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  • 特許-監視カメラ用カバー及び監視カメラ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】監視カメラ用カバー及び監視カメラ
(51)【国際特許分類】
   H04N 23/51 20230101AFI20240312BHJP
   F21V 3/02 20060101ALI20240312BHJP
   F21V 3/06 20180101ALI20240312BHJP
   F21V 3/10 20180101ALI20240312BHJP
   G03B 15/00 20210101ALI20240312BHJP
   B32B 15/082 20060101ALI20240312BHJP
   B32B 15/09 20060101ALI20240312BHJP
   B32B 15/20 20060101ALI20240312BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20240312BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20240312BHJP
   C23C 26/00 20060101ALI20240312BHJP
   G03B 17/56 20210101ALI20240312BHJP
【FI】
H04N23/51
F21V3/02 300
F21V3/06
F21V3/10
G03B15/00 S
B32B15/082 Z
B32B15/09 Z
B32B15/20
B32B27/30 A
B32B27/36
C23C26/00 A
G03B17/56 H
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023135640
(22)【出願日】2023-08-23
【審査請求日】2023-08-28
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】320008672
【氏名又は名称】i-PRO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】阿部 康司
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 尚
【審査官】佐野 潤一
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-051117(JP,A)
【文献】特開2006-257215(JP,A)
【文献】特開平11-228866(JP,A)
【文献】特開2016-118714(JP,A)
【文献】特開2015-044352(JP,A)
【文献】特開2017-085325(JP,A)
【文献】特開2021-012352(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 23/50
H04N 7/18
G03B 17/00
F21V 3/00
G03B 15/00
B32B 15/00
B32B 27/00
C23C 26/00
B05D 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム基材と、化成皮膜処理が施された前記アルミニウム基材の表面に形成された塗膜と、を備え、
前記塗膜は、
前記化成皮膜処理が施された化成処理皮膜上に形成された下塗り塗膜と、
前記下塗り塗膜上に形成された上塗り塗膜と、を備え、
前記下塗り塗膜は主成分としてポリエステル系樹脂を含み、
前記上塗り塗膜は主成分としてアクリル系樹脂を含み、
前記下塗り塗膜と前記上塗り塗膜の膜厚比が、下塗り塗膜の膜厚/上塗り塗膜の膜厚=2~15であり、かつ、前記下塗り塗膜と、前記上塗り塗膜の膜厚と、をあわせた総膜厚が50~480μmであり、
前記アルミニウム基材は、外側に露出して監視カメラのカメラ本体を覆う円筒状を有する第1カバー部材を含み、
