(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】蓄電池検査装置及び蓄電池検査方法
(51)【国際特許分類】
G01R 31/00 20060101AFI20240312BHJP
G01R 31/385 20190101ALI20240312BHJP
G01R 31/392 20190101ALI20240312BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
G01R31/00
G01R31/385
G01R31/392
H01M10/48 P
H01M10/48 Z
(21)【出願番号】P 2021537247
(86)(22)【出願日】2020-07-28
(86)【国際出願番号】 JP2020028885
(87)【国際公開番号】W WO2021024859
(87)【国際公開日】2021-02-11
【審査請求日】2023-03-17
(31)【優先権主張番号】P 2019144620
(32)【優先日】2019-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】513034154
【氏名又は名称】株式会社 Integral Geometry Science
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【氏名又は名称】新居 広守
(72)【発明者】
【氏名】美馬 勇輝
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 章吾
(72)【発明者】
【氏名】木村 建次郎
(72)【発明者】
【氏名】木村 憲明
【審査官】永井 皓喜
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-54984(JP,A)
【文献】国際公開第2017/187791(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/148991(WO,A1)
【文献】特開2013-32985(JP,A)
【文献】特開2018-4565(JP,A)
【文献】特開2015-87372(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0088204(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/00
G01R 31/36
G01R 33/00
H01M 10/44
H01M 10/48
G01N 27/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電池を検査する蓄電池検査装置であって、
前記蓄電池の出力電圧に対してバランスをとるための直流電圧に交流電圧が重畳された外部電圧を前記蓄電池に印加することにより、交流電流を前記蓄電池に印加する蓄電制御回路と、
前記蓄電池の外部の磁場成分を感知し、感知された磁場成分を示す磁気センサ信号を出力する磁気センサと、
前記蓄電池の磁性体の磁化によって生成される磁場成分を打ち消すための磁場成分を入力電流に基づいて生成するキャンセルコイルと、
前記交流電流が前記蓄電池に印加された状態において前記磁気センサから出力された前記磁気センサ信号から、前記交流電流の周波数よりも低い周波数の磁場成分を示す低周波信号を取得し、前記低周波信号に基づいて前記キャンセルコイルに前記入力電流を印加するフィードバック回路と、
前記交流電流が前記蓄電池に印加され、かつ、前記入力電流が前記キャンセルコイルに印加された状態において前記磁気センサから出力された前記磁気センサ信号から、前記交流電流の周波数と同じ周波数の磁場成分を示す検波信号を取得する検波回路とを備える
蓄電池検査装置。
【請求項2】
前記フィードバック回路は、前記磁気センサ信号から、遮断周波数よりも高い周波数の成分を遮断し、前記遮断周波数よりも低い周波数の成分を通過させるローパスフィルタによって、前記低周波信号を取得し、
前記遮断周波数は、前記交流電流の周波数よりも低い
請求項1に記載の蓄電池検査装置。
【請求項3】
前記遮断周波数は、前記交流電流の周波数の1/10以上である
請求項2に記載の蓄電池検査装置。
【請求項4】
前記フィードバック回路は、PID(Proportional-Integral-Differential)制御方式を用いて、前記低周波信号が示す磁場成分の強さが目標値に近づくように前記入力電流の大きさを制御し、制御された大きさを有する前記入力電流を前記キャンセルコイルに印加する
請求項1~3のいずれか1項に記載の蓄電池検査装置。
【請求項5】
前記目標値は、ゼロである
請求項4に記載の蓄電池検査装置。
【請求項6】
前記フィードバック回路は、
前記交流電流が前記蓄電池に印加された状態において前記磁気センサから出力された前記磁気センサ信号から、前記低周波信号を取得し、前記低周波信号に基づいて前記入力電流の大きさを示す制御信号を出力する信号処理回路と、
前記制御信号によって示される大きさを有する前記入力電流を前記キャンセルコイルに印加する電流増幅回路とを備える
請求項1~5のいずれか1項に記載の蓄電池検査装置。
【請求項7】
前記信号処理回路は、前記磁気センサからアナログ信号として出力された前記磁気センサ信号をデジタル信号に変換し、デジタル信号に変換された前記磁気センサ信号から前記低周波信号を取得し、前記低周波信号に基づいて前記制御信号を生成し、生成された前記制御信号をアナログ信号に変換し、アナログ信号に変換された前記制御信号を出力する
請求項6に記載の蓄電池検査装置。
【請求項8】
前記信号処理回路は、前記磁気センサからアナログ信号として出力された前記磁気センサ信号をデジタル信号に変換せずに、前記磁気センサからアナログ信号として出力された前記磁気センサ信号から前記低周波信号を取得し、前記低周波信号に基づいて前記制御信号を生成し、生成された前記制御信号を出力する
請求項6に記載の蓄電池検査装置。
【請求項9】
前記磁気センサは、前記キャンセルコイルの内側に位置する
請求項1~8のいずれか1項に記載の蓄電池検査装置。
【請求項10】
前記磁気センサは、前記キャンセルコイルの外側に位置する
請求項1~8のいずれか1項に記載の蓄電池検査装置。
【請求項11】
前記磁気センサは、前記キャンセルコイルの中心軸上の領域に位置する
請求項1~10のいずれか1項に記載の蓄電池検査装置。
【請求項12】
前記磁気センサは、前記キャンセルコイルの中心軸上の領域とは異なる領域に位置する
請求項1~8及び10のいずれか1項に記載の蓄電池検査装置。
【請求項13】
前記キャンセルコイルの中心軸は、前記蓄電池に含まれる平面状の電極板に対して垂直である
請求項1~12のいずれか1項に記載の蓄電池検査装置。
【請求項14】
前記キャンセルコイルの中心軸は、前記蓄電池に含まれる平面状の電極板に対して平行である
請求項1~12のいずれか1項に記載の蓄電池検査装置。
【請求項15】
前記蓄電池検査装置は、
前記磁気センサとして、複数の磁気センサと、
前記キャンセルコイルとして、前記複数の磁気センサにそれぞれ対応する複数のキャンセルコイルとを備え、
前記フィードバック回路は、前記複数の磁気センサのそれぞれから出力された前記磁気センサ信号から前記低周波信号を取得し、前記低周波信号に基づいて前記複数のキャンセルコイルのうち当該磁気センサに対応するキャンセルコイルに前記入力電流を印加する
請求項1~14のいずれか1項に記載の蓄電池検査装置。
【請求項16】
蓄電池を検査する蓄電池検査方法であって、
前記蓄電池の出力電圧に対してバランスをとるための直流電圧に交流電圧が重畳された外部電圧を前記蓄電池に印加することにより、交流電流を前記蓄電池に印加し、
前記交流電流が前記蓄電池に印加された状態において、前記蓄電池の外部の磁場成分を感知し、感知された磁場成分を示す磁気センサ信号を出力する磁気センサから出力された前記磁気センサ信号から、前記交流電流の周波数よりも低い周波数の磁場成分を示す低周波信号を取得し、
前記蓄電池の磁性体の磁化によって生成される磁場成分を打ち消すための磁場成分を入力電流に基づいて生成するキャンセルコイルに前記低周波信号に基づいて前記入力電流を印加し、
前記交流電流が前記蓄電池に印加され、かつ、前記入力電流が前記キャンセルコイルに印加された状態において前記磁気センサから出力された前記磁気センサ信号から、前記交流電流の周波数と同じ周波数の磁場成分を示す検波信号を取得する
蓄電池検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蓄電池を検査する蓄電池検査装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、二次電池を検査する評価装置に関する技術が示されている。特許文献1に記載の技術では、コントローラが、磁気センサによって検出された磁界から二次電池の複数の部分に流れる複数の電流の大きさをそれぞれ計算し、電極間に位置する電解質領域内の複数の電流の大きさを抽出する。そして、コントローラは、複数の電流の大きさの分布状態を示すグラフを作成して、表示装置に表示する。なお、二次電池は、蓄電池とも呼ばれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、蓄電池は、磁性体の電極板等を有し得る。そのため、磁気センサが、蓄電池の磁性体の磁化の影響を受けて、電極間に流れる電流によって生成される磁場成分を適切に感知することができない可能性がある。したがって、磁気センサを用いて蓄電池を適切に検査することが困難な場合がある。
【0005】
そこで、本開示は、蓄電池が磁性体を有する場合であっても、磁気センサを用いて、蓄電池を適切に検査することができる蓄電池検査装置等を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る蓄電池検査装置は、蓄電池を検査する蓄電池検査装置であって、前記蓄電池の出力電圧に対してバランスをとるための直流電圧に交流電圧が重畳された外部電圧を前記蓄電池に印加することにより、交流電流を前記蓄電池に印加する蓄電制御回路と、前記蓄電池の外部の磁場成分を感知し、感知された磁場成分を示す磁気センサ信号を出力する磁気センサと、前記蓄電池の磁性体の磁化によって生成される磁場成分を打ち消すための磁場成分を入力電流に基づいて生成するキャンセルコイルと、前記交流電流が前記蓄電池に印加された状態において前記磁気センサから出力された前記磁気センサ信号から、前記交流電流の周波数よりも低い周波数の磁場成分を示す低周波信号を取得し、前記低周波信号に基づいて前記キャンセルコイルに前記入力電流を印加するフィードバック回路と、前記交流電流が前記蓄電池に印加され、かつ、前記入力電流が前記キャンセルコイルに印加された状態において前記磁気センサから出力された前記磁気センサ信号から、前記交流電流の周波数と同じ周波数の磁場成分を示す検波信号を取得する検波回路とを備える。
