(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】回転検出装置
(51)【国際特許分類】
G01D 5/14 20060101AFI20240312BHJP
G01D 5/20 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
G01D5/14 E
G01D5/20 D
(21)【出願番号】P 2019185273
(22)【出願日】2019-10-08
【審査請求日】2022-07-27
(73)【特許権者】
【識別番号】390005049
【氏名又は名称】ヒロセ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100139365
【氏名又は名称】中嶋 武雄
(72)【発明者】
【氏名】春日 敦史
【審査官】菅藤 政明
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-189612(JP,A)
【文献】特開昭63-168510(JP,A)
【文献】特開昭63-168504(JP,A)
【文献】国際公開第2017/046854(WO,A1)
【文献】特開2012-93253(JP,A)
【文献】国際公開第2019/087312(WO,A1)
【文献】特開2006-170223(JP,A)
【文献】特開2015-25738(JP,A)
【文献】特開2016-50768(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/12-5/252
G01B 7/30-7/315
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転体の回転を検出する回転検出装置であって、
大バルクハウゼン効果を生じる磁性素子を有する磁気センサと、
磁石と、
前記回転体に着脱可能に装着され、前記回転体と共に回転し
、前記磁
石が設けられた第1の基体と、
前記磁気セン
サが設けられた第2の基体と、
前記第1の基体と前記第2の基体との間に設けられた軸受と、
前記第2の基体の外周側部分に設けられたウエイトと、
前記磁気センサから出力される検出信号に基づいて前記回転体の回転数または回転量を測定する測定回路と、
前記測定回路により測定された前記回転体の回転数または回転量を記憶する記憶回路と、
前記磁気センサから出力された検出信号を用いて電力を生成し、当該生成した電力を前記測定回路および前記記憶回路に供給する電力生成回路と、
前記記憶回路に記憶された前記回転体の回転数または回転量を外部の装置に無線により送信する無線通信回路とを備え、
前記第2の基体は前記第1の基体に前記軸受を介して回転可能に支持され、前記測定回路、前記記憶回路
、前記電力生成回路および前記無線通信回路は前記第2の基体に取り付けられ
、前記第2の基体、前記磁気センサ、前記ウエイト、前記測定回路、前記記憶回路、前記電力生成回路および前記無線通信回路からなる構造体は前記第1の基体および前記軸受以外のすべての物体から分離していることを特徴とする回転検出装置。
【請求項2】
前記第1の基体は円柱状または円筒状に形成され、
前記第1の基体の軸方向一側には前記回転体を接続する回転体接続部が設けられ、
前記第2の基体は円柱状、円筒状または多面体状に形成され、
前記第2の基体の軸方向一側には前記第1の基体を挿入する挿入部が形成され、
前記軸受はラジアル軸受であり、前記軸受は前記第1の基体の外周面と前記挿入部の内周面との間に固定され、
前記第1の基体の軸方向他側に
は前記磁
石が取り付けられ、
前記第2の基体の軸方向他側には前記磁気セン
サが取り付けられ、
前記磁気センサおよび前記磁石は間隙を介して互いに対向するように配置されていることを特徴とする請求項
1に記載の回転検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大バルクハウゼン効果を生じる磁性素子を利用して回転体の回転を検出する回転検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
