(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】溶接又はアディティブマニュファクチャリング用二重ワイヤ駆動システム
(51)【国際特許分類】
B23K 9/133 20060101AFI20240312BHJP
【FI】
B23K9/133 501A
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019187620
(22)【出願日】2019-10-11
【審査請求日】2022-09-27
(32)【優先日】2018-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-03-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510202156
【氏名又は名称】リンカーン グローバル,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】スティーヴン アール.ピーターズ
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー シー.メールマン
(72)【発明者】
【氏名】マシュー エー.ウィークス
(72)【発明者】
【氏名】ブラッドフォード ダブリュー.ペトット
【審査官】柏原 郁昭
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第03751628(US,A)
【文献】実開昭53-029726(JP,U)
【文献】特開昭50-071536(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0041910(US,A1)
【文献】米国特許第02866079(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0152921(US,A1)
【文献】米国特許第04144443(US,A)
【文献】実開平02-118671(JP,U)
【文献】東ドイツ国経済特許第129180(DD,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 9/133
B23K 9/00
B23K 9/173
B23K 9/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の環状溝を有する第一の駆動ロールと、
前記第一の環状溝と整列した第二の環状溝を有する第二の駆動ロールと、
前記第一の環状溝と前記第二の環状溝の両方の中で前記第一の駆動ロールと前記第二の駆動ロールとの間に配置される第一の溶接ワイヤと、
前記第一の環状溝と前記第二の環状溝の両方の中で前記第一の駆動ロールと前記第二の駆動ロールとの間に配置される第二の溶接ワイヤと、
前記第一の駆動ロールを前記第二の駆動ロールに向かって付勢し、前記第一の溶接ワイヤを前記第二の溶接ワイヤと接触させる付勢部材と、
を含む溶接又はアディティブマニュファクチャリング用ワイヤ駆動システムであって、
前記第一の溶接ワイヤは、前記第一の環状溝の第一の側壁部分、前記第二の環状溝の第一の側壁部分、及び前記第二の溶接ワイヤの各々と接触し、
前記第二の溶接ワイヤは、前記第一の環状溝の第二の側壁部分、前記第二の環状溝の第二の側壁部分、及び前記第一の溶接ワイヤの各々と接触し、
前記第一の駆動ロールと前記第二の駆動ロールは反対方向に回転し、それによって前記第一の溶接ワイヤと前記第二の溶接ワイヤを前記溶接又はアディティブマニュファクチャリング用ワイヤ駆動システムの中で移動させる溶接又はアディティブマニュファクチャリング用ワイヤ駆動システム。
【請求項2】
前記第一の溶接ワイヤと前記第二の溶接ワイヤは異なる直径を有する、請求項1に記載の溶接又はアディティブマニュファクチャリング用ワイヤ駆動システム。
【請求項3】
前記第一の溶接ワイヤと前記第二の溶接ワイヤは異なる組成を有する、請求項1に記載の溶接又はアディティブマニュファクチャリング用ワイヤ駆動システム。
【請求項4】
前記第一の溶接ワイヤは中実の溶接ワイヤであり、前記第二の溶接ワイヤはフラックスコア溶接ワイヤである、請求項1に記載の溶接又はアディティブマニュファクチャリング用ワイヤ駆動システム。
【請求項5】
前記第一の溶接ワイヤは中実の溶接ワイヤであり、前記第二の溶接ワイヤはメタルコア溶接ワイヤである、請求項1に記載の溶接又はアディティブマニュファクチャリング用ワイヤ駆動システム。
【請求項6】
前記第一の環状溝と前記第二の環状溝のそれぞれの断面は台形の形状を有する、請求項1に記載の溶接又はアディティブマニュファクチャリング用ワイヤ駆動システム。
【請求項7】
前記台形の形状は等脚台形である、請求項6に記載の溶接又はアディティブマニュファクチャリング用ワイヤ駆動システム。
【請求項8】
前記台形の形状は鋭角を含む台形である、請求項6に記載の溶接又はアディティブマニュファクチャリング用ワイヤ駆動システム。
