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特許7452950TOパッケージならびにTOパッケージの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】TOパッケージならびにTOパッケージの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/02212 20210101AFI20240312BHJP
   H01L 23/02 20060101ALI20240312BHJP
   G02B 6/42 20060101ALI20240312BHJP
   H01L 23/04 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
H01S5/02212
H01L23/02 F
G02B6/42
H01L23/04 D
【請求項の数】 9
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019051195
(22)【出願日】2019-03-19
(65)【公開番号】P2019169706
(43)【公開日】2019-10-03
【審査請求日】2022-02-10
(31)【優先権主張番号】10 2018 106 504.3
(32)【優先日】2018-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】504299782
【氏名又は名称】ショット アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】SCHOTT AG
【住所又は居所原語表記】Hattenbergstr. 10, 55122 Mainz, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ローベアト ヘットラー
(72)【発明者】
【氏名】ゲオアク ミッターマイアー
【審査官】高椋 健司
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-246680(JP,A)
【文献】特開2008-244384(JP,A)
【文献】特表2016-532306(JP,A)
【文献】特開2012-164924(JP,A)
【文献】特開2002-270943(JP,A)
【文献】特開2003-322772(JP,A)
【文献】特開平11-231177(JP,A)
【文献】特開平03-218131(JP,A)
【文献】特開2017-187776(JP,A)
【文献】特開昭62-204581(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0022213(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2009-0035860(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00 -5/50
G02B 6/26 -6/27
G02B 6/30 -6/34
G02B 6/42 -6/43
H01L 21/54
H01L 23/00 -23/04
H01L 23/06 -23/10
H01L 23/16 -23/26
H01L 31/00 -31/02
H01L 31/0232
H01L 31/0248
H01L 31/0264
H01L 31/08
H01L 31/10
H01L 31/107 -31/108
H01L 31/111
H01L 31/18
H01L 51/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのオプトエレクトロニクス構成素子を備えたヘッダを有するTOパッケージの製造方法であって、
金属キャップ用のブランクを金属薄板から打ち抜き且つスタンピングする工程であって、これにより、壁厚さの厚さが異なる領域ならびに開口を有するブランクが形成される、工程と、
前記ブランクを深絞り加工して、ポット状の金属キャップを形成する工程と、
前記金属キャップの前記開口にレンズをろう接して、電磁放射線に対して透過性の窓を設ける工程と、
記ヘッダを前記金属キャップと結合して、前記オプトエレクトロニクス構成素子、気密に閉鎖された内部空間内に配置する工程と
