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特許74529531色覚および他の疾患の治療のためのプロモーター、発現カセット、ベクター、キット、ならびに方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】1色覚および他の疾患の治療のためのプロモーター、発現カセット、ベクター、キット、ならびに方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/11 20060101AFI20240312BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20240312BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240312BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240312BHJP
   C12N 7/01 20060101ALI20240312BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20240312BHJP
   C12N 15/85 20060101ALI20240312BHJP
   C12N 15/864 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
C12N15/11 Z ZNA
A61K35/76
A61K48/00
A61P27/02
A61P43/00 105
C12N5/10
C12N7/01
C12N15/12
C12N15/85 Z
C12N15/864 100Z
【請求項の数】 35
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019099960
(22)【出願日】2019-05-29
(62)【分割の表示】P 2016513977の分割
【原出願日】2014-05-05
(65)【公開番号】P2019187421
(43)【公開日】2019-10-31
【審査請求日】2019-06-25
【審判番号】
【審判請求日】2021-07-02
(31)【優先権主張番号】61/824,071
(32)【優先日】2013-05-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512075257
【氏名又は名称】アプライド ジェネティック テクノロジーズ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イェ,グオ-ジエ
【合議体】
【審判長】上條 肇
【審判官】高堀 栄二
【審判官】中根 知大
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/094560(WO,A2)
【文献】国際公開第2011/034947(WO,A2)
【文献】Neuron(1992)Vol.9,No.3,p.429-440
【文献】ACCESSION:NG_009105,GenBank,2012年,online, retrieved on 16 Feb 2018,URL,https://www.ncbi.nlm.nih.gov/nuccore/216548283?sat=17&satkey=22924903
【文献】Hum.Mol.Genet.(2010)Vol.19,No.13,p.2581-2593
【文献】Gene Ther.(2008)Vol.15,No.14,p.1049-1055
【文献】Nat.Med.(2007)Vol.13,No.6,p.685-687
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N15/00-15/864
CA/BIOSIS/WPIDS(STN)
PubMed
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号4のヌクレオチド配列からなる錐体細胞特異的プロモーターPR2.1を含む核
【請求項2】
プロモーターが、S-錐体細胞、M-錐体細胞、およびL-錐体細胞におけるCNGB3発現を促進することができる、請求項1記載の核酸。
【請求項3】
プロモーターが、S-錐体細胞、M-錐体細胞、およびL-錐体細胞におけるCNGA3発現を促進することができる、請求項1記載の核酸。
【請求項4】
プロモーターが、S-錐体細胞、M-錐体細胞、およびL-錐体細胞におけるGNAT2発現を促進することができる、請求項1記載の核酸。
【請求項5】
請求項1記載の核酸に機能的に連結された標的核酸配列を含む、組換えアデノ随伴(rAAV)発現ベクター。
【請求項6】
rAAVが血清型1である、請求項5記載の発現ベクター。
【請求項7】
rAAVが血清型2である、請求項5記載の発現ベクター。
【請求項8】
rAAVが血清型5である、請求項5記載の発現ベクター。
【請求項9】
rAAVがAAVビリオン内に含まれる、請求項5記載の発現ベクター。
【請求項10】
標的核酸配列が環状ヌクレオチド依存性チャネルサブユニットB(CNGB3)ポリペプチドをコードする、請求項5記載の発現ベクター。
【請求項11】
CNGB3がマウスCNGB3である、請求項10記載の発現ベクター。
【請求項12】
CNGB3がラットCNGB3である、請求項10記載の発現ベクター。
【請求項13】
CNGB3がヒトCNGB3である、請求項10記載の発現ベクター。
【請求項14】
標的核酸配列が環状ヌクレオチド依存性チャネルサブユニットA(CNGA3)ポリペプチドをコードする、請求項5記載の発現ベクター。
【請求項15】
CNGA3がマウスCNGA3である、請求項14記載の発現ベクター。
【請求項16】
CNGA3がラットCNGA3である、請求項14記載の発現ベクター。
【請求項17】
CNGA3がヒトCNGA3である、請求項14記載の発現ベクター。
【請求項18】
標的核酸配列がグアニンヌクレオチド結合タンパク質G(t)サブユニットα-2(GNAT-2)ポリペプチドをコードする、請求項5記載の発現ベクター。
【請求項19】
GNAT-2がマウスGNAT-2である、請求項18記載の発現ベクター。
【請求項20】
GNAT-2がラットGNAT-2である、請求項18記載の発現ベクター。
【請求項21】
GNAT-2がヒトGNAT-2である、請求項18記載の発現ベクター。
【請求項22】
請求項5~21のいずれか1項記載の発現ベクターを含む哺乳動物細胞。
【請求項23】
(a)請求項1記載の核酸、
(b)CNGB3核酸、CNGA3核酸、およびGNAT2核酸からなる群より選択される核酸、ならびに
(c)最小調節エレメント
を含む、導入遺伝子発現カセット。
【請求項24】
請求項23記載の発現カセットを含む核酸ベクター。
【請求項25】
アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである、請求項24記載のベクター。
【請求項26】
請求項5~21のいずれか1項記載の発現ベクターおよびその使用のための説明書を含むキット。
【請求項27】
眼疾患の治療のための医薬の製造における、請求項5~21のいずれか1項記載の発現ベクターの使用であって、該治療が、それを必要とする対象に該医薬を投与することを含む、使用。
【請求項28】
錐体細胞におけるCNGA3またはCNGB3発現の促進のための医薬の製造における、請求項5~21のいずれか1項記載の発現ベクターの使用であって、CNGA3またはCNGB3発現の促進が、対象に該医薬を投与することを含む、使用。
【請求項29】
眼疾患が、網膜錐体細胞に影響を及ぼす遺伝子の突然変異、置換または欠失に関連する、請求項27記載の使用。
【請求項30】
眼疾患が網膜色素上皮に影響を及ぼす、請求項27記載の使用。
【請求項31】
眼疾患が1色覚である、請求項27記載の使用。
【請求項32】
発現ベクターが、S-錐体細胞、M-錐体細胞、およびL-錐体細胞におけるCNGB3発現を促進することができる、請求項27または28記載の使用。
【請求項33】
発現ベクターが、S-錐体細胞、M-錐体細胞、およびL-錐体細胞におけるCNGA3発現を促進することができる、請求項27または28記載の使用。
【請求項34】
発現ベクターが、S-錐体細胞、M-錐体細胞、およびL-錐体細胞におけるGNAT-2発現を促進することができる、請求項27または28記載の使用。
【請求項35】
ベクターを網膜下に投与する、請求項27または28記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、米国仮出願第61/824,071号(2013年5月16日出願)の出願日の利益を主張するものであり、その全記載内容は参照により本明細書中に組み込まれるものとする。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
1色覚(achromatopsia)は、顕著な視力低下、眼球振盪、日光条件下での重度の羞明、および色の識別力の低下もしくは完全な喪失を特徴とする常染色体劣性網膜疾患である(Kohl, S.ら、Achromatopsia, Pagon RA, Bird TC, Dolan CR, Stephens K編, Gene Reviews [Internet], Seattle: University of Washington; 2010(非特許文献1))。この障害は部分的なもの、または完全なものでありうる。Pang, J.-J.ら(2010), Achromatopsia as a Potential Candidate for Gene Therapy.(Advances in Experimental Medicine and Biology, Volume 664, Part 6, 639-646 (2010))(以下、Pangら)(非特許文献2)を参照されたい。1色覚の症状としては、視力低下、色識別障害(achromatopia)(色知覚の欠如)、昼盲(明るい光の嫌悪または回避を意味する羞明(photoaversion)を伴う、明所での視覚能力低下)、眼球振盪(制御できない眼の振動運動)、虹彩機能異常、および立体視障害(ある場面の三次元的側面を知覚できないこと)が挙げられる。
【0003】
網膜電位図により、1色覚の場合、網膜杆体光受容器の機能は損なわれずに残っているが、網膜錐体光受容器は機能していないことが判明している。錐体特異的環状ヌクレオチド依存性チャネルβサブユニット(CNGB3)遺伝子における突然変異が1色覚の症例の約50%を占めている(Kohl Sら、Eur J Hum Genet 2005; 13: 302-8(非特許文献3))。杆体および錐体の光受容器は視覚において機能的に異なる役割を果たしている。Pangら(2010)。錐体光受容器は、薄明かり~非常に明るい光の中で働いているその間、主に中心視力、高解像度視力および色覚を担っている。それらは網膜の黄斑中心部に集中しており、またその中心窩のほぼ100%を占めている。杆体光受容器は周辺視力、薄明視(low light vision)、および夜間視力を担っており;それらは主に黄斑の外側の周辺部網膜に見出される。
【0004】
およそ30,000人に1人が完全な1色覚に悩まされている。完全な1色覚の場合、全色覚の喪失、中心視力の喪失、および20/200またはそれ以下の視力が認められる。従って、殆どの1色覚者は法的に盲目である。現行の標準治療は、着色コンタクトレンズを用いて網膜の光曝露を制限すること、および中心視力を高めるような倍率を提供することからなる。しかし、1色覚において錐体機能を補正する利用可能な治療法は存在しない。Pangら。
【0005】
先天性1色覚の遺伝的要因には様々なものがある。環状ヌクレオチド依存性イオンチャネルβ3(CNGB3(ACHM3としても知られている))遺伝子内の突然変異は、1色覚の遺伝的要因の1つである。イヌでの最近の研究により、該CNGB3遺伝子内の突然変異により生じる1色覚の治療のための組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベースの遺伝子治療の利用について、ある程度の見込みが示唆された(Komaromyら、Gene therapy rescues cone function in congenital achromatopsia. Human Molecular Genetics, 19(13):2581-2593 (2010)(以下、Komaromyら)(非特許文献4)。イヌでの研究においては、rAAVベクターに、2.1 kbの錐体赤オプシンプロモーター(PR2.1)およびヒトCNGB3(hCNGB3)cDNAを含む要素を含有するパッケージングされたヒトCNGB3(hCNGB3)発現カセットが使用された。これらの研究の制限の一つは、該PR2.1プロモーターにより駆動されるhCNGB3は赤および緑錐体においてのみ発現されるが、内在性hCNGB3は全3種類の錐体(赤、緑および青錐体)において発現されるということである。もう1つの制限は、利用した前記発現カセットの全体サイズ(5,230 bp)がAAV粒子の通常のパッケージング容量(<4.9 kb)をはるかに超えており;詰め込みすぎたrAAV粒子がそのrAAVパッケージング効率を著しく損ない、その結果、低い収率、より高い中空対完全(empty-to-full)粒子比、そして恐らくは該ベクターのより低い感染性をもたらした、ということである。より短いバージョンの錐体赤オプシンプロモーター、または錐体アレスチンプロモーターを含有する発現カセットは、視機能を回復するにはそれ程有効ではなかった。本発明はこれらの制限に対処するものである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】Kohl, S.ら、Gene Reviews [Internet], Seattle: University of Washington; 2010
