(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】支援情報提供システム、支援情報提供装置、支援情報提供方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G16H 20/10 20180101AFI20240312BHJP
【FI】
G16H20/10
(21)【出願番号】P 2019188236
(22)【出願日】2019-10-11
【審査請求日】2022-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】596079138
【氏名又は名称】東日本メディコム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127384
【氏名又は名称】坊野 康博
(72)【発明者】
【氏名】野本 禎
【審査官】原 秀人
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-071060(JP,A)
【文献】特開平08-272882(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0259482(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
G06Q 50/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワークを介して通信可能に構成された端末装置とサーバとを含む支援情報提供システムであって、
前記端末装置は、
患者に対する薬学的な指導において考慮の対象となり、患者に対する前回の薬学的な指導の内容及び今回のヒアリング結果を含む対象情報に基づいて、薬学的な指導のための支援情報を生成するための依頼を前記サーバに送信する支援依頼手段と、
前記支援依頼手段による依頼に応じて、前記サーバから送信された前記支援情報を表示する支援情報表示手段と、を備え、
前記サーバは、
前記支援依頼手段の依頼に基づいて、前記対象情報を取得する対象情報取得手段と、
前記対象情報に基づいて推論を行うことにより、推奨される薬学的な指導の内容を含む前記支援情報を生成する推論手段と、
前記推論手段によって生成された前記支援情報を前記端末装置に提供する支援情報提供手段と、
を備え
、
前記推論手段は、前記対象情報に基づいて第1の推論を行うことにより、服薬指導を行う際の薬学的判断要因を指標として表される中間状態を表す情報を前記支援情報として生成し、生成した前記中間状態を表す情報に基づいて、患者に対して次回以降に行われるヒアリングの内容を再構築することを特徴とする支援情報提供システム。
【請求項2】
前記推論手段は、前記中間状態を表す情報に基づいて第2の推論を行うことにより、推奨される薬学的な指導の内容を前記支援情報として生成することを特徴とする請求項
1に記載の支援情報提供システム。
【請求項3】
前記サーバは、
前記対象情報取得手段によって取得された前記対象情報から、予め設定された抽出条件に基づいて特徴量を抽出する特徴量抽出手段を備え、
前記推論手段は、前記対象情報から抽出された前記特徴量に基づいて前記第1の推論を行うことにより、前記中間状態を表す情報を生成することを特徴とする請求項
1または2に記載の支援情報提供システム。
【請求項4】
前記第1の推論は、前記対象情報を入力とし、薬剤師が前記対象情報を認識した場合に、患者に関して想起する薬学的判断要因を教師データとして構築された機械学習ベースの推論を含むことを特徴とする請求項
1から3のいずれか1項に記載の支援情報提供システム。
【請求項5】
前記第2の推論は、前記中間状態を表す情報に対して予め設定された前記支援情報の対応付けに基づくルールベースの推論を含むことを特徴とする請求項
2に記載の支援情報提供システム。
【請求項6】
患者に対する薬学的な指導において考慮の対象となり、患者に対する前回の薬学的な指導の内容及び今回のヒアリング結果を含む対象情報に基づいて推論を行うことにより、推奨される薬学的な指導の内容を含む薬学的な指導のための支援情報を生成する推論手段と、
前記推論手段によって生成された前記支援情報を出力する支援情報出力手段と、
を備え
、
前記推論手段は、前記対象情報に基づいて第1の推論を行うことにより、服薬指導を行う際の薬学的判断要因を指標として表される中間状態を表す情報を前記支援情報として生成し、生成した前記中間状態を表す情報に基づいて、患者に対して次回以降に行われるヒアリングの内容を再構築することを特徴とする支援情報提供装置。
【請求項7】
患者に対する薬学的な指導において考慮の対象となり、患者に対する前回の薬学的な指導の内容及び今回のヒアリング結果を含む対象情報に基づいて推論を行うことにより、推奨される薬学的な指導の内容を含む薬学的な指導のための支援情報を生成する推論ステップと、
前記推論ステップにおいて生成された前記支援情報を出力する支援情報出力ステップと、
を含
み、
前記推論ステップでは、前記対象情報に基づいて第1の推論を行うことにより、服薬指導を行う際の薬学的判断要因を指標として表される中間状態を表す情報を前記支援情報として生成し、生成した前記中間状態を表す情報に基づいて、患者に対して次回以降に行われるヒアリングの内容を再構築することを特徴とする支援情報提供方法。
【請求項8】
コンピュータに、
患者に対する薬学的な指導において考慮の対象となり、患者に対する前回の薬学的な指導の内容及び今回のヒアリング結果を含む対象情報に基づいて推論を行うことにより、推奨される薬学的な指導の内容を含む薬学的な指導のための支援情報を生成する推論機能と、
前記推論機能によって生成された前記支援情報を出力する支援情報出力機能と、
を実現させ
、
前記推論機能は、前記対象情報に基づいて第1の推論を行うことにより、服薬指導を行う際の薬学的判断要因を指標として表される中間状態を表す情報を前記支援情報として生成し、生成した前記中間状態を表す情報に基づいて、患者に対して次回以降に行われるヒアリングの内容を再構築することを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支援情報提供システム、支援情報提供装置、支援情報提供方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、薬局における薬剤師の業務を支援する情報処理技術が知られている。
例えば、特許文献1には、患者の薬歴のデータをデータベースによって管理し、患者に対する調剤業務を行う際に、データベースを参照して、薬歴等に基づく服薬指導を行うことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、患者の薬歴等のデータをデータベースによって管理したとしても、調剤業務において薬剤師が考慮の対象とする情報は多岐にわたり、薬剤師がこれらを適切に考慮して服薬指導等の業務を行うことは容易ではない。また、患者に対して処方される薬剤に変化がない場合でも、薬剤師が患者と対面して得られる情報(会話内容や印象等)に応じて適切な指導内容とすることが望ましいところ、薬剤師がこのような服薬指導を行うことは多大な労力を要することとなる。さらに、初回来局時と再来局時とでは、患者の症状や薬剤の服用状況等が異なることから、薬剤師には、患者の現在の状態に適した服薬指導を行うことが求められる。
【0005】
本発明の課題は、薬剤師の業務をより適切に支援することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の一態様の支援情報提供システムは、
ネットワークを介して通信可能に構成された端末装置とサーバとを含む支援情報提供システムであって、
前記端末装置は、
患者に対する薬学的な指導において考慮の対象となり、患者に対する前回の薬学的な指導の内容及び今回のヒアリング結果を含む対象情報に基づいて、薬学的な指導のための支援情報を生成するための依頼を前記サーバに送信する支援依頼手段と、
前記支援依頼手段による依頼に応じて、前記サーバから送信された前記支援情報を表示する支援情報表示手段と、を備え、
前記サーバは、
前記支援依頼手段の依頼に基づいて、前記対象情報を取得する対象情報取得手段と、
前記対象情報に基づいて推論を行うことにより、推奨される薬学的な指導の内容を含む前記支援情報を生成する推論手段と、
前記推論手段によって生成された前記支援情報を前記端末装置に提供する支援情報提供手段と、
を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、薬剤師の業務をより適切に支援することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態に係る支援情報提供システムにおいて、薬学的指導の支援情報が提供される概念を示す模式図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る支援情報提供システム1のシステム構成を示す図である。
【
図3】支援情報提供サーバ30が備える業務支援機能の概要を示す模式図である。
【
図4】各装置を構成する情報処理装置800のハードウェア構成を示す図である。
【
図5】端末装置10の機能的構成を示すブロック図である。
【
図7】アンケート表示画面の一例を示す模式図である。
【
図9】支援情報表示画面の一例(プロブレム表示画面)を示す模式図である。
【
図10】患者に関するプロブレムとして副作用が選択された場合に表示される遷移画面の一例を示す模式図である。
【
図11】副作用の推論機能を呼び出す操作が行われた場合に表示される遷移画面の一例を示す模式図である。
【
図12】副作用の推論結果表示画面の一例を示す模式図である。
【
図13】支援情報表示画面の他の例(初回支援情報表示画面)を示す模式図である。
【
図14】支援情報表示画面の他の例(再来支援情報表示画面)を示す模式図である。
【
図15】薬局用コンピュータ20の機能的構成を示すブロック図である。
【
図16】薬剤DB176に記憶されている薬剤に関するデータのうち、服薬指導文に関するデータを示す模式図である。
【
図17】支援情報提供サーバ30の機能的構成を示すブロック図である。
【
図18】端末装置10が実行する初回支援情報表示処理の流れを示すフローチャートである。
【
図19】端末装置10が実行する初回支援情報表示処理の流れを示すフローチャートである。
【
図20】端末装置10が実行する再来支援情報表示処理の流れを示すフローチャートである。
【
図21】端末装置10が実行する再来支援情報表示処理の流れを示すフローチャートである。
【
図22】薬局用コンピュータ20が実行する情報管理処理の流れを示すフローチャートである。
【
図23】支援情報提供サーバ30が実行する支援情報提供処理の流れを示すフローチャートである。
【
図24】支援情報提供サーバ30が実行する再構築処理の流れを示すフローチャートである。
【
