(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】造花用の紙のグラデーションカラーリング方法
(51)【国際特許分類】
D06P 7/00 20060101AFI20240312BHJP
【FI】
D06P7/00
(21)【出願番号】P 2023145667
(22)【出願日】2023-09-07
【審査請求日】2023-10-24
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522028504
【氏名又は名称】一般社団法人ブラッサムアート協会
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】廣 野 妙 子
【審査官】粟倉 裕二
(56)【参考文献】
【文献】特開昭52-049311(JP,A)
【文献】特許第4058714(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06P 7/00
A41G 1/00
D21H 19/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
染色する染料を含む染色液の容器と、加熱器と、無色もしくは任意の色の被染色紙と、昇降可能な治具とを準備する段階、
前記染色液の容器を加熱器で所定の温度まで加熱する段階、
前記被染色紙を前記昇降可能な治具に、前記被染色紙の繊維の流れ方向と浸漬方向とが0度以上90度以下となるように固定する段階、
前記昇降可能な治具によって、前記被染色紙の一端の端辺を前記染色液に浸漬する段階、及び
前記染色液に浸漬した所定の時間後に、前記被染色紙を引き上げる段階を含み、
前記被染色紙が不織紙であり、
前記染色液に浸漬する段階で、前記染色液に浸漬させる前記被染色紙の一端の端辺が、直線状に山谷の形状であり、前記山谷の形状が三角形であり、前記三角形の頂点から前記染色液に前記三角形の一部を、浸漬方向と繊維の流れの方向が平行になるように浸漬し、
前記被染色紙の毛細管力によって染色する
染色の形状が、前記三角形の頂点から扇型に開いた形状のグラデーションであることを特徴とする造花用の紙のグラデーションカラーリング方法。
【請求項2】
染色する染料を含む染色液の容器と、加熱器と、無色もしくは任意の色の被染色紙と、昇降可能な治具とを準備する段階、
前記染色液の容器を加熱器で所定の温度まで加熱する段階、
前記被染色紙を前記昇降可能な治具に、前記被染色紙の繊維の流れ方向と浸漬方向とが0度以上90度以下となるように固定する段階、
前記昇降可能な治具によって、前記被染色紙の一端の端辺を前記染色液に浸漬する段階、及び
前記染色液に浸漬した所定の時間後に、前記被染色紙を引き上げる段階を含み、
前記被染色紙が不織紙であり、
前記染色液に浸漬する段階で、前記染色液に浸漬させる前記被染色紙の一端の端辺が、曲線状に山谷の形状であり、前記山谷の形状の一部を染色液に浸漬し、
前記被染色紙の毛細管力によって染色する形状が、浸漬する山谷の形状によって変化することを特徴とする造花用の紙のグラデーションカラーリング方法。
【請求項3】
前記被染色紙を前記染色液に浸す前に、前記被染色紙の一部又は全部を所定時間予め水に浸漬しておく段階をさらに含むことを特徴とする請求項1
又は2に記載の造花用の紙のグラデーションカラーリング方法。
【請求項4】
前記被染色紙は、
前記不織紙に代えて、上質紙、マット紙、アートポスト紙、クラフト紙、マットポスト紙、ケント紙、和
紙、又はエンボス加工のある表面が加工された吸水性のある天然パルプを含む紙であることを特徴とする請求項
3に記載の造花用の紙のグラデーションカラーリング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙に任意の濃淡又は彩色のグラデーションを施すための造花用の紙のグラデーションカラーリング方法に係り、より詳しくは、毛細管力と紙の繊維の流れ方向との組み合わせで、通常の染料の塗布では得られない自然で微妙な「揺らぎ」のグラデーションを容易に発現させることができる造花用の紙のグラデーションカラーリング方法に関する。本発明でグラデーションカラーリングされた紙は、特に、多種で自然な色調が望まれ、さらに、自然な濃淡及び自然な色調変化の花を再現する造花を製作するための紙に最適である。
【背景技術】
【0002】
印刷物や包装用紙等には、種々の色調の彩色紙が必要とされている。このような用途に使用される彩色紙は、一般に無色の紙に種々の染料を塗布することにより製造されている。現在は、化学合成技術により極めて多種の染料が開発されており、要求があれば、どのような色調の紙も製造することが可能である。
近年、微細に加工されたノズルを用いた塗布技術とこれを制御するデジタル技術とを組み合わせたデジタル印刷技術の進歩によって、種々の微細に制御された濃淡及び彩色のグラデーションを再現できる画像形成装置が開示され(特許文献1)、濃淡及び彩色のグラデーションカラーの絵画の多色刷り用版下の作成も可能となってきた。
