(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】高分子マイクロ流体バルブ
(51)【国際特許分類】
G01N 1/00 20060101AFI20240312BHJP
B81B 3/00 20060101ALI20240312BHJP
B81C 1/00 20060101ALI20240312BHJP
G01N 37/00 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
G01N1/00 101L
B81B3/00
B81C1/00
G01N37/00 101
(21)【出願番号】P 2020544790
(86)(22)【出願日】2019-03-04
(86)【国際出願番号】 IB2019051731
(87)【国際公開番号】W WO2019167031
(87)【国際公開日】2019-09-06
【審査請求日】2022-02-28
(32)【優先日】2018-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】595006223
【氏名又は名称】ナショナル リサーチ カウンシル オブ カナダ
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100094318
【氏名又は名称】山田 行一
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】リー, ケビン
(72)【発明者】
【氏名】モートン, キース
(72)【発明者】
【氏名】ヴェレス, テオドール
【審査官】西浦 昌哉
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0305607(US,A1)
【文献】特表平09-505130(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0150702(US,A1)
【文献】特表2002-530601(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00- 1/44
G01N 35/00-35/10
G01N 37/00
B81B 1/00- 7/04
B81C 1/00-99/00
F16K 7/00- 7/20
F16K 13/00-13/10
F16K 25/00-25/04
F16K 29/00-29/02
F16K 33/00
F16K 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子マイクロ流体バルブにおいて、
プラスチック基板と、
前記基板にわたって延在する弾性変形可能なエラストマ膜であって、前記基板および膜が、マイクロ流体デバイス内の少なくとも2つのマイクロ流体チャネルを分離するバルブ区域を画定する、エラストマ膜と、
前記膜および前記基板のうちの一方の上の前記バルブ区域内にあり、前記高分子マイクロ流体バルブが閉じられたとき、前記膜および前記基板が接触する付着制御表面を有する、弁座と、
前記膜によって前記マイクロ流体チャネルから分離された封止された制御流体チャンバであって、前記制御流体チャンバ内の圧力の変化が、前記基板から前記膜を分離し、それによって前記バルブを開放するために、前記弁座の前記付着制御表面における前記基板と前記膜との間の付着に打ち勝つのに十分な力を前記膜上に与える、制御流体チャンバと、
を備え、
前記付着制御表面は、複数の分離された頂部合わせ表面と凹部表面とを与えるマイクロ構造の軽減パターンを備え、前記頂部合わせ表面は、前記付着制御表面が及ぶ面積(スパン領域)よりも小さい累積表面積を集合的に有し、前記高分子マイクロ流体バルブが閉鎖しているときに前記頂部合わせ表面間に流体充填空所を有し、前記軽減パターンは、前記流体充填空所が、前記マイクロ流体チャネル内の前記弁座の両端の間で、前記弁座にわたって相互接続されるような開放パターンを備え、
前記軽減パターンが前記膜または前記基板のいずれかに提供され、
前記流体充填空所は、(1)スパン領域にマイクロ構造が存在しない場合の付着と比較して、(2)膜と基板とが、頂部合わせ表面および凹部表面を含む全ての利用可能な表面にわたって、共形接触している場合の付着と比較して、スパン領域における膜と基板との間の付着を低減する、高分子マイクロ流体バルブ。
【請求項2】
前記バルブが閉鎖したときの前記付着制御表面上の前記頂部合わせ表面間の累積表面積は、前記付着制御表面が及ぶ表面積の0.55%~76%であり、あるいは、
前記付着制御表面上の前記頂部合わせ表面の前記累積表面積は、前記付着制御表面の全表面積の0.54%~30%であり、前記全表面積は、前記頂部合わせ表面の前記累積表面積と、前記凹部表面の累積表面積と、前記頂部合わせ表面および凹部表面を接続する前記マイクロ構造の側壁の累積表面積とを含む、請求項1に記載のバルブ。
【請求項3】
前記マイクロ構造の前記頂部合わせ表面および凹部表面は、少なくとも75nmの深さdによって分離され、50~1256本のマイクロピラーを有する、請求項1~2のいずれか一項に記載のバルブ。
【請求項4】
前記複数の別個の頂部合わせ表面は、少なくとも25の別個の頂部合わせ表面を含み、これらの頂部合わせ表面は、前記マイクロ構造が規則的に配列された複数のマイクロピラーであるように、前記頂部合わせ表面に制限された、いかなる経路によっても接続されていない、請求項1~3のいずれか一項に記載のバルブ。
【請求項5】
前記流体充填空所は、集合的な空所容量を有し、前記マイクロ構造および/またはナノ構造は、集合的な構造容量を有し、前記制御流体チャンバおよび前記マイクロ流体チャネルの間に圧力差がない状態で前記高分子マイクロ流体バルブが閉鎖されるとき、前記集合的な空所容量は、前記集合的な空所容量および前記集合的な構造容量の合計の50~99.5%である、請求項1~4のいずれか一項に記載のバルブ。
【請求項6】
前記付着制御表面は、前記マイクロ流体チャネルを分離するバルブ本体上にあり、前記バルブ本体を超えて延在し、前記チャネルの中間の基板の頂部合わせ表面を覆う、請求項1に記載のバルブ。
【請求項7】
前記流体充填空所は、空気または水で充填される、請求項1~6のいずれか一項に記載のバルブ。
【請求項8】
高分子マイクロ流体バルブを使用してマイクロ流体チャネル内の流体の流れを制御する方法において、
マイクロ流体デバイスにおいて、常閉型の、請求項1~7のいずれか一項に記載の高分子マイクロ流体バルブを準備するステップと、
前記制御流体チャンバ内の圧力を変化させ、前記弁座の前記付着制御表面における前記基板との付着に打ち勝つのに十分な力を前記膜に与え、前記膜を前記基板から分離し、それによって、前記高分子マイクロ流体バルブを開放し、流体が前記2以上のマイクロチャネル間を流れる事を可能にするステップと、
を含む、方法。
【請求項9】
前記高分子マイクロ流体バルブが開放されているときに前記制御流体チャンバ内の圧力を十分に変化させて、前記基板および前記膜を前記付着制御表面で一緒に押圧し、それによって、前記膜を前記基板に対して密封係合させ、前記高分子マイクロ流体バルブを閉鎖して、流体が前記マイクロ流体チャネルを通って流れるのを防止するステップを更に含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
高分子マイクロ流体バルブの弁座を表面処理する方法において、
弾性変形可能なエラストマ膜上またはバルブの為のプラスチック基板上に弁座を製作するステップであって、前記弁座が、前記バルブが閉鎖されるときに前記膜が前記プラスチック基板に対して接触して密封することになる付着制御表面を有する、前記ステップと、
前記膜または基板を表面処理液に接触させるステップであって、表面処理液は、マイクロ構造が存在しない前記膜または基板の部分ではなく、前記弁座の前記付着制御表面を優先的に濡らし、それによって、前記膜または基板の前記部分を表面処理することなく、前記弁座を表面処理するステップと、
前記膜と、2つのマイクロ流体チャネルと交差するように配置された前記弁座を備えた基板とを組み立てるステップであって、前記付着制御表面は、複数の分離された頂部合わせ表面と凹部表面とを与えるマイクロ構造の軽減パターンを備え、前記頂部合わせ表面は、前記付着制御表面が及ぶ面積
(スパン領域)よりも小さい累積表面積を集合的に有し、前記頂部合わせ表面の間に流体充填空所を有する、前記ステップと、
を含み、、
前記軽減パターンは、前記流体充填空所が、前記マイクロ流体チャネル内の前記弁座の両端の間で、前記弁座にわたって相互接続されるような開放パターンを備える、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本願は、マイクロ流体デバイス、特に、改善された付着制御を備えたマイクロ流体デバイスの為のバルブ構造に関する。
【0002】
【背景】
【0003】
[0002]マイクロバルブは、マイクロトータル分析システム(μTAS)コミュニティ内で流体の流れを制御する為に広く使用されてきた。膜ベースの空気圧式マイクロバルブは、流動層、膜層、空気圧式制御層で構成される単純なサンドイッチ構造であるため、非常に魅力的である。サンドイッチ構造は、非常にエレガントで昨日積であるが、特定の問題を引き起こす。膜層は、マイクロ流体チャネルの漏れの無い動作を提供するため、弁座を除いて、どこでも流動層に対して密封しなければならない。
【0004】
