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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】偏光発光板、及びそれを備えた光学装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20240312BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20240312BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20240312BHJP
   G02F 1/13357 20060101ALI20240312BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20240312BHJP
【FI】
G02B5/30
G02B5/20
G02F1/1335 510
G02F1/13357
B32B7/023
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019185081
(22)【出願日】2019-10-08
(65)【公開番号】P2020064299
(43)【公開日】2020-04-23
【審査請求日】2022-06-24
(31)【優先権主張番号】P 2018193479
(32)【優先日】2018-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100155516
【弁理士】
【氏名又は名称】小笠原 亜子佳
(72)【発明者】
【氏名】望月 典明
【審査官】辻本 寛司
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-264756(JP,A)
【文献】特開2001-174636(JP,A)
【文献】国際公開第2015/098906(WO,A1)
【文献】特開2011-231245(JP,A)
【文献】特開2008-033275(JP,A)
【文献】特開2002-110363(JP,A)
【文献】特開2001-174809(JP,A)
【文献】特開平08-073762(JP,A)
【文献】特表2017-518604(JP,A)
【文献】特開平04-226162(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0322451(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0080259(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
G02B 5/20
G02F 1/1335
G02F 1/13357
B32B 7/023
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光の吸収を利用して偏光発光することが可能な素子において、該素子が吸収する光の波長と偏光発光する光の波長とが異なり、かつ、少なくとも400~700nmの波長範囲に偏光した光を発光する偏光発光素子と、さらに、該偏光発光素子の発光波長範囲における光を反射しうる層と、を含む偏光発光板を有し、
該偏光発光素子は、偏光発光色素を含み、
該偏光発光色素は、色素分子内にスチルベン骨格またはビフェニル骨格のいずれか少なくとも一方を構造内に有する化合物又はその塩であり、
該偏光発光素子の発光波長範囲における光を反射しうる層が、螺旋配向が固定化されたコレステリック液晶層であり、
該偏光発光素子が吸収する光を入射するに際し、偏光発光素子、偏光発光素子の発光波長範囲における光を反射しうる層、の順に設けられており、偏光発光素子が吸収しうる光が偏光発光素子側から入射し、偏光発光素子側から発光し、
該偏光発光素子の発光波長範囲における光を反射しうる層が、円偏光の光を反射しうることを特徴とする光学装置。
【請求項2】
吸収する光の波長が、近紫外~近紫外可視域である上記偏光発光素子を備えた請求項1に記載の光学装置。
【請求項3】
上記偏光発光素子が、直線偏光の光を発光する素子である請求項1又は2 に記載の光学装置。
【請求項4】
可視域における光反射強度ピークにおいて、最大光反射強度に対して50%の光反射強度を示すピーク半値の波長範囲が100nm以内である400-700nmの光を反射しうる層をさらに有する請求項1~のいずれか一項に記載の光学装置。
【請求項5】
液晶表示装置である請求項1~のいずれか一項に記載の光学装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高輝度の偏光した光を発光する偏光発光板、並びに、これを用いた表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光の透過あるいは遮蔽の機能を有する偏光板は、光のスイッチング機能を有する液晶とともに液晶ディスプレイ(Liquid Crystal Display:LCD)等の表示装置の基本構成要素である。このLCDの適用分野は、市販初期の電卓、時計等の小型機器から、ノートパソコン、ワープロ、液晶プロジェクター、液晶テレビ、カーナビゲーション、屋内外の情報表示装置、計測機器等へと広がりつつある。また、偏光板は、偏光機能を有するレンズへの適用も可能であり、視認性を向上させたサングラスや、近年では、3Dテレビなどに対応する偏光メガネなどへの応用がなされており、ウェアラBlue端末をはじめとする身近な情報端末への応用や、一部実用化もされつつある。偏光板の用途は多岐に渡り、その使用環境も、低温~高温、低湿度~高湿度、及び低光量~高光量の幅広い条件となっていることから、偏光性能が高くかつ耐久性に優れた偏光板が求められている。
【0003】
一般に、偏光板を構成する偏光膜は、ヨウ素や二色性染料を染色又は含有せしめてポリビニルアルコール又はその誘導体のフィルムを延伸配向して製造されるか、あるいは、ポリ塩化ビニルフィルムの脱塩酸又はポリビニルアルコール系フィルムの脱水によりポリエンを生成して配向せしめることにより製造される。そういった従来の偏光膜から構成される偏光板は、可視域に吸収を有する二色性色素を用いているため、透過率が低下する。例えば、市販されている一般的な偏光板の透過率は35~45%である。
【0004】
また、偏光板の偏光性能を示す指標の一つである「偏光度」において、100%の偏光度を出すには、2次元平面に、x軸およびy軸の光が存在した場合、一方の軸の光のみを吸収する必要がある。よって、一般的な偏光板では、一方の軸の光のみを吸収するために、ヨウ素や二色性染料を用いている。一方の軸の光のみを吸収した場合、100%の入射光量に対して、偏光板を透過する光量は、原理上、50%以下となってしまう。更に、ヨウ素や二色性染料の配向不良による偏光度の低下、フィルム媒体による光損失、フィルム表面の界面反射などが原因で、実際には50%よりさらに透過率が低下してしまい、その結果、従来の偏光板の透過率は35~45%と低くなってしまう。このような、一般的な偏光板の透過率が35~45%と低い問題に対して、可視域において、一定程度の透過率を保持しつつ、偏光機能を付与する技術として、紫外線用偏光板の技術が特許文献1に記載されている。しかし、この技術で得られる偏光板は黄色く着色してしまい、かつ、410nm付近の光に対してのみ偏光機能を示す偏光板しか提供できない。つまり、可視域の光に対して偏光機能を付与するもではない。
【0005】
可視域の光の透過率が低い偏光板、あるいは、偏光度の低い偏光板を、例えばディスプレイに用いると、ディスプレイ全体の輝度やコントラストが低下する。この問題を解決するため、従来の偏光板を用いずに偏光を得る方法が研究されており、方法の一つとして、偏光を発光する素子(偏光発光素子)が、特許文献2~6に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】WO2005/01527号
【文献】特開2008-224854号公報
【文献】特許第5849255号公報
【文献】特許第5713360号公報
【文献】米国特許第3,276,316号明細書
【文献】特開平4-226162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献2~4に記載される偏光発光素子は、特殊な金属、例えば、ユーロピウムをはじめとするランタノイドなど、希少価値が高い金属を用いるため製造コストが高く、また、製造が難しく大量生産には不向きである。さらに、これらの偏光発光素子は、偏光度が低いため、ディスプレイに使用することが難しく、また、直線偏光である発光光を得ることが難しい。加えて、特定の波長の円偏光発光しか得られないため、用途が限定され、例え、ディスプレイに使用したとしても輝度とコントラストがいずれも低く、液晶セルの設計も難しいといった問題があった。そのため、偏光発光作用を示し、その偏光発光度が高く、また可視光域での透過率が高く、過酷な環境下における耐久性が求められる液晶ディスプレイ等にも応用可能な新たな偏光板、およびそれに用いる材料開発が強く望まれている。一方で、特許文献5または6のように、紫外線を照射して偏光を発光する素子に関する特許が開示されている。しかしながら、その発光する素子の偏光度、および輝度は著しく低く、いわゆる偏光した光の各軸のコントラストが低いため、ディスプレイ等に用いるには十分でなく、加えて、その耐光性も低い。
【0008】
本発明は、光の吸収を利用して偏光発光することが可能な素子において、該素子が、吸収する光の波長と偏光発光する光の波長とが異なり、かつ、少なくとも400~700nmの波長範囲に偏光した光を発光する偏光発光素子と、さらに、該偏光発光素子の発光波長範囲における光を反射しうる層、とを含む偏光発光板とすることにより、高輝度、かつ波長ごとに吸収、透過、発光が異なる偏光発光板、並びにその表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、かかる目的を達成すべく鋭意研究を進めた結果、
光の吸収を利用して偏光発光することが可能な素子において、該素子が、吸収する光の波長と偏光発光する光の波長とが異なり、かつ、少なくとも400~700nmの波長範囲に偏光した光を発光する偏光発光素子と、さらに、該偏光発光素子の発光波長範囲における光を反射しうる層、とを含む偏光発光板が、高い偏光度を有しながら高輝度な偏光発光をすることを見出すとともに、かつ光の吸収、光の透過、発光する光の偏光が波長ごとに異なるようにすることを可能にすることを見出すに至った。
【0010】
すなわち本発明は、1)~13)に関する。
1)
光の吸収を利用して偏光発光することが可能な素子において、該素子が吸収する光の波長と偏光発光する光の波長とが異なり、かつ、少なくとも400~700nmの波長範囲に偏光した光を発光する偏光発光素子と、さらに、該偏光発光素子の発光波長範囲における光を反射しうる層と、を含む偏光発光板。
2)
上記偏光発光素子の発光波長範囲における光を反射しうる層が、偏光の光を反射しうる1)に記載の偏光発光板
3)
上記偏光発光素子の発光波長範囲における光を反射しうる層が、屈折率の異なる二種の物質を含む多層膜積層構造であり、かつ、偏光した光を複数に分割できる層である1)または2)に記載の偏光発光板。
4)
上記偏光発光素子の発光波長範囲における光を反射しうる層が、円偏光の光を反射しうる1)~3)のいずれか一項に記載の偏光発光板。
5)
上記偏光発光素子の発光波長範囲における光を反射しうる層が、螺旋配向が固定化されたコレステリック液晶層である1)~4)のいずれか一項に記載の偏光発光板。
6)
吸収する光の波長が、近紫外~近紫外可視域である上記偏光発光素子を備えた1)~5)のいずれか一項に記載の偏光発光板。
7)
上記偏光発光素子が、直線偏光の光を発光する素子である1)~6)のいずれか一項に記載の偏光発光板。
8)
可視域における光反射強度ピークにおいて、最大光反射強度に対して50%の光反射強度を示すピーク半値の波長範囲が100nm以内である400-700nmの光を反射しうる層をさらに有する1)~7)のいずれか一項に記載の偏光発光板。
9)
上記偏光発光素子の発光波長範囲における光を反射しうる層の光反射率が30~100%である1)~8)のいずれか一項に記載の偏光発光板。
10)
上記偏光発光素子の発光波長範囲における光を反射しうる層の可視域の光透過率が30~100%である1)~9)のいずれか一項に記載の偏光発光板。
11)
1)~10)のいずれか一項に記載の偏光発光板と位相差板とが積層されている光学フィルム。
12)
1)~10)の偏光発光板、または請求項11に記載の光学フィルムを備えた光学装置。
13)