【0003】
このような大量生産及び複製が可能なデジタル印刷技術の応用の影響を受けて、自然に近い濃淡及び彩色のグラデーションカラーリング方法の開発の要望が高まっている。
多種多様な色彩を持つ花のフラワーアレンジメントにおいて、短命な生花を人工的に再現して継続的に鑑賞可能とする造花が提供されている。しかし、樹脂製の造花では、樹脂加工技術によって本物に近い形の成形物の製造は可能である一方、生花に近づけるための自然な彩色の再現は困難である。
そのために、自然に近い色調に彩色する代わりに、デジタル制御可能なLED照明のカラーリング制御によって白色で成形された造花に内蔵されたLED照明で彩色するフラワーアレンジメントが提案されている(特許文献2)。
しかし、このような電子デバイスを用いたデジタル技術は、専門的な知識と技術および設備を必要とするために、多くのユーザーが種々の用途で簡便に用いるには問題があった。
【0004】
一方、従来から手軽な素材として広く用いられている紙で、自然な濃淡及び彩色のグラデーションカラー紙が得られれば様々な種々の用途での利用が期待される。
出願人は、どのような彩色にでも簡便にできる紙のカラーリング方法をこれまで提供してきた(特許文献3)。しかしながら、グラデーション、特に、自然な濃淡及び自然な色調変化並びにこれらの濃淡及び色調変化に方向性を持たせることは従来の方法では困難であった。
【0005】
本発明が目的としている自然な濃淡及び自然な色調変化の造花に好適な紙のグラデーションカラーリング方法として、先行技術は上記の問題がある。
そのために、出願人は、植物の葉及び花の発色に注目して造花用の紙のグラデーションカラーリング方法を探求した。
植物は、根の根毛から毛細管現象によって土の水分を吸収し、導管を通して茎や葉へ水を輸送する。水の一部は、葉の気孔から蒸散される。根から水分と共に吸収された養分が呼吸や成長及び開花に使われ、植物の葉や花の色は、おもに、フラボノイド、カロテノイド、ベタレイン、クロロフィルの4種類の色素成分により発現する。
【0006】
現在、紙素材は、天然セルロースからなる和紙をはじめ、種々のコート紙、加工紙、印刷用紙、さらには、吸水性に注目した生理・衛生用紙材など、用途によって多種多様な紙が用いられている。
本発明では、植物での水分の輸送や葉及び花の発色に深く関係する毛細管現象に注目し、さらに、植物の導管にみられる毛細管力の方向性に着目して造花用の紙のグラデーションカラーリング方法を探求した。
毛細管現象に着目した紙の応用では、毛細管力の方向性の利用したセルロース成分を多く含むレーヨン紐を用いた植栽用水分供給具が提案されている(特許文献4)。
また、種々のセルロース系吸水性繊維を含む吸収性物品用の吸収体が開示されている(特許文献5)。
しかしながら、毛細管現象を利用した造花用の紙のグラデーションカラーリング方法の提案はなされていない。
上記の先行技術を鑑み、出願人は、植物における毛細管現象による葉や花の発色に注目し、鋭意研究して、本発明を完成させるに至った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2012-195727号公報
【文献】特開2016-102281号公報
【文献】特許第4058714号公報
【文献】特許第4615341号公報
【文献】特開2022-031459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的とするところは、紙の彩色において、自然な濃淡及び自然な色調変化並びにこれら濃淡及び色調変化に方向性を持たせる造花用の紙のグラデーションカラーリング方法を提供することにある。
より詳細には、紙の繊維の流れ方向と毛細管力を使用した染色の向きとの組み合わせによって、濃淡及び色調変化に方向性を持たせることが可能な造花用の紙のグラデーションカラーリング方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための本発明の造花用の紙のグラデーションカラーリング方法は、
染色する染料を含む染色液の容器と、加熱器と、無色もしくは任意の色の被染色紙と、昇降可能な治具とを準備する段階、
染色液の容器を加熱器で所定の温度まで加熱する段階、
被染色紙を昇降可能な治具に被染色紙の繊維の流れ方向と浸漬方向とが0度以上90度以下となるように固定する段階、
昇降可能な治具によって被染色紙の一端の端辺を染色液に浸漬する段階、及び
染色液に浸漬した所定の時間後に被染色紙を引き上げる段階を含み、
被染色紙の毛細管力によって染色することを特徴とする。
【0010】