前記第1カバー部材の内周面側に配置され、前記カメラ本体を取り付ける第2カバー部材、を更に備え、
前記第1カバー部材と前記第2カバー部材とは組み立てられ、
前記塗膜は、前記第1カバー部材の外表面から、少なくとも前記第1カバー部材の内周面のうち前記第2カバー部材と前記第1カバー部材との接触面を超えて形成される、
監視カメラ用カバー。
【請求項2】
前記第2カバー部材より上部に配置される止水材、を更に備え、
前記塗膜は、前記第1カバー部材の内周面に沿って、前記接触面及び前記止水材を超えて上側に形成される、
請求項1に記載の監視カメラ用カバー。
【請求項3】
前記下塗り塗膜の膜厚は、40~450μmである、
請求項1に記載の監視カメラ用カバー。
【請求項4】
前記上塗り塗膜の膜厚は、10~30μmである、
請求項に記載の監視カメラ用カバー。
【請求項5】
前記下塗り塗膜と前記上塗り塗膜の膜厚比が、下塗り塗膜の膜厚/上塗り塗膜の膜厚=5~10である、
請求項1に記載の監視カメラ用カバー。
【請求項6】
前記下塗り塗膜は粉体塗料を1回のみ塗装して形成された塗膜であり、
前記上塗り塗膜は溶剤塗料を1回のみ塗装して形成された塗膜である、
請求項1に記載の監視カメラ用カバー。
【請求項7】
請求項1から6のうちいずれか一項に記載の監視カメラ用カバーを備える、
監視カメラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、監視カメラ用カバー及び監視カメラに関する。
【背景技術】
【0002】
監視カメラが屋外環境下で設置される場合、雨水、砂利等からの保護の観点から、カメラカバーが設けられる。特許文献1は、水滴及び汚れの付着を防止し、画像の鮮明性を確保することができるカメラカバーを開示している。このカメラカバーは、カメラ部の撮像面を全面にわたって覆うドーム部と、ドーム部の円形開口部を支持・固定するカメラ本体と、備える。ドーム部は、外表面に水接触角が5乃至30度である親水コートを有することで、セルフクリーニング効果を有し、且つカメラカバー表面に付着する水滴の膜化を促進する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5374661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、カメラカバーの塗装は、組み立て性の観点から膜厚を薄くすることが望まれる。しかしながら、カメラカバーの塗装を薄くすると、塗装剥離から生じる腐食により塗装の剥離が生じやすく、耐候性、耐衝撃性が低下するおそれがある。
【0005】
本開示は、上述した従来の事情に鑑みて案出され、屋外環境下で設置される場合でも、組み立て性を確保しつつ、耐候性、耐衝撃性を確保することができる監視カメラカバー及び監視カメラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、アルミニウム基材と、化成皮膜処理が施された前記アルミニウム基材の表面に形成された塗膜と、を備え、前記塗膜は、前記化成皮膜処理が施された化成処理皮膜上に形成された下塗り塗膜と、前記下塗り塗膜上に形成された上塗り塗膜と、を備え、前記下塗り塗膜は主成分としてポリエステル系樹脂を含み、前記上塗り塗膜は主成分としてアクリル系樹脂を含み、前記下塗り塗膜と前記上塗り塗膜の膜厚比が、下塗り塗膜の膜厚/上塗り塗膜の膜厚=2~15であり、かつ、前記下塗り塗膜と、前記上塗り塗膜の膜厚と、をあわせた総膜厚が50~480μmであり、前記アルミニウム基材は、外側に露出して監視カメラのカメラ本体を覆う円筒状を有する第1カバー部材を含み、前記第1カバー部材の内周面側に配置され、前記カメラ本体を取り付ける第2カバー部材、を更に備え、前記第1カバー部材と前記第2カバー部材とは組み立てられ、前記塗膜は、前記第1カバー部材の外表面から、少なくとも前記第1カバー部材の内周面のうち前記第2カバー部材と前記第1カバー部材との接触面を超えて形成される、監視カメラ用カバーに関する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、屋外環境下で設置される場合でも、良好な組み立て性を確保しつつ、耐候性、耐衝撃性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1に係る監視カメラの外観正面図
