めキット化してもよい。いくつかの実施形態では、予めキット化された細胞培養容器は、実験前に細胞培養において特定の実験を実施するために有用な(例えば、細胞増殖培地、増殖因子、選択剤、標識剤等)試薬を含む。予めキット化された細胞培養容器は、試薬の添加を必要としない細胞培養の準備が整った容器を提供することによって実験プロトコルを容易にしてもよい。例えば、自己細胞治療のために分化細胞の個体群を増殖する目的のため、細胞分化用の試薬が予めキット化された細胞培養容器に患者の前駆細胞を添加してもよい。予めキット化された細胞培養容器は、予めキット化された細胞培養容器内の試薬の推奨貯蔵パラメータによって決定される任意の適切な温度で貯蔵することができる。いくつかの実施形態では、予めキット化された細胞培養貯蔵容器は、使用前、約-80℃~約37℃の温度で貯蔵されている。いくつかの実施形態では、予めキット化された細胞培養貯蔵容器は、使用前、約-80℃~約-20℃の温度で貯蔵されている。いくつかの実施形態では、予めキット化された細胞培養貯蔵容器は、使用前、約-20℃~約4℃の温度で貯蔵されている。いくつかの実施形態では、予めキット化された細胞培養貯蔵容器は、使用前、約4℃~約37℃の温度で貯蔵されている。いくつかの実施形態では、予めキット化された細胞培養容器は使い捨てである。いくつかの実施形態では、予めキット化された細胞培養容器は再利用可能及び/又は再充填可能である。
【0046】
いくつかの実施形態では、細胞培養容器は懸濁細胞の培養のために構成されている。いくつかの実施形態では、細胞培養容器は付着細胞の培養のために構成されている。いくつかの実施形態では、細胞培養容器は2D又は3D細胞培養のために構成されている。いくつかの実施形態では、細胞培養容器は、細胞増殖を支持するための1つ以上の表面又はマイクロキャリアを含む。いくつかの実施形態では、これらは、接着性を増加させ、且つ/又は増殖及び分化のために必要な他のシグナルを与えるために細胞外マトリックス成分(例えば、コラーゲン、フィブリン及び/又はラミニン成分)で被覆されている。いくつかの実施形態では、細胞培養容器は、細胞増殖を支持するために、ポリアクリルアミド又はポリエチレングリコール(PEG)ゲルなどの1種以上の合成ヒドロゲルを含む。いくつかの実施形態では、細胞培養容器は、栄養素(例えば、例として特定の細菌又は酵母培養のためのゲル又は寒天)を埋め込んだ固体支持体を含む。いくつかの実施形態では、細胞培養容器は液体培地を含む。
【0047】
いくつかの実施形態では、増殖培地は細胞培養容器内に無菌的に導入される。本明細書で使用する場合、用語「増殖培地」は、細胞の生存率を維持し、増殖を支持する栄養素を含む、細胞を培養するための培地を意味する。場合により、細胞を培養するための種々のパラメータ及び条件が使用され得る。増殖培地は以下の栄養素のいずれかを適切な量及び組み合わせで含んでもよい:塩、緩衝剤、アミノ酸、グルコース、又は他の糖、抗生物質、血清、又は血清置換物、及びペプチド増殖因子などの他の成分等。増殖培地は当該技術分野で周知であり、天然培地又は人工培地として分類されてもよい。細胞培養培地の例としては、Minimum Essential Medium(MEM)、Dulbecco’s Modified Eagle’s Medium(DMEM)、及びRoswell Park Memorial Institute Medium(RPMI)が挙げられるが、これらに限定されない。細胞を培養するための適切な培地を選択してもよい。
【0048】
いくつかの実施形態では、細胞は任意の適切な培養培地のうちの1つで培養される。異なる範囲のpH、グルコース濃度、増殖因子、及び他のサプリメントを有する異なる培養培地を異なる細胞タイプ又は異なる用途に対して使用することができる。いくつかの実施形態では、特別仕様の細胞培養培地、又はDulbecco’s Modified Eagle Medium、Minimum Essential Medium、RPMI培地、HA若しくはHAT培地、若しくはLife Technologies若しくは他の商業的供給元から入手可能な他の培地などの市販の細胞培養培地を使用することができる。いくつかの実施形態では、細胞培養培地は、血清(例えば、ウシ胎仔血清、子ウシ血清、ウマ血清、ブタ血清、又は他の血清)を含む。いくつかの実施形態では、細胞培養培地は血清を含まない。いくつかの実施形態では、細胞培養培地はヒト血小板溶解物(hPL)を含む。いくつかの実施形態では、細胞培養培地は、1種以上の抗生物質(例えば、アクチノマイシンD、アンピシリン、カルベニシリン、セフォタキシム、ホスミドマイシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、ペニシリン、ペニシリンストレプトマイシン、ポリミキシンB、ストレプトマイシン、テトラサイクリン、若しくは任意の他の適切な抗生物質、又はこれらの2つ以上の任意の組み合わせ)を含む。いくつかの実施形態では、細胞培養培地は、1種以上の塩類(例えば、平衡塩類、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム等)を含む。いくつかの実施形態では、細胞培養培地は炭酸水素ナトリウムを含む。いくつかの実施形態では、細胞培養培地は1種以上の緩衝剤(例えば、HEPES又は他の適切な緩衝剤)を含む。いくつかの実施形態では、1種以上のサプリメントが含まれる。サプリメントの非限定的な例としては、還元剤(例えば、2-メルカプトエタノール)、アミノ酸、コレステロールサプリメント、ビタミン、トランスフェリン、界面活性剤(例えば、非イオン界面活性剤)、CHOサプリメント、初代細胞サプリメント、酵母溶液、又はこれらの2つ以上の任意の組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態では、1種以上の増殖又は分化因子が細胞培養培地に添加される。増殖又は分化因子(例えば、WNT系タンパク質、BMP系タンパク質、IGF系タンパク質等)を個々に若しくは組み合わせて、例えば、特定系統への分化を引き起こす異なる因子を含む分化混合物(differentiation cocktail)として添加することができる。増殖又は分化因子及び液体培地の他の態様は、本明細書中に記載されるインキュベータの一部として組み込まれた自動液体ハンドラを用いて添加することができる。
【0049】
いくつかの実施形態では、生物学的材料は細胞培養容器内に無菌的に導入される。生物学的材料の例としては、増殖因子、核酸、及び発現ベクターが挙げられるが、これらに限定されない。増殖因子は、細胞増殖、増殖、治癒及び/又は分化を刺激する天然物質である。概して、増殖因子はタンパク質又はステロイドホルモンである。哺乳動物細胞培養に関連して、増殖因子は、細胞周期を制御するか、又は培養した細胞の増殖若しくは分化を誘発するために培養培地に導入してもよい。増殖因子の非限定的な例としては、アンジオポエチン、骨形態形成タンパク質(BMP)、表皮細胞成長因子(EGF)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、エリスロポエチン(EPO)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、インスリン様増殖因子(IGF)、神経成長因子(NGF)、トランスフォーミング増殖因子β(TGF-β)、及び血管内皮細胞増殖因子(VEGF)が挙げられる。
【0050】
いくつかの実施形態では、生物学的材料は核酸又は発現ベクターである。例えば、体細胞は、遺伝物質コード化リプログラミングタンパク質因子(genetic material encoding reprogramming protein factors)及びマイクロRNAの導入により「リプログラミング」されて人工幹細胞になることができる。いくつかの実施形態では、本明細書中に記載される方法には、細胞培養容器への核酸又は発現ベクターの無菌導入が更に含まれる。いくつかの実施形態では、細胞培養物に核酸が導入される。核酸の例としては、DNA、RNA、siRNA、miRNA、ami-RNA、shRNA、及びdsRNAが挙げられる。いくつかの実施形態では、細胞培養容器に発現ベクターが導入される。用語「発現ベクター」とは、異質遺伝物質を別の細胞に人為的に輸送し、この細胞の遺伝物質を発現させることが可能な組換え分子を意味する。発現ベクターは、一般に、トランスフェクションベクター及び形質導入ベクターとして分類することができる。トランスフェクションベクター(例えば、DNAベースのプラスミドベクター)は、一般に、遺伝物質を細胞にウイルスを媒介せずに転写するために使用される。形質導入ベクター(例えば、レンチバイタル(lentivital)ベクター、AAVベクター、rAAVベクター、及びレトロウイルスベクター)が一般に細胞への遺伝物質のウイルスを媒介した転写のために使用される。いくつかの実施形態では、発現ベクターは導入遺伝子を含む。発現ベクターの導入遺伝子配列の構成は、得られるベクターの用途に依存する。例えば、あるタイプの導入遺伝子配列は、発現すると検出可能なシグナルを生成するレポーター配列を含む。別の例では、導入遺伝子は治療用タンパク質又は治療用機能的RNAをコード化する。
【0051】
一部の態様では、本明細書は、細胞を制御された条件下で(例えば、無菌条件及び/又は滅菌条件下で)監視するための方法に関する。一部の態様では、本明細書中に記載される方法は、細胞培養(例えば、組換えタンパク質発現のために細胞を増殖及び維持するため、又は移植などの治療的用途のために細胞を増殖及び/若しくは分化するため)に有用である。いくつかの実施形態では、本明細書中に記載されるインキュベータの内部の条件(例えば、環境)が監視される。いくつかの場合、インキュベータ内部の温度、湿度、二酸化炭素、酸素、及び他の気体成分を監視してもよい。いくつかの実施形態では、増殖培地の条件(例えば、温度、酸素、二酸化炭素、及びpH)が監視される。増殖培地の条件は、プローブ及びセンサによって直接、又は比色定量(例えば、培地はフェノールレッドを含む)若しくは撮像技術(例えば、赤外線若しくは熱撮像)により間接的に監視することができる。いくつかの実施形態では、増殖培地及び細胞の条件は、増殖培地及び細胞を含む一定分量を培養容器から無菌的に取り出し、この一定分量を培養容器の外部の場所で分析することによって監視される。いくつかの実施形態では、この一定分量は、増殖培地から細胞を分離するために、例えば、遠心分離によってろ過される。
