(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】固定抵抗器
(51)【国際特許分類】
H01C 1/02 20060101AFI20240312BHJP
H01C 1/032 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
H01C1/02 Z
H01C1/032
(21)【出願番号】P 2020170038
(22)【出願日】2020-10-07
【審査請求日】2023-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000215833
【氏名又は名称】帝国通信工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094226
【氏名又は名称】高木 裕
(74)【代理人】
【識別番号】100087066
【氏名又は名称】熊谷 隆
(72)【発明者】
【氏名】西山 浩二郎
(72)【発明者】
【氏名】川崎 大宇
(72)【発明者】
【氏名】森 康裕
【審査官】多田 幸司
(56)【参考文献】
【文献】実開昭53-079332(JP,U)
【文献】特開平04-206801(JP,A)
【文献】特開平09-035923(JP,A)
【文献】特開2005-093193(JP,A)
【文献】特開2014-157891(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2011-0024021(KR,A)
【文献】特開昭55-012785(JP,A)
【文献】特開昭48-002097(JP,A)
【文献】実開平04-051122(JP,U)
【文献】登録実用新案第3002569(JP,U)
【文献】特開平7-297001(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01C 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースに設けた抵抗素子収納部の開口部から、抵抗素子を収納すると共に、当該抵抗素子収納部内に充填材を充填して構成される固定抵抗器において、
前記充填材の前記開口部側の表面
がシール材で覆われている構成であり、
前記充填材は、絶縁粉の周囲を覆うワニス同士が相互に接着されて絶縁粉全体が一体に固化され且つ絶縁粉同士の間に空隙を有しており、
前記シール材は、合成樹脂中に粒径が1~10μmのアルミナ粉を含んでおり、
前記シール材の一部が、前記充填材を構成する相互に結合した絶縁粉同士の間の空隙に入り込んでいることを特徴とする固定抵抗器。
【請求項2】
請求項1に記載の固定抵抗器であって、
前記ケースは、前記開口部と、当該開口部に繋がる前記抵抗素子収納部と、前記抵抗素子に接続したリード線を挿入するリード線引出部を有し、
当該リード線引出部は、前記開口部から投影した際に前記抵抗素子収納部の周囲に設けられ、
前記開口部から前記充填材が充填され、さらに当該充填材の開口部側の表面
が前記シール材で覆われている構成であることを特徴とする固定抵抗器。
【請求項3】
請求項1に記載の固定抵抗器であって、
前記ケースは、前記開口部と、当該開口部に繋がる前記抵抗素子収納部と、前記抵抗素子に接続したリード線を挿入するリード線引出部を有し、
当該リード線引出部は、前記ケースの抵抗素子収納部の底面に設けられ、
前記開口部から前記充填材が充填され、さらに当該充填材の開口部側の表面
が前記シール材で覆われている構成であることを特徴とする固定抵抗器。
固定抵抗器。
【請求項4】
請求項1に記載の固定抵抗器であって、
前記ケースは、前記開口部と、当該開口部に繋がる前記抵抗素子収納部を有し、
前記抵抗素子に接続したリード線を前記ケースの開口部から引き出し、
前記抵抗素子を収納した前記抵抗素子収納部の前記開口部から前記充填材が充填され、さらに当該充填材の開口部側の表面
が前記シール材で覆われている構成であることを特徴とする固定抵抗器。
【請求項5】
請求項1に記載の固定抵抗器であって、
前記ケースは、その両端に前記開口部を設け、当該両開口部に繋がる前記抵抗素子収納部を有し、
前記抵抗素子に接続したリード線を前記ケース両端の開口部から引き出し、
前記抵抗素子を収納した前記抵抗素子収納部の少なくとも一方の開口部から前記充填材が充填され、さらに前記ケース両端の開口部に露出する前記充填材の両表面