図2A】回転台座及びカメラ筐体の一部の断面図
図2B】回転台座及びカメラ筐体の側面図
図2C】回転台座の中心軸を含む面と平行な面で回転台座及びカメラ筐体を断面とした図2BのB-B断面図
図3図1においてカメラ筐体を除いて回転台座を下側から見た斜視図
図4図3の領域Aの拡大図であって、III-III線に沿った断面図
図5図1においてカメラ筐体21を除いて回転台座19を下側から見た図
図6図5の領域Bの拡大図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、適宜図面を参照しながら、本開示に係る監視カメラ用カバー及び監視カメラを具体的に開示した実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、添付図面及び以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することは意図されていない。
【0010】
以下の実施の形態1の説明にあたり、実施の形態に係る監視カメラの外観の上下左右前後方向は図1に示す方向に従うとする。
【0011】
図1は、実施の形態1に係る監視カメラ11の外観正面図である。監視カメラ11は、支持パイプ13等に固定されるブラケット15と、カメラ部を備えてブラケット15に吊り下げられて支持されるメイン筐体17と、を有する。メイン筐体17は、ブラケット15に吊り下げられた状態で固定される回転台座19と、回転台座19に対して回転自在となって吊り下げられた状態で支持されるカメラ筐体21と、を有する。監視カメラ11は、この他、カメラ筐体21に固定されるドーム状のカバー23を備える。カバー23は、中央の撮像窓部25と、この撮像窓部25を挟む左右の投光窓部27と、を有する。撮像窓部25と投光窓部27とは、連結体29で接続される。
【0012】
支持パイプ13は、例えば天井や壁、ポール等に固定される。ブラケット15は、例えば円錐形状で形成される。ブラケット15は、この他、回転台座19に係止する係止構造を下面に有し、ポールあるいは壁等に固定される支持金具であってもよい。ブラケット15に支持される回転台座19は、ブラケット15の円錐部における底面の直径とほぼ等しい円筒形の外形を有する。
【0013】
さらに監視カメラ11は、ブラケット15とメイン筐体17が備える回転台座19との間に介在する固定材38を有する。固定材38は、ブラケット15の下端面37と回転台座19の上端面33とを押圧して固定する。これら押圧される下端面37及び上端面33は、その一部(例えば周縁)であってもよい。固定材38は、ブラケット15及び回転台座19のそれぞれの円周方向に複数個が等間隔で配置されていてもよい。具体的には、監視カメラ11は、ブラケット15と回転台座19とに渡って形成される図示せぬ凹部に固定材38が挿入される。この凹部は、回転台座19の円周方向に沿って180°ごとに設けられる。つまり、凹部は、回転台座19における周縁の2箇所に設けられる。凹部に挿入された固定材38は、図示せぬねじ部材によって回転台座19に締結される。これにより、凹部は、締結された固定材38によって内面が押圧される。固定材38は、回転台座19の円周方向に沿って、2個以上配置される形態であってもよい。例えば、回転台座19の円周方向に沿って凹部と固定材38とが90°ごとに設けられてもよい。
【0014】
本明細書において、実施の形態1に係る監視カメラ用カバー40は、ブラケット15と、回転台座19の内部に含まれる機器を覆う外周カバー16とを含むものである。監視カメラ用カバー40において、少なくともブラケット15及び外周カバー16のそれぞれの外側に露出した部分(外周面)は、化成皮膜処理が施されたアルミニウム基材により構成され、このアルミニウム基材の表面には、塗装による塗膜が形成されている。
【0015】
監視カメラ用カバー40は、特に監視カメラ11が屋外環境下で設置される場合、雨水、砂利等から監視カメラ11を保護するために設けられる。監視カメラ11の組立性の観点からは、監視カメラ用カバー40の塗装、すなわち塗膜は、膜厚を薄くすることが望まれる。
