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特許7452829アミロイドベータのエピトープおよびそれに対する抗体
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】アミロイドベータのエピトープおよびそれに対する抗体
(51)【国際特許分類】
   C07K 7/64 20060101AFI20240312BHJP
   A61K 38/12 20060101ALI20240312BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20240312BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20240312BHJP
   C07K 16/18 20060101ALI20240312BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20240312BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20240312BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240312BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240312BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20240312BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20240312BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
C07K7/64 ZNA
A61K38/12
A61K39/00 H
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61P25/28
C07K16/18
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N15/13
C12P21/08
G01N33/53 D
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2018522803
(86)(22)【出願日】2016-11-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-02-21
(86)【国際出願番号】 CA2016051305
(87)【国際公開番号】W WO2017079835
(87)【国際公開日】2017-05-18
【審査請求日】2019-11-08
【審判番号】
【審判請求日】2022-01-06
(31)【優先権主張番号】62/253,044
(32)【優先日】2015-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/289,893
(32)【優先日】2016-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/365,634
(32)【優先日】2016-07-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/393,615
(32)【優先日】2016-09-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】300066874
【氏名又は名称】ザ・ユニバーシティ・オブ・ブリティッシュ・コロンビア
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】キャッシュマン,ニール アール.
(72)【発明者】
【氏名】プロトキン,スティーブン エス.
【合議体】
【審判長】長井 啓子
【審判官】中根 知大
【審判官】高堀 栄二
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-522840(JP,A)
【文献】特表2011-522842(JP,A)
【文献】特表2013-538796(JP,A)
【文献】特表2007-527865(JP,A)
【文献】国際公開第2014/089149(WO,A1)
【文献】The Journal of Neuroscience, July 11, 2012, Vol.32, No.28, p.9677-9689
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C07K 1/00-19/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
JSTPlus/JST7580/JMEDPlus(JDreamIII)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
QKLV(配列番号1)からなるAベータペプチドと、リンカーとからなる環状化合物であって、前記リンカーが、前記AベータペプチドのN末端残基および前記AベータのC末端残基と共有結合したアミノ酸GCGからなる、環状化合物。
【請求項2】
請求項1に記載の環状化合物を含む免疫原。
【請求項3】
前記環状化合物が、担体タンパク質または免疫原性増強物質と結合している、請求項に記載の免疫原。
【請求項4】
前記担体タンパク質が、ウシ血清アルブミン(BSA)であるか、または前記免疫原性増強物質がキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)である、請求項に記載の免疫原。
【請求項5】
Aベータモノマーおよび/またはAベータ線維よりもAベータオリゴマーのQKLV(配列番号1)と特異的に結合する単離された抗体であって、前記抗体が、
【化1】

を含む、抗体
【請求項6】
前記抗体は、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体である、請求項に記載の抗体。
【請求項7】
前記抗体は、ヒト化抗体またはFab、Fab’、F(ab’)2、scFv、dsFv、ds-scFv、二量体、ナノボディ、ミニボディ、ダイアボディおよびその多量体から選択される抗体結合フラグメントである、請求項5または6に記載の抗体。
【請求項8】
記抗体は、I)i)配列番号18で示されるアミノ酸配列;もしくはii)配列番号18と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列であって、CDRの配列が、配列番号11、12、および13で示される配列である、アミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含み、かつ
i)配列番号20で示されるアミノ酸配列;もしくはii)配列番号20と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列であって、CDRの配列が、配列番号14、15、および16で示される配列である、アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含み、または、
II)i)配列番号28で示されるアミノ酸配列;もしくはii)配列番号28と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列であって、CDRの配列が、配列番号21、22、および23で示される配列である、アミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含み、か
)配列番号30で示されるアミノ酸配列;もしくはii)配列番号30と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列であって、CDRの配列が配列番号24、25、および26で示される配列である、アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、
請求項のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項9】
前記重鎖可変領域が、配列番号18で示されるアミノ酸配列を含む、もしくはこれよりなり、かつ前記軽鎖可変領域が、配列番号20で示されるアミノ酸配列を含む、もしくはこれよりなり、または
前記重鎖可変領域が、配列番号28で示されるアミノ酸配列を含む、もしくはこれよりなり、かつ前記軽鎖可変領域が、配列番号30で示されるアミノ酸配列を含む、もしくはこれよりなる、
請求項5~8のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項10】
請求項のいずれか1項に記載の抗体と、検出可能な標識または細胞毒性物質とを含む、イムノコンジュゲート。
【請求項11】
求項のいずれか1項に記載の抗体、または請求項10に記載のタンパク質性イムノコンジュゲートをコードする、核酸分子か、または前記核酸分子はベクターに含まれる、核酸分子。
【請求項12】
請求項のいずれか1項に記載の抗体を発現する細胞。
【請求項13】
請求項1に記載の環状化合物、請求項のいずれか1項に記載の免疫原、請求項のいずれか1項に記載の抗体、請求項10に記載のイムノコンジュゲート、請求項11に記載の核酸、または請求項12に記載の細胞を含む、組成物。
【請求項14】
請求項1に記載の環状化合物、請求項のいずれか1項に記載の免疫原、請求項13に記載の組成物、請求項のいずれか1項に記載の抗体、請求項10に記載のイムノコンジュゲート、請求項11に記載の核酸分子、前記核酸分子を含むベクター、または請求項12に記載の細胞を含む、キット。
【請求項15】
生体試料がAベータを含むかどうかを判定する方法であって、
前記方法は、
a.前記生体試料と、請求項のいずれか1項に記載の抗体または請求項10に記載のイムノコンジュゲートとを接触させることと、及び
b.何らかの抗体複合体の存在を検出すること、を含む、方法。
【請求項16】
Aベータオリゴマーの伝播の阻害に使用するための、またはアルツハイマー病および/または他のAベータアミロイド関連疾患を有する対象を治療するのに使用するための、
1)請求項のいずれか1項に記載の抗体もしくは請求項10に記載のイムノコンジュゲート、または前記抗体もしくはイムノコンジュゲートを含む医薬組成物、
2)請求項のいずれか1項に記載の免疫原または前記免疫原を含む医薬組成物、または
3)1)の抗体をコードする核酸または前記核酸を含むベクター。
【請求項17】
請求項のいずれか1項に記載の抗体を用いて、治療される対象由来の生体試料がAベータの有無またはレベルについて評価されている、請求項16に記載の抗体、イムノコンジュゲート、免疫原、医薬組成物、核酸またはベクター。
【請求項18】
前記抗体、前記イムノコンジュゲート、前記免疫原、前記医薬組成物、前記核酸、または前記ベクターを脳または中枢神経系の他の部分に直接投与する、請求項16または17に記載の抗体、イムノコンジュゲート、免疫原、医薬組成物、核酸またはベクター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
これは2015年11月9日に出願された米国特許出願第62/253044号、2016年2月1日に出願された米国特許出願第62/289,893号、2016年7月22日に出願された米国特許出願第62/365,634号および2016年9月12日に出願された米国特許出願第62/393,615号の優先権の利益を主張するPCT出願であり、上記の出願はそれぞれ参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(分野)
本開示は、アミロイドベータ(AベータまたはAβ)エピトープおよびそれに対する抗体、より具体的には、Aベータオリゴマー内で選択的に接触可能であると予測されている立体配座Aベータエピトープ、関連する抗体組成物、およびそれらの用途に関する。
【背景技術】
【0003】
(背景)
36~43アミノ酸のペプチドとして存在するアミロイドベータ(Aベータ)は、酵素であるβセクレターゼおよびγセクレターゼによってアミロイド前駆体タンパク質(APP)から放出される産物である。AD患者では、Aベータは可溶性モノマー、不溶性線維および可溶性オリゴマーの形で存在し得る。モノマー型のAベータは、主として不定形のポリペプチド鎖として存在する。線維型のAベータは、よく株と呼ばれる様々な形態に凝集することができる。これらの構造のうちのいくつかは固体NMRにより決定されている。
【0004】
例えば、原子分解三次元構造データの結晶学的データベースであるタンパク質データバンク(PDB)では、3回対称性のAβ構造(PDBエントリー2M4J)、Aβ-40モノマーの2回対称性構造(PDBエントリー2LMN)およびAβ-42モノマーの一本鎖平行in-register構造(PDBエントリー2MXU)を含めたいくつかの線維の株の構造が入手可能である。
【0005】
2M4Jの構造は、J.X. LU, W.QIANG, W.M.YAU, C.D.SCHWIETERS, S.C. MEREDITH, R.TYCKO, MOLECULAR STRUCTURE OF BETA-AMYLOID FIBRILS IN ALZHEIMER’S DISEASE BRAIN TISSUE. CELL Vol. 154 p.1257 (2013)に報告されており、2MXUの構造は、Y.XIAO, B.MA, D.MCELHENY, S.PARTHASARATHY, F.LONG, M.HOSHI, R.NUSSINOV, Y.ISHII A BETA (1-42) FIBRIL STRUCTURE ILLUMINATES SELF-RECOGNITION AND REPLICATION OF AMYLOID IN ALZHEIMER’S DISEASE. NAT. STRUCT. MOL. BIOL. Vol. 22 p.499(2015)に報告されている。
【0006】
Aベータオリゴマーは、培養した細胞系およびニューロンを死滅させ、脳スライス培養物および動物生体において記憶を促進し長期増強(LTP)と呼ばれる極めて重要なシナプス活性を遮断することが示されている。
【0007】
これまでにオリゴマーの構造は決定されていない。さらに、NMRおよびその他の証拠から、オリゴマーが単一の明確に定められた構造ではなく、規則性に乏しく立体配座的に可塑性で順応性のある構造アンサンブルの形で存在することがわかっている。さらに、毒性オリゴマー種の濃度はモノマーまたは線維の濃度よりはるかに低い(推定値には幅があるが、約1000分の1またはそれ以下である)ため、この標的は捉えどころのないものとなっている。
【0008】
米国特許第5,766,846号;同5,837,672号;および同5,593,846号(参照として本明細書中援用されている)は、Aベータペプチドの中心的なドメインに対するマウスのモノクローナル抗体の生産を記載している。国際特許公開公報第01/62801号は、アミノ酸13~28の間でAベータを結合する抗体を記載している。国際特許公開公報第2004071408号は、ヒト化抗体を開示している。国際特許公開公報第2008088983号は、アミロイドベータ(Aベータ)ペプチドを結合し、ポリエチレングリコール(PEG)の1つまたは複数と共有結合する抗体結合フラグメントを記載している。ここで抗体フラグメントは、アミノ酸13~28位の間でヒトのA-ベータペプチドを特異的に結合する。ソラネズマブおよびクレネズマブは、Aベータのアミノ酸16~26を結合する。クレネズマブは、モノマー、オリゴマー、および線維と相互作用する。ソラネズマブ(ピコモル濃度の親和性)およびクレネズマブ(ナノモル濃度の親和性)を含む中間領域の抗体(Midregion antibody)は、優先的にモノマーのAベータと結合すると思われている[1]。
【0009】
Aベータオリゴマーと優先的または選択的と結合する抗体が望ましい。
【発明の概要】
【0010】
本明細書には、残基QKLV(配列番号1)よりなるAベータのエピトープ、任意に立体配座エピトープまたはその一部、ならびにそれらに対する抗体が記載される。エピトープは、モノマーのものと区別がつく立体配座のAベータのオリゴマー種において選択的に露出されると同定されている。
【0011】
一態様は、QKLおよび最大8、7、または6個のAベータの残基を含むAベータペプチドと、リンカーとを含み、リンカーが、AベータペプチドのN末端残基およびAベータのC末端残基と共有結合している、化合物、好ましくは環状化合物を含む。
【0012】
一実施形態では、Aベータペプチドは、任意選択でQKLV(配列番号1)、HQKLV(配列番号2)、HQKLVF(配列番号9)、およびQKLVF(配列番号10)から選択される、配列番号1~10のいずれか1つの配列を有するペプチドから選択される。
【0013】
別の実施形態では、環状化合物は環状ペプチドである。
【0014】
別の実施形態では、環状化合物は、i)少なくとも、対応する直鎖状化合物におけるQと比較して別の立体配座のQ;および/またはii)対応する直鎖状化合物と比較して少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%強く拘束された、エントロピーにより測定されたQ、および/またはK、および/またはLの立体配座を含む。
【0015】
別の実施形態では、Aベータペプチドは、QKLV(配列番号1)である。
【0016】
別の実施形態では、化合物は、検出可能な標識をさらに含む。
【0017】
別の実施形態では、リンカーは、1~8個のアミノ酸および/またはこれと同等に機能する分子および/または1つもしくは複数の官能化可能な部分を含む、あるいはこれよりなる。
【0018】
別の実施形態では、リンカーのアミノ酸がAおよびGから選択され、かつ/または官能化可能な部分がCである。
【0019】
別の実施形態では、リンカーは、アミノ酸GCGもしくはCGCを含む、またはこれよりなる。
【0020】
別の実施形態では、リンカーはPEG分子を含む。
【0021】
別の実施形態では、環状化合物は、以下の構造
【化1】
【化2】
から選択される。
【0022】
一態様は、本明細書に記載される環状化合物を含む、免疫原を含む。
【0023】
一実施形態では、環状化合物は、担体タンパク質または免疫原性増強物質と結合している。
【0024】
一実施形態では、担体タンパク質がウシ血清アルブミン(BSA)である、または免疫原性増強物質がキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)である。
【0025】
一態様は、本明細書に記載される化合物または本明細書に記載される免疫原を含む、組成物を含む。
【0026】
一実施形態では、本明細書に記載される組成物は、アジュバントをさらに含む。
【0027】
別の実施形態では、アジュバントはリン酸アルミニウムまたは水酸化アルミニウムである。
【0028】
一態様は、任意選択で配列番号1~10のいずれか1つで示される配列QKLV(配列番号1)または関連エピトープ配列を有するAベータペプチドに特異的と結合する、単離された抗体を含む。
【0029】
一実施形態では、抗体は、Aベータ上のエピトープに特異的と結合し、エピトープは、抗体との結合に主として関与する少なくとも2個の連続するアミノ酸残基を含み、少なくとも2個の連続するアミノ酸は、QKLV(配列番号1)内に組み込まれたQKである。
【0030】
別の実施形態では、エピトープは、QKLV(配列番号1)、HQKLV(配列番号2)、HQKLVF(配列番号9)、またはQKLVF(配列番号10)を含む、またはこれよりなる。
【0031】
別の実施形態では、抗体は環状化合物内、任意選択で、本明細書に記載される環状化合物内、好ましくは配列番号3で示される配列を有する環状ペプチド内で提示されるAEDVまたは関連エピトープペプチドと特異的または選択的に結合する、立体配座に特異的かつ/または選択的な抗体である。
【0032】
別の実施形態では、抗体は、Aベータモノマーおよび/またはAベータ線維よりもAベータオリゴマーに選択的と結合する。
【0033】
別の実施形態では、Aベータオリゴマーに対する選択性は、Aベータモノマーおよび/またはAベータ線維の少なくとも3倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも30倍、少なくとも40倍、少なくとも50倍、少なくとも100倍、少なくとも500倍、少なくとも1000倍選択的である。
【0034】
別の実施形態では、抗体は、配列QKLV(配列番号1)または関連エピトープを含む直鎖状ペプチドに特異的かつおよび/または選択的と結合することがなく、任意選択で、直鎖状ペプチドの配列は、抗体を生じさせるのに使用する環状化合物の直鎖型、任意選択で配列番号3で示される配列を有する直鎖状ペプチドである。
【0035】
別の実施形態では、抗体は、in situでAベータモノマー斑および/またはAベータ線維斑と結合しない、またはほとんど結合しない。
【0036】
一実施形態では、抗体は、本明細書中記載される環状化合物、任意選択で本明細書中記載される環状ペプチドを使用して、産生されている。
【0037】
別の実施形態では、抗体はモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体である。
【0038】
別の実施形態では、抗体はヒト化抗体である。
【0039】
別の実施形態では、抗体は、Fab、Fab’、F(ab’)2、scFv、dsFv、ds-scFv、二量体、ナノボディ、ミニボディ、ダイアボディおよびその多量体から選択される抗体結合フラグメントである。
【0040】
別の実施形態では、本明細書中記載される抗体は、任意選択で融合している軽鎖可変領域と重鎖可変領域とを含み、重鎖可変領域は、相補性決定領域CDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3を含み、軽鎖可変領域は、相補性決定領域CDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3を含み、前記CDRのアミノ酸配列は以下の配列を含む。
【化3】
【0041】
別の実施形態では、抗体は、i)配列番号18もしくは28で示されるアミノ酸配列;ii)配列番号18もしくは28と少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%もしくは少なくとも90%の配列同一性を有し、CDRの配列が配列番号11、12、13、21、22および23で示される、アミノ酸配列;またはiii)保存的に置換されたアミノ酸配列i)を含む重鎖可変領域を含む。
【0042】
別の実施形態では、抗体は、i)配列番号20もしくは30で示されるアミノ酸配列;ii)配列番号20もしくは30と少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%もしくは少なくとも90%の配列同一性を有し、CDRの配列が配列番号14、15、16、24、25、および26で示される、アミノ酸配列;またはiii)保存的に置換されたi)のアミノ酸配列を含む、軽鎖可変領域を含む。
【0043】
別の実施形態では、重鎖可変領域のアミノ酸配列が、配列番号17または27で示されるヌクレオチド配列またはそのコドン縮重型もしくはコドン最適化型によってコードされ;かつ/あるいは、抗体が、配列番号19または29で示されるヌクレオチド配列またはそのコドン縮重型もしくはコドン最適化型によってコードされる軽鎖可変領域のアミノ酸配列を含む。
【0044】
別の実施形態では、重鎖可変領域が、配列番号18もしくは28で示されるアミノ酸配列を含む、もしくはこれよりなり、かつ/または、軽鎖可変領域が、配列番号20もしくは30で示されるアミノ酸配列を含む、もしくはこれよりなる。
【0045】
別の実施形態では、抗体は、ヒトAベータとの結合に関して、表6および/または8に記載されるCDR配列を含む抗体と競合する。
【0046】
一態様は、本明細書に記載される抗体と、検出可能な標識または細胞毒性物質とを含む、イムノコンジュゲートを含む。
【0047】
一実施形態では、検出可能な標識は、任意選択でPET撮像などの対象の撮像に使用する、陽電子放出放射性核種を含む。
【0048】
一態様は、任意選択で希釈剤とともに、本明細書に記載される抗体を含む組成物または本明細書に記載されるイムノコンジュゲートを含む。
【0049】
一態様は、本明細書に記載される化合物もしくは免疫原のタンパク質性部分、本明細書に記載される抗体または本明細書に記載されるタンパク質性イムノコンジュゲートをコードする、核酸分子を含む。
【0050】
一態様は、本明細書に記載される核酸を含むベクターを含む。
【0051】
一態様は、本明細書に記載される抗体を発現する細胞を含み、任意選択で、細胞は、本明細書中記載されるベクターを含むハイブリドーマである。
【0052】
一態様は、本明細書に記載される化合物、本明細書に記載される免疫原、本明細書に記載される抗体、本明細書に記載されるイムノコンジュゲート、本明細書に記載される組成物、本明細書に記載される核酸分子、本明細書に記載されるベクターまたは本明細書に記載される細胞を含むキットを含む。
【0053】
一態様は、本明細書に記載される抗体を作製する方法であって、本明細書に記載される化合物もしくは免疫原または前記化合物もしくは免疫原を含む組成物を対象に投与することと、投与する化合物もしくは免疫原および/またはAベータオリゴマーに特異的または選択的であり、任意選択で、Aベータペプチドを含む直鎖状ペプチドと結合しない、もしくはほとんど結合せず、かつ/または斑と結合しない、もしくはほとんど結合しない、抗体および/または抗体を発現する細胞を単離することとを含む、方法を含む。
【0054】
一態様は、生体試料がAベータを含むかどうかを判定する方法であって、
a.生体試料と、本明細書に記載される抗体または本明細書に記載されるイムノコンジュゲートとを接触させること;および
b.何らかの抗体複合体の存在を検出すること
を含む、方法を含む。
【0055】
一実施形態では、生体試料がAベータオリゴマーを含有し、上記方法が、
a.抗体:Aベータオリゴマー複合体の形成が可能な条件下で、試料と、Aベータオリゴマーに特異的かつ/または選択的な本明細書に記載される抗体または本明細書に記載されるイムノコンジュゲートとを接触させること;および
b.何らかの複合体の存在を検出すること
を含み、
検出可能な複合体の存在により、試料がAベータオリゴマーを含有し得ることが示される。
【0056】
別の実施形態では、複合体の量を測定する。
【0057】
別の実施形態では、試料は、脳組織もしくはその抽出物、全血、血漿、血清および/またはCSFを含む。
【0058】
別の実施形態では、試料はヒト試料である。
【0059】
別の実施形態では、試料を対照、任意選択で以前の試料と比較する。
【0060】
別の実施形態では、SPRによりAベータのレベルを検出する。
【0061】