[0003]ポリジメチルシロキサン(PDMS)ベースの常閉弁の弁座での結合を回避するために3つのストラテジがある。PDMSとPDMSとの結合またはガラスとPDMSとの結合は、典型的には、酸素プラズマ処理によって促進されるので、以下の技術を使用して結合を低減することができる。ストラテジ1は、O2プラズマ処理中に弁座の領域をマスクすることである。ストラテジ2は、マイクロ接触印刷法を使用して、酸化されたPDMS弁座上にオリゴマーを選択的に堆積させ、PDMSに対するPDMSまたはガラスに対するPDMS結合をブロックすることである。ストラテジ3は、(金属層で予めパターン化された)非PDMS弁座または結合処理中に加えられる膜層上の他の犠牲バリアを使用することである。
【0005】
[0004] 1つの可撓性高分子(例えば、熱可塑性エラストマ(TPE)、飽和および不飽和熱硬化性ゴム、および特に無菌または医療グレードのエラストマ(PDMSを含む)を別のもの、または、より硬い熱プラスチック(例えば、環状オレフィンコポリマ(COC)に結合するメカニズムは、PDMSのものと異なる。ここでの結合とは、熱処理によって支援されるファンデルワールス力を介した物理的結合に類似する。このような結合は、2つの結合部品間の共形接触を必要とするので、表面粗さが結合処理において重要な役割を果たす。また、このような結合は、清浄な表面を必要とする。なお、PDMSの場合における恒久的な結合を防止するストラテジは、(ストラテジ1:O2プラズマ処理中に弁座を保護するためのマスキングを除く)TPEベースのバルブにも適用することできる。
【0006】
[0005]TPEベースのバルブでは、弁座を疎水性にして、例えばマスクを通してテフロン(商標)を堆積させることにより、ストラテジ2,3と同様の方法を使用して表面エネルギを低減することができる。マスクを使用することは、特に、バルブが小さい場合および/またはマイクロ流体デバイス内に多数のバルブがある場合には面倒である。(密封を与えるために)膜が付着しなければならない場所と付着してはならない場所(弁座)との間の空間は小さく、付着はバルブの機能にとって重要である。
【0007】
[0006]ストラテジ2によると、弁座上のオリゴマーまたは他のバリア層の堆積位置は、マイクロ接触印刷を使用することによって正確に制御され、これは、最初にオリゴマーまたは他のバリア層をスタンプ上に正確に堆積し、次いで、スタンプをマイクロ構造化流体層(例えば、COC又はTPEのいずれか)と接触させることによって達成される。したがって、マイクロ接触処理中の整列は非常に重要であり、そうでなければ、マイクロ流体チャネルに対する膜の不十分な結合が生じ、その結果、弁座の周囲に流体の漏れが生じる。
【0008】
[0007]ストラテジ3では、パターニング法を利用して、弁座上に金属層または他の犠牲層を堆積しなければならない。パターニング法は、リフトオフ処理または他のステンシルマスク法を含む。リフトオフ処理は、基板がマイクロ構造の熱プラスチックまたはTPEである場合には、通常は実用的でないフォトリソグラフィを含む。ステンシルマスク法に関しては、アライメントが課題である。
【0009】
[0008]一旦組み立てられると、常閉弁は、限られた力で妥当な時間内に閉鎖構成と開放構成との間を繰り返すことができなければならない。膜層は、閉鎖されたときにマイクロ流体チャネルを密封するために、弁座を通る流動層に対して十分な付着性を有しなければならないが、空気圧制御層からの圧力の下で流動層を変形し、流動層から放出するのに十分な放出能力を有しなければならない。弁座を通る流動層への膜の付着は、バルブに両方の特定を与えるように調製されなければならない。
【0010】
[0009]当該技術分野では、組立中に膜が流動層に恒久的に結合せず、かつ、長期間の使用にわたって十分に容易かつ迅速にバルブを開閉するために流動層に周期的に付着し、流動層から解放することができるマイクロ流体バルブが依然として必要とされている。
【0011】
【概要】
【0012】
[0010]本出願人は、表面間に流体で満たされたポケットを有する高分子マイクロ流体弁座内の個別のマイクロ規模表面のパターンを制御することにより、デバイス製造に追加の材料層を必要とすることなく、より良好な密封および解放を可能にするシートへの膜層の付着を調製することが可能であることを見出した。制御されたパターニングは、弁座における膜層と基板層との間の付着を十分に低減して、膜層と基板層との恒久的結合を防止すると同時に、バルブが閉鎖したときに弁座における密封係合を与えるために、膜層と基板層との間に十分なバランスの付着を与えることができる。バルブは、空気圧式制御層内の流体圧力を低下させることによって開放することができ、それによって、薄膜層を基板層から係合を離脱させる。さらに、同じ組成の基板および膜層は、弁座から離れて恒久的結合を生み出すことができる。膜層が弾性変形可能な高分子を備えるとき、バルブの故障またはバルブ性能の著しい劣化を有することなく、長期間にわたる多くの開閉サイクルが可能である。
【0013】
[0011]一態様では、高分子常閉型マイクロ流体バルブにおいて、プラスチック基板と、弾性変形可能なエラストマ膜であって、基板および膜は、マイクロ流体デバイスのマイクロ流体チャネル内でバルブ区域を画定するエラストマ膜と、膜および基板の間のバルブ区域に位置する弁座と、膜によってマイクロ流体チャネルから密封分離された制御流体チャンバと、を備え、弁座は、マイクロ流体チャネルのセグメントを分離する突出部を画定し、バルブが閉鎖されるとき基板に対して膜が接触して密封する付着制御表面を有し、付着制御表面は、複数の分離された頂部合わせ表面と凹部表面とを与えるマイクロ構造の三次元パターンを備え、頂部合わせ表面は、付着制御表面が及ぶ面積より小さい累積表面積を集合的に有し、それによって、バルブが常に閉鎖されるとき、マイクロ構造間の流体充填空所を確実にし、弁座上にある付着制御表面は、バルブ区域内の膜および基板のうちの一つの合わせ表面と接触するように設計され、合わせ表面は局所的軽減構造を持たず、複数のマイクロ構造は、スパン領域内にマイクロ構造が存在しない場合の付着と比較して、また、膜および基板が、付着制御表面上の頂部合わせ表面および凹部表面を含む全ての利用可能な表面上で共形接触している場合の付着と比較して、スパン領域内の膜および基板の間の付着を低減し、バルブは、制御流体チャンバおよびマイクロ流体チャネルの間に圧力差が無いとき、基板に対して密封された膜で常に閉鎖され、制御流体チャンバは、膜を変形させ、弁座の付着制御表面で基板および膜の間の付着を克服して膜を基板から分離し、それによって、バルブを開放するのに十分な力を膜に与えるように減圧可能である、高分子常閉型マイクロ流体バルブが提供される。
【0014】
[0012]他の態様では、常閉型マイクロ流体バルブを使用してマイクロ流体チャネル内の流体の流れを制御する方法において、マイクロ流体デバイス内のマイクロ流体チャネルにおいて上記規定されたような常閉型マイクロ流体バルブを準備するステップと、膜を変形させて弁座の付着制御表面で基板および膜の間の付着に打ち勝つのに十分な力をまくに与えるために、制御流体チャンバを負圧に減圧し、膜を基板から分離し、それによって、バルブを開放し流体がマイクロチャネルを流れることを可能にするステップと、を有する方法が提供される。
【0015】
[0013]他の態様では、高分子常閉型マイクロ流体バルブの弁座を表面処理する方法において、弾性変形可能なエラストマ膜上または高分子常閉型バルブの為のプラスチック基板上に弁座を製作するステップであって、弁座は、バルブが閉鎖されるときに膜がプラスチック基板に対して接触して密封することになる付着制御表面を有し、付着制御表面は、複数の別個の頂部合わせ表面と、少なくとも1つの頂部合わせ表面および1つの凹部表面を含む凹部表面とを与える複数のマイクロ構造を備え、頂部合わせ表面は、付着制御表面が及ぶ表面積よりも小さい正味表面積を有し、それによって、マイクロ構造間に空所を与え、複数のマイクロ構造は、マイクロ構造が存在しない膜または基板の区域における表面エネルギと比較して、付着制御表面が及ぶ領域における表面エネルギを減少させる、ステップと、膜または基板と表面処理材料とを接触させるステップであって、表面処理材料は、マイクロ構造が存在しない膜または基板の区域ではなく、弁座の付着制御表面が及び領域を優先的に濡らし、それによって、マイクロ構造が存在しない膜または基板の区域を表面処理することなく、弁座を表面処理する、ステップと、を有する方法が提供される。
【0016】
[0014]有利には、高分子常閉型マイクロ流体バルブは、バルブ付着を調整するために使用可能な特徴部でパターン化された堅牢で反復可能な底粘着弁座を備える。さらに、バルブは、かなりの数の開閉サイクルを通して、系統的かつ反復可能な動作を持つ。さらに、後処理または後組立のために弁座の位置合わせが必要でなく、デバイスの製作が劇的に簡単になる。さらに、弁座の親水性は、後堆積技術における犠牲層の使用を必要とする代わりに、マイクロ構造の形態、寸法、位置を使用して調整することができるが、後堆積技術における犠牲層の使用は、使用から除外されない。
【0017】
[0015]高分子常閉型バルブは、マイクロ流体デバイス、たとえば、細胞分析デバイスの為のマイクロ流体カバー蓋、土壌寄生虫収集のための慣性収束デバイス、Lab-on-a-CD用途(例えば、試薬貯蔵、試料調製、核酸増幅、分析物の検出など)において使用可能である。
【0018】
[0016]さらなる特徴は、以下の詳細な説明の過程で説明される又は明らかになるであろう。本書に記載された各特徴は、他の記載された特徴のいずれか1つ以上と任意に組み合わせて利用することができ、各特徴は、当業者に明らかな場合を除き、必ずしも他の特徴の存在に依拠しないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
[0017]以下、より明確な理解のために、添付図面を参照して、好ましい実施形態を例として詳細に説明する。
【
図1】