【0016】
図2Aは、回転台座19及びカメラ筐体21の一部の断面図であり、上述した組立性に関する事情を説明するための図である。図2Bは、回転台座19及びカメラ筐体21の側面図である。図2Cは、回転台座19の中心軸75を含む面と平行な面で回転台座19及びカメラ筐体21を断面とした図2BのB-B断面図である。図2Aは、図2BのB-B線断面図のC-C部分拡大図(図2C参照)である。メイン筐体17の回転台座19は、ブラケット15から脱着されることにより、ブラケット15に着脱自在となる係止構造の一部分、ブラケット15から外部へ引き出されるケーブル31がそれぞれ露出する。
【0017】
回転台座19は、外周カバー16と、外周カバー16の内部に設けられる底壁16bと、を有する。外周カバー16は、外側に露出した側壁16aを有する。側壁16aは上述したアルミニウム基材により構成されるが、底壁16bもアルミニウム基材により構成されてよい。
【0018】
底壁16bは、回転台座19の底壁を形成するとともに、カメラ本体であるカメラ筐体21の上面板としても機能し、カメラ筐体21を取り付ける役割を果たす。
【0019】
そして、塗膜42は、アルミニウム基材である側壁16aの外周面に少なくとも形成されるが、外部から侵入する異物に対抗するため、側壁16aの内周面においても形成されてよい。本実施の形態では、塗膜42は、側壁16aの内周面のうち、カメラ筐体21側の端部から底壁16bの位置Pを超える位置まで、すなわち、底壁16bと側壁16aとの接触面を超えて形成されている。本実施例においては、底壁16bの端部に設けられた止水材18が側壁16aの内周面に塗装された塗膜と接触している。そのため、塗膜と止水材18によって側壁16aと底壁16bとの間から水が外周カバー16内部に侵入することを防いでいる。なお、塗膜は、底壁16bにも施されてもよい。
【0020】
このため、側壁16aの内周面の塗膜の膜厚が厚すぎると、外周カバー16内に底壁16bの端部が側壁16aの内周面の塗膜に干渉する。そのため、外周カバー16に底壁16bの取り付けが困難になる。よって、塗膜の膜厚は所定値以下に抑えることが望まれる。
【0021】
図3は、図1においてカメラ筐体21を除いて回転台座19を下側から見た斜視図であり、本図も上述した組立性に関する事情を説明するための図である。図4は、図3の領域Aの拡大図であって、かつIII-III線に沿った断面図であり、カメラ筐体21を固定する固定部38を示している。固定部38は、側壁16aを内周側に窪ませた面である。固定部38に固定部材38aを差し込んで固定することにより、カメラ筐体21が回転台座19に固定される。
【0022】
保護の観点から、塗膜は固定部38にも施されるが、塗膜の膜厚が厚すぎると、固定部材38aの挿入が困難となり、組立が困難となる。よって、塗膜の膜厚は所定値以下に抑えることが望まれる。
【0023】
図5は、図1においてカメラ筐体21を除いて回転台座19を下側から見た図であり、本図も上述した組立性に関する事情を説明するための図である。図6は、図5の領域Bの拡大図であり、外周カバー16に底壁16bを固定する固定部39を示している。図示せぬねじが固定部39に差し込まれることにより、底壁16bが外周カバー16に固定される。
【0024】
保護の観点から、塗膜は固定部39にも施されるが、塗膜の膜厚が厚すぎると、ねじの挿入が困難となり、組立が困難となる。よって、塗膜の膜厚は所定値以下に抑えることが望まれる。
【0025】
組み立て性の観点から塗膜の膜厚は所定値以下に抑えることが望まれる一方で、塗膜を薄くすると、塗装剥離から生じる腐食により塗膜の剥離が生じやすく、耐候性、耐衝撃性が低下するおそれがある。特に塩害地域等のように、監視カメラ11が厳しい気候条件下に晒される場合は、このような問題が生じやすいと考えられる。
【0026】
発明者は、上述した問題について鋭意研究した結果、監視カメラ用カバー40の塗膜を、ポリエステル系樹脂の塗膜とアクリル系樹脂の塗膜とを所定の膜厚比で形成することにより、全体の膜厚を所定値以下に抑えつつも、監視カメラ用カバー40の耐候性、耐衝撃性を維持し、塩害等を生じさせやすい気候条件にも耐えうることを見出した。