一態様は、対象のAベータのレベルを測定する方法であって、ADを有するリスクもしくは疑いがある、またはADを有する対象に、本明細書に記載される抗体を含み、抗体が検出可能な標識とコンジュゲートされているイムノコンジュゲートを投与すること;および標識を検出すること、任意選択で標識を定量的に検出することを含む、方法を含む。
【0062】
一実施形態では、標識は陽電子放出放射性核種である。
【0063】
一態様は、対象に免疫応答を誘導する方法であって、本明細書に記載される化合物もしくは化合物の組合せ、任意選択で、QKLV(配列番号1)もしくは関連エピトープペプチド配列を含む環状化合物、免疫原および/または前記化合物もしくは前記免疫原を含む組成物を対象に投与すること;ならびに任意選択で、投与した化合物または免疫原中のAベータペプチドと特異的または選択的に結合する細胞および/または抗体を単離することを含む、方法を含む。
【0064】
一態様は、Aベータオリゴマー伝播を阻害する方法であって、有効量の本明細書に記載されるAベータオリゴマーに特異的または選択的な抗体またはイムノコンジュゲートを、Aベータを発現する細胞もしくは組織と接触させる、または必要とする対象に投与して、Aベータの凝集および/またはオリゴマー伝播を阻害することを含む、方法を含む。
【0065】
一態様は、ADおよび/またはその他のAベータアミロイド関連疾患を治療する方法であって、必要とする対象にi)有効量の本明細書に記載される抗体またはイムノコンジュゲート、任意選択で、Aベータオリゴマーに特異的もしくは選択的な抗体または前記抗体を含む医薬組成物を投与すること;2)QKLV(配列番号1)もしくは関連エピトープ配列を含む単離環状化合物または免疫原または前記環状化合物を含む医薬組成物あるいは3)1の抗体または2の免疫原をコードする核酸または核酸を含むベクターを、必要とする対象に投与することを含む、方法を含む。
【0066】
一実施形態では、本明細書に記載される抗体を用いて、治療する対象由来の生体試料をAベータの有無またはレベルに関して評価する。
【0067】
別の実施形態では、2つ以上の抗体または免疫原を投与する。
【0068】
別の実施形態では、抗体、イムノコンジュゲート、免疫原、組成物または核酸もしくはベクターを脳またはCNSの他の部分に直接投与する。
【0069】
別の実施形態では、組成物は、薬学的に許容される希釈剤または担体と混合した化合物または免疫原を含む、医薬組成物である。
【0070】
一態様は、配列番号1~10で示される配列のいずれか1つの配列よりなるAベータペプチドを含む、単離ペプチドを含む。
【0071】
一実施形態では、ペプチドは、リンカーを含み、リンカーがAベータペプチドのN末端残基および/またはAベータのC末端残基と共有結合している、環状ペプチドである。
【0072】
別の実施形態では、本明細書に記載される単離ペプチドは検出可能な標識を含む。
【0073】
一態様は、本明細書に記載される単離ペプチドをコードする核酸配列を含む。
【0074】
一態様は、本明細書に記載される抗体を発現するハイブリドーマを含む。
【0075】
以下の詳細な説明から本開示のその他の特徴と利点が明らかになるであろう。ただし、この詳細な説明から本開示の趣旨および範囲内に含まれる様々な変更および改変が当業者に明らかになることから、詳細な説明および具体例は、本開示の好ましい実施形態を示すと同時に、単に説明を目的として記載されるものであることが理解されるべきである。
【0076】
これより本開示の実施形態を図面と関連させて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0077】
図1図1は、2M4Jの部分的なアンフォールディングを表す自由エネルギー地形のグラフである。
図2図2は、閾値が7kcal/molの、部分的にアンフォールディングしている2MXUの地形のグラフである。
図3図3は、残基インデックスの関数としての曲率を表す概略図である。長い矢印は、環状ペプチドを同定し、短い矢印は直鎖状ペプチドを同定している。
図4図4(a)は、残基Q15の側鎖の重原子を含むすべての二面角に関する二面角分布を示す一連のグラフであり、図4(b)は、QKLV(配列番号1)を含む環状ペプチドの概略図である。
図5図5は、K16の側鎖の重原子を含む角に関する二面角分布を示すグラフである。
図6図6は、L17の側鎖の重原子を含む角に関する二面角分布を示すグラフである。
図7図7は、V18の側鎖の重原子を含む角に関する二面角分布を示すグラフである。
図8図8は、集団座標の方法により決定された、配列の関数としての露出の可能性を示すグラフである。ピークは、中心の残基17の周辺に現れている。
図9図9は、Aベータ42ペプチドに関する溶解度vs残基インデックスを示すグラフである。
図10図10は、溶媒露出面積(SASA)、重み付けSASA、
【数1】
の一連のプロットである。矢印は、各パネルで環状構造を同定している。
図11図11は、残基QKLV(配列番号1)の側鎖に沿った重原子―水素部分のSASAのプロットを示す。矢印は、各パネルで環状構造を同定している。
図12-1】図12は、QKLV(配列番号1)を含む一連の環状化合物を示す概略図である。
図12-2】図12は、QKLV(配列番号1)を含む一連の環状化合物を示す概略図である。
図12-3】図12は、QKLV(配列番号1)を含む一連の環状化合物を示す概略図である。
図13図13は、線維における残基の対応するエントロピーと比較した、環状ペプチドのシクロ(CGQKLVG)(配列番号3)および直鎖状ペプチド(CGQKLVG)(配列番号3)における各残基のエントロピーの変化を示すグラフである。
図14】Qの側鎖におけるCα―Cβ―Cγ―Cδの間の二面角が、環状ペプチドと直鎖状ペプチドとの間で異なることを示す概略図である。
図15】組織培養上清のクローンのの表面プラズモン共鳴(SPR)直接結合アッセイを示す図であり、パネルAは環状ペプチドおよび直鎖状ペプチドに対するもの、パネルBはAベータオリゴマーおよびAベータモノマーに対するものである。
図16】組織培養上清のクローンの結合ををSPR直接結合アッセイとELISAとで比較したプロット。
図17】選択したクローンの環状ペプチド、直鎖状ペプチド、AベータモノマーおよびAベータオリゴマーに対するSPR直接結合アッセイ。
図18】6E10陽性対照抗体(A)およびシクロ(CGQKLVG)(配列番号2)に対して生じさせた選択かつ精製された抗体(305-62,8H10)(B)を用いた死体AD脳由来の斑の免疫組織化学染色を示す図である。
図19】選択し精製した抗体に関するSPR間接(捕捉)結合アッセイを用いた二次スクリーニングを示す図である。Aベータオリゴマーの捕捉抗体に対するSPR結合応答からAベータモノマーの捕捉抗体に対する結合応答を差し引いたもの(丸);AD患者からプールした可溶性脳抽出物(BH)の捕捉抗体に対するSPR結合応答から、非AD対照からプールした脳抽出物の捕捉抗体に対する結合応答を差し引いたもの(三角);AD患者からプールした脳脊髄液(CSF)の捕捉抗体に対するSPR結合応答から、非AD対照からプールしたCSFの捕捉抗体に対する結合応答を差し引いたもの(四角)。
図20-1】安定したAベータオリゴマーに対する抗体結合の検証を示す図である。様々な濃度の市販の調製済みの安定なAベータオリゴマーと固定化抗体との結合に関するSPRセンサグラムおよび結合応答プロット。パネルAは陽性対照mAb6E10での結果を示し、パネルBは陰性アイソタイプ対照での結果を示し、パネルCはシクロ(CGQKLVG)(配列番号3)に対して生じさせた抗体での結果を示している。パネルDは、QKLV(配列番号1)を含む環状ペプチドに対して生じさせた選択された抗体クローンと、濃度1マイクロモルのAベータオリゴマーとの結合をプロットしたものである。
図20-2】安定したAベータオリゴマーに対する抗体結合の検証を示す図である。様々な濃度の市販の調製済みの安定なAベータオリゴマーと固定化抗体との結合に関するSPRセンサグラムおよび結合応答プロット。パネルAは陽性対照mAb6E10での結果を示し、パネルBは陰性アイソタイプ対照での結果を示し、パネルCはシクロ(CGQKLVG)(配列番号3)に対して生じさせた抗体での結果を示している。パネルDは、QKLV(配列番号1)を含む環状ペプチドに対して生じさせた選択された抗体クローンと、濃度1マイクロモルのAベータオリゴマーとの結合をプロットしたものである。
図20-3】安定したAベータオリゴマーに対する抗体結合の検証を示す図である。様々な濃度の市販の調製済みの安定なAベータオリゴマーと固定化抗体との結合に関するSPRセンサグラムおよび結合応答プロット。パネルAは陽性対照mAb6E10での結果を示し、パネルBは陰性アイソタイプ対照での結果を示し、パネルCはシクロ(CGQKLVG)(配列番号3)に対して生じさせた抗体での結果を示している。パネルDは、QKLV(配列番号1)を含む環状ペプチドに対して生じさせた選択された抗体クローンと、濃度1マイクロモルのAベータオリゴマーとの結合をプロットしたものである。
図20-4】安定したAベータオリゴマーに対する抗体結合の検証を示す図である。様々な濃度の市販の調製済みの安定なAベータオリゴマーと固定化抗体との結合に関するSPRセンサグラムおよび結合応答プロット。パネルAは陽性対照mAb6E10での結果を示し、パネルBは陰性アイソタイプ対照での結果を示し、パネルCはシクロ(CGQKLVG)(配列番号3)に対して生じさせた抗体での結果を示している。パネルDは、QKLV(配列番号1)を含む環状ペプチドに対して生じさせた選択された抗体クローンと、濃度1マイクロモルのAベータオリゴマーとの結合をプロットしたものである。
図21-1】QKLV(配列番号1)を含む環状ペプチドを用いて生じさせた代表的な抗体の存在下(星)または不在下(四角)におけるin vitroでのAベータ凝集伝播のプロットである。
図21-2】QKLV(配列番号1)を含む環状ペプチドを用いて生じさせた代表的な抗体の存在下(星)または不在下(四角)におけるin vitroでのAベータ凝集伝播のプロットである。
図21-3】QKLV(配列番号1)を含む環状ペプチドを用いて生じさせた代表的な抗体の存在下(星)または不在下(四角)におけるin vitroでのAベータ凝集伝播のプロットである。
図22-1】異なるモル比の陰性アイソタイプ対照(A)またはシクロ(CGQKLVG)(配列番号3)に対して生じさせた抗体(B)の存在下または不存在下における、毒性Aベータオリゴマー(AβO)に曝露したラットの初代皮質ニューロンの生存率を示すプロット。対照は、単独で培養したニューロン(CTRL)、オリゴマーを含まない抗体とインキュベートしたニューロン、およびAベータオリゴマーを含むまたは含まずに神経保護ペプチドのヒューマニン(HNG)と培養したニューロンを、含む。
図22-2】異なるモル比の陰性アイソタイプ対照(A)、またはシクロ((CGQKLVG)(配列番号3)に対して生じさせた抗体(B)の存在下または不存在下における、毒性Aベータオリゴマー(AβO)に曝露したラットの初代皮質ニューロンの生存率を示すプロット。対照は、単独で培養したニューロン(CTRL)、オリゴマーを含まない抗体とインキュベートしたニューロン、およびAベータオリゴマーを含むまたは含まずに神経保護ペプチドのヒューマニン(HNG)と培養したニューロンを、含む。
【発明を実施するための形態】
【0078】
表1に、選択した組織培養上清のクローンの結合特性を示す。
【0079】
表2に、選択した精製済みの抗体の結合特性のまとめを示す。
【0080】
表3に、シクロ(CGQKLVG)(配列番号3)に対して生じさせた抗体のオリゴマー結合-モノマー結合を記載する。
【0081】
表4に、ホルマリン固定組織で試験した抗体の特性を記載する。
【0082】
表5は例示的毒性試験である。
【0083】
表6にクローン305-61(7E9)のCDR配列を記載する。
【0084】
表7にクローン305-61(7E9)の重鎖および軽鎖の可変配列を記載する。
【0085】
表8に、クローン305-62(8H10)のCDR配列を記載する。
【0086】
表9にクローン305-62(8H10)の重鎖および軽鎖の可変配列を記載する。
【0087】
表10は、Aベータエピトープ配列およびリンカーを有する選択Aベータ配列の表である。
【0088】
表11にAベータ1~42ヒトポリペプチド配列全体を記載する。
【0089】
(本開示の詳細な説明)
オリゴマー特異的抗体の作製のための必要条件は、モノマーまたは線維上に存在しない、または非常に少ない度合で存在するAベータペプチド上の標的を特定することである。これらのオリゴマー特異的エピトープは、モノマーまたは線維の対応するセグメントと一次配列が異なっていなくてもよいが、オリゴマーにおいて立体配座的に際立ったものであり得る。つまり、これらは、オリゴマー内で、主鎖および/または側鎖立体配座の点でモノマーおよび/または線維にはみられないと考えられる際立った立体配座を示す。
【0090】
直鎖状ペプチド領域に対して生じさせた抗体は、オリゴマーに選択的でなく、したがって、モノマーにも結合する傾向がある。
【0091】
オリゴマー型のAベータに選択的になり得る抗体を開発するため、本発明者らは、線維において破壊されやすく、オリゴマーの表面にも露出するであろう、線維における配列の領域を特定することを目指した。
【0092】
実施例に記載されるように、本発明者らは、線維において破壊されやすいことが予測される領域を特定した。本発明者らは、その特定されたエピトープを含む環状化合物がより高い曲率、より大きい露出表面積、および/または別の二面角分布といった上記の基準を満たすようこれを設計した。
【0093】
標的領域を含む環状ペプチドを用いて、同じ配列の直鎖状ペプチド(例えば、対応する直鎖状配列)と比較して環状ペプチドと優先的と結合する抗体を生じさせた。実験結果が記載されており、合成モノマーと比較して合成オリゴマーと選択的と結合し、対照CSFよりもAD患者のCSFと優先的と結合し、かつ/または対照の可溶性脳抽出物よりもAD患者の可溶性脳抽出物と優先的と結合する、エピトープ特異的かつ立体配座選択的な抗体が特定される。さらに、AD脳組織の染色では、斑との結合を全くまたはほとんど示さない抗体が特定され、in vitro試験では、抗体がAβオリゴマーの伝播および凝集を阻害することがわかった。
【0094】
I.定義
本明細書で使用される「Aベータ(A-beta)」という用語は、代替的に「アミロイドベータ」、「アミロイドβ」、Aベータ(Abeta)、Aベータ(A-beta)または「Aβ」と呼ばれ得る。アミロイドベータは、36~43個のアミノ酸よりなるペプチドであり、本明細書中使用されるように、あらゆる種のあらゆる野生型および変異型、特にヒトAベータを包含する。Aベータ40は40アミノ酸型を指し、Aベータ42は42アミノ酸型を指すなど。ヒト野生型Aベータ42のアミノ酸配列は配列番号31で示されるものである。
【0095】
本明細書で使用される「Aベータモノマー」という用語は、本明細書中で、Aベータ(例えば、1~40、1~41、1~42、1~43)ペプチドの個々のサブユニット型を指す。
【0096】
本明細書で使用される「Aベータオリゴマー」という用語は、複数(例えば、少なくとも2つ)のAベータモノマーが非共有結合によって、約100個未満またはより通常には約50個未満のモノマーからなり、立体配座に柔軟性があり、部分的に規則的である三次元の小球に凝集したAベータサブユニットのいずれか複数のものを指す。例えば、オリゴマーは、3個、4個、5個またはそれ以上のモノマーを含み得る。本明細書で使用される「Aベータオリゴマー」という用語は、合成Aベータオリゴマーおよび/または天然Aベータオリゴマーの両方を包含する。「天然Aベータオリゴマー」は、in vivoで、例えばADを有する対象の脳およびCSF内で形成されるAベータオリゴマーを指す。
【0097】
本明細書で使用される「Aベータ線維」という用語は、電子顕微鏡下で線維構造を示す個々のAベータペプチドが非共有結合により会合した集合体を含む分子構造を指す。線維構造は通常、「クロスベータ」構造であり、理論上、多量体の大きさに上限はなく、線維は数千個または何千個ものモノマーを含み得る。線維は数千個単位で凝集し、ADに特徴的な主な病理学的形態の1つである老人斑を形成し得る。
【0098】
本明細書中使用される「直鎖状Aベータペプチド、Aベータモノマーおよび/または線維内でQ、K、L、および/またはVによって占められるものとは別の立体配座」という用語は、溶媒露出度、エントロピー、曲率(例えば、ペプチドQKLV(配列番号1)の曲率)、および1つもしくは複数の二面角から選択される1つまたは複数の立体配座特性が、たとえばPDBの2MJ4に示されており、図14に示されている直鎖状の不定形のAベータペプチド、Aベータモノマー、および/またはAベータ線維におけるQの特性と比較して異なることを意味する。図4Aは、残基Qに関してモノマーまたは線維と比較して別の立体配座の分布を示す。図5および6は、それぞれ残基KおよびLの別の類似の立体配座分布を示し、KおよびLが線維およびモノマーの両方のものとは異なっていることを示す。別の立体配座はまた、比較立体配座より弱くまたは強く「拘束された」ものであり得る。たとえば図13は、記載されている環状化合物中のQ、K、およびLが、Aベータモノマーのものよりも強く拘束されていることを示す。
【0099】
「アミノ酸」という用語は、天然のアミノ酸および修飾されたL-アミノ酸をすべて包含する。アミノ酸の原子は、たとえば様々な同位体を含み得る。例えば、アミノ酸は、水素に代わるジュウテリウム、窒素14に代わる窒素15および炭素12に代わる炭素13ならびにその他の同様の変化を含み得る。
【0100】
本明細書で使用される「抗体」という用語は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、一本鎖抗体、ベニヤ化(veneered)抗体、ヒト化抗体およびキメラ抗体ならびに例えば一本鎖Fabフラグメント、Fab’2フラグメントまたは一本鎖Fvフラグメントを含めた上記の抗体のフラグメントを包含するものとする。「組織培養上清のクローン(Tissue culture supernatant clone)」は、本明細書中で、収集および試験のためハイブリドーマにより上清に分泌されたモノクローナル抗体を表す。抗体は、組換え供給源由来のものおよび/またはウサギ、ラマ、サメなどの動物で産生されたものであり得る。また、トランスジェニック動物で産生され得る、もしくは生化学技術を用いて作製され得る、またはファージライブラリーなどのライブラリーから単離され得るヒト抗体も包含される。ヒト化抗体またはその他のキメラ抗体は、1種類または2種類以上のアイソタイプもしくはクラスまたは種由来の配列を含み得る。
【0101】
「単離された抗体」という語句は、in vivoまたはin vitroで産生され、抗体を産生した供給源、例えば、動物、ハイブリドーマまたはその他の細胞系(抗体を産生する組換え昆虫、酵母または細菌細胞など)から取り出された抗体を指す。単離された抗体は任意選択で「精製」されており、これは少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または99%の純度であることを意味する。
【0102】
本明細書で使用される「結合フラグメント」という用語は、抗体または抗体鎖の一部または一部分であって、インタクトの抗体もしくは抗体鎖または完全な抗体もしくは抗体鎖より少ないアミノ酸残基を含み、抗原と結合する、またはインタクトの抗体と競合するものを指す。例示的結合フラグメントとしては、特に限定されないが、Fab、Fab’、F(ab’)2、scFv、dsFv、ds-scFv、二量体、ナノボディ、ミニボディ、ダイアボディおよびその多量体が挙げられる。フラグメントは、インタクトの抗体もしくは抗体鎖または完全な抗体もしくは抗体鎖の化学処理または酵素処理によって得ることができる。フラグメントは、組換え手段によっても得ることができる。例えば、抗体をペプシンで処理することによりF(ab’)2フラグメントを作製することができる。得られたF(ab’)2フラグメントにジスルフィド架橋を還元する処理を実施して、Fab’フラグメントを作製することができる。パパイン消化によりFabフラグメントの形成を引き起こすことができる。また、組換え発現技術によりFab、Fab’およびF(ab’)2、scFv、dsFv、ds-scFv、二量体、ミニボディ、ダイアボディ、二重特異性抗体フラグメントならびにその他のフラグメントを構築することもできる。
【0103】
当該技術分野で認識されている「IMGT番号付け」または「ImMunoGeneTicsデータベース番号付け」という用語は、抗体またはその抗原結合部分の重鎖可変領域および軽鎖可変領域の他のアミノ酸残基より可変性のある(すなわち、超可変性の)アミノ酸残基を番号付けするシステムを指す。
【0104】
ある抗体がQKLV(配列番号1)などのエピトープに特異的と結合すると記載される場合、それは、その抗体が特定の残基またはその一部、例えばQKLVの少なくとも2つの残基を含むペプチドに最小限の親和性で特異的と結合し、例えばアイソタイプ対照抗体より大きい無関係な配列にも無関係な配列の空間定位にも結合しないことを意味する。このような抗体は必ずしもQKLV(配列番号1)の各残基と接触するわけではなく、前記エピトープ内のあらゆるアミノ酸置換またはアミノ酸欠失が、必ずしも結合親和性に大きな影響を及ぼし、かつ/または同程度の影響を及ぼすというわけではない。
【0105】
ある抗体がエピトープ、例えばQKLV(配列番号1)などの立体配座エピトープなどに選択的と結合すると記載される場合、それは、その抗体が特定の残基またはその一部を含む1つまたは複数の特定の立体配座に、別の立体配座の前記残基と結合する場合より大きい親和性で優先的と結合することを意味する。例えば、ある抗体が対応する直鎖状ペプチドよりもQKLVまたは関連エピトープを含むシクロペプチドに選択的と結合すると記載される場合、その抗体は、直鎖状ペプチドと結合する場合の少なくとも2倍の親和性でそのシクロペプチドと結合する。
【0106】
本明細書で使用される「立体配座エピトープ」という用語は、アミノ酸配列が特定の三次元構造を有し、対応する不定形の直鎖状エピトープの配列中に存在しない三次元構造の一態様がコグネイト抗体によって認識される、エピトープを指す。立体配座特異的エピトープと特異的に結合する抗体は、その立体配座特異的エピトープの1つまたは複数のアミノ酸の空間的配置を認識する。例えば、QKLV(配列番号1)の立体配座エピトープは、直鎖状のQKLV(配列番号1)を使用して生じさせた抗体と比較して、選択的に抗体により認識されるエピトープを指す。立体配座エピトープを特異的かつ/または選択的に結合する抗体は、特異的かつ/または選択的にエピトープ配列のアミノ酸のうちの1つまたは複数の空間的配置を認識する。たとえば、QKLV(配列番号1)立体配座エピトープは、抗体によって特異的かつ/または選択的に、例えば対応する直鎖状QKLV(配列番号1)化合物と比較して少なくとも2倍、3倍、5倍、10倍、50倍、100倍、250倍、500倍もしくは1000倍またはそれ以上選択的に認識される、QKLV(配列番号1)のエピトープを指す。
【0107】
アミノ酸配列内のアミノ酸もしくはその側鎖、またはより大きいポリペプチド内のアミノ酸配列に関して、本明細書中で使用される「拘束された立体配座」という用語は、アミノ酸二面角の回転運動性が対応する直鎖状ペプチド配列または配列もしくはより大きいポリペプチドよりも低下し、それにより、許容される立体配座の数が少なくなっていることを意味する。このことは、例えば、二面角自由度のアンサンブルのエントロピー減少を見出すことによって定量化することが可能であり、QKLV(配列番号1)については図13にプロットされている。例えば、配列内の側鎖の立体配座自由度が直鎖状ペプチドより低ければ、エントロピーが減少することになる。このような立体配座の制約があれば、この抗原に対して特異的に生じた抗体の立体配座選択性が増大するものと思われる。本明細書で使用される「より拘束された立体配座」という用語は、1つまたは複数の二面角の二面角分布(許容される二面角のアンサンブル)が、アミノ酸Q、K、L、および/またはVのエントロピーにより判定されるように、比較立体配座より少なくとも10%強く拘束されていることを意味する。具体的には、より拘束された立体配座のアンサンブルのQKLV(配列番号1)の線維におけるエントロピーに対する平均エントロピー変化、S(拘束されている)-S(線維)は、拘束されていない立体配座アンサンブルから、例えば直鎖状ペプチドに関して量S(直鎖状)-S(線維)が平均で10%超、20%超、30%超または40%超減少している。
【0108】
本明細書中使用される用語「関連エピトープ」は、抗原性のあるQKLV(配列番号1)の少なくとも2つの残基、任意にKL、ならびに/または、QKLV(配列番号1)(たとえばQKLVF(配列番号10)の少なくとも2つの残基に対するAベータのN末端側および/もしくはC末端側の最大1つもしくは最大2つのアミノ酸残基を含む配列を、意味する。
【0109】
本明細書で抗体に関して使用される「斑との結合が全くまたはほとんどみられない」または「斑と結合しない、またはほとんど結合しない」という用語は、抗体が(例えば、in situの)免疫組織化学法で典型的な斑の染色形態を示さず、染色のレベルが、IgG陰性の(例えば、無関係な)アイソタイプ対照でみられるレベルと同等である、またはその2倍以下であることを意味する。
【0110】
「単離ペプチド」という用語は、例えば組換え技術または合成技術によって作製され、ペプチドを作製した組換え細胞または残存ペプチド合成反応物などの供給源から取り出されたペプチドを指す。単離ペプチドは、任意選択で「精製」されており、これは少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または99%の純度および任意選択で医薬品等級の純度であることを意味する。
【0111】
本明細書で使用される「検出可能な標識」という用語は、本明細書に記載されるペプチドまたは化合物内に付加または導入することができるペプチド配列(mycタグ、HAタグ、V5タグまたはNEタグなど)、蛍光タンパク質などの部分であって、直接的または間接的に検出可能なシグナルを発生することが可能な部分を指す。例えば、標識は、(例えば、PET撮像に使用する)放射線不透性の陽電子放出放射性核種もしくは放射性同位元素、例えばH、13N、14C、18F、32P、35S、123I、125I、131Iなど;蛍光化合物(フルオロフォア)もしくは化学発光化合物(発色団)、例えばフルオレセインイソチオシアナート、ローダミンもしくはルシフェリンなど;酵素、例えばアルカリホスファターゼ、β‐ガラクトシダーゼもしくは西洋ワサビペルオキシダーゼなど;造影剤;または金属イオンであり得る。検出可能な標識はまた、例えば二次抗体を用いて間接的に検出可能なものであり得る。
【0112】
通常使用される「エピトープ」という用語は、抗体によって特異的に認識される抗原の抗体結合部位、通常、ポリペプチドセグメントを意味する。本明細書で使用される「エピトープ」はまた、エピトープ配列を含むペプチドを使用して抗体を生じさせることができる、記載される集団座標法を用いてAベータ上で特定され得るアミノ酸配列またはその一部を指すこともある。例えば、特定された標的領域QKLV(配列番号1)を含む環状化合物に対応する単離ペプチドに対して作製した抗体は、前記エピトープ配列の一部または全部を認識する。エピトープが抗体による結合に接触可能な場合、それは本明細書において「接触可能な」ものである。
