IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ジャパンERCMの特許一覧

特許7452837燃料、燃料の製造方法、有機物含有廃棄物処理装置および有機物含有廃棄物の処理方法
<>
  • 特許-燃料、燃料の製造方法、有機物含有廃棄物処理装置および有機物含有廃棄物の処理方法 図1
  • 特許-燃料、燃料の製造方法、有機物含有廃棄物処理装置および有機物含有廃棄物の処理方法 図2
  • 特許-燃料、燃料の製造方法、有機物含有廃棄物処理装置および有機物含有廃棄物の処理方法 図3
  • 特許-燃料、燃料の製造方法、有機物含有廃棄物処理装置および有機物含有廃棄物の処理方法 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】燃料、燃料の製造方法、有機物含有廃棄物処理装置および有機物含有廃棄物の処理方法
(51)【国際特許分類】
   C10L 1/182 20060101AFI20240312BHJP
   B09B 3/40 20220101ALI20240312BHJP
   C02F 11/10 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
C10L1/182 ZAB
B09B3/40
C02F11/10 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019227483
(22)【出願日】2019-12-17
(65)【公開番号】P2021095498
(43)【公開日】2021-06-24
【審査請求日】2021-07-28
【審判番号】
【審判請求日】2022-04-13
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519450374
【氏名又は名称】株式会社ジャパンERCM
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100161001
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 篤司
(72)【発明者】
【氏名】茂森 潔
(72)【発明者】
【氏名】鳥居 修一
【合議体】
【審判長】門前 浩一
【審判官】安積 高靖
【審判官】塩見 篤史
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-105923(JP,A)
【文献】特公昭60-11993(JP,B2)
【文献】特開2004-143253(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10L1/02
B09B3/40
C02F11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機物含有廃棄物を間接加熱せずに燻焼して発生するガスを分離せずに冷却して得る、発熱量が20000J/g以上の廃液と、
含有量が20質量%以下の無水アルコールと、を含み、
発熱量が20000~50000J/gであり、
動粘性係数が50~150mm/sである、燃料。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料の製造方法であって、
発熱量が20000J/g以上の前記廃液と無水アルコールを混合する混合工程を含み、
前記廃液と前記無水アルコールは、質量比で前記廃液1に対して前記無水アルコールを0.2以下の割合で混合する、燃料の製造方法。
【請求項3】
前記混合工程の前に、
前記廃液の発熱量を測定する発熱量測定工程を含む、請求項2に記載の燃料の製造方法。
【請求項4】
前記廃液中の固形物を除去する除去工程を含む、請求項2または3に記載の燃料の製造方法。
【請求項5】
有機物含有廃棄物を間接加熱せずに燻焼する燻焼部と、
前記燻焼により発生するガスを分離せずに冷却して得られる廃液を回収する廃液回収部と、
前記廃液と無水アルコールを混合する混合部と、
前記廃液と前記無水アルコールとの混合物を燃料として、前記燻焼により発生るガス中の可燃物を燃焼する燃焼部と、を備える有機物含有廃棄物処理装置。
【請求項6】
前記廃液中の固形物を除去する第1固形物除去部、または前記燃料中の固形物を除去する第2固形物除去部のいずれかを備える、請求項5に記載の有機物含有廃棄物処理装置。
【請求項7】
前記燃料の粘度を管理する粘度管理部を備える、請求項5または6に記載の有機物含有廃棄物処理装置。
【請求項8】
請求項5~7のいずれかに記載の有機物含有廃棄物処理装置を用いた有機物含有廃棄物の処理方法であって、
前記燻焼部により前記有機物含有廃棄物を間接加熱せずに燻焼する燻焼工程と、
前記廃液回収部において前記燻焼工程により発生するガスを分離せずに冷却して得られる廃液を回収する廃液回収工程と、
前記混合部において前記廃液と前記無水アルコールを混合する混合工程と、