液晶表示装置である12)に記載の光学装置。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る偏光発光板、光学フィルムおよび光学装置は、入射された光を高効率に利用しながら、発光波長において高い偏光作用を発現させるとともに、高輝度な偏光発光を発現し、かつ、波長ごとに、光の吸収性、透過性および発光特性が異なる偏光発光板を提供しうるに至る。該偏光発光板、光学フィルムおよび光学装置はいずれも、上記偏光発光素子の発光波長範囲における光を反射しうる層を有するため、発光を阻害するものではなく、かつ透明性も高く維持することが可能である。また、発光する光を高効率に利用可能であるため、光が入射され、発光されるに際し、該光が高効率に利用できる。さらに、太陽光や近紫外~近紫外可視域の光を発光する光源を用いて、該光を発光に変換して用いる場合には、人間の目には見えない光を高効率に利用できるだけでなく、光量の少ない入射光であっても、高い効率で偏光発光を実現することができる。また、上記偏光発光素子の発光光を反射しうる層で反射した光が偏光を有している場合には、偏光発光素子の吸収異方性、すなわち吸収における偏光機能と、その発光における偏光機能と、を利用した、吸収と発光と反射におけるそれぞれの各光の偏光と異方性の機能を利用した、特殊な光学素子を作製できる本発明に至るものである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本願発明は、光の吸収を利用して偏光発光することが可能な素子を用い、該素子が吸収する光の波長と偏光発光する光の波長とが異なり、かつ、少なくとも400~700nmの波長範囲に偏光した光を発光する偏光発光素子と、さらに、該偏光発光素子の発光波長範囲における光を反射しうる層と、を含む偏光発光板に関する。上記偏光発光板は、高い偏光度を有しながら高輝度な光を発光することが可能であり、また、上記層の反射偏光を制御することにより、反射光、透過光および発光する光がそれぞれ異なる偏光を有する光を提供しうる。一般的に、特定の波長の光を吸収し、吸収した光の波長と異なる波長の光を発光する素子を波長変換素子と称するが、本願では、吸収した光を発光する光に変換する点で「偏光発光素子」と称する。
【0013】
上記光の吸収を利用して偏光発光することが可能な素子において、該素子が、吸収する光の波長と偏光発光する光の波長とが異なり、かつ、少なくとも400~700nmの波長範囲に偏光した光を発光する偏光発光素子とは、紫外光~可視光を吸収し、該吸収した光の波長とは異なる波長で、かつ、少なくとも400~700nmの波長範囲に偏光した光を発光しうる層であれば限定されない。該偏光した光が発光可能な素子を得るためには、素子中に光の吸収作用を有する化合物を含み、該化合物の光波長変換機能を利用し、偏光した光を発光させることができるもの、あるいは、偏光した光を発光しうる機能を有する物質を層として形成させることができるものであれば、特に限定されるものではない。特定の波長に光の吸収作用を有するように限定すれば、該特定の波長の光が透過しないことから、該波長以外の光は透過させるように光学設計することも可能であり、可視光の全波長域に限らず、特定の波長のみ透過率の高い発光素子を提供することができる。特に好ましくは、光を吸収して偏光した光を発光する素子が、近紫外~近紫外可視域に光の吸収波長を有することが良く、近紫外~近紫外可視域に光の吸収波長を有することにより、透過率が高く、かつ、可視光の偏光した光を発光しうる素子を提供することを可能とする。偏光した光を発光しうる好ましい形態としては、上記偏光発光素子の光吸収域が、少なくとも350~430nmにあり、偏光した光の発光波長が、少なくとも400~700nmの波長範囲に発光波長を有することが本願の好ましい形態の一つとして挙げることができる。本願明細書において、上記、吸収する光の波長と偏光発光する光の波長とが異なり、かつ、少なくとも400~700nmの波長範囲に偏光した光を発光する偏光発光素子を、「偏光発光素子」と記載する。また、上記、該偏光発光素子の吸収波長範囲における光を反射しうる層を、「反射層」と記載することがある。
【0014】
上記偏光発光素子は、吸収する光の波長と偏光発光する光の波長とが異なり、かつ、少なくとも400~700nmの波長範囲に偏光した光を発光する。例えば、光波長領域において、430nmより短波長の光で、近紫外~近紫外可視域における範囲の光を吸収し、380~780nmの範囲とされる可視域の一部または全部に発光スペクトルピークを有する偏光した光を発光する素子である。本願では、人間の目では見えない光、もしくは著しく見えにくい光である近紫外~近紫外可視域の光、すなわち300~430nmの光を好ましく吸収する波長の光として用いることができるが、上記偏光発光素子が発した偏光した光を視認しやすくするためには、上記偏光発光素子が吸収する光には、人間の目に見えない光、もしくは人間の目の感度が著しく低い波長の光を用いることが好ましい。そのため、上記偏光発光素子の光の吸収波長は、より好ましくは340~420nm、さらに好ましくは350~410nm、特に好ましくは350~400nmであることが良い。偏光発光素子に照射される近紫外~近紫外可視域の光は、偏光の有無は問わず、偏光を有していても良い。上記偏光発光素子は、後述する基材および偏光発光色素を少なくとも含むことにより得ることができる。
【0015】
上記偏光発光素子が発する光は直線偏光であることが好ましい。直線偏光とは、一定の軸の方向の波として表すこともできる光である。直線に偏光した光、即ち一軸に偏光した光を発光することにより、液晶ディスプレイなどの表示装置の設計が行いやすくなる。このことは、市販の液晶ディスプレイや偏光レンズの多くが直線偏光である光を提供しうるヨウ素系偏光板や染料系偏光板が二色性色素を用いた直線偏光を提供しうる偏光板を利用していることからも直線偏光が産業的利用に好適であることは容易に考えうる。一方で、円偏光や楕円偏光を利用しようとすると、液晶セル、しいてはそこで用いる液晶の配向の設計が複雑になってしまうか、もしくは位相差板などの設計が著しく複雑になってしまい、産業的な利用は困難、かつ限定的となることから、偏光した光は直線偏光であることが好ましい。直線偏光である光を発光するためには、例えば、後述する偏光発光色素を基材中で、同一方向に配向させることによって達成しうる。また、さらに偏光発光色素が一軸の偏光である光を発光することによって、その伝波する光の強度は増大し、該色素が理論的に本来持つ発光強度よりも、より強い光を提供しうるに至る。すなわち、より高輝度な直線偏光を有した光を提供することができる。また、直線偏光板は位相差板を組み合わせることによって、様々な偏光に変えることが可能となり、光学設計が容易にできる。例えば、発光波長に対して1/4λを設けることによって円偏光を発光させることも可能となり、または発光波長に対して1/2λを設けることによって、発光した直線偏光を90°回転させることができる。よって、偏光を様々に調整できるため、偏光発光素子に対して位相差板を設けることは、本願の好ましい一つの形態であると言える。
【0016】
上記偏光発光色素は、配向することにより直線偏光発光することに加え、光を吸収する波長において吸収異方性を有することが良い。偏光発光色素は例えば、近紫外~近紫外可視域の光を吸収し、その吸収した光を、波長変換して偏光した可視域の光を発光するが、その吸収する光において、配向方向と該配向方向と異なる方向とで、光の吸収量が異なることが良い。これは、光の吸収異方性、すなわち、吸収における二色性を有することを示し、上記偏光発光素子の吸収波長範囲における光を反射しうる層を設けた際、光の透過、光の反射、もしくは吸収によって得られる光において、偏光発光素子とは異なった様々な偏光の状態を有する光を提供しうる。また、上記反射層が、反射光の異方性、すなわち、偏光反射機能を有している場合、光の吸収の異方性を有する偏光発光素子とともに用いることにより、透過、反射、あるいは吸収によって得られる光は、さらに異なる偏光状態を提供することが可能なため、光の透過または光非透過、あるいはその光量調整等を、上記偏光を制御することによって成すことができる。偏光発光色素を配向させることにより得られる光吸収異方性は、二色比(以下、RDとも記載する)として示されることがあり、この二色比の値から、色素の配向度(以下、Order Parameterと記載する)を算出することができる。二色比とは、最も吸収の強い軸の吸収量と、最も吸収の低い軸の吸収量との比であり、二色比は5~80であれば高い偏光を有する光を発光しうるが、10以上80以下が良く、好ましくは20以上、より好ましくは30以上、特に好ましくは40以上である。上記色素の配向度は、下記式(I)で与えられる数値であり、0.85以上1.00以下であることが好ましく、特に好ましくは0.9以上1.00以下であることが良い。
【0017】
(式1)
Order Parameter=(RD-1)/(RD+2) … 式(I)
【0018】
上記偏光発光素子の好ましい一例として、偏光発光色素が色素分子内にスチルベン骨格またはビフェニル骨格を少なくとも有し、該色素を基材中で配向してなる偏光発光素子が挙げられる。下記に、その作製方法の一つの形態を例として示す。
【0019】
<基材>
上記偏光発光素子は、後述する偏光発光色素を吸着および配向するための高分子フィルムを基材として用いる。該高分子フィルムは、好ましくは、一般的な二色性を有する偏光発光色素、特にスチルベン骨格を有する色素またはビフェニル骨格を有する色素を吸着しうる親水性高分子を製膜して得られる親水性高分子フィルムである。該親水性高分子は、特に限定されないが、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂、デンプン系樹脂が好ましく、上記二色性を有する偏光発光色素の染色性、加工性及び架橋性などの観点から、ポリビニルアルコール系樹脂及びその誘導体であることが好ましい。上記ポリビニルアルコール系樹脂及びその誘導体としては、例えば、ポリビニルアルコール又はその誘導体、及びこれらのいずれかをエチレン、プロピレンのようなオレフィンや、クロトン酸、アクリル酸、メタクリル酸、及びマレイン酸のような不飽和カルボン酸等で変性したもの等が挙げられる。なかでも、ポリビニルアルコール系樹脂及びその誘導体からなるフィルムが、二色性を有する偏光発光色素の吸着性及び配向性の点から、好適に用いられる。当該基材は、例えば、市販のポリビニルアルコール系樹脂又はその誘導体からなるフィルムを用いてもよく、ポリビニルアルコール系樹脂を製膜することにより作製してもよい。ポリビニルアルコール系樹脂の製膜方法は特に限定されるものではなく、例えば、含水ポリビニルアルコールを溶融押出する方法、流延製膜法、湿式製膜法、ゲル製膜法(ポリビニルアルコール水溶液を一旦冷却ゲル化した後、溶媒を抽出除去)、キャスト製膜法(ポリビニルアルコール水溶液を基盤上に流し、乾燥)、及びこれらの組み合わせによる方法等、公知の製膜方法を採用することができる。基材の厚さは通常10~100μm、好ましくは20~80μm程度である。
【0020】
<偏光発光素子の製造方法>
上記偏光発光素子の製造方法は、以下の製法に限定されるものではないが、主に、ポリビニルアルコール系樹脂及びその誘導体によってなるフィルムを用いた場合が好適である。ポリビニルアルコール系樹脂及びその誘導体によってなるフィルムを用いた場合を例とした偏光発光素子の作製方法について述べる。
上記偏光発光素子の作製方法は、基材を準備する工程、該基材を膨潤液に浸漬し該基材を膨潤させる膨潤工程、膨潤させた該基材を上記偏光発光色素1種以上少なくとも含む染色溶液に含浸させ基材に偏光発光色素を吸着させる染色工程、偏光発光色素を吸着させた基材を、ホウ酸を含有する溶液に浸漬することにより偏光発光色素を基材中で架橋させる架橋工程、偏光発光色素を架橋させた基材を一定の方向に一軸延伸して偏光発光色素を一定の方向に配列させる延伸工程、さらに必要に応じて、延伸させた基材を洗浄液で洗浄する洗浄工程、および/または、洗浄させた基材を乾燥させる乾燥工程を含む。
【0021】
(膨潤工程)
上記膨潤工程について説明する。膨潤工程は、20~50℃の膨潤液に、上記基材を30秒~10分間浸漬させることにより行うことが好ましく、膨潤液は水であることが好ましい。基材の延伸倍率は、1.00~1.50倍に調整することが好ましく、1.10~1.35倍に調整することがより好ましい。
【0022】
(染色工程)