【0113】
本明細書で使用される「より高い親和性」という用語は、抗体Xが標的Zより強く(Kon)かつ/または小さい解離定数(Koff)で標的Yと結合する場合の相対的抗体結合度を指し、この文脈では、抗体Xは標的Yに対して標的Zより高い親和性を有する。これと同様に、本明細書の「より低い親和性」は、抗体Xが標的Zより弱くかつ/または大きい解離定数で標的Yと結合する場合の相対的抗体結合度を指し、この文脈では、抗体Xは標的Yに対して標的Zより低い親和性を有する。抗体とその標的抗原との間の結合の親和性はK=1/Kで表すことができ、式中、K=kon/koffである。konおよびkoffの値は、表面プラズモン共鳴技術を用いて、例えばMolecular Affinity Screening System(MASS-1)(Sierra Sensors社、ハンブルク、ドイツ)を用いて測定することができる。環状化合物、例えば任意選択の環状ペプチド中に提示される立体配座に選択的な抗体は、環状化合物(例えば、環状ペプチド)に対する親和性が直鎖状形態の対応する配列(例えば、非環化配列)より大きい。
【0114】
同じく本明細書で使用される「免疫原性」という用語は、抗体の産生を誘発し、免疫原の免疫原性部分に対するT細胞およびその他の反応性免疫細胞を活性化する物質を指す。
【0115】
環状化合物に関する「対応する直鎖状化合物」という用語は、環状化合物と同じ配列もしくは化学的部分を含む、またはこれよりなるが、直鎖状(すなわち、非環状)形態であり、例えば溶液中でみられ得る直鎖状ペプチドの特性を有する、化合物、任意選択で直鎖状ペプチドを指す。例えば、対応する直鎖状化合物は、環化されていない合成ペプチドであり得る。
【0116】
ある抗体に関して本明細書で使用される「特異的に結合する」は、その抗体がエピトープ配列を認識し、最小限の親和性でその標的抗原と結合することを意味する。例えば、多価抗体は、その標的と少なくとも1e-6、少なくとも1e-7、少なくとも1e-8、少なくとも1e-9または少なくとも1e-10のKで結合する。少なくとも1e-8より高い親和性が好ましいものであり得る。可変ドメインを1つ含むFabフラグメントなどの抗原結合フラグメントは、非フラグメント化抗体との多価相互作用の10倍または100倍低い親和性でその標的と結合する。
【0117】
ある形態のAベータ(例えば、線維、モノマーまたはオリゴマー)または環状化合物と選択的に結合する抗体に関して本明細書で使用される「選択的に結合する」という用語は、その抗体が上記の形態と少なくとも2倍、少なくとも3倍または少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも100倍、少なくとも250倍、少なくとも500倍もしくは少なくとも1000倍またはそれ以上の親和性で結合することを意味する。したがって、特定の立体配座(例えば、オリゴマー)に対してより選択的な抗体は、別の形態のペプチドおよび/または直鎖状ペプチドの少なくとも2倍などの親和性で特定の形態のAベータと優先的に結合する。
【0118】
本明細書で使用される「リンカー」という用語は、QKLV(配列番号1)エピトープペプチドを含むペプチドと共有結合して、任意選択でQKLV(配列番号1)ペプチドのN末端およびC末端と結合して、環状化合物を生じさせることができる化学的部分を指す。リンカーは、スペーサーおよび/または1つもしくは複数の官能化可能な部分を含み得る。リンカーは、官能化可能な部分を介して担体タンパク質またはキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)などの免疫原強化物質と結合することができる。
【0119】
本明細書で使用される「スペーサー」という用語は、ペプチドのN末端およびC末端と直接的または間接的に共有結合して、長さがペプチド自体より長い環状化合物を生じさせることができる、非免疫原性または低免疫原性の任意の化学的部分を意味し、例えば、スペーサーは、QKLV(配列番号1)よりなるペプチドのN末端およびC末端と結合して、主鎖の長さがQKLV(配列番号1)配列自体より長い環状化合物を生じさせることができる。つまり、(例えば、3アミノ酸残基の)スペーサーを有する環状ペプチドは、スペーサーのない環状ペプチドより大きい閉環を作製する。スペーサーとしては、特に限定されないが、Gリピート、AリピートまたはPEGリピートなどの非免疫原性部分、例えばGQKLV(配列番号4)、GQKLVG(配列番号5)、GGQKLVG(配列番号6)、GQKLVGG(配列番号7)などが挙げられる(たとえば特定の実施形態については図12を参照)。スペーサーは、1つもしくは複数のシステイン(C)残基などの1つもしくは複数の官能化部分を含む、またはこれと結合しているものであり得、官能化部分はスペーサー内に散在している、またはスペーサーの一端または両端と共有結合しているものであり得る。C残基などの官能化可能な部分がスペーサーの1つまたは複数の末端と共有結合している場合、スペーサーはペプチドと間接的に共有結合している。スペーサーはまた、ビオチン分子がアミノ酸残基内に導入されている場合のように、スペーサー残基内に官能化可能な部分を含み得る。
【0120】
本明細書で使用される「官能化可能な部分」という用語は、「官能基」を有する化学物質を指し、本明細書で使用される「官能基」は、別の原子団または単一原子(いわゆる「相補性官能基」)と反応して、2つの原子団または原子の間で化学的相互作用を形成する、原子団または単一原子を指す。システインの場合、官能基は、反応してジスルフィド結合を形成することができる-SHであり得る。したがって、リンカーは、例えばCCCであり得る。別の原子団との反応は、共有結合または例えば、Kdが約1e-14になり得るビオチン-ストレプトアビジン結合の場合のような強い非共有結合であり得る。本明細書で使用される強い非共有結合は、Kが少なくとも1e-9、少なくとも1e-10、少なくとも1e-11、少なくとも1e-12、少なくとも1e-13または少なくとも1e-14の相互作用を意味する。
【0121】
タンパク質および/またはその他の物質を免疫原性に役立つ、またはin vitro研究のプローブとして作用するよう環状ペプチドに機能化(例えば、結合)させ得る。この目的には、反応すること(例えば、共有結合または共有結合ではない強い結合を形成すること)が可能な任意の官能化可能な部分を使用し得る。ある特定の実施形態では、官能化可能な部分は、目的のタンパク質上にある対形成していないシステインと反応してジスルフィド結合を形成するシステイン残基であり、目的のタンパク質は、例えば、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)などの免疫原性増強物質またはin vitro免疫ブロットもしくは免疫組織化学アッセイに使用するウシ血清アルブミン(BSA)などの担体タンパク質であり得る。
【0122】
本明細書で使用される「~と反応する」という用語は一般に、電子の流れまたは静電荷の移動が起こることにより化学的相互作用が形成されることを意味する。
【0123】
本明細書で使用される「動物」または「対象」という用語は、任意選択でヒトを含む、または含まない哺乳動物を含めた動物界のあらゆるメンバーを包含する。
【0124】
本明細書で使用される「保存的アミノ酸置換」とは、タンパク質の所望の特性を打ち消すことなく、あるアミノ酸残基が別のアミノ酸残基に置き換わるアミノ酸置換のことである。適切な保存的アミノ酸置換は、疎水性、極性およびR鎖長が互いに類似したアミノ酸同士を置き換えることにより実施することができる。保存的アミノ酸置換の例としては以下のものが挙げられる。
【0125】
【表1】
【0126】
本明細書で使用される「配列同一性」という用語は、2つのポリペプチド配列または2つの核酸配列の間の配列同一性のパーセンテージを指す。2つのアミノ酸配列または2つの核酸配列のパーセント同一性を決定するには、配列を最適な比較目的で整列させる(例えば、第二のアミノ酸配列または核酸配列との最適アライメントのために第一のアミノ酸配列または核酸配列の配列内にギャップを導入することができる)。次いで、対応するアミノ酸位置またはヌクレオチド位置のアミノ酸残基またはヌクレオチドを比較する。第一の配列内のある位置が第二の配列内の対応する位置と同じアミノ酸残基またはヌクレオチドで占められている場合、その分子は上記の位置において同一である。2つの配列間のパーセント同一性は、その配列が共有する同一位置の数の関数である(すなわち、%同一性=同一の重複位置の数/一の総数×100%)。一実施形態では、2つの配列は同じ長さである。2つの配列間のパーセント同一性の決定はまた、数学的アルゴリズムを用いて実施することができる。2つの配列の比較に用いられる数学的アルゴリズムの好ましい非限定的な例には、KarlinおよびAltschul,1993,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.90:5873-5877で改変されたKarlinおよびAltschul,1990,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.87:2264-2268のアルゴリズムがある。Altschulら,1990,J.Mol.Biol.215:403のNBLASTプログラムおよびXBLASTプログラムにはそのようなアルゴリズムが組み込まれている。NBLASTヌクレオチドプログラムパラメータを例えばスコア=100、ワード長=12に設定してBLASTヌクレオチド検索を実施し、本願の核酸分子と相同なヌクレオチド配列を得ることができる。XBLASTプログラムパラメータを例えばスコア-50、ワード長=3に設定してBLASTタンパク質検索を実施し、本明細書に記載されるタンパク質分子と相同なアミノ酸配列を得ることができる。比較目的でギャップ付きアライメントを得るには、Altschulら,1997,Nucleic Acids Res.25:3389-3402に記載されているGapped BLASTを用いることができる。あるいは、PSI-BLASTを用いて、分子間の距離関係を検出する反復検索を実施することができる(同文献)。BLASTプログラム、Gapped BLASTプログラムおよびPSI-Blastプログラムを用いる場合、それぞれのプログラム(例えば、XBLASTおよびNBLAST)の初期パラメータを用いることができる(例えば、NCBIのウェブサイトを参照されたい)。配列の比較に用いられる数学的アルゴリズムの別の好ましい非限定的な例には、MyersおよびMiller,1988,CABIOS 4:11-17のアルゴリズムがある。GCG配列アライメントソフトウェアパッケージの一部であるALIGNプログラム(バージョン2.0)には、そのようなアルゴリズムが組み込まれている。アミノ酸配列の比較にALIGNプログラムを用いる場合、PAM120加重残基表、ギャップ長ペナルティ12およびギャップペナルティ4を用いることができる。ギャップを許容するかしないかを問わず、上記のものと類似した技術を用いて2つの配列間のパーセント同一性を決定することができる。パーセント同一性を算出する際には通常、完全一致のみをカウントする。
【0127】
抗体に関しては、抗体配列をIMGTまたはその他のもの(例えば、Kabat番号付けの慣例)により最大限に整列させたとき、パーセンテージ配列同一性を決定することができる。アライメント後、対象抗体領域(例えば、重鎖または軽鎖の全成熟可変領域)を参照抗体の同じ領域と比較している場合、対象抗体領域と参照抗体領域の間のパーセンテージ配列同一性は、ギャップをカウントせず、対象抗体領域および参照抗体領域の両方で同じアミノ酸によって占められている位置の数を、整列させた2つの領域の位置の総数で除したものに100を乗じてパーセンテージに変換したものとする。
【0128】
本明細書で使用される「核酸配列」は、天然の塩基、糖および糖間(主鎖)結合よりなるヌクレオシドモノマーまたはヌクレオチドモノマーの配列を指す。この用語はまた、非天然のモノマーまたはその一部分を含む修飾または置換された配列を包含する。本願の核酸配列は、デオキシリボ核酸配列(DNA)またはリボ核酸配列(RNA)であり得、アデニン、グアニン、シトシン、チミジンおよびウラシルを含めた天然の塩基を包含し得る。配列はまた、修飾塩基を含み得る。このような修飾塩基の例としては、アザおよびデアザアデニン、グアニン、シトシン、ミジンおよびウラシル;ならびにキサンチンおよびヒポキサンチンが挙げられる。核酸は二本鎖または一本鎖であり得、センス鎖またはアンチセンス鎖を表す。さらに、「核酸」という用語は、相補的核酸配列およびコドン最適化等価物または同義コドン等価物を包含する。本明細書で使用される「単離核酸配列」という用語は、組換えDNA技術により作製された場合は実質的に細胞物質も培地も含まない核酸、あるいは化学的に合成された場合は化学的前駆体またはその他の化学物質を指す。単離核酸はまた、その核酸が由来する核酸に天然の状態で隣接する配列(すなわち、核酸の5’側および3’側に位置する配列)を実質的に含まない。
【0129】
「作動可能に連結されている」は、核酸の発現が可能なようにその核酸が制御配列を連結されていることを意味するものとする。適切な制御配列は、細菌、真菌、ウイルス、哺乳動物または昆虫の遺伝子を含めた様々な供給源に由来するものであり得る。適切な制御配列の選択は、選択する宿主細胞によって決まり、当業者により容易に達成され得る。このような制御配列の例としては、転写プロモーターおよび転写エンハンサーまたはRNAポリメラーゼ結合配列、翻訳開始シグナルを含めたリボソーム結合配列が挙げられる。さらに、選択する宿主細胞および用いるベクターに応じてその他の配列、例えば複製起点、追加のDNA制限部位、エンハンサーおよび転写の誘導性を付与する配列などを発現ベクター内に組み込み得る。
【0130】
本明細書で使用される「ベクター」という用語は、核酸分子を例えば、原核細胞および/または真核細胞内に導入し、かつ/あるいはゲノム内に組み込むことを可能にする前記核酸分子の任意の中間運搬体を含み、プラスミド、ファージミド、バクテリオファージまたはウイルスベクター、例えばレトロウイルス系ベクター、アデノ関連ウイルスベクターなどがこれに包含される。本明細書で使用される「プラスミド」という用語は一般に、通常は環状DNA二本鎖であり、染色体DNAとは独立して複製することができる、染色体外遺伝物質の構築物を指す。
【0131】
「少なくとも中程度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」は、溶液中の2つの相補的核酸分子の間の選択的ハイブリダイゼーションを促進する条件を選択することを意味する。ハイブリダイゼーションは核酸配列分子の全部または一部に起こり得る。ハイブリダイズする部分は通常、少なくとも15(例えば、20、25、30、40または50)ヌクレオチドの長さである。当業者には、核酸の二本鎖またはハイブリッドの安定性が、ナトリウム含有緩衝液中でのナトリウムイオン濃度と温度の関数であるTm(Tm=81.5℃-16.6(Log10[Na+])+0.41(%(G+C)-600/l)またはこれと類似した方程式)によって決まることが認識されよう。したがって、ハイブリッドの安定性を決定する洗浄条件のパラメータはナトリウムイオン濃度および温度である。既知の核酸分子に類似しているが同一ではない分子を特定するには、1%のミスマッチによりTmが約1℃低下するものと考えられ、例えば、同一性が95%を上回る核酸分子を探索するのであれば、最終洗浄温度は約5℃低下することになる。当業者は、これらの考慮事項に基づき、適切なハイブリダイゼーション条件を容易に選択することが可能であろう。好ましい実施形態では、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件を選択する。例として、以下の条件を用いてストリンジェントなハイブリダイゼーションを実施し得る:上の方程式に基づき、Tmを-5℃とし、5×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)/5×デンハルト溶液/1.0%SDSで、ハイブリダイゼーションを実施し、次いで、60℃にて0.2×SSC/0.1%SDSで洗浄する。中程度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件には、42℃、3×SSCでの洗浄段階が含まれる。ただし、上のものに代わる緩衝液、塩および温度を用いても同等のストリンジェンシーが達成され得ることが理解される。ハイブリダイゼーション条件に関するさらなる指針については、Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,N.Y.,2002およびSambrookら,Molecular Cloning:a Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,2001にみることができる。
【0132】
本明細書で使用され、当該技術分野でも十分に理解されている「治療すること」または「治療」という用語は、臨床結果を含めた有益な結果または所望の結果を得る方法を意味する。有益な臨床結果または所望の臨床結果としては、特に限定されないが、検出可能なものであるか検出不可能なものであるかを問わず、1つまたは複数の症状または病態の軽減または改善、疾患の程度の減少、疾患の状態の安定化(すなわち、悪化しないこと)、疾患の拡散の予防、疾患進行の遅延または緩徐化、病状の改善または緩和、疾患再発の減少および寛解(部分寛解または完全寛解を問わない)が挙げられる。「治療すること」および「治療」はまた、治療を受けない場合に予想される生存期間と比較して生存期間が長くなることを意味し得る。本明細書で使用される「治療すること」および「治療」はまた、予防的治療を包含する。例えば、初期段階のADを有する対象を本明細書に記載される化合物、抗体、免疫原、核酸または組成物で治療して進行を予防することができる。
【0133】
本明細書で使用される「投与される」という用語は、細胞または対象への治療有効量の開示の化合物または組成物の投与を意味する。
【0134】
本明細書で使用される「有効量」という語句は、所望の結果を得るのに必要な投与回数および期間で効果が得られる量を意味する。対象に投与する場合、有効量は対象の病状、年齢、性別、体重などの因子に応じて異なり得る。最適な治療反応を得るために投与レジメンを調整し得る。
【0135】
「薬学的に許容される」という用語は、担体、希釈剤または補形剤が、製剤の他の成分と適合性があり、その被投与者に対して実質的に有害でないことを意味する。
【0136】
1つまたは複数の記載される要素を「含む(comprisingまたはincluding)」組成物または方法は、具体的に記載されていない他の要素を含み得る。例えば、抗体を「含む(compriseまたはinclude)」組成物は、抗体を単独で、または他の成分とともに含有し得る。
【0137】
本開示の範囲を理解するにあたっては、本明細書で使用される「~よりなる」という用語またはその派生語は、記載される特徴、要素、成分、グループ、整数および/または段階の存在を明記し、また他の記載されていない特徴、要素、成分、グループ、整数および/または段階の存在を排除する、オープンエンドな用語であるものとする。
【0138】
本明細書で端点により数値範囲が記載されている場合、その範囲内に含まれる数および端数がいずれも含まれる(例えば、1~5には、1、1.5、2、2.75、3、3.90、4および5が含まれる)。また、数およびその端数はすべて「約」という用語によって修飾されるものと考えられることを理解するべきである。さらに、「a」、「an」および「the」は、内容からそうでないことが明らかでない限り、複数形の指示対象を包含することを理解するべきである。「約」という用語は、言及されている数のプラスまたはマイナス0.1~50%、5~50%または10~40%、好ましくは10~20%、より好ましくは10%または15%を意味する。
【0139】
さらに、当業者であれば理解するように、特定のセクションに記載される定義および実施形態は、本明細書に記載される他の実施形態のうちそれらが適しているものに適用可能であるものとする。例えば、以下の節では、本発明の様々な態様がさらに詳細に定義される。そのように定義された各態様は、そうでないことが明記されない限り、1つまたは複数の他の任意の態様と組み合わせ得る。特に、好ましいまたは有利であると示されている任意の特徴と、好ましいまたは有利であると示されている他の任意の特徴とを組み合わせ得る。
【0140】
冠詞の単数形である「a」、「an」および「the」は、文脈上そうでないことが明らかでない限り、複数の指示物を包含する。例えば、「化合物(a compound)」または「少なくとも1つの化合物」という用語は、複数の化合物をその混合物も含め包含し得る。
【0141】
II.エピトープおよび結合タンパク質
本発明者らは、Aベータのアミノ酸15~18でAベータの「エピトープ」QKLV(配列番号1)を特定した。本発明者らはさらに、そのエピトープまたはその一部が立体配座エピトープであり得ることおよびQKLV(配列番号1)がAベータのオリゴマー種での抗体結合に選択的に接触可能であり得ることを明らかにした。
【0142】
理論に束縛されることを望むものではないが、線維は、オリゴマー化を触媒する傾向のある相互作用部位を示し得る。このことは、株に特異的であり得、正常な患者には存在しない選択的な線維表面が露出され、よってモノマーとの異常な相互作用を起こすことが可能である(すなわちモノマーに提示される)場合にのみ起こり得る。低pH、炎症時に存在するオスモライトまたは酸化的損傷などの環境変化が線維の破壊を誘発し、より安定性の低い領域の露出を引き起こし得ると考えられる。その結果、これらの低安定性領域を予測し、そのような予測を用いて、上記の領域を標的とする抗体を合理的に設計することに関心が持たれている。線維内で破壊される可能性のある領域はまた、オリゴマー種内で露出する領域の有力な候補となり得る。
【0143】
不規則になりやすい隣接するタンパク質領域を予測するためのコンピュータに基づくシステムおよび方法が、2015年11月9日に出願された米国特許出願第62/253044号「Systems and methods for predicting misfolded protein epitopes by collective coordinate biasing」、および2009年10月6日に出願されている米国特許出願第12/574,637号「Methods and Systems for Predicting M isfolded Protein Epitopes」に記載されている。各文献の全体は、参照により本明細書に組み込まれている。実施例に記載されるように、この方法をAベータに適用し、Aベータオリゴマーにおいてより接触可能なエピトープを特定した。
【0144】
実施例に記載されるように、環状ペプチドであるシクロ(CGQKLVG)(配列番号3)は、モノマー種および/または線維種と比較したオリゴマーのエピトープの立体配座の差を捕捉し得る。例えば、環状7量体シクロ(CGQKLVG)(配列番号3)の溶媒接触表面積、曲率、ならびにいくつかの二面角の二面角分布の差は、Aベータモノマーおよび線維と実質的に異なっていることが明らかになり、シクロペプチドが不定形の直線状エピトープとは異なる立体配座エピトープをもたらすことが示唆された。
【0145】
シクロ(CGQKLVG)(配列番号2)を含む免疫原を使用して生じさせた抗体は、直鎖状CGQKLVG(配列番号2)よりも選択的にシクロ(CGQKLVG)(配列番号2)と結合し、単量体のAベータ斑およびAベータ線維斑と比較して合成および/または天然のオリゴマーAベータ種と選択的に結合した。さらに、シクロ(GCGQKLVG)(配列番号2)に対して生じさせた抗体によりAベータ凝集のin vitroでの伝播を阻害でき、神経細胞モデルにおけるAベータオリゴマーが誘導する毒性を阻害することができた。
【0146】
i)QKLV(配列番号1)「エピトープ」化合物
したがって、本開示は、アミノ酸QKLV(配列番号1)またはその一部よりなるAベータの立体配座エピトープを特定するものであり、これはAベータのアミノ酸残基15~18に対応する。
【0147】
一態様は、QKLV(配列番号1)、関連エピトープの配列および/または上記のいずれかのものの一部を含む、あるいはこれよりなるAベータペプチドを含む、化合物を含む。
【0148】
いくつかの実施形態では、QKLV(配列番号1)を含むAベータペプチドは、QKLV(配列番号1)、たとえばHQKLV(配列番号2)の、AベータのN末端および/またはC末端に追加の残基を1個、2個または3個含んでよい。AベータのQKLV(配列番号1)のN末端側の3個のアミノ酸はVHHであり、QKLV(配列番号1)のC末端側の3個のアミノ酸はFFAである。一実施形態では、Aベータペプチドは、最大、7個のアミノ酸、6個のアミノ酸、または5個のアミノ酸である。
【0149】
一実施形態では、Aベータペプチドは、QKLV(配列番号1)のC末端にある、Aベータ中の1つまたは2つの追加的な残基を含む。
【0150】
一実施形態では、本化合物は、表10に記載されている配列を含む。
【0151】
一実施形態では、化合物はリンカーをさらに含む。リンカーは、スペーサーおよび/または1つもしくは複数の官能化可能な部分を含む。リンカーは、例えば、3個、4個、5個、6個、7個もしくは8個のアミノ酸および/またはポリエチレングリコール(PEG)部分などの同等に機能する分子ならびに/あるいはその組合せを含み得る。一実施形態では、スペーサーアミノ酸は、非免疫原性または低免疫原性のアミノ酸残基、例えばGおよびAなどから選択され、例えば、スペーサーは、GGG、GAG、G(PEG)G、PEG-PEG-GGなどであり得る。1つまたは複数の官能化可能な部分、例えば官能基を有するアミノ酸は、例えば、化合物と、作用物質もしくは検出可能なタグ、BSAなどの担体またはKLHなどの免疫原性増強物質とを結合させるために含まれ得る。
【0152】
一実施形態では、リンカーは、GC-PEG、PEG-GC、GCGまたはPEG-C-PEGを含む。
【0153】
一実施形態では、リンカーは、1、2、3、4、5、6、7個または8個のアミノ酸を含む。
【0154】
QKLV(配列番号1)を含むAベータペプチドが、Aベータにみられ、QKLV(配列番号1)(たとえばHQKLV(配列番号2)のN末端側および/またはC末端側にある追加の残基を1個、2個または3個含む実施形態では、環状化合物中のリンカーは、Aベータ残基のN末端および/またはC末端と(例えば、残基HおよびVに)共有結合している)。環状化合物は、環化の前に、QKLV(配列番号1)を含むペプチドのN末端またはC末端に共有結合したリンカーをを含む直鎖状分子として合成することができる。あるいは、環化前に、リンカーの一部をN末端と共有結合させ、一部をC末端と共有結合させる。いずれの場合も、直鎖状化合物を例えば頭-尾環化(例えば、アミド結合環化)で環化する。
【0155】