【文献】Pang, J.-J.ら、Advances in Experimental Medicine and Biology, 664, 6, 639-646 (2010)
【文献】Kohl Sら、Eur J Hum Genet, 13: 302-8 (2005)
【文献】Komaromyら、Human Molecular Genetics, 19(13):2581-2593 (2010)
【発明の概要】
【0007】
本発明は、全3種類の錐体におけるhCNGB3発現を促進することができるプロモーターを提供するという利点を有する。加えて、本発明のプロモーターは、該プロモーターが、hCNGB3発現カセットをrAAVの通常のパッケージング容量内にうまく収めることができる程短いという利点を有する。通常のrAAVパッケージング容量内に収まるプロモーターは、改善された収率、より低い中空対完全粒子比、および前記ベクターのより高い感染性などの利益を提供する。また本発明は、これらの改良されたプロモーターを利用する発現カセット、ベクターおよびキット、ならびに該ベクターを投与することにより1色覚を治療するための方法も提供する。
【0008】
本発明は、有効な1色覚治療の必要性に対処するものである。
【0009】
発明の要約
本発明は、第一の態様では、錐体細胞特異的プロモーターPR2.1の一部を含む核酸を特徴とする。
【0010】
一実施形態では、核酸は配列番号4の配列を含む。別の実施形態では、PR2.1は5'または3'末端で末端切断されている。関連実施形態では、末端切断は約100塩基対から1,500塩基対の間である。更なる関連実施形態では、末端切断は5'末端の約300塩基対である。別の更なる実施形態では、末端切断は5'末端の約500塩基対である。別の実施形態では、末端切断は5'末端の約1,1000塩基対である。別の更なる実施形態では、末端切断は3'末端の約300塩基対である。別の実施形態では、末端切断は3'末端の約500塩基対である。別の更なる実施形態では、末端切断は3'末端の約1,1000塩基対である。
【0011】
一実施形態では、上記の態様および実施形態の核酸は配列番号3を含む。一実施形態では、上記の態様および実施形態の核酸は配列番号2を含む。一実施形態では、上記の態様および実施形態の核酸は配列番号1を含む。
【0012】
別の態様では、本発明は、配列番号1のヌクレオチド配列を含む核酸を特徴とする。別の態様では、本発明は、配列番号2のヌクレオチド配列を含む核酸を特徴とする。別の態様では、本発明は、配列番号3のヌクレオチド配列を含む核酸を特徴とする。
【0013】
別の更なる実施形態では、本発明は、配列番号1のヌクレオチド配列に対して少なくとも85%同一であるヌクレオチド配列を含む核酸を特徴とする。
【0014】
上記の態様の一実施形態では、プロモーターは、S-錐体細胞、M-錐体細胞、およびL-錐体細胞におけるCNGB3発現を促進することができる。上記の態様の別の実施形態では、プロモーターは、S-錐体細胞、M-錐体細胞、およびL-錐体細胞におけるCNGA3発現を促進することができる。上記の態様の更に別の実施形態では、プロモーターは、S-錐体細胞、M-錐体細胞、およびL-錐体細胞におけるGNAT2発現を促進することができる。
【0015】
別の実施形態では、本発明は、上記の態様および実施形態のいずれかの核酸に機能的に連結された標的核酸配列を含む、組換えアデノ随伴(rAAV)発現ベクターを特徴とする。関連実施形態では、rAAVは血清型1である。関連実施形態では、rAAVは血清型2である。別の関連実施形態では、rAAVは血清型5である。更に別の関連実施形態では、rAAVはAAVビリオン内に含まれる。
【0016】
一実施形態では、標的核酸配列は環状ヌクレオチド依存性チャネルサブユニットB(CNGB3)ポリペプチドをコードする。関連実施形態では、CNGB3はマウスCNGB3である。別の関連実施形態では、CNGB3はラットCNGB3である。更に別の関連実施形態では、CNGB3はヒトCNGB3である。
【0017】
一実施形態では、標的核酸配列は環状ヌクレオチド依存性チャネルサブユニットA(CNGA3)ポリペプチドをコードする。関連実施形態では、CNGA3はマウスCNGA3である。別の関連実施形態では、CNGA3はラットCNGA3である。更に別の関連実施形態では、CNGA3はヒトCNGA3である。
【0018】
一実施形態では、標的核酸配列はグアニンヌクレオチド結合タンパク質G(t)サブユニットα-2(GNAT-2)ポリペプチドをコードする。関連実施形態では、GNAT-2はマウスGNAT-2である。別の関連実施形態では、GNAT-2はラットGNAT-2である。更に別の関連実施形態では、GNAT-2はヒトGNAT-2である。
【0019】
別の実施形態では、本発明は、上記の態様および実施形態のいずれかの発現ベクターを含む哺乳動物細胞を特徴とする。
【0020】
更に別の実施形態では、本発明は、上記の態様および実施形態のいずれかの核酸、CNGB3核酸、CNGA3核酸、およびGNAT2核酸からなる群より選択される核酸、ならびに最小調節エレメントを含む、導入遺伝子発現カセットを特徴とする。一実施形態では、本発明は、上記の態様または実施形態のいずれかの発現カセットを含む核酸ベクターを特徴とする。関連実施形態では、ベクターはアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである。
【0021】
別の実施形態では、本発明は、上記の態様または実施形態のいずれかの発現ベクターおよびその使用のための説明書を含むキットを特徴とする。
【0022】
本発明はまた、別の実施形態では、上記の態様または実施形態のいずれかの発現ベクターをかかる治療を必要とする対象に投与し、それによって該対象を治療することを含む、眼疾患の治療方法を特徴とする。
【0023】
本発明はまた、別の実施形態では、上記の態様または実施形態のいずれかの発現ベクターを対象に投与し、それによってCNGA3またはCNGB3発現を促進することを含む、対象の錐体細胞におけるCNGA3またはCNGB3発現の促進方法を特徴とする。
【0024】
一実施形態では、眼疾患は、網膜錐体細胞に影響を及ぼす遺伝子の突然変異、置換または欠失に関連する。別の実施形態では、眼疾患は網膜色素上皮に影響を及ぼす。別の関連実施形態では、眼疾患は1色覚である。
【0025】
別の実施形態では、発現ベクターはS-錐体細胞、M-錐体細胞、およびL-錐体細胞におけるCNGB3発現を促進することができる。別の更なる実施形態では、発現ベクターはS-錐体細胞、M-錐体細胞、およびL-錐体細胞におけるCNGA3発現を促進することができる。更に別の更なる実施形態では、発現ベクターはS-錐体細胞、M-錐体細胞、およびL-錐体細胞におけるGNAT-2発現を促進することができる。
【0026】
更なる実施形態では、ベクターは網膜下に投与される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】末端切断型ヒト赤/緑オプシンプロモーターの略図。
図2】rAAV5-PR2.1-hCNGB3ベクターの略図。
図3】PR2.1プロモーターの変異体を含有する4つのプロウイルスプラスミドの略図。PR2.1プロモーター(末端切断型ヒト赤/緑オプシンプロモーター)をその5’末端で300 bp、500 bp、および1,100 bp分切断することによってより短いプロモーターを作出し、それぞれPR1.7、PR1.5、およびPR1.1と表した。CMVエンハンサーを該PR1.1の5’末端に付加することによりハイブリッドプロモーターを作出した。PR2.1の500 bpのコアプロモーター(灰色で示す)および遺伝子座調節領域(赤色で示す)は、これらの各構築物中に無傷のまま残っている。末端反復配列を矢印で示し、またSV40スプライシングシグナル配列の位置も示す。
図4-1】配列番号1~4を示す。
図4-2】図4-1のつづきである。
図4-3】図4-2のつづきである。
図4-4】図4-3のつづきである。
図5】緑色蛍光タンパク質(GFP)を発現するrAAVベクターを用いてマウスの錐体を標的とするPR1.1およびPR1.5の効率および特異性を評価する実験の結果を示す。PNAは錐体光受容器マーカーである。DAPIは核を特定するために使用する。
図6】緑色蛍光タンパク質(GFP)を発現するrAAVベクターを用いてマウスの錐体を標的とするPR1.7およびPR2.1の効率および特異性を評価する実験の結果を示す。PNAは錐体光受容器マーカーである。DAPIは核を特定するために使用する。
図7】rAAV2tYF-PR2.1-GFP、rAAV2tYF-PR1.7-GFP、またはAAV2tYF-CSP-GFPを網膜下投与された非ヒト霊長類(NHP)の眼における緑色蛍光タンパク質(GFP)の存在を検出する眼底の自己蛍光イメージング(FAF)の結果を示す。
図8】(A-E)は、AAV2tYF-GFPベクターの注入3カ月後のNHPの網膜におけるGFP発現を示す。パネルはAAV処理なしの正常の対照の眼(パネルA)、またはAAV2tYF-CSP-GFP(パネルB)、AAV2tYF-PR2.1-GFP(パネルC)、もしくはAAV2tYF-PR1.7-GFP(パネルDおよびE)を網膜下注入した眼からの、核のためのDAPI(青)およびGFPに対する抗体(緑)、L/M錐体オプシン(赤、パネルA、B、CおよびD)またはS錐体オプシン(赤、パネルE)で染色した代表的な網膜切片を示す。
図9】AAV2tYF-GFPベクターの注入3カ月後のNHPの網膜におけるGFPのメッセンジャーRNA(mRNA)レベルを示すグラフである。GFPのメッセンジャーRNA(mRNA)を3回の異なる時点で三重にqRT-PCRを行って測定し、サンプル中の18SRNA発現によって正規化した。
【発明を実施するための形態】
【0028】
I. 概要および定義
他に定義しない限り、本明細書中で使用する全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者に普通に理解される意味を有するものとする。次の文献は、本発明中で使用する用語のうちの多くの一般的な定義を当業者に提供するものである:Singletonら、Dictionary of Microbiology and Molecular Biology (2nd ed. 1994);The Cambridge Dictionary of Science and Technology (Walker ed., 1988);The Glossary of Genetics, 5th Ed., R. Riegerら(eds.), Springer Verlag (1991);およびHale & Marham, The Harper Collins Dictionary of Biology (1991)。本明細書中で使用する場合、以下の用語は、他に明記しない限りは後述の意味を有するものとする。
【0029】
冠詞「a」および「an」は、本明細書中では、該冠詞の文法上の目的語の1つまたは1つより多く(すなわち少なくとも1つ)を指すために使用する。例として、「an element(要素)」は1つの要素または1つより多くの要素を意味する。
【0030】
「含む(including)」という用語は、本明細書中では、「~を含むがこれらに限定されない」という成句を意味するために使用し、また該成句と互換的にも使用される。
【0031】
「または」という用語は、本明細書中では、その文脈で他に明確に示されていない限りは「および/または」という用語を意味するために使用し、また該用語と互換的にも使用される。
【0032】
「など」という用語は、本明細書中では、「例えば、限定するものではないが」という成句を意味するために使用し、また該成句と互換的にも使用される。
【0033】
本発明の方法により治療しようとする「対象」または「患者」は、ヒトまたは非ヒト動物のいずれかを意味しうる。「非ヒト動物」には、あらゆる脊椎生物または無脊椎生物が含まれる。
【0034】
「1色覚」とは色覚障害をいう。1色覚の症状としては、色識別障害(色知覚の欠如)、弱視(視力低下)、昼盲(明るい光の嫌悪または回避を意味する羞明を伴う、明所での視覚能力低下)、眼球振盪(制御できない眼の振動運動)、虹彩機能異常、および立体視障害(ある場面の三次元的側面を知覚できないこと)が挙げられる。本明細書中で使用する場合、「1色覚」という用語は、遺伝子の突然変異、置換、または欠失により生じる1色覚の形態を指す。
