(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】標的システム
(51)【国際特許分類】
F41J 5/06 20060101AFI20240312BHJP
A63F 9/02 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
F41J5/06
A63F9/02 B
(21)【出願番号】P 2020110268
(22)【出願日】2020-06-26
【審査請求日】2023-06-26
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 ウェブサイトの掲載日 令和1年7月4日 ウェブサイトのアドレス http://eitech.co.jp/sub12.html http://eitech.co.jp/sub15.html
(73)【特許権者】
【識別番号】512198660
【氏名又は名称】株式会社エイテック
(74)【代理人】
【識別番号】100121131
【氏名又は名称】西川 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082131
【氏名又は名称】稲本 義雄
(72)【発明者】
【氏名】永井 克己
【審査官】大宮 功次
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3162469(JP,U)
【文献】特開平09-280795(JP,A)
【文献】特開2019-203642(JP,A)
【文献】特開2014-025677(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0341869(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第105651121(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F41J 5/06
A63F 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的を正面から見て、前記標的を囲う形状に形成された枠体と、
前記枠体の前面側の開口を覆うように前記枠体に取り付けられ、前記標的に向かって飛翔する飛翔物体の衝突を撓むことによって受け止める軟質の部材により構成される標的板と
を有する標的装置を備え、
前記標的板には、前記枠体の外形よりも外側に延在する外周部分が設けられる
標的システム。
【請求項2】
前記枠体の上辺に載置するように配置され、前記飛翔物体の衝突を検出するための信号処理を行う信号処理基板が収納されているコントロールユニット
をさらに備え、
前記標的板の上辺側の前記外周部分は、前記コントロールユニットの高さ以上となるまで前記枠体の上辺よりも上側に延在する
請求項1に記載の標的システム。
【請求項3】
前記標的板の外周部分の少なくとも一部は、前記枠体の前面に固定されずに、前記枠体の側面に対して固定される
請求項1に記載の標的システム。
【請求項4】
前記標的板の外周部分の少なくとも一部は、前記枠体の前面に向かって押さえ込まれるとともに、前記枠体の側面に対して固定される
請求項1に記載の標的システム。
【請求項5】
前記標的板の外周部分の少なくとも一部は、前記枠体の前面に固定されずに、前記枠体の背面に対して固定される
請求項1に記載の標的システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、標的システムに関し、特に、より機能性を高めることができるようにした標的システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プラスチック製の弾丸(以下、BB(Ball Bullet)弾と称する)を低圧の圧縮空気などで発射する機構を備えたトイガンであるソフトエアガンを使用して標的を射撃し、標的にBB弾が着弾したときの着弾位置に応じて得られるスコアを競う射撃競技が行われている。このような射撃競技では、BB弾の着弾位置を正確に検出することが重要である。
【0003】
そこで、本願出願人は、シート状の標的板にBB弾が着弾したときに発生する衝撃波を検出することで、標的板に着弾したBB弾の着弾位置や着弾速度、エネルギーなどを正確に算出することができる標的システムを提案している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来の標的システムよりも、標的装置の周囲をBB弾から保護する保護性を高めたり、BB弾の着弾を検出する検出性を高めたりするなど、さらなる機能性の向上が求められている。
【0006】