【請求項9】
前記台形の形状は直角を含む台形である、請求項6に記載の溶接又はアディティブマニュファクチャリング用ワイヤ駆動システム。
【請求項10】
前記第一の環状溝は、前記第一の環状溝の前記第一の側壁部分と前記第一の環状溝の前記第二の側壁部分との間に延びる第一の溝底部を含み、
前記第二の環状溝は、前記第二の環状溝の前記第一の側壁部分と前記第二の環状溝の前記第二の側壁部分との間に延びる第二の溝底部を含み、
前記第一の溶接ワイヤは、前記第一の溝底部と前記第二の溝底部の両方から
半径方向にオフセットされ、
前記第二の溶接ワイヤは、前記第一の溝底部と前記第二の溝底部の両方から
半径方向にオフセットされている、
請求項1に記載の溶接又はアディティブマニュファクチャリング用ワイヤ駆動システム。
【請求項11】
前記第一の溶接ワイヤは、前記第一の環状溝の前記第一の側壁部分、前記第二の環状溝の前記第一の側壁部分、及び前記第二の溶接ワイヤにより固定され、前記第一の溝底部と前記第二の溝底部の両方から
半径方向にオフセットされるように固定され、
前記第二の溶接ワイヤは、前記第一の環状溝の前記第二の側壁部分、前記第二の環状溝の前記第二の側壁部分、及び前記第一の溶接ワイヤにより固定され、前記第一の溝底部と前記第二の溝底部の両方から
半径方向にオフセットされるように固定される、
請求項10に記載の溶接又はアディティブマニュファクチャリング用ワイヤ駆動システム。
【請求項12】
前記第一の環状溝は、前記第一の環状溝の前記第一の側壁部分と前記第一の環状溝の前記第二の側壁部分との間に延びる第一の溝底部を含み、
前記第二の環状溝は、前記第二の環状溝の前記第一の側壁部分と前記第二の環状溝の前記第二の側壁部分との間に延びる第二の溝底部を含み、
前記第一の溶接ワイヤと、前記第一の溝底部及び前記第二の溝底部の両方との間にそれぞれのギャップが存在する、
請求項1に記載の溶接又はアディティブマニュファクチャリング用ワイヤ駆動システム。
【請求項13】
第一の円周溝であって、前記第一の円周溝の第一の内側側壁と第一の外側側壁との間に延びる第一の溝底部を含む第一の円周溝を有する第一の駆動ロールと、
前記第一の円周溝と整列する第二の円周溝を有する第二の駆動ロールであって、前記第二の円周溝は、前記第二の円周溝の第二の内側側壁と第二の外側側壁との間に延びる第二の溝底部を含む第二の駆動ロールと、
前記第一の円周溝と前記第二の円周溝の両方の中で前記第一の駆動ロールと前記第二の駆動ロールとの間に配置された第一の溶接ワイヤと、
前記第一の円周溝と前記第二の円周溝の両方の中で前記第一の駆動ロールと前記第二の駆動ロールとの間に配置された第二の溶接ワイヤと、
前記第一の駆動ロールを前記第二の駆動ロールに向かって付勢し、前記第一の溶接ワイヤを前記第二の溶接ワイヤと接触させる付勢部材と、
を含む溶接又はアディティブマニュファクチャリング用ワイヤ駆動システムであって、
前記第一の溶接ワイヤは、前記第一の内側側壁、前記第二の内側側壁、及び前記第二の溶接ワイヤの各々と接触し、
前記第二の溶接ワイヤは、前記第一の外側側壁、前記第二の外側側壁、及び前記第一の溶接ワイヤの各々と接触し、
前記第一の溶接ワイヤと前記第二の溶接ワイヤの少なくとも一方は、前記第一の溝底部と前記第二の溝底部の両方から
半径方向にオフセットされている溶接又はアディティブマニュファクチャリング用ワイヤ駆動システム。
【請求項14】
前記第一の溶接ワイヤと前記第二の溶接ワイヤは異なる直径を有する、請求項13に記載の溶接又はアディティブマニュファクチャリング用ワイヤ駆動システム。
【請求項15】
前記第一の溶接ワイヤと前記第二の溶接ワイヤは異なる組成を有する、請求項13に記載の溶接又はアディティブマニュファクチャリング用ワイヤ駆動システム。
【請求項16】
前記第一の溶接ワイヤと前記第二の溶接ワイヤの一方は中実の溶接ワイヤであり、前記第一の溶接ワイヤと前記第二の溶接ワイヤの他方はフラックスコア溶接ワイヤである、請求項13に記載の溶接又はアディティブマニュファクチャリング用ワイヤ駆動システム。
【請求項17】
前記第一の溶接ワイヤ及び前記第二の溶接ワイヤの一方は中実の溶接ワイヤであり、前記第一の溶接ワイヤと前記第二の溶接ワイヤの他方はメタルコア溶接ワイヤである、請求項13に記載の溶接又はアディティブマニュファクチャリング用ワイヤ駆動システム。
【請求項18】
前記第一の円周溝と前記第二の円周溝のそれぞれの断面は台形の形状を有する、請求項13に記載の溶接又はアディティブマニュファクチャリング用ワイヤ駆動システム。
【請求項19】
前記台形の形状は等脚台形である、請求項18に記載の溶接又はアディティブマニュファクチャリング用ワイヤ駆動システム。
【請求項20】
前記台形の形状は鋭角を含む台形である、請求項18に記載の溶接又はアディティブマニュファクチャリング用ワイヤ駆動システム。
【請求項21】
前記台形の形状は直角を含む台形である、請求項18に記載の溶接又はアディティブマニュファクチャリング用ワイヤ駆動システム。
【請求項22】
