(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】グラビア印刷装置
(51)【国際特許分類】
B41F 3/20 20060101AFI20240312BHJP
B41F 3/82 20060101ALI20240312BHJP
B41F 17/14 20060101ALI20240312BHJP
B41F 33/00 20060101ALI20240312BHJP
H05K 3/12 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
B41F3/20 D
B41F3/20 C
B41F3/82
B41F17/14 E
B41F33/00 280
H05K3/12 630Z
(21)【出願番号】P 2019185265
(22)【出願日】2019-10-08
【審査請求日】2022-08-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000184735
【氏名又は名称】株式会社小森コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】原口 峻一
(72)【発明者】
【氏名】小山 千慧
(72)【発明者】
【氏名】杉本 郁男
【審査官】小宮山 文男
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-061710(JP,A)
【文献】特開2010-090211(JP,A)
【文献】特開2013-218398(JP,A)
【文献】特開2016-101669(JP,A)
【文献】特開2011-178006(JP,A)
【文献】特開2010-179591(JP,A)
【文献】特開2017-189928(JP,A)
【文献】特開2011-148314(JP,A)
【文献】米国特許第06374733(US,B1)
【文献】特開2016-076538(JP,A)
【文献】特開2014-073653(JP,A)
【文献】特開2017-136719(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41F 3/20
B41F 3/82
B41F 17/14
B41F 33/00
H05K 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被印刷物としての基板を保持する基板ステージと、
複数の印刷パターン部が設けられた
一つの版と、
導電性ペーストを前記
一つの版の全ての前記印刷パターン部に供給する供給動作および導電性ペーストを前記基板に転写する転写動作を含む一連の印刷動作を制御する制御装置とを備え、
前記複数の印刷パターン部は、前記導電性ペーストを同一の印刷パターンとなるように保持する構成が採られ、
前記制御装置は、前記印刷パターン部毎のそれぞれの前記導電性ペーストを前記基板の同一印刷位置に転写させ、
1回の前記供給動作と複数回の前記転写動作により前記基板に前記印刷パターンの形状で積層された前記導電性ペーストからなる印刷パターン積層体が形成されることを特徴とするグラビア印刷装置。
【請求項2】
請求項1記載のグラビア印刷装置において、
さらに、前記版に供給された前記導電性ペーストを前記版から受理して前記基板に転写する転写体を備え、
前記転写動作は、前記転写体によって実施されることを特徴とするグラビア印刷装置。
【請求項3】
請求項1記載のグラビア印刷装置において、
前記転写動作は、前記版に供給された前記導電性ペーストを前記版から前記基板に直接転写することによって実施されることを特徴とするグラビア印刷装置。
【請求項4】
被印刷物としての基板を保持する基板ステージと、
導電性ペーストを所定の印刷パターンに保持する版と、
前記導電性ペーストを前記版から受理して前記基板に転写する転写体と、
前記転写体が前記導電性ペーストを受理する受理動作から前記基板に転写する転写動作に至る一連の印刷動作を制御する制御装置とを備え、
前記受理動作は、前記転写体が前記導電性ペーストを前記版から同一の受理位置で目標回数に達するまで複数回にわたって繰り返し受理する動作であり、
前記転写動作は、前記転写体の前記同一の受理位置に積層された前記導電性ペーストを前記転写体が前記基板に転写する動作であり、
前記目標回数は、前記受理動作を含む一連の印刷動作の実行によって前記基板へ形成される印刷パターン積層体の内容を
、前記基板ステージ、前記版および前記転写体を有するグラビア印刷装置の製造後に決定するタイミングで規定された所定の自然数の数値情報であり、
複数回の前記受理動作と1回の前記転写動作により前記基板に前記印刷パターンの形状で積層された前記導電性ペーストからなる印刷パターン積層体が形成されることを特徴とするグラビア印刷装置。
【請求項5】
請求項1~
請求項3のいずれか一つに記載のグラビア印刷装置において、
さらに、前記基板に転写された前記導電性ペーストを乾燥させる乾燥装置を備え、
前記制御装置は、前記乾燥装置を制御し、前記基板に転写された下の層となる前記導電性ペーストに上の層となる前記導電性ペーストが印刷される以前に前記下の層となる前記導電性ペーストが前記乾燥装置によって乾燥される構成であることを特徴とするグラビア印刷装置。
【請求項6】
請求項1~
請求項3のいずれか一つに記載されたグラビア印刷装置において、
さらに、積層された前記導電性ペーストの積層状態を測定する検査装置を備え、
前記制御装置は、前記検査装置の測定結果に基づいて、前記導電性ペーストを前記基板に転写するまでの一連の印刷動作を制御することを特徴とするグラビア印刷装置。
【請求項7】
請求項6記載のグラビア印刷装置において、