【0052】
いくつかの実施形態では、本明細書中に記載されるインキュベータ及び方法は、培養培地を栄養物の枯渇、pH変化、温度変化、アポトーシス細胞若しくは壊死細胞の蓄積、及び/又は細胞密度に関して監視又はアッセイするために使用される。いくつかの実施形態では、本明細書中に記載されるインキュベータ及び方法は、培養培地若しくは条件を修正若しくは変更するために、及び/又は適宜、細胞培養を継代するために使用される。いくつかの実施形態では、本明細書中に記載される方法は自動化される。
【0053】
細胞培養システム
一部の態様では、本明細書は、インキュベータキャビネットを含む細胞培養システムに関する。本明細書で使用する場合、「インキュベータキャビネット」は、1つ以上の細胞培養容器を保持するように構成された1つ以上のチャンバを含むハウジングである。いくつかの実施形態では、インキュベータキャビネットは移動チャンバ及び内部チャンバを含み、その1つ又は両方は、1つ以上の細胞培養容器を保持するように構成されている。いくつかの実施形態では、インキュベータは、1つ以上のガス源(例えば、ガスシリンダ又はオゾン発生器)、(例えば、水、蒸留水、脱イオン水、細胞培養培地、空気、二酸化炭素、オゾン、及び酸素などの1種以上の液体又はガスを運ぶための)管類、エアフロー機構(例えば、弁、放出弁、ピンホール、ガス調整器、及び質量流量調整器)、圧力機構(例えば、ドライスクロールポンプ、回転ポンプ、運動量輸送ポンプ、拡散ポンプ、又はダイアフラムポンプなどのポンプ、吸引管、真空システム、及び送風機)、環境監視及び制御部(例えば、二酸化炭素、酸素、及びオゾンなどのガスの濃度を検出し且つ/又は制御するためのガスセンサ及び/又はモニタ、熱源又はヒートシンク、温度監視部及び制御部、湿度監視部、ガススクラバ、エアフィルタ、粒子状物質を計測するための計器、圧力計、及びフローメータ)、扉(例えば、開口部又はパネル)、窓(例えば、ガラス、プラスチック、複合材料、又はインキュベータキャビネット内部の領域を見るための他の実質的に透明な材料で作製された光学窓)、(例えば、1種以上のガス又は液体の導入又は除去を可能にするための)ポート、光源(例えば、ランプ、電球、レーザー、及びダイオード)、光学素子(例えば、顕微鏡対物レンズ、ミラー、レンズ、フィルタ、アパーチャ、波長板、窓、偏光子、ファイバー、ビームスプリッタ、及びビーム結合器)、撮像要素(例えば、カメラ、バーコードリーダ)、電気的要素(例えば、回路、ケーブル、電源コード、並びにバッテリー、発電機、及び直流又は交流電源などの電源)、コンピュータ、機械的要素(例えば、モータ、ホイール、ギヤ、ロボット要素、並びにアクチュエータ、例えば、空気式アクチュエータ、電磁アクチュエータ、カムを備えたモータ、圧電アクチュエータ、及びリードスクリューを備えたモータ)、並びに制御要素(例えば、スピンホイール、ボタン、キー、トグル、スイッチ、カーソル、スクリュー、ダイヤル、スクリーン、及びタッチスクリーン)などの1つ以上の他の要素を含んでもよい。いくつかの実施形態では、これらの他の要素の1つ以上はインキュベータの一部であるが、インキュベータキャビネットの外部にある。いくつかの実施形態では、これらの他の要素の1つ以上はインキュベータキャビネット内に含まれる。
【0054】
いくつかの実施形態では、本明細書は、インキュベータ、並びに制御された条件下で(例えば、無菌条件及び/又は滅菌条件下で)細胞を培養、操作及び/又は監視するための方法に関する。いくつかの実施形態では、細胞培養インキュベータは、1つ以上の細胞培養容器内における細胞のインキュベーションのための内部チャンバを有するインキュベータキャビネットを含んでいた。いくつかの場合、移動チャンバから内部チャンバへの内部扉に加えて、インキュベータは、外部環境から直接内部チャンバへと開く少なくとも1つの外部扉(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ以上の外部扉)を含み、例えば、インキュベータが動作していない時間、例えばインキュベータの保守中における内部チャンバへの代替的なアクセスを提供する。いくつかの実施形態では、インキュベータは、内部チャンバ内に、1つ以上の細胞培養容器を貯蔵するための貯蔵場所を含む。
【0055】
いくつかの実施形態では、本明細書中で記載されるインキュベータ又はインキュベータキャビネットは直方体様の形状である。いくつかの実施形態では、本明細書中で記載されるインキュベータ又はインキュベータキャビネットは、1ft~16ftの範囲内の矩形設置面積を有する。いくつかの実施形態では、本明細書中で記載されるインキュベータ又はインキュベータキャビネットは、約1ft、2ft、3ft、4ft、5ft、6ft、7ft、8ft、9ft、10ft、11ft、12ft、13ft、14ft、15ft、又は16ft以下の矩形設置面積を有する。いくつかの実施形態では、本明細書中で記載されるインキュベータ又はインキュベータキャビネットは、1ft~100ftの範囲内の総チャンバ体積を有する。いくつかの実施形態では、本明細書中で記載されるインキュベータ又はインキュベータキャビネットは、約1ft、5ft、10ft、25ft、50ft又は100ft以下のチャンバ体積を有する。いくつかの実施形態では、本明細書中で記載されるインキュベータ又はインキュベータキャビネットは、0.09m~1.78mの範囲内の矩形設置面積を有する。いくつかの実施形態では、本明細書中で記載されるインキュベータ又はインキュベータキャビネットは、約0.1m、0.2m、0.3m、0.4m、0.5m、0.6m、0.7m、0.8m、0.9m、1.0m、1.1m、1.2m、1.3m、1.4m、1.5m、1.6m、又は1.7m以下の矩形設置面積を有する。いくつかの実施形態では、本明細書中で記載されるインキュベータ又はインキュベータキャビネットは、0.03m~3mの範囲内の総チャンバ体積を有する。いくつかの実施形態では、本明細書中で記載されるインキュベータ又はインキュベータキャビネットは、約0.03m、0.1m、0.3m、1m、又は3m以下のチャンバ体積を有する。
【0056】
いくつかの実施形態では、インキュベータキャビネットは単壁式である。いくつかの実施形態では、インキュベータは二重壁式である。いくつかの実施形態では、インキュベータキャビネットの二重壁間に絶縁材料が提供されており、キャビネットからの熱損失を制御し、キャビネット内の温度制御を容易にする。いくつかの実施形態では、インキュベータキャビネットの外壁は、薄板、例えば14~20ゲージの冷間圧延鋼を含む。いくつかの実施形態では、インキュベータキャビネットの内壁(例えば、チャンバ表面)は電解研磨ステンレス鋼を含む。いくつかの実施形態では、インキュベータキャビネットの内壁(例えば、チャンバ表面)は、チタン、コバルト-クロム、タンタル、白金、ジルコニウム、ニオブ、ステンレス鋼、及びこれらの合金などの耐腐食性材料を含む。しかしながら、いくつかの実施形態では、インキュベータキャビネットのチャンバ表面は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などの高分子材料、又はパリレンの商品名で知る高分子材料を含む。いくつかの実施形態では、チャンバ表面は、高分子表面コーティングに導入された銅又は銀又は抗微生物化合物など、抗微生物性を有してもよい。
【0057】
いくつかの実施形態では、インキュベータはエアロック機構を含む。エアロック機構は、内部チャンバの外部環境への曝露又は外部環境の内部チャンバへの曝露の低減を補助するために使用してもよい。例えば、インキュベータキャビネットは、移動チャンバ及び内部チャンバに通じる外部扉を含んでもよく、移動チャンバと内部チャンバとは内部扉を有する壁によって物理的に隔てられている。いくつかの実施形態では、エアロック機構を使用するために、一度に1つの扉が開かれる。例えば、オペレータは外部扉を開いて移動チャンバへのアクセスを得てもよい。オペレータは、その後、ピペット先端部などの物品を移動チャンバ内に挿入してもよい。オペレータは扉を直接操作することによって外部扉を操作してもよい。いくつかの実施形態では、オペレータは、例えば、扉の開閉を制御するように構成された自動化の使用により扉の動作を遠隔的に制御することによって扉を間接的に操作してもよい。いくつかの実施形態では、外部扉が開いている間、内部チャンバの扉は閉じたままである。いくつかの実施形態では、移動チャンバに物品が挿入された後、外部扉は閉じられる(例えば、オペレータによって直接的又は間接的に)。外部扉が閉じられると、移動チャンバ内の滅菌プロセスを使用し、挿入された物品を滅菌する。滅菌が完了すると、内部チャンバの扉を開き、滅菌された物品を移動チャンバから内部チャンバへ移動させる(例えば、1つ以上の移動デバイスによって)。
【0058】
いくつかの実施形態では、移動チャンバ及び/又は内部チャンバは、例えば1つ以上の窓又は扉の周りに気密シール又はハ一メチックシールを有してもよい。特定の実施形態では、グリースなどのシーラント及び/又はOリング、ガスケット、セプタ、KF、LF、QF、クイックカップリングなどの機械的要素、又は他の封止機構を使用して1つ以上の気密シールを確立してもよい。いくつかの実施形態では、溝、凹部、突起及び/又は成形プラスチック要素により、1つ以上の気密シールの確立を容易にしてもよい。いくつかの実施形態では、インキュベータ(例えば、インキュベータキャビネットの内部チャンバ及び/又は移動チャンバ)は、(例えば、インキュベータの1つ以上のチャンバが滅菌された後)閉じられると密閉されて無菌性を保持する1つ以上の窓及び/又は扉を含む。いくつかの実施形態では、インキュベータの各シールは閾値レベルの圧力以下(例えば、1atm以下)で気密である。いくつかの実施形態では、所望のレベルの密閉性能を確保するためにガスケットが提供される。一般に、「ガスケット」は、一般に、圧縮されている間の2つの物体間の漏れを防ぐために2つの物体間の空間を埋めるメカニカルシールと理解される。ガスケットは、一般に、ガスケットペーパー、ゴム、シリコーン、金属、コルク、フェルト、ネオプレン、ニトリルゴム、ガラス繊維、又はプラスチックポリマー(ポリクロロトリフルオロエチレンなど)などのシート材料を切断することによって作製される。多くの場合、ガスケットは、変形して、任意のわずかな不規則性を含むように設計されている空間を確実に埋めることができるように、ある程度の降伏を提供する材料から作製されることが望ましい。いくつかの実施形態では、ガスケットは、適切に機能させるためにシーラントを直接ガスケット表面に取り付けて使用することができる。いくつかの実施形態では、ガスケット材料は、二酸化炭素又はオゾンと反応しない独立気泡ネオプレンフォームであり得る。