【0027】
監視カメラ用カバー40の塗膜は、少なくともブラケット15と回転台座19の外周カバー16とを構成するアルミニウム基材の表面に形成される。アルミニウム基材の表面は、化成皮膜処理が施されており、この表面上に塗膜が形成される。化成皮膜処理が施されることにより、防錆性が向上する。
【0028】
塗膜は、化成皮膜処理が施されたアルミニウム基材の化成処理皮膜上に形成された下塗り塗膜と、下塗り塗膜上に形成された上塗り塗膜と、を備えている。下塗り塗膜は主成分としてポリエステル系樹脂を含み、上塗り塗膜は主成分としてアクリル系樹脂を含む。すなわち、基本的な性質に影響のない限り、下塗り塗膜及び上塗り塗膜への他の付加的な成分、添加剤等の添加、混入等は妨げられない。
【0029】
ポリエステル系樹脂は、カルボン酸成分と多価アルコール成分とを公知の方法で反応させることにより製造できる。
【0030】
ポリエステル系樹脂の製造に使用できるカルボン酸成分としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバチン酸、1,9-ノナンジカルボン酸、1,10-デカンジカルボン酸、1,12-ドデカンジカルボン酸、1,2-オクタデカンジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の多価カルボン酸、これらの多価カルボン酸の低級アルキルエステル及びその酸無水物、並びにリンゴ酸、酒石酸、1,2-ヒドロキシステアリン酸、パラオキシ安息香酸等のヒドロキシカルボン酸等が挙げられる。
【0031】
ポリエステル系樹脂の製造に使用できる多価アルコール成分としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、ネオペンチルグリコール、スピログリコール、1,10-デカンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。
【0032】
上記ポリエステル系樹脂は、上述のように、カルボン酸成分及び多価アルコール成分を原料として用い、塗料組成物用ポリエステル樹脂の製造について知られる通常の方法によって製造できる。
【0033】
アクリル系樹脂は、アクリル酸、メタクリル酸およびそのエステルよりなる群から選択される1種以上のアクリル系モノマーを重合させて得られる重合体である。アクリル系樹脂としては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸シクロへキシル、メタクリル酸エチルへキシル、メタクリル酸ラウリル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル等が挙げられる。
【0034】
上述したポリエステル系樹脂及びアクリル系樹脂の製法、原料等はあくまで例示であり、他の製法、原料等の使用は妨げられない。
【0035】
また、下塗り塗膜と上塗り塗膜の膜厚比は、下塗り塗膜の膜厚/上塗り塗膜の膜厚=2~15であり、かつ、下塗り塗膜と、上塗り塗膜の膜厚と、をあわせた総膜厚が50~480μmに設定される。
【0036】
下塗り塗膜の膜厚/上塗り塗膜の膜厚が2未満の場合、所定の耐候性を得ることができない。下塗り塗膜の膜厚/上塗り塗膜の膜厚を15より大きくしても耐候性、耐衝撃性が大きく向上することはなく、コストが増大するだけなので好ましくない。
【0037】
総膜厚が50μmよりも薄い場合、塗膜の性能が発揮されず十分な耐候性、耐衝撃性を得られない。総膜厚が480μmよりも厚い場合、監視カメラの組み立て時に塗膜と監視カメラの構成部品とが干渉するため組み立てが困難になる。
【0038】
これにより、塗膜の総膜厚を所定の範囲に抑えることにより、良好な組み立て性を確保しつつ、ポリエステル系樹脂の下塗り塗膜とアクリル系樹脂の上塗り塗膜との組み合わせにより、耐候性、耐衝撃性を確保することもできる。
【0039】