図1A,B,C,Dは、本発明によるマイクロ流体バルブの第1実施形態および、その3つの変形例を示す。第1実施形態は、基本パターニングを備えた常閉弁を示す。第1変形例は、常開弁を示す。第2変形例は、段階的な開放を有する3方向弁を示す。第3変形例は、バルブ付きビアを示す。
【
図2】
図2A、Bは、本発明の常閉型マイクロ流体バルブの第2実施形態および、その変形例を示す。第2実施形態は、マイクロ流体通路およびバルブを画定する膜パターニングを有する。変形例は、膜および基板の両方のパターニングを有する。
【
図3】
図3は、
図1および
図2のマイクロ流体バルブの弁座の付着制御表面上に形成可能なマイクロ構造化特徴部の様々な実施形態の光学および走査型電子顕微鏡(SEM)画像を示す。
【
図4】
図4は、弁座上にマイクロ構造化特徴部を持たない常閉弁の光学顕微鏡画像(
図4(a)、(b)、(c))と、弁座上にマイクロ構造化特徴部を持つ常閉弁の光学顕微鏡画像(
図4(d)、(e)、(f))とを描写し、弁は、それぞれ、0.6mm、0.8mm、1.2mmの空気圧式空気チャンバ直径を有する。
図4(g)は、
図4(d)の画像の拡大画像である。
【
図5】
図5は、射出成形を使用して
図1のバルブ内にマイクロ構造化弁座を製作する為の型の概略図である。
【
図6】
図6は、構造化された弁座を持つマイクロ流体デバイスを形成する為に基板を熱エンボス加工する為の型を製作する方法の概略図である。
【
図7A】
図7Aは、マイクロコンタクトプリンティングを使用してチップのマイクロ構造化弁座上に犠牲層を堆積させる方法の概略図である。
【
図7B】
図7Bは、
図7Aと比較するための、マイクロコンタクトプリンティングを使用して従来技術の弁座上に犠牲層を堆積させる方法の概略図である。
【
図7C】
図7Cは、バルブの光学顕微鏡画像であって、基板のマイクロ構造化付着制御表面で局所的に達成されたマイクロコンタクトプリンティングによる層を用いた表面処理を示すものを描写する。
【
図8】
図8は、異なる圧力条件下((A) P=0, (B) P<0, (C) P>0), (D)Pを正の23psi(正の159kPa)から負の10psi(負の69kPa)に切り替えたときのバルブの光学顕微鏡画像)での常閉型マイクロ流体バルブの概略図を示す。
【
図9】
図9は、TPE薄膜(140μm)上に熱エンボス加工された弁座上に微小特徴部を備えた常閉型バルブの光学顕微鏡画像を示し、付着制御層および空気チャンバの寸法を示す。
【
図10】
図10は、(マイクロ構造がTPE上にある)TPE/Zeonor (商標)ハイブリッド基板上に熱エンボス加工された弁座上のマイクロ特徴部と、空気圧式空気チャネルおよびチャンバを備えたCNC機械加工されたZeonor(商標)カバーと、中央に厚さ200μmを有するTPE膜とを有する、常閉弁の光学顕微鏡写真である。
【
図11】
図11は、0.6mmの弁座直径を有するバルブV1の光学顕微鏡(分図(A)),0.8mmの弁座直径を有するバルブV5の光学顕微鏡(分図(B))、1.2mmの弁座直径を有するバルブV3の光学顕微鏡(分図(C))を、3つのバルブ全てについて、開閉サイクル数の関数として動的弁開放時間を示すグラフ(分図(D))およびバルブV3についてのサイクル数の関数として開放時間および閉鎖時間の両方を示すグラフ(分図(E))と共に示す。
【
図12】
図12は、バルブ径0.8mm、バルブギャップ長100μm、流路幅100μmのバルブの光学写真(分図(a))と、バルブ径1.2mm、バルブギャップ長200μm、流路幅100μmバルブの光学写真(分図(b))である。
【
図13】
図13は、異なる密度のマイクロピラーを備えたバルブの動的開放時間とサイクル数のグラフを示す。
【
図14】
図14は、同じバルブサイズ(直径0.8mm)、流体チャネル幅(100μm)、バルブキャップ長(100μm)、ピラー密度(310マイクロピラー)、ピラー径(10μm)、ピラー高さ(5μm)、膜厚(200μm)を有する6つのバルブの光学写真を備えたパネルである。COC(Zeonor(商標))基板上に空気圧式空気流路と空気チャンバとをCNC機械加工される。
【
図16】
図16は、連続的にバルブを開放する為の段階的付着制御表面を備えた複数の常閉弁を備えるマイクロ流体デバイスの概略図である。
【
図17】
図17は、流体制御スイッチとして作用するように構成された常閉弁を備えるマイクロ流体デバイスの概略図を描写する。
【詳細な説明】
【0020】
[0018]マイクロ流体デバイスは、まく層と基板層との間に画定された一つ又は複数のバルブ区域を備えたマイクロ流体チャネルおよびリザーバの網状組織を備える。マイクロ流体網状組織は、バルブ区域、マイクロ流体チャネル、リザーバから離れた2つの層を合わせて付着することによって密封される。第3の空気圧式(または他の流体)制御層もバルブの作動の為に設けられてもよく、バルブ区域内の1つ以上のバルブの動作を制御するために、1つ以上のバルブ区域用の1つ以上の制御流体チャンバを備える。
【0021】
[0019]膜層は、弾性変形可能なエラストマ膜を含むが、このエラストマ膜は、圧力変化による変形を受けるのに十分な弾性を有し、圧力が膜の上下で十分に平衡したときに元の形状に戻る、任意の適切な可撓性高分子材料を含んでもよい。エラストマ膜は、熱可塑性エラストマ(TPE)またはポリジメチルシロキサン(PDMS)を含んでもよいが、最も好ましくはTPEである。なぜなら、これらの高分子は、表面処理を有することなく、様々な基板への、より良好で、より信頼性のある付着のために選択することができるからである。TPEは、例えば、スチレンエチレンブチレンスチレンブロックコポリマー(SEBS)、スチレン-ブタジエン(SBS)、スチレンイソブチレンスチレン(SIBS)、エチレン-酢酸ビニルコポリマー、スチレン-イソプレン-ブタジエンブロックコポリマー、アイオノマーTPE、単相溶融加工が可能なTPE、透明医療用TPE(例えば、Mediprene(商標))、オイルフリーTPE(例えば、Mediprene(商標)OF400M、OF600M、OF800M)、Mediprene(商標)、またはMediprene(登録商標)OF 500Mなど、或いは、それらの任意の、機械的、光学的、熱的、化学的変形または効果強化剤を含む又は含まないブレンドであってもよい。膜は、弾性変形を許容するヤング率と厚さを有する。膜の厚さが増加するにつれて、剛性が増加し、適切な弾性柔軟性を維持する。厚さは、好ましくは、約20-1000μmの範囲内、たとえば、75-750μmまたは100-500μmである。ヤング率は、好ましくは、約0.1-100MPaの範囲内である。たとえば、400Mから900Mまでの一連のMediprene(商標)OFの場合、100%歪みにおける材料の応力は、ASTM D638によって測定されるように、0.8MPaから5.8MPaまででもよい。
【0022】
[0020]基板層は、マイクロ流体デバイスを構成するのに適した任意の高分子材料から構成することができるプラスチック基板を備える。プラスチック基板は、弾性変形可能なエラストマ膜と同一または異なる高分子材料から構成されてもよい。プラスチック基板に適した高分子材料の幾つかの実施例は、熱可塑性エラストマ(TPE)、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、硬質熱プラスチック(TP)などであるが、膜より硬いTPおよびTPEは、膜以外のバルブ内部の変形を制限するために好ましい。硬質熱プラスチックは、たとえば、環状オレフィンコポリマー(COC、例えばZeonor(商標))、ポリスチレン(PS)、ポリプロピレン(PP)、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)などを含む。高分子材料の混合物、並びに各高分子の、あらゆる適切な配合物を利用してもよい。基板層は、基板の一部が1つのプラスチック材料を備え、1つ以上の他の部分が異なるプラスチックまたは他の材料を備えたプラスチック材料のハイブリッドであってもよい。好ましくは、基板は膜とは異なり、膜の剛性よりも少なくとも1桁大きい剛性を有する。硬質熱プラスチックは、典型的には、TPEよりも少なくとも1桁大きいヤング率を有する。
【0023】
[0021]したがって、弁座は、バルブ区域内に突出部を含み、この突出部が、弁座の付着制御表面が膜または基板に付着されるとき、マイクロ流体チェネルセグメントを分離し、チャナルセグメント(またはバルブ開口によって相互接続されたチャネル)間の流れを遮断する。突出部は、膜または基板に対して、それぞれ、密封するために基板または膜に形成される(即ち、突出部が膜にある場合、弁座は基板に対して密封し、突出部が基板にある場合、弁座は膜に対して密封する(逆もまた同様)。弁座が位置するマイクロ流体チャネルは、基板または膜、または、その両方をパターニングすることによって形成可能であるが、位置合わせは、基板および膜の一方のみをパターニングすることによって非常に容易になる。少なくとも2つのマイクロ流体チャネルまたはチャネルセグメントは、弁座が位置するバルブ区域内で終端する。弁座は、バルブが閉鎖したときに、膜が基板に接触して密封する付着制御表面を備える。付着制御表面を有する弁座は、マイクロ流体チャネルと共に膜と一体的に形成されてもよく、または、当該技術分野で知られた表面パターニングおよび膜形成方法と一致するように、マイクロ流体チャネルと共に基板と一体的に形成されてもよい。付着制御表面は、チャネルに対して少なくとも幅寸法において拡大可能なチャネルセグメントへの開口部を囲むのが好ましい。弁座の付着制御表面は、膜または基板が平坦かつ平滑である場合にまくまたは基板と接触し、その結果、膜または基板の軽減構造に対して弁座の整列を確実にするのに苦労を必要としない。
【0024】