【0059】
内部チャンバ
本明細書で使用する場合、「内部チャンバ」は、インキュベータキャビネット内に配置されたチャンバである。内部チャンバは、1つ以上の窓(例えば、ガラス、プラスチック、複合材料、又はインキュベータキャビネット内部の領域を見るための他の実質的に透明な材料で作製された光学窓)を含んでもよい。内部チャンバは、(例えば、内部チャンバへの又は内部チャンバからの物品の移動を可能にするための)少なくとも1つの扉を含んでもよい。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの扉は内部チャンバと移動チャンバとの間に配置されてもよい。ある実施形態では、インターロックにより、望ましくないとき(例えば、インキュベータキャビネットの一部分が周囲環境へと開いているとき、汚染物質が内部チャンバに入ることができないように)に扉が開くことを防止してもよい。内部チャンバは任意の適切な大きさ及び幾何学的形状のものであってもよい。いくつかの実施形態では、インキュベータキャビネットは2つ以上の内部チャンバを含んでもよい。他の実施形態では、内部チャンバは、内部チャンバの異なる領域を画定するために1つ以上の隔壁を含んでもよい。1つ以上の内部チャンバ又はその隔壁は異なる環境条件を有してもよい。内部チャンバ内部の環境(例えば、気圧、ガス含有量、温度、光、及び湿度)は、1つ以上の計器、モニタ、センサ、制御部、ポンプ、弁、アパーチャ及び/又は光源によって測定及び/又は制御されてもよい。いくつかの実施形態では、内部チャンバは、例えば1つ以上の窓又は扉の周りに気密シール又はハ一メチックシールを有してもよい。特定の実施形態では、グリースなどのシーラント及び/又はOリング、ガスケット、セプタ、KF、LF、QF、クイックカップリングなどの機械的要素、又は他の封止機構を使用して、1つ以上の気密シールを確立してもよい。いくつかの実施形態では、溝、凹部、突起及び/又は成形プラスチック要素により、1つ以上の気密シールの確立を容易にしてもよい。
【0060】
内部チャンバは任意の有用な材料で作製してもよい。いくつかの実施形態では、内部チャンバは、1種以上のプラスチック、ポリマー、金属、又はガラスを含んでもよい。
【0061】
本明細書で使用する場合、「扉」は、開いているときに2つ以上の環境又は領域間の連通を可能にし、閉じているときに2つ以上の環境又は領域間の連通を防止する要素である。扉は、スライドドア、ポケットドア、スイングドア、ヒンジドア、回転ドア、ピボットドア、又はフォールディングドアなどの任意の種類のものであってもよい。扉は手動で、機械的に、又は電気的に動作してもよい。例えば、オペレータは扉若しくはその要素(例えば、ハンドル)を手動で把持し、引き、押し、及び/又はそうでなければ扉若しくはその要素(例えば、ハンドル)と物理的に相互作用することにより、又は機械的制御部(例えば、ボタン、トグル、スピンホイール、キー、スイッチ、カーソル、スクリュー、ダイヤル、スクリーン、又はタッチスクリーン)を操作することにより扉を開閉してもよい。ある実施形態では、扉は、コンピュータなどによる電気又はデジタル制御によって制御してもよい。扉は自動的に開く扉であってもよい。例えば、扉は、扉が開いているか閉じているかを検出し、及び/又は扉がいつ開閉するかを制御する、圧力センサ、赤外線センサ、モーションセンサ又はリモートセンサなどのセンサを含んでもよい。扉は、機械的、空気的、電気的、又は他の手段によって開いてもよい。いくつかの実施形態では、1つ以上の扉は1つ以上のロック機構を含んでもよい。特定の環境では、1つ以上の扉は、1つ以上の扉が望ましくないとき(例えば、1つ以上のチャンバが外部環境に対して開かれているとき)に開くことを防止するために、1つ以上のインターロック(例えば、ピン、バー、若しくはロックなどの機械的インターロック、又はスイッチなどの電気的インターロック)を含んでもよい。
【0062】
1つ以上の物品を移動させるための移動デバイスを使用して、移動チャンバと内部チャンバとの間で物品を移動させてもよい。いくつかの実施形態では、移動デバイスは、コンベヤベルト又は物品を操作するための他の類似のデバイスを含む。移動デバイスによって移動させることができる物品の非限定的な例としては、細胞培養容器、ピペット、コンテナ、シリンジ、並びに細胞の培養で用いられる他の材料及び器具が挙げられる。いくつかの実施形態では、2つ以上の移動デバイスが含まれてもよい。いくつかの実施形態では、移動チャンバ及び/又は内部チャンバ内に1つ以上の移動デバイスが配置されている。いくつかの実施形態では、移動デバイスは1つ以上のロボット要素を含んでもよい。例えば、移動デバイスは、1つ以上の物品(例えば、ピペット)を把持し、持ち上げ、押し、つかみ、摺動させ、回転させ、並進させ、放し、上げ、下げ、及び/又は傾けることが可能な1つ以上のロボットアームを含む含んでもよい。
【0063】
いくつかの実施形態では、移動デバイスは細胞培養容器移動デバイスである。本明細書で使用する場合、「細胞培養容器移動デバイス」は、1つ以上の細胞培養容器を第1の場所から第2の場所へ移動させることができるデバイスを意味する。いくつかの実施形態では、移動デバイスは内部チャンバ内に固定されている。ある実施形態では、移動デバイスは、1つ以上の物品をインキュベータキャビネット内の複数の場所へ、又はインキュベータキャビネット内の複数の場所から移動させてもよい。例えば、細胞培養容器移動デバイスを使用して、細胞培養容器を移動チャンバから内部チャンバへ、及び/又は貯蔵場所から撮像場所へ移動させてもよい。いくつかの実施形態では、インキュベータキャビネットは、1つ以上の物品を移動させるための2つ以上の移動デバイス(例えば、チャンバ間及びチャンバ内で物品を移動させるための別個の移動デバイス)を含む。細胞培養容器移動デバイスは、弁(例えば、電磁弁又は空気弁)、ギヤ、モータ(例えば、電気モータ又はステッピングモータ)、ステージ(例えば、xyステージ又はxyzステージ)、ピストン、ブレーキ、ケーブル、ボールスクリューアセンブリ、ラックアンドピニオン機構、グリッパ、アーム、ピボットポイント、ジョイント、並進要素、又は他の機械的若しくは電気的要素などの1つ以上の要素を含んでもよい。いくつかの実施形態では、細胞培養容器移動デバイスは1つ以上のロボット要素を含んでもよい。例えば、細胞培養容器移動デバイスは、1つ以上の細胞培養容器を把持し、持ち上げ、押し、つかみ、摺動させ、回転させ、並進させ、放し、上げ、下げ、及び/又は傾けることが可能なロボットアームを含んでもよい。いくつかの好ましい実施形態では、細胞培養容器移動デバイスは、1つ以上の細胞培養容器を選択的に且つ解放可能に把持する。ある実施形態では、細胞培養容器移動デバイスは、機械的グリッパに結合されたアームを含んでもよい。例えば、アームは、一端に又はその近傍に、細胞培養容器を解放可能に把持するための機械的グリッパを含んでもよく、他端に又はその近傍においてインキュベータの表面又は要素に確実に結合されていてもよい。いくつかの実施形態では、ロボットアームは、機械的グリッパがアームに結合する箇所であるピボットポイントと、アームに沿ったアームの一部分のフレキシブルな回転及び並進を可能にするための1つ以上のピボット及び/又は並進ジョイントとを含む。このようにして、ロボットアームは、インキュベータキャビネット内の(例えば、内部チャンバ内の貯蔵アレイ内の)異なる水平位置及び垂直位置にある1つ以上の細胞培養容器にアクセスしてもよい。
【0064】
いくつかの実施形態では、細胞培養容器移動デバイスは自動移動デバイスである。例えば、自動移動デバイスはロボットアームであってもよく、ロボットアームは、インキュベータの内部チャンバ内の貯蔵場所からインキュベータの内部チャンバ内の撮像場所へ細胞培養容器を移動させるようにプログラムされたコンピュータによって制御される。いくつかの実施形態では、細胞培養容器移動デバイスは手動で操作される。例えば、細胞培養容器をインキュベータの内部チャンバ内の貯蔵場所からインキュベータの内部チャンバ内の撮像場所へ移動させるために、インキュベータの内部チャンバ内に配置されたロボットアームは、インキュベータの内部チャンバの外部の位置からユーザが制御するジョイスティックによって操作されてもよい。
【0065】
本明細書で使用する場合、「貯蔵場所」は、1つ以上の細胞培養容器が貯蔵される(例えば、インキュベータキャビネット内の)場所を意味する。例えば、1つ以上の細胞培養容器は貯蔵場所において貯蔵され、後に異なる場所(例えば、撮像場所)に移動させてもよい。貯蔵場所は、インキュベータの内部チャンバキャビネット内に配置されてもよい。貯蔵場所は、複数の細胞培養容器を貯蔵するように構成されてもよい。例えば、貯蔵場所は、1つ以上の貯蔵アレイ、ラック、棚、仕切り、分類棚、トレー、スロット、又は他の位置若しくは機構を含んでもよい。いくつかの実施形態では、貯蔵場所は細胞培養容器を水平に貯蔵するように構成されてもよい一方、他の実施形態では、貯蔵場所は細胞培養容器を垂直に貯蔵するように構成されてもよい。例えば、貯蔵場所は、互いに垂直に積み重ねられた細胞培養容器を受け入れるための複数のスロットを含んでもよい。貯蔵場所は、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個、20個、25個、30個、35個、40個、45個、50個、100個、又は任意の他の個数の細胞培養容器を保持するように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、貯蔵場所は、100個超の細胞培養容器を保持するように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、貯蔵場所にある各細胞培養容器は異なる対象の細胞を収容している。いくつかの実施形態では、貯蔵場所は、1つ以上の貯蔵アレイ、ラック、棚、仕切り、分類棚、トレー、スロット、又は他の位置若しくは機構を移動させるための機構を含んでもよい。例えば、貯蔵場所は、貯蔵ラックを内部チャンバ内の1つの位置から内部チャンバ内の別の位置へ移動させて、例えば、異なる位置に貯蔵された1つ以上の細胞培養容器へのアクセスを容易にするための1つ以上のモータと、可動ステージ(例えば、xyステージ又はxyzステージ)とを含んでもよい。いくつかの実施形態では、インキュベータキャビネットは、1つ以上の細胞培養容器を移動させるための1つ以上の細胞培養容器移動デバイスを含んでもよい。