が前記シール材で覆われている構成であることを特徴とする固定抵抗器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給湯器の凍結防止ヒータ用の固定抵抗器などとして用いて好適な固定抵抗器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、給湯器の通水パイプの凍結防止のため、通水パイプにヒータ用の抵抗器を取り付ける場合がある。この種の抵抗器は、例えば特許文献1の
図1,
図2などに示すように、セラミック製のケース(10)の収納部(11)内に、両端にリード線(55),(57)を接続した抵抗素子(50)を収納した上で、当該収納部(11)内に充填材(80)として液体ワニスを使用した液体セメントを充填して構成されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のように、従来は、充填材(80)として液体ワニスを使用した液体セメントを収納部(11)に充填していたが、当該液体セメントの充填後すぐに熱乾燥させると、気泡が発生して熱乾燥後に空洞ができてしまう。このため、上記気泡が発生しないように、従来、液体セメントの充填後、24時間程度自然乾燥させていたが、そうすると製品完成までに時間を要してしまうという課題があった。
【0005】
そこで本願発明者は、液体セメントの代わりに、粉体セメントを使用することを試みた。粉体セメントは、絶縁粉体の表面にワニスを塗布したものであり、これをケースの収納部内に充填した後に加熱し、前記ワニスを溶かして粉体同士を接着後、冷却・硬化(固化)させる。このように粉体セメントを使用した場合は、上記液体セメントのような長時間の自然乾燥の必要がないので、製品完成までの時間を短縮することができる。
【0006】
しかし、硬化後の粉体セメントは、相互に接着した粉体の表面が削れ易く、充填・固化した粉体セメントの表面に指などが触れるとセメントを構成する粉体が少量削れてしまう虞があった。
【0007】
また、粉体セメントは、相互に接着した粉体同士の間に微細な空隙が生じ易く、液体セメントに比べてその防水性能・絶縁性能が劣る虞もあった。
【0008】
本発明は上述の点に鑑みてなされたものでありその目的は、充填材の表面が削れることが無く、また防水性能・絶縁性能を確実に維持することができる固定抵抗器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ケースに設けた抵抗素子収納部の開口部から、抵抗素子を収納すると共に、当該抵抗素子収納部内に充填材を充填して構成される固定抵抗器において、前記充填材の前記開口部側の表面がシール材で覆われている構成であり、前記充填材は、絶縁粉の周囲を覆うワニス同士が相互に接着されて絶縁粉全体が一体に固化され且つ絶縁粉同士の間に空隙を有しており、前記シール材は、合成樹脂中に粒径が1~10μmのアルミナ粉を含んでおり、前記シール材の一部が、前記充填材を構成する相互に結合した絶縁粉同士の間の空隙に入り込んでいることを特徴としている。
本発明によれば、ケースの抵抗素子収納部内に充填した充填材の開口部側の上面をシール材によって覆うので、抵抗素子収納部内への液体又は湿気の浸入を確実に防止でき、抵抗素子の防水性・絶縁性を確実に維持することができる。
また、上記固定抵抗器の抵抗素子に通電を行って固定抵抗器を加熱した際に、前記シール材を樹脂のみで構成しておくと、当該熱によってシール材にひび割れなどが生じる虞があるが、本発明では、シール材に無機物質の充填粉を混錬しているので、樹脂材のみからなるシール材に比べ、当該シール材が加熱されても、当該シール材の表面にひび割れなどが生じにくく、強固な防水性・絶縁性を維持することができる。
特に、充填材として、粉体セメントを使用しているので、上述のように、その表面の粉体が削れ易く、また防水性・絶縁性が劣る虞があったが、本発明にかかるシール材を覆うことで、粉体の削れを確実に防止でき、同時に防水性・絶縁性を向上させることができる。また粉体セメントを使用した充填材の表面にシール材を塗布した際、当該充填材の内部にシール材の一部を染み込ませる構成にしたので、さらに防水・絶縁性能を向上させることができる。
【0010】
また本発明は、上記特徴に加え、前記ケースは、前記開口部と、当該開口部に繋がる前記抵抗素子収納部と、前記抵抗素子に接続したリード線を挿入するリード線引出部を有し、当該リード線引出部は、前記開口部から投影した際に前記抵抗素子収納部の周囲に設けられ、前記開口部から前記充填材が充填され、さらに当該充填材の開口部側の表面が前記シール材で覆われている構成であることを特徴としている。