前記第一の溶接ワイヤと前記第二の溶接ワイヤは前記第一の溝底部と前記第二の溝底部の両方からずれている、請求項13に記載の溶接又はアディティブマニュファクチャリング用ワイヤ駆動システム。
【請求項23】
前記第一の溶接ワイヤは、前記第一の内側側壁、前記第二の内側側壁、及び前記第二の溶接ワイヤにより固定され、前記第一の溝底部と前記第二の溝底部の両方から
半径方向にオフセットされるように固定され、
前記第二の溶接ワイヤは、前記第一の外側側壁、前記第二の外側側壁、及び前記第一の溶接ワイヤにより固定され、前記第一の溝底部と前記第二の溝底部の両方から
半径方向にオフセットされるように固定される、
請求項13に記載の溶接又はアディティブマニュファクチャリング用ワイヤ駆動システム。
【請求項24】
第一の駆動ロールと、
第二の駆動ロールであって、前記第一の駆動ロール及び該第二の駆動ロールのうちの一方又は両方は円周溝を有する、第二の駆動ロールと、
前記円周溝の中で前記第一の駆動ロールと前記第二の駆動ロールとの間に配置される第一の溶接ワイヤと、
前記円周溝の中で前記第一の駆動ロールと前記第二の駆動ロールとの間に配置される第二の溶接ワイヤと、
前記第一の駆動ロールを前記第二の駆動ロールに向かって付勢して、前記第一の溶接ワイヤを前記第二の溶接ワイヤと接触させる付勢部材と、
を含む溶接又はアディティブマニュファクチャリング用ワイヤ駆動システムであって、
前記第一の溶接ワイヤは、前記円周溝の第一の側壁部分とさらに接触し、前記第二の溶接ワイヤは、前記円周溝の第二の側壁部分とさらに接触し、
前記第一の溶接ワイヤと前記第二の溶接ワイヤはどちらも、前記円周溝の底部から
半径方向にオフセットされ、前記底部は、前記円周溝の前記第一の側壁部分と前記第二の側壁部分との間に延びる溶接又はアディティブマニュファクチャリング用ワイヤ駆動システム。
【請求項25】
前記円周溝は台形の形状を有する、請求項24に記載の溶接又はアディティブマニュファクチャリング用ワイヤ駆動システム。
【請求項26】
前記第一の溶接ワイヤと前記第二の溶接ワイヤは異なる直径を有する、請求項24に記載の溶接又はアディティブマニュファクチャリング用ワイヤ駆動システム。
【請求項27】
前記第一の駆動ロールと前記第二の駆動ロールの両方は、それぞれ垂直に整列された円周溝を含む、請求項24に記載の溶接又はアディティブマニュファクチャリング用ワイヤ駆動システム。
【請求項28】
前記円周溝の前記底部は凹型である、請求項24に記載の溶接又はアディティブマニュファクチャリング用ワイヤ駆動システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明による装置、システム、及び方法は、二重ワイヤ構成での材料堆積に関する。
【背景技術】
【0002】
溶接を行う際、溶接中に溶接ビードの幅を広くし、又は溶融プールの長さを長くすることが望ましいことが多い。これが望まれるのには様々な理由があり得、このことは溶接業界においてよく知られている。例えば溶融プールを長くして、溶接及びフィラ金属溶融プールをより長時間にわたって保持し、ポロシティを減少させることが望ましいことがある。すなわち、溶融プールがより長時間にわたり溶融状態であると、ビードが固化する前に有害ガスが溶接ビードから排出されるための時間が長くなる。さらに、溶接ビードの幅を広くして、より広い溶接ギャップをカバーするか、又はワイヤ溶着速度を速めることが望ましいことがある。何れの場合でも、より大きい電極直径を用いることが一般的である。直径を大きくすると、溶融プールの幅と長さの両方ではなく、一方だけを増大させることしか望まれないことがある場合であっても、溶融プールは長く、且つ広くなる。しかしながら、これには欠点が伴う。具体的には、より大きい電極が使用されるため、適正な溶接を行うために溶接アークにより多くのエネルギーが必要となる。このようなエネルギーの増大は、溶接への熱入力を大きくする原因となる、その結果、使用電極の直径が多いため、溶接作業においてより多くのエネルギーが使用されることになる。さらに、それによってできる溶接ビードのプロファイル又は断面は、特定の機械的用途にとって理想的ではないことがある。電極の直径を大きくするのではなく、2つの、より小型の電極を同時に使用することが望ましいことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許第5,816,466号明細書
【文献】米国特許第8,569,653号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
以下の概要は、本明細書で開示される装置、システム、及び/又は方法の幾つかの態様の基本的な理解を提供するために簡潔にした概要を示している。この概要は、本明細書で開示される装置、システム、及び/又は方法の広範囲にわたる大要ではない。このような装置、システム、及び/若しくは方法の不可欠な要素を特定したり、又はその範囲を限定することは意図されていない。唯一の目的は、幾つかの態様を後述の、より詳しい説明の序文として簡潔な形で提示することである。