本開示は、このような状況に鑑みてなされたものであり、より機能性を高めることができるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一側面の標的システムは、標的を正面から見て、前記標的を囲う形状に形成された枠体と、前記枠体の前面側の開口を覆うように前記枠体に取り付けられ、前記標的に向かって飛翔する飛翔物体の衝突を撓むことによって受け止める軟質の部材により構成される標的板とを有する標的装置を備え、前記標的板には、前記枠体の外形よりも外側に延在する外周部分が設けられる。
【0008】
本開示の一側面においては、枠体は、標的を正面から見て、標的を囲う形状に形成されており、標的板は、枠体の前面側の開口を覆うように枠体に取り付けられ、標的に向かって飛翔する飛翔物体の衝突を撓むことによって受け止める軟質の部材により構成される。そして、標的板には、枠体の外形よりも外側に延在する外周部分が設けられている。
【発明の効果】
【0009】
本開示の一側面によれば、より機能性を高めることができる。
【0010】
なお、ここに記載された効果は必ずしも限定されるものではなく、本開示中に記載されたいずれかの効果であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本技術を適用した標的システムの一実施の形態の構成例を示す図である。
【
図7】標的装置の右端近傍を拡大して示す図である。
【
図9】標的装置の右端近傍の断面構造を示す図である。
【
図12】標的装置の右端近傍を拡大して示す図である。
【
図16】標的装置の右端近傍を拡大して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本技術を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0013】
<標的システムの構成例>
図1は、本技術を適用した標的システムの一実施の形態の構成例を示す図である。
【0014】
図1に示すように、標的システム11は、標的装置12、表示装置13、およびノートブック型パーソナルコンピュータ(以下、ノートPC(Personal Computer)と称する)14を備えて構成される。
【0015】
例えば、標的装置12は、表示装置13の前方に配置され、ノートPC14は、射撃を行うユーザの手元に配置される。そして、標的システム11では、標的装置12およびノートPC14が、通信ケーブル15を介して接続されており、表示装置13およびノートPC14が、映像ケーブル16を介して接続されている。なお、これらがワイヤレスで接続される構成を採用してもよい。
【0016】
例えば、標的システム11では、ユーザがノートPC14の本体部21を操作して、射撃を行う際の標的を表す標的画像TをノートPC14の表示部22に表示させるとともに、映像ケーブル16を介して、表示装置13にも標的画像Tを表示させることができる。そして、ユーザがソフトエアガン31の銃口を標的システム11に向けて標的画像Tを狙って射撃を行うと、ソフトエアガン31から発射されたBB弾32は、
図1に示す一点鎖線に沿って飛んだ後、標的装置12に着弾する。このとき、標的システム11では、標的装置12にBB弾32が着弾した着弾位置が検出され、その着弾位置を示す着弾マークPが、標的画像Tに重畳して表示される。
【0017】
また、標的システム11では、標的装置12の前方の下側に捕集トレイ17が配置されている。そして、BB弾32が標的装置12に着弾したとき、標的装置12の標的板42(
図2乃至
図4参照)が撓むことによってBB弾32の衝突の勢いが吸収され、BB弾32は捕集トレイ17に落下する。これにより、標的装置12に着弾したBB弾32を散らばらせることなく捕集トレイ17によって回収することができる。
【0018】
このように標的システム11は構成されており、ソフトエアガン31から発射されたBB弾32が標的装置12に着弾した着弾位置を検出する検出機能、および、標的装置12に着弾したBB弾32を捕集トレイ17で回収する回収機能を備えている。
【0019】
<標的装置の第1の構成例>
図2乃至
図4を参照して、標的装置12の第1の構成例について説明する。
図2は、標的装置12の正面図であり、
図3は、標的装置12の平面図であり、
図4は、標的装置12の側面図である。
【0020】
図2乃至
図4に示すように、標的装置12は、枠体41、標的板42、背面板43、音響センサ44-1乃至44-4、および、コントロールユニット45を備えて構成される。
【0021】
例えば、標的装置12は、枠体41の前面側の開口を覆うように標的板42が取り付けられるとともに、枠体41の背面側の開口を覆うように背面板43が取り付けられた構造となっている。従って、標的装置12では、枠体41の奥行きに応じた間隔D(