【0035】
疾患(例えば、1色覚など)を「治療する」とは、該疾患の少なくとも1つの徴候もしくは症候を緩和すること、予防すること、またはその発現を遅らせることを意味する。
【0036】
DNA鎖およびRNA鎖の非対称末端は5’(ファイブプライム)末端および3’(スリープライム)末端と呼ばれており、該5’末端は末端リン酸基を、また該3’末端は末端ヒドロキシル基を有する。該ファイブプライム(5’)末端は、その末端のデオキシリボースまたはリボースの糖環に5位の炭素を有する。核酸はin vivoで5'-から3'-方向に合成されるが、これは新しい鎖を組み立てるために利用されるポリメラーゼが、各新規ヌクレオチドを3'-ヒドロキシル(-OH)基にホスホジエステル結合を介して結合させるからである。
【0037】
「プロモーター」とは、特定の遺伝子の転写を容易にするDNA領域をいう。転写プロセスの一環として、RNAを合成する酵素(RNAポリメラーゼとして知られている)は遺伝子の近傍のDNAに結合する。プロモーターは、特異的DNA配列、ならびに、RNAポリメラーゼおよびRNAポリメラーゼを補充する転写因子のための初期結合部位を提供する応答エレメントを含有している。
【0038】
網膜は3種の光受容器:杆体細胞、錐体細胞、および光受容神経節細胞を含有している。錐体細胞には3つの種類:S-錐体細胞、M-錐体細胞、およびL-錐体細胞がある。S-錐体細胞は短波長光(ピークは420~440 nm付近)に最も強く反応し、また青錐体としても知られている。M-錐体細胞は中波長光(ピークは534~545 nm付近)に最も強く反応し、また緑錐体としても知られている。L-錐体細胞は長波長の光(ピークは564~580 nm付近)に最も強く反応し、また赤錐体としても知られている。これら3種類の錐体から受け取る信号の差により、あり得る全ての色を脳が知覚できるようになる。
【0039】
「導入遺伝子発現カセット」または「発現カセット」は、核酸ベクターにより標的細胞へ送達する予定の遺伝子配列を含む。これらの配列としては、目的とする遺伝子(例えば、CNGB3またはCNGA3核酸)、1つ以上のプロモーター、および最小調節エレメントが挙げられる。
【0040】
「最小調節エレメント」とは、標的細胞における遺伝子の効率的な発現に必要であり、またそれ故に導入遺伝子発現カセットに含まれているべき調節エレメントをいう。かかる配列としては、例えば、プロモーターまたはエンハンサー配列、プラスミドベクターへのDNA断片の挿入を容易にするポリリンカー配列、ならびにmRNA転写物のイントロンスプライシングおよびポリアデニル化に関与する配列を挙げることができる。1色覚のための遺伝子治療法の近年の例では、発現カセットにポリアデニル化部位、スプライシングシグナル配列、およびAAV逆方向末端反復配列の最小調節エレメントが含まれていた。例えば、Komaromyらを参照されたい。
【0041】
「核酸」または「核酸分子」とは、例えばDNA分子(例えば、cDNAもしくはゲノムDNA)などの、単量体ヌクレオチドの鎖から構成される分子をいう。核酸は、例えば、プロモーター、CNGB3もしくはCNGA3遺伝子またはその一部、または調節エレメントをコードしていてもよい。核酸分子は一本鎖または二本鎖でありうる。「CNGB3核酸」は、CNGB3遺伝子もしくはその一部、またはCNGB3遺伝子もしくはその一部の機能的変異体(functional variant)を含む核酸を指す。同様に、「CNGA3核酸」は、CNGA3遺伝子もしくはその一部、またはCNGA3遺伝子もしくはその一部の機能的変異体を含む核酸を指し、また「GNAT2核酸」は、GNAT2遺伝子もしくはその一部、またはGNAT2遺伝子もしくはその一部の機能的変異体を含む核酸を指す。遺伝子の機能的変異体には、例えば、サイレント突然変異、一塩基多型、ミスセンス突然変異、および遺伝子機能を有意に変化させることのない他の突然変異または欠失などの、軽微な変更を伴う該遺伝子の変異体が含まれる。
【0042】
「単離された」核酸分子(例えば、単離されたプロモーターなど)とは、該核酸の天然源に存在する他の核酸分子から分離された核酸分子をいう。例えば、ゲノムDNAに関して言えば、「単離された」という用語には、そのゲノムDNAが本来関連している染色体から分離された核酸分子が含まれる。好ましくは、「単離された」核酸分子は、該核酸分子が由来する生物のゲノムDNA内で該核酸分子に本来隣接している配列を含まない。
【0043】
II. 本発明の方法
本発明は、網膜の錐体細胞に影響を及ぼす遺伝病の治療に使用しうるプロモーター、発現カセット、ベクター、キット、および方法を提供する。網膜の錐体細胞に影響を及ぼす遺伝病としては、1色覚;レーバー先天性黒内障;錐体-杆体ジストロフィー;X連鎖性網膜色素変性症を含む網膜色素変性症;黄斑症;および加齢黄斑変性が挙げられる。好適な実施形態では、該疾患は1色覚である。
【0044】
1色覚は色覚障害である。3つの遺伝子における常染色体劣性突然変異または他のタイプの配列変化が、先天性1色覚の主な原因である。Pang, J.-J.ら (2010). Achromatopsia as a Potential Candidate for Gene Therapy. In Advances in Experimental Medicine and Biology, Volume 664, Part 6, 639-646 (2010)を参照されたい。1色覚は環状ヌクレオチド依存性チャネル(CNG)のαまたはβサブユニット(それぞれCNGA3およびCNGB3として知られている)のいずれかにおける突然変異と関係がある。1色覚と関係があるCNGA3遺伝子の突然変異は、Patel KAら、 Transmembrane S1 mutations in CNGA3 from achromatopsia 2 patients cause loss of function and impaired cellular trafficking of the cone CNG channel. Invest. Ophthalmol. Vis. Sci. 46 (7):2282-90. (2005)., Johnson Sら、Achromatopsia caused by novel mutations in both CNGA3 and CNGB3. J. Med. Genet. 41 (2):e20. (2004)., Wissinger Bら、CNGA3 mutations in hereditary cone photoreceptor disorders. Am. J. Hum. Genet. 69 (4):722-37.(2001)., およびKohl Sら、Total colourblindness is caused by mutations in the gene encoding the alpha-subunit of the cone photoreceptor cGMP-gated cation channel. Nat. Genet. 19 (3):257-9. (1998)に報告されている。1色覚と関係があるCNGB3遺伝子の突然変異は、Johnson Sら、Achromatopsia caused by novel mutations in both CNGA3 and CNGB3. J. Med. Genet. 41 (2):e20. (2004)., Peng Cら、Achromatopsia-associated mutation in the human cone photoreceptor cyclic nucleotide-gated channel CNGB3 subunit alters the ligand sensitivity and pore properties of heteromeric channels. J. Biol. Chem. 278 (36):34533-40 (2003)., Bright SRら、Disease-associated mutations in CNGB3 produce gain of function alterations in cone cyclic nucleotide-gated channels. Mol. Vis. 11:1141-50 (2005)., Kohl Sら、CNGB3 mutations account for 50% of all cases with autosomal recessive achromatopsia. Eur. J. Hum. Genet. 13 (3):302-8 (2005)., Rojas CVら、A frameshift insertion in the cone cyclic nucleotide gated cation channel causes complete achromatopsia in a consanguineous family from a rural isolate. Eur. J. Hum. Genet. 10 (10):638-42 (2002)., Kohl Sら、Mutations in the CNGB3 gene encoding the beta-subunit of the cone photoreceptor cGMP-gated channel are responsible for achromatopsia(ACHM3) linked to chromosome 8q21. Hum. Mol. Genet. 9 (14):2107-16 (2000)., Sundin OHら、Genetic basis of total colourblindness among the Pingelapese islanders. Nat. Genet. 25 (3):289-93 (2000)に報告されている。GNAT2として知られる錐体細胞トランスデューシンの遺伝子における配列変化もまた1色覚を引き起こす場合がある。Kohl Sら、Mutations in the cone photoreceptor G-protein alpha-subunit gene GNAT2 in patients with achromatopsia. Kokl Sら、Mutations in the cone photoreceptor G-protein alpha-subunit gene GNAT2 in patients with achromatopsia. Am J Hum Genet 71 (2):422-425 (2002) (以下、Kohlら)を参照されたい。これらのタンパク質における突然変異の程度は1色覚表現型の重症度と相関している。http://en.wikipedia.org/wiki/Achromatopsia。CNGB3における突然変異は1色覚の症例の約50%を占める。Kohlら。CNGA3における突然変異は症例の約23%を占め、またGNAT2における突然変異は症例の約2%を占める。
【0045】
「CNGB3遺伝子」とは、環状ヌクレオチド依存性チャネルβ3(CNGB3)をコードする遺伝子をいう。「CNGA3遺伝子」とは、環状ヌクレオチド依存性チャネルα3(CNGA3)をコードする遺伝子をいう。CNGB3遺伝子およびCNGA3遺伝子は網膜の錐体細胞で発現される。天然の網膜環状ヌクレオチド依存性チャネル(CNG)は、光伝達に決定的に関与している。CNGは2つのαサブユニットおよび2つのβサブユニットからなる陽イオンチャネルである。暗所では、錐体は比較的高濃度のサイクリックグアノシン3’-5’一リン酸(cGMP)を有し、このためCNGが開き、その結果脱分極および持続的なグルタミン酸放出が起きる。光曝露によりcGMPを分解するシグナル伝達経路が活性化する。cGMP濃度の低下によりCNGが閉じることで、陽イオンの流入が阻止され、細胞が過分極してグルタミン酸の放出が止まる。CNGB3遺伝子またはCNGA3遺伝子のいずれかにおける突然変異は、1色覚の原因となる錐体光受容器機能の欠陥を引き起こす可能性がある。CNGB3遺伝子における突然変異は、1色覚に加えて、進行性錐体ジストロフィーおよび若年性黄斑変性を含む他の疾患とも関連している。
【0046】
GNAT2遺伝子は、錐体特異的αトランスデューシンとしても知られるグアニンヌクレオチド結合タンパク質のα-2サブユニットをコードしている。グアニンヌクレオチド結合タンパク質(Gタンパク質)はα、β、およびγサブユニットからなる。光受容器においては、Gタンパク質は視覚信号の増幅および変換に重要である。GNAT2における様々なタイプの配列変化:ナンセンス突然変異、微小な欠失および/または挿入突然変異、フレームシフト突然変異、および広範な遺伝子内欠失がヒト1色覚を引き起こしうる。Pangら。
【0047】