本発明のグラデーションカラー紙は、毛細管力によって染色されたことによって、自然な濃淡及び自然な色調変化を有し、これら濃淡及び色調変化が毛細管力に沿った方向性を有する、造花用及びフラワーアレンジメントに好適であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、紙の繊維の流れ方向と浸漬方向と毛細管力との組み合わせによって、自然な濃淡及び自然な色調変化並びにこれら濃淡及び色調変化に方向性を持たせる造花用の紙のグラデーションカラーリング方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の造花用の紙のグラデーションカラーリング方法によって得られたグラデーションカラー紙であり、A1-A1’端辺を染色液に浸漬した。
【
図2】本発明の造花用の紙のグラデーションカラーリング方法によって得られたグラデーションカラー紙であり、A1-A1’端辺を染色液に浸漬し、染色液に2成分の染料が含まれ、染色成分がそれぞれ分離してバンド構造として現れる場合である。
【
図3】本発明の造花用の紙のグラデーションカラーリング方法によって得られたグラデーションカラー紙であり、正三角形に切り出した被染色紙の頂点(A1)を染色液に浸漬して得られる扇型として現れる場合である。
【
図4】
図1で示した第1グラデーションカラー紙のB1-B1’端辺をさらに第2染料液に浸漬して得られた2色グラデーションカラー紙である。
【
図5】B1-B1’で折った2つ折りの被染色紙のB1-B1’端辺を染色液に浸漬して得られた第1グラデーションカラー紙のA1-A1’端辺及びA2-A2’端辺を、さらに第2の染色液に浸漬して得られた2色グラデーションカラー紙をB1-B1’の折り目を広げた平面図である。
【
図6】
図5のB1-B1’で2つ折りした2色グラデーションカラー紙をC1-C1’線に沿って内側を接着し、切り取り用の1/2の旗弁を描いた平面図である。
【
図7】
図6の2つ折りの2色グラデーションカラー紙から切り取られた1/2の旗弁を広げた旗弁(a)の平面図である。切り取った輪郭を部分的に分割して矢印の両方向に引っ張ることにより「ちじれ」を設ける様子を表している。
【
図8】
図5の2色グラデーションカラー紙をC2-C2’線に沿って内側に折り、さらに、C3-C3’線に沿って内側に折って3つ折りとすることを表した図である。
【
図9】
図8の3つ折りした2色グラデーションカラー紙に、D1-D1’線及びD2-D2’線に沿って中央に翼弁(b)、及び外側に2つの竜骨弁(c)の輪郭を描いた平面図である。ここから翼弁(b)3枚、C2-C2’線及びC3-C3’線に沿って2つ折りされた竜骨弁(c)が2枚得られる。
【
図10】
図9の中央部から切り取った翼弁(b)の平面図である。切り取った輪郭を部分的に分割して矢印の両方向に引っ張ることにより「ちじれ」を設ける様子を表している。
【
図11】
図8の3つ折りをD1-D1’線及びD2-D2’線に沿って切り取った2つの竜骨弁(c)が描かれた3角形のうち、C3-C3’線に沿って2つ折りされた竜骨弁(c)を広げた平面図に、紙を豆状に小さく丸めた針金の茎を包むようにC3-C3’線に沿って接合して中央が膨らんだ竜骨弁が得られることを説明する図である。
【
図12】
図4の2色グラデーションカラー紙から製作される旗弁(a)、翼弁(b)、竜骨弁(c)を示す平面図である。
【
図13】
図12の旗弁(a)、翼弁(b)、竜骨弁(c)、茎(e)から製作されるスイトピーの造花の写真である。
【
図14】
図13のスイトピーの造花を用いたフラワーアレンジの写真である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の実施の形態を詳細に記載する。この記載は本発明を説明するためのものであって、この記載によって本発明の技術範囲を限定するものではない。本発明は、本発明の技術的範囲から逸脱しない範囲内で、多様に変更して実施することが可能である。
【0014】
本発明の造花用の紙のグラデーションカラーリング方法は、
染色する染料を含む染色液の容器と、加熱器と、無色もしくは任意の色の被染色紙と、昇降可能な治具とを準備する段階、
染色液の容器を加熱器で所定の温度まで加熱する段階、
被染色紙を昇降可能な治具に被染色紙を固定する段階、
昇降可能な治具によって被染色紙を染色液に浸漬する段階、及び
染色液に浸漬した所定の時間後に被染色紙を引き上げる段階を含み、
被染色紙の毛細管力によって染色することができる。
【0015】
本発明の造花用の紙のグラデーションカラーリング方法の一実施形態によれば、被染色紙を染色液に浸す前に、被染色紙の一部又は全部を所定時間予め水に浸漬しておく段階をさらに含むことができる。
【0016】
本発明の造花用のグラデーションカラーリング方法の被染色紙は、上質紙、マット紙、アートポスト紙、クラフト紙、マットポスト紙、ケント紙、和紙、クレープ紙若しくはエンボス加工のある表面が加工された紙又は不織紙など吸水性のある天然パルプを含む紙であることができる。
【0017】