図4参照)で標的板42および背面板43が略平行に配置され、枠体41、標的板42、および背面板43によって閉鎖的な空間が設けられる。そして、その閉鎖的な空間内に、音響センサ44-1乃至44-4が配置される。また、標的装置12は、枠体41の上部に、標的装置12を表示装置13に装着するのに利用される主固定板46並びに補助固定板47-1および47-2が固定されており、主固定板46の上面に対してコントロールユニット45が載置された構造となっている。
【0022】
枠体41は、正面から見て矩形形状に形成され、
図1の表示装置13に表示される標的画像Tを囲うような形状の枠である。例えば、枠体41は、
図1の表示装置13の外形と同程度の大きさとなる高さおよび幅の四辺によって形成され、その四辺は、断面形状がコ字状の直線的に形成された部材によって構成される。
【0023】
標的板42は、枠体41の前面側の開口を覆うように枠体41に取り付けられ、ソフトエアガン31により発射されたBB弾32が着弾する際の衝突を撓むことによって受け止めることができ、BB弾32の反発を抑制する軟質なシート状の部材からなる。また、標的板42には、ソフトエアガン31による射撃を行うユーザが、標的装置12に表示された標的画像Tを視認することができるように、透明な部材が採用される。例えば、標的板42には、衝撃による変形に対する復元速度が緩やかな材質として、厚み3.0mmの軟質の塩化ビニル樹脂などを使用することが好ましい。また、標的板42は、標的装置12の前方において略垂直となるように張った状態で全体的に平坦となるように、即ち、撓みが生じないように平面的に、枠体41の前面に取り付けられる。
【0024】
背面板43には、枠体41の背面側の開口を覆うように枠体41に対して固定され、透明で硬質な板状の部材、例えば、厚み2.0mmのPET(Polyethylene terephthalate)樹脂などを採用することができる。
【0025】
音響センサ44-1乃至44-4は、例えば、BB弾32が標的板42に着弾したときに生じる衝撃音を取得し、その取得した衝撃音の振幅の変化に従った音響信号を、図示しない信号線を介してコントロールユニット45に供給する。また、音響センサ44-1乃至44-4は、枠体41、標的板42、および背面板43により囲われる標的装置12の閉鎖的な空間において、それぞれ標的板42の四隅の近傍となる位置に配置される。例えば、
図2に示すように正面から見て、音響センサ44-1は左上隅の近傍に配置され、音響センサ44-2は右上隅の近傍に配置され、音響センサ44-3は左下隅の近傍に配置され、音響センサ44-4は右下隅の近傍に配置される。なお、以下適宜、音響センサ44-1乃至44-4それぞれを区別する必要がない場合、単に、音響センサ44と称する。
【0026】
このように、枠体41、標的板42、および背面板43により囲われる標的装置12の筐体内の閉鎖的な空間に音響センサ44を配置することによって、音響センサ44は、互いに平行に向かい合う標的板42および背面板43の間で共鳴する衝撃音を取得することができる。これにより、音響センサ44は、外部の音の影響を削減する効果を得ることができるのに加えて、例えば、太鼓やティンパニなどの打楽器が安定的な音を発生することができるのと同様に、安定的な音響信号を取得することができる。このため、音響センサ44ごとに検出値に差が生じることを抑制して、測定精度や安定性を向上させることができる。
【0027】
コントロールユニット45には、音響センサ44から供給される音響信号に対する信号処理を施し、その音響信号から、BB弾32の着弾位置や着弾速度などを検出するのに用いられる検出信号を求める信号処理基板が収納されている。例えば、信号処理基板は、音響信号を増幅して全波整流し、その振幅のピーク値を保持したピークホールド信号、および、ピークホールド信号を積分して得られる信号が基準値以上となったタイミングを示す衝撃音検出時刻信号を、検出信号として出力する信号処理を行う。そして、この検出信号は、例えば、コントロールユニット45に接続される通信ケーブル15を介して、ノートPC14に供給される。
【0028】
そして、コントロールユニット45から供給される検出信号に基づいて、ノートPC14においてBB弾32の着弾位置や着弾速度などを算出するプログラムが実行され、表示装置13および表示部22に着弾マークP(
図1参照)が表示される。なお、BB弾32の着弾位置や着弾速度などを算出する手法については、上述した特許文献1に詳細に開示されている。
【0029】