[0022]本書では、付着制御表面または弁座などの構造体が及ぶ面積は、それ自体が遙かに大きい表面積を有し得る構造体の表面積とは対照的に、構造体の周囲によって画定される形状の面積の2D尺度であると理解される。
【0025】
[0023]弁座は、その上に複数のマイクロ構造またはナノ構造を有する付着制御表面を備える。複数のマイクロ構造またはナノ構造は、異なる規模の構造の階層を含んでもよい(例えば、マイクロ規模の面を画定するマイクロ構造であって、その上に、より小さいマイクロ構造またはナノ構造が画定される)。マイクロ構造上のナノ構造は、弁座の親水性を局所的に調整するため、さらに、弁座における膜と基板との間の接触表面積を低減するために使用することができる。前者(親水性の調整)の場合、ナノ構造は、弁座の表面がウィッキング効果によって局所的に機能化されるように、弁座の親水性を局所的に高める。この用途では、ナノ構造の大きさと数、並びに分布は、あまり制約されない。後者(接触表面の減少)の場合、ナノ構造は、膜が崩壊して、デバイス組み立て中に膜と基板との間に共形接触をもたらさないことを確実にするように、十分に大きく配置されるべきである。構造体間に空気または他の流体が充填された空間が存在しない点まで膜が変形する場合、構造体は、弁座における結合を減少させるようには機能しないが、実際には結合強度を増加させる。
【0026】
[0024]マイクロ構造および/またはナノ構造は、規則的または不規則な形状および配置であってもよい。好ましくは、マイクロ構造および/またはナノ構造はピラー(柱状体)である。好ましくは、マイクロ構造および/またはナノ構造は、パターニング欠陥まで規則的に成形される。たとえば、マイクロ構造および/またはナノ構造は、円形の横断面、楕円形の横断面、多角形の横断面(例えば、三角形、正方形、長方形、五角形、六角形など)を有することができる。マイクロ構造および/またはナノ構造は、たとえば、充填または中空、円筒、直角柱、三角柱、円錐、または、それらの切頭体(frusta)、または、丸い縁または角を有する、そのような構造であってもよい。好ましい実施形態では、マイクロ構造および/またはナノ構造は、頂部の合わせ表面からマイクロ構造および/またはナノ構造の基部に向かって先細になる。テーパは、好ましくは、法線に対して約0.5°~約45°、たとえば、約5°~約26°のテーパ角を有する。テーパ角は、マイクロ構造またはナノ構造のアスペクト比から決定されてもよい。好ましい実施形態において、マイクロ構造および/またはナノ構造は、概して円錐形または円錐台形である。好ましくは、円錐形または円錐台形のマイクロ構造および/またはナノ構造は、約20°~約130°、たとえば、約60°~約120°の円錐角(すなわち、開口角)を有する。
【0027】
[0025]マイクロ構造および/またはナノ構造は、平坦または丸みを帯びた頂部を有してもよく、さらに、頂部は、幾つかの他の形態(morphology)を有してもよい。丸みを帯びた頂部は、弁座における膜と基板との間のスティクションの微調整を可能にするために好ましい。
【0028】
[0026]構造体の高さは、好ましくは75nm以上、より好ましくは1000nm以上である。高さは、好ましくは約100nm~100μmの範囲内であり、たとえば、ナノ構造について約100-600nmが好ましく、マイクロ構造については約1-50μmが好ましい。構造は、好ましくは約1-200μm、たとえば、約5-100μmの範囲の最も広い寸法(高さ以外)を有する。構造は、好ましくは約1:2~6:1の範囲のアスペクト比(高さ対直径、または、高さ対長さおよび幅の小さい方)を有する。
【0029】
[0027]階層構造が存在するとき、構造が全体として構造の表面エネルギを低減するならば、最小規模の構造の高さおよび直径に対する制約はより少ない。最小規模の構造は、接触表面積をあまり減少させないが、親水性を制御するのに有用であり、これは、(たとえば、毛管湿潤または自己整合および局在化マイクロ接触印刷技術による表面被覆による)追加の表面処理が使用される場合に特に有用である。
【0030】
[0028]マイクロ構造の三次元パターンは、好ましくは開放パターンを含む。開放パターンにおいて、流体充填空所は、弁座にわたって相互接続される。したがって、弁座の対向する側面、即ち、マイクロ流体チャネル/セグメントに隣接する側面は、それらの間に縁間隙を有するマイクロ構造を備え、マイクロ流体バルブセグメントと弁座内の流体充填空所との間で縁間隙に流体接続が存在してもよい。それにも拘わらず、バルブが常に閉じられているとき、流体がチャネルセグメント間の弁座を通って流れることを防止するために、弁座内に(少なくとも水性試料に対して)十分な流体力学的抵抗が存在し、弁座は、依然として、流体の流れに対する有効なブロックとして作用する。
【0031】
[0029](階層内の任意レベルの)構造は、弁座上に不規則に配置されてもよく、または、規則的な配列で形成されてもよい。規則的配列が好ましい理由は、付着制御表面が及ぶ面積にわたって、より一貫した付着を与えるからである。弁座は、構造で密に又は疎に装飾されてもよい(構造は、より微細な構造で、密に又は疎に装飾されてもよい)。密度は、以下に説明するように、付着制御表面が及ぶ面積と比較した、頂部合わせ表面の累積表面積によって表すことができる。
【0032】
[0030]構造は、複数の頂部合わせ表面および凹部表面を提供する。好ましくは、複数の別個の頂部合わせ表面および凹部表面は、少なくとも25個の別個の頂部合わせ表面を含む。より好ましくは、頂部合わせ表面の数は、50~3000の範囲であり、これは、バルブの大きさ並びにマイクロ構造(またはナノ構造)の大きさ及び形状に依存する。たとえば、直径0.8mmの大きさを有するバルブの場合、マイクロ構造が直径10μm、高さ5μmである場合、頂部合わせ表面の数は50~1256の範囲になる。頂部合わせ表面は、バルブが常に閉鎖しているとき、膜と基板との間に接触表面を形成する。
【0033】
[0031]バルブが閉鎖している(流体が空気を含む)ときであっても、マイクロ構造(及び存在する場合はナノ構造)の間には、流体充填空所がある。空所は、凹んだ表面によって境を接する。凹部表面は、弁座の外向き凹部表面と、マイクロ構造(及び存在する場合はナノ構造)の側壁とを含む。流体充填空所は、集合的な空所容量を有し、マイクロ構造(及び存在する場合はなの構造)は、集合的な構造容量を有する。制御流体チャンバとマイクロ流体チャネルとの間に圧力差が無い状態バルブが常に閉じられているとき、集合的な空所容量は、好ましくは、集合的空所容量と集合的構造容量との合計の50%~99.4%、たとえば、53.2%~99.5%である。集合的空所容量は、0.8mmの直径、100μmのバルブキャップ、100μmの流体チャネル幅、50~3000本の多数のマイクロピラー(直径10μmおよび高さ5μm)を有するバルブに基づく。
【0034】
[0032]頂部合わせ表面は、付着制御表面が及ぶ表面積よりも小さい累積表面積を有する。付着制御表面上の頂部合わせ表面の累積表面積は、好ましくは、弁座の及ぶ面積の0.55%~76%である。さらに、頂部合わせ表面の累積表面積は、付着制御表面の全表面積よりも小さく、全表面積は、当てはまらない場合があるが全ての中間壁が垂直であると仮定すると、頂部合わせ表面の累積表面積および凹部表面の正味表面積を含む。前述したように、凹部表面は、弁座の外側に面する表面と、マイクロ構造(及び存在する場合はナノ構造)の側壁との両方を含む。累積表面積は、好ましくは、バルブが常閉構成にあるとき、付着制御表面の全表面積の0.54%~30%、たとえば、1%~17.6%である。一実施例において、累積表面積は、直径0.8mm、100μmのバルブ隙間、幅100μmの流体チャネル、50~1256本のマイクロピラー(直径10μm、高さ5μm)を有するバルブに基づく。
【0035】
[0033]本発明のマイクロ流体デバイスにおいて、膜および基板を構成する高分子材料は、高い表面付着特性を有してもよい。組合せ領域にわたって共形的に組み合わせられると、膜と基板との間の付着は、製作中に層の恒久的な結合をもたらすことができ、これは、密封されたマイクロ流体チャネルを形成するのに優れているが、常に閉じられている弁が開放できない又は組み立てられた後に開放するのが非常に遅くなる又は圧力下で長時間閉鎖した後に開放する傾向をもたらす。さらに、膜と基板との間の付着は、しばしば、ゆっくりとした堅牢でない動的開閉をもたらす。複数のマイクロ/ナノ構造は、流体が充填された空所のために、付着制御表面が及び面積における膜と基板との間の付着を低減する。したがって、及ぶ面積に構造が存在しない場合の付着と比較して、全体的な付着表面積は減少する。構造は、流体充填空所の崩壊を回避するために、膜を支持する役割を果たす平均間隔を有する。接触表面積を減少させ、流体充填空所を保持することによって、膜および基板が、及ぶ表面全体にわたって共形接触している場合の付着と比較して、構造化によって付着が減少する。
【0036】
[0034]常閉構成では、バルブが最初に組み立てられると、構造間の空所は、流体(例えば、気体または液体媒体)を含み、それによって、含まれる流体を弁座内に捕捉する。バルブが常に閉鎖されるとき、常閉弁の閾値圧力を超える圧力が流体チャネルに加えられない限り、流体はマイクロ流体チャネル内の弁座を通過できない。組み立て中、空所内に捕捉された流体は、膜および基板の間の付着を低減するのに役立ち、それによって、層間の付着を低減し、膜および基板の間の恒久的結合を緩和する。さらに、弁座と膜または基板との間に閉じ込められた流体空所は、バルブの開放を助ける歪クラックの核として機能する。歪クラックは、負圧をかけてバルブを開放するために弁座の全領域に広がり、膜または基板からの弁座の分離を助ける。
【0037】