本発明によれば、ケースの開口部の周囲の側壁からリード線を引き出すタイプの固定抵抗器において、その防水性能・絶縁性能を確実に維持することができる。
【0011】
また本発明は、上記特徴に加え、前記ケースは、前記開口部と、当該開口部に繋がる前記抵抗素子収納部と、前記抵抗素子に接続したリード線を挿入するリード線引出部を有し、当該リード線引出部は、前記ケースの抵抗素子収納部の底面に設けられ、前記開口部から前記充填材が充填され、さらに当該充填材の開口部側の表面が前記シール材で覆われている構成であることを特徴としている。
本発明によれば、ケースの抵抗素子収納部の底面からリード線を引き出すタイプの固定抵抗器において、その防水性能・絶縁性能を確実に維持することができる。
【0012】
また本発明は、上記特徴に加え、前記ケースは、前記開口部と、当該開口部に繋がる前記抵抗素子収納部を有し、前記抵抗素子に接続したリード線を前記ケースの開口部から引き出し、前記抵抗素子を収納した前記抵抗素子収納部の前記開口部から前記充填材が充填され、さらに当該充填材の開口部側の表面が前記シール材で覆われている構成であることを特徴としている。
本発明によれば、ケースの開口部からリード線を引き出すタイプの固定抵抗器において、その防水性能・絶縁性能を確実に維持することができる。
【0013】
また本発明は、上記特徴に加え、前記ケースは、その両端に前記開口部を設け、当該両開口部に繋がる前記抵抗素子収納部を有し、前記抵抗素子に接続したリード線を前記ケース両端の開口部から引き出し、前記抵抗素子を収納した前記抵抗素子収納部の少なくとも一方の開口部から前記充填材が充填され、さらに前記ケース両端の開口部に露出する前記充填材の両表面が前記シール材で覆われている構成であることを特徴としている。
本発明によれば、ケース両端の開口部からリード線を引き出すタイプの固定抵抗器において、その防水性能・絶縁性能を確実に維持することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、固定抵抗器のケース内に充填される充填材の開口部に露出する表面が削れることが無く、また固定抵抗器の防水性能・絶縁性能を確実に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図6】固定抵抗器1-2を示す図であり、
図6(a)は縦断面概略図、
図6(b)は底面図である。
【
図11】固定抵抗器1-4の製造方法説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の第1実施形態に係る固定抵抗器1-1の斜視図である。また
図3は、固定抵抗器1-1の分解斜視図である。これらの図に示すように、固定抵抗器1-1は、ケース10に設けた抵抗素子収納部11内に抵抗素子40を収納すると共に、当該抵抗素子収納部11内に充填材60を充填し、当該充填材60の上面にシール材70を塗布し、前記抵抗素子40に接続したリード線51,51をケース10の外部に引き出して構成されている。なお以下の説明において、「上」とはケース10からシール材70を見る方向をいい、「下」とはその反対方向をいうものとする。
【0017】
ケース10は、四角柱状のセラミックス製であって、その上面(天面)10aに略矩形凹状の抵抗素子収納部11を設け、またケース10の底面10cをこの抵抗器1-1によって加熱される図示しない被加熱体を当接する被装着面としている。
【0018】
抵抗素子収納部11は、抵抗素子40を収納できる寸法形状に形成されており、ケース10の上面10aにこの抵抗素子収納部11の開口部13を設けている。また抵抗素子収納部11の内底面の長手方向の両端側には、抵抗素子位置決め部19,19(
図4参照)が、当該内底面から突出して段部となるように設けられている。
【0019】
ケース10の長手方向に垂直な両側面10e,10fには、その上辺に凹溝状(略U字状)となるリード線引出部15,15が形成されている。リード線引出部15,15は、収納部11に連通しており、またその上端の溝用開口部17,17は前記開口部13に繋がっている。リード線引出部15,15は、言い換えれば、ケース10を開口部13から投影した際に、当該ケース10の抵抗素子収納部11(または開口部13)の周囲に設けられている。リード線引出部15の幅寸法は、リード線51の外径寸法とほぼ同じ寸法に形成されている。またリード線引出部15の内底面は、リード線51の外径寸法形状とほぼ同一内径寸法形状の半円弧状に形成されている。
