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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】ガイド、センサ装置および方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 99/00 20110101AFI20240312BHJP
   G08C 15/00 20060101ALI20240312BHJP
   G01H 17/00 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
G01M99/00 Z
G08C15/00 D
G01H17/00 D
【請求項の数】 8
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019058656
(22)【出願日】2019-03-26
(65)【公開番号】P2019174470
(43)【公開日】2019-10-10
【審査請求日】2021-12-01
(31)【優先権主張番号】10 2018 204 648.4
(32)【優先日】2018-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アーマド マンスール
(72)【発明者】
【氏名】ルーカス ランプレヒト
(72)【発明者】
【氏名】マクス シェレンベアク
(72)【発明者】
【氏名】リカルド エーレンプフォアト
【審査官】目黒 大地
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102009033137(DE,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0254566(US,A1)
【文献】特開2016-031046(JP,A)
【文献】中国実用新案第205879560(CN,U)
【文献】特開2000-162035(JP,A)
【文献】特開2004-225692(JP,A)
【文献】特開2015-172598(JP,A)
【文献】中国特許第103389205(CN,B)
【文献】特開2012-098213(JP,A)
【文献】特開2017-161476(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 13/00-13/045
99/00
G01H 1/00-17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガイドモジュール(1;12)と、
前記ガイドモジュール(1;12)によりガイドされる可動のガイド部品(2;14)と、
前記ガイド部品(2;14)において振動信号(22)を検出するセンサ(6)と、
前記ガイド部品(2;14)において前記センサ(6)が検出した前記振動信号(22)を評価する評価装置(8)と、
を備えるガイドにおいて、
前記評価装置(8)は、前記センサ(6)が検出した前記振動信号(22)に基づいて、前記ガイド部品(2;14)の複数の部分を含む運動プロフィル(26)を算定し、
前記複数の部分は、静止プロフィル、始動プロフィル、加速プロフィル、一定速度プロフィルおよび制動プロフィルを含み、
前記評価装置(8)は、前記一定速度プロフィル(26)における前記振動信号(22)を用いて疲労検出を行い、
前記評価装置(8)は、温度センサにより検出された温度および/または前記センサ(6)により検出された背景振動および/またはマイクロフォンにより検出された背景雑音に基づいて、疲労検出において障害を除去するための1つまたは複数の補正係数を算定し、
前記評価装置(8)は、算定された周波数帯域においてまたは前記振動信号において、複数の特徴を算定し、
前記複数の特徴は、平均値、平均絶対偏差(MAD)、2乗平均値の各特徴から選択され、かつ
前記評価装置(8)により、算定された前記複数の特徴が算定された速度によって正規化され、かつ
前記評価装置(8)により、様々なタイプの複数の特徴が算定された場合に、当該複数の特徴が組み合わされ、かつ
前記評価装置(8)が、組み合わされた特徴が増大する場合に、警報を出力し、
先行の組み合わされた特徴に比較した、前記組み合わされた特徴の勾配が、前記評価装置(8)によって計算され、
前記組み合わされた特徴の勾配が0以下である場合、前記評価装置(8)は疲労がないことを推定し、かつ/または
前記組み合わされた特徴の勾配が0である場合、前記評価装置(8)は前記ガイドが安定フェーズにあることを推定し、かつ/または
前記組み合わされた特徴の勾配が0より大きい場合、前記評価装置(8)は前記ガイドに疲労が存在することを推定する、
ことを特徴とするガイド。
【請求項2】
前記評価装置(8)は、前記振動信号(22)の周波数帯域を算定し、当該周波数帯域を用いて疲労検出を行う、
請求項1記載のガイド。
【請求項3】
前記ガイド部品は、ガイドキャリッジ(14)であり、前記ガイドモジュールは、ガイドレール(12)であり、前記センサ(6)および/または前記評価装置(8)を有するケーシング(16)が前記ガイドキャリッジ(14)に固定されており、前記ケーシング(16)は、前記ガイドキャリッジ(14)の、長手方向を指す側面に配置されており、かつ/または前記ケーシング(16)は、前記ガイドレール(12)を把持するかまたは部分的または完全に含み、または
前記ガイド部品は、ナット(2)であり、前記ガイドモジュールは、ガイドスピンドル(1)であり、前記センサ(6)および/または前記評価装置(8)を有するケーシング(4)が前記ナット(2)に固定されており、前記ケーシング(4)は、軸線方向で前記ナット(2)に配置されており、かつ/または前記ケーシング(4)は、前記ガイドスピンドル(1)を把持するかまたは部分的にまたは完全に含む、
請求項1または2記載のガイド。
【請求項4】
前記評価装置(8)は、前記組み合わされた特徴が限界(66)または上方限界(66)を上方超過した場合に、警報を出力し、かつ/または
前記評価装置(8)は、前記組み合わされた特徴の値が、前記ガイド部品(2;14)の試運転フェーズ(58)における、または前記ガイド部品(2;14)の記録の開始時の、対応する複数の特徴の最大値を上方超過した場合、警報または別の警報を出力し、かつ/または
前記評価装置(8)は、前記別の警報後に設定されたサイクル数に達したこと、推定される残留耐用期間に達したこと、前記複数の特徴が所定の統計限界を上方超過したこと、前記複数の特徴またはその一部に対する絶対限界または変更可能限界または閾値に達したことから選択される1つまたは複数の前提条件が満足された場合に、警報を出力する、
請求項からまでのいずれか1項記載のガイド。
【請求項5】