【0007】
なお、これらの包括的又は具体的な態様は、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラム、又は、コンピュータ読み取り可能なCD-ROMなどの非一時的な記録媒体で実現されてもよく、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラム、及び、記録媒体の任意の組み合わせで実現されてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一態様によれば、蓄電池が磁性体を有する場合であっても、磁気センサを用いて、蓄電池を適切に検査することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施の形態における蓄電池検査装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、実施の形態における蓄電池検査装置の動作を示すフローチャートである。
【
図3】
図3は、実施の形態における蓄電池検査装置の具体的な構成を示す概念図である。
【
図4】
図4は、実施の形態における磁気センサの具体的な構造を示す概念図である。
【
図5】
図5は、実施の形態における蓄電池が検査されている状態を示す概念図である。
【
図6】
図6は、実施の形態における蓄電池に印加される電流の推移を示すグラフである。
【
図7】
図7は、実施の形態における蓄電池の蓄電率の推移を示すグラフである。
【
図8】
図8は、実施の形態における蓄電池検査装置の全体構成を示す概念図である。
【
図9】
図9は、実施の形態におけるフィードバック回路の構成を示すブロック図である。
【
図10】
図10は、実施の形態における信号処理回路の構成を示すブロック図である。
【
図11】
図11は、実施の形態における検波回路の構成を示すブロック図である。
【
図12】
図12は、実施の形態における画像化のための座標系を示す概念図である。
【
図13】
図13は、実施の形態における蓄電池の検査時に流れる電流を示す概念図である。
【
図14】
図14は、実施の形態における蓄電池の平面状の電極板に垂直な方向の磁場成分を感知する磁気センサがキャンセルコイルの内側に位置する場合の例を示す概念図である。
【
図15】
図15は、実施の形態における蓄電池の平面状の電極板に平行な方向の磁場成分を感知する磁気センサがキャンセルコイルの内側に位置する場合の例を示す概念図である。
【
図16】
図16は、実施の形態における蓄電池の平面状の電極板に垂直な方向の磁場成分を感知する磁気センサがキャンセルコイルの外側に位置する場合の例を示す概念図である。
【
図17】
図17は、実施の形態における蓄電池の平面状の電極板に平行な方向の磁場成分を感知する磁気センサがキャンセルコイルの外側に位置する場合の例を示す概念図である。
【
図18】
図18は、実施の形態における蓄電池の平面状の電極板に垂直な方向の磁場成分を複数の磁気センサが感知する場合の例を示す概念図である。
【
図19】
図19は、実施の形態における蓄電池の平面状の電極板に平行な方向の磁場成分を複数の磁気センサが感知する場合の例を示す概念図である。
【
図20】
図20は、実施の形態における蓄電池の平面状の電極板に平行な方向の磁場成分を感知する磁気センサがキャンセルコイルの外側に位置し、かつ、キャンセルコイルの中心軸が電極板に垂直である場合の例を示す概念図である。
【
図21】
図21は、実施の形態における磁場成分の回り込みが用いられる例を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示の一態様に係る蓄電池検査装置は、蓄電池を検査する蓄電池検査装置であって、前記蓄電池の出力電圧に対してバランスをとるための直流電圧に交流電圧が重畳された外部電圧を前記蓄電池に印加することにより、交流電流を前記蓄電池に印加する蓄電制御回路と、前記蓄電池の外部の磁場成分を感知し、感知された磁場成分を示す磁気センサ信号を出力する磁気センサと、前記蓄電池の磁性体の磁化によって生成される磁場成分を打ち消すための磁場成分を入力電流に基づいて生成するキャンセルコイルと、前記交流電流が前記蓄電池に印加された状態において前記磁気センサから出力された前記磁気センサ信号から、前記交流電流の周波数よりも低い周波数の磁場成分を示す低周波信号を取得し、前記低周波信号に基づいて前記キャンセルコイルに前記入力電流を印加するフィードバック回路と、前記交流電流が前記蓄電池に印加され、かつ、前記入力電流が前記キャンセルコイルに印加された状態において前記磁気センサから出力された前記磁気センサ信号から、前記交流電流の周波数と同じ周波数の磁場成分を示す検波信号を取得する検波回路とを備える。
【0011】
これにより、蓄電池検査装置は、蓄電池に流れる交流電流の周波数よりも低い周波数の磁場成分を蓄電池の磁性体の磁化によって生成される磁場成分として適切に打ち消すことができる。したがって、蓄電池検査装置は、蓄電池に流れる交流電流によって生成される磁場成分を適切に感知することができる。よって、蓄電池検査装置は、蓄電池が磁性体を有する場合であっても、磁気センサを用いて、蓄電池を適切に検査することができる。
【0012】
例えば、前記フィードバック回路は、前記磁気センサ信号から、遮断周波数よりも高い周波数の成分を遮断し、前記遮断周波数よりも低い周波数の成分を通過させるローパスフィルタによって、前記低周波信号を取得し、前記遮断周波数は、前記交流電流の周波数よりも低い。
【0013】
これにより、蓄電池検査装置は、ローパスフィルタによって、蓄電池に流れる交流電流の周波数よりも低い周波数の磁場成分を示す低周波信号を適切に取得することができる。
【0014】
また、例えば、前記遮断周波数は、前記交流電流の周波数の1/10以上である。
【0015】
これにより、蓄電池検査装置は、ローパスフィルタにおける処理遅延を抑制しつつ、蓄電池に流れる交流電流の周波数よりも低い周波数の磁場成分を示す低周波信号を適切に取得することができる。
【0016】
また、例えば、前記フィードバック回路は、PID(Proportional-Integral-Differential)制御方式を用いて、前記低周波信号が示す磁場成分の強さが目標値に近づくように前記入力電流の大きさを制御し、制御された大きさを有する前記入力電流を前記キャンセルコイルに印加する。
【0017】
これにより、蓄電池検査装置は、蓄電池に流れる交流電流の周波数よりも低い周波数の磁場成分をPID制御方式に基づくフィードバック制御によって適切に制御することができる。
【0018】
また、例えば、前記目標値は、ゼロである。
【0019】
これにより、蓄電池検査装置は、蓄電池に流れる交流電流の周波数よりも低い周波数の磁場成分の強さをゼロに近づけることができる。すなわち、蓄電池検査装置は、蓄電池に流れる交流電流の周波数よりも低い周波数の磁場成分をPID制御方式に基づくフィードバック制御によって適切に打ち消すことができる。
【0020】
また、例えば、前記フィードバック回路は、前記交流電流が前記蓄電池に印加された状態において前記磁気センサから出力された前記磁気センサ信号から、前記低周波信号を取得し、前記低周波信号に基づいて前記入力電流の大きさを示す制御信号を出力する信号処理回路と、前記制御信号によって示される大きさを有する前記入力電流を前記キャンセルコイルに印加する電流増幅回路とを備える。
【0021】
これにより、蓄電池検査装置は、キャンセルコイルに印加される入力電流を適切に制御することができる。
【0022】
また、例えば、前記信号処理回路は、前記磁気センサからアナログ信号として出力された前記磁気センサ信号をデジタル信号に変換し、デジタル信号に変換された前記磁気センサ信号から前記低周波信号を取得し、前記低周波信号に基づいて前記制御信号を生成し、生成された前記制御信号をアナログ信号に変換し、アナログ信号に変換された前記制御信号を出力する。
【0023】
これにより、蓄電池検査装置は、デジタル信号に基づく信号処理によって、高精度に入力電流を制御することができる。
【0024】
また、例えば、前記信号処理回路は、前記磁気センサからアナログ信号として出力された前記磁気センサ信号をデジタル信号に変換せずに、前記磁気センサからアナログ信号として出力された前記磁気センサ信号から前記低周波信号を取得し、前記低周波信号に基づいて前記制御信号を生成し、生成された前記制御信号を出力する。
【0025】
これにより、蓄電池検査装置は、アナログ信号のまま、高速に入力電流を制御することができる。
【0026】
また、例えば、前記磁気センサは、前記キャンセルコイルの内側に位置する。
【0027】
これにより、蓄電池検査装置は、磁気センサの位置において、蓄電池の磁性体の磁化によって生成される磁場成分を打ち消すための磁場成分を適切に生成することができる。
【0028】
また、例えば、前記磁気センサは、前記キャンセルコイルの外側に位置する。
【0029】
これにより、蓄電池検査装置は、磁気センサから離れた位置において、蓄電池の磁性体の磁化によって生成される磁場成分を打ち消すための磁場成分を生成することができる。したがって、キャンセルコイルの位置が、より柔軟に規定され得る。
【0030】
また、例えば、前記磁気センサは、前記キャンセルコイルの中心軸上の領域に位置する。
【0031】
これにより、蓄電池検査装置は、磁気センサに向けて、蓄電池の磁性体の磁化によって生成される磁場成分を打ち消すための磁場成分を生成することができる。したがって、蓄電池検査装置は、磁気センサの付近に、蓄電池の磁性体の磁化によって生成される磁場成分を打ち消すための磁場成分を生成することができる。
【0032】
また、例えば、前記磁気センサは、前記キャンセルコイルの中心軸上の領域とは異なる領域に位置する。
【0033】
これにより、蓄電池検査装置は、磁気センサから離れた位置において、蓄電池の磁性体の磁化によって生成される磁場成分を打ち消すための磁場成分として、柔軟に規定され得る方向の磁場成分を生成することができる。
【0034】
また、例えば、前記キャンセルコイルの中心軸は、前記蓄電池に含まれる平面状の電極板に対して垂直である。
【0035】
これにより、蓄電池検査装置は、蓄電池に向けて、蓄電池の磁性体の磁化によって生成される磁場成分を打ち消すための磁場成分を生成することができる。また、蓄電池検査装置は、蓄電池の磁性体の磁化によって生成される磁場成分を打ち消すための磁場成分として、蓄電池に含まれる平面状の電極板に対して垂直な方向の磁場成分を生成することができる。
【0036】
また、例えば、前記キャンセルコイルの中心軸は、前記蓄電池に含まれる平面状の電極板に対して平行である。