を備え、
前記金属キャップの壁は、少なくとも側壁および端面壁を有し、
i)前記側壁は、厚くされた側壁領域を有し、前記側壁領域は、前記ヘッダが結合されるフランジに隣接する前記側壁の領域に比べ、前記内部空間に向かって厚くなるように形成されており
前記厚くされた側壁領域は、前記側壁の高さの少なくとも30%および/または90%未満にわたり延在しており、および/または、
ii)前記端面壁は、前記フランジに隣接する前記側壁の領域に対して厚くなるように形成されており、
前記金属キャップは、前記フランジに隣接する前記側壁の領域は、0.10~0.25mmの壁厚さを有しており、前記厚くされた側壁領域および/または前記厚くされた端面壁は、0.3~1.0mmの壁厚さを有しており、
前記金属キャップは、少なくとも2mmおよび/または最大10mm外径を有している、ことを特徴とする、TOパッケージの製造方法
【請求項2】
前記ヘッダの床は、壁厚さが変化する、前記金属キャップの側壁の移行領域から隔てられている、請求項1記載のTOパッケージの製造方法
【請求項3】
前記ヘッダと前記移行領域との間に自由空間が存在しており、前記ヘッダに配置された少なくとも1つの電子構成素子は、前記自由空間内に突出するように、前記ヘッダに配置されている、請求項2記載のTOパッケージの製造方法
【請求項4】
記金属キャップのケーシングは、14ppm/K未満の線熱膨張係数α(20~300℃の平均値)を有する材料から成っており、
かつ/または少なくとも前記金属キャップのケーシングは、鉄・ニッケル合金またはニッケル・コバルト合金またはフェライト系特殊鋼から成っており、
かつ/または当該TOパッケージは、TO-41、TO-46、TO-38またはTO-56型のパッケージとして形成されている求項1から3までのいずれか1項記載のTOパッケージの製造方法
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか1項記載のTOパッケージの製造方法により、TOパッケージを製造する工程と、
前記金属キャップの前記厚くされた側壁領域および/または端面壁領域に、導光ファイバを接続する光接続構成群のケーシングを溶接することにより、前記TOパッケージを前記光接続構成群に結合する工程
を備え、ユニットの製造方法
【請求項6】
前記金属キャップと、前記光接続構成群のケーシングと、複数の溶接スポットを介して互いに結合する、請求項5記載のユニットの製造方法
【請求項7】
前記金属キャップと、前記光接続構成群のケーシングと、前記光接続構成群の前記ケーシングの全周にわたり不規則に分散された溶接スポットを介して互いに結合る、請求項6記載のユニットの製造方法
【請求項8】
前記金属キャップのハウジング、および/または前記光接続構成群のケーシングは、20~300℃の線熱膨張係数αの平均値が14ppm/Kより小さい材料からなる、請求項5から7までのいずれか1項記載のユニットの製造方法
【請求項9】
Oパッケージ用の金属キャップの製造方法であって、
金属キャップ用のブランクを金属薄板から打ち抜き且つスタンピングする工程であって、これにより、壁厚さの厚さが異なる領域ならびに開口を有するブランクが形成される、工程と、
前記ブランクを深絞り加工して、ポット状の金属キャップを形成する工程と、
前記金属キャップの前記開口にレンズをろう接して、電磁放射線に対して透過性の窓を設ける工程と、
を備え、
前記金属キャップの壁は、少なくとも側壁および端面壁を有し、
i)前記側壁は、厚くされた側壁領域を有し、前記側壁領域は、ヘッダが結合されるフランジに隣接する前記側壁の領域に比べ、内部空間に向かって厚くなるように形成されており、
前記厚くされた側壁領域は、前記側壁の高さの少なくとも30%および/または90%未満にわたり延在しており、および/または、
ii)前記端面壁は、前記フランジに隣接する前記側壁の領域に対して厚くなるように形成されており、
前記金属キャップは、前記フランジに隣接する前記側壁の領域は、0.10~0.25mmの壁厚さを有しており、前記厚くされた側壁領域および/または前記厚くされた端面壁は、0.3~1.0mmの壁厚さを有しており、
