(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】タンパク質結晶のハイドロゲル包埋物の作製方法
(51)【国際特許分類】
C07K 17/04 20060101AFI20240312BHJP
【FI】
C07K17/04
(21)【出願番号】P 2019217652
(22)【出願日】2019-11-30
【審査請求日】2022-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】501086714
【氏名又は名称】学校法人 学習院
(74)【代理人】
【識別番号】100106611
【氏名又は名称】辻田 幸史
(72)【発明者】
【氏名】友池 史明
(72)【発明者】
【氏名】森田 惇
(72)【発明者】
【氏名】岡田 哲二
【審査官】大西 隆史
(56)【参考文献】
【文献】PIETRAS, Zbigniew et al.,Journal of Applied Crystallography,2010年,Vol. 43,pp. 58-63,DOI: 10.1107/S0021889809051917
【文献】AUGUSTIN, Mary Ann and HEMAR, Yacine,Chemical Society Review,2008年12月04日,Vol. 38,pp. 902-912,DOI: 10.1039/b801739p
【文献】ZHAO, Gang et al.,Advanced Healthcare Materials,2017年12月06日,Vol. 6, Issue 23,pp. 1-13,DOI: 10.1002/adhm.201700988
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00-19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液剤で押し出し可能な形状物内の結晶化させたタンパク質が存在する溶液を、濃度が
0.5~2%のアルギン酸溶液および濃度が
6.25~12.5mMの2価金属イオン溶液のいずれか一方の溶液で押し出し、さらに一方の溶液を他方の溶液に押し出すことによる、タンパク質結晶のハイドロゲル包埋物の作製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンパク質結晶のハイドロゲル包埋物の作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タンパク質の結晶構造解析は、タンパク質の機能を解明する上で不可欠な手段であるが、的確な解析を行うためには、解析に適した高品質な結晶をいかに取得するかという点とともに、取得した結晶をいかに取り扱うかという点が重要となる。なぜなら、タンパク質結晶は、物理的衝撃に弱く壊れやすいため、その取り扱いには細心の注意が必要だからである。そこで、タンパク質結晶を傷つけることなく取り扱う方法として、タンパク質をハイドロゲル中で結晶化させる方法が提案されている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】杉山 成ら、固相ハイドロゲル中でのタンパク質結晶化、日本結晶学会誌54,300-303(2012)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非特許文献1に記載の方法によれば、結晶化したタンパク質がハイドロゲルに包埋されるため、タンパク質結晶を物理的衝撃から保護できる。しかしながら、この方法は、適用がハイドロゲル中で結晶化するタンパク質に限定されることに加え、ハイドロゲル中で結晶化するタンパク質であってもタンパク質ごとにハイドロゲル中での結晶化条件の最適化を必要とするため、汎用性に欠けると言わざるを得ない。
そこで本発明は、汎用性に富む、タンパク質結晶のハイドロゲル包埋物の作製方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは上記の点に鑑みて、タンパク質をハイドロゲル中で結晶化させるのではなく、結晶化したタンパク質をハイドロゲルに包埋する方法についての研究開発に取り組み、鋭意検討を行った結果、ガラス製のキャピラリチューブ内の結晶化させたタンパク質が存在する溶液を、キャピラリチューブ内からアルギン酸ナトリウム溶液で押し出し、さらにキャピラリチューブ内を通してアルギン酸ナトリウム溶液を塩化カルシウム溶液に押し出すことで、タンパク質結晶が包埋されたアルギン酸ハイドロゲルが得られることを見出した。