【0037】
これによって、蓄電池検査装置は、蓄電池の磁性体の磁化によって生成される磁場成分を打ち消すための磁場成分として、蓄電池に含まれる平面状の電極板に対して平行な方向の磁場成分を生成することができる。交流電流が印加された蓄電池の外部には、平面状の電極板に対して平行な方向の磁場成分が生成されると想定される。したがって、蓄電池検査装置は、蓄電池の磁性体の磁化によって生成される磁場成分を打ち消して、交流電流が印加された蓄電池の外部に生成される磁場成分を適切に感知することができる。
【0038】
また、例えば、前記蓄電池検査装置は、前記磁気センサとして、複数の磁気センサと、前記キャンセルコイルとして、前記複数の磁気センサにそれぞれ対応する複数のキャンセルコイルとを備え、前記フィードバック回路は、前記複数の磁気センサのそれぞれから出力された前記磁気センサ信号から前記低周波信号を取得し、前記低周波信号に基づいて前記複数のキャンセルコイルのうち当該磁気センサに対応するキャンセルコイルに前記入力電流を印加する。
【0039】
これにより、蓄電池検査装置は、短期間に広範囲の磁場成分を適切に感知することができる。
【0040】
また、例えば、本開示の一態様に係る蓄電池検査方法は、蓄電池を検査する蓄電池検査方法であって、前記蓄電池の出力電圧に対してバランスをとるための直流電圧に交流電圧が重畳された外部電圧を前記蓄電池に印加することにより、交流電流を前記蓄電池に印加し、前記交流電流が前記蓄電池に印加された状態において、前記蓄電池の外部の磁場成分を感知し、感知された磁場成分を示す磁気センサ信号を出力する磁気センサから出力された前記磁気センサ信号から、前記交流電流の周波数よりも低い周波数の磁場成分を示す低周波信号を取得し、前記蓄電池の磁性体の磁化によって生成される磁場成分を打ち消すための磁場成分を入力電流に基づいて生成するキャンセルコイルに前記低周波信号に基づいて前記入力電流を印加し、前記交流電流が前記蓄電池に印加され、かつ、前記入力電流が前記キャンセルコイルに印加された状態において前記磁気センサから出力された前記磁気センサ信号から、前記交流電流の周波数と同じ周波数の磁場成分を示す検波信号を取得する。
【0041】
これにより、蓄電池に流れる交流電流の周波数よりも低い周波数の磁場成分を蓄電池の磁性体の磁化によって生成される磁場成分として適切に打ち消すことが可能になる。したがって、蓄電池に流れる交流電流によって生成される磁場成分を適切に感知することが可能になる。よって、蓄電池が磁性体を有する場合であっても、磁気センサを用いて、蓄電池を適切に検査することが可能になる。
【0042】
以下、図面を用いて、実施の形態について説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的又は具体的な例を示す。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序等は、一例であり、請求の範囲を限定する主旨ではない。
【0043】
なお、蓄電池は、充電及び放電が可能な電池であり、二次電池とも呼ばれる。また、磁場成分は、磁場を構成する成分である。磁場成分は、空間的な位置に対応する成分であってもよいし、周波数に対応する成分であってもよいし、所定方向に対応する成分であってもよいし、これらの任意の組み合わせに対応する成分であってもよい。ここでは、説明の便宜上、磁場成分を単に磁場と呼ぶ場合がある。
【0044】
また、ここで、磁場成分を打ち消すことは、磁場成分を完全に打ち消すことに限られず、磁場成分をほぼ打ち消すこと、又は、磁場成分を部分的に打ち消すこと等であってもよく、磁場成分を抑制することを意味し得る。
【0045】
(実施の形態)
まず、本実施の形態における蓄電池検査装置の概要を説明する。本実施の形態における蓄電池検査装置は、蓄電池を破壊せずに蓄電池を検査する。このような非破壊検査に用いられる技術要素として、X線、可視光及びマイクロ波等が用いられる場合がある。しかしながら、X線、可視光及びマイクロ波のいずれを用いても、蓄電池内の電気的な状態を検査することは困難である。そこで、本実施の形態における蓄電池検査装置は、磁場の情報を用いる。
【0046】
具体的には、蓄電池の内部において流れる電流は、蓄電池の周辺(蓄電池の外部)に磁場を生成する。定常状態における電流(J)と磁場(H)との関係は、マクスウェルの方程式に基づいて、ΔH=-(∇×J)で表現される。このような関係に基づいて、蓄電池の外部の磁場から、蓄電池の内部において流れる電流を推定することが可能である。本実施の形態における蓄電池検査装置は、磁場を測定することによって、蓄電池の電気的な状態を検査する。
【0047】
一方、蓄電池の充放電過程において、蓄電池内の電気的な状態は変化する。蓄電池の充放電過程で変化する状態を観測することは、蓄電池の信頼性の検査に有用である。しかし、磁場の測定には相応の時間がかかるため、蓄電池の充放電過程において磁場が測定されている間に、蓄電池内の電気的な状態が変化する場合がある。蓄電池内の電気的な状態が変化する場合、磁場も変化するため、磁場を適切に測定することは困難である。
【0048】
このような状況において、蓄電池の充放電を停止させることによって、蓄電池内の電気的な状態の変化を停止させることは可能である。しかし、充放電が単純に停止した状態では、蓄電池内に電流が流れず、蓄電池内の電気的な状態に対応する磁場成分が生成されない。したがって、充放電が単純に停止した状態で、磁場を測定することは適切でない。
【0049】
また、蓄電池の電極等に磁性体が用いられ得る。このような蓄電池の磁性体の磁化によっても磁場成分が生成される。そして、蓄電池の磁性体の磁化によって生成される磁場成分の強さは、蓄電池内に流れる電流によって生成される磁場成分の強さよりも、はるかに大きい場合がある。例えば、蓄電池の磁性体の磁化によって生成される磁場成分の強さは、数ミリテスラ程度であると想定され、蓄電池内に流れる電流によって生成される磁場成分の強さは、数マイクロテスラ以下であると想定される。
【0050】
上記のような場合において、磁場を測定するための磁気センサは、蓄電池の磁性体の磁化によって生成される磁場成分に強く反応する。そのため、蓄電池内に流れる電流によって生成される細かな磁場成分を高精度に検知することが困難である。
【0051】
そこで、まず、本実施の形態における蓄電池検査装置は、蓄電池に交流電流を印加する。これにより、蓄電池検査装置は、蓄電池の充放電過程において、充放電を休止(抑制)しつつ、蓄電池内に交流電流を流すことができる。蓄電池内に流れる交流電流は、蓄電池の外部にも磁場成分を生成する。
【0052】
さらに、本実施の形態における蓄電池検査装置は、キャンセルコイルを用いて、交流電流の周波数よりも低い周波数の磁場成分を打ち消す。これにより、蓄電池検査装置は、蓄電池に印加された交流電流によって生成される磁場成分を維持しつつ、蓄電池の磁性体の磁化によって生成される磁場成分を打ち消すことができる。
【0053】
したがって、本実施の形態における蓄電池検査装置は、蓄電池に印加された交流電流によって生成される磁場成分を適切に感知することができ、蓄電池の電気的な状態を適切に検査することができる。以下、本実施の形態における蓄電池検査装置の具体的な構成を説明する。
【0054】
図1は、本実施の形態における蓄電池検査装置の構成を示すブロック図である。
図1に示された蓄電池検査装置10は、蓄電制御回路11、磁気センサ12、プリアンプ18、キャンセルコイル13、フィードバック回路14、ハイパスフィルタ(HPF)19、検波回路15、画像化回路16及びディスプレイ17を備える。
【0055】
蓄電制御回路11は、蓄電池に電圧及び電流を印加する回路である。具体的には、蓄電制御回路11は、蓄電池の出力電圧に対してバランスをとるための直流電圧に交流電圧が重畳された外部電圧を蓄電池に印加することにより、交流電流を蓄電池に印加する。
【0056】
磁気センサ12は、磁場成分を感知するセンサである。具体的には、磁気センサ12は、蓄電池の外部の磁場成分を感知し、感知された磁場成分を示す磁気センサ信号を出力する。例えば、磁気センサ12から出力される磁気センサ信号の強さは、磁気センサ12で感知された磁場成分の強さに比例する。
【0057】
プリアンプ18は、微小な信号を増幅する回路である。これにより、後段の回路(フィードバック回路14及びハイパスフィルタ19等)で利用可能な信号が得られる。例えば、プリアンプ18は、磁気センサ12から出力された磁気センサ信号を増幅し、増幅された磁気センサ信号を出力する。本開示において、磁気センサ12から出力された磁気センサ信号は、磁気センサ12から出力されプリアンプ18によって増幅された磁気センサ信号であってもよい。
【0058】
キャンセルコイル13は、入力電流に基づいて磁場成分を生成する回路である。具体的には、キャンセルコイル13は、蓄電池の磁性体の磁化によって生成される磁場成分を打ち消すための磁場成分を入力電流に基づいて生成する。
【0059】
フィードバック回路14は、磁気センサ12から出力された磁気センサ信号に基づいて、キャンセルコイル13に電流を入力電流として印加する回路である。具体的には、フィードバック回路14は、交流電流が蓄電池に印加された状態において磁気センサ12から出力された磁気センサ信号から、交流電流の周波数よりも低い周波数の磁場成分を示す低周波信号を取得する。
【0060】
例えば、低周波信号の強さは、交流電流の周波数よりも低い周波数の磁場成分の強さに比例する。低周波信号は、交流電流の周波数よりも低い全ての周波数の磁場成分を示してもよいし、低周波信号は、交流電流の周波数よりも低い一部の周波数の磁場成分を示してもよい。具体的には、低周波信号は、交流電流の周波数よりも低い基準周波数よりも低い周波数の磁場成分を示してもよい。また、低周波信号は、直流成分に対応する磁場成分を示してもよい。
【0061】
そして、フィードバック回路14は、低周波信号に基づいてキャンセルコイル13に電流を入力電流として印加する。より具体的には、フィードバック回路14は、磁気センサ信号から取得された低周波信号が大きいほど、つまり、交流電流の周波数よりも低い周波数の磁場成分が大きいほど、より大きい電流をキャンセルコイル13に入力電流として印加する。
【0062】
ハイパスフィルタ19は、遮断周波数よりも低い周波数の成分を遮断し、遮断周波数よりも高い周波数の成分を通過させるフィルタである。ハイパスフィルタ19の遮断周波数には、蓄電池31に印加される交流電流の周波数よりも低い周波数が適用される。これにより、磁気センサ信号から、蓄電池31に印加される交流電流の周波数よりも低い周波数であって、遮断周波数よりも低い周波数の成分が取り除かれる。
【0063】