前記燃焼部において、前記燃料を用いて前記燻焼工程により発生るガス中の可燃物を燃焼する燃焼工程と、を含む有機物含有廃棄物の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料、燃料の製造方法、有機物含有廃棄物処理装置および有機物含有廃棄物の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
使用後のごみ袋やペットボトル等の廃ビニールや廃プラスチック、衣服、家畜等の糞尿、生ごみ、竹や木等の間伐材、野菜を収穫後の茎葉等の残渣、廃タイヤ、注射器等の医療廃棄物、下水処理場の処理過程や工場の廃液処理過程で生じる汚泥等の廃棄物は、有機物を含有する廃棄物(以下「有機物含有廃棄物」とする場合がある)の代表的なものである。
【0003】
これらの有機物含有廃棄物は、日常生活、経済活動、災害等に伴い発生するものであり、通常は、一般廃棄物や産業廃棄物として、最終処分場にて埋設や焼却等の適切な処理がされる。ただし、有機物含有廃棄物の不法投棄等による環境汚染や健康被害が発生するおそれ、最終処分場で処理する場合であっても、有機物含有廃棄物の発生に焼却や埋め立てが追い付かないこと、および最終処分場の新設や増設に反対される等の、いわゆるごみ問題が生じている。
【0004】
ごみ問題への対策としては、ごみの減量化が挙げられる。有機物含有廃棄物も同様に減量化が求められており、特に廃ビニール、廃プラスチック、廃タイヤ等は自然界では分解されないか、分解に長時間を要するため、有機物含有廃棄物を処理する処理装置を用いた積極的な分解処理が試みられている。
【0005】
有機物含有廃棄物を処理する処理装置には様々な装置があるが、その一例としては、有機物含有廃棄物を燻焼して減容化する処理装置が挙げられ(例えば、特許文献1)、例えば、ERCM(Earth-Resource-Ceramic-Machine)と呼ばれる有機物含有廃棄物処理装置が実用化されている。ERCMは、有機物含有廃棄物を燻焼することにより、従来の一般的な焼却炉の焼却灰の1/10程度の質量まで残渣を減容化することができ、装置の仕組みや構造がシンプルで故障しにくく、有機物含有廃棄物の処理コストも焼却炉に比べて低く抑えることができる装置である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第4580388号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ERCMは、その装置構成として、有機物含有廃棄物を燻焼する燻焼部、燻焼部の後段に配されて燻焼により生成する廃液を回収する廃液回収部、廃液回収部の後段に配されて燻焼により生成するガスを装置外へ排出する排気塔を備えることが一般的である。このような装置構成を備えることによって、ERCMは、燻焼により有機物含有廃棄物をセラミック等の無機物と、有機物、水等に分けることができる。無機物は残渣として燻焼炉内に残り、有機物や水はガスとなって燻焼炉より排出され、廃液回収部で冷却や洗浄されることにより、タール状の廃液となって回収される。そして、廃液回収部を通過したガスが、排気塔より排出される。
【0008】
廃液回収部で回収された廃液は、これを放流可能な状態に処理した後、下水や河川に放流されているが、放流可能な基準を満たすための廃液処理に費用がかかっており、これがERCMのランニングコストがかさむ要因となっていた。
【0009】
上記問題点に鑑み、本発明は、これまで費用をかけて処理し放流等の廃棄処分をしていた廃液を有効活用することのできる、燃料、燃料の製造方法、有機物含有廃棄物処理装置および有機物含有廃棄物の処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の燃料は、有機物含有廃棄物を燻焼して得る廃液と、含有量が20質量%以下のアルコールと、を含み、発熱量が20000~50000J/gであり、動粘性係数が50~150mm/sである。
【0011】
また、上記課題を解決するために、本発明の燃料の製造方法は、上記の燃料の製造方法であって、前記廃液と無水アルコールを混合する混合工程を含み、前記廃液と前記無水アルコールは、質量比で1:0.2以下の割合で混合する。
【0012】
前記混合工程の前に、前記廃液の発熱量を測定する発熱量測定工程を含んでもよい。
【0013】
前記廃液の発熱量が20000J/g未満の場合には、廃液中の水分を除去する水分除去工程を含んでもよい。
【0014】
前記水分除去工程後の廃液の発熱量を測定する発熱量再測定工程を含み、廃液の発熱量が20000J/g以上となるまで、前記水分除去工程と前記発熱量再測定工程を繰り返してもよい。
【0015】
前記廃液中の固形物を除去する除去工程を含んでもよい。
【0016】
また、上記課題を解決するために、本発明の有機物含有廃棄物処理装置は、有機物含有廃棄物を燻焼する燻焼部と、前記燻焼により生成する廃液を回収する廃液回収部と、前記廃液と無水アルコールを混合する混合部と、前記廃液と前記無水アルコールとの混合物を燃料として、前記燻焼により生成する排ガス中の可燃物を燃焼する燃焼部と、を備える。