図25】支援情報提供機能を備えるスタンドアローン型の情報処理装置800の機能的構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0010】
図1は、本実施形態に係る支援情報提供システムにおいて、薬学的指導の支援情報が提供される概念を示す模式図である。
図1に示すように、本実施形態に係る支援情報提供システムは、薬局に来局した患者に対し、初回の来局時の薬学的指導に際しては、患者に対して発行された処方箋のデータ及びアンケート結果のデータを基に、AI(Artificial Intelligence)を用いた推論により、服薬指導内容の候補を特定し、薬剤師に提示することで、薬学的指導の支援を行う。なお、初回の来局時の薬学的指導において、患者に対して発行された処方箋のデータ及びアンケート結果のデータを基に、ルールベースの推論により、服薬指導内容の候補を特定することも可能である。また、患者に対して発行された処方箋のデータ及びアンケート結果のデータに加え、薬剤師が患者に対して行った初回の問診結果(ヒアリング結果及び薬剤師が患者から受けたインプレッション)のデータを参照して推論を行い、服薬指導内容の候補を特定することも可能である。
【0011】
一方、支援情報提供システムは、患者の再来局時の薬学的指導に際しては、患者に対して発行された処方箋のデータ及びアンケート結果のデータに加え、前回の服薬指導内容及び再来局時の問診結果のデータを基に、AIを用いた推論により、服薬指導内容の候補を特定し、薬剤師に提供することで、薬学的指導の支援を行う。なお、患者の再来局時の薬学的指導において、患者に対して発行された処方箋のデータ、アンケート結果のデータ、前回の服薬指導内容及び再来局時の問診結果のデータを基に、ルールベースの推論を用いて、服薬指導内容の候補を特定することも可能である。このとき、AIを用いた推論では、患者の訴えを表すテキストデータ(患者の発話を音声認識したテキストデータ、薬剤師が入力したテキストデータあるいは薬剤師が選択した選択肢を表すテキストデータ等)を含む入力データに対して、各種薬剤に関する添付文書のデータの中で指導すべき内容を学習させた学習済みモデルが用いられる。患者の訴えを表すテキストデータにおいては、「胃がズキズキと痛む」あるいは「胃がムカムカする」といった擬態語を含む口語表現が許容される。即ち、本実施形態において、患者がヒアリングで訴えた表現をそのままデータ化することで、患者の訴えを表すテキストデータとすることが可能である。ただし、患者が訴えた表現を薬剤師が解釈し、患者の状態を表す薬学的な表現としてテキストデータ化することとしてもよい。
【0012】
これにより、本実施形態に係る支援情報提供システムによれば、初回の来局時において、処方箋のデータ及びアンケート結果のデータ(あるいは初回のヒアリング結果のデータ)を基に推論された支援情報(服薬指導内容の候補)を薬剤師に提示することができると共に、2回目以降の来局時においては、前回の服薬指導内容及び患者に対する問診結果を反映させて推論を行うことで、支援情報(服薬指導内容の候補)を薬剤師に提示することができる。
したがって、本実施形態に係る支援情報提供システムによれば、薬剤師の業務をより適切に支援することが可能となる。
【0013】
[システム構成]
図2は、本発明の一実施形態に係る支援情報提供システム1のシステム構成を示す図である。
図2に示すように、支援情報提供システム1は、端末装置10と、薬局用コンピュータ20と、支援情報提供サーバ30と、を含んで構成され、端末装置10、薬局用コンピュータ20、支援情報提供サーバ30、及び、服薬指導文を含む薬剤情報を記憶している薬剤情報データベースサーバ等の外部サーバは、ネットワーク40(インターネット等)を介して通信可能に構成されている。なお、端末装置10と薬局用コンピュータ20とを、VPN(Virtual Private Network)等のプライベートネットワークによって通信可能に構成することとしてもよい。
【0014】
端末装置10は、薬剤師によって操作されるものであり、タブレット端末あるいはPC(Personal Computer)等の情報処理装置によって構成される。端末装置10は、薬剤師が患者に対する問診を行う際に、薬剤師の業務を支援するための情報を表示したり、薬剤師による情報の入力(テキストデータの入力、タッチ操作あるいは音声入力等)を受け付けたりする。例えば、端末装置10は、薬剤師が患者に対して問診(ヒアリング)する際の問診内容(ヒアリング内容)を表示すると共に、問診結果の入力を受け付ける。また、端末装置10は、薬剤師が対面した患者から受ける印象(インプレッション)の入力を受け付ける。さらに、端末装置10は、初回来局時の問診結果(ヒアリング結果及びインプレッション等)を含む患者に関する情報に基づいて、後述する初回支援情報表示処理によって取得された支援情報(ここでは、患者に関するプロブレム及び推奨される服薬指導内容)を表示する。また、端末装置10は、再来局時の問診結果(ヒアリング結果及びインプレッション等)及び前回の指導歴を含む患者に関する情報に基づいて、後述する再来支援情報表示処理によって取得された支援情報(ここでは、患者に関するプロブレム及び推奨される服薬指導内容)を表示する。なお、患者に関するプロブレムとは、観察項目、指導方針あるいは着眼点等を含む、薬剤師が服薬指導を行う際の薬学的判断要因である。
【0015】
薬局用コンピュータ20は、調剤薬局の業務に関する処理を実行するサーバコンピュータ等の情報処理装置によって構成される。また、薬局用コンピュータ20は、診療報酬明細書を作成するレセプトコンピュータの機能(レセコン機能)及び患者の薬歴を管理する機能(薬歴管理機能)を備え、複数の患者に関する患者属性、複数の患者の処方箋、処方された薬剤の履歴(薬歴)、問診結果(ヒアリング結果及びインプレッション等)、患者に対するヒアリング内容、薬局で取り扱われる薬剤に関する情報等の各種データを管理している。薬局用コンピュータ20において管理される薬歴には、薬剤師が患者に対して行った服薬指導の履歴(指導歴)が含まれている。さらに、薬局用コンピュータ20は、後述する情報管理処理を実行することにより、管理している各種情報を支援情報提供サーバ30に送信したり、支援情報提供サーバ30から送信される各種データによって管理している各種情報を更新したりする。
【0016】
支援情報提供サーバ30は、薬剤師の業務を支援する機能(業務支援機能)を備えるサーバコンピュータ等の情報処理装置によって構成される。支援情報提供サーバ30は、複数の薬局に備えられた端末装置10から支援依頼(支援情報の提供依頼)を受け付けることが可能であり、後述する支援情報提供処理を実行することにより、患者属性、問診結果、処方箋あるいは前回の服薬指導内容(指導歴)のデータを参照して推論を行い、患者に関するプロブレム及び患者に対して服薬指導を行うことが推奨される服薬指導内容(支援情報)を生成する。そして、支援情報提供サーバ30は、生成した支援情報(患者に関するプロブレム及び推奨される服薬指導内容)を端末装置10に送信する。また、支援情報提供サーバ30は、複数の薬局に備えられた薬局用コンピュータ20が管理している各種データを受信して、これらのデータを薬局用コンピュータ20と同様のデータベース群によって管理する。即ち、支援情報提供サーバ30は、複数の薬局に備えられた薬局用コンピュータ20が有する情報(一部または全部)を取得し、支援情報提供処理を実行するために保持する。
【0017】
図3は、支援情報提供サーバ30が備える業務支援機能の概要を示す模式図である。
なお、
図3において、実線のブロックは処理を表し、破線のブロックはデータを表している。また、実線のブロックのうち、太線のブロックは、本実施形態においてコンピュータによる推論(いわゆる人工知能)を適用したブロックである。
図3に示すように、支援情報提供サーバ30は、処方箋、患者属性、ヒアリング、インプレッション及び前回の服薬指導内容(指導歴)の取得結果から特徴量を抽出し、抽出した特徴量を基に機械学習ベースの推論を行うことにより、推奨される服薬指導内容を出力する途中段階の中間状態を生成する。本実施形態において、支援情報提供サーバ30は、患者の訴えを表すテキストデータ(患者の発話を音声認識したテキストデータ、薬剤師が入力したテキストデータあるいは薬剤師が選択した選択肢を表すテキストデータ等)を含む入力データに対して、各種薬剤に関する添付文書のデータの中で指導すべき内容を学習させた学習済みモデルを用いて推論を行う。また、このとき生成される中間状態は、患者に関するプロブレムを指標として表されるものである。上述したように、患者に関するプロブレムとは、観察項目、指導方針あるいは着眼点等を含む、薬剤師が服薬指導を行う際の薬学的判断要因である。中間状態は、薬剤師が当該患者に対する服薬指導を行う思考過程の一状態を情報として具現化したものに相当する。
【0018】
また、
図3において、支援情報提供サーバ30は、生成された中間状態(即ち、患者に関するプロブレム)からルールベースの推論を行うことにより、当該患者への推奨される服薬指導内容(支援情報)を生成する。
このように、患者に関する各種データ(患者属性、問診結果及び処方箋のデータ等)から機械学習ベースの推論により中間状態を生成し、さらに、中間状態から推奨される服薬指導内容を生成することで、薬剤師の思考過程に則した手順で推論を行うことができる。
また、一般に、ディープラーニング等を用いた推論を行った場合、推論過程が把握し難いものとなり、推論結果の根拠を判断することが困難になるところ、本実施形態のように、中間状態を経由して、2段階の推論を行うことで、服薬指導内容が推奨された根拠を確認することが可能となる。
【0019】
また、本実施形態において、支援情報提供サーバ30は、取得したヒアリング結果、インプレッション及び前回の服薬指導内容(指導歴)を自然言語処理することにより、特徴量を抽出する。特徴量が抽出される場合、例えば、薬剤師が服薬指導を行う思考過程において、特徴量であると判断される内容(例えば、患者の年齢や性格等)を抽出対象として予め定義したり、患者の訴えや前回の服薬指導内容から特徴量となる単語を抽出する条件を予め定義したりすることができる。
さらに、本実施形態において、支援情報提供サーバ30は、生成された中間状態(患者に関するプロブレム)と、この中間状態が生成された際に行われたヒアリング内容(聞き取り項目)とに基づいて、後述する再構築処理を実行することにより、ヒアリング内容(聞き取り項目)の再構築を行う。これにより、例えば、生成された中間状態(患者に関するプロブレム)に対して、各プロブレムの重要性をより明確に判定できるようなヒアリング内容を追加すること等が可能となる。なお、このとき行われる再構築は、例えば、ルールベースの推論あるいは機械学習ベースの推論を用いることにより実現される。
【0020】
一例として、ルールベースの推論を用いる場合には、各種内容の中間状態(患者に関するプロブレム)に対して、当該中間状態である場合にヒアリングすることが望ましい特定のヒアリング内容(聞き取り項目)が定義されたテーブルデータが用いられる。そして、テーブルデータを参照し、生成された中間状態(患者に関するプロブレム)に対して定義されている特定のヒアリング内容(聞き取り項目)が、実際のヒアリング内容に含まれていたか否かを判定し、含まれていなかった場合には、以後、同様の患者属性等の患者に行われるヒアリングにおいて、当該特定のヒアリング内容が追加され、ヒアリング内容が再構築される。