上記染色工程について説明する。染色工程では、上記膨潤工程を経て得られた基材に、後述する偏光発光色素1種以上を吸着させる。染色工程としては、偏光発光色素を基材に吸着可能な方法であれば特に限定されるものではないが、例えば、基材を、偏光発光色素を含む染色溶液に浸漬させる方法や、基材に偏光発光色素を含む染色溶液を塗布する方法等が挙げられるが、偏光発光色素を含む染色溶液に浸漬させる方法が好ましい。該染色溶液中の偏光発光色素の濃度は、基材中に偏光発光色素が十分に吸着されるのであれば特に限定されるものではないが、例えば、染色溶液中の偏光発光色素濃度が、0.0001~1質量%であることが好ましく、0.0001~0.5質量%であることがより好ましい。染色工程における染色溶液の温度は、5~80℃が好ましく、20~50℃がより好ましく、40~50℃が特に好ましい。また、染色溶液に基材を浸漬する時間は、適宜調節可能であり、30秒~20分の間で調節するのが好ましく、1~10分の間がより好ましい。染色溶液に含まれる偏光発光色素は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。上記偏光発光色素は、色素構造の違い等によりその発光色が異なるため、基材に、上記偏光発光色素を2種以上含有させることにより、生じる発光色を様々な色になるように適宜調整することができる。また、必要に応じて、上記染色溶液は、上記偏光発光色素以外に、1種以上の有機染料および/または蛍光染料をさらに含んでいてもよい。
【0023】
(偏光発光色素)
上記偏光発光色素は、色素分子内にスチルベン骨格またはビフェニル骨格のいずれか少なくとも一方を構造内に有し、吸収した光を利用して発光する化合物又はその塩であり、蛍光発光あるいは燐光発光を行うものが挙げられ、蛍光発光するものが好ましい。上記偏光発光色素が蛍光発光機能を有しつつ、該色素が光の吸収波長において二色比を有することにより、偏光した光を発光させることができる。特に、色素分子内にスチルベン骨格やビフェニル骨格を有する偏光発光色素は、蛍光発光特性に優れ、かつ、配向させることにより、吸収波長において高い二色比を有する特性を兼ね備える。これらは、上記各骨格が有する特性に由来し、これら特性をさらに向上させたり、吸収波長や発光波長、耐光性、耐湿性、耐オゾンガス性等の各種堅牢性および溶解度等、各種特性を調整する目的により、上記各骨格に、さらに任意の置換基を導入することが可能である。置換基導入において、置換基の種類や置換位置の選択が好ましくない場合、従来の染料系偏光板のように、例え高い偏光度を実現できたとしても、発光光量が著しく低下してしまう等の問題を生じることがあるため、蛍光発光特性に優れ、かつ、高い二色比を有するためには、置換基の種類や置換位置の選択が特に重要となる。また、上記偏光発光色素は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて使用され得る。
【0024】
(a)スチルベン骨格を有する偏光発光色素
上記スチルベン骨格を有する色素は、好ましくは、式(1)で表される化合物またはその塩である。
【0025】
【化1】
【0026】
上記式(1)において、L及びMは、各々独立に、ニトロ基、置換基を有してもよいアミノ基、置換基を有してもよいカルボニルアミド基、置換基を有してもよいナフトトリアゾール基、置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキル基、置換基を有してもよいビニル基、置換基を有してもよいアミド基、置換基を有してもよいウレイド基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有しても良いカルボニル基を表すが、必ずしもこれらに限定されない。式(1)で表されるスチルベン骨格を有する色素は蛍光発光を有し、かつ、配向することにより二色性が得られることが知られているが、これは主にスチルベン骨格に由来するものであり、さらに任意の置換基が導入されていても良い。ただし、スチルベン骨格のL位置、および、M位置にアゾ基を有する場合、蛍光発光は著しく小さくなるため好適ではない。
【0027】
上記置換基を有してもよいアミノ基としては、例えば、非置換のアミノ基、メチルアミノ基、エチルアミノ基、n-ブチルアミノ基、ターシャリブチルアミノ基、n-ヘキシルアミノ基、ドデシルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジ-n-ブチルアミノ基、エチルメチルアミノ基、エチルヘキシルアミノ基等の置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキルアミノ基、フェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ナフチルアミノ基、N-フェニル-N-ナフチルアミノ基等の置換基を有してもよいアリールアミノ基、メチルカルボニルアミノ基、エチルカルボニルアミノ基、n-ブチル-カルボニルアミノ基等の置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキルカルボニルアミノ基、フェニルカルボニルアミノ基、ビフェニルカルボニルアミノ基、ナフチルカルボニルアミノ基等の置換基を有してもよいアリールカルボニルアミノ基、メチルスルホニルアミノ基、エチルスルホニルアミノ基、プロピルスルホニルアミノ基、n-ブチル-スルホニルアミノ基等の炭素数1~20のアルキルスルホニルアミノ基、フェニルスルホニルアミノ基、ナフチルスルホニルアミノ基等の置換基を有してもよいアリールスルホニルアミノ等が挙げられ、置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキルカルボニルアミノ基、置換基を有してもよいアリールカルボニルアミノ基、炭素数1~20のアルキルスルホニルアミノ基、置換基を有してもよいアリールスルホニルアミノ基であることが好ましい。また、上記置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキルアミノ基、置換基を有してもよいアリールアミノ基、置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキルカルボニルアミノ基、置換基を有してもよいアリールカルボニルアミノ基、炭素数1~20のアルキルスルホニルアミノ基、置換基を有してもよいアリールスルホニルアミノ基における置換基としては、特に制限はないが、例えば、ニトロ基、シアノ基、水酸基、スルホン酸基、リン酸基、カルボキシ基、カルボキシアルキル基、ハロゲン原子、アルコキシル基、アリールオキシ基等が挙げられる。
【0028】
上記カルボキシアルキル基としては、例えば、メチルカルボキシ基、エチルカルボキシ基等が挙げられる。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。アルコキシル基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等が挙げられる。アリールオキシ基としては、フェノキシ基、ナフトキシ基等が挙げられる。
【0029】
上記置換基を有してもよいカルボニルアミド基としては、例えば、N-メチル-カルボニルアミド基(-CONHCH)、N-エチル-カルボニルアミド基(-CONHC)、N-フェニル-カルボニルアミド基(-CONHC)等が挙げられる。
【0030】
上記置換基を有してもよいナフトトリアゾール基としては、例えば、ベンゾトリアゾール基、ナフトトリアゾール基等が挙げられる。
【0031】
上記置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-ブチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、n-ドデシル基等の直鎖アルキル基、イソプロピル基、sec-ブチル基、ターシャリブチル基等の分岐鎖アルキル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基等の環状アルキル基等が挙げられる。
【0032】
上記置換基を有してもよいビニル基としては、例えば、ビニル基、メチルビニル基、エチルビニル基、ジビニル基、ペンタジエン基等が挙げられる。
【0033】
上記置換基を有してもよいアミド基としては、例えば、アセトアミド基(-NHCOCH)、ベンズアミド基(-NHCOC)等が挙げられる。
【0034】
上記置換基を有してもよいアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、案トラセニル基、ビフェニル基等が挙げられる。
【0035】
上記置換基を有しても良いカルボニル基としては、例えば、メチルカルボニル基、エチルカルボニル基、n-ブチル-カルボニル基、フェニルカルボニル基等が挙げられる。
【0036】
上記置換基を有してもよいカルボニルアミド基、置換基を有してもよいナフトトリアゾール基、置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキル基、置換基を有してもよいビニル基、置換基を有してもよいアミド基、置換基を有してもよいウレイド基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有しても良いカルボニル基における置換基としては、特に制限はないが、上記置換基を有してもよいアミノ基の項で述べた置換基と同じで良い。
【0037】
上記式(1)で表されるスチルベン骨格を有する色素は、下記式(2)で表される色素もしくはその塩又は下記式(3)で表される色素もしくはその塩であることが特に好ましい。これら色素を用いることにより、より鮮明な白色発光をする偏光発光素子を得ることができる。
【0038】
【化2】
【0039】
上記式(2)において、置換基Rは水素原子、塩素原子、臭素原子、又はフッ素原子等のハロゲン原子、水酸基、カルボキシ基、ニトロ基、置換基を有しても良いアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシル基、又は置換基を有してもよいアミノ基を表す。ハロゲン原子としては上記と同じで良い。置換基を有していても良いアルキル基としては、上記置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキル基の項で述べたものと同じで良い。置換基を有してもよいアルコキシル基は、好ましくはメトキシ基、又はエトキシ基等である。置換基を有してもよいアミノ基としては、上記と同じで良く、好ましくはメチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、又はフェニルアミノ基等である。置換基Rは、ナフトトリアゾール環中のナフタレン環の任意の炭素に結合していてよいが、トリアゾール環と縮合している炭素を1位、及び2位とした場合、3位、5位、又は8位に結合していることが好ましい。nは0~3の整数であり、好ましくは1または2である。-(SOH)基は、ナフトトリアゾール環中のナフタレン環の任意の炭素に結合していてよい。-(SOH)基のナフタレン環における置換位置は、n=1である場合、トリアゾール環と縮合している炭素を1位、及び2位とした場合、4位、6位、又は7位であることが好ましく、n=2である場合、5位と7位、および6位と8位であることが好ましく、n=3である場合、3位と6位と8位の組み合わせであることが好ましい。また、Rが水素原子であり、nが1であることが特に好ましい。Xは、ニトロ基又は置換基を有してもよいアミノ基を表し、ニトロ基であることが好ましい。置換基を有してもよいアミノとしては、上記と同様でよく、置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキルカルボニルアミノ基、置換基を有してもよいアリールカルボニルアミノ基、炭素数1~20のアルキルスルホニルアミノ基、又は置換基を有してもよいアリールスルホニルアミノ基であることが好ましい。
【0040】
上記式(3)におけるYは、置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキル基、置換基を有してもよいビニル基、または置換基を有してもよいアリール基を表し、置換基を有してもよいアリール基であることが好ましく、置換基を有してもよいナフチル基であることがさらに好ましく、置換基としてアミノ基とスルホ基が置換したナフチル基であることが特に好ましい。Zは、上記式(2)におけるXについて説明したのと同じ置換基を表し、ニトロ基であることが好ましい。
【0041】
上記式(1)で示される化合物として、例えば、Kayaphorシリーズ(日本化薬社製)、Whitex RP等のホワイテックスシリーズ(住友化学社製)等が挙げられる。また、下記に式(1)で示される化合物が例示されるが、これらに限定されるものではない。
【0042】
【化3】
【0043】
(b)ビフェニル骨格を有する偏光発光色素
上記ビフェニル骨格を有する色素は、好ましくは、式(4)で表される化合物又はその塩である。
【0044】
【化4】
【0045】