前記評価装置(8)は、前記複数の特徴が、限界(66)または上方限界(66)を下回る場合、かつ/または限界(64)または下方限界(64)を上回る場合かつ/または2つの限界(64,66)間にある場合に、前記複数の特徴の不変化を基礎とし、
記複数の特徴は、1つまたは複数の限界(64,66)の計算に定常的に組み入れられ、定常的に更新される、
請求項からまでのいずれか1項記載のガイド。
【請求項6】
前記評価装置(8)は、位置分解をともなう疲労検出を行う、
請求項1からまでのいずれか1項記載のガイド。
【請求項7】
ガイドの疲労検出を行うセンサ装置であって、
前記ガイドは、
ガイドモジュール(1;12)と、
前記ガイドモジュール(1;12)によりガイドされる可動のガイド部品(2;14)と、含み、
前記センサ装置は、
前記ガイド部品(2;14)において振動信号(22)を検出するセンサ(6)と、
前記ガイド部品(2;14)において前記センサ(6)が検出した前記振動信号(22)を評価する評価装置(8)と、
を備え、
前記評価装置(8)は、前記センサ(6)が検出した前記振動信号(22)に基づいて、前記ガイド部品(2;14)の複数の部分を含む運動プロフィル(26)を算定し、
前記複数の部分は、静止プロフィル、始動プロフィル、加速プロフィル、一定速度プロフィルおよび制動プロフィルを含み、
前記評価装置(8)は、前記一定速度プロフィル(26)における前記振動信号(22)を用いて疲労検出を行
前記評価装置(8)は、算定された周波数帯域においてまたは前記振動信号において、複数の特徴を算定し、
前記複数の特徴は、平均値、平均絶対偏差(MAD)、2乗平均値の各特徴から選択され、かつ
前記評価装置(8)により、算定された前記複数の特徴が算定された速度によって正規化され、かつ
前記評価装置(8)により、様々なタイプの複数の特徴が算定された場合に、当該複数の特徴が組み合わされ、かつ
前記評価装置(8)が、組み合わされた特徴が増大する場合に、警報を出力し、
先行の組み合わされた特徴に比較した、前記組み合わされた特徴の勾配が、前記評価装置(8)によって計算され、
前記組み合わされた特徴の勾配が0以下である場合、前記評価装置(8)は疲労がないことを推定し、かつ/または
前記組み合わされた特徴の勾配が0である場合、前記評価装置(8)は前記ガイドが安定フェーズにあることを推定し、かつ/または
前記組み合わされた特徴の勾配が0より大きい場合、前記評価装置(8)は前記ガイドに疲労が存在することを推定する、
センサ装置。
【請求項8】
ガイドの疲労検出方法であって、
前記ガイドは、
ガイドモジュール(1;12)と、
前記ガイドモジュール(1;12)によりガイドされる可動のガイド部品(2;14)と、含み、
前記ガイド部品(2;14)においてセンサ(6)によって検出された振動信号(22)に基づいて、評価装置(8)を用いて前記ガイド部品(2;14)の複数の部分を含む運動プロフィル(26)を算定するステップであって、前記複数の部分は、静止プロフィル、始動プロフィル、加速プロフィル、一定速度プロフィルおよび制動プロフィルを含む、ステップと、
前記一定速度プロフィル(26)における前記振動信号(22)を用いて前記評価装置(8)によって疲労検出を行うステップと、
を含
前記評価装置(8)は、算定された周波数帯域においてまたは前記振動信号において、複数の特徴を算定し、
前記複数の特徴は、平均値、平均絶対偏差(MAD)、2乗平均値の各特徴から選択され、かつ
前記評価装置(8)により、算定された前記複数の特徴が算定された速度によって正規化され、かつ
前記評価装置(8)により、様々なタイプの複数の特徴が算定された場合に、当該複数の特徴が組み合わされ、かつ
前記評価装置(8)が、組み合わされた特徴が増大する場合に、警報を出力し、
先行の組み合わされた特徴に比較した、前記組み合わされた特徴の勾配が、前記評価装置(8)によって計算され、
前記組み合わされた特徴の勾配が0以下である場合、前記評価装置(8)は疲労がないことを推定し、かつ/または
前記組み合わされた特徴の勾配が0である場合、前記評価装置(8)は前記ガイドが安定フェーズにあることを推定し、かつ/または
前記組み合わされた特徴の勾配が0より大きい場合、前記評価装置(8)は前記ガイドに疲労が存在することを推定する、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念記載のガイド、特にリニアガイドまたは丸軸ガイドに関する。さらに、本発明は、ガイド用のセンサ装置およびガイドを用いる方法に関する。
【0002】
発明の背景
従来技術から、センサによってリニアガイドの疲労、例えば材料疲労を監視することが公知である。例えば、独国特許出願公開第112005002077号明細書では、リニアローラ軸受が振動センサによって監視されている。独国特許出願公開第102015201121号明細書では、バルク波振動の取り出しによる、少なくとも一連の転動体を備えたリニア運動装置の監視が行われている。
【0003】
発明の開示
したがって、本発明の基礎とする課題は、装置技術的に簡単な手法で確実に監視可能なガイドを提供することである。また、例えばガイドを装置技術的に簡単な手法で確実に監視可能なセンサ装置も提供する。さらに、本発明は、ガイドを簡単な手法で確実に監視可能な、ガイドを用いる方法を提供することも課題とする。
【0004】
ガイドに関する課題は請求項1の特徴により解決され、センサ装置に関する課題は請求項14の特徴により解決され、方法に関する課題は請求項15の特徴により解決される。
【0005】
本発明の有利な各発展形態は、各従属請求項の対象となっている。
【0006】
本発明では、ガイドモジュールおよびガイド部品を備えたガイドまたはリニアガイドまたは丸軸ガイドが提案される。ここで、ガイド部品は、ガイドモジュール上をガイドされ、ガイドモジュールに対して相対的に可動である。ガイドモジュールは、例えば、ガイドレールまたはガイドスピンドルである。ガイド部品は、例えば、ボールねじナットまたはガイドキャリッジであってもよい。有利には、ガイド部品において振動信号または振動を検出するセンサが設けられる。さらに有利には、ガイド部品においてセンサが検出した振動信号またはセンサが算定したデータを評価する評価装置が設けられる。有利には、特に評価装置により、センサが検出した振動信号に基づいて、ガイド部品の運動プロフィルを算定することができる。さらに有利には、運動プロフィルの一部である振動信号を、疲労検出および/または潤滑状態の検出および/または取り付け品質の検出に用いることができ、このことにより有利には、運動プロフィル全体を評価しなくて済むので、疲労検出の際の計算容量が節約される。代替的にまたは付加的に、特に評価装置により、センサが検出した振動信号をディジタルフィルタリングする構成も可能である。このようにすれば、ディジタルフィルタリングされた信号に基づいて、ガイド部品の当該または別の運動プロフィルを算定でき、このことによっても同様に計算容量が節約される。