大バルクハウゼン効果を利用した回転検出装置は知られている。この種の回転検出装置では、例えば、回転体に磁石を固定し、回転体を回転可能に支持している支持体に磁気センサを固定し、回転体と共に磁石が回転することによって生じる磁場の変化を磁気センサにより検出する。磁気センサは、大バルクハウゼン効果を生ずる磁性線材の周囲にコイルを巻回することにより形成される。大バルクハウゼン効果を生ずる磁性線材は、外部磁場が変化すると磁化方向が瞬時に反転する性質を有している。磁性線材の磁化方向が反転したときにコイルに流れる誘導電流を検出信号として取り出し、その検出信号に基づいて回転体の回転を検出する。下記の特許文献1には、このような回転検出装置の例が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、大バルクハウゼン効果を利用した回転検出装置は、検出対象である回転体と、この回転体が回転可能に支持されている支持体とを備えた被検出装置に予め組み込まれた形で使用される。例えば、大バルクハウゼン効果を利用した回転検出装置は、電動モータに予め組み込まれた形で使用される。大バルクハウゼン効果を利用した回転検出装置を電動モータに組み込んで使用する場合、電動モータの製造時に、回転検出用の磁石が電動モータの回転シャフトに専用のブラケット等を介して固定され、磁気センサが電動モータのハウジング等に専用のブラケット等を介して固定される。
【0005】
このため、大バルクハウゼン効果を利用した回転検出装置が組み込まれていない既存の電動モータ等の装置に、大バルクハウゼン効果を利用した回転検出装置を追加することは容易でない。また、大バルクハウゼン効果を利用した回転検出装置が予め組み込まれている電動モータ等の装置から、大バルクハウゼン効果を利用した回転検出装置を分離することが困難であるため、電動モータ等の装置や、大バルクハウゼン効果を利用した回転検出装置のメンテナンス等を行うに当たり、不便である。
【0006】
本発明は例えば上述したような問題に鑑みなされたものであり、本発明の課題は、既存の被検出装置に対して容易に着脱することができ、被検出装置が有する回転体の回転の検出を手軽にまたは低コストで行うことができる、大バルクハウゼン効果を利用した回転検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、回転体の回転を検出する回転検出装置であって、大バルクハウゼン効果を生じる磁性素子を有する磁気センサと、磁石と、前記回転体に着脱可能に装着され、前記回転体と共に回転し、前記磁気センサおよび前記磁石のうちの一方が設けられた第1の基体と、前記磁気センサおよび前記磁石のうちの他方が設けられた第2の基体と、前記第1の基体と前記第2の基体との間に設けられた軸受と、前記磁気センサから出力される検出信号に基づいて前記回転体の回転数または回転量を測定する測定回路と、前記測定回路により測定された前記回転体の回転数または回転量を記憶する記憶回路と、前記記憶回路に記憶された前記回転体の回転数または回転量を外部の装置に無線により送信する無線通信回路とを備え、前記第2の基体は前記第1の基体に前記軸受を介して回転可能に支持され、前記測定回路、前記記憶回路および前記無線通信回路は前記第2の基体に取り付けられていることを特徴とする。
【0008】
また、上記本発明の回転検出装置において、前記第2の基体は、前記回転体を回転可能に支持している支持体から分離独立していることが好ましい。
【0009】
また、上記本発明の回転検出装置において、前記第1の基体は円柱状または円筒状に形成され、前記第1の基体の軸方向一側には前記回転体を接続する回転体接続部が設けられ、前記第2の基体は円柱状、円筒状または多面体状に形成され、前記第2の基体の軸方向一側には前記第1の基体を挿入する挿入部が形成され、前記軸受はラジアル軸受であり、前記軸受は前記第1の基体の外周面と前記挿入部の内周面との間に固定され、前記第1の基体の軸方向他側には前記磁気センサおよび前記磁石のうちの一方が取り付けられ、前記第2の基体の軸方向他側には前記磁気センサおよび前記磁石のうちの他方が取り付けられ、前記磁気センサおよび前記磁石は間隙を介して互いに対向するように配置されている構成としてもよい。
【0010】
また、上記本発明の回転検出装置において、前記第2の基体の外周側部分にウエイトを設けてもよい。
【0011】