上記式(4)において、P及びQは、各々独立に、ニトロ基、置換基を有してもよいアミノ基、置換基を有してもよいカルボニルアミド基、置換基を有してもよいナフトトリアゾール基、置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキル基、置換基を有してもよいビニル基、置換基を有してもよいアミド基、置換基を有してもよいウレイド基、又は置換基を有してもよいアリール基、置換基を有しても良いカルボニル基を表すが、必ずしもこれらに限定されない。置換基を有してもよいアミノ基、置換基を有してもよいカルボニルアミド基、置換基を有してもよいナフトトリアゾール基、置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキル基、置換基を有してもよいビニル基、置換基を有してもよいアミド基、置換基を有してもよいアリール基および置換基を有しても良いカルボニル基はそれぞれ上記と同じで良い。ただし、上記式(4)におけるビフェニル骨格のP位置、および、/または、Q位置にアゾ基を有する場合、蛍光発光は著しく小さくなるため好適ではない。
【0046】
上記式(4)で表される化合物は、下記式(5)で表される化合物であることが好ましい。
【0047】
【化5】
【0048】
上記式(5)において、jは、0~2の整数を示す。-(SOH)基の好ましい置換位置は、特に限定されないが、好ましくは、ビニル基を1位とした場合、2位、4位が好ましく、特に好ましくは2位である。
【0049】
上記式(5)において、R、R、R、及びRはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数が1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシル基、アラルキロキシ基、アルケニロキシ基、炭素数1~4のアルキルスルホニル基、炭素数6~20のアリールスルホニル基、カルボンアミド基、スルホンアミド基、カルボキシアルキル基からなる群より選択される基である。カルボキシアルキル基としては、上記と同じで良い。
【0050】
上記炭素数が1~4のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、ターシャリブチル基、シクロブチル基等が挙げられる。上記炭素数1~4のアルコキシル基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、ターシャリブトキシ基、シクロブトキシ基等が挙げられる。上記アラルキロキシ基としては、炭素数7~18のアラルキロキシ基等が挙げられる。上記アルケニロキシ基としては、炭素数1~18のアルケニロキシ基等が挙げられる。上記炭素数1~4のアルキルスルホニル基としては、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、プロピルスルホニル基、n-ブチルスルホニル基、sec-ブチルスルホニル基、ターシャリブチルスルホニル基、シクロブチルスルホニル基等が挙げられる。上記炭素数6~20のアリールスルホニル基としては、フェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基、ビフェニルスルホニル基等が挙げられる。
【0051】
上記式(5)において、R~Rの好ましい置換位置は、好ましくはビニル基を1位とした時、2位、4位が好ましい。
【0052】
上記式(5)で表される偏光発光色素の合成方法を以下に説明する。
式(5)で表される偏光発光色素は公知の方法で作製できるが、例えば、4-ニトロベンズアルデヒド-2-スルホン酸をホスホネートと縮合させ、次いでニトロ基を還元することによって得られる。
【0053】
式(5)で表される化合物は、特開平4-226162号公報に記載されている化合物を用いることができるが、具体的には下記の化合物などが例示される。
【0054】
【化6】
【0055】
上記式(1)~(5)で表される化合物の塩は、無機陽イオン又は有機陽イオンと共に形成する塩である。無機陽イオンとしては、アルカリ金属、例えばリチウム、ナトリウム、及びカリウム等の陽イオン、並びに、アンモニウムイオン(NH )が挙げられる。有機陽イオンとしては、例えば、下記式(D)で表される有機アンモニウムが挙げられる。
【0056】
【化7】
【0057】
式(D)中、ZからZはそれぞれ独立に水素原子、アルキル、ヒドロキシアルキル、又はヒドロキシアルコキシアルキルを表わし、ZからZの少なくともいずれか1つは水素原子以外の基である。
【0058】
からZの具体例としては、メチル、エチル、ブチル、ペンチル、及びヘキシル等のC-Cアルキル、好ましくはC-Cアルキル;ヒドロキシメチル、2-ヒドロキシエチル、3-ヒドロキシプロピル、2-ヒドロキシプロピル、4-ヒドロキシブチル、3-ヒドロキシブチル、及び2-ヒドロキシブチル等のヒドロキシC-Cアルキル、好ましくはヒドロキシC-Cアルキル;並びにヒドロキシエトキシメチル、2-ヒドロキシエトキシエチル、3-ヒドロキシエトキシプロピル、3-ヒドロキシエトキシブチル、及び2-ヒドロキシエトキシブチル等のヒドロキシC-CアルコキシC-Cアルキル、好ましくはヒドロキシC-CアルコキシC-Cアルキル等が挙げられる。
【0059】
これらの無機陽イオン及び有機陽イオンうちより好ましいものとしては、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン、モノエタノールアンモニウムイオン、ジエタノールアンモニウムイオン、トリエタノールアンモニウムイオン、モノイソプロパノールアンモニウムイオン、ジイソプロパノールアンモニウムイオン、トリイソプロパノールアンモニウムイオン、及びアンモニウム等の陽イオンが挙げられる。これらの中でも、リチウムイオン、アンモニウムイオン、及びナトリウムイオンがより好ましい。
【0060】
その他、上記偏光発光素子において使用可能な偏光発光色素としては、例えば、
C.I.Fluorescent Brighter 5,
C.I.Fluorescent Brighter 8,
C.I.Fluorescent Brighter 12,
C.I.Fluorescent Brighter 28,
C.I.Fluorescent Brighter 30,
C.I.Fluorescent Brighter 33,
C.I.Fluorescent Brighter 350,
C.I.Fluorescent Brighter 360,
C.I.Fluorescent Brighter 365,
などがあげられる。これらの蛍光染料は遊離酸であっても、あるいはアルカリ金属塩(例えばNa塩、K塩、Li塩)、アンモニウム塩又はアミン類の塩であってもよい。
【0061】
上記偏光発光色素の1種単独又は2種以上を組み合わせ、配向させることにより、偏光した光を発光する偏光発光素子が得られる。該偏光発光素子において、2種以上の偏光発光色素を用いる場合、それら偏光発光色素間の配合割合を調整することにより、様々な発光色になるよう調整することが可能となる。例えば、色度a値及びb値の絶対値がいずれも5以下となるように調整することにより、偏光発光素子が発光する偏光した光を白色にすることが可能となる。上記色度a値及びb値は、それぞれ偏光発光素子に光を入射させたときに、偏光発光素子から出射される光について測定した分光分布に基づき、JIS Z 8781-4:2013に従って求められる。JIS Z 8781-4:2013に定められる物体色の表示方法は、国際照明委員会(略称「CIE」)が定める物体色の表示方法に相当する。色度a値及びb値の測定は、通常、測定試料に自然光を照射して行われるが、本願の明細書及び特許請求の範囲においては、偏光発光素子に紫外光領域等の短波長の光を照射し、発光した光を測定することにより色度a値及びb値を確認できる。発光光のaの絶対値は、5以下、好ましくは4以下、より好ましくは3以下、さらに好ましくは2以下、特に好ましくは1以下である。また、発光光のbの絶対値は、5以下、好ましくは4以下、より好ましくは3以下、さらに好ましくは2以下、特に好ましくは1以下である。a値及びb値の絶対値が、それぞれ独立に5以下であれば、人間の目では白色として感知することができ、さらにそれぞれが共に5以下であれば、より好ましい白色発光として感知することができる。発光する偏光が白色であることにより、太陽光のような自然な光源、ペーパーホワイト端末等の光源として利用が可能であり、カラ-フィルターなどを用いるディスプレイに置いても応用が簡易であるという利点がある。発光強度については、光っていることが目に感知できればディスプレイに応用することは問題ない。特に、本願の特徴としては発光光が高い偏光度を持つこと、および、可視域の透過率が高いことが重要である。
【0062】
(2)その他の色素
上記偏光発光素子は、スチルベン骨格、又はビフェニル骨格を有する色素又はその塩を単独又は複数含むことが好ましいが、さらに偏光発光機能を阻害しない範囲で、色調整等を目的として、必要に応じて他の有機染料又は他の蛍光染料を1種以上さらに含んでいてもよい。他の有機染料としては、偏光発光素子の色(色相)、もしくは発光色を制御しうるものではれば特に限定されないが、二色性の高いものが好ましく、かつ、スチルベン骨格、又はビフェニル骨格の紫外光領域の偏光性能に影響が少ない色素が好ましい。そういった他の有機染料としては、例えば、C.I.Direct.Yellow12、C.I.Direct.Yellow28、C.I.Direct.Yellow44、C.I.Direct.Orange26、C.I.Direct.Orange39、C.I.Direct.Orange71、C.I.Direct.Orange107、C.I.Direct.Red2、C.I.Direct.Red31、C.I.Direct.Red79、C.I.Direct.Red81、C.I.Direct.Red247、C.I.Direct.Blue69、C.I.Direct.Blue78、C.I.Direct.Green80、及びC.I.Direct.Green59等が挙げられる。これらの有機染料は遊離酸であっても、あるいはアルカリ金属塩(例えばNa塩、K塩、Li塩)、アンモニウム塩又はアミン類の塩であってもよい。また、上記他の蛍光染料としては、一般的に開示されている蛍光染料も発光色を調整する目的で用いることも可能であり、特に限定はない。
【0063】
上記他の有機染料又は他の蛍光染料を併用する場合、所望とする偏光発光素子の色調整のために、配合する染料を選択し、配合比率等を調整することが可能である。調製目的により、有機染料又は蛍光染料の配合割合は特に限定されるものではないが、偏光発光素子100質量部に対して、これら他の有機染料又は他の蛍光染料の総量が0.01~10質量部の範囲で用いることが好ましい。
【0064】
上記染色溶液は、上記の各染料に加え、必要に応じて更に染色助剤を含有してもよい。染色助剤としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム(芒硝)、無水硫酸ナトリウム及びトリポリリン酸ナトリウム等が挙げられ、好ましくは硫酸ナトリウムである。染色助剤の含有量は、使用される染料の染色性、上記浸漬時間や染色溶液の温度等によって任意に調整可能であるが、染色溶液中0.0001~10質量%であることが好ましく、0.0001~2質量%であることがより好ましい。
【0065】
上記染色工程後、該染色工程で基材の表面に付着した染色溶液を除去するために、任意に予備洗浄工程を経ることができる。予備洗浄工程を経ることによって、次に処理する液中に基材の表面に残存する染料が移行することを抑制することができる。予備洗浄工程では、洗浄液として一般的には水が用いられる。洗浄方法は、洗浄液に染色した基材を浸漬することが好ましく、一方で、洗浄液を当該基材に塗布することによって洗浄することもできる。洗浄時間は、特に限定されるものではないが、好ましくは1~300秒であり、より好ましくは1~60秒である。予備洗浄工程における洗浄液の温度は、基材を構成する材料が溶解しない温度であることが必要となり、一般的には5~40℃で洗浄処理が施される。尚、予備洗浄工程を経ずとも、偏光発光素子の性能には特段大きな影響を及ぼさないため、予備洗浄工程は省略することも可能である。
【0066】
(架橋工程)
上記染色工程あるいは上記予備洗浄工程の後、基材に架橋剤を含有させることができる。基材に架橋剤を含有させる方法は、架橋剤を含む処理溶液に基材を浸漬させることが好ましく、一方で、当該処理溶液を基材に塗布又は塗工してもよい。処理溶液中の架橋剤としては、例えば、ホウ酸を含有する溶液を使用する。処理溶液中の溶媒は、特に限定されるものではないが、水が好ましい。処理溶液中のホウ酸の濃度は、0.1~15質量%であることが好ましく、0.1~10質量%であることがより好ましい。処理溶液の温度は、30~80℃が好ましく、40~75℃がより好ましい。また、この架橋工程の処理時間は30秒~10分が好ましく、1~6分がより好ましい。本発明に係る偏光発光素子の製造方法が、この架橋工程を有することにより、得られる偏光素子の発光する光の偏光度は高く、表示体として高いコントラストを示す。このことは、従来技術において、耐水性又は光透過性を改善する目的で使用されていたホウ酸の機能からは全く予期し得ない優れた作用である。また、架橋工程においては、必要に応じて、カチオン系高分子化合物を含む水溶液で、フィックス処理をさらに併せて行ってもよい。該フィックス処理により、偏光発光素子中の染料固定化が可能となる。このとき、カチオン系高分子化合物として、例えば、カチオン、ジシアン系としてジシアンアミドとホルマリン重合縮合物、ポリアミン系としてジシアンジアミド・ジエチレントリアミン重縮合物、ポリカチオン系としてエピクロロヒドリン・ジメチルアミン付加重合物、ジメチルジアリルアモンニウムクロライド・二酸化イオン共重合物、ジアリルアミン塩重合物、ジメチルジアリルアンモニウムクロライド重合物、アリルアミン塩の重合物、ジアルキルアミノエチルアクリレート四級塩重合物等が使用される。
