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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】連結具
(51)【国際特許分類】
   F16L 37/107 20060101AFI20240312BHJP
   A62C 33/00 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
F16L37/107
A62C33/00 C
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021032050
(22)【出願日】2021-03-01
(65)【公開番号】P2022133140
(43)【公開日】2022-09-13
【審査請求日】2022-12-13
(73)【特許権者】
【識別番号】593140299
【氏名又は名称】株式会社山田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100100055
【弁理士】
【氏名又は名称】三枝 弘明
(72)【発明者】
【氏名】笠原 正司
(72)【発明者】
【氏名】笠原 宏文
【審査官】杉山 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-304185(JP,A)
【文献】実公平07-028474(JP,Y2)
【文献】特開2001-029498(JP,A)
【文献】特開2018-013185(JP,A)
【文献】特開2005-083433(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 37/107
A62C 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管路を構成する管状部と、軸方向の一端部に設けられ、他方の連結具に対して嵌合させた状態で軸周りに回転させることにより連結可能に構成された連結係合部とを具備し、
前記連結係合部は、軸方向及び半径方向に突出し、他の連結具に対して連結可能な複数の突出係合部を軸周りに有し、
前記管状部と前記連結係合部の間に半径方向の内外に対面するように設けられた環状境界面と、前記管状部に設けられた前記環状境界面に開口する第1の嵌合凹部と、前記連結係合部に設けられ、前記第1の嵌合凹部の開口と対面するように前記環状境界面に開口する第2の嵌合凹部と、前記第1の嵌合凹部と前記第2の嵌合凹部に対して共に嵌合する結合部材と、
を有し、
前記管状部と前記連結係合部とが前記結合部材を介して軸方向に係合保持され、
前記第1の嵌合凹部と前記第2の嵌合凹部のうち少なくとも一方が軸周りの環状に構成されることにより、前記管状部と前記連結係合部とが軸周りに回転可能に構成され
前記管状部と前記連結係合部の間の前記環状境界面には、前記管状部に設けられた軸方向の第1の段差部と、前記連結係合部に設けられた軸方向の第2の段差部とを有し、前記第1の段差部と前記第2の段差部が軸方向に係合するとともに、前記第1の段差部に対して前記第2の段差部が軸方向先端側に向けて当接する態様で係合する、
連結具。
【請求項2】
前記複数の突出係合部の間には、前記結合部材が配置される領域よりも軸方向先端側にある表面部分に、前記係合凸部に係合されるべき他方の連結具が挿入され嵌合する嵌合基面が形成され、前記嵌合基面よりも軸方向基端側にある前記領域を含む表面部分に、前記嵌合基面よりも肉厚で高く構成された厚肉部表面が形成される、
請求項1に記載の連結具。
【請求項3】
前記突出係合部は、前記軸方向及び半径方向に突出する部分よりも外形寸法が増大しない範囲で軸方向基端側に延長され、前記厚肉部表面に一体化される延長基部を備える、
請求項2に記載の連結具。
【請求項4】
前記延長基部は、幅方向中央に軸方向に伸びる基部側溝部を備える、
請求項3に記載の連結具。
【請求項5】
前記基部側溝部の内部には、前記第1の嵌合凹部と前記第2の嵌合凹部の内部に前記結合部材を導入するための開口部を有し、前記開口部は閉鎖部材により閉鎖される、
請求項4に記載の連結具。
【請求項6】
前記延長基部は、軸方向基端側へ向けて高さが低下する傾斜状の上縁部を備え、前記突出係合部の最も半径方向外周にある部分から軸方向基端までの距離が、当該部分から軸方向先端までの距離の2倍以上である、
請求項3-5のいずれか一項に記載の連結具。
【請求項7】
前記第2の段差部の段差量は、前記連結係合部の前記環状境界面に沿った最も厚みの小さい領域の当該厚みの10-50%の範囲内である、