前記金属キャップは、少なくとも2mmおよび/または最大10mm外径を有している、ことを特徴とする、TOパッケージ用の金属キャップの製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、TO(Transistor Outline)パッケージおよびTOパッケージの製造方法に関する。さらに本発明は、TOパッケージを備えたユニットおよびTOパッケージ用の金属キャップにも関する。
【0002】
本発明は特に、送信側に用いられるTOパッケージ、つまり、導光体内へ入射結合させるように電気信号を光信号に変換するTOパッケージに関する。特に本発明は、光をモノモードファイバ内へ入射結合させるように形成されたTOパッケージに関する。
【0003】
発明の背景
光ファイバ伝送技術では、ファイバコア内への光の良好な入射結合を保証するために、対応する光学系の手前に導光ファイバ、特にガラスファイバが高い寸法精度でもって取り付ける必要がある。このことは特に、導光体コアが約9μmの直径を有しているに過ぎないモノモード(英:シングルモード)ファイバに当てはまる。構成部品の相互配置は、後で動作中に変更されてはならない、もしくは極僅な変更しか許されない。
【0004】
実地から周知の気密に閉鎖されたTOパッケージは、特に深絞り加工された金属キャップを有しており、金属キャップは、溶接またはろう接によりヘッダに結合されており、ヘッダには、受信ダイオードまたは送信ダイオードが載置されている。
【0005】
TOパッケージは、特にレンズとして形成された窓を有している。導光ファイバ内への入射結合を保証するために、実地から、パッケージをまず光接続構成群(光サブアセンブリ)に結合することが周知である。光構成群は、光構成群自体が導光ファイバ用のカップリング部材として用いられてよいか、または光構成群自体に導光ファイバが含まれていてよく、光構成群に光が入射結合または出射結合されるようになっており、この場合、光構成群は例えば差込みカップリングを介して導光ファイバと結合されており、導光ファイバを介してデータ信号が広範にわたり伝送される。
【0006】
マルチモードファイバ用の光接続構成群は、一般にプラスチック射出成形部品として形成されている。内部にダイオードが配置されている金属ケーシングとは異なるプラスチックの線熱膨張係数に基づき既に、このようなプラスチック製の光接続構成群は、モノモードファイバにはあまり適していない。
【0007】
よってモノモードファイバの場合には、光接続構成群が金属ケーシングを有しており、この金属ケーシングがTOパッケージに溶接されていると、有利である。これにより、TOパッケージと光接続構成群との間での高い寸法精度が保証されたユニットが提供され得る。
【0008】
ただしこの場合に問題なのは、溶接、特にレーザ溶接によりケーシング材料中に応力がもたらされ、この応力は、少なくとも冷却後にも再び幾何学形状変化をもたらす、という点である。これは特に、TOパッケージ用に深絞り加工されたキャップのケーシング壁は通常極めて薄い、ということに関して当てはまり、それに加えて溶接時にケーシング壁が穿孔され、ケーシングの気密シールが失われる、という危険も生じる。しかしまた、壁厚さを増大させることも簡単にはできない。それというのも、これによりケーシングの幾何学形状が変化して、ケーシングが最早、実地で使用される規格ケーシングに対応しなくなるからである。
【0009】
よって、刊行物である中国実用新案第201311504号明細書(CN 2013 11504 Y)の教示では、光接続構成群がTOパッケージのキャップに溶接されるのではなく、代わりにアダプタリングがTOパッケージのヘッダに溶接され、アダプタリング自体は光接続構成群に結合されている。この方式は手間がかかると共に、アダプタリングの存在に基づき、TOパッケージと光接続構成群とから形成される組み合わせが、その寸法から見て最早、従来使用された構成形式には適合していない。さらに、追加的な構成要素としてのアダプタリングにより、さらなる形状・位置誤差が系にもたらされ、これらの形状・位置誤差もやはり、入射結合されるべきライトスポットに対するファイバ端部の整合に影響を及ぼす恐れがある。
【0010】
発明の課題
これに対して本発明の根底を成す課題は、従来技術の前記欠点を少なくとも減らすことにある。
【0011】
特に本発明の課題は、光接続構成群の改良された溶接を可能にし、その他の点では従来技術から周知の構成形式に適合したTOパッケージを簡単に提供することにある。
【0012】
発明の概要
本発明の前記課題は、各独立請求項に記載のTOパッケージ、TOパッケージを備えたユニット、TOパッケージ用の金属キャップならびにTOパッケージの製造方法により、既に解決される。
