(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】電着フォトレジスト用塗料組成物
(51)【国際特許分類】
C09D 133/14 20060101AFI20240312BHJP
C09D 4/02 20060101ALI20240312BHJP
C09D 5/44 20060101ALI20240312BHJP
C25D 9/02 20060101ALI20240312BHJP
G03F 7/033 20060101ALI20240312BHJP
G03F 7/027 20060101ALI20240312BHJP
G03F 7/16 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
C09D133/14
C09D4/02
C09D5/44 A
C25D9/02
G03F7/033
G03F7/027 501
G03F7/16
(21)【出願番号】P 2022203667
(22)【出願日】2022-12-20
【審査請求日】2022-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】390035219
【氏名又は名称】株式会社シミズ
(74)【代理人】
【識別番号】100075557
【氏名又は名称】西教 圭一郎
(72)【発明者】
【氏名】丸田 博之
(72)【発明者】
【氏名】森本 匠
(72)【発明者】
【氏名】水島 正博
【審査官】福山 駿
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-64530(JP,A)
【文献】特開2003-330188(JP,A)
【文献】特開2007-248617(JP,A)
【文献】特開2021-043329(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00-201/10
C25D 9/02
G03F 7/033
G03F 7/027
G03F 7/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)アミノ基およびヒドロキシ基を有するアクリルポリマーと、
(B)アクリルモノマーとエポキシ化合物との付加反応物と、
(C)3個以上のビニル基を有するアクリルモノマーと、
(D)光重合開始剤と、
を含有することを特徴とする電着フォトレジスト用塗料組成物。
【請求項2】
前記(A)を30~80重量部、前記(B)を1~10重量部、前記(C)を10~30重量部含有し、前記(D)を、(A)、(B)および(C)の合計100重量部に対して、1~10重量部含有することを特徴とする請求項1に記載の電着フォトレジスト用塗料組成物。
【請求項3】
前記(A)のTgが40℃以上60℃未満であることを特徴とする請求項1または2に記載の電着フォトレジスト用塗料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電着フォトレジスト用塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
電着塗装は、金属などの導電体を塗料に浸して直流電気を流して、導電体に塗膜を形成させる塗装工法の一つである。電着塗装技術を利用して、半導体集積回路の実装に用いられるリードフレームの部分めっき処理に電着フォトレジストが用いられる。三次元形状材料に対して1コートで均一にレジスト皮膜を形成できるため、連続的に搬送しながら加工処理されるリールトゥリール方式の装置に好適である。近年では、半導体部品の小型化および薄型化に伴いリードフレームの加工要求度が高まっており、電着フォトレジストの耐薬品性、露光時の塗膜の非粘着性、均一電着性などが要求されている。
【0003】
かかる電着フォトレジスト用塗料としては、アクリル樹脂と、多官能アクリル単量体と光重合開始剤とを特定比率で含み、ずり応力のヒステリシスループ差が3~10mN/cm2未満のネガ型電着フォトレジスト用組成物(特許文献1)、ビニル単量体と、側鎖に炭素数1~7のフルオロアルキル基を有するビニル単量体との共重合体に、多官能型ビニル単量体、光重合開始剤を特定比率で配合したネガ型カチオン性電着フォトレジスト用樹脂組成物(特許文献2)が知られている。
【0004】
また、アミノアルキルビニル単量体とビニル単量体とからなるビニル共重合体と、ビニル基を3個以上有する多官能アクリレートと、密着性付与剤と、光重合開始剤とを特定比率で配合したネガ型カチオン性電着フォトレジスト用樹脂組成物(特許文献3)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-330188号公報