化合物のタンパク質性部分は、タンパク質化学でよく知られている固相合成または均質溶液中での合成などの技術を用いる化学合成により調製し得る。
【0156】
一実施形態では、化合物は、環状化合物である。一実施形態では、環状化合物は環状ペプチド(シクロペプチド)である。
【0157】
本明細書で「環状ペプチド」との記載は、(例えば、リンカーが1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個または8個のアミノ酸である)完全にタンパク質性の化合物を指すことができる。実施例で決定された環状ペプチドについて記載される特性を、非アミノ酸リンカー分子を含む他の化合物(例えば環状化合物)に組み込み得ることが理解される。
【0158】
したがって、一態様では、ペプチドQKLV(配列番号1)(たとえばベータペプチド)とリンカーとを含み、リンカーが、QKLV(配列番号1)を含むペプチド(任意に、ペプチドがQKLV(配列番号1)からなる場合にはQ残基およびV残基)に共有結合し、任意に、少なくともQが、QKLV(配列番号1)を含む直鎖状ペプチドのQ、ならびに/またはモノマーおよび/もしくは線維のQの立体配座とは別の立体配座にあり、かつ任意に、少なくともQ、または少なくともK、または少なくともLが、環状化合物において、QKLV(配列番号1)または関連エピトープの配列を含む直鎖状ペプチド中に占められている立体配座よりも拘束されている。
【0159】
Aベータ配列を含む直鎖状ペプチドは直鎖状化合物に含まれ得る。QKLV(配列番号1)を含む直鎖状化合物または直鎖状ペプチドは、一実施形態では、対応する直鎖状ペプチドである。別の実施形態では、直鎖状ペプチドは、例えば、Aベータ残基1~35またはそれより小さいAベータ残基10~20、11~20、12~20、13~20、10~19、10~18などの部分を含む直鎖状ペプチドを含めた、QKLV(配列番号1)を含む任意の長さのAベータペプチドである。直鎖状ペプチドはまた、いくつかの実施形態では完全長のAベータペプチドであり得る。
【0160】
一実施形態では、環状化合物は、QKLV(配列番号1)及びリンカーを含む、またはこれよりなりペプチドを含み、上記リンカーは、ペプチドのN末端およびC末端(たとえばペプチドがQKLV(配列番号1)からなる場合Q残基およびV残基)に結合している。一実施形態では、少なくともQは、環状化合物において、QKLV(配列番号1)を含む直鎖状ペプチドのQにより占められているものとは別の立体配座にある。一実施形態では、
少なくともQが、環状化合物内で、モノマーおよび/または線維内でQによって占められるものとは別の立体配座にある。
【0161】
一実施形態では、別の立体配座は拘束された立体配座である。
【0162】
一実施形態では、少なくともQは任意選択で、単独で、または少なくともKまたはLと組み合わさって、QKLV(配列番号1)を含む直鎖状ペプチドにおいて占められる立体配座より拘束された立体配座にある。
【0163】
一実施形態では、Qならびに/あるいはK、L、および/またはVのうちの1つまたは複数のものと組み合わさったQの立体配座は、QKLVを含む直鎖状ペプチドで占有されているもとは別の立体配座、任意選択でより拘束された立体配座の化合物に含まれている。
【0164】
例えば、別の立体配座は、残基Qに、ならびに任意選択で直鎖状ペプチドまたは線維におけるペプチドの二面角と異なるQおよび/もしくはK、ならびに/またはLおよび/もしくはVに、1つあるいは複数の異なる二面角を含み得る。
【0165】
別の立体配座は、エピトープの1つまたは複数のアミノ酸側鎖、特にはQ、同様にKまたはLに関して、直鎖状ペプチドおよび/またはAベータ線維と比較した、側鎖の1つまたは複数の部分の溶媒露出面積(SASA)の増加または減少を含むことができる。
【0166】
たとえば、図10(上部のパネル)および図11は、QおよびLの側鎖が、側鎖を「広げる(splay out)」、主鎖の湾曲により、直鎖状ペプチドよりも環状化合物においてより溶媒に露出していることを示す。図11は、側鎖上の特異的な部分を見ており、QのSASAの増加が、Cγ基および/またはNε基に由来することを例証している。また、LのSASAの増加がCδ1および/またはΟδ2Ηに由来することが、観察できる。
【0167】
一実施形態では、化合物中のQ、および任意選択でKまたはLのうちの1つまたは複数のSASAは、直鎖状ペプチドQKLV(配列番号1)と比較して増加している。
【0168】
別の立体配座はまた、直鎖状ペプチドおよび/またはAベータ線維と比較して、アミノ酸を中心とする曲率または環状ペプチドQKLV(配列番号1)の曲率の増大を含み得る。
【0169】
一実施形態では、別の立体配座QKLV(配列番号1)は、直鎖状QKLV(配列番号1)と比較して増大した曲率を有する。実施例に示されるように環状エピトープの主鎖における曲率は、同様に、実施例4に記載されるように直鎖状ペプチドまたは線維におけるペプチド(図3)の曲率と比較して増大している。
【0170】
シクロ(CGQKLVG)(配列番号3)、直鎖状GCGQKLVG(配列番号3)および線維におけるQKLV(配列番号1)のQ、K、L、Vの曲率の値が決定された。実施例4に記載されるように、これらは、
環状ペプチド:1.248 1.566 1.422 1.46
直鎖状ペプチド:0.870 1.355 0.931 1.303
線維:0.740 1.159 0.796 1.188
であった。これらの平均は、
環状ペプチド:1.42
直鎖状ペプチド:1.11
線維:0.97
である。
【0171】
したがって、別の立体配座のQ、ならびに/または、K、L、および/もしくはVのうちの1つまたは複数の曲率が、直鎖状ペプチドと比較して少なくとも0.1ラジアン、0.2ラジアン、0.3ラジアンまたはそれ以上増大している。
【0172】
一実施形態では、QK、QKL、および/またはQKLV(配列番号1)は、例えば非オリゴマー立体配座でこれら残基によって占められるものと比較して、別の立体配座にある。
【0173】
たとえばQおよびKでは、溶解度により重み付けされたSASAは、直鎖状ペプチドまたは線維におけるペプチドと比較して、環状ペプチドにおいて増大する。
【0174】
さらに、環状ペプチドでは、側鎖のエントロピーが直鎖状ペプチドと比較して減少しており、側鎖が直鎖状ペプチドよりも構造化された立体配座になっている。
【0175】
環状化合物で好ましい立体配座は、直鎖状ペプチドまたは線維のいずれかで好ましい立体配座と異なっている。具体的には、Qの側鎖におけるCα-Cβ-Cγ-Cδ原子の間の二面角が、環状ペプチドと直鎖状ペプチドとの間で異なるものである。これは、図14、ならびに図4、5、および6に示されている。
【0176】
図14では、実線の矢印は、概して環状ペプチドで占められている二面角を示し、破線の矢印は、概して直鎖状ペプチドで占められている二面角を示し、ここで側鎖の一部は半透明に示されている。
【0177】
本明細書で示されるように、環状エピトープの曲率は、直鎖状ペプチドのものまたは線維におけるペプチドと比較して増大している(図3)。また、残基Qならびに/またはLおよび/もしくはVの二面角のうち1つまたは複数は、直鎖状ペプチドまたは線維におけるペプチドの二面角と大幅に異なることが示されている。さらに、エピトープの1つまたは複数のアミノ酸、特にはQおよびKでは、側鎖の溶媒露出面積(SASA)は、線維におけるペプチドと比較して環状ペプチドにおいて増大している。これらのアミノ酸では、溶解度により重み付けされたSASAは、線維におけるペプチドと比較して環状ペプチドにおいて増大している。さらに、側鎖のエントロピーは、直鎖状ペプチドと比較して環状ペプチドにおいて減少しており、側鎖を、直鎖状ペプチドよりも構造化された立体配座にしている(図13)。
【0178】
同様の変化を示す環状化合物も包含される。
【0179】
QKLV(配列番号1を含むペプチドを含む、いくつかの実施形態の環状化合物は、AベータのQKLV(配列番号1)の上流および/または下流に1個、2個、3個またはそれ以上の残基を含み得る。このような場合、Aベータの残基のN末端およびC末端にスペーサーが共有結合している。
【0180】
一実施形態では、環状化合物は図12の化合物である。
【0181】
環化ペプチドを作製する方法は当該技術分野で公知であり、SS環化またはアミド環化(頭-尾環化または主鎖環化)がこれに含まれる。実施例5に方法をさらに記載する。例えば、N末端およびC末端に「C」残基を有するペプチド、例えばCGQKLVGC(配列番号8)をSS環化により反応させて、環状ペプチドを得ることができる。
【0182】
環状化合物は、環化の前に、Aベータペプチドを含むペプチドのN末端またはC末端に共有結合しているリンカーを含む直鎖状分子として合成することができる。あるいは、環化前に、リンカーの一部をN末端と共有結合させ、一部をC末端と共有結合させる。いずれの場合も、直鎖状化合物を、例えば頭-尾環化(例えば、アミド結合環化)で環化する。
【0183】
一部の実施形態では、リンカーまたはスペーサーは、AベータペプチドのN末端およびC末端に間接的に結合されている
【0184】
実施例4に記載されるように、図12Aの環状化合物について、特定された立体配座エピトープとの関連性を評価した。QKLV(配列番号1)ペプチドを含む環状化合物は、例えば、1つまたは複数の立体配座的特徴に選択的な抗体を生じさせるのに使用することができる。
【0185】
本明細書に記載されるエピトープQKLV(配列番号1)および/またはその一部は、Aベータに含まれるAベータのミスフォールドされた伝播性の株における潜在的な標的となり得、その立体配座エピトープを認識する抗体は、例えば、そのような伝播性の株の検出に有用であり得る。
【0186】
別の態様では、直鎖状ペプチドおよび環状ペプチドを含めた本明細書に記載されるAベータペプチド配列を含む、単離ペプチドも提供される。直鎖状ペプチドは、例えば、それと結合しない抗体の選択に使用することができる。単離ペプチドは、本明細書に記載されるリンカー配列を含み得る。リンカーは、GCGQKLVG(配列番号3)直鎖状ペプチドでは、N末端またはC末端と共有結合していても、あるいは一部がN末端と結合し、一部がC末端と結合していてもよい。環状ペプチドでは、リンカーはC末端およびN末端と直接的または間接的に結合している。
【0187】
別の態様は、本明細書に記載される化合物、任意選択で本明細書中に記載される環状化合物(たとえばQKL、KLV、またはQKLV(配列番号1)を含む)を含む、免疫原を含む。
【0188】
免疫原は、対象への投与のために適切に調製または製剤化され、例えば、免疫原は無菌のものまたは精製されたものであり得る。一実施形態では、免疫原は、QKLV(配列番号1)または関連エピトープ配列を含む環状ペプチドである。
【0189】
一実施形態では、免疫原は、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)などの免疫原性増強物質を含む。免疫原性増強物質は、アミド結合などを介して直接、またはリンカーの官能化可能な部分を介して間接的に、化合物と結合していてよい。(例えば、環状化合物内のAベータペプチドが6アミノ酸残基であり)リンカーが単一のアミノ酸残基である場合、リンカーは官能化可能な部分(例えば、システイン残基)であり得る。
【0190】
免疫原は、例えば、参照により本明細書に組み込まれるLateefら(2007)に記載されている方法を用いて、拘束されたエピトープペプチドを含む環状化合物と、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)などの免疫原性増強物質またはウシ血清アルブミン(BSA)などの担体とをコンジュゲートすることにより作製することができる。一実施形態では、実施例3または4に記載される方法を用いる。
【0191】
さらなる態様は、本明細書に記載される化合物または免疫原のタンパク質性部分をコードする単離核酸である。実施形態では、核酸分子は、配列番号1~10で示されるアミノ酸配列のいずれか1つをコードする。
【0192】
一実施形態では、核酸分子は、QKLV(配列番号1)または関連エピトープおよび任意選択で、本明細書に記載されるリンカーをコードする。
【0193】
さらなる態様は、前記核酸を含むベクターである。適切なベクターについては本明細書の他の箇所に記載する。
【0194】
ii)抗体、細胞および核酸
上記の化合物および特に環状化合物を用いて、Aベータ内のQKLV(配列番号1)と特異的に結合する抗体および/またはAベータのQKLV(配列番号1)の特定の立体配座を認識する抗体を生じさせることができる。実施例で例証されているように、環状化合物(CGQKLVG)(配列番号3)は免疫原性であり、対応する直鎖状ペプチドと比較して環状化合物を特異的かつ/または選択的に結合する多くの抗体を産生した。さらに、(CGQKLVG)(配列番号3)に対して生じさせられた抗体は、Aベータオリゴマーと特異的かつ/または選択的に結合し、斑と結合しない、もしくはほとんど結合せず、Aベータ凝集伝播を阻害し、in vitroでのAベータオリゴマー誘導型の神経毒性を阻害した。
【0195】
よって、上述の化合物、特に環状化合物を使用して、本明細書中記載される1つまたは複数の差次的な特徴を含む、AベータにおいてQKLV(配列番号1)を特異的に結合する抗体、および/またはAベータにおけるこれら残基の特定の立体配座を認識する抗体を生じさせることができる。同様に、たとえば配列番号1、2、9、または10などの本明細書中に記載される関連エピトープ配列を含む環状化合物を使用して、QKLV(配列番号1)の立体配座エピトープを特異的、選択的に結合する抗体を生じさせることができる。
【0196】
したがって、一態様は、例えば配列番号1、2、9、または10のいずれか1つで示される配列QKLV(配列番号1)または関連エピトープ配列を有するAベータペプチドと特異的に結合する、抗体(その結合フラグメントを含む)を含む。
【0197】
一実施形態では、Aベータペプチドは環状化合物、任意に環状ペプチド内に含まれており、抗体は、環状化合物内で提示されるAベータの一部に対して特異的または選択的なものである。
【0198】
一実施形態では、抗体は、任意に直鎖状(CGQKLVG)(配列番号3)、たとえば対応する直鎖状配列においてQKLV(配列番号1)を含む直鎖状ペプチドと比較して、シクロ(CGQKLVG)(配列番号3)において環状化合物中のAベータペプチドを選択的に結合する。たとえば、一実施形態では、抗体は、環状立体配座でQKLV(配列番号1)を選択的に結合し、かつ、たとえばELISAもしくは表面プラズモン共鳴により、または任意に本明細書中記載される方法を使用して測定される、直鎖状の不定形の化合物におけるQKLV(配列番号1)と比較して環状の立体配座において、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも30倍、少なくとも40倍、少なくとも50倍、少なくとも100倍、少なくとも500倍、少なくとも1000倍選択性が大きいQKLV(配列番号1)を有する。
【0199】
一実施形態では、抗体は環状化合物のAベータペプチドと特別かつ/または選択的に結合し、Aベータは、配列番号1、2、4~10のいずれか1つで示される配列を有する。
【0200】
一実施形態では、抗体は、直鎖状化合物と比較して、環状化合物において提示される配列番号1~10のいずれかの配列であるAベータの一部選択的に結合する。
【0201】
一実施形態では、環状化合物は環状ペプチドである。一実施形態では、環状ペプチド内のAベータペプチドは配列番号1、2、9、または10のいずれか1つである。一実施形態では、環状ペプチドは配列番号1~10の配列のいずれか1つを含む
【0202】
実施例に記載されるように、実施例に記載されるアッセイを用いて、1つまたは複数の特性を有する抗体を選択することができる。
【0203】
一実施形態では、抗体は、配列QKLV(配列番号1)を含む直鎖状ペプチドとは結合せず、任意選択で、直鎖状ペプチドの配列は、任意選択で配列番号3で示される本明細書中記載される抗体を生じさせるために使用される環状配列の直鎖状型である。
【0204】
一実施形態では、抗体は、立体配座に特異的かつ/または選択的なAベータの抗体である。例えば、特定のエピトープ立体配座と結合する抗体は、立体配座特異的抗体と呼ぶことができる。このような抗体は、本明細書に記載される方法を用いて選択することができる。立体配座選択的抗体は、特定のAベータ種または関連種(例えば、二量体、三量体およびその他のオリゴマー種)のグループを区別して認識することが可能であり、ある種または種のグループに対して別の種(例えば、Aベータモノマー種または線維種)より高い親和性を有し得る。
【0205】
一実施形態では、抗体は単離されている。
【0206】
一実施形態では、抗体は外来抗体である。
【0207】
一実施形態では、抗体はAベータ上のエピトープと特異的に結合し、エピトープは、QKLV(配列番号1)、その関連エピトープまたは一部を含む、またはこれよりなる。
【0208】
実施例に記載されるように、Qおよび/またはQKおよび/またはQL残基は、モノマー型および/または線維型とは異なるAベータの立体配座で主として接触可能である、または露出している。
【0209】
したがって、さらなる態様は、Aベータ上のエピトープと特異的に結合する抗体であり、ここでは、エピトープは、抗体との結合に主として関与する少なくとも1個のアミノ酸残基を含む、またはこれよりなるものであり、その少なくとも1個のアミノ酸は、配列QKLV(配列番号1)内に組み込まれたQ、K、またはLである。
【0210】
一実施形態では、エピトープは、抗体との結合に主として関与する少なくとも2個の連続するアミノ酸残基を含む、またはこれよりなるものであり、その少なくとも2個の連続するアミノ酸は、QKLV(配列番号1)内に組み込まれたQKまたはKLである。
【0211】
別の実施形態では、エピトープはQKLV(配列番号1)よりなる。
【0212】
一実施形態では、抗体は単量体Aベータと特異的に結合しない。一実施形態では、抗体は、例えばADの脳組織においてin situで、Aベータ老人斑と特異的に結合しない。
【0213】
別の実施形態では、抗体は、天然または合成のオリゴマーAベータより単量体Aベータと選択的に結合することはない。
【0214】
一実施形態では、抗体は、選択的にAベータオリゴマーなどのAベータ種と特異的かつ/または選択的に結合する。一実施形態では、選択性は、QKLV(配列番号1)を含むAベータモノマーおよび/またはAベータ線維および/または直鎖状化合物から選択されるAベータ種よりも、Aベータオリゴマーに関して少なくとも3倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも30倍、少なくとも40倍、少なくとも50倍、少なくとも100倍、少なくとも500倍、少なくとも1000倍、高い選択性である。
【0215】
一実施形態では、Aベータオリゴマーは、Aベータの1~42のサブユニットを含む。
【0216】
一実施形態では、抗体はAベータ線維斑(老人斑とも呼ばれる)染色を示さない。斑染色がみられないことは、Aベータ特異的抗体である6E10および4G8(Biolegend社、サンディエゴ、カリフォルニア州)または2C8(Enzo Life Sciences社、ファーミングデール、ニューヨーク州)、またはAベータの線維形態に対して反応性のある他のいずれかの抗体などの陽性対照ならびにアイソタイプ対照と比較することにより評価することができる。本明細書に記載される抗体は、その抗体が典型的な斑形態染色を示さず、染色のレベルがIgG陰性アイソタイプ対照でみられるレベルの2倍と同等またはそれ以下である場合、Aベータ線維斑染色を示さない、またはほとんど示さないことになる。尺度は、例えば、アイソタイプ対照での染色レベルを1に設定し、6E10での染色レベルを10に設定することができる。抗体は、そのような尺度で染色レベルが2以下である場合、Aベータ線維斑染色を示さないことになる。実施形態では、抗体は、例えば上記の尺度で、最小限のAベータ線維斑染色を示し、そのレベルのスコアは少なくとも3程度または3未満である。
【0217】
一実施形態では、抗体はモノクローナル抗体である。
【0218】
モノクローナル抗体を作製するには、本明細書に記載される免疫原で免疫感作した対象から抗体産生細胞(リンパ球)を回収し、標準的な体細胞融合法によりミエローマ細胞と融合し、それにより上記の細胞を不死化してハイブリドーマ細胞を得ることができる。このような技術は当該技術分野で周知である(例えば、KohlerおよびMilsteinにより最初に開発されたハイブリドーマ技術(Nature 256:495-497(1975))ならびにその他の技術、例えばヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kozborら,Immunol.Today 4:72(1983))、ヒトモノクローナル抗体を作製するEBVハイブリドーマ技術(Coleら,Methods Enzymol,121:140-67(1986))およびコンビナトリアル抗体ライブラリーのスクリーニング(Huseら,Science 246:1275(1989)など)。筋萎縮性側索硬化症に特異的なエピトープと特異的に反応する抗体の産生に関してハイブリドーマ細胞を免疫学的にスクリーニングし、モノクローナル抗体を単離することができる。
【0219】
特定の抗原または分子に対して反応性の特異的抗体または抗体フラグメントはまた、細胞表面成分とともに細菌内で発現する免疫グロブリン遺伝子またはその一部をコードする発現ライブラリーをスクリーニングすることにより作製し得る。例えば、ファージ発現ライブラリーを用いて、完全Fabフラグメント、VH領域およびFV領域を細菌内で発現させることができる(例えば、Wardら,Nature 41:544-546(1989);Huseら,Science 246:1275-1281(1989);およびMcCaffertyら,Nature 348:552-554(1990)を参照されたい)。
【0220】
一実施形態では、抗体はヒト化抗体である。
【0221】
非ヒト種からの抗体のヒト化については文献に十分に記載されている。例えば、欧州特許第号第0239400号(B1)ならびにCarterおよびMerchant 1997(全体が参照により本明細書に組み込まれるCurr Opin Biotechnol 8,449-454,1997)を参照されたい。ヒト化抗体はまた、商業的に容易に入手できる(例えば、イギリス、ミドルセックス、トゥイッケナム、ホーリーロード2番のScotgen Limited社)。
【0222】
ヒト化型のげっ歯類抗体は、CDR移植(Riechmannら,Nature,332:323-327,1988)によって容易に作製される。この方法では、げっ歯類モノクローナル抗体の抗原結合部位を含む6つのCDRループと、対応するヒトフレームワーク領域とを結合させる。CDR移植では、フレームワーク領域のアミノ酸が抗原認識に影響を及ぼし得ることから、親和性が低下した抗体が得られることが多い(FooteおよびWinter.J Mol Biol,224:487-499,1992)。抗体の親和性を維持するには多くの場合、部位特異的変異誘発またはその他の組換え技術により特定のフレームワーク残基を置き換える必要があり、コンピュータによる抗原結合部位のモデル化を援用することもある(Coら,J Immunol,152:2968-2976,1994)。
【0223】
ヒト化型の抗体は任意選択で、リサーフィシング(resurfacing)(Pedersenら,J Mol Biol,235:959-973,1994)によって得られる。この方法ではげっ歯類抗体の表面残基のみをヒト化する。
【0224】
特定の抗原に特異的なヒト抗体は、ファージディスプレイ戦略(Jespersら,Bio/Technology,12:899-903,1994)によって特定され得る。1つの方法では、特異的抗原に対するげっ歯類抗体の重鎖をクローン化し、ヒト軽鎖のレパートリーと対にして、繊維状ファージ上にFabフラグメントとして提示させる。抗原との結合によりファージを選択する。次いで、選択されたヒト軽鎖をヒト重鎖のレパートリーと対にしてファージ上に提示させ、再び抗原との結合によりファージを選択する。その結果は、特定の抗原に特異的なヒト抗体Fabフラグメントとなる。別の方法では、メンバーがその外表面に様々なヒト抗体フラグメント(FabまたはFv)を提示するファージのライブラリーを作製する(Dowerら,国際公開第91/17271号およびMcCaffertyら,国際公開第92/01047号)。特異的抗原に対するアフィニティー濃縮により所望の特異性を有する抗体を提示するファージを選択する。いずれかの方法で特定されたヒトFabフラグメントまたはヒトFvフラグメントをクローン化して、哺乳動物細胞でヒト抗体として発現させ得る。
【0225】
ヒト抗体は任意選択で、トランスジェニック動物から得られる(米国特許第6,150,584号;同第6,114,598号;および同第5,770,429号)。この方法では、キメラマウスまたは生殖系列変異体マウスの重鎖連結領域(JH)遺伝子を欠失させる。次いで、そのような変異体マウスにヒト生殖系列免疫グロブリン遺伝子アレイを導入する。次いで、得られたトランスジェニックマウスは抗原曝露時にヒト抗体の全レパートリーを作製することが可能になる。
【0226】
ヒト化抗体またはヒトの抗体を含む抗体は、IgM、IgG、IgD、IgA、またはIgEを含めた任意のクラスの免疫グロブリン;ならびにIgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4を含む任意のアイソタイプから選択される。キメラ抗体、ヒト化抗体またはヒト抗体は、1つまたは2つ以上のアイソタイプまたはクラスに由来する配列を含み得る。
【0227】
さらにこれらの抗体は通常、Fab、Fab’F(ab’)2、Fd、Fvおよび単一ドメイン抗体フラグメントなどの抗原結合フラグメントまたは重鎖と軽鎖がスペーサーにより連結された一本鎖抗体として作製される。また、ヒト抗体またはヒト化抗体はモノマー型またはポリマー型で存在し得る。ヒト化抗体は任意選択で、1本の非ヒト鎖と1本のヒト化鎖(すなわち、1本のヒト化重鎖または軽鎖)とを含む。
【0228】
さらに、本明細書に記載されるエピトープに特異的な抗体は、抗体ファージディスプレイライブラリーをスクリーニングすることにより容易に単離される。例えば、任意選択で本発明の疾患特異的エピトープを用いることにより抗体ファージライブラリーをスクリーニングして、疾患特異的なエピトープに特異的な抗体フラグメントを特定する。任意選択で、特定された抗体フラグメントを用いて、本発明の様々な実施形態に有用な様々な組換え抗体を作製する。抗体ファージディスプレイライブラリーは、例えばXoma社(バークレー、カリフォルニア州)から市販されている。ファージライブラリーをスクリーニングする方法は当該技術分野で周知である。
【0229】
さらなる態様は、軽鎖可変領域と重鎖可変領域とを含み、重鎖可変領域が相補性決定領域CDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3を含み、軽鎖可変領域が相補性決定領域CDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3を含み、前記CDRのアミノ酸配列が、以下に記載する配列を含む、抗体および/またはその結合フラグメントである。