【0013】
本発明の好適な実施形態および改良は、各従属請求項、明細書ならびに図面の記載から看取され得る。
【0014】
本発明は、少なくとも1つのオプトエレクトロニクス構成素子を備えたヘッダを有するTOパッケージ(Transistor Outlineパッケージ)に関する。ヘッダには、特にエミッタ、特にエッジ発光体型のエミッタと、モニタダイオードとが配置されている。エッジ発光体型のエミッタは、特に90°の角度で上向きに、つまりTOパッケージの窓に向かって回動されて形成されていてよい。エミッタとしては、45°ミラーを備えたエッジ発光体が用いられてもよい。
【0015】
ヘッダに配置された電子構成素子とオプトエレクトロニクス構成素子とを接続することができるようにするために、ヘッダは複数の電気的な貫通案内部を有している。これらの貫通案内部は、特にヘッダの上面から下面まで延在しており、好適にはガラス封止された接続ピンとして形成されている。ヘッダは、好適には金属から成っているが、本発明の1つの別の実施形態ではセラミックスから成っていてもよい。
【0016】
ヘッダは、ポット状に形成された金属キャップと結合されている。ポット状の金属キャップは、好適には平らな底部を有しており、底部はTOパッケージの端面壁を形成しており、底部から側壁が始まっている。金属キャップは、特に円筒状の横断面を有しているが、本発明の1つの別の実施形態では、楕円形の横断面を有していてもよい。しかしまた、側壁が円錐形に形成されていてもよい。
【0017】
金属キャップは、電磁放射線に対して透過性の窓を有しており、この窓は、特にレンズとして形成されている。
【0018】
窓もしくはレンズは、特にガラス窓もしくはガラスレンズとして形成されており、ガラス窓もしくはガラスレンズは、金属キャップの端面壁に設けられた中心開口内に、ソルダーガラスを用いて固定されている。
【0019】
金属キャップとヘッダとは、特に溶接またはろう接により互いに結合されている。これにより、気密に閉鎖された内部空間が形成され、この内部空間内にはオプトエレクトロニクス構成素子が配置されている。
【0020】
金属キャップは、特に深絞り加工された金属キャップとして形成されている。
【0021】
本発明に基づき、金属キャップの壁は、ヘッダに隣接する金属キャップの側壁の領域に比べ、TOパッケージの内部空間に向かって厚くなるように形成された、少なくとも1つの側壁領域および/または端面壁領域を有している。
【0022】
つまり、金属キャップがヘッダに隣接して有する側壁の領域は、その上に位置する側壁および/または端面壁の領域よりも小さな壁厚さを有している。壁厚さが特に段状に増大された移行領域は、TOパッケージの内部空間内に位置している。
【0023】
よって、外寸、特に直径から見て、既に従来技術から周知の構成形式と同一の金属キャップを提供することができ、しかもこの金属キャップの場合は、壁が端面側および/または側壁の所定の領域において厚くなるように形成されている。その結果、TOパッケージの金属キャップのケーシング壁が穿孔されるという危険が生じること無しに、特にレーザスポット溶接による金属製の光接続構成群の溶接が、簡単に可能である。
【0024】
同時に、厚くされた領域により機械的な安定性が向上し、その結果、溶接によりケーシングの材料中にもたらされる応力が低下する。
【0025】
さらに幾何学形状特性も、ヘッダの領域の、より薄い壁厚さに基づき、機械的な応力が吸収され得ることにより、改良されると考えられる。
【0026】
さらに、ヘッダの領域の、より薄い壁厚さに基づき、動作中の熱伝達が端面壁の方向において低下され、このこともやはり、熱的な変形に基づく幾何学形状欠陥を減らすことに寄与する。
【0027】
好適には、ヘッダに隣接する金属キャップの領域に比べて厚くされた側壁領域および/または端面壁領域は、少なくとも1.2倍、特に好適には1.5倍および/または5倍未満、特に2.5倍未満の壁厚さを有している。
【0028】
さらに好適には、ヘッダに隣接した側壁の領域は、0.1~0.25mmの壁厚さを有しているのに対し、厚くされた側壁領域および/または端面壁領域は、0.3~1.0mmの厚さを有していることが想定されている。
【0029】