ポリエステル系樹脂の下塗り塗膜の膜厚は、例えば、40~450μmの範囲に設定される。これにより、良好な組み立て性を確保しつつ、耐候性、耐衝撃性を確保することができる。下塗り塗膜の膜厚が40μmよりも薄い場合、十分な耐候性、耐衝撃性を得られない。下塗り塗膜の膜厚が450μmよりも厚い場合、塗膜のむらが大きくなるため、組み立て性が悪くなる。
【0040】
アクリル系樹脂の上塗り塗膜の膜厚は、例えば、10~30μmの範囲に設定される。これにより、耐候性を確保することができる。上塗り塗膜の膜厚が10μmよりも薄い場合、耐候性を得ることができない。上塗り塗膜の膜厚が30μmよりも厚い場合、1度の塗装で所定の膜厚を確保できなくなるため、塗膜の基材への密着性が悪くなる。そのため、塗膜がはがれやすくなる。
【0041】
下塗り塗膜と上塗り塗膜の膜厚比は、例えば、下塗り塗膜の膜厚/上塗り塗膜の膜厚=5~10の範囲に設定される。これにより、耐候性をさらに向上させることができる。
【0042】
下塗り塗膜は、例えば、粉体塗料から形成された塗膜であってよい。また、上塗り塗膜は、例えば、溶剤塗料から形成された塗膜であってよい。
【0043】
下塗り塗膜を粉体塗料により形成することにより、ピンホールの発生を抑え、アルミニウム基材の腐食を抑制することができる。上塗り塗膜を溶剤塗料により形成することにより、塗膜の総膜厚を容易に調整することができる。また、粉体塗料、溶剤塗料は、それぞれ1回のみの塗装で必要十分な膜厚を確保でき、重ね塗りをしなくて済むため、アルミニウム基材に対する塗膜の密着性が高くなる。
【0044】
また、図2に示すように、監視カメラ用カバー40のアルミニウム基材が、外側に露出する側壁16aを含む場合において、監視カメラ用カバー40は、側壁16aの内部において、カメラ筐体21を取り付けるための底壁16bをさらに備えてよい。側壁16aと底壁16bとは互いに組み立てられるが、塗膜42は、例えば、少なくとも側壁16aの内周面のうち、カメラ筐体21側の端部から底壁と側壁16aとの接触面を超えて形成される。これにより、監視カメラ用カバー40の内部に侵入した異物に対しても、耐候性、耐衝撃性を確保することができる。
【0045】
実施形態に係る監視カメラ11は、上述した監視カメラ用カバー40を備えており、良好な組み立て性を確保しつつ、耐候性、耐衝撃性を確保することもできる。
【0046】
次に、塗膜の形成工程について説明する。まず、アルミニウム基材に化成皮膜処理が施される。化成皮膜処理は、例えば酸化クロム処理により形成され、例えばパルコート(3価クロム系等)によって実施される。その後、アルミニウム基材の化成処理皮膜上に、ポリエステル系樹脂の下塗り塗装工程を実施し、下塗り塗膜を形成する。下塗り塗膜を乾燥させる乾燥工程を経た後、アクリル系樹脂の上塗り塗装工程を実施し、塗膜が完成する。
【0047】
下塗り塗膜を乾燥させることにより、下塗り塗膜がアルミニウム基材に定着する。下塗り塗膜の定着後、上塗り塗装工程を実施するため、下塗り塗膜のアルミニウム基材に対する塗膜の密着性が高くなる。また、下塗り塗膜に対する上塗り塗膜の密着性も高くなる。
【0048】
下塗り塗膜は粉体塗料により形成し、上塗り塗膜は溶剤塗料により形成することが好ましい。下塗り塗膜を粉体塗料により形成することにより、ピンホールの発生を抑え、アルミニウム基材の腐食を抑制することができる。また、上塗り塗膜を溶剤塗料により形成することにより、塗膜の総膜厚を容易に調整することができる。また、粉体塗料、溶剤塗料は、それぞれ1回のみの塗装で必要十分な膜厚を確保でき、重ね塗りをしなくて済むため、アルミニウム基材に対する塗膜の密着性が高くなる。
【0049】
なお、アルミニウム基材は、例えばAlSi10Mgを使用することができるが、特にその種類は限定されない。
【0050】
(実施例)
まず発明者は、表1、表2に示す様に、アルミニウム基材、化成処理皮膜、下塗り塗膜、下塗り塗膜のそれぞれについて種々の原料を採用したサンプル1~10を作製し、各サンプルについて耐候性を検証した。耐候性の試験は、JIS Z 2371:2015に規定する塩水噴霧試験方法(いわゆるCASS試験)に則って実施した。試験の実施後、塗膜下に錆による膨れ(言い換えると、試験の実施前と比べた錆による体積の増加。以下同様。)が発生していないものを〇、塗膜下に錆による膨れが発生しているものを×とした。なお、各サンプルの下塗り塗膜の膜厚は75μmであり、上塗り塗膜の膜厚は15μmであり、総膜厚は90μmであった。