【0066】
貯蔵場所は、1つ以上の細胞培養容器を確実に保持するか又は受け入れるように構成されてもよい。例えば、貯蔵場所の1つ以上の構成要素は、1つ以上の粘着的、磁気的、電気的及び/又は機械的構成要素(例えば、スナップ、締結具、ロック、止め金、ガスケット、Oリング、セプタ、ばね、及び他の係合部材)を有する1つ以上のロック機構を含んでもよい。いくつかの実施形態では、貯蔵場所及び/又は細胞培養容器は、1つ以上の溝若しくは凹部を含んでもよく、及び/又は成形プラスチック部品を含んでもよい。例えば、細胞培養容器は、貯蔵場所にある1つ以上の対応する溝、穴、又は凹部に挿入するための成形された1つ以上の突出特徴部(例えば、リム又はノブ)を含んでもよい。いくつかの場合、細胞培養容器は、貯蔵場所にある1つ以上の対応する突出特徴部に適合するように成形された1つ以上の溝、穴、又は凹部を含んでもよい。
【0067】
本明細書で使用する場合、「イメージャ」は、光(例えば、送信光又は散乱光)、色、形態、又は要素の数などの他の検出可能なパラメータ、又はこれらの組み合わせを測定するための撮像デバイスを意味する。イメージャは撮像デバイスとも呼ばれる場合がある。ある実施形態では、イメージャは、1つ以上のレンズ、ファイバー、カメラ(例えば、電荷結合デバイスカメラ又はCMOSカメラ)、アパーチャ、ミラー、ファイラー、光源(例えば、レーザー又はランプ)、又は他の光学素子を含む。イメージャは顕微鏡であってもよい。いくつかの実施形態では、イメージャは明視野顕微鏡である。他の実施形態では、イメージャはホログラフィックイメージャ又は顕微鏡である。他の実施形態では、イメージャは蛍光顕微鏡である。
【0068】
本明細書で使用する場合、「蛍光顕微鏡」は、細胞又は他の生物学的実体の表面内及び/又は表面上のいずれかに存在する蛍光標識から放出される光を検出することができる撮像デバイスを意味し、前記標識は、異なる波長の光の吸収に応答して特定の波長の光を放出する。
【0069】
本明細書で使用する場合、「明視野顕微鏡」は、サンプルを照明し、サンプルによって吸収される光に基づいて画像を生成するイメージャである。任意の適切な明視野顕微鏡を、本明細書中に記載されるインキュベータキャビネットと併せて使用してもよい。
【0070】
本明細書で使用する場合、「ホログラフィックイメージャ」は、電磁放射の強度及び位相情報(例えば、波面)の両方を測定することによって物体(例えば、サンプル)に関する情報を提供するイメージャである。例えば、ホログラフィック顕微鏡は、サンプルを通過後に伝送される光と、サンプルを透過する光のビームを基準ビームと組み合わせることにより得られる干渉縞(例えば、位相情報)との両方を測定する。
【0071】
ホログラフィックイメージャは、また、別個の基準ビームを妨げることなく、且つ実質的にコヒーレントな源と1つ又は複数の放射線検出器との間に任意の屈折又は反射光学素子を有して又は有さずに、1つ以上の放射線検出器により、撮像される物体によって直接回折又は散乱した、実質的にコヒーレントな源からの電磁放射のパターンを記録するデバイスであってもよい。
【0072】
いくつかの実施形態では、インキュベータキャビネットは1つのイメージャを含む。いくつかの実施形態では、インキュベータキャビネットは2つのイメージャを含む。いくつかの実施形態では、2つのイメージャは同一種類のイメージャ(例えば、2つのホログラフィックイメージャ又は2つの明視野顕微鏡)である。いくつかの実施形態では、第1のイメージャは明視野顕微鏡であり、第2のイメージャはホログラフィックイメージャである。いくつかの実施形態では、インキュベータキャビネットは2つを超えるイメージャを含む。いくつかの実施形態では、細胞培養インキュベータは3つのイメージャを含む。いくつかの実施形態では、3つのイメージャを有する細胞培養インキュベータは、ホログラフィック顕微鏡、明視野顕微鏡、及び蛍光顕微鏡を含む。
【0073】
本明細書で使用する場合、「撮像場所」は、イメージャが1つ以上の細胞を撮像する場所である。例えば、撮像場所は、光源の上方に及び/又は1つ以上の光学素子(例えば、レンズ、アパーチャ、ミラー、対物レンズ、及び光コレクタ)と垂直に位置合わせされて配置されてもよい。
【0074】
本明細書で使用する場合、「基準マーク」は、1つ以上の構成要素の位置合わせを容易にする特徴を意味する。いくつかの実施形態では、基準マークは、蛍光培地上の1つ以上の穴アパーチャ又は印刷された若しくはエンボス加工された蛍光材料を含んでもよい。他の実施形態では、基準マークは格子、線、又は記号を含んでもよい。いくつかの実施形態では、1つ以上の細胞培養容器は、1つ以上の細胞培養容器のイメージャとの位置合わせを容易にするための1つ以上の基準マークを含む。いくつかの実施形態では、基準マークは、移動デバイス及びロボットデバイスを含む可動部品と関連付けてもよい。
【0075】
いくつかの実施形態では、細胞培養容器はイメージャと実質的に位置合わせされている。いくつかの実施形態では、細胞培養容器は少なくとも1つの基準マークの使用によってイメージャと実質的に位置合わせされている。本明細書で使用する場合、「実質的に位置合わせされている」という用語は、1つ以上の要素が互いに実質的に重なっており、同一であり、及び/又は列で並んでいることを意味する。1つ以上の位置(例えば、撮像場所)における1つ以上の細胞培養容器の実質的な位置合わせにより、細胞培養容器の重なった画像の取得を可能にすることによってサンプルの分析を容易にしてもよい。例えば、細胞培養容器は第1の撮像場所において第1のイメージャにより撮像されてもよく、その後、第2の撮像場所において第2のイメージャにより撮像されてもよい。各イメージャの撮像領域が実質的に位置合わせされている場合、第1のイメージャによって記録された画像と第2のイメージャによって記録された画像とを分析のために組み合わせ(「つなぎ合わせ」)てもよい。1つ以上の細胞培養容器上にある1つ以上の基準マークによって実質的な位置合わせを容易にしてもよい。いくつかの場合、1つ以上の撮像場所又は他の場所(例えば、操作場所又は維持場所)にある1つ以上の基準マークによって実質的な位置合わせを容易にしてもよい。
【0076】
本明細書で使用する場合、「細胞を操作するためのマニピュレータ」は、内部チャンバ内で細胞を操作するためのデバイスを意味する。マニピュレータは、1つ以上の針、キャピラリー、ピペット及び/又はマイクロマニピュレータを含んでもよい。例えば、マニピュレータは細胞ピッカーを含んでもよい。細胞を操作するためのマニピュレータは、第1の場所に存在する所望の細胞又はその群を所定の基準に基づいて検出し、この所望の細胞又はその群を第1の場所から第2の場所へ移動させることにより動作してもよい。細胞ピッカーは、所望の又は所望でない(例えば、分化前の細胞排除(weeding))細胞又はその群を手動又は自動分析に基づいて検出、ピッキング及び/又は移動してもよい。いくつかの実施形態では、イメージャによって生成される情報を分析し、所望の又は所望でない細胞を検出してもよい。細胞ピッカーは、その後、所望の又は所望でない細胞を第2の場所に移動させてもよい。例えば、イメージャが細胞培養容器内又は細胞培養容器上の細胞を撮像場所において撮像してもよく、画像を使用して所望の又は所望でない細胞又はその群を同定する。細胞ピッカーは、その後、例えば、1つ又は複数の各所望の細胞に針、キャピラリー、ピペット、又はマイクロマニピュレータで接触し、細胞培養容器又は内部チャンバ内の別の場所内又は別の場所上において1つ又は複数の細胞のその第1の場所から第2の場所への移動を実施することにより、所望の又は所望でない細胞を移動させてもよい。いくつかの実施形態では、細胞の第1の場所は細胞培養容器内であっても細胞培養容器上であってもよい。特定の実施形態では、細胞ピッカーは、細胞培養容器内又は細胞培養容器上の第1の場所から同じ細胞培養容器上の第2の場所へ細胞を移動させる。他の実施形態では、細胞ピッカーは、第1の細胞培養容器内又は第1の細胞培養容器上の第1の場所から第2の細胞培養容器内又は第2の細胞培養容器上の第2の場所へ細胞を移動させる。特定の他の実施形態では、細胞ピッカーは、細胞培養容器内又は細胞培養容器上の第1の場所から細胞培養容器内又は細胞培養容器上ではない内部チャンバ内の第2の場所へ細胞を移動させる。
【0077】
いくつかの実施形態では、マニピュレータは少なくとも1つの微小電極を含む。本明細書で使用する場合、用語「微小電極」は、細胞に電気刺激を送達するために使用される電気伝導体を意味する。例えば、微小電極は、遺伝物質を電気穿孔法によって細胞内に送達するために使用され得る。いくつかの実施形態では、マニピュレータは少なくとも1つのマイクロインジェクタを含む。一般に、マイクロインジェクタはガラスマイクロピペットであり、ガラスマイクロピペットは引かれて、鋭利な中空構造体を形成する。鋭利な中空構造体は細胞の膜に穿孔することが可能であり、細胞内に遺伝物質を導入するための導管として機能する。いくつかの実施形態では、細胞培養物は、本明細書中に記載されるインキュベータ及び容器内での培養中に他の手法で操作される。例えば、細胞培養物は、核酸(例えば、DNA又はRNA)をトランスフェクトしてもよく、又はウイルス感染に曝露させてもよい(例えば、組換えウイルス粒子を用いてDNA又はRNAを送達する)。
【0078】
いくつかの実施形態では、マニピュレータは流体ハンドリングデバイスを含む。例えば、マニピュレータは、ピペット先端部ホルダ又は細胞印刷デバイスなどの1つ以上の液体分与装置を含んでもよい。いくつかの実施形態では、流体ハンドリングデバイスは自動化されている。一部の態様では、インキュベータの内部チャンバの内部に配置された流体貯蔵容器から細胞培養容器に増殖培地を分与する自動流体ハンドリングシステムを有するマニピュレータが使用され得る。
【0079】