【0006】
上記の知見に基づいてなされた本発明のタンパク質結晶のハイドロゲル包埋物の作製方法は、請求項1記載の通り、液剤で押し出し可能な形状物内の結晶化させたタンパク質が存在する溶液を、濃度が0.5~2%のアルギン酸溶液および濃度が6.25~12.5mMの2価金属イオン溶液のいずれか一方の溶液で押し出し、さらに一方の溶液を他方の溶液に押し出すことによる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の方法は、結晶化できるタンパク質であれば、どのようなタンパク質に対しても適用できるので、汎用性に富む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施例1において得た塩化カルシウム溶液中のニワトリ卵白リゾチーム結晶が分散して包埋されたアルギン酸ハイドロゲルの連続体と連続体に包埋された結晶の顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のタンパク質結晶のハイドロゲル包埋物の作製方法は、液剤で押し出し可能な形状物内の結晶化させたタンパク質が存在する溶液を、アルギン酸溶液および多価金属イオン溶液のいずれか一方の溶液で押し出し、さらに一方の溶液を他方の溶液に押し出すことによるものである。
【0010】
アルギン酸ナトリウム溶液などのアルギン酸溶液と、塩化カルシウム溶液などの多価金属イオン溶液を混合すると、多価金属イオンによってアルギン酸が即座に架橋してゲル化することで、アルギン酸ハイドロゲルが得られることは周知の通りであり、本発明の方法では、この反応を利用して液剤で押し出し可能な形状物内に存在する結晶化させたタンパク質をゲル中に包埋する。アルギン酸溶液としては、アルギン酸ナトリウム溶液の他、アルギン酸ハイドロゲルを得るためのアルギン酸溶液として知られているアルギン酸カリウム溶液やアルギン酸アンモニウム溶液などを用いることができる。多価金属イオン溶液としては、塩化カルシウム溶液の他、アルギン酸ハイドロゲルを得るための多価金属イオン溶液として知られている塩化マグネシウム溶液などの2価金属イオン溶液などを用いることができる。
【0011】
液剤で押し出し可能な形状物内の結晶化させたタンパク質が存在する溶液は、カウンターディフュージョン法(液々拡散法)などの方法を用いて形状物内でタンパク質を結晶化させることで調製されたものであってもよいし、蒸気拡散法や自由界面拡散法などの方法を用いて形状物外でタンパク質を結晶化させた溶液を形状物内に充填することで調製されたものであってもよい。しかしながら、形状物内でタンパク質を結晶化させることで調製されたものは、形状物外から形状物内への充填操作を必要としないので調製が簡便であることに加え、充填操作の際にタンパク質結晶を傷つけてしまうといったことがないので、好適に採用できる。カウンターディフュージョン法は、キャピラリチューブの中のタンパク質溶液と、外の沈殿剤溶液を、相互に拡散させることで、タンパク質の分子がキャピラリチューブの中から外に移動するとともに、沈殿剤溶液に含まれる試薬(例えば、塩化ナトリウムや硫酸アンモニウムなどの高溶解性塩、メタノールなどの親水性有機溶媒、ポリエチレングリコールなどの高分子化合物)の分子がキャピラリチューブの外から中に移動することにより、キャピラリチューブ内で濃度勾配が形成され、結晶化に適した濃度の箇所から結晶化させる方法として当業者によく知られている(必要であれば例えばJ.M.Garcia-Ruiz,et al.,Investigations on Protein Crystal Growth by the Gel Acupuncture Method,Acta Cryst.(1994).D50,484-490を参照)。カウンターディフュージョン法におけるタンパク質の結晶化条件は、既に報告されているタンパク質であればその結晶化条件に従えばよい。カウンターディフュージョン法によるタンパク質の結晶化のためのキットは、市販もされている(例えば株式会社コンフォーカルサイエンスの商品名:C-Tubeキット)。
【0012】