ここで、標的システム11では、枠体41の外形よりも外側に延在する外周部分が標的板42に設けられるように標的装置12が構成されている。即ち、標的装置12を正面から見た時に、枠体41の外形寸法よりも標的板42の外形寸法が大きくなるように、標的板42が加工される。例えば、上辺部分51は、枠体41の上辺よりも上側に延在する標的板42の外周部分であり、下辺部分52は、枠体41の下辺よりも下側に延在する標的板42の外周部分である。同様に、左辺部分53は、枠体41の左辺よりも左側に延在する標的板42の外周部分であり、右辺部分54は、枠体41の右辺よりも右側に延在する標的板42の外周部分である。
【0030】
このように、上辺部分51、下辺部分52、左辺部分53、および右辺部分54を標的板42の外周に設けることによって、標的装置12の周囲をBB弾32から保護する保護性を高めることができる。これにより、例えば、射撃が下手なユーザが標的システム11を使用する場合であっても、枠体41よりも広範囲を標的板42によって保護することができるので、その背後の壁などを傷める確率が低減することになる。
【0031】
特に、標的システム11は、標的板42の上辺部分51を、コントロールユニット45の高さ以上となるまで、枠体41の上辺よりも上側に延在するような構成とすることで、コントロールユニット45や通信ケーブル15のコネクタなどを確実に保護することができる。
【0032】
ここで、標的板42は、枠体41の前面に所定間隔で設けられたネジ穴に小ネジを螺合することで枠体41に対して取り付けることができるが、このとき小ネジを完全に締めつけるのではなく、若干の隙間をもって緩く取り付けることが好ましい。即ち、ある程度の動きの自由度を有するように標的板42を枠体41に対して取り付けることによって、標的システム11は、より広範囲で、例えば、枠体41の内寸と同程度の範囲で、BB弾32が標的板42に着弾した着弾位置を正確に検出することができる。また、BB弾32が標的板42に着弾する際の振動が枠体41を介して直接的に音響センサ44に伝わることが回避される(閉鎖的な空間内を音波として伝わる)ことで、標的システム11は、より高精度に着弾位置を求めることができる。
【0033】
なお、標的システム11では、
図4に示すように、主固定板46の下面(補助固定板47-1および47-2の下面についても同様)に、例えば、複数枚のゴム板からなるスペーサ61を貼着することができる。そして、標的システム11は、表示装置13の高さに合わせてスペーサ61のゴム板の枚数を変更することで、表示装置13にスペーサ61を介して標的装置12を取り付ける際の高さを調整することが可能となっている。また、スペーサ61の下側にはストッパが設けられており、ストッパの位置は、表示装置13の上面の奥行きに合わせて調整することができる。
【0034】
<標的装置の第2の構成例>
図5乃至
図9を参照して、標的装置12の第2の構成例である標的装置12Aについて説明する。
図5は、標的装置12Aの正面図であり、
図6は、標的装置12Aの平面図であり、
図8は、標的装置12Aの側面図である。また、
図7には、
図6に示す破線の円形領域が拡大して示されている。なお、標的装置12Aについて、
図2乃至
図4を参照して上述した標的装置12と共通する構成については同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0035】
標的装置12Aは、枠体41、標的板42A、背面板43、音響センサ44-1乃至44-4、コントロールユニット45、主固定板46、並びに、補助固定板47-1および47-2を備えて構成される点で、上述した標的装置12と共通する構成となっている。そして、標的装置12Aは、枠体41に対する標的板42Aの取り付け方が、上述した標的装置12と異なる構成となっている。
【0036】
即ち、標的装置12Aは、標的板42Aの少なくとも一部(下辺部分52A、左辺部分53A、および右辺部分54A)が、枠体41の前面に固定されずに枠体41の前面から浮いた状態で、枠体41の側面に対して固定されるように、標的板42Aが枠体41に取り付けられる構成となっている。具体的には、下辺部分52Aは枠体41の下側面に対して固定され、左辺部分53Aは枠体41の左側面に対して固定され、右辺部分54Aは枠体41の右側面に対して固定される。なお、上辺部分51Aは、上述した標的装置12と同様に、枠体41の上辺よりも上側に延在するように、枠体41の前面に対して固定されている。
【0037】
例えば、
図7に示すように、標的板42Aの右辺部分54Aは、小ネジ62を利用して枠体41の右側面に対して固定することができる。ここで、標的板42Aは、上述したように、軟質の塩化ビニル樹脂などのような軟質なシート状の部材からなり、フラットな状態に戻ろうとする復元力に応じた円弧状となるように前面から側面に向かって右辺部分54Aが曲げられた状態となっている。なお、図示しないが、下辺部分52Aおよび左辺部分53Aも、右辺部分54Aと同様に、それぞれ枠体41の下側面および左側面に対して固定することができる。