【文献】特開2007-248617号公報
【文献】特開2021-043329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の発明は、乾燥処理による均一平滑性に優れるが、電着後の生じるピンホール径によっては平滑化しきれず、ピンホール跡が残る場合がある。特許文献2の発明は、塗膜の非粘着性に優れるが現像後の後工程でフッ素成分が混入する恐れがあり後処理工程に制約がある。特許文献3の発明は、耐薬品性の向上に期待できるがリードフレームの材質によっては効果が過剰となり剥離工程に制約がある。
【0007】
その他手法として、耐薬品性を向上するために、塗膜の柔軟性を高める手法があるが塗膜の非粘着性が損なわれてしまう。
【0008】
塗膜の非粘着性を高めるために、樹脂Tgを上げる方法があるが、電着中に析出する樹脂が連続皮膜にならず粒子状に堆積して、塗膜の凹凸部にガスが付着しやすくピンホール跡が残りやすい。
【0009】
上記のような背反する要求に対して、本発明者らは電着塗料のアクリル樹脂成分、硬化剤の構造、特性について鋭意研究を重ねた結果、剥離性能を維持しながら耐薬品性、塗膜の非粘着性、電着時のピンホール耐性に優れた電着塗料用組成物を見出し、本発明を完成した。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、
(A)アミノ基およびヒドロキシ基を有するアクリルポリマーと、
(B)アクリルモノマーとエポキシ化合物との付加反応物と、
(C)3個以上のビニル基を有するアクリルモノマーと、
(D)光重合開始剤と、
を含有することを特徴とする電着フォトレジスト塗料用組成物である。
【0011】
また、本発明は前記(A)を30~80重量部、前記(B)を1~10重量部、前記(C)を10~30重量部含み、前記(D)を、(A)、(B)および(C)の合計100重量部に対して、1~10重量部含有することを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、前記(A)のTgが40℃以上60℃未満であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の電着フォトレジスト用塗料組成物を用いた塗膜は、耐薬品性、塗膜の非粘着性、電着時のピンホール耐性に優れており、剥離工程においてレジスト剥離残りのないものを提供できるという利点がある。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の電着フォトレジスト用塗料組成物は、
(A)アミノ基およびヒドロキシ基を有するアクリルポリマーと、
(B)アクリルモノマーとエポキシ化合物との付加反応物と、
(C)3個以上のビニル基を有するアクリルモノマーと、
(D)光重合開始剤と、
を含有することを特徴とする電着フォトレジスト塗料用組成物である。
【0015】
本発明においては、アクリルモノマーはアクリレート、メタクリレート、アクリル酸、メタクリル酸であることを意味し、アクリルポリマーとは、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸およびメタクリル酸エステルの1種以上が、重合または共重合したポリマーを意味する。
【0016】
本発明において、(A)のアミノ基およびヒドロキシ基を有するアクリルポリマー(以下、A成分という)は、アミノ基を有するアクリルモノマー(以下、アミノアクリルモノマーという)、ヒドロキシ基を有するアクリルモノマー(以下、ヒドロキシアクリルモノマーという)とが重合または共重合したポリマーである。
【0017】
A成分は、アミノアクリルモノマーを5~20重量部と、ヒドロキシアクリルモノマーを5~30重量部とを含み、水酸基価が25~200mgKOH/gで、Tgが40℃以上60℃未満であることが好ましい。
【0018】
アミノアクリルモノマーが5重量部未満の場合、現像時の溶解性が下がりレジストパターンが得られないことがある。一方でアミノアクリルモノマーが20重量部を超えると現像時にレジストパターンが溶解または剥離するおそれがある。また、ヒドロキシアクリルモノマーが5重量部未満の場合、親水性が低くなり、電着時のピンホール耐性が低下するおそれがある。一方でヒドロキシアクリルモノマーが30重量部を越えると、吸水性が高くなり、現像時にレジストパターンが溶解または剥離するおそれがある。
【0019】
また、Tgが40℃未満の場合、塗膜の粘着性が高くなり、露光工程でフォトマスクが塗膜から剥れずリードフレームが変形するおそれがある。一方でTgが60℃を越える場合、電着中に析出する樹脂が連続皮膜にならず、ピンホール跡が残るおそれがある。
【0020】