【0230】
【表2】
【0231】
一実施形態では、抗体はモノクローナル抗体である。一実施形態では、抗体はキメラ抗体、例えば表6および/または8に記載されるCDR配列を含むヒト化抗体などである。
【0232】
別の実施形態では、任意選択で一本鎖抗体において、表6および/または8のCDRと軽鎖可変領域と重鎖可変領域とを含む、抗体も提供される。
【0233】
さらに別の態様では、抗体は、i)配列番号18もしくは28で示されるアミノ酸配列;ii)配列番号18もしくは28と少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%の配列同一性を有し、CDR配列が配列番号11、12、13、21、22、および/もしくは23で示される、アミノ酸配列、またはiii)保存的に置換されたアミノ酸配列i)を含む、重鎖可変領域を含む。別の態様では、抗体は、i)配列番号20もしくは30で示されるアミノ酸配列、ii)配列番号20もしくは30と少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80% 少なくとも70%の配列同一性を有し、CDR配列が配列番号14、15、16、24、25、および/もしくは26で示される、アミノ酸配列、またはiii)保存的に置換されたi)のアミノ酸配列を含む、軽鎖可変領域を含む。別の実施形態では、重鎖可変領域アミノ酸配列が、配列番号17または27で示されるヌクレオチド配列またはそのコドン縮重最適化型によってコードされている。別の実施形態では、抗体は、配列番号19または29で示されるヌクレオチド配列またはそのコドン縮重型もしくコドン最適化型によってコードされる軽鎖可変領域のアミノ酸配列を含む。一実施形態では、重鎖可変領域は配列番号18または28で示されるアミノ酸配列を含む。一実施形態では、軽鎖可変領域は、配列番号20または30で示されるアミノ酸配列を含む。
【0234】
別の態様は、表6および/または8に記載されるCDR配列を有する抗体と同じエピトープと特異的に結合する抗体である。
【0235】
別の態様は、ヒトAベータとの結合に関して、表6および/または8に記載されるCDR配列を含む抗体と競合する、抗体を含む。
【0236】
抗体間の競合は、例えば、被験抗体が参照抗体と共通の抗原との特異的結合を阻害する能力を評価するアッセイを用いて判定することができる。競合結合アッセイで測定したとき、過剰の被験抗体(例えば、少なくとも2倍、5倍、10倍または20倍)が参照抗体の結合を少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%または少なくとも95%阻害する場合、被験抗体は参照抗体と競合することになる。
【0237】
さらなる態様は、治療剤、検出可能な標識または細胞毒性物質とコンジュゲートした抗体である。一実施形態では、検出可能な標識は陽電子放出放射性核種である。陽電子放出放射性核種は、例えばPET撮像で使用され得る。
【0238】
さらなる態様は、本明細書に記載される抗体および/またはその結合フラグメントとオリゴマーAベータとを含む、抗体複合体に関する。
【0239】
さらなる態様は、本明細書に記載される抗体またはその一部をコードする、単離核酸である。
【0240】
また、重鎖または軽鎖をコードする、例えば、本明細書に記載されるCDR-H1領域、CDR-H2領域および/またはCDR-H3領域を含む重鎖をコードする、あるいは本明細書に記載されるCDR-L1領域、CDR-L2領域および/またはCDR-L3領域を含む軽鎖をコードする、核酸も提供される。
【0241】
本開示はまた、本明細書に開示される抗体および/またはその結合フラグメントをコードする核酸配列のバリアントを提供する。例えば、バリアントとしては、本明細書に開示される抗体および/またはその結合フラグメントをコードする核酸配列と少なくとも中程度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列またはコドン縮重配列もしくはコドン最適化配列が挙げられる。別の実施形態では、バリアント核酸配列は、配列番号18、20、28、および30のうちのいずれか1つを含む本明細書中に記載されるタンパク質性配列をコードする核酸配列と少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、最も好ましくは少なくとも80%、さらにより好ましくは少なくとも90%、さらに最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有する。
【0242】
一実施形態では、核酸は単離核酸である。
【0243】
別の態様は、本明細書に開示される核酸を含む発現カセットまたはベクターである。一実施形態では、ベクターは単離ベクターである。
【0244】
ベクターは、抗体および/またはその結合フラグメントの作製あるいは本明細書に記載されるエピトープペプチド配列の発現に適したベクターを含めた任意のベクターであり得る。
【0245】
既知の方法で、タンパク質を確実に発現させる適切な発現ベクター内に核酸分子を組み込み得る。考え得る発現ベクターとしては、特に限定されないが、コスミド、プラスミドまたは改変ウイルス(例えば、複製欠損レトロウイルス、アデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルス)が挙げられる。ベクターは使用する宿主細胞と適合性のあるものであるべきである。発現ベクターは「宿主細胞の形質転換に適した」ものであり、これは、その発現ベクターが、本明細書に記載されるエピトープまたは抗体に対応するペプチドをコードする核酸分子を含んでいることを意味する。
【0246】
一実施形態では、ベクターは、遺伝子治療により例えば一本鎖抗体を発現させるのに適したものである。ベクターは、例えば神経特異的プロモーターなどを用いて、神経組織での特異的発現に適合させることができる。一実施形態では、ベクターは、IRESを含み、軽鎖可変領域および重鎖可変領域の発現を可能にする。このようなベクターは、in vivoで抗体を送達するのに用いることができる。
【0247】
適切な制御配列は、細菌、真菌、ウイルス、哺乳動物または昆虫の遺伝子を含めた様々な供給源に由来するものであり得る。
【0248】
このような制御配列の例としては、転写プロモーターおよび転写エンハンサーまたはRNAポリメラーゼ結合配列、翻訳開始シグナルを含めたリボソーム結合配列が挙げられる。さらに、選択する宿主細胞および用いるベクターに応じてその他の配列、例えば複製起点、追加のDNA制限部位、エンハンサーおよび転写の誘導性を付与する配列などを発現ベクター内に組み込み得る。
【0249】
一実施形態では、制御配列は、神経組織および/または細胞での発現を指令する、または増大させる。
【0250】
一実施形態では、ベクターはウイルスベクターである。
【0251】
組換え発現ベクターはまた、本明細書に記載される抗体またはエピトープペプチドを発現させるためにベクターにより形質転換、感染または形質移入した宿主細胞の選択を容易にするマーカー遺伝子を含み得る。
【0252】
組換え発現ベクターはまた、組換えペプチドを発現または安定性を増大させる;組換えペプチドの溶解度を増大させる;ならびに例えば本明細書に記載されるタグおよび標識を含めたアフィニティー精製のリガンドとして作用することにより標的組換えペプチドの精製を補助する融合部分(すなわち、「融合タンパク質」)をコードする、発現遺伝子を含み得る。さらに、標的組換えタンパク質にタンパク質分解切断部位を付加して、融合タンパク質精製後に融合部分から組換えタンパク質を分離させ得る。典型的な融合発現ベクターとしては、pGEX(Amrad社、メルボルン、オーストラリア)、pMAL(New England Biolabs社、ビバリー、マサチューセッツ州)およびpRIT5(Pharmacia社、ピスカタウェイ、ニュージャージー州)が挙げられ、これらは組換えタンパク質にそれぞれグルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)、マルトースE結合タンパク質またはプロテインAを融合させるものである。
【0253】
例えばニューロンおよび神経組織内にin vitroおよびin vivoの両方で遺伝子を導入するシステムとしては、ウイルス、中でもとりわけ単純ヘルペスウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)およびレンチウイルスを含めたレトロウイルスに基づくベクターが挙げられる。これに代わる遺伝子送達の方法としては、裸のプラスミドDNAおよびリポソーム-DNA複合体の使用が挙げられる。別の方法には、DNAをポリカチオン濃縮して脂質に封入し、脳内遺伝子送達により脳内に導入する、AAVプラスミドの使用(Leoneら,米国特許出願公開第2002076394号)がある。
【0254】
したがって、別の態様では、本明細書に記載される化合物、免疫原、核酸、ベクターおよび抗体をリポソーム、ナノ粒子およびウイルスタンパク質粒子などの小胞で製剤化し、例えば、本明細書に記載される抗体、化合物、免疫原および核酸を送達し得る。特に、ポリマーソームを含めた合成ポリマー小胞を用いて抗体を投与することができる。
【0255】
別の態様では、本明細書に記載される抗体を発現する、または本明細書に開示される発現カセットもしくはベクターを含む細胞、任意選択で単離細胞および/または組換え細胞も提供される。
【0256】
組換え細胞は、ポリペプチドの産生に適した、例えば抗体および/またはその結合フラグメントの産生に適した任意の細胞を用いて作製することができる。例えば、核酸(例えば、ベクター)を細胞内に導入するには、用いるベクターに応じて、細胞に形質移入し得る、細胞を形質転換し得る、または細胞に感染させ得る。
【0257】
適切な宿主細胞としては、多種多様な原核宿主細胞および真核宿主細胞が挙げられる。例えば、本明細書に記載されるペプチドおよび抗体を、大腸菌(E.coli)などの細菌細胞、昆虫細胞(バキュロウイルスを用いる)、酵母細胞または哺乳動物細胞で発現させ得る。
【0258】
一実施形態では、細胞は、酵母細胞、植物細胞、蠕虫細胞、昆虫細胞、鳥類細胞、魚類細胞、爬虫類細胞および哺乳動物細胞から選択される真核細胞である。
【0259】
一実施形態では、細胞は、ハイブリドーマ細胞などの融合した細胞である。
【0260】
別の実施形態では、哺乳動物細胞は、ミエローマ細胞、脾臓細胞またはハイブリドーマ細胞である。
【0261】
一実施形態では、細胞は神経細胞である。
【0262】
抗体またはペプチドを発現させるのに適した酵母宿主細胞および真菌宿主細胞としては、特に限定されないが、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)、分裂酵母(Schizosaccharomyces pombe)、ピキア(Pichia)属またはクリベロミセス(Kluyveromyces)属およびアスペルギルス(Aspergillus)属の様々な種が挙げられる。酵母(S.cerivisiae)で発現させるためのベクターの例としては、pYepSec1、pMFa、pJRY88およびpYES2(Invitrogen社、サンディエゴ、カリフォルニア州)が挙げられる。酵母および真菌を形質転換させるプロトコルは当業者に周知である。
【0263】
適切であり得る哺乳動物細胞としては、特にCOS(例えば、ATCC番号CRL1650または1651)、BHK(例えば、ATCC番号CRL6281)、CHO(ATCC番号CCL61)、HeLa(例えば、ATCC番号CCL2)、293(ATCC番号1573)およびNS-1細胞が挙げられる。哺乳動物細胞での発現を指令するのに適した発現ベクターは一般に、プロモーター(例えば、ポリオーマ、アデノウイルス2、サイトメガロウイルスおよびサルウイルス40などのウイルス材料由来のもの)ならびにその他の転写制御配列および翻訳制御配列を含む。哺乳動物発現ベクターの例としては、pCDM8およびpMT2PCが挙げられる。
【0264】
さらなる態様は、本明細書に記載されるエピトープに特異的な抗体を産生するハイブリドーマ細胞株である。
【0265】
組成物
さらなる態様は、本明細書に記載される化合物、免疫原、核酸、ベクターまたは抗体を含む組成物である。
【0266】
一実施形態では、組成物は希釈剤を含む。
【0267】
核酸に適した希釈剤としては、特に限定されないが、水、生理食塩水およびエタノールが挙げられる。
【0268】
抗体もしくはそのフラグメントを含めたポリペプチドおよび/または細胞に適した希釈剤としては、特に限定されないが、生理食塩水、pH緩衝溶液およびグリセロール溶液あるいはポリペプチドおよび/または細胞を凍結させるのに適した他の溶液が挙げられる。
【0269】
一実施形態では、組成物は、本明細書に開示されるペプチド、免疫原、抗体、核酸またはベクターのいずれかを含み、任意選択で薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物である。
【0270】
本明細書に記載される組成物は、対象に投与することができる薬学的に許容される組成物を調製する既知の方法それ自体により、任意選択でワクチンとして、有効量の活性物質が薬学的に許容される溶媒との混合物の形で組み合わさるように調製することができる。
【0271】
医薬組成物としては、特に限定されないが、凍結乾燥粉末剤または水性もしくは非水性の無菌注射用液剤もしくは無菌注射用懸濁剤が挙げられ、これらは、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤および組成物を目的とする被投与者の組織または血液に実質的に適合させる溶質をさらに含有し得る。このような組成物中に記載の存在し得るその他の成分としては、例えば水、界面活性剤(Tweenなど)、アルコール、ポリオール、グリセリンおよび植物油が挙げられる。無菌粉末剤、顆粒剤、錠剤または濃縮した液剤もしくは懸濁剤から即時注射液剤および即時注射懸濁剤を調製し得る。組成物は、例えば、特に限定されないが、患者に投与する前に滅菌水または生理食塩水で再構築する凍結乾燥粉末として供給され得る。
【0272】
医薬組成物は薬学的に許容される担体を含み得る。適切な薬学的に許容される担体としては、実質的に化学的に不活性で無毒性であり医薬組成物の生物活性の効果に干渉しない組成物を含む。適切な医薬担体の例としては、特に限定されないが、水、生理食塩水、グリセロール溶液、エタノール、N-(1(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル)N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)、ジオレシルホスファチジル-エタノールアミン(diolesylphosphotidyl-ethanolamine)(DOPE)およびリポソームが挙げられる。このような組成物は、患者に直接投与する形態になるように、治療有効量の化合物を適量の担体とともに含有するべきである。
【0273】
組成物は薬学的に許容される塩の形態であり得、このような塩としては、特に限定されないが、遊離アミノ基を用いて形成される塩、例えば塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸などに由来するなどおよび遊離カルボキシル基を用いて形成される塩、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム、水酸化第二鉄、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2-エチルアルニノエタノール(2-ethylarnino ethanol)、ヒスチジン、プロカインなどに由来するなどが挙げられる。
【0274】
本明細書に記載される化合物または免疫原を含む実施形態では、組成物はアジュバントを含む。
【0275】
使用し得るアジュバントとしては例えば、通常、ワクチンとして使用される死菌または弱毒菌の成分である、内因性アジュバント(リポ多糖など)が挙げられる。外因性アジュバントには、通常、抗原と非共有結合し、宿主免疫応答を増強するよう製剤化される、免疫調節物質がある。水酸化アルミニウム、硫酸アルミニウムおよびリン酸アルミニウム(一般にミョウバンと総称される)はアジュバントとして日常的に使用される。様々なアジュバントが免疫原に対する強力な免疫応答を引き起こし得る。このようなものとしては、サポニン、例えばStimulon(QS21、Aquila社、ウスター、マサチューセッツ州)またはそれから生成されるISCOMおよび(免疫刺激複合体)および膜タンパク質抗原と複合体を形成したISCOMATRIX(免疫刺激複合体)などの粒子など、プルロニックポリマーと鉱油、死滅マイコバクテリアと鉱油、フロイント完全アジュバント、ムラミルジペプチド(MDP)およびリポ多糖などの細菌生成物ならびにリピドAおよびリポソームが挙げられる。
【0276】
一実施形態では、アジュバントは水酸化アルミニウムである。別の実施形態では、アジュバントはリン酸アルミニウムである。水中油型乳剤としては、スクアレン;ラッカセイ油;MF59(国際公開第90/14387号);SAF(Syntex Laboratories社、パロアルト、カリフォルニア州);およびRibi(商標)(Ribi Immunochem社、ハミルトン、モンタナ州)が挙げられる。水中油型乳剤は、免疫刺激物質、例えばムラミルペプチド(例えば、N-アセチルムラミル-L-スレオニル-D-イソグルタミン(thr-MDP)、-アセチル-ノルムラミル-L-アラニル-D-イソグルタミン(nor-MDP)、N-アセチルムラミル-L-アラニル-D-イソグルタミル-L-アラニン-2-(1’-2’ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ヒドロキシホスホリルオキシ)-エチルアミン(MTP-PE)、N-アセチルグルクサミニル-N-アセチルムラミル-L-Al-D-イソグル-L-Ala-ジパルミトキシプロピルアミド(N-acetylglucsaminyl-N-acetylmuramyl-L-Al-D-isoglu-L-Ala-dipalmitoxy propylamide)(DTP-DPP)、theramide(商標))またはその他の細菌細胞壁成分とともに使用し得る。
【0277】
アジュバントを単一組成物として免疫原とともに投与し得る。あるいは、アジュバントを免疫原投与の前に、免疫原投与と同時に、かつ/または免疫原投与の後に投与し得る。
【0278】
アジュバントは一般に、リン酸緩衝生理食塩水に溶かした0.05~1.0パーセント溶液として使用される。アジュバントは免疫原の免疫原性を増強するが、アジュバント自体は必ずしも免疫原性であるわけではない。アジュバントは、投与部位付近に免疫原を局所的に保持することよって作用し、免疫系細胞への免疫原の緩徐で持続的な放出を促進するデポとしての効果をもたらし得る。アジュバントはまた、免疫原デポに免疫系細胞を誘引し、そのような細胞を刺激して免疫応答を誘発し得る。したがって、諸実施形態は、アジュバントをさらに含む組成物を包含する。
【0279】
非経口免疫感作のためのアジュバントとしては、アルミニウム化合物(水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウムおよびヒドロキシリン酸アルミニウム)が挙げられる。標準的プロトコルに従って、抗原をアルミニウム化合物とともに沈殿させる、またはアルミニウム化合物上に吸着させることができる。RIBI(ImmunoChem社、ハミルトン、モンタナ州)などのその他のアジュバントも非経口投与に使用することができる。
【0280】
粘膜免疫感作のためのアジュバントとしては、細菌毒素(例えば、コレラ毒素(CT)、大腸菌(E.coli)易熱性毒素(LT)、ディフィシル菌(Clostridium difficile)毒素Aおよび百日咳毒素(PT)またはその組合せ、サブユニット、トキソイドもしくは変異体)が挙げられる。例えば、天然のコレラ毒素サブユニットB(CTB)の精製調製物が有用であり得る。上記のいずれかの毒素のフラグメント、ホモログ、誘導体および融合物も、アジュバント活性を保持している限り適切なものである。好ましくは、毒性が低下した変異体を使用する。適切な変異体については、(例えば、国際公開第95/17211号(Arg-7-Lys CT変異体)、国際公開第96/6627号(Arg-192-Gly LT変異体)および国際公開第95/34323号(Arg-9-LysおよびGlu-129-Gly PT変異体)に)既に記載されている。方法および組成物に使用し得る追加のLT変異体としては、例えば、Ser-63-Lys変異体、Ala-69-Gly変異体、Glu-110-Asp変異体およびGlu-112-Asp変異体が挙げられる。その他のアジュバント(様々な供給源(例えば、大腸菌(E.coli)、サルモネラ・ミネソタ(Salmonella minnesota)、サルモネラ・チフィムリウム(Salmonella typhimuriumもしくはシゲラ・フレックスネリ(Shigella flexneri))の細菌モノホスホリルリピドA(MPLA)、サポニンまたはポリラクチドグリコリド(PLGA)マイクロスフェアなど)も粘膜投与に使用することができる。
【0281】
その他のアジュバントとしては、インターロイキンなどのサイトカイン、例えばIL-1、IL-2およびIL-12、ケモカイン、例えばCXCL10およびCCL5、マクロファージ刺激因子ならびに/あるいは腫瘍壊死因子が挙げられる。使用し得るその他のアジュバントとしては、CpGオリゴヌクレオチド(Davis.Curr Top Microbiol Immunol.,247:171-183,2000)が挙げられる。
【0282】
水中油型乳剤としては、スクアレン;ラッカセイ油;MF59(国際公開第90/14387号);SAF(Syntex Laboratories社、パロアルト、カリフォルニア州);およびRibi(商標)(Ribi Immunochem社、ハミルトン、モンタナ州)が挙げられる。水中油型乳剤は、免疫刺激物質、例えばムラミルペプチド(例えば、N-アセチルムラミル-L-スレオニル-D-イソグルタミン(thr-MDP)、-アセチル-ノルムラミル-L-アラニル-D-イソグルタミン(nor-MDP)、N-アセチルムラミル-L-アラニル-D-イソグルタミル-L-アラニン-2-(1’-2’ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ヒドロキシホスホリルオキシ)-エチルアミン(MTP-PE)、N-アセチルグルクサミニル-N-アセチルムラミル-L-Al-D-イソグル-L-Ala-ジパルミトキシプロピルアミド(N-acetylglucsaminyl-N-acetylmuramyl-L-Al-D-isoglu-L-Ala-dipalmitoxy propylamide)(DTP-DPP)、theramide(商標))またはその他の細菌細胞壁成分とともに使用され得る。
【0283】
粘膜免疫感作および非経口免疫感作の両方に有用なアジュバントとしては、ポリホスファゼン(例えば、国際公開第95/2415号)、DC-chol(3b-(N-(N’,N’-ジメチルアミノメタン)-カルバモイル)コレステロール(例えば、米国特許第5,283,185号および国際公開第96/14831)号およびQS-21(例えば、国際公開第88/9336号)が挙げられる。
【0284】
アジュバントを免疫原と結合させて投与し得る。例えば、免疫原を含むペプチドの立体配座の変化が免疫原に対する免疫応答の性質に影響を及ぼさないように、パルミチン酸などの脂質を1つまたは複数のペプチドと直接結合させ得る。
【0285】
アジュバントは、単一の組成物として免疫原と共に投与してもよい。さらにアジュバントは、免疫原の投与の前、投与中、または投与後に投与されてもよい。
【0286】
一実施形態では、組成物は本明細書に記載される抗体を含む。別の実施形態では、組成物は、本明細書に記載される抗体と希釈剤とを含む。一実施形態では、組成物は無菌組成物である。
【0287】
キット
さらなる態様は、無菌バイアルなどのバイアルあるいはその他の筐体に入った本明細書に記載されるi)抗体および/またはその結合フラグメント、ii)核酸、iii)組成物あるいはiv)組換え細胞と、任意選択で参照物質および/またはキットの使用のための説明書とを含む、キットに関する。
【0288】
一実施形態では、キットは、収集バイアル、標準緩衝液および検出試薬のうちの1つまたは複数のものをさらに含む。
【0289】
方法
本明細書に記載される化合物、免疫原および抗体を作製する方法が含まれる。
【0290】
特に、QKLV(配列番号1)または関連エピトープの立体配座エピトープに選択的な抗体を作製する方法であって、対象、任意選択で非ヒト対象に本明細書に記載されるエピトープ配列を含み立体配座的に制約のある化合物、任意選択でQKLV(配列番号1)または関連エピトープを含む環状化合物を投与することと、環状化合物と特異的または選択的に結合し、任意選択で、i)合成および/または天然のオリゴマーと特異的または選択的に結合し、かつ/あるいはin situ組織試料で老人斑との結合が全くもしくはほとんどみられない、または対応する直鎖状ペプチドとの結合が全くもしくはほとんどない、抗体産生細胞あるいは抗体を単離することとを含む、方法が提供される。環状化合物は、例えば、本明細書に記載される環状化合物を含む、本明細書に記載されるいずれかの「エピトープ」を含み得る。
【0291】
一実施形態では、この方法は、例えば本明細書に記載される方法を用いて、モノクローナル抗体を作製するためのものである。
【0292】
一実施形態では、この方法は、例えば本明細書に記載される方法を用いて、ヒト化抗体を作製するためのものである。
【0293】
環状化合物を用いて作製する抗体は、本明細書および実施例に記載される通りに選択される。一実施形態では、この方法は、任意選択で本明細書に記載される方法を用いて、直鎖状ペプチドよりも環状ペプチドと特異的または選択的に結合し、エピトープ配列に特異的であり、オリゴマーと特異的に結合し、かつ/あるいはin situの斑および/または対応する直鎖状ペプチドと結合しない、またはほとんど結合しない抗体を単離することを含む。
【0294】
さらなる態様では、生体試料がAベータを含むかどうかを検出する方法であって、生体試料と本明細書に記載される抗体とを接触させることと、何らかの抗体複合体の存在を検出することとを含む、方法が提供される。一実施形態では、この方法は、生体試料がAベータを含むかどうかを検出するための方法である。一実施形態では、この方法は、試料がAベータを含むかどうかを検出するための方法であって、ここでは、QKLV(配列番号1)または関連するエピトープが別の立体配座にあり、たとえば少なくともQ、L、またはVが、非オリゴマーの立体配座にあるQ、L、またはVにより占められている立体配座と別の立体配座にある。
【0295】
一実施形態では、この方法は、
