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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】レーザ加工装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/388 20140101AFI20240312BHJP
   B23K 26/082 20140101ALI20240312BHJP
【FI】
B23K26/388
B23K26/082
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022512740
(86)(22)【出願日】2020-08-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-14
(86)【国際出願番号】 IB2020057953
(87)【国際公開番号】W WO2021038453
(87)【国際公開日】2021-03-04
【審査請求日】2022-10-28
(31)【優先権主張番号】01087/19
(32)【優先日】2019-08-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CH
(73)【特許権者】
【識別番号】318013307
【氏名又は名称】オート・エコール・アルク
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(72)【発明者】
【氏名】サルヴァデ・イヴ
(72)【発明者】
【氏名】グリーズ・フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ショルデレ・アラン
【審査官】山下 浩平
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-305585(JP,A)
【文献】特開2015-061731(JP,A)
【文献】特開2002-248591(JP,A)
【文献】特開2013-107123(JP,A)
【文献】特開2003-117675(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0182597(US,A1)
【文献】特開2009-208092(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第19736110(DE,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0175243(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00 - 26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学式トレパニングヘッド(1)を備えた加工装置であって、
先端部(26)を有するヘッド本体(21)と、回転装置(22)とを備える光学機械システム(2)と、
ピコ秒又はフェムト秒のパルスレーザ光源(3)と、
少なくとも1本の光ファイバ(4)と、
第1レンズ(L1)と、
第2レンズ(L2)と、を備える前記加工装置において、
前記光学機械システムの前記回転装置が、回転する回折格子を備えていて、
前記第2レンズが前記回転装置の下流に配置されていて、前記光学機械システムの長手方向軸線に沿って移動可能であり、
前記第1レンズ(L1)が、前記レーザ光源(3)と前記回転装置(22)との間に配置されていて、前記第1レンズ(L1)の焦点が可変である、前記加工装置。
【請求項2】
前記回転する回折格子(R1)が円形形状を有する、請求項1に記載の加工装置。
【請求項3】
前記回転する回折格子(R1)が1mm未満の厚さを持つ、請求項1に記載の加工装置。
【請求項4】
前記回転する回折格子(R1)が位相格子のタイプである、請求項1に記載の加工装置。
【請求項5】
前記回転装置(22)が、回転速度が1分当たり180000回転超である主軸である、請求項1に記載の加工装置。
【請求項6】
前記第2レンズ(L2)が円錐状である、請求項1に記載の加工装置。
【請求項7】
前記光学機械システムが、ヘッド本体(2)の前記先端(26)に配置されていて固定された焦点を持つ最後のレンズ(L3)を備える、請求項1に記載の加工装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載した加工装置を使う光学的トレパニング方法であって、
ピコ秒又はフェムト秒のパルスレーザビーム(FL)を被加工物(P)の上面に集光するステップと、
前記ピコ秒又はフェムト秒のパルスレーザビーム(FL)の前記被加工物(P)の前記上面への入射角を制御するステップと、
加工される前記被加工物(P)の前記上面上で前記レーザビーム(FL)の歳差運動を開始し、前記レーザビーム(FL)が円軌道を描くようにするステップと