本発明の1つの改良では、ヘッダの床、つまり少なくともオプトエレクトロニクス構成素子が実装されたヘッダの上面は、壁厚さが変化する、金属キャップの側壁の移行領域から隔てられている。
【0030】
つまり、金属キャップと結合されたヘッダは、側壁がより薄く形成されている領域全体を占めているわけではなく、より小さな壁厚さを有する部分内で終わっている。
【0031】
これにより、熱伝達が端面壁の方向においてひいては光接続構成群の方向においても減じられることになる。
【0032】
さらに、ヘッダの上面において電子構成素子を実装することができる面積は変わらない。
【0033】
よって、本発明の1つの別の実施形態では、ヘッダに配置された電子構成素子は、移行領域の下側に突出しているようになっている。
【0034】
壁厚さが増大する移行領域は、特にヘッダの上面の上側でケーシング壁に配置された段部として形成されている。この段部の下側には、電子構成素子もしくは電子構成素子の一部、特に電子構成素子の電気的な接触接続部も配置されていてよい。
【0035】
金属キャップは、少なくとも2mm、好適には少なくとも2.5mmおよび/または最大10mm、好適には最大4.5mmの外径(端面壁に隣接して測定)を有している。
【0036】
金属キャップのケーシングおよび/または光接続構成群のケーシングは、好適には、14ppm/K未満、特に好適には12ppm/K未満の線熱膨張係数α(20~300℃の平均値)を有する材料から成っている。
【0037】
金属キャップのケーシングは、特に鉄・ニッケル合金またはニッケル・コバルト合金から成っていてよい。さらに金属キャップのケーシングは、防食コーティング、特にニッケルおよび/または金を含むコーティングを備えていてよい。さらに金属キャップのケーシング用には、フェライト系ステンレス鋼が用いられてもよい。フェライト系ステンレス鋼は、防食コーティングで被覆される必要がない、という利点を有している。
【0038】
光接続構成群のケーシングも、やはり鉄・ニッケル合金またはニッケル・コバルト合金から成っていてよい。
【0039】
さらに光接続構成群のケーシング用には特殊鋼、特にフェライト系特殊鋼が用いられてもよい。フェライト系特殊鋼は、防食コーティングで被覆される必要がない、という利点を有している。
【0040】
窓は、好適にはガラスから成っており、このガラスの線熱膨張係数αは、金属キャップの材料の線膨張係数の0.90~1.10倍に相当する。
【0041】
本発明の1つの実施形態では、TOパッケージは、モノモードファイバを接続するための光接続構成群に結合されている。光接続構成群は、モノモードファイバを包囲していてよいか、またはモノモードファイバと結合されていてよい。モノモードファイバは特に、10μm未満の直径を有する導光コアを有している。
【0042】
TOパッケージは、特にTO-41、TO-46、TO-38またはTO-56型のパッケージとして形成されている。
【0043】
側壁の厚くされた領域は、好適には側壁の高さの少なくとも30%以上、特に好適には少なくとも50%以上および/または90%未満、好適には80%未満にわたり延在している。
【0044】
本発明はさらに、上述したTOパッケージと、TOパッケージに結合された、導光ファイバ、特にモノモードファイバを接続するための光接続構成群とを備えたユニットに関する。
【0045】
光接続構成群のケーシングは、厚くされた側壁領域および/または端面壁領域において、金属キャップに溶接されている。
【0046】
特に、光接続構成群の金属ケーシングは、複数の溶接スポット、特にレーザ溶接スポットを介して金属キャップに結合されているようになっている。
【0047】
光接続構成群が端面壁と結合されている場合には、溶接スポットは、好適には金属キャップの中心軸線を中心として円形に延在している。
【0048】
側壁に溶接されている場合には、好適には光接続構成群のケーシングがスリーブを形成しており、このスリーブ内に金属キャップが配置されており、この場合、複数の溶接スポットがスリーブの周りに延在している。
【0049】
本発明の1つの改良では、金属キャップと、光接続構成群のケーシングとが、複数の溶接スポットを介して溶接されており、この場合、これらの溶接スポットは、光接続構成群のケーシングの全周にわたり、不規則に分散されている。
【0050】
テストモード中に溶接スポットを設定することにより、以下でさらに詳しく説明するように、溶接スポット自体を介して形状・位置誤差の修正を行うことができ、その結果、エミッタから放射された光は軸方向において整合されたスポットとして、光ファイバの導光コアの端部に集束されることになる。