さらに、グラデーションカラーリング前に折りたたんで、折れ目をさらに施した紙を被染色紙として用いることができる。被染色紙の折り目の端辺を染色液に浸漬することによってグラデーションカラーリングすることができる。
【0018】
本発明の造花用の紙の一実施形態で得れるグラデーションカラーリング方法について図を用いて説明する。
白色の被染色紙の一端の端辺、例えば、
図1のA1-A1’端辺を染色液(例えば、赤色)に浸漬させると、毛細管現象によって染色水が重力に反して、吸い上げられ、
図1に示すような染色のグラデーションが得られる。
【0019】
被染色紙を染色液に浸漬する方向は、染色液の液面に対して任意の角度で浸漬することができるが、本発明で、被染色紙を染色液に浸漬する方向を「浸漬方向」と称する場合は、特に特定しない限り被染色紙の一端の端辺に垂直で且つ染色液面に鉛直な方向に浸漬することを表している。
【0020】
被染色紙はセルロース繊維が集積した構造であり、親水性のセルロース繊維が吸水し、さらに、セルロース繊維同士の集積により隣接するセルロース繊維間に微細な隙間ができた多孔質構造となっている。これが毛細管に相当し、毛細管力によって染色液が吸い上げられる。紙面内の微細な隙間のばらつきに分布があることより、水に含まれる染料は、染色液の吸い上げ(輸送)にしたがって染料が輸送されて、自然で微妙な「揺らぎ」のある濃度分布を持つようになる。
【0021】
この染料のグラデーションの濃度分布の広がりは、染料成分とセルロース繊維との相互作用に基づき吸着・脱吸着によって輸送速度が異なる。例えば、2成分以上の染料成分が含まれる染色液を用いると、各染料成分の輸送速度が顕著に異なる場合には、染料成分毎に吸い上げの先端の位置が異なってくる場合があり、
図2に示すようにバンド構造として現れる場合がある。
【0022】
用いる染料成分、染料の濃度、染料液の温度、浸漬時間、及び被染色紙の組み合わせによっては、得られるグラデーションにおいて吸い上げの先端の濃度が高い場合がありえる。
特に、染料成分とセルロース繊維との相互作用が小さく輸送速度が大きい場合には
図2に示すようなバンド構造として現れる。このバンド構造として現れる現象は、ペーパークロマトグラフィーとして混合成分液から各成分の分離・同定に応用されている。
【0023】
紙はパルプから取り出した繊維を機械で一定方向に流しながら製造するために、この抄紙工程の進行方向に繊維が揃いやすく繊維の流れ(紙目)ができる。例えば、裁断した紙(全紙)の長辺に平行に繊維が流れている紙を「縦目」と称している。被染色紙の繊維の流れ方向と浸漬方向との関係は、毛細管力を利用した本発明のグラデーションカラーリング方法では重要である。
被染色紙の繊維の流れ方向と浸漬方向が平行である、繊維の流れ方向と浸漬方向とがなす角度が0度の場合には、繊維の流れ方向に沿った毛細管力によって効率よく染色液の吸い上げが生じ、繊維の流れ方向に沿ったグラデーションが生ずる。
【0024】
一方、繊維の流れ方向と浸漬方向が平行でない、繊維の流れ方向と浸漬方向とがなす角度が0超から90度以下の場合には、巨視的には浸漬方向に沿った毛細管力によって染色液の吸い上げが生じると共に、微視的には繊維の流れに沿った毛細管力によって染色液の吸い上げも生じるために、被染色紙の繊維の流れ方向と浸漬方向が平行な場合とは異なるグラデーションが生ずる。
【0025】
例えば、繊維の流れ方向と浸漬方向が平行でない、繊維の流れ方向と浸漬方向とがなす角度が45度の場合には、染色液の引き上げの速度が、繊維の流れ方向と浸漬方向が平行の場合に比べて遅くなり、染色液の吸い上げの先端の形状も繊維の流れ方向と浸漬方向が平行の場合に比べて直線状からの乱れが大きくなり、同じ位置までの染色液の吸い上げに比べ濃い色のグラデーションが得られた。
以上のように、繊維の流れ方向と浸漬方向との角度によって、色調変化並びにこれら濃淡及び色調変化が異なる紙のグラデーションカラーリングができる。
【0026】
本発明の造花用の紙のグラデーションカラーリング方法で得られるグラデーションカラーは、繊維の流れ方向と浸漬方向とのなす角度だけでなく、染料液に浸漬する領域の紙の形状にも大きく依存する。
本発明の造花用の紙のグラデーションカラーリング方法の一実施形態によれば、染料液に浸漬する領域の紙の形状として染色液に浸漬させる被染色紙の一端の端辺が一直線であるか又は直線状に山谷もしくは曲線状の山谷の形状であることができる。
【0027】
本発明造花用の紙のグラデーションカラーリング方法の一実施形態によれば、染色液に浸漬させる被染色紙の一端の端辺が一直線でなく、直線状に山谷もしくは曲線状の山谷の形状である紙である場合には、山谷の形状の領域の全てを染色液に浸漬させる又は一部を染色液に浸漬させることができる。
【0028】
染色液に浸漬させる被染色紙の一端の端辺が一直線でなく、直線状に山谷もしくは曲線状の山谷の形状であり、端辺の山谷の形状の一部を染色液に浸漬させる場合には、毛細管力による染色液の輸送(染色液の吸い上げ)が山谷の形状によって一様ではなくなる。