[0035]したがって、構造によって設けられる膜および基板の間の付着の減少により、製作後のバルブの初期化が確実になり、長期間不使用後のバルブの再初期化が確実になる。また、付着の低下は、使用時のバルブの、より高速で、堅牢な動的循環をもたらす。マイクロ構造が広がった領域に存在する、常閉型マイクロ流体バルブにおいて、バルブ組立後の初期開放時間は、10分以下、または5分以下、または3分以下、または1分以下、または45秒以下、または30秒以下、または20秒以下、または更に2秒以下と短くてもよいが、これは、マイクロ構造および/またはナノ構造を有さない(任意の他の表面処理を有さない)バルブよりも、少なくとも2倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、または更に少なくとも15倍速い。さらに、マイクロ構造がスパン領域に存在する常閉マイクロ流体バルブでは、動的サイクルは、少なくとも250サイクル、少なくとも500サイクル、または更に少なくとも1000サイクルにわたって信頼性良く行うことができる。開放時間は、初期、再初期または動的に拘わらず、バルブの開放をもたらすために使用される負圧の大きさによって影響される。負圧は、典型的には、約-68kPa~-34kPaの範囲である。上記の開放時間は、負圧が-34kPaであるときに測定される。
【0038】
[0036]空気圧式制御層は、加圧可能および減圧可能な気体または液体、好ましくは気体、より好ましくは(滅菌)空気を含む制御流体チャンバを備える。制御流体チャンバは、好ましくは、空気圧式空気チャンバである。制御流体チャンバは、3つのオプション(バルブの「加圧閉鎖」、「加圧開放」、「正常」構成に対応する、加圧、減圧、通気)を有する圧力マニフォールドによって制御することができる。したがって、「常閉弁」は、制御流体チャンバとマイクロ流体チャネルとの間に圧力差が無いときに、弾性変形可能なエラストマ膜が、弁座の付着制御表面の頂部合わせ表面を通してプラスチック基板に対して密封され、「常開弁」は、圧力差が無いときに開弁する構成を有する弁である。実際のマイクロ流体デバイスにおいて、チップの全てのバルブに適用される単一の汎用空気圧制御は稀であり、典型的には、各バルブは、別個の空気圧制御下にある。
【0039】
[0037]高分子常閉弁を含むマイクロ流体デバイスは、たとえば、射出成形、ホットエンボス加工、マイクロコンタクトプリンティング、レーザ加工、コンピュータ数値制御加工を含む、種々の拡張可能な生産技術によって製作されてもよい。
【0040】
[0038]付着制御表面は、膜および基板の間の付着を更に低減するために局所的に表面処理されてもよい。弁座の表面の表面エネルギを変更することにより、特定用途のための所望レベルに付着を微調整することができる。加えられる処理は、頂部合わせ表面ならびに凹部表面の表面親水性を適切に変更する任意の材料から形成されてもよい。犠牲層に適した材料の幾つかの実施例は、オリゴマー、非粘着性コーティング(例えば、テフロン(商標)、シラン)である。処理は、物理的接触インプリント、蒸着、物理的または化学的蒸着、または任意の他の適切な技術によって適用可能である。弁座上に局所的に層を堆積させることは、自己整合および局在化マイクロ接触印刷技術を使用することによって適切に達成されてもよく、それは、製作を著しく簡略化することができる。
【実施例1】
【0041】
常閉弁の構造
【0042】
[0039]
図1Aを参照すると、マイクロ流体チップ9が、第1実施形態の常閉マイクロ流体バルブ10と共に示されている。バルブ10は、パターン化されたプラスチック基板11と、基板11を覆ってマイクロ流体チャネルおよびチャンバの網状組織を密封および包囲する弾性変形可能なエラストマ膜13とを備える。
図1は、バルブ10を通過するマイクロ流体チャネル19の長さに続く薄断面図である。基板11のパターン化は、マイクロ流体チャネル19および種々の他の接続されたチャネルおよびチャンバを画定する。バルブ本体14は、プラスチック基板11の一部として形成され、基板11から突出し、バルブ本体14の両側にマイクロ流体チャネル19の2つのセグメントの終端を形成する。バルブ本体14は、(4つのみ符合で示された)複数の空所17によって分離された(3つのみ符合で示された)複数のマイクロピラー16を含む付着制御表面15を備える。複数の空所17の各々は、弁座14の膜に面する表面およびマイクロピラー16の側部表面に形成された凹部とによって画定される。
図1Aに図示されるようにバルブ10が閉鎖しているとき、(3つのみ符合で示された)頂部合わせ表面18のマイクロピラー16の頂部は、膜13と水密に付着しやすい。
【0043】
[0040]
図1Aは、閉鎖状態にある常閉弁10を示すが、バルブの近傍で膜13に後退力を加えることによって常閉弁10を開放できることが分かる。付着制御表面15は、その限られた(表面18に合わせ、空所17の存在によって二重に合わせる)表面積によって限られた抵抗を提供するので、この付着が後退力によって生まれ変わると、膜13がバルブ本体14から持ち上げられ、バルブが開放される。
【0044】
[0041]
図1Bを参照すると、第1実施形態の変形例が示されている。本書では、実施形態の変形例の特徴は、同様の参照符合によって識別され、それらの説明は繰り返されない。
図1Bは、閉鎖されたときの常開式マイクロ流体バルブ20の図であるしたがって、膜13は、膜13をバルブ本体14に押し付ける為に加えられる正圧によって偏向される。この変形例を常開弁10にするため、バルブ本体14は、チャネル19の高さの約2/3の高さを有する。この高さの差を吸収するために、バルブ本体14を囲むチャネルの高さに滑らかな移行部が設けられる。この変形例は、チャネルの高さの2/3を延在するバルブ本体14と共に示されているが、チャネル19の床の下からチャネルの高さ又はそれを超えて任意の他の範囲が付着制御表面15に耐え得ることが分かる。
図1Bでは、膜13の弛緩位置が点線で示されている。
【0045】
[0042]
図1A、
図1Bの実施形態は、それを見ることができないが、付着制御表面15は、バルブ本体14を超えて、チャネル19を囲む基板11の頂部表面に延びることが好ましい。このようにして、より多くの膜をリフトオフすることができ、チャネルジオメトリの制限がバルブ10に課されない。
【0046】
[0043]
図1Cは、
図1Aの実施形態の第2変形例の上面図を図示する。具体的には、膜13が除去された基板11の頂部パターン化表面11が示されている。
図1A、
図1Bは、チャネル19に沿った薄い断面を示しているが、バルブの、構成されたチャネルセグメントは、いかなる特定角度においても延在する必要がなく、180°以外であってもよいことが分かる。
図1Cでは、3つのチャネル19a、b、cがバルブ10から放射状にY字形に示されている。これは、基板11の表面パターニングによって生み出される。基板内に形成された3つのマイクロ流体チャネルであって、それぞれが、チャネル19a、b、cの全高であるバルブ本体14の、それぞれの壁で終端している。示されるように、チャネル19a、b、cは、全てが同一チャネルジオメトリ(l、w、h)を有する必要はないが、一般に、流体抵抗を一致させるか、又は、意図的にマイクロ流体経路のセグメントの流体抵抗の変動を選択することが好ましい。
【0047】
[0044]バルブ本体14は、凹部19a、b、cから離れた基板11の識別できない部分であり、明確な非対称性を有するように示されている。流路19a、bを分離するバルブ本体14の厚さは、流路19a、c、19b、cを分離するものよりも遙かに薄い。このようにして、バルブの他の2つのチャネルとは対照的に、2つのチャネルの優先的なブリッジを調整することが可能である。
【0048】
[0045]
図1Bのように、バルブ本体14がチャネルの全高でない場合、チャネル高さの段階的変化の程度は、付着制御表面15の限界またはその付近にある大きさ(extent)を有する円錐形または半球形の窪みと一致させてもよい。
【0049】
[0046]
図1A,Bの側面図において、バルブ本体内14の上面に明確に示された付着制御表面15は、バルブ本体14の周囲の基板11の頂部合わせ表面に存在することが示されている。これにより、チャネル19の設計に拘わらず、より多くの膜が解放され、膜がどのように変形するかを、より制御することができる。これらの図では、2つのチャネルセグメントまたは3つのチャネルが示されているが、他の数のチャネルを使用することができる。
【0050】
[0047]
図1Dは、本発明の変形例であり、チャネル19Bは、基板11を貫通する貫通孔またはバイアであり、従って、バルブ本体14は、貫通孔19bとチャネル端部19aとの間に延在する。前述した変形例と同様に、付着制御表面15は、バルブ本体14を超えて延びており、(必要ではないが)貫通孔19b全体を囲んでいる。
【0051】
[0048]
図2Aを参照すると、チップ9内の常閉式マイクロ流体バルブ20の第2実施形態は、プラスチック基板21と、空気圧式空気チャンバ22と、プラスチック基板21および空気圧空気チャンバ22の間の弾性変形可能なエラストマ膜層23とを含む。(例えば、TPEの)パターン化された層としての膜層23は、バルブ膜として機能する膜層23の薄くされた部分によって裏打ちされたマイクロ流体チャネル29を画定する。
【0052】
[0049]先の実施形態とは異なり、
図2Aは、流体供給チャンバ22を画定するマイクロ流体のT前の典型的制御層を示す。典型的には、これらの層は、流体供給チャネル22内の圧力変化が流体供給チャンバ22の他の壁に対して不均衡に弁膜を効果的に変形させるように、比較的堅い材料で形成される。膜層23によって提供されるマイクロ流体網状組織と同様に、制御層は、ポート、チャンバ、相互接続チャネルの網状組織を有する。
【0053】