請求項1-6のいずれか一項に記載の連結具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は連結具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、消防用ホース等の各種ホースや消防器具その他の各種器具等を連結するための各種の連結具が用いられている。この中には、特許文献1及び2並びに非特許文献1に記載されているように、連結具同士を挿入し、相互に所定角度回転させることによって結合するように構成された回転結合式の連結具が知られている。
【0003】
この種の連結具の一例は図6に示される。この例では、連結具10と10′にそれぞれホース20と20′の端部を締付具21と21′によって締付固定し、連結具10と10′を対向姿勢で相互に連結している。連結具10,10′は、ホース20,20′を接続する管状部11,11′と、この管状部11,11′の端部に一体に設けられた連結係合部12,12′とを備える。連結具10と10′は、図示例のように同一構造であってもよく、相互に対応するが同一構造ではなくても構わない。
【0004】
連結具10は、図7に示すように、管状部11と連結係合部12を有し、連結係合部12は、管状部11から軸方向に突出する突出爪部12aを軸周りに複数備え、この突出爪部12aには、軸周りの回転方向の一側に開口する係合凹部12bと、この係合凹部12bの基部側に突設された係合凸部12cとが設けられている。この連結具10を、上記突出爪部12aが他方の連結具10′の突出爪部と軸周りに交互に配置される姿勢で相互に組み合わせ、軸周り(図示例では右回り)に相対的に回転させると、係合凹部12bが連結具10′の図示しない係合凸部と嵌合し、係合凸部12cが連結具10′の図示しない係合凹部と嵌合することによって、軸方向に強固に連結される。そして、この状態でストッパ13、13′を突出爪部12aの間に配置することによって、図示例では左周りの相対的回転が規制され、連結状態がロックされる。逆に連結状態を解除するには、ストッパ13,13′を持ち上げて連結具10,10′を逆回転させることにより、簡単に取り外すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-090488号公報
【文献】特開2019-168092号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】「Jストーズ結合金具 仕様・取り扱い説明書」 (社)日本消防放水器具工業会 URL=http://www.jfe.or.jp/jstorz/Jstorz_doc3.pdf
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来の連結具では、図6に示すように、連結具10と10′の連結構造部分、すなわち連結係合部12,12′がコンパクトに構成できるとともに、わずかな相対的回転により着脱操作が容易であるという利点がある。しかし、大径のホース20,20′が用いられる場合には、ホースの回転抵抗により連結具10,10′の相対的回転操作が困難となり、着脱作業に苦労するという問題がある。
【0008】
そこで、本発明は上記問題を解決するものであり、その課題は、連結具のコンパクト化や軽量化を図りながら、着脱作業を容易化することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の連結具は、管路を構成する管状部と、軸方向の一端部に設けられ、他方の連結具に対して嵌合させた状態で軸周りに回転させることにより連結可能に構成された連結係合部とを具備し、前記連結係合部は、軸方向及び半径方向に突出し、他の連結具に対して連結可能な複数の突出係合部を軸周りに有し、前記管状部と前記連結係合部の間に半径方向の内外に対面するように設けられた環状境界面と、前記管状部に設けられた前記環状境界面に開口する第1の嵌合凹部と、前記連結係合部に設けられ、前記第1の嵌合凹部の開口と対面するように前記環状境界面に開口する第2の嵌合凹部と、前記第1の嵌合凹部と前記第2の嵌合凹部に対して共に嵌合する結合部材と、を有し、前記管状部と前記連結係合部とが前記結合部材を介して軸方向に係合保持され、前記第1の嵌合凹部と前記第2の嵌合凹部のうち少なくとも一方が軸周りの環状に構成されることにより、前記管状部と前記連結係合部とが軸周りに回転可能に構成される。
【0010】