【0020】
抵抗素子(固定抵抗器)40は、円柱状の絶縁棒の外周に抵抗線を巻き付け、その両端に金属製のキャップ41,41を被せ、その際、リード線51,51から引き出した電線53,53をキャップ41,41に挟み込み、この状態でキャップ41,41の外周側面をかしめて構成されている。なお抵抗素子40の構造がこの実施形態の構造に限定されないことは言うまでもない。
【0021】
充填材60は、この実施形態では、粉体セメントを用いている。粉体セメントとは、粒径の異なる複数種類の絶縁粉(この例では珪石の粉)にワニスを塗布した粉体であり、熱を加えることでワニスを溶融して粉体同士を相互に結合して接着し、冷却することで一体に固化するものである。
【0022】
シール材70は、所定重量の無機物質からなる充填粉を混錬した合成樹脂(シリコン樹脂、シリコンゴム)によって構成されている。この実施形態では、無機物質からなる充填粉として、アルミナ粉を用い、またその粒径は1~10μm程度としている。
【0023】
次に、固定抵抗器1-1の製造方法を説明する。
図2及び
図4,
図5は、固定抵抗器1-1の製造方法説明図であり、
図4,
図5は
図1のA-A概略断面図である。まず、
図2,
図4に示すように、ケース10の開口部13から抵抗素子収納部11内に抵抗素子40を収納し、その際、抵抗素子40の両端に接続された一対のリード線51,51をそれぞれケース10の各リード線引出部15,15に挿入(圧入)する。このとき、抵抗素子40は、一対の抵抗素子位置決め部19,19の間に挿入されて位置決めされる。
【0024】
次に、
図5に示すように、抵抗素子40を収納した抵抗素子収納部11内に充填材60を充填する。このとき、両リード線引出部15,15内にも充填材60を満たす。そしてこの充填材60を加熱乾燥して粉体同士を接着・一体化した後に冷却して固化する。これによって、抵抗素子40は密封される。
【0025】
次に、
図5に示すように、充填材60の開口部13側の表面に、当該表面を覆うように液体状のシール材70を塗布する。このときシール材70の一部は、充填材60の内部に染み込む。そしてこのシール材70を自然乾燥させる。これによって固定抵抗器1-1が完成する。なお上記組立手順はその一例であり、他の各種異なる組立手順を用いて組み立てても良いことはいうまでもない。
【0026】
そして組み立てられた固定抵抗器1-1は、例えば給湯器用の熱交換器の通水パイプの外周面に、その底面(被装着部)10cが当接するように装着される。そして一対のリード線51,51間に通電を行えば、抵抗素子40が加熱され、通水パイプが加熱され、その凍結が防止される。
【0027】
固定抵抗器1-1を加熱した際、前記シール材70が樹脂のみによって構成されていると、当該熱(例えば270℃~350℃程度)によってシール材70にひび割れなどが生じる虞があった。しかし上記固定抵抗器1-1では、シール材70に無機物質の充填粉を混錬しているので、樹脂材のみからなるシール材に比べ、当該シール材70が加熱されても、シール材70の表面にひび割れなどが生じる虞は大きく減少した。
【0028】
以上説明したように、固定抵抗器1-1は、ケース10の抵抗素子収納部11内に充填した充填材60の開口部13側の表面を覆うようにシール材70を塗布しているので、抵抗素子収納部11内への液体又は湿気の浸入を確実に防止でき、ケース10内部の抵抗素子40の防水・絶縁を確実に維持することができる。特に、この実施形態では、充填材60として使用している粉体セメントの防水性が、液体セメントに比べて良いとは言えない。即ち、液体セメントによる充填材は内部が密に固まっているが、粉体セメントによる充填材は内部が粗な状態に固まっているので、液体セメントに比べて防水性・絶縁性が低く、このためシール材70による効果は大きい。また充填材60として粉体セメントを使用した場合は、その表面が削れ易くなるが、当該表面をシール材70で覆うので、前記削れが生じることはなくなる。また当該粉体セメントを使用した充填材60の内部にシール材70の一部を染み込ませておくことで、さらに防水・絶縁性能を向上させることができる。
【0029】