また、機械学習ベースの推論を用いる場合には、生成された中間状態(患者に関するプロブレム)を入力として、そのプロブレムを想起する患者に対して薬剤師(特に、ベテランの薬剤師)がヒアリングを行うべきと考える内容(聞き取り項目)を教師データとする教師ありの機械学習等が行われ、ヒアリング内容が再構築される。ただし、再構築のための機械学習としては、他の手法(ディープラーニング等)とすることも可能である。
【0021】
[ハードウェア構成]
次に、支援情報提供システム1における各装置のハードウェア構成を説明する。
支援情報提供システム1において、各装置はPC、サーバコンピュータあるいはタブレット端末等の情報処理装置によって構成され、その基本的構成は同様である。
【0022】
図4は、各装置を構成する情報処理装置800のハードウェア構成を示す図である。
図4に示すように、各装置を構成する情報処理装置800は、CPU(Central Processing Unit)811と、ROM(Read Only Memory)812と、RAM(Random Access Memory)813と、バス814と、入力部815と、出力部816と、記憶部817と、通信部818と、ドライブ819と、撮像部820と、を備えている。
【0023】
CPU811は、ROM812に記録されているプログラム、または、記憶部817からRAM813にロードされたプログラムに従って各種の処理を実行する。
RAM813には、CPU811が各種の処理を実行する上において必要なデータ等も適宜記憶される。
【0024】
CPU811、ROM812及びRAM813は、バス814を介して相互に接続されている。バス814には、入力部815、出力部816、記憶部817、通信部818、ドライブ819及び撮像部820が接続されている。
【0025】
入力部815は、各種ボタンやマイク等で構成され、指示操作に応じて各種情報を入力する。
出力部816は、ディスプレイやスピーカ等で構成され、画像や音声を出力する。
記憶部817は、ハードディスクあるいはDRAM(Dynamic Random Access Memory)等で構成され、各サーバで管理される各種データを記憶する。
通信部818は、ネットワーク40を介して他の装置との間で行う通信を制御する。
【0026】
ドライブ819には、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、あるいは半導体メモリ等よりなる、リムーバブルメディア831が適宜装着される。ドライブ819によってリムーバブルメディア831から読み出されたプログラムは、必要に応じて記憶部817にインストールされる。
撮像部820は、レンズ及び撮像素子等を備えた撮像装置によって構成され、被写体のデジタル画像を撮像する。
なお、情報処理装置800が薬局用コンピュータ20あるいは支援情報提供サーバ30として構成される場合には、撮像部820を省略した構成とすることも可能である。また、情報処理装置800がタブレット端末として構成される場合には、入力部815をタッチセンサによって構成し、出力部816のディスプレイに重ねて配置することにより、タッチパネルを備える構成とすることも可能である。
【0027】
[機能的構成]
次に、支援情報提供システム1における各装置の機能的構成について説明する。
【0028】
[端末装置10の機能的構成]
図5は、端末装置10の機能的構成を示すブロック図である。
図5に示すように、端末装置10のCPU811においては、ユーザインターフェース表示制御部(UI表示制御部)51と、対象情報取得部52と、支援依頼部53と、支援情報取得部54と、が機能する。
【0029】
UI表示制御部51は、支援情報提供サーバ30から受信したユーザインターフェース画面を表示するための情報(以下、「UI情報」と称する。)に基づいて、初回支援情報表示処理及び再来支援情報表示処理における各種入出力画面(以下、「UI画面」と称する。)の表示を制御する。例えば、UI表示制御部51は、初回支援情報表示処理及び再来支援情報表示処理において支援情報を提供する対象の患者を選択する画面(以下、「患者選択画面」と称する。)、最初の来局時に患者に対して行うアンケートの内容を表示する画面(以下、「アンケート表示画面」と称する。)、薬剤師が患者に対してヒアリング(問診)する際のヒアリング内容(聞き取り項目)を表示する画面(以下、「問診表示画面」と称する。)、及び、初回支援情報表示処理及び再来支援情報表示処理によって提供された支援情報(患者に関するプロブレム及び服薬指導内容)を表示する画面(以下、「支援情報表示画面」と称する。)等を表示(ディスプレイに出力)する。また、UI表示制御部51は、UI画面において入力された各種情報を支援情報提供サーバ30に送信する。例えば、UI表示制御部51は、患者選択画面において選択された患者を識別する情報、アンケート表示画面において入力されたアンケート結果、問診表示画面において入力された問診結果あるいは薬局用コンピュータ20が管理する薬歴から取得された前回の服薬指導内容(指導歴)等を支援情報提供サーバ30に送信する。また、UI表示制御部51は、支援情報表示画面において、薬剤師が操作を行い、服薬指導を行った結果(服薬指導結果)を、薬剤師による確定操作(「薬歴へ送信」ボタンの操作等)に応じて、支援情報提供サーバ30に送信する。なお、UI表示制御部51は、UI画面において入力された各種情報(例えば、新規の来局患者に関する患者属性等)を支援情報提供サーバ30と共に、薬局用コンピュータ20に送信することとしてもよい。
【0030】
図6は、患者選択画面の一例を示す模式図である。
図6に示すように、患者選択画面においては、薬局用コンピュータ20によって管理されている患者属性に対応する各患者のリストが表示され、薬剤師は、このリストの中から、ヒアリング(問診)を行う患者を選択する。なお、新規の来局患者については、不図示の登録画面によって、新たに患者属性が登録される。
【0031】
また、
図7は、アンケート表示画面の一例を示す模式図である。
図7に示すように、アンケート表示画面においては、択一形式の質問を含むアンケート内容が表示され、患者自身が回答を入力したり、あるいは、患者の回答に応じて薬剤師が回答を入力したりする。このとき表示されるアンケート内容は、全ての患者に共通して設定された一連の質問であり、患者の氏名、性別、既往症、治療中の疾患等、患者属性を特定するための内容となっている。
【0032】
また、
図8は、問診表示画面の一例を示す模式図である。
図8に示すように、問診表示画面においては、択一形式の質問を含むヒアリング内容(聞き取り項目)が表示され、患者の回答に応じて薬剤師が問診結果(ヒアリング結果)を入力する。このとき表示されるヒアリング内容は、患者属性に対応して選択された一連の質問であり、患者毎、処方箋の内容毎、あるいは、問診回数(例えば、初めての問診か、2回目の問診か)等に応じて決定される。また、問診表示画面においては、薬剤師の自由記入欄が設定されており、薬剤師が患者に対して問診を行った際に気付いた内容(例えば、「元気がない」あるいは「顔色が悪い」等の身体的な印象、「神経質な性格」あるいは「早とちりな性格」等の性格的な印象を表すインプレッション)を任意に記入することが可能となっている。
【0033】
また、
図9は、支援情報表示画面の一例(プロブレム表示画面)を示す模式図である。
図9に示すように、プロブレム表示画面においては、一般に薬剤師(特にベテランの薬剤師)が服薬指導を行う際の薬学的判断要因(患者に関するプロブレム)が表示される。このとき表示される患者に関するプロブレムには、薬剤師が服薬指導を行う患者に対して想起する観察項目、薬剤師が服薬指導において想定する指導方針、薬剤師が服薬指導を行う場合に辿る思考過程で想起している指標(着眼点)等が含まれている。本実施形態において、患者に関するプロブレム(観察項目、着眼点及び指導方針等)は、「副作用」、「アドヒアランス」、「体調の変化」、「併用薬(相互作用)」、「高齢者」、及び、「生活指導」等の複数のカテゴリに分類して提示される。患者に関するプロブレムを提示する際の分類の決定方法(カテゴリの数や具体性等)は、予め設定しておくことができる他、推論結果に応じて変化させることとしてもよい。
【0034】
また、本実施形態においては、これら患者に関するプロブレムに関して、問診に回答した患者の患者属性、薬歴、アンケート結果及び問診結果を基に、それぞれのカテゴリに対する患者の関連性(ここでは、重要度を示す百分率)が算出される。支援情報の提供を受ける薬剤師は、提示された患者に関するプロブレムの関連性を参照することで、問診に回答した患者について、どのような観点に注意して服薬指導を行うことが適切であるかを容易に認識することができる。また、薬剤師自身の思考結果と、支援情報に提示された患者に関するプロブレムの関連性との相違を認識することができ、薬剤師自身の自己評価あるいは研鑚に役立てることができる。
さらに、患者に対して行われた前回の指導時に、薬剤師が次回指導を行うべき患者に関するプロブレムを記録していた場合、
図9に示す支援情報表示画面において、記録されていた患者に関するプロブレムが識別表示(背景色を異ならせる、枠で囲む、点滅させる等)される。
【0035】
また、
図9に示す支援情報表示画面(プロブレム表示画面)において、表示された患者に関するプロブレムのいずれかを選択する操作が行われた場合、選択された患者に関するプロブレムに関連する具体的な情報がさらに表示される。
図10は、患者に関するプロブレムとして副作用が選択された場合に表示される遷移画面の一例を示す模式図である。
図10に示す遷移画面例では、人体のイメージを表す模式図と、人体の模式図の周囲に配置された身体の要素(臓器)の名称とが表示されている。ここで表示される身体の要素の名称は、副作用が表れる可能性のある身体の要素であり、薬剤師が患者に対して指導を行う際の補助的な情報となり得るものである。
【0036】
また、
図10に示す遷移画面例では、副作用に関連する可能性がある薬剤及びその副作用の一覧表が表示されている。この一覧表には、患者に対する指導が初回の場合には、一般的な判断基準から指導することが推奨される副作用が表示される。また、この一覧表の各副作用の欄には、薬剤師が説明を行ったか否かを入力するためのスライドボタンがそれぞれ表示されている。薬剤師は、一覧表示された副作用の中で、患者に対する説明が必要と判断した副作用について患者に説明し、スライドボタンを「説明済み」であることを表す位置(
図10においては右側)に設定する。そして、薬剤師が「上記の副作用を指導」ボタンを操作すると、副作用の指導内容を表す表示画面に移行する。
このとき「説明済み」に設定された副作用については、薬歴において、薬剤師が患者に対して指導を行ったものとして記憶される。