【0017】
前記廃液中の固形物を除去する第1固形物除去部、または前記燃料中の固形物を除去する第2固形物除去部のいずれかを備えてもよい。
【0018】
前記燃料の粘度を管理する粘度管理部を備えてもよい。
【0019】
また、上記課題を解決するために、本発明の有機物含有廃棄物の処理方法は、上記の有機物含有廃棄物処理装置を用いた有機物含有廃棄物の処理方法であって、前記燻焼部により前記有機物含有廃棄物を燻焼する燻焼工程と、前記廃液回収部において前記燻焼工程により生成する廃液を回収する廃液回収工程と、前記混合部において前記廃液と前記無水アルコールを混合する混合工程と、前記燃焼部において、前記燃料を用いて前記燻焼工程により生成する排ガス中の可燃物を燃焼する燃焼工程と、を含む。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、これまで費用をかけて処理し放流等の廃棄処分をしていた廃液を有効活用することのできる、燃料、燃料の製造方法、有機物含有廃棄物処理装置および有機物含有廃棄物の処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】有機物含有廃棄物処理装置1000の一例を示す側面概略図である。
図2】ガス洗浄機220の側面概略図である。
図3】ガス滞留槽230の側面概略図である。
図4】ガス滞留槽230の内部構造の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の燃料、燃料の製造方法、有機物含有廃棄物処理装置および有機物含有廃棄物の処理方法について、適宜図面を参照しつつ説明する。なお、本発明は、以下の例に限定されるものではない。
【0023】
[燃料]
本発明の燃料は、廃液と、アルコールとを含む。
【0024】
〈廃液〉
燃料に含まれる廃液は、有機物含有廃棄物を燻焼して得る廃液であり、廃棄物は、炭素を含む化合物すなわち有機物を含有する。
【0025】
(有機物含有廃棄物)
有機物含有廃棄物としては、有機物を含有していれば特に限定されない。例えば「背景技術」において例示した、使用後のごみ袋やペットボトル等の廃ビニールや廃プラスチック、衣服、家畜等の糞尿、生ごみ、竹や木等の間伐材、野菜を収穫後の茎葉等の残渣、廃タイヤ、注射器等の医療廃棄物、下水処理場の処理過程や工場の廃液処理過程で生じる汚泥等が挙げられる。
【0026】
また、塗膜の付着した瓦やサイディング、釘等が刺さった状態の木製の梁や柱等の建築廃材、シュレッダーダスト(特に、自動車からのシュレッダーダスト)等、有機物と無機物が混じった状態の廃棄物も、有機物含有廃棄物である。ただし、有機物を含有していない瓦やレンガ、焼き物等の廃棄物は、有機物含有廃棄物からは除外される。
【0027】
(燻焼)
燻焼は、炎を有しない無炎燃焼であり、例えば、煙草や線香の燃焼が挙げられる。有機物含有廃棄物の熱分解で発生した可燃ガスが、周囲の酸素濃度不足等の何らかの原因で可燃性混合気を形成出来ない時に、有炎燃焼は起らず炭化した残渣の燃焼のみ、すなわち燻焼がおこる。
【0028】
燻焼により、有機物含有廃棄物は残渣としてセラミック等の無機物が残り、水分や有機物はガスとなる。廃液は、このガスとなった水分と有機物を冷却することで得られる。
【0029】
有機物含有廃棄物を燻焼して得られる廃液は、黒から褐色の粘性のある液状またはジェル状の有り姿である。
【0030】
〈アルコール〉
廃液は、その成分として、水と、液状または微細粒子状の有機物を含んでおり、比重や表面張力の違いにより、成分が均一とならずに偏っている状態や、有機物含有廃棄物の種類や長期の保存等により成分が分離した状態となっている。このような成分の偏りや分離があると、発熱量や粘度にバラつきが生じてしまい、燃料としての使用に不具合が起こるおそれがある。そこで、水と有機物とを仲介し、混ぜ合わせることのできるアルコールを、廃液と混合して燃料とすることで、成分の偏りや分離のない、成分の均一な燃料とすることができる。
【0031】
また、アルコールは、粘性のある液状またはジェル状で粘度の高い廃液の粘度を低下させ、燃料として適正な粘度に調整し、この粘度を安定させて維持することができる。
【0032】
アルコールは、有機物と水を均一にすることや、燃料として妥当な粘度に調整ができるものであれば、特に限定されないが、例えば、一価または多価であり、炭素原子数が5以下の低級アルコールが挙げられる。より具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等が挙げられる。なお、アルコールは、燃料に1種のみが含有されていてもよく、2種以上が含有されていてもよい。
【0033】
本発明の燃料における、アルコールの含有量は20質量%以下とする。燻焼処理される通常の有機物含有廃棄物において、アルコールを20質量%まで含有させれば、有機物と水を均一にすることや、燃料として妥当な粘度に調整することができる。
【0034】