前記制御装置は、前記検査装置の検査結果に基づいて、積層された前記導電性ペーストを予め定めた積層状態にする補正動作を行うことを特徴とするグラビア印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブル基板の配線やバンプを形成するグラビア印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンテッドエレクトロニクス(PE)分野においては、特許文献1に記載されているようにグラビアオフセット印刷装置を利用することがある。グラビアオフセット印刷装置は、プリント基板(以下、単に基板という)に微細な配線を高い精度で印刷するために用いられている。
ところで、基板上に形成される接続電極として、バンプと呼ばれる突起電極が知られている。従来のバンプは、半田によって形成されることが多い。
【0003】
半田からなるバンプを形成するためには、先ず、スクリーン印刷法によって半田ペーストを基板の電極上に印刷するか、半田ボールを基板の電極に載置する。そして、基板をリフロー炉内に挿入してリフロー処理を行い、半田ペーストや半田ボールを溶融させ、その後に冷却して凝固させる。半田ペーストや半田ボールをリフロー処理する際の温度は、一般的に240℃~260℃前後である。
プリンテッドエレクトロニクス分野で用いられる基板としては、PET(Polyethylene terephthalate)やPEN(Polyethylene naphthalate)などの低耐熱性基材によって形成されたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
低耐熱性基材の耐熱温度は、リフロー処理時の温度より低い。このため、低耐熱性基材からなる基板にバンプを形成するために半田ペーストや半田ボールを使用すると、基板の変成(歪み)が発生し、品質が損なわれる場合がある。
【0006】
本発明の目的は、低耐熱性基材からなる基板に変成が生じることを防ぎながら、低耐熱性基材からなる基板に配線やバンプを形成することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために、本発明に係るグラビア印刷装置は、被印刷物としての基板を保持する基板ステージと、導電性ペーストを所定の印刷パターンに保持する版と、前記導電性ペーストを前記版の前記印刷パターンに供給する供給動作および前記導電性ペーストを前記基板に転写する転写動作を含む一連の印刷動作を制御する制御装置とを備え、前記制御装置は、前記一連の印刷動作を前記基板の同一印刷位置に対して複数回にわたって繰り返し実施して、前記基板に前記印刷パターンの形状で積層された前記導電性ペーストからなる印刷パターン積層体が形成されるものである。
【0008】
本発明に係るグラビア印刷装置は、被印刷物としての基板を保持する基板ステージと、導電性ペーストを所定の印刷パターンに保持する同一の印刷パターン部が複数設けられた版と、前記導電性ペーストを前記版の全ての前記印刷パターン部に供給する供給動作および導電性ペーストを前記基板に転写する転写動作を含む一連の印刷動作を制御する制御装置とを備え、前記制御装置は、前記印刷パターン部毎のそれぞれの前記導電性ペーストを前記基板の同一印刷位置に転写させ、前記基板に前記印刷パターンの形状で積層された前記導電性ペーストからなる印刷パターン積層体が形成されるものである。
【0009】
本発明は、前記グラビア印刷装置において、さらに、前記版に供給された前記導電性ペーストを前記版から受理して前記基板に転写する転写体を備え、前記転写動作は、前記転写体によって実施されてもよい。
【0010】
本発明は、前記グラビア印刷装置において、前記転写動作は、前記版に供給された前記導電性ペーストを前記版から前記基板に直接転写することによって実施されてもよい。
【0011】
本発明に係るグラビア印刷装置は、被印刷物としての基板を保持する基板ステージと、導電性ペーストを所定の印刷パターンに保持する版と、前記導電性ペーストを前記版から受理して前記基板に転写する転写体と、前記転写体が前記導電性ペーストを受理する受理動作から前記基板に転写する転写動作に至る一連の印刷動作を制御する制御装置とを備え、前記受理動作は、前記転写体が前記導電性ペーストを前記版から同一の受理位置で複数回にわたって繰り返し受理する動作であり、前記転写動作は、前記転写体の前記同一の受理位置に積層された前記導電性ペーストを前記転写体が前記基板に転写する動作であり、前記基板に前記印刷パターンの形状で積層された前記導電性ペーストからなる印刷パターン積層体が形成されるものである。
【0012】
本発明は、前記グラビア印刷装置において、さらに、前記基板に転写された前記導電性ペーストを乾燥させる乾燥装置を備え、前記制御装置は、前記乾燥装置を制御し、前記基板に転写された下の層となる前記導電性ペーストに上の層となる前記導電性ペーストが印刷される以前に前記下の層となる前記導電性ペーストが前記乾燥装置によって乾燥される構成であってもよい。
【0013】
本発明は、前記グラビア印刷装置において、さらに、積層された前記導電性ペーストの積層状態を測定する検査装置を備え、前記制御装置は、前記検査装置の測定結果に基づいて、前記導電性ペーストを前記基板に転写するまでの一連の印刷動作を制御するものであってもよい。
【0014】
本発明は、前記グラビア印刷装置において、前記制御装置は、前記検査装置の検査結果に基づいて、積層された前記導電性ペーストを予め定めた積層状態にする補正動作を行うものであってもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明においては、配線やバンプになる印刷パターン積層体を基板に形成することができる。この印刷パターン積層体から配線やバンプを基板に形成するにあたって、変成が生じるような温度まで基板が加熱されることはない。したがって、本発明によれば、低耐熱性基材からなる基板に変成が生じることを防ぎながら、低耐熱性基材からなる基板に配線やバンプを形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】第1の実施の形態によるグラビアオフセット印刷装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】第1の実施の形態による制御装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【
図4】導電性ペーストの積層状態を示す模式図である。
【
図5】導電性ペーストの積層状態を示す模式図である。
【
図6】第2の実施の形態によるグラビアオフセット印刷装置の構成を示すブロック図である。
【
図7】第2の実施の形態による制御装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【
図8】導電性ペーストの積層状態を示す模式図である。
【
図9】第3の実施の形態による制御装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【
図10】導電性ペーストの積層状態を示す模式図である。
【
図11】第4の実施の形態によるダイレクトグラビア印刷装置の構成を示すブロック図である。
【
図16】第5の実施の形態によるダイレクトグラビア印刷装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1の実施の形態)
以下、本発明に係るグラビア印刷装置の一実施の形態を
図1~
図5を参照して詳細に説明する。この第1の実施の形態においては、請求項1記載の発明をグラビアオフセット印刷装置に適用する場合の一例を説明する。
【0018】
図1に示すグラビアオフセット印刷装置1は、被印刷物としての基板2に導電性ペースト3(
図2参照)をグラビアオフセット印刷法によって多層に積層されるように印刷し、配線4(
図5参照)やバンプ5(
図4参照)を導電性ペースト3によって形成するものである。基板2は、低耐熱性基材によって形成されたフレキシブル基板で、バンプ5が設けられる電極2a(
図2参照)を有している。低耐熱性基材としては、例えばPET(Polyethylene terephthalate)やPEN(Polyethylene naphthalate)などが用いられる。導電性ペースト3は、例えば銀、金、胴などの金属粒子を含み、乾燥して固化するものが用いられる。以下において、グラビアオフセット印刷装置1の構成を説明する上で方向を示すにあたっては、便宜上、
図1において左方向をA方向とし、
図1において右方向をB方向として行う。
【0019】
この実施の形態によるグラビアオフセット印刷装置1は、
図1の上側に描かれている印刷部6と、
図1の下側に描かれている制御装置7とを備えている。
図1の印刷部6は、側方から見た状態で描いてある。この実施の形態による印刷部6は、
図1において右側に最位置する基板ステージ11と、
図1において左側に位置する版ステージ12と、これら両ステージ11,12の間に位置するスクレイパ13および転写体14などを備えている。基板ステージ11と、版ステージ12と、スクレイパ13および転写体14は、一つの基台15の上に搭載されている。これらの装置の動作は後述する制御装置7によって制御される。
【0020】
基板ステージ11は、基板2が水平状態で固定されるもので、基板2を所定の位置に位置決めする機能と、例えば真空吸着により保持する機能とを有している。基板ステージ11の近傍には乾燥装置16と検査装置17とが配置されている。
乾燥装置16は、導電性ペースト3を乾燥させるもので、導電性ペースト3の種類に適したものが用いられる。乾燥装置16は、基板2上に印刷された導電性ペースト3に送風によって空気を吹き付けものや、温風を吹き付けるものや、赤外線を照射するものなどが用いられる。乾燥装置16の動作は、後述する制御装置7によって制御される。乾燥装置16によって行う送風、温風、赤外線などによる乾燥は、機上で導電性ペースト3を仮乾燥させるための補助手段である。仮乾燥をしないと導電性ペースト3の粘度が低すぎるために後述するブランケットへの逆転写や印圧による潰れが生じてしまう。機上で仮乾燥させることにより、ある程度硬化させている。基板2に転写された導電性ペースト3は、図示していないオーブンあるいは加熱炉に投入され、本焼成が行われる。
【0021】
導電性ペースト3の場合、ペーストの中に分散している金属粒子を溶かすのではなく、金属粒子を分散させているペーストの樹脂成分を本焼成時の熱によって分解して金属粒子同士を接触させることで導通をとっている。本焼成は、樹脂成分を分解させるだけでよいので、半田ペーストや半田ボールなどでバンプを形成する場合(半田を溶かす場合)と較べると、比較的低い温度で実施することができる。
【0022】
検査装置17は、基板2上に印刷された導電性ペースト3の表面形状をデータ化し、形状データとして制御装置7に送る。検査装置17としては、例えばレーザー走査計を用いることができる。検査装置17の動作は、後述する制御装置7によって制御される。
版ステージ12は、本発明でいう「版」としての凹版21が水平状態で固定されるもので、凹版21を所定の位置に位置決めする機能と、凹版21を保持する機能とを有している。この実施の形態による凹版21は、
図2に示すように、平板状に形成された平版である。凹版21の上面には、導電性ペースト3を所定の印刷パターンとなるように保持する印刷パターン部22(
図1参照)が設けられている。印刷パターン部22には、導電性ペースト3が充填される凹部23(
図2参照)が形成されている。版ステージ12の上方には、導電性ペースト3を凹版21に供給するペースト供給装置24(
図1参照)が設けられている。ペースト供給装置24の動作は、後述する制御装置7によって制御される。
【0023】
スクレイパ13は、凹版21の上面から余剰の導電性ペースト3を掻き取るためのもので、帯状の板からなるブレード25を備えている。このスクレイパ13は、後述する転写体14と一体に、基板ステージ11と版ステージ12とが並ぶ方向(
図1においては左右方向であってA-B方向)に移動するように構成されている。
転写体14は、外周部にブランケット26を巻き付けたロールである。この実施の形態による転写体14は、回転する機能と、基板ステージ11と版ステージ12との間でA-B方向に移動する機能と、上下方向に移動する機能とを有している。
【0024】
制御装置7は、印刷動作制御部31と、乾燥部32と、検査部33と、判定部34とを備え、予め定められた印刷方法が実現されるように印刷部6の各装置の動作を制御する。印刷動作制御部31は、基板ステージ11と、版ステージ12と、スクレイパ13と、転写体14と、ペースト供給装置24などの動作をそれぞれ制御する。乾燥部32は、乾燥装置16の動作を制御する。検査部33は、検査装置17から送られた形状データに基づいてバンプ5の表面形状や傾斜の有無などの検査と、バンプ5の積層高さの測定などを行う。判定部34は、バンプ5の積層高さと、予め定めた目標高さとを比較し、再印刷を行うか印刷終了であるかを判定する。
【0025】
次に、この実施の形態によるグラビアオフセット印刷装置1の動作の説明を、印刷方法の説明と併せて
図3に示すフローチャートを参照して行う。ここでは先ず、基板2にバンプ5を形成する印刷方法について説明する。グラビアオフセット印刷装置1で印刷を行うにあたっては、予め基板2を基板ステージ11に位置決めして固定しておく。印刷動作が開始されると、先ず、導電性ペースト3を凹版21の凹部23に充填する、導電性ペースト充填ステップS1が実施される。
【0026】
導電性ペースト充填ステップS1においては、先ず、ペースト供給装置24によって導電性ペースト3を所定量だけ凹版21に滴下する。そして、
図2(A)に示すように、スクレイパ13のブレード25の下端が凹版21に接触する状態でスクレイパ13と転写体14とを基板ステージ11から離間する方向に移動させる。このとき、転写体14は、凹版21より高い位置に移動させておく。ブレード25が凹版21上を横切ることにより、凹部23に導電性ペースト3が充填される。
【0027】
スクレイパ13が移動した後、受理ステップS2が実施される。受理ステップS2においては、スクレイパ13のブレード25が凹版21から離間するとともに、転写体14が受理動作を行う。受理動作は、転写体14が下降して凹版21に押し付けられながら、スクレイパ13とともに基板ステージ11に向かう方向に移動する動作である。このとき、転写体14は、凹版21と接触しながら移動することにより回転し、
図2(B)に示すように、この回転に伴って凹部23内の導電性ペースト3が転写体14に受理される。
【0028】
この明細書においては、導電性ペースト3の凹版21から転写体14への移動を「受理」という。また、この明細書においては、導電性ペースト3の転写体14から基板2あるいは基板2上の導電性ペースト3への移動を「転写」という。転写体14が凹版21上を一端まで転動することにより、導電性ペースト3が所定の印刷パターンとなるように転写体14のブランケット26に受理される。
【0029】
このように転写体14が導電性ペースト3を受理した後、転写体14が移動動作を行う。移動動作は、転写体14が版ステージ12から基板ステージ11へ移動する動作である。転写体14が基板ステージ11に移動した後に転写ステップS3が実施される。
転写ステップS3においては、
図2(C)に示すように、転写体14が基板2上で移動して基板2の上で転がり、導電性ペースト3を基板2に転写する転写動作が実施される。転写体14が基板2に押し付けられた状態で基板2上で回転しながら移動することにより、転写体14上の導電性ペースト3がブランケット26から基板2の電極2aに転写される。転写体14は、導電性ペースト3が基板2に転写された後、上昇して基板2から離間し、版ステージ12に向けて移動する。
【0030】
次に、乾燥ステップS4が実施される。乾燥ステップS4においては、乾燥装置16が基板2上の導電性ペースト3に温風を吹付ける。この乾燥ステップS4は、導電性ペースト3から溶剤成分が蒸発し、導電性ペースト3の硬度が所定値となるような時間だけ実施される。この所定値とは、導電性ペースト3の上に他の導電性ペースト3を載せたとしても形状が変化することがないような硬度となる値である。すなわち、基板2に転写された下の層となる導電性ペースト3に上の層となる導電性ペースト3が印刷される以前に、下の層となる導電性ペースト3が乾燥装置16によって乾燥される。乾燥ステップS4が実施されることにより、導電性ペースト3の上に他の導電性ペースト3を転写することが可能になる。
【0031】
乾燥ステップS4が実施された後、検査ステップS5が実施される。検査ステップS5においては、制御装置7の検査部33が検査装置17を使用して基板2上の導電性ペースト3の形状の検査を行うとともに、導電性ペースト3の積層高さを測定する。積層高さが測定されると、次の判定ステップS6が実施される。
判定ステップS6においては、導電性ペースト3の積層高さが予め定めた目標高さに達しているか否かが判定される。また、判定ステップS6においては、図示してはいないが、検査ステップS5で検出された導電性ペースト3の形状が正常であるか否かも判定される。導電性ペースト3の形状が異常である場合は、形状を補正する印刷動作を行うか、印刷動作が停止し、中止される。異常検出時には印刷装置に設けられた警告灯(図示せず)によって作業者に異常を知らせる構成としても良い。
【0032】
導電性ペースト3の積層高さが予め定めた目標高さに達していない場合は、導電性ペースト3が基板2に再び印刷される。すなわち、導電性ペースト充填ステップS1に戻って上述した印刷動作が繰り返され、転写体14による受理動作と、移動動作と、転写動作とからなる一連の印刷動作が基板2の同一印刷位置に対して複数回にわたって繰り返し実施される。転写体14が基板2上の導電性ペースト3の上に次の導電性ペースト3を転写する転写動作は、転写体14が導電性ペースト3の厚みに相当する高さだけ前回の位置より上昇した状態で実施される。このとき、積層された導電性ペースト3の厚みや、導電性ペースト3の積層体(バンプ5)の傾斜などに応じて転写体14の高さ(印圧)が制御される。例えば、導電性ペースト3の積層体が傾斜している場合は、印圧が小さくなるように、転写体14を通常より高い位置に位置付けて転写動作が実施される。この実施の形態においては、このように印圧を制御する動作が請求項8記載の発明でいう「補正動作」に相当する。
【0033】
この実施の形態によるグラビアオフセット印刷装置1は、高度な繰り返し精度を有するため、印刷動作が複数回にわたって繰り返されるにもかかわらず、中間位置決めは行われない。すなわち、導電性ペースト充填ステップS1から再び印刷動作を行うにあたって、転写体14に対する基板2および凹版21の位置決めを行うことはない。
【0034】
導電性ペースト充填ステップS1~判定ステップS6からなる印刷動作が複数回にわたって繰り返されることにより、
図4に示すように、基板2上に転写されて乾燥した導電性ペースト3の上に次の印刷動作により導電性ペースト3が重ねて転写され、導電性ペースト3の積層体が形成される。印刷動作は、検査ステップS5で積層高さが予め定めた目標高さに達することにより終了する。
導電性ペースト3の積層高さが目標高さに達することにより、基板2に印刷パターンの形状で積層された導電性ペースト3からなる印刷パターン積層体が形成される。この実施の形態では印刷パターン積層体がバンプ5となる。
【0035】
上述した実施の形態においては基板2上にバンプ5を形成する例を示したが、
図5に示すように、配線4の積層印刷を行った上にバンプ5を別の版にて積層する場合もある。
【0036】
このように構成されたグラビアオフセット印刷装置1においては、グラビアオフセット印刷法を応用して積層された導電性ペースト3が基板2の配線4やバンプ5になる。積層された導電性ペースト3からなる配線4やバンプ5を基板2に形成するにあたっては、変成が生じるような温度まで基板2が加熱されることはない。したがって、この実施の形態によれば、低耐熱性基材からなる基板2に変成が生じることを防ぎながら、低耐熱性基材からなる基板2に配線4やバンプ5を形成することができる。
【0037】
(第2の実施の形態)
本発明に係るグラビア印刷装置の第2の実施の形態を
図6~
図8を参照して詳細に説明する。この第2の実施の形態においては、請求項2記載の発明をグラビアオフセット印刷装置に適用する場合の一例を説明する。
図6~
図8において、
図1~
図5によって説明したものと同一もしくは同等の部材については、同一符号を付し詳細な説明を適宜省略する。
【0038】
図6に示すグラビアオフセット印刷装置41は、第1の実施の形態によるグラビアオフセット印刷装置1とは凹版21と制御装置7の構成(印刷方法)とが異なり、その他の構成が同一のものである。
この実施の形態による凹版21は、複数の印刷パターン部22が設けられている。これらの印刷パターン部22は、導電性ペースト3を同一の印刷パターンとなるように保持する構成が採られており、転写体14が移動するA-B方向に並べられている。
【0039】
この実施の形態によるグラビアオフセット印刷装置41の制御装置7は、転写体14による1回の受理で複数回の転写を行うように構成されている。この制御装置7によって実施される印刷方法を
図7に示すフローチャートを参照して詳細に説明する。この実施の形態による制御装置7が印刷動作の制御を開始すると、先ず、導電性ペースト充填ステップS1で凹版21の全ての印刷パターン部22の凹部23に導電性ペースト3が充填され、次いで、受理ステップS2が実施される。
【0040】
受理ステップS2においては、転写体14が凹版21に接触しながら回転し、導電性ペースト3を凹版21の複数の印刷パターン部22から受理位置を変えてそれぞれ受理する受理動作が実施される。受理動作が実施されることにより、印刷パターン部22毎の導電性ペースト3からなる印刷パターンが転写体14の周方向に所定の間隔で並ぶようになる。
【0041】
その後、転写体14は、移動動作により基板ステージ11まで移動し、転写ステップS3で転写動作を行う。この実施の形態による転写ステップS3において、制御装置7は、印刷パターン部22毎のそれぞれの導電性ペースト3を基板2の同一印刷位置に転写させる。詳述すると、転写体14が下降して導電性ペースト3を基板2に転写し、その後、上昇して所定の角度だけ位相がずれるように回る。所定の角度とは、次の印刷パターン部22の導電性ペースト3が転写体14の最も下の位置に移動するような角度である。
【0042】
一つの印刷パターン部22の導電性ペースト3が基板2に転写された後、乾燥ステップS4と、検査ステップS5と、判定ステップS6とが順次実施される。基板2に積層された導電性ペースト3の積層高さが目標高さに達していない場合は、判定ステップS7が実施される。判定ステップS7においては、転写体14上に受理されている全ての印刷パターン部22毎の導電性ペースト3を基板2に転写したか否かが判定される。この判定は、制御装置7の判定部34によって実施される。転写体14上に導電性ペースト3が残っている場合は、転写ステップS3に戻り、基板2の同一印刷位置に導電性ペースト3を再び転写する。このように、転写体14が印刷パターン部22毎の導電性ペースト3を基板2の同一印刷位置に複数回にわたって繰り返し転写する転写動作が実施されることにより、
図8に示すように、基板2の同一印刷位置の上に導電性ペースト3が積層される。
【0043】
判定ステップS7で転写体14上の全ての導電性ペースト3が基板2に転写されたと判定された場合は、導電性ペースト充填ステップS1に戻り、上述した動作を繰り返す。そして、基板2上に積層された導電性ペースト3の積層高さが目標高さに達することにより印刷動作が終了し、基板2に印刷パターンの形状で積層された導電性ペースト3からなる印刷パターン積層体(バンプ5)が形成される。
したがって、この実施の形態においても、第1の実施の形態を採る場合と同様に、低耐熱性基材からなる基板2に変成が生じることを防ぎながら、低耐熱性基材からなる基板2に配線4やバンプ5を形成することができる。
【0044】
(第3の実施の形態)
第1および第2の実施の形態によるグラビアオフセット印刷装置1,41で実施する印刷方法は、
図9および
図10に示すような印刷方法とすることができる。
図9および
図10において、
図1~
図8によって説明したものと同一もしくは同等の部材については、同一符号を付し詳細な説明を適宜省略する。この実施の形態による印刷方法を実施するグラビアオフセット印刷装置は、本発明の請求項5に記載したグラビア印刷装置に相当する。この第3の実施の形態によるグラビアオフセット印刷装置は、第1の実施の形態や第2の実施の形態で示したグラビアオフセット印刷装置1,41とは印刷動作(印刷方法)異なるだけであるので、図示を省略する。
【0045】
この実施の形態による印刷方法は、
図9のフローチャートに示すように、転写体14による受理を複数回行い、
図10に示すように一回の転写でバンプ5が形成されるように構成されている。この印刷方法によれば、先ず、導電性ペースト充填ステップS1で凹版21の凹部23に導電性ペースト3が充填され、次いで、受理ステップS2が実施される。
受理ステップS2においては、転写体14が凹版21に接触しながら回転し、導電性ペースト3を受理する。次に、判定ステップS10が実施される。判定ステップS10においては、転写体14が導電性ペースト3を受理した回数が予め定めた目標回数に達したか否かが判定される。この判定は、制御装置7の判定部34によって実施される。受理した回数が目標回数より少ない場合は、導電性ペースト充填ステップS1に戻り、再び転写体14が凹版21から導電性ペースト3を受理する。
【0046】
このため、この実施の形態による転写体14は、導電性ペースト3を凹版21から同一の受理位置で複数回にわたって繰り返し受理する受理動作を行う。受理した回数が目標回数に達した後、転写ステップS3において、転写体14が導電性ペースト3を基板2に転写する転写動作が実施される。この実施の形態による転写ステップS3においては、
図10に示すように、複数回にわたって転写体14に受理されて転写体14に重ねられた多層の導電性ペースト3が一度に基板2に転写される。
【0047】
転写ステップS3が実施された後、乾燥ステップS4で導電性ペースト3が乾燥される。このように乾燥ステップS4が実施されることにより、基板2に印刷パターンの形状で積層された導電性ペースト3からなる印刷パターン積層体(バンプ5)が形成される。そして、検査ステップS5が実施され、基板2の上に積層された導電性ペースト3からなるバンプ5の検査が行われる。
したがって、この実施の形態においても、第1の実施の形態を採る場合と同様に、低耐熱性基材からなる基板2に変成が生じることを防ぎながら、低耐熱性基材からなる基板2に配線4やバンプ5を形成することができる。
【0048】
上述した各実施の形態においては、凹版21を平版によって構成する例を示した。しかし、本発明は、このような限定にとらわれることはない。上述したグラビアオフセット印刷装置1,41に使用する凹版21は、円筒状のスリーブ版でもよい。
また、上述した各実施の形態においては、基板ステージ11と版ステージ12の位置が変わることなく、スクレイパ14と転写体14とが基板ステージ11および版ステージ12に対して移動する例を示した。しかし、本発明に係るグラビア印刷装置は、このような印刷方式に限定されることはない。すなわち、図示してはいないが、ブランケット胴が固定(上下動の可能)で基板ステージおよび版ステージが移動する印刷方式や、スリーブ版と基板ステージとが固定で、ブランケット胴が移動する印刷方式を採ることができる。
【0049】
(第4の実施の形態)
上述した第1~第3の実施の形態においては、転写動作を転写体14によって実施するグラビアオフセット印刷装置1,41に本発明を適用する例を示した。しかし、本発明は、
図11~
図15に示すように、ダイレクトグラビア印刷装置に適用することができる。
図11~
図15において、
図1~
図10によって説明したものと同一もしくは同等の部材については、同一符号を付し詳細な説明を適宜省略する。
図11に示すダイレクトグラビア印刷装置51は、円筒状の凹版52によって導電性ペースト3(
図12参照)を基板2に直接印刷するものである。
【0050】
凹版52は、版胴53の外周部に版胴53と一体に回転するように装着されて基板ステージ11の上方に配置されている。凹版52の外周面には、所定の印刷パターンとなるように複数の凹部54(
図12参照)が形成されている。この実施の形態による凹版52は、基板ステージ11上の基板2に押し付けられることにより弾性変形する材料によって形成されている。版胴53は、水平方向に延びる支軸55を中心にして回転するともに、上下方向に移動する。版胴53の動作は、制御装置7によって制御される。
【0051】
版胴53の近傍には、ペースト供給装置56が配設されている。この実施の形態によるペースト供給装置56は、凹版52の外周面に接触するブレード56aを備えており、このブレード56aの上に上方から導電性ペースト3を供給する。ブレード56a上に供給された導電性ペースト3が凹版52によって堰き止められている状態で凹版52が回転することによって、凹版52の凹部54に導電性ペースト3が充填され、余分な導電性ペースト3がブレード56aによって掻き取られる。ペースト供給装置56の動作は、制御装置7によって制御される。
基板ステージ11は、基板2を水平状態として保持するとともに、基台15の上で版胴53の軸線方向とは直交する水平方向(
図11においては矢印ABで示す左右方向)に移動する。基板ステージ11の動作は、制御装置7によって制御される。
【0052】
制御装置7は、上述した第1および第2の実施の形態で示した制御装置と同様に、印刷動作制御部31と、乾燥部32と、検査部33と、判定部34とを有し、後述する2種類の印刷方法のうちいずれか一方の印刷方法によって導電性ペースト3が基板2に印刷されるように各装置の動作を制御する。2種類の印刷方法とは、上述した第1の実施の形態のように一連の印刷動作を繰り返す印刷方法と、第2の実施の形態のように1箇所で転写動作を繰り返す印刷方法である。
【0053】
一連の印刷動作を繰り返す印刷方法は、
図3のフローチャートによって示す方法である。この実施の形態において、
図3に示すフローチャートの導電性ペースト充填ステップS1と、受理ステップS2と、転写ステップS3は、
図12および
図13に示すように、基板2に接触している版胴53を回転させながらペースト供給装置24によって導電性ペースト3をブレード56aの上に供給して行われる。なお、導電性ペースト充填ステップS1と受理ステップS2とは、図示してはいないが、凹版52が基板2から上方に離間するように版胴53を上昇させた状態で行うことができる。
図12に示すように凹版52が基板2に接触している状態で版胴53が回転するとともに基板ステージ11が版胴53の回転に沿う方向に平行移動することにより、凹版52の凹部54内の導電性ペースト3が基板2に転写される。
【0054】
基板2上の全ての印刷位置に導電性ペースト3が転写された後、乾燥ステップS4、検査ステップS5および判定ステップS6が実施される。判定ステップS6でNO、すなわち基板2上の導電性ペースト3の積層高さが目標高さに達していない場合は、基板ステージ11が初期の位置に戻り、導電性ペースト充填ステップS1から判定ステップS6に至る一連の印刷動作を繰り返す。この一連の印刷動作が繰り返されることにより、
図13に示すように、基板2上の導電性ペースト3の上に別の導電性ペースト3が重ねられる。このため、この実施の形態を採ることによっても基板2上に印刷パターンの形状で積層された導電性ペースト3からなる印刷パターン積層体が形成される。
【0055】
1箇所で転写動作を繰り返す印刷方法は、
図7のフローチャートによって示す方法である。この実施の形態において、
図7に示すフローチャートの導電性ペースト充填ステップS1と、受理ステップS2とは、
図14に示すように、凹版52が基板2から上方に離間するように版胴53を上昇させ、この版胴53を回転させながらペースト供給装置56によって導電性ペースト3をブレード56aの上に供給して行われる。この実施の形態を採る場合の凹版52は、同一形状(同一印刷パターン)の複数の凹部54aを有している。この実施の形態においては、凹部54aが請求項2記載の発明でいう「印刷パターン部」に相当する。
【0056】
版胴53の全ての凹部54aに導電性ペースト3が充填された後、転写ステップS3が実施される。転写ステップS3は、
図15に示すように、凹部54aが最も下に位置している状態で版胴53が下降するように、版胴53を上下方向に往復させるとともに凹部54aどうしの間隔に相当する所定の角度だけ位相がずれるように回して実施される。転写ステップS3が実施された後、乾燥ステップS4と、検査ステップS5と、判定ステップS6,S7などが実施され、
図15に示すように、基板2上の導電性ペースト3の上に別の導電性ペースト3が重ねられる。
【0057】
このため、この実施の形態を採ることによっても基板2上に印刷パターンの形状で積層された導電性ペースト3からなる印刷パターン積層体が形成される。なお、第4の実施の形態においては、版胴53が上下方向に移動して基板ステージ11が水平方向に移動する例を示した。しかし、版胴53が上下方向と水平方向とに移動することなく基板ステージ11が上下方向と水平方向とに移動する構成を採ることができるし、版胴53が水平方向に移動し、基板ステージ11が上下方向に移動する構成や、版胴53が上下方向と水平方向とに移動して基板ステージ11が上下方向および水平方向に移動することがない構成を採ることができる。
【0058】
(第5の実施の形態)
本発明をダイレクトグラビア印刷装置に適用する場合は、
図16~
図18に示す構成を採ることができる。
図16~
図18において、
図1~
図10によって説明したものと同一もしくは同等の部材については、同一符号を付し詳細な説明を適宜省略する。
図16に示すダイレクトグラビア印刷装置61は、平板状の凹版21によって導電性ペースト3(
図12参照)を円筒状の基板2に直接印刷するものである。凹版21は、版ステージ12に保持され、版ステージ12と一体に基台15に対して水平方向に移動する。凹版21には、所定の印刷パターンとなるように複数の凹部22が形成されている。この実施の形態を採る場合は、凹版21を弾性変形可能な材料によって形成するか、凹版21と版ステージ12との間に弾性を有するクッション材(図示せず)を設けることにより、基板2が凹版21に十分に押し付けられるようになる。
【0059】
基板2は、自然状態では平板となるようにシート状に形成されており、円柱状を呈する基板支持胴62の外周面に巻き付けられて保持されている。この実施の形態においては、基板支持胴62が本発明でいう「基板ステージ」に相当する。基板支持胴62は、水平方向に延びる支軸63を中心にして回転するとともに、上下方向に移動する。基板支持胴62の動作は、制御装置7によって制御される。
【0060】
制御装置7は、上述した第1および第2の実施の形態で示した制御装置7と同様に、印刷動作制御部31と、乾燥部32と、検査部33と、判定部34とを有し、後述する2種類の印刷方法のうちいずれか一方の印刷方法によって導電性ペースト3が基板2に印刷されるように各装置の動作を制御する。2種類の印刷方法とは、上述した第1の実施の形態のように一連の印刷動作を繰り返す印刷方法と、第2の実施の形態のように1箇所で転写動作を繰り返す印刷方法である。
【0061】
一連の印刷動作を繰り返す印刷方法は、
図3のフローチャートによって示す方法である。この実施の形態において、
図3に示すフローチャートの導電性ペースト充填ステップS1および受理ステップS2は、
図17(A)に示すように基板支持胴62を凹版21から上方に離間させた状態で、ペースト供給装置24(
図16参照)によって導電性ペースト3を凹版21に供給して行われる。凹版21上に供給された導電性ペースト3は、スクレイパ13のブレード25が凹版22に接触した状態で版ステージ12が移動することによって、凹部22内に充填される。
【0062】
この実施の形態において、転写ステップS3は、
図17(B),(C)に示すように、基板支持胴62を下降させて基板2を凹版21に押し付け、基板支持胴62を回転させるとともに版ステージ12を基板支持胴62の回転方向に沿う方向に移動させることによって実施される。転写ステップS3が実施されることにより、凹部22内の導電性ペースト3が基板2に転写される。転写ステップS3が実施された後、乾燥ステップS4と、検査ステップS5と、判定ステップS6とが実施される。
【0063】
判定ステップS6でNO、すなわち基板2上の導電性ペースト3の積層高さが目標高さに達していない場合は、基板支持胴62が上昇して初期の位置に戻り、導電性ペースト充填ステップS1から判定ステップS6に至る一連の印刷動作を繰り返す。この一連の印刷動作が繰り返されることにより、
図17(C)に示すように、基板2上の導電性ペースト3の上に別の導電性ペースト3が重ねられる。このため、この実施の形態を採ることによっても基板2上に印刷パターンの形状で積層された導電性ペースト3からなる印刷パターン積層体が形成される。
【0064】
1箇所で転写動作を繰り返す印刷方法は、
図7のフローチャートによって示す方法である。この実施の形態において、
図7に示すフローチャートの導電性ペースト充填ステップS1と、受理ステップS2とは、
図18(A)に示すように、基板支持胴62を凹版21から上方に離間させた状態で、ペースト供給装置24(
図16参照)によって導電性ペースト3を凹版21に供給して行われる。凹版21上に供給された導電性ペースト3は、スクレイパ13のブレード25が凹版22に接触した状態で版ステージ12が移動することによって、凹部22内に充填される。この実施の形態を採る場合の凹版21は、同一形状(同一印刷パターン)の複数の凹部22aを有している。この実施の形態においては、凹部22aが請求項2記載の発明でいう「印刷パターン部」に相当する。
【0065】
版胴53の全ての凹部22aに導電性ペースト3が充填された後、転写ステップS3が実施される。転写ステップS3は、
図18(B)に示すように、所定の印刷位置が最も下に位置している状態で基板2が下降するように、基板支持胴62を上下方向に往復させるとともに、版ステージ12を凹部22aの形成ピッチ分だけ間欠的に移動させて実施される。転写ステップS3が実施された後、乾燥ステップS4と、検査ステップS5と、判定ステップS6,S7などが実施され、
図18(C)に示すように、基板2上の導電性ペースト3の上に別の導電性ペースト3が重ねられる。
【0066】
このため、この実施の形態を採ることによっても基板2上に印刷パターンの形状で積層された導電性ペースト3からなる印刷パターン積層体が形成される。なお、第5の実施の形態においては、基板支持胴62が上下方向に移動して版ステージ12が水平方向に移動する例を示した。しかし、基板支持胴62の位置が変わることなく、版ステージ12が上下方向と水平方向とに移動する構成を採ることができるし、基板支持胴62が水平方向に移動して版ステージ12が上下方向に移動する構成や、基板支持胴62が上下方向と水平方向とに移動して版ステージ12の位置が変わることがない構成を採ることができる。
【符号の説明】
【0067】
1,41…グラビアオフセット印刷装置(グラビア印刷装置)、2…基板、3…導電性ペースト、4…配線(印刷パターン積層体)、5…バンプ(印刷パターン積層体)、7…制御装置、11…基板ステージ、12…版ステージ、14…転写体、16…乾燥装置、17…検査装置、21,52…凹版(版)、22…印刷パターン部、22a,54a…凹部(印刷パターン部)、51,61…ダイレクトグラビア印刷装置(グラビア印刷装置)、62…基板支持胴(基板ステージ)。