アミノアクリルモノマーとしては、低級アルキルアミノ基を有するアクリルモノマーがあげられ、好ましくは炭素数3以下のアルキルアミノ基を有するアクリルモノマーがあげられる。具体的には、たとえば、アクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸ジエチルアミノエチル、アクリル酸ジプロピルアミノエチル、アクリル酸ジイソプロピルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸ジプロピルアミノエチル、メタクリル酸ジイソプロピルアミノエチルなどのアルキルアミノアルキル基を有するモノマーがあげられる。アミノアクリルモノマーは1種または2種以上を併用できる。
【0021】
ヒドロキシアクリルモノマーとしては、ヒドロキシ低級アルキル基を有するアクリルモノマーがあげられ、好ましくは炭素数4以下のヒドロキシアルキル基を有するアクリルモノマーがあげられる。具体的には、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレートなどがあげられる。ヒドロキシアクリルモノマーは1種または2種以上を併用できる。
【0022】
また、A成分には、A成分中のアミノ基、ヒドロキシ基の含有量を調整するためなどの目的で、希釈成分としてのモノマー(以下、希釈用モノマーという)を含有させることができる。
【0023】
かかる希釈用モノマーとしては、たとえば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n-プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n-オクチルアクリレート、2-エチルへキシルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、n-プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n-オクチルメタクリレート、2-エチルへキシルメタクリレートなどの炭素数10以下の脂肪族アルキルアクリルモノマーや、スチレン、α-メチルスチレン、ベンジルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ベンジルメタクリレート、フェノキシエチルメタクリレートなどの芳香族アルキルアクリルモノマーがあげられる。希釈用モノマーは1種または2種以上を併用できる。
【0024】
これらの希釈用モノマーは、特に制限はないが、炭素数が大きくなると脂肪族アルキルアクリルモノマーはA成分のTgを下げ、電着塗膜の非粘着性を低下させる傾向があり、芳香族アルキルアクリルモノマーは、使用量が多くなると電着塗膜の耐薬品性を高めるものの、疎水性が上がり電着時のピンホール耐性が悪化する場合があるので、それらの性状を勘案しつつ使用量を決定すればよい。
【0025】
前記A成分は、前記アミノアクリルモノマーと、ヒドロキシアクリルモノマーと、必要に応じて希釈用モノマーとを、適宜組み合わせて製造することができ、その組み合わせ比率の1例を示すとすれば、アミノアクリルモノマーを5~20重量部、ヒドロキシアクリルモノマーを5~30重量部、希釈用モノマーが50~90重量部である場合があげられる。
【0026】
A成分は、溶媒中に、アミノアクリルモノマーと、ヒドロキシアクリルモノマーとを前記比率となるよう配合し、さらに重合開始剤を加えて、室温ないし加温下に撹拌することにより、製造することができる。
【0027】
溶媒としては、前記各モノマーを溶解するものであればよく、特に限定されないが、たとえば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n-ブタノールなどの低級アルコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブなどのセロソルブ、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、酢酸エチル、酢酸n-ブチルなどの低級脂肪酸エステル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトンなどがあげられる。
【0028】
これらの内で好ましいのは低級アルコールであり、特に好ましいのはイソプロピルアルコールである。溶媒は、アクリルポリマー溶液全重量を100とした場合の20~40重量%であるのが好ましい。
【0029】
重合開始剤としては公知のものを使用でき、たとえば、アゾ化合物、パーオキサイド化合物、ジスルフィド化合物、スルフィド化合物、スルフィン化合物、ニトロソ化合物などがあげられる。