カウンターディフュージョン法によってキャピラリチューブ内で結晶化させたタンパク質が存在する溶液の、アルギン酸溶液および多価金属イオン溶液のいずれか一方の溶液での押し出し、さらに一方の溶液の他方の溶液への押し出しは、例えば、ガラス製のキャピラリチューブの一端に、合成樹脂(シリコンなど)製のチューブを介して、アルギン酸溶液を充填したシリンジを接続し、アルギン酸溶液をシリンジから押し出すことでキャピラリチューブの他端からキャピラリチューブ内の溶液を押し出し、続けてキャピラリチューブ内を通してアルギン酸溶液を押し出して、多価金属イオン溶液で受けるようにして行えばよい。キャピラリチューブ内の溶液に続けて、シリンジに充填したアルギン酸溶液を多価金属イオン溶液に押し出すことで、キャピラリチューブ内に存在するタンパク質結晶が包埋されたアルギン酸ハイドロゲルが得られる。キャピラリチューブ内に存在するタンパク質結晶は、キャピラリチューブ内の溶液とともには押し出されず、キャピラリチューブ内の溶液に続けて押し出されるアルギン酸溶液とともに押し出されることで、ゲル中に包埋される。これは、キャピラリチューブ内で結晶化させたタンパク質は、溶液中に浮遊した状態で存在するのではなく、キャピラリチューブの内壁に吸着乃至接着した状態で存在するためであり(タンパク質の結晶化がキャピラリチューブの内壁を起点として生じることによる)、キャピラリチューブの内壁に吸着乃至接着したタンパク質結晶は、キャピラリチューブ内をアルギン酸溶液が通過する際にアルギン酸溶液によって内壁から剥離されてアルギン酸溶液とともに多価金属イオン溶液に押し出される(ただし、キャピラリチューブ内におけるタンパク質結晶の存在位置やキャピラリチューブの内壁への吸着乃至接着の程度などによっては、キャピラリチューブ内の溶液とともに押し出されるタンパク質結晶は存在し得るので、キャピラリチューブ内のすべてのタンパク質結晶が必ずアルギン酸溶液とともに押し出されるというわけではない)。キャピラリチューブの他端を多価金属イオン溶液に浸漬してタンパク質結晶を含むアルギン酸溶液を多価金属イオン溶液に押し出せば、キャピラリチューブ内でタンパク質が結晶化した位置に応じてタンパク質結晶が分散して包埋されたアルギン酸ハイドロゲルの連続体が得られる。こうして得たタンパク質結晶が分散して包埋されたアルギン酸ハイドロゲルの連続体は、例えばタンパク質結晶が包埋されていない箇所をピンセットで摘まんで取り扱うことで、タンパク質結晶に物理的衝撃を与えることを回避できる。連続体に結晶構造解析に適したタンパク質結晶が包埋されていれば、その結晶が包埋されている部分のゲルだけを切り出して解析を行えばよい。また、多価金属イオン溶液の上部でタンパク質結晶を含むアルギン酸溶液を押し出して多価金属イオン溶液に滴下させれば、タンパク質結晶が包埋されたアルギン酸ハイドロゲルのビーズ体が得られる。結晶構造解析に適したタンパク質結晶が包埋されたアルギン酸ハイドロゲルのビーズ体は、ゲルを介してタンパク質結晶を摘ままないように(即ちゲルのみを摘まむように)注意して、例えばピンセットで摘まんで取り出して解析を行えばよい。キャピラリチューブ内における結晶構造解析に適したタンパク質結晶の存在位置を肉眼や顕微鏡で確認し、その結晶が存在する部分の溶液だけをアルギン酸溶液で押し出し、続けてその結晶を含むアルギン酸溶液を押し出せるように、キャピラリチューブを所定の長さに切断して操作を行ってもよい。
【0013】
アルギン酸ハイドロゲルを得るための溶液として用いるアルギン酸溶液と多価金属イオン溶液のそれぞれ濃度は、一般的に採用される濃度を採用することができ、アルギン酸溶液の濃度は例えば0.01%~20%の範囲であってよく、多価金属イオン溶液の濃度は例えば0.1mM~1Mの範囲であってよい。
【0014】
シリンジに充填したアルギン酸溶液によるキャピラリチューブ内の溶液の押し出し、続けてキャピラリチューブ内を通してのアルギン酸溶液の押し出しは、手動で行ってもよいし、シリンジポンプなどを利用して機械的に行ってもよい。その押し出し速度は、例えば0.001mL/min~100mL/minの範囲であってよいが、0.01mL/min~10mL/minの範囲であるのが望ましい。押し出し速度が遅すぎると、キャピラリチューブ内をアルギン酸溶液が通過してもキャピラリチューブの内壁に吸着乃至接着したタンパク質結晶が内壁から剥離されないことで、タンパク質結晶が包埋されたアルギン酸ハイドロゲルが得られない恐れがある。押し出し速度が速すぎると、キャピラリチューブの内壁に吸着乃至接着したタンパク質結晶が、キャピラリチューブ内の溶液が押し出される際にキャピラリチューブの内壁から剥離されてキャピラリチューブ内の溶液とともに押し出されることで、タンパク質結晶が包埋されたアルギン酸ハイドロゲルが得られない恐れや、アルギン酸溶液とともに押し出されても一度に塊となって押し出されることで、キャピラリチューブ内で結晶化させたタンパク質が分散して包埋されたアルギン酸ハイドロゲルの連続体や、個々のタンパク質結晶が包埋されたアルギン酸ハイドロゲルのビーズ体が得られない恐れがある。