a.抗体:Aベータオリゴマー複合体の形成が可能な条件下で、生体試料と、本明細書のAベータオリゴマーに特異的かつ/または選択的な本明細書に記載される抗体とを接触させること;および
b.何らかの複合体の存在を検出すること
を含み、
検出可能な複合体の存在により、試料がAベータオリゴマーを含有し得ることが示される。
【0296】
一実施形態では、形成された複合体のレベルを、適切なIg対照または無関係な抗体などの被験抗体と比較する。
【0297】
一実施形態では、検出を定量化し、生成した複合体の量を測定する。測定は、例えば標準物質に対して相対的なものであり得る。
【0298】
一実施形態では、測定された量を対照と比較する。
【0299】
別の実施形態では、この方法は、
(a)抗体-抗原複合体の生成が可能な条件下で、前記対象の生体試料と本明細書に記載される抗体とを接触させること;
(b)被験試料中の抗体-抗原複合体の量を測定すること;および
(c)被験試料中の抗体-抗原複合体の量と対照とを比較すること
を含み、
対照と比較して生体試料中に抗体-抗原複合体が検出されることにより、試料がAベータを含むことが示される。
【0300】
対照は、試料対照(例えば、ADを有さない対象または軽度、中等度もしくは進行型といった特定の型のADを有する対象に由来するもの)または対象のAベータオリゴマーレベルの変化をモニターするための同じ対象由来の以前の試料であり得る。
【0301】
一実施形態では、本明細書に記載される抗体を使用する。
【0302】
一実施形態では、QKLV(配列番号1)の立体配座エピトープを含むAベータは、Aベータオリゴマーであって、抗原:抗体複合体の存在を検出することが、試料がAベータオリゴマーを含み得ることを示す。
【0303】
一実施形態では、抗体は、QKLV(配列番号1)または関連立体配座エピトープを含むAベータの立体配座を特異的かつ/または選択的に認識し、生体試料中に抗体抗原複合体が検出されることにより、試料がAベータオリゴマーを含むことが示される。
【0304】
一実施形態では、試料は生体試料である。一実施形態では、試料は、脳組織もしくはその抽出物および/またはCSFを含む。一実施形態では、試料は、全血、血漿または血清を含む。一実施形態では、試料はヒト対象から採取されるものである。一実施形態では、対象は、ADが疑われる、ADのリスクがある、またはADを有する。
【0305】
本明細書に記載される抗体を用いてAベータ:抗体複合体を検出し、それにより生体試料中にQKLV(配列番号1)もしくは関連立体配座エピトープを含むAベータおよび/またはAベータオリゴマーが存在するかどうかを判定するには、フローサイトメトリー、ウェスタンブロット、ELISAおよび免疫沈降とそれに続くSDS-PAGEなどのイムノアッセイならびに免疫細胞化学を含めたいくつかの方法を用いることができる。
【0306】
実施例に記載されるように、表面プラズモン共鳴技術を用いて立体配座特異的結合を評価することができる。抗体を標識する、または複合体の抗体に特異的な検出可能に標識した二次抗体を用いる場合、その標識を検出することができる。一般に用いられる試薬としては、蛍光発光抗体およびHRP標識抗体が挙げられる。定量的方法では、発生したシグナルの量を標準物質または対照との比較により測定することができる。測定はまた、相対的なものであり得る。
【0307】
さらなる態様は、対象または組織中のAベータのレベルを測定する、またはそのようなAベータを撮像する方法であって、任意選択で、測定または撮像するAベータがオリゴマーAベータである、方法を含む。一実施形態では、この方法は、ADを有するリスクがある、ADを有することが疑われる、またはADを有する対象に検出可能な標識とコンジュゲートした抗体を投与すること;および標識を検出すること、任意選択で標識を定量的に検出することを含む。標識は、一実施形態では、例えばPET撮像に使用することができる陽電子放出放射性核種である。
【0308】
さらなる態様は、対象に免疫応答を誘導する方法であって、対象に本明細書に記載される化合物、任意選択で、QKLV(配列番号1)もしくは関連エピトープペプチド配列を含む環状化合物、免疫原および/または前記化合物もしくは前記免疫原を含む組成物を投与すること;ならびに任意選択で、投与した化合物または免疫原中のAベータペプチドと特異的および/または選択的に結合する細胞および/または抗体を単離することを含む、方法を含む。一実施形態では、組成物は、薬学的に許容される希釈剤または担体と混合した化合物または免疫原を含む、医薬組成物である。
【0309】
一実施形態では、対象はげっ歯類などの非ヒト対象である。作製された抗体産生細胞は、一実施形態ではハイブリドーマ細胞系を作製するために使用する。
【0310】
一実施形態では、投与する免疫原は、図12に示される化合物を含む。
【0311】
本明細書では、シクロ(CGQKLVG)(配列番号2)に対して生じさせた抗体が、Aベータオリゴマーと特異的かつ/または選択的に結合し、Aベータ斑染色を示さないことが示される。オリゴマーAベータ種は、ADにおいて毒性のある伝播性の種であると考えられる。さらに、図21に示されるように、シクロ(CGQKLVG)(配列番号3)を用いて生じさせ、オリゴマーに特異的な抗体は、Aベータの凝集およびAベータオリゴマーの伝播を阻害した。さらに、このような抗体は、in vitroでのアッセイにおいて、神経細胞でAベータオリゴマーの毒性を阻害した(図22)。したがって、Aベータオリゴマーの伝播を阻害する方法であって、有効量の本明細書に記載されるAベータオリゴマーに特異的または選択的な抗体を、Aベータを発現する細胞もしくは組織と接触させる、または必要とする対象に投与して、Aベータの凝集および/またはオリゴマーの伝播を阻害することを含む、方法も提供される。実施例10に記載されるように、in vitroでアッセイをモニターすることができる。
【0312】
抗体はまた、ADおよび/またはその他のAベータアミロイド関連疾患の治療に有用であり得る。例えば、レビー小体型認知症のバリアントおよび封入体筋炎(筋肉疾患の1つ)では、ADと類似した斑がみられ、またAベータは脳アミロイド血管症に関与する凝集体をも形成し得る。上記のように、シクロ(CGQKLVG)(配列番号3)に対して生じさせた抗体は、ADの毒素原性のAベータ種であると考えられるオリゴマーAベータと結合し、毒素原性Aベータオリゴマーの形成および伝搬を阻害する。
【0313】
したがって、さらなる態様は、ADおよび/またはその他のAベータアミロイド関連疾患を治療する方法であって、必要とする対象にi)有効量の本明細書に記載される抗体、任意選択で、前記抗体を含むAベータオリゴマー特異的もしくはAベータオリゴマー選択的組成物または医薬組成物を投与すること;あるいは2)必要とする対象にQKLV(配列番号1)もしくは関連エピトープ配列を含む単離環状化合物、免疫原または前記環状化合物を含む医薬組成物を投与することを含む、方法である。
【0314】
一実施形態では、本明細書に記載される抗体を用いて、治療する対象由来の生体試料をAベータの有無またはレベルに関して評価する。一実施形態では、検出可能なAベータレベル(例えば、in vitroで測定される、または撮像により測定されるAベータ抗体複合体)を有する対象を抗体で治療する。
【0315】
抗体および免疫原を例えば、本明細書に記載される医薬組成物に含ませ、例えば小胞に製剤化して送達を改善することができる。
【0316】
シクロCGQKLVG(配列番号3)を標的とする1つまたは複数の抗体および/または関連抗体を組み合わせて投与することができる。さらに、本明細書に開示される抗体をベータセクレターゼ阻害剤またはコリンエステラーゼ阻害剤などの1つまたは複数の他の治療剤とともに投与することができる。
【0317】
一実施形態では、抗体は、任意選択でAベータオリゴマーと特異的または選択的に結合する、立体配座特異的/選択的抗体である。
【0318】
また、ADを標的とする組成物、抗体、単離ペプチド、免疫原および核酸の使用が提供される。
【0319】
本明細書に記載される組成物、化合物、抗体、単離ペプチド、免疫原および核酸、ベクターなどを、例えば、非経口投与、静脈内投与、皮下投与、筋肉内投与、頭蓋内投与、脳室内投与、髄腔内投与、眼窩内、点眼、脊髄内投与、槽内投与、腹腔内投与、鼻腔内投与、エアゾール投与または経口投与により投与することができる。
【0320】
ある特定の実施形態では、医薬組成物を全身投与する。
【0321】
他の実施形態では、医薬組成物を脳またはCNSの他の部分に直接投与する。例えば、このような方法は、埋込み型カテーテルおよびポンプの使用を含み、これらはカテーテルを通して注入部位に所定用量を放出するものである。当業者であればさらに、理解されよう。カテーテルは、それを可視化して脳内の所望の投与部位または注入部位に隣接する位置に配置することが可能な外科技術により埋め込まれ得る。このような技術は、参照により本明細書に組み込まれるElsberryらの米国特許第5,814,014号「Techniques of Treating Neurodegenerative Disorders by Brain Infusion」に記載されている。また、米国特許出願公開第20060129126号(KaplittおよびDuring,「Infusion device and method for infusing material into the brain of a patient」)に記載されているもの方法などの方法が企図される。脳およびCNSの他の部分に薬物を送達する装置が市販されている(例えば、SynchroMed(登録商標)EL Infusion System;Medtronic社、ミネアポリス、ミネソタ州)。
【0322】
別の実施形態では、血液脳関門を通過する受容体介在型輸送が可能になるよう投与する化合物を修飾するなどの方法を用いて、医薬組成物を脳に投与する。
【0323】
他の実施形態では、本明細書に記載される組成物、化合物、抗体、単離ペプチド、免疫原および核酸と、血液脳関門を通過する輸送を促進することが知られている生物学的に活性な分子との共投与が企図される。
【0324】
また、ある特定の実施形態では、本明細書に記載される組成物、化合物、抗体、単離ペプチド、免疫原および核酸を血液脳関門を通過させて投与する方法、例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7012061号「Method for increasing the permeability of the blood brain barrier」に記載されている、血液脳関門の透過性を一時的に増大させることを目的とする方法などが企図される。
【0325】
当業者には、本明細書に記載される組成物、化合物、抗体、単離ペプチド、免疫原および核酸を脳に直接投与する、または血液脳関門を通過させて投与するのに適切な様々な方法が理解され、本明細書に記載される製品を安全に投与するためにこれらの方法を修正することが可能であろう。
【0326】
上の開示は本願を全体的に説明するものである。以下の具体例を参照することにより、さらに十全な理解することができる。これらの例は単に説明を目的として記載されるものであって、本願の範囲を限定することを意図するものではない。状況によって好都合であることが示唆される、または好都合である場合、形態の変更および均等物による置換が企図される。本明細書では特定の用語が使用されているが、このような用語は説明的な意味を意図するものであって、限定を目的とするものではない。
【0327】
以下の非限定的な例は本開示を例示するものである。
【0328】
(実施例)
実施例1
I.Aベータオリゴマー特異的エピトープを予測するためのGoモデルの方法
1つのエピトープ予測モデルは、天然の状態からの部分的なタンパク質のアンフォールディングの自由エネルギー地形に基づくものである。この天然の状態は、実験に由来する線維構造に引き継がれている。タンパク質が、所定の量の一次配列だけ、天然の状態から部分的にアンフォールディングされている場合、エピトープ候補は、不規則に対する最小の自由エネルギーを消費する連続した配列のセグメントである。所定のタンパク質の立体配座の自由エネルギーは、立体配座のエントロピーおよび折りたたまれていない状態を好む極性官能基の溶媒和、ならびに天然の状態をエンタルピー的に安定させる、静電作用およびファンデルワールスのタンパク質内相互作用の損失を含む、いくつかの寄与から生じる。
【0329】
A.部分的アンフォールドタンパク質の地形のGo様モデル
アンフォールディング中に行われる自由エネルギーの変化を考慮する近似モデルは、固定したエネルギーを天然の状態におけるすべての接触に割り当て、ここでの接触は、固定したカットオフ距離rcutoffの中の1対の重(非水素)原子として定義されている。Go様モデルは、以前のタンパク質のフォールディングの試験でうまく行われた。Go様モデルは、天然のタンパク質の相互作用のトポロジーから生じる効果を分離しており、実際にアンフォールディングされている自由エネルギー地形は、単一の天然の状態の構造から容易に計算することができる。
【0330】
あるセグメントをアンフォールディングする総自由エネルギー消費は、アンフォールディングされた領域の立体配座のエントロピーの観点と合わせて、妨害される相互作用の数に依拠している。
【0331】
以下の式では、小文字の変数は原子を表し、大文字の変数は残基を表す。Tは、タンパク質中のすべての残基のセットとし、Uは、タンパク質中のアンフォールディングされている残基のセットとし、Fを、タンパク質中でフォールディングされている残基のサブセットとする(よって(T=U∪F)。本来度合が高いアンフォールディングの機構は、複数の不規則な残基の連続した鎖からなる。ここで単一の連続したアンフォールディングされた鎖の近似値を採用し、この連続した鎖を不規則化するための自由エネルギー消費を計算した。
【0332】
残基Uのセットをアンフォールディングするための総自由エネルギーの変化
【数2】
は、
【数3】
である。
【0333】
アンフォールディングのエンタルピーの関数
【数4】
は、U残基のセットのアンフォールディングにより妨害される相互作用の数により得られる。
【数5】
【0334】
式2では、i,jの合計は、アンフォールディングされた領域中の1つまたは両方の原子のいずれかを有するすべての固有の重原子対に関するものであり、rおよびrは、原子iおよびjの座標である。rcutoff(4.8Åとされる)は、相互作用の距離のカットオフである。
【数6】
は、xが正である場合、
【数7】
、その他の場合は0により定義されているヘヴィサイド関数である。接触あたりのエネルギーは、室温でタンパク質を完全にアンフォールディングする際の、全体の実験的な安定性
【数8】
をまとめるために選択されてもよい。
【数9】
【0335】
結果はこの値に依存するものではなく;単にこの問題の一般的なエネルギー尺度全体を設定している。このモデルでは、この自由エネルギーを、4.6kcal/molに相当する定数とした。この値は、エピトープ予測の方法で不規則であると考えられている同一のタンパク質の異なる領域に関する相対的な自由エネルギーの消費であるため、一番の関心ごとではない。
【0336】
アンフォールディングのエントロピー用語
【数10】
の計算が、以下のBに論述されている。
【0337】
B.エントロピーの計算
アンフォールディングされた状態のタンパク質と接触可能なマイクロ状態の数は、天然の状態で接触可能な数よりもかなり多いため、アンフォールディングに関する立体配座のエントロピーの好都合な増分が存在する。アンフォールディングされた領域の残基Kすべてを合計することによりアンフォールディングセグメントUの総エントロピーが計算される。
【数11】
式中、
【数12】
は、参照文献[3]に列挙されている残基Kの3つの立体配座のエントロピー構成要素であり、
【数13】
は、天然の状態からアンフォールディングされた状態までの主鎖のエントロピーの変化であり、
【数14】
は、タンパク質中に埋もれた側鎖からタンパク質の表面までのエントロピーの変化であり、
【数15】
は、表面から溶液までの側鎖に関して得られたエントロピーである。
【0338】
単一の配列の近似では、部分的にアンフォールディングされた鎖のエンドポイントは、天然の構造ではこれら位置で固定されているため、補正をアンフォールディングされた状態の立体配座のエントロピーに適用する。これは、完全にアンフォールディングされた状態には存在しない、部分的にアンフォールディングされた構造における末端を拘束するために対となっているループエントロピーのペナルティが存在することを意味する。
【数16】
【0339】
ここで、
【数17】
は、確率を計算することにより、理想的なランダムウォークが、ランダムウォークの間にタンパク質に浸透が戻ることなく、Nステップの後に位置Rを中心とした体積ΔTのボックスに戻ることが見いだされる。約n=20の残基より短い長さの鎖では、溶けた鎖の大きさは、タンパク質の直径よりもずっと小さく、タンパク質の立体上の排除された体積が、入り込めない面として良好に処理されている。溶けた鎖の重合状態の数は、タンパク質の表面上の起点から、溶けたポリマーが入り込めない面に接触または当該面を通ることなくタンパク質に再度戻る場所まで移動するランダムウォークの割合により乗算されなければならない。上記の状態の割合は、以下の形態
【数18】
によって書くことができる。式中、Rは、出口と入口の場所の間の末端から末端の距離であり、Nは溶けた領域の残基の数であり、a、I、Vcは、アンフォールディングされたポリペプチドのシミュレーションに適合することにより決定されたパラメータである。パラメータIは、2つのCα原子の間の有効なアーク長であり、Vcは、各残基に関する平均排除体積である。シミュレーションの結果に式6を適合することにより、パラメータの値、a=0.0217、I=4.867、Vc=3.291を得る。エントロピーのペナルティは一般的なものであり、配列とは無関係である。
【0340】
ジスルフィド結合は、アンフォールディングされたセグメントの動きをさらに制限するため、ループエントロピーの観点でさらに考慮することが必要である。存在する場合、ジスルフィドは、ループが通過しなければならない追加的なノードとして処理され、実際には、完全なループを2つの小さなループに分割し、両方に上述の境界条件を課す。
【0341】
C.自由エネルギー地形からのエピトープの予測
タンパク質を部分的にアンフォールディングする自由エネルギー地形を得た後、可変エネルギーの閾値Ethを適用し、閾値より小さな自由エネルギーの消費を伴い、3つ未満のアミノ酸を含むセグメントを、エピトープの候補として予測する。この予測は、閾値Ethの変動に関して安定している。
【0342】
II.Aベータジスルフィド線維構造からのエピトープの予測
2M4Jの天然の構造から、IAに記載されるGo様モデルを使用して、アンフォールディングの自由エネルギー地形を計算した。この結果を図1に示す。エピトープQKLV(配列番号1)は、この解析で候補エピトープとして浮上する。
【0343】
すべてのエピトープに関してcal/molでの自由エネルギーの消費が示されており、ここでの自由エネルギー消費は10kcal/mol未満である。x,y,zの値を提供するボックスで印をつけられたエピトープは、残基ID17で中心にあり(x軸)、長さ4を有し(y軸)、よって、残基15~18またはQKLV(配列番号1)からなる。さらに番号付けされたエピトープで、「中心」は、単純に図面をプロットする目的のため、数字の中心の右に対する残基としての表現により定義されている。
【0344】
図1は、閾値Eth=10kcal/mol未満の自由エネルギー地形の平面図である。ここではx軸はセグメントの中心であり、y軸はセグメントの長さであり、色の濃さは、対応するセグメントが溶けるために必要とされる自由エネルギーを表す。図1から、10kcal/molのエネルギー尺度で、残基15~18または配列QKLV(配列番号1)からなるエピトープは、構造PDB 2M4Jの鎖A、B、およびCにおいて予測されるエピトープとして浮上する。
【0345】
この線維モデルは鎖「A」~「I」を含む。たとえば、決定された線維の構造は、9個の鎖の反復単位からなり、これは鎖A~Iと同定されている。同定されたエピトープは、鎖A、B、およびCに存在する。
【0346】
Aベータの線維の構造2MXUと同様に、配列14~18のエピトープは鎖A(配列HQKLV;図2)で現れる。HQKLV(配列番号2)は、モノマーまたは線維のAベータと比較して別の立体配座のQおよび/またはQKの溶媒への露出の増大と一致する。
【0347】
実施例2
集団座標予測
ミスフォールドされたエピトープを予測する第2の方法は、2015年11月9日に出願され参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願第62/253044号、「Systems and methods for predicting misfolded protein epitopes by collective coordinate biasing」に記載されている「集団座標バイアス」によって得られる。そこに記載されているように、この方法は、あるタンパク質(またはペプチド凝集体)にグローバル座標のバイアスをかけて、そのタンパク質(またはペプチド凝集体)をミスフォールドさせた後、部分的に構造化されていないタンパク質(またはペプチド凝集体)のフォールドされない可能性が最も高いアンフォールド領域を予測する、分子動力学に基づくシミュレーションを用いるものである。バイアスシミュレーションを実施し、各残基インデックスに対応する(検討するタンパク質の初期構造のものと比較した)溶媒接触表面積(SASA)。SASAはHOが接触可能な表面積を表す。SASAの(検討するタンパク質の初期構造のものと比較した)正の変化は、関連する残基インデックスの領域における案フォールドを示すと考え得る。この方法をそれぞれが独自の形態を有する3種類のAベータ株、すなわち、3回対称性構造(またはモノマー)(PDBエントリー2M4J)のAβ-40ペプチド、2回対称性構造(PDBエントリー2LMN)のAβ-40モノマーおよび一本鎖平行in-register(例えば、一本の鎖の残基が近接する鎖の同じ残基と相互作用するベータシートが反復したもの)構造(PDBエントリー2MXU)のAβ-42モノマーに適用した。
【0348】
米国特許出願第62/253044号「SYSTEMS AND METHODS FOR PREDICTING MISFOLDED PROTEIN EPITOPES BY COLLECTIVE COORDINATE BIASING」に記載されている集団座標法ならびにK.Vanommeslaeghe,E.Hatcher,C.Acharya,S.Kundu,S.Zhong,J.Shim,E.Darian,O.Guvench,P.Lopes,I.VorobyovおよびA.D.Mackerell.Charmm general force field:A force field for drug-like molecules compatible with the charmm all-atom additive biological force fields.Journal of Computational Chemistry,31(4):671-690,2010;ならびにP.Bjelkmar,P.Larsson,M.A.Cuendet,B.HessおよびE.Lindahl.Implementation of the CHARMM force field in GROMACS:analysis of protein stability efects from correlation maps,virtual interaction sites,and water models.J.Chem.Theo.Comp.,6:459-466,2010に記載されているCHARMM力場パラメータ(ともに参照により本明細書に組み込まれる)をTIP3P水とともに用いて、各初期構造に対するシミュレーションを実施した。
【0349】
最初の構造の80%までバイアスをかけた後の、3回対称性のAベータの抗体2M4Jの1つのモノマーに関する、残基インデックスの関数としてのアミノ酸側鎖のSASAを解析した。確実に増加したSASAを伴う1つの領域は残基14~17であり、残基HQKLに対応し、図8に示されている。HQKLは、モノマーAベータまたは線維Aベータと比較して別の立体配座のQおよび/またはQKの溶媒への露出の増大と一致している。
【0350】
残基14~17からなるエピトープは、3倍のAベータ40(2M4J)および2倍のAベータ(2LMN)構造で予測された。
【0351】
残基15~19からなるエピトープは、Aベータ40(2MXU)から予測され、残基15~20からなるエピトープは、Aベータ42の拘束された末端に対して予測された。
【0352】
異なるバイアスは、予測したエピトープの一般的な構造が、バイアスの度合いに有意に依存することを示す。
【0353】
図13は、直鎖状ペプチド(CGQKLVG)(配列番号3)および環状ペプチドシクロ(CGQKLVG)(配列番号3)の両方の、線維に関するエントロピーのプロットである。その中に示されるように、環状化合物に関して、側鎖のエントロピーは、直鎖状ペプチドと比較して減少しており、側鎖が直鎖状ペプチドにある場合、すなわち遊離したAベータモノマーにある場合よりもより立体配座的に拘束されていることを示す。
【0354】
実施例3
QKLV(配列番号1)を含む拘束されたペプチド構造は、記載されている予測プログラムを使用して、同定された立体配座エピトープを模倣し得る。図12に示される環状構造を含む環状構造を設計し、評価した。図12に示される環状構造を、実施例4に記載されるように評価した。
【0355】
実施例4
Aベータオリゴマーにおける予測された配向を近似する立体配座エピトープQKLV(配列番号1)を含む構造の決定
QKLV(配列番号1)エピトープを含む環状構造(図5Aに示される)を、Aベータの線維およびモノマーにおけるエピトープの配向に対する立体配座の関連性または相違点をエピトープに提供するため、評価した。
【0356】
I.環状ペプチドの曲率
図12(a)に示される環状化合物の主鎖の曲率は、線維またはモノマーの曲率と異なる大きなプロファイルを有し、環状ペプチドに対する抗体は、モノマーまたは線維のものと異なる立体配座のアンサンブルを提示する種に選択性を示し得ることが示唆される。曲率のプロファイルは図3に示されている。
【0357】
図3は、残基インデックスの関数としての曲率を示すプロットである。直鎖状ペプチド(短い矢印)に関する曲率、および線維における様々なモノマーの曲率(薄いペプチドの曲線長)、および線維に関する平均曲率(濃いペプチドの曲線長)と共に、環状ペプチド(CGQKLVG)(配列番号3)の平衡アンサンブルにおける平均曲率が示されている(長い矢印)。
【0358】
本明細書中使用される曲率は、主鎖の曲率を指し、主鎖に沿って動く際の接ベクトルの変化の比率として定義されている。これは、連続したC_アルファ原子間の単位接ベクトルを利用し、次いで1つの接線から次の接線まででどの程度変化するかに言及することにより、定量化することができる。本明細書中使用される精確な数学上の定義は、異なる微分幾何学における空間曲線の曲率の従来の定義の離散型である。
【数19】