特に、浸漬初期の段階では、染色液染色液の吸い上げの先端の形状は浸漬領域の山谷の形状によって変化した模様となりえる。
【0029】
例えば、頂点(
図3 A1)から底辺(
図3 B1-B1’)への垂線と繊維の流れの方向が平行な正三角形に切り出した被染色紙を、頂点(
図3 A1)から染色液に浸漬方向と繊維の流れの方向が平行になるように浸漬した場合には、
図3に示すような吸い上げの先端の形状が頂点から扇型に開いた形状のグラデーションが得られた。
【0030】
図3に示すとおり、染色液の吸い上げの先端は、染色液に浸漬させる被染色紙の一端の端辺の形状に依存するグラデーションを形成でき、造花における花弁に好適な模様のあるグラデーションカラーリング紙を得ることができる。
特に、
図2のような染色液の染色成分が分離してバンド構造として現れる条件と染色液に浸漬させる被染色紙の一端の端辺の形状との組み合わせることによって、造花の花弁の複雑な模様を再現するグラデーションカラーリング方法として応用できる。
【0031】
本発明の別な形態によれば、被染色紙として本発明のグラデーションカラーリング方法(以下、「第1グラデーションカラーリング方法」と称す。)で染色したグラデーションカラー紙(以下、「第1グラデーションカラー紙」と称す。)を用いることができる。
【0032】
第1グラデーションカラー紙を用いたグラデーションカラーリング方法(以下、「第2グラデーションカラーリング方法」と称す。)として第1グラデーションカラーリング方法と異なる色の染料を用いると2色のグラデーションカラー紙(以下、「第2グラデーションカラー紙」と称す。)が製造できる。この時に、浸漬方向に沿って得られるグラデーションの方向が、第1グラデーションカラーリング方法と異なる場合であっても、同じ場合であってもよい。
【0033】
第2グラデーションカラーリング方法においてグラデーションの方向が、第1グラデーションカラーリング方法と異なる場合について説明する。
図4に、
図1に示す第1グラデーションカラー紙(例えば、赤色のグラデーション)のB1-B1’端を異なる色の染色液(例えば、やなぎ色)に浸漬することによって得られるグラデーションの方向が異なる2色(赤色とやなぎ色)の第2グラデーションカラーの例を示す。
図4では、特に、中央部に染色されていない領域(白色の被染色紙の場合には白色)を残している。
図4の2色の第2グラデーションカラーは後述の造花の制作の例に示すように、様々な造花の花弁として用いることができる。例えば、2色の第2グラデーションカラーは、赤色は花弁の先端側でやなぎ色はがく側となりえる。
【0034】
図4に示すような中央部に染色されていない領域を残さず、2色が混合するように第2グラデーションカラーリング方法を行うと、中央部は2色が混合した混合色のグラデーション領域となり、3色のカラーグラデーションが得られることとなる。
【0035】
また、被染色紙として白色紙の代わりに、着色した被染色紙を用いると、第2グラデーションカラーリング方法によって染色紙の場所によって2色が不均一に混合した混合色のカラーグラデーションが得られる。
【0036】
さらにまた、第2グラデーションカラーリング方法として第1グラデーションカラーリング方法と異なる色の染料を用いる場合で、第1グラデーションカラーリング方法と第2グラデーションカラーリング方法とが同じ端辺からの浸漬方向で行うと同じグラデーション方向を有する2色の混合色のグラデーションが得られる。染料によっては、
図2に示したようなバンド構造を有するグラデーションカラーとなる場合もありえる。
【0037】
以上、本発明の実施形態の例示のとおり、本発明の造花用の紙のグラデーションカラーリング方法は、被染色紙の着色の有無、繊維の流れ方向と浸漬方向とのなす角度、グラデーション方向、多色でのグラデーションカラーリング及び浸漬領域の形状などの多種多様な組み合わせの応用が可能である。
【0038】
本発明の方法にしたがって、造花用の紙を例に挙げて、グラデーションカラーリングする手順を説明する。
【0039】
<染料>
本発明で用いる染料は、本目的に合った染料であれば、市販の水溶性染料を用いることができる。又は、色画用紙から取り出した染料を用いることができる。この色出し用の色画用紙(以下、「色出し用原紙」と称す。)として、例えば、ニューカラーR(リンテック社製)から取り出した染料を用いることができる。ニューカラーRと取り出される染料の色との関係は下記表1のとおりである。そして、これらの色出し用原紙は、色出し用として使用できるとともに、グラデーションカラーリング方法の被染色紙としても使用できる。
【0040】
【0041】
造花用の典型的な2種類のグラデーションカラーリング染色紙として、ピンク~オレンジ系の花びら用のグラデーションカラーリング染色紙と、葉用のグリーン系のグラデーションカラーリング染色紙について説明する。
