特許 7452877 線状構造物、及び線状構造物の施工方法

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】特許公報(B2)

(11)【特許番号】

(24)【登録日】2024-03-11

(45)【発行日】2024-03-19

(54)【発明の名称】線状構造物、及び線状構造物の施工方法

(51)【国際特許分類】

   E02D 3/12 20060101AFI20240312BHJP

   E01C 3/00 20060101ALI20240312BHJP

【ＦＩ】

E02D3/12 102

E01C3/00

【請求項の数】 2

(21)【出願番号】P 2021211435

(22)【出願日】2021-12-24

(65)【公開番号】P2023095499

(43)【公開日】2023-07-06

【審査請求日】2022-06-20

【審判番号】

【審判請求日】2022-12-15

【早期審査対象出願】

(73)【特許権者】

【識別番号】512171261

【氏名又は名称】株式会社タケウチ建設

(74)【代理人】

【識別番号】100177264

【弁理士】

【氏名又は名称】柳野 嘉秀

(74)【代理人】

【識別番号】100074561

【弁理士】

【氏名又は名称】柳野 隆生

(74)【代理人】

【識別番号】100124925

【弁理士】

【氏名又は名称】森岡 則夫

(74)【代理人】

【識別番号】100141874

【弁理士】

【氏名又は名称】関口 久由

(74)【代理人】

【識別番号】100163577

【弁理士】

【氏名又は名称】中川 正人

(72)【発明者】

【氏名】竹内 謹治

【合議体】

【審判長】前川 慎喜

【審判官】住田 秀弘

【審判官】西田 秀彦

(56)【参考文献】

【文献】特開２０００－２１２９４９（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２０２０－２６４３（ＪＰ，Ａ）

【文献】国際公開第２０１５／０３７２４９（ＷＯ，Ａ１）

【文献】特開２００６－５７２４２（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２００５－１１３４６７（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２００３－２６８７９０（ＪＰ，Ａ）

(58)【調査した分野】(Int.Cl.，ＤＢ名)

E02D 3/00 - 3/12

E02D 17/18

(57)【特許請求の範囲】

【請求項1】

上面が道路又は線路として使用される、軟弱地盤上の沈下が生じる線状構造物であって、
前記線状構造物は、地表面以下の基礎構造物と、前記基礎構造物上の盛土構造物とからなり、
前記基礎構造物は、前記軟弱地盤の表層部を地盤改良した基礎地盤改良体であり、
前記基礎地盤改良体は、前記地表面以下の深さが４ｍ以下である格子状地盤改良体を含み、
前記盛土構造物は、良質土である盛土自体と固化材を混合撹拌して、良質土である盛土を地盤改良した盛土地盤改良体である、
線状構造物。

【請求項2】

上面が道路又は線路として使用される、軟弱地盤上の沈下が生じる線状構造物の施工方法であって、
前記線状構造物は、地表面以下の基礎構造物と、前記基礎構造物上の盛土構造物とからなり、
前記基礎構造物は、前記軟弱地盤の表層部を地盤改良した基礎地盤改良体であり、
前記基礎地盤改良体は、前記地表面以下の深さが４ｍ以下である格子状地盤改良体を含み、
前記盛土構造物は、良質土である盛土自体と固化材を混合撹拌して、良質土である盛土を地盤改良した盛土地盤改良体であり、
前記軟弱地盤の表層部を、バックホウによる鋤取りにより土を掘り下げ、掘り下げた前記土の一部と固化材をバックホウにより混合撹拌して地盤改良を行い、前記基礎地盤改良体の全部又は一部を構築する工程と、
構築した前記基礎地盤改良体の全部又は一部の上に、前記盛土地盤改良体の幅方向の端部から張り出すように多めに盛土をする工程と、
前記盛土と固化材をバックホウにより混合撹拌して地盤改良を行い、前記盛土地盤改良体を構築する工程と、
からなり、
前記盛土地盤改良体を構築する工程は、
前記幅方向の端部が略鉛直になる端部地盤改良部を含む地盤改良体を形成する工程と、
前記端部地盤改良部の初期強度が発現した後、前記端部地盤改良部を掘削整形して盛土法面を形成する工程と、
を含む、
線状構造物の施工方法。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、上面が道路又は線路として使用される、軟弱地盤上の線状構造物、及び前記線状構造物の施工方法に関する。