【0005】
本発明の1つの態様によれば、溶接又はアディティブマニュファクチャリング用ワイヤ駆動システムが提示される。このシステムは、第一の環状溝を有する第一の駆動ロールと、第一の環状溝と整列した第二の環状溝を有する第二の駆動ロールと、を含む。第一の溶接ワイヤは、第一の環状溝と第二の環状溝の両方の中で第一の駆動ロールと第二の駆動ロールとの間に配置される。第二の溶接ワイヤは、第一の環状溝と第二の環状溝の両方の中で第一の駆動ロールと第二の駆動ロールとの間に配置される。付勢部材は第一の駆動ロールを第二の駆動ロールに向かって付勢し、第一の溶接ワイヤを第二の溶接ワイヤと接触させる。第一の溶接ワイヤは、第一の環状溝の第一の側壁部分、第二の環状溝の第一の側壁部分、及び第二の溶接ワイヤの各々と接触する。第二の溶接ワイヤは、第一の環状溝の第二の側壁部分、第二の環状溝の第二の側壁部分、及び第一の溶接ワイヤの各々と接触する。第一の駆動ロールと第二の駆動ロールは、反対方向に回転し、それによって第一の溶接ワイヤと第二の溶接ワイヤを溶接ワイヤ駆動システムの中で移動させる。
【0006】
本発明の他の態様によれば、溶接又はアディティブマニュファクチャリング用ワイヤ駆動システムが提供される。システムは第一の駆動ロールを含み、それが有する第一の円周溝は、第一の円周溝の第一の内側側壁と第一の外側側壁との間に延びる第一の溝底部を含む。システムは第二の駆動ロールをさらに含み、それが有する第二の円周溝は第一の円周溝と整列する。第二の円周溝は第二の円周溝の第二の内側側壁と第二の外側側壁との間に延びる第二の溝底部を含む。第一の溶接ワイヤは、第一の円周溝と第二の円周溝の両方の中で第一の駆動ロールと第二の駆動ロールとの間に配置され、第二の溶接ワイヤは、第一の円周溝と第二の円周溝の両方の中で第一の駆動ロールと第二の駆動ロールとの間に配置される。付勢部材は、第一の駆動ロールを第二の駆動ロールに向かって付勢し、第一の溶接ワイヤを第二の溶接ワイヤと接触させる。第一の溶接ワイヤは、第一の内側側壁、第二の内側側壁、及び第二の溶接ワイヤの各々と接触し、第二の溶接ワイヤは、第一の外側側壁、第二の外側側壁、及び第一の溶接ワイヤの各々と接触する。第一の溶接ワイヤと第二の溶接ワイヤの少なくとも一方は、第一の溝底部と第二の溝底部の両方からずれている。
【0007】
本発明の他の態様によれば、溶接又はアディティブマニュファクチャリング用ワイヤ駆動システムが提供される。システムは、第一の駆動ロールと、第二の駆動ロールと、を含む。第一の駆動ロールと第二の駆動ロールの一方又は両方は円周溝を有する。第一の溶接ワイヤは、円周溝の中で第一の駆動ロールと第二の駆動ロールとの間に配置される。第二の溶接ワイヤは、円周溝の中で第一の駆動ロールと第二の駆動ロールとの間に配置される。付勢手段は、第一の駆動ロールを第二の駆動ロールに向かって付勢して、第一の溶接ワイヤを第二の溶接ワイヤと接触させる。第一の溶接ワイヤは、円周溝の第一の側壁部分とさらに接触し、第二の溶接ワイヤは、円周溝の第二の側壁部分とさらに接触し、第一の溶接ワイヤと第二の溶接ワイヤはどちらも、円周溝の底部からずれている。底部は、円周溝の第一の側壁部分と第二の側壁部分との間に延びる。
【0008】
本発明の上記及びその他の態様は、本発明が関係する分野の当業者にとって、下記のような添付の図面を参照しながら以下の説明を読むことにより明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図6】二重ワイヤを送給する駆動ロールの断面図を示す。
【
図7】二重ワイヤを送給する駆動ロールの断面図を示す。
【
図8】二重ワイヤを送給する駆動ロールの断面図を示す。
【
図9】二重ワイヤを送給する駆動ロールの断面図を示す。
【
図10】二重ワイヤを送給する駆動ロールの断面図を示す。
【
図11】二重ワイヤを送給する駆動ロールの断面図を示す。
【
図12】二重ワイヤを送給する駆動ロールの断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
ここで、添付の図面を参照することにより本発明の例示的実施形態を説明する。説明されている例示的な実施形態は、発明を理解する助けとされるものであり、本発明の範囲をいかようにも限定しようとしていない。全体を通じて、同様の参照番号は同様の要素を指す。
【0011】
本発明の実施形態は、本明細書では溶接システムに関して説明する。例示的な溶接システムには、ガスメタルアーク溶接(GMAW)システム、サブマージアーク溶接(SAW)システム、フラックスコアアーク溶接(FCAW)システム、メタルコアアーク溶接(MCAW)システム等が含まれる。さらに、本明細書に記載されている電極は中実の電極とすることができるが、本発明の実施形態は、中実の電極の使用に限定されない。例えば、フラックスコア電極及びメタルコア電極も使用でき、それも本発明の主旨又は範囲から逸脱しない。さらに、本発明の実施形態はまた、マニュアル、半自動、及びロボット溶接作業にも使用できる。このようなシステムはよく知られているため、これらについてはここでは詳しく説明しない。