図10に示す一覧表には、表示された副作用について前回の指導時に患者に対して指導を行ったか否かを表す前回指導欄が含まれている。
【0037】
さらに、
図10に示す一覧表には、患者に対する指導が2回目以降(再来局)の場合には、前回の指導内容に基づいて指導することが推奨される副作用が表示される。例えば、患者に対して行われた前回の指導時に、薬剤師が次回指導を行うべき副作用(着眼点)を記録していた場合等には、記録されていた副作用が
図10における一覧表に含めて表示される。これにより、前回の指導を行った薬剤師と異なる薬剤師が今回の指導を行う場合等でも、重要な指導内容を確実に引き継ぐことができる。
【0038】
図11は、副作用の推論機能を呼び出す操作が行われた場合に表示される遷移画面の一例を示す模式図である。
図11に示す遷移画面例では、副作用の要素となる身体の部位(実線で示す六角形)及び症状(破線で示す六角形)が一覧表示されており、これらの副作用の要素の1つまたは複数が選択可能となっている。
そして、
図11に示す遷移画面例において、患者の問診結果に応じて薬剤師が1つまたは複数の副作用の要素を選択し、副作用の推論を実行するための「副作用を回答」ボタンを操作すると、患者に処方された薬剤が有する副作用のうち、患者の問診結果から関連すると推論された副作用が特定される。
【0039】
このとき用いられる推論の方法としては、副作用の要素の全ての組み合わせに対して関連する副作用をテーブル形式等で対応付けしておき、薬剤師が選択した1つまたは複数の副作用の要素に対応する副作用を推論結果として特定することが可能である。また、患者の問診結果に対応する1つまたは複数の副作用の要素を入力とし、それに対応する副作用が出力とされた教師データを用いて機械学習を行い、AIによる推論を行うことも可能である。この場合、実際の患者の問診結果に応じて薬剤師が選択した1つまたは複数の副作用の要素に対応する副作用を、機械学習の結果に基づいてAIが推論する。
【0040】
図12は、副作用の推論結果表示画面の一例を示す模式図である。
図12に示す推論結果表示画面例では、薬剤師が選択した「だるい」という副作用の要素に対して、関連すると推定された薬剤A錠及びB錠の副作用が一覧表示されている。
薬剤師は、一覧表示された各薬剤の副作用を参照して、患者の問診結果に基づく副作用を判断することができる。
また、これら副作用の一覧表示において、各副作用の欄には、薬剤師が説明を行ったか否かを入力するためのスライドボタンがそれぞれ表示されている。薬剤師は、一覧表示された副作用の中で、患者に対する説明が必要と判断した副作用について患者に説明し、スライドボタンを「説明済み」であることを表す位置(
図12においては右側)に設定する。
【0041】
図12においてスライドボタンを「説明済み」に設定し、「次へ」ボタンを操作すると、「説明済み」に設定した副作用について患者に指導(説明)を行ったことが、初回支援情報表示画面あるいは再来支援情報表示画面に引き継がれる。
なお、
図12に示す推論結果表示画面例では、疑義照会を行うための「疑義照会」ボタンが表示されている。薬剤師は、推論結果表示画面に表示された副作用の一覧表示を参照し、医師に対して疑義照会を行う必要があると判断した場合、「疑義照会」ボタンを操作することができる。すると、疑義照会の内容を入力するための入力画面が表示され、薬剤師は疑義照会の内容を入力することが可能となる。この入力画面に入力された疑義照会の内容は、薬歴として記憶される。
【0042】
また、
図13は、支援情報表示画面の他の例(初回支援情報表示画面)を示す模式図である。
図13に示すように、初回支援情報表示画面においては、問診を行った患者について、推奨される服薬指導内容を示す服薬指導文の一覧(以下、「推奨服薬指導文一覧」と称する。)及び処方された薬剤に関する一般的な服薬指導文の一覧(以下、「一般服薬指導文一覧」と称する。)が表示される。推奨服薬指導文一覧は、支援情報提供処理によって特定された患者に関するプロブレム及びその関連性に基づいて選択された服薬指導文のリストを表すものであり、薬剤師(特にベテランの薬剤師)が服薬指導を行う患者に対して想起する観察項目、薬剤師が服薬指導において想定する指導方針、薬剤師が服薬指導を行う場合に辿る思考過程で想起している指標(着眼点)等を反映した結果を表している。また、一般服薬指導文一覧は、患者の処方箋のデータに応じて、処方される薬剤に対応して選択された結果を表している。なお、各服薬指導文にはチェックボックスが併せて表示されており、チェックボックスに薬剤師がチェックマークを付した服薬指導文が、薬剤師による確定操作(「薬歴へ送信」ボタンの操作等)を経て、服薬指導に用いられた服薬指導文の一覧(服薬指導結果)として患者の薬歴に登録される。
【0043】
ここで、
図12に例示される着眼点(副作用等)の推論結果表示画面で「説明済み」とされた服薬指導内容は、
図13に示す初回支援情報表示画面において、チェックボックスにチェックマークが付された状態(即ち、服薬指導が行われたことを示す状態)で引き継いで表示される(
図14に示す再来支援情報表示画面においても同様である)。
なお、
図13の初回支援情報表示画面では、ヒアリング内容を入力するための操作(ヒアリング内容の入力操作)や、薬剤師が次回指導を行うべき患者に関するプロブレムを入力するための操作(次回指導内容の入力操作)を行うことが可能であり、薬剤師による確定操作(「薬歴へ送信」ボタンの操作等)によって、入力された内容を薬歴に記録しておくことができる(
図14に示す再来支援情報表示画面においても同様である)。
【0044】
また、
図14は、支援情報表示画面の他の例(再来支援情報表示画面)を示す模式図である。
図14に示すように、再来支援情報表示画面においては、問診を行った患者について、推奨される服薬指導内容を示す服薬指導文の一覧(推奨服薬指導文一覧)及び処方された薬剤に関する一般的な服薬指導文の一覧(一般服薬指導文一覧)が表示される。推奨服薬指導文一覧は、支援情報提供処理によって特定された患者に関するプロブレム及びその関連性に基づいて選択された服薬指導文のリストを表すものであり、薬剤師(特にベテランの薬剤師)が服薬指導を行う患者に対して想起する観察項目、薬剤師が服薬指導において想定する指導方針、薬剤師が服薬指導を行う場合に辿る思考過程で想起している指標(着眼点)等を反映した結果を表している。
【0045】
ここで、
図14に示す再来支援情報表示画面は、
図13に示す初回支援情報表示画面に対し、前回の服薬指導内容及び前回の服薬指導内容を踏まえて行われた今回の問診結果(ヒアリング結果等)を入力データに含めて推奨服薬指導文一覧が表示されている点が異なっている。
【0046】
具体的には、
図13に示す初回支援情報表示画面には、処方箋のデータ及びアンケート結果のデータを入力として行われた推論(初回支援情報表示処理)の結果が表示されている。なお、患者の初回の来局時にヒアリングが行われている場合、初回支援情報表示処理において、ヒアリング結果のデータも入力に含めることができる。
図13に示す初回支援情報表示画面においては、処方された薬剤「M錠40mg」について、第1の推奨服薬指導文「副作用として尿量減少やむくみが現れることがあるので、その場合は医師に相談するよう指導。」及び第2の推奨服薬指導文「併用禁忌となる薬剤があるので、他科受診する場合は服用中である旨を医師に伝えるよう指導。」が推論結果として表示されている。第1の服薬指導文は、処方された薬剤「M錠40mg」において、比較的高い頻度で出現する副作用に関する注意を促す指導内容を表している。
【0047】
これに対し、
図14に示す再来支援情報表示画面には、処方箋のデータ、アンケート結果のデータ、前回の服薬指導内容のデータ及び今回の問診結果(ヒアリング結果等)のデータを入力として行われた推論(再来支援情報表示処理)の結果が表示されている。
図14に示す再来支援情報表示画面においては、処方された薬剤「M錠40mg」について、第1の推奨服薬指導文「副作用として筋肉痛や倦怠感が現れることがあるので、その場合は服用中止し医師に相談するよう指導。」及び第2の推奨服薬指導文「併用禁忌となる薬剤があるので、他科受診する場合は服用中である旨を医師に伝えるよう指導。」が推論結果として表示されている。第1の服薬指導文は、処方された薬剤「M錠40mg」において、出現頻度は低いものの、出現した場合の重篤性が比較的高い副作用に関する注意を促す指導内容を表している。
図14に示す再来支援情報表示画面の例では、処方された薬剤「M錠40mg」について、前回の服薬指導内容において指導されていない副作用であって、今回の問診で患者が訴えた症状(「身に覚えのない筋肉痛があった」等)に関連する指導文が推奨服薬指導文の上位に推奨されている。なお、一般服薬指導文一覧及び他の表示内容については、初回支援情報表示画面と同様である。
【0048】
図5に戻り、対象情報取得部52は、服薬指導を行う患者について、考慮の対象となる各種情報(以下、「考慮対象情報」と称する。)を取得する。即ち、考慮対象情報は、患者に対する薬学的な指導において考慮の対象となる情報である。例えば、対象情報取得部52は、処方箋を持参した患者の氏名、年齢、既往症、治療中の疾患等、患者を特定するための患者属性のデータを含むアンケート結果のデータ、問診表示画面に対して薬剤師が入力した問診結果(ヒアリング結果やインプレッション等)のデータ、患者が持参した処方箋の内容を表すデータ(処方箋のデータ)、患者の前回来局時の服薬指導内容のデータ等を取得する。なお、対象情報取得部52が取得する情報は、これらに限られず、さらに、患者の薬歴のデータ、あるいは、電子お薬手帳に記憶されているデータ等を取得することも可能である。
【0049】
支援依頼部53は、対象情報取得部52が取得した考慮対象情報と共に、支援情報の提供依頼を支援情報提供サーバ30に送信する。
支援情報取得部54は、支援依頼部53によって送信された支援情報の提供依頼に応じて支援情報提供サーバ30から送信される支援情報を取得する。支援情報取得部54によって取得された支援情報には、患者に関するプロブレム、推奨される服薬指導内容を示す服薬指導文の一覧(推奨服薬指導文一覧)のデータ及び処方された薬剤に関する一般的な服薬指導文の一覧(一般服薬指導文一覧)のデータが含まれている。
【0050】
[薬局用コンピュータ20の機能的構成]
図15は、薬局用コンピュータ20の機能的構成を示すブロック図である。
図15に示すように、薬局用コンピュータ20のCPU811においては、レセプト管理部151と、薬歴管理部152と、データベース管理部(DB管理部)153と、が機能する。また、薬局用コンピュータ20の記憶部817には、患者属性データベース(患者属性DB)171と、処方箋データベース(処方箋DB)172と、薬歴データベース(薬歴DB)173と、問診結果データベース(問診結果DB)174と、ヒアリング内容データベース(ヒアリング内容DB)175と、薬剤データベース(薬剤DB)176と、が形成される。
【0051】