【0051】
このことは、溶接スポットが不規則に分散された配置につながり、つまりこの配置では、溶接スポットはそれぞれ互いに同じ角度を形成するのではなく、全周にわたり互いに異なる角度で分散されている。
【0052】
本発明はさらに、上述したTOパッケージ用の金属キャップに関する。
【0053】
この金属キャップは、特に上で金属キャップに関連して説明した全ての特徴を有していてよい。
【0054】
金属キャップは、ポット状に形成されたケーシング、つまり好適には円筒状に構成されたケーシングを有しており、このケーシングでは、窓用の開口が配置された、端面壁と呼ばれる底部から側方へ1方向のみに向かって、環状の側壁が始まっている。
【0055】
側壁は、この側壁の下側領域に隣接する領域に比べかつ/または端面壁に比べ、より小さな壁厚さを有する下側領域を有している。
【0056】
この場合、壁厚さが変化する、特に段状に形成された移行領域は、ポット状のキャップの内側、好適にはポット状のキャップの内側の側壁に配置されている。
【0057】
本発明はさらに、上述したTOパッケージの製造方法に関する。
【0058】
この場合、金属キャップ用のブランクを金属薄板から打ち抜いてスタンピングし、これにより、壁厚さの厚さが異なる領域ならびに開口が形成される。
【0059】
特に、金属薄板にリング状のプレ段部を形成することが想定されており、この金属薄板においてリングの外側領域が、リングの内側領域よりも小さな壁厚さを有するようにスタンピングされる。
【0060】
前記プレ段部は、後続の工具ステーションにおいて金属キャップに深絞り加工され、深絞り加工後に窓、特にレンズが開口内に挿入される。
【0061】
打抜き、スタンピングおよび深絞り加工は、本発明の1つの好適な実施形態では同一の工具で実施される。
【0062】
側壁の上側に位置する領域よりも薄く形成された側壁の下側領域を有するポット状の金属キャップを準備することが、ただ1つの方法ステップにおいて1つの適当な工具により可能である、ということが判った。このことは特に、第1のステップにおいて金属薄板からリングを打ち抜くと同時に、外側領域がより薄く形成されているようにスタンピングすることにより行うことができる。次いで、例えばマンドレルを用いてリングを深絞り加工して、金属キャップ、特に端面壁とは反対の側にフランジを備えた金属キャップを形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
以下に、図1図6を参照して本発明を各実施例に基づきより詳しく説明する。
図1】本発明によるTOパッケージの1つの実施形態を示す断面図である。
図2図1に示したTOパッケージが光接続構成群に結合されている様子を示す図であって、この場合、光接続構成群は、TOパッケージの金属キャップの端面壁に結合されている。
図3図2に対して択一的な1つの実施形態を示す図であって、TOパッケージの窓がガラス板として形成されている。
図4図2または図3に示した、光接続構成群に結合されたTOパッケージを端面側から見た平面図である。
図5】光接続構成群がTOパッケージの側壁に結合されている、1つの択一的な実施形態を示す断面図である。
図6】TOパッケージと光接続構成群とから成るユニットを製造する方法ステップが示された、1つの実施例のフローチャートである。
【0064】
図面の詳細な説明
図1には、本発明によるTOパッケージ1の1つの実施例の断面図が示されている。
【0065】
TOパッケージ1はヘッダ2を有しており、ヘッダ2の上面26には少なくとも1つのオプトエレクトロニクス構成素子が配置されている。
【0066】
この実施形態の例では、ヘッダ2にエミッタ7が設けられており、エミッタ7は、電気信号を光信号に変換するために用いられる。さらにエミッタ7の隣にはモニタダイオード8が設けられており、モニタダイオード8を介してエミッタの出力性能が調整される。エミッタ7は特にエッジ発光体として、エミッタ7に対して45°だけ回動されたミラー(図示せず)を備えて形成されていてよい。
【0067】
ヘッダ2は、複数の電気的な貫通案内部を有しており、これらの貫通案内部を介してエミッタ7とモニタダイオード8とが接触接続されている。貫通案内部は、接続ピン4としてヘッダ2の下面16から導出されている。