なお、ここで、遮断周波数よりも低い周波数の成分を遮断することは、遮断周波数よりも低い周波数の成分の通過を抑制することを意味し、遮断周波数よりも低い周波数の成分を完全に遮断することに限られない。同様に、遮断周波数よりも高い周波数の成分を通過させるとは、遮断周波数よりも高い周波数の成分の遮断を抑制することを意味し、遮断周波数よりも高い周波数の成分を完全に通過することに限られない。遮断及び通過の度合いは、ハイパスフィルタ19の品質に依存する。
【0064】
また、ハイパスフィルタ19は、遮断周波数と同じ成分を遮断してもよいし通過させてもよいし、遮断周波数と同じ成分の一部を遮断し他部を通過させてもよい。
【0065】
本開示において、磁気センサ12から出力された磁気センサ信号は、磁気センサ12から出力されハイパスフィルタ19によって低周波成分が取り除かれた磁気センサ信号であってもよい。この磁気センサ信号は、検波回路15に入力される。
【0066】
検波回路15は、検波を行う回路であって、例えば、位相検波を行う。具体的には、検波回路15は、蓄電池に印加された交流電流の周波数と同じ周波数の磁場成分を示す信号を検波信号として取得する。より具体的には、検波回路15は、交流電流が蓄電池に印加され、かつ、入力電流がキャンセルコイル13に印加された状態において、磁気センサ12から出力された磁気センサ信号から、交流電流の周波数と同じ周波数を有する磁場成分を示す検波信号を取得する。
【0067】
例えば、検波信号の強さは、交流電流の周波数と同じ周波数の磁場成分の強さに比例する。
【0068】
画像化回路16は、画像を生成する回路である。具体的には、画像化回路16は、検波回路15で取得された検波信号に基づいて、蓄電池の状態を示す画像を生成する。ここで、画像は映像とも表現され得る。
【0069】
ディスプレイ17は、画像を表示する装置(情報表示回路)である。具体的には、ディスプレイ17は、画面を有し、画像化回路16で生成された画像を画面に表示する。
【0070】
蓄電池検査装置10は、蓄電制御回路11、磁気センサ12、キャンセルコイル13、フィードバック回路14、検波回路15、画像化回路16及びディスプレイ17のうちの一部のみを備えていてもよい。つまり、蓄電池検査装置10は、これらの全てを含まなくてもよい。例えば、ディスプレイ17が、蓄電池検査装置10とは異なる装置に含まれていてもよいし、画像化回路16及びディスプレイ17が、蓄電池検査装置10とは異なる装置に含まれていてもよい。
【0071】
また、蓄電池検査装置10は、プリアンプ18、ハイパスフィルタ19、又は、これらの両方を備えていなくてもよい。例えば、磁気センサ12から出力された磁気センサ信号は、プリアンプ18又はハイパスフィルタ19を介さずに、フィードバック回路14及び検波回路15に入力されてもよい。
【0072】
また、蓄電池検査装置10を構成する複数の構成要素のうちの2つ以上が1つの回路で構成されていてもよい。また、これらの回路は、専用回路に限られず、汎用回路であってもよい。特に、情報処理を行う回路は、上記の処理に対応するプログラム等を実行するプロセッサ等の汎用回路であってもよい。
【0073】
図2は、
図1に示された蓄電池検査装置10の動作を示すフローチャートである。具体的には、
図1に示された蓄電池検査装置10の複数の構成要素が、
図2に示された動作を行う。
【0074】
まず、蓄電制御回路11は、周波数f0の交流電流を蓄電池に印加する(S11)。具体的には、蓄電制御回路11は、蓄電池の出力電圧に対してバランスをとるための直流電圧に交流電圧が重畳された外部電圧を蓄電池に印加することにより、交流電流を蓄電池に印加する。
【0075】
磁気センサ12は、交流電流が蓄電池に印加された状態において、磁場成分を感知し、感知された磁場成分を示す磁気センサ信号を出力する(S12)。
【0076】
フィードバック回路14は、磁気センサ信号から、周波数f0よりも低い低周波信号を取得する(S13)。具体的には、フィードバック回路14は、磁気センサ12から出力された磁気センサ信号から、交流電流の周波数f0よりも低い周波数の磁場成分を示す低周波信号を取得する。そして、フィードバック回路14は、周波数f0よりも低い低周波信号に基づいてキャンセルコイル13に電流を入力電流として印加する(S14)。
【0077】
キャンセルコイル13は、入力電流に基づいて磁場成分を生成する。具体的には、キャンセルコイル13は、周波数f0よりも低い低周波数磁場成分を生成し、磁気センサ12に加わる磁場のうち周波数f0よりも低い低周波成分を打ち消す(S15)。検波回路15は、磁気センサ信号から、周波数f0の検波信号を取得する(S16)。具体的には、検波回路15は、磁気センサ12から出力された磁気センサ信号から、交流電流の周波数f0と同じ周波数の磁場成分を示す検波信号を取得する。
【0078】
蓄電制御回路11、磁気センサ12、キャンセルコイル13、フィードバック回路14及び検波回路15は、上記の処理を継続的に並列に行う。そして、磁気センサ12は、交流電流が蓄電池に印加され、かつ、入力電流がキャンセルコイル13に印加された状態で、蓄電池の周辺の複数の位置のそれぞれにおいて、磁場成分を感知し、感知された磁場成分を示す磁気センサ信号を出力する。
【0079】
検波回路15は、交流電流が蓄電池に印加され、かつ、入力電流がキャンセルコイル13に印加された状態で、蓄電池の周辺の複数の位置のそれぞれにおいて磁気センサ12から出力された磁気センサ信号を取得し、磁気センサ信号から検波信号を取得する。
【0080】
画像化回路16は、例えば全ての位置において検波信号が取得された後、周波数f0の検波信号に基づいて、蓄電池の状態を示す画像を生成する(S17)。そして、ディスプレイ17は、生成された画像を表示する(S18)。
【0081】
図3は、
図1に示された蓄電池検査装置10の具体的な構成を示す概念図である。
図3には、蓄電池検査装置10及び蓄電池31が示されている。また、
図3に示された蓄電池検査装置10は、
図1に示された蓄電池検査装置10の具体的な例に対応し、測定部21、電源部23、ディスプレイ17及び情報処理部24を備える。
【0082】
例えば、蓄電制御回路11は、電源部23に含まれ、画像化回路16は、情報処理部24に含まれる。フィードバック回路14及び検波回路15のそれぞれは、測定部21に含まれていてもよいし、情報処理部24に含まれていてもよいし、測定部21及び情報処理部24に分散して配置されていてもよい。
【0083】
測定部21は、探針として磁気センサ12を備え、磁気センサ12の付近にキャンセルコイル13を備える。そして、測定部21は、磁気センサ12を介して、磁場を測定する。また、測定部21は、アクチュエータ等で構成されるスライド可能な機構を有する。これにより、測定部21は、磁気センサ12を用いて、蓄電池31の付近を走査することができる。
【0084】
また、測定部21は、回転台22を備える。回転台22は、検査対象物である蓄電池31を載置するための台であり、アクチュエータ等で構成される回転可能な機構を有する。これにより、測定部21は、磁気センサ12を用いて、様々な回転角度で、蓄電池31の付近を走査することができる。
【0085】
例えば、磁気センサ12は、キャンセルコイル13の内部に位置し、磁気センサ12の移動に伴って、キャンセルコイル13も移動する。
【0086】
ここでは、回転台22によって蓄電池31が回転するが、測定部21が、蓄電池31を中心に回転することで、様々な回転角度で、蓄電池31の付近を走査してもよい。また、測定部21は、磁気センサ12を回転させてもよい。
【0087】
電源部23は、蓄電池31に電圧及び電流を印加する装置である。具体的には、電源部23は、蓄電池31の出力電圧に対してバランスをとるための直流電圧に交流電圧が重畳された外部電圧を蓄電池31に印加することにより、交流電流を蓄電池31に印加する。電源部23は、ファンクションジェネレータであってもよい。
図3の例では、電源部23は、導線を介して、蓄電池31に電圧及び電流を印加する。
【0088】
情報処理部24は、情報処理を行う装置である。例えば、情報処理部24は、コンピュータである。
【0089】
具体的には、情報処理部24は、測定部21等を介して、磁気センサ12から出力された磁気信号に基づいて、キャンセルコイル13に電流を入力電流として印加してもよい。その際、情報処理部24は、交流電流が蓄電池31に印加された状態において磁気センサ12から出力された磁気センサ信号から、交流電流の周波数よりも低い周波数の磁場成分を示す低周波信号を取得してもよい。そして、情報処理部24は、低周波信号に基づいてキャンセルコイル13に電流を入力電流として印加してもよい。
【0090】
また、例えば、情報処理部24は、検波処理を行ってもよい。具体的には、情報処理部24は、交流電流が蓄電池31に印加され、かつ、入力電流がキャンセルコイル13に印加された状態において磁気センサ12から出力された磁気センサ信号から、交流電流の周波数と同じ周波数の磁場成分を示す検波信号を取得する。
【0091】
また、例えば、情報処理部24は、検波信号に基づいて、蓄電池31の状態を示す画像を生成してもよい。また、情報処理部24は、生成された画像をディスプレイ17に表示してもよい。
【0092】
蓄電池検査装置10によって検査される蓄電池31は、リチウム電池又はリチウムイオン電池等である。蓄電池31は、1対の電極端子32及び33を有する。電極端子32及び33のそれぞれと電源部23とは、導線を介して接続される。そして、電源部23が交流電流を蓄電池31に印加した状態で、測定部21が磁気センサ12によって磁場を測定する。
【0093】
なお、
図1に示された蓄電池検査装置10の具体的な例は、
図3の例に限られない。例えば、一部の構成要素が省略されてもよいし、他の構成要素が追加されてもよい。また、
図3に示された測定部21、電源部23、ディスプレイ17及び情報処理部24のうちの一部又は全部が一体的な構造を有していてもよい。
【0094】
図4は、
図3に示された磁気センサ12の具体的な構造を示す概念図である。磁気センサ12は、TMR(Tunneling Magneto Resistive)素子で構成される。
【0095】
TMR素子では、10nmから100nm程度の厚さを有する磁性体膜で絶縁膜が挟まれている。より具体的には、TMR素子は、ソフト層25、トンネル層26、及び、PIN層(磁化固定層)27の複数の薄膜で構成される。ソフト層25は、外界の磁化の方向に応じて、磁化の方向が変動する磁性体膜である。PIN層27は、磁化の方向が変動しない磁性体膜である。そして、トンネル層26は、絶縁膜である。
【0096】
ソフト層25における磁化の方向、及び、PIN層27における磁化の方向が同じである場合と、それらの方向が異なっている場合とで電気抵抗が異なる。この電気抵抗の変化を利用して磁場成分が感知される。
【0097】