【0038】
従って、標的板42Aは、この円弧状に曲げられた個所で、枠体41の前面および側面の角部に接触することになり、枠体41の前面と接触することなく、枠体41の前面から浮いたような状態となる。
【0039】
これにより標的装置12Aは、従来よりも広い領域まで、例えば、枠体41の前面および側面の角部近傍の領域まで、BB弾32の着弾を検出することができるように検出性を高めることができる。例えば、従来のように、標的板が枠体の前面と接触するような構成では、標的板の背後に枠体がある周辺領域では、標的板が自由に振動することができず、その周辺領域に対するBB弾32の着弾を正確に検出することができなかった。
【0040】
これに対し、標的装置12Aは、標的板42Aが枠体41の前面から浮いたような状態となっていているため、標的板42Aは、従来では正確に検出できなかった周辺領域に対するBB弾32の着弾でも自由に振動することができる。また、標的装置12Aは、枠体41の前面側では、その角部でのみ標的板42Aが接触する構成となっているため、BB弾32が標的板42に着弾する際の振動が枠体41に伝わることを抑制することができる。従って、標的装置12Aは、正面から見たほぼ全ての領域において、BB弾32の着弾を高精度に検出することができる。
【0041】
ここで、
図9を参照して、標的装置12Aの端部構成のバリエーションについて説明する。
【0042】
図9のAには、断面形状がコ字状の枠体41を採用した構成の標的装置12Aの右端近傍の断面構造が示されている。
【0043】
図9のAに示ように、標的板42Aは、枠体41の前面および側面の角部に接触し、枠体41の前面に対して浮いた状態となるように枠体41に対して取り付けられている。そして、このような断面形状がコ字状の枠体41を採用した構成では、例えば、枠体41の前面に対して抑え込むようにネジ止めする小ネジ(
図12の小ネジ63参照)を利用することで、枠体41の前方に向かう標的板42Aの膨らみを調整することができる。これにより、例えば、標的板42Aを平坦にすることや、標的板42Aが枠体41の角部に接触しないようにすることができる。
【0044】
図9のBには、断面形状がL字状の枠体41’を採用した構成の標的装置12Aの右端近傍の断面構造が示されている。
【0045】
図9のBに示すように、断面形状がL字状の枠体41’は、枠体41’の前面で標的板42Aをネジ止めしない構成とするときに採用される。例えば、コ字状の枠体41(
図9のA)では、標的板42Aの背後に枠体41の前面があったのに対し、L字状の枠体41’では、そのような前面が障害となることなく、標的板42Aの背後に音響センサ44が配置されることになる。従って、例えば、音響センサ44が無指向性であれば、L字状の枠体41’を採用することで、正面から見たときの端部近傍まで、BB弾32が着弾したときの衝撃音が音響センサ44に届き易い構造となるので、より広い領域でBB弾32の着弾を検出することが可能となる。即ち、L字状の枠体41’を採用した構成は、コ字状の枠体41(
図9のA)を採用した構成よりも、検出可能範囲の拡大を図ることができる。
【0046】
図9のCには、断面形状がL字状の枠体41’、および、曲げ加工を施した標的板42A’を採用した構成の標的装置12Aの右端近傍の断面構造が示されている。
【0047】
図9のCに示すように、曲げ加工を施した標的板42A’は、上述した標的板42Aと比較して、枠体41の前方に向かって膨らむことがなく、より良好な美観とすることができる。例えば、熱を利用した曲げ加工を施すことにより、標的板42A’は、L字状の枠体41’の前方端部で屈曲するような形状とすることができる。そして、L字状の枠体41’を採用することで、上述したように、より広い領域でBB弾32の着弾を検出することができる。
【0048】
<標的装置の第3の構成例>
図10乃至
図13を参照して、標的装置12の第3の構成例である標的装置12Bについて説明する。
図10は、標的装置12Bの正面図であり、
図11は、標的装置12Bの平面図であり、
図13は、標的装置12Bの側面図である。また、
図12には、
図11に示す破線の円形領域が拡大して示されている。なお、標的装置12Bについて、
図2乃至
図4を参照して上述した標的装置12と共通する構成については同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0049】
標的装置12Bは、枠体41、標的板42B、背面板43、音響センサ44-1乃至44-4、コントロールユニット45、主固定板46、並びに、補助固定板47-1および47-2を備えて構成される点で、上述した標的装置12と共通する構成となっている。そして、標的装置12Bは、枠体41に対する標的板42Bの取り付け方が、上述した標的装置12と異なる構成となっている。