また、上記本発明の回転検出装置において、前記磁気センサから出力された検出信号を用いて電力を生成し、当該生成した電力を前記測定回路および前記記憶回路に供給する電力生成回路とを備えていることとしてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明による大バルクハウゼン効果を利用した回転検出装置によれば、既存の被検出装置に対して容易に着脱することができ、被検出装置が有する回転体の回転の検出を手軽にまたは低コストで行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第1の実施形態の回転検出装置を示す説明図である。
【
図2】
図1中の矢示II-II方向から見た回転検出装置を示す説明図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態の回転検出装置における磁性素子を示す斜視図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態の回転検出装置における電気的構成を示すブロック図である。
【
図5】本発明の第2の実施形態の回転検出装置を示す説明図である。
【
図6】
図5中の矢示VI-VI方向から見た回転検出装置を示す説明図である。
【
図7】本発明の実施例の回転検出装置を示す説明図である。
【
図8】本発明の第2の実施形態の回転検出装置の変形例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[第1の実施形態]
図1は本発明の第1の実施形態の回転検出装置1の縦断面を回転シャフト91と共に示している。
図2は
図1中の矢示II-II方向から見た回転検出装置1の横断面を示している。
【0015】
図1において、回転検出装置1は、大バルクハウゼン効果を利用して回転体の回転を検出する機能を有している。また、
図1中の回転シャフト91は、被検出装置の一例である電動モータの回転シャフトである。回転シャフト91は回転体の一例であり、
図1中のXは回転シャフト91の軸線である。回転シャフト91はその軸方向が水平となるように配置されている。回転検出装置1は、回転シャフト91の先端部に接続することができ、回転シャフト91の回転を検出することができる。
【0016】
回転検出装置1は、第1の基体としての回転基体11と、第2の基体としての静止基体16と、軸受19と、ウエイト20と、磁石21と、磁気センサ23と、回路ユニット31とを備えている。
【0017】
回転基体11は、樹脂または金属等により、回転シャフト91の直径よりも大きい外径を有する円柱状に形成されている。回転基体11の軸方向一側(
図1中の矢示A方向側)には回転体接続部としてのシャフト接続穴12が形成されている。シャフト接続穴12は回転基体11の軸方向一側の端面において開口している。シャフト接続穴12には回転シャフト91の先端部を挿入して接続することができる。シャフト接続穴12はその軸線と回転基体11の軸線とが一致するように形成されている。シャフト接続穴12に回転シャフト91を接続したとき、回転基体11は回転シャフト91と同軸に配置される。また、回転基体11においてシャフト接続穴12の外周側部分には、当該部分を径方向に貫通するねじ穴13が形成され、ねじ穴13内には、シャフト接続穴12に挿入された回転シャフト91の先端部をシャフト接続穴12内に固定するための止めねじ14が取り付けられている。
【0018】
静止基体16は、樹脂または金属等により、回転基体11の外径よりも大きい外径を有する円柱状に形成されている。静止基体16の軸方向一側(
図1中の矢示A方向側)には挿入部としての挿入穴17が形成され、挿入穴17内には、回転基体11が挿入されている。また、本実施形態において、挿入穴17はその軸線と静止基体16の軸線とが一致するように形成されており、静止基体16は軸受19を介して回転基体11と同軸に配置されている。
【0019】
軸受19はラジアル軸受である。本実施形態においては軸受19としてころがり軸受が採用されている。軸受19は内輪、外輪および複数の転動体を有している。軸受19は回転基体11と静止基体16との間に設けられている。具体的には、軸受19の内輪は回転基体11の外周面に固定され、軸受19の外輪は挿入穴17の内周面に固定されている。静止基体16は軸受19を介して回転基体11に回転可能に支持されている。
【0020】