現在のところ、1色覚のための有効な治療法は存在しない。動物試験により、1色覚および網膜の他の疾患を治療するために遺伝子治療を利用することが可能であると示唆された。劣性遺伝子の欠陥の場合、影響を受ける網膜細胞種に欠陥遺伝子の野生型コピーを送達することが目標となる。錐体細胞の幾つかのサブセットへ遺伝子を送達する能力は、例えば、Mauck, M. C.ら、Longitudinal evaluation of expression of virally delivered transgenes in gerbil cone photoreceptors. Visual Neuroscience 25(3):273-282 (2008)において証明されている。著者らは、組換えAAVベクターを使用することにより、特定の種類のスナネズミ錐体細胞において緑色蛍光タンパク質をコードするレポーター遺伝子の長期発現を達成しうることを示した。著者らはさらに、ヒト長波長オプシン遺伝子を特定のスナネズミ錐体に送達すると、長波長光に対する錐体の反応が得られることを証明した。
【0048】
他の研究により、組換えAAVベクターを用いる遺伝子治療を利用して、ヒトL-オプシン遺伝子をリスザルの網膜に導入することで二色型色覚のサルを三色型色覚のサルへと変化させうることが証明された。Mancuso, K.ら、Gene therapy for red-green colour blindness in adult primates. Nature 461:784-787 (2009)。網膜電位図により、導入された光色素は機能的であり、かつサルは行動試験において改善された色覚を示すことが実証された。
【0049】
遺伝子治療実験によりその錐体機能を回復させる能力が証明されている1色覚の動物モデルが幾つか存在する。Pangらを参照されたい。1つ目に、Gnat2cpfl3マウスは錐体特異的αトランスデューシン遺伝子に劣性突然変異を有し、そのため視力が低下しており、また錐体特異的ERT反応が殆どまたは全く見られない。野生型マウスGNAT2 cDNAおよびヒト赤錐体オプシンプロモーターを保持するAAV血清型5型ベクターの単回網膜下注射によるホモ接合Gnat2cpfl3マウスの処理により、錐体特異的ERG反応および視力が回復した。Alexanderら Restoration of cone vision in a mouse model of achromatopsia. Nat Med 13:685-687 (2007)(以下、Alexanderら)。2つ目に、cpfl5(錐体光受容器機能喪失5(Cone Photoreceptor Function Loss 5))マウスはCNGA3遺伝子に常染色体劣性ミスセンス突然変異を有し、錐体特異的ERG反応が見られない。野生型マウスCNGA3遺伝子およびヒト青錐体プロモーター(HB570)を保持するAAVベクターの網膜下注射によるcpfl5マウスの処理は、錐体特異的ERG反応の回復をもたらした。Pangら。3つ目に、昼間視力の喪失および網膜錐体機能の欠如を引き起こす自然発生CNGB3突然変異を有する、アラスカン・マラミュートというイヌが存在する。このタイプのイヌの場合、ヒトCNGB3 cDNAおよびヒト赤錐体オプシンプロモーターを含有するAAV5ベクターの網膜下注射により錐体特異的ERG反応が回復した。例えば、Komaromyらを参照されたい。
【0050】
遺伝子治療を利用する1色覚の治療のための以前の方法は、使用したプロモーターがある特定の種類の錐体細胞光受容器においてのみ導入遺伝子の発現を引き出したという事実により制限される。本発明のプロモーターは、ヒトに存在する全3種類の錐体細胞(S-錐体細胞、M-錐体細胞、およびL-錐体細胞)において遺伝子発現を駆動することができる。
【0051】
Komaromyらにより行われた研究のもう1つの制限は、利用する発現カセットの全体サイズ(5,230 bp)がAAV粒子の通常のパッケージング容量(<4.9 kb)をはるかに超えており;詰め込みすぎたrAAV粒子がそのrAAVパッケージング効率を著しく損ない、その結果、低い収率、より高い中空対完全粒子比、そして恐らくはベクターのより低い感染性をもたらしたということである。より短いバージョンの錐体赤オプシンプロモーター、または錐体アレスチンプロモーターを含有する発現カセットは、視機能を回復するにはそれ程有効ではなかった。本発明のプロモーターは、それらの短縮された長さゆえに、それらがhCNGB3発現カセットをAAV粒子に効率的にパッケージングするという利点を有する。通常のrAAVパッケージング容量内に収まるプロモーターは、改善された収率、より低い中空対完全粒子比、ベクターのより高い感染性、および最終的には、目的とする病気の治療に対するより高い有効性などの利益を提供する。
【0052】
III.本発明のプロモーター、発現カセット、核酸、およびベクター
本発明のプロモーター、CNGB3核酸、調節エレメント、および発現カセット、およびベクターは、当分野で公知の方法を利用して生産できる。以下に記載した方法は、かかる方法の非限定的な例として提供したものである。
【0053】
プロモーター
本発明は単離および/または末端切断されたプロモーターを提供する。幾つかの態様では、これらのプロモーターはPR2.1プロモーターのセグメントを含む。一実施形態では、プロモーターは末端切断されたPR2.1プロモーターである。
【0054】
本発明のプロモーターの幾つかの実施形態では、該プロモーターはS-錐体、M-錐体、およびL-錐体細胞における導入遺伝子の発現を促進することができる。「導入遺伝子」は、ある生物から単離されていて、かつ別の生物に導入される遺伝子配列を含有するDNAのセグメントを指す。例えば、ヒトCNGB3遺伝子の突然変異により生じた1色覚を有する者を治療するために、野生型の(すなわち、非変異型の、または機能的変異体である)ヒトCNGB3遺伝子を適当なベクターを使用して投与してもよい。この野生型遺伝子を「導入遺伝子」と称する。好適な実施形態では、該導入遺伝子は、網膜の錐体細胞で正常に発現されるタンパク質をコードする遺伝子の野生型バージョンである。かかる実施形態の1つではは、該導入遺伝子はヒト遺伝子に由来する。第1の具体的な実施形態では、前記プロモーターはS-錐体、M-錐体、およびL-錐体細胞におけるCNGB3核酸の発現を促進することができる。第2の具体的な実施形態では、前記プロモーターはS-錐体、M-錐体、およびL-錐体細胞におけるCNGA3核酸の発現を促進することができる。第3の具体的な実施形態では、前記プロモーターはS-錐体、M-錐体、およびL-錐体細胞におけるGNAT2核酸の発現を促進することができる。これら3つの具体的な実施形態では、CNGB3、CNGA3、またはGNAT2は、好ましくはヒトCNGB3、CNGA3、またはGNAT2である。
【0055】
別の態様では、本発明は、PR2.1プロモーターの短縮バージョンであるプロモーターを提供する。かかるプロモーターは、それらがAAV粒子のパッケージング容量内により上手く収まるという利点を有しており、またそれ故に、例えば、改善された収率、より低い中空対完全粒子比、および該ベクターのより高い感染性などの利点を提供する。幾つかの実施形態では、これらのプロモーターを、PR2.1の5’末端またはPR2.1の3’末端を切断することにより作出する。かかる実施形態の幾つかではは、末端切断の長さは、約300bp、500bp、および1,100 bp(例えば、PR1.7、PR1.5、およびPR1.1をそれぞれ参照されたい)からなる群より選択される。
【0056】
発現カセット
別の態様では、本発明は、(a)本発明のプロモーター;(b)CNGB3核酸、CNGA3核酸、およびGNAT2核酸からなる群より選択される核酸;ならびに(c)最小調節エレメント、を含む導入遺伝子発現カセットを提供する。本発明のプロモーターとしては、上記で検討したプロモーターが挙げられる。
【0057】
「CNGB3核酸」は、CNGB3遺伝子もしくはその一部、またはCNGB3遺伝子もしくはその一部の機能的変異体を含む核酸を指す。同様に、「CNGA3核酸」は、CNGA3遺伝子もしくはその一部、またはCNGA3遺伝子もしくはその一部の機能的変異体を含む核酸を指し、また「GNAT2核酸」は、GNAT2遺伝子もしくはその一部、またはGNAT2遺伝子もしくはその一部の機能的変異体を含む核酸を指す。遺伝子の機能的変異体には、例えば、サイレント突然変異、一塩基多型、ミスセンス突然変異、および遺伝子機能を有意に変化させることのない他の突然変異または欠失などの、軽微な変更を伴う該遺伝子の変異体が含まれる。
【0058】
ある特定の実施形態では、前記核酸はヒト核酸(すなわち、ヒトCNGB3、CNGA3、またはGNAT2遺伝子に由来する核酸)である。他の実施形態では、前記核酸は非ヒト核酸(すなわち、非ヒトCNGB3、CNGA3、またはGNAT2遺伝子に由来する核酸)である。
【0059】
「最小調節エレメント」とは、標的細胞における遺伝子の効率的な発現に必要な調節エレメントをいう。かかる調節エレメントとしては、例えば、プロモーターまたはエンハンサー配列、プラスミドベクター内へのDNA断片の挿入を容易にするポリリンカー配列、ならびにmRNA転写物のイントロンスプライシングおよびポリアデニル化に関与する配列を挙げることができる。1色覚のための遺伝子治療法の近年の例では、発現カセットに、ポリアデニル化部位、スプライシングシグナル配列、およびAAV逆方向末端反復配列の最小調節エレメントが含まれていた。例えば、Komaromyらを参照されたい。また本発明の発現カセットは、場合によっては、標的細胞への遺伝子の効率的な組み込みに必要ではない追加の調節エレメントを含んでいてもよい。
【0060】
ベクター
本発明は、前節で検討した発現カセットのうちのいずれか1つを含むベクターもまた提供する。幾つかの実施形態では、該ベクターは前記発現カセットの配列を含むオリゴヌクレオチドである。具体的な実施形態では、該オリゴヌクレオチドの送達を、in vivoエレクトロポレーション(例えば、Chalberg, TWら、phiC31 integrase confers genomic integration and long-term transgene expression in rat retina. Investigative Ophthalmology &Visual Science, 46, 2140-2146 (2005)(以下、Chalbergら、2005)を参照されたい)または電子雪崩法によるトランスフェクション(例えば、Chalberg, TWら、Gene transfer to rabbit retina with electron avalanche transfection. Investigative Ophthalmology &Visual Science, 47, 4083-4090 (2006)(以下、Chalbergら、2006)を参照されたい)により達成してもよい。さらなる実施形態では、前記ベクターは、DNA凝集ペプチド(DNA-compacting peptide)(例えば、Farjo, Rら、Efficient non-viral ocular gene transfer with compacted DNA nanoparticles. PLoS ONE, 1, e38 (2006)(以下、Farjoら、2006)(この文献中では、ポリエチレングリコールに結合するシステイン残基とそれに続く30個のリジンを含有するペプチドであるCK30を、光受容器への遺伝子導入のために使用している)を参照されたい)、細胞透過特性を持つペプチド(Johnson, LNら、Cell-penetrating peptide for enhanced delivery of nucleic acids and drugs to ocular tissues including retina and cornea. Molecular Therapy, 16(1), 107-114 (2007)(以下、Johnsonら、2007)、Barnett, EMら、Selective cell uptake of modified Tat peptide-fluorophore conjugates in rat retina in ex vivo and in vivo models. Investigative Ophthalmology & Visual Science, 47, 2589-2595 (2006)(以下、Barnettら、2006)、Cashman, SMら、Evidence of protein transduction but not intercellular transport by protein fused to HIV tat in retina cell culture and in vivo. Molecular Therapy, 8, 130-142 (2003)(以下、Cashmanら、2003)、Schorderet, DFら、D-TAT transporter as an ocular peptide delivery system. Clinical and Experimental Ophthalmology, 33, 628-635 (2005)(以下、Schorderetら、2005)、眼の細胞へのペプチド送達の具体例についてはKretz, Aら、HSV-1 VP22 augments adenoviral gene transfer to CNS neurons in the retina and striatum in vivo. Molecular Therapy, 7, 659-669 (2003)(以下、Kretzら 2003)を参照されたい)、またはDNAを封入したリポプレックス、ポリプレックス、リポソーム、もしくはイムノリポソーム(例えば、Zhang, Yら、Organ-specific gene expression in the rhesus monkey eye following intravenous nonviral gene transfer. Molecular Vision, 9, 465-472 (2003)(以下、Zhangら 2003)、Zhu, Cら、Widespread expression of an exogenous gene in the eye after intravenous administration. Investigative Ophthalmology & Visual Science, 43, 3075-3080 (2002)(以下、Zhuら 2002)、Zhu, C.ら、Organ-specific expression of the lacZ gene controlled by the opsin promoter after intravenous gene administration in adult mice. Journal of Gene Medicine, 6, 906-912. (2004)(以下、Zhuら 2004)を参照されたい)である。