【0030】
これらの内、アゾ化合物、パーオキサイド化合物が好ましく、アゾ化合物の具体例としては、たとえば、2,2-アゾビスイソブチロニトリル、2,2-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)などがあげられる。また、パーオキサイド化合物としては過酸化ベンゾイルなどがあげられる。これらの重合開始剤は1種を単独で使用でき、または2種以上を併用できる。
【0031】
重合開始剤の使用量は特に制限されず、モノマーの種類、その使用量、重合開始剤の種類などに応じて、重合反応が円滑に進行し且つ目的のアクリルポリマーを製造することができる量を適宜選択すればよいが、好ましくはモノマーの合計量に対して1~5重量%である。
【0032】
重合開始剤は、重合反応の進行状況に応じ、時間の間隔を空けて数回程度に分割して重合反応系に添加してもよい。重合反応は加温下、好ましくは溶剤の還流温度で行われ、1~5時間程度、好ましくは2~4時間程度で終了する。
【0033】
本発明において、(B)のアクリル酸とエポキシ化合物との付加反応物(以下、B成分という)は、ビスフェノール型エポキシ化合物、ノボラック型エポキシ化合物、脂肪族系エポキシ化合物などがあげられる。
【0034】
B成分としては、市販品を用いることができ、たとえばEA-1010N、EA-1010LC、EA-1010NT2、EA-1020LC3(商品名、新中村化学工業株式会社製)などのビスフェノール型エポキシアクリレート、CNEA-100、PNEM-50(商品名、ケーエスエム株式会社製)などのノボラック型エポキシアクリレート、EBECRYL3608、EBECRYL3702(商品名、ダイセルオルネクス株式会社製)などの脂肪酸変性エポキシアクリレートがあげられ、B成分は1種または2種以上を併用できる。
【0035】
本発明において、(C)の3個以上のビニル基を有するアクリルモノマー(以下、C成分という)は、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンPO変性トリアクリレート、イソシアヌル酸EO変性トリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートなどの多官能アクリレートや、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレートなどを用いることができる。C成分は1種または2種以上を併用できる。
【0036】
C成分としては、市販品を用いることができ、たとえばアロニックスM-309、アロニックスM-321、アロニックスM-350、M-315、M-305、アロニックスM-450、アロニックスM-408、アロニックスM-370、アロニックスM-408、アロニックスM-400、アロニックスM-402(商品名、東亞合成株式会社製)などがあげられる。
【0037】
本発明において、(D)の光重合開始剤(以下、D成分という)としては、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、2-ヒドロキシ-4‘―(2-ヒドロキシエトキシ)―2-メチルプロピオフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-2,2’-ジメチル-1,1’-[メチレンビス(4,1-フェニレン)]ビス(プロパン-1-オン)などのα-ヒドロキシアセトフェノン類、2-メチル-4‘-(メチルチオ)-2-モルホリノプロピオフェノン、2-ベンジル-2-(N,N―ジメチルアミノ)-1-(4ーモルホリノフェニル)ブタン-1-オン、2-(4-メチルベンジル)-2-(ジメチルアミノ)-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オンなどのα-アミノアルキルフェノン類、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシドなどのアシルフォスフィンオキサイド類、2-イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントンなどのチオキサントン類があげられる。
【0038】
D成分は、市販品を用いることができ、市販品としてはたとえば、オムニラッド(Omnirad)1173、オムニラッド2959、オムニラッド127、オムニラッド907、オムニラッド369、オムニラッド379EG、オムニラッドTPOH、Omnirad819(いずれも商品名、IGMレジンズ社製)、ITX、DETXなどがあげられる。D成分は1種または2種以上を併用できる。
【0039】