また上述したように、上記固定抵抗器1-1の抵抗素子40に通電を行って固定抵抗器1-1を加熱した際に、前記シール材70を樹脂のみで構成しておくと、当該熱によってシール材70にひびなどが入る虞があった。しかし本実施形態では、シール材70に無機物質の充填粉を混錬しているので、樹脂材のみからなるシール材に比べ、当該シール材70が加熱されても、シール材70の表面にひび割れなどが生じる虞は大きく減少し、強固な防水性能・絶縁性能を維持することができる。
【0030】
〔第2実施形態〕
図6は、本発明の第2実施形態に係る固定抵抗器1-2を示す図であり、
図6(a)は縦断面概略図、
図6(b)は底面図である。また
図7は、固定抵抗器1-2の製造方法説明図である。固定抵抗器1-2において、前記
図1~
図5に示す固定抵抗器1-1と同一又は相当部分には同一符号を付す(但し、各符号には添え字「-2」を付す)。なお以下で説明する事項以外の事項については、前記
図1~
図5に示す実施形態と同じである。
【0031】
固定抵抗器1-2において、上記固定抵抗器1-1と相違する主な点は、ケース10-2の構造である。即ち、ケース10-2は、円柱状のセラミックス製であって、その上面(天面)10a-2に略円形凹状の抵抗素子収納部11-2を設け、またケース10-2の抵抗素子収納部11-2の底面に貫通孔からなるリード線引出部15-2を設けて構成されている。リード線引出部15-2は、抵抗素子収納部11-2に連通しており、2本のリード線51-2,51-2を挿通する寸法形状に形成されている。
【0032】
そして、固定抵抗器1-2を製造するには、
図7に示すように、予め抵抗素子40-2の両端に接続された一対のリード線51-2,51-2を抵抗素子収納部11-2の開口部13-2側(下向き)に向くようにした状態で、ケース10-2の開口部13-2から両リード線51-2,51-2と抵抗素子40-2を抵抗素子収納部11-2内に収納し、両リード線51-2,51-2をリード線引出部15-2から外部に引き出す。
【0033】
次に、抵抗素子40-2を収納した抵抗素子収納部11-2内に開口部13-2側から充填材60-2を充填する。そしてこの充填材60-2を加熱乾燥して粉体同士を接着・一体化した後に冷却して固化する。これによって、抵抗素子40-2は密封される。
【0034】
次に、充填材60-2の開口部13-2側の表面に、当該表面を覆うようにシール材70-2を塗布し、自然乾燥させる。これによって固定抵抗器1-2が完成する。なお上記組立手順はその一例であり、他の各種異なる組立手順を用いて組み立てても良いことはいうまでもない。
【0035】
そして組み立てられた固定抵抗器1-2の一対のリード線51-2,51-2間に通電を行えば、抵抗素子40-2が加熱され、例えばヒータとして使用される。
【0036】
以上説明したように、固定抵抗器1-2は、ケース10-2の開口部13-2から抵抗素子収納部11-2内に充填された充填材60-2の開口部13-2側の表面を覆うようにシール材70-2を塗布したので、抵抗素子収納部11-2内への液体又は湿気の浸入を確実に防止でき、ケース10-2内部の抵抗素子40-2の防水・絶縁を確実に維持することができる。特に、この実施形態においても、充填材60-2として粉体セメントを用いているので、シール材70-2による防水性・絶縁性の効果は大きい。また充填材60-2として粉体セメントを使用した場合は、その表面が削れ易くなるが、当該表面をシール材70-2で覆うので、前記削れが生じることはなくなる。また当該粉体セメントを使用した充填材60-2の内部にシール材70-2の一部を染み込ませておくことで、さらに防水・絶縁性能を向上させることができる。
【0037】
また上記固定抵抗器1-1の場合と同様に、抵抗素子40-2に通電を行って固定抵抗器1-2を加熱した際に、前記シール材70-2を樹脂のみで構成しておくと、当該熱によってシール材70-2にひびなどが入る虞があったが、本実施形態のようにシール材70-2に無機物質の充填粉を混錬しておけば、樹脂材のみからなるシール材に比べ、当該シール材70-2が加熱されても、シール材70-2の表面にひび割れなどが生じる虞は大きく減少し、強固な防水性能・絶縁性能を維持することができる。
【0038】
なお、シール材70-2は、充填材60-2の開口部13-2側の表面を覆うように形成するだけでなく、さらに、ケース10-2のリード線51-2,51-2を引き出したリード線引出部15-2の部分を覆うように形成しても良い。
【0039】
〔第3実施形態〕
図8は、本発明の第3実施形態に係る固定抵抗器1-3の概略断面図である。また
図9は、固定抵抗器1-3の製造方法説明図である。固定抵抗器1-3において、前記