【0050】
また、標的装置12Bは、
図5乃至
図9を参照して上述した標的装置12Aと同様に、標的板42Bの少なくとも一部(下辺部分52B、左辺部分53B、および右辺部分54B)が、枠体41の前面に固定されずに枠体41の前面から浮いた状態で、枠体41の側面に対して固定されるように、標的板42Bが枠体41に取り付けられる構成となっている。そして、標的装置12Bは、このような枠体41の側面に対する標的板42Bの固定に加えて、枠体41の前面に向かって押さえ込まれるように、ある程度の動きの自由度を有するように標的板42Bが取り付けられている。
【0051】
例えば、
図12に示すように、標的板42Bの右辺部分54Bは、小ネジ62を利用して枠体41の右側面に対して固定することができる。さらに、標的板42Bは、小ネジ63を利用して枠体41の前面に対して、完全に締めつけるのではなく、若干の隙間をもって緩く取り付けられている。このとき、小ネジ63によって枠体41の側面方向の外側に向かって、ある程度のテンションを標的板42Bに加えることで、図示するように、標的板42Bが枠体41の角部に接触しないような状態とすることができる。なお、図示しないが、下辺部分52Bおよび左辺部分53Bも、右辺部分54Bと同様に、それぞれ枠体41の下側面および左側面に対して固定することができ、枠体41の前面に対して若干の隙間をもって緩く取り付けられている。
【0052】
従って、標的装置12Bは、標的板42Bと枠体41との接触を低減することができる結果、BB弾32が標的板42Bに着弾する際の振動が枠体41に伝わることを抑制することができ、より高精度にBB弾32の着弾を検出することができる。また、標的装置12Bは、上述したように、より広い領域でBB弾32の着弾を検出することができる。さらに、標的板42Bは、小ネジ63の締め具合を調整することで、標的板42Bの周囲が前方に向かって膨らむのを抑制することができ、上述した標的板42または標的板42Aよりも、よりフラットな平面とすることができる。
【0053】
<標的装置の第4の構成例>
図14乃至
図17を参照して、標的装置12の第4の構成例である標的装置12Cについて説明する。
図14は、標的装置12Cの正面図であり、
図15は、標的装置12Cの平面図であり、
図17は、標的装置12Cの側面図である。また、
図16には、
図15に示す破線の円形領域が拡大して示されている。なお、標的装置12Cについて、
図2乃至
図4を参照して上述した標的装置12と共通する構成については同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0054】
標的装置12Cは、枠体41、標的板42C、背面板43、音響センサ44-1乃至44-4、コントロールユニット45、主固定板46、並びに、補助固定板47-1および47-2を備えて構成される点で、上述した標的装置12と共通する構成となっている。そして、標的装置12Cは、枠体41に対する標的板42Cの取り付け方が、上述した標的装置12と異なる構成となっている。
【0055】
即ち、標的装置12Cは、標的板42Cの少なくとも一部(下辺部分52C、左辺部分53C、および右辺部分54C)が、枠体41の前面に固定されずに枠体41の前面から浮いた状態で、枠体41の背面に対して固定されるように、標的板42Cが枠体41に取り付けられる構成となっている。具体的には、下辺部分52Cは枠体41の下方を回り込んで枠体41の背面に対して固定され、左辺部分53Cは枠体41の左方を回り込んで枠体41の背面に対して固定され、右辺部分54Cは枠体41の右方を回り込んで枠体41の背面に対して固定される。なお、上辺部分51Cは、上述した標的装置12と同様に、枠体41の上辺よりも上側に延在するように、枠体41の前面に対して固定されている。
【0056】
例えば、
図16に示すように、標的板42Cの右辺部分54Cは、枠体41の右方を回り込むように半円状に曲げられて、小ネジ64を利用して枠体41の背面に対して固定することができる。ここで、標的板42Cは、フラットな状態に戻ろうとする復元力によって、枠体41の前方の角部に接触することのない形状となる。なお、図示しないが、下辺部分52Cおよび左辺部分53Cも、右辺部分54Cと同様に、それぞれ枠体41の下方および左方を回り込むように半円状に曲げられて、枠体41の背面に対して固定することができる。
【0057】
従って、標的装置12Cは、標的板42Cと枠体41との接触をさらに低減することができる結果、例えば、BB弾32が標的板42Cに着弾する際の振動が枠体41に伝わることを抑制することができ、さらに高精度にBB弾32の着弾を検出することができる。また、標的装置12Cは、標的板42Cの周辺領域における振動の自由度が増すことになり、上述したように、より広い領域でBB弾32の着弾を検出することができる。