なお、アルコールの含有量が20質量%を超えても、発熱量や粘度に問題のない場合もあるが、購入費用のかからない廃液よりもアルコールの割合が多くなってくると、アルコールの価格が影響して、燃料の価格が高くなるおそれがある。
【0035】
また、アルコールの含有量の下限は、有機物と水を均一にすることや、燃料として妥当な粘度に調整ができれば、特に限定されないが、廃液によってはアルコールが0.1質量%含有していれば足りる。
【0036】
〈発熱量〉
本発明の燃料は、その発熱量が20000~50000J/gである。この範囲内の発熱量は、石炭、木炭、重油等の燃料に相当する発熱量であり、これらの燃料に代えて本発明の燃料を使用することができるようになる。なお、発熱量が上記の範囲から外れると、発熱量が足りずに燃料として不十分となるおそれがある。
【0037】
〈粘度〉
本発明の燃料は、その動粘性係数が50~150mm/sである。燃料において粘度は重要であり、粘度が高いと流動性が低くなって、液体燃料を使用する汎用の装置や設備に適用することが難しくなるおそれがある。動粘性係数が上記の範囲内であれば実用的であり、燃料として十分な流動性を満足することができる。
【0038】
上記した範囲の発熱量と粘度を有することで、本発明の燃料は重油代替品に相当する液体燃料となり、例えば市販の重油バーナー等、燃料として重油や軽油等を使用する機器用の燃料として有用となる。
【0039】
(その他の成分)
本発明の燃料は、上記の廃液とアルコールに加え、更なる成分を含んでもよい。例えば、燃料の価格に影響しない範囲内で、界面活性剤や廃グリセリン等を含むことができる。
【0040】
〈燃料の発明の不可能・非実際的事情についての説明〉
本発明の燃料が含む廃液は、有機物含有廃棄物を燻焼してガスとなった水分と有機物を冷却して回収することができるが、廃液の組成やその含有比率は有機物含有廃棄物の種類や状態により変わる。そのため、廃液中の有機物の成分を全て同定し、また、成分の含有比率を所定範囲に特定することができない事情が存在する。特に、有機物の成分は多数存在することが予想され、分析機器の検出限界未満の量の微量な化学物質も、廃液には存在することが考えられる。
【0041】
例えば、有機物含有廃棄物として木材を燻焼した場合、木材を構成するリグニン、セルロース、ヘミセルロースとの分解物がガスとなり、これが冷却回収されて廃液に含まれると予想される。また、樹脂や、水溶性または油性のヤニの成分は、樹種によってさまざまであると考えられる。一方で、有機物含有廃棄物として植物油を燻焼した場合には、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等の飽和または不飽和の脂肪酸の分解物がガスとなり、廃液に含まれると予想される。これらの脂肪酸の数や比率は植物油によってさまざまである。さらに、例示した木材と植物油では、燻焼により得られる廃液中の有機物の組成や比率は、明らかに異なることが容易に予想できると認識する。
【0042】
本発明における燃料の発明(本件出願時の請求項1に記載の発明)は、「有機物含有廃棄物を燻焼して得る廃液」という記載により、物の発明に係る請求項にその物の製造方法が記載されていると認識されるおそれがある。ただし、上記のとおり、廃液の組成やその含有比率は有機物含有廃棄物の種類や状態により変わるため、本件出願時において、当該燃料をその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか、およそ実際的でないという事情があることから、当該燃料の発明は不明確ではないと判断されるべきものである。
【0043】
[燃料の製造方法]
本発明の燃料の製造方法は、上記した本発明の燃料を製造する方法であり、混合工程を含む。
【0044】
〈混合工程〉
本工程は、廃液と無水アルコールを混合する工程である。廃液と無水アルコールの混合が可能であり、混合後の廃液が成分の均一な状態となるのであれば、混合の態様は特に限定されない。例えば、所定の容器や槽に廃液と無水アルコールを入れて、これらを撹拌羽根等で混合してもよく、また、ホモジナイザー、自転公転撹拌機等を用いて混合してもよい。
【0045】
なお、廃液はその成分が不均一な場合や、分離している場合があるため、予め廃液を撹拌してから混合工程を行ってもよい。廃液の撹拌は、撹拌羽根、ホモジナイザー、自転公転撹拌機等を用いて行うことができる。
【0046】
(無水アルコール)
無水アルコールは、純度が99.0質量%以上、好ましくは99.5質量%以上、より好ましくは99.7質量%以上、特に好ましくは99.8質量%以上のアルコールであることが例示され、純度が95.0質量%以上のものであって、残部が水である場合も本発明では無水アルコールに該当する。本発明の燃料の製造方法に用いることのできる無水アルコールとしては、廃液の有機物と水を均一にすることや、燃料として妥当な粘度に調整ができるものであれば、特に限定されない。例えば、一価または多価であり、炭素原子数が5以下の無水の低級アルコールが挙げられる。より具体的には、無水のメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等が挙げられる。なお、無水アルコールは、1種のみを混合工程に用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0047】