【0068】
接続ピン4は、プリント基板、特にフレキシブルプリント基板5に接続されてよい。
【0069】
オプトエレクトロニクス構成素子が実装されたこのようなヘッダ2自体は、従来技術から周知である。
【0070】
ヘッダ2は金属キャップ3と結合されており、これにより、気密に閉じられたTOパッケージ1が形成されており、その内部空間6内には、複数の電子構成部品が配置されている。
【0071】
特にヘッダ2は、結合領域17において金属キャップの側壁11にろう接または溶接されていてよく、かつ/またはフランジ29において金属キャップ3のフランジ14にろう接または溶接されていてよい。
【0072】
金属キャップ3は、ポット状に形成されていて端面壁27を有しており、端面壁27から側壁11が始まっている。
【0073】
金属キャップ3は、端面壁27とは反対の側で側方に張り出したフランジ14を有しており、フランジ14は、ヘッダ2に対するより良好な結合およびより良好な機械的安定性を得るために用いられる。
【0074】
金属キャップ3は、実質的に円筒形に形成されていて、中心開口10を有しており、中心開口10内には、この実施例ではレンズ9として形成された窓が配置されている。レンズ9は、特にソルダーガラスを用いて、端面壁27の開口10内に挿入されている。
【0075】
従来技術とは異なり、金属キャップ3は、少なくとも部分的にヘッダ2に隣接する、側壁11の領域12を有している。この領域12に対して端面壁27の方向に隣り合う側壁の領域13aおよびこの領域13aに隣り合う端面壁の領域13bは、厚く形成されている。
【0076】
この実施例では、ヘッダ2の上面26の上側に、特に段部として形成された移行領域15が設けられており、移行領域15において、深絞りされた金属キャップ3の壁厚さが増大している。
【0077】
金属キャップ3の外寸は、従来技術から周知の構成形式に相当していてよい。
【0078】
壁厚さを厚くされた領域13aおよび13bに基づき、これらの領域では機械的な安定性が向上しているので、光接続構成群20(光サブアッセンブリ)を溶接により、簡単に取り付けることができる。
【0079】
同時に、ヘッダ2に隣接した、側壁11の薄い方の領域12により、金属キャップ3の端面壁27の方向での熱伝達が低下される。
【0080】
移行領域15は、ヘッダ2の上面26から隔てられているため、移行領域15の下側の領域28には、電子構成素子が配置されていてよい。
【0081】
よって、ヘッダ2の上面26において電子構成素子を実装可能な面積は、有利には本発明の実施形態に基づき、制限されない。
【0082】
さらに従来技術に比べ、ヘッダ2、特にヘッダ2の直径の変更は不要である。
【0083】
図2には、図1に示したTOパッケージ1が光接続構成群20と結合されている様子が概略断面図で示されている。
【0084】
光接続構成群20は、金属製のケーシング18を有しており、ケーシング18は、この実施例では好適にはモノモードファイバとして形成された導光体21を有している。導光体21は、特に50~250μmの外径を有するモノモードファイバであり、モノモードファイバはフェルール、特にセラミックフェルールに挿入されていて、結合に役立つ。
【0085】
光接続構成群20は、フランジ22を有しており、フランジ22でもってケーシング18は、TOパッケージ1の、厚く形成された端面壁27に溶接されている。TOパッケージ1と光接続構成群20との間に気密な結合部は不要であり、むしろこれらのコンポーネントを結合するための溶接スポットだけで十分である。
【0086】
本発明のこの実施例では、エミッタ7から放射された光がレンズ9を介して、導光体21の導光コアの端部に直接に集束させられる。
【0087】
さらに、光接続構成群20は、この実施例では導光体の結合に用いられるカップリング19を有している。カップリング19は、特に差込みコネクタとして形成されていてよい。
【0088】
図3には、図2に対して択一的な、本発明の実施形態が示されている。
【0089】
図2に示した実施例とは異なり、TOパッケージ1のキャップ3に設けられた窓は、レンズとしてではなく、ガラス板23として形成されている。
【0090】
代わりに光接続構成群20がレンズ24を有しており、このレンズ24を介してやはり光が、導光体21のコアの端部に集束されるようになっている。
【0091】