【0051】
【表1】
【0052】
【表2】
【0053】
実験の結果、実施形態の様にポリエステル系樹脂の下塗り塗膜、アクリル系樹脂の上塗り塗膜を用いたサンプル4は、他のサンプルに比べて優れた耐候性が得られた。これは、ポリエステル系樹脂とアクリル系樹脂との密着性が良好であるためと考えられる。
【0054】
次に発明者は、表3~表6に示す様に、ポリエステル系樹脂の下塗り塗膜、アクリル系樹脂の上塗り塗膜それぞれの膜厚について、異なる値を持つサンプル11~29を作製し、各サンプルについて耐候性、塗布可能性、組み立て性を検証した。耐候性の試験は、JIS Z 2371:2015に規定する塩水噴霧試験方法(いわゆるCASS試験)に則って実施した。塗布性は、下塗り塗膜、上塗り塗膜について、それぞれ1回の塗装により形成できたか否かの評価である。塗布性が〇の場合は上塗り塗膜と下塗り塗膜をそれぞれ1回の塗装で塗膜が形成でき、塗布性が×の場合は上塗り塗膜と下塗り塗膜の少なくとも一方が1回の塗装で塗膜を形成できなかったものである。組み立て性は、図2の側壁16aと底壁16bとの組み立てが容易であったか否かの評価である。各サンプルのアルミニウム基材、化成処理皮膜、下塗り塗膜、下塗り塗膜は、下記の通りである。
【0055】
アルミニウム基材:AlSi10Mg
化成処理皮膜:パルコート
下塗り塗膜:ポリエステル系樹脂であるV-PET#6000SW(大日本塗料株式会社製)
上塗り塗膜:アクリル系樹脂であるアクリベイク(迪恩特塗料(上海)有限公司製)
【0056】
【表3】
【0057】
【表4】
【0058】
【表5】
【0059】
【表6】
【0060】
実験の結果、下塗り塗膜の膜厚/上塗り塗膜の膜厚=2~15であり、かつ、下塗り塗膜と、上塗り塗膜の膜厚と、をあわせた総膜厚が50~480μmの範囲にあるサンプルは、他のサンプルに比べて優れた耐候性、塗布可能性、組み立て性が得られた。特に、下塗り塗膜の膜厚が40~450μmの範囲にあり、上塗り塗膜の膜厚が10~30μmの範囲にあり、下塗り塗膜と上塗り塗膜の膜厚比が、下塗り塗膜の膜厚/上塗り塗膜の膜厚=5~10の範囲にあるサンプル14、15、17、20、22、23については、良好な特性が得られた。
【0061】
これは、ポリエステル系樹脂とアクリル系樹脂の膜厚比が所定の範囲にあるときに、上塗り塗膜と下塗り塗膜との密着性が向上するためであると考えられる。塗膜同士の密着性が向上することにより、上塗り塗膜が塩水による腐食の影響を受けにくくなっていると考えられる。
【0062】
以上により、本開示には少なくとも以下の事項が記載されている。なお、括弧内には、上記した実施形態において対応する構成要素等を示しているが、これに限定されるものではない。
【0063】
(1)アルミニウム基材と、化成皮膜処理が施された前記アルミニウム基材の表面に形成された塗膜(塗膜42)と、を備え、
前記塗膜は、
前記化成皮膜処理が施された化成処理皮膜上に形成された下塗り塗膜と、
前記下塗り塗膜上に形成された上塗り塗膜と、を備え、
前記下塗り塗膜は主成分としてポリエステル系樹脂を含み、
前記上塗り塗膜は主成分としてアクリル系樹脂を含み、
前記下塗り塗膜と前記上塗り塗膜の膜厚比が、下塗り塗膜の膜厚/上塗り塗膜の膜厚=2~15であり、かつ、前記下塗り塗膜と、前記上塗り塗膜の膜厚と、をあわせた総膜厚が50~480μmである、
監視カメラ用カバー(監視カメラ用カバー40)。
【0064】
これにより、監視カメラ用カバーにおいて、塗膜の総膜厚を所定の範囲に抑えることにより、良好な組み立て性を確保しつつ、ポリエステル系樹脂の下塗り塗膜とアクリル系樹脂の上塗り塗膜との組み合わせにより、耐候性、耐衝撃性を確保することもできる。
【0065】
(2)前記下塗り塗膜の膜厚は、40~450μmである、
(1)に記載の監視カメラ用カバー。
【0066】