(廃液と無水アルコールの混合比)
混合工程では、廃液と無水アルコールは、質量比で1:0.2以下の割合で混合する。燻焼処理される通常の有機物含有廃棄物において、上記質量比で1:0.2の比率となるように無水アルコールを混合すれば、有機物と水を均一にすることや、燃料として妥当な粘度に調整することができる。
【0048】
なお、上記質量比より多く無水アルコールを混合させても、燃料の発熱量や粘度に問題のない場合もあるが、購入費用のかからない廃液よりも無水アルコールの割合が多くなってくると、無水アルコールの価格が影響して、燃料の価格が高くなるおそれがある。
【0049】
また、無水アルコールの混合量の下限は、有機物と水を均一にすることや、燃料として妥当な粘度に調整ができれば、特に限定されないが、廃液によっては上記質量比が1:0.001となるように、無水アルコールを混合すれば足りる。
【0050】
〈発熱量測定工程〉
本発明の燃料の製造方法は、混合工程の前に廃液の発熱量を測定する発熱量測定工程を含んでもよい。発熱量測定工程により、廃液の発熱量が20000J/g以上あるか確認することができ、燃料を製造する際に、廃液への無水アルコールの混合量や、混合する無水アルコールの成分等を選択する目途をつけることができる。
【0051】
発熱量の測定方法としては、特に限定されないが、液体燃料の場合には、ボンベ型熱量計を用いて測定することができる。
【0052】
〈水分除去工程〉
本発明の燃料の製造方法は、廃液の発熱量が20000J/g未満の場合には、廃液中の水分を除去する水分除去工程を含んでもよい。廃液中の水分を除去することにより、発熱量を高めることができる。
【0053】
廃液中の水分の除去方法としては、特に限定されない。例えば燃料を加熱して水を蒸発させる手法や、アスピレーターによる減圧乾燥手法により、水分を除去することができる。
【0054】
〈発熱量再測定工程〉
また、本発明の燃料の製造方法は、水分除去工程後の廃液の発熱量を測定する発熱量再測定工程を含んでもよく、廃液の発熱量が20000J/g以上となるまで、水分除去工程と発熱量再測定工程を繰り返してもよい。特に、水分が多く発熱量の低い廃液を用いて、初めて燃料を製造するような場合には、
発熱量の測定と水分の除去を繰り返すことにより、所定の発熱量に設定した燃料を製造することができる。
【0055】
〈除去工程〉
本発明の燃料の製造方法は、廃液中の固形物を除去する除去工程を含んでもよい。廃液によっては、種々の大きさの異物等の固形物が混入している場合がある。このような固形物によって、燃料の製造の際や、製造後の燃料の使用の際に不具合が生じないよう、事前に固形物を除去しておくことが好ましい。
【0056】
廃液中の固形物の除去方法としては、特に限定されない。例えば、ろ紙、フィルター、メッシュ等を適宜用いて、これらによって廃液をろ過することにより、固形物を除去することができる。
【0057】
(その他の工程)
本発明の燃料の製造方法は、上記の工程に加え、更なる工程を含んでもよい。例えば、混合工程の前に廃液の粘度を測定する粘度測定工程を含むことができる。発熱量測定工程と粘度測定工程を行えば、廃液への無水アルコールの混合量や、混合する無水アルコールの成分等を選択する目途をつけることができる。
【0058】
また、発熱量測定工程により廃液の発熱量を確認した後、発熱量の異なる2種類以上の廃液を混合し、混合後の廃液の発熱量が20000J/g以上となるように調整することもできる(廃液混合工程)。
【0059】
[有機物含有廃棄物処理装置1000]
次に本発明の有機物含有廃棄物処理装置として、その一実施形態である有機物含有廃棄物処理装置1000について説明する。有機物含有廃棄物処理装置1000は、以下に説明する燻焼部100と、廃液回収部200と、混合部300と、燃焼部400と、を備える。
【0060】
〈燻焼部100〉
燻焼部100では、有機物含有廃棄物を燻焼する。これを可能とするために、燻焼部100は、有機物含有廃棄物を外部から燻焼部100内へ投入するための投入口110、投入口110より投入された有機物含有廃棄物を一次貯蔵し、適正量を後述する熱分解室140へ排出する上下段ホッパー120、二重ダンパー構造であり、大気が熱分解室へ流入することを最小化できる投入口開閉装置130、投入された有機物含有廃棄物を燻焼して熱分解する熱分解室140、熱分解に必要な空気や、熱分解室140を冷却するための空気を熱分解室140へ投入する複数の空気投入口150、燻焼後に残る無機物等の残渣Sを回収する残渣回収部160を備える。
【0061】
熱分解室140は、有機物含有廃棄物の燻焼によりガスとなった水分や有機物を燻焼部100から排出するガス排出口141を備える。ガス排出口141より排出されたガスは、配管P1を通って廃液回収部200へ送られる。