この光接続構成群20も、やはりカップリング19を有している。
【0092】
図4は、図2または図3に示したようなTOパッケージと光接続構成群とから成るユニットを端面側から見た平面図である。
【0093】
光接続構成群20のフランジ22は、複数の溶接スポット25a~25gによって金属キャップ3の端面壁27に結合されていることが認められる。
【0094】
溶接スポット25a~25gの設定はテストモードにおいて行われ、その際にモニタダイオード(図1の8)を介して、導光体21内への入射結合の効率が調べられる。
【0095】
材料の熱膨張ならびに組織変化に基づき、溶接スポット25a~25gを介して応力が材料内にもたらされるため、レンズ9,24を介してファイバ端部のコアに投影されたスポットが軸方向においてコアに整合しているように、溶接スポット25a~25gの位置により、微調整を行うことができる。
【0096】
よって溶接スポット25a~25gは不規則に分散されている、つまり中心軸線に対して互いに異なる角度を占めている。
【0097】
図5は、本発明の1つの択一的な実施形態の概略断面図である。この実施形態では、光接続構成群20がTOパッケージ1に結合されており、この場合、光接続構成群は金属キャップ3の端面壁27とではなく、側壁11と結合されている。
【0098】
この場合、ケーシング18をキャップ3に結合する複数の相応の溶接スポット(図示せず)は、側壁11の厚くされた領域13a内に配置されている。
【0099】
図5に示す光接続構成群の実施例も、導光ファイバ21ならびに光伝送系に対する接続用のカップリング19を有している。好適には、カップリング19には内部に導光ファイバが挿入されたフェルールが含まれる。
【0100】
上述したTOパッケージ1を製造し得る方法を、図6に示すフローチャートを参照して説明する。
【0101】
まず、金属薄板、特に低膨張合金から成る金属薄板から、金属キャップ3用のリング状のブランクを打ち抜き、ブランクの縁部領域が、その他の領域よりも薄い壁厚さを有するようにスタンピングする。
【0102】
次いで、ブランクを深絞り加工して、金属キャップ3を形成する。深絞り加工は、好適には打抜きおよびスタンピングと同じ工具で行われる。
【0103】
キャップの中心開口10に、好適にはレンズ9の形態の窓を挿入し、例えばソルダーガラスを用いて固定する。
【0104】
次いで、金属キャップ3をヘッダ2に溶接またはろう接する。このときヘッダには既にオプトエレクトロニクス構成素子が実装されている。溶接は保護ガス下で行い、気密な結合部を形成する。
【0105】
光接続構成群20をTOパッケージ1に結合するためには、TOパッケージ1をまずテストモードにし、光接続構成群に連結された導光体(図示せず)を介して、出射結合された出力を測定するための測定装置に結合する。
【0106】
光接続構成群20を被せ嵌め、TOパッケージ1に対して、TOパッケージ1から最大出力が出射結合されるように調整する。このことは測定装置により継続して管理される。次いで光接続構成群20と金属キャップ3とを互いに結合するために、まず溶接スポットを設定する(例えば全周にわたり規則的に配分された3つの溶接スポット25a,25cおよび25e)。
【0107】
次いで、構成素子の微調整を行い、これにより信号を最適化するために、別の溶接スポット25b,25d,25f,25gを設定することができる。
【0108】
本発明により、特に光データ伝送ネットワークにおける送信ダイオードに用いられるTOパッケージを提供することができた。このTOパッケージは、溶接による、光接続構成群の簡略化された取付けを可能にし、この場合同時に、周知の構成モデルの寸法ならびにヘッダの構成を踏襲することができる。
【符号の説明】
【0109】
1 TOパッケージ
2 ヘッダ
3 金属キャップ
4 接続ピン
5 プリント基板
6 内部空間
7 エミッタ
8 モニタダイオード
9 レンズ
10 開口
11 側壁
12 ヘッダに隣接する側壁の領域
13a 厚くされた側壁領域
13b 厚くされた端面壁領域
14 フランジ
15 移行領域
16 下面
17 結合領域
18 ケーシング
19 カップリング
20 光接続構成群
21 導光体
22 フランジ
23 ガラス板
24 レンズ
25a~25g 溶接スポット
26 上面
27 端面壁
28 移行領域の下側の領域
29 フランジ
図1
図2
図3
図4
図5
図6