患者属性DB171には、患者の住所、氏名、年齢、性別及び患者個人の特徴を表す各種情報といった患者属性のデータが記憶されている。この患者属性は、薬剤師が患者との対話において取得した情報や、患者がアンケート等に回答して提供した情報等によって構成され、例えば、患者の趣味、仕事内容、家族構成、好きな食べ物等も含まれる。
処方箋DB172には、患者に対して発行された処方箋のデータが各患者を識別する情報及び処方箋の持参日と対応付けて記憶されている。
薬歴DB173には、患者に対して処方された薬剤の履歴(薬歴)のデータが各患者を識別する情報と対応付けて記憶されている。また、薬歴には、薬剤師が患者に対して行った服薬指導の履歴(指導歴)のデータが併せて記憶される。
【0052】
問診結果DB174には、患者に対して行われた問診の結果が、各患者を識別する情報及び問診日時と対応付けて記憶されている。問診の結果には、薬剤師が患者にヒアリングを行って入力したヒアリング結果や、対面した患者から薬剤師が受けた印象を入力したインプレッションが含まれている。
ヒアリング内容DB175には、「薬の飲み忘れはありますか?」あるいは「服薬後に体調の変化はありますか?」等、患者に対するヒアリング内容(聞き取り項目)の一覧のデータが記憶されている。
薬剤DB176には、薬局において取り扱われる各種薬剤に関するデータが記憶されている。この薬剤に関するデータには、薬剤の名称(一般名)、薬剤コード等に加え、服薬指導文や添付文書の内容が含まれている。
【0053】
図16は、薬剤DB176に記憶されている薬剤に関するデータのうち、服薬指導文に関するデータを示す模式図である。
図16に示すように、薬剤コード及び薬剤の名称によって特定される各薬剤には、薬剤メーカーによって提供される複数の服薬指導文が対応付けられている。
図16においては、各薬剤に対応付けられた服薬指導文に対して、通し番号(指導文番号)が付されている。また、各服薬指導文は、1つの患者に関するプロブレムまたは複数の患者に関するプロブレムと対応付けられている。本実施形態においては、後述する推論によって、支援情報の提供対象となる患者の考慮対象情報に対して、患者に関するプロブレムの関連性が算出される。考慮対象情報に対する患者に関するプロブレムの関連性が高くなることは、当該考慮対象情報に対して、その患者に関するプロブレムと対応付けられた服薬指導文の重要性が相対的に高くなることを意味している。
【0054】
レセプト管理部151は、患者のレセプトに必要な情報(患者属性、処方箋の内容及び保険診療点数等)を取得し、レセプトの発行処理を行う。
薬歴管理部152は、患者に対して処方された薬剤の履歴(薬歴)を管理する。例えば、薬歴管理部152は、患者に対して新たに処方が行われた場合、今回処方された薬剤の履歴(今回の薬歴)のデータを薬歴DB173に記憶したり、端末装置10から患者の薬歴のデータの送信依頼を受信した場合、依頼された薬歴のデータを薬歴DB173から取得し、端末装置10に送信したりする。
【0055】
DB管理部153は、薬局用コンピュータ20が管理している各種データベースのデータと、支援情報提供サーバ30に備えられた各種データベースのデータとを同期させるための管理を行う。例えば、DB管理部153は、支援情報提供サーバ30から患者の薬歴のデータの送信依頼を受信した場合、依頼された薬歴のデータを薬歴DB173から取得し、支援情報提供サーバ30に送信する。また、DB管理部153は、予め設定された時刻(例えば、午前3時等)に、薬局用コンピュータ20が管理している各種データベースにおいて更新されたデータを支援情報提供サーバ30に送信すると共に、支援情報提供サーバ30において更新された各種データベースのデータを支援情報提供サーバ30から受信し、管理している各種データベースを更新する。
【0056】
[支援情報提供サーバ30の機能的構成]
図17は、支援情報提供サーバ30の機能的構成を示すブロック図である。
図17に示すように、支援情報提供サーバ30のCPU811においては、DB管理部251と、ユーザインターフェース情報生成部(UI情報生成部)252と、支援依頼受付部253と、対象情報取得部254と、特徴抽出部255と、プロブレム特定部256と、提示情報評価部257と、支援情報生成部258と、支援情報提供部259と、再構築実行部260と、が機能する。また、支援情報提供サーバ30の記憶部817には、患者属性データベース(患者属性DB)271と、処方箋データベース(処方箋DB)272と、薬歴データベース(薬歴DB)273と、問診結果データベース(問診結果DB)274と、ヒアリング内容データベース(ヒアリング内容DB)275と、薬剤データベース(薬剤DB)276と、が形成される。
各データベースの記憶内容と、薬局用コンピュータ20の記憶内容とは、DB管理部251によって同期されている。
【0057】
DB管理部251は、支援情報提供サーバ30に備えられた各種データベースのデータと、薬局用コンピュータ20が管理している各種データベースのデータとを同期させるための管理を行う。例えば、DB管理部251は、予め設定された時刻(例えば、午前3時等)に、支援情報提供サーバ30において更新された各種データベースのデータを薬局用コンピュータ20に送信すると共に、薬局用コンピュータ20が管理している各種データベースにおいて更新されたデータを薬局用コンピュータ20から受信し、管理している各種データベースを更新する。
【0058】
UI情報生成部252は、端末装置10がUI画面を表示するためのUI情報を生成し、生成したUI情報を端末装置10に送信する。具体的には、UI情報生成部252は、UI画面を表示するためのフレームのフォーマット及びフォーマットに挿入する実体的な内容をUI情報として生成する。本実施形態において、フォーマットに挿入する実体的な内容としては、例えば、患者選択画面の患者属性、アンケート表示画面のアンケート内容、問診表示画面のヒアリング内容、患者に関するプロブレムの推論機能が呼び出された際の遷移画面及び患者に関するプロブレムの推論結果表示画面の表示内容、支援情報表示画面(プロブレム表示画面、初回支援情報表示画面及び再来支援情報表示画面)の支援情報等が含まれる。また、UI情報生成部252は、UI情報を端末装置10に送信することに対応して、端末装置10から送信される各種情報(患者を識別する情報、アンケート結果のデータ、処方箋のデータ、問診結果のデータ等)を受信する。さらに、UI情報生成部252は、今回の問診までに把握されている考慮対象情報に基づいて、その患者に適するヒアリング内容を推論し、問診表示画面に挿入する実体的な内容(ヒアリング内容)とする。なお、問診表示画面において表示されるヒアリング内容は、後述するように再構築される。
【0059】
支援依頼受付部253は、端末装置10から、今回入力された考慮対象情報と共に支援情報の提供依頼を受信する。
対象情報取得部254は、端末装置10から送信された考慮対象情報及び各データベースに記憶された考慮対象情報を取得する。なお、各データベースに記憶された考慮対象情報は、必要な場合に取得されるものであり、例えば、端末装置10から患者を識別する情報が送信された場合に、その患者の患者属性のデータが考慮対象情報の1つとして取得される。
【0060】
特徴抽出部255は、支援依頼受付部253によって受信された考慮対象情報及び各データベースから取得された考慮対象情報を参照し、予め定義された抽出条件に従って、特徴量を抽出する。このとき、特徴抽出部255は、自然言語処理を行うことにより、考慮対象情報に含まれる特徴量を表す文言を抽出したり、考慮対象情報から算出または推定される特徴量を抽出したりする。例えば、特徴抽出部255は、患者の訴えを表すテキストデータのうち、患者の発話を音声認識したテキストデータや薬剤師が入力したテキストデータ、あるいは、前回の服薬指導内容を表すテキストデータを形態素解析すること等により単語に分解し、予め定義された条件(特定の品詞や擬態語を抽出する等)に従って、特徴量を抽出する。また、特徴抽出部255は、患者の訴えを表すテキストデータのうち、薬剤師が選択した選択肢を表すテキストデータを特徴量として抽出する。また、特徴抽出部255は、特徴量として「患者の年齢」が定義されている場合、考慮対象情報に含まれる患者の年齢を表す文言を抽出する。また、特徴抽出部255は、特徴量として「来局間隔」が定義されている場合、考慮対象情報に含まれる来局月日から来局間隔(即ち、前回の来局月日と今回の来局月日との差)を算出する。
【0061】
プロブレム特定部256は、特徴抽出部255によって抽出された特徴量を入力として、機械学習ベースの推論を行い、患者に関するプロブレムを指標として表される中間状態を生成する。本実施形態において、プロブレム特定部256は、薬剤師(特にベテランの薬剤師)が特徴量を認識した場合に、患者に関してどのような薬学的判断要因(患者に関するプロブレム)を想起するかについて、機械学習によって構築された推論エンジンを備えている。そのため、プロブレム特定部256によって生成される中間状態は、対象となる患者の考慮対象情報が与えられた場合に、薬剤師が想起する薬学的判断要因が推論された結果を表している。また、この推論エンジンは、患者の訴えを表すテキストデータ(患者の発話を音声認識したテキストデータ、薬剤師が入力したテキストデータあるいは薬剤師が選択した選択肢を表すテキストデータ等)を含む入力データに対して、各種薬剤に関する添付文書のデータの中で指導すべき内容を学習させた学習済みモデルを備えている。そのため、プロブレム特定部256は、患者の訴えを表すテキストデータを入力すると、その訴えを聞いた薬剤師が想起する薬学的指導内容を推論することができる。また、この推論エンジンは、患者の前回来局時の服薬指導内容(指導歴)のデータを入力データに含めることができ、これにより、患者の訴え及び患者の指導歴を薬剤師が認識した場合に想起する薬学的指導内容を推論することが可能となっている。
【0062】
また、本実施形態において、プロブレム特定部256は、患者に関するプロブレムを中間状態の指標として生成する場合、考慮対象情報に対する患者に関するプロブレムの関連性を併せて生成する。即ち、プロブレム特定部256に備えられる推論エンジンは、薬剤師(特にベテランの薬剤師)が特徴量を認識した場合に、患者に関してどのような薬学的判断要因(患者に関するプロブレム)を想起するかについて、患者に関するプロブレムの関連性を含めて機械学習されたものとなっている。
【0063】
提示情報評価部257は、プロブレム特定部256によって特定された患者に関するプロブレム及び患者に関するプロブレムの関連性に基づいて、ルールベースの推論を行うことにより、当該患者に関するプロブレムに関連する各服薬指導文の評価を行う。例えば、提示情報評価部257は、各服薬指導文に対して、その服薬指導文が関連する各患者に関するプロブレムの関連性を示す数値によって重み付けを行い、患者に関するプロブレムと関連付けられた服薬指導文の評価値を決定する。なお、各薬剤において、服薬指導文の重みを設定しておき、この重みに対して、各患者に関するプロブレムの関連性を示す数値をさらに反映させて服薬指導文の評価値を決定することとしてもよい。