【0062】
〈廃液回収部200〉
廃液回収部200では、燻焼により生成する廃液を回収する。廃液回収部200は、廃液を回収すると共に、ガスを整流する役割も果たす。廃液回収部200は、ガス調整室210、ガス洗浄機220、ガス滞留槽230で構成されている。
【0063】
〈ガス調整室210〉
ガス調整室210は、配管P1を介して燻焼部100から送られてきたガスを滞留させる。ガス調整室210の内部は空洞であり、外気により冷却されたガス調整室210の内壁や内部の天井においてガス中の水分と有機物が結露して、これらが混じった廃液Wとなり、廃液Wはガス調整室210内部の底に溜まる。廃液Wは、配管P2を介して混合部300へ送ることができる。
【0064】
〈ガス洗浄機220〉
ガス調整室210のみでは、ガスから水分や有機物を完全に回収することができない場合があり、この場合には、ガス洗浄機220によってガスを洗浄する。具体的には、排気調整室210から排出されて配管P3を通って送られてきたガスを、湿式スクラバーで洗浄する。洗浄によりガスから水分と有機物が回収されて廃液Wとなり、廃液Wはガス洗浄機220内部の底に溜まる。廃液Wは、配管P2を介して混合部300へ送ることができる。
【0065】
スクラバーの一例を説明するべく、図2にガス洗浄機220の側面概略図を示す。配管P3を通ってガス洗浄機220に侵入したガスは、ガス洗浄機220の内部を上昇して配管P4へ排出される。ガス洗浄機220の内部には、上段、中段、下段にノズル221が3つずつ配されており、廃液Wは、ポンプ222により汲み上げられて配管P5を上昇し、各ノズル221よりガス洗浄機220の内部へ霧状に噴霧される。霧状となった廃液Wが、ガス洗浄機220の内部を上昇するガスと接触し、ガス中の水分や有機物を回収することができる。
【0066】
〈ガス滞留槽230〉
ガス洗浄機220から排出されたガスには、水分や有機物が残存している場合があり、この場合には、ガス滞留槽230でこれらを回収することができる。図3に、ガス滞留槽230の側面概略図を示す。ガス洗浄機220から排出されて配管P4を通って送られてきたガスを、ガス滞留槽230内部で垂直方向に等間隔に配された複数の回収板231に接触させ、回収板231の表面に水分と有機物を結露させる。水分と有機物が混じった廃液Wは、ガス滞留槽230内部の底に溜まる。廃液Wは、配管P2を介して混合部300へ送ることができる。
【0067】
図4に、ガス滞留槽230の内部構造の概略図を示す。1~9の番号が付された回収板231には、ガスが通過する開口部231hが設けられている。配管P4からガス滞留槽230の内部へ侵入したガスは、9つの回収板231の回収部231hを通って流出し、配管P6へ排出される。ガス滞留槽230で廃液Wをより多く回収できるよう、ガスの回収板231への接触効率を向上させるべく、開口部231hの開口する場所が回収板231によって異なっている。番号1の回収板231の開口部231hは、回収板231の左上に開いており、番号2の回収板231の開口部231hは、回収板231の右下に開いている。番号1、5、9の回収板231は同形状であり、同様に番号2と6、3と7、4と8の回収板231は同形状である。
【0068】
〈混合部300〉
混合部300では、廃液と無水アルコールを混合する。廃液は、廃液回収部200より配管P2を通って混合部300へ送られる。混合部は、廃液と無水アルコールを混合できる混合槽310を備え、混合槽310には廃液と無水アルコールを撹拌する撹拌羽根320を備えてもよい。また、混合槽310は、無水アルコールを混合槽310内に添加する用途や、サンプリングのために燃料Fを採取する用途、燃料Fを回収する用途、混合槽310内を洗浄する用途等のために、蓋つきの開口部330を備えてもよい。
【0069】
混合部300で製造された燃料Fは、配管P7を通って燃料部400へ送ることができる。
【0070】
〈燃焼部400〉
燃焼部400では、廃液と無水アルコールとの混合物を燃料Fとして、燻焼により生成する排ガス中の可燃物を燃焼する。廃液回収部200によって水分や有機物を回収された排ガス中には、若干の有機物や一酸化炭素等の可燃物が含まれる場合がある。このような可燃物を含む排ガスが、配管P6を通って燃焼部400へ導入されると、燃焼部400の重油バーナー410を用いて排ガス中の可燃物を燃焼することができる。なお、重油バーナー410に代えて、軽油やガソリン等、他の燃料を使用するバーナーを用いることができる。
【0071】
また、燃焼部400には、重油バーナー410の燃料用の燃料タンク420が備えられている。燃料タンク420には、重油を給油することもできるし、配管P7より燃料Fを給油することもできる。すなわち、重油バーナー410は重油と燃料Fを併用することができる。例えば、燃料Fを主として使用し、補助的に重油を併用することができる。
【0072】
〈第1固形物除去部500〉