【0012】
本発明の実施形態を溶接システムに関して説明する。しかしながら、溶接作業のほかに、実施形態はアディティブマニュファクチャリング工程及び、駆動ワイヤ電極がかかわるその他の溶接型工程(例えば、表面硬化)にも使用できる。
【0013】
ここで、図面を参照する。
図1は、ある例示的実施形態の溶接システム100を示している。溶接システム100は、溶接電源又は電源109を含み、これは溶接トーチ111及びワイヤフィーダ105の両方に連結される。電源109は、溶接電流及び溶接波形、例えばパルススプレ、STT、及び/又はショートアーク型溶接波形を供給できる既知の何れの種類の溶接電源とすることもできる。このような電源の構成、設計、及び動作はよく知られているため、これらは本明細書で詳しく説明する必要がない。また、溶接電力は複数の電源から同時に供給することもできることに留意されたく、同じく、このようなシステムの動作は知られている。電源109はまた、コントローラ120を含むことができ、これはユーザインフェースに連結され、それによってユーザは溶接作業のための制御又は溶接パラメータを入力できる。コントローラ120は、プロセッサ、CPU、メモリ等を有することができ、これらは溶接工程の動作及び溶接波形の生成を制御するために使用される。トーチ111は、既知のマニュアル、半自動、又はロボット溶接トーチと同様に構成でき、直線形又はグースネック形とすることができる。ワイヤフィーダ105は、ワイヤ電極E1及びE2をそれぞれ、リール、スプール、容器、又はその他等、既知の何れの種類とすることもできる電極源101及び103から引き出す。ワイヤフィーダ105は、駆動ロール107を使って電極又は溶接ワイヤE1及びE2を引き出し、電極をトーチ111に向かって押すか、又は引く。駆動ロール107の詳細はさらに後述する。駆動ロール107とワイヤフィーダ105は、二重溶接作業用に構成される。すなわち、これらは電極E1及びE2の両方を同時にトーチ111に供給し、アークを発生させ、加工物Wを溶接する。図のように、ワイヤフィーダ105は、溶接作業の既知の構成にしたがって電源109に動作的に接続される。
【0014】
駆動ロール107によって駆動されると、電極E1及びE2は、電極E1及びE2をトーチ111に送達するためのライナ113を通ることができる。ライナ113はほぼ、電極E1及びE2をトーチ111へと通過させることができるようなサイズである。例えば、直径約0.030インチの2つの電極の場合、標準的な直径0.0625インチのライナ113(これは典型的に、直径0.0625インチの1つの電極に使用される)を、変更を加えずに使用できる。
【0015】
特定の実施形態において、ワイヤ電極E1、E2は異なる直径を有することができる。すなわち、本発明の実施形態は、第一の、より大径の電極と、第二の、より小径の電極を使用できる。このような実施形態において、異なる厚さの2つの加工物をより好都合に溶接することが可能である場合がある。例えば、より大径の電極はより大型の加工物に向けることができ、より小径の電極はより小型の加工物に向けることができる。さらに、本発明の実施形態は、多くの異なる種類の溶接作業に使用でき、これにはGMAW、SAW、FCAW、及びMCAWが含まれるが、これらに限定されない。それに加えて、本発明の実施形態は、異なる種類の電極に使用できる。例えば、コア電極(例えば、フラックスコア又はメタルコア)をコアのない、又は中実電極に連結できることも想定される。さらに、異なる組成の電極を使って、最終的な溶接ビードの所望の溶接特性及び組成を実現することもできる。2つの異なる、ただし適合性のある消耗材を組合せ、所望の溶接ジョイントを作ることができる。例えば、異なる組成の表面硬化用ワイヤ、ステンレスワイヤ、ニッケル合金、及びスチールワイヤ等の適合する消耗材を組み合わせることができる。1つの具体的な例として、軟鋼ワイヤをオーバアロイワイヤ(overalloyed wire)と組み合わせて、309ステンレス鋼組成を作ることができる。これは、所望の種類の1種の消耗材が望ましい溶接特性を持っていないときに有利となり得る。例えば、特殊溶接のための幾つかの消耗材は、所望の溶接化学特性を提供するが、きわめて使いにくく、満足な溶接を提供するのが難しい。しかしながら、本発明の実施形態によれば、より溶接しやすい2種類の消耗材の組み合わせを利用し、所望の溶接化学特性を作ることが可能となる。本発明の実施形態は、本来であれば商業的に入手できないか、又は本来であれば製造コストが非常に高い合金/溶着物の化学特性を作るために使用できる。それゆえ、2つの異なる消耗材を使って、高価又は入手不能な消耗材を不要とすることができる。さらに、実施形態は、希釈合金を作るために使用できる。例えば、第一の溶接ワイヤは一般的で安価な合金とすることができ、第二の溶接ワイヤは特殊ワイヤとすることができる。その結果として得られる溶着物は2種類のワイヤの平均となり、溶融液滴の形成中によく混ざり合い、2種類のワイヤの平均コストは高価な特殊ワイヤと比較して安価である。