まず、色出し用原紙を適当な大きさに折りたたんだ後、容器に入れた水に沈め、容器内の水を加熱する。沸騰して間もなく、水は染料が溶出することで着色して染色液ができ、沸騰温度に保ってグラデーションカラーリングを行うことができる。
【0042】
グラデーションカラーリングする被染色紙は、染色後の紙の用途に応じて選択される。例えば造花の材料として使用する場合には、花や葉を作るのに適した用紙、例えば、クレープ紙又はソフト紙を選択し、被染色紙を浸漬用固定治具に固定する。この時、繊維の流れ方向と浸漬方向との角度を0度以上から90度以下の所定の角度に保てるように固定する。被染色紙の固定は、平面に広げて固定するだけでなく、折り曲げたまま、或いは筒状に丸めたまま、固定できる治具を用意する。固定具として重要な機能は、繊維の流れ方向と浸漬方法との角度を所定の角度に保ち昇降できることである。
【0043】
昇降機構により、被染色紙の端辺を沸騰した着色した染色液に浸す。この被染色紙の端辺を着色した水中に沈めると、数秒ないし数分間で、水に溶けている染料が毛細管現象で吸い上げられ被染色紙に吸収され、グラデーションカラーリングが行われる。被染色紙に折り目、皺、クレープ、エンボスがある場合には、例えば、皺の折り目部分は紙の組織が壊されていることから毛細管現象の度合いが異なり、染料が進入し易くその部分は濃く染色され、染色後の被染色紙には皺が模様状に残り、微妙な風情を出すことができる。ついで被染色紙を染料液から引き上げ、広げて乾燥すれば、所望の色のグラデーションが得られる。
【0044】
グラデーションカラーリング後の被染色紙の色調は、着色した被染色紙を用いる場合には、被染色紙が本来有していた色調と、色原紙から溶出された染料の色調とが合成された色調となり、この最終的な色調は、色原紙とも被染色紙とも異なる独特なものである。
例えば、色原紙として「えんじ」色の色画用紙を使用し、被染色紙として薄クリーム色のクレープ紙を使用した場合、グラデーションカラーリング後の被染色紙の色調は、淡いオレンジ系のものとなる。しかもこの淡いオレンジ系グラデーションは、自然の花に近い微妙な色調を持つものである。また、色原紙と被染色紙の組合せが同じでも、染色液に浸漬する時間、染色液の温度を変えることで色相、明度、彩度が異なるグラデーションを作ることができる。
【0045】
このようにしてグラデーションカラーリングされた被染色紙は、独特の色調のグラデーションを有することから、包装紙、グリーティングカード等の種々の用途に広く利用することができるが、特に好適な用途は、造花の材料としての用途である。
本発明によれば、染料と被染色紙の色調との組み合わせ、およびグラデーションカラーリング処理の条件に応じて、極めて微妙な色調のグラデーションを得ることが可能であり、自然の花に近い色調が容易に出せるばかりでなく、自然界には存在しない斬新な色調の造花をも作ることができる。
さらに、グラデーションカラーリングの方向を変えることによって、花弁に見られるような模様を作り出すことも可能となる。
【0046】
以下に、本発明の造花用の紙のグラデーションカラーリング方法に従って造花を作る実施例について説明するが、本発明によって製造されたグラデーションカラー紙は造花の製造に好適であるが、造花の製造に限定されるものではない。
【実施例1】
【0047】
〔染色液1〕
色原紙として、ニューカラーR えんじ(リンテック株式会社製)4つ切りを選び、これを4つ折りにして、500mL容器の底に置いた。次いで容器に300mLの水を入れた後、加熱して沸騰させ、沸騰温度を維持した。加熱中に水の色が徐々に赤くなって赤色の染色液ができる。
【0048】
〔第1グラディエーションカラー紙の製造〕
まず、
図1に示すような単色のグラデーションカラーリングの例について説明する。
造花の花びらとなる被染色紙として、吸水性のある天然パルプを含む上質紙、マット紙、アートポスト紙、クラフト紙、マットポスト紙、ケント紙、和紙、クレープ紙若しくはエンボス加工のある表面が加工された紙又は不織紙などを用いることができる。
一実施例として、サルバ(登録商標)30cm×34cm(白十字株式会社製)を準備し、筒状に丸めて繊維の流れ方向と浸漬方向が平行になるように昇降可能な治具に固定して、〔染色液1〕の赤色の染色液に浸してグラデーションカラーリングを行った。浸漬時間は、染色液の色調および濃度、被染色紙の色調、ならびに所定の色の濃度等によって適宜に設定することができるが、一般的には2秒から1分間程度で十分である。また、浸漬に先立って被染色紙を揉んだが、揉まずにカラーリングを行っても良い。
被染色紙の浸漬された領域から、全体の1/3領域がグラデーションカラーリングされ白色領域が残るのをもって終了とした。
終了後、被染色紙を染色液から引き上げ、濡れたままで緩く広げた後、自然乾燥させて、花びら用被染色紙を得た。この被染色紙は、30秒間のグラデーションカラーリングで濃いピンク色に変化した。