(式中、tは、C_アルファ(i)からC_アルファ(i+1)までの単位接ベクトルである)
この曲率は、主鎖の構成に応じて、0(平行)からπ(逆平行)までの原則で変動し得る、単純なラジアン単位の角度である。
【0359】
シクロ(CGQKLVG)(配列番号3)、直鎖状(CGQKLVG)(配列番号3)、および線維におけるQKLV(配列番号1)のQ、K、L、Vに関する曲率の値は、それぞれ
環状ペプチド:1.248 1.566 1.422 1.46
直鎖状ペプチド:0.870 1.355 0.931 1.303
線維:0.740 1.159 0.796 1.188
と、決定された。
【0360】
これらの平均値は、
環状ペプチド:1.42
直鎖状ペプチド:1.11
線維:0.97
である。
【0361】
以下の曲率のプロットおよび二面角分布に関しては、Charmm27を用いる陽溶媒(SPC)での平衡シミュレーションからデータを得る。環状ペプチドアンサンブル:シミュレーション時間1ナノ秒、500のフレームを含む;直鎖状ペプチドアンサンブル:シミュレーション時間10ナノ秒、1000のフレームを含む;2m4jアンサンブル:680ピコ秒、68のフレームを含む。
【0362】
環状エピトープの曲率は大きくなるため、これらの残基を含むオリゴマーに関する仮説上の回転(hypothetical turn)は、線維またはモノマーのものとは異なる主鎖配向を有したであろう。しかし、曲率の大きさは非物理学的なものであると思われ、環状ペプチドを特徴付ける曲率の数値は線維のいくつかの位置で得られる。
【0363】
II.二面角分布
さらなるコンピュータ支援が、同定したエピトープが、Aベータにおけるオリゴマー特異的エピトープを定義することができ、オリゴマーで露出したエピトープの代理であり得る図12a)の環状ペプチドにおける二面角分布が、線維またはモノマーにおける対応する分布と実質的に異なることを、裏付けている。
【0364】
Q15の二面角の分布は、環状ペプチドにおいて、多くの側鎖の二面角に関してモノマーまたは線維の分布と実質的に異なっている(図4A)。
【0365】
図4Bは、環状ペプチド(CGQKLVG)(配列番号3)の画像;平衡分子動的シュミレーションから得られた画像を示す。この画像では、グルタミン(Q)残基は、黒いビーズで示されているCα、Cβ、Gχ、およびCδ原子と作用する側鎖を有する。対応する二面角結合(dihedral bond)は黒色で示されている。この二面角は、環状ペプチドにおいて、直鎖状ペプチド、または線維に関する残基により探索された対応する二面角分布と有意に異なる二面角分布を有する(図4参照、パネルRes-Q:CA-CB-CG-CD)。
【0366】
同様に、二面角分布は、K、L、Vで試験することができる。K16に関する二面角分布は、図5に示されている。Kの差異は、Qの差異よりも明確ではない。
【0367】
L17に関する二面角分布は図6に示されている。
【0368】
V18に関する二面角分布は図7に示されている。
【0369】
L17は、直鎖状ペプチドの分布、特に、環状の立体配座と直鎖状を区別する主鎖の原子を含む二面角に関した直鎖状ペプチドの分布とのいくつかの相違を示すにもかかわらず、直鎖状または線維の分布と最も有意差を示す残基はQ15である。
【0370】
たとえばQKLまたはQKLVにおけるQ15-K16は、エピトープにおいて鍵となる残基であり得る。これら残基の重要性に関するさらなる裏付けが、本明細書中に記載される表面積および溶解度の解析により提供されている。
【0371】
III.エピトープの溶解度および抗原性
CamSol prediction scheme[4]によるAベータ42の残基の溶解度が、図9に示されている。図9の残基QKLV(配列番号1)は、それぞれ-0.899、-0.936、-1.46、および-1.51の値を有する。溶解度は、C末端に向かい連続している場合減少する。
【0372】
残基がより可溶であると、Aベータのいずれかの種の表面でより遭遇しやすくなり、特にオリゴマーの表面または表面近くでより遭遇しやすくなる。残基は、不定形のモノマーの表面で溶媒和されており、線維の表面では溶媒和されていなくてもよい(器質性構造のため)。オリゴマーは、任意に1つまたは複数の立体配座の特徴と組み合わせて、線維において溶媒に接触できない特定の残基の露出が線維とオリゴマーを区別し得るように、部分的かつ動的に構造化されている。
【0373】
残基iに関する相対的な溶解度の係数δiは、
【数20】
(式中、Siは残基iの溶解度であり、SmaxおよびSminは、所定の範囲の残基の溶解度の最大値および最大値である)
として定義することができる。ここでは、単純にプロットする値の尺度を設定するために、残基の範囲は、smax=0.0302およびsmin=-1.51となるように、HQKLVF(配列番号9)と任意に選択されている。
【0374】
SASAが残基の溶解度により重み付けされる場合、グループQKLV(配列番号1)のN末端残基がより強調される。図10は、溶媒接触表面積(SASA)、各残基の溶解度係数δiにより重み付けしたSASA、σ・SASAおよびσ・SASAから線維での値を減じたもの、すなわち、モノマーペプチドおよび環状ペプチドでのこの量の線維に対する増分、σΔSASAをプロットする。
【0375】
溶解度による重み付けは、オリゴマーの表面での差次的な露出および抗原性の可能性が最も高いQおよびKの残基をもたらす。
【0376】
残りの側鎖部分の基づく溶媒接触表面積の検出
図11に示されている様々な残基の側鎖の原子基への分離は、側鎖の末端に達すると、より大きな溶媒への露出に向かう一般的な傾向が存在することを示す。たとえばQ15は、
【化4】
に細分され、ここでNε-Hは、線維またはモノマーと比較して、環状ペプチドにおいて最も大きなSASAを有する。線維に関連する溶媒の露出における偏差はまた、側鎖の末端近くの分子で増加する傾向を有する。
【0377】
実施例5
立体配座拘束エピトープを含む環状化合物構築
シクロ(CGQKLVG)(配列番号3)などのQKLV(配列番号1)を含むペプチドは頭-尾環化することができる。
【0378】
Fmocベースの固相ペプチド合成などの既知の方法を単独で、または他の方法と組み合わせて用い、QKLV(配列番号1)と、好ましくは2個、3個もしくは4個のアミノ酸および/またはPEG単位を含むリンカーとを含む、直鎖状ペプチドを合成することができる。例えばHamley(2014)[6]およびRobertsら(2012)[7](それぞれ参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているカップリング化学を用いて、PEG分子をN末端のアミン基に結合させることができる。直鎖状ペプチド化合物は、1)ペプチド+リンカーのアミノ末端とカルボキシ末端を共有結合させてペプチド結合を形成させること(例えば、主鎖の環化)、2)ペプチド+リンカー内のアミノ末端もしくはカルボキシ末端と側鎖を共有結合させること、または3)ペプチド+リンカー内の2つの側鎖を共有結合させることにより環化され得る。
【0379】
環状化合物内の結合は、すべて通常のペプチド結合であっても(ホモデティック環状ペプチド)、あるいはエステル結合、エーテル結合、アミド結合もしくはジスルフィド結合などの他のタイプの結合を含んでも(ヘテロデティック環状ペプチド)よい。
【0380】
ペプチドをN末端もしくはC末端またはペプチドの内側にある、例えばシステインおよびホモシステインを含めたチオール含有残基またはメルカプタン含有残基の酸化により環化させ得る。例えば、ペプチドに隣接する2つのシステイン残基を酸化させてジスルフィド結合を形成させ得る。用い得る酸化試薬としては、例えば、酸素(空気)、ジメチルスルホキシド、酸化グルタチオン、シスチン、塩化銅(II)、フェリシアン化カリウム、トリフルオロ酢酸タリウム(III)またはその他の酸化試薬、例えば当業者に公知であり当業者に公知の方法とともに使用し得る酸化試薬などが挙げられる。
【0381】
米国特許出願公開第2009/0215172号、米国特許出願公開第2010/0240865号、米国特許出願公開第2010/0137559号には環状ペプチド合成に関連する方法および組成物が記載されており、米国特許第7,569,541には環化の様々な方法が記載されている。国際公開第01/92466号およびAndreuら,1994.Methods in Molecular Biology 35:91-169にはその他の例が記載されている。
【0382】
より具体的には、システイン残基が隣接し、かつ/または挿入されているスペーサーを含むリンカーを付加することにより、QKLV(配列番号1)エピトープを含む環状ペプチドを構築することができる。ペプチドのN末端およびC末端に付加した非天然システイン残基の間でジスルフィド結合を形成させることにより、ペプチドを環状立体配座に構築することができる。また、N末端とC末端のアミノ酸の間でペプチド結合を形成させること(例えば、頭-尾環化)により、それを環状化合物に合成することができる。
【0383】
ペプチド合成を標準的な製造方法に従いCPC Scientific社(サニーベール、カリフォルニア州、米国)で実施する。
【0384】
例えば、QKLV(配列番号1)を含むペプチドのN末端およびC末端に付加したシステイン残基間のジスルフィド結合を用いて、拘束された環状立体配座の立体配座エピトープQKLV(配列番号1)を含むシクロ(CGQKLVC)環状ペプチドを構築することができる。2つの非天然システイン残基にうち1つをQKLV(配列番号4)のC末端に、1つをN末端に付加した。この2つのシステインを制御された条件下で酸化してジスルフィド架橋を形成させる、または頭部と尾部を反応させてペプチド結合を生じさせる。
【0385】
上記の通り、AベータオリゴマーのQKLV(配列番号1)のアミノ酸側変化の立体配座および配向を模倣するように環状ペプチドの構造を設計した。
【0386】
シクロ(CGQKLVG)
スペーサーGCGおよびエピトープペプチドQKLV(配列番号1)を含む直鎖状ペプチドを、たとえばFmocベースの固相ペプチド合成を使用して合成する。この固相は、リンクアミド樹脂上または2-クロロトリチルクロリド樹脂上とすることができる。
【0387】
直鎖状ペプチドCGQKLVG(配列番号3)のアミド縮合によりシクロ(CGQKLVG)(配列番号3)を調製することができる。
【0388】
直鎖状化合物C-PEG2-QKLVGのアミド縮合によりシクロ(C-PEG2-QKLVG)を調製することができる。
【0389】
免疫原構築
拘束したエピトープペプチドを含む環状化合物を、任意に、たとえば本明細書中参照として援用されているLateef et al 2007に記載される方法を使用して、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)などの免疫原性増強物質またはウシ血清アルブミン(BSA)などの担体とコンジュゲートさせる。
【0390】
実施例6
抗体の作製および選択
立体配座拘束化合物、任意選択で環状化合物、例えばシクロ(CGQKLVG)(配列番号3)ペプチドなどのQKLV(配列番号1)を含む環状ペプチドなどとキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)とを結合させる。カナダ動物管理協会により承認されたプロトコルに従ったマウスモノクローナル抗体作製(ImmunoPrecise Antibodies社(ビクトリア、ブリティッシュコロンビア州、カナダ))のためにシクロペプチドを送る。BSAと結合した、抗体の作製に使用する立体配座ペプチドまたは関連ペプチド、例えばシクロ(CGQKLV-ペプチド)(配列番号3)を用いて、マウス血清をスクリーニングする。陽性のIgG分泌クローンで、大きな尺度の産生を行わせる。
【0391】
実施例8にさらに記載するように、シクロ(CGQKLVG)(配列番号3)を含む免疫原を用いてハイブリドーマを作製した。ELISAおよびSPRにより、本明細書に記載される直鎖状(未構造化)ペプチドよりもシクロ(CGQKLVG)(配列番号3)ペプチドと優先的に結合するハイブリドーマ上清をスクリーニングした。陽性IgG分泌クローンを大規模生産およびプロテインGを用いるさらなる精製に供する。
【0392】
実施例7
斑/線維との結合の有無の評価
【0393】
免疫染色には、本明細書に記載される抗体、陽性対照の6E10(1μg/ml)およびアイソタイプ対照のIgG1、IgG2aIgG2b、またはIgG3(1μg/ml、Abcam社)を一次抗体として用いる。切片を4℃で一晩インキュベートし、TBS-Tで3×5分間洗浄する。西洋ワサビペルオキシダーゼとコンジュゲートした抗マウスIgG(1:1000、ECL社)を切片に添加し、45分間インキュベートし、次いでTBS-Tで3×5分間洗浄する。DAB発色試薬(Vector Laboratories社、バーリントン、オンタリオ州、カナダ)を加え、バックグランド染色に対して所望の標的レベルに達したとき、切片を蒸留水でリンスする。切片をマイヤーのヘマトキシリンで対比染色し、脱水し、カバーガラスをかけた。スライドを光学顕微鏡(Zeiss Axiovert 200M、Carl Zeiss Canada社、トロント、オンタリオ州、カナダ)下で検査し、Leica社のDC300デジタルカメラおよびソフトウェア(Leica Microsystems Canada社、リッチモンドヒル、オンタリオ州)を用いて代表的な画像を50倍、200倍および400倍の倍率で記録する。
【0394】
実施例8
方法および材料
免疫原
米国カリフォルニア州サニーベールのCPC Scientific社で環状ペプチドおよび直鎖状ペプチドを作製した。トリフルオロ酢酸対イオンプロトコルを用いてペプチドをKLH(免疫感作用)およびBSA(スクリーニング用)とコンジュゲートした。ペプチドを脱塩し、MSおよびHPLCにより確認し、純度95%であると判断された。ペプチドをIPA社に発送し、マウスを用いたモノクローナル抗体の作製に使用した。
【0395】
抗体
キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)と結合したシクロ(CGQKLVG)(配列番号3)に対するハイブリドーマおよびモノクローナル抗体をいくつか作製した。
【0396】
50日齢の雌BALB/cマウス(Charles River Laboratories社、ケベック州)を免疫感作した。抗原を含有するがアジュバントは含有しない一連の皮下水性注射剤を19日間にわたって投与した。環状ペプチド-KLHの0.5mg/mL無菌生理食塩水溶液の注射によりマウスを1匹当たり100μgのペプチドで免疫感作した。マウスをLab Products社の換気ラックシステムで飼育した。第19日、マウス全4匹を安楽死させ、ハイブリドーマ細胞系の作製用にリンパ球を回収した。
【0397】
融合/ハイブリドーマの発育
リンパ球を単離し、ポリエチレングリコール(PEG1500)の存在下でマウスSP2/0ミエローマ細胞と融合させた。融合した細胞をHAT選択を用いて培養した。この方法では、半固形メチルセルロース系HAT選択培地を用いてハイブリドーマ選択とクローン化とを1つの段階に組み合わせる。半固形培地上で単一細胞由来のハイブリドーマが増殖してモノクローナルコロニーを形成した。融合事象から10日後、得られたハイブリドーマクローンを96ウェル組織培養プレートに移し、中期対数増殖期に達するまで(5日)HT含有培地で増殖させた。
【0398】
ハイブリドーマの解析(スクリーニング)
ハイブリドーマの組織培養上清を間接ELISAによりスクリーニング抗原(環状ペプチド-BSA)(一次スクリーニング)で試験し、ヤギ抗IgG/IgM(H&L)-HRP二次抗体を用いてIgG抗体およびIgM抗体の両方について探索し、TMB基質で発色させた。このアッセイで0.2OD超であったクローンを次の試験ラウンドに進めた。陽性培養物をスクリーニング抗原で再試験して分泌を確認し、無関係の抗原(ヒトトランスフェリン)で再試験して非特異的mAbを除去し、偽陽性を除外した。抗体捕捉ELISAにより目的とする全クローンにアイソタイピングを実施して、それらがIgGアイソタイプであるのか、またはIgMアイソタイプであるのかを判定した。また、目的とする全クローンを間接ELISAにより他の環状ペプチド-BSAコンジュゲートおよび直鎖状ペプチド-BSAコンジュゲートで試験して、交差反応性を評価した。
【0399】
BSAとコンジュゲートしたシクロ(CGQKLVG)(配列番号3)を用いた間接ELISAにより、マウスハイブリドーマ抗体をスクリーニングした。
【0400】
ELISA抗体スクリーニング
簡潔に述べれば、ELISAプレートを4℃の炭酸塩コーティング緩衝液(pH9.6)O/N中0.1ug/ウェルのシクロ(CGQKLVG)(配列番号3)コンジュゲートBSA 100uL/ウェルでコートし、脱脂粉乳の3%PBS溶液を用いて室温で1時間ブロックした。一次抗体:37℃で振盪しながら1時間インキュベートした100uL/ウェルのハイブリドーマ上清。二次抗体:37℃で1時間振盪したPBS-Tween中1:10,000の100uL/ウェルのヤギ抗マウスIgG/IgM(H+L)-HRP。全洗浄段階をPBS-Tweenで30分間実施した。基質3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン(TMB)を50uL/ウェルで加え、暗所で発色させ、等体積の1M HClで停止させた。
【0401】
さらなる試験のため陽性クローンを選択した。マウスハイブリドーマの陽性クローンを間接ELISAにより、シクロ(CGQKLVG)(配列番号3)コンジュゲートBSAおよびヒトトランスフェリン(HT)に対する反応性について試験した。プレートを1)4℃の炭酸塩コーティング緩衝液(pH9.6)O/N中0.1ug/ウェルのシクロ(CGQKLVG)コンジュゲートBSA(配列番号3)100uL/ウェル;または2)37℃のdH2O O/N中0.25ug/ウェルのHT抗原50uL/ウェルでコートした。一次抗体:37℃で振盪しながら1時間インキュベートした100uL/ウェルのハイブリドーマ上清。二次抗体:37℃で1時間振盪したPBS-Tween中100uL/ウェルの1:10,000ヤギ抗マウスIgG/IgM(H+L)-HRP。全洗浄段階をPBS-Tweenで30分間実施した。基質3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン(TMB)を50uL/ウェルで加え、暗所で発色させ、等体積の1M HClで停止させた。
【0402】
ELISAによるシクロと直鎖状CGQKLVG(配列番号3)化合物の選択性
ELISAプレートを1)4℃の炭酸塩コーティング緩衝液(pH9.6)O/N中0.1ug/ウェルのシクロ(CGQKLVG)コンジュゲートBSA(配列番号3)100uL/ウェル;2))4℃の炭酸塩コーティング緩衝液(pH9.6)O/N中0.1ug/ウェルの直鎖状CGQKLVGGコンジュゲートBSA(配列番号3)100uL/ウェル;または3)4℃の炭酸塩コーティング緩衝液(pH9.6)O/N中0.1ug/ウェルの陰性ペプチド100uL/ウェルでコートした。一次抗体:37℃で振盪しながら1時間インキュベートした100uL/ウェルのハイブリドーマ上清。二次抗体:37℃で1時間振盪したPBS-Tween中100uL/ウェルの1:10,000ヤギ抗マウスIgG/IgM(H+L)-HRP。全洗浄段階をPBS-Tweenで30分間実施した。基質TMBを50uL/ウェルで加え、暗所で発色させ、等体積の1M HClで停止させた。
【0403】
アイソタイピング
抗体捕捉実験を用いてハイブリドーマ抗体にアイソタイピングを実施した。捕捉プレートをpH9.6の炭酸塩コーティング緩衝液中、4℃で一晩、100uL/ウェルの1:10,000ヤギ抗マウスIgG/IgM(H&L)抗体でコートした。ブロッキング段階は用いなかった。一次抗体(ハイブリドーマ上清)を加えた(100ug/mL)。二次抗体:37℃で1時間振盪したPBS-Tween中100uL/ウェルの1:5,000ヤギ抗マウスIgGγ-HRPまたは1:10,000ヤギ抗マウスIgMμ-HRP。全洗浄段階をPBS-Tweenで30分間実施した。基質TMBを50uL/ウェルで加え、暗所で発色させ、等体積の1M HClで停止させた。
【0404】
SPR結合アッセイ-一次および二次スクリーニング
抗体とAベータモノマーおよびAベータオリゴマーとの結合に関するSPR解析
氷冷ヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)にAベータモノマーおよびAベータオリゴマーの調製組換えAベータ40およびAベータ42ペプチド(California Peptide社、ソルトレイクシティ、ユタ州、米国)を溶かした。一晩蒸発させることによりHFIPを除去し、SpeedVac遠心機で乾燥させた。モノマーの調製には、ペプチド薄膜をDMSOで戻して5mMとし、dH2Oでさらに100μMに希釈し、直ちに使用した。5mMのDMSOペプチド溶液を無フェノールレッドF12培地(Life Technologies社、バーリントン、オンタリオ州、カナダ)で希釈して最終濃度100μMとすることによりオリゴマーを調製し、4℃で24時間~7日間インキュベートした。
【0405】
SPR解析高強度レーザー光および高速光学式走査を用いて結合相互作用をリアルタイムでモニターする分析用バイオセンサーであるMolecular Affinity Screening System(MASS-1)(Sierra Sensors社、ハンブルク、ドイツ)を用いて、全SPR測定を実施した。SPR直接結合アッセイを用いて組織培養上清の一次スクリーニングを実施し、このアッセイでは、High Amine Capacity(HAC)センサーチップ(Sierra Sensors社、ハンブルク、ドイツ)の個々のフローセル上にBSAコンジュゲートペプチド、Aベータ42モノマーおよびAベータ42オリゴマーを共有結合で固定化し、表面に抗体を流した。二次スクリーニングでは、プロテインGで精製したmAbをSPR間接(捕捉)結合アッセイを用いて解析し、このアッセイでは、プロテインA誘導体化センサーチップ(XanTec Bioanalytics社、デュッセルドルフ、ドイツデュッセルドルフ、ドイツ)上に抗体を捕捉し、表面にAベータ40モノマー、Aベータ42オリゴマー、可溶性脳抽出物および脳脊髄液を流した。SPR直接結合アッセイで、HACセンサーチップの個々のフローセル上にAベータ42モノマーおよびAベータ42オリゴマーを共有結合で固定化し、精製mAbを流すことにより抗体の特異性を検証した。
【0406】
可溶性脳抽出物およびCSF試料のSPR解析
可溶性脳抽出物およびCSFの調製UBC Alzheimer’s and Related Disorders Clinicで評価した患者からヒトの脳組織およびCSFを採取した。推定ADの臨床診断はNINCDS-ADRDA基準[5]に基づくものである。腰椎穿刺後1時間以内にCSFをポリプロピレンチューブに収集し、処理し、100μLポリプロピレンバイアルに等分し、-80℃で保管する。
【0407】
ホモジナイゼーション:ヒト脳組織試料の重量を測定し、次いで、脳組織の最終濃度が20%(w/v)になるよう一定量の新鮮な氷冷TBS(カナダケベック州ラヴァルのRoche Diagnostics社の無EDTAプロテアーゼインヒビターカクテルを添加したもの)に浸漬した。この緩衝液中で機械的プローブホモジナイザーを用いて組織をホノジナイズ(間に30秒の停止を挟んで3×30秒のパルス、いずれも氷上で実施)する。次いで、TBS中でホモジナイズした試料を超遠心分離にかける(70,000×gで90分)。上清を収集し、等分し、-80℃で保管する。BCAタンパク質アッセイ(Pierce Biotechnology社、ロックフォード、イリノイ州、米国)を用いてTBSホモジネートのタンパク質濃度を求める。
【0408】
SPR解析AD患者4例および同年齢の対照4例の脳抽出物ならびにAD患者9例および同年齢の対照9例のCSF試料をプールし解析した。プロテインA誘導体化センサーチップの別個のフローセル上に精製mAbを捕捉し、表面に希釈試料を180秒間注入し、次いで、緩衝液で120秒間解離を実施し、表面を再生した。マウス対照IgGモノクローナル抗体参照の表面結合およびアッセイ緩衝液の減算により結合応答を二重参照し、異なる試料のグループを比較した。
【0409】
Aベータモノマーとの結合の有無の評価
組織培養上清の一次スクリーニングでは、Aベータ42モノマーおよびAベータ42オリゴマーを直接結合アッセイに用いた。二次スクリーニングでは、Aベータ40モノマーおよびAベータ42オリゴマー、可溶性脳抽出物およびCSF試料を間接(捕捉)結合アッセイに用いた。
【0410】
一次スクリーニング
コグネイト環状ペプチドに対する抗体の結合の有無について組織培養上清をスクリーニングした。各試料を希釈し、固定化したペプチドおよびBSA参照の表面に120秒間、二重反復で注入し、次いで、300秒間の解離相にのみランニング緩衝液を注入した。解析サイクル毎に、センサーチップ表面を再生した。BSA参照表面およびブランクランニング緩衝液注入から結合を減算することによりセンサグラムを二重参照し、解離相の結合応答報告点を収集した。
【0411】
オリゴマー結合アッセイ
次の合成Aベータ42オリゴマーを上記の通りに作製および固定化し、抗体結合応答を解析した。Aベータ42オリゴマーに対する抗体結合応答を環状に対する結合応答と比較した。
【0412】
Aベータオリゴマーとの結合の検証。
Aベータ42オリゴマー結合をさらに検証および確認するため、抗体を共有結合で固定化し、次いで、市販の調製済みの安定なAベータ42オリゴマー(SynAging社、ヴァンドゥーヴル=レ=ナンシー、フランス)を表面に注入した。
【0413】
結果
ELISA試験では、ハイブリドーマクローンの大部分がシクロペプチドと結合することがわかった。
【0414】
次のクローンをシクロおよび直鎖状CGQKLVG(配列番号3)化合物に対する選択性についてELISAにより試験した。複数のクローンが、直鎖状CGQKLVGコンジュゲートBSA(配列番号3)よりも優先的にシクロ(CGQKLVG)コンジュゲートBSA(配列番号3)と結合した。
【0415】
アイソタイピングでは、クローンの大部分がIgG1クローン、IgG2aクローンおよびIgG3クローンを含めたIgGであることがわかった。IgMクローンおよびIgAクローンも複数同定されたが、それ以上追究しなかった。
【0416】
表面プラズモン共鳴を用いた直接結合解析を実施して、配列番号3の環状ペプチドと結合する組織培養上清中の抗体についてスクリーニングした。
【0417】
図16は、SPR直接結合アッセイのデータ対ELISAの結合性のデータをプロットしており、SPR直接結合アッセイの結果とELISAの結果との間に相関があることを示している。SPRでの強い結合は、ELSAで強い結合がある場合にのみ起こる。
【0418】
上記の通りに調製した環状ペプチド、直鎖状ペプチド、Aベータ1~42モノマーおよびAベータ1~42オリゴマーとの結合能についてクローンを試験した。上記のMASS-1を用いて結合アッセイを実施した(直接結合アッセイ)。表1に示すように、実施した結合アッセイに基づきクローンをいくつか選択した。