本発明の電着フォトレジスト用塗料組成物における各成分の配合割合は、A成分を30~80重量部、B成分を1~10重量部、C成分を10~30重量部であり、D成分を、前記A成分~C成分の合計100重量部に対して、1~10重量部を含む。
【0040】
本発明の電着フォトレジスト用塗料組成物における好ましい配合割合は、A成分が45~75重量部、B成分が2~5重量部、C成分が15~25重量部であり、D成分がA成分~C成分の合計100重量部に対して3~8重量部である。
【0041】
また、本発明の電着フォトレジスト用塗料組成物は、前記A成分をシェル成分とし、B成分~D成分をコア成分とする、コア・シェル型の電着フォトレジスト樹脂が水性媒体中に分散した水溶性または水分散性塗料組成物である。
【0042】
A成分が30重量部未満の場合、シェルの形成が不十分となり、コア成分の水分散性が安定せず、樹脂組成物が凝集して沈降するおそれがある。一方でA成分が80重量部を越えると、電着レジスト塗膜に必要な、B成分~D成分が不足するため本発明の塗膜性能が得られないおそれがある。
【0043】
B成分が1重量部未満の場合、光硬化後の柔軟性および耐薬品性が不足して耐めっき液性が得られないおそれがある。一方で10重量部を越えた場合、B成分同士の凝集力が高まり、現像残渣として残るおそれがある。
【0044】
C成分が10重量部未満の場合、十分な光硬化膜を形成できず、現像時にレジストパターンが溶解または剥離するおそれがある。一方で30重量部を越えた場合、硬化収縮が高く、レジストパターンの密着性が悪くなり耐めっき液性が低下するおそれがある。
【0045】
D成分が1重量部未満の場合、露光感度が悪くなり、リードフレーム側面部を光硬化できずめっきが付着するおそれがある。一方で10重量部を越えた場合、露光感度が過剰となり、遮光されたリードフレームのパッドおよびリード外周が僅かに光硬化して現像面が得られずめっきの未着が生じるおそれがある。
【0046】
本発明の電着フォトレジスト用塗料組成物は、前記A成分~D成分を混合し、中和剤を加えて混合した後、水を投入して分散して製造してもよいし、中和剤を水に溶解した後、本発明の電着塗料用組成物を投入して分散して製造してもよい。好ましくは前者である。
【0047】
中和剤としては、酸があげられ、酸としては、ギ酸、酢酸、乳酸などの有機酸、または塩酸、硫酸、リン酸などの無機酸等を使用できる。中でも酢酸、乳酸が好ましく使用できる。酸は、アミノ基に対して、0.3~1.0モル比となるように添加するのが好ましい。
【0048】
撹拌は、公知の撹拌装置を用いることができ、たとえば撹拌装置(ZZ-1100、東京理化器械株式会社製)を用いることができる。
【0049】
本発明の電着フォトレジスト用塗料組成物においては、必要に応じて顔料、染料などの着色剤、消泡剤、重合禁止剤を添加することができる。
【0050】
本発明の電着フォトレジスト用塗料組成物を、電着により被塗物に塗布する場合、塗膜厚は、部分めっき皮膜の1.5~3倍の膜厚に設定すればよく、性能面および生産性の観点より2倍の塗膜厚で用いることが好ましい。電着塗装の条件は、設定電圧を電着開始時から印加するハードスタート法、任意の速度で昇圧するソフトスタート法のいずれでもよい。
【0051】
塗膜は任意のマスクパターン越しに紫外線露光されるが、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ、UVLEDランプ(波長365nm)のいずれでもよい。露光する光量は、50~300mJ/cm2で処理できるが、性能面および生産性の観点より100~200mJ/cm2が好ましい。
【0052】
露光ののち、露光されていない部分を酸性の現像液で除去するが、現像液はギ酸、酢酸、乳酸等の有機酸、非イオン性界面活性剤を配合したものを用いる。現像した後は、塗膜に付着している現像液を水洗した後、めっき工程で部分めっき処理される。
【0053】
部分めっき処理後の塗膜は、剥離液で剥離除去した後、リードフレームに付着した剥離液を水洗および電解洗浄などにより除去する。
【実施例】
【0054】
以下に実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0055】
[アミノ基およびヒドロキシ基を有するアクリルポリマーの合成]
表1に示す溶剤原料を、還流冷却器、温度計、攪拌機および滴下ロートを備えた4つ口フラスコ中で85℃に加熱し、撹拌下に、滴下ロートから表1に示すモノマーおよび重合開始剤の混合物を、3時間を要して滴下する。滴下終了後、30分ごとに後添加用の重合開始剤および溶剤を3回投入する。同温度でさらに3時間撹拌することにより、淡黄色透明な製造例A-1~A-5で示されるアクリルポリマーの溶液を得た。(樹脂固形分55%)
【0056】