【背景技術】

【0002】

上面が道路又は線路として使用される、軟弱地盤上の線状構造物は、道路又は線路の下側に位置する盛土と、前記盛土の下側に位置する基礎構造物とからなる。

【0003】

我が国において、軟弱地盤上への道路の新設は、日本道路協会の指針である「道路土工軟弱地盤対策工指針」（非特許文献１）に基づいて行われる。

【0004】

上記指針における対策工法において、前記基礎構造物を、セメント・石灰系の添加材を軟弱地盤の表層部分の土と混合し、化学反応を利用して地盤を固結することで地盤の強度を増加させる表層混合処理工法により施工するものがある（例えば、非特許文献１のp.298-302等参照）。

【0005】

前記表層混合処理工法による前記基礎構造物は、所要改良深さを持つ厚板状に形成されるのが一般的である（例えば、非特許文献１のp.300の解図6－86参照）。前記表層混合処理工法は、使用する施工機械に応じて必要なトラフィカビリティーを確保しやすいという特徴がある（例えば、非特許文献１のp.191）。

【0006】

一方、前記基礎構造物として、格子状地盤改良体からなるものがある（例えば、特許文献１参照）。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0007】

【文献】特許第３８５３０９９号公報

【非特許文献】

【0008】

【文献】「道路土工－軟弱地盤対策工指針（平成２４年度版）」、公益社団法人日本道路協会、平成２４年８月、p.187、p.191、p.202、p.298-302

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0009】

前記表層混合処理工法により前記基礎構造物を構築する場合、工期の短縮及び施工コストの抑制を企図して、地盤改良深さをなるべく浅くすることが考えられる。地盤改良深さを浅く、例えば地表面以下の深さを４ｍ以下程度にした場合、軟弱地盤上の線状構造物には沈下の問題が生じるので、最大沈下量及び相対沈下量を小さくする必要がある。

【0010】

本発明は、上面が道路又は線路として使用される、軟弱地盤上の沈下が生じる線状構造物において、地表面以下の地盤改良深さを浅くした場合に、最大沈下量及び相対沈下量を小さくすることを目的とする。

【課題を解決するための手段】

【0011】

軟弱地盤上への道路等を新設する場合、日本道路協会の指針（非特許文献１）、及び特許文献１等の先行技術においては、何れも盛土する前の現地盤のみでの補強を考えている。

【0012】

その理由は、盛土には良質土を用いるため、良質土の盛土部分を地盤改良することは通常は考えないこと、盛土部分を地盤改良する場合、盛土端部に段差ができるため、施工（転圧や整形）が難しいこと、盛土法面の施工が困難であること等が考えられる。

【0013】

本願の発明者は、長年に亘る改良地盤の設計、並びに多数の施工実績及びそれらの評価結果を踏まえ、地表面以下の地盤改良深さをなるべく浅くしながら、最大沈下量及び相対沈下量を小さくすることができる軟弱地盤上の線状構造物の構造について鋭意検討を行った。その結果、地表面よりも上の盛土についても地盤改良を行うという着想を得、本発明を完成するに至った。

【0014】

本発明の第１観点に係る線状構造物は、上面が道路又は線路として使用される、軟弱地盤上の沈下が生じる線状構造物である。前記線状構造物は、地表面以下の基礎構造物と、前記基礎構造物上の盛土構造物とからなる。前記基礎構造物は、前記軟弱地盤の表層部を地盤改良した基礎地盤改良体である。前記基礎地盤改良体は、前記地表面以下の深さが４ｍ以下である格子状地盤改良体を含む。前記盛土構造物は、良質土である盛土自体と固化材を混合撹拌して、良質土である盛土を地盤改良した盛土地盤改良体である。

【0015】

本発明の第１観点に係る線状構造物によれば、軟弱地盤上の沈下が生じる線状構造物において、地表面以下の基礎構造物が格子状地盤改良体を含む基礎地盤改良体であり、地表面以上の盛土構造物が良質土である盛土を地盤改良した盛土地盤改良体である。現地盤の地盤改良に加えて盛土部分も地盤改良しているので、地業工事と盛土部分を一体として剛性を高めている。その上、現地盤の地盤改良が格子状地盤改良体を含んでいる。したがって、地業下現地盤に伝達する応力を分散できるので沈下量を低減できる。