例えば、磁気センサ12は、上記のような特性を利用して、磁場成分を感知し測定する。なお、磁気センサ12は、TMR素子で構成される上記の例に限られず、GMR(Giant Magneto Resistive)素子又はSQUID(Superconducting Quantum Interference Device)素子等の他の素子で構成されていてもよい。
【0098】
図5は、
図3に示された蓄電池31が検査されている状態を示す概念図である。
図5に示された蓄電池31は、1対の電極端子32及び33、1対の電極板34及び35、電解質37、並びに、メタルパッケージ38を含む。1対の電極板34及び35、並びに、電解質37は、メタルパッケージ38で覆われている。
【0099】
例えば、磁気センサ12は、回転台22に載置された蓄電池31の上方の走査対象面41における複数の位置のそれぞれにおいて、磁場成分を感知する。走査対象面41は、測定面とも呼ばれる。磁気センサ12は、走査対象面41における複数の位置に順次移動し、磁場成分を感知してもよい。これにより、走査対象面41の磁場成分の情報が得られる。
【0100】
また、例えば、磁気センサ12は、複数の走査対象面41のそれぞれにおける複数の位置のそれぞれにおいて、磁場成分を感知してもよい。具体的には、磁気センサ12は、1つの走査対象面41における複数の位置のそれぞれにおいて、磁場成分を感知し、その後、磁気センサ12は、別の走査対象面41における複数の位置のそれぞれにおいて、磁場成分を感知してもよい。これにより、各走査対象面41の磁場の情報が得られる。
【0101】
さらに、複数の走査対象面41の磁場の情報から、これらの走査対象面41とは異なる再構成対象面42の磁場の情報が算出されてもよい。例えば、再構成対象面42は、電極板34の上側の表面に対応する面であってもよい。具体的には、複数の走査対象面41の磁場の情報、及び、マクスウェルの方程式を用いて、再構成対象面42の磁場の情報が算出されてもよい。また、走査対象面41又は再構成対象面42の磁場の情報、及び、マクスウェルの方程式を用いて、蓄電池31における導電率分布が算出されてもよい。
【0102】
上記のような算出処理は、
図3の情報処理部24によって行われてもよいし、
図1の画像生成処理回路によって行われてもよいし、その他の構成要素によって行われてもよい。
【0103】
蓄電池31の内部において流れる電流は、蓄電池31の外部に磁場成分を生成する。磁気センサ12は、蓄電池31の内部において流れる電流が蓄電池31の外部に生成する磁場成分を感知する。蓄電池31の内部において流れる電流が変化すれば、蓄電池31の外部の磁場成分も変化する。
【0104】
例えば、蓄電池31の充放電過程において、電極板34又は電極板35に金属が析出されることによって、蓄電池31の内部にデンドライト36が発生し、成長する場合がある。
【0105】
デンドライト36の導電率は、電解質37の導電率に比べて高い。したがって、蓄電池31の内部にデンドライト36が発生すれば、蓄電池31の内部の電気的な状態が変化する。これにより、蓄電池31の外部の磁場成分も変化する。例えば、蓄電池検査装置10は、蓄電池31の外部の磁場成分を感知することによって、デンドライト36の発生及び成長の状態を検査することができる。
【0106】
一方、デンドライト36の発生及び成長に伴って、蓄電池31の内部の電気的な状態が変化するため、蓄電池31の外部の磁場成分も変化する。蓄電池31の外部の複数の位置において磁場成分を感知するには時間がかかり、経時的に変化する磁場成分を広範囲かつ高解像度で感知することは容易ではない。
【0107】
また、蓄電池31の充放電を停止することで、デンドライト36の発生及び成長が抑制され、蓄電池31の内部の電気的な状態の変化も抑制される。しかし、蓄電池31の充放電が停止された状態では、蓄電池31の内部の電気的な状態に基づく磁場成分も生成されない。よって、この状態では、デンドライト36の発生及び成長の状態を検査することは困難である。
【0108】
そこで、蓄電池検査装置10は、蓄電池31の出力電圧に対してバランスをとるための直流電圧に交流電圧が重畳された外部電圧を蓄電池31に印加することにより、交流電流を蓄電池31に印加する。これにより、蓄電池31において、デンドライト36の発生及び成長が抑制された状態で、交流電流が流れる。蓄電池31に流れる交流電流は、蓄電池31の内部の電気的な状態に基づく磁場成分を生成する。
【0109】
蓄電池検査装置10は、蓄電池31に流れる交流電流が生成する磁場成分を感知することで、デンドライト36の発生及び成長の状態を検査することができる。また、蓄電池検査装置10は、交流電流の周波数に対応する磁場成分を抽出することで、蓄電池31の内部の電気的な状態に基づく磁場成分を抽出することができる。したがって、蓄電池検査装置10は、蓄電池31の内部の電気的な状態を適切に検査することができる。
【0110】
ただし、交流電流の周波数が高い場合、交流電流によって生成される磁場成分が、電極板34及び35、並びに、メタルパッケージ38等の遮蔽部によって遮蔽され、蓄電池31の外部に漏洩しない。そのため、例えば、交流電圧及び交流電流に所定周波数よりも低い周波数が用いられる。ここで、所定周波数は、遮蔽部の導電率がσsであり、遮蔽部の透磁率がμsであり、遮蔽部の厚さがdsである場合、1/(πσsμsds
2)である。これにより、蓄電池31の外部に磁場成分が生成される。
【0111】
なお、充放電の影響を抑制し、かつ、交流電流の周波数に対応する磁場成分の測定時間を短縮するため、所定周波数よりも低く、かつ、所定周波数の1/2よりも高い周波数が用いられてもよい。あるいは、所定周波数よりも低く、かつ、所定周波数の1/10よりも高い周波数が用いられてもよい。一方、より確実に蓄電池31の外部に磁場成分が生成されるように、所定周波数の1/2よりも低い周波数が用いられてもよいし、所定周波数の1/10よりも低い周波数が用いられてもよい。
【0112】
図6は、
図3に示された蓄電池31に印加される電流の推移を示すグラフである。この例では、蓄電池検査装置10は、時刻T
1まで、蓄電池31の充電のための直流電圧を蓄電池31に印加することにより、直流電流を蓄電池31に印加する。また、蓄電池検査装置10は、時刻T
1から時刻T
2まで、蓄電池31の出力電圧に対してバランスをとるための直流電圧と、交流電圧との重畳電圧を蓄電池31に印加することにより、交流電流を蓄電池31に印加する。
【0113】
また、蓄電池検査装置10は、時刻T2から時刻T3まで、充電のための直流電圧を蓄電池31に印加することにより、直流電流を蓄電池31に印加する。また、蓄電池検査装置10は、時刻T3から時刻T4まで、バランスをとるための直流電圧と、交流電圧との重畳電圧を蓄電池31に印加することにより、交流電流を蓄電池31に印加する。また、蓄電池検査装置10は、時刻T4から、充電のための直流電圧を蓄電池31に印加することにより、直流電流を蓄電池31に印加する。
【0114】
これにより、時刻T1まで、蓄電池31の充電が行われる。また、時刻T1から時刻T2まで、蓄電池31の充電が抑制される。また、時刻T2から時刻T3まで、蓄電池31の充電が行われる。また、時刻T3から時刻T4まで、蓄電池31の充電が抑制される。また、時刻T4から、蓄電池31の充電が行われる。
【0115】
そして、充電が行われる期間に、デンドライト36が成長する。そして、充電が抑制されている期間に、デンドライト36の成長が停止する。蓄電池検査装置10は、デンドライト36の成長が停止している期間に、蓄電池31の周辺の磁場成分を感知する。すなわち、蓄電池検査装置10は、蓄電池31に交流電流を印加している状態において、蓄電池31の周辺の磁場成分を感知する。
【0116】
図7は、
図3に示された蓄電池31の蓄電率の推移を示すグラフである。
図7の例は、
図6の例に対応する。
図7では、電流に代えて蓄電率が縦軸に用いられている。
図6のように、充電が行われている期間では、蓄電率が増加する。そして、充電が抑制されている期間では、蓄電率の増加が抑制される。蓄電池検査装置10は、蓄電率の増加が抑制されている期間において磁場成分を感知することにより、充電過程の途中の時点におけるデンドライト36の成長を検査することができる。
【0117】
また、蓄電池検査装置10は、充電過程において、蓄電率の増加が抑制されている複数の期間のそれぞれにおいて、磁場成分を感知し、感知された磁場成分に基づいて、蓄電池31の状態を示す画像を生成してもよい。つまり、蓄電池検査装置10は、充電過程の途中の複数の時点に対応する複数の画像を生成してもよい。これにより、蓄電池検査装置10は、デンドライト36が成長する過程を映像として生成することができる。
【0118】
なお、
図6及び
図7は、充電過程に対応する遷移を示している。しかし、蓄電池検査装置10は、放電過程において、充電過程と同様の動作を行うことができる。また、充放電過程か否かにかかわらず、蓄電池31の検査が行われてもよい。つまり、蓄電池検査装置10は、充放電過程か否かにかかわらず、蓄電池31に交流電流を印加して、蓄電池31の外部の磁場成分を感知し、感知された磁場成分に基づいて、蓄電池31の状態を示す画像を生成してもよい。
【0119】
図8は、
図1に示された蓄電池検査装置10の全体構成を示す概念図である。蓄電制御回路11は、交流電圧と直流電圧との重畳電圧を蓄電池31に印加する。ここで、直流電圧は、蓄電池31の出力電圧(解放電圧とも呼ばれる)に対してバランスをとるための電圧であって、蓄電池31の充電状態を維持するためのオフセット電圧である。具体的には、直流電圧の大きさは、蓄電池31の出力電圧の大きさと同じである。これにより、蓄電池31の充放電が抑制される。
【0120】
交流電圧と直流電圧との重畳電圧が蓄電池31に印加されることにより、交流電流が蓄電池31に印加される。例えば、0.1Hz~10Hz程度の交流電流が蓄電池31に印加される。そして、蓄電池31に印加された交流電流によって蓄電池31の外部に磁場成分が生成される。
【0121】
磁気センサ12は、蓄電池31の外部に生成された磁場成分を感知する。また、磁気センサ12は、蓄電池31に向かう方向とは垂直な2次元平面上を走査する。
【0122】
一方、蓄電池31に含まれる磁性体の残留磁化によっても、蓄電池31の外部に磁場成分が生成される。磁気センサ12は、蓄電池31に含まれる磁性体の残留磁化によって生成される磁場成分の影響を受けると、蓄電池31に印加された交流電流によって生成される磁場成分を適切に感知することが困難になる。
【0123】
そこで、キャンセルコイル13が、残留磁化によって生成される磁場成分を打ち消すための磁場成分を入力電流に基づいて生成する。ここで、入力電流は、フィードバック回路14によってキャンセルコイル13に印加される電流である。この入力電流をフィードバック電流とも呼ぶ。
【0124】