【0057】
表中のTgは、原料として用いた各アクリレートもしくはメタクリレートの文献値、メーカー公表値をもとに、次の計算式により求めた(以下、同)。
1/Tg=W1/Tg1+W2/Tg2+W3/Tg3+・・・・+Wn/Tgn
[Tg:ポリマーのTg(K)
Tg1、Tg2、・・・・Tgn:各成分単独ポリマーのTg(K)
W1、W2、・・・・Wn:各成分の重量分率(W1+W2+・・・・+Wn=1)]
また、表中の水酸基価は、アクリルポリマー1gに含まれる水酸基当量(mgKOH/)である。
【0058】
[カチオン電着塗料1~10の製造]
表2および3に記載された量のA成分~C成分と、D成分の光重合開始剤A(2-メチル-4‘-(メチルチオ)-2-モルホリノプロピオフェノン)3重量部および光重合開始剤B(ジエチルチオキサントン)2重量部、ブチルセロソルブ3重量部を混合し、30分間攪拌する。
【0059】
ついで混合液に、乳酸2重量部を加えて30分攪拌し、A成分中のアミノ基を中和する。中和後、攪拌下にイオン交換水を徐々に加えたのち、60分間攪拌してポリマー溶液を液滴状の微粒子として分散させた水分散液を調製して、電着フォトレジスト用塗料組成物1~10を製造する。
【0060】
【0061】
【0062】
表中の略号は、以下を表す。
エポキシアクリレートA:EA-1020LC3(ビスフェノール型エポキシアクリレート、新中村化学工業(株)製)
エポキシアクリレートA:PNEM-50(ノボラック型エポキシアクリレート、ケーエスエム(株)製)
多官能アクリレート:アロニックスM―402(ジペンタエリスリトールペンタおよびヘキサアクリレート、東亞合成(株)製)
【0063】
[電着塗装および評価]
カチオン電着塗料組成物1~10を40℃に保持し、ステンレス304を陽極として、電解脱脂、水洗、銅ストライクめっき、酸中和、水洗、純水洗の順に処理した5cm×7cmの銅板に、100~150Vで10秒間、電着塗装を行い、純水洗、水切り、予備乾燥(70℃30秒)の順に処理して、塗膜厚8~10μmの塗膜を形成させた。
【0064】
ついで、所定のパターンが印刷されたフォトマスク越しにUVLEDランプ(波長365nm)で100mJ/cm2露光処理し、40℃に保持した酸性現像液(酸濃度1重量%)の水溶液をスプレーノズルで噴霧しながら30秒間現像処理した。
【0065】
ついで、50℃に保持したシアン化銀めっき液(シアン化銀カリウム濃度50g/L、遊離シアン化カリウム濃度25g/L)に浸漬して20ASD、30秒間めっき処理した。ついで、55℃に保持した酸性剥離液(酸濃度1重量%、ブチルセロソルブ15重量%)に浸漬して30秒後に取り出して、水洗、純水洗、電解洗浄を行った。
【0066】
結果は、表2および3において、電着塗料1~10の耐薬品性、塗膜の非粘着性、耐ピンホール性、剥離性能の評価として示すとおりである。
【0067】
(1)耐薬品性
〇:銀めっきとレジストパターンの境界に銀めっきの染み込みなし
×:銀めっきとレジストパターンの境界に銀めっきの染み込みあり
【0068】
(2)塗膜の非粘着性
未露光の電着塗膜が形成された銅板にPETフィルムを貼り合わせ、30℃に恒温保管した後、精密万能試験機でPETフィルムを180度で引張剥離試験を行った。
〇:PETフィルムの剥離荷重200mN未満
×:PETフィルムの剥離荷重200mN以上
【0069】
(3)耐ピンホール性
レジスト剥離後の銀めっきされた銅板をマイクロスコープで観察した。
〇:直径30μm以上の銀めっき付着なし
×:直径30μm以上の銀めっき付着あり
【0070】
(4)剥離性能
レジスト剥離後の銀めっきされた銅板をマイクロスコープで観察した。
〇:表面に赤い鱗片状の剥離残渣なし
×:表面に赤い鱗片状の剥離残渣あり
【0071】
以上のように本発明のネガ型カチオン性電着フォトレジスト用塗料組成物を用いた塗膜は、耐薬品性、塗膜の非粘着性、電着時のピンホール耐性に優れており、剥離工程においてレジスト剥離残りのないものを提供することが可能である。連続的に搬送しながら加工処理されるリールトゥリール方式において、薄型のリードフレームおよび高精度の部分銀めっき処理に対応することが可能である。また安全面および環境面においても優れた特性を有している。
【要約】
【課題】
剥離性能を維持しながら耐薬品性、塗膜の非粘着性、電着時のピンホール耐性に優れた電着フォトレジスト用塗料組成物を提供する。
【解決手段】
(A)アミノ基およびヒドロキシ基を有するアクリルポリマーと、
(B)アクリルモノマーとエポキシ化合物との付加反応物と、
(C)3個以上のビニル基を有するアクリルモノマーと、
(D)光重合開始剤と、
を含有することを特徴とする電着フォトレジスト用塗料組成物。
【選択図】 なし