【0067】
(延伸工程)
上記架橋工程を経た後、延伸工程を実施する。延伸工程は、基材を一定の方向に一軸延伸することにより行われ、湿式延伸法又は乾式延伸法のいずれであってもよい。延伸倍率は、3倍以上であることが好ましく、より好ましくは5~8倍である。
【0068】
上記湿式延伸法においては、水、水溶性有機溶剤又はその混合溶液中で基材を延伸することが好ましい。より好ましくは、架橋剤を少なくとも1種含有する溶液中に基材を浸漬しながら延伸処理を行う。架橋剤は、例えば、上記架橋剤工程におけるホウ酸を用いることができ、好ましくは、架橋工程で使用した処理溶液中で延伸処理を行うことができる。延伸温度は40~70℃であることが好ましく、45~60℃がより好ましい。延伸時間は通常30秒~20分であり、好ましくは2~7分である。湿式延伸工程は、一段階の延伸で実施しても、二段階以上の多段延伸で実施してもよい。尚、延伸処理は、任意に、染色工程の前に行ってもよく、この場合には、染色の時点で染料の配向も一緒に行うことができる。
【0069】
上記乾式延伸法において、延伸加熱媒体が空気媒体である場合には、空気媒体の温度が常温~180℃で基材を延伸するのが好ましい。また、湿度は20~95%RHの雰囲気中であることが好ましい。基材の加熱方法としては、例えば、ロール間ゾーン延伸法、ロール加熱延伸法、熱間圧延伸法及び赤外線加熱延伸法等が挙げられるが、これらの延伸方法に限定されるものではない。乾式延伸工程は、一段階の延伸で実施しても、二段階以上の多段延伸で実施してもよい。
【0070】
(洗浄工程)
上記延伸工程の際、基材の表面に架橋剤の析出又は異物が付着することがあるため、基材の表面を洗浄する洗浄工程を行うことができる。洗浄時間は1秒~5分が好ましい。洗浄方法は、基材を洗浄液に浸漬することが好ましく、一方で、洗浄液を基材に塗布又は塗工によって洗浄することもできる。洗浄液としては、水が好ましい。洗浄処理は一段階で実施しても、2段階以上の多段処理で実施してもよい。洗浄工程の洗浄溶の温度は、特に限定されるものではないが、通常、5~50℃、好ましくは10~40℃であり、常温であってよい。
【0071】
上記各工程で用いる溶液又は処理液の溶媒としては、上記水の他にも、例えば、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコールまたはトリメチロールプロパン等のアルコール類、エチレンジアミンおよびジエチレントリアミン等のアミン類等が挙げられる。当該溶液又は処理液の溶媒は、これらに限定されるものではないが、最も好ましくは水である。また、これらの溶液又は処理液の溶媒は、1種単独で用いてもよく、2種以上の混合物を用いてもよい。
【0072】
(乾燥工程)
上記洗浄工程の後、基材の乾燥工程を行う。乾燥処理は、自然乾燥により行うことができるものの、より乾燥効率を高めるため、ロールによる圧縮やエアーナイフ又は吸水ロール等による表面の水分除去等により行うことが可能であり、さらには、送風乾燥を行うことも可能である。乾燥処理の温度は、20~100℃であることが好ましく、60~100℃であることがより好ましい。乾燥時間は、30秒~20分であることが好ましく、5~10分であることがより好ましい。
【0073】
上記方法は、本発明で用いることができる偏光発光素子を作製法の一例である。上記各色素は高温や高湿熱環境下でも分解しないため、高い耐久性を有する偏光発光素子が得られる。また、さらに、位相差板を組み合わせることによって、様々な偏光を発光させることが可能となり、例えば、発光波長に対して1/4λを積層させることによって円偏光を発光させることも可能となる。よって、偏光を様々に調整できるため、偏光発光素子に対して位相差板を設けることは、本願の好ましい一つの形態であると言える。
【0074】
上記、スチルベン骨格またはビフェニル骨格のいずれか少なくとも一方を構造内に有し、蛍光を発光する化合物又はその塩を含む偏光発光素子は、近紫外~近紫外可視域等、つまり非可視光領域の光の照射を受け、近紫外~近紫外可視域の光を吸収し、そのエネルギーを利用して可視光領域の偏光した光を発光しうる特徴を有する。偏光発光素子が発光する光が可視光領域の偏光した光であることから、可視光領域の光に対して偏光機能を有する一般的な偏光板を介して偏光発光素子を観察した場合、その可視光領域に偏光機能を有する一般的な偏光板の軸の角度を変えることによって、偏光した光の強い発光軸の光と弱い発光軸の光(または非発光軸の光)のそれぞれを視認することができる。偏光発光素子が発光する偏光の偏光度は、70%以上100%以下であり、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、特に好ましくは98%以上である。
【0075】
上記偏光発光素子は、可視光領域の光を吸収せずに透過させることができる。すなわち、偏光発光素子の可視光領域の光の透過率は、視感度補正された透過率で高い透過率を提供でき、一般的な偏光板の透過率である30~100%の透過率を提供することが可能である。60%以上であれば従来の液晶ディスプレイと比較して明らかに飛躍的な高透過な液晶ディスプレイが得られるが、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは85%以上、特に好ましくは90%以上である。上記、スチルベン骨格またはビフェニル骨格のいずれか少なくとも一方を構造内に有し、蛍光を発光する化合物又はその塩を含む偏光発光素子は、非発光状態において可視光領域での吸収が小さくなり、見た目として透明度の高い偏光発光素子が得られるため好ましく、また発光において、高い偏光度を有して発光することができることから、高い輝度の偏光発光フィルムを提供しうるに至る。
【0076】
[偏光発光板]
上記偏光発光板は、上記偏光発光素子の発光波長範囲における光を反射しうる層を偏光発光素子に積層することを特徴とする。偏光発光素子と該層を積層するに際し、それぞれが接するように積層されていても良いが、接着層または粘着層、位相差フィルム等を介して積層されていても良い。
【0077】
偏光発光素子の発光波長範囲における光を反射しうる層とは、近紫外~可視域において、偏光発光素子が発光する波長の光を反射しうるものであれば限定されない。例えば、偏光発光素子が400~780nmの光を発光する場合には、上記反射層の反射も、400~780nmと同波長で反射することが特に好ましいが、偏光発光素子が発光する波長と、反射層の光の反射波長が必ずしも一致しなくても良く、該発光光波長と該反射波長が一部でも一致すれば、本願の効果を発揮するものである。例えば、400~600nmに上記偏光発光素子の発光する波長を有していた場合、上記反射波長を、400~500nmや500~600nmに有している場合など、発光波長域の一部に反射波長域が含まれていても良いし、発光波長が400~600nmで、反射波長が400~780nmの場合など、反射波長域の一部に発光波長域が含まれていても良い。
【0078】
特に光の反射強度を強くして色の調整を行ったり、透過する光において特定の波長だけを減光させる場合には、特定の波長の反射率を高めることで達成できるため、可視域における光反射強度ピークにおいて、最大反射強度に対して50%の光反射強度を示す、ピーク半値の波長範囲が、100nm以内である400-700nmの光を反射しうる層をさらに有することが、本願の好ましい一つの形態といえる。具体的には、後述するダイクロイックミラーや螺旋配向を固定化したコレステリック液晶層である場合、最大反射強度に対して50%の半値の波長範囲が100nm以内である反射を実現できる。
【0079】
上記反射層に用いることが可能な部材としては、銀やアルミ等が蒸着された反射フィルム、ダイクロイックフィルター、異方性複屈折積層体、螺旋配向を有するコレステリック液晶層を設けたフィルムなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。本願の好ましい形態として挙げられた偏光発光素子が吸収異方性を有しているため、近紫外~可視域の光を反射しうる層が、偏光を反射しうることが好ましい形態の一つとして挙げることができる。紫外~可視域の光を反射しうる層が、偏光を反射しうることによって、その反射した偏光を利用した様々な偏光発光板を作製することが可能となる。例えば、反射される偏光の光の向きと偏光発光素子中の偏光を発光しうる色素の配向方向が一致している場合、偏光発光素子中の色素が吸収する光だけでなく、さらに反射層により反射されてくる光をさらに吸収することができるため、偏光発光素子の発光のために入射された光に対して、より多くの光を吸収、さらに波長変換し、可視域の光を発光させることができる。この場合、偏光発光素子中に含まれる、配向した色素では吸収されなかったり、あるいは、紫外~可視域の光の偏光を反射されなかった偏光の光は、偏光した光として透過するため、透過しうる偏光した紫外~可視域の光として、別途、利用が可能となる。他方、反射される偏光の光の向きと偏光発光素子中の偏光を発光しうる色素の配向方法が直交している場合、偏光発光素子中の色素が光を吸収する軸と、色素の配向軸の吸収と異なる軸の光が反射媒体で反射するため、偏光発光素子の吸収波長と反射しうる波長とが一致している波長では、入射した光を透過しない偏光発光板として機能することが可能であり、また、偏光発光素子によって吸収されずに透過し、反射層により反射された、紫外~可視域の偏光した光を利用し、反射偏光を利用した認識装置とすることも可能である。
【0080】
上記ダイクロイックフィルターとしては、一般的な誘電体多層膜よりなるレンズやフィルムを指し、特定波長のみ、反射する機能を有するレンズも販売されてもよく、例えば、400~535nm以下に反射機能を有するもの(シグマ光機社製 DIM-50S-BLE)、470~620nmに反射機能を有するもの(シグマ光機社製 DIM-50S-GRE)、640~700nmに反射機能を有するもの(シグマ光機社製 DIM-50S-RED)が例示される。必要があれば、それぞれのフィルターを組み合わせて用いても良い。
【0081】
上記偏光発光素子の発光波長範囲における光を反射しうる層が、屈折率の異なる二種の物質を含む多層膜積層構造であり、かつ、偏光した光を複数に分割できる層であることが好ましい。例えば、屈折率の異なる二種の樹脂等を多層膜にし、薄膜干渉の原理を利用して反射させる軸と、屈折率差が無く反射せずに透過する軸を有することで偏光を分割できるため、特定の波長において偏光を反射させる層として利用することができる。尚、この場合、透過する光も偏光として利用できる。屈折率の異なる二種の樹脂等を多層膜にしてなる上記反射層としては、例えば、特許第3621415号等にその技術が開示されており、反射型偏光板、もしくは輝度向上フィルムとして一般的に利用されるものである。該反射型偏光板、および輝度向上フィルムとしては、例えば、米国特許第3610729、WO95/17303号公報、WO95/17692号公報、WO95/17699号公報、WO96/19347号公報、WO99/36262号公報、WO2005/0888363号公報、特開2007-298634号公報、WO2011/074701号公報等でも開示されており、製品としては、DBEF(3M社製)が挙げられる。また、上記反射型偏光板を用いることは、一軸の直線偏光を透過させることができるだけでなく、反射しうる軸の光を偏光発光素子へ反射させ、光を有効利用が可能であるため好ましい。よって、上記屈折率の異なる二種の樹脂等を多層膜にしてなる反射型偏光板を用いることが、本願発明の一つの好ましい形態として挙げられる。
【0082】