また、静止基体16は、回転基体11に軸受19を介して支持されているのみであり、回転基体11以外の物体には支持されていない。静止基体16は、回転シャフト91を回転可能に支持している支持体(例えば電動モータのハウジング)から分離独立している。
【0021】
また、静止基体16の外周側部分の周方向の一部にはウエイト20が設けられている。ウエイト20は、鉄、銅、鉛等の金属等、比重の大きい物質により形成することが好ましい。
【0022】
磁石21は、挿入穴17内に位置し、回転基体11の軸方向他側(
図1中の矢示B方向側)の端面に取り付けられ、固定されている。磁石21は棒状に形成され、その伸長方向の一端側がN極であり、伸長方向の他端側がS極である。また、磁石21は、その伸長方向が回転基体11の径方向となるように配置されている。また、
図2に示すように、磁石21は回転基体11の軸方向他側端面の中央に配置されている。
【0023】
磁気センサ23は、挿入穴17内に位置し、静止基体16の軸方向他側に取り付けられている。具体的には、磁気センサ23は挿入穴17の底面に固定されている。
図3は磁気センサ23を示している。
図3に示すように、磁気センサ23は、磁性素子24、コイル25、ボビン26および一対の端子27を有している。
【0024】
磁性素子24は、直線状に伸長し、外部からかかる磁場の方向に応じて磁化方向が変化する素子である。磁性素子24は、大バルクハウゼン効果を生ずる磁性素子である。磁性素子24は、例えば、鉄およびコバルトを含む半硬質磁性材料により形成され、直径が例えばおよそ0.1mm~1mmで、長さが例えばおよそ10mm~30mmの線材である。磁性素子24は、例えば、上記半硬質磁性材料を線引きし、方向を変えながら複数回捻ることにより形成されている。磁性素子24は、磁化が容易な方向が当該磁性素子24の軸線方向である一軸異方性を有している。また、磁性素子24において、その外周側部分よりも中心側部分の方が保磁力が大きい。磁性素子24は外部磁場の方向の変化に応じて磁性素子24(その外周側部分)の磁化方向が急反転する性質を有している。
【0025】
磁性素子24は例えば樹脂製のボビン26の内部に収容されている。コイル25は、ボビン26の外周側に巻線を巻回することにより形成されている。これにより、コイル25の中心に磁性素子24が貫通した構造が形成されている。また、一対の端子27はボビン26の両端側にそれぞれ設けられている。各端子27は導電材料により形成され、各端子27の一端部には巻線の端部が接続されている。
【0026】
図1および
図2を見るとわかる通り、磁気センサ23は磁性素子24の伸長方向が静止基体16の径方向となるように配置されている。また、磁気センサ23は挿入穴17の底面の中央に配置されている。また、
図1に示すように、磁気センサ23は磁石21と間隙を介して対向している。
【0027】
回路ユニット31は、静止基体16の軸方向他側面に取り付けられ、固定されている。
図4は回転検出装置1の電気的構成を示している。
図4に示すように、回路ユニット31は、測定回路32、記憶回路33および電力生成回路34を有している。また、測定回路32および電力生成回路34には磁気センサ23(例えば端子27)が電気的に接続されている。測定回路32は、磁気センサ23から出力される検出信号に基づいて回転シャフト91の回転数を測定する回路である。具体的には、測定回路32は磁気センサ23から出力される検出信号におけるパルスをカウントする回路である。記憶回路33は、測定回路32により測定された回転シャフト91の回転数(具体的には上記パルスのカウント値)を記憶する回路である。例えば、記憶回路33は不揮発性の半導体記憶素子により形成されている。電力生成回路34は、磁気センサ23から出力された検出信号を用いて電力を生成し、当該生成した電力を測定回路32および記憶回路33に供給する回路である。測定回路32および記憶回路33は、電力生成回路34から供給された電力により動作する。
【0028】
このような構成を有する回転検出装置1は次のように動作する。まず、回転検出装置1を動作させる準備として、回転検出装置1を回転シャフト91に装着する。回転検出装置1の回転シャフト91への装着は、回転シャフト91の先端部を回転基体11のシャフト接続穴12に挿入し、止めねじ14を締めることで完了する。
【0029】