【0061】
好適な実施形態では、前記ベクターは、ウイルスベクター、例えば、アデノ随伴ウイルス、アデノウイルス、レトロウイルス、レンチウイルス、ワクシニア/ポックスウイルス、またはヘルペスウイルス(例えば、単純ヘルペスウイルス(HSV))に由来するベクターである。例えば、Howarthを参照されたい。最も好適な実施形態では、前記ベクターはアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである。
【0062】
12のヒト血清型(AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、およびAAV12)ならびに非ヒト霊長類動物からの100を超える血清型を含む、アデノ随伴ウイルス(AAV)の多数の血清型が現在同定されている。Howarth JLら、Using viral vectors as gene transfer tools. Cell Biol Toxicol 26:1-10 (2010)(以下、Howarthら)。ベクターがAAVベクターである本発明の実施形態では、該AAVベクターの逆方向末端反復配列(ITR)の血清型をあらゆる公知のヒトまたは非ヒトAAV血清型から選択してもよい。好適な実施形態では、前記AAVベクターのAAV ITRの血清型は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、およびAAV12からなる群より選択される。さらに、前記ベクターがAAVベクターである本発明の実施形態では、該AAVベクターのカプシド配列の血清型をあらゆる公知のヒトまたは動物AAV血清型から選択してもよい。幾つかの実施形態では、該AAVベクターのカプシド配列の血清型は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、およびAAV12からなる群より選択される。好適な実施形態では、該カプシド配列の血清型はAAV5である。前記ベクターがAAVベクターである幾つかの実施形態では、偽型化(pseudotyping)アプローチを用いるが、この場合はあるITR血清型のゲノムが別の血清型のカプシドにパッケージングされる。例えば、Zolutuhkin S.ら Production and purification of serotype 1,2, and 5 recombinant adeno-associated viral vectors. Methods 28(2):158-67 (2002)を参照されたい。好適な実施形態では、AAVベクターのAAV ITRの血清型およびAAVベクターのカプシド配列の血清型は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、およびAAV12からなる群より独立して選択される。
【0063】
前記ベクターがrAAVベクターである本発明の幾つかの実施形態では、変異カプシド配列を用いる。変異カプシド配列だけでなく、他の技術(例えば、合理的突然変異誘発、ターゲッティングペプチドの操作、キメラ粒子の作成、ライブラリおよび定向進化によるアプローチ、ならびに免疫回避修飾)もまた、免疫回避および増強された治療効果を達成することなどを目的として、本発明においてAAVベクターを最適化するために用いることができる。例えば、Mitchell A.M.ら AAV’s anatomy:Roadmap for optimizing vectors for translational success. Curr Gene Ther. 10(5):319-340を参照されたい。
【0064】
本発明の核酸の作製
本発明の核酸分子(例えば、プロモーター、CNGB3核酸、CNGA3核酸、GNAT2核酸、または調節エレメントを含む)は、標準的な分子生物学的技術を利用して単離することができる。目的とする核酸配列の全部または一部をハイブリダイゼーションプローブとして使用すれば、標準的なハイブリダイゼーションおよびクローニング技術(例えば、Sambrook, J., Fritsh, E. F.,およびManiatis, T. Molecular Cloning. A Laboratory Manual. 2nd,ed., Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., 1989に記載されている技術)を利用して核酸分子を単離することができる。
【0065】
本発明の方法に使用するための核酸分子は、目的とする核酸分子の配列を基に設計した合成オリゴヌクレオチドプライマーを使用してポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により単離することもできる。本発明の方法に使用する核酸分子は、標準的なPCR増幅技術に従い、鋳型としてのcDNA、mRNAまたは、あるいは、ゲノムDNA、および適当なオリゴヌクレオチドプライマーを使用して増幅することができる。
【0066】
さらに、目的とするヌクレオチド配列に対応するオリゴヌクレオチドは、標準的な技術を利用して化学的に合成することもできる。ポリデオキシヌクレオチドを化学的に合成する数多くの方法が公知であり、例として、市販のDNA合成装置で自動化されている固相合成(例えば、Itakuraらの米国特許第4,598,049号;Caruthersらの米国特許第4,458,066号;ならびにItakuraの米国特許第4,401,796号および第4,373,071号を参照されたい(これらの文献は、参照により本明細書中に組み入れるものとする))が挙げられる。合成オリゴヌクレオチドを設計するための自動化された方法が利用可能である。例えば、Hoover, D.M. & Lubowski, J. Nucleic Acids Research, 30(10):e43 (2002)を参照されたい。
【0067】
本発明の多くの実施形態はCNGB3核酸、CNGA3核酸、またはGNAT2核酸に関係している。本発明の幾つかの態様および実施形態は、単離されたプロモーターまたは調節エレメントなどの他の核酸に関係している。核酸は、例えば、cDNAまたは化学的に合成した核酸であってもよい。cDNAは、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を利用した増幅により、または適当なcDNAライブラリーをスクリーニングすることにより取得することができる。あるいは、核酸を化学的に合成してもよい。
【0068】
IV. 本発明の方法およびキット
治療の方法
本発明は、網膜錐体細胞に影響を及ぼす遺伝子の突然変異、置換、または欠失に関連する疾患を治療するための方法を提供し、ここで該方法は、かかる治療を必要とする対象に本発明のプロモーターのうちの1つを含むベクターを投与し、それによって該対象を治療することを含むものとする。好適な実施形態では、該疾患は1色覚である。網膜錐体細胞に影響を及ぼす遺伝子の突然変異、置換、または欠失に関連する他の疾患としては、1色覚、レーバー先天性黒内障、錐体-杆体ジストロフィー、黄斑症、加齢黄斑変性、およびX連鎖性網膜色素変性症を含む網膜色素変性症が挙げられる。
【0069】
本発明はさらに、1色覚を治療するための方法であって、本発明のベクターのいずれかをかかる治療を必要とする対象に投与し、それによって該対象を治療することを含む上記方法を提供する。
【0070】
本発明の方法により治療すべき「対象」は、ヒトまたは非ヒト動物のいずれかを意味しうる。「非ヒト動物」には、あらゆる脊椎生物または無脊椎生物が含まれる。幾つかの実施形態では、非ヒト動物は、網膜疾患の動物モデル、または特に1色覚の動物モデルである。例えば、Pangら、Alexanderら、Komaromyらを参照されたい。様々な大型動物モデルが、網膜におけるAAV媒介遺伝子治療の研究に利用可能である。Stieger K.ら、AAV-mediated gene therapy for retinal disorders inlarge animal models. ILAR J. 50(2):206-224 (2009)。本発明のプロモーターについては上に記載した。疾患(例えば、1色覚など)を「治療する」とは、該疾患の少なくとも1つの徴候もしくは症候を緩和すること、予防すること、またはその発現を遅らせることを意味する。疾患の「徴候」とは、他者により観察されうるか、または例えば網膜電図検査法もしくは行動試験などの客観的方法により測定しうる疾患の所見をいう。疾患の「症候」とは、対象により主観的に知覚される該疾患の特徴をいう。
【0071】
これらの2つの治療方法のいずれにおいても、前記ベクターは当分野で公知のあらゆるタイプのベクターでありうる。幾つかの実施形態では、前記ベクターは非ウイルスベクター、例えば、裸のDNAプラスミド、オリゴヌクレオチド(例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド、小分子RNA(siRNA)、二本鎖オリゴデオキシヌクレオチド、または一本鎖DNAオリゴヌクレオチドなど)である。オリゴヌクレオチドベクターに関係する具体的な実施形態では、送達を、in vivoエレクトロポレーション(例えば、Chalbergら、2005を参照されたい)または電子雪崩法によるトランスフェクション(例えば、Chalbergら、2006を参照されたい)により達成してもよい。さらなる実施形態では、前記ベクターは、場合によっては水溶性高分子に封入されていてもよいデンドリマー/DNA複合体、DNA凝集ペプチド(例えば、Farjoら 2006(この文献中では、ポリエチレングリコールに結合するシステイン残基とそれに続く30個のリジンを含有するペプチドであるCK30を、光受容器への遺伝子導入のために使用している)を参照されたい)、細胞透過特性を持つペプチド(Johnsonら、2007;Barnettら、2006;Cashmanら、2003;Schorderら、2005;眼の細胞へのペプチド送達の具体例に関してはKretzら、2003を参照されたい)、またはDNAを封入したリポプレックス、ポリプレックス、リポソーム、もしくはイムノリポソーム(例えば、Zhangら 2003;Zhuら 2002;Zhuら 2004を参照されたい)である。多くのさらなる実施形態では、前記ベクターはウイルスベクター、例えば、アデノ随伴ウイルス、アデノウイルス、レトロウイルス、レンチウイルス、ワクシニア/ポックスウイルス、またはヘルペスウイルス(例えば、単純ヘルペスウイルス(HSV))に由来するベクターである。例えば、Howarthを参照されたい。好適な実施形態では、前記ベクターはアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである。
【0072】
本発明の治療の方法では、ベクターの投与を当分野で公知のあらゆる手段により達成することができる。好適な実施形態では、該投与は網膜下注射による。ある特定の実施形態では、網膜下注射を、錐体密度が特に高い1つ以上の領域に優先的に(例えば、視神経乳頭に優先して壁板網膜層(tapetal zone)に)行う。他の実施形態では、投与は眼内注射、硝子体内注射、または静脈内注射による。網膜へのベクターの投与は一側または両側であってもよく、また該投与を全身麻酔を利用して、または利用せずに達成してもよい。
【0073】