上記偏光発光素子の発光波長範囲における光を反射しうる層が、固定化された螺旋配向を有するコレステリック液晶層であることも本願の好ましい1つの形態として例示される。螺旋配向を有するコレステリック液晶層は、一般に、円偏光の光を選択的に反射する性質を持つことが知られている。該コレステリック液晶層は、右回り円偏光もしくは左回り円偏光のいずれかを反射するように構成することが可能であり、例えば、複数の光反射層を積層する場合、積層される可視光反射層および光反射層は、いずれも同じ向きの円偏光である光を反射する特性を有していても良い。上記固定化された螺旋配向を有するコレステリック液晶層の反射は、反射する波長のみ円偏光である光を反射、または透過することができるが、一方で、反射する波長以外の波長の光は円偏光の光にはならず、入射された光の状態を保ちながら透過することが知られている。即ち、固定化された螺旋配向を有するコレステリック液晶層によって反射が制御される波長以外の波長において、直線偏光の光が入射された場合には直線偏光の光が、無偏光の光が入射された場合には無偏光な光が、それぞれ反射せずに透過する層となる。
【0083】
上記コレステリック液晶とは、一般に、キラリティを持つネマチック液晶やネマチック液晶にカイラル剤を添加した配合物からなる。該カイラル剤の種類や添加量、あるいは、カイラル剤が含有した液晶の膜厚やその配向により、螺旋の向きや反射波長を任意に設計できることから、ネマチック液晶にカイラル剤を添加してコレステリック液晶を得る方法が好ましい。本発明で使用されるネマチック液晶は、いわゆる電界で操作する液晶とは異なり、螺旋配向状態を固定化して使用されるため、重合性基を有するネマチック液晶モノマーを用いることが好ましい。
【0084】
上記重合性基を有するネマチック液晶モノマーとは、例えば、分子内に重合性基を有し、特定の温度範囲あるいは濃度範囲で液晶性を示す化合物が挙げられる。重合性基としては、例えば(メタ)アクリロイル基、ビニル基、カルコニル基、シンナモイル基、またはエポキシ基などが挙げられる。また、液晶性を示すためには分子内にメソゲン基があることが好ましく、メソゲン基とは、例えばビフェニル基、ターフェニル基、(ポリ)安息香酸フェニルエステル基、(ポリ)エーテル基、ベンジリデンアニリン基、またはアセナフトキノキサリン基等のロッド状、板状、あるいはトリフェニレン基、フタロシアニン基、またはアザクラウン基等の円盤状の置換基、即ち液晶相挙動を誘導する能力を有する基を意味する。ロッド状または板状基を有する液晶化合物はカラミティック液晶として当該技術分野で既知である。このような重合性基を有するネマチック液晶モノマーは具体的には特開2003-315556号公報および特開2004-29824号公報等に記載の重合性液晶や、PALIOCOLORシリーズ(BASF社製)、RMMシリーズ(Merck社製)等が挙げられる。これら重合性基を有するネマチック液晶モノマーは単独でも、あるいは複数混合して用いることができる。
【0085】
上記カイラル剤は、上記重合性基を有するネマチック液晶モノマーを、右巻きあるいは左巻き螺旋配向させることが可能であり、上記重合性基を有するネマチック液晶モノマーと同様、重合性基を有する化合物が好ましい。該カイラル剤としては、例えば、Paliocolor LC756(BASF社製)、特開2002-179668号公報に記載されている化合物などが挙げられる。このカイラル剤の種類により、反射する円偏光の光の向きが決まり、さらには、ネマチック液晶に対するカイラル剤の添加量に応じて、光反射層の反射波長を変えることができる。例えば、カイラル剤の添加量を多くするほど、短波長側の波長を反射する光反射層を得ることができる。カイラル剤の添加量は、カイラル剤の種類と反射させる波長によっても異なるが、通常光に対する光反射層の中心反射波長を、所望の波長領域に調整するため、例えば、重合性基を有するネマチック液晶モノマー100重量部に対し、0.5~30重量部程度が好ましく、より好ましくは1~20重量部程度であり、さらに好ましくは3~10重量部程度である。
【0086】
さらに、上記重合性基を有するネマチック液晶モノマーと反応可能な、液晶性を有しない重合性化合物を添加することも可能である。該重合性化合物としては、例えば、紫外線硬化型樹脂等が挙げられる。紫外線硬化型樹脂としては、例えば、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートと1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートとの反応生成物、イソシアヌル環を有するトリイソシアネートとペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートとの反応生成物、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートとイソホロンジイソシアネートとの反応生成物、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、トリス(メタアクリロキシエチル)イソシアヌレート、グリセロールトリグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸との反応生成物、カプロラクトン変性トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸との反応生成物、トリグリセロールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸との反応生成物、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸との反応生成物、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸との反応生成物、ジエチレングリコールジグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸との反応生成物、ビス(アクリロキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレート、ビス(メタアクリロキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸との反応生成物、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2-シアノエチル(メタ)アクリレート、ブチルグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸との反応生成物、ブトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、またはブタンジオールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらは単独でもあるいは複数混合して用いることができる。これら液晶性を有しない紫外線硬化型樹脂は、重合性基を有するネマチック液晶モノマーが液晶性を失わない程度に添加することが重要であり、好ましくは、重合性基を有するネマチック液晶モノマー100重量部に対して0.1~20重量部、より好ましくは1.0~10重量部程度が良い。
【0087】
上記重合性基を有するネマチック液晶モノマーおよび上記重合性化合物が、いずれも紫外線硬化型である場合、これらを含んだ組成物を紫外線により硬化させるために、光重合開始剤が添加される場合がある。光重合開始剤としては、例えば、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1(BASF社製イルガキュアー907)、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(BASF社製イルガキュアー184)、4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン(BASF社製イルガキュアー2959)、1-(4-ドデシルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン(Merck社製ダロキュアー953)、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン(Merck社製ダロキュアー1116)、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン(BASF社製イルガキュアー1173)、ジエトキシアセトフェノン等のアセトフェノン系化合物、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン(BASF社製イルガキュアー651)等のベンゾイン系化合物、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルサルファイド、3,3’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン(日本化薬製カヤキュアーMBP)等のベンゾフェノン系化合物、チオキサントン、2-クロルチオキサントン(日本化薬製カヤキュアーCTX)、2-メチルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン(カヤキュアーRTX)、イソプロピルチオキサントン、2,4-ジクロオチオキサントン(日本化薬製カヤキュアーCTX)、2,4-ジエチルチオキサントン(日本化薬製カヤキュアーDETX)、または2,4-ジイソプロピルチオキサントン(日本化薬製カヤキュアーDITX)等のチオキサントン系化合物等が挙げられる。好ましくは、例えば、Irgacure TPO、Irgacure TPO-L、Irgacure OXE01、Irgacure OXE02、Irgacure 1300、Irgacure 184、Irgacure 369、Irgacure 379、Irgacure 819、Irgacure 127、Irgacure 907またはIrgacure 1173(いずれもBASF社製)、特に好ましくはIrgacure TPO、Irgacure TPO-L、Irgacure OXE01、Irgacure OXE02、Irgacure 1300またはIrgacure 907が挙げられる。これらの光重合開始剤は1種類でも複数でも任意の割合で混合して使用することができる。
【0088】
上記光重合開始剤として、ベンゾフェノン系化合物やチオキサントン系化合物を用いる場合、光重合反応を促進させるために、助剤を併用することも可能である。助剤としては、例えば、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、n-ブチルアミン、N-メチルジエタノールアミン、ジエチルアミノエチルメタアクリレート、ミヒラーケトン、4,4’―ジエチルアミノフェノン、4-ジメチルアミノ安息香酸エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸(n-ブトキシ)エチル、または4-ジメチルアミノ安息香酸イソアミル等のアミン系化合物が挙げられる。
【0089】
上記光重合開始剤および助剤の添加量は、上記ネマチック液晶モノマーを含む組成物の液晶性に影響を与えない範囲で使用することが好ましいが特に限定されない。添加量として例えば、当該組成物中の紫外線で硬化する化合物100重量部に対して、好ましくは0.5重量部以上10重量部以下、より好ましくは2重量部以上8重量部以下程度がよい。また、助剤は光重合開始剤に対して、0.5倍から2倍量程度がよい。
【0090】
上記組成物には、さらに溶剤が含まれていてもよい。該溶剤は、使用する液晶化合物やカイラル剤等を溶解できれば、特に限定されるものではなく、例えば、メチルエチルケトン、トルエン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、アセトン、アニソールなどがあげられ、好ましくは、溶解性が良いシクロペンタノンである。また、これらの溶剤は、任意の割合で加えることが可能であり、1種類のみを加えても良いし、複数の溶剤を併用しても良い。これら溶剤は、オーブンやフィルムコーターラインの乾燥ゾーンにて乾燥除去することが可能である。
【0091】
上記コレステリック液晶を用いて、上記反射層を作製する方法としては、例えば、重合性基を有するネマチック液晶モノマーに、所望とする波長を反射し、かつ螺旋配向を右巻きもしくは左巻きとなるように、カイラル剤を必要量添加する。次にこれらを溶剤に溶解し、光重合開始剤を添加する。その後、この溶液を偏光発光素子、またはPETフィルム等のプラスチック基板上に厚みができるだけ均一になるように塗布し、加熱にて溶剤を除去させながら、基板上でコレステリック液晶となって所望の螺旋配向するような温度条件で、一定時間放置させる。この際、プラスチックフィルム表面を塗布前にラビングあるいは延伸等の配向処理をしておくことで、コレステリック液晶の配向をより均一にすることができ、各光反射層のヘーズ値を低減することが可能となる。次いで、この配向状態を保持したまま、高圧水銀灯等で紫外線を照射し、配向を固定化させることにより、上記反射層が得られる。例えば、右巻き螺旋配向となるカイラル剤を選択した場合、得られる光反射層および光反射層は右回り円偏光である光を選択的に反射し、左巻き螺旋配向となるカイラル剤を選択した場合、得られる各可視光反射層および光反射層は、左回り円偏光の光を選択的に反射する。特定の円偏光の光を選択的に反射する現象を選択反射と言い、選択反射している波長帯域を選択反射領域という。