回転シャフト91が回転すると、回転シャフト91と共に回転基体11が回転する。一方、静止基体16は、回転基体11に軸受19を介して支持されているのみであるので、軸受19およびウエイト20により静止状態を維持する。その結果、静止基体16に対して回転基体11が回転し、それゆえ、静止基体16に固定された磁気センサ23に対して、回転基体11に固定された磁石21が回転する。
【0030】
図1に示すように、磁石21は磁気センサ23に接近した位置に配置されているので、磁気センサ23の周囲には磁石21により磁場が形成される。磁気センサ23の磁性素子24はこの磁場により磁化される。上述したように、磁性素子24は外部磁場の方向の変化に応じてその磁化方向が急反転する性質を有している。磁石21が
図1に示すように配置されている場合、磁石21が180度回転すると、磁気センサ23の周囲の磁場の方向が逆転する。したがって、磁石21が一定の方向に180度回転する度に磁性素子24の磁化方向が急反転する。
【0031】
磁性素子24の磁化方向が急反転することにより、磁気センサ23のコイル25にパルス状の誘導電流が流れる。この誘導電流は検出信号として磁気センサ23から出力され、測定回路32および電力生成回路34にそれぞれ入力される。電力生成回路34は磁気センサ23からの検出信号を整流して直流電圧を作り出し、その直流電圧を測定回路32および記憶回路33に印加する。これにより、測定回路32および記憶回路33が稼働する。測定回路32は、磁気センサ23からの検出信号におけるパルスをカウントし、不揮発性の記憶回路33に記憶されているカウント値を更新する。
【0032】
記憶回路33に記憶されたカウント値に基づいて回転シャフト91の回転数を把握することができる。例えば、回転シャフト91の回転が停止しているときに、回転検出装置1を回転シャフト91から分離させ、回転検出装置1の回路ユニット31をケーブルを用いてスマートフォンやパーソナルコンピュータ等に接続し、記憶回路33に記憶されたカウント値を読み出すことができる。また、回路ユニット31に無線通信回路を設け、無線により記憶回路33に記憶されたカウント値をスマートフォンやパーソナルコンピュータ等に送信するようにしてもよい。
【0033】
以上説明した通り、本発明の第1の実施形態の回転検出装置1によれば、回転基体11が回転シャフト91に着脱可能な構造を有し、かつ静止基体16が回転基体11に軸受19を介して支持されており、静止基体16が回転基体11以外の物体から分離独立しているので、回転検出装置1を回転シャフト91に容易に装着することができ、かつ回転検出装置1を回転シャフト91から容易に分離することができる。したがって、例えば回転検出装置が予め組み込まれていない既存の電動モータに、回転検出装置1を容易に追加することができ、当該電動モータの回転シャフトの回転検出または回転数測定を手軽に行うことができる。すなわち、回転検出機能や回転数測定機能を持たない電動モータにこれらの機能を低コストで付加することができる。また、回転検出装置1を回転シャフトから容易に分離することができるので、電動モータまたは回転検出装置1のメンテナンス等を容易に行うことができる。
【0034】
また、本実施形態の回転検出装置1は、回転シャフト91の先端部を接続するためのシャフト接続穴12を有している。この構成によれば、回転シャフト91をシャフト接続穴12に接続するだけで、回転検出装置1の電動モータへの装着作業を完了することができ、回転検出装置1の電動モータへの装着をきわめて容易に行うことができる。
【0035】
また、本実施形態の回転検出装置1は、大バルクハウゼン効果を有する磁性素子24を有しており、磁石21により形成された磁場の方向の変化に応じた磁性素子24の磁化方向の反転によりコイル25に流れる誘導電流を利用して、回転シャフト91の回転の検出だけでなく、測定回路32および記憶回路33を稼働させるための電力の生成をも行う。この構成により、回転検出装置1は、回転シャフト91の回転の検出を行うに当たり、外部電源が不要である。したがって、回転シャフト91の検出を行うに当たり、回転検出装置1に、外部電源から回転検出装置1に電力を供給するための電源ケーブルを接続する必要がない。これにより、電源ケーブルの配線等の手間のかかる作業をなくすことができ、回転検出装置1を用いた回転シャフト91の回転検出の容易性を大幅に向上させることができる。