本発明によれば、第1の嵌合凹部と第2の嵌合凹部に共に嵌合する結合部材を設けることにより、連結係合部が管状部に対して、結合部材を介して軸方向に係合保持された状態で、相互に回転可能に構成される。これにより、連結具の着脱操作時において、連結係合部を他方の連結具に対して回転させる際に、管状部に固定されたホースを回転させずに操作することができるため、着脱作業を容易に行うことが可能になる。また、結合部材は、管状部と連結係合部が環状境界面に開口し、相互に対面するように設けられる第1の嵌合凹部と第2の嵌合凹部の内部に配置されるため、他方の連結具との連結時において連結係合部から管状部へ加えられる連結締付力の反力が管状部から連結係合部へ作用するとき、当該反力は、管状境界面に近い位置で軸方向に加わるとともに、第1の嵌合凹部と第2の嵌合凹部により構成される空間内に配置される結合部材を介して受け止められることから、上記反力を受け止めるための剛性を高めやすくなるため、連結係合部のコンパクト化、薄型化、軽量化などを図ることが可能になる。
【0011】
本発明において、前記複数の突出係合部の間には、前記結合部材が配置される領域よりも軸方向先端側にある表面部分に、前記突出係合部に係合されるべき他方の連結具が挿入され嵌合する嵌合基面が形成され、前記嵌合基面よりも軸方向基端側にある前記領域を含む表面部分に、前記嵌合基面よりも肉厚で高く構成された厚肉部表面が形成されることが好ましい。これによれば、他方の連結具が嵌合する嵌合基面が低く、結合部材が配置される領域を含む厚肉部表面が高く構成される。このため、連結係合部の外形寸法を抑制しつつ、軸方向に係合し軸周りに回転可能に構成する前記結合部材の周囲の案内構造の剛性の低下を抑制できるので、連結係合部のコンパクト化や軽量化を妨げることもない。
【0012】
本発明において、前記突出係合部は、前記軸方向及び半径方向に突出する部分よりも外形寸法が増大しない範囲で軸方向基端側に延長され、前記厚肉部表面に一体化される延長基部を備えることが望ましい。これによれば、延長基部を備えることにより、突出係合部自体の軸方向の剛性が向上するとともに、延長基部と一体化される厚肉部表面の下にある結合部材の周囲の案内構造の剛性もさらに高められるため、連結係合部のコンパクト化や軽量化を妨げない。ここで、前記延長基部は、幅方向中央に軸方向に伸びる基部側溝部を備えることが望ましい。これによれば、延長基部と厚肉部表面の一体化構造の剛性の低下を抑制しつつ、更なる軽量化を図ることができる。この基部側溝部の内部には、前記第1の嵌合凹部と前記第2の嵌合凹部の内部に前記結合部材を導入するための開口部を設けることができ、この開口部は閉鎖部材により閉鎖される。また、前記延長基部は、軸方向基端側へ向けて高さが低下する傾斜状の上縁部を備え、前記突出係合部の最も半径方向外周にある部分から軸方向基端までの距離が、当該部分から軸方向先端までの距離の2倍以上であることが、突出係合部の剛性向上と案内構造の剛性向上の観点から望ましい。
【0013】
本発明において、前記結合部材は、前記管状部と前記連結係合部の内部に包摂されることが好ましい。
結合部材が管状部と連結係合部の内部に包摂されることにより、外部に露出しない状態となるため、第
1の嵌合凹部と第2の嵌合凹部も外部と連通することがなくなることから、管状部と連結係合部の剛性
が低下しにくくなるので、連結係合部のコンパクト化や軽量化を図ることが可能になる。
【0014】
本発明において、前記結合部材は、軸方向の両端部が凸状に構成されることが好ましい。両端部の凸状の形態としては、例えば、半球状、円錐状、角錐状、山状、三角状などが挙げられる。また、この場合の結合部材の全体形態としては、球状、回転楕円体状、八面体状、十二面体状、そろばんの駒状などが挙げられる。
【0015】
本発明において、前記結合部材は、前記第1の嵌合凹部の内面部分と前記第2の嵌合凹部の内面部分のうち少なくとも一方の内面部分に対して軸周りに転動可能に構成されることが好ましい。この場合において、前記結合部材は、前記第1の嵌合凹部の内面部分と前記第2の嵌合凹部の内面部分の双方に対して軸周りに転動可能に構成されることが望ましい。ここで、「軸周りに転動」とは、結合部材が軸周りの方向に転動しながら移動することを言う。通常、結合部材は、転動時において、軸と平行な軸線周りに回転する。
【0016】
本発明において、前記結合部材は、前記第1の嵌合凹部の内面部分と前記第2の嵌合凹部の内面部分の双方に対して軸周りに転動可能若しくは摺動可能に構成されることが好ましい。この場合の結合部材の形態としては、球状、円柱状などが挙げられる。
【0017】
本発明において、前記結合部材は、前記第1の嵌合凹部と前記第2の嵌合凹部のうちの一方に対して軸周りに保持され、前記第1の嵌合凹部と前記第2の嵌合凹部のうちの他方の内面部分に対して軸周りに転動可能若しくは摺動可能に構成されることが好ましい。
【0018】