【0007】
つまり、本発明のガイドにより、比較的小さな計算コストで疲労検出を行うことができる。計算コストが小さいことにより、評価装置に比較的小さなエネルギしか必要ない。よって、評価装置を例えば小さく構成でき、または小さく構成されたかつ/または比較的小さなエネルギを供給するエネルギ源によって給電できる。これによりガイドの装置技術コストが低減される。センサにより例えばガイドおよび/またはガイド部品の摩耗を検出でき、データ分析に基づく小さな計算コストで例えば目的に合った予防的なメンテナンスを行え、これにより、予定外の停止を簡単に低減することができる。本発明での疲労検出は、ガイドまたはガイド部品においてきわめて有利に使用可能である。なぜなら、本発明では、疲労検出の予測精度および予測信頼性が例えばラジアル軸受の場合よりも著しく複合的であり、したがって低減される計算コストが大きな利益をもたらすからである。ガイドが例えば工作機械で使用される場合、振動信号は、多数の影響因子、例えば部品の取り付け、動作パラメータ、例えば推進性、回転数、作用している力、加速度、負荷、粒子および劣化現象に由来しうる。したがって、本発明のガイドでは、計算コストが小さいことにより、計算動作を外部で、例えばインタネットまたはクラウドを介して行う必要がなく、自律的に小さな装置技術コストで、ガイド部品の評価装置により行うことができる。構成が簡単でありかつ評価装置に必要なエネルギが小さいことにより、本発明のガイドは、有利には、構造空間の需要が小さい場合にも使用可能であり、このことはガイドにおいてきわめて有利である。なぜなら、この場合、通常は比較的小さな構造空間しか利用できないからである。
【0008】
本発明の別の構成では、特に評価装置により、振動信号の周波数帯域または運動プロフィルの一部である振動信号の周波数帯域を算定することができる。この場合、当該周波数帯域を評価装置による疲労検出に用いることができる。つまり、疲労検出に振動信号のスペクトル全体が用いられるのでなく、1つの周波数帯域のみが用いられ、このことにより計算能力が節約される。有利には、周波数帯域はガイド部品の速度に依存して算定される。よって、計算された速度に基づいて、疲労検出に必要な周波数帯域を推定でき、かつ/またはデータベースから取り出してフィルタリングにより不要な周波数帯域を除去できる。このように、フィルタリングにより、スペクトル全体の計算がもはや必要なくなる。計算された速度を基準とすることにより、疲労検出に必要な周波数帯域を簡単に計算することができる。この場合、信号分析または疲労検出は、当該周波数においてのみ行うことができる。よって、評価装置のためのデータ量ひいては必要な計算コストをさらに大きく低減できる。この場合、算定された周波数帯域により、高速の変化、いわゆる高調波をフィルタ除去でき、したがって、信号分析または疲労検出において、疲労が持続する場合に発生する緩慢な連続的変化を所期に応じて検出できる。つまり、振動信号のスペクトルにおける離散的な複数のモードについて理論的な損傷周波数を計算する必要はない。こうした計算では、ガイドの多数の影響因子が疲労検出に作用するため、不充分な結果が生じる。
【0009】
本発明の別の構成では、ガイド部品の運動プロフィルの少なくとも一部または全てが算定可能となりかつ/またはその相互の境界が画定可能となるよう、ディジタルフィルタリングが行われる。この場合、疲労検出または状態検出は、既に上述したように、運動プロフィルの一部分についてのみ行われればよい。ディジタルフィルタリングは、好ましくはローパスによって行われる。ローパスは、低周波数で加速プロフィルの識別が行われるという利点を有する。なぜなら、この場合、確実な識別が可能となり、かつ/または運動プロフィルの各部分の境界を画定できるからである。高いフィルタ除去周波数は、後の疲労検出にとってむしろ好適であり、または後の疲労検出において考慮可能である。言い換えれば、ディジタルフィルタリングにより、様々な運動プロフィルの識別を行うことができる。ローパスフィルタにより、生の信号または振動信号から様々な運動プロフィルを抽出および検出することができる。ローパスを介したディジタルフィルタリングに代えてまたはこれに加えて、離散ウェーブレット変換(DTW)によるディジタルフィルタリングを行ってもよい。この場合、例えば、運動プロフィルの様々な部分または加速プロフィルの識別を、様々な周波数帯域で並行して行うことができる。
【0010】
好ましくは、評価装置により、ガイド部品の運動プロフィル、すなわちガイド部品が静止している静止プロフィル、ガイド部品が静止状態から運動しはじめる始動プロフィル、ガイド部品の速度が増大する加速プロフィル、ガイド部品が一定速度で運動する一定速度プロフィル、ガイド部品が特には静止状態まで制動される制動プロフィルのうち1つまたは複数を算定可能である。様々な運動プロフィルの算定は、既に上述したように、疲労識別または疲労検出が所定の1つまたは複数の運動プロフィルにおいてのみ実行可能となるという利点を有する。このため、例えば、望ましくない加速影響を回避すべく、一定速度プロフィルにおいて疲労検出が行われる。またこのことは、疲労検出が、変化する動作パラメータ、例えばその変動によって発生する振動が著しく変化し、固定の検出閾値がつねに移動されるような推進速度に依存せず、また周囲障害に依存しない場合に有利である。この場合、始動プロフィルおよび/または加速プロフィルにおける振動信号に基づいて、有利には、続く一定速度プロフィルにおいてガイド部品が達した速度を計算することができる。特に、加速の大きさおよび持続時間を例えば加速曲線の下方の面積によって算定できる。ついで、速度の算定により、有利には、疲労検出の際に算定された特徴を、障害なく、速度に対して参照または正規化できる。こうして、変化する振動を生じさせるガイド部品の様々な速度が疲労検出の予測精度を低下させ、誤差をともなう予測をもたらすことを回避できる。
【0011】
既に上述したように、評価装置は、疲労検出を、好ましくは一定速度の運動プロフィルにおいて行うことができる。
【0012】
既述のように、さらに有利には、評価装置により、ガイド部品の速度を算定して、これを疲労検出の際に考慮することができる。当該速度は、好ましくは振動信号に基づいてまたは振動信号に即して算定される。さらに好ましくは、速度の算定は、始動プロフィルおよび/または加速プロフィルにおいて行われる。
【0013】