いくつかの実施形態(例えば、付着細胞培養に関する)では、培養培地を吸引によって直接除去し、新しい培地と交換することができる。いくつかの実施形態(例えば、非接着/懸濁培養に関する)では、培地交換は、細胞培養物を遠心分離し、古い培養培地を除去し、これを新しい培地と交換することを含み得る。いくつかの実施形態では、遠心分離機がインキュベータの内部チャンバ内に配置されている。いくつかの実施形態では、培養容器は連続的な培地交換を可能にする。いくつかの実施形態では、本明細書中に記載されるインキュベータは、細胞を支持するために培養培地の異なる態様を処理、交換、供給及び/又は維持するために使用され得る1つ以上の構成要素を含んでもよい。インキュベータは、廃棄培地を含むリザーバ及び/又は新しい培地を含むリザーバを含んでもよい。このようなリザーバは(例えば、一時貯蔵のために)インキュベータ内の冷蔵庫又はインキュベータの冷蔵区域内にあってもよい。いくつかの実施形態では、1つ以上のリザーバがインキュベータの外部に提供され、液体ハンドラユニット(例えば、吸引器を有する液体ハンドルユニット)又はインキュベータ内の一時リザーバから供給するか又は引くために、インキュベータの空間へ及びこの空間から配管が提供され、細胞フィーディング、培地交換、及び他の関連する要求を容易にする。懸濁細胞について、インキュベータ内に、廃棄培地から細胞を分離するためのデバイス(例えば、細胞分画を容易にするための遠心分離機)を提供し、本明細書中に記載されるインキュベータの一部として、自動化された培地交換を容易にしてもよい。いくつかの実施形態では、本明細書は、細胞培養の最適な増殖のために細胞培養条件を自動的に監視及び調整することが可能である、コンピュータに接続された細胞培養インキュベータを含むシステムを提供する。
【0080】
いくつかの実施形態では、細胞は本明細書中に記載されるインキュベータ内で継代される。いくつかの実施形態では、細胞培養物が分割され、細胞培養物のサブセットが更なる増殖のために新しい培養容器に移される。いくつかの実施形態(例えば、付着細胞培養に関する)では、新しい培養容器に移される前に、(例えば、例として穏やかなかき取りを用いて機械的に及び/又は例えば、トリプシンEDTA若しくは1種以上の他の酵素を用いて酵素的に)表面から細胞が剥離される。いくつかの実施形態(例えば、懸濁細胞培養に関する)では、少量の細胞培養物が新しい培養容器に移される。
【0081】
いくつかの実施形態では、マニピュレータは手動で操作される。例えば、インキュベータキャビネットの内部チャンバ内に配置された流体ハンドリングシステムを有するマニピュレータは、インキュベータの内部チャンバキャビネットの外部に配置された、ユーザ管理の(user-directed)ジョイスティックに電子的に接続され、これにより制御されてもよい。いくつかの実施形態では、ユーザ管理のジョイスティックはディスプレイデバイスに接続されている。いくつかの実施形態では、ディスプレイデバイスは、インキュベータの内部チャンバキャビネット内において撮像デバイスにより捕捉された画像を示す。
【0082】
いくつかの実施形態では、マニピュレータは自動である。例えば、インキュベータキャビネットの内部チャンバ内のマニピュレータは、マニピュレータに指示する、インキュベータキャビネット外部のコントローラに電子的に接続されてもよい。いくつかの実施形態では、コンピュータは特定の細胞培養容器がインキュベータ内部内のいずれの箇所に位置するかを自動的に記憶する。いくつかの実施形態では、コンピュータは、バーコード又は他の識別情報を使用して前記位置が適切に記憶されたことを確認する。
【0083】
細胞を操作するためのマニピュレータの1つ以上の要素は、操作前に、例えば、滅菌組成物又は方法(例えば、エタノール又はオゾンガス)を使用して滅菌されてもよい。
【0084】
本明細書で使用する場合、「操作場所」は、細胞を操作するためのマニピュレータ(例えば、細胞ピッカー)によって細胞が操作される場所を意味する。ある実施形態では、操作場所は撮像場所と同一であってもよい。
【0085】
一態様によれば、細胞培養インキュベータは、撮像場所及び操作場所を有するインキュベータキャビネットを含む。細胞培養容器の細胞は、撮像場所においてイメージャにより撮像され、操作場所においてマニピュレータにより操作される。いくつかの実施形態では、撮像場所及び操作場所は、インキュベータキャビネット内の2つの異なる位置である。細胞培養インキュベータは、細胞培養容器を撮像場所と貯蔵場所との間で移動させる移動デバイスを含んでもよい。他の実施形態では、培養容器の細胞が操作場所において撮像されるように、撮像場所及び操作場所は同じである。
【0086】
いくつかの実施形態では、イメージャはマニピュレータとともに使用してもよい。例えば、イメージャが細胞培養容器内又は細胞培養容器上の細胞を撮像場所において撮像してもよく、画像を使用して所望の細胞又はその群を同定する。マニピュレータは、その後、所望の細胞を移動させてもよい。移動は、例えば、1つ又は複数の各所望の細胞に針、キャピラリー、ピペット又はマイクロマニピュレータで接触し、1つ又は複数の細胞の、その第1の場所から細胞培養容器又は内部チャンバ内の別の場所内又は別の場所上の第2の場所への移動を実施することによる。いくつかの実施形態では、マニピュレータは増殖培地、増殖因子、又は発現ベクターを細胞培養容器内に無菌的に移動させる。
【0087】
いくつかの実施形態では、インキュベータキャビネット内の1つの位置が撮像場所及び操作場所として機能してもよい。いくつかの実施形態では、撮像場所と操作場所とはインキュベータキャビネット内の異なる場所にある。一実施形態では、細胞はそれらがマニピュレータによって操作される際に撮像される。
【0088】
いくつかの実施形態では、インキュベータ内部の環境は制御システムによって制御される。制御システムは、インキュベータ内部(例えば、1つ以上の内部チャンバ内)の温度、湿度、二酸化炭素、酸素、及び他の気体成分((例えば、オゾン及び過酸化水素などの滅菌ガス))を制御するように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、制御システムは、各内部チャンバ内の環境条件(例えば、温度、湿度、二酸化炭素、酸素及び他の気体成分)を別々に制御する。例えば、繊細な機械的、電子的及び光学的構成要素を保護するために、内部チャンバの湿度は、貯蔵場所を有する内部チャンバよりも低い水準に維持してもよい。いくつかの実施形態では、インキュベータは、既定のセンサを備えたモニタリングシステムが更に提供される。モニタリング機器の例としては、酸素モニタ、二酸化炭素モニタ、オゾンガス検出器、過酸化水素モニタ、及びマルチガスモニタが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、いくつかの実施形態では、インキュベータは、有利には、細胞増殖に関連する種々のパラメータに応答する複数のセンサを含む。これらのパラメータは、温度、空気純度、汚染物質レベル、pH、湿度、N、CO、O、及び光を含んでもよい。このモニタリングシステムにより、培養又は処理の継続時間にわたってセンサを使用し、インキュベータにおけるパラメータを測定することができる。いくつかの実施形態では、本明細書中の他の箇所に記載されるように、センサによって測定されたパラメータは、更なる処理のために、モニタリングシステムにより、回線を介して、コンピュータ制御されたモニタリング及び制御システムに送信される。
【0089】
いくつかの実施形態では、本明細書中に記載されるインキュベータとともに環境モニタリングシステムが使用され得る。いくつかの実施形態では、温度、空気の組成(例えば、CO濃度、O濃度等)、及び/又はシステムの湿度の測定値を提供する1つ以上のセンサをインキュベータと組み合わせることができる(例えば、インキュベータキャビネット内に取り付けることができる)。いくつかの実施形態では、1つ以上のこのようなセンサは、インキュベータの一部として組み込む(例えば、インキュベータの内部壁又は扉に取り付けられるか、内蔵されるか、又はそうでなければ接続される)ことができる。いくつかの場合、1つ以上のセンサは、インキュベータキャビネットの外部又は内部の任意の適切な位置に配置することができる(例えば、移動チャンバ及び/又は内部チャンバ内、例えば、内部壁及び/又は上部若しくは下部内部表面に取り付けられる)。
【0090】
いくつかの実施形態では、センサに接触するガス(例えば、キャビネット内のガス又は周囲空気)の濃度のリアルタイムの読取値をパーセント、百万分率、又は任意の他の標準単位で提供することができるガスセンサが提供される。本明細書中に記載される方法及びインキュベータで使用するためのガスセンサとしては、COセンサ、Oセンサ、Nセンサ、オゾンガス検出器、過酸化水素モニタ、マルチガスモニタ、及びCOセンサが挙げられる。このようなセンサは多くの商業的供給元から入手可能である。いくつかの場合、インキュベータの環境は、本明細書中に記載されるセンサによって提供される情報に基づいて調整又は制御してもよい。例えば、望ましい濃度よりも低いCOがインキュベータ内に存在することをCOセンサが表示すると、インキュベータ内のCOのレベルが増加されてもよい。
【0091】
いくつかの実施形態では、インキュベータ内の温度を制御する目的のため、1つ以上の加熱又は冷却要素をインキュベータ内に組み込むことができる(例えば、キャビネット若しくは扉の内部表面上、及び/又はキャビネットの壁及び/若しくは基部の1つ以上内に組み込まれる)。いくつかの実施形態では、加熱要素は、液体、例えば、細胞培養培地又は他の試薬を解凍するために使用することができる。
【0092】
いくつかの実施形態では、1つ以上の空気若しくは酸素源、カーボンフィルタ、及び/又は1つ以上の加湿若しくは脱湿システムがインキュベータに接続され、(例えば、インキュベータ内の又はインキュベータに取り付けられた1つ以上のセンサからの信号に応答して)インキュベータ内の酸素、二酸化炭素及び/又は湿度のレベルを制御するように構成されている。いくつかの実施形態では、1つ以上のコントローラがセンサ及び他のシステムに取り付けられており、インキュベータの内部環境を制御する。
【0093】
いくつかの実施形態では、インキュベータは1つ以上の光源(例えば、白熱電球、LED、UV又は他の光源)を含むことができる。これらはキャビネット内の領域を照明するためにインキュベータ内に配置され得る。いくつかの実施形態では、培養システムの動作は、インキュベータの内部若しくは外部に配置され得るカメラ又は他の感光デバイスを用いて監視される。いくつかの実施形態では、光源は殺菌光源である。例えば、UVランプを、本明細書に記載されるインキュベータの移動チャンバ及び/又は内部チャンバ内に配置してもよい。
【0094】