本発明において、前記管状部と前記連結係合部の間の前記環状境界面には、前記管状部に設けられた軸方向の第1の段差部と、前記連結係合部に設けられた軸方向の第2の段差部とを有し、前記第1の段差部と前記第2の段差部が軸方向に係合することが好ましい。この場合において、前記第1の段差部に対して前記第2の段差部が軸方向先端側に向けて当接する態様で係合することが望ましい。なお、前記第1の段差部と前記第2の段差部は、前記第1の嵌合凹部と前記第2の嵌合凹部が対面する(結合部材が配置される)領域に対して軸方向の異なる位置において係合する。ここで、前記第2の段差部の段差量は、前記連結係合部の前記環状境界面に沿った最も厚みの小さい領域(例えば、前記嵌合基面が設けられる領域)の当該厚みの10-50%の範囲内であることが好ましく、20-40%の範囲内であることが望ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、連結具の連結操作時において連結係合部を管状部に対して回転可能に構成されるので、管状部に固定されたホースを回転させずに連結係合部のみを回転操作することができるため、着脱作業を容易化できる。また、結合部材の周囲の案内構造の剛性が高めやすくなることから、他の連結具との間で生ずる連結締付力に対する強度を確保するのに十分な連結係合部の管状部に対する取付強度を実現できる。このため、連結係合部を管状部に対して回転可能に構成しても、連結係合部のコンパクト性を維持できる。したがって、連結具、特に連結係合部のコンパクト化や軽量化を図りながら、着脱作業を容易化することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明に係る連結具の第1実施形態の側面一部断面図(a)、及び、軸方向の正面から見た様子を示す正面図(b)である。
図2】第1実施形態の連結係合部の側面図(a)及び正面図(b)である。
図3】第1実施形態の突出爪部の平面図(a)、a-a断面図(b)、及び、b-b断面図(c)である。
図4】第1実施形態の結合部材の導入部を背面部分に備えた突出爪部の平面図(a)、及び、縦断面図(b)である。
図5】第2実施形態の取付構造を示す縦断面図(a)、及び、結合部材の各例の斜視図(b)-(e)、並びに、第3実施形態の取付構造を示す縦断面図(f)、第4実施形態の取付構造を示す縦断面図(g)、第5実施形態の取付構造を示す縦断面図(h)、第6実施形態の取付構造を示す縦断面図(i)である。
図6】従来の連結具の結合状態を示す図である。
図7】従来の連結具の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、添付図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。最初に、図1乃至図4を参照して、本発明に係る第1実施形態を説明する。この第1実施形態の連結具100は、管状部110と連結係合部120とを有する。管状部110の円筒状の外周面のうち基端側のホース取付面111上にはホース200の端部が挿入され、このホース200の端部は、締付具210によって管状部110に対して締付固定される。なお、ホース200や締付具210は従来構造と同様であるので、それらの説明は省略する。また、図中の連結具100の軸線100xに関しては、当該軸線100xに沿った方向を軸方向、軸線100xの周りを軸周りと呼ぶ。
【0022】
本実施形態では、連結係合部120は、管状部110に対して半径方向外側に接するように環状に構成され、管状部110に対して軸周りに回転可能に取り付けられている。管状部110の外周面のうち先端側の取付外面112上には、連結係合部120の内周面である取付内面121が摺接する。取付外面112と取付内面121は相互に半径方向の内外に対向し、摺接する環状境界面CBPを構成する。管状部110の先端縁には、シール取付凹部113が設けられ、このシール取付凹部113に管状のシール材114が装着されている。また、連結係合部120には、他方の連結具(図示せず、連結具100と同一構造とすることができる。)の同様の部分と相互に軸方向に挿入され、軸周りに嵌合するように、軸方向及び半径方向に突出する突出係合部が軸周りに間隔を介して複数設けられる。各突出係合部は、係合凹部122aを備える突出爪部122と、この突出爪部122の側部に突設される係合凸部123とを含む。突出爪部122は、上記環状境界面CBP上にある連結係合部120の外周表面から軸方向に突出し、先端が屈折した形となるように、係合凹部122aが形成される。図示例では、突出爪部122は管状部110の半径方向外側から先端側へ延在し、係合凹部122aは、突出爪部122の半径方向内側に設けられる。これにより、突出爪部122の先端は鉤状に構成される。また、突出爪部122の軸周りの一方の側面部には、係合凸部123が設けられる。係合凸部123は、連結時において、図示しない他方の連結具の係合凹部に嵌合する。
【0023】