【0016】

その上、基礎地盤改良体の地表面以下の深さが４ｍ以下であることから、沈下量を低減しながら、工期の短縮及び施工コストの抑制を実現できる。

【0017】

本発明の第２観点に係る線状構造物の施工方法は、上面が道路又は線路として使用される、軟弱地盤上の沈下が生じる線状構造物の施工方法である。前記線状構造物は、地表面以下の基礎構造物と、前記基礎構造物上の盛土構造物とからなる。前記基礎構造物は、前記軟弱地盤の表層部を地盤改良した基礎地盤改良体である。前記基礎地盤改良体は、前記地表面以下の深さが４ｍ以下である格子状地盤改良体を含む。前記盛土構造物は、良質土である盛土自体と固化材を混合撹拌して、良質土である盛土を地盤改良した盛土地盤改良体である。前記施工方法は、前記軟弱地盤の表層部を、バックホウによる鋤取りにより土を掘り下げ、掘り下げた前記土の一部と固化材をバックホウにより混合撹拌して地盤改良を行い、前記基礎地盤改良体の全部又は一部を構築する工程と、構築した前記基礎地盤改良体の全部又は一部の上に、前記盛土地盤改良体の幅方向の端部から張り出すように多めに盛土をする工程と、前記盛土と固化材をバックホウにより混合撹拌して地盤改良を行い、前記盛土地盤改良体を構築する工程とからなる。前記盛土地盤改良体を構築する工程は、前記幅方向の端部が略鉛直になる端部地盤改良部を含む地盤改良体を形成する工程と、前記端部地盤改良部の初期強度が発現した後、前記端部地盤改良部を掘削整形して盛土法面を形成する工程とを含む。

【0018】

本発明の第２観点に係る線状構造物の施工方法によれば、軟弱地盤の表層部を、バックホウによる鋤取りにより土を掘り下げ、掘り下げた前記土の一部と固化材をバックホウにより混合撹拌して地盤改良を行い、格子状地盤改良体を含む基礎地盤改良体の全部又は一部を構築する工程と、構築した基礎地盤改良体の全部又は一部の上に、盛土地盤改良体の幅方向の端部から張り出すように多めに盛土をする工程と、良質土である盛土と固化材をバックホウにより混合撹拌して地盤改良を行い、盛土地盤改良体を構築する工程とからなる。このような施工方法により、現地盤の地盤改良に加えて盛土部分も地盤改良しているので、地業工事と盛土部分を一体として剛性を高めている。その上、現地盤の地盤改良が格子状地盤改良体を含んでいる。したがって、地業下現地盤に伝達する応力を分散できるので沈下量を低減できる。その上、基礎地盤改良体の地表面以下の深さが４ｍ以下であることから、バックホウにより土と固化材を混合撹拌して地盤改良を行うことができるので、沈下量を低減しながら、工期の短縮及び施工コストの抑制を実現できる。

【0019】

また、盛土地盤改良体の幅方向の端部から張り出すように多めに盛土をするとともに、盛土地盤改良体を構築する工程は、盛土地盤改良体の幅方向の端部が略鉛直になる端部地盤改良部を含む地盤改良体を形成する工程と、前記端部地盤改良部の初期強度が発現した後、前記端部地盤改良部を掘削整形して盛土法面を形成する工程とを含む。したがって、盛土地盤改良体を構築する際における転圧不足を無くすことができる。その上、盛土地盤改良体の盛土法面の施工を確実に行うことができるとともに、盛土法面が強固になるので、法面崩壊を抑制できる。

【発明の効果】

【0020】

以上における線状構造物、及び線状構造物の施工方法によれば、上面が道路又は線路として使用される、軟弱地盤上の線状構造物において、地表面以下の地盤改良深さを浅くした場合に、最大沈下量及び相対沈下量を小さくすることができる。