本発明の別の構成では、振動信号または加速度センサの生信号が時間領域において測定されるように構成可能である。センサによる測定は、好ましくは20kHzまでの周波数領域で、特には1kHzまでの周波数領域で行われる。センサによる測定は設定されたイベントに基づいて開始可能であり、これにより、センサは、有利にはつねに動作しなくて済み、エネルギが節約される。また、センサ測定は、設定可能な少なくとも1つの条件の後、例えば設定された期間後かつ/または測定後に終了することができる。例えば、センサ測定は、振動信号の立ち上がりエッジによってトリガ可能または開始可能である。センサは、例えばガイド部品の運動の開始および/または終了に対する変更可能な加速度閾値を設定することにより、こうした開始および/または終了を識別することができる。加速度が設定された加速度閾値を超えて上昇するとセンサ測定を開始でき、かつ/または加速度が設定された加速度閾値または設定された別の加速度閾値を下回ると測定を終了できる。代替的にまたは付加的に、カウンタ関数および/または時間関数により測定クロックを調整可能である。こうして、例えば所定の時点で測定を行うことができる。代替的にまたは付加的に、センサ測定のトリガまたは開始が外からのまたは外部制御による駆動によって、例えば電気信号を用いるシステム制御部またはゲートウェイによって行われるように構成可能である。
【0014】
好ましい実施形態では、速度の計算を、離散的な駆動モードに基づき、例えば時間信号においてまたは上述した運動プロフィルにおいて計算された速度の付加的な検証のために実行するように構成可能である。ただし、このためには時間信号においてではなくスペクトルにおいて計算が行われるので、計算コストがかかる。代替的にまたは付加的に、例えば駆動モータの制御部からの、特にはトリガ信号による速度形成も同様に可能である。ただし、このことは、制御命令をハードウェア側で構成しなければならないため、センサ装置のアプリケーションにいっそうのコストを生じさせる。
【0015】
本発明の別の構成では、評価装置により、有利には付加的に、疲労検出において障害、例えば隣接するアセンブリの周波数モードを除去するための1つまたは複数の補正係数を算定することができる。当該補正係数は、例えば、特に運動プロフィル内で、周囲条件、例えば温度および/または背景振動および/または背景雑音を基礎としうる。
【0016】
温度を考慮するために、好ましくは付加的に、温度センサが特にガイド部品に設けられる。当該温度センサは評価装置に接続可能である。背景雑音を検出するためには、有利には、単純に、特にMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)として構成されたマイクロフォンを特にガイド部品に設けることができる。当該マイクロフォンは好ましくは評価装置に接続可能である。背景振動を検出するために、有利には、センサが運動プロフィルの終了後に、すなわち例えばガイド部品の停止時に、または運動プロフィルの外側で、少なくとも一時的にさらに振動信号を検出するように構成可能である。言い換えれば、背景振動は、センサシステムが走行終了を少なくとも幾らか超えて続く測定期間を有するようにすることで検出可能である。よって、測定クロックのたびに、ガイド部品の停止フェーズ中の背景振動を検出して繰り込むことができる。言い換えれば、評価装置はセンサによってガイド部品の静止プロフィル中の背景振動を算定することができる。
【0017】
本発明の別の構成では、評価装置は、算定された周波数帯域においてかつ/または振動信号においてかつ/または運動プロフィルの一部である振動信号において、1つまたは複数の特徴を算定することができる。これらの特徴に即して、有利には、疲労検出または障害検出を行うことができる。1つまたは複数の特徴は、好ましくは、平均値、平均絶対偏差(MAB)、2乗平均値(2乗平均平方根(RMS))から選択される。特に、2乗平均値は、小さな計算コストを有する。ただし、他の特徴も比較的小さな計算コストしか有さない。
【0018】
本発明の好ましい構成では、評価装置により、特徴の一部分または各特徴において、複数回の測定を考慮することができる。また、1つの特徴または各特徴は、複数回の測定にわたって平均することができる。1つまたは複数の特徴の付加的な平均により、有利には、偶発的な障害の効果が低減される。N回の測定またはサンプリングでのセンサ信号Xに対して、当該特徴は、
【数1】
のように、計算可能である。ここで、Xはフィルタリング信号であり、hはフィルタの伝達関数であり、XabsはXの絶対値であり、
【数2】
は平均値であり、xrmsは2乗平均平方根であり、xmadはMAD(平均絶対偏差)値またはMAB値である。
【0019】
本発明の別の構成では、評価装置により、算定または計算された1つまたは複数の特徴が、計算または算定された速度、特に一定の速度プロフィルの速度によって正規化されるように構成可能である。これにより、有利には、様々な速度が特徴または疲労検出に与える作用の補償が可能となる。付加的にまたは代替的に、評価装置によって算定された1つまたは複数の特徴が、計算された1つまたは複数の補正係数によって補正されるように構成してもよい。補正係数として、例えば、背景振動による跳躍的変化を補償することができる。
【0020】
好ましくは、算定された1つまたは複数の特徴は、特にガイド部品またはマイクロコントローラまたは評価装置のメモリに記憶可能である。このようにして、簡単に、記憶された特徴と新たに算定された特徴とを比較して、疲労検出を行うことができる。
【0021】
好ましくは、評価装置により、算定された様々なタイプの複数の特徴において各特徴が結合可能となり、これにより計算コストが有利に低減される。有利には、各特徴を結合するために、多変量または多元の分布、特に平均値ベクトルまたは共変数マトリクスが形成される。評価装置は、算定された様々なタイプの複数の特徴において、これらの特徴またはその一部を並行して分析可能であり、かつ/または線形結合によって分析可能である。言い換えれば、分析は、個々の次元または特徴において並行して、または各特徴の線形結合によって行うことができる。各特徴の結合には、式
F=a+a+…+a
を使用可能である。ここで、aは各特徴Fの重み係数であり、Fは特徴として分析または疲労検出に用いることができる。言い換えれば、各特徴を結合する際には、各特徴にそれぞれ1つずつ重み係数を割り当てることができる。各特徴は、例えば単純に積算される。
【0022】
本発明の別の構成では、評価装置により、特には現時点の、算定された1つまたは複数の特徴が、記憶された対応する特徴と比較可能である。これにより、ついで、評価装置は、各特徴の変化を推定して、推論を導出できる。例えば、評価装置は、各特徴を比較する際に、1つまたは複数の特徴の減少および/または増大および/または不変化を区別することができる。言い換えれば、先行の特徴または先行の結合された特徴に比較した、特徴値または特徴の勾配または結合された特徴値または結合された特徴の勾配を連続的に計算できるようになる。つまり、例えば、個々の1つまたは複数の特徴に代えてまたはこれに加えて、結合された特徴を記憶することができる。
【0023】