管状部110の取付外面112には、第1の嵌合凹部112aが設けられる。第1の嵌合凹部112aは、軸周りの環状溝であり、溝断面は半円状に構成される。一方、連結係合部120の取付内面121には、第2の嵌合凹部121aが設けられる。第2の嵌合凹部121aは、軸周りの環状溝であり、溝断面は半円状に構成される。第1の嵌合凹部112aと第2の嵌合凹部121aは相互に開口部分を対面させるように形成される。すなわち、第1の嵌合凹部112aと第2の嵌合凹部121aの開口は共に環状境界面CBP上の同じ位置に配置される。
【0024】
相互に半径方向の内外に対面する第1の嵌合凹部112aと第2の嵌合凹部121aによって構成される環状空間CSには、結合部材140が収容される。本実施形態では、環状空間CSは円形断面であり、結合部材140は球体である。結合部材140は、例えば、ステンレス鋼などの剛性を有する材質で構成される。ここで、上記環状空間CSをほぼ満たすように多数の球状の結合部材140が転動可能に収容される。図示例の場合、直径9mmの円形断面を備え、直径300mmの上記環状空間CS内に11/32インチ(直径8.72125mm)のベアリング球からなる結合部材140を108個程度導入している。
【0025】
上記環状境界面CBP上には、取付外面112において軸方向基端側に向いた第1の段差部112bが設けられ、取付内面121において軸方向先端側に向いた第2の段差部121bが設けられる。第1の段差部112bと第2の段差部121bは、相互に対面し、軸方向に係合した状態とされる。第1の段差部112bと第2の段差部121bが係合したとき、第1の嵌合凹部112aと第2の嵌合凹部121aとが対面した状態とされ、より具体的には、第1の嵌合凹部112aの開口位置(軸方向の位置)と、第2の嵌合凹部121aの開口位置(軸方向の位置)とが一致するように構成される。ここで、第1の段差部112bと第2の段差部121bは、第1の嵌合凹部112aと第2の嵌合凹部121aの位置決めガイドとして用いることができる。ただし、本実施形態では、第1の段差部112bに対して第2の段差部121bが軸方向先端側に当接するため、他方の連結具との間の連結時における連結締付力の反力を受け止める構造の一部としても機能する。ここで、第1の段差部112bと第2の段差部121bの係合構造は、連結係合部120の嵌合基面124の領域の厚みの半分以下、例えば、10-50%の範囲内であることが好ましく、図示のように1/3程度、例えば、20-40%の範囲内とすることが望ましい。これにより、特に、厚みを確保しにくい連結係合部120の剛性の低下を抑制できる。また、第2の段差部121bは、嵌合基面124と係合凸部123との軸方向の境界位置、並びに、突出爪部122における基部側溝部122d内の軸方向先端側の終端部の立ち上がり位置、に沿って形成される。これにより、連結係合部120の薄肉部分を低減し、剛性低下を抑制できる。なお、剛性低下を抑制する観点では、図示の第2の段差部121bを上記軸方向の各位置よりもさらに軸方向先端側に形成してもよい。
【0026】
ストッパ130は、基本構造は他の突出爪部122と同様に構成された突出爪部122′の軸周りの端部に装着される。ストッパ130は、図示例の場合、突出爪部122´の側面に取付軸131を中心に回動可能に取り付けられ、トーションばね132によって、隣接する突出爪部122の間に配置されるロック位置(図示の姿勢)となるように付勢されている。ストッパ130は、図示の状態から半径方向外側へ回動させることができ、これによって、隣接する突出爪部122との間の半径方向位置から外れ、連結状態を解除するための連結係合部120の回転操作が可能になるように構成される。
【0027】
図2は、連結係合部120の側面図(a)及び正面図(b)、図3は、突出爪部122の拡大平面図(a)、a-a断面図(b)及びb-b断面図(c)、図4は、結合部材140の導入位置にある突出爪部122の半径方向外側から見た平面図(a)及び縦断面図(b)である。なお、図2図4に示す連結係合部120は、図1に示す突出爪部122とは僅かに異なる突出爪部122の先端形状を備えるとともに、他方の連結具の突出爪部が嵌合する嵌合基面124の面形状も異なるものの、その他の部分の構造は同一である。
【0028】