図1に示すような第1グラデーションカラー紙が得られた。
【実施例2】
【0049】
〔染色液2〕
次に、色原紙として、ニューカラーR やなぎ(リンテック株式会社製)を用いて、〔染色液1〕と同様にしてやなぎ色の染料液を準備した。
【0050】
〔第2グラディエーションカラー紙の製造〕
図4に示す2色の第2グラデーションカラー紙の製造例について説明する。
〔実施例1〕のピンク色のグラデーションカラーリングされた被染色紙(第1グラディエーションカラー紙)を筒状に丸めて繊維の流れ方向と浸漬方向が平行になるようにし、染色していない他方の白色の端辺(
図1に示すB1-B1’端辺)を浸漬するように昇降可能な治具に固定した。
〔染色液2〕のやなぎ色の染色液を用いて第2グラデーションカラーリング方法を行った。被染色紙の浸漬された領域から、全体の1/3領域がグラデーションカラーリングされるのをもって終了とした。終了で重要なことは、中央部がいずれの色にもグラデーションカラーリングされていない白色領域が残っていることである。
終了後、被染色紙を染色液から引き上げ、濡れたままで緩く広げた後、自然乾燥させて、花びら用被染色紙を得た。この花びら用被染色紙は、30秒間のグラデーションカラーリングで浸漬された領域は濃いやなぎ色に変化した。
図4に示すような2色の第2グラデーションカラー紙が得られた。
【0051】
図5に示す被染色紙を中央(
図5 B1-B1’)で2つ折りにした2つ折り被染色紙の2色グラデーションカラー紙の製造例について説明する。
まず、〔第1グラディエーションカラー紙の製造〕に従って、2つ折りした被染色紙の折り目でない端辺(
図5 A1-A1’、A2-A2’)を〔染色液1〕に浸漬してピンク色の第1グラデーションカラー紙を得た。
次に、〔第2グラディエーションカラー紙の製造〕に従って、折り目の端辺(
図5 B1-B1’)を〔染色液2〕に浸漬してピンク色とやなぎ色の第2グラデーションカラー紙を得た。
得られた2色グラデーションカラーリングした2つ折りした被染色紙を広げて、
図5に示す花弁用のピンク色とやなぎ色との2色の第2グラデーションカラー紙を得た。
このピンク色とやなぎ色との2色の第2グラデーションカラー紙を用いて、旗弁、翼弁、竜骨弁の3種の花弁を製造する工程について説明する。
【0052】
図6は、
図5のB1-B1’で2つ折りした2色の第2グラデーションカラー紙をC1-C1’線に沿って内側を線状に糊付けし、2つ折りしての旗弁を切り出すために1/2の旗弁を描いたものである。
【0053】
図7は、
図6のC1-C1’の糊付けに沿って切り取り、旗弁の輪郭線に沿って切り取り、広げて、切り取った旗弁の周辺を部分的に分割して矢印方向に引っ張ることにより、旗弁(a)の「ちじれ」を再現する工程を示している。
【0054】
次に、3つ折りしたピンク色とやなぎ色との2色の第2グラデーションカラー紙を用いた翼弁、竜骨弁を製造する工程について説明する。
図8の2色の第2グラデーションカラー紙のC2-C2’線に沿って内側に折り、さらに、
図8のC3-C3’線に沿って内側に折って
図9に示す3つ折りとする。
【0055】
図9に示すように、
図8を3つ折りにした2色グラデーションカラー紙に、D1-D1’線及びD2-D2’線に沿って中央に翼弁(b)の輪郭を描き、さらに、外側に2つの竜骨弁(c)の輪郭を描いた。
図9の3つ折りした2色グラデーションカラー紙に描いた翼弁(b)及び竜骨弁(c)を切り取ることによって、翼弁(b)が3枚、C2-C2’線及びC3-C3’線に沿って2つ折りされた竜骨弁(c)が2枚得られる。
【0056】
切り出した翼弁(b)は、
図10に示すように切り取った周辺部位を部分的に分割して引っ張ることにより、翼弁(b)の「ちじれ」を再現することができる。
【0057】
図11は、
図8の3つ折りをD1-D1’線及びD2-D2’線に沿って切り取った2つの(c)竜骨弁が描かれた3角形のうち、C3-C3’線に沿って2つ折りされた(c)竜骨弁を広げた平面図である。
【0058】
豆状に小さく丸めた紙(d)を針金(e)の先に固定し、
図10のC3-C3’線に沿って豆状に小さく丸めた紙(d)が固定された針金(e)を竜骨弁(c)に置き、豆状に小さく丸めた紙(d)を包むようにC3-C3’線に沿って折って接合して切り取って、中央が膨らみ針金(e)の先に固定された竜骨弁が得られる。なお、針金はやなぎ色にカラーリングされた紙を巻き付け、毛羽立たせて茎とする。
【0059】
図12に2色の第2グラデーションカラー紙から得られた旗弁(a)、翼弁(b)、竜骨弁(c)を示す。
【0060】
2枚の翼弁(b)のやなぎ色にグラデーションカラーリングされた部位を重なるようにして、茎に取り付けた竜骨弁に合体させて固定し、最後に2枚の翼弁(b)の反対側に旗弁(a)を固定して
図13に示すスイトピーの造花が製造される。
【0061】