いくつかの実施形態では、インキュベータは透明な物体(例えば、窓)を含む。透明な物体は、インキュベータ内からの可視光又は他の光の波長を、インキュベータの外部に配置されたカメラ又は他の感光デバイスによって検出することを可能にする。いくつかの実施形態では、透明な物体の内部表面は、(例えば、インキュベータ内の湿潤空気により)内部表面に蓄積し、システムの監視を妨げる可能性のある結露の滴を防止又は除去するために、(例えば、キャビネットの内側から)拭くことができる。いくつかの実施形態では、表面はコントローラによって自動的に制御されるワイパにより拭くことができる。
【0095】
いくつかの実施形態では、インキュベータの1つ以上の扉が開いている場合(例えば、外部扉又は内部扉などのインキュベータキャビネット扉が開いている場合)に検出するために、センサ又は他の特徴が提供される。このような特徴は、無菌性を脅かす、産生を損なう、アッセイ又は実験を妥協すること等となり得る、インキュベータ(例えば、インキュベータキャビネット)の予定外又は無許可の開放をオペレータが常に把握するか又は警告を受けることを可能にすることから有用である。
【0096】
いくつかの実施形態では、インキュベータキャビネット内における1つ以上のデバイス(例えば、信号を検出し、この信号を使用してデバイスの位置を特定することができるセンサを有するデバイス)の位置を特定するために使用され得る高周波ビーコン又は他の信号源がインキュベータ内(例えば、インキュベータキャビネット内)に配置されている。いくつかの実施形態では、デバイスは信号源を有することができ、センサはインキュベータキャビネットのチャンバのうちの1つ以上の内部に配置することができる(例えば、内部チャンバの内部表面に配置される)。
【0097】
いくつかの実施形態では、光信号又はレーザー(例えば、レーザー信号のグリッド)を使用して、インキュベータキャビネット内の1つ以上のデバイス又は構成要素の位置及び/又は識別を特定することができる。このような情報は、例えば、有線又は無線で外部のコンピュータ又は監視ステーションに通信することができる。この情報を用いて、インキュベータキャビネット内の移動デバイス、例えばロボットアームの動作を制御し、移動デバイスがインキュベータキャビネット内のデバイス又は物品を適切に把持、操作、又は操縦することができるようにし得る。
【0098】
いくつかの実施形態では、コンテナ又は容器がインキュベータキャビネット内に運ばれる前、ユーザは、インキュベータキャビネット内に挿入されている特定のコンテナ、容器、原料、又は細胞に基づいて自動化システムプロトコルを選択することができる。インキュベータ及び/又は1つ以上のインキュベータ構成要素、並びに増殖される細胞に関する関連情報は、データシステムに入力することができる。例えば、バーコード(例えば、1次元又は2次元バーコード)などの1つ以上の識別子をコンテナ又は容器に配置することができ、コンテナの種類、コンテナの内容物、及びどのようなアッセイ又は操作がコンテナ内のサンプルに対して実施されるかなどの他の重要な情報を明記することができる。いくつかの実施形態では、インキュベータシステム及び/又は細胞に関する情報を1つ以上のバーコードに、別個のデータシステムに、又はこれらの組み合わせに収容することができる。ユーザは、また、容器若しくは他のコンテナの次元(例えば、高さ、直径)を特定する情報を入力してもよく、又はシステム自体を、容器又は他のコンテナの高さを判定し、測定する。この情報を使用して、分析モジュールが、容器内で増殖させた細胞に対してアッセイ若しくは他の操作を実施する準備が整ったとき、又はアッセイ若しくは操作の実施を完了したときなど、ロボットアームは特定のコンテナを移動させるように要求されてもよい。
【0099】
コンピュータ及び制御装置
本明細書中に記載されるインキュベータは、コンピュータ、プロセッサ、マイクロコントローラ、又は他のコントローラの指示でともに動作してもよいセンサ、環境制御システム、ロボット等を含むいくつかの構成要素を含む。構成要素は、例えば、移動デバイス(例えば、ロボットアーム)、液体ハンドリングデバイス、培養容器又は他の構成要素をインキュベータキャビネットに又はインキュベータキャビネットから送達するための送達システム、インキュベータキャビネットの温度及び他の環境態様を制御するための環境制御システム、扉動作システム、撮像又は検出システム、及び細胞培養アッセイシステムを含んでもよい。
【0100】
いくつかの場合、細胞培養インキュベータ及び/又は細胞培養インキュベータ内に設けられるか、又は細胞培養インキュベータに接続する構成要素の制御動作などの動作は、ハードウェア、ソフトウェア、又はこれらの組み合わせを用いて実施してもよい。ソフトウェアで実施する場合、ソフトウェアコードは、単一構成要素内に設けられるか複数の構成要素に分配されるかを問わず、任意の適切なプロセッサ又はプロセッサの集合体において実行され得る。このようなプロセッサは、集積回路として実装されてもよく、集積回路構成要素内に1つ以上のプロセッサを有する。プロセッサは回路を用いて任意の適切なフォーマットで実装してもよい。
【0101】
コンピュータは、ラックマウント式コンピュータ、デスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、又はタブレットコンピュータなどの多くの形態のうちのいずれかにおいて具現化してもよい。加えて、コンピュータは、パーソナルデジタルアシスタント(PDA)、スマートフォン、又はインキュベータ自体を含む任意の他の適切なポータブル、モバイル又は固定電子デバイスを含む、一般にコンピュータとは考えられないが適切な処理性能を備えるデバイス内に組み込まれてもよい。
【0102】
いくつかの場合、コンピュータは、1つ以上の入カデバイス及び出力デバイスを有してもよい。これらのデバイスは、とりわけ、ユーザインタフェースを提示するために使用され得る。ユーザインタフェースを提供するために使用され得る出力デバイスの例としては、出力を視覚的に提示するためのプリンタ又はディスプレイスクリーン、及び出力を聴覚的に提示するためのスピーカ又は他の音声発生デバイスが挙げられる。ユーザインタフェースに使用され得る入力デバイスの例としては、キーボード、及びマウスなどのポインティングデバイス、タッチパッド、及びディジタイジングタブレットが挙げられる。他の例では、コンピュータは入カ情報を、音声認識を通じて、又は他の可聴フォーマットで、可視ジェスチャを通じて、触覚入カによって(例えば、振動、触覚及び/又は他の力を含む)、又はこれらの任意の組み合わせで受信してもよい。
【0103】
1つ以上のコンピュータは、エンタープライズネットワーク若しくはインターネットなどのローカルエリアネットワーク又はワイドエリアネットワークを含む任意の適切な形態の1つ以上のネットワークによって相互接続してもよい。このようなネットワークは任意の適切な技術に基づいてもよく、任意の適切なプロトコルに従って動作してもよく、無線ネットワーク、有線ネットワーク、又は光ファイバネットワークを含んでもよい。
【0104】
本明細書中に概説した種々の方法又はプロセスは、種々のオベレーティングシステム又はプラットフォームの任意の1つを用いる1つ以上のプロセッサで実行可能なソフトウェアとしてコード化してもよい。このようなソフトウェアは、多くの適切なプログラミング言語及び/又はプログラミング若しくはスクリプトツールのいずれかを使用して記述されてもよく、実行可能な機械語コード、又はフレームワーク若しくは仮想マシンにおいて実行される中間コードとしてコンパイルされてもよい。
【0105】
本明細書中に記載される方法又はプロセスを制御するための1つ以上のアルゴリズムは、1つ以上のコンピュータ又は他のプロセッサ上で実行されると、本明細書中に記載される種々の方法又はプロセスを実施する方法を実施する1つ以上のプログラムをエンコードした、可読ストレージ媒体(又は複数の可読媒体)(例えば、コンピュータメモリ、1つ以上のフロッピー(登録商標)ディスク、コンパクトディスク(CD)、光ディスク、デジタルビデオディスク(DVD)、磁気テープ、フラッシュメモリ、フィールドプログラマブルゲートアレイ若しくは他の半導体デバイスにおける回路構成、又は他の有形ストレージ媒体)として具現化してもよい。
【0106】
いくつかの実施形態では、コンピュータ可読ストレージ媒体は、コンピュータ実行可能命令を非一時的な形態で提供するほど十分な時間にわたって情報を保持してもよい。1つ又は複数のこのようなコンピュータ可読ストレージ媒体は、媒体上に記憶された1つ又は複数のプログラムを1つ以上の異なるコンピュータ又は他のプロセッサにロードして、本明細書中に記載される方法又はプロセスの種々の態様を実施することができるように可搬式とすることができる。本明細書で使用する場合、用語「コンピュータ可読ストレージ媒体」は、製造物(例えば、製品)又はマシンとみなされ得るコンピュータ可読媒体のみを含む。或いは又は加えて、本明細書中に記載される方法又はプロセスは、伝播信号など、コンピュータ可読ストレージ媒体以外のコンピュータ可読媒体として具現化してもよい。
【0107】
本明細書中において用語「プログラム」又は「ソフトウェア」は、本明細書中に記載される方法又はプロセスの種々の態様を実施するために、コンピュータ又は他のプロセッサをプログラムするために用いられ得る任意の種類のコード又は実行可能命令のセットを指す一般的な意味で使用される。加えて、本実施形態の一態様によれば、実行されると本明細書中に記載される方法又はプロセスを実施する1つ以上のプログラムは1つのコンピュータ又はプロセッサに常駐している必要はなく、いくつかの異なるコンピュータ又はプロセッサ間にモジュラー形式で分散され、種々の手続き又は演算を実施してもよいことを理解すべきである。
【0108】
実行可能命令は、1つ以上のコンピュータ又は他のデバイスによって実行されるプログラムモジュールなどの多くの形態であってもよい。概して、プログラムモジュールは、特定のタスクを実施するか又は抽象データ型を実装するルーチン、プログラム、オブジェクト、コンポーネント、データ構造等を含む。通常、種々の実施形態では、プログラムモジュールの機能は必要に応じて組み合わせても分散させてもよい。
【0109】