【0015】
なお、アルギン酸溶液および/または多価金属イオン溶液には、沈殿剤溶液に含まれる試薬を同程度(±10%)の濃度で含め、溶液のpHも同程度にすることが、タンパク質結晶がアルギン酸溶液とともにキャピラリチューブ内から押し出される際にタンパク質結晶がアルギン酸溶液に溶解することや、タンパク質結晶を含むアルギン酸溶液が多価金属イオン溶液に押し出された際にタンパク質結晶が多価金属イオン溶液に溶解することを防ぐために望ましい。
【0016】
また、カウンターディフュージョン法によってキャピラリチューブ内でタンパク質を結晶化させるために用いるタンパク質溶液や沈殿剤溶液には、アルギン酸ハイドロゲルを得るために用いるアルギン酸塩や多価金属塩を添加しないことが望ましい。タンパク質の結晶化に影響を及ぼす恐れがあるからである。
【0017】
以上の説明は、カウンターディフュージョン法によってガラス製のキャピラリチューブ内で結晶化させたタンパク質を、アルギン酸溶液とともに多価金属イオン溶液に押し出すことで、タンパク質結晶が包埋されたアルギン酸ハイドロゲルを得る方法についてのものであるが、キャピラリチューブ内で結晶化させたタンパク質を、多価金属イオン溶液とともにアルギン酸溶液に押し出すことで、タンパク質結晶が包埋されたアルギン酸ハイドロゲルを得てもよい。キャピラリチューブは、ガラス製のものに限定されず、金属製や合成樹脂製のものであってもよい。
【0018】
また、液剤で押し出し可能な形状物は、形状物内でタンパク質を結晶化できるものや、形状物外でタンパク質を結晶化させた溶液を形状物内に充填できるものであって、液剤で押し出し可能であれば、キャピラリチューブに限定されない。
【0019】
本発明の方法によって得られたタンパク質結晶が包埋されたアルギン酸ハイドロゲルは、タンパク質の結晶構造解析の他、タンパク質結晶を用いて行われるライフサイエンス分野をはじめとする様々な分野での様々な場面で用いることができる。
【実施例】
【0020】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明は以下の記載に限定して解釈されるものではない。
【0021】
実施例1:卵白リゾチーム結晶のアルギン酸ハイドロゲル包埋物の作製(その1)
(1)公知の方法に準じて、カウンターディフュージョン法によってキャピラリチューブ内でニワトリ卵白リゾチームを結晶化させた。具体的な方法は以下の通りである。まず、内径0.5mm×長さ60mmのガラス製のキャピラリチューブに、15mg/mLニワトリ卵白リゾチーム溶液を吸引充填した(充填量は13μL)。また、50mL蓋付試験管の底部にアガロースゲル(2%アガロース+1.5M塩化ナトリウム+0.1M酢酸ナトリウム、pH4.5)1mLを入れ、さらにその上から沈殿剤溶液(1.5M塩化ナトリウム+0.1M酢酸ナトリウム、pH4.5)8mLを加えた。ニワトリ卵白リゾチーム溶液を充填したキャピラリチューブの下端を、蓋付試験管の底部のアガロースゲルに突き刺すとともに、キャピラリチューブの上端をアルミホイルで封をし、試験管の蓋を閉めて室温で静置することで、キャピラリチューブの中のニワトリ卵白リゾチーム溶液と、外の沈殿剤溶液を、アガロースゲルを介して相互に拡散させたところ、24時間後に、キャピラリチューブの内壁に吸着乃至接着した状態で存在する複数のニワトリ卵白リゾチーム結晶が肉眼で確認できた。
【0022】
(2)(1)の工程によって内部でニワトリ卵白リゾチームを結晶化させたキャピラリチューブを蓋付試験管から取り出し、その一端に、シリコン製のチューブを介して、アルギン酸ナトリウム溶液(2%アルギン酸ナトリウム+1.5M塩化ナトリウム+0.1M酢酸ナトリウム、pH4.5)適量(5mL~10mL)を充填したシリンジを接続した。キャピラリチューブの他端を、シャーレに満たした塩化カルシウム溶液(10mM塩化カルシウム+1.5M塩化ナトリウム+0.1M酢酸ナトリウム、pH4.5)に浸漬し、塩化カルシウム溶液中を移動させながら、アルギン酸ナトリウム溶液をシリンジから手動で押し出すことで(押し出し速度:1mL/min)、キャピラリチューブの他端からキャピラリチューブ内の溶液を押し出し、続けてキャピラリチューブ内を通してアルギン酸ナトリウム溶液を押し出すと、塩化カルシウム溶液中に、ニワトリ卵白リゾチーム結晶が分散して包埋されたアルギン酸ハイドロゲルの連続体が得られた。塩化カルシウム溶液中のニワトリ卵白リゾチーム結晶が分散して包埋されたアルギン酸ハイドロゲルの連続体と連続体に包埋された結晶の顕微鏡写真を