[0050]バルブ本体24は、薄膜層23の一部として形成され、チャネル29とは異なり、薄膜層23の合わせ表面の、ほぼ上にある頂部表面を有する。バルブ本体24は、前述したように、付着制御表面15を備える。
図1のチャネルの中間にある基板の構造化された頂部表面と同様に、好ましくは、バルブ本体から離れた付着制御表面15を提供するようにパターン化され、
図2Aの付着制御表面は、好ましくは、バルブ本体24の頂部表面の上方、およびチャネルセグメント29の間の膜層23の頂部表面の一部の上方に延在する。
【0054】
[0051]
図2Bは、付着制御表面が、他の構造化されていない膜23上にパターン化されるが、マイクロ流体パターン化が基板に提供される、更なる実施形態を図示する。これは、TPE膜がより容易にパターニングされるので、基板内の、非常に高密度の特徴部をパターニングすることが特に困難である場合に好ましい場合がある。この実施形態の一つの欠点は、膜23のパターン化セグメントをバルブ本体24と位置合わせする必要があることである。バルブ本体24の寸法、さらには流体チャンバ22の寸法に対して非常に広い領域にわたって付着制御表面15を設けることによって、位置合わせの問題を、ある程度、緩和することができる。別個のバルブの付着制御表面15が重なり合わず、付着制御表面15がチップ上のポート、チャネル、チャンバ、他の開口部の中に延在しない限り、膜23の、これらの多孔質区域にわたって漏れる危険性はない。付着制御表面15の大きさに拘わらず、流体チャンバ22の寸法は、膜23の、どこに圧力が加えられるかを決定する。
【0055】
[0052]基板、膜、それらの両方がパターン化されているかどうかに拘わらず、マイクロピラー16は、好ましくは、バルブにわたって均一な密封付着を提供するために、十分な規則的形状および配置で形成される。規則的形状およびタイリング配置の幾つかの実施例を
図3に描写する。例えば、マイクロピラー31,33,35,36は、円形断面、マイクロピラー32は長方形断面、マイクロピラー34は三角形断面を有する。マイクロピラーは、他の断面形状、たとえば、五角形、六角形、楕円形などを有してもよい。マイクロピラーは、たとえば、円筒形(31,33,35)、長方形プリズム32,三角形プリズム34,円錐形36,円錐台形などであってもよい。マイクロピラーの頂部は、平坦(31,32,33,34)であってもよく、丸み(35,36)があってもよい。
【0056】
[0053]
図4は、熱エンボス加工技法を使用して形成された常閉バルブの光学顕微鏡画像を描写するが、この画像は、バルブ組立直後に撮られたものである。各バルブにおいて、膜層は、厚さ180μmの熱可塑性エラストマ(TPE)膜を備え、流動層および空気圧制御層は、環状オレフィンコポリマ(COC)から形成される。弁座は、COC流動層内に形成された2つのマイクロ流体チャネルセグメント間のCOC流動層内に形成される。空気チャンバは、弁座の上方のCOC空気圧制御層に形成される。TPE膜は、マイクロ流体チャネルセグメントと空気チャンバとの間の弁座の接触表面と接触して弁座に配置される。
図4では、画像(a、b、c)内のバルブは、弁座上にマイクロ構造化特徴部を有することなく形成されるが、画像(d、e、f)内のバルブは、弁座上にマイクロ構造化特徴部を備えて形成される。画像(a、d)の空気チャンバの直径(D)は、0.6mmである。画像(b、e)の空気チャンバの直径(D)は、0.8mmである。画像(c、f)の空気チャンバの直径(D)は、1.2mmである。画像(g)は、画像(d)の拡大図である。弁座は、100μmの長さの隙間を有する。
図4は、組立直後、弁座(a、b、c)にマイクロ構造がない場合にTPE膜が弁座に結合されることを明確に示している。マイクロ構造化バルブの場合(d、e、f、g)、膜は弁座に恒久的に結合されない。弁座の接触表面にマイクロ構造が存在すると、TPE膜とCOC弁座との間の結合強度が低下させていた。また、製作中にマイクロ構造化弁座内に捕捉された空気の存在は、TPE膜とCOC弁座との間の結合強度を低下させていた。膜層と流動層との間にマイクロ構造化界面を有する常閉弁は、製作中の恒久的結合の問題を緩和するが、このようなマイクロ構造化界面を有さない常閉弁は、製作中に恒久的結合の問題を経験することは明らかである。
【0057】
常閉弁を備えるマイクロ流体デバイスの製作
【0058】
[0054]
図5を参照すると、常閉弁の流動層内のマイクロ流体チャネル内にマイクロ構造化弁座を製作する為の方法の一実施形態は、射出成形を使用する。この射出成形技術は、2つの隆起した軽減部42の間の適切な位置で、その表面に形成されたマイクロ特徴部41を備えた金型40を使用する工程を含む。プラスチック基板材料を金型40内に射出成形した後、金型40から分離できるプラスチック部品45を金型40内に形成する。マイクロ特徴部41は、マイクロ構造化特徴部を有する弁座を生じさせ、2つの隆起した軽減部42は、常閉弁の流動層を形成するプラスチック部品45内のマイクロ流体チャネルを生じさせる。バルブの残りの部分は、技術的に知られた方法により、流動層、膜層、空気圧制御層から組み立てられてもよい。
【0059】
[0055]
図6を参照すると、常閉弁の流動層内のマイクロ流体チャネル内にマイクロ構造化弁座を製作する他の実施形態は、熱エンボス加工を使用する。ホットエンボス技術において、シリコン(又はガラス)ウェハ51は、ステップ1で、第1のSU8フォトレジスト層52で被覆され、その上にフォトレジスト層を備えたシリコンウェハを形成する。ステップ2では、標準的フォトリソグラフィを使用して、第1SU8フォトレジスト層52からシリコンウェハ上にマイクロ特徴部SU8フォトレジスト53を形成する。ステップ3では、第2SU8フォトレジスト層54が、マイクロ特徴SU8フォトレジスト53にわたってシリコンウェハ51上に積層される。ステップ4では、ソフトフォトリソグラフィを使用して、マイクロ特徴SU8フォトレジスト53を露光し、マイクロ特徴SU8フォトレジスト53に隣接する隆起SU8軽減部を形成して、熱エンボス加工処理で使用できるシリコン成型56上にSU8を形成する。金型56は、マイクロ流体チャネルおよびマイクロ流体チャネル内の弁座上のマイクロ構造を備えた流動層を製作する為に、エポキシ金型または加工スタンプに移送されてもよい。また、技術的に知られた方法によって、熱エンボス加工の為のシリコンまたはガラス金型は、微細加工された弁座およびマイクロ流体特徴部のエッチングをシリコン又はガラス基板に直接画定する標準的フォトリソグラフィを使用して作成できることに留意されたい。流動層は、エポキシ金型または加工スタンプを用いてプラスチック基板材料から形成されてもよい。
【0060】
[0056]幾つかの用途において、マイクロ構造化弁座のみでは、膜層と流動層との間の付着を十分に低減しない場合、マイクロ構造は、弁座の接触表面の親水性および表面エネルギを更に低減するために表面処理されてもよい。本書に開示された常閉弁の特にゆうりな点は、その上にマイクロ構造化弁座を有する膜層または流動層が表面処理材料と接触可能であり、表面処理材料が自己整合ウィッキングによってマイクロ構造化弁座を優先的に湿潤させることである。膜層または流動層を表面処理材料と接触させる工程は、マイクロ接触印刷、または、バルブを含む組立後のマイクロ流体デバイス中のマイクロ流体チャネルを通る毛管湿潤を用いて達成されてもよい。
【0061】
[0057]一実施形態では、マイクロ接触印刷処理を利用して、結合強度を更に低下させるために、弁座上に非粘着正または他の犠牲バリアを簡単かつ効率的に印刷することができる。弁座のマイクロ構造化表面と、流動層又は膜層の他の部分における非マイクロ構造化表面との間の親水性の差のために、マイクロ接触印刷処理中の犠牲材料の局在化された転写は、自己整合によって容易に達成することができ、マイクロ接触印刷処理を大幅に簡略化する。親水性の差は、弁座のマイクロ構造において犠牲材料のウィッキングをもたらし、弁座において犠牲材料を局在化させ、犠牲材料で被覆されていない状態でバルブの残部を残す。これにより、常閉弁を組み込んだマイクロ流体デバイスの製作の規模拡大が可能となり、それによって、単位デバイス当たりのコストを低減させることができる。
【0062】
[0058]
図7Aは、マイクロ接触印刷を使用してマイクロ構造化弁座上に犠牲層を堆積する方法を示し、
図7Bは、マイクロ接触印刷を使用して従来技術の弁座上に犠牲層を堆積する方法を示す。
図7Aおよび
図7Bの処理は、類似しているが、
図7Bの弁座は基板の残部と異なる親水性を有さないので、印刷スタンプ上に堆積された犠牲材料を含むインクは、基板上の弁座の位置と完全に整列しなければならない。如何なる位置合わせ不良も、弁座以外の基板の部分にインクを付着させ、他の位置でデバイスの層間剥離を引き起こし、望ましくない漏れを動作中に引き起こす。対照的に、
図7Aにおけるマイクロ構造化弁座は、基板の他の部分とは異なる親水性を有するので、印刷スタンプは、犠牲材料を含有するインクで完全に被覆することができる。なぜなら、インクは、マイクロ構造化弁座によって優先的に染み込み、犠牲材料を含まない状態に基板の残部を残すからである。印刷スタンプ上にインクを完全に堆積する必要がなく、印刷スタンプを基板と完全に整列させる必要がないことは、製作時間および費用の大幅な節約を意味する。
【0063】
[0059]
図7Cは、マイクロ接触印刷による犠牲層での表面処理がマイクロ構造化弁座において局所的に達成できることを示す、実際のバルブの光学顕微鏡画像を示す。
【0064】
常閉弁の動作
【0065】
[0060]常閉型マイクロ流体バルブは、通常、空気圧空気チャンバとマイクロ流体チャネルとの間の空気圧差が0であるときに閉鎖する。