図13に示すとおり、花弁の付け根が濃いやなぎ色であり、がくとの付け根となり、花弁端に向かって自然なグラデーションとなっている。一方、花弁端は、濃いピンク色であり、花弁の付け根に向かって自然なグラデーションとなっている旗弁が作成されている。
以上、2色の第2グラデーションカラー紙は、種々の造花の花弁へ広く応用することができる。
【0062】
上記実施例1~2において被染色紙の繊維の流れ方向と浸漬方向は平行方向の場合を説明している。
図6及び
図9に示すように、得られる旗弁(a)及び翼弁(b)はそれぞれ
図6のC1-C1’線及び
図9のD2-D2’線に沿って切り出している。すなわち、旗弁(a)ではC1’側が、及び翼弁(b)ではD2’側ががくに付いている側である。
【0063】
がくから花弁の先端に向けたカラーグラデーションを得るために、別な実施形態として、被染色紙の繊維の流れ方向と浸漬方向が平行でないグラデーションカラーリングをすることができる。
例えば、旗弁(a)を製造する場合に、被染色の繊維の流れの方向が
図6のC1-C1’線に平行になるように予め繊維の流れ方向と浸漬方向を設定した被染色を用いて第1及び第2グラデーションカラーリング方法によって得られる2色の第2グラデーションカラー紙を用いることによって、がくから旗弁(a)の周辺に向けて(
図7でC1’からC1方向)繊維が流れているために、より自然なグラデーションカラーの旗弁(a)が得られることができる。
翼弁(b)を製造する場合には、被染色の繊維の流れの方向が
図9のD2-D2’線に平行になるように予め繊維の流れ方向と浸漬方向を設定すれば、旗弁(a)の場合と同様に、がくから翼弁(b)の周辺に向けて(
図9でD2’からD2方向)繊維が流れているために、より自然なグラデーションカラーの翼弁(b)が得られることができる。
【0064】
グラデーションカラーリング方法は、白色の被染色紙を用いるだけでなく、予め着色した被染色紙を用いることによって、染料の単色のグラデーションだけでなく、予め着色した被染色紙との混色のグラデーションが得られる。
下記表2に〔染色液1〕の赤色の染料による種々の着色した被染色紙との混色の例を示す。
【0065】
【0066】
次に、予め着色した被染色紙を用いて造花用の葉となるグラデーションカラーリングの実例を述べる。
【実施例3】
【0067】
〔混色グラデーションカラー紙の製造〕
造花の葉となる被染色紙として、ニューカラーR うすみどり(リンテック株式会社製)を被染色紙として、〔染色液1〕の染料液に約1分間浸漬した後、引き上げた。その後、軽く広げて自然乾燥し、赤味のグラデーションカラーを帯びたオリーブグリーン色の葉用の混色グラデーションカラー紙を得た。
【0068】
また、ニューカラーR やなぎ(リンテック株式会社製)を被染色紙として、〔染色液1〕を用いたグラデーションカラーリングを施して、赤味のグラデーションを帯びたやなぎ色の葉用グラデーションカラーリング紙を得た。
造花の作成に当たっては、より豊かなカラーバリエーションを得るために、種々の色調の被染色紙を使って、浸漬時間を変化させながら多種の被染色紙を用いて多様な色調の造花を再現して
図14に示すフラワーアレンジメントを作成することができる。
【0069】
なお、上に述べた造花の製作工程は単なる例示であり、本発明はこれに限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明の造花用の紙のグラデーションカラーリング方法は、特殊な設備、デジタル技術の知識を必要とせず、従来から手軽な素材として広く用いられている紙で、自然な濃淡及び彩色のグラデーションカラー紙が得ることでき、通常の染料の塗布では得られない自然で微妙な「揺らぎ」のグラデーションを容易に発現させることができる。本発明でグラデーションカラーリングされた紙は、特に、多種で自然な色調が望まれ、さらに、自然な濃淡及び自然な色調変化の花を再現する造花用紙に最適であるだけでなく、様々な種々の用途での利用が期待され産業上の利用の可能性は大きいといえる。
【符号の説明】
【0071】
(a) 旗弁
(b) 翼弁
(c) 竜骨弁
(e) 茎
【要約】
【課題】本発明の目的は、紙の繊維の流れ方向と毛細管力を使用した染色の向きとの組み合わせによって、濃淡及び色調変化に方向性を持たせることが可能な造花用の紙のグラデーションカラーリング方法を提供することにある。
【解決手段】本発明の造花用の紙のグラデーションカラーリング方法は、染色する染料を含む染色液の容器と、加熱器と、無色もしくは任意の色の被染色紙と、昇降可能な治具とを準備する段階、染色液の容器を加熱器で所定の温度まで加熱する段階、被染色紙を昇降可能な治具に被染色紙を固定する段階、昇降可能な治具によって被染色紙を染色液に浸漬する段階、及び染色液に浸漬した所定の時間後に被染色紙を引き上げる段階を含み、被染色紙の毛細管力によって染色することを特徴とする。
【選択図】
図14