さらに、幾つかの用途において、適当な消耗材の化学特性を持たないために所望の溶着物を入手できないことがあり得るが、2種類の標準的な合金ワイヤを混合することにより実現でき、これらは溶融液滴の中で混ざり合い、1つの液滴として溶着される。さらに、耐摩耗性金属の堆積等の幾つかの用途において、所望の溶着物は、1本のワイヤからのタングステンカーバイド粒子と、他のワイヤからのクロームカーバイド粒子の組合せであってもよい。また別の用途において、より大きい粒子をその中に含む、より大径ワイヤは、より少ない粒子又はより小さい粒子を含む、より小径のワイヤと混合されて、2つのワイヤの混合物を溶着させる。ここで、ワイヤの各々からの予想寄与度はワイヤのサイズに比例する。さらに、本明細書においては2つのワイヤ電極を同時に使用する例示的な実施形態が記されているが、本発明の他の実施形態は2つを超える電極を利用できる。例えば、3つ以上の電極構成を本明細書に示されている説明と記述にしたがって利用できることも想定される。
【0016】
図2は、溶接システム100の斜視図を提供する。ワイヤフィーダ105は、特定の用途に使用するためにワイヤ電極E1、E2を電極源101、103から輸送するための駆動ロールを含む。ワイヤ電極E1、E2は、リール、スプール、又は容器(例えば、ボックス又はドラム)から連続的に引き出されて、この実施形態では溶接物である加工物Wへと送達されてよい。ワイヤフィーダ105は駆動アセンブリを含んでいてもよく、これは1つ又は複数の推進装置、例えば電気モータ等からの動力を利用し、ワイヤ電極E1、E2を使用作業箇所、又は加工物Wへと駆動する。
【0017】
溶接電源109は、電気入力パワーを外部電源(例えば、購入電源)から受け取ってよく、これは図示されていないオンボードトランスフォーマ及びプロセッサ制御のインバータ又はチョッパ回路に向けられる。電源109からの出力は、溶接出力端子121又は溶接電源のスタッドを通じて提供されてよい。溶接ガン又はトーチ111及びワイヤコンジットは、当技術分野で知られている方法で溶接電流を加工物Wに送達するために、溶接ワイヤフィーダ105を通じて溶接電源109に電気的に接続されていてよい。溶接ワイヤE1、E2はトーチ111を通じて送給され、溶接工程を行うのに適したあらゆる方法で、用途及び/又はエンドユーザ次第にメータアウト、すなわち吐出されることとなる。電極E1、E2は溶接アークを確立するための電気を伝えることに留意されたく、電極は、実質的にアースより高い場合がある溶接電源109の出力電圧と同じ又はほぼ同じ電圧電位を有し、加工物Wに運ばれる。
【0018】
ワイヤ電極E1、E2の輸送の異なるモードが当技術分野では知られており、その一例は、推進装置により提供されるパワー又はトルクを通じて電極を押すことを含む。電極輸送のその他のモードには、複数の推進装置を利用する押し/引きモードが含まれる。電極E1、E2はトーチ111に送達され、これはユーザの裁量で電極を吐出させるためのトリガ又はその他のアクティベーション機構を有していてもよい。時々、電極E1、E2を異なる送給速度で送達する必要がある場合がある。したがって、推進装置は、電極E1、E2のワイヤ送給速さ(WFS)を変化させるように調節可能な出力を有する。特に、ワイヤフィーダ105の駆動モータは、WFSを調節するための変速モータであってもよい。
【0019】
駆動モータ123は
図3に示されている。ワイヤフィーダ105及び/又は駆動モータ123は、溶接電源109から、又は共に別の電源から動作パワーを引き込んでもよい。さらに、本発明の実施形態との使用に適しているとのしっかりとした技術的判断によって、溶接ワイヤフィーダ105及び/又は駆動モータ123を動作させるためのパワーを提供する何れの方法が選択されてもよい。
【0020】
図2及び3を参照すると、溶接ワイヤフィーダ105は駆動アセンブリ、又は駆動ロールアセンブリを含んでいてもよい。前述のように、駆動モータ123は、ワイヤフィーダモータとも呼ばれるが、第一及び第二の溶接ワイヤE1、E2をワイヤフィーダからトーチ111へと、及びその後、加工物Wへと輸送するためのパワー、すなわちトルクを送達する。駆動ロール107が含まれ、これは溶接ワイヤE1、E2を把持し、溶接ワイヤが適当な方向に、すなわち加工物Wに向かって押され、又は引かれるようにする。駆動ロール107のセットは垂直に整列され、対応するように整列された環状又は円周溝を有し、そこを溶接ワイヤ1、E2が同時に通る。図からわかるように、垂直に整列された駆動ロール107セットは反対方向に回転して、溶接ワイヤE1、E2をワイヤフィーダ105の中で駆動する。例えば、