を備える、光学的トレパニング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ加工装置に関するものである。特に、光学式トレパニングヘッドを備えたピコ秒又はフェムト秒のパルスレーザ加工機を対象としている。
【背景技術】
【0002】
ピコ秒やフェムト秒レーザの登場により、深穴加工が知られるようになった。この技術は、電解加工技術よりも短いサイクルタイムを可能にする。
【0003】
加工する穴の直径に対応した直径を持つレーザスポットが一般的に使用されている。しかし、この方法ではドラフト角度を制御できない。
【0004】
光学式トレパニングと呼ばれる穴あけ方法では、加工する穴の円周上をレーザ光が円運動する。レーザビームが加工対象表面から発散することでドラフト角が発生し、レーザビームの入射角を変えることで補正する必要がある。
【0005】
現在使用されているトレパニングヘッドには、レーザビームを加工対象に照射するためのガルバノミラーアレイが搭載されている。また、例えばドーブプリズム、くさび型プリズム、アッベケーニッヒプリズムなどのプリズムを用いた回転集束光学系を使用するシステムもある。
【0006】
しかしながら、プリズムなどの屈折光学部品はかさばるため、光学式トレパニングヘッドの小型化には限界がある。また、その大きさは、光学式トレパニングヘッドの動きの妨げにもなっている。
【0007】
そのため、トレパニング加工には、特に柔軟性と速度の点で改善の余地がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、加工部品のクリアランス角度を制御するように、複数の軸に沿って容易に方向付けられるコンパクトな光学式トレパニング装置を提供するものである。特に、正負のクリアランス角度は、加工する形状に関わらず、非常に高い精度で得られる。
【0009】
本発明の課題は、高さと直径の比率が大きい外形に特に適した微細加工の解決手段を提供することである。本発明は、高さ/直径比が2以上、さらには3や5以上の部品の加工に特に適している。そして、インジェクターや回転ノズルなどの高精度な機械部品を加工できる。本発明では、直径50μmから1mmの穴を加工できる。
【0010】
本発明のもう一つの目的は、多種多様な材料、特に熱拡散特性に適応した解決手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
特に、本発明による微細加工装置は、光学式トレパニングヘッドを備えていて、これは
回転装置を備えたヘッド本体を有する光学機械システムと、
ピコ秒又はフェムト秒のパルスレーザ光源と、
少なくとも1本の光ファイバを備えている。
【0012】
光学機械システムの回転装置は、回転する回折格子を備え、その形状は円形であってもよい。回転格子の厚さは1mm以下である。1次及び-1次回折は、主に回転格子を通して利用される。
【0013】
本発明による回転装置は、180,000rpm以上、さらには200,000rpmの回転速度を有する市販の主軸であってもよい。
【0014】
本発明による装置の光学機械システムは、有利には、レーザ源と回転装置との間に配置された第1レンズを備えていて、その焦点距離は可変であってもよい。また、光学機械システムは、回転装置の下流側に配置され、光学機械システムの長手方向の軸に沿って並進移動可能な第2レンズを備えていてもよい。第2レンズは円錐形であってもよい。光学機械システムは、固定焦点距離の最後のレンズをさらに備えていてもよい。光学機械システムの最後のレンズは、フォーカシングレンズとして機能する。第2レンズと最後のレンズの間には、1つ又は複数の他のレンズが配置され、場合によってはレンズ列を形成することもある。
【0015】
また、本発明は、光学式トレパニングによる加工方法に関するものである。
【0016】
本発明の実施例は、添付の図に表される説明に示されている。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の1実施形態に係るトレパニングヘッドの概略図である。
図2図2a及び図2bは、2つの異なるモードによるレーザビームの軌跡を示す模式図である。
図3図3は、本発明で使用する回転式回折格子の模式図である。
図4図4A図4B図4C図4Dは、レーザビームの加工対象への入射角に応じたクリアランス角度の例である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、例えば、図1に示すように、光学機械システム2とレーザ光源3とを備えるトレパニングヘッド1に関するものである。光学機械システム2は、1本又は複数の光ファイバ4によってレーザ源3に接続されている。光ファイバ4は、レーザ光源3からのレーザ光FLを光学機械システム2に導出するもので、光接続部41により接続されている。光ファイバ4は、好ましくは中空であり、レーザ光源3の光出力に適合している。レーザ光源3は、好ましくは固定されている。ピコレーザやフェムトレーザのタイプである。
【0019】