突出爪部122は、軸方向先端側に上記係合凹部122aを備えた鉤状の爪形状を備える。一方、突出爪部122の軸方向基端側には、爪形状から軸方向に延在する延長基部122cを備える。延長基部122cは、図示例では、軸方向基端側へ向けて高さが低下する傾斜状の上縁部を有する。延長基部122cの幅方向中央には軸方向に伸びる基部側溝部122dが設けられている。延長基部122cは、結合部材140の周囲において、連結係合部120の半径方向の厚みを増大させずに、上記反力を受け止めるための剛性を高めるための補強構造である。また、基部側溝部122dは、連結係合部120の剛性の低下を抑制しつつ、軽量化を図るための肉抜き構造である。上記の延長基部122cは、後述する厚肉部表面125に一体化されるため、突出爪部122の軸方向の剛性を高めることができると同時に、結合部材140の周囲の案内構造の剛性をさらに高める役割を担っている。延長基部122cは、基部側溝部122dによって二つに分離される。このように、一つの突出爪部122につき、それぞれ二つの延長基部122cが設けられて厚肉部表面125と一体化されることにより、前述のように軽量化を図りつつ、突出爪部122の剛性や、厚肉部表面125の下の結合部材140を含む案内構造の剛性の低下が抑制される。なお、図3に示すように、基部側溝部122d内の表面は、厚肉部表面125と同様の高さに設定された溝内表面として構成され、嵌合基面124のような表面の低下が形成されないので、基部側溝部122dの形成による案内構造の剛性の低下はさらに抑制される。延長基部122cは、突出爪部122の最外周にある爪外周面122bよりも外形寸法を増大させない態様で形成され、また、爪外周面122bを中心として見たとき、そこから軸方向先端側の爪先端縁までの距離よりも、そこから軸方向基端側の延長基部122cの後端までの距離が(好ましくは2倍以上、図示例では3倍程度)大きくなるように構成される。
【0029】
軸周りに形成された複数の突出係合部(突出爪部122及び係合凸部123)の間には、上記係合凸部123を取り囲むように形成された嵌合基面124と、この嵌合基面124よりも高く形成された厚肉部表面125が設けられる。厚肉部表面125は、連結係合部120の軸方向基端側を厚肉に構成し、特に、上記嵌合凹部121aが設けられた部分の剛性を高める。嵌合基面124は、図示しない他方の連結具の突出爪部が係合凸部123に係合するとき、挿入時において他方の連結具の突出爪部の半径方向の内面が摺接し、最終的に相対的な回転により連結された状態で当該内面と対向し、当接(嵌合)する平面視L字状の面である。この面が厚肉部表面125より低下していることにより、突出爪部122の外形寸法を増大させずに済むので、連結係合部120の薄肉化、コンパクト化を妨げない。また、厚肉部表面125は、嵌合基面124よりも軸方向基端側に設けられ、上記環状空間CS及び結合部材140が配置(内包)される領域を含む表面部分に設けられる。このため、厚肉部表面125の下の結合部材140を含む案内構造の剛性が高められる。
【0030】
図4に示すように、上記環状空間CSは、一部(図示例では一つ)の突出爪部122の上記基部側溝部122d内に開口部122eを備え、この開口部122eから上記結合部材140を上記環状空間CS内に導入できるように構成される。開口部122eはねじ等からなる閉鎖部材141によって閉鎖され、必要に応じて閉鎖部材141はカシメや接着剤等によって固定される。なお、軸周り両側に延長基部122cを備える基部側溝部122d内に開口部122eを開口させることにより、結合部材140を含む案内構造の剛性の低下を抑制することができる。特に、図示のように、開口部122eの周囲を基部側溝部122d内の周囲の表面よりも高く突出状に構成することによって剛性の低下をさらに抑制している。
【0031】
本実施形態の連結具100では、前述のように、管状部110と連結係合部120とが半径方向の内外に取り付けられ、連結係合部120が管状部110に対して軸周りに回転可能に構成される。これによって、連結具100を他方の連結具に連結する際に軸周りに連結係合部120を回転させるとき、ホースが取り付けられた管状部110を回転させる必要がなくなるので、着脱作業を大幅に容易化できる。
【0032】
また、第1の嵌合凹部112aと第2の嵌合凹部121aの対面によって構成される環状空間CSに結合部材140が配置されることにより、環状境界面CBP上において結合部材140を介して管状部110と連結係合部120とが軸方向に保持固定される。このため、連結係合部120は、管状部110に対して環状境界面CBPに近く、ほぼ沿った方向に軸方向の上記反力を受け止めることから、コンパクトに構成しても剛性を確保しやすくなる結果、連結係合部120のコンパクト化を図ることができる。特に、本実施形態では、結合部材140の軸方向に沿った断面形状が円形であり、これにより結合部材140の上下方向中央部が第1の嵌合凹部112aと第2の嵌合凹部121aの開口縁に当接して上記反力を受け止めることとなるから、環状境界面CBPに近い場所が作用点となる。したがって、連結係合部120を半径方向に薄肉化しても、軸方向の強度により連結係合部120の剛性をさらに確保しやすくなるから、連結係合部120のコンパクト化もさらに容易である。