【0058】
なお、標的装置12Cにおいても、
図12を参照して上述した小ネジ63を利用して標的板42Cを枠体41の前面に対して、完全に締めつけるのではなく、若干の隙間をもって緩く取り付ける構成を採用することができる。これにより、例えば、標的板42Cの周囲が前方に向かって膨らむのを抑制することができ、よりフラットな平面とすることができる。
【0059】
以上のように、標的装置12A乃至12Cは、標的板42A乃至42Cの外周部分を曲げることによって、枠体41の前面との接触を回避することができるので、BB弾32の着弾を検出する検出性を高め、より高精度で広範囲における検出を可能とすることができる。また、小ネジ63(
図12)を利用して、標的板42A乃至42Cが前方に膨らむことを調整することができる。
【0060】
また、標的装置12A乃至12Cは、標的板42A乃至42Cの外周部分の固定に利用する小ネジの本数を増やし、それらの小ネジどうしの間隔を狭めたり、プレートを利用して一様に枠体41に押し付けたりすることで、外周部分に対する曲げの均一性を高めることができる。これよっても、BB弾32の着弾を検出する検出性の向上を図ることができる。
【0061】
もちろん、標的板42A乃至42Cを枠体41に固定するのに小ネジを利用する方法の他、例えば、両面テープを利用して貼着したり、細長い板で押さえつけたり、スタッドを立てたりするなどの方法を採用してもよい。
【0062】
なお、標的システム11は、コントロールユニット45を着脱式としたり、小型化およびワイヤレス化したコントロールユニット45を標的装置12の内部に配置したりする構成を採用してもよい。このような構成とすることで、標的板42の上辺部分51を、枠体41の側面または背面に固定することができ、さらなる検出性の向上を図ることができる。または、コントロールユニット45を枠体41の上側に配置したまま、コントロールユニット45の両側にある標的板42の上辺部分51を部分的に、枠体41の側面または背面に固定するようにしてもよい。
【0063】
さらに、標的システム11は、表示装置13やコントロールユニット45などを、枠体41と同様に前面側に開口部が設けられた筺体に内蔵し、一体型の標的装置12としてもよい。さらに、ノートPC14と同様に、BB弾32の着弾位置や着弾速度などを算出する機能を備える演算処理基板を、その筺体に内蔵し、ボタンやスイッチ等の操作部を利用して一体型の標的装置12が単体で動作可能となるようにしてもよい。または、そのような一体型の標的装置12を、パーソナルコンピュータやリモートコントローラ、スマートフォンなどで遠隔操作するような構成としてもよい。
【0064】
また、標的システム11は、例えば、標的に対して飛翔物体を当てる任意の競技や遊戯、具体的には、ダーツ、吹き矢などの標的システムに適用してもよい。この場合、着弾マークPの代わりにダーツや吹き矢の矢を標的画像上に表示すればよく、着弾マークPに限定されることなく様々な衝突を表す画像を表示することができる。また、当然ながら、BB弾32に代わるダーツや吹き矢の矢が標的板42に刺さらないようにその先端を丸める必要がある。さらに、標的板42の強度を増せば、本発明は、トイガン(ソフトエアガン)よりも着弾時のエネルギーが強い実銃(空気銃等)の標的システムにも適用することも可能である。
【0065】
さらに、標的システム11では、標的画像Tを表示する表示部22を利用することなく、同様の標的が描かれた紙を標的装置12の背面板43に貼り付けたり、同様の標的を背面板43に描いたりしてもよい。また、背面板43または標的板42を白色などの不透明にして、プロジェクタにより背面板43または標的板42に標的画像Tを投影してもよい。
【0066】
なお、本実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。また、本明細書に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものではなく、他の効果があってもよい。
【符号の説明】
【0067】
11 標的システム, 12 標的装置, 13 表示装置, 14 ノートPC, 15 通信ケーブル, 16 映像ケーブル, 17 捕集トレイ, 21 本体部, 22 表示部, 31 ソフトエアガン, 32 BB弾, 41 枠体, 42 標的板, 43 背面板, 44 音響センサ, 45 コントロールユニット, 46 主固定板, 47 補助固定板, 51 上辺部分, 52 下辺部分, 53 左辺部分, 54 右辺部分, 61 スペーサ, 62乃至64 小ネジ