特徴または検査すべき特徴の変化分または勾配または結合された特徴の変化分または勾配が0以下である場合、評価装置はこのことから疲労がないと推論できる。つまり、ガイドは、試運転フェーズまたは安定フェーズにあるといえる。勾配が減少する場合、ガイドの試運転フェーズを基礎とすることができる。勾配が0より小さい場合、例えば転動体および/またはガイドレールが試運転によって動きはじめている可能性がある。この場合、スペクトルのエネルギが低下し、振動が減少しうる。試運転フェーズに続いて安定フェーズが生じる。試運転フェーズの始点のエネルギレベルに基づいて、取り付けの監視を行うことができる。きつく取り付けられたシステムは、正しく取り付けられたシステムから著しく偏差する。よって、評価装置は、ガイド部品の使用開始時点での1つまたは複数の特徴または結合された特徴の大きさに基づき、基準値との比較により、ガイドが正しく取り付けられているかどうかを確認することができる。
【0024】
本発明の別の構成では、1つまたは複数の特徴が上方限界を下回る場合かつ/または下方限界を上回る場合かつ/または2つの限界の間にある場合、評価装置が、1つまたは複数の特徴または結合された特徴の不変化を基礎とすることができる。言い換えれば、勾配が特にほぼ0である場合、ガイドが安定フェーズにあることを基礎とすることができる。この場合、例えば、検出された振動信号に変化はほとんど存在しない。安定フェーズは一般にシステムの耐用期間の大部分を占める。安定フェーズ中は、全ての新たな特徴を、特に3σを含む例えばコントロールチャートによって、安定フェーズの限界形成の計算に定常的に組み入れ、定常的に更新することができる。言い換えれば、評価装置は、好ましくは1つまたは複数の特徴または結合された特徴が不変化であれば、1つまたは複数の限界の計算に関し、1つまたは複数の特徴または結合された特徴を考慮に入れることができる。よって、1つまたは複数の限界は適応的に適合化可能である。言い換えれば、評価装置は、1つまたは複数の特徴が一方の限界または上方限界を下回るかまたは上回るか、かつ/または1つまたは複数の特徴が一方の限界または下方限界を下回るかまたは上回るか、かつ/または1つまたは複数の特徴が2つの限界の間にあるかを検査することができる。1つまたは複数の特徴は、評価装置により1つまたは複数の限界の計算に使用可能であり、これにより1つまたは複数の限界は適応的に適合化可能である。
【0025】
評価装置は、本発明の別の構成では、1つまたは複数の特徴または結合された特徴が1つまたは複数の限界を上回る場合、1つまたは複数の特徴または結合された特徴の増大を基礎とすることができる。よって、特に速度に対して正規化された特徴の勾配が一連の複数回の測定にわたって連続的に0より大きい場合、疲労の可能性がある。この場合、評価装置は、1つまたは複数の特徴または結合された特徴が増大する際に、1回または複数回の外れ値検定を行うことができる。外れ値検定により、障害、例えば跳躍的な短時間での特徴の増大を識別してフィルタ除去することができる。
【0026】
本発明の別の構成では、評価装置は、1つまたは複数の特徴または結合された特徴が増大する際に、様々な警報を出力できるように構成可能である。例えば、1つまたは複数の特徴または結合された特徴が特に上方の限界を上方超過した場合、特に第1の警報または警報レベル1を出力可能である。つまり、警報レベル1により、安定フェーズについて計算された限界(5σより大きい)を離れたことを表示可能である。1つまたは複数の特徴の値または結合された特徴の値が、ガイド部品の試運転フェーズにおけるまたはガイド部品の記録開始時の対応する1つまたは複数の特徴の最大値を上方超過するケースを、別の警報として設けることもでき、この場合、特に第2の警報または警報レベル2を出力可能である。言い換えれば、試運転フェーズの始点のエネルギレベルが上方超過された際に、警報レベル2をトリガ可能である。試運転フェーズが存在しない場合、例えばセンサが後付けされた場合には、警報レベル1に代えて直接に警報レベル2を出力することができる。本発明の別の構成では、1つまたは複数の前提条件が満足された場合、すなわち、警報レベル2の後に、ガイド部品の走行サイクル数または評価装置の測定サイクルとして設けることができる、設定されたサイクル数に達したとき;特にガイド部品につき推定される残留耐用期間に達したとき;1つまたは複数の特徴が所定の統計限界(n×σ)を上方超過したとき;1つまたは複数の特徴またはその一部に対する絶対限界または変更可能限界または閾値に達したとき、から選択される1つまたは複数の前提条件が満足された場合に、評価装置により、アラームまたは特に第3の警報または警報レベル3を出力可能である。
【0027】
本発明の別の構成では、有利には、評価装置によりガイド部品の移動距離を算定できる。言い換えれば、評価装置は、位置分解をともなう評価を行うことができる。したがって、疲労検出の際には、運動するガイド部品だけでなくガイドモジュールも監視でき、特に全移動距離を測定して位置分解をともなう評価を行うと有利である。このようにすれば、例えば、ガイドモジュールの損傷を位置分解によって検出し、対応づけることができる。ガイド部品に欠陥がある場合、通常、特徴が増大し、これは、完全な走行全体にわたってまたは全移動距離にわたって一定に生じる。ガイドモジュールに欠陥がある場合には、算定された特徴は、走行中または移動距離内で位置に依存する勾配を有する。駆動モータに欠陥がある場合または例えばスピンドル軸受に欠陥がある場合には、特徴は、ガイド部品が運動して駆動モータに接近する際に、連続的な増大を示す。
【0028】
代替的にまたは付加的に、疲労検出は、特には規定された基準走行中に行うことができる。これにより、速度または直線速度および周波数領域が既知となる。この場合、背景信号による小さな障害源が存在する。なお、各特徴には僅かな変動しか生じないので、これを速度に対して正規化する必要はない。
【0029】
好ましくは、ガイド部品に、ガイド部品の電子部品の一部または全てに給電するエネルギ生成ユニットが設けられる。ここで、エネルギ生成ユニットは、有利には、ガイドモジュールとガイド部品とが相対運動する場合にエネルギを生成するように構成される。評価装置は、計算動作が比較的単純であるため小さな計算能力しか有さず、これにより比較的小さなエネルギ需要しか有さないので、エネルギ生成ユニットから問題なく自律的に給電可能である。
【0030】
エネルギ取得のために、例えばいわゆる「エネルギハーベスティング」を行ってもよい。さらに、特にエネルギ生成ユニットを介して充電可能なエネルギ蓄積器を設けることもできる。また、エネルギ蓄積器は必要に応じて付加的にまたは代替的に外部から充電することもできる。この場合、エネルギ蓄積器は、ガイド部品の電子部品の一部または全て、特には疲労検出を担当する電子部品に給電するために設けることができる。
【0031】
好ましくは、評価装置は、センサが検出したデータを自律的に評価する。
【0032】