【0033】
さらに、上記反力は、管状部110と連結係合部120の間において、それらの間の環状境界面CBP上に位置する環状空間CS内の結合部材140を介して受け止められるため、当該反力が周囲から被覆された内部において作用することから、管状部110と連結係合部120の上記反力に対する剛性を全体として確保しやすくなる。その結果、連結具100の全体的な薄肉、軽量化が可能になり、連結係合部120のさらなるコンパクト化に寄与することができると考えられる。より具体的に言えば、環状境界面CBPは、管状部110の取付外面112と連結係合部120の取付内面121とが摺接している。この摺接領域は、上記環状空間CS及び結合部材140が配置されている部分の軸方向両側に存在するため、結合部材140の周囲構造は、管状部110及び連結係合部120により完全に包摂されていることとなる。このように上記反力を受け止める構造部分が他の構造により包摂されることにより、上記反力を受け止めるための剛性をさらに高めやすくなっていると考えられる。
【0034】
本実施形態では、第1の段差部112bと第2の段差部121bが軸方向に係合している。これにより、管状部110と連結係合部120の組み立て時において、第1の段差部112bと第2の段差部121bを軸方向に係合させることにより、第1の嵌合凹部112aと第2の嵌合凹部121aの軸方向の位置決めが完了し、支障なく結合部材140を収容可能に構成できる。また、図示例では、第1の段差部112bに対して第2の段差部121bが軸方向先端側に当接する態様で係合するので、連結締付力の反力を段差部間の係合によっても受け止めることができることから、管状部110に対する連結係合部120の軸方向の剛性をさらに高めることができる。ただし、本実施形態では、軸方向の反力は主として結合部材140により受け止められるため、第1の段差部112bと第2の段差部121bの段差量を小さくし、その結果、連結係合部120の厚みを低減可能としている。
【0035】
図5(a)-(e)は、第1実施形態とは異なる形状の結合部材142と、この結合部材142に対応する断面形状を備える環状空間CS′とを有する第2実施形態の環状境界面CBPの近傍の部分断面図(a)、及び、結合部材142の複数の形状例を示す斜視図(b)-(e)である。この第2実施形態では、結合部材142が軸方向に延長された形状を備える。そして、上記環状空間CS′も、結合部材142に対応する軸方向に延長された断面形状を備える空間とされる。この結合部材142の軸方向に延長された形状は、管状部110及び連結係合部120を半径方向(厚み方向)に増大させることがないため、コンパクト化を妨げずに構成できるという利点がある。
【0036】
結合部材142は、図5(b)及び(c)に示す結合部材142A,142Bのような円柱状に構成でき、これにより、第1実施形態と同様に、結合部材142は、環状空間CS′内で軸周りに転動可能に収容される。ここで、図5(b)に示す結合部材142Aは、結合部材140と同様に、軸方向の端部が凸形状(凸円弧状)に構成されるので、反力が環状境界面CBP上に受け止められ易くなるため、剛性を確保しやすく、コンパクト化がさらに容易になるという利点がある。また、結合部材142Bは円柱状に構成される。図5(d)及び(e)の結合部材142C及び142Dは、軸周りにも延長された形状を備えるものであり、管状部110と連結係合部120のいずれに対しても摺動可能に構成される。なお、結合部材142Cは、結合部材142Aと同様に、軸方向の両端部が軸方向に凸状(図示例では凸球面状)に構成されるので、反力が環状境界面CBP上に集中して受け止められ易くなるため、剛性を確保しやすく、コンパクト化がさらに容易になるという利点がある。凸状の両端部としては、凸球面状以外に、凸円柱状、凸楕円柱状などの凸曲面状の他に、凸三角状(楔状)、凸円錐状などが挙げられる。また、結合部材142Dはやや湾曲した直方体状である。なお、図示しないが、第1実施形態と同様に軸方向の断面が円形であるものの、軸周りには、延長された湾曲した円柱状に構成された結合部材を用いることも可能である。
【0037】
図5(f)は、結合部材143を環状境界面CBP上に配置し、この結合部材143を連結係合部120に形成された半径方向の孔に装着された保持部材144によって軸周りの特定の角度位置に保持した第3実施形態の構成例を示す。この実施形態では、結合部材143が保持部材144の先端に形成された第2の嵌合凹部に相当する保持凹部144a内に保持される。このとき、結合部材143が図示のような球状であれば、結合部材143は保持部材144に摺接した状態で管状部110に形成された環状の第1の嵌合凹部に対して転動可能に構成される。ただし、この場合、結合部材143は、保持部材144に対して固定され、管状部110に対して摺動可能に構成されていてもよい。ここで、結合部材143は、今までに言及した種々の形状の結合部材を用いることができる。