フィードバック回路14は、信号処理回路51と電流増幅回路52とを備える。信号処理回路51は、磁気センサ12から出力されプリアンプ18で増幅された磁気センサ信号を取得し、電流増幅回路52へ制御信号を出力する。例えば、信号処理回路51は、磁気センサ信号から、交流電流の周波数よりも低い周波数の磁場成分を示す低周波信号を取得する。そして、信号処理回路51は、低周波信号に基づいて、キャンセルコイル13に印加されるべきフィードバック電流の大きさを示す制御信号を出力する。
【0125】
具体的には、信号処理回路51は、低周波信号が交流電流の周波数よりも低い周波数の磁場成分として示す磁場成分が大きいほど、より大きい値をフィードバック電流の大きさとして示す制御信号を出力する。
【0126】
電流増幅回路52は、信号処理回路51から出力された制御信号によって示される大きさを有するフィードバック電流をキャンセルコイル13に印加する。これにより、交流電流の周波数よりも低い周波数の磁場成分に基づいて、残留磁化によって生成される磁場成分を打ち消すための磁場成分が生成される。
【0127】
残留磁化によって生成される磁場成分は、交流電流の周波数よりも低い周波数の磁場成分で構成されると想定される。したがって、蓄電池検査装置10は、交流電流の周波数よりも低い周波数の磁場成分に基づいて磁場成分を生成することで、残留磁化によって生成される磁場成分と同程度の磁場成分を生成することができる。よって、蓄電池検査装置10は、残留磁化によって生成される磁場成分を適切に打ち消すことができる。
【0128】
検波回路15は、磁気センサ12から磁気センサ信号を取得する。例えば、検波回路15は、磁気センサ12から、プリアンプ18及びハイパスフィルタ19を介して、増幅され、低周波成分が取り除かれた磁気センサ信号を取得する。また、検波回路15は、蓄電制御回路11から参照信号を取得する。ここで、参照信号は、蓄電池31に印加される電圧又は電流を示す。
【0129】
具体的には、参照信号は、蓄電制御回路11において直流電圧に重畳される交流電圧、又は、蓄電池31に印加される交流電流と同じ周波数及び位相を有するアナログ信号であってもよい。また、参照信号は、蓄電池31に印加される交流信号と同じであってもよい。つまり、参照信号は、蓄電池31に印加される電圧及び電流と同じ電圧及び電流のアナログ信号であってもよい。あるいは、参照信号は、蓄電池31に印加される電圧又は電流の情報を示すアナログ信号又はデジタル信号であってもよい。
【0130】
そして、検波回路15は、磁気センサ信号及び参照信号に基づいて、蓄電池31に印加された交流電流の周波数と同じ周波数を有する磁場成分を示す信号を検波信号として取得する。
【0131】
画像化回路16は、検波回路15によって取得された検波信号に基づいて、蓄電池31の状態を示す画像を生成する。この画像は、蓄電池31の表面付近の磁場成分、又は、蓄電池31の導電率分布等を蓄電池31の状態として示していてもよい。そして、画像化回路16は、生成された画像を示す画像信号をディスプレイ17に出力する。
【0132】
ディスプレイ17は、画像化回路16から出力された画像信号に基づいて、蓄電池31の状態を示す画像を表示する。
【0133】
図9は、
図8に示されたフィードバック回路14の構成を示すブロック図である。
図9に示されたように、磁気センサ12は、磁場成分を感知し、感知された磁場成分を示す磁気センサ信号を出力する。例えば、磁気センサ信号の強さは、磁場成分の強さに比例し、磁場成分が強いほど、より強い磁気センサ信号が出力され、磁気センサ信号の周波数特性は、磁場成分の周波数特性に一致する。
【0134】
フィードバック回路14における信号処理回路51は、磁気センサ12から出力されプリアンプ18で増幅された磁気センサ信号に対して、ローパスフィルタ(LPF)を適用する。また、ローパスフィルタの遮断周波数(fcut)には、検波周波数(f0)よりも低い周波数が適用される。ローパスフィルタの遮断周波数は、カットオフ周波数とも呼ばれる。検波周波数は、蓄電池31に印加される交流電流の周波数である。
【0135】
これにより、信号処理回路51は、蓄電池31に印加される交流電流の周波数よりも低い周波数の磁場成分を示す低周波信号を取得することができる。
【0136】
また、ローパスフィルタの遮断周波数が低すぎる場合、ローパスフィルタの処理に時間がかかると想定される。例えば、遮断周波数の周期(遮断周波数の逆数)に対応する処理遅延が生じ得る。そのため、遮断周波数は、検波周波数とほぼ同じ周波数に規定されてもよい。
【0137】
一方で、ローパスフィルタ又は磁場成分の感知に関する処理の過程で誤差が発生すると想定される。そのため、誤差が発生しても検波(交流電流の周波数と同じ周波数の磁場成分の取得)が適切に行われるように、遮断周波数は、検波周波数の1/10に規定されてもよい。あるいは、誤差と遅延とのバランスに基づいて、遮断周波数は、検波周波数の1/10以上に規定されてもよい。
【0138】
これにより、信号処理回路51は、ローパスフィルタにおける処理遅延を抑制しつつ、蓄電池31に流れる交流電流の周波数よりも低い周波数の磁場成分を示す低周波信号を適切に取得することができる。
【0139】
そして、信号処理回路51は、PID(Proportional-Integral-Differential)制御によって、低周波信号の強さを目標値に近づけるための制御信号を生成する。例えば、制御信号は、低周波信号の強さを目標値に近づけるためのフィードバック電流(If)の大きさを示す。
【0140】
PID制御は、測定値と目標値との偏差、偏差の積分、及び、偏差の微分を用いて、継続的に得られる測定値を目標値に近づけるフィードバック制御である。例えば、目標値は、磁場成分の強さがゼロである状態で得られる低周波信号の強さであってもよい。
【0141】
フィードバック電流の大きさをPID制御によって制御する上記の動作は、信号の強さに着目して説明されている。磁場成分の強さに着目すれば、上記の動作は、低周波信号が示す磁場成分の強さを目標値に近づけるための動作とみなされ得る。この場合の目標値は、ゼロであってもよい。ここで、蓄電池31が存在しない場合において、又は、蓄電池31が磁場成分を生成しない場合において、磁気センサ12によって感知される磁場成分の強さがゼロと規定されてもよい。
【0142】
例えば、信号処理回路51は、低周波信号が示す磁場成分の強さをゼロに近づけるためのフィードバック電流の大きさを示す制御信号を生成する。そして、信号処理回路51は、電流増幅回路52へ制御信号を出力し、電流増幅回路52は、制御信号に従って、フィードバック電流をキャンセルコイル13に印加する。
【0143】
これにより、蓄電池検査装置10は、蓄電池31に印加される交流電流の周波数よりも低い周波数であって、ローパスフィルタの遮断周波数よりも低い周波数の磁場成分の強さをゼロに近づけることができる。つまり、蓄電池検査装置10は、蓄電池31の磁性体の磁化によって生成される磁場成分を打ち消すことができる。
【0144】
図10は、
図9に示された信号処理回路51の構成を示すブロック図である。
図10の例において、信号処理回路51は、ADC(アナログデジタル変換器)61、ローパスフィルタ62、減算器63、PID演算器64、加算器65、及び、DAC(デジタルアナログ変換器)66を備える。
【0145】
ADC61は、アナログ信号をデジタル信号に変換するための変換器である。ADC61として16ビットADコンバータ等が用いられ得る。ADC61は、磁気センサ12から出力された磁気センサ信号をアナログ信号として取得し、アナログ信号として取得された磁気センサ信号をデジタル信号に変換する。
【0146】
ローパスフィルタ62は、遮断周波数よりも高い周波数の成分を遮断し、遮断周波数よりも低い周波数の成分を通過させるフィルタである。ローパスフィルタ62の遮断周波数には、蓄電池31に印加される交流電流の周波数よりも低い周波数が適用される。例えば、ローパスフィルタ62は、検波周波数の逆数よりも長い期間、つまり、蓄電池31に印加される交流電流の周期よりも長い期間にわたって磁気センサ信号を平均化し、平均化された磁気センサ信号を出力してもよい。
【0147】
これにより、ローパスフィルタ62は、磁気センサ信号のうち、交流電流の周波数よりも低い周波数の成分を通過させることができる。つまり、これにより、蓄電池31に印加される交流電流の周波数よりも低い周波数の磁場成分を示す低周波信号がローパスフィルタ62から出力される。なお、磁気センサ信号を平均化するための期間は、積算時間とも呼ばれる。
【0148】
なお、ここで、遮断周波数よりも高い周波数の成分を遮断することは、遮断周波数よりも高い周波数の成分の通過を抑制することを意味し、遮断周波数よりも高い周波数の成分を完全に遮断することに限られない。同様に、遮断周波数よりも低い周波数の成分を通過させるとは、遮断周波数よりも低い周波数の成分の遮断を抑制することを意味し、遮断周波数よりも低い周波数の成分を完全に通過することに限られない。遮断及び通過の度合いは、ローパスフィルタ62の品質に依存する。
【0149】
また、ローパスフィルタ62は、遮断周波数と同じ成分を遮断してもよいし通過させてもよいし、遮断周波数と同じ成分の一部を遮断し他部を通過させてもよい。
【0150】
減算器63は、2つの信号の差を算出する演算器である。具体的には、減算器63は、ローパスフィルタ62から出力された低周波信号を入力目標値から減算ことにより得られる差を偏差e(t)として算出する。ここで、tは、時間を示す。入力目標値は、磁場成分の強さがゼロである状態の低周波信号である。
【0151】
PID演算器64は、偏差の比例項、積分項及び微分項を算出する演算器である。具体的には、PID演算器64は、偏差e(t)の比例項、時間tに関する偏差e(t)の積分項、及び、時間tに関する偏差e(t)の微分項を算出する。比例項は、偏差e(t)と比例ゲインKPとの乗算で構成される。積分項は、時間tに関する偏差e(t)の積分と積分ゲインKIとの乗算で構成される。微分項は、時間tに関する偏差e(t)の微分と微分ゲインKDとの乗算で構成される。
【0152】
比例項は、偏差e(t)自体に対応し、偏差e(t)の現在値に関連する。積分項は、偏差e(t)の累積に対応し、過去の偏差e(t)の実績値に関連する。微分項は、偏差e(t)の変化に対応し、将来の偏差e(t)の予測値に関連する。
【0153】
加算器65は、複数の信号の和を算出する演算器である。具体的には、加算器65は、偏差e(t)の比例項、時間tに関する偏差e(t)の積分項、及び、時間tに関する偏差e(t)の微分項の和を制御信号として算出する。
【0154】
DAC66は、デジタル信号をアナログ信号に変換するための変換器である。DAC66として16ビットDAコンバータ等が用いられ得る。DAC66は、加算器65で算出された制御信号をデジタル信号として取得し、デジタル信号として取得された制御信号をアナログ信号に変換する。