光学式トレパニングヘッド1は、x軸、y軸、z軸のいずれかに沿って、好ましくは2つの水平なx軸、y軸に沿って移動可能である。また、この装置は、ドリルや機械加工される加工対象Pを保持するための支持体Sを備えている。支持体Sは、水平方向に固定して配置してよい。X軸及びY軸に沿って移動可能な光学式トレパニングヘッド1は、そこで、加工対象Pの表面上を移動し、所定の位置に穴をあけられるものである。各ドリル作業は、トレパニングヘッド1の円形の動きを可能にするように、さらに、x軸及びy軸の両方に沿ったトレパニングヘッド1の移動を要するものとしてよい。
【0020】
代替的な実施形態によると、光学式トレパニングヘッド1は固定されていてもよく、ホルダSは、回転運動を可能にするため、x軸及びy軸の両方に沿って移動可能に取り付けられていてもよい。
【0021】
光学式トレパニングヘッド1、又はホルダS、又はその両方は、さらにz軸方向に移動可能に取り付けられていてもよい。そうすると、様々な厚さや形状の加工対象を加工できる。
【0022】
1実施形態によると、ホルダS、又は光学式トレパニングヘッド1、又は両方が、x軸、、又はY軸、又はX軸y軸の両方のような、少なくとも1つの水平軸を中心に回転可能なようにさらに取り付けられてもよい。このようにして、加工対象Pの表面に対して直角とは異なる入射角で加工を行える。
【0023】
レーザ源3は、ピコ秒又はフェムト秒のパルスレーザ源である。このような光源では、約10ピコ秒以下、好ましくは100フェムト秒以下、さらには10フェムト秒以下の持続時間のパルスでレーザビームを照射する。様々なピコ秒及びフェムト秒レーザ源が市販されていて、当業者に知られている。30W以上、好ましくは50W以上の光出力が有利に用いられる。各パルスのエネルギーは、100マイクロジュール以上、好ましくは500マイクロジュール以上である。
【0024】
このようなパルス光源の利点は、加工に有用なエネルギーをレーザビームFLの衝突点に周回させ、近隣領域への熱伝達を避けられることである。そのため、FLレーザビームの当たるところの周囲の素材にはダメージがなく、高品質な穴あけや加工が可能で、加工できる素材の種類も豊富である。
【0025】
光学機械システム2は、様々な光学機械要素が組み立てられたヘッド本体21を備えている。この場合、ヘッド本体21は、光学機械システム2に含まれる光学機械要素を介して、光ファイバ(複数)4から加工対象の加工対象Pに衝突するまで、レーザビームFLの通過とその案内を可能にする中央空間を構成している。光ファイバ接続部41と、ヘッド本体21の光ファイバ接続部と反対側の端部26との間のレーザ光FLの経路には、複数の光学機械要素が配置されている。そのため、光学機械システム2は、レーザビームFLの経路に概ね相当する長手方向の軸線を有している。
【0026】
1実施形態によると、ヘッド本体21は、第1レンズL1と、回転式回折格子R1を持つピン22と、第2レンズL2と、最後のレンズL3とを備えている。最後のレンズL3は、ヘッド本体21の端部26に配置されていて、光ファイバ4からのレーザ光FLは、第1レンズL1を通過した後、ピン22を通過し、その後、第2レンズL2及び最後のL3を通過する。第1レンズL1、第2レンズL2、及び最後のレンズL3の配置は、第2レンズL2が第1レンズL1の下流にあり、最後のレンズL3の上流にあるようになっている。
【0027】
「上流」及び「下流」という用語は、本文中では、レーザビームFLの伝搬方向に関して定義されている。他の要素の上流に位置する要素は、その前のFLレーザビームの影響を受ける。他の要素の下流に位置する要素は、その要素の後にあるFLレーザビームFLの影響を受ける。
【0028】
第1レンズL1、第2レンズL2、最後のレンズL3は、レーザビームFLを集中して収束させ、そのエネルギーを集中させるためのものである。第1レンズL1、第2レンズL2、及び最後のレンズL3のそれぞれの焦点距離は、所定のものであっても、可変のものであってもよい。
【0029】
第1レンズL1、第2レンズL2、及び最後のレンズL3のそれぞれの相対的な位置は、予め決められていても、可変であってもよい。各レンズは、ヘッドボディ21内で、固定式又は可動式のレンズホルダー上に配置されていてもよい。レンズホルダーは、レーザビームFLの経路に沿って並進可能であってもよいし、レーザビームFLの経路の方向を変化させるように、x軸又はy軸の1つ又は複数に沿って回転可能であってもよい。可動式レンズホルダーは、目的に応じてモーターで制御し得る。また、第2レンズL2と第3レンズL3の間には、1つ以上の中間レンズ(図示せず)を設けることがある。これらは独立して固定されていても、レーザビームFLの経路に沿って並進可能であっても、x軸又はy軸の1つ又は両方に沿って回転可能であってもよい。
【0030】