本発明の治療の方法では、送達するベクターの量は、治療を受ける対象の特性、例えば、該対象の年齢および該ベクターを送達すべき部位の容積に基づいて決定してもよい。眼の大きさおよび網膜下腔の容積は個体間で異なり、また対象の年齢と共に変化しうることが知られている。ベクターを網膜下に投与する実施形態では、ベクター量を、網膜下腔の全てもしくは一定割合をカバーすることを目的として、または特定数のベクターゲノムが送達されるように、選択してもよい。
【0074】
本発明の治療の方法では、投与するベクターの濃度は生産方法に応じて異なっていてもよく、また特定の投与経路に対して治療上有効であると判定した濃度に基づいて選択または最適化してもよい。幾つかの実施形態では、1ミリリットル当たりのベクターゲノムの濃度(vg/mL)は、約108 vg/mL、約109 vg/mL、約1010 vg/mL、約1011 vg/mL、約1012 vg/mL、約1013 vg/mL、および約1014 vg/mLからなる群より選択される。好適な実施形態では、該濃度は1010vg/mL~1013 vg/mLの範囲内であり、約0.1 mL、約0.2 mL、約0.4 mL、約0.6 mL、約0.8 mL、および約1.0 mLの量で網膜下注射または硝子体内注射により送達される。
【0075】
キット
本発明はキットも提供する。ある態様では、本発明のキットは、(a)本発明のプロモーターのうちのいずれか1つを含むベクターおよび(b)その使用のための説明書を含む。別の態様では、本発明のキットは、(a)本発明のベクターのうちのいずれか1つ、および(b)その使用のための説明書を含む。本発明のプロモーターおよびベクターについては上に記載した。幾つかの実施形態では、本発明のベクターは、上に記載したような非ウイルスベクターまたはウイルスベクターを含む、当分野で公知のあらゆるタイプのベクターであってもよい。好適な実施形態では、該ベクターはウイルスベクター、例えば、アデノ随伴ウイルス、アデノウイルス、レトロウイルス、レンチウイルス、ワクシニア/ポックスウイルス、またはヘルペスウイルス(例えば、単純ヘルペスウイルス(HSV))に由来するベクターである。最も好適な実施形態では、該ベクターはアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである。
【0076】
前記キットに添付する説明書は、どのように前記プロモーターをベクターに組み込めるか、またはどのように前記ベクターを治療目的で、例えば、網膜錐体細胞に影響を及ぼす遺伝子の突然変異、置換、もしくは欠失に関連する疾患を治療するために投与できるかを説明するものであってもよい。前記キットが治療目的で使用すべきものである幾つかの実施形態では、その説明書には推奨される用量および投与経路に関する詳細情報が含まれている。
【0077】
組換えアデノ随伴ウイルスベクター(AAVベクター)を作製する方法
本発明は、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターを作製する方法であって、アデノ随伴ウイルスベクターに、本発明のプロモーター(上に記載したもの)のうちのいずれか1つならびにCNGB3核酸、CNGA3核酸、およびGNAT2核酸からなる群より選択される核酸(同じく上に記載したもの)を挿入することを含む上記方法もまた提供する。幾つかの実施形態では、該核酸はヒト核酸、すなわち、ヒトCNGB3、CNGAもしくはGNAT遺伝子に由来する核酸、またはその機能的変異体である。代替的実施形態では、該核酸は非ヒト遺伝子由来の核酸である。
【0078】
本発明により提供されるrAAVベクターを作製する方法では、前記AAVベクターのカプシド配列の血清型およびITRの血清型は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、およびAAV12からなる群より独立して選択される。従って、本発明は偽型化アプローチを利用するベクターを包含するものであり、この場合はあるITR血清型のゲノムが別の血清型のカプシドにパッケージングされる。例えば、Daya S.およびBerns, K.I., Gene therapy using adeno-associated viral vectors. Clinical Microbiology Reviews, 21(4):583-593 (2008)(以下、Dayaら)を参照されたい。さらに、幾つかの実施形態では、前記カプシド配列は変異カプシド配列である。
【0079】
AAVベクター
AAVベクターは、初めはアデノウイルス調製物の混入物質とみなされていたためにその名を持つアデノ随伴ウイルスに由来する。AAVベクターは他のタイプのベクターに比べて数多くの周知の利点を提示する:野生型株は疾患の所見または副作用を呈することなくヒトおよび非ヒト霊長類動物に感染する;AAVカプシドは、ウイルスの精製および濃縮の厳密な方法を可能にする高い化学的および物理的安定性と併せて非常に低い免疫原性を示す;AAVベクターによる形質導入は有糸分裂後の非分裂細胞における持続的な導入遺伝子発現を導き、かつ長期に渡る機能獲得を実現する;またAAVのサブタイプおよび変異株の多様性は、選択した組織および細胞型を標的化する可能性を提示する。Heilbronn R & Weger S, Viral Vectors for Gene Transfer:Current Status of Gene Therapeutics, in M. Schafer-Korting (ed.), Drug Delivery, Handbook of Experimental Pharmacology, 197:143-170 (2010) (以下、Heilbronn)。AAVベクターの主要な制限は、AAVが一本鎖DNAを含有する従来のベクターに限られた導入遺伝子容量(<4.9 kb)しか与えないということである。
【0080】
AAVは、正二十面体で直径20nmのカプシドに包まれた、エンベロープを持たない小型の一本鎖DNA含有ウイルスである。AAVの初期の研究の大半では、ヒト血清型AAV2が使用されていた。Heilbronn。AAVは、2つのオープンリーディングフレームrepおよびcap(「rep」は複製、また「cap」はカプシドを指す)を有する4.7 kbの直鎖状一本鎖DNAゲノムを含有している。repは4種の重複する(overlapping)非構造タンパク質:Rep78、Rep68、Rep52、およびRep40をコードしている。Rep78およびRep69は、ヘアピン構造の逆方向末端反復配列(ITR)におけるAAV DNA複製の開始(AAVベクターの生産に必須の段階)を含む、AAVの生活環の殆どの段階に必要である。cap遺伝子は3つのカプシドタンパク質、VP1、VP2、およびVP3をコードしている。repおよびcapは、145 bpのITRに挟まれている。該ITRはDNA複製起点およびパッケージングシグナルを含有しており、またそれらは染色体への組み込みを媒介する役割を果たす。該ITRは、通常は、AAVベクター構築時に維持される唯一のAAV要素である。
【0081】
複製を達成するためには、AAVをヘルパーウイルスと共に標的細胞に同時感染させなければならない。Grieger JC & Samulski RJ, Adeno-associated virus as a gene therapy vector:Vector development, production, and clinical applications. Adv Biochem Engin/Biotechnol 99:119-145 (2005)。典型的には、ヘルパーウイルスはアデノウイルス(Ad)または単純ヘルペスウイルス(HSV)のいずれかである。ヘルパーウイルスの非存在下では、AAVはヒト第19染色体上の部位に組み込まれることにより潜伏感染を成立させることができる。AAVを潜伏感染させた細胞のAdまたはHSV感染により、組み込まれたゲノムがレスキューされ、増殖性感染が開始される。ヘルパー機能に必要な4つのAdタンパク質はE1A、E1B、E4、およびE2Aである。加えて、Adウイルス関連(VA)RNAの合成が必要である。ヘルペスウイルスもまた増殖性AAVの複製のためのヘルパーウイルスとして機能しうる。ヘリカーゼ-プライマーゼ複合体(UL5、UL8、およびUL52)ならびにDNA結合タンパク質(UL29)をコードする遺伝子は、HSVヘルパー作用を媒介するのに十分であることが見出されている。rAAVベクターを用いる本発明の幾つかの実施形態では、該ヘルパーウイルスはアデノウイルスである。rAAVベクターを用いる他の実施形態では、該ヘルパーウイルスはHSVである。
【0082】
組換えAAV(rAAV)ベクターの作製
本発明のrAAVベクターの生産、精製、および特徴付けは、当分野で公知の多くの方法のいずれかを利用して実施することができる。実験室規模の生産方法の概観については、例えば、Clark RK, Recent advances in recombinant adeno-associated virus vector production. Kidney Int. 61s:9-15 (2002);Choi VWら、Production of recombinant adeno-associated viral vectors for in vitro and in vivo use. Current Protocols in Molecular Biology 16.25.1-16.25.24 (2007)(以下、Choiら);Grieger JC & Samulski RJ, Adeno-associated virus as a gene therapy vector:Vector development, production, and clinical applications. Adv Biochem Engin/Biotechnol 99:119-145 (2005)(以下、Grieger & Samulski);Heilbronn R & Weger S, Viral Vectors for Gene Transfer:Current Status of Gene Therapeutics, in M. Schafer-Korting (ed.), Drug Delivery, Handbook of Experimental Pharmacology, 197:143-170 (2010)(以下、Heilbronn);Howarth JLら、Using viral vectors as gene transfer tools. Cell Biol Toxicol 26:1-10 (2010)(以下、Howarth)を参照されたい。以下に記載した生産方法は、非限定的な例を意図したものである。
【0083】
AAVベクターの生産は、パッケージングプラスミドのコトランスフェクションにより達成してもよい。Heilbronn。その細胞株により、欠失AAV遺伝子repおよびcapならびに所要のヘルパーウイルス機能が供給される。アデノウイルスのヘルパー遺伝子、VA-RNA、E2AおよびE4を、AAVのrepおよびcap遺伝子と共に、2つの別個のプラスミドで、または単一ヘルパー構築物でトランスフェクトする。AAVカプシド遺伝子をITRで挟まれた導入遺伝子発現カセット(目的とする遺伝子、例えば、CNGB3核酸;プロモーター;および最小調節エレメントを含む)で置換した組換えAAVベクタープラスミドもまたトランスフェクトする。これらのパッケージングプラスミドを、典型的には、残りの所要のAdヘルパー遺伝子E1AおよびE1Bを構成的に発現するヒト細胞株である293細胞にトランスフェクトする。これにより、目的とする遺伝子を保持するAAVベクターの増幅およびパッケージングが生じる。
【0084】
12のヒト血清型および非ヒト霊長類動物からの100を超える血清型を含む、AAVの多数の血清型が現在同定されている。Howarthら。本発明のAAVベクターは、あらゆる公知の血清型のAAVに由来するカプシド配列を含んでいてもよい。本明細書中で使用する場合、「公知の血清型」には、当分野で公知の方法を利用して生産しうるカプシド変異体が含まれる。かかる方法としては、例えば、ウイルスのカプシド配列の遺伝子操作、異なる血清型を有する複数のカプシド領域の露出面のドメインスワッピング、およびマーカーレスキューなどの技術を利用したAAVキメラの作成が挙げられる。Bowlesら、Marker rescue of adeno-associated virus(AAV) capsid mutants:A novel approach for chimeric AAV production. Journal of Virology, 77(1):423-432 (2003)、ならびにこの文献中に引用されている参考文献を参照されたい。さらに、本発明のAAVベクターは、あらゆる公知の血清型のAAVに由来するITRを含んでいてもよい。優先的には、該ITRはヒト血清型AAV1~AAV12のうちの1つに由来する。本発明の幾つかの実施形態では、偽型化アプローチを利用するが、この場合はあるITR血清型のゲノムが別の血清型のカプシドにパッケージングされる。
【0085】