センサは、例えば、装置技術的に簡単な加速度センサまたは振動センサである。当該センサは、好ましくはMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)として構成される。好ましくは、センサは、周波数領域0kHz~20kHz、さらに好ましくは0kHz~3kHz、さらに好ましくは0kHz~1kHzの振動信号を測定する。当該センサは、例えば、特には容量測定方式の3軸加速度センサとして構成される。複数のセンサを設けることもできる。
【0033】
好ましくは、評価装置は評価ソフトウェアを含む。さらに、評価装置がプロセッサを有し、かつ/またはマイクロコントローラとして構成される構成も可能である。マイクロコントローラは、例えば、少なくとも1つの周辺機能部を有することができる。さらに、評価装置は、マイクロコントローラの一部であってもよい作業メモリおよび/またはプログラムメモリを有することができる。評価装置も同様にMEMSとして構成されてもよいし、またはセンサとともにMEMSを形成してもよい。本発明によれば、評価装置の自由容量および/または比較的少数のメモリモジュールによって、かつ/またはエネルギの点で自律的に、かつ/または特にエネルギハーベスティングをともなう1次電池または2次電池を基礎としたケーブルレスの疲労検出によって、ガイドの機能範囲を改善することができる。
【0034】
本発明の別の好ましい構成では、データ伝送装置または通信装置を、特にガイド部品に設けることができる。当該データ伝送装置または通信装置がMEMSまたはマイクロコントローラの一部である構成も可能である。この場合、通信装置により、評価装置および/またはセンサのデータは、好ましくはケーブルレスで、外部の通信装置へ伝送可能である。外部の通信装置は、機械制御部の一部であってもよいし、またはインタネットまたはクラウドへのインタフェースを形成していてもよい。好ましくは、通信装置を介して、好ましくは最小可能データ量を有する評価装置の結果が伝送される。例えば、疲労の有無を表す情報を出力可能にする1ビットのみを設けることができる。言い換えれば、ガイド部品の走行に対して、小さな数値または特徴のみ、特には疲労検出の結果(疲労の有無)および/または予測される残留耐用期間および/または必要なアクションのみが伝送されると有利である。
【0035】
好ましくは、ガイド部品に、アナログセンサ信号をディジタル信号へ変換可能な電子回路が設けられる。また、当該電子回路がシリアルバス、例えばICまたはSPIを形成してもよい。
【0036】
特に評価装置および/またはセンサへの自律的なエネルギ供給は、バッテリまたは蓄電池が必要ないという利点を有する。エネルギ供給のために唯一のバッテリまたは蓄電池しか有さないシステムは、通常、2年~5年のエネルギ上の耐用期間を有する。したがって、こうしたバッテリシステムにおいては、規則的間隔でバッテリ交換が必要となることが欠点であり、このことがコストを生じさせ、環境負荷をもたらす。複数のセンサが設けられる場合、こうしたシステムは、実用上、使用不能である。本発明のシステムによれば自律的な疲労検出を実行可能であるので、部品に対するメンテナンスは必要ない。
【0037】
本発明の別の構成では、疲労検出のための部品、特にセンサ、評価装置、エネルギ供給部などをモジュールとして構成可能である。こうしたモジュールは簡単に取り付け可能であり、また例えば簡単に後付け可能である。
【0038】
有利には、ガイド部品はナットまたはボールねじナットである。この場合、ガイドモジュールは、スピンドルまたはガイドスピンドルであってもよい。ボールねじナットには、センサおよび/または評価装置および/または上述した1つまたは複数の電子部品を含むケーシングを固定可能である。ケーシングは、ガイドスピンドルの方向で見て軸線方向に、ボールねじナットに配置可能である。ボールねじナットは、好ましくはナットボディの第1の軸線方向へ延在するフランジを有し、反対方向にはケーシングが延在可能である。好ましくは、ケーシングは、径方向で見て、ガイドスピンドルの長手軸線に対して共軸にまたはこれに対して平行に間隔を置いて延在可能な長手軸線を有する円筒に沿って好ましくは少なくとも部分的に延在する外套面を有する。ここで、ケーシングの直径は、好ましくはボールねじナットの最大直径以下である。本発明の別の構成では、ケーシングはガイドスピンドルを部分的にしか把持しない。特に、ケーシングは、ガイドスピンドルの側面にほぼU字状に形成される。ケーシングの弧角は例えば最大180°である。したがって、ケーシングを取り付け時にガイドスピンドルの上方に配置および把持できる弧角を超えないようにすることにより、ケーシングを簡単に後付けすることができる。また、ケーシングは、ガイドスピンドルを把持可能とするために複数部分から形成可能であり、こうした複数部分から成る構成により簡単に取り付け可能である。例えば、ケーシングは、簡単な後付け可能性または固定手段による簡単な取り付けの点で、ボールねじナット、特にそのフランジに結合される。ケーシングとボールねじナットとの間にアダプタを設けてもよく、これによりねじ止め点または固定点をフレキシブルに配置および構成できる。
【0039】
本発明の好ましい構成では、ガイド部品がガイドキャリッジであり、ガイドモジュールがガイドレールであるように構成可能である。例えば、ガイドキャリッジは、転動体ボディに支持される。言い換えれば、ガイドは成形体レールガイドとして構成可能である。ガイドキャリッジには、1つまたは複数の上述した態様によるケーシングを設けることができる。例えば、ケーシングは、ガイドキャリッジの長手方向を指す側面に配置される。さらに好ましくは、ケーシングは、ガイドキャリッジの外輪郭の外寸法を(特にはガイドレールに対する横断方向の平面で見て)超えない。ケーシングは、例えばほぼU字状に形成されるので、ガイドレールを容易に把持可能である。また、ケーシングは、簡単な後付け可能性のために複数部分から形成されてもよい。
【0040】
上述したセンサのほか、1つまたは複数の別のセンサを設けることもできる。ここでは、例えば、オイル膜厚および/または潤滑性品質および/または潤滑剤の濁りおよび/または粒子を検出するための光センサ装置および/または超音波センサ装置を設けることができる。1つまたは複数の付加的なセンサの検出軸線は、好ましくはガイドモジュールの表面の方向、特にはガイドスピンドルまたはガイドレールの表面の方向に配向される。既に上述したように、付加的なセンサ装置として、背景雑音を検出する音波ベースのセンサ装置、特にマイクロフォンを設けることができる。さらに、温度センサ装置を設けることもできる。
【0041】
本発明によれば、センサ装置が提案され、本センサ装置は、振動信号を検出するセンサを含む。また、センサ装置に、センサが検出した振動信号を評価する評価装置を設けることができる。この場合、センサが検出した振動信号に基づいてガイド部品の運動プロフィルを算定可能であり、ここで、運動プロフィルの少なくとも一部である振動信号を疲労検出に使用可能である。代替的にまたは付加的に、センサが検出した振動信号をディジタルフィルタリングし、ディジタルフィルタリングされた信号に基づいて、ガイド部品の当該または別の運動プロフィルを算定してもよい。