【0155】
DAC66でアナログ信号に変換された制御信号は、電流増幅回路52に入力される。これにより、電流増幅回路52は、偏差の比例項、積分項及び微分項の和に対応する大きさを有するフィードバック電流をキャンセルコイル13に印加することができる。
【0156】
これにより、蓄電池検査装置10は、偏差e(t)の現在値、実績値及び予測値に対応する比例項、積分項及び微分項に従って、偏差e(t)をゼロに収束させることができる。そして、蓄電池検査装置10は、交流電流の周波数よりも低い周波数の磁場成分の強さをゼロに近づけることができ、蓄電池31の残留磁化の影響を抑制することができる。
【0157】
例えば、上記の説明における比例ゲインKP、積分ゲインKI及び微分ゲインKDのそれぞれについて、ゼロとは異なる数値が用いられてもよいし、ゼロが用いられてもよい。具体的には、微分ゲインKDにゼロが用いられることで、PID制御がPI制御として行われてもよい。また、積分ゲインKIにゼロが用いられることで、PID制御がPD制御として行われてもよい。
【0158】
また、上記の説明では、信号処理回路51のローパスフィルタ及びPID制御に、デジタル回路方式が用いられている。しかし、信号処理回路51のローパスフィルタ及びPID制御に、アナログ回路方式が用いられてもよい。
【0159】
つまり、ローパスフィルタ62、減算器63、PID演算器64及び加算器65が、アナログ回路で構築されてもよい。そして、信号処理回路51は、磁気センサ信号をデジタル信号に変換せずに、アナログ信号のままの磁気センサ信号に対して、ローパスフィルタ及びPID制御を適用してもよい。これにより、蓄電池検査装置10は、アナログ信号のまま、高速にフィードバック電流を制御することができる。
【0160】
図11は、
図8に示された検波回路15の構成を示すブロック図である。
図11の例において、検波回路15は、DI(ダイレクトインジェクションボックス)71、ADC(アナログデジタル変換器)72、ミキサー73及びローパスフィルタ74を備え、位相検波を行う。なお、ここでは、位相検波の例が示されているが、検波回路15は、その他の方法で検波信号を取得してもよい。
【0161】
DI71は、インピーダンス変換器である。具体的には、DI71は、蓄電制御回路11から出力された参照信号を取得し、参照信号の電圧及び電流の比を調整して、位相検波のための基準信号を生成する。例えば、基準信号は、デジタル信号として生成される。
【0162】
ADC72は、アナログ信号をデジタル信号に変換するための変換器である。ADC72として16ビットADコンバータ等が用いられ得る。ADC72は、磁気センサ12から出力された磁気センサ信号をアナログ信号として取得し、アナログ信号として取得された磁気センサ信号をデジタル信号に変換する。
【0163】
ミキサー73は、複数の信号を混合する回路である。具体的には、ミキサー73は、DI71で生成された基準信号と、ADC72でデジタル信号に変換された磁気センサ信号との乗算を行い、乗算の結果を乗算結果信号として出力する。乗算結果信号の直流成分は、交流電流の周波数と同じ周波数の磁場成分に対応する。
【0164】
ローパスフィルタ74は、遮断周波数よりも高い周波数の成分を遮断し、遮断周波数よりも低い周波数の成分を通過させるフィルタである。ローパスフィルタ74は、乗算結果信号を取得して、乗算結果信号の交流成分を遮断し、乗算結果信号の直流成分を通過させる。これにより、ローパスフィルタ74は、交流電流の周波数と同じ周波数の磁場成分に対応する検波信号を出力する。
【0165】
検波回路15は、記憶回路75に検波信号を記憶する。上記の例において、検波回路15にデジタル回路方式が適用されているが、検波回路15にアナログ回路方式が適用されてもよい。つまり、検波回路15は、磁気センサ信号に対してアナログ信号のまま検波処理を行うことにより、交流電流と同じ周波数の磁場成分を示す検波信号を取得してもよい。
【0166】
画像化回路16は、記憶回路75に記憶された検波信号に基づいて、蓄電池31の状態を示す画像を生成する。画像化回路16は、蓄電池31の内部の導電率分布を蓄電池31の状態として示す画像を生成してもよい。以下に、
図12及び
図13を用いて、画像化回路16が蓄電池31の内部の導電率分布を導出する例を説明する。
【0167】
図12は、
図11に示された画像化回路16が行う画像化のための座標系を示す概念図である。
図12には、蓄電池31と座標系との関係が示されている。x方向及びy方向は、蓄電池31に含まれる平面状の電極板に平行な2つの方向であり、互いに垂直な2つの方向である。z方向は、x方向及びy方向に垂直な方向である。
【0168】
図13は、
図12に示された蓄電池31の検査時に流れる電流を示す概念図である。蓄電池31は、1層のリチウムイオン電池のセルに対応し、平面状の1対の電極板34及び35を有する。電極板34は、電極端子32に接続され、電極板35は、電極端子33に接続される。蓄電池検査装置10は、蓄電池31に交流電流が流れている状態で、蓄電池31の上方の走査対象面41において磁気センサ12を介して磁場成分を感知する。
【0169】
また、hは、電極板34の厚みを示し、hTは、1対の電極板34及び35の間の距離を示し、jxは、x方向の電流を示し、jzは、z方向の電流を示す。
【0170】
この場合において、以下の式(1)が成立する。
【0171】
【0172】
ここで、Δは、ラプラス作用素又はラプラシアンと呼ばれる演算子を示す。また、Hxは、x方向の磁場成分を示し、Hyは、y方向の磁場成分を示す。また、∂xは、xについての偏微分を示し、∂yは、yについての偏微分を示す。また、σ(x,y)は、1対の電極板34及び35の間の2次元平面上の導電率分布を示す。また、σ0は、電極板34の導電率を示し、x座標及びy座標によらず一定である。また、δは、デルタ関数を示し、δ’は、デルタ関数の微分を示す。また、z0は、電極板34の中心のz座標を示す。
【0173】
また、
【数2】
は、1対の電極板34及び35の間の2次元平面上の電位分布を示す。
【0174】
式(1)に基づいて、以下の式(2)が得られる。
【0175】
【0176】
ここで、
【数4】
は、
【数5】
のx方向及びy方向についてのフーリエ変換後の関数を示し、k
xは、x方向の磁場成分の波数を示し、k
yは、y方向の磁場成分の波数を示す。また、Q
xは、H
xのx方向及びy方向についてのフーリエ変換後の関数を示し、Q
yは、H
yのx方向及びy方向についてのフーリエ変換後の関数を示す。
【0177】
さらに、Qx及びQyは、以下の式(3)を満たす。
【0178】
【0179】
例えば、画像化回路16は、式(2)及び式(3)を用いて、交流電流によって生成される磁場成分を示す検波信号から、導電率分布σ(x,y)を導出し、導電率分布σ(x,y)を示す画像を生成する。
【0180】
なお、画像化回路16は、上記とは異なる方法で導電率分布を導出してもよい。また、画像化回路16は、導電率分布を導出せずに、検波信号によって示される磁場成分の強度分布を示す画像を生成してもよい。
【0181】
図14は、
図8に示された蓄電池31に含まれる平面状の電極板に垂直な方向の磁場成分を感知する磁気センサ12がキャンセルコイル13の内側に位置する場合の例を示す概念図である。
【0182】
図14の例において、磁気センサ12は、キャンセルコイル13の内側に位置する。これにより、キャンセルコイル13は、磁気センサ12の位置において、蓄電池31の磁性体の磁化によって生成される磁場成分を打ち消すための磁場成分を生成することができる。したがって、蓄電池検査装置10は、蓄電池31の磁性体の磁化によって生成される磁場成分を磁気センサ12の位置において打ち消すことができ、交流電力によって生成される磁場成分を適切に感知することができる。
【0183】
また、
図14の例において、キャンセルコイル13の中心軸は、蓄電池31に含まれる平面状の電極板に対して垂直である。
【0184】
これにより、キャンセルコイル13は、蓄電池31の磁性体の磁化によって生成される磁場成分を打ち消すための磁場成分として、蓄電池31に含まれる平面状の電極板に対して垂直な方向の磁場成分を生成することができる。したがって、蓄電池検査装置10は、蓄電池31に含まれる平面状の電極板に対して垂直な方向について、蓄電池31の磁性体の磁化によって生成される磁場成分を打ち消すことができ、交流電力によって生成される磁場成分を適切に感知することができる。
【0185】
また、蓄電池検査装置10は、例えばクラックで蓄電池31の導電体に穴が開いている場合などにおいて影響を受ける磁場成分を適切に感知することができる。
【0186】
図15は、
図8に示された蓄電池31に含まれる平面状の電極板に平行な方向の磁場成分を感知する磁気センサ12がキャンセルコイル13の内側に位置する場合の例を示す概念図である。
【0187】
図15の例において、
図14の例と同様に、磁気センサ12は、キャンセルコイル13の内側に位置する。これにより、キャンセルコイル13は、磁気センサ12の位置において、蓄電池31の磁性体の磁化によって生成される磁場成分を打ち消すための磁場成分を生成することができる。したがって、蓄電池検査装置10は、蓄電池31の磁性体の磁化によって生成される磁場成分を磁気センサ12の位置において効率的に打ち消すことができ、交流電力によって生成される磁場成分を適切に感知することができる。
【0188】
また、
図15の例において、キャンセルコイル13の中心軸は、蓄電池31に含まれる平面状の電極板に対して平行である。
【0189】
これにより、キャンセルコイル13は、蓄電池31の磁性体の磁化によって生成される磁場成分を打ち消すための磁場成分として、蓄電池31に含まれる平面状の電極板に対して平行な方向の磁場成分を生成することができる。したがって、蓄電池検査装置10は、蓄電池31に含まれる平面状の電極板に対して平行な方向について、蓄電池31の磁性体の磁化によって生成される磁場成分を打ち消すことができ、交流電力によって生成される磁場成分を適切に感知することができる。
【0190】
特に、交流電流が印加された蓄電池31の外部には、蓄電池31に含まれる平面状の電極板に対して平行な方向の磁場成分が生成されると想定される。したがって、蓄電池31に含まれる平面状の電極板に対して平行な方向について、蓄電池31の磁性体の磁化によって生成される磁場成分を打ち消し、交流電力によって生成される磁場成分を感知することは有用である。
【0191】
図16は、
図8に示された蓄電池31に含まれる平面状の電極板に垂直な方向の磁場成分を感知する磁気センサ12がキャンセルコイル13の外側に位置する場合の例を示す概念図である。
【0192】