また、データ構造は、コンピュータ可読媒体に任意の適切な形態で格納してもよい。データストレージの非限定的な例としては、構造化ストレージ、非構造化ストレージ、ローカルストレージ、分散ストレージ、短期ストレージ及び/又は長期ストレージが挙げられる。データを通信するために使用され得るプロトコルの非限定的な例としては、専用プロトコル及び/又は業界標準プロトコル(例えば、HTTP、HTML、XML、JSON、SQL、ウェブサービス、テキスト、スプレッドシート等、又はこれらの任意の組み合わせ)が挙げられる。説明の簡略化のため、データ構造はデータ構造内の位置を通じて関連付けられたフィールドを有するように示される場合がある。このような関係は、同様に、フィールド間の関係を伝えるコンピュータ可読媒体中の位置をフィールドのストレージに割り当てることによって達成してもよい。しかしながら、ポインタ、タグ、又はデータ要素間の関係を確立する他の機構の使用によるものを含む任意の適切な機構を使用して、データ構造のフィールド内の情報間の関係を確立してもよい。
【0110】
いくつかの実施形態では、インキュベータの動作に関連する情報(例えば、温度、湿度、ガス組成、画像、細胞培養条件等、又はこれらの任意の組み合わせ)は、インキュベータに関連付けられた1つ以上のセンサ(例えば、インキュベータキャビネット内に位置するか、又はインキュベータ内ではあるがインキュベータキャビネットの外部に位置する)から取得することができ、細胞培養インキュベーション中の状況に関する情報を提供するためにコンピュータ可読媒体内に保存することができる。いくつかの実施形態では、可読媒体はデータベースを含む。いくつかの実施形態では、前記データベースは、1つのインキュベータからのデータを含む。いくつかの実施形態では、前記データベースは、複数のインキュベータからのデータを含む。いくつかの実施形態では、データは改ざんが防止される状態で保存される。いくつかの実施形態では、器具(例えば、インキュベータ)によって生成された全てのデータは保存される。いくつかの実施形態では、データのサブセットが保存される。
【0111】
いくつかの実施形態では、構成要素(例えば、コンピュータ)は、インキュベータ内で実施される種々のプロセスを制御する。例えば、コンピュータは制御機器(例えば、マニピュレータ、イメージャ、流体ハンドリングシステム等)に指示してもよい。いくつかの実施形態では、コンピュータは、細胞培養の撮像、細胞のピッキング、細胞の除去(例えば、細胞凝集体の除去)、細胞培養条件の監視、細胞培養条件の調整、インキュベータ内の細胞培養容器の動きの追跡、及び/又は前述のプロセスのいずれかのスケジューリングを制御する。
【0112】
図を参照すると、図1は、細胞培養システムの例証的実施形態の概略図を示す。いくつかの実施形態では、細胞培養システムは、内部チャンバ(101)に通じる外部扉(100)を有するインキュベータキャビネットを含む。内部チャンバの内部には複数の細胞培養容器(102)があり、各容器は、材料を容器へ又は容器から無菌的に送ることを可能にするように構成された通路を有し、各細胞培養容器(P1、P2、P3、P4、P5、及びP6)は、異なる対象の細胞サンプルを含んでもよい。
【0113】
図2A図2Bは、細胞培養システムの例証的実施形態の概略図を示す。図2Aは、複数の細胞培養容器(102)を収容する内部チャンバ(101)であって、各容器は、材料を容器へ又は容器から無菌的に送ることを可能にするように構成された通路を有する、内部チャンバ(101)と、移動チャンバ(104)に通じており、閉じられると気密シールを形成する内部扉(103)と、細胞培養容器移動デバイス(105)と、開かれると移動チャンバをインキュベータキャビネットの外部に接続する外部扉(100)とを有するインキュベータキャビネットを含む細胞培養システムを示す。図2Bは、オゾン発生器(106)及びポンプ(107)を更に含む、図2Aで具現化した細胞培養システムの概略図を示す。いくつかの実施形態では、オゾン発生器とポンプとは流体連通する。いくつかの実施形態では、オゾン発生器とインキュベータキャビネットとは流体連通する。例えば、オゾン発生器はインキュベータキャビネットの入口若しくは出口に接続されたパイプ又は管類を介してインキュベータキャビネットの内部チャンバ及び/又は移動チャンバと流体連通することができる。いくつかの実施形態では、ポンプとインキュベータキャビネットとは流体連通する。例えば、ポンプは、インキュベータキャビネットの入口又は出口に接続されたパイプ又は管類を介してインキュベータキャビネットの内部チャンバ及び/又は移動チャンバと流体連通することができる。いくつかの実施形態では、ポンプは、インキュベータキャビネットの内部チャンバ及び/又は移動チャンバからオゾンガスを除去するために使用される。
【0114】
図3は、細胞培養システムの例証的実施形態の概略図を示す。いくつかの実施形態では、細胞培養システムは、移動チャンバ(104)に通じる外部扉(100)を有するインキュベータキャビネットを含む。移動チャンバは2つの内部扉(103、108)を有する。第1の内部扉(103)は第1の内部チャンバ(101)に通じる。第1の内部チャンバ(101)は複数の細胞培養容器を収容し、各容器は、材料を容器へ又は容器から無菌的に送ることを可能にするように構成された通路を有する。第2の内部扉(108)は第2の内部チャンバ(109)に通じる。第2の内部チャンバは、イメージャ(110)と、マニピュレータ(111)と、操作場所(112)とを含む。いくつかの実施形態では、第2の内部チャンバは、また、流体リザーバ(113)及び/又は遠心分離機(114)を含む。いくつかの実施形態では、第2の内部チャンバは、FACSマシンを含む。
【0115】
図4は、細胞培養システムの例証的実施形態の概略図を示す。いくつかの実施形態では、インキュベータキャビネットは、第1の内部チャンバ(101)に通じる外部扉(100)を含む。第1の内部チャンバ(101)は複数の細胞培養容器を収容し、各容器は、材料を容器へ又は容器から無菌的に送ることを可能にするように構成されている。インキュベータキャビネットは移動デバイス(105)を含む。内部扉は、第1の内部チャンバを、イメージャ(110)を含む第2の内部チャンバ(109)に接続する。
【0116】
上記態様及び実施形態は任意の適切な組み合わせで用いてもよく、本発明はこの点で限定されない。
【0117】
本発明の態様は、特定の例証的実施形態及び図を参照して本明細書中に記載されていることを理解すべきである。本明細書中に記載される例証的実施形態は本発明の全ての態様を必ずしも示すことを意図せず、むしろ、いくつかの例証的実施形態を説明するために使用される。したがって、本発明の態様は、例証的実施形態に鑑みて狭く解釈されるものではない。加えて、本発明の態様は単独で又は本発明の他の態様との任意の適切な組み合わせにおいて使用してもよいと理解すべきである。
【0118】
本発明の少なくとも一実施形態のいくつかの態様をこのように記載したが、当業者には種々の変更形態、修正形態及び改良形態が容易に想到されることは理解すべきである。このような変更形態、修正形態及び改良形態は本開示の一部であり、本発明の趣旨及び範囲内であるものとする。したがって、前述の記載及び図面は単なる例である。
【0119】
本発明のいくつかの実施形態を本明細書中に記載及び図示してきたが、当業者であれば、機能を実施し且つ/若しくは結果を得るための種々の他の手段及び/若しくは構造、並びに/又は本明細書中に記載される利点の1つ以上を容易に想定するであろう。このような変形形態及び/又は修正形態は、それぞれ本発明の範囲内と考えられる。より一般には、当業者であれば、本明細書中に記載される全てのパラメータ、寸法、材料及び構成は例示的なものであり、実際のパラメータ、寸法、材料及び/又は構成は本発明の教示が用いられる1つ又は複数の特定の用途に依存することを容易に理解するであろう。当業者であれば、単なる通常の実験を用いて、本明細書中に記載される本発明の特定の実施形態の多くの均等物を理解し、又は確認することができるであろう。したがって、前述の実施形態は単に例として提示され、添付の特許請求の範囲及びその均等物の範囲内において、具体的に記載及び特許請求される以外の手法で本発明を実施してもよいと理解すべきである。本発明は、本明細書中に記載されるそれぞれ個々の特徴、システム、物品、材料及び/又は方法を対象とする。加えて、2つ以上のこのような特徴、システム、物品、材料及び/又は方法の任意の組み合わせは、このような特徴、システム、物品、材料及び/又は方法が相互に矛盾しない場合、本発明の範囲内に含まれる。
【0120】
本明細書において、不定冠詞「1つの(a)」及び「1つの(an)」は、本明細書及び特許請求の範囲で使用する場合、特に明確に指示のない限り、「少なくとも1つの」を意味するものと理解すべきである。
【0121】
本明細書において、「及び/又は」という語句は、本明細書及び特許請求の範囲で使用する場合、結合した要素、すなわち、ある場合には接続的に存在し、他の場合には分離的に存在する要素の「いずれか又は両方」を意味するものと理解すべきである。特に明確に指示のない限り、具体的に特定される要素に関連する又は関連しないに関わらず「及び/又は」節によって具体的に特定される要素以外の他の要素が任意選択的に存在してもよい。したがって、非限定的な例として、「含む」などのオープンエンドの語とともに使用される場合における「A及び/又はB」への言及は、一実施形態では、AはあるがBはなく(任意選択的にB以外の要素を含む)、別の実施形態では、BはあるがAはなく(任意選択的にA以外の要素を含む)、更に別の実施形態では、A及びBの両方(任意選択的に他の要素を含む)等を意味し得る。
【0122】
本明細書の明細書及び特許請求の範囲で使用する場合、「又は」は、上で定義した「及び/又は」と同一の意味を有するものと理解すべきである。例えば、リスト内の物品を分ける場合、「又は」又は「及び/又は」は、包含的である、すなわち、要素の数又はリストの少なくとも1つを含むだけでなく、2つ以上及び任意選択的に追加のリストにない物品も含むものと解釈される。「~のうちの1つのみ」又は「~のうちのちょうど1つ」などの明確に指示された用語のみ、又は特許請求の範囲で使用される場合の「からなる」は、要素の数又はリストのうちのちょうど1つの要素を含むことを意味する。概して、用語「又は」は、本明細書で使用する場合、「いずれか」、「~のうちの1つ」、「~のうちの1つのみ」、又は「~のうちのちょうど1つ」などの排他的な用語に続く場合、排他的な選択肢(すなわち、「1つ又はその他であり両方ではない」)を示すものと単に解釈される。「実質的に~のみからなる」は、特許請求の範囲で使用される場合、特許法の分野で使用されるその通常の意味を有する。
【0123】