【0042】
センサ装置は、上述した態様にしたがって構成可能である。
【0043】
本発明によれば、1つまたは複数の上述した態様によるガイドまたは1つまたは複数の上述した態様によるセンサ装置を用いる方法が提案される。本方法は、
・センサが検出した振動信号に基づいて運動プロフィルを算定し、好ましくは運動プロフィルの一部である振動信号を疲労検出に用いるステップ、および/または
・センサが検出した振動信号をディジタルフィルタリングし、ディジタルフィルタリングされた振動信号に基づいてガイド部品の当該または別の運動プロフィルを算定するステップ、および/または
・センサが検出した振動信号の周波数帯域を算定し、当該周波数帯域を評価装置による疲労検出に用いるステップ
を含む。
【0044】
さらに、本方法は、1つまたは複数の上述した態様を有していてもよい。
【0045】
言い換えれば、特にリニアガイドの機械的疲労を検出するためのリニアドライブおよびリニアガイド用の疲労検出センサが設けられる。この場合、速度に依存した正規化または特徴補正を使用可能であり、これにより、動作中に基準経路なしで疲労検出が可能となる。代替的にまたは付加的に、試運転フェーズ、安定フェーズおよび疲労フェーズを検出して分析に組み入れる統合フェーズ識別を行うことができる。安定フェーズの限界は定常的に適合化可能かつ適応化可能であり、または追従制御可能である。したがって、固定の閾値は必要なく、これにより適応的な疲労検出が達成される。疲労検出の際には、特に、関連する各特徴の連続的な増大および/または安定フェーズにつき計算された限界から離れたことおよび/または試運転フェーズの始点のエネルギレベルの上方超過が生じるかどうかを確認可能である。さらに、限界値、例えば安定フェーズの限界を離れた後の最大サイクル数に達したかどうか、かつ/または推定される残留耐用期間に達したかどうか、かつ/または特徴がn×σより大きくなったかどうか、かつ/または絶対閾値または変更可能閾値に達したかどうかを確認できる。
【0046】
言い換えれば、本発明では、完全にセンサ近傍で自己適応化を行う疲労検出または信号処理および信号分析を、センサシステム内に高度に集積されたマイクロコントローラ上で行うことができる。この場合、疲労検出では、信号検出および/または信号測定および/または加速度プロフィル識別および/またはパラメータ推定および/またはフィルタリングおよび/または特徴計算および/または勾配計算を行うことができる。
【0047】
言い換えれば、本ガイドおよび/または本方法および/または本センサ装置により、評価または疲労検出を、特別な測定走行中だけでなく、例えばリニアローラ軸受の動作中に実行可能である。有利には、振動信号がディジタルフィルタリングされる。ついで、フィルタリングされた信号から、一定速度のフェーズ、特に一般に固定の動作条件を識別可能である。評価は、基本的には当該フェーズにおいて実行可能である。他のフェーズからの情報は、例えば他のフェーズの速度を算定することにより、評価の支援に使用可能である。
【0048】
言い換えれば、評価装置は直接にリニアローラ軸受の回転子に取り付けることができる。本発明の構成により、きわめてコンパクトな構成が得られ、僅かな給電電力で足りる。リニアローラ軸受の運動を利用して、評価装置にエネルギを供給することができる。対応するマイクロコントローラも比較的低い能力を有するように構成すれば充分である。評価プロセスは可能なかぎり簡単に構成されるので、マイクロコントローラによって実行可能である。にもかかわらず、損傷の確実な識別が行われる。周波数領域の評価は必要ない。評価装置は、有利には、自身で算定したデータによって動作する。評価装置は、有利には、上位の制御部に接続されない。走行速度を算定する手段も有利である。走行速度は加速度センサの信号の積分により算定可能である。加速度センサが求めた振動信号は、主に走行速度に依存しうる。
【0049】
本発明の好ましい実施例を、以下に、概略図に即して詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1】aは一実施例によるガイドを示す斜視図であり、bはaのガイドの側面図である。
図2】aはセンサ装置を含むガイドの一部分を示す斜視図であり、bは別の実施例によるガイドを示す斜視図である。
図3】各実施例によるガイドの動作説明のためのフローチャートである。
図4】各実施例による、センサによって検出可能な、ガイドの振動信号を示す図である。
図5】様々な速度でのガイドの開始フェーズおよび加速フェーズを示すグラフである。
図6】ガイドの疲労検出の分析結果を示すグラフである。
図7】記録された警報限界を含む図6のグラフを示すグラフである。
【0051】
図1のaによれば、一実施例によるガイドは、ガイドスピンドル1の形態のガイドモジュールとボールねじナット2の形態のガイド部品とを備えている。ボールねじナット2のフランジの、軸線方向を指す端面に、ケーシング4が固定されている。ケーシング4内には、図1のaに概略的に示されているセンサ6が設けられている。当該センサ6により、ガイドの振動信号を検出可能である。また、同様に図1のaに概略的に示されておりかつセンサ6に接続されている評価装置8が、マイクロコントローラの形態で設けられている。さらに、評価装置8は、同様に概略的に示されているエネルギ生成ユニット10に接続されている。図1のa,bによれば、ケーシング4が曲面板状に形成されており、かつその直径がボールねじナット2の直径に相当することが見て取れる。ここで、曲面板状のケーシング4は、ガイドスピンドル1を把持している。
【0052】
図2のa,bによれば、ガイドレール12の形態のガイドモジュールとガイドキャリッジ14の形態のガイド部品とを備えたガイドの別の実施形態が構成されている。この場合、ケーシング16はU字状に形成されており、特には図1のaにしたがったセンサ、評価装置およびエネルギ生成ユニットを含む。ケーシング16は、ガイドキャリッジ14の、軸線方向を指す端面18に固定可能である。この場合、ケーシング16は、径方向でガイドキャリッジ14を超えて突出しない。ケーシング16のU字状の構成により、有利には、ケーシング16はガイドレール12を把持可能である。ガイドレール12が図2のaにしたがった輪郭を有する場合、ケーシング16は対応する輪郭によって当該輪郭に嵌合可能である。
【0053】