【図面の簡単な説明】

【0021】

【図1】本発明の実施の形態に係る第１実施例の線状構造物を示す縦断面図、及び前記線状構造物の底面図である。

【図2】本発明の実施の形態に係る第２実施例の線状構造物を示す縦断面図、及び前記線状構造物の底面図である。

【図3】本発明の実施の形態に係る第３実施例の線状構造物を示す縦断面図、及び前記線状構造物の底面図である。

【図4】本発明の実施の形態に係る第４実施例の線状構造物を示す縦断面図、及び前記線状構造物の底面図である。

【図5】本発明の実施の形態に係る線状構造物の施工方法における第１工程を示す説明図である。

【図6】前記施工方法における第２工程を示す説明図である。

【図7】前記施工方法における第３工程を示す説明図である。

【図8】前記施工方法における第４工程を示す説明図である。

【図9】前記施工方法における第５工程を示す説明図である。

【図10】前記施工方法における第６工程を示す説明図である。

【図11】第１比較例の線状構造物を示す縦断面図、及び前記線状構造物の底面図である。

【図12】第２比較例の線状構造物を示す縦断面図、及び前記線状構造物の底面図である。

【図13】第３比較例の線状構造物を示す縦断面図、及び前記線状構造物の底面図である。

【図14】第４比較例の線状構造物を示す縦断面図、及び前記線状構造物の底面図である。

【発明を実施するための形態】

【0022】

以下、本発明に係る実施の形態を図面に基づいて説明する。

【0023】

以下に示す本発明の実施の形態に係る軟弱地盤上の線状構造物は、上面が道路として使用される。道路が延びる方向（道路上の車両の進行方向、図中矢印Ｆ参照）に直交する水平方向を「幅方向」（図中矢印Ｂ参照）という。

【0024】

＜線状構造物＞
図１ないし図４の線状構造物Ａを示す縦断面図、及び線状構造物Ａの底面図は、本発明の実施の形態に係る第１実施例ないし第４実施例である。図１の第１実施例及び図２の第２実施例の線状構造物Ａは、道路Ｒの幅Ｗが７ｍである例を、図３の第３実施例及び図４の第４実施例の線状構造物Ａは、道路Ｒの幅Ｗが１４ｍである例を示している。

【0025】

図１ないし図４に示すように、軟弱地盤Ｓ上の線状構造物Ａは、地表面ＧＬ以下の基礎構造物１と、基礎構造物１上の盛土構造物２とからなる。

【0026】

基礎構造物１は、軟弱地盤Ｓの表層部を地盤改良した基礎地盤改良体３である。基礎地盤改良体３は、地表面ＧＬ以下の深さがＨ１である格子状地盤改良体４を含む。深さＨ１は４ｍ以下である。格子状地盤改良体４の道路Ｒが延びる方向Ｆの寸法は、例えば、Ｌ１＝８～１２ｍ、Ｌ２＝６～８ｍ、Ｌ３＝２～４ｍである。

【0027】

図１の第１実施例及び図３の第３実施例における基礎地盤改良体３は、水平板状の地盤改良体とその下に位置する格子状地盤改良体４とからなる。図２の第２実施例及び図４の第４実施例における基礎地盤改良体３は、水平板状の地盤改良体がなく、格子状地盤改良体４のみからなる。

【0028】

盛土構造物２は、盛土を地盤改良した盛土地盤改良体５である。盛土地盤改良体５上に、アスファルトａ、上層路盤ｂ、及び下層路盤ｃからなる道路Ｒを敷設する。

【0029】

＜線状構造物の施工方法＞
図５ないし図１０の説明図を参照して本発明の実施の形態に係る線状構造物Ａの施工方法の一例を説明する。図５ないし図１０は、図１の線状構造物Ａの施工方法の一例を示している。

【0030】

（第１工程）
図５に示すように、バックホウ９による鋤取りにより、一次改良部ＧＩ１の土を所要形状に掘り下げる。

【0031】

（第２工程）
次に、図６に示すように、バックホウ９により、鋤取りした一次改良部ＧＩ１の土の一部とセメント系固化材等の固化材を添加混合しながら混合撹拌して地盤改良を行い、ブルドーザー１０により地盤改良後の一次改良部ＧＩ１の天端を敷均す。

【0032】

（第３工程）
次に、図７に示すように、整正後の一次改良部ＧＩ１の天端をローラー１１により転圧し、バックホウ９により鋤取りした土を埋め戻す。一次改良部ＧＩ１は、基礎地盤改良体３の一部である格子状地盤改良体４に相当する。図１の線状構造物Ａではなく図２の線状構造物Ａを施工する場合は、一次改良部ＧＩ１は、基礎地盤改良体３の全部である格子状地盤改良体４に相当する。

【0033】

（第４工程）
次に、図８に示すように、図１の格子状地盤改良体４に相当する一次改良部ＧＩ１の上に、ダンプ１２により盛土６を搬入する。盛土地盤改良体５の幅方向Ｂの端部Ｅから張り出すように多めに盛土６をする。