優先的には、本発明に用いるカプシド配列は、ヒト血清型AAV1~AAV12のうちの1つに由来するものである。AAV5血清型のカプシド配列を含有する組換えAAVベクターは、in vivoで網膜細胞を標的化することが証明されている。例えば、Komaromyらを参照されたい。従って、本発明の好適な実施形態では、前記AAVベクターのカプシド配列の血清型はAAV5である。他の実施形態では、前記AAVベクターのカプシド配列の血清型は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、またはAAV12である。該カプシド配列の血清型が網膜細胞を本来標的化していない場合でも、特異的組織標的化の他の方法を用いることができる。Howarthらを参照されたい。例えば、組換えAAVベクターは、特にAAV三次元構造のループアウト領域内のウイルスのカプシド配列の遺伝子操作により、または異なる血清型を有する複数のカプシド領域の露出面のドメインスワッピングにより、またはマーカーレスキューなどの技術を利用したAAVキメラの作成により、直接的に標的化させることができる。Bowlesら、Marker rescue of adeno-associated virus(AAV) capsid mutants:A novel approach for chimeric AAV production. Journal of Virology, 77(1):423-432 (2003)、ならびにこの文献中に引用されている参考文献を参照されたい。
【0086】
組換えAAV(rAAV)ベクターの生産、精製、および特徴付けのための1つの可能なプロトコルがChoiらに示されている。一般に、次のステップ:導入遺伝子発現カセットを設計するステップ、特異的受容体を標的化するためのカプシド配列を設計するステップ、アデノウイルスフリーのrAAVベクターを作成するステップ、精製するステップおよび力価を測定するステップ、が含まれる。これらのステップを以下に要約するが、Choiらにも詳細に記載されている。
【0087】
導入遺伝子発現カセットは、一本鎖AAV(ssAAV)ベクターまたは疑似二本鎖(pseudo-double-stranded)導入遺伝子としてパッケージングされている「二量体型」もしくは自己相補型AAV(scAAV)ベクターであってもよい。Choiら;Heilbronn;Howarth。従来のssAAVベクターを使用すると、一本鎖AAV DNAの二本鎖DNAへの変換が必要とされるため、通常は遺伝子発現の開始が遅くなる(導入遺伝子発現のプラトーに達するまでに数日から数週間)。対照的に、scAAVベクターは静止細胞の形質導入後数日以内にプラトーに達する遺伝子発現の開始を数時間以内に示す。Heilbronn。しかし、scAAVベクターのパッケージング容量は従来のssAAVベクターの容量の約半分である。Choiら。あるいは、導入遺伝子発現カセットを2つのAAVベクターに分けてもよく、それによって、より長い構築物の送達が可能となる。例えば、Dayaらを参照されたい。ssAAVベクターは、適当なプラスミド(例えば、hCNGB3遺伝子を含有するプラスミドなど)を制限エンドヌクレアーゼを用いて消化することでrepおよびcap断片を除去し、さらにAAVwt-ITRを含有するプラスミド骨格をゲル精製することにより、構築することができる。Choiら。続いて、所望の導入遺伝子発現カセットを適当な制限部位の間に挿入することにより、一本鎖rAAVベクタープラスミドを構築することができる。scAAVベクターはChoiらに記載された通りに構築することができる。
【0088】
その後、rAAVベクターならびに適切なAAVヘルパープラスミドおよびpXX6 Adヘルパープラスミドの大規模プラスミド調製物(少なくとも1 mg)を、二重CsCl勾配分画により精製することができる。Choiら。適切なAAVヘルパープラスミドはpXRシリーズ(pXR1~pXR5)から選択してもよく、これらはそれぞれがAAV血清型1~5型のカプシドへのAAV2 ITRゲノムのクロスパッケージングを可能にする。適当なカプシドは、目的とする細胞のカプシドによる標的化の効率を基に選択してもよい。例えば、本発明の好適な実施形態では、rAAVベクターのカプシド配列の血清型はAAV5であるが、これはこのタイプのカプシドが網膜細胞を効率的に標的化することが知られているからである。ゲノム(すなわち、導入遺伝子発現カセット)長およびAAVカプシドを変更する公知方法を用いることにより、特定の細胞型(例えば、網膜錐体細胞)における発現および/または該細胞型への遺伝子導入を改善できる。例えば、Yang GS, Virus-mediated transduction of murine retina with adeno-associated virus:Effects of viral capsid and genome size. Journal of Virology, 76(15):7651-7660を参照されたい。
【0089】
次に、293細胞にpXX6ヘルパープラスミド、rAAVベクタープラスミド、およびAAVヘルパープラスミドをトランスフェクトする。Choiら。続いて、分取した細胞溶解物を多段階プロセスのrAAV精製に供し、その後CsCl勾配精製またはヘパリンセファロースカラム精製に供する。rAAVビリオンの生産および定量は、ドットブロット法を利用して判定してもよい。細胞培養物へのrAAVのin vitro形質導入を利用することにより、ウイルスの感染性および発現カセットの機能性を確認することができる。
【0090】
Choiらに記載されている方法に加えて、AAVの生産のための様々な他のトランスフェクション法を本発明に関して使用してもよい。例えば、リン酸カルシウム沈殿プロトコルに基づく方法を含む、一過性トランスフェクション法が利用可能である。
【0091】
rAAVベクターを生産するための実験室規模の方法に加えて、本発明では、例えばHeilbronn;Clement, N.ら、Large-scale adeno-associated viral vector production using herpesvirus-based system enables manufacturing for clinical studies. Human Gene Therapy, 20:796-606を含む、AAVベクターのバイオリアクター規模の製造のための当分野で公知の技術を利用してもよい。
【0092】
本発明を下記実施例によりさらに説明するが、これをさらなる限定と解釈すべきではない。本出願を通して引用した全ての数字ならびに全ての参考文献、特許および公開特許出願の記載内容、ならびに図面は、それらの全内容が参照により本明細書中に明確に組み込まれるものとする。
【実施例
【0093】
実施例1:PR2.1プロモーターのより短いバージョンの作出および試験
材料および方法
図2は、AAV末端反復(TR)、PR2.1プロモーターおよびhCMGB3導入遺伝子を含むプロウイルスプラスミドの模式図を示す。PR2.1プロモーターを、PR2.1の5’末端からの末端切断を行うことにより短縮した。PR2.1の500 bpのコアプロモーターおよび600 bpの遺伝子座調節領域(LCR)は無傷のまま残した。該PR2.1プロモーターの3つの短縮バージョン:PR1.7、PR1.5、およびPR1.1を作出した。PR1.7、PR1.5、およびPR1.1はそれぞれ、PR2.1をその5’末端で約300 bp、500 bp、および1,100 bp切断することにより作出した。
配列番号1はPR1.1プロモーターに該当する。
配列番号2はPR1.5プロモーターに該当する。
配列番号3はPR1.7プロモーターに該当する。
配列番号4はPR2.1プロモーターに該当する。
【0094】
CMVエンハンサーを該PR1.1の5’末端に付加することによりハイブリッドプロモーターを作出した。これらのプロモーターの各々を含有するプロウイルスプラスミドを、図3に示す通りに作出した。これらのプロウイルスプラスミド(p)は、AAV末端反復配列(TR)、合成プロモーター(PR2.1-syn)またはその末端切断物、場合によってはCMVエンハンサー(CMVenh)、および緑色蛍光タンパク質(GFP)導入遺伝子を含んでいた。次の4つのプロウイルスプラスミド:
(1) pTR-PR2.1syn-GFP
(2) pTR-PR1.8-GFP
(3) pTR-PR1.6-GFP
(4) pTR-CMVenh-PR1.1-GFP
を構築し、その配列を決定した。
【0095】
pTR-PR2.1syn-GFPを構築するために、先ず親プラスミドpTR-CMVenh-hGFPをpTR-CBA-hRS1から、そのCBA配列およびhRS1配列をhGFP配列で置換することにより構築した。ヒトGFP(hGFP)DNA配列を、その起源から両端にエンドヌクレアーゼ制限部位(Not IおよびBspHI)を有するオリゴヌクレオチドプライマーを用いてPCR増幅し、Not I/BspHIで消化した後、ニワトリβアクチンプロモーターおよびhRS1を含む全ての不要なDNA配列(ただしCMVエンハンサーは含まない)を除去するためにNotI/NcoIで消化しておいたpTR-CBA-hRS1プラスミドに連結した。その結果得られたプラスミドpTR-CMVenh-hGFPは、CMVエンハンサー、hGFPオープンリーディングフレーム(ORF)、およびAAV2 ITRに挟まれたSV40ポリ(A)配列を含有していた。PR2.1のDNA配列は、ヒト赤色錐体オプシンのDNA配列の5’側に基づいて合成した(Wang Y.ら、A locus control region adjacent to the human red and green visual pigment genes, Neuron, vol 9, pp429-440, 1992)。この合成したPR2.1は、塩基-496~0に連結された-4564~-3009の塩基から構成されており、またヒトにおけるLおよびMオプシン遺伝子の両方の発現に必須のLCRを含有していた(Komaromy AMら、Targeting gene expression to cones with human cone opsin promotors in recombinant AAV, Gene Therapy, vol 15, pp1049-1055, 2008)。加えて、97塩基対のSV40スプライスドナー/スプライアクセプター(SD/SA)をPR2.1プロモーターの末端に付加した。該SD/SA配列を含む合成PR2.1をpJ206クローニングベクターに挿入することにより、pJ206-PR2.1synを作成した。該SV40 SD/SA配列を含むPR2.1synのDNA配列をHindIII/Acc65I消化によりpJ206-PR2.1synから取り出した後、不要なCMVエンハンサー配列を除去するためにHindIII/Acc65Iで消化しておいたpTR-CMVenh-hGFPに挿入することにより、プラスミドpTR-PR2.1syn-hGFPを作成した。
【0096】
前記PR2.1プロモーターのより短いバージョンを有するプラスミドを構築するために、PR2.1の5’末端から300 bp、500 bpまたは1,100 bpを切断したPR2.1配列をpJ206-PR2.1synからPCR増幅した。4つのオリゴヌクレオチドプライマー:
1) PR right-Hind:
5’-GATTTAAGCTTGCGGCCGCGGGTACAATTCCGCAGCTTTTAGAG-3’;
2) PR1.1 Left-Hind:5’-CTGCAAGCTTGTGGGACCACAAATCAG-3’;
3) PR1.5 Left-Acc65I:5’- TAGCGGTACCAGCCATCGGCTGTTAG-3’;および
4) PR1.7 left-Acc65I:5’-GTGGGTACCGGAGGCTGAGGGGTG-3’
を設計した。プライマーPR right-Hindを他の3つのプライマーと組み合わせることにより、PR1.1、PR1.5、およびPR1.7をそれぞれPCR増幅した。Pfu Ultra HSポリメラーゼミックスを使用し、熱サイクルは、95℃で5分、その後は94℃で1分、58℃で45秒、および72℃で2分を35サイクルとした。
【0097】
PR right-HindとPR1.1-left-Hindとのプライマーセットを使用して、pJ206-PR2.1synからPR1.1を増幅した。増幅したDNAをHindIIIで消化した後、HindIIIで消化しておいたpTR-CMVenh-hGFPに挿入することにより、プラスミドpTR-CMVenh-PR1.1-hGFPを作成した。
【0098】
PR right-HindとPR1.5-left-Acc65Iとのプライマーセットを使用して、pJ206-PR2.1synからPR1.5を増幅した。増幅したDNAをHindIII/Acc65Iで消化した後、HindIII/Acc65Iで消化しておいたpTR-CMVenh-hGFPに挿入することにより、プラスミドpTR-PR1.5-hGFPを作成した。
【0099】
PR right-HindとPR1.7-left-Acc65Iとのプライマーセットを使用して、pJ206-PR2.1synからPR1.7を増幅した。増幅したDNAをHindIII/Acc65Iで消化した後、HindIII/Acc65Iで消化しておいたpTR-CMVenh-hGFPに挿入することにより、プラスミドpTR-PR1.7-hGFPを作成した。