このように評価値が決定され、予め設定された閾値以上の評価値が付与された服薬指導文は、推奨服薬指導文一覧に属するものとなる。一方、評価値が付与された服薬指導文において、予め設定された閾値未満の評価値となった服薬指導文は、一般服薬指導文一覧に属するものとなる。
【0064】
支援情報生成部258は、提示情報評価部257によって特定された患者に関するプロブレムのデータを取得する。また、支援情報生成部258は、提示情報評価部257によって決定された服薬指導文の評価値に基づいて、薬剤DB276から当該患者への推奨される服薬指導内容(支援情報)として服薬指導文を取得する。即ち、支援情報生成部258は、患者に関するプロブレムの関連性に基づいて評価された服薬指導文を取得し、予め設定された閾値以上の評価値が付与された服薬指導文を評価値の高いものから順に並べることにより、推奨服薬指導文一覧のデータを生成する。また、支援情報生成部258は、提示情報評価部257において、評価値が付与された服薬指導文において、予め設定された閾値未満の評価値となった服薬指導文を取得し、所定の順に並べることにより、一般服薬指導文一覧のデータを生成する。なお、所定の順としては、種々の形態とすることができるが、一例として、参照頻度の高い順とすることができる。そして、支援情報生成部258は、患者に関するプロブレム及び患者に関するプロブレムの関連性のデータと、推奨服薬指導文一覧のデータと、一般服薬指導文一覧のデータとを含む支援情報を生成し、支援情報提供部259に出力する。
【0065】
支援情報提供部259は、支援情報生成部258から入力された支援情報(患者に関するプロブレム及び患者に関するプロブレムの関連性のデータと、推奨服薬指導文一覧のデータと、一般服薬指導文一覧のデータとを含む情報)を端末装置10に送信(ネットワーク40を介して端末装置10に出力)する。
再構築実行部260は、支援依頼受付部253によって受信された考慮対象情報におけるヒアリング内容のデータと、プロブレム特定部256によって生成された中間状態(患者に関するプロブレム)とに基づいて、再構築を行うことにより、ヒアリング内容(聞き取り項目)の修正を行う。例えば、再構築実行部260は、ルールベースの推論あるいは機械学習ベースの推論を用いることにより、ヒアリング内容(聞き取り項目)の再構築を行う。
【0066】
[動作]
次に、支援情報提供システム1の動作を説明する。
【0067】
[初回支援情報表示処理]
図18及び
図19は、端末装置10が実行する初回支援情報表示処理の流れを示すフローチャートである。
初回支援情報表示処理は、患者の初回来局時に端末装置10において実行されるものであり、端末装置10の入力部815を介して初回支援情報表示処理の実行が指示入力されることに対応して開始される。
ステップS1において、UI表示制御部51は、支援情報提供サーバ30からUI情報を受信して、患者選択画面を表示する(
図6参照)。
ステップS2において、UI表示制御部51は、問診を行う患者の選択を受け付ける。これにより、患者を識別する情報が特定される。
【0068】
ステップS3において、UI表示制御部51は、選択された患者に発行された処方箋のデータの入力を受け付ける。これら患者を識別する情報及び処方箋のデータは、支援情報提供サーバ30に送信される。
ステップS4において、UI表示制御部51は、支援情報提供サーバ30からUI情報を受信して、選択された患者に応じた初回来局時用の問診表示画面を表示する(
図8参照)。なお、初回支援情報表示処理が実行される場合、問診を行う患者の来局が初めて(初回受診)であるため、UI表示制御部51は、ステップS4において、支援情報提供サーバ30からUI情報を受信して、アンケート表示画面を表示し(
図7参照)、アンケート表示画面に対する入力を受け付ける。そして、UI表示制御部51は、アンケート表示画面において入力されたアンケート結果を支援情報提供サーバ30に送信した後、問診表示画面のためのUI情報を受信して、その患者に応じた問診表示画面を表示する。
【0069】
ステップS5において、UI表示制御部51は、初回来局時用の問診表示画面に対する回答の入力を受け付ける。初回来局時用の問診表示画面に対する回答結果(問診結果)のデータは、支援情報提供サーバ30に送信される。
ステップS6において、対象情報取得部52は、服薬指導を行う患者について、UI画面に入力された情報の中から、考慮の対象となる各種情報(考慮対象情報)を取得する。
ステップS7において、支援依頼部53は、対象情報取得部52が取得した考慮対象情報と共に、支援情報の提供依頼を支援情報提供サーバ30に送信する。
ステップS8において、支援情報取得部54は、支援依頼部53によって送信された支援情報の提供依頼に応じて支援情報提供サーバ30から送信される支援情報を含むUI情報を取得する。
【0070】
ステップS9において、UI表示制御部51は、取得したUI情報に基づいて、患者に関するプロブレムを示す支援情報表示画面(プロブレム表示画面)を表示する(
図9参照)。
ステップS10において、UI表示制御部51は、患者に関するプロブレムを選択する操作が行われたか否かの判定を行う。
患者に関するプロブレムを選択する操作が行われた場合、ステップS10においてYESと判定されて、処理はステップS11に移行する。
一方、患者に関するプロブレムを選択する操作が行われていない場合、ステップS10においてNOと判定されて、処理はステップS20に移行する。
ステップS11において、UI表示制御部51は、選択された患者に関するプロブレムに対応する遷移画面を表示する(
図10参照)。
ステップS12において、UI表示制御部51は、選択された患者に関するプロブレムに対応する遷移画面に対する入力(服薬指導内容の決定あるいは推論機能の呼び出し)を受け付ける。
【0071】
ステップS13において、UI表示制御部51は、服薬指導内容の決定のための操作または推論機能の呼び出しのための操作のいずれが行われたかの判定を行う。
服薬指導内容の決定のための操作が行われた場合、ステップS13において「決定操作」と判定されて、処理はステップS20に移行する。
一方、推論機能の呼び出しのための操作が行われた場合、ステップS13において「推論操作」と判定されて、処理はステップS14に移行する。
ステップS14において、UI表示制御部51は、選択された推論機能に対応する遷移画面を表示する(
図11参照)。
ステップS15において、UI表示制御部51は、推論内容を入力するための操作(副作用の要素の選択あるいはフリーワードの入力)を受け付ける。
【0072】
ステップS16において、UI表示制御部51は、推論を実行するための操作(「副作用を回答」ボタンの操作等)が行われたか否かの判定を行う。
推論を実行するための操作が行われていない場合、ステップS16においてNOと判定されて、処理はステップS15に移行する。
一方、推論を実行するための操作が行われた場合、ステップS16においてYESと判定されて、処理はステップS17に移行する。
ステップS17において、UI表示制御部51は、選択された推論結果を表示する画面(推論結果表示画面)を表示する。
ステップS18において、UI表示制御部51は、服薬指導内容を選択するための操作を受け付ける。
【0073】
ステップS19において、UI表示制御部51は、服薬指導内容の決定のための操作が行われたか否かの判定を行う。
服薬指導内容の決定のための操作が行われた場合、ステップS19においてYESと判定されて、処理はステップS20に移行する。
一方、服薬指導内容の決定のための操作が行われていない場合、ステップS19においてNOと判定されて、処理はステップS18に移行する。
【0074】
ステップS20において、UI表示制御部51は、推奨される服薬指導内容を表示させる操作(「指導」ボタンの操作等)が行われたか否かの判定を行う。
推奨される服薬指導内容を表示させる操作が行われていない場合、ステップS20においてNOと判定されて、処理はステップS9に移行する。
一方、推奨される服薬指導内容を表示させる操作が行われた場合、ステップS20においてYESと判定されて、処理はステップS21に移行する。
【0075】
ステップS21において、UI表示制御部51は、推奨される服薬指導内容を示す支援情報表示画面を表示する。
ステップS22において、UI表示制御部51は、推奨される服薬指導内容を示す支援情報表示画面に対する操作が行われたか否かの判定を行う。
このとき、UI表示制御部51は、服薬指導文のチェックボックスにチェックマークを付す操作や、次回の指導内容の入力操作等を受け付ける。
推奨される服薬指導内容を示す支援情報表示画面に対する操作が行われた場合、ステップS22においてYESと判定されて、処理はステップS21に移行する。
一方、支援情報表示画面に対する操作が行われていない場合、ステップS22においてNOと判定されて、処理はステップS23に移行する。
【0076】
ステップS23において、UI表示制御部51は、服薬指導内容を確定させる操作が行われたか否かの判定を行う。
服薬指導内容を確定させる操作が行われていない場合、ステップS23においてNOと判定されて、処理はステップS21に移行する。
一方、服薬指導内容を確定させる操作が行われた場合、ステップS23においてYESと判定されて、処理はステップS24に移行する。
ステップS24において、UI表示制御部51は、確定された服薬指導内容を指導歴として薬歴に送信する。
ステップS24の後、初回支援情報表示処理は終了する。
【0077】
[再来支援情報表示処理]
図20及び
図21は、端末装置10が実行する再来支援情報表示処理の流れを示すフローチャートである。
再来支援情報表示処理は、患者の再来局時に端末装置10において実行されるものであり、端末装置10の入力部815を介して再来支援情報表示処理の実行が指示入力されることに対応して開始される。
【0078】
再来支援情報表示処理のステップS31~ステップS33は、初回支援情報表示処理のステップS1~ステップS3と同様である。
ステップS34において、UI表示制御部51は、支援情報提供サーバ30からUI情報を受信して、選択された患者に応じた再来局時用の問診表示画面を表示する(
図8参照)。
【0079】
ステップS35において、UI表示制御部51は、再来局時用の問診表示画面に対する回答の入力を受け付ける。再来局時用の問診表示画面に対する回答結果(問診結果)のデータは、支援情報提供サーバ30に送信される。
ステップS36において、対象情報取得部52は、患者の前回来局時の服薬指導内容のデータを取得する。ここで取得された前回来局時の服薬指導内容のデータは、考慮対象情報の1つとされる。
ステップS37において、対象情報取得部52は、服薬指導を行う患者について、UI画面に入力された情報の中から、考慮の対象となる各種情報(考慮対象情報)を取得する。
【0080】
ステップS38において、支援依頼部53は、対象情報取得部52が取得した考慮対象情報と共に、支援情報の提供依頼を支援情報提供サーバ30に送信する。このとき送信される考慮対象情報には、患者の前回来局時の服薬指導内容のデータが含まれている。
ステップS39~ステップS55の処理は、再来支援情報表示処理のステップS8~ステップS24と同様である。
【0081】
[情報管理処理]
図22は、薬局用コンピュータ20が実行する情報管理処理の流れを示すフローチャートである。
情報管理処理は、薬局用コンピュータ20の入力部815を介して情報管理処理の実行が指示入力されることに対応して開始される。
【0082】
ステップS61において、DB管理部153は、患者の処方箋を受け付けたか否かの判定を行う。
患者の処方箋を受け付けていない場合、ステップS61においてNOと判定されて、処理はステップS63に移行する。
一方、患者の処方箋を受け付けた場合、ステップS61においてYESと判定されて、処理はステップS62に移行する。
ステップS62において、DB管理部153は、今回受け付けた処方箋のデータで患者属性DB171及び処方箋DB172を更新する。
【0083】
ステップS63において、DB管理部153は、支援情報提供サーバ30から患者の薬歴のデータの送信依頼を受信したか否かの判定を行う。
支援情報提供サーバ30から患者の薬歴のデータの送信依頼を受信していない場合、ステップS63においてNOと判定されて、処理はステップS65に移行する。
一方、支援情報提供サーバ30から患者の薬歴のデータの送信依頼を受信した場合、ステップS63においてYESと判定されて、処理はステップS64に移行する。
ステップS64において、DB管理部153は、依頼された患者の薬歴のデータを支援情報提供サーバ30に送信する。
【0084】
ステップS65において、DB管理部153は、今回の薬歴のデータ(患者に説明された服薬指導内容のデータ等)を支援情報提供サーバ30から受信したか否かの判定を行う。
今回の薬歴のデータを支援情報提供サーバ30から受信していない場合、ステップS65においてNOと判定されて、処理はステップS67に移行する。
一方、今回の薬歴のデータを支援情報提供サーバ30から受信した場合、ステップS65においてYESと判定されて、処理はステップS66に移行する。
ステップS66において、DB管理部153は、受信した薬歴のデータで薬歴DB173を更新する。
【0085】
ステップS67において、DB管理部153は、薬局用コンピュータ20が管理している各種データベースのデータと、支援情報提供サーバ30に備えられた各種データベースのデータとを同期させるための予め設定されたタイミングになっているか否かの判定を行う。
薬局用コンピュータ20が管理している各種データベースのデータと、支援情報提供サーバ30に備えられた各種データベースのデータとを同期させるための予め設定されたタイミングになっていない場合、ステップS67においてNOと判定されて、情報管理処理が繰り返される。
一方、薬局用コンピュータ20が管理している各種データベースのデータと、支援情報提供サーバ30に備えられた各種データベースのデータとを同期させるための予め設定されたタイミングになっている場合、ステップS67においてYESと判定されて、処理はステップS68に移行する。
【0086】
ステップS68において、DB管理部153は、支援情報提供サーバ30とデータを送受信することにより、各データベースを更新し、薬局用コンピュータ20が管理している各種データベースのデータと、支援情報提供サーバ30に備えられた各種データベースのデータとを同期させる。
ステップS68の後、情報管理処理が繰り返される。
【0087】
[支援情報提供処理]
図23は、支援情報提供サーバ30が実行する支援情報提供処理の流れを示すフローチャートである。
支援情報提供処理は、支援情報提供サーバ30の入力部815を介して支援情報提供処理の実行が指示入力されることに対応して開始される。
【0088】
ステップS71において、支援依頼受付部253は、端末装置10から考慮対象情報と共に支援情報の提供依頼を受信する。
ステップS72において、特徴抽出部255は、受信した考慮対象情報(ヒアリング結果及びインプレッション等)を自然言語処理する。
ステップS73において、特徴抽出部255は、考慮対象情報から特徴量を抽出する。
ステップS74において、プロブレム特定部256は、特徴抽出部255によって抽出された特徴量を入力として、機械学習ベースの推論を行い、患者に関するプロブレムを指標として表される中間状態を生成する。このとき、考慮対象情報に対する患者に関するプロブレムの関連性が併せて生成される。
【0089】
ステップS75において、提示情報評価部257は、プロブレム特定部256によって特定された患者に関するプロブレム及び患者に関するプロブレムの関連性に基づいて、ルールベースの推論を行うことにより、当該患者に関するプロブレムに関連する各服薬指導文の評価を行う。
【0090】
ステップS76において、支援情報生成部258は、提示情報評価部257によって決定された服薬指導文の評価値に基づいて、薬剤DB176から当該患者への推奨される服薬指導内容(支援情報)として服薬指導文を取得する。即ち、支援情報生成部258は、患者に関するプロブレムの関連性に基づいて評価された服薬指導文を取得し、予め設定された閾値以上の評価値が付与された服薬指導文を評価値の高いものから順に並べることにより、推奨服薬指導文一覧のデータを生成する。また、支援情報生成部258は、提示情報評価部257において、評価値が付与された服薬指導文において、予め設定された閾値未満の評価値となった服薬指導文を取得し、所定の順に並べることにより、一般服薬指導文一覧のデータを生成する。これにより、推奨服薬指導文一覧のデータ及び一般服薬指導文一覧のデータを含む支援情報が生成される。
【0091】
ステップS77において、支援情報提供部259は、支援情報生成部258から入力された支援情報(患者に関するプロブレム及び患者に関するプロブレムの関連性のデータと、推奨服薬指導文一覧のデータと、一般服薬指導文一覧のデータとを含む情報)を端末装置10に送信(ネットワーク40を介して端末装置10に出力)する。
ステップS77の後、支援情報提供処理が繰り返される。
【0092】
[再構築処理]
図24は、支援情報提供サーバ30が実行する再構築処理の流れを示すフローチャートである。
再構築処理は、支援情報提供サーバ30の入力部815を介して再構築処理の実行が指示入力されることに対応して開始される。なお、支援情報提供処理が実行される毎、あるいは、予め設定された時刻(例えば、午前3時等)に再構築処理を実行することとしてもよい。
【0093】
ステップS81において、再構築実行部260は、複数の患者に関する支援情報の提供において取得された考慮対象情報におけるヒアリング内容のデータと、生成された中間状態(患者に関するプロブレム)とを取得する。
ステップS82において、再構築実行部260は、支援依頼受付部253によって受信された考慮対象情報におけるヒアリング内容のデータと、プロブレム特定部256によって生成された中間状態(患者に関するプロブレム)とに基づいて、ヒアリング内容の再構築を行う。
ステップS82の後、再構築処理は終了となる。
【0094】
以上のように、本実施形態に係る支援情報提供システム1では、服薬指導を行う患者について、当該患者が初回来局時の患者である場合、処方箋を持参した患者の患者属性のデータ、問診表示画面に対して入力された問診結果のデータ、患者が持参した処方箋の内容を表す処方箋のデータ等が、考慮の対象となる考慮対象情報として取得される。また、当該患者が再来局時の患者である場合、服薬指導を行う患者について、処方箋を持参した患者の患者属性のデータ、問診表示画面に対して入力された問診結果のデータ、患者が持参した処方箋の内容を表す処方箋のデータ、前回来局時の服薬指導内容のデータ等が、考慮の対象となる考慮対象情報として取得される。そして、考慮対象情報から特徴量が抽出され、特徴量を入力として機械学習ベースの推論を行うことにより、患者に関するプロブレムを指標として表される中間状態が生成される。このとき、患者に関するプロブレムについて、考慮対象情報に対する関連性が併せて生成される。さらに、患者に関するプロブレム及び患者に関するプロブレムの関連性に基づいて、ルールベースの推論を行うことにより、当該患者に関するプロブレムに関連する各服薬指導文が評価され、評価結果に基づいて、推奨される服薬指導文を含む支援情報が提供される。
【0095】
そのため、考慮対象情報から、第1の推論(ここでは機械学習ベースの推論)を行うことにより、薬剤師が当該患者に対する服薬指導を行う思考過程の一状態を情報として具現化した中間状態(患者に関するプロブレム)を生成することができる。また、中間状態(患者に関するプロブレム)から、第2の推論(ここではルールベースの推論)を行うことにより、推奨される服薬指導文を含む支援情報が生成される。さらに、再来局時の患者に対しては、前回の服薬指導内容と今回のヒアリング結果とを含めて推論された服薬指導内容がより高い評価値で推奨される。
したがって、コンピュータによる推論を用いて服薬指導の支援を行うことが可能となるため、薬剤師の業務をより適切に支援することが可能となる。
また、再来局時の患者に対して、処方された薬剤、患者に対して過去に行った服薬指導内容及び患者の症状等に適合した服薬指導内容を推奨することができるため、患者の現在の状態に適した服薬指導を行うことが可能となる。
また、コンピュータによって服薬指導の支援を行う場合に、薬剤師の思考過程に則した手順で適切な服薬指導文の推論を行うことができる。
また、一般に、ディープラーニング等を用いた推論を行った場合、推論過程が把握し難いものとなり、推論結果の根拠を判断することが困難になるところ、本実施形態のように、中間状態を経由して、2段階の推論を行うことで、服薬指導内容が推奨された根拠を確認することが可能となる。
【0096】
[変形例1]
上述の実施形態においては、クライアント-サーバ型の支援情報提供システム1を構築し、端末装置10から支援情報提供サーバ30に支援情報の提供依頼を行って、支援情報を取得するものとした。
これに対し、支援情報提供サーバ30の支援情報提供機能を1つの装置(例えば、端末装置10あるいは薬局用コンピュータ20等)に備えることにより、支援情報提供システム1の機能を単体の情報処理装置800で実現(即ち、スタンドアローン型のシステムとして実現)することとしてもよい。
【0097】
図25は、支援情報提供機能を備えるスタンドアローン型の情報処理装置800の機能的構成を示すブロック図である。
図25に示すように、スタンドアローン型として構成する場合、単体の情報処理装置800において、端末装置10のUI表示制御部51、支援情報提供サーバ30のUI情報生成部252、支援依頼受付部253、対象情報取得部254、特徴抽出部255、プロブレム特定部256、提示情報評価部257、支援情報生成部258、支援情報提供部259及び再構築実行部260の機能をCPU811に備え、支援情報提供サーバ30(または薬局用コンピュータ20)が管理する各データベースを記憶部817に備えることとすればよい。
【0098】
また、支援情報提供システム1をクライアント-サーバ型のシステムとして構成する場合において、システムを構成する情報処理装置の組み合わせは、上述の実施形態に示した例に限られない。
例えば、薬局用コンピュータ20あるいは支援情報提供サーバ30に備えられた機能をより多くのサーバに分散して実装したり、薬局用コンピュータ20及び支援情報提供サーバ30の機能を1つのサーバにまとめて実装したりすることが可能である。
【0099】
[変形例2]
上述の実施形態において、患者に関するプロブレムとして、
図9に示す6種類のプロブレムを表示する場合を例に挙げて説明した。
これに対し、より多種類の患者に関するプロブレムを表示することが可能である。
また、患者属性や処方箋のデータに応じて、患者に関するプロブレムの数を逐次設定して中間状態を表示することも可能である。
さらに、患者に関するプロブレムを生成する場合、より具体的な内容、あるいは、より抽象的な内容とする等、患者に関するプロブレムの内容に幅を持たせることが可能である。
これにより、薬剤師が患者に対する服薬指導を行う思考過程をより適切に表すことが可能となる。
【0100】
[変形例3]
上述の実施形態においては、考慮対象情報から、第1段階の推論を行うことにより、薬剤師が患者に対する服薬指導を行う思考過程の一状態を情報として具現化した中間状態(患者に関するプロブレム)を生成し、中間状態(患者に関するプロブレム)から、第2の推論を行うことにより、推奨される服薬指導文を含む支援情報を生成するものとした。
これに対し、より多段階の推論を行うことにより、複数段階の中間状態を生成し、適宜表示させることが可能である。
【0101】
例えば、薬剤が患者に対する服薬指導を行う思考過程の一状態を抽象度に応じてn段階(nは2以上の整数)に設定し、これらを具現化したn段階の中間状態を生成することができる。このとき、考慮対象情報から、第1の推論によって第1段階の中間状態を生成し、第2の推論によって第1段階の中間状態から第2段階の中間状態を生成し、順次、第nの推論によって第n段階の中間状態を生成する。そして、第n+1の推論によって第n段階の中間状態から推奨される服薬指導文を含む支援情報を生成することができる。
なお、一例として、中間状態を生成する場合には、機械学習ベースの推論を行い、推奨される服薬指導文を含む支援情報を生成する場合には、ルールベースの推論を行うことができる。
これにより、薬剤師(特に、ベテランの薬剤師)が患者に対する服薬指導を行う思考過程をより具体的に辿りながら、薬剤師の思考過程をより適切な段階に区切って中間状態(患者に関するプロブレム)を示すことが可能となる。
したがって、薬剤師の業務をより適切に支援することが可能となる。
【0102】
以上のように、本実施形態に係る支援情報提供システム1は、端末装置10と、支援情報提供サーバ30とを含む。
端末装置10と支援情報提供サーバ30とは、ネットワーク40を介して通信可能に構成されている。
端末装置10は、UI表示制御部51と、支援依頼部53と、を備え、支援情報提供サーバ30は、対象情報取得部254と、プロブレム特定部256と、支援情報生成部258と、支援情報提供部259と、を備えている。
端末装置10において、支援依頼部53は、患者に対する薬学的な指導において考慮の対象となり、患者に対する前回の薬学的な指導の内容及び今回のヒアリング結果を含む対象情報に基づいて、薬学的な指導のための支援情報を生成するための依頼を支援情報提供サーバ30に送信する。
UI表示制御部51は、支援依頼部53による依頼に応じて、支援情報提供サーバ30から送信された支援情報を表示する。
支援情報提供サーバ30において、対象情報取得部254は、支援依頼部53の依頼に基づいて、考慮対象情報を取得する。
プロブレム特定部256は、考慮対象情報に基づいて推論を行うことにより、推奨される薬学的な指導の内容を含む支援情報を生成する。
支援情報提供部259は、プロブレム特定部256によって生成された支援情報を端末装置10に提供する。
これにより、薬学的な指導の対象となる患者が再来局時の患者である場合、患者に対する前回の薬学的な指導の内容及び今回のヒアリング結果を含む考慮対象情報を基に、推奨される薬学的な指導の内容が推論される。
したがって、患者の現在の状態に適した服薬指導を行うことが可能となるため、薬剤師の業務をより適切に支援することが可能となる。
【0103】
プロブレム特定部256は、考慮対象情報に基づいて第1の推論を行うことにより、服薬指導を行う際の薬学的判断要因を指標として表される中間状態を表す情報を支援情報として生成する。
これにより、考慮対象情報から、第1の推論(例えば、機械学習ベースの推論)を行うことにより、薬剤師が患者に対する服薬指導を行う思考過程の一状態を情報として具現化した中間状態(例えば、患者に関するプロブレム)を生成することができる。
【0104】
支援情報生成部258は、中間状態を表す情報に基づいて第2の推論を行うことにより、推奨される薬学的な指導の内容を支援情報として生成する。
これにより、中間状態(例えば、患者に関するプロブレム)から、第2の推論(例えば、ルールベースの推論)を行うことにより、推奨される服薬指導文を含む支援情報を生成することができる。
【0105】
支援情報提供サーバ30は、特徴抽出部255を備える。
特徴抽出部255は、対象情報取得部254によって取得された考慮対象情報から、予め設定された抽出条件に基づいて特徴量を抽出する。
プロブレム特定部256は、考慮対象情報から抽出された特徴量に基づいて第1の推論を行うことにより、中間状態を表す情報を生成する。
これにより、考慮対象情報が表す内容をより適確に反映させて、中間状態を生成することができる。
【0106】
第1の推論は、考慮対象情報を入力とし、薬剤師が対象情報を認識した場合に、患者に関して想起する薬学的判断要因を教師データとして構築された機械学習ベースの推論を含む。
これにより、薬剤師の思考を反映させて中間状態を生成することができる。
【0107】
第2の推論は、中間状態を表す情報に対して予め設定された支援情報の対応付けに基づくルールベースの推論を含む。
これにより、簡単かつ明確な処理によって、中間状態から支援情報を生成することが可能となる。
【0108】
また、本実施形態に係る端末装置10または支援情報提供サーバ30は、プロブレム特定部256と、支援情報生成部258と、支援情報提供部259と、を備えている。
プロブレム特定部256または支援情報生成部258は、患者に対する薬学的な指導において考慮の対象となり、患者に対する前回の薬学的な指導の内容及び今回のヒアリング結果を含む対象情報に基づいて推論を行うことにより、推奨される薬学的な指導の内容を含む薬学的な指導のための支援情報を生成する。
支援情報提供部259は、プロブレム特定部256または支援情報生成部258によって生成された支援情報を出力する。
これにより、薬学的な指導の対象となる患者が再来局時の患者である場合、患者に対する前回の薬学的な指導の内容及び今回のヒアリング結果を含む考慮対象情報を基に、推奨される薬学的な指導の内容が推論される。
したがって、患者の現在の状態に適した服薬指導を行うことが可能となるため、薬剤師の業務をより適切に支援することが可能となる。
【0109】
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、上述の実施形態においては、支援情報として服薬指導文の一覧を提示する場合を例に挙げて説明したが、これに限られない。即ち、本発明において支援情報として提示する対象には、各種医療情報が含まれる。
【0110】
また、上述の実施形態において、患者に対して問診を行った後、薬剤師が調剤を行っている間、患者は待ち時間となるため、この待ち時間の間に、問診結果から特定される簡易な生活指導の情報等を患者に提示(例えば、患者のスマートフォン等に表示)することとしてもよい。
さらに、上述の実施形態において、患者に対する問診を行うための問診表示画面や、薬剤師によって内容が確定された後の服薬指導文の一覧(患者用の推奨服薬指導文一覧及び一般服薬指導文一覧)の表示画面を患者自身が所持する装置(例えば、患者のスマートフォン等)に表示することとしてもよい。さらに、薬剤師によって内容が確定された後の患者に関するプロブレムについても、患者自身が所持する装置(例えば、患者のスマートフォン等)に表示することとしてもよい。
【0111】
また、上述の実施形態において、
図9に示すように、患者に関するプロブレムを円環状のグラフとして示すものとして説明したが、患者に関するプロブレムの出力形態は、これに限られない。例えば、患者に関するプロブレムの関連性を表す数値をレーダーチャートとして出力することが可能である。この場合、過去の服薬指導時における患者に関するプロブレムとの変化を表示すること等が容易となる。
【0112】
上述した一連の処理は、ハードウェアにより実行させることもできるし、ソフトウェアにより実行させることもできる。
換言すると、上述の実施形態における機能的構成は例示に過ぎず、特に限定されない。即ち、上述した一連の処理を全体として実行できる機能が支援情報提供システム1を構成するいずれかのコンピュータに備えられていれば足り、この機能を実現するためにどのような機能ブロックを用いるのかは特に示した例に限定されない。
また、1つの機能ブロックは、ハードウェア単体で構成してもよいし、ソフトウェア単体で構成してもよいし、それらの組み合わせで構成してもよい。
【0113】
また、上述した一連の処理を実行するためのプログラムを含む記録媒体は、ユーザにプログラムを提供するために装置本体とは別に配布されるリムーバブルメディアにより構成されるだけでなく、装置本体に予め組み込まれた状態でユーザに提供される記録媒体等で構成される。
【0114】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前述した実施形態に限るものではない。また、本実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0115】
1 支援情報提供システム、10 端末装置、20 薬局用コンピュータ、30 支援情報提供サーバ、40 ネットワーク、51 ユーザインターフェース表示制御部(UI表示制御部)、52,254 対象情報取得部、53 支援依頼部、54 支援情報取得部、151 レセプト管理部、152 薬歴管理部、153,251 DB管理部、171,271 患者属性データベース(患者属性DB)、172,272 処方箋データベース(処方箋DB)、173,273 薬歴データベース(薬歴DB)、174,274 問診結果データベース(問診結果DB)、175,275 ヒアリング内容データベース(ヒアリング内容DB)、176,276 薬剤データベース(薬剤DB)、252 ユーザインターフェース情報生成部(UI情報生成部)、253 支援依頼受付部、255 特徴抽出部、256 プロブレム特定部、257 提示情報評価部、258 支援情報生成部、259 支援情報提供部、260 再構築実行部、800 情報処理装置、811 CPU、812 ROM、813 RAM、814 バス、815 入力部、816 出力部、817 記憶部、818 通信部、819 ドライブ、820 撮像部、831 リムーバブルメディア