【0036】
また、本実施形態の回転検出装置1はウエイト20を有している。この構成により、回転基体11の回転時に静止基体16を確実に静止させることができ、回転シャフト91の回転検出の精度を高めることができる。
【0037】
また、本実施形態の回転検出装置1は、回転シャフト91の回転数を測定して記憶する回路ユニット31を有している。この構成により、回転シャフト91の回転数の測定を容易に行うことができる。例えば、回転シャフト91の回転数の測定結果に基づき、電動モータの寿命を推測することができ、電動モータの管理を簡単に行うことができる。
【0038】
[第2の実施形態]
図5は本発明の第2の実施形態の回転検出装置41の縦断面を回転シャフト91と共に示している。
図6は
図5中の矢示VI-VI方向から見た回転検出装置41の横断面を示している。以下、本発明の第2の実施形態の回転検出装置41につき、本発明の第1の実施形態の回転検出装置1と相違する点を中心に説明する。
【0039】
図5および
図6に示すように、本発明の第2の実施形態の回転検出装置41において、回転基体42は円筒状に形成され、回転基体42の内側は、回転シャフト91を接続するシャフト接続部43となっている。また、回転基体42の軸方向一端側(矢示A方向端側)の部分および軸方向他端側(矢示B方向端側)の部分のそれぞれの周壁部にねじ穴44が形成され、各ねじ穴44に止めねじ45が取り付けられている。
【0040】
また、静止基体46は中空の円柱状に形成され、静止基体46の軸方向一端側(矢示A方向端側)の壁部の中央、および静止基体46の軸方向他端側(矢示B方向端側)の壁部の中央には、回転基体42を挿通させるための挿通穴47がそれぞれ形成されている。また、ウエイト48は静止基体46の外周面の周方向における一部に固定されている。なお、静止基体46の軸方向一端側の挿通穴47および静止基体46の内部は特許請求の記載における挿入部の具体例である。
【0041】
また、回転検出装置41は2つの軸受49、50を有し、一方の軸受49は回転基体42の軸方向一端部と静止基体46の軸方向一端部との間に設けられ、他方の軸受50は回転基体42の軸方向他端部と静止基体46の軸方向他端部との間に設けられている。
【0042】
また、回転検出装置41は2つの磁石51、52を有し、各磁石51、52は静止基体46の内部に位置し、回転基体42の外周面に取り付けられ、固定されている。また、各磁石51、52はその伸長方向が回転基体42の軸方向となるように配置されている。また、2つの磁石51、52は180度の間隔を置いて配置されている。また、2つの磁石51、52はN極およびS極が互いに逆になるように配置されている。
【0043】
また、磁気センサ53は、静止基体46の内部に位置し、静止基体46の内周面に取り付けられている。また、磁気センサ53は磁性素子の伸長方向が静止基体46の軸方向となるように配置されている。また、磁気センサ53は各磁石51、52の回転軌道に対向するように配置されている。回転基体42が
図5に示す位置であるときには、磁気センサ53は磁石51と間隙を介して対向する。回転基体42が
図5に示す位置から180度回転したときには、磁気センサ63は磁石52と間隙を介して対向する。磁気センサ53自体の構成は第1の実施形態における磁気センサ23の構成と同じである。
【0044】
回路ユニット54は静止基体46の外周面の周方向における一部に取り付けられている。回路ユニット54自体の構成は第1の実施形態の回路ユニット31の構成と同じである。
【0045】
このような構成を有する本発明の第2の実施形態の回転検出装置41によっても、本発明の第1の実施形態の回転検出装置1と同様の作用効果を得ることができる。さらに、本発明の第2の実施形態の回転検出装置41によれば、シャフト接続部43に回転シャフト91を貫通させ、2つの止めねじ45を締めることで、回転検出装置41を回転シャフト91の途中(端部ではない箇所)に装着することができる。
【実施例】
【0046】
図7は本発明の実施例の回転検出装置61を、被検出装置としての電動モータ95と共に示している。本発明の実施例の回転検出装置61の構成は、多くの点で、本発明の第1の実施形態の回転検出装置1の構成と共通している。以下の説明では、本発明の実施例の回転検出装置61の構成において、本発明の第1の実施形態の回転検出装置1の構成と共通する点については簡単に述べるにとどめる。