これにより、監視カメラ用カバーにおいて、良好な組み立て性を確保しつつ、耐候性、耐衝撃性を確保することができる。
【0067】
(3)前記上塗り塗膜の膜厚は、10~30μmである、
(2)に記載の監視カメラ用カバー。
【0068】
これにより、監視カメラ用カバーにおいて、耐候性を確保することができる。
【0069】
(4)前記下塗り塗膜と前記上塗り塗膜の膜厚比が、下塗り塗膜の膜厚/上塗り塗膜の膜厚=5~10である、
(1)に記載の監視カメラ用カバー。
【0070】
これにより、監視カメラ用カバーにおいて、耐候性をさらに向上させることができる。
【0071】
(5)前記下塗り塗膜は粉体塗料から形成された塗膜であり、
前記上塗り塗膜は溶剤塗料から形成された塗膜である、
(1)に記載の監視カメラ用カバー。
【0072】
これにより、監視カメラ用カバーにおいて、下塗り塗膜を粉体塗料により形成することにより、ピンホールの発生を抑え、アルミニウム基材の腐食を抑制し、上塗り塗膜を溶剤塗料により形成することにより、塗膜の総膜厚を容易に調整することができる。
【0073】
(6)前記アルミニウム基材は、外側に露出する第1カバー部材(側壁16a)を含むとともに、
当該監視カメラ用カバーは、前記第1カバー部材の内部において、監視カメラ(監視カメラ11)のカメラ本体(カメラ筐体21)を取り付けるための第2カバー部材(底壁16b)をさらに備え、
前記第1カバー部材と前記第2カバー部材は組み立てられ、
少なくとも前記第1カバー部材の内周面のうち、前記カメラ本体側の端部から前記第2カバー部材と前記第1カバー部材との接触面を超えて前記塗膜が形成される、
(1)に記載の監視カメラ用カバー。
【0074】
これにより、監視カメラ用カバーにおいて、内部に侵入した異物に対しても、耐候性、耐衝撃性を確保することができる。
【0075】
(7)(1)から(6)のいずれかに記載の監視カメラ用カバーを備える監視カメラ。
【0076】
これにより、監視カメラにおいて、塗膜の総膜厚を所定の範囲に抑えることにより、良好な組み立て性を確保しつつ、ポリエステル系樹脂の下塗り塗膜とアクリル系樹脂の上塗り塗膜との組み合わせにより、耐候性、耐衝撃性を確保することもできる。
【0077】
以上、添付図面を参照しながら各種の実施の形態について説明したが、本開示はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例、修正例、置換例、付加例、削除例、均等例に想到し得ることは明らかであり、それらについても本開示の技術的範囲に属すると了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した各種の実施の形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本開示は、屋外環境下で設置される場合でも、組み立て性を確保しつつ、耐候性、耐衝撃性を確保することができる監視カメラカバー及び監視カメラとして有用である。
【符号の説明】
【0079】
11 監視カメラ
15 ブラケット
16 外周カバー
16a 側壁
16b 底壁
17 メイン筐体
19 回転台座
21 カメラ筐体(カメラ本体)
23 カバー
25 撮像窓部
27 投光窓部
29 連結体
33 上端面
35 固定材
37 下端面
40 監視カメラ用カバー
42 塗膜
【要約】
【課題】監視カメラが屋外環境下で設置される場合でも、良好な組み立て性を確保しつつ、耐候性、耐衝撃性を確保する。
【解決手段】監視カメラ用カバーは、アルミニウム基材と、化成皮膜処理が施されたアルミニウム基材の表面に形成された塗膜と、を備える。塗膜は、化成処理皮膜上に形成された下塗り塗膜と、下塗り塗膜上に形成された上塗り塗膜と、を備える。下塗り塗膜は主成分としてポリエステル系樹脂を含み、上塗り塗膜は主成分としてアクリル系樹脂を含む。下塗り塗膜と上塗り塗膜の膜厚比が、下塗り塗膜の膜厚/上塗り塗膜の膜厚=2~15であり、かつ、下塗り塗膜と上塗り塗膜の膜厚とをあわせた総膜厚が50~480μmである。
【選択図】図2A
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5
図6