【0419】
選択したクローンはIgG mAbであった。一次スクリーニングの負の数は結合がみられなかった(例えば、アイソタイプ対照未満であった)ことを示している。
【0420】
【表3】
【0421】
ELISAプレスクリーニング
ハイブリドーマ上清のELISAプレスクリーニングにより、直鎖状ペプチドと比較して環状ペプチドとの結合の増大を示すクローンを特定した。そのクローンの一部はKLH-エピトープリンカーペプチドに対して反応性であった。これらはさらなる検討から除外した。本明細書に記載されるアイソタイピング法を用いて、クローンの大部分がIgGアイソタイプであることが明らかになった。
【0422】
表面プラズモン共鳴により測定する直接結合-一次スクリーニング
表面プラズモン共鳴を用いて組織培養上清を含む抗体のクローンを環状ペプチド、直鎖状ペプチド、AベータオリゴマーおよびAベータモノマーとの直接結合について試験した。
【0423】
この結果を図15に示す。パネルAは、リンカー領域に反応性ではないIgGクローンに関して、環状ペプチドおよび直鎖状ペプチド(不定形)との抗体の結合を示している。パネルBはAベータオリゴマーおよびAベータモノマーとの抗体の結合を示している。環状ペプチドに対しては、いくつかのクローンが反応性の増大を示し、直鎖状ペプチドに対しては、1つを除きいずれのクローンも反応性が最小限であるか、または反応性を全く示さない。全体的にAベータオリゴマー結合に対する選択性がみられる。
【0424】
図17に、選択したクローンの結合プロファイルを比較して示す。表面プラズモン共鳴を用いて、環状ペプチド(丸)、直鎖状ペプチド(四角)、Aベータ(Aβ)モノマー(直立三角形)およびAベータオリゴマー(逆三角形)における特定のエピトープに対する直接結合について各クローンを評価する。
【0425】
実施例9
二次スクリーニング
免疫組織化学
固定も抗原回復も実施していない凍結ヒト脳切片に免疫組織化学を実施した。加湿チャンバ内で無血清タンパク質ブロッキング試薬(Dako Canada社、ミシサガ、オンタリオ州、カナダ)と1時間インキュベートすることにより非特異的結合をブロックした。免疫染色には以下の一次抗体を使用した:マウスモノクローナルアイソタイプ対照IgG1、IgG2aおよびIgG2bならびに抗アミロイドβ6E10(以上、Biolegend社から購入)ならびにシクロペプチドに対して反応性を示す選択した精製クローン。いずれの抗体も1μg/mLで使用した。切片を室温で1時間インキュベートし、TBS-Tで3×5分間洗浄した。西洋ワサビペルオキシダーゼとコンジュゲートした抗マウスIgG(1:1000、ECL社)を切片に添加し、45分間インキュベートし、次いでTBS-Tで3×5分間洗浄した。DAB発色試薬(Vector Laboratories社、バーリントン、オンタリオ州、カナダ)を加え、バックグランド染色に対して所望の標的レベルに達したとき、切片を蒸留水でリンスした。切片をマイヤーのヘマトキシリンで対比染色し、脱水し、カバーガラスをかけた。スライドを光学顕微鏡(Zeiss Axiovert 200M、Carl Zeiss Canada社、トロント、オンタリオ州、カナダ)下で検査し、Leica社のDC300デジタルカメラおよびソフトウェア(Leica Microsystems Canada社、リッチモンドヒル、オンタリオ州)を用いて代表的な画像を20倍および40倍の倍率で記録した。Adobe PhotoshopでLevels Auto Correctionを用いて画像を最適化した。
【0426】
CSFおよび脳抽出物
UBCのClinical Research Ethics Board(C04-0595)から承認を受け、メリーランド大学のBrain and Tissue Bankからヒト脳組織を入手した。UBC Hospital Clinic for Alzheimer’s and Related Disordersで評価した患者からCSFを採取した。この試験はUBCのClinical Research Ethics Boardにより承認を受けたものであり、CSF試料を収集する前に参加者または法律上の近親者から書面による同意を得た。推定ADの臨床診断はNINCDS-ADRDA基準に基づくものとした。腰椎穿刺後1時間以内にCSFをポリプロピレンチューブに収集し、処理し、100μLポリプロピレンバイアルに等分し、-80で保管した。
【0427】
ホモジナイゼーション:ヒト脳組織試料の重量を測定し、次いで、脳組織の最終濃度が20%(w/v)になるよう一定量の新鮮な氷冷TBSおよびRoche Diagnostics社(ラヴェル、ケベック州、カナダ)の無EDTAプロテアーゼインヒビターカクテルに浸漬した。この緩衝液中で機械的プローブホモジナイザーを用いて組織をホモジナイズ(間に30秒の停止を挟んで3×30秒のパルス、いずれも氷上で実施)した。次いで、TBS中でホモジナイズした試料を超遠心分離にかけた(70,000×gで90分)。上清を収集し、等分し、-80℃で保管した。BCAタンパク質アッセイ(Pierce Biotechnology社、ロックフォード、イリノイ州、米国)を用いてTBSホモジネートのタンパク質濃度を求めた。
【0428】
CSF:ADを有するドナー9例およびADを有さないドナー9例からCSFをプールした。精製IgGを全抗体とも30マイクログラム/mlの濃度で用いて、試料をSPRにより解析した。マウスIgGを抗体対照として使用し、いずれの実験も少なくとも2回反復した。
【0429】
抗体6E10を用いてCSFおよび脳抽出物での陽性結合を確認した。
【0430】
SPR解析:AD患者の脳抽出物4例および同年齢の対照の脳抽出物4例をプールし解析した。TBS中でホモジナイズした脳試料には前頭皮質のブロードマン第9野が含まれていた。いずれの実験も、高強度レーザー光および高速光学式走査を用いて結合相互作用をリアルタイムでモニターする分析用バイオセンサーである、実施例6に記載のMolecular Affinity Screening System(MASS-1)(Sierra Sensors社、ハンブルク、ドイツ)を用いて実施した。本明細書に記載されるシクロペプチドに対して作製した精製抗体をプロテインA誘導体化センサーチップの別個のフローセル上に捕捉し、表面に希釈試料を180秒間注入し、次いで、緩衝液で120秒間解離を実施し、表面を再生した。マウス対照IgG参照の表面結合およびアッセイ緩衝液の減算により結合応答を二重参照し、異なる試料のグループを比較した。
【0431】
結果
CSF脳抽出物および免疫組織化学
いくつかのクローンをCSF、可溶性脳抽出物中でのAベータとの結合能について試験し、死体AD脳の組織試料を表2に示す。表2では陽性度がプラス印の数により示されている。
【0432】
表2および表3は、選択したクローンが本明細書に記載されるSPRによる測定でモノマーよりもオリゴマーに対して結合選択性を有することのデータとなる。
【0433】
表2にはIHCの結果もまとめてあり、ここでは、「+/-」は、アイソタイプ対照と類似した染色またはアイソタイプ対照と異なる染色であるが明確な斑形態はみられないことを表す。
【0434】
6E10抗体でみられる陽性斑染色と比較して、クローン8H10(62)では新鮮な凍結切片上に斑染色がみられない例を図18に示す。
【0435】
QKLV(配列番号1)を含むシクロペプチドに対して生じさせた抗体が、モノマーよりもAベータオリゴマーと優先的に結合し、AD患者の脳抽出物および/またはCSF中のAベータとも優先的に結合することを図19に示す。
【0436】
表2、3ならびに図18および19に示されるように、QKLV(配列番号1)を含むシクロペプチドに対して生じさせた抗体は、脳抽出物および/またはCSF中のAベータと結合したクローンを含んだが、SPRではモノマーとあまり結合せず、IHCによる斑線維とあまり結合しなかった。
【0437】
【表4】
スコアリングは同じ試料カテゴリーで他のクローンに対して相対的なものである。
【0438】
【表5】
【0439】
実施例10
合成オリゴマー結合
共有結合で固定化した抗体との結合について市販の調製済み合成アミロイドベータオリゴマー(SynAging社、ヴァンドゥーヴル=レ=ナンシー)の連続2倍希釈物(7.8nM~2000nM)を試験した。対照抗体mAb6E10の結果を図20Aに示し、マウス対照IgGの対照の結果を図20Bに示す。シクロ(CGQKLVG)(配列番号3)に対して生じさせた抗体を用いた結果を図20Cに示す。
【0440】
実施例11
ホルマリン固定組織での免疫組織化学
シクロ(CGQKLVG)(配列番号3)に対して生じさせた抗体を用いてヒト脳組織を評価した。患者はそれまでに、(i)老人斑および神経原線維濃縮体を示すビルショウスキー銀法、(ii)アミロイドを示すコンゴーレッドならびに(iii)濃縮体を示し老人斑が「神経突起性」であることを確認するタウ免疫組織化学法の3部よりなる方法でアルツハイマー病であることが特徴付けられ診断されていた。この組織を用いて、選択したモノクローナル抗体クローンの斑反応性を試験した。脳組織を10%緩衝ホルマリンで数日間固定し、Sakura VIP組織処理装置でパラフィン処理した。組織切片にマイクロ波による抗原回復(AR)を実施するか、または実施せずに、1μg/mlの抗体で探索した。陽性対照として、汎アミロイドベータ反応性抗体6E10を選択した抗体クローンと同時にインキュベートした。抗体を抗体希釈剤(Ventana社)で希釈し、OptiView DAB(Ventana社)で発色させた。Ventana Benchmark XT IHC染色装置で染色を実施した。Olympus BX45顕微鏡で画像を取得した。画像は神経病理学の専門知識を有する専門の病理学者が盲検的に解析した。
【0441】
下の表4に示されるように、固定組織を用いると、被験抗体は抗原回復の有無を問わず、老人斑アミロイドの特異的染色が陰性であった。陽性対照には6E10を用いた。
【0442】
【表6】
【0443】
実施例12
オリゴマー伝播の阻害
チオフラビンT(ThT)結合アッセイを用いてアミロイドベータ(Aβ)凝集対する抗体の効果を検討することにより、その生物学的機能をin vitroで試験した。Aβ凝集は、予め形成された小さいAβオリゴマーの核によって誘導され、この核を介して伝播し、単量体Aβから可溶性オリゴマー、次いで不溶性線維への全過程には同時に、ベータシート形成の増大が伴う。このことはベンゾチアゾール塩のThTによってモニターすることができ、ThTがベータシートに富む構造に結合すると、その励起および発光の最大値がそれぞれ385nmから450nmおよび445nmから482nmに遷移し、それにより蛍光が増大する。簡潔に述べれば、Aβ1~42(Bachem Americas社、トーランス、カリフォルニア州)を可溶化し、超音波処理し、トリス-EDTA緩衝液(pH7.4)で希釈し、黒色の96ウェルマイクロタイタープレート(Greiner Bio-One社、モンロー、ノースカロライナ州)のウェルに加え、これに等体積のシクロペプチドに対する抗体または無関係のマウスIgG抗体アイソタイプ対照を加え、Aβ1~42ペプチドと抗体のモル比を1:5とした。ThTを加え、プレートを室温で24時間インキュベートし、1時間毎にWallac Victor3v 1420 Multilabel Counter(PerkinElmer社、ウォルサム、マサチューセッツ州)を用いてThT蛍光を測定し記録した。全ウェルからバックグラウンド緩衝液の蛍光読取り値を減算し、さらに、対応するウェルから抗体単独のウェルの読取り値を減算した。図21に示されるように、ThT蛍光によりモニターしたAβ42凝集は、蛍光が最小である最初の遅滞期、蛍光が急激に増大する対数期および最後にAβ分子種が平衡状態にあり蛍光の増大がみられないプラトー期を特徴とするS字形を示した。Aβ42と無関係のマウス抗体との共インキュベーションでは、凝集過程に対する有意な効果が全くみられなかった。これに対し、Aβ42と被験抗体との共インキュベーションでは、凝集過程のいずれの期も阻害された。図21には抗体クローン61、62、および64で得られた結果が示されている。ThT凝集アッセイは、ADの病理発生に極めて重要なAβ伝播およびモノマー、オリゴマー、前原線維および線維からのAβ凝集のin vivoの生物物理学的/生化学的段階を模倣するものであることから、シクロ(CGQKLVG)(配列番号3)に対して生じさせた抗体はこの過程を完全に打ち消す可能性を秘めている。マウスのIgG2の対照を用いて実施したアイソタイプ対照では阻害はみられなかった。
【0444】
実施例13
アルツハイマー病の免疫療法に最適なプロファイルの達成:毒性Aベータオリゴマーに特異的な抗体の合理的作製
目的:毒性アミロイドβオリゴマー(AβO)に特異的な抗体を作製すること
背景:現時点での証拠から、AβOの伝播性プリオン様株は、モノマーおよび線維とは対照的に、ニューロンに対して優先的に毒性を示し、アルツハイマー病(AD)のタウ病態を誘発することが示唆される。さらに、臨床試験では、用量制限有害作用がAβ線維認識と関係があることがわかっている。これらの観察結果から、安全性および有効性のためには毒性AβOの特異的中和が望ましいものであり得ることが示唆される。
【0445】
設計/方法:本明細書に記載されるように、標準力場による分子動力学を用いてProtein Data Baseに蓄積されているAβ線維の原子レベルの構造を攪乱するコンピュータシミュレーションを用いた。新生前原線維またはオリゴマーではわずかに安定な領域が露出する可能性が高いという仮説を立てた。オリゴマーにおいて提示される場合とモノマーまたは線維において提示される場合の抗原性プロファイルの差を定量化するクラスタリング解析、曲率、溶媒への露出、溶解度、二面角分布およびラマチャンドラン角分布をすべて用いて予測エピトープの立体配座特性を特徴付けた。局所的なAβO立体配座を模倣し得る環状フォーマットで候補ペプチドエピトープを合成し、担体タンパク質とコンジュゲートし、マウスでのモノクローナル抗体作製に用いた。精製した抗体をSPRおよび免疫組織化学によりスクリーニングした。
【0446】
結果:
コグネイト構造化ペプチドおよび合成AβOを認識することが可能であり、非構造化ペプチド、リンカーペプチドまたはAβモノマーとはほとんどまたは全く結合しないことに基づき、5種類の予測エピトープに対するIgGクローンを66種類選択し精製した。さらなるスクリーニングにより、対照と比較してAD患者のCSFおよび脳抽出物中の天然の可溶性AβOと優先的に結合する抗体を特定した。AD脳の免疫組織化学的解析により、斑と反応しない抗体クローンを選択することができた。
【0447】
結論:コンピュータにより特定したAβOエピトープにより、天然のAD AβOと選択的に結合しモノマーにも線維にも有意な交差反応性を示さないという所望の標的プロファイルを有する抗体を作製することができた。
【0448】
実施例14
毒性阻害アッセイ
シクロペプチドに対して生じさせた抗体によるAベータ42オリゴマーの毒性の阻害をラット一次皮質ニューロンアッセイで試験することができる。
【0449】
抗体および対照IgGをそれぞれ2mg/mLなどの濃度に調節する。様々なモル比のAベータオリゴマーと抗体を溶媒対照、Aベータオリゴマー単独および神経保護ペプチドのヒューマニン(HNG)などの陽性対照とともに試験する。
【0450】
例示的設定を表5に示す。
【0451】
室温で10分間プレインキュベートした後、体積を培地で840マイクロリットルに調節する。この溶液を37℃で5分間インキュベートする。次いで、溶液を一次皮質ニューロンに直接添加し、細胞を24時間インキュベートする。MTT試験を用いて細胞生存率を求めることができる。
【0452】
【表7】
【0453】
この試験は、305抗体のクローン62を使用して行った。この抗体単独では、毒性がないことが示された(図22A)。Aベータオリゴマーの毒性の用量依存的な阻害が、抗体:オリゴマー:1:5、1:1および2:1のすべての濃度で観察された(図22B)。
【0454】
実施例15
in vivo毒性阻害アッセイ
シクロペプチドに対して生じさせた抗体によるAベータ42オリゴマーの毒性の阻害をマウス行動試験でin vivoで試験することができる。
【0455】
マウスの脳室内(ICV)に注射する前に、抗体およびアイソタイプ対照をそれぞれAベータ42オリゴマーと2以上の様々なモル比で予め混合する。対照群には、溶媒単独を注射するマウス、オリゴマー単独を注射するマウス、抗体単独を注射するマウスおよび神経保護ペプチドのヒューマニンなどの陽性対照を注射するマウスを含める。あるいは、抗体をオリゴマーのICV注射前、注射時および/または注射後に全身投与してもよい。オリゴマーのICV注射から約4~7日後に開始して、マウス空間認識試験(SRT)、Y迷路試験、モーリス水迷路モデルおよび新奇物体認識モデル(NOR)などの学習および記憶に関する行動試験で認知を評価する。
【0456】
マウス空間認識試験(SRT)は、海馬機能の尺度である地理的記憶を評価するものである(SynAging社)。このモデルでは2チャンバの装置を使用し、この装置のチャンバは形状、模様および色が異なっている(すなわち、地理的差)。チャンバは透明なPlexiglass製の廊下で繋がっている。最初に個々のマウスを探索期の5分間、一方のチャンバにのみアクセスできる装置の中に入れておく。次いで、マウスをホームケージに30分間戻し、「選択」期の5分間、再び装置の中に入れ、その間、マウスは両方のチャンバにアクセスできる。正常な認知機能を有するマウスは前回探索したチャンバを記憶しており、新規なチャンバで費やす時間の方が長い。DI=(TN-TF)/(TN+TF)で識別指数(DI)を算出し、式中、TNは新規なチャンバで費やした時間の量であり、TFは馴染みのあるチャンバで費やす時間の量である。毒性AベータオリゴマーによりDIの低下が起こるが、ヒューマニン陽性対照により一部レスキューされ得る。ICV注射後の様々な時間におけるこの試験の成績を用いて、シクロペプチドに対して生じさせた抗体がAベータオリゴマー毒性をin vivoで阻害する可能性を評価することができる。
【0457】
Y迷路試験(SynAging社)は、主として前頭前皮質(作業記憶)および海馬(空間構成要素)が仲介する空間作業記憶の試験である。マウスが2本の腕を探索することができるY字形の迷路の中にマウスを置く。短期記憶が無傷なマウスは連続試行で交互に2本の腕に行く。毒性AベータオリゴマーをICV注射したマウスは認知に障害がみられ、ランダム値50%(これに対し正常個体は約70%)付近の交互のランダム行動を示す。この障害は、コリンエステラーゼ阻害剤ドネペジル(Aricept)またはヒューマニンによりそれぞれ部分的または全面的に正常に戻る。この試験により、被験抗体のAベータオリゴマー毒性に対する防御活性に関してまた別のin vivo評価ができる。
【0458】
モーリス水迷路はまた別の広く認められている認知モデルであり、主として海馬機能に依存する空間学習および長期地理的記憶を検討するものである(SynAging社)。マウスを複数回の試行で、不透明な水面の下に隠したプラットフォームを見つけるよう訓練する。プラットフォームの位置の想起に関するマウスの学習成績は、視覚的な手掛かりおよび記録したビデオに基づく。マウスを水に放ってからプラットフォームを見つけるまでの時間は着実に短縮され、これをマウスの学習速度とし、複数日にわたって測定する。認知が正常なマウスでは、プラットフォームを見つけるのに必要な時間が連日短縮される(学習)。長期記憶の解析には、訓練後に試験を複数日反復する。つまり、プラットフォームを取り去り、以前のプラットフォームの位置の上を横切る回数または最初に横切るまでの時間を長期記憶を評価する尺度として用いる。毒性AベータオリゴマーをICV注射したマウスは、学習および長期記憶の両方に欠陥がみられ、被験抗体の防御活性を評価するためのモデルとなる。
【0459】
新奇物体認識(NOR)モデルは、新奇な物体を既知の物体より有意に長い時間をかけて調べるというげっ歯類の正常な行動を利用するものであり、この行動は主として嗅周皮質機能に依存する(SynAging社)。習得試行でマウスまたはラットに2つの同一の物体を探索させる。短時間の試行間間隔の後、一方の物体を新奇な物体に置き換える。動物を活動領域に戻し、各物体を能動的に探索して費やした時間を記録する。正常なげっ歯類は馴染みのある物体を思い出し、新奇な物体の方の探索に有意に長い時間を費やす。これに対し、Aベータオリゴマー処置したげっ歯類は明確な認知障害を示し、「馴染みのある」物体と「新奇な」物体の両方の探索に同程度の時間を費やす。これは、既知の臨床認知機能改善薬(例えば、ドネペジル)により一時的に正常に戻すことができる。NOR試験を縦断研究で複数回実施して、験抗体の認知に対する潜在的な有益性を評価することができる。
【0460】
行動試験に加え、脳組織を収集し、シナプスマーカー(PSD95、SNAP25、シナプトフィジン)および炎症マーカー(IL-1ベータ)のレベルを解析することができる。オリゴマーのICV注射から約14日後にマウスを屠殺し、生理食塩水を灌流する。海馬を収集し、急速凍結し、解析まで-80℃で保管する。ホモジナイズした試料のタンパク質濃度をBCAにより求める。ELISAキット(Cloud-Clone社、米国)を用いてシナプスマーカーの濃度を求める。シナプスマーカーは通常、Aベータオリゴマーを注射したマウスで25~30%減少し、ヒューマニン陽性対照により90~100%に回復する。IL-1ベータ炎症性マーカーの濃度は、Aベータオリゴマーを注射したマウスで約3倍になり、この増大はヒューマニンによって大幅に抑えられる。これらのアッセイは、被験抗体の防御活性に関する分子レベルでのまた別の尺度となる。
【0461】
実施例16
in vivo伝播阻害アッセイ
Aベータ毒性オリゴマーのin vivoの伝播およびそれに関連する病態を様々なアルツハイマー病(AD)げっ歯類モデルで研究することができる。例えば、ヒトAPPのトランスジェニックマウス(例えば、APP23マウス)またはヒトAPPとPSEN1のトランスジェニックマウス(APPPS1マウス)は高レベルのAベータを発現し、加齢とともに炎症および神経損傷を伴うアミロイド沈着が徐々にみられるようになる。オリゴマー含有脳抽出物の脳内接種によりこの過程を大幅に加速させることができる(過程13、14)。これらのモデルは、脳内または全身に投与した抗体によるAベータオリゴマー伝播の阻害を研究するためのシステムとなる。
【0462】
実施例17
CDRシーケンシング―3057E9.1
IgG3重鎖とカッパ軽鎖とを有することが明らかになった3057E9.1を重鎖および軽鎖のCDRおよび可変領域に選択した。
【0463】
5’RACEならびに適切なマウス免疫グロブリンの重鎖(IgG1/IgG3/IgG2A)および軽鎖(カッパ)の可変領域配列を増幅する遺伝子特異的逆方向プライマーを用いてRT-PCRを実施した。
【0464】
シーケンシング用に特異的バンドを切り取ってpCR-Blunt II-TOPOベクターにクローン化し、構築物を大腸菌(E.coli)に形質転換した。
【0465】
各鎖について少なくとも8種類のクローンを選定し、シーケンシングの前に増幅領域の有無についてPCRでスクリーニングした。選択したPCR陽性クローンにシーケンシングを実施した。
【0466】
CDR配列を表6に記載する。重鎖および軽鎖の可変部分のコンセンサスDNA配列およびタンパク質配列を表7に記載する。
【表8】

【表9】
【0467】
実施例9
CDRのシークエンシング-305-8H10
IgG1重鎖とカッパ軽鎖とを有することが明らかになった305-8H10を、CDRならびに重鎖および軽鎖の可変領域のシークエンシングに選択した。
【0468】
5’RACEならびに適切なマウス免疫グロブリンの重鎖(IgG1/IgG3/IgG2A)および軽鎖(カッパ)の可変領域配列を増幅する遺伝子特異的逆方向プライマーを用いてRT-PCRを実施した。
【0469】
シーケンシング用に特異的バンドを切り取ってpCR-Blunt II-TOPOベクターにクローン化し、構築物を大腸菌(E.coli)に形質転換した。
【0470】
各鎖について少なくとも8種類のクローンを選定し、シーケンシングの前に増幅領域の有無についてPCRでスクリーニングした。選択したPCR陽性クローンにシーケンシングを実施した。
【0471】
CDR配列を表8に記載する。重鎖および軽鎖の可変部分のコンセンサスDNA配列およびタンパク質配列を表9に記載する。
【表10】
【0472】
【表11】
【0473】
表10.Aベータ配列およびリンカーを有するAベータ配列
QKLV(配列番号1)
HQKLV(配列番号2)
CGQKLVG、シクロCGQKLVG(配列番号3)
GQKLV(配列番号4)
GQKLVG(配列番号5)
GGQKLVG(配列番号6)
GQKLVGG(配列番号7)
CGQKLVGC(配列番号8)
HQKLVF(配列番号9)
QKLVF(配列番号10)
【0474】
表11-完全なAベータ1~42
DAEFRHDSGYEVHHQKLVFFAEDVGSNKGAIIGLMVGGVVIA(配列番号31)
【0475】
ここまで、現時点で好ましい例であると考えるものに関して本願を記載してきたが、本願は本開示の例に限定されないことを理解するべきである。これとは逆に、本願は、添付の請求項の趣旨および範囲に含まれる様々な改変および同等の構成を包含するものとする。
【0476】
刊行物、特許および特許出願はいずれも、個々の刊行物、特許または特許出願が具体的かつ個別にその全体が参照により組み込まれることが明記された場合と同じように、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。特に、例えば表またはその他の箇所に記載されるアクセッション番号および/またはバイオマーカー配列(例えば、タンパク質および/または核酸)を含めた本明細書に記載される各アクセッション番号に関連する配列は、その全体が参照により組み込まれる。
【0477】
請求項の範囲は、好ましい実施形態および実施例によって限定されるべきではなく、記載全体と一致する最も広い解釈がなされるべきである。
【0478】
(本明細書で参照される参考文献の引用)
[1]SCIENTIFIC REPORTS|5:9649,2015|DOI:10.1038/srep09649
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[7]Roberts,MJ et al Chemistry for peptide and protein PEGylation 64:116-127.
図1
図2
図3
図4
図4-1】
図5
図6
図7
図8
図9
図10
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図12-1】
図12-2】
図12-3】
図13
図14
図15
図16
図17
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図19
図20-1】
図20-2】
図20-3】
図20-4】
図21-1】
図21-2】
図21-3】
図22-1】
図22-2】
【配列表】
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