図1~
図5に示す固定抵抗器1-1と同一又は相当部分には同一符号を付す(但し、各符号には添え字「-3」を付す)。なお以下で説明する事項以外の事項については、前記
図1~
図5に示す実施形態と同じである。
【0040】
固定抵抗器1-3において、上記固定抵抗器1-1と相違する点は、ケース10-3の構造である。即ち、ケース10-3は、円柱状のセラミックス製であって、その上面(天面)10a-3に略円形凹状の抵抗素子収納部11-3を設けて構成されている。
【0041】
そして、固定抵抗器1-3を製造するには、
図9に示すように、予め抵抗素子40-3の両端に接続された一対のリード線51-3,51-3を抵抗素子収納部11-3の開口部13-3側とは反対側(上向き)に向くようにした状態で、ケース10-3の開口部13-3から抵抗素子40-3と両リード線51-3,51-3を抵抗素子収納部11-3内に収納し、両リード線51-3,51-3を開口部13-3から外部に引き出しておく。
【0042】
次に、抵抗素子40-3を収納した抵抗素子収納部11-3内に開口部13-3側から充填材60-3を充填する。そしてこの充填材60-3を加熱乾燥して粉体同士を接着・一体化した後に冷却して固化する。これによって、抵抗素子40-3は密封される。
【0043】
次に、充填材60-3の開口部13-3側の表面に、当該表面を覆うようにシール材70-3を塗布し、自然乾燥させる。これによって固定抵抗器1-3が完成する。なお上記組立手順はその一例であり、他の各種異なる組立手順を用いて組み立てても良いことはいうまでもない。
【0044】
そして組み立てられた固定抵抗器1-3の一対のリード線51-3,51-3間に通電を行えば、抵抗素子40-3が加熱され、例えばヒータとして使用される。
【0045】
以上説明したように、固定抵抗器1-3は、ケース10-3の開口部13-3から抵抗素子収納部11-3内に充填された充填材60-3の開口部13-3側の表面を覆うようにシール材70-3を塗布したので、抵抗素子収納部11-3内への液体又は湿気の浸入を確実に防止でき、ケース10-3内部の抵抗素子40-3の防水・絶縁を確実に維持することができる。特に、この実施形態においても、充填材60-3として粉体セメントを用いているので、シール材70-3による防水性・絶縁性の効果は大きい。また充填材60-3として粉体セメントを使用した場合は、その表面が削れ易くなるが、当該表面をシール材70-3で覆うので、前記削れが生じることはなくなる。また当該粉体セメントを使用した充填材60-3の内部にシール材70-3の一部を染み込ませておくことで、さらに防水・絶縁性能を向上させることができる。
【0046】
また上記固定抵抗器1-1の場合と同様に、抵抗素子40-3に通電を行って固定抵抗器1-3を加熱した際に、前記シール材70-3を樹脂のみで構成しておくと、当該熱によってシール材70-3にひびなどが入る虞があったが、本実施形態のようにシール材70-3に無機物質の充填粉を混錬しておけば、樹脂材のみからなるシール材に比べ、当該シール材70-3が加熱されても、シール材70-3の表面にひび割れなどが生じる虞は大きく減少し、強固な防水性能・絶縁性能を維持することができる。
【0047】
〔第4実施形態〕
図10は、本発明の第4実施形態に係る固定抵抗器1-4の概略断面図である。また
図11は、固定抵抗器1-4の製造方法説明図である。固定抵抗器1-4において、前記
図1~
図5に示す固定抵抗器1-1と同一又は相当部分には同一符号を付す(但し、各符号には添え字「-4」を付す)。なお以下で説明する事項以外の事項については、前記
図1~
図5に示す実施形態と同じである。
【0048】
固定抵抗器1-4において、上記固定抵抗器1-1と相違する点は、ケース10-4の構造である。即ち、ケース10-4は、筒状のセラミックス製であって、その両端に開口部13-4,13-4を設け、両開口部13-4,13-4を繋げるように、ケース10-4内部に抵抗素子収納部11-4を設けて構成されている。
【0049】
そして、固定抵抗器1-4を製造するには、
図11に示すように、両端に一対のリード線51-4,51-4を接続した抵抗素子40-4を、矢印で示すように、一方の開口部13-4から抵抗素子収納部11-4内に挿入する。これによって、ケース10-4両端の開口部13-4,13-4から両リード線51-4,51-4が外部に引き出された状態になる。
【0050】