図3において、上側駆動ロール107は時計回りに回転し、下側駆動ロールは反時計回りに回転する。駆動ロール107は円筒形の構成、又は、より具体的にはディスク形状であってもよいが、具体的な構成は限定的と理解されるべきではない。駆動ロール107の表面、すなわち外側円周は鋼鉄のような十分に硬い材料からなっていてもよく、これは耐久性を有し、溶接ワイヤE1、E2を把持するのに適している。図のように、駆動ロール107は、ワイヤ軌道に沿って対になるように配置されてもよく、その対の各々の駆動ロールは溶接ワイヤE1、E2の反対側で支持され、ロールのそれぞれの外側円周部分はワイヤのそれぞれの側(例えば、上及び下から)係合する。それぞれの駆動ロール107の中心軸は実質的に相互に平行に延び、溶接ワイヤE1、E2の軌道を概して横切ることに留意されたい。
【0021】
ワイヤフィーダ105は付勢部材を含むことができ、これは垂直に整列された駆動ロール107のセットを相互に向かって付勢する。付勢部材は、駆動ロール107が溶接ワイヤE1、E2にかける固定力又は圧縮力を設定する。例えば、ワイヤフィーダ105は付勢ばね125を含むことができ、これは付勢力を1つ又は複数の駆動ロール107にかけて、駆動ロールが溶接ワイヤE1、E2に加える圧縮力を設定する。
図3の例示的な実施形態において、付勢ばね125は、内側と外側に移動して付勢ばね125の圧縮力を調節できる調節ロッド127に取り付けられる。付勢ばね125の力は、旋回レバー129を介して上側駆動ロール107に伝えられる。前述のように、垂直に整列された駆動ロール107のセットは対応するように整列された環状又は円周溝を有し、その中を溶接ワイヤE1、E2が同時に通る。すなわち、溶接ワイヤE1、E2は、上側駆動ロールと下側駆動ロールの溝の中に一緒に配置される。溶接ワイヤE1、E2は、付勢ばね125によって駆動ロール107に加えられる付勢力により、溝内に固定され、又は圧縮される。以下にさらに説明するように、溶接ワイヤE1、E2は、駆動ロール107により固定されたときに、溝内で相互に接触させられる。溶接ワイヤE1、E2に加えられる上向き/下向きの圧縮力に加えて、横方向の圧縮力もまた溶接ワイヤE1、E2に加えられて、これらが一緒に溝の内部へと押し付けられる。横方向の圧縮力は溝の側壁の形状を通じて提供される。
【0022】
溶接ワイヤフィーダの構造に関するさらに詳しいことは、1998年10月6日に発行された(特許文献1)及び2013年10月29日に発行された(特許文献2)に記載されており、これらの両方を参照によって本願に援用する。
【0023】
図4及び5は、例示的な駆動ロール107を示す。駆動ロールは中央穴を有する。穴の内面は駆動機構、例えば駆動ギア上の突出部を受けて、駆動トルクを駆動ロール107に伝えるための成形窪み131を含むことができる。駆動ロール107は、1つ又は複数の環状又は円周方向のワイヤ受け溝133、135を含む。ワイヤ受け溝133、135は、駆動ロール107の円周に沿って軸方向に離間される。ワイヤ受け溝133、135は、2本の溶接ワイヤを受けるように設計される。駆動ロール107に使用するための例示的な標準的溶接ワイヤの直径には、0.030インチ、0.035インチ、0.040インチ、0.045インチ等が含まれる。ワイヤ受け溝133、135は、相互に同じ幅及び深さを有するか、又は二重溶接ワイヤの異なるサイズ又は組合せに対応するために異なる幅と深さを有することができる。ワイヤ受け溝133、135の各々が同じ幅と深さを有する場合、駆動ロール107は、1つの溝が摩耗したら、単純に駆動ロールをひっくり返して、ワイヤフィーダに取り付け直すだけで再使用できる。ワイヤ受け溝133、135は、同じ直径の2つのワイヤ又は異なる直径の2本のワイヤを同時に駆動するように構成できる。
図4において、ワイヤ受け溝133、135は、まっすぐ、斜め、又は内側に細くなる側壁と側壁間に延びる1つの平坦な底部を有する台形の形状を有する。しかしながら、ワイヤ受け溝133、135は、台形の形状ら加えて他の形状を有することができ、例えば湾曲し、凹んだ溝底部を有する。特定の実施形態において、溝133、135は、溶接ワイヤの把持を助けるためのローレット切り又はその他の摩擦表面処理を含むことができる。
【0024】
図6~11は、二重溶接ワイヤを供給するためにワイヤフィーダに取り付けられたときの例示的な駆動ロール107の部分断面図を示す。駆動ロール107は相互に付勢されて、第一の溶接ワイヤE1及び第二の溶接ワイヤE2への固定力を提供する。溶接ワイヤE1、E2は、どちらも上側及び下側駆動ロール107の環状溝の中に配置される。環状溝は整列され、台形の形状を有することができる。
図6において、台形の形状は内側側壁137、外側側壁139、及び側壁間に延びる溝底部141により形成される等脚台形である。等脚台形の形状は、断面が駆動ロール107の外側円周面から窪むように反転される。
【0025】
駆動ロール107に加えられる付勢力により、溶接ワイヤE1、E2は、環状溝の中で、上側及び下側の、溝を形成する側壁137、139と隣の溶接ワイヤとの間で固定される。溶接ワイヤE1、E2は、環状溝の中で3つの接触点を通じて安定に保持される。この固定系によって、両方のワイヤが一貫した方法でワイヤフィーダを通じて送給されることが可能となる。2本の溶接ワイヤE1、E2は、送給中に相互に支持し合い、摩擦を介して一緒に引かれる。環状溝の内側側壁137と外側側壁139は斜めであるため、これらは垂直及び水平固定力の両方を溶接ワイヤE1、E2にかける。水平固定力は溶接ワイヤE1、E2をまとめて押し、それによって相互に接触させる。特定の実施形態において、溶接ワイヤE1、E2は、環状溝の中で固定されて、溝底部141の表面から半径方向にずれる。すなわち、溶接ワイヤE1、E2は、相互間及び溝の斜めの側壁137、139間で固定され、溶接ワイヤと溝底部141都の間にギャップが存在する。これは、