1実施形態によると、第1レンズL1は可変焦点レンズである。したがって、第1レンズL1の焦点距離に対応する集束面PL1の位置は、加工前又は加工中に変えられる。そのため、焦点距離を簡単かつ迅速に変更できるレンズが有利である。例えば、バリオプティック(Varioptic)社が開発し、欧州特許第1870742号明細書(EP1870742)、欧州特許第1662276号明細書(EP1662276)、国際出願公開第2007/113637号(WO2007113637)に記載されているような液体レンズをこの目的のために使用できる。レンズのピント合わせの速さは、ピント面の調整をほぼ瞬時に行える。
【0031】
次に、FLレーザ光は、ピン22に含まれる回転格子R1を通過する。回転格子R1は、光学機械システム2の中で唯一の回転する光学機械要素である。回転する回折格子R1は、図3に示すように、レーザビームFLからの光を回折次数と呼ばれる所定の方向に偏向させるために使用される。市販の回転式回折格子R1を使用できる。例えば、回折効率の良さで知られる位相格子型のR1回転回折格子を使用できる。
【0032】
回折格子は、好ましくは位相格子であり、そのレリーフは、連続的(例えば正弦波)であるか、又は限られた数の高さレベル(バイナリー又はマルチレベル)で構成されている。好ましくは、+1及び-1の回折次数が利用され、位相格子の幾何学的形状は、これら2つの次数で最大の回折効率を可能にしなければならない。また、より高い回折次数を利用した他の回折格子形状を使用し得る。
【0033】
回転格子R1は、非常にコンパクトな部品である。例えば、厚さ1mm以下のガラス板上にマイクロメートルサイズの格子状の線を配置したものでもよい。回転式回折格子R1は、円対称で軽い。そのため、超高速主軸22との組み合わせが有利になる。このような主軸は、毎分180000回転、200000回転、300000の速度で回転する。回転格子R1の特性により、主軸22が回転する際に最適な平衡を可能にしている。回転式回折格子R1のフットプリントが小さいため、主軸22を小型化し、不具合を軽減できる。
【0034】
このような回転式回折格子R1を使用することで、いかなる並進運動に対しても若干敏感か、あるいは敏感でない状態の維持が可能となる。そのため、主軸22の欠陥、特に動きの真円度に影響を与える欠陥が、減衰するか、又は見えなくなる。
【0035】
回転式回折格子R1は非常に薄いため、プリズムやミラーを用いた他の配置に比べて、角度のずれによる影響が大幅に軽減される。特に、本発明による装置では、30mradまでの回転格子R1の角度のずれを許容可能である。
【0036】
主軸22は、毎分180,000回転以上、好ましくは毎分300,000回転以上、より有利には毎分500,000回転以上の速度で回転するように設計されている。例えば、500,000rpm、21Hzの切削速度で回転するMUHD主軸のような工業用マイクロドリル主軸であってもよい。また、ガス式のマイクロタービンの場合もある。この目的のために、スイス国特許出願第710120号明細書(CH710120)に記載されている空力/静力学ハイブリッド支承部の組み合わせに基づく主軸22の例を使用してよい。本発明の範囲内で、例えば微細加工用の他の主軸も使用可能である。
【0037】
実施形態によると、第2レンズL2が円錐型であるため、レーザビームFLを環状や中空円筒状に成形可能となる。特に、第2レンズL2は、「アキシコン」タイプであってもよい。第2レンズL2は、好ましくは、ヘッド本体1に沿って並進移動可能なレンズホルダ(図示せず)に取り付けられる。換言すると、第2レンズL2は、光学機械システム2の長手方向に沿って移動可能である。回転する回折格子R1からのレーザビームFLは、リング状又は中空円筒状のレーザビームを生成するように設計された第2レンズL2を通過する。第2レンズL2が距離d1にわたって垂直方向に変位することで、最後のレンズL3との間の距離Dを調節できる。
【0038】
1実施形態によると、第2レンズL2は、円錐形であってもよい。このようなレンズの円錐形の先端は、その特性や装置の必要性に応じて、レーザ光源の方向に向けても、最後のレンズL3の方向に向けてもよい。
【0039】
1実施形態によると、第2レンズL2は、複数のレンズのセットを備えてもよい。
【0040】
最後のレンズL3は、好ましくは、第2レンズL2とヘッド本体21の端部26との間の固定支持体に取り付けられる。最後のレンズL3の焦点距離は、好ましくは予め決められている。最後のレンズL3は、好ましくは収束型である。
【0041】
光学式トレパニングヘッド1の配置によっては、第1レンズL1の焦点距離や第2レンズL2の位置を、微細加工前の事前設定や加工中に変えられる。
【0042】
1実施形態によると、第1レンズL1の焦点距離と位置、及び第2レンズL2の位置は、加工操作の前に事前設定するか、又は加工中に調節できる。
【0043】
加工される加工対象ピースPに対するレーザビームFLの影響は、20マイクロメートルの規模の直径を有する単一の点の形態をとり得る。使用する調整変数、特に第1レンズL1の焦点距離と第2レンズL2の位置に応じて、主軸22が回転していないときのレーザビームFLの影響は、直径が20マイクロメートルのオーダーの2つの点の形をとることがある。機械加工される加工対象Pの表面上の2つの光点の間隔は、特に第2レンズL2の位置に依存する。