図8は、異なる圧力条件下における常閉型マイクロ流体バルブ60の概略図を示す((A)P=0,(B)P<0,(C)P>0)。バルブ60は、その中にマイクロ流体チャネル69およびマイクロ構造化弁座64が形成されたプラスチック基板61を備える。弁座は、その上にマイクロポスト66を備えた付着制御表面を備える(簡略化のために2つのみを示す)。弾性変形可能なエラストマ膜63は、マイクロポスト66と密封接触し、弁座64およびマイクロ流体チャネル69を空気チャンバ(図示せず)から分離する。分図(A)に見られるように、マイクロ流体チャネル69と空気圧式空気チャンバとの間の圧力差が0(すなわち、P=0)である場合、バルブ60は、通常、膜63がマイクロポスト66と密封接触している状態で閉鎖されるが、空気は、膜63と弁座64の凹部表面との間に捕捉されたまま残る。分図(B)に見られるように、正の圧力が空気チャンバ(P>0)に加えられると、膜63は、弁座64に向かって変形され、弁座64の全ての(共形接触)または幾つかの凹部表面と更に係合し、バルブ60を、より緊密に閉鎖する、又は、チャネル69にわたる高圧力の下で閉鎖を維持することができる。分図(C)に見られるように、空気チャンバ(P<0)に負圧が加えられると、膜63が弁座64から離れるように変形して弁座64から離脱させ、バルブ60を開放することができる。分図(D)に見られるように、Pが正の23psi(正の159kPa)から負の10psi(負の69kPa)に切り替わったときのバルブの光学顕微鏡像は、バルブが部分的に閉鎖し、部分的に開放していることを示す。
【0066】
[0061]
図9は、TPE薄膜にホットエンボス加工されたマイクロ構造化弁座およびマイクロ流体チャネルを備え、Zeonor(商標)にホットエンボス加工された空気チャンバを備えた、常閉弁の別の実施例を示す。バルブは常に閉鎖しており、内側の点線で囲まれた部分は、弁座およびマイクロ構造を備えた周辺領域を含む付着制御表面を示す。マイクロ流体チャネルの端部は、内円の内部に含まれる。外側の点線は、空気チャンバの限界を決める。空気チャンバに-6psi(-41kPa)の空気圧を加えてバルブを開放した。バルブは、空気チャンバ内の+10psi(+69kPa)の空気圧下で圧縮されて閉鎖された構成で示されている。圧縮閉鎖は、バルブを恒久的に結合しなかった。
【0067】
[0062]
図10は、付着制御表面を備えた常閉弁の実施例を示す。バルブは、ホットエンボス加工されたTPEとZeonor(商標)の積層体で生産され、一方のZeonor基板上に、CNC機械加工された空気圧式制御チャネルおよびチャンバと、他方のZeonor基板上に、エンボス加工されたマイクロ流体網状組織および付着制御表面と、その間に厚さが200μmのTPE膜とを備える。バルブの直径は、1.5mmである。流体チャネルは、300μmの幅および100μmの深さを有し、弁座は、200μmの隙間長を有する。弁座の頂部表面には、(直径20μm、高さ10μmの)約1100本のマイクロピラーがある。試験結果は、膜とマイクロ構造化弁座との間の十分な付着のため、流体チャネルが11.7kPaまで圧縮されたとき、常閉構成にあるバルブは、漏れなく閉鎖されたままに残ることを示す。
【0068】
[0063]2つの部品間の界面における付着または結合強度は、ASTM D3165およびASTM D3528に規定された重ね継手試験法によって測定することができる。これらの標準的な試験装置では、試験片の2つの端部で引張力によって剪断応力が発生し、通常、試験片の破損につながる。ここで、弁座における基板への膜の付着は、流体チャネルに追加の圧力が加えられているか否かに拘わらず、空気チャンバ内の負圧下で弁座から膜を完全に分離するのに必要な開放時間を測定することによって特徴付けられる。試験方法は、現場で都合良く行われ、これは、用途におけるバルブの実際の挙動を反映する。開放時間は、バルブの重要なパラメータ動特性である。
【0069】
[0064]さらに、次の2種類の開始時間がある。
【0070】
・静的開放時間(即ち、組立後の初期開弁時間または非作動期間後の再初期開放時間)
【0071】
・動的開放時間(即ち、周期的バルブ開閉動作中の開放時間)
【0072】
弁座での膜と基板との付着性が強いとき、開放時間が長くなり、空気チャンバの真空度が高い場合、開放時間が短くなる。流体チャネルに加えられる更なる圧力によって開放時間を短縮することができる。他の重要なパラメータは、閉鎖時間である。一般的には、閉鎖時間を短くする方が効果的である。空気チャンバに加えられる圧力が高いほど、閉鎖時間は短くなる。
【0073】
[0065]開閉時間を試験するため、
図11においてイメージされるように、常閉弁V2、V5、V3を製作した。ここで、V2は分図(A)に示され、V5は分図(B)に示され、V3は分図(C)に示されている。バルブ(V2,V5,V3)は、厚さ200μmのTPE膜と、基板に形成されたマイクロ構造化弁座を有するZeonor(商標)基板とを用いて製作された。弁座の直径は、V2が0.6mm、V5が0.8mm、V3が1.2mmであった。各バルブにおいて、マイクロ流体チャネルの幅は100μmであり、バルブ隙間は100μmであり、マイクロ構造は、高さ5μm、直径10μm、ピッチ20μmを有するマイクロピラーであった。V2、V5,V3の弁座の付着表面は、それぞれ、706本のマイクロピラー、1256本のマイクロピラー、2827本のマイクロピラーを有していた。
【0074】
[0066]
図11のグラフ(D)は、開閉サイクル数の関数として動的開弁時間を示し、ここで、-5psi(-34kPa)の開放真空を30秒間加え、次いで、同じく30秒間保持された23psi(159kPa)の閉鎖圧力を加えた。実験は、マイクロ流体チャネルを通して弁座を通って注入された水を用いて、プライミングされた湿潤条件下で実施された。開放時間は、動作サイクルの増加と共に減少する。バルブの大きさが異なるため、バルブ間で開放時間にバラツキがある。また、グラフ(D)は、400回のサイクル動作後にバルブが信頼できることを示している。グラフに示されていないが、V2およびV5の閉鎖時間は2秒未満である。
図11のグラフ(E)は、V3のサイクル数の関数として、開放時間および閉鎖時間の両方を示し、開放時間は非常に一貫していることに留意されたい。V3を閉鎖するのに約4秒を要するが、これは、V3が開放されているときに膜が空気チャンバの天井に接触する可能性があることを考慮すると、バルブV3のサイズが大きいことによる可能性が高い。処理中の空気チャンバの高さを高くすることにより、空気チャンバの天井との接触を回避することができる。
【0075】
[0067]また、
図11のデータは、バルブが乾燥条件下で動作したときにバルブの開放時間が長くなることを示しており、これは、マイクロピラー間の弁座内部の流体が、弁座における膜と基板との間の相互作用を低減することができる潤滑剤として働くことを示している。典型的には、V5のようなバルブは、組立後に-34kPaで最初に開放するのに2分を要する。しかしながら、グラフ(D)に見られるように、プライミング後の(空気または水などの流体によって潤滑され、直径0.8mm、バルブ隙間100μm、幅100μm、50~1256本の(直径10μm、高さ5μmの)マイクロピラーを有する)バルブV5は、動的試験条件下で開放するのに8秒未満しか必要としない。
【0076】
[0068]最後のサイクル動作が終了した後、バルブの空気制御チャンバは大気に通気する為に残る。14時間の通気後、バルブV2とバルブV5の再初期化の開放時間は、それぞれ、40秒と68秒であった。24時間後、バルブV2とバルブV5の再初期化開放時間は、それぞれ、50秒と90秒であった。再初期化時の開放時間の増加は、弁座での膜と基板との間の相互作用の増加によるものである。より短い再初期化開放時間が望まれる場合、弁座上のマイクロピラーが、より少ないバルブを製作することによって再初期化開放時間が短縮できることは、現在の常閉弁の特別な利点である。このようにして、バルブは望ましい性能特性に微調整することができる。
【0077】
[0069] 弁座にマイクロ構造がないバルブ(ただし、それ以外は同一)の場合、組立後に34kPaの負圧をかけてバルブを開放することはできない。そのような非マイクロ構造化バルブは、34kPaの負圧を(膜上の空気チャンバ内の)膜に加えることの他に、流体チャネルに103kPaを加えることによって強制的に開放することができる。この状態では、
図12(a)に示されるように、弁座から膜を開放するのに通常5~10分かかる。弁座が開放すると、流体はバルブを通過することができ、膜の一部は弁座の表面に付着したままになる。バルブ隙間領域の付着部分は、流体チャネルの下流部分を閉鎖して圧力をバルブ内部に蓄積させて膜を弁座から強制的に持ち上げない限り、開放することができない。しかしながら、流体チャネルの上流部分の層間剥離の危険性がある。
図12(b)は、直径1.2mm、隙間長200μm、流体チャネル幅100μmのバルブの実施例を示す。バルブ隙間でバルブを開放することに成功せずに空気チャンバ内で更に負の34kPaを5分間加えた状態で流体チャネルに103kPaを加えた後、流体チャネルは上流側で剥離し始める。
【0078】
[0070]再初期化開放時間(並びに初期開放時間)を調整する能力の例として、別のバルブセットが、上記バルブV5と同一のバルブサイズ(弁座の直径は0.8mm、膜厚は200μm、マイクロ流体のチャネル幅は100μm、バルブ隙間は100μm)で製作された。弁座のマイクロピラーは直径10μm、高さ5μmだったが、弁座のマイクロピラー数を変更し、バルブに310本のマイクロピラー(V3、V4)、139本の(V5、V6の)マイクロピラー、50本のマイクロピラー(V2)を設けた。弁座上のマイクロピラー密度が低下した、これらのバルブの初期開放時間は2秒以内であり、これは、1256本のマイクロピラーを備えた同様のバルブの50倍であり、上記バルブより初期開放時間が更に短縮されている。
【0079】
[0071]