図6においてはっきりとわかる。
【0026】
上述の固定系は、溶接ワイヤE1、E2の直径における(例えば製造公差による)ある程度のばらつきに対応できる。各溶接ワイヤE1、E2はそれぞれ専用の駆動ロール107内の環状溝を有し、溶接ワイヤの一方はもう一方より若干大きく、すると、より小さい溶接ワイヤは駆動ロール間で十分に固定されない場合がある。このような場合、より大径の溶接ワイヤは、駆動ロール107の相互に向かう半径方向の変位を限定し、それによってより小径のワイヤの適正な固定を阻止する。これは、送給の問題及び、送給中のより小径の溶接ワイヤのいわゆる絡まり合いにつながる。上述の固定系は、固定系が自己調節型であるため、異なるサイズのワイヤを収容できる。
図7からわかるように、一方の溶接ワイヤE1がもう一方のワイヤE2より大きい場合、ワイヤ間の接触点は環状溝の中央部分からより小径のワイヤに向かって軸方向にずれる。3つの接触点は、各溶接ワイヤE1、E2上で、溝の側壁137、139及び隣の溶接ワイヤにより保持される。
【0027】
図8は、断面が等脚台形の代わりに鋭角を有する台形の形状を有する環状溝143を有する駆動ロール107を示す。溝の内側側壁145及び外側側壁147は、異なる長さを有し、駆動ロールの外側円周面と異なる角度を形成する。
図9では、駆動ロール107は直角を含む台形の形状を有する環状溝149を有する。鋭角及び直角を有する台形の溝は、等脚台形より、溶接ワイヤの直径の大きな差に対応できる。それゆえ、鋭角及び直径を有する台形溝は、溝が異なる直径を有する溶接ワイヤ、例えば0.040インチ溶接ワイヤと0.045インチ溶接ワイヤとを駆動するために使用できる。特定の実施形態において、溝の側壁及び/又は底部は、湾曲させる(例えば、凹型又は凸型)ことができる。また、台形の溝の側壁と底部との間の内側の隅の移行部は、湾曲させ、又はRをつけることができる。
図10は、直線の斜めの側辺150が凹型の湾曲した、又はRのついた溝底部152により結合される環状溝を有する例示的な駆動ロールを示す。例示的な実施形態において、駆動ロール107の側壁150と外側円周との間の角度は約150°であるが、その他の角度も可能であり、しっかりとした技術的判断で決定できる。
【0028】
図11は、一方の駆動ロール107が溶接ワイヤE1、E2のための台形の溝を有し、もう一方の駆動ロール107aが非台形の溝を有する例示的な実施形態を示す。
図11では、非台形の溝は長方形であるが、その他の形状も可能である。例えば、非台形の溝は、例えば楕円又は円の形状等、湾曲させることができる。さらに、台形の溝は下側駆動ロール107に配置されているように示されている。しかしながら、台形の溝は上側駆動ロール107aに配置することができ、非台形の溝を下側駆動ロールに配置できる。溶接ワイヤE1、E2は、台形の溝のそれぞれの側壁137、139と非台形の溝151の底部153との間で固定され、溶接ワイヤは前述のように相互に接触させられる。それゆえ、溶接ワイヤE1、E2は、駆動ロール107、107aの中で3つの接触点を通じて安定に保持される。
【0029】
図12は、一方の駆動ロール107が溶接ワイヤE1、E2のための台形溝を有し、もう一方の駆動ロール107bが溝を持たず、その外側円周面155で溶接ワイヤと直接接触する例示的な実施形態を示す。台形の溝は下側駆動ロール107に配置されているように示されている。しかしながら、台形の溝は上側駆動ロールにも配置できる。溶接ワイヤE1、E2は、台形の溝のそれぞれの側壁137、139と上側駆動ロール107bの外側円周面155との間で固定され、溶接ワイヤは前述のように相互に接触させられる。それゆえ、溶接ワイヤE1、E2は3つの接触点を通じて安定に保持される。
【0030】
本開示は例であり、本開示に含まれる教示の公正な範囲から逸脱することなく、詳細事項を追加、改変、又は排除することによって様々な変更を加えてもよいことが明らかであるはずである。したがって、本発明は、以下の特許請求の範囲が必然的に限定している範囲を除き、本開示の特定の詳細事項に限定されない。
【符号の説明】
【0031】
100 溶接システム
105 ワイヤフィーダ
107 駆動ロール
107a 上側駆動ロール
109 電源
125 付勢ばね
127 調節ロッド
131 成形窪み
133 ワイヤ受け溝
135 ワイヤ受け溝
137 溝の内側側壁
139 溝の外側側壁
141 溝底部
145 溝の内側側壁
147 溝の外側側壁
150 側壁
151 溝
152 湾曲した、又はRのついた溝底部
153 底部
E1、E2 溶接ワイヤ
W 加工物