【0092】
上記反射層の通常光に対する反射率を調整する他の方法としては、例えば、コレステリック液晶やカイラル剤の種類などに応じて、反射層の厚さを変えることが挙げられる。反射層の厚みは、使用するコレステリック液晶やカイラル剤の種類によって異なるが、例えば、0.5~10μm程度である。こうして得られた上記反射層を上記偏光発光素子に積層し、上記偏光発光板を作製する場合、偏光発光素子に直接塗工するか、PETフィルム等のプラスチック基板上に厚みができるだけ均一になるように塗布したものを偏光発光素子に接着剤等で転写接着させて設けても良い。螺旋配向を有するコレステリック液晶層は円偏光の選択反射機能を有するため、特定の波長を円偏光である光にして反射してしまう。そのため、螺旋配向を有するコレステリック液晶層から反射される円偏光の光を他の偏光の光、例えば、直線偏光である光に変換させるためには、1/4λ位相差板等を用いることが可能であり、その場合、螺旋配向を有するコレステリック液晶層は、直線偏光の光を反射しうる偏光板として機能することが可能となるため、位相差板を一緒に用いることも、本願の好ましい一つの形態と挙げることができる。上記偏光発光板と、位相差板、例えば一般的な位相差板である可視波長に対する1/4λ、1/2λなどが積層されている光学フィルムも、直線偏光であった反射光をそれぞれ円偏光や偏光を90°直交させる方向に変えることができるため、その好ましい形態の一つである。
【0093】
上記反射層において、光の反射率が30~100%であることによって、より高効率で発光波長に高い偏光作用を発現させるとともに、高輝度な偏光発光作用を発現させることができ、さらに、その偏光発光板を用いた光学装置を提供するに至る。可視域の光を発光する素子を用いる場合には、限られた発光光量であっても、上記偏光発光板を用いた場合、高い効率で偏光発光を利用することができる。また、光の反射率が30~100%であるによって、偏光発光素子の発光帯域に対して、より高効率な偏光発光を実現でき、好ましくは40~100%、より好ましくは50~100%、特に好ましくは60~100%である。
【0094】
また、上記反射層の、可視域の透過率が50~100%である場合、高い透過率を有する偏光発光板を提供することができる。可視域の透過率が高いことによって、発光しながらも、偏光発光板に光の透過性を付与することが可能となる。特に偏光した光を発光することによって、その偏光を利用した表示が可能となり、透明性を有する偏光光源としての利用が可能となる。
例えば、液晶表示装置に応用した場合、透明性を有するシースルーディスプレイや液晶ディスプレイ用透明偏光光源等に用いることができる。上記のとおり、反射層の、可視域における光の透過率が50~100%である場合、ヨウ素系偏光板や染料系偏光板などの一般的な偏光板が有する透過率である30~45%よりも高い透明性を付与することが可能であり、より好ましくは60~100%、より好ましくは70~100%、特に好ましくは90~100%である。
【0095】
上記偏光発光素子、または上記反射層に接するように、あるいは、偏光発光素子と反射層とが積層されている偏光発光板に対して、さらに透明保護層を設け、透明保護層を有する偏光発光板とすることもできる。該透明保護層は、偏光発光素子の耐久性や取扱性等を向上させるために使用され、該透明保護層は、上記偏光発光素子が示す偏光機能や反射層による光反射に何ら影響を与えるものではない。該透明保護層は偏光発光板の両面に設けても良いが、どちらか一方の面、即ち、いずれか片面のみに設けても良いし、反射板と偏光発光素子の間に積層されていても良い。
【0096】
上記透明保護層は、光学的透明性および機械的強度に優れる透明保護膜であることが好ましい。また、透明保護層は、フィルム形状を維持できる層形状を有するフィルムであることが好ましく、透明性および機械的強度の他に、熱安定性、水分遮蔽性等にも優れるプラスチックフィルムであることが好ましい。このような透明保護層を形成する材料としては、例えば、セルロースアセテート系フィルム、アクリル系フィルム、四フッ化エチレン/六フッ化プロピレン系共重合体のようなフッ素系フィルム、或いは、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂又はポリアミド系樹脂からなるフィルム等が挙げられ、好ましくはトリアセチルセルロース(TAC)フィルムやシクロオレフィン系フィルムが用いられる。透明保護層の厚さは、1μm~200μmの範囲が好ましく、10μm~150μmの範囲がより好ましく、40μm~100μmが特に好ましい。上記偏光発光素子に透明保護層を設ける方法は、特に限定されるものではないが、例えば、偏光発光素子に透明保護層を重ねて、公知の処方にてラミネートすることも可能である。
【0097】
上記偏光発光板は、透明保護層と偏光発光素子、透明保護層と反射層、とをそれぞれ貼り合わせるための接着剤層をさらに備えていてもよい。該接着剤層を構成する接着剤は、特に限定されるものではないが、例えば、ポリビニルアルコール系接着剤、ウレタンエマルジョン系接着剤、アクリル系接着剤、ポリエステルーイソシアネート系接着剤等が挙げられ、好ましくはポリビニルアルコール系接着剤が用いられる。該接着剤層形成後、適切な温度で乾燥又は熱処理を行うことにより、上記偏光発光板を作製することができる。
【0098】
また、上記偏光発光板は、その露出面に、反射防止層、防眩層、さらなる透明保護層等の公知の各種機能性層を適宜備えていてもよい。このような各種機能性を有する層を作製する場合、各種機能性を有する材料を透明保護層の露出面に塗工する方法が好ましく、各種機能性層又はフィルムを接着剤若しくは粘着剤を介して透明保護層の露出面に貼合せることも可能である。
【0099】
上記さらなる透明保護層としては、例えば、アクリル系樹脂、ポリシロキサン系樹脂等のハードコート層、ウレタン系樹脂の保護層等が挙げられる。また、単体透過率をより向上させるために、透明保護層の露出上に反射防止層を設けることもできる。反射防止層は、例えば、二酸化珪素、酸化チタン等の物質を、透明保護層上に蒸着又はスパッタリング処理するか、或いは、フッ素系物質を、上記透明保護層上に薄く塗布することにより形成することができる。
【0100】
以上の本願の偏光発光板、光学フィルム、および表示装置は、液晶ディスプレイ向けの高効率の偏光バックライトとして有効に活用できるだけでなく、高効率に発光しうるシースルーディスプレイや偏光光源などに用いることができる。
【0101】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、これらは例示的なものであって、本発明をなんら限定するものではない。また、下記に記載されている「%」及び「部」は、特に言及されない限り質量基準である。尚、各実施例及び比較例で使用した化合物の各構造式において、スルホ基等の酸性官能基は、遊離酸の形態で記載した。
【0102】
[実施例1]
市販品の4-アミノ-4’-ニトロスチルベン-2,2’-ジスルホン酸35.2部を水300部に加え撹拌し、35%塩酸を用いてpH0.5とした。得られた溶液に40%亜硝酸ナトリウム水溶液10.9部を加え、10℃で1時間撹拌し、続いて6-アミノナフタレン-2-スルホン酸17.2部を加え、15%炭酸ナトリウム水溶液でpH4.0に調製後4時間撹拌した。得られた反応液に塩化ナトリウム60部を加え、析出固体をろ過分離、さらにアセトン100部にて洗浄、乾燥し、式(6)に記載した化合物62.3部を得た。
【0103】
【化8】
【0104】
上記で得た式(6)62.3部を水300部に加え攪拌し、25%水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH10.0とした。得られた溶液に28%アンモニア水20部、及び硫酸銅五水和物9.0部を加え、90℃で2時間撹拌した。得られた反応液に塩化ナトリウム25部を加え、析出固体をろ過分離、さらにアセトン100部にて洗浄することにより、下記式(7)の化合物のウェットケーキ40.0部を得た。このウェットケーキを80℃の熱風乾燥機で乾燥することにより、下記式(7)の化合物(λmax:376nm)20.0部を得た。
【0105】
【化9】
【0106】
(偏光発光素子の作製)
厚さ75μmのポリビニルアルコールフィルム(クラレ社製 VF-PS#7500)を40℃の温水に3分間浸漬して、フィルムを膨潤させた。膨潤して得られたフィルムを、化合物例5-1に記載の4,4’-ビス-(スルホスチリル)ビフェニル二ナトリウム水溶液(BASF社製 Tinopal NFW Liquid)1.0重量部、合成例1で得られた化合物(7)を0.4重量部、芒硝を1.0重量部、水1500重量部を含有する45℃の水溶液に4分間浸漬した。浸漬後、得られたフィルムを3%ホウ酸水溶液中50℃で5倍の長さになるように、5分間かけ延伸した。延伸して得られたフィルムを、延伸状態を保ったまま常温の水で20秒間水洗し、その後乾燥して、本願の偏光発光素子を得た。上記式(I)により計算される、偏光発光素子のOrder Parameterは0.91であり、また、吸収の最も大きい波長は379nmであり、その吸収帯域は350~410nmであった。本偏光発光素子に紫外線を照射したところ白色な発光をし、かつ、さらに一般的な偏光板(ポラテクノ社製 SKN-18243P)を介して該発光を確認したところ偏光発光素子の加工の際に延伸軸方向に白色の偏光発光をし、一方で延伸軸に対して直交軸においては偏光の発光はしなかった。つまり偏光発光素子は直線偏光を発光する素子であった。
【0107】
(偏光発光素子を用いた偏光発光板の作製)
紫外線吸収剤を含有しないトリアセチルセルロースフィルム(富士フィルム社製 ZRD-60)を1.5規定の水酸化ナトリウム水溶液で、35℃で10分間処理し、水洗し、次いで、70℃で10分乾燥させた。アルカリ処理して得られたトリアセチルセルロースフィルムを、偏光発光素子の片面に水 100重量部、ポリビニルアルコール樹脂(日本酢ビポバール社製 NH-26) 4重量部を介してラミネートし、70℃で10分乾燥させた。その得られたフィルムは、得られた偏光発光素子の光学特性を損なうことなく、偏光発光フィルムの特性を有していた。その乾燥させて得られたフィルムに対して、粘着剤(日本化薬社製 PTR-3000)を介して、偏光発光素子の発光波長範囲における光を反射しうる層として、350~780nmまで反射率 約88%、可視透過率0%の性能を有する反射フィルム(尾池工業株式会社製 BLフィルム)を貼合し、トリアセチルセルロースフィルム/偏光発光素子/粘着層/反射層の構成となる本願の偏光発光板を得た。
【0108】
[実施例2]
実施例1における偏光発光素子の発光波長範囲における光を反射しうる層として用いたBLフィルムに代えて、350~780nmまで反射率 約67%、可視透過率 約31%の性能を有する半透過・半反射フィルムとして(尾池工業株式会社製 HRフィルム)を用いた以外は同様にして、本願の偏光発光板を得た。
【0109】
[実施例3]
実施例1における偏光発光素子の発光波長範囲における光を反射しうる層として用いたBLフィルムに代えて、380~780nmにおいて反射率 約50%、透過率 約45%の光学特性を有する反射型偏光板(3M社製 DBEF)を用いた以外は同様にし、貼合する際、反射型偏光板の透過軸と偏光発光素子の偏光発光軸が直交するように貼合した以外は同様にして本願の偏光発光板を得た。
【0110】
[実施例4]
実施例1における偏光発光素子の発光波長範囲における光を反射しうる層として用いたBLフィルムに代えて、反射型偏光板(3M社製 DBEF)を用いた以外は同様にし、貼合する際、反射型偏光板の透過軸と偏光発光素子の偏光発光軸が平行になるように貼合した以外は同様にして本願の偏光発光板を得た。
【0111】
[実施例5]
(固定化された螺旋配向を有するコレステリック液晶層の作製)
重合性液晶モノマー(BASF社製 LC242)を10重量部、カイラル剤(BASF社製 LC756) 0.53重量部、重合開始剤(BASF社製 Irgacure TPO) 0.38重量部、トルエン 24.9重量部、界面活性剤(ビックケミー社製 BYK-361N) 0.005重量部よりなる組成物を、特開2002-90743号公報の実施例1に記載された方法でラビング処理されたPETフィルム(東洋紡社製 A4100の下塗り層無し面)に対して、スピンコーターにて250rpmで30秒、2000rpmで5秒、20rpmで10秒の条件でコーティングし、コーティング後に80℃で1分間乾燥を行い、乾燥処理後、高圧水銀ランプ(ハリソン東芝ライティング社製)にて80W出力で5秒間UV照射し、コレステリック液晶相を固定して、各PETフィルム上に単一の反射媒体を得た。得られた液晶層に粘着剤(日本化薬社製 PTR-3000)を20μmになるように塗工し、粘着層をガラスに貼合後、PETフィルムを剥がし、液晶層/粘着層/ガラスとして分光光度計(島津製作所社製 UV-3600)にて絶対鏡面反射測定を測定したところ、465nmに最大選択反射波長を有し、該波長において反射率41.4%のコレステリック液晶層(A)が得られていることが分かった。