図1に示す(顕微鏡:実体顕微鏡SZX7(オリンパス株式会社)、レンズ:1X対物レンズDFPLAPO(同)、カメラ:SP-8000UZ(同))。
【0023】
実施例2:卵白リゾチーム結晶のアルギン酸ハイドロゲル包埋物の作製(その2)
実施例1の(2)の工程で用いたアルギン酸ナトリウム溶液を構成する2%アルギン酸ナトリウムを0.5%アルギン酸ナトリウムに、塩化カルシウム溶液を構成する10mM塩化カルシウムを12.5mM塩化カルシウムに、それぞれ変更すること以外は実施例1と同様にして、ニワトリ卵白リゾチーム結晶が分散して包埋されたアルギン酸ハイドロゲルの連続体を得た。
【0024】
実施例3:卵白リゾチーム結晶のアルギン酸ハイドロゲル包埋物の作製(その3)
実施例1の(2)の工程で用いたアルギン酸ナトリウム溶液を構成する2%アルギン酸ナトリウムを1.5%アルギン酸ナトリウムに、塩化カルシウム溶液を構成する10mM塩化カルシウムを6.25mM塩化カルシウムに、それぞれ変更すること以外は実施例1と同様にして、ニワトリ卵白リゾチーム結晶が分散して包埋されたアルギン酸ハイドロゲルの連続体を得た。
【0025】
実施例4:卵白リゾチーム結晶のアルギン酸ハイドロゲル包埋物の作製(その4)
実施例1の(2)の工程におけるアルギン酸ナトリウム溶液のシリンジからの1mL/minの押し出し速度を0.01mL/minに変更し、押し出しをシリンジポンプを利用して行うこと以外は実施例1と同様にして、ニワトリ卵白リゾチーム結晶が分散して包埋されたアルギン酸ハイドロゲルの連続体を得た。
【0026】
実施例5:卵白リゾチーム結晶のアルギン酸ハイドロゲル包埋物の作製(その5)
実施例1の(2)の工程におけるアルギン酸ナトリウム溶液のシリンジからの1mL/minの押し出し速度を10mL/minに変更し、押し出しをシリンジポンプを利用して行うこと以外は実施例1と同様にして、ニワトリ卵白リゾチーム結晶が分散して包埋されたアルギン酸ハイドロゲルの連続体を得た。
【0027】
実施例6:卵白リゾチーム結晶のアルギン酸ハイドロゲル包埋物の作製(その6)
実施例1の(1)の工程における、50mL蓋付試験管の底部にアガロースゲル1mLを入れ、さらにその上から沈殿剤溶液8mLを加えた後、ニワトリ卵白リゾチーム溶液を充填したキャピラリチューブの下端を、蓋付試験管の底部のアガロースゲルに突き刺すとともに、キャピラリチューブの上端をアルミホイルで封をする代わりに、15mL蓋付試験管に沈殿剤溶液1.5mLを入れ、ニワトリ卵白リゾチーム溶液を充填したキャピラリチューブの上端をアルミホイルで封をするとともに、下端にアガロースゲル1.5μLを吸引充填し、キャピラリチューブの下端を、蓋付試験管の底部の沈殿剤溶液に浸漬すること以外は実施例1と同様にして、ニワトリ卵白リゾチーム結晶が分散して包埋されたアルギン酸ハイドロゲルの連続体を得た。
【0028】
実施例7:卵白リゾチーム結晶のアルギン酸ハイドロゲル包埋物の作製(その7)
実施例1の(2)の工程で用いた塩化カルシウム溶液の代わりに、塩化マグネシウム溶液(10mM塩化マグネシウム+1.5M塩化ナトリウム+0.1M酢酸ナトリウム、pH4.5)を用いること以外は実施例1と同様にして、ニワトリ卵白リゾチーム結晶が分散して包埋されたアルギン酸ハイドロゲルの連続体を得た。
【0029】
実施例8:卵白リゾチーム結晶のアルギン酸ハイドロゲル包埋物の作製(その8)
実施例1の(1)の工程によって内部でニワトリ卵白リゾチームを結晶化させたキャピラリチューブの代わりに、蒸気拡散法(ハンギングドロップ法)を用いてニワトリ卵白リゾチームを結晶化させた溶液を吸引充填したキャピラリチューブを用いて、実施例1の(2)の工程を行ったところ、ニワトリ卵白リゾチーム結晶は、キャピラリチューブ内の溶液とともには押し出されず、キャピラリチューブ内の溶液に続けて押し出されるアルギン酸ナトリウム溶液とともに押し出されることで、ニワトリ卵白リゾチーム結晶が分散して包埋されたアルギン酸ハイドロゲルの連続体が得られた。ニワトリ卵白リゾチーム結晶は、例えばキャピラリチューブに充填される際に何らかの作用によってキャピラリチューブの内壁に吸着乃至接着することで、キャピラリチューブ内の溶液とともには押し出されず、アルギン酸ナトリウム溶液とともに押し出されるのではないかと推察している。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、汎用性に富む、タンパク質結晶のハイドロゲル包埋物の作製方法を提供できる点において、産業上の利用可能性を有する。