【0034】

（第５工程）
次に、図９に示すように、バックホウ９により盛土６とセメント系固化材等の固化材を添加混合しながら混合撹拌して地盤改良を行い、二次改良部ＧＩ２を形成する。その際に、幅方向Ｂの端部Ｅが略鉛直になる端部地盤改良部７を含むように二次改良部ＧＩ２を形成する。

【0035】

（第６工程）
次に、図１０に示すように、ブルドーザー１０により地盤改良後の二次改良部ＧＩ２の天端を敷均し、ローラー１１により整正後の二次改良部ＧＩ２の天端を転圧する。なお、実際は、二次改良部ＧＩ２の上面の道路Ｒを敷設する箇所は、下層路盤ｃの下面のレベルとなるように仕上げる。

【0036】

端部地盤改良部７の初期強度が発現した後、バックホウ９により端部地盤改良部７を掘削整形して盛土法面ＳＬを形成する。端部地盤改良部７の初期強度の発現は、地盤改良後の経過時間及び現地状況（表面の硬度等）によって判断する。

【0037】

前記第４工程で盛土地盤改良体５の幅方向Ｂの端部Ｅから張り出すように多めに盛土６をし、前記第５工程で幅方向Ｂの端部Ｅが略鉛直になる端部地盤改良部７を含むように二次改良部ＧＩ２を形成している。したがって、前記第６工程における二次改良部ＧＩ２の転圧不足を無くすことができる。その上、前記第６工程で、端部地盤改良部７の初期強度が発現した後に端部地盤改良部７を掘削整形して盛土法面ＳＬを形成する。したがって、盛土地盤改良体５の盛土法面ＳＬの施工を確実に行うことができるとともに、盛土法面ＳＬが強固になるので、法面崩壊を抑制できる。

【0038】

＜道路の施工方法＞
線状構造物Ａの施工方法の前記第６工程を行い、二次改良部ＧＩ２を転圧して改良強度が発現した後に、下層路盤ｃの材料を搬入し、敷き均し、転圧する。次に、上層路盤ｂの材料を搬入し、敷き均し、転圧する。次に、アスファルトａの材料を搬入し、敷き均し、転圧する。

【0039】

＜数値解析＞
次に、本発明の効果確認のために行った数値解析について説明する。

【0040】

（解析方法）
地盤ＦＥＭ（Finite Element Method）解析ソフトウェア（PLAXIS）を用い、表１及び表２に示すパラメータで２次元の数値解析を行う。評価項目は、「最大沈下量」及び「相対沈下量」とする。

【0041】

（実施例及び比較例）
実施例は、第１実施例ないし第４実施例とする。比較例は、図１１ないし図１４の線状構造物Ａを示す縦断面図、及び線状構造物Ａの底面図に示す、第１比較例ないし第４比較例とする。第１比較例ないし第４比較例において、何れも、実施例の盛土構造物２に相当する地表面ＧＬよりも上の部分は、盛土地盤改良体５ではなく盛土６である。

【0042】

図１１の第１比較例及び図１３の第３比較例の線状構造物Ａは、基礎地盤改良体３が厚板状地盤改良体８である。図１２の第２比較例及び図１４の第４比較例の線状構造物Ａは、基礎地盤改良体３が格子状地盤改良体４のみからなる。

【0043】

（荷重条件）
荷重は、地表面ＧＬよりも上に位置する、長期荷重である、盛土地盤改良体５又は盛土６、及び道路Ｒの重量とする。

【0044】

（相対沈下量）
図１の実施例１、及び図２の実施例２、図１１の比較例１、及び図１２の比較例２における「相対沈下量」は、点Ｐ１の沈下量と点Ｐ２の沈下量との差である。

【0045】

図３の実施例３、図４の実施例４、及び図１３の実施例３における「相対沈下量」は、点Ｑ１の沈下量と点Ｑ２の沈下量との差である。

【0046】

図１４の比較例４における「相対沈下量」は、Ｑ３の沈下量の方がＱ１の沈下量よりも大きいため、Ｑ３の沈下量とＱ２の沈下量の差である。

【0047】

（解析結果）
解析結果を表１及び表２に示す。

【0048】

【表1】

【0049】

【表2】

【0050】

（表１の解析結果）
表１から、地表面ＧＬよりも上が盛土６である第１比較例及び第２比較例において、基礎地盤改良体３が厚板状地盤改良体８である第１比較例に対して、基礎地盤改良体３が格子状地盤改良体４のみからなる第２比較例は、最大沈下量は同じであるが、相対沈下量が大きく、相対沈下量は３．８倍である。