【0100】
プロモーターおよびhGFPを含む発現カセットのDNA配列をDNA配列決定により確認し、またTRの位置をSmaI制限酵素マッピングにより確認した。
【0101】
前記PR2.1プロモーターがRNA転写およびその後のタンパク質発現にとって機能的であるかどうかを調べるために、ヒト網膜色素上皮(RPE)細胞株であるAPRE-19、およびヒト胎児由来腎臓HEK293細胞を6ウェルプレートに播種(5×105個の細胞/ウェル)し、その後6種のプラスミド:pTR-CMVenh-PR1.1-GFP、pTR-PR1.5-GFP、pTR-PR1.7-GFP、pTR-PR2.1syn-GFP、pTR-PR2.1-GFP(対照)、またはpTR-smCBA-GFP(陽性対照)の各々から得たDNA 1μgをトランスフェクトした。トランスフェクト細胞を37℃、5%CO2のインキュベータで4日間インキュベートした。インキュベーションの期間中に、トランスフェクト細胞をGFP発現について蛍光顕微鏡法により調べた。
【0102】
結果
全4種のプラスミドのDNA配列決定および制限酵素マッピングにより、これらのプロウイルスプラスミドの配列およびTRが正確であることを確認した。
【0103】
ARPE-19細胞およびHEK293細胞を使用したin vitro分析により、これらの細胞株はいずれも前記PR2.1プロモーターの機能性を補助しないことを見出した。トランスフェクションの24時間後に、pTR-smCBA-GFP(陽性対照)から得たDNAをトランスフェクトした細胞において強いGFP発現が観察された。トランスフェクションの48時間後には、pTR-CMVenh-PR1.1-GFPから得たDNAでトランスフェクトした細胞において弱いGFP発現が観察された。他の全てのウェル、すなわちpTR-PR1.5-GFP、pTR-PR1.7-GFP、pTR-PR2.1syn-GFP、またはpTR-PR2.1-GFPから得たDNAでトランスフェクトした細胞では、GFP発現細胞は観察されなかった。プラスミドpTR-PR2.1-GFPは、in vivoでのRNA転写およびその後のGFP発現にとって機能的であることが知られている完全長PR2.1プロモーターを含有している(Komaromy AMら、Targeting gene expression to cones with human cone opsin promoters in recombinant AAV, Gene Therapy, vol 15, pp1049-1055, 2008)。従って、これらの結果は、ARPE-19細胞株がPR2.1プロモーターも、他のPR2.1プロモーターのより短いバージョンも補助しないことを示している。pTR-CMVenh-PR1.1-GFPでトランスフェクトした細胞からのGFPの弱い発現は、PR1.1プロモーターの強度を大きく高めるCMVエンハンサーに起因する可能性が最も高い。
【0104】
緑色蛍光タンパク質(GFP)を発現するrAAVベクターを用い、マウスの錐体を標的とするPR1.1、PR1.5、PR1.7およびPR2.1の効率および特異性を評価するための更なる試験を実施した。
【0105】
前記の構築物をrAAVカプシドにパッケージングし、in vivoでマウスモデルにおいて試験した。図5および6に示すように、4種のrAAVベクター、すなわちrAAV5-CMVenh-PR1.1-GFP、rAAV5-PR1.5-GFP、rAAV5-PR1.7-GFP、およびrAAV5-PR2.1-GFPを標準的なプラスミドトランスフェクション法により生産した。トランスフェクト細胞にパッケージングされたrAAVベクターを細胞溶解により回収し、その後イオジキサノール(IDX)勾配とその後のQ Sepharose HPカラムクロマトグラフィーにより精製してから、Alcon BSS溶液中で製剤化した。次いで、正常マウスに、両眼への網膜下注射(1μL)により注入した(1種のベクター当たり5匹のマウス)。注入の6週間後、マウスを犠牲にし、眼球を摘出して網膜切片を調製した。スライドをDAPIで染色することにより核を確認した後、GFPおよびPNA(錐体光受容器のマーカー)について免疫染色を行った。結果を図5および6に示す。GFPタンパク質の発現を、4種のプロモーター(すなわちPR1.1、PR1.5、PR1.7、またはPR2.1)の1種を含むrAAV5-GFPベクターを投与した眼の光受容器(錐体および杆体)で検出した。ここで、PR1.5は相対的に弱いプロモーターであり、PR1.1は強いプロモーターであるが、RPE細胞でのオフターゲットGFP発現を有する。全体的には、PR1.7が強度(錐体におけるGFP発現レベルのスコアが共に+++)および細胞型特異性(錐体および杆体をも標的とするがRPE細胞は標的としない)においてPR2.1プロモーターと同等である。
【0106】
実施例2:非ヒト霊長類における評価
緑色蛍光タンパク質(GFP)を発現するrAAVベクターを使用して、非ヒト霊長類(NHP)においてL、MおよびS錐体を標的とするために、3種の錐体特異的プロモーターおよび3種のAAVカプシド血清型を、それらの効率および特異性を比較することによって評価するための更なる試験を実施した。第1の試験において、6匹のカニクイザル(cynomolgus macaques)の両側の網膜下に、PR1.7、CSP、またはPR2.1プロモーターを含むAAV2tYF-GFPを注入投与した。それぞれの眼に5×1011 vg/mLの濃度のAAVベクター0.1mLを2回注入した(2回の0.05mL ブレブ/眼、1×1011 vg/眼)。処置12週間後、定量的逆転写酵素PCR(qRT-PCR)および免疫組織化学のために網膜組織を取得した。PR1.7プロモーターを含むベクターは、全てのNHPの眼における網膜下ブレブ領域の3種の錐体の全てでGFP-レポーター遺伝子発現の強力かつ特異的な標的化をもたらした(グレード3)。図7は、眼における蛍光色素分子(GFP)の存在を検出する生存眼底自己蛍光イメージング(FAF)の結果を示す。PR2.1プロモーター群では網膜下ブレブ領域に種々のグレードのGFP染色(グレード0、1または2)が見られ、CSPプロモーター群を投与したいずれの眼にもGFP標識は存在しなかった(グレード0)(図8、以下の表1)。表1は、ここに記載したプロモーター選択試験における免疫組織化学の等級付けの要約である。表1において、GFP発現をグレード0(染色なし)、1(軽度の染色)、2(中程度の染色)および3(強い染色)として等級付けした。
【表1】
総合すると、これらの実験の結果は、短縮型PR1.7の強度および特異性がマウスにおいてPR2.1と同等であることを示す。PR1.7プロモーターはni reg/緑および青錐体の最も高い発現レベルを誘導することが見出された。CNGB3天然プロモーターは、マウスにおいて強力なPRE-特異的プロモーターであることが同定された。
【0107】
等価物
当業者であれば、通常の実験程度の実験を利用して、本明細書中に記載した本発明の具体的な実施形態の多くの等価物を認識するか、または確認することができるであろう。かかる等価物は添付の特許請求の範囲に包含されるものとする。
本開示は以下の実施形態を包含する。
[1] 錐体細胞特異的プロモーターPR2.1の一部を含む核酸。
[2] 配列番号4の配列を含む、実施形態1記載の核酸。
[3] PR2.1が5'または3'末端で末端切断されている、実施形態1記載の核酸。
[4] 末端切断が約100塩基対から1,500塩基対の間である、実施形態3記載の核酸。
[5] 末端切断が5'末端の約300塩基対である、実施形態3記載の核酸。
[6] 末端切断が5'末端の約500塩基対である、実施形態3記載の核酸。
[7] 末端切断が5'末端の約1,1000塩基対である、実施形態3記載の核酸。
[8] 末端切断が3'末端の約300塩基対である、実施形態3記載の核酸。
[9] 末端切断が3'末端の約500塩基対である、実施形態3記載の核酸。
[10] 末端切断が3'末端の約1,1000塩基対である、実施形態3記載の核酸。
[11] 配列番号3を含む、実施形態5記載の核酸。
[12] 配列番号2を含む、実施形態6記載の核酸。
[13] 配列番号1を含む、実施形態7記載の核酸。
[14] 配列番号1のヌクレオチド配列を含む核酸。
[15] 配列番号2のヌクレオチド配列を含む核酸。
[16] 配列番号3のヌクレオチド配列を含む核酸。
[17] 配列番号1のヌクレオチド配列に対して少なくとも85%同一であるヌクレオチド配列を含む核酸。
[18] プロモーターが、S-錐体細胞、M-錐体細胞、およびL-錐体細胞におけるCNGB3発現を促進することができる、実施形態1~17のいずれか記載の核酸。
[19] プロモーターが、S-錐体細胞、M-錐体細胞、およびL-錐体細胞におけるCNGA3発現を促進することができる、実施形態1~17のいずれか記載の核酸。
[20] プロモーターが、S-錐体細胞、M-錐体細胞、およびL-錐体細胞におけるGNAT2発現を促進することができる、実施形態1~17のいずれか記載の核酸。
[21] 実施形態1~17のいずれか記載の核酸に機能的に連結された標的核酸配列を含む、組換えアデノ随伴(rAAV)発現ベクター。
[22] rAAVが血清型1である、実施形態21記載の発現ベクター。
[23] rAAVが血清型2である、実施形態21記載の発現ベクター。
[24] rAAVが血清型5である、実施形態21記載の発現ベクター。
[25] rAAVがAAVビリオン内に含まれる、実施形態21記載の発現ベクター。
[26] 標的核酸配列が環状ヌクレオチド依存性チャネルサブユニットB(CNGB3)ポリペプチドをコードする、実施形態21記載の発現ベクター。
[27] CNGB3がマウスCNGB3である、実施形態26記載の発現ベクター。
[28] CNGB3がラットCNGB3である、実施形態26記載の発現ベクター。
[29] CNGB3がヒトCNGB3である、実施形態26記載の発現ベクター。
[30] 標的核酸配列が環状ヌクレオチド依存性チャネルサブユニットA(CNGA3)ポリペプチドをコードする、実施形態21記載の発現ベクター。
[31] CNGA3がマウスCNGA3である、実施形態30記載の発現ベクター。
[32] CNGA3がラットCNGA3である、実施形態30記載の発現ベクター。
[33] CNGA3がヒトCNGA3である、実施形態30記載の発現ベクター。
[34] 標的核酸配列がグアニンヌクレオチド結合タンパク質G(t)サブユニットα-2(GNAT-2)ポリペプチドをコードする、実施形態21記載の発現ベクター。
[35] GNAT-2がマウスGNAT-2である、実施形態34記載の発現ベクター。
[36] GNAT-2がラットGNAT-2である、実施形態34記載の発現ベクター。
[37] GNAT-2がヒトGNAT-2である、実施形態34記載の発現ベクター。
[38] 実施形態21~37のいずれか記載の発現ベクターを含む哺乳動物細胞。
[39] (a)実施形態1~17のいずれか記載の核酸、
(b)CNGB3核酸、CNGA3核酸、およびGNAT2核酸からなる群より選択される核酸、ならびに
(c)最小調節エレメント
を含む、導入遺伝子発現カセット。
[40] 実施形態39記載の発現カセットを含む核酸ベクター。
[41] アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである、実施形態40記載のベクター。
[42] 実施形態21~37のいずれか記載の発現ベクターおよびその使用のための説明書を含むキット。
[43] 実施形態21~37のいずれか記載の発現ベクターを、それを必要とする対象に投与し、それによって該対象を治療することを含む、眼疾患の治療方法。
[44] 実施形態21~37のいずれか記載の発現ベクターを対象に投与し、それによってCNGA3またはCNGB3発現を促進することを含む、対象の錐体細胞におけるCNGA3またはCNGB3発現の促進方法。
[45] 眼疾患が、網膜錐体細胞に影響を及ぼす遺伝子の突然変異、置換または欠失に関連する、実施形態43記載の方法。
[46] 眼疾患が網膜色素上皮に影響を及ぼす、実施形態43記載の方法。
[47] 眼疾患が1色覚である、実施形態43記載の方法。
[48] 発現ベクターが、S-錐体細胞、M-錐体細胞、およびL-錐体細胞におけるCNGB3発現を促進することができる、実施形態43または44記載の方法。
[49] 発現ベクターが、S-錐体細胞、M-錐体細胞、およびL-錐体細胞におけるCNGA3発現を促進することができる、実施形態43または44記載の方法。
[50] 発現ベクターが、S-錐体細胞、M-錐体細胞、およびL-錐体細胞におけるGNAT-2発現を促進することができる、実施形態43または44記載の方法。
[51] ベクターを網膜下に投与する、実施形態43または44記載の方法。
図1
図2
図3
図4-1】
図4-2】
図4-3】
図4-4】
図5
図6
図7
図8
図9
【配列表】
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