有機物含有廃棄物処理装置1000は、廃液中の固形物を除去する第1固形物除去部500を備えてもよい。例えば、配管P2の途中に第1固形物除去部500を設けることにより、廃液回収部200にて異物等の固形物が混入した廃液Wを、固形物を除去した後に混合部300へ送ることができる。第1固形物除去部500は、廃液W中の固形物を除去することができるよう、ろ紙、フィルター、メッシュ等を備えることができる。
【0073】
〈第2固形物除去部600〉
また、有機物含有廃棄物処理装置1000は、燃料F中の固形物を除去する第2固形物除去部600を備えてもよい。例えば、配管P7の途中に第2固形物除去部600を設けることにより、混合部300にて異物等の固形物が混入した廃液Wを、固形物を除去した後に燃焼部400へ送ることができる。第2固形物除去部600は、廃液W中の固形物を除去することができるよう、ろ紙、フィルター、メッシュ等を備えることができる。
【0074】
有機物含有廃棄物処理装置1000は、第1固形物除去部500および第2固形物除去部600のいずれかを備える態様や、これらの両方を備える態様をとることができる。これらのいずれかを備えることで、廃液Wや燃料Fに異物が含まれることによる不具合の発生を、未然に防ぐことができる。
【0075】
〈粘度管理部700〉
有機物含有廃棄物処理装置1000は、燃料Fの粘度を管理する粘度管理部700を備えることができる。例えば、配管P7の途中であって、第2固形物除去部600と燃焼部400の間に粘度管理部700を設ければ、固形物が除去された燃料Fの粘度を測定し、管理することができる。
【0076】
粘度管理部700は、回転式や非接触式の粘度計等、好適な粘度計を備えることができる。また、燃料Fの粘度が所定範囲から外れた場合に、燃料Fの燃焼部400への供給を止めることのできる燃料供給制御手段を備えてもよい。さらに、所定範囲から外れた燃料Fを、混合部300へ送る配管P8を備えてもよい。
【0077】
(その他の構成)
有機物含有廃棄物処理装置1000は、上記の構成に加え、更なる構成を備えてもよい。例えば、燃焼部400にて可燃物を燃焼した後の排ガスを大気へ放出する煙突800等の排気塔、燃焼部400から煙突800へ排ガスを送る配管P9、煙突800の内部へ空気を送り込み、煙突800による排ガスの放出を促進するブロワ900等を含むことができる。
【0078】
[有機物含有廃棄物の処理方法]
本発明の有機物含有廃棄物の処理方法は、本発明の有機物含有廃棄物処理装置を用いた有機物含有廃棄物の処理方法であり、燻焼工程と、廃液回収工程と、混合工程と、燃焼工程と、を含む。以下、有機物含有廃棄物の処理方法の一実施形態として、有機物含有廃棄物処理装置1000を用いた処理方法について説明する。
【0079】
〈燻焼工程〉
燻焼工程は、燻焼部100により有機物含有廃棄物を燻焼する。例えば、有機物含有廃棄物を外部から投入口へ投入し、投入口開閉装置130により大気の熱分解室140への過剰な流入を制御しつつ、上下段ホッパー120を用いて適量の有機物含有廃棄物を熱分解室140へ導入する。そして、空気投入口150により熱分解室140へ投入する空気量を調製して、熱分解室140内部を燻焼に適した条件に制御することにより、有機物含有廃棄物を燻焼することができる。
【0080】
〈廃液回収工程〉
廃液回収工程は、廃液回収部200において燻焼工程により生成する廃液Wを回収する。例えば、ガス調整室210、ガス洗浄機220、ガス滞留槽230の少なくともいずれかによってガス中の有機物を結露させ、これらの底部にて液状の廃液Wを回収することができる。
【0081】
〈混合工程〉
混合工程は、混合部300において廃液Wと無水アルコールを混合する。例えば、配管P2を通って混合槽310に送られた廃液Wを撹拌羽根320で撹拌しつつ、開口部330より無水アルコールを投入し、適量の廃液Wと無水アルコールを混合することができる。これにより、燃料Fを製造することができる。
【0082】
〈燃焼工程〉
燃焼工程は、燃焼部400において、燃料Fを用いて燻焼工程により生成する排ガス中の可燃物を燃焼する。例えば、配管P7より燃料タンク420へ給油された燃料Fや、配管P7とは別に燃料タンク420に設けられた給油口より給油された燃料Fを使用し、重油バーナー410により排ガス中の可燃物を燃焼させることができる。また、燃料Fと重油や軽油等の他の燃料を混合する等により、燃料Fと他の燃料を併用して可燃物を燃焼することができる。
【0083】
(その他の工程)
本発明の有機物含有廃棄物の処理方法は、上記の工程に加え、更なる工程を含んでもよい。例えば、燃焼工程後の排ガスを煙突800から大気へ放出する放出工程等を含むことができる。
【実施例
【0084】
以下、本発明について、実施例を用いてさらに具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0085】
[有機物含有廃棄物の燻焼]
有機物含有廃棄物処理装置1000を使用し、実施例および比較例の有機物含有廃棄物を燻焼した。そして、燻焼により発生したガスから廃液を、廃液回収部200より回収した。
【0086】
[燃料の製造]