【0051】

それに対して、地表面ＧＬよりも上が盛土地盤改良体５であり、基礎地盤改良体３が水平板状の地盤改良体とその下に位置する格子状地盤改良体４とからなる第１実施例は、第１比較例に対して、最大沈下量が０．７９倍、相対沈下量が０．２７倍であり、最大沈下量及び相対沈下量が小さい。

【0052】

また、地表面ＧＬよりも上が盛土地盤改良体５であり、基礎地盤改良体３が格子状地盤改良体４のみからなる第２実施例は、第１比較例に対して、最大沈下量が０．８２倍、相対沈下量が０．６７倍であり、最大沈下量及び相対沈下量が小さい。

【0053】

（表２の解析結果）
表２から、地表面ＧＬよりも上が盛土６である第３比較例及び第４比較例において、基礎地盤改良体３が厚板状地盤改良体８である第３比較例に対して、基礎地盤改良体３が格子状地盤改良体４のみからなる第４比較例は、最大沈下量は０．９４倍であるが相対沈下量が大きく、相対沈下量は１．５９倍である。

【0054】

それに対して、地表面ＧＬよりも上が盛土地盤改良体５であり、基礎地盤改良体３が水平板状の地盤改良体とその下に位置する格子状地盤改良体４とからなる第３実施例は、第３比較例に対して、最大沈下量が０．７６倍、相対沈下量が０．３５倍であり、最大沈下量及び相対沈下量が小さい。

【0055】

また、地表面ＧＬよりも上が盛土地盤改良体５であり、基礎地盤改良体３が格子状地盤改良体４のみからなる第４実施例は、第３比較例に対して、最大沈下量が０．７７倍、相対沈下量が０．３９倍であり、最大沈下量及び相対沈下量が小さい。

【0056】

以上の解析結果から、本発明の実施の形態１ないし４のように、基礎構造物１を、格子状地盤改良体４を含む基礎地盤改良体３にするのに加えて、地表面ＧＬよりも上を盛土地盤改良体５にすることにより、地表面ＧＬ以下の地盤改良深さＨ１を浅くした場合（例えば、実施の形態１ないし４では、Ｈ１＝２ｍ）に、最大沈下量及び相対沈下量を大幅に小さくできることが分かる。

【0057】

本発明の軟弱地盤Ｓ上の線状構造物Ａは、地表面ＧＬ以下の基礎構造物１が格子状地盤改良体４を含む基礎地盤改良体３であり、地表面ＧＬ以上の盛土構造物２が盛土６を地盤改良した盛土地盤改良体５である。現地盤の地盤改良に加えて盛土部分も地盤改良しているので、地業工事と盛土部分を一体として剛性を高めている。その上、現地盤の地盤改良が格子状地盤改良体を含んでいる。したがって、地業下現地盤に伝達する応力を分散できるので沈下量を低減できる。

【0058】

本発明の軟弱地盤Ｓ上の線状構造物Ａにおいて、基礎地盤改良体３の地表面ＧＬ以下の深さＨ１を４ｍ以下にすることにより、沈下量を低減しながら、工期の短縮及び施工コストの抑制を実現できる。

【0059】

以上の実施の形態の説明における線状構造物は、上面が道路として使用されるものであるが、本発明の線状構造物は、上面が線路として使用されるものであってもよい。

【0060】

以上の実施の形態の記載はすべて例示であり、これに制限されるものではない。本発明の範囲から逸脱することなく種々の改良及び変更を施すことができる。

【符号の説明】

【0061】

１ 基礎構造物
２ 盛土構造物
３ 基礎地盤改良体
４ 格子状地盤改良体
４Ａ 下端面
５ 盛土地盤改良体
６ 盛土
７ 端部地盤改良部
８ 厚板状地盤改良体
９ バックホウ
１０ ブルドーザー
１１ ローラー
１２ ダンプ
Ａ 線状構造物
Ｂ 幅方向
Ｅ 端部
Ｆ 進行方向
ＧＩ１ 一次改良部
ＧＩ２ 二次改良部
ＧＬ 地表面
Ｒ 道路
Ｓ 軟弱地盤
ＳＬ 盛土法面
ａ アスファルト
ｂ 上層路盤
ｃ 下層路盤

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】