【0112】
(固定化された螺旋配向を有するコレステリック液晶層を有する偏光発光板の作製)
実施例1における偏光発光素子の発光波長範囲における光を反射しうるとして用いたBLフィルムを、粘着層を有する螺旋配向を有するコレステリック液晶層(A)に代えて、トリアセチルセルロースフィルム/偏光発光素子/粘着層/コレステリック液晶層(A)の構成となる試料を作製し、本願の偏光発光板を得た。
【0113】
(実施例6)
実施例5の固定化された螺旋配向を有するコレステリック液晶層の作製において、カイラル剤を0.66重量部に代えて390nmの螺旋配向を有し、該波長において反射率41.0%のコレステリック液晶層(B)を作製し、実施例5の偏光発光板に更に貼合させて、実施例1における偏光発光素子の発光波長範囲における光を反射しうるとして用いたBLフィルムを、粘着層を有する螺旋配向を有するコレステリック液晶層(A)及びコレステリック液晶層(B)に代えて、トリアセチルセルロースフィルム/偏光発光素子/粘着層/コレステリック液晶層(A)/粘着層/コレステリック液晶層(B)の構成となる試料を作製し、本願の偏光発光板を得た。
【0114】
[比較例1]
実施例1の偏光発光板の作製において、アルカリ処理して得られたトリアセチルセルロースフィルムを、偏光発光素子の両面に水 100重量部、ポリビニルアルコール樹脂(日本酢ビポバール社製 NH-26) 4重量部を介してラミネートし、70℃で10分乾燥させて、トリアセチルセルロースフィルム/偏光発光素子/トリアセチルセルロースフィルムを得た以外は同様にし、比較例サンプルを作製した。尚、得られたサンプルは、偏光発光素子の性能を有しており、トリアセチルセルロースによって偏光発光素子の光学特性が損なわれていないことを確認した。
【0115】
[比較例2]
実施例5において、カイラル剤を用いずに螺旋配向をしていないコレステリック液晶層(選択反射をしない液晶層)を作製した以外は同様に、比較例サンプルを作製した。
【0116】
得られた偏光板を、下記のように評価した。
[評価]
(h-1)単体透過率Ts
各測定試料の単体透過率Tsを、分光光度計(日立製作所社製「U-4100」)を用いて測定した。ここで、単体透過率Tsは、測定試料を1枚で測定した際の各波長の透過率である。測定は、220~780nmの波長にわたって行った。
【0117】
(h-2)偏光度ρ、及び視感度補正偏光度ρy
各測定試料の偏光度ρを、以下の式(II)に、平行透過率Tp及び直交透過率Tcを代入して求めた。ρyについては、U-4100によって測定後に表示される値を本結果とした。
【0118】
(式2)
ρ={(Tp-Tc)/(Tp+Tc)}1/2×100 …式(II)
【0119】
(h-3)視感度に補正された単体透過率Ys(%)
各測定試料の単体透過率Ys(%)は、可視域における400~700nmの波長領域で、所定波長間隔dλ(ここでは5nm)おきに求めた上記単体透過率Ts(%)について、JIS Z 8722:2009に従って視感度に補正した透過率である。具体的には、単体透過率Ts(%)を式(V)に代入して算出した。なお、下記式(V)中、Pλは標準光(C光源)の分光分布を表し、yλは2度視野等色関数を表す。
【0120】
(式3)
【0121】
(h-4)反射率の測定
反射率は分光光度計(島津製作所社製 UV-3600)にてトリアセチルセルロースフィルムを基準とした入射角度と反射角度が各々5°における相対鏡面反射測定を行い、得られた各波長の結果を実施例、及び比較例の反射率とした。
【0122】
実施例1で得られた偏光発光素子の375nmの単体透過率(Ts 375(%))、375nmの偏光度(ρ 375(%))、390nmの単体透過率(Ts 390(%))、390nmの偏光度(ρ 390(%))、465nmの単体透過率(Ts 465(%))、465nmの偏光度(ρ 465(%))、視感度に補正した透過率(Ys(%))、および、視感度に補正した偏光度(ρy(%))を表1に示す。表1の結果から、得られた偏光発光素子の、紫外域、および、可視域の偏光性能が分かる。
【0123】
【表1】
【0124】
(h-5)発光した光の偏光の測定
光源として、紫外線LED 375nmハンドライトタイプ ブラックライト(日亜化学工業社製「PW-UV943H-04」)を用い、該光源に紫外線透過・可視カットフィルター(五鈴精工硝子社製「IUV-340」)を設置し可視光をカット、紫外域の光のみを、各実施例及び比較例で得られた測定試料のトリアセチルセルロース側から入射させ、反射媒体よりも先に偏光発光素子に紫外域の光が照射されるようにした。光照射により偏光発光素子が発光した光を、偏光発光素子側、及びその反射媒体側(偏光発光素子の反射媒体からの透過光)の光を、分光放射照度計(ウシオ電機社製「USR-40」)を用いて、その受光部に可視域及び紫外域の光に対して偏光機能を有する偏光板(ポラテクノ社製「SKN-18043P」、厚さ180μm、Ysは43%)を設け、かつ、その偏光板の吸収軸を変更して偏光発光の状態を測定した。すなわち、紫外光源からの光が、紫外線透過・可視カットフィルターを透過し、紫外線のみを偏光発光素子に照射できるようにし、その紫外光を、偏光発光素子に入射したとき偏光発光素子の両面から発光し、反射媒体とは反対の面に発光されると同時に、その発光した光が反射媒体に照射される方向の光が反射されるように偏光発光板を設けた。その際の偏光発光板の発光輝度を偏光発光素子側、及び反射媒体側の両面で測定した。各測定試料の最も弱い発光をする軸の光をLw(弱発光軸)、測定試料の最も強い発光軸の発光量をLs(強発光軸)として、Lw及びLsを測定した。測定試料と一般的な偏光板との吸収軸が平行な場合と、直交の場合との可視域で発光された光量を確認することで、可視域である400nm~700nmにおいて偏光した発光の評価を行った。
【0125】
実施例1で得られた偏光発光素子の偏光発光度を測定したところ、下記表2に示すとおり、可視域(400~700nm)の波長域で偏光発光していることを確認した。
【0126】
表2に、実施例1で得られた偏光発光素子の465nm、550nm、610nm、670nmの各波長におけるLs及びLwを示す。表2より偏光発光素子は各波長で偏光発光していることが分かる。また、JIS Z 8781-4:2013より求められる偏光発光板のLs時の色度a値及びb値は、a値が0.77、及びb値は-0.8であった。このことから、偏光発光板は白色光の偏光を発光していることが分かった。
【0127】
【表2】
【0128】
(h-6)偏光の種類(状態)の測定
偏光発光の種類(状態)については、一般的に知られているストークスパラメータ法によって、円偏光、楕円偏光、直線偏光を測定した。尚、400~700nmにおける偏光の種類の測定は、分光光度計(東京インスツルメンツ社製 分光ポラリメーターPoxi-Spectra)を用いて測定した。
【0129】
表3に実施例1~6、及び比較例1で得られた偏光発光板の最大偏光度を示す波長に基づく光学特性を示す。尚、実施例1は透過率が0%だったため、反射において最大偏光度を示す波長を最大偏光波長とした。一方、比較例2は、比較例1とほぼ同等の性能を有していたため表記を省略した。表3中、-(ハイフン)は、光透過あるいは光反射が無いことにより偏光が観測されなかったことを示す。
【0130】
【表3】
【0131】
比較例1は、偏光発光素子の性能を有しており、最大の吸収時の偏光度を示している波長において、その透過率が44.43%であり、その透過した時の偏光の種類は直線偏光であり、また、光の反射は0%(トリアセチルセルロースフィルムと同等)であった。これに対して実施例1は、透過率は0%であり、反射偏光を示す偏光発光板が得られ、実施例2では光の透過、及び光の反射において直線偏光が得られる偏光発光板が得られていることが分かる。また、実施例3、及び実施例4において、反射媒体として同じ反射型偏光板を用いていても、その軸が異なると、偏光発光板の吸収帯域の透過率や反射率が大きく異なることが分かる。実施例6では、螺旋配向を有するコレステリック液晶層を設けることによって、その透過光は円偏光になり、その透過率は高いにも関わらず、反射光を提供できることが分かった。また、実施例6は螺旋配向を有するコレステリック液晶層によって反射する波長以外での透過率は、比較例1と同等の透過率を有し、偏光発光素子が発光した直線偏光である光を透過していた。これに対して実施例5は、螺旋配向を有するコレステリック液晶層を設けていても、379nmには選択反射される機能を有さないため偏光発光素子の性能と変わらない、つまりは、吸収波長に基づく光学特性に関しては、比較例1と同等の性能を有していた。このことは、螺旋配向を有するコレステリック液晶層が設けられているとしても、実施例5と実施例6では、異なる偏光状態を提供できることを示している。
【0132】
表4に実施例1~6、及び比較例1で得られた各偏光発光板の偏光発光素子の発光波長における、発光時と非発光時の偏光学特性を示す。尚、比較例2は、比較例1と同等の性能を有していたため表記を省略した。発光強度(発光輝度)は、比較例1の発光強度を1.00とした時の発光強度を示す。例えば、実施例1では1.76のため、1.76倍の発光強度を示したことになる。表4中、-(ハイフン)は、光透過あるいは光反射が無いことにより偏光が観測されなかったことを示す。
【0133】
【表4】
【0134】
比較例1は、偏光発光素子の性能を有しており、その発光した光も直線偏光であり、かつ、非発光時は91.22%と高い透過率を有していた。一方、反射は0%(トリアセチルセルロースフィルムと同等)であった。これに対して実施例1は、偏光発光素子側の発光輝度が向上していた。また、実施例2では、発光輝度が向上するだけでなく、反射媒体側の偏光発光が現れていることから、背面にも発光を提供しうる。実施例3では、偏光発光素子側の発光強度が向上するだけでなく、非発光時も光透過、及び反射光において偏光機能を有していた。実施例4は、発光輝度の向上は4%であるものの、反射媒体側へも偏光を提供しうる。実施例5、実施例6は、偏光発光素子側への発光輝度が向上し、また、その波長での発光した偏光した光は、偏光発光素子の側からは楕円偏光である光、反射媒体を透過した光は円偏光の光であった。一方、非発光時の反射と透過の偏光状態は、いずれも円偏光を示しており、偏光発光素子のみを用いた比較例1とは異なる偏光状態を提供できることが分かった。実施例5および6は、螺旋配向を有するコレステリック液晶層に基づく反射波長以外は、透過率90%を有し、視感度に基づく透過率(視感度補正透過率)は92.2%を有しており、加えて螺旋配向を有するコレステリック液晶層の反射が見られない波長では、その偏光発光に基づく偏光状態は直線偏光であり、非発光時には無偏光な光が透過することを確認した。つまり、実施例5および6は、各波長において発光時と非発光時で異なる偏光を提供できる偏光発光板が得られていることが分かった。
【0135】
また、実施例3で得られた偏光発光板を用い、液晶ディスプレイ(ダイソー社製 デジタル時計テーBlueクロックDO11 時計A No.7)の液晶セルに貼合されていた両面の偏光板を剥離し、偏光板(ポラテクノ社製 SKN-18043)/粘着剤/液晶セル/粘着剤/偏光発光板の構成の表示装置を作製した。次いで、上記偏光板側から紫外線LED 375nmハンドライトタイプ ブラックライト(日亜化学工業社製「PW-UV943H-04」)にて紫外線を照射した。尚、上記偏光板は、液晶セルに貼合されていた偏光板と、その吸収軸が同軸になるように貼合し、液晶セルの向かい合う面に、初期に貼合されていた偏光板の透過軸と本願の偏光発光板の発光軸とが同じ軸となるように貼合した。得られた表示装置の視認性を確認したところ、明らかに高い輝度を有する表示装置が得られていることが分かった。また、実施例5で得られた偏光発光板を用い同様に表示装置を作製したところ、実施例5も同様に高輝度な表示装置が得られていることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0136】
以上のことから、本願の偏光発光板は、偏光発光光源、または表示装置などの光学装置、特に液晶表示装置に用いることで、発光波長に高輝度な偏光した光を提供しうる。また、紫外、可視、及びその発光・非発光の状態でそれぞれ異なる光学特性を有するフィルムがえられることから、本発明はセキュリティ性や意匠性等、様々な特徴を提供しうる。