図16の例において、磁気センサ12は、キャンセルコイル13の外側に位置する。具体的には、磁気センサ12の付近にキャンセルコイル13が配置される。このような場合でも、キャンセルコイル13は、磁気センサ12から離れた位置において、蓄電池31の磁性体の磁化によって生成される磁場成分を打ち消すための磁場成分を生成することができる。そして、キャンセルコイル13の位置が、より柔軟に規定され得る。
【0193】
また、
図16の例において、磁気センサ12は、キャンセルコイル13の中心軸上の領域に位置する。したがって、キャンセルコイル13は、磁気センサ12に向けて、蓄電池31の磁性体の磁化によって生成される磁場成分を打ち消すための磁場成分を生成することができる。したがって、キャンセルコイル13は、磁気センサ12の付近に、蓄電池31の磁性体の磁化によって生成される磁場成分を打ち消すための磁場成分を生成することができる。
【0194】
また、
図16の例において、
図14の例と同様に、キャンセルコイル13の中心軸は、蓄電池31に含まれる平面状の電極板に対して垂直である。
【0195】
これにより、キャンセルコイル13は、蓄電池31の磁性体の磁化によって生成される磁場成分を打ち消すための磁場成分として、蓄電池31に含まれる平面状の電極板に対して垂直な方向の磁場成分を生成することができる。したがって、蓄電池検査装置10は、蓄電池31に含まれる平面状の電極板に対して垂直な方向について、蓄電池31の磁性体の磁化によって生成される磁場成分を打ち消すことができ、交流電力によって生成される磁場成分を適切に感知することができる。
【0196】
図17は、
図8に示された蓄電池31に含まれる平面状の電極板に平行な方向の磁場成分を感知する磁気センサ12がキャンセルコイル13の外側に位置する場合の例を示す概念図である。
【0197】
図17の例において、
図16の例と同様に、磁気センサ12は、キャンセルコイル13の外側に位置する。具体的には、磁気センサ12の付近にキャンセルコイル13が配置される。このような場合でも、キャンセルコイル13は、磁気センサ12から離れた位置において、蓄電池31の磁性体の磁化によって生成される磁場成分を打ち消すための磁場成分を生成することができる。そして、キャンセルコイル13の位置が、より柔軟に規定され得る。
【0198】
また、
図17の例において、磁気センサ12は、キャンセルコイル13の中心軸上の領域とは異なる領域に位置する。したがって、キャンセルコイル13の中心軸の方向が柔軟に規定され得る。よって、蓄電池検査装置10は、磁気センサ12から離れた位置において、蓄電池31の磁性体の磁化によって生成される磁場成分を打ち消すための磁場成分として、柔軟に規定され得る方向の磁場成分を生成することができる。
【0199】
そして、
図17の例において、
図15の例と同様に、キャンセルコイル13の中心軸は、蓄電池31に含まれる平面状の電極板に対して平行である。
【0200】
これにより、キャンセルコイル13は、蓄電池31の磁性体の磁化によって生成される磁場成分を打ち消すための磁場成分として、蓄電池31に含まれる平面状の電極板に対して平行な方向の磁場成分を生成することができる。したがって、蓄電池検査装置10は、蓄電池31に含まれる平面状の電極板に対して平行な方向について、蓄電池31の磁性体の磁化によって生成される磁場成分を打ち消すことができ、交流電力によって生成される磁場成分を適切に感知することができる。
【0201】
図18は、
図8に示された蓄電池31に含まれる平面状の電極板に垂直な方向の磁場成分を複数の磁気センサ12が感知する場合の例を示す概念図である。
【0202】
図18の例において、蓄電池検査装置10は、複数の磁気センサ12、及び、複数の磁気センサ12にそれぞれ対応する複数のキャンセルコイル13を備える。具体的には、複数のキャンセルコイル13は、複数の磁気センサ12に1対1に対応する。蓄電池検査装置10のフィードバック回路14は、各磁気センサ12から出力された磁気センサ信号から低周波信号を取得し、その磁気センサ12に対応するキャンセルコイル13に低周波信号に基づいてフィードバック電流を印加する。
【0203】
これにより、蓄電池検査装置10は、短期間に広範囲の磁場成分を適切に感知することができる。
【0204】
また、
図18の例において、複数の磁気センサ12が、蓄電池31の上面を覆うように、行列状に配置される。つまり、複数の磁気センサ12が、測定面上に行列状に配置される。そして、複数の磁気センサ12にそれぞれ対応する複数のキャンセルコイル13が複数の磁気センサ12の上方に配置される。そして、各キャンセルコイル13の中心軸は、蓄電池31に含まれる平面状の電極板に対して垂直である。
【0205】
これにより、各キャンセルコイル13は、蓄電池31の磁性体の磁化によって生成される磁場成分を打ち消すための磁場成分として、蓄電池31に含まれる平面状の電極板に対して垂直な方向の磁場成分を生成することができる。したがって、蓄電池検査装置10は、蓄電池31に含まれる平面状の電極板に対して垂直な方向について、蓄電池31の磁性体の磁化によって生成される磁場成分を打ち消すことができ、交流電力によって生成される磁場成分を適切に感知することができる。
【0206】
図19は、
図8に示された蓄電池31に含まれる平面状の電極板に平行な方向の磁場成分を複数の磁気センサ12が感知する場合の例を示す概念図である。
【0207】
図19の例は、
図18の例とほぼ同じであるが、各キャンセルコイル13の中心軸は、蓄電池31に含まれる平面状の電極板に対して平行である。
【0208】
これにより、各キャンセルコイル13は、蓄電池31の磁性体の磁化によって生成される磁場成分を打ち消すための磁場成分として、蓄電池31に含まれる平面状の電極板に対して平行な方向の磁場成分を生成することができる。したがって、蓄電池検査装置10は、蓄電池31に含まれる平面状の電極板に対して平行な方向について、蓄電池31の磁性体の磁化によって生成される磁場成分を打ち消すことができ、交流電力によって生成される磁場成分を適切に感知することができる。
【0209】
図20は、
図8に示された蓄電池31に含まれる平面状の電極板に平行な方向の磁場成分を感知する磁気センサ12がキャンセルコイル13の外側に位置し、かつ、キャンセルコイル13の中心軸が電極板に垂直である場合の例を示す概念図である。
【0210】
図20の例において、
図16及び
図17の例と同様に、磁気センサ12は、キャンセルコイル13の外側に位置する。具体的には、磁気センサ12の斜め上方向にキャンセルコイル13が配置される。このような場合でも、キャンセルコイル13は、磁気センサ12から離れた位置において、蓄電池31の磁性体の磁化によって生成される磁場成分を打ち消すための磁場成分を生成することができる。そして、キャンセルコイル13の位置が、より柔軟に規定され得る。
【0211】
図21は、実施の形態における磁場成分の回り込みが用いられる例を示す概念図であって、具体的には、
図20に示された磁気センサ12及びキャンセルコイル13の関係を示す。
図21のように、キャンセルコイル13によって、磁気センサ12の付近に電極板に平行な方向の磁場成分が発生する。
【0212】
つまり、キャンセルコイル13は、蓄電池31の磁性体の磁化によって生成される磁場成分を打ち消すための磁場成分として、蓄電池31に含まれる平面状の電極板に対して平行な方向の磁場成分を生成することができる。したがって、蓄電池検査装置10は、蓄電池31に含まれる平面状の電極板に対して平行な方向について、蓄電池31の磁性体の磁化によって生成される磁場成分を打ち消すことができ、交流電力によって生成される磁場成分を適切に感知することができる。
【0213】
以上、蓄電池検査装置の態様を実施の形態に基づいて説明したが、蓄電池検査装置の態様は、実施の形態に限定されない。実施の形態に対して当業者が思いつく変形が施されてもよいし、実施の形態における複数の構成要素が任意に組み合わされてもよい。例えば、実施の形態において特定の構成要素によって実行される処理を特定の構成要素の代わりに別の構成要素が実行してもよい。また、複数の処理の順序が変更されてもよいし、複数の処理が並行して実行されてもよい。
【0214】
また、蓄電池検査装置の各構成要素が行うステップを含む蓄電池検査方法が任意の装置又はシステムによって実行されてもよい。例えば、蓄電池検査方法の一部又は全部が、プロセッサ、メモリ及び入出力回路等を備えるコンピュータによって実行されてもよい。その際、コンピュータに蓄電池検査方法を実行させるためのプログラムがコンピュータによって実行されることにより、蓄電池検査方法が実行されてもよい。
【0215】
また、非一時的なコンピュータ読み取り可能な記録媒体に、上記のプログラムが記録されていてもよい。
【0216】
また、蓄電池検査装置の各構成要素は、専用のハードウェアで構成されてもよいし、上記のプログラム等を実行する汎用のハードウェアで構成されてもよいし、これらの組み合わせで構成されてもよい。また、汎用のハードウェアは、プログラムが記録されたメモリ、及び、メモリからプログラムを読み出して実行する汎用のプロセッサ等で構成されてもよい。ここで、メモリは、半導体メモリ又はハードディスク等でもよいし、汎用のプロセッサは、CPU等でもよい。
【0217】
また、専用のハードウェアが、メモリ及び専用のプロセッサ等で構成されてもよい。例えば、専用のプロセッサが、計測データを記録するためのメモリを参照して、上記の蓄電池検査方法を実行してもよい。
【0218】
また、蓄電池検査装置の各構成要素は、電気回路であってもよい。これらの電気回路は、全体として1つの電気回路を構成してもよいし、それぞれ別々の電気回路であってもよい。また、これらの電気回路は、専用のハードウェアに対応していてもよいし、上記のプログラム等を実行する汎用のハードウェアに対応していてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0219】
本開示の一態様は、蓄電池を検査する蓄電池検査装置に有用であり、蓄電池製造システム等に適用可能である。
【符号の説明】
【0220】
10 蓄電池検査装置
11 蓄電制御回路
12 磁気センサ
13 キャンセルコイル
14 フィードバック回路
15 検波回路
16 画像化回路
17 ディスプレイ
18 プリアンプ
19 ハイパスフィルタ(HPF)
21 測定部
22 回転台
23 電源部
24 情報処理部
25 ソフト層
26 トンネル層
27 PIN層(磁化固定層)
31 蓄電池
32、33 電極端子
34、35 電極板
36 デンドライト
37 電解質
38 メタルパッケージ
41 走査対象面
42 再構成対象面
51 信号処理回路
52 電流増幅回路
61、72 アナログデジタル変換器(ADC)
62、74 ローパスフィルタ
63 減算器
64 PID演算器
65 加算器
66 デジタルアナログ変換器(DAC)
71 ダイレクトインジェクションボックス(DI)
73 ミキサー
75 記憶回路