【0038】
図5(g)は、結合部材143を環状境界面CBP上に配置し、この結合部材143を管状部110に形成された半径方向の孔に装着された保持部材144′によって軸周りの特定の角度位置に保持した第3実施形態の構成例を示す。この実施形態では、結合部材143が保持部材144′の先端に形成された第1の嵌合凹部に相当する保持凹部144a′内に保持される。このとき、結合部材143が図示のような球状であれば、結合部材143は保持部材144′に摺接した状態で連結係合部120に形成された環状の第2の嵌合凹部対して転動可能に構成される。ただし、この場合、結合部材143は、保持部材144′に対して固定され、連結係合部120に対して摺動可能に構成されていてもよい。ここで、結合部材143は、今までに言及した種々の形状の結合部材を用いることができる。
【0039】
図5(h)は、連結係合部120に装着された結合部材145を示す。この結合部材145は、連結係合部120に形成された半径方向の孔からなる第2の嵌合凹部に装着され、その先端部145aが管状部110に設けられた環状の第1の嵌合凹部に摺接する。図示例では先端部145aが半球状に示されるが、管状部110の第1の嵌合凹部に対して軸周りに摺動可能であれば、任意の面形状とすることができる。もちろん、先端部145aの面形状は、第1の嵌合凹部の内面と対応する面形状であることが好ましい。
【0040】
図5(i)は、管状部110に装着された結合部材145′を示す。この結合部材145は、管状部110に形成された半径方向の孔からなる第1の嵌合凹部に装着され、その先端部145a′が連結係合部120に設けられた環状の第2の嵌合凹部に摺接する。図示例では先端部145a′が半球状に示されるが、連結係合部120の第2の嵌合凹部に対して軸周りに摺動可能であれば、任意の面形状とすることができる。もちろん、先端部145a′の面形状は、第2の嵌合凹部の内面と対応する面形状であることが好ましい。
【0041】
図5(f)及び(g)に示す結合部材143及び保持部材144,144′を用いる構成では、結合部材143が連結係合部120若しくは管状部110の特定の位置に保持されるため、連結係合部120若しくは管状部110において複数組の結合部材143及び保持部材144,144′を軸周りに分散させて配列させることが必要となる。これらの結合部材143は、管状部110と連結係合部120により完全に包摂されている。
【0042】
また、図5(h)及び(i)に示す結合部材145,145′でも、連結係合部120若しくは管状部110の特定の位置に装着されるため、連結係合部120若しくは管状部110において複数の結合部材145,145′を軸周りに分散させて配列させることが必要となる。これらの結合部材145,145′は、管状部110と連結係合部120により完全に包摂されているわけではなく、連結係合部120の外面上若しくは管状部110の内面上に露出した状態となっているが、結合部材として反力を受けとめるように機能する部分は、管状部110の第1の嵌合凹部若しくは連結係合部120の第2の嵌合凹部に接する先端部分のみであるため、実質的には管状部110及び連結係合部120により完全に包摂されている場合と同様に作用するものと考えられる。
【0043】
なお、本発明の連結具は、上述の図示例のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、上記各実施形態では、全く同一の形状、構造を備える一対の図示の連結具100同士を連結可能に構成したものであることを前提として説明しているが、完全に同一の形状、構造でなくても、同種の基本的構造を備えるものであれば、相互に着脱可能に構成される連結具として構成することが可能である。
【符号の説明】
【0044】
100…連結具、110…管状部、111…ホース装着面、112…取付外面、112a…第1の嵌合凹部、112b…第1の段差部、120…連結係合部、121…取付内面、121a…第2の嵌合凹部、121b…第2の段差部、122…突出爪部、122a…係合凹部、122b…爪外周面、122c…延長基部、122d…基部側溝部、123…係合凸部、124…嵌合基面、125…厚肉部表面、130…ストッパ、140,142,143,145,145′…結合部材、141…閉鎖部材、144,144′…保持部材、CBP…環状境界面、CS…環状空間、200…ホース、210…締付具
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7