図13を参照して、バルブV2~V6の動的開放時間も検討した。
図13のグラフ(A)は、付着制御表面に50本のマイクロピラーを備えたV2の動的開放時間を示す。開閉サイクルの使用:-12psi(-83kPa)の真空で60秒間開放/乾燥した状態で23psi(159kPa)で30秒間閉鎖した(捕捉された空気が潤滑材として機能)、動的開放時間は50秒以上だった。動的開放時間は、湿った状態(水がバルブに導入された状態)で50秒~30秒に減少し、バルブのサイクルが増加するにつれて減少し続けた。25回の開閉サイクル後、バルブは休止状態で残された(最後のバルブ開放サイクルに続いて、空気制御チャンバは通期された)。24時間後、動的開放時間は23psi(159kPa)の閉鎖圧力で周期的に動作すると13秒に減少し、15psi(103kPa)で動作すると9秒に減少したが、これは、動的開放時間が、圧縮閉鎖状態の間、バルブに加えられた圧力にも依存することを示す。一般に、強制付着は低下するため、加えられる閉鎖圧力が低いほど、開放時間は短くなる。特に、休止期間後の再初期化開放時間は2秒未満であり、弁座のマイクロピラー密度が低い常閉弁は、再初期化開始時間の短縮につながる。
【0080】
[0072]
図13のグラフ(B)は、バルブ当たり310本のマイクロピラーを備えたV3およびV4の動的開放時間を示す。-12psi(-83kPa)の真空での30秒間の開放/23psi(159kPa)の圧力での30秒間の閉鎖という開閉サイクルを使用する。乾燥した状態(捕捉された空気が潤滑剤として機能)では、動的開放時間は約10~14秒であった。動的開放時間は、湿った状態(弁座に水が捕捉された状態)で4~6秒に短縮された。24時間の休止期間の後、動的開放時間は、更に2秒に減少した。再初期化開放時間も2秒未満であった。
【0081】
[0073]
図13のグラフ(C)は、バルブ毎に139本のマイクロピラーを備えたV5およびV6の動的開放時間を示す。動的開放時間は、乾燥試験条件下で約45~55秒だった。開放時間は、バルブがプライミングされて湿っていた(弁座に水が捕捉された)ときに約30秒に減少した。バルブが23psi(159kPa)ではなく15psi(103kPa)で動作された場合、動的開放時間は更に減少した。24時間の休止後、通気されたバルブの動的開放時間は、V5で15秒、V6で9秒に更に短縮された。V5とV6の両方で、再初期化の開放時間は、2秒未満だった。サイクル動作と待機時間の増加に伴う動的開放時間の減少は、膜と弁座の表面エネルギが水分子で修正されると、膜と弁座との間の付着が弱くなることを示す。弁座の膜表面での水分子の吸収は、弁座で局所的に行うことができる人工表面処理を模倣している。
【0082】
[0074]
図11と
図13とが示す実験は、構造化付着制御表面を導入することにより、膜と基板との間の弁座での恒久的付着の問題を解決し、さらに調整できることを示す。膜と弁座での基板との間の付着力は、弁座と、その付近での表面接触面積が減少するにつれて減少するので、バルブの製作後の初期開放時間は短くなる。デバイスに必要なマイクロピラーの最小本数は、弁座の大きさ、膜の厚さ、膜の材料特性(例えば、膜の合成、材料のヤング率)、マイクロピラーの高さの関数である。膜の崩壊を防ぎながら、弁座での接触量のバランスをとるためには、最小本数のマイクロピラー(又は類似構造)が必要である。マイクロピラーの本数、大きさ、間隔が膜の共形を可能にする場合、膜と弁座(弁座の床)との間の付着力の強化、流体で充填された空所の存在を保証する膜のテンティング(tenting)の欠如のため、所定の加えられた圧力に対して動的開放時間が増加する。膜の表面張力がテンティングを与えない場合でも、バルブの表面がプライミングされ、形態(conformation)に抵抗する流体潤滑剤で濡らされると、動的開放時間は劇的に短縮される。
【0083】
[0075]マイクロピラーの形状と配置とを調整すると、動的開放時間を適度に低く保ちながら、初期開放時間を更に短縮することができる。丸みを帯びたマイクロピラー頂部は、この点で有用である。動的開放時間は、所定の一連の設計パラメータ(膜の厚さ、弁座の面積、弁座隙間、マイクロ流体チャネルの横断面と長さ)について、低圧でバルブを圧縮して閉鎖した状態で動作させることによって短縮することができる。
【0084】
常閉弁の用途
【0085】
[0076]高分子常閉弁は、細胞分析デバイスのマイクロ流体カバー蓋に利用可能である。このような用途は、バルブを同時に開閉する必要があるため、バルブの一貫性は非常に重要である。1つのバルブの動作が他のバルブと大きく異なる場合、動作上の問題が発生する場合がある。製作処理におけるサンプル間のバラツキを最小限に抑えるため、同じチップ(バルブの大きさ、バルブ隙間長、流体チャネル幅)を有し、同一密度のマイクロピラー(直径10μm、高さ5μmの弁座上の310本のマイクロピラー)を備えた一連の6つのバルブが同じチップ上に製作された。それにも拘わらず、
図14に示すように、金型製作における均一性の問題のため、バルブ間のバラツキが依然として発生する。均一性の問題は、ホットエンボス加工による金型からのマイクロ流体デバイスの複製で日常的に発生する。均一性の問題は、マイクロ流体層と空気圧式空気チャネル層との間の位置合わせ不良として、並びに、膜の厚さのバラツキとして現れる。この特定ケースでは、空気圧式空気チャネルは、CNC機械加工された。
【0086】
[0077]試験結果は、静的(初期および再初期)開放時間が6つのバルブ全てで2秒以内であることを示すが、
図15に描写された動的開放時間は、バルブ毎に僅かに異なり、これは、バルブのバラツキが小さいためと考えられる。
図15に描写された最初の5サイクルは、乾燥状態で試験された(膜と弁座の表面との間の空所は空気で満たされている)。動的開放時間は、膜と弁座との間の空所が水で満たされているバルブが濡れているときに減少する。バルブが5日間湿った状態(水)にさらされた後、開放時間は再び減少する。これら全ての6つのバルブの動的開放時間は、5~8秒である。マイクロピラーの密度は同一であるが、このセットのバルブ開放時間は、
図13に表されたV3およびV4の開放時間より僅かに長くなる。これら2つの種類のバルブの僅かに異なる動作は、2つのバッチ処理のバラツキに起因する可能性がある。たとえば、ピラーの大きさと高さのバラツキ、弁座と空気圧式チャンバの位置合わせ不良、空気圧式チャネルと空気チャンバの設計のバラツキなどがある。空気圧式空気制御部品は、より大きな空気チャネルと空気チャンバを備えたCNC機械加工を使用して製作されたが、空気圧式空気制御部品は、
図13に表されたバルブにホットエンボス加工を施すことによって作成された。
【0087】
[0078]常閉弁の弁座における膜層の流動層への付着を調整できるので、異なる機能性を得るために異なる圧力条件下で開放可能な複数のバルブを利用するマイクロ流体デバイスの製作が容易に可能になる。
【0088】
[0079]
図16は、5つのマイクロ流体チェネル分岐部79a、79b、79c、790d、79eに流体の流れを提供するメインマイクロ流体チャネル79を有するマイクロ流体デバイス70の実施例を描写する。各チャネル分岐部79a、79b、79c、790d、79eを通る流体の流れは、それぞれ、チャネル分岐部79a、79b、79c、790d、79eに1つずつある5つの常閉弁71a、71b、71c、71d、71eによって制御される。バルブ71a、71b、71c、71d、71eは、同一の大きさであるが、異なるマイクロピラー密度を有するマイクロ特徴の付着制御面を備えており、マイクロピラー密度は、バルブ71aから71eまで、順次高くなっている。ユニバーサル空気圧式制御層72は、各バルブの空気チャンバへの空気圧を制御する。空気圧式制御層72で空気圧が低下すると、マイクロピラーの密度が最も低いマイクロ特徴化弁座が弁座の膜層と流動層との間の付着力を最小にするため、バルブ71aが最初に開放される。空気圧式制御層72内の空気圧が更に低下すると、バルブ71b、71c、71d、71eが続けて開放される。このようにして、段階的なバルブ調節(valving)は、連続する圧力段階で各バルブを開放することによって提供され、流体が異なるチャネルに連続的に流れることを可能にする。単一の空気圧式制御層が示されているが、その代わりに、各バルブに対する個別の空気圧式制御を使用することができる。
【0089】
[0080]
図17は、流体制御スイッチとして機能する段階的バルブ構成を有するマイクロ流体デバイス80の実施例を描写する。マイクロ特徴化弁座を有する第1常開弁81aは、単一の空気圧式制御層82に加えられる第1負圧で開放し、それによって、流体をメインマイクロ流体チャネル89から第1マイクロ流体チャネル分岐部89aに送る。構造化付着制御表面を有する第2常閉弁81bは、単一の空気圧式制御層82に加えられた第1負圧よりも負の第2負圧で開放され、それによって、流体をメインマイクロ流体チャネル89から第2マイクロ流体チャネル分岐部89bに送る。第2マイクロ流体チャネル分岐部89bを流れる流体は、第1マイクロ流体チャネル分岐部89aの流体バルブ83を閉鎖し、それによって、第1マイクロ流体チェナル分岐部89aを流れる流体を遮断する。このようにして、異なる圧力でのバルブの開放を可能にするように調整された構造か付着制御表面を有する常閉弁を使用して、流体の流れのスイッチが作り出される。単一の空気圧式制御層が示されているが、代わりに、各バルブに対して個別の空気圧式制御を使用することができる。
【0090】
[0081]新規な特徴は、説明検討する際に当業者に明らかになるであろう。しかしながら、特許請求の範囲は、実施形態によって限定されるげきではなく、特許請求の範囲の文言および明細書全体と一致する最も広い解釈が与えられるべきであることが理解されるべきである。