回収した廃液中の数ミリ程度の異物を除去した後、廃液と、無水アルコールまたは含水アルコールを回転式ホモジナイザーで混合し、燃料を製造した。なお、無水アルコールとしては純度99.5%のメタノール(和光純薬工業株式会社製)を使用し、含水アルコールとしては純度90%のメタノール(上記無水メタノールを蒸留水で純度90%に調製したもの)を使用した。
【0087】
[発熱量の測定]
廃液および燃料の発熱量を測定した。測定機器としては、熱研式自動ボンベ型熱量計としてCA-4AJ計測システム(株式会社島津製作所製)を使用した。
【0088】
[粘度の測定]
燃料の粘度を、デジタル粘度計((LVDV-II+pro CP)ブルックフィールド社製)を用いて測定した。そして、得られた粘度を燃料の密度で割ることにより、動粘性係数を算出した。
【0089】
[成分の偏りや分離の有無の確認]
燃料を25℃で30日貯蔵し、成分の偏りや分離の有無を確認した。貯蔵後の燃料を目視で確認し、上澄みが無く色が均一な燃料は「成分の偏りや分離は無し」、分離はしていないが色の薄い上澄みが認められる燃料は「成分の偏りや分離は有り」、2層以上の分離が認められる燃料は「成分の偏りや分離は有り」と評価した。
【0090】
[重油バーナーへの適用性]
実施例および比較例にて製造した燃料を重油バーナーへ給油し、運転した。適用性の評価としては、重油と同様に燃料として使用できた場合を〇、発熱量が低くて燃料として使用できなかった場合、粘度が適正ではなく燃料として使用できなかった場合等を×とした。
【0091】
実施例により燃料を製造した際に使用した有機物含有廃棄物およびアルコールの種類、廃液とアルコールの混合比、燃料の発熱量および粘度について、表1にまとめた。
【0092】
【表1】
【0093】
表1の結果より、実施例1~3において得られた燃料の発熱量や動粘性係数、分離等に問題は無く、重油バーナーへの適用性を有した。また、燃料は分離しなかった。これらの結果より、有機物含有廃棄物を燻焼して得た、十分な発熱量を有する廃液に、無水アルコールを所定量混合することで、有用な燃料となること、およびその燃料は貯蔵安定性を満足することがわかった。
【0094】
一方、比較例1の場合は、廃液の発熱量が低いため、無水アルコールと混合して燃料化することはしなかった。
【0095】
比較例2では、無水アルコールの混合量が足りず、燃料として適正な動粘性係数とならず、バーナーへの適用性を満足しなかった。
【0096】
比較例3、4では、発熱量の廃液に無水アルコールを添加することで、燃料としての発熱量を上げることができることを確認した。ただし、燃料として十分な発熱量とするためには、無水アルコールを過剰に混合する必要があることがわかり、使用できる燃料を得るためには、その燃料の価格が高くなってしまうことがわかった。
【0097】
比較例5は、実施例2と同じ廃プラスチックが廃棄物であり、得られる廃液も実施例2と同じものであるが、無水アルコールは使用せずに含水アルコールを混合した例である。比較例5では、含水アルコールを混合したことで貯蔵による燃料の分離が認められた。燃料を再撹拌すれば、撹拌直後は分離していないためにバーナーへの適用性を満足するが、燃料タンク中で経時にて分離する可能性を考慮し、×の判定とした。
【0098】
比較例6では、廃棄物が下水汚泥であるため、廃液中の水分量が多く廃液の発熱量がかなり低いため、無水アルコールと混合して燃料化することはしなかった。ただし、同様に廃棄物が下水汚泥である比較例4では、無水アルコール添加することで燃料の発熱量が上がったことを考慮すると、廃液中の水分を除去すれば廃液の発熱量を上げることができるため、水分量の多い廃液であっても、水分を除去してから無水アルコールと混合すれば、バーナーへの適用性を満足する燃料が得られることの示唆が得られたといえる。
【0099】
なお、燃料の分離の有無の評価について、純度99.5%のメタノールに代えて、純度99.5%のエタノール、純度95.5%のエタノールおよび純度99.0%の1-ブタノールを用いた場合にも、純度99.5%の無水メタノールと同様に分離しなかった。
【0100】
以上より、本発明であれば、これまで費用をかけて処理し放流等の廃棄処分をしていた廃液を、燃料として有効活用することができることは、明らかである。
【符号の説明】
【0101】
100 燻焼部
110 投入口
120 上下段ホッパー
130 投入口開閉装置
140 熱分解室
141 ガス排出口
150 空気投入口
160 残渣回収部
200 廃液回収部
210 ガス調整室
220 ガス洗浄機
221 ノズル
222 ポンプ
230 ガス滞留槽
231 回収板
231h 開口部
300 混合部
310 混合槽
320 撹拌羽根
330 開口部
400 燃焼部
410 重油バーナー
420 燃料タンク
500 第1固形物除去部
600 第2固形物除去部
700 粘度管理部
800 煙突
900 ブロワ
1000 有機物含有廃棄物処理装置
P1 配管
P2 配管
P3 配管
P4 配管
P5 配管
P6 配管
P7 配管
P8 配管
P9 配管
S 残渣
図1
図2
図3
図4