図3のaのフローチャートによれば、第1のブロックで測定20が表されている。当該測定の際には、図1のaに示されているセンサ6により、振動信号が検出される。振動信号は、図4に、参照番号22を付されて示されている。振動信号22は、横軸に測定回数、縦軸に振動信号22の正規化振幅を記したグラフに記されている。図3によれば、測定22の後、ブロック24で、振動信号22に基づき、運動プロフィルの算定が行われる。このために、振動信号22はローパスフィルタを介してディジタルフィルタリングされ、これにより図4の運動プロフィル26を識別可能である。運動プロフィル26は複数の部分を有する。図4によれば、番号1で静止プロフィル、番号2で始動プロフィル、番号3で加速プロフィル、番号4で一定速度プロフィル、番号5で制動プロフィルが記されている。特に一定速度プロフィルにおける望ましくない加速度影響を回避するために、疲労検出が実行され、このために、運動プロフィルの様々な部分を図1のaに示されている評価装置8によって検出することはきわめて有利である。静止プロフィルおよび/または始動プロフィルに即して、一定速度プロフィルでの、図1のaおよび図2のbに示されているボールねじナット2またはガイドキャリッジ14の速度が算定される。このことを図5において詳細に説明する。図5には、直線運動の始動フェーズおよび運動フェーズが、一定速度を有するフェーズにつき種々に達成される速度によって示されている。ここでは、横軸に時間[s]、縦軸に振幅が記されている。この場合、曲線28は、1分当たり50回転の駆動モータの回転における始動フェーズおよび加速フェーズを示している。ここで、別の曲線30は1分当たり300回転の場合の始動フェーズおよび加速フェーズを示しており、さらに別の曲線32は1分当たり1000回転の場合の始動フェーズおよび加速フェーズを示している。速度の計算は、好ましくは、曲線28,30,32の、閾値34を上回る部分によって行われる。
【0054】
図3によれば、ブロック24の後、振動信号22の周波数帯域を算定するブロック36が続いて行われ、ここで、周波数帯域は、図1のaに示されている評価装置8により、疲労検出に用いられる。当該周波数帯域は、計算された速度に基づいて推定され、図3のブロック38に示されているように、フィルタによって、不要な周波数帯域を除去されている。
【0055】
図3の続くブロック40では、ブロック38で除去された周波数帯域に関連する特徴の計算が行われる。当該特徴として、例えば平均値またはMAD値またはRMS値を設けることができる。ブロック40の後、計算された特徴を計算された速度に対して正規化するブロック42を行い、これにより様々な速度の作用を補償することができる。続いて、ブロック44で信号分析が行われる。このために、算定された各特徴が上述したように結合され、結合された特徴が先行して算定された特徴と比較される。特徴の勾配または特徴の増大が0より大きい場合、図3の左分岐46の方法が行われる。特徴が同等にとどまるかまたは減少する場合には、図3の右分岐48の方法が続いて行われる。分岐48では、ブロック50において、図1図2のガイドが安定フェーズにあるかどうか、つまり疲労なく試運転フェーズが終了しているかどうかが検査される。安定フェーズが生じていない場合、評価装置8により、図3のブロック52で試運転フェーズが識別され、続いてブロック54で新たな測定が開始される。試運転フェーズでは結合された特徴は減少する。特徴が同等にとどまる場合、ブロック50の後、図3のブロック56が続いて行われる。ここでは、安定フェーズの限界が必要に応じて適応的に適合化され、続いてブロック54で新たな測定が開始される。
【0056】
図6には、算定された結合された特徴が示されている。横軸には測定回数、縦軸には結合された特徴の正規化値が示されている。試運転フェーズ58では、結合された特徴が試運転フェーズの開始レベル60から減少していることが見て取れる。続いて、結合された特徴が適応的に変更可能な限界64,66内で同等にまたはほぼ同等にとどまる安定フェーズ62が生じている。結合された特徴が増大する場合、評価装置8により、疲労フェーズ68が識別される。すなわち、図3のブロック44で、結合された特徴に勾配が確認されると、左分岐46の方法が続けて行われる。まず、ブロック69で、結合された特徴の勾配が5σより大きいかどうかが確認され、つまり、増大が生じているかどうかが統計平均によって確認される。生じていない場合、ブロック70で外れ値カウンタが1ポイント低減される。続いて、ブロック56で、図6に示されている限界64,66が適応的に適合化される。ブロック69における統計評価の結果により、結合された特徴の勾配が5σ以下であることが示された場合には、ブロック72で、外れ値カウンタが1ポイント増大される。次のブロック74では、外れ値の数が所定の閾値を上方超過するかどうかが確認される。上方超過していない場合、ブロック54で新たな測定が開始される。なお、上方超過している場合には、ブロック76で、結合された特徴の正規化値が図6に示されている開始レベル60より大きいかどうかが算定される。大きくない場合、ブロック78で警報レベル1が出力される。大きい場合には、続いてブロック79で、限界値が上方超過されるかどうかが検査される。当該限界値は、例えば、推定される残留耐用期間または絶対閾値または本明細書の導入部で言及した限界値である。当該限界値が上方超過されると、ブロック80でアラームが出力される。限界値が上方超過されなければ、ブロック82で警報レベル2が出力される。このことは図7に概略的に示されている。ここでは、図6に基づく様々な警報段階およびアラームが記されている。図3に即して説明した前提条件が満足されると、領域84でアラームが出力される。領域86では警報レベル2、領域88では警報レベル1が出力され、領域90では警報またはアラームのいずれも出力されない。
【0057】
本発明によれば、特にガイド用の、センサおよび評価装置を備えたセンサ装置が設けられる。評価装置は、センサが検出した振動信号に基づいて、ガイド部品の運動プロフィルを算定し、当該運動プロフィルの一部が疲労検出に用いられる。代替的にまたは付加的に、センサが検出した振動信号をフィルタリングまたはディジタルフィルタリングし、フィルタリングまたはディジタルフィルタリングされた信号に基づいてガイド部品の当該または別の運動プロフィルを算定する構成も可能である。
【符号の説明】
【0058】
1 ガイドスピンドル
2 ボールねじナット
4,16 ケーシング
6 センサ
8 評価装置
10 エネルギ生成ユニット
12 ガイドレール
14 ガイドキャリッジ
18 端面
20 測定
22 振動信号
24,36,40,42,44,50,52,54,56,69,70,72,74,76,78,79,80,82 ブロック
26 運動プロフィル
28,30,32 曲線
34 閾値
46 左分岐
48 右分岐
58 試運転フェーズ
60 開始レベル
62 安定フェーズ
64,66 限界
68 疲労フェーズ
84,86,88,90 領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7