【0044】
本発明による光学式トレパニングヘッド1は、コンパクトであるという利点がある。特に、光学式トレパニングヘッド1の光学機械システム2は、直径50mm、長さ200mmの円筒よりも小さいフットプリントを有している。また、トレパニングヘッドは並進軸と回転軸に簡単に取り付けられる。
【0045】
ドラフト角Aは、図4A及び図4Bに示すように正であってもよいし、図4C及び図4Dに示すように負であってもよい。0°から5°の負のドラフト角Aを実現できる。
【0046】
本発明の他の目的は、加工される加工対象Pのドラフト角Aを制御する光学式トレパニング加工方法である。クリアランス角Aは、例えば図4Aに示すように、直線状であってもよい。この構成では、加工部品Pの穴の縁は、その外周面に対して垂直になっている。つまり、穴は円筒形である。図4Bに示すように、ドラフト角Aは正の値であってもよい。この場合、穴は、加工対象Pに、上面の直径が加工対象Pの下面の直径よりも大きいテーパ部を形成する。加工対象Pの上面は、レーザビームFLが入射する面であると理解される。また、図4C及び図4Dに示すように、ドラフト角Aを負にしてもよい。この場合、穴は、加工対象Pにおいて、上面の直径が加工対象Pの下面の直径よりも小さい円錐形の部分を形成している。クリアランス角Aは、レーザ光FLの被加工物Pの上面への入射角を直接表すものではなく、被加工物Pの上面に直交してレーザ光を入射させると、図4Dに示すように、まっすぐなクリアランス角Aは得られず、負のクリアランス角Aが得られる。右ドラフト角Aは、図4Aに示すように、加工対象Pの上面にレーザ光FLが傾斜して入射することで得られる。この場合、加工対象Pの上面へのレーザビームFLの入射は、正の方向、すなわち加工される穴の内側に向けられなければならない。レーザ光FLの被加工物Pの上面への正の入射角が大きくなると、図4Bに示すように、ドラフト角Aが正になる。図4Cに示すように、レーザ光FLの加工対象Pの上面への入射角が負になると、ドラフト角Aは負になる。
【0047】
本方法は、ピコ秒又はフェムト秒のパルスレーザビームFLを、加工される加工対象Pに集光するステップを備える。具体的には、上述した光学式トレパニングヘッド1によって、レーザ光FLが加工対象Pに集光される。
【0048】
この方法は、回転する回折格子R1によって、レーザビームFLの歳差運動を開始するステップを備える。回転回折格子R1の回転速度は毎分18万回転以上。回転回折格子R1の回転速度は、レーザビームFLのパルス周波数や加工条件、特に加工対象Pに加工される穴の直径に合わせられ、回転速度が高いほど、より速く加工できる。特に、回転式回折格子R1は、上述したように主軸22と一体化できる。このレーザビームFLの歳差運動により、レーザビームFLは加工対象Pの上面に所定の直径の円を形成できる。
【0049】
本発明による方法は、回転する回折格子R1に対して、並進移動可能な第2レンズL2の距離を調節するステップを備える。なお、第2レンズL2は、距離d1にわたって移動可能であってもよい。そして、第2レンズL2と最後のレンズL3の間の距離Dは、最小距離Dmから最大距離DMまで変えられる。最小距離Dm及び最大距離DMと、距離d1fとは、第2レンズL2の特性に応じて、特に第2レンズL2を特徴づける回折角及び偏向角に応じて、適合させられる。
【0050】
第2レンズL2と回転回折格子R1との間の距離によって、例えば回転回折格子R1の+1/-1の回折次数によって生成された第2レンズL2の出力における2つのレーザビームの分離距離の変調が可能となる。レンズL3の下流側では、これらの+1/-1の回折次数に起因するレーザビームの加工対象Pへの入射角が適応可能である。また、+1/-1の回折次数で得られたレーザビームFLは、加工対象Pの表面に10マイクロメートルから20マイクロメートルの間の直径の点で集光できる。加工対象の表面に直交するように入射すると、負のドラフト角Aが得られる。代替的に、+1/-1の回折次数で得られたレーザ光FLは、被加工物Pの上面に正に入射するため、右又は正のドラフト角Aが形成されることになる。代替的に、+1/-1の回折次数で得られたレーザ光FLは、被加工物Pの上面に負に入射し、それによって負のドラフト角Aが形成される。
【0051】
回折の結果得られるレーザビームの集束は、+1、-1の回折次数以外の回折次数にも適用可能である。特に、高次の回折レーザ光を加工対象の表面に集光してもよい。
【符号の説明】
【0052】
A ドラフト角
d1 第2レンズL2の移動距離
D1 第2レンズと第3レンズの間の距離
FL レーザビーム
L1 第1レンズ
L2 第2レンズ
L3 (最後の)第3レンズ
P 加工対象
R1 回転式回折格子
S 加工対象の支持部
x、y、z 配向の軸
1 光学式トレパニングヘッド
2 光学機械システム
21 ヘッド本体
22 主軸
26 ヘッド本体端部
3 レーザ光源
4 光ファイバ
41 光接続
図1
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図4C
図4D