次に、抵抗素子40-4を収納した抵抗素子収納部11-4内に、少なくとも一方の開口部13-4から充填材60-4を充填する。そしてこの充填材60-4を加熱乾燥して粉体同士を接着・一体化した後に冷却して固化する。これによって、抵抗素子40-4は密封される。
【0051】
次に、ケース10-4両端の開口部13-4に露出する充填材60-4の両表面に、当該両表面を覆うようにシール材70-4,70-4を塗布し、自然乾燥させる。これによって固定抵抗器1-4が完成する。なお上記組立手順はその一例であり、他の各種異なる組立手順を用いて組み立てても良いことはいうまでもない。
【0052】
そして組み立てられた固定抵抗器1-4の一対のリード線51-4,51-4間に通電を行えば、抵抗素子40-4が加熱され、例えばヒータとして使用される。
【0053】
以上説明したように、固定抵抗器1-4は、抵抗素子40-4を収納したケース10-4の抵抗素子収納部11-4の少なくとも一方の開口部13-4から充填材60-4を充填し、さらにケース10-4両端の開口部13-4,13-4に露出する前記充填材60-4の両表面を覆うようにシール材70-4,70-4を塗布したので、抵抗素子収納部11-4内への液体又は湿気の浸入を確実に防止でき、ケース10-4内部の抵抗素子40-4の防水・絶縁を確実に維持することができる。特に、この実施形態においても、充填材60-4として粉体セメントを用いているので、シール材70-4,70-4による防水性・絶縁性の効果は大きい。また充填材60-4として粉体セメントを使用した場合は、その表面が削れ易くなるが、当該表面をシール材70-4,70-4で覆うので、前記削れが生じることはなくなる。また当該粉体セメントを使用した充填材60-4の内部にシール材70-4の一部を染み込ませておくことで、さらに防水・絶縁性能を向上させることができる。
【0054】
また上記固定抵抗器1-1の場合と同様に、抵抗素子40-4に通電を行って固定抵抗器1-4を加熱した際に、前記シール材70-4,70-4を樹脂のみで構成しておくと、当該熱によってシール材70-4,70-4にひびなどが入る虞があったが、本実施形態のようにシール材70-4,70-4に無機物質の充填粉を混錬しておけば、樹脂材のみからなるシール材に比べ、当該シール材70-4,70-4が加熱されても、シール材70-4,70-4の表面にひび割れなどが生じる虞は大きく減少し、強固な防水性能・絶縁性能を維持することができる。
【0055】
以上本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。なお直接明細書及び図面に記載がない何れの形状や構造や材質であっても、本願発明の作用・効果を奏する以上、本願発明の技術的思想の範囲内である。例えば、本発明にかかる固定抵抗器は、ヒータ用の固定抵抗器に限定されず、ヒータ用以外の各種用途に用いる固定抵抗器に適用しても良い。また上記第1実施形態では、ケース10の長手方向の両側面10e,10fにそれぞれリード線引出部15,15を設けたが、リード線引出部を設ける側面は1つでも良く、その場合は当該1つの側面に2つのリード線引出部を設ければよい。またリード線引出部は1つだけ設けて、この1つのリード線引出部に2本のリード線を挿入しても良い。また3つ以上のリード線引出部を設け、これらにそれぞれリード線を挿入しても良い。要は、リード線引出部は、ケースの開口部から投影した際に抵抗素子収納部の周囲に設けられるものであれば、その本数は何本でもよい。また上記各実施形態では、充填材として粉体セメントを用いたが、その代わりに液体セメントを用いて固定抵抗器を構成しても良い。また、上記記載及び各図で示した実施形態は、その目的及び構成等に矛盾がない限り、互いの記載内容を組み合わせることが可能である。また、上記記載及び各図の記載内容は、その一部であっても、それぞれ独立した実施形態になり得るものであり、本発明の実施形態は上記記載及び各図を組み合わせた一つの実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0056】
1-1,1-2,1-3,1-4 固定抵抗器
10,10-2,10-3,10-4 ケース
11,11-2,11-3,11-4 抵抗素子収納部
13,13-2,13-3,13-4 開口部
15,15-2 リード線引出部
40,40-2,40-3,40-4 抵抗素子
51,51-2,51-3,51-4 リード線
60,60-2,60-3,60-4 充填材
70,70-2,70-3,70-4 シール材