本明細書において、1つ以上の要素のリストに関する「少なくとも1つの」という語句は、本明細書及び特許請求の範囲で使用する場合、要素のリスト内の要素の任意の1つ以上から選択される少なくとも1つの要素を意味するものと理解すべきであるが、要素のリスト内に具体的に列挙された各要素の少なくとも1つを必ずしも含まず、要素のリスト内の要素の任意の組み合わせを排除しない。この定義は、また、具体的に明記された要素に関連する又は関連しないに関わらず、語句「少なくとも1つの」が指す要素のリスト内に具体的に明記される要素以外の要素が任意選択的に存在し得ることを可能にする。したがって、非限定的な例として、「A及びBの少なくとも1つ」(又は均等に「A又はBの少なくとも1つ」、又は均等に「A及び/又はBの少なくとも1つ」)は、一実施形態では、少なくとも1つ、任意選択的に2つ以上のAを含み、Bが存在せず(及び任意選択的にB以外の要素を含む)、別の実施形態では、少なくとも1つ、任意選択的に2つ以上のBを含み、Aが存在せず(及び任意選択的にA以外の要素を含む)、更に別の実施形態では、少なくとも1つ、任意選択的に2つ以上のAを含み、且つ少なくとも1つ、任意選択的に2つ以上のBを含む(及び任意選択的に他の要素を含む)等を意味し得る。
【0124】
特許請求の範囲及び上記明細書では、「含む」、「包含する」、「担持する」、「有する」、「含有する」、「伴う」、「保持する」等などの全ての移行句は、オープンエンド、すなわち、含むが限定されないことを意味するものと理解されるべきである。米国特許庁米国特許審査便覧第2111.03節の記載のように、移行句「~からなる」及び「実質的に~のみからなる」のみがそれぞれクローズド又はセミクローズド移行句である。
【0125】
特許請求の範囲における、クレーム要素を修飾するための「第1の」、「第2の」、「第3の」等などの順序を表す用語の使用は、それ自体が1つのクレーム要素の別の要素に対するいかなる優先順位若しくは順位、又は方法の行為が実施される時間的順序を暗示的に意味するものではなく、クレーム要素を区別するために、特定の名称を有する1つのクレーム要素を、(順序を表す用語の使用以外には)同じ名称を有する別の要素と区別するためのラベルとして単に使用される。
【0126】
特に明確に指示のない限り、2つ以上の工程又は行為を含む、本明細書中で特許請求される任意の方法において、方法の工程又は行為の順序は、方法の工程又は行為が列挙される順序に必ずしも限定されないことも理解すべきである。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
哺乳動物細胞培養物を製造するための方法であって、
細胞培養容器を用意するステップであって、前記細胞培養容器は、前記容器内に又は前記容器外に材料を無菌的に移動させることを可能にするように構成された通路を含む、ステップと、
前記通路を通じて前記細胞培養容器内に哺乳動物細胞サンプルを導入するステップと、
前記細胞培養容器をインキュベータの滅菌内部チャンバ内に入れるステップと、
前記滅菌内部チャンバ内の前記細胞サンプルを増殖させ、それにより哺乳動物細胞培養物を製造するステップと
を含む、方法。
(項目2)
前記通路は突き通し可能な自己密封膜である、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記通路はガス透過性膜によって被覆されている、項目1又は2に記載の方法。
(項目4)
前記通路は滅菌使い捨て管である、項目1に記載の方法。
(項目5)
前記通路はマイクロ流体チャネルのネットワークである、項目1に記載の方法。
(項目6)
前記容器内の前記通路を通じて増殖培地を無菌的に導入することを更に含む、項目1~5のいずれか一項に記載の方法。
(項目7)
前記容器内の前記通路を通じて生物学的材料を無菌的に導入することを更に含む、項目1~5のいずれか一項に記載の方法。
(項目8)
前記生物学的材料は細胞増殖因子である、項目7に記載の方法。
(項目9)
前記生物学的材料は核酸分子である、項目7に記載の方法。
(項目10)
前記核酸分子は核酸ベクターである、項目9に記載の方法。
(項目11)
前記核酸ベクターはトランスフェクションベクターである、項目10に記載の方法。
(項目12)
前記核酸ベクターは形質導入ベクターである、項目10に記載の方法。
(項目13)
前記核酸ベクターはトランスジェニック材料を含む、項目10に記載の方法。
(項目14)
前記増殖培地の条件を無菌的に監視することを更に含む、項目1~3のいずれか一項に記載の方法。
(項目15)
前記インキュベータ内で一定の温度範囲を維持することを更に含む、項目1~3のいずれか一項に記載の方法。
(項目16)
前記インキュベータは摂氏約37度に維持される、項目1~3のいずれか一項に記載の方法。
(項目17)
細胞の条件を無菌的に監視することを更に含む、項目1~3のいずれか一項に記載の方法。
(項目18)
前記細胞培養物を無菌的に撮像することを更に含む、項目1~3のいずれか一項に記載の方法。
(項目19)
前記細胞培養物をろ過することを更に含む、項目1~3のいずれか一項に記載の方法。
(項目20)
前記細胞培養物の一定分量を無菌的に除去することを更に含む、項目1~3のいずれか一項に記載の方法。
(項目21)
前記インキュベータは、項目22~49のいずれか一項に記載の細胞培養システムである、項目1~20のいずれか一項に記載の方法。
(項目22)
移動チャンバと、
1つ以上の内部チャンバと、
外部環境から前記移動チャンバへと開く外部扉と、
前記移動チャンバから第1の内部チャンバへと開く第1の内部扉と、
前記移動チャンバから第2の内部チャンバへと開く第2の内部扉と、
前記移動チャンバと前記第1の内部チャンバとの間で、及び/又は前記移動チャンバと前記第2の内部チャンバとの間で、及び/又は前記第2の内部チャンバと前記第1の内部チャンバとの間で1つ以上の物品を移動させるための移動デバイスと
を含む、細胞培養インキュベータ。
(項目23)
ポンプに結合されたオゾン発生器を更に含み、前記オゾン発生器は、前記移動チャンバにオゾンガスを供給するように構成されている、項目22に記載の細胞培養インキュベータ。
(項目24)
前記オゾン発生器は、内部チャンバにオゾンガスを供給するように構成されている、項目23に記載の細胞培養インキュベータ。
(項目25)
前記外部扉は、閉じられると実質的に気密のシールを形成する、項目22~24のいずれか一項に記載の細胞培養インキュベータ。
(項目26)
前記第1の内部扉及び前記第2の内部扉は、それぞれ閉じられると実質的に気密のシールを形成する、項目22~25のいずれか一項に記載の細胞培養インキュベータ。
(項目27)
前記ポンプは、前記移動チャンバ及び/又は前記1つ以上の内部チャンバからオゾンガスを除去するように構成されている、項目23~26のいずれか一項に記載の細胞培養インキュベータ。
(項目28)
前記内部チャンバは貯蔵場所を含む、項目22~27のいずれか一項に記載の細胞培養インキュベータ。
(項目29)
前記貯蔵場所は、複数の細胞培養容器を保持するように構成されている、項目28に記載の細胞培養インキュベータ。
(項目30)
前記複数の細胞培養容器の各容器は、固有のバーコードが付されている、項目29に記載の細胞培養インキュベータ。
(項目31)
前記内部チャンバはイメージャ及び撮像場所を含む、項目22~30のいずれか一項に記載の細胞培養インキュベータ。
(項目32)
前記イメージャはホログラフィックイメージャである、項目22~31のいずれか一項に記載の細胞培養インキュベータ。
(項目33)
前記イメージャは、顕微鏡、任意選択的に明視野顕微鏡又は蛍光顕微鏡である、項目22~31のいずれか一項に記載の細胞培養インキュベータ。
(項目34)
前記イメージャのためのコントローラを更に含む、項目31~33のいずれか一項に記載の細胞培養インキュベータ。
(項目35)
前記内部チャンバはマニピュレータ及び操作場所を含む、項目22~34のいずれか一項に記載の細胞培養インキュベータ。
(項目36)
前記マニピュレータは細胞ピッカーである、項目35に記載の細胞培養インキュベータ。
(項目37)
前記マニピュレータは流体ハンドリングシステムを含む、項目35に記載の細胞培養インキュベータ。
(項目38)
前記マニピュレータのためのコントローラを更に含む、項目35~37のいずれか一項に記載の細胞培養インキュベータ。
(項目39)
前記内部チャンバは流体貯蔵場所を含む、項目22~38のいずれか一項に記載の細胞培養インキュベータ。
(項目40)
前記内部チャンバは細胞ソーティング又は細胞単離装置を含む、項目22~39のいずれか一項に記載の細胞培養インキュベータ。
(項目41)
前記細胞ソーティング又は細胞単離装置は遠心分離機である、項目40に記載の細胞培養インキュベータ。
(項目42)
前記細胞ソーティング又は細胞単離装置は蛍光活性化セルソーティング(FACS)マシンである、項目40に記載の細胞培養インキュベータ。
(項目43)
前記移動デバイスは1つ以上のロボット要素を含む、項目22~42のいずれか一項に記載の細胞培養インキュベータ。
(項目44)
前記移動デバイスのためのコントローラを更に含む、項目22~43のいずれか一項に記載の細胞培養インキュベータ。
(項目45)
前記イメージャのための前記コントローラ、前記マニピュレータのための前記コントローラ、及び/又は前記移動デバイスのための前記コントローラはインキュベータキャビネットの外部にある、項目34~44のいずれか一項に記載の細胞培養インキュベータ。
(項目46)
前記イメージャのための前記コントローラ、前記マニピュレータのための前記コントローラ、及び/又は前記移動デバイスのための前記コントローラはコンピュータを含む、項目45に記載の細胞培養インキュベータ。
(項目47)
単一のコンピュータが前記イメージャ、前記マニピュレータ及び/又は前記移動デバイスを制御する、項目46に記載の細胞培養インキュベータ。
(項目48)
バーコード走査器を更に含む、項目22~47のいずれか一項に記載の細胞培養インキュベータ。
(項目49)
前記バーコード走査器はコンピュータに接続されており、前記コンピュータは前記インキュベータキャビネットの外部にある、項目48に記載の細胞培養インキュベータ。
(項目50)
2つ以上の細胞培養容器を含む細胞培養システムであって、各容器は異なる患者からの細胞を含み、各容器は、材料を前記容器へ又は前記容器から無菌的に送ることを可能にするように構成された通路を含む、細胞培養システム。
図1
図2A
図2B
図3
図4