【0047】
図7に示すように、本実施例の回転検出装置61は、電動モータ95が有する回転体としての回転シャフト96にアタッチメント62を介して装着することができる。アタッチメント62は、例えばネオジム磁石等により円板状に形成され、アタッチメント62の中心には当該アタッチメント62を軸方向に貫通する固定穴63が形成されている。また、アタッチメント62には、当該アタッチメント62の外周面から固定穴63の内周面にかけて径方向に伸びるねじ穴64が形成され、ねじ穴64には止めねじ65が取り付けられている。アタッチメント62の固定穴63に、当該アタッチメント62の軸方向一側から軸方向他側に向かって
図7中の矢示B方向に回転シャフト96の先端部を挿入し、止めねじ65を締めることにより、アタッチメント62を回転シャフト96の先端部に取り付けて、固定することができる。また、アタッチメント62の軸方向他側(矢示B方向側)の端面には、回転検出装置61のアタッチメント62に対する位置を定めるための取付凸部66が形成されている。取付凸部66はアタッチメント62の軸方向他側の端面の中央部から軸方向他側へ突出している。回転検出装置61はアタッチメント62の磁力によりアタッチメント62に吸着される。その際、回転検出装置61の回転基体71に形成された取付穴72に取付凸部66が挿入されることで、回転検出装置61のアタッチメント62に対する位置が定まり、その結果、回転検出装置61の回転基体71および静止基体73が回転シャフト96と同軸に配置される。
【0048】
回転検出装置61は、第1の基体としての回転基体71と、第2の基体としての静止基体73と、軸受75と、磁石77と、磁気センサ82と、回路ユニット83とを備えている。回転基体71は例えば鉄等の軟磁性材料により円柱状に形成されている。また、回転基体71の軸方向一側(
図7中の矢示A方向側)の端面の中央には、回転体接続部としての取付穴72が形成されている。また、静止基体73は円筒状に形成され、静止基体73の内側は、回転基体71を挿入する挿入部74となっている。軸受75は、回転基体71の外周面と静止基体73の内周面との間に設けられている。また、静止基体73の外周側部分の一部には、静止基体73の一部が肉抜きされた肉抜き部76が形成されている。肉抜き部76を形成することにより、静止基体73の外周側部分において肉抜き部76が形成されていない部分がウエイトとして機能するようになる。
【0049】
磁石77は、本発明の第1の実施形態における磁石21と同様に、回転基体71の軸方向他側(
図7中の矢示B方向側)の端面に取り付けられ、固定されている。また、静止基体73の軸方向他端部には、静止基体73の軸方向他端側を閉塞する円板状の蓋板78が複数のねじ79を用いて固定されている。蓋板78は例えば樹脂により形成されている。また、蓋板78の軸方向他側面には、基板取付部材80を介して基板81が取り付けられ、基板81に磁気センサ82および回路ユニット83が取り付けられている。また、磁気センサ82は磁性素子の伸長方向が静止基体16の径方向となるように配置されている。また、磁気センサ82は蓋板78の中央と対向した位置に配置されている。また、回転基体71および磁気センサ82と蓋板78との間には間隙が形成され、磁気センサ82と蓋板78との間にも間隙が形成され、磁石77と磁気センサ82とは、これらの間隙および蓋板78を介して互いに対向している。磁石77と磁気センサ82とは互いに接近しており、その間に介在している蓋板78は樹脂製の薄い板であるので、磁石77により形成された磁場は磁気センサ82に作用する。また、磁気センサ82自体の構造は本発明の第1の実施形態における磁気センサ23の構造と同じである。また、回路ユニット83自体の構造は本発明の第1の実施形態における回路ユニット31の構造と同じである。
【0050】
本発明の実施例の回転検出装置61によれば、本発明の第1の実施形態の回転検出装置1と同様の作用効果が得られる。さらに、本発明の実施例の回転検出装置61によれば、回転シャフト96に取り付けられたアタッチメント62にその磁力により回転検出装置1を吸着させるだけで、回転検出装置1を電動モータ95にきわめて簡単に装着することができる。また、電動モータ95と回転検出装置1との分離も容易である。
【0051】
また、本発明の実施例の回転検出装置61によれば、静止基体73に肉抜き部76が形成されているので、別部材のウエイトを静止基体73に取り付ける必要がない。また、静止基体73に蓋板78を取り付け、蓋板78に磁気センサ82および回路ユニット83を取り付ける構成としたので、回転検出装置61を容易に組み立てることができる。
【0052】
なお、本発明の回転検出装置において、磁石の個数は3つ以上でもよく、磁気センサの個数は2つ以上でもよい。例えば、本発明の回転検出装置を
図8に示すように構成してもよい。
図8に示す回転検出装置100は、本発明の第2の実施形態の回転検出装置41を変形したものである。回転検出装置100においては、回転基体42に4つの磁石101~104が90度間隔に取り付けられ、静止基体46に3つの磁気センサ105~107が120度間隔に取り付けられている。回転検出装置100によれば、回転体の1回転未満の回転量(回転角度)および回転方向を検出することができる。回転検出装置100によれば、回路ユニット54の測定回路および記憶回路により回転体の1回転未満の回転量を測定し、記憶することができる。
【0053】
また、
図1、
図5、
図7および
図8に示す2つの実施形態、実施例および変形例では、回転基体11(42、71)に磁石21(51、52、77、101~104)を取り付け、静止基体16(46、73)に磁気センサ23(53、82、105~107)を取り付けたが、回転基体11(42、71)に磁気センサを取り付け、静止基体16(46、73)に磁石を取り付けることもできる。この場合には、回路ユニットを回転基体11(42、71)に取り付ける。
【0054】
また、上記各実施形態および上記実施例では、磁気センサ23(53、82、105~107)の磁性素子として、磁性素子の外周側部分よりも中心側部分の方が保磁力の大きい磁性素子を用いたが、磁性素子の外周側部分よりも中心側部分の方が保磁力の小さい磁性素子を用いてもよい。
【0055】
また、上記各実施形態および上記実施例では、軸受19(49、50、75)としてころがり軸受を採用したが、すべり軸受等、他の種類の軸受を採用することもできる。
【0056】
また、上記各実施形成では、静止基体16(46)にウエイト20(48)を設けたが、回転基体11(42)が回転している間に静止基体16(46)の静止状態を維持するための他の構成を採用することにより、ウエイト20(48)を廃することができる。静止基体16(46)の静止状態を維持するための他の構成として、静止基体16において挿入穴17または挿通穴47の位置を偏心させる構成が考えられる。また、静止基体16(46)の静止状態を維持するための他の構成として、フィンまたは鰭状の部材を静止基体16の軸方向他側端面もしくは外周面、または静止基体46の外周面に設け、空気抵抗により静止基体16(46)の静止状態を維持するようにする構成が考えられる。
【0057】
また、静止基体16(46、73)の形状は円柱状または円筒状に限らず、多面体状でもよい。
【0058】
また、本発明の回転検出装置は、電動モータの回転シャフトの回転検出および回転数測定の他に、例えば鉄道や自動車等の車両の車軸、船舶のプロペラ軸、風力発電機のプロペラ軸、蒸気タービンの回転軸等、種々の回転体の回転検出または回転数測定に用いることができる。
【0059】
また、本発明は、請求の範囲および明細書全体から読み取ることのできる発明の要旨または思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う回転検出装置もまた本発明の技術思想に含まれる。
【符号の説明】
【0060】
1、41、61、100 回転検出装置
11、42、71 回転基体(第1の基体)
12 シャフト接続穴(回転体接続部)
16、46、73 静止基体(第2の基体)
17 挿入穴(挿入部)
19、49、50、75 軸受
20、48 ウエイト
21、51、52、77、101~104 磁石
23、53、82、105~107 磁気センサ
31、54、83 回路ユニット
32 測定回路
33 記憶回路
34 電力生成回路
43 シャフト接続部(回転体接続部)
47 挿通穴(挿入部)
72 取付穴(回転体接続部)
